説明

立体画像認識装置

【課題】明るさ、フリッカー、及び斜め方向観察時のクロストークを抑制した立体画像形成装置を提供する。
【解決手段】液晶表示装置と、時分割画像表示遮断機器とを含む立体画像認識装置であって、液晶表示装置の表示側偏光板の偏光子の視認側にはλ/4板Aが配置され、時分割画像表示遮断機器の偏光子の前記液晶表示装置側には液晶封入体とλ/4板Bとが配置され、λ/4板A及びλ/4板Bは、透明支持体、配向膜、及び円盤状液晶化合物を含む光学異方性層を含み、該光学異方性層において、該円盤状液晶化合物は前記光学異方性層平面に対して実質的に垂直に配向しており、液晶表示装置の表示側偏光板の偏光子、λ/4板Aの透明支持体、λ/4板Aの配向膜、及びλ/4板Aの光学異方性層が視認側に向かってこの順、又は表示側偏光板の偏光子、λ/4板Aの光学異方性層、λ/4板Aの配向膜、λ/4板Aの透明支持体の順で配置された立体画像認識装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時分割方式で立体表示された画像を映し出す液晶表示装置を斜めから眺めた場合にクロストークなく認識できる立体画像認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶セル、その前後に1対の偏光板を主構成とする液晶表示装置とメガネなどの形態として偏光板、液晶セルを備えた時分割画像表示遮断機器として特許文献1に記載の立体画像認識装置が知られている。
この立体画像認識装置の1つの構成として、液晶表示装置の表示側偏光板の視認側にλ/4板を有し、時分割画像表示遮断機器の偏光板の外側に、液晶封入体とλ/4板を有する形態がある。
この実施形態では、フリッカーという、立体画像表示装置に特有のちらつき現象を抑えることができるものの、斜めから立体画像表示装置を眺めた場合に、立体画像を認識させるためのメカニズムである、右目用の映像と左目用の映像の区別が完全に認識できず、画像を眺める視聴者においては、像が2重に見える、いわゆるクロストーク現象が発生する問題点があった。
【0003】
この問題点を解決するため、λ/4板として用いる部材を、透明な支持体上に円盤状液晶を配向させて形成する技術が特許文献2に記載されている。
前記特許文献1に記載の立体画像形成装置において、特許文献2に記載の負のAプレートを適用すると、クロストーク現象は大幅に低減できることが判明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−82307号公報
【特許文献2】特開2004−226945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、クロストークの問題は、眺める視聴者の方位角によっても変化する。前記の両特許文献に記載された技術を組み合わせて立体画像形成装置を構成しても、クロストークの方位角依存性の問題は解決できなかった。
【0006】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、明るさ、フリッカー、及び正面から顔を傾けて見た場合のクロストークの観点で優れ、かつ斜め方向観察時のクロストークを抑制した立体画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]
液晶セル、及び該液晶セルの両側に1対の偏光板を備えた液晶表示装置と、
偏光子、液晶封入体、及びλ/4板Bを備えた時分割画像表示遮断機器とを含む立体画像認識装置であって、
液晶表示装置の表示側偏光板の偏光子の視認側にはλ/4板Aが配置され、
時分割画像表示遮断機器の偏光子の前記液晶表示装置側には液晶封入体とλ/4板Bとが配置され、
液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸と時分割画像表示遮断機器の偏光子の吸収軸は直交又は平行であり、
液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸とλ/4板Aの遅相軸のなす角度は45°又は135°であり、
λ/4板Aとλ/4板Bの遅相軸は直交又は平行であり、
λ/4板A及びλ/4板Bは、透明支持体、配向膜、及び円盤状液晶化合物を含む光学異方性層を含み、
該光学異方性層において、該円盤状液晶化合物は前記光学異方性層平面に対して実質的に垂直に配向しており、
液晶表示装置の表示側偏光板の偏光子、λ/4板Aの透明支持体、λ/4板Aの配向膜、及びλ/4板Aの光学異方性層が視認側に向かってこの順で配置された立体画像認識装置。
[2]
液晶セル、及び該液晶セルの両側に1対の偏光板を備えた液晶表示装置と、
偏光子、液晶封入体、及びλ/4板Bを備えた時分割画像表示遮断機器とを含む立体画像認識装置であって、
液晶表示装置の表示側偏光板の偏光子の視認側にはλ/4板Aが配置され、
時分割画像表示遮断機器の偏光子の前記液晶表示装置側には液晶封入体とλ/4板Bとが配置され、
液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸と時分割画像表示遮断機器の偏光子の吸収軸は直交又は平行であり、
液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸とλ/4板Aの遅相軸のなす角度は45°又は135°であり、
λ/4板Aとλ/4板Bの遅相軸は直交又は平行であり、
λ/4板A及びλ/4板Bは、透明支持体、配向膜、及び円盤状液晶化合物を含む光学異方性層を含み、
該光学異方性層において、該円盤状液晶化合物は前記光学異方性層平面に対して実質的に垂直に配向しており、
液晶表示装置の表示側偏光板の偏光子、λ/4板Aの光学異方性層、λ/4板Aの配向膜、及びλ/4板Aの透明支持体が視認側に向かってこの順で配置された立体画像認識装置。
[3]
λ/4板A及びλ/4板Bの少なくとも一方における透明支持体の波長550nmにおける厚さ方向のレターデーションRthが0〜130nmである前記[1]又は[2]に記載の立体画像認識装置。
[4]
λ/4板A及びλ/4板Bの少なくとも一方において、下記式で表される値が0〜2である前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の立体画像認識装置。
Rth/Re + 0.5
Reは波長550nmにおける面内レターデーション、Rthは波長550nmにおける厚み方向のレターデーション。
[5]
λ/4板Aの表面に反射防止層を有する前記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の立体画像認識装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、明るさ、フリッカー、及び正面から顔を傾けて見た場合のクロストークの観点で優れ、かつ斜め方向観察時のクロストークを抑制した立体画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明におけるλ/4板(光学フィルム)の例を示す概略図である。
【図2】本発明における偏光板の例を示す概略図である。
【図3】本発明の立体画像認識装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の立体画像認識装置の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の立体画像認識装置の一例を示す概略図である。
【図6】本発明の立体画像認識装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本実施形態の説明において、「平行」あるいは「直交」とは、厳密な角度±5°未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。
また、角度について、「+」は時計周り方向を意味し、「−」は反時計周り方向を意味するものとする。
また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味し、更に屈折率の測定波長は、特別な記述がない限り、可視光域(λ=550nm)での値である。
【0011】
また、本実施形態の説明において「偏光板」とは、特別な記述がない限り、長尺の偏光板、及び表示装置に組み込まれる大きさに裁断された偏光板の両者を含む意味で用いている。なお、ここでいう「裁断」には「打ち抜き」及び「切り出し」等も含むものとする。また、本実施形態の説明では、「偏光膜」と「偏光板」とを区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜(偏光子)」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体のことを意味するものとする。
【0012】
また、本実施形態の説明において「分子対称軸」とは、分子が回転対称軸を有する場合は、当該対称軸を指すが、厳密な意味で、分子が回転対称性であることを要求するものではない。一般的に、円盤状液晶化合物(ディスコティック液晶性化合物)において、分子対称軸は、円盤面の中心を貫く円盤面に対して垂直な軸と一致し、棒状液晶性化合物において、分子対称軸は、分子の長軸と一致する。
【0013】
また、本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、又は測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。なお、この測定方法は、後述する光学異方性層中のディスコティック液晶分子の配向膜側の平均チルト角、その反対側の平均チルト角の測定においても一部利用される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(III)よりRthを算出することもできる。
【0014】
【数1】

【0015】
・・・・・・式(A)
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(III)
【0016】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0017】
(チルト角の測定)
ディスコティック液晶性化合物や棒状液晶性化合物を配向させた光学異方性層において、光学異方性層の一方の面におけるチルト角(ディスコティック液晶性化合物又は棒状液晶性化合物における物理的な対象軸が光学異方性層の界面となす角度をチルト角とする)θ1及び他方の面のチルト角θ2を、直接的にかつ正確に測定することは困難である。そこで本明細書においては、θ1及びθ2は、以下の手法で算出する。本手法は本発明の実際の配向状態を正確に表現していないが、光学フィルムのもつ一部の光学特性の相対関係を表す手段として有効である。
本手法では算出を容易にすべく、下記の2点を仮定し、光学異方性層の2つの界面におけるチルト角とする。
1.光学異方性層はディスコティック液晶性化合物や棒状液晶性化合物を含む層で構成された多層体と仮定する。更に、それを構成する最小単位の層(ディスコティック液晶性化合物又は棒状液晶性化合物のチルト角は該層内において一様と仮定)は光学的に一軸と仮定する。
2.各層のチルト角は光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化すると仮定する。
具体的な算出法は下記のとおりである。
(1)各層のチルト角が光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化する面内で、光学異方性層への測定光の入射角を変化させ、3つ以上の測定角でレターデーション値を測定する。測定及び計算を簡便にするためには、光学異方性層に対する法線方向を0°とし、−40°、0°、+40°の3つの測定角でレターデーション値を測定することが好ましい。このような測定は、KOBRA−21ADH及びKOBRA−WR(王子計測器(株)製)、透過型のエリプソメーターAEP−100((株)島津製作所製)、M150及びM520(日本分光(株)製)、ABR10A(ユニオプト(株)製)で行うことができる。
(2)上記のモデルにおいて、各層の常光の屈折率をno、異常光の屈折率をne(neは各々すべての層において同じ値、noも同様とする)、及び多層体全体の厚みをdとする。更に各層におけるチルト方向とその層の一軸の光軸方向とは一致するとの仮定の元に、光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1及び他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1及びθ2を算出する。
ここで、no及びneは文献値、カタログ値等の既知の値を用いることができる。値が未知の場合はアッベ屈折計を用いて測定することもできる。光学異方性層の厚みは、光学干渉膜厚計、走査型電子顕微鏡の断面写真等により測定数することができる。
【0018】
本発明は、下記[1]及び[2]に記載した立体画像認識装置に関する。
[1]
液晶セル、及び該液晶セルの両側に1対の偏光板(バックライト側偏光板と表示側偏光板からなる1対の偏光板)を備えた液晶表示装置と、
偏光子、液晶封入体、及びλ/4板Bを備えた時分割画像表示遮断機器とを含む立体画像認識装置であって、
液晶表示装置の表示側偏光板の偏光子の視認側にはλ/4板Aが配置され、
時分割画像表示遮断機器の偏光子の前記液晶表示装置側には液晶封入体とλ/4板Bとが配置され、
液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸と時分割画像表示遮断機器の偏光子の吸収軸は直交又は平行であり、
液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸とλ/4板Aの遅相軸のなす角度は45°又は135°であり、
λ/4板Aとλ/4板Bの遅相軸は直交又は平行であり、
λ/4板A及びλ/4板Bは、透明支持体、配向膜、及び円盤状液晶化合物を含む光学異方性層を含み、
該光学異方性層において、該円盤状液晶化合物は前記光学異方性層平面に対して実質的に垂直に配向しており、
液晶表示装置の表示側偏光板の偏光子、λ/4板Aの透明支持体、λ/4板Aの配向膜、及びλ/4板Aの光学異方性層が視認側に向かってこの順で配置された立体画像認識装置。
[2]
液晶セル、及び該液晶セルの両側に1対の偏光板(バックライト側偏光板と表示側偏光板からなる1対の偏光板)を備えた液晶表示装置と、
偏光子、液晶封入体、及びλ/4板Bを備えた時分割画像表示遮断機器とを含む立体画像認識装置であって、
液晶表示装置の表示側偏光板の偏光子の視認側にはλ/4板Aが配置され、
時分割画像表示遮断機器の偏光子の前記液晶表示装置側には液晶封入体とλ/4板Bとが配置され、
液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸と時分割画像表示遮断機器の偏光子の吸収軸は直交又は平行であり、
液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸とλ/4板Aの遅相軸のなす角度は45°又は135°であり、
λ/4板Aとλ/4板Bの遅相軸は直交又は平行であり、
λ/4板A及びλ/4板Bは、透明支持体、配向膜、及び円盤状液晶化合物を含む光学異方性層を含み、
該光学異方性層において、該円盤状液晶化合物は前記光学異方性層平面に対して実質的に垂直に配向しており、
液晶表示装置の表示側偏光板の偏光子、λ/4板Aの光学異方性層、λ/4板Aの配向膜、及びλ/4板Aの透明支持体が視認側に向かってこの順で配置された立体画像認識装置。
以下、本発明におけるλ/4板、偏光板、画像表示装置の作製に利用される種々の材料、及び製造方法等を詳細に説明する。
【0019】
[λ/4板]
本発明におけるλ/4板について説明する。前記λ/4板Aとλ/4板Bは同じものであっても異なっていてもよい。以下、λ/4板A及びλ/4板Bとして用いることができるλ/4板について説明する。本発明におけるλ/4板は、円盤状液晶化合物の垂直配向によって発現された屈折率異方性を有する光学異方性層を含む。前記光学異方性層は、円盤状液晶性化合物を含有する組成物から形成されたものが好ましい。更に、ポリマーフィルムを延伸してフィルム中の高分子を配向させて発現させた光学異方性を有する層を含んでもよい。
本発明におけるλ/4板の面内レターデーション(Re550)は100〜175nmであることが好ましく、110〜165nmであることがより好ましく、120〜155nmであることが更に好ましい。
本発明におけるλ/4板の厚み方向のレターデーションは−400〜260nmであることが好ましく、−200〜160nmがより好ましく、−90〜80nmが更に好ましい。
本発明におけるλ/4板のRe450/Re550は1.18以下で、Re650/Re550が0.93以上が好ましい。以上のような範囲にすることで、光の波長依存性や入射角度依存性が小さい、λ/4板を得ることができる。
なお、本明細書において、本発明におけるλ/4板を「光学フィルム」と呼ぶこともある。また、本発明におけるλ/4板は、種々の機能層を積層することなどにより種々の機能を発揮する光学フィルムとすることもできる。
【0020】
本発明において、λ/4板A及びλ/4板Bの少なくとも一方において、正面の円偏光性を斜め方向でも保つ観点から下記式で表される値が0〜2であることが好ましく、0.2〜1であることがより好ましく、0.4〜0.6が更に好ましい。
Rth/Re + 0.5
Reは波長550nmにおける面内レターデーション、Rthは波長550nmにおける厚み方向のレターデーションである。
【0021】
[円盤状液晶性化合物を含む光学異方性層]
前記λ/4板が有する光学異方性層の形成に用いられる円盤状液晶性化合物の種類については特に制限されない。例えば、低分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、光架橋や熱架橋によって固定化して得られる光学異方性層や、高分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、冷却することによって当該配向を固定化して得られる光学異方性層を用いることもできる。なお本発明では、光学異方性層は、該円盤状液晶性化合物が重合等によって固定されて形成された層である場合、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。重合性液晶性化合物は、多官能性重合性液晶でもよいし、単官能性重合性液晶性化合物でもよい。
【0022】
前記光学異方性層において、円盤状液晶化合物の分子は、垂直配向の配向状態に固定化されている。視野角依存性が対称である位相差板を作製するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤面がフィルム面(光学異方性層平面)に対して実質的に垂直であることが好ましい。ディスコティック液晶性化合物が実質的に垂直とは、フィルム面(光学異方性層平面)とディスコティック液晶性化合物の円盤面とのなす角度の平均値が70°〜90°の範囲内であることを意味する。80°〜90°がより好ましく、85°〜90°が更に好ましい。
【0023】
前記λ/4板は、液晶性化合物を含有する光学異方性層を含むが、該光学異方性層は一層のみからなっていてもよいし、二層以上の光学異方性層の積層体であってもよい。
【0024】
前記光学異方性層は、棒状液晶性化合物又はディスコティック液晶性化合物等の液晶性化合物と、所望により、後述する重合開始剤や配向制御剤や他の添加剤を含む塗布液を、支持体上に塗布することで形成することができる。支持体上に配向膜を形成し、該配向膜表面に前記塗布液を塗布して形成するのが好ましい。
【0025】
[ディスコティック液晶性化合物]
本発明では、前記λ/4板が有する光学異方性層の形成に、ディスコティック液晶性化合物を用いる。ディスコティック液晶性化合物は、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載されている。ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0026】
ディスコティック液晶性化合物は、重合により固定可能なように、重合性基を有するのが好ましい。例えば、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させた構造が考えられるが、但し、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に連結基を有する構造が好ましい。即ち、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式で表される化合物であることが好ましい。
D(−L−P)
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは1〜12の整数である。前記式中の円盤状コア(D)、二価の連結基(L)及び重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)であり、同公報に記載の内容を好ましく用いることができる。なお、液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、30〜300℃が好ましく、30〜170℃が更に好ましい。
【0027】
下記一般式(I)で表わされるディスコティック液晶性化合物は、面内レターデーションの波長分散性が低く、高い面内レターデーションを発現可能であり、また特殊な配向膜や添加剤を使用しなくても高い平均傾斜角で均一性に優れた垂直配向を達成できるので、光学異方性層の形成に利用するのが好ましい。更に該液晶性化合物を含有する塗布液は、その粘度が比較的低くなる傾向があり、塗布性が良好である点でも好ましい。
【0028】
(1)−1 一般式(I)で表されるディスコティック液晶化合物
【0029】
【化1】

【0030】
式中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立に置換されていてもよいメチン又は窒素原子を表す。
【0031】
11、Y12及びY13がメチンの場合、メチンの水素原子は置換基で置き換わってもよい。メチンが有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子及びシアノ基を好ましい例として挙げることができる。これらの置換基の中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子及びシアノ基が更に好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12アルコキシカルボニル基、炭素数2〜12アシルオキシ基、ハロゲン原子及びシアノ基がより好ましい。
11、Y12及びY13は、化合物の合成の容易さ及びコストの点において、いずれもメチンであることがより好ましく、メチンは無置換であることが更に好ましい。
【0032】
、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表す。
、L及びLが二価の連結基の場合、それぞれ独立に、−O−,−S−、−C(=O)−、−NR−、−CH=CH−、−C≡C−、二価の環状基及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記Rは炭素原子数1〜7のアルキル基又は水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基又は水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基又は水素原子であることが更に好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0033】
、L及びLにおける二価の環状基とは、少なくとも1種類の環状構造を有する二価の連結基(以下、環状基と呼ぶことがある)である。環状基は5員環、6員環、又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることが更に好ましく、6員環であることが最も好ましい。環状基に含まれる環は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、及び複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環及びナフタレン環が好ましい例として挙げられる。脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。複素環としては、ピリジン環及びピリミジン環が好ましい例として挙げられる。環状基は、芳香族環及び複素環がより好ましい。なお、本発明における2価の環状基は、環状構造のみ(但し、置換基を含む)からなる2価の連結基であることがより好ましい(以下、同じ)。
【0034】
、L及びLで表される二価の環状基のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイル基及びナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。
【0035】
、L及びLで表される二価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、塩素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数が2〜16アルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基及び炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
【0036】
、L及びLとしては、単結合、*−O−CO−、*−CO−O−、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−二価の環状基−、*−O−CO−二価の環状基−、*−CO−O−二価の環状基−、*−CH=CH−二価の環状基−、*−C≡C−二価の環状基−、*−二価の環状基−O−CO−、*−二価の環状基−CO−O−、*−二価の環状基−CH=CH−及び*−二価の環状基−C≡C−が好ましい。特に、単結合、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−CH=CH−二価の環状基−及び*−C≡C−二価の環状基−が好ましく、単結合が最も好ましい。ここで、*は一般式(I)中のY11、Y12及びY13を含む6員環側に結合する位置を表す。
【0037】
一般式(I)中、H、H及びHは、それぞれ独立に一般式(I−A)又は(I−B)の基を表す。
【0038】
【化2】

【0039】
一般式(I−A)中、YA及びYAは、それぞれ独立に置換基を有してもよいメチン又は窒素原子を表し;XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(I)におけるL〜L側と結合する位置を表し;**は上記一般式(I)におけるR〜R側と結合する位置を表す。
【0040】
【化3】

【0041】
一般式(I−B)中、YB及びYBは、それぞれ独立に置換基を有してもよいメチン又は窒素原子を表し;XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(I)におけるL〜L側と結合する位置を表し;**は上記一般式(I)におけるR〜R側と結合する位置を表す。
【0042】
一般式(I)中、R、R及びRは、それぞれ独立に下記一般式(I−R)を表す。
【0043】
一般式(I−R)
*−(−L21−Qn1−L22−L23−Q
一般式(I−R)中、*は、一般式(I)におけるH〜H側と結合する位置を表す。
21は単結合又は二価の連結基を表す。L21が二価の連結基の場合、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR−、−CH=CH−及び−C≡C−並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記Rは炭素原子数1〜7のアルキル基又は水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基又は水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基又は水素原子であることが更に好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0044】
21は単結合、***−O−CO−、***−CO−O−、***−CH=CH−及び***−C≡C−(ここで、***は一般式(DI−R)中の*側を表す)のいずれかが好ましく、単結合がより好ましい。
【0045】
は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す。このような環状基としては、5員環、6員環、又は7員環を有する環状基が好ましく、5員環又は6員環を有する環状基がより好ましく、6員環を有する環状基が更に好ましい。上記環状基に含まれる環状構造は、縮合環であっても良い。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、及び複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環が好ましい例として挙げられる。脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。複素環としては、ピリジン環及びピリミジン環が好ましい例として挙げられる。
【0046】
上記Qのうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−1,6−ジイル基、ナフタレン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイルナフタレン−2,7−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。これらの中でも、特に、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基及び1,4−シクロへキシレン基が好ましい。
【0047】
のうち、5員環を有する環状基としては、1,2,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル基、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル基、1,2,4−チアジアゾール−2,5−ジイル基、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル基が好ましい。
【0048】
は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基及び炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基が更に好ましい。
【0049】
n1は、0〜4の整数を表す。n1としては、1〜3の整数が好ましく、1若しくは2が更に好ましい。
【0050】
22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−N(R101)−、**−SO−、**−CH−、**−CH=CH−又は**−C≡C−を表し、R101は、炭素数1〜5のアルキル基を表し、**はQ側と結合する位置を表す。
22は、好ましくは、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−CH−、**−CH=CH−、**−C≡C−であり、より好ましくは、**−O−、**−O−CO−、**−O−CO−O−、**−CH−である。L22が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基及び炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0051】
23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO−、−NH−、−CH−、−CH=CH−及び−C≡C−並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。ここで、−NH−、−CH−、−CH=CH−の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基及び炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。これらの置換基に置換されることにより、本発明の液晶性化合物から液晶性組成物を調製する際に、使用する溶媒に対する溶解性を向上させることができる。
【0052】
23は、−O−、−C(=O)−、−CH−、−CH=CH−及び−C≡C−並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましい。L23は、炭素原子を1〜20個含有することが好ましく、炭素原子を2〜14個を含有することがより好ましい。更に、L23は、−CH−を1〜16個含有することが好ましく、−CH−を2〜12個含有することが更に好ましい。
【0053】
は重合性基又は水素原子を表す。本発明の液晶性化合物を光学補償フィルムのような位相差の大きさが熱により変化しないものが好ましい光学フィルム等に用いる場合には、Qは重合性基であることが好ましい。重合性基は、付加重合性基(開環重合性基を含む)又は縮合重合性基であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0054】
【化4】

【0055】
更に、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基又は開環重合性基が好ましい。
【0056】
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0057】
【化5】



【0058】
式(M−3)、(M−4)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、水素原子又はメチル基が好ましい。
上記式(M−1)〜(M−6)の中、(M−1)又は(M−2)が好ましく、(M−1)がより好ましい。
【0059】
開環重合性基は、環状エーテル基が好ましく、エポキシ基又はオキセタニル基がより好ましい。
【0060】
前記一般式(I)の化合物の中でも、下記一般式(I’)で表される化合物がより好ましい。
【0061】
【化6】

【0062】
一般式(I’)中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立に置換基を有してもよいメチン又は窒素原子を表し、置換基を有してもよいメチンが好ましく、メチンは無置換であるのが好ましい。
【0063】
11、R12及びR13は、それぞれ独立に下記一般式(I’−A)、下記一般式(I’−B)又は下記一般式(I’−C)を表す。固有複屈折の波長分散性を小さくしようとする場合、一般式(I’−A)又は一般式(I’−C)が好ましく、一般式(I’−A)がより好ましい。R11、R12及びR13は、R11=R12=R13であることが好ましい。
【0064】
【化7】

【0065】
一般式(I’−A)中、A11、A12、A13、A14、A15及びA16は、それぞれ独立に置換基を有してもよいメチン又は窒素原子を表す。
11及びA12は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
13、A14、A15及びA16は、それらのうち、少なくとも3つが置換基を有してもよいメチンであることが好ましく、全て置換基を有してもよいメチンであることがより好ましい。更に、メチンは無置換であることが好ましい。
11、A12、A13、A14、A15又はA16が置換基を有してもよいメチンの場合の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基及び炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基が更に好ましい。
は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0066】
【化8】

【0067】
一般式(I’−B)中、A21、A22、A23、A24、A25及びA26は、それぞれ独立に置換基を有してもよいメチン又は窒素原子を表す。
21及びA22は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
23、A24、A25及びA26は、それらのうち、少なくとも3つが置換基を有してもよいメチンであることが好ましく、すべて置換基を有してもよいメチンであることがより好ましい。更に、該メチンは無置換であることが好ましい。
21、A22、A23、A24、A25又はA26が置換基を有してもよいメチンの場合の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基及び炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基が更に好ましい。
は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0068】
【化9】

【0069】
一般式(I’−C)中、A31、A32、A33、A34、A35及びA36は、それぞれ独立に置換基を有してもよいメチン又は窒素原子を表す。
31及びA32は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
33、A34、A35及びA36は、少なくとも3つが置換基を有してもよいメチンであることが好ましく、すべて置換基を有してもよいメチンであることがより好ましい。更に、該メチンは無置換であることが好ましい。
31、A32、A33、A34、A35又はA36がメチンの場合、メチンは置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基及び炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基が更に好ましい。
は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0070】
一般式(I’−A)中のL11、一般式(I’−B)中のL21、一般式(I’−C)中のL31はそれぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO−、−CH−、−CH=CH−又は−C≡C−を表す。好ましくは、−O−、−C(=O)−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CH−、−CH=CH−、−C≡C−であり、より好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−C≡C−である。特に、小さい固有複屈折の波長分散性が期待できる、一般式(I’−A)中のL11は、−O−、−CO−O−、−C≡C−が特に好ましく、この中でも−CO−O−が、より高温でディスコティックネマチック相を発現できるため、好ましい。上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基及び炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0071】
一般式(I’−A)中のL12、一般式(I’−B)中のL22、一般式(I’−C)中のL32はそれぞれ独立して、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO−、−NH−、−CH−、−CH=CH−及び−C≡C−並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。ここで、−NH−、−CH−、−CH=CH−の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、カルボキシル基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基及び炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、特にハロゲン原子、メチル基、エチル基が好ましい。
【0072】
12、L22、L32はそれぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−CH−、−CH=CH−及び−C≡C−並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましい。
【0073】
12、L22、L32はそれぞれ独立して、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数2〜14であることがより好ましい。炭素数2〜14が好ましく、−CH−を1〜16個有することがより好ましく、−CH−を2〜12個有することが更に好ましい。
【0074】
12、L22、L32を構成する炭素数は、液晶の相転移温度と化合物の溶媒への溶解性に影響を及ぼす。一般的に炭素数は多くなるほど、ディスコティックネマチック相(N相)から等方性液体への転移温度が低下する傾向にある。また、溶媒への溶解性は、一般的に炭素数は多くなるほど向上する傾向にある。
【0075】
一般式(I’−A)中のQ11、一般式(I’−B)中のQ21、一般式(I’−C)中のQ31はそれぞれ独立して重合性基又は水素原子を表す。また、Q11、Q21、Q31は重合性基であることが好ましい。重合性基は、付加重合性基(開環重合性基を含む)又は縮合重合性基であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例については、上記と同様であり、好ましい例も上記と同様である。
【0076】
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例としては、特開2009−97002号公報[0038]〜[0069]記載の化合物や、以下の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
【化10】

【0078】
【化11】

【0079】
【化12】

【0080】
【化13】

【0081】
【化14】

【0082】
【化15】

【0083】
【化16】

【0084】
【化17】

【0085】
【化18】

【0086】
【化19】

【0087】
【化20】

【0088】
【化21】

【0089】
【化22】

【0090】
【化23】

【0091】
【化24】

【0092】
【化25】

【0093】
【化26】

【0094】
トリフェニレン化合物で、波長分散の小さいディスコティック液晶性化合物としては、特開2007−108732号公報の段落[0062]〜[0067]記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
[棒状液晶性化合物]
本発明では、前記λ/4板が有する光学異方性層の形成に、円盤状液晶化合物のほかに棒状液晶性化合物を用いてもよい。棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。棒状液晶性化合物を重合によって配向を固定することがより好ましい。液晶性化合物には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。その部分構造の個数は好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物を用いることができる。
光学異方性層形成用組成物中における液晶性化合物の含有量の好ましい範囲は、組成物の全固形分に対して(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物に対して)、50質量%以上であることが好ましく、60〜99.8質量%であることがより好ましく、70〜99.5質量%であることが更に好ましい。
【0096】
[垂直配向促進剤]
前記光学異方性層を形成する際に、液晶性化合物の分子を均一に垂直配向させるためには、配向膜界面側及び空気界面側において液晶性化合物を垂直に配向制御可能な配向制御剤を用いるのが好ましい。この目的のために、配向膜に、排除体積効果、静電気的効果又は表面エネルギー効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物を、液晶性化合物とともに含有する組成物を用いて光学異方性層を形成するのが好ましい。また、空気界面側の配向制御に関しては液晶性化合物の配向時に空気界面に偏在し、その排除体積効果、静電気的効果、又は表面エネルギー効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物を、液晶性化合物とともに含有する組成物を用いて光学異方性層を形成するのが好ましい。このような配向膜界面側で液晶性化合物の分子を垂直に配向させるのを促進する化合物(配向膜界面側垂直配向剤)としては、ピリジニウム誘導体が好適に用いられる。空気界面側で液晶性化合物の分子を垂直に配向させるのを促進する化合物(空気界面側垂直配向剤)としては、該化合物が空気界面側に偏在するのを促進する、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含む化合物が好適に用いられる。また、これらの化合物を配合することによって、例えば、液晶性組成物を塗布液として調製した場合に、該塗布液の塗布性が改善され、ムラ、ハジキの発生が抑制される。以下に垂直配向剤に関して詳細に説明する。
【0097】
[配向膜界面側垂直配向剤]
本発明に使用可能な配向膜界面側垂直配向剤としては、下記式(II)で表されるピリジニウム誘導体(ピリジニウム塩)が好適に用いられる。該ピリジニウム誘導体の少なくとも1種を前記液晶性組成物に添加することによって、ディスコティック液晶性化合物の分子を配向膜近傍で実質的に垂直に配向させることができる。
【0098】
【化27】

【0099】
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基を表す。
23は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−又は−O−CO−AL−CO−O−であるのが好ましく、ALは、炭素原子数が1〜10のアルキレン基である。L23は、単結合、−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−又は−O−CO−AL−CO−O−が好ましく、単結合又は−O−が更に好ましく、−O−が最も好ましい。
【0100】
24は、Lは、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−又は−N=N−であるのが好ましく、−O−CO−又は−CO−O−がより好ましい。mが2以上のとき、複数のL24が交互に、−O−CO−及び−CO−O−であるのが更に好ましい。
【0101】
22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜25の置換アミノ基である。
22が、ジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環又は6員環が好ましい。R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が2〜12のジアルキル置換アミノ基であるのが更に好ましく、水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が2〜8のジアルキル置換アミノ基であるのがより更に好ましい。R22が無置換アミノ基及び置換アミノ基である場合、ピリジニウム環の4位が置換されていることが好ましい。
【0102】
Xはアニオンである。
Xは、一価のアニオンであることが好ましい。アニオンの例には、アニオンの例には、ハロゲン陰イオン(例え、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなど)、スルホネートイオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオンなど)、硫酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロほう酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、ギ酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、リン酸イオン(例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン)、水酸イオンなどが挙げられる。Xは、好ましくは、ハロゲン陰イオン、スルホネートイオン、水酸イオンである。
【0103】
22及びY23はそれぞれ、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。
前記5又は6員環が置換基を有していてもよい。好ましくは、Y22及びY23のうち少なくとも1つは、置換基を有する5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。Y22及びY23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環を部分構造として有する2価の連結基であるのが好ましい。6員環は、脂肪族環、芳香族環(ベンゼン環)及び複素環を含む。6員脂肪族環の例は、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環及びシクロヘキサジエン環を含む。6員複素環の例は、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環及びトリアジン環を含む。6員環に、他の6員環又は5員環が縮合していてもよい。
置換基の例は、ハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1〜12のアルキル基及び炭素原子数が1〜12のアルコキシ基を含む。アルキル基及びアルコキシ基は、炭素原子数が2〜12のアシル基又は炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。置換基は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、更に好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。置換基は2以上であってもよく、例えば、Y22及びY23がフェニレン基である場合は、1〜4の炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、更に好ましくは1〜3)のアルキル基で置換されていてもよい。
【0104】
なお、mは1又は2であり、2であるのが好ましい。mが2のとき、複数のY23及びL24は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0105】
21は、ハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜25のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜25のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜25のアルキル基、炭素原子数が2〜25のアルキニル基、炭素原子数が1〜25のアルコキシ基、炭素原子数が1〜25のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基及び炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基である。
mが2の場合、Z21は、シアノ、炭素原子数が1〜25のアルキル基又は炭素原子数が1〜25のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数4〜20のアルコキシ基であるのが更に好ましい。
mが1の場合、Z21は、炭素原子数が7〜25のアルキル基、炭素原子数が7〜25のアルコキシ基、炭素原子数が7〜25のアシル置換アルキル基、炭素原子数が7〜25のアシル置換アルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルキル基又は炭素原子数が7〜25のアシルオキシ置換アルコキシ基であることが好ましい。
【0106】
アシル基は−CO−R、アシルオキシ基は−O−CO−Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)又は芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基又はアルケニル基であることが更に好ましい。
【0107】
pは、1〜10の整数である。pは、1又は2であることが特に好ましい。C2pは、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を意味する。C2pは、直鎖状アルキレン基(−(CH−)であることが好ましい。
【0108】
前記式(II)で表される化合物の中でも、下記式(II’)で表される化合物が好ましい。
【化28】

【0109】
式(II’)中、式(II)と同一の符号は同一の意義であり、好ましい範囲も同様である。L25はL24と同義であり、好ましい範囲も同様である。L24及びL25は、−O−CO−又は−CO−O−であるのが好ましく、L24が−O−CO−で、かつL25が−CO−O−であるのが好ましい。
【0110】
23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、更に好ましくは1〜3)のアルキル基である。n23は0〜4、n24は1〜4、及びn25は0〜4を表す。n23及びn25が0で、n24が1〜4(より好ましくは1〜3)であるのが好ましい。
【0111】
一般式(II)で表される化合物の具体例としては、特開2006−113500号公報明細書中[0058]〜[0061]に記載の化合物が挙げられる。
【0112】
その他にも一般式(II)で表される化合物の具体例としては下記化合物が挙げられる。但し、下記式中、アニオン(X)は省略した。
【0113】
【化29】

【0114】
【化30】

【0115】
以下に、一般式(II’)で表される化合物の具体例を示す。但し、下記式中、アニオン(X)は省略した。
【0116】
【化31】

【0117】
【化32】

【0118】
【化33】

【0119】
【化34】

【0120】
式(II)のピリジニウム誘導体は、一般にピリジン環をアルキル化(メンシュトキン反応)して得られる。
【0121】
前記光学異方性層形成用の組成物中における前記ピリジニウム誘導体の含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、前記組成物(塗布液として調製した場合は溶媒を除いた液晶性組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
【0122】
[空気界面側垂直配向剤]
本発明における空気界面側垂直配向剤としては、下記フッ素系ポリマー(II)又は一般式(III)で表される含フッ素化合物が好適に用いられる。
【0123】
フッ素系ポリマーが、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される繰り返し単位と下記式(IIA)で表される繰り返し単位とを含む共重合体。
一般式(IIA)
【0124】
【化35】

【0125】
上記式(II)において、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Qはカルボキシル基(−COOH)又はその塩、スルホ基(−SOH)又はその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}又はその塩を表す。Lは下記の連結基群から選ばれる任意の基、又はそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR−(Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、−S−、−SO−、−P(=O)(OR)−(Rはアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、アルキレン基及びアリーレン基。
【0126】
下記式(III)で表される含フッ素化合物。
(III) (R−L−(W)
式中、Rはアルキル基、末端にCF基を有するアルキル基、又は末端にCFH基を有するアルキル基を表し、mは1以上の整数を表す。複数個のRは同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF基又はCFH基を有するアルキル基を表す。Lは(m+n)価の連結基を表し、Wはカルボキシル基(−COOH)若しくはその塩、スルホ基(−SOH)若しくはその塩、又はホスホノキシ{−OP(=O)(OH)}若しくはその塩を表し、nは1以上の整数を表す。
【0127】
まず、フッ素系ポリマーについて説明する。
本発明に使用可能なフッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含有することを特徴とする。ポリマーの種類としては、「改訂 高分子合成の化学」(大津隆行著、発行:株式会社化学同人、1968)1〜4ページに記載があり、例えば、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリスルホン類、ポリカーボナート類、ポリエーテル類、ポリアセタール類、ポリケトン類、ポリフェニレンオキシド類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリアリレート類、PTFE類、ポリビニリデンフロライド類、セルロース誘導体などが挙げられる。前記フッ素系ポリマーは、ポリオレフィン類であることが好ましい。
【0128】
前記フッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基を側鎖に有するポリマーである。前記フルオロ脂肪族基は、炭素数1〜12であるのが好ましく、6〜10であるのがより好ましい。脂肪族基は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状である場合は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。中でも、直鎖状の炭素数6〜10のフルオロ脂肪族基が好ましい。フッ素原子による置換の程度については特に制限はないが、脂肪族基中の50%以上の水素原子がフッ素原子に置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましい。フルオロ脂肪族基は、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合、チオエーテル結合、芳香族環などを介してポリマー主鎖と結合した側鎖に含まれる。フルオロ脂肪族基の一つは、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれるものである。これらのフルオロ脂肪族化合物の製造法に関しては、例えば、「フッ素化合物の合成と機能」(監修:石川延男、発行:株式会社シーエムシー、1987)の117〜118ページや、「Chemistry of Organic Fluorine Compounds II」(Monograph 187,Ed by Milos Hudlicky and Attila E.Pavlath,American Chemical Society 1995)の747−752ページに記載されている。テロメリゼーション法とは、ヨウ化物等の連鎖移動常数の大きいアルキルハライドをテローゲンとして、テトラフルオロエチレン等のフッ素含有ビニル化合物のラジカル重合を行い、テロマーを合成する方法である(Scheme−1に例を示した)。
【0129】
【化36】

【0130】
得られた、末端ヨウ素化テロマーは通常、例えば[Scheme2]のごとき適切な末端化学修飾を施され、フルオロ脂肪族化合物へと導かれる。これらの化合物は必要に応じ、更に所望のモノマー構造へと変換され、フルオロ脂肪族基含有ポリマーの製造に使用される。
【0131】
【化37】

【0132】
本発明に使用可能なフッ素系ポリマーの製造に利用可能なモノマーの具体例としては、特開2006−113500公報の段落[0075]〜[0081]に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はそれら具体例によってなんら制限されるものではない。
【0133】
一般式(IIA)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は下記に例示した置換基群から選ばれる置換基を表す。
(置換基群)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリール基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基であり、例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基などが挙げられる)、置換若しくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
【0134】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは2〜10のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
【0135】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基は更にこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0136】
、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、又は後述する−L−Qで表される基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、塩素原子、−L−Qで表される基であることがより好ましく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましく、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基であることが最も好ましい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。該アルキル基は、適当な置換基を有していても良い。該置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、スルホリル基、カルボキシル基などが挙げられる。なお、アルキル基の炭素数は、置換基の炭素原子を含まない。以下、他の基の炭素数についても同様である。
【0137】
Lは、上記連結基群から選ばれる2価の連結基、又はそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。上記連結基群中、−NR−のRは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、好ましくは水素原子又はアルキル基である。また、−PO(OR)−のRはアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、好ましくはアルキル基である。R及びRがアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す場合の炭素数は「置換基群」で説明したものと同じである。Lとしては、単結合、−O−、−CO−、−NR−、−S−、−SO−、アルキレン基又はアリーレン基を含むことが好ましく、−CO−、−O−、−NR−、アルキレン基又はアリーレン基を含んでいることが特に好ましい。Lがアルキレン基を含む場合、アルキレン基の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6である。特に好ましいアルキレン基の具体例として、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラブチレン、ヘキサメチレン基等が挙げられる。Lが、アリーレン基を含む場合、アリーレン基の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12である。特に好ましいアリーレン基の具体例として、フェニレン、ナフタレン基等が挙げられる。Lが、アルキレン基とアリーレン基を組み合わせて得られる2価の連結基(即ちアラルキレン基)を含む場合、アラルキレン基の炭素数は、好ましくは7〜34、より好ましくは7〜26、特に好ましくは7〜16である。特に好ましいアラルキレン基の具体例として、フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、メチレンフェニレン基等が挙げられる。Lとして挙げられた基は、適当な置換基を有していてもよい。このような置換基としては先にR〜Rにおける置換基として挙げた置換基と同様なものを挙げることができる。
以下にLの具体的構造としては、特開2006−113500公報の段落[0090]〜[0091]に記載の構造等が挙げられるが、本発明はそれら具体例によってなんら制限されるものではない。
【0138】
前記一般式(IIA)中、Qはカルボキシル基、カルボキシル基の塩(例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩(例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、ジメチルフェニルアンモニウムなど)、ピリジニウム塩など)、スルホ基、スルホ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)、ホスホノキシ基、ホスホノキシ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)を表す。より好ましくはカルボキシル基、スルホ基、ホスホ基であり、特に好ましいのはカルボキシル基又はスルホ基である。
【0139】
前記フッ素系ポリマーは、前記一般式(IIA)で表される繰り返し単位を1種含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。また、前記フッ素系ポリマーは、上記各繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を1種又は2種以上有していてもよい。前記他の繰り返し単位については特に制限されず、通常のラジカル重合反応可能なモノマーから誘導される繰り返し単位が好ましい例として挙げられる。以下、他の繰り返し単位を誘導するモノマーの具体例を挙げる。前記フッ素系ポリマーは、下記モノマー群から選ばれる1種又は2種以上のモノマーから誘導される繰り返し単位を含有していてもよい。
【0140】
モノマー群
(1)アルケン類
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど;
(2)ジエン類
1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−n−プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、1−クロロブタジエン、2−フルオロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロロ−1,3−ブタジエン及び2−シアノ−1,3−ブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサンなど;
【0141】
(3)α,β−不飽和カルボン酸の誘導体
(3a)アルキルアクリレート類
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなど);
【0142】
(3b)アルキルメタクリレート類
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アリルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど;
【0143】
(3c)不飽和多価カルボン酸のジエステル類
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、タコン酸ジブチル、クロトン酸ジブチル、クロトン酸ジヘキシル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチルなど;
【0144】
(3d)α、β−不飽和カルボン酸のアミド類
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチルマレイミドなど;
【0145】
(4)不飽和ニトリル類
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;
(5)スチレン及びその誘導体
スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、p−tertブチルスチレン、p−ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アセトキシスチレンなど;
(6)ビニルエステル類
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、メトキシ酢酸ビニル、フェニル酢酸ビニルなど;
【0146】
(7)ビニルエーテル類
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−エイコシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロブチルビニルエーテル、フルオロブトキシエチルビニルエーテルなど;及び
(8)その他の重合性単量体
N−ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリンなど。
【0147】
前記フッ素系ポリマー中、フルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該ポリマーの構成モノマー総量の5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのがより好ましく、30質量%以上であるのが更に好ましい。前記フッ素系ポリマーにおいて、前記一般式(IIA)で表される繰り返し単位の量は、該フッ素ポリマーの構成モノマー総量の0.5質量%以上であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましく、1〜10質量%であるのが更に好ましい。上記の質量百分率は使用するモノマーの分子量により好ましい範囲の数値が変動し易いため、ポリマーの単位質量当たりの官能基モル数で表す方が、一般式(IIA)で表される繰り返し単位の含有量を正確に規定できる。該表記を用いた場合、前記フッ素系ポリマー中に含有される親水性基(一般式(IIA)中のQ)の好ましい量は、0.1mmol/g〜10mmol/gであり、より好ましい量は0.2mmol/g〜8mmol/gである。
【0148】
本発明に用いる前記フッ素系ポリマーの質量平均分子量は1,000,000以下であるのが好ましく、500,000以下であるのがより好ましく、100,000以下であるのが更に好ましい。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定可能である。
【0149】
前記フッ素系ポリマーの重合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、あるいは、アニオン重合等の重合方法を採ることができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用できる点で特に好ましい。ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤や、ラジカル光重合開始剤等の公知の化合物を使用することができるが、特に、ラジカル熱重合開始剤を使用することが好ましい。ここで、ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ケトンパーオキサイド(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド(過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシエステル類(tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)、過硫酸塩類(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0150】
ラジカル重合方法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法等を採ることが可能である。典型的なラジカル重合方法である溶液重合について更に具体的に説明する。他の重合方法についても概要は同等であり、その詳細は例えば「高分子科学実験法」高分子学会編(東京化学同人、1981年)等に記載されている。
【0151】
溶液重合を行うためには有機溶媒を使用する。これらの有機溶媒は本発明の目的、効果を損なわない範囲で任意に選択可能である。これらの有機溶媒は通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物であり、各構成成分を均一に溶解させる有機化合物が好ましい。好ましい有機溶媒の例を示すと、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることが可能である。更に、モノマーや生成するポリマーの溶解性の観点から上記有機溶媒に水を併用した水混合有機溶媒も適用可能である。
【0152】
また、溶液重合条件も特に制限されるものではないが、例えば、50〜200℃の温度範囲内で、10分〜30時間加熱することが好ましい。更に、発生したラジカルが失活しないように、溶液重合中はもちろんのこと、溶液重合開始前にも、不活性ガスパージを行うことが好ましい。不活性ガスとしては通常窒素ガスが好適に用いられる。
【0153】
前記フッ素系ポリマーを好ましい分子量範囲で得るためには、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法が特に有効である。連鎖移動剤としてはメルカプタン類(例えば、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノール、p−ノニルチオフェノール等)、ポリハロゲン化アルキル(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1−トリブロモオクタンなど)、低活性モノマー類(α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等)のいずれも用いることができるが、好ましくは炭素数4〜16のメルカプタン類である。これらの連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤の活性やモノマーの組み合わせ、重合条件などにより著しく影響され精密な制御が必要であるが、通常は使用するモノマーの全モル数に対して0.01モル%〜50モル%程度であり、好ましくは0.05モル%〜30モル%、特に好ましくは0.08モル%〜25モル%である。これらの連鎖移動剤は、重合過程において重合度を制御するべき対象のモノマーと同時に系内に存在させればよく、その添加方法については特に問わない。モノマーに溶解して添加してもよいし、モノマーと別途に添加することも可能である。
【0154】
なお、本発明のフッ素系ポリマーは、ディスコティック液晶性化合物の配向状態を固定化するために置換基として重合性基を有するものも好ましい。
【0155】
フッ素系ポリマーとして本発明に好ましく用いられるフルオロ脂肪族基含有共重合体の具体例として、特開2006−113500公報の段落[0110]〜[0114]に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はそれら具体例によってなんら制限されるものではない。
【0156】
本発明に用いられるフッ素系ポリマーは、公知慣用の方法で製造することができる。例えば先にあげたフルオロ脂肪族基を有するモノマー、水素結合性基を有するモノマー等を含む有機溶媒中に、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。また、場合によりその他の付加重合性不飽和化合物を、更に添加して上記と同じ方法にて製造することができる。各モノマーの重合性に応じ、反応容器にモノマーと開始剤を滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成のポリマーを得るために有効である。
【0157】
組成物中における前記フッ素系ポリマーの含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、光学異方性層の形成に用いる場合は、組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜3質量%であるのが更に好ましい。前記フッ素系ポリマーの添加量が0.005質量%未満では効果が不十分であり、また8質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、光学フィルムとしての性能(例えばレターデーションの均一性等)に悪影響を及ぼす。
【0158】
次に、式(III)で表される含フッ素化合物について説明する。 式(III)中、Rは含フッ素化合物の疎水性基として機能する。Rで表されるアルキル基は置換若しくは無置換のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、更に好ましくは4〜16のアルキル基であり、特に好ましくは6〜16のアルキル基である。該置換基としては後述の置換基群Dとして例示した置換基のいずれかを適用できる。Rで表される末端にCF基を有するアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20であり、更に好ましくは4〜16であり、特に好ましくは4〜8である。前記末端にCF基を有するアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。アルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましく、70%以上を置換されているのが特に好ましい。残りの水素原子は、更に後述の置換基群Dとして例示された置換基によって置換されていてもよい。Rで表される末端にCFH基を有するアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20であり、更に好ましくは4〜16であり、特に好ましくは4〜8である。前記末端にCFH基を有するアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。アルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましく、70%以上を置換されているのが特に好ましい。残りの水素原子は、更に後述の置換基群Dとして例示された置換基によって置換されていてもよい。Rで表される末端にCF基を有するアルキル基、又は末端にCFH基を有するアルキル基の例を以下に示す。
【0159】
R1:n−C17
R2:n−C13
R3:n−C
R4:n−C17−(CH
R5:n−C13−(CH
R6:n−C−(CH
R7:H−(CF
R8:H−(CF
R9:H−(CF
R10:H−(CF−(CH)−
R11:H−(CF−(CH)−
R12:H−(CF−(CH)−
【0160】
式(III)において、Lで表される(m+n)価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、芳香族基、ヘテロ環基、−CO−、−NR−(Rは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO−からなる群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた連結基であることが好ましい。
【0161】
式(III)において、Wはカルボキシル基(−COOH)若しくはその塩、スルホ基(−SOH)若しくはその塩、又はホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}若しくはその塩を表す。Wの好ましい範囲は、一般式(IIA)におけるQと同一である。
【0162】
前記式(III)で表される含フッ素化合物の中でも、下記式(III)−a又は式(III)−bで表される化合物が好ましい。
【0163】
【化39】

【0164】
式(III)−a中、R及びRは各々アルキル基、末端にCF基を有するアルキル基、又は末端にCFH基を有するアルキル基を表すが、R及びRが同時にアルキル基であることはない。W及びWは各々水素原子、カルボキシル基(−COOH)若しくはその塩、スルホ基(−SOH)若しくはその塩、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)}若しくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基を表すが、W及びWが同時に水素原子であることはない。
【0165】
式(III)−b
(R−L−)m2(Ar)−W
【0166】
式(III)−b中、Rはアルキル基、末端にCF基を有するアルキル基、又は末端にCFH基を有するアルキル基を表し、m2は1以上の整数を表し、複数個のRは同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF基又はCFH基を有するアルキル基を表す。Lは、アルキレン基、芳香族基、−CO−、−NR−(Rは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、複数個のLは同一でも異なっていてもよい。Arは芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環を表し、Wはカルボキシル基(−COOH)若しくはその塩、スルホ基(−SOH)若しくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}若しくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基を表す。
【0167】
まず、前記式(III)−aについて説明する。
及びRは前記式(III)におけるRと同義であり,その好ましい範囲も同一である。W及びWで表されるカルボキシル基(−COOH)若しくはその塩、スルホ基(−SOH)若しくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}若しくはその塩は前記式(III)におけるWと同義でありその好ましい範囲も同一である。W及びWで表される置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、更に好ましくは1〜8のアルキル基であり、特に好ましくは1〜3のアルキル基である。前記置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基は、少なくとも一つのカルボキシル基、スルホ基、又はホスホノキシ基を有していればよく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基としては、前記式(III)中のWが表すカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基と同義であり好ましい範囲も同一である。前記置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基は、これ以外の置換基によって置換されていてもよく、該置換基としては後述の置換基群Dとして例示した置換基のいずれかを適用できる。W及びWで表される置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルコキシ基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、更に好ましくは1〜8のアルコキシ基であり、特に好ましくは1〜4のアルコキシ基である。前記置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルコキシ基は、少なくとも一つのカルボキシル基、スルホ基、又はホスホノキシ基を有していればよく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基としては、前記式(III)中のWが表すカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基と同義であり好ましい範囲も同一である。前記カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルコキシ基は、これ以外の置換基によって置換されていてもよく、該置換基としては後述の置換基群Dとして例示した置換基のいずれかを適用できる。W及びWで表される置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキルアミノ基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルキルアミノ基であり、更に好ましくは1〜8のアルキルアミノ基であり、特に好ましくは1〜4のアルキルアミノ基である。前記カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキルアミノ基は、少なくとも一つのカルボキシル基、スルホ基、又はホスホノキシ基を有していればよく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基としては、前記式(III)中のWが表すカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基と同義であり好ましい範囲も同一である。前記カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキルアミノ基は、これ以外の置換基によって置換されていてもよく、該置換基としては後述の置換基群Dとして例示した置換基のいずれかを適用できる。
【0168】
及びWは、特に好ましくはそれぞれ水素原子又は(CHSOM(nは0又は1を表す。)である。Mはカチオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合はMはなくてもよい。Mで表されるカチオンとしては、例えばプロトニウムイオン、アルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオンなど)、アンモニウムイオンなどが好ましく適用される。このうち、特に好ましくはプロトニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである。
【0169】
次に、前記式(III)−bについて説明する。
は前記式(III)におけるRと同義であり,その好ましい範囲も同一である。Lは、好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12の芳香族基、−CO−、−NR−、−O−、−S−、−SO−、−SO−及びそれらの組み合わせからなる総炭素数0〜40の連結基を表し(Rは水素原子又は置換基)、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキレン基、フェニル基、−CO−、−NR−、−O−、−S−、−SO−及びそれらの組み合わせからなる総炭素数0〜20の連結基を表す。Arは、好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環を表し、特に好ましくはベンゼン環又はナフタレン環を表す。Wで表されるカルボキシル基(−COOH)若しくはその塩、スルホ基(−SOH)若しくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}若しくはその塩、または置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基、アルコキシ基、またはアルキルアミノ基は、前記式(III)−aにおけるW及びWで表されるカルボキシル基(−COOH)若しくはその塩、スルホ基(−SOH)若しくはその塩、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)}若しくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基と同義でありその好ましい範囲も同一である。
【0170】
は、好ましくはカルボキシル基(−COOH)若しくはその塩、スルホ基(−SOH)若しくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基(−COOH)若しくはその塩又はスルホ基(−SOH)若しくはその塩を有するアルキルアミノ基であり、特に好ましくはSOM、又はCOMである。Mはカチオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合はMはなくてもよい。Mで表されるカチオンとしては、例えばプロトニウムイオン、アルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオンなど)、アンモニウムイオンなどが好ましく適用される。このうち、特に好ましくはプロトニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである。
【0171】
本明細書において、置換基群Dには、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換若しくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる)、
【0172】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、
【0173】
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
【0174】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基は更にこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0175】
なお、本発明の含フッ素化合物は、ディスコティック液晶性化合物の配向状態を固定化するために置換基として重合性基を有するものも好ましい。
【0176】
本発明に使用可能な式(III)にて表される含フッ素化合物の具体例として、特開2006−113500公報の段落[0136]〜[0140]に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はそれら具体例によってなんら制限されるものではない。
【0177】
組成物中における前記含フッ素化合物の含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、光学異方性層の形成に用いる場合は、組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜3質量%であるのが更に好ましい。
【0178】
[重合性開始剤]
配向(好ましくは垂直配向)させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定する。固定化は、液晶性化合物に導入した重合性基(P)の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
【0179】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることが更に好ましい。ディスコティック液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm〜50J/cmであることが好ましく、100〜800mJ/cmであることが更に好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。位相差層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることが更に好ましく、1〜5μmであることが最も好ましい。
【0180】
[光学異方性層の他の添加剤]
上記の液晶性化合物と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶性化合物の配向性等を向上させることができる。これらの素材は液晶性化合物と相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。
【0181】
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0182】
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物、特願2003−295212号明細書中の段落番号[0069]〜[0126]記載の化合物が挙げられる。
【0183】
液晶性化合物とともに使用するポリマーは、塗布液を増粘できることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃が更に好ましい。
【0184】
[塗布溶剤]
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0185】
[塗布方法]
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。中でも、前記光学異方性層を形成する際は、ワイヤーバーコーティング法を利用して塗布するのが好ましく、ワイヤーバーの回転数は下記式を満たすことが好ましい。
0.6<(W×(R+2r)×π)/V<1.4[W:ワイヤーバーの回転数(rpm)、R:バーの芯の直径(m)、r:ワイヤーの直径(m)、V:支持体の搬送速度(m/min)](W×(R+2r)×π)/Vの範囲は、0.7〜1.3であることがより好ましく、0.8〜1.2であることが更に好ましい。
【0186】
前記光学異方性層の形成にはダイコーティング法が好ましく用いられ、特に、スライドコーター又はスロットダイコーターを利用した塗布方法が好ましい。
【0187】
[配向膜]
本発明では、配向膜の表面に前記組成物を塗布して、液晶性化合物の分子を配向させるのが好ましい。配向膜は液晶性化合物の配向方向を規定する機能を有するため、本発明の好ましい態様を実現する上で利用するのが好ましい。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光層や支持体上に転写して本発明における偏光板を作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。更に、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。
【0188】
ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが更に好ましく、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0189】
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%が更に好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は100〜5000であることが好ましい。
【0190】
前記配向膜において、架橋性官能基(例、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報明細書中段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。
【0191】
配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾール及びジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
【0192】
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%が更に好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
【0193】
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤及び添加剤を含む溶液を透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なってよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることが更に好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
【0194】
配向膜形成時に利用する塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法又はロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1乃至10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5が好ましい。
【0195】
配向膜は、透明支持体上に設けられることが好ましい。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
【0196】
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0197】
配向膜のラビング処理面に前記組成物を塗布して、液晶性化合物の分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させることで、前記光学異方性層を形成することができる。
配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
【0198】
[透明支持体]
本発明におけるλ/4板(光学フィルム)は、円盤状液晶性化合物を含有する組成物から形成された光学異方性層を支持するポリマーフィルムからなる支持体を有していてもよい。光学異方性が小さいポリマーフィルムを用いてもよいし、延伸処理などにより光学異方性を発現させたポリマーフィルムを用いてもよい。支持体は光透過率が80%以上であることが好ましい。
【0199】
支持体の波長550nmにおける面内のレターデーション(Re)は正面の円偏光性を保つ観点から0〜50nmであることが好ましく、0〜30nmであることが更に好ましく、0〜20nmであることが最も好ましい。また、該支持体の波長550nmにおける厚さ方向のレターデーション(Rth)は斜め方向の円偏光性も保つ観点から−300nm〜300nmであることが好ましく、−100nm〜200nmであることが好ましく、0nm〜130nmであることが最も好ましい。支持体の光学異方性は、その上に設けられる光学異方性層との組み合わせによって選択することが好ましく、その組み合わせによって光学フィルムのNz値を制御することができる。
【0200】
ポリマーの例には、セルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム(屈折率1.48)、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルムポリオレフィン、脂環式構造を有するポリマー(ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製))、などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、脂環式構造を有するポリマーが好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
【0201】
ポリマーフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明支持体の厚さは通常25μm〜1000μm程度のものを用いることができるが、好ましくは25μm〜250μmであり、30μm〜90μmであることがより好ましい。透明支持体とその上に設けられる層(接着層、垂直配向膜あるいは位相差層)との接着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。また、透明支持体や長尺の透明支持体には、搬送工程でのすべり性を付与したり、巻き取った後の裏面と表面の貼り付きを防止するために、平均粒径が10〜100nm程度の無機粒子を固形分重量比で5%〜40%混合したポリマー層を支持体の片側に塗布や支持体との共流延によって形成したものを用いることが好ましい。
【0202】
なお、上記では、支持体上に光学異方性層を設けた積層体構造である光学フィルムを説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではなく、光学異方性層は、勿論、延伸ポリマーフィルム単独からなっていても、液晶性化合物を含有する組成物から形成された液晶フィルムのみからなっていてもよい。前記延伸ポリマーフィルムの好ましい例は、前記光学フィルムが有する支持体の好ましい例と同様である。また、液晶フィルムの好ましい例も、前記光学フィルムが有する光学異方性層の好ましい例と同様である。
【0203】
前記光学フィルムは長尺の状態で連続的に製造されることが好ましい。更に、長手方向に対して遅相軸が平行でも直交でもない方向にあることが好ましい。すなわち、光学フィルムに含まれる光学異方性層の少なくとも一層の遅相軸と、フィルムの長辺とのなす角度は、5〜85°であることが好ましい。光学異方性層が液晶性化合物から形成される場合には、光学異方性層の遅相軸の角度はラビングの角度で調整できる。光学異方性層が延伸処理したポリマーフィルムから形成される場合は、延伸方向によって遅相軸の角度が調整できる。長尺状フィルムの長手方向に対して光学異方性層の遅相軸を平行でも直交でもない角度にすることで、後述する円偏光板又は楕円偏光板の製造において、長尺状の偏光膜とロールトゥロールによる貼り合せが可能になり、貼り合せの軸角度の精度が高く、生産性の高い円偏光板や楕円偏光板の製造が可能になる。
【0204】
(光学フィルムの層構成)
本発明における光学フィルムは、目的に応じて必要な機能層を単独又は複数層設けてもよい。好ましい態様としては、光学異方性層の上にハードコート層が積層された態様、光学異方性層の上に反射防止層が積層された態様、光学異方性層の上にハードコート層が積層され、その上に更に反射防止層が積層された態様、等が挙げられる。該反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して設計された,少なくとも一層以上の層からなる層である。
反射防止層は、最も単純な構成では、フィルムの最表面に低屈折率層のみを塗設した構成である。更に反射率を低下させるには、屈折率の高い高屈折率層と、屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて反射防止層を構成することが好ましい。構成例としては、下側から順に、高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(下層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、ハードコート層上に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に有することが好ましく、例えば、特開平8−122504号公報、特開平8−110401号公報、特開平10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載の構成が挙げられる。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層、帯電防止性のハードコート層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
【0205】
ハードコート層や反射防止層を有する本発明における光学フィルムの具体的な層構成の例を下記に示す。
・透明支持体/配向膜/光学異方性層/ハードコート層
・透明支持体/配向膜/光学異方性層/低屈折率層
・透明支持体/配向膜/光学異方性層/防眩層/低屈折率層
・透明支持体/配向膜/光学異方性層/ハードコート層/低屈折率層
・透明支持体/配向膜/光学異方性層/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
・透明支持体/配向膜/光学異方性層/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
・透明支持体/配向膜/光学異方性層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・透明支持体/配向膜/光学異方性層/ハードコート層/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
・透明支持体/配向膜/光学異方性層/ハードコート層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・透明支持体/配向膜/光学異方性層/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
・光学異方性層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
上記の各構成において、光学異方性層の上にハードコート層、防眩層、反射防止層等の機能層を直接形成することが好ましい。また、光学異方性層を含む光学フィルムと、別途、支持体上にハードコート層、防眩層、反射防止層等の層を設けた光学フィルムとを積層して製造してもよい。
図1に本発明における光学フィルムの例を5つ示したが、これらに限定されない。
【0206】
本発明における光学フィルムの好ましい態様の一つは、光学異方性層側から順に、中屈折率層、高屈折率層、及び低屈折率層が積層された反射防止層を有す。該中屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.60〜1.65であり、該中屈折率層の厚さが50.0nm〜70.0nmであり、該高屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.70〜1.74であり、該高屈折率層の厚さが90.0nm〜115.0nmであり、該低屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.33〜1.38であり、該低屈折率層の厚さが85.0nm〜95.0nmであることが好ましい。
上記構成の中でも、以下に示す構成(1)又は構成(2)が、特に好ましい。
構成(1):中屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.60〜1.64であり、中屈折率層の厚さが55.0nm〜65.0nmであり、高屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.70〜1.74であり、高屈折率層の厚さが105.0nm〜115.0nmであり、低屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.33〜1.38であり、低屈折率層の厚さが85.0nm〜95.0nmを有する低屈折率層である反射防止フィルム。
構成(2):中屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.60〜1.65であり、中屈折率層の厚さが55.0nm〜65.0nmであり、高屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.70〜1.74であり、高屈折率層の厚さが90.0nm〜100.0nmであり、低屈折率層の波長550nmにおける屈折率が1.33〜1.38であり、低屈折率層の厚さが85.0nm〜95.0nmである反射防止フィルム。
【0207】
各層の屈折率と厚みを上記範囲内とすることで反射色の変動をより小さくできる。構成(1)は反射色の変動を小さく抑えつつ、反射率を特に低くすることができる構成であり、特に好ましい。また、構成(2)は反射率の変動が構成(1)よりも更に小さく抑えられる構成であり、膜厚変動に対するロバスト性に優れるため、特に好ましい。
【0208】
そして、本発明においては、設計波長λ(=550nm:視感度が最も高い波長域の代表)に対して、上記中屈折率層が下式(I)を、上記高屈折率層が下式(II)を、上記低屈折率層が下式(III)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0209】
式(I) λ/4×0.68<n<λ/4×0.74
式(II) λ/2×0.66<n<λ/2×0.72
式(III) λ/4×0.84<n<λ/4×0.92
【0210】
(但し、式中、nは中屈折率層の屈折率であり、dは中屈折率層の層厚(nm)であり、nは高屈折率層の屈折率であり、dは高屈折率層の層厚(nm)であり、nは低屈折率層の屈折率であり、dは低屈折率層の層厚(nm)であり、n<n<nである)
【0211】
上記式(I)、式(II)、式(III)を満足する場合には、反射率が低くなり、かつ反射色の変化を抑制することができるために好ましい。また、これにより、指紋や皮脂等の油脂成分が付着した際に色味の変化が少ないために汚れが視認されにくくなるために好ましい。
【0212】
波長380nmから780nmの領域におけるCIE標準光源D65の5度入射光に対する正反射光の色味が、CIE1976L*a*b*色空間のa*、b*値がそれぞれ0≦a*≦8、かつ、−10≦b*≦0の範囲内にすること、更には上記の色味変動範囲内で、各層のうち任意の層の層厚が2.5%変動したときの色差ΔEを下記式(5)の範囲にすることで、反射色のニュートラル性が良好で、製品ごとに反射色に差がなく、かつ、指紋や皮脂等の油脂成分が表面に付着した際に汚れが目立たなくなるため好ましい。重合性不飽和基を有する含フッ素防汚剤、及び含フッ素多官能アクリレートを含有した低屈折率層と上記層構成とを組み合わせて用いることで、多層干渉膜構成にしてもマジックや指紋、皮脂等の油脂成分が付着しにくく、付着しても拭き取りやすくかつ目立たなくすることが可能となる。
【0213】
式(5):ΔE={(L*−L*’)+(a*−a*’)+(b*−b*’)1/2≦3
(L*’、a*’、b*’は設計膜厚時の反射光の色味)
【0214】
また、画像表示装置の表面に設置した場合、鏡面反射率の平均値を0.5%以下とすることにより、映り込みを著しく低減することができ、好ましい。
【0215】
鏡面反射率及び色味の測定は、分光光度計“V−550”(日本分光(株)製)にアダプター“ARV−474”を装着して、380〜780nmの波長領域において、入射角θ(θ=5〜45°、5°間隔)における出射角−θの鏡面反射率を測定し、450〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価することができる。更に、測定された反射スペクトルから、CIE標準光源D65の各入射角の入射光に対する正反射光の色味を表すCIE1976L*a*b*色間のL*値、a*値、b*値を算出し、反射光の色味を評価することができる。
【0216】
各層の屈折率の測定は、各層の塗布液を3〜5μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、多波長アッベ屈折計DR−M2(アタゴ(株)製)にて測定することができる。本明細書では、「DR−M2,M4用干渉フィルター546(e)nm 部品番号:RE−3523」のフィルターを使用して測定した屈折率を波長550nmにおける屈折率として採用した。 各層の膜厚は光の干渉を利用した反射分光膜厚計“FE−3000”(大塚電子(株)製)や、TEM(透過型電子顕微鏡)による断面観察により測定することができる。反射分光膜厚計でも膜厚と同時に屈折率の測定も可能であるが、膜厚の測定精度を上げるために、別手段で測定した各層の屈折率を用いることが望ましい。各層の屈折率が測定できない場合は、TEMによる膜厚測定が望ましい。その場合は、10箇所以上測定し、平均した値を用いることが望ましい。
【0217】
本発明における光学フィルムは、製造時の形態がフィルムをロール状に巻き取った形態をしているのが好ましい。その場合に、反射色の色味のニュートラリティーを得るためには、任意の1000m長の範囲の層厚の平均値d(平均値)、最小値d(最小値)、及び最大値d(最大値)をパラメーターとする下記式(6)で算出される層厚分布の値が、薄膜層の各層につき、5%以下であるのが好ましく、より好ましくは4%以下、更に好ましくは3%以下、より更に好ましくは2.5%以下、2%以下が特に好ましい。
【0218】
式(6):(最大値d−最小値d)×100/平均値d
【0219】
(ハードコート層)
本発明における光学フィルムには、フィルムの物理的強度を付与するために、ハードコート層を設けることができる。本発明においては、ハードコート層を設けなくてもよいが、ハードコート層を設けた方が鉛筆引掻き試験などの耐擦傷性面が強くなり、好ましい。
好ましくは、ハードコート層上に低屈折率層が設けられ、更に好ましくはハードコート層と低屈折率層の間に中屈折率層、高屈折率層が設けられ、反射防止フィルムを構成する。
ハードコート層は、二層以上の積層から構成されてもよい。
【0220】
本発明におけるハードコート層の屈折率は、反射防止性のフィルムを得るための光学設計から、屈折率が1.48〜2.00の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.48〜1.70である。本発明では、ハードコート層の上に低屈折率層が少なくとも1層あるので、屈折率がこの範囲より小さ過ぎると反射防止性が低下し、大き過ぎると反射光の色味が強くなる傾向がある。
【0221】
ハードコート層の膜厚は、フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜20μm、更に好ましくは5μm〜20μmである。
ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。更に、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0222】
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。具体的には前記(重合性不飽和基を有する多官能モノマー)で挙げた化合物を好ましく用いることができる。
【0223】
ハードコート層には、内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子を含有してもよい。
【0224】
ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、各種屈折率モノマー又は無機粒子、或いは両者を加えることができる。無機粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。本発明では、ハードコート層形成後において、前記多官能モノマー及び/又は高屈折率モノマー等が重合して生成した重合体、その中に分散された無機粒子を含んでバインダーと称する。
【0225】
(防眩層)
防眩層は、表面散乱による防眩性と、好ましくはフィルムの硬度、耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。
防眩層については特開2009−98658号公報の段落[0178]〜[0189]に記載されており、本発明においても同様である。
【0226】
[高屈折率層及び中屈折率層]
高屈折率層の屈折率は、前記のように1.70〜1.74であることが好ましく、1.71〜1.73であることがより好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整される。中屈折率層の屈折率は、1.60〜1.64であることが好ましく、1.61〜1.63であることが更に好ましい。
高屈折率層及び中屈折率層の形成方法は化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、オールウェット塗布による方法が好ましい。
【0227】
上記中屈折率層は、上記高屈折率層と屈折率を異ならせた以外は同様の材料を用いて同様に調整できるので、以下、特に高屈折率層について説明する。
上記高屈折率層は、無機微粒子、3官能以上の重合性基を有する硬化性化合物(以下、「バインダー」と称する場合もある)、溶媒及び重合開始剤を含有する塗布組成物を塗布し、溶媒を乾燥させた後、加熱、電離放射線照射あるいは両手段の併用により硬化して形成されたものであるのが好ましい。硬化性化合物や開始剤を用いる場合は、塗布後に熱及び/又は電離放射線による重合反応により硬化性化合物を硬化させることで、耐傷性や密着性に優れる中屈折率層や高屈折率層が形成できる。
【0228】
(無機微粒子)
上記無機微粒子としては、金属の酸化物を含有する無機微粒子が好ましく、Ti、Zr、In、Zn、Sn、Al及びSbから選ばれた少なくとも1種の金属の酸化物を含有する無機微粒子がより好ましい。また、層(A)に導入する導電性高分子化合物によって発現される帯電防止性を補助するために、中屈折率層及び高屈折率層のうち少なくともいずれかが、導電性の無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、屈折率の観点から、酸化ジルコニウムの微粒子が好ましい。また、導電性の観点からは、Sb、In、Snのうちの少なくとも1種類の金属の酸化物を主成分とする無機微粒子を用いることが好ましい。導電性の無機微粒子としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、リンドープ酸化錫(PTO)、アンチモン酸亜鉛(AZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化レニウム、酸化銀、酸化ニッケル及び酸化銅からなる群から少なくとも一つ選択される金属酸化物が更に好ましい。
無機微粒子の量を変化させることで所定の屈折率に調整することができる。層中の無機微粒子の平均粒径は、酸化ジルコニウムを主成分として用いた場合、1〜120nmであることが好ましく、更に好ましくは1〜60nm、2〜40nmが更に好ましい。この範囲内で、ヘイズを抑え、分散安定性、表面の適度の凹凸による上層との密着性が良好となり、好ましい。
【0229】
酸化ジルコニウムを主成分とする無機微粒子は、屈折率が1.90〜2.80であることが好ましく、2.00〜2.40であることが更に好ましく、2.00〜2.20であることが最も好ましい。
【0230】
無機微粒子の添加量は、添加する層により異なり、中屈折率層では中屈折率層全体の固形分に対し、20〜60質量%が好ましく、25〜55質量%がより好ましく、30〜50質量%が更に好ましい。高屈折率層では高屈折率層全体の固形分に対し、40〜90質量%が好ましく、50〜85質量%がより好ましく、60〜80質量%が更に好ましい。
【0231】
無機微粒子の粒子径は、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。無機微粒子の比表面積は、10〜400m/gであることが好ましく、20〜200m/gであることが更に好ましく、30〜150m/gであることが最も好ましい。
【0232】
無機微粒子は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていても良い。カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するシランカップリング剤による処理が特に有効である。無機微粒子の化学的表面処理剤、溶媒、触媒、及び分散物の安定剤は特開2006−17870号公報の[0058]〜[0083]に記載されている。
【0233】
無機微粒子の分散は、分散機を用いて分散することができる。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが含まれる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが含まれる。
無機微粒子は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好ましく、質量平均径は10〜120nmである。好ましくは20〜100nmであり、更に好ましくは30〜90nm、特に好ましくは30〜80nmである。無機微粒子を200nm以下に微細化することで透明性を損なわない高屈折率層及び中屈折率層を形成できる。
【0234】
(硬化性化合物)
硬化性化合物としては、重合性化合物が好ましく、重合性化合物としては電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーが好ましく用いられる。これらの化合物中の官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0235】
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、(重合性不飽和基を有する多官能モノマー)で述べた化合物を好適に用いる事ができる。
【0236】
高屈折率層には、前記の成分(無機微粒子、硬化性化合物、重合開始剤、光増感剤など)以外に、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子、などを添加することもできる。
【0237】
本発明に用いる高屈折率層及び中屈折率層は、上記のようにして分散媒体中に無機微粒子を分散した分散液に、更にマトリックス形成に必要なバインダー前駆体である硬化性化合物(例えば、前述の電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)、光重合開始剤等を加えて高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布組成物とし、透明支持体上に高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、硬化性化合物の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
【0238】
更に、高屈折率層及び中屈折率層のバインダーを層の塗布と同時又は塗布後に、分散剤と架橋反応又は重合反応させることが好ましい。このようにして作製した高屈折率層及び中屈折率層のバインダーは、例えば、上記の好ましい分散剤と電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。更に高屈折率層及び中屈折率層のバインダーは、アニオン性基が無機微粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、無機微粒子を含有する高屈折率層及び中屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良する。
【0239】
高屈折率層の形成において、硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応は、酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。高屈折率層を酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性、更には、高屈折率層と高屈折率層と隣接する層との接着性を改良することができる。好ましくは酸素濃度が6体積%以下の雰囲気で硬化性樹脂の架橋反応、又は、重合反応により形成することであり、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。
【0240】
上述したように、中屈折率層は、高屈折率層と同様の材料を用いかつ同様にして得ることができる。
具体的には、中屈折率層、高屈折率層が前記式(I)、式(II)の膜厚と屈折率を満足するように微粒子の種類、樹脂の種類を選択すると共にその配合比率を決め、主な組成を決定することが一例として挙げられる。
【0241】
上記全ての層を形成するための塗布組成物には、低屈折率層用組成物と同様の溶剤を用いることができる。
【0242】
[低屈折率層]
本発明における低屈折率層は、屈折率が1.30〜1.47であることが好ましい。多層薄膜干渉型の反射防止フィルム(中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層)の場合の低屈折率層の屈折率は1.33〜1.38であることが望ましく、更に望ましくは1.35〜1.37が望ましい。上記範囲内とすることで反射率を抑え、膜強度を維持することができ、好ましい。低屈折率層の形成方法も化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、低屈折率層用組成物を用いてオールウェット塗布による方法を用いることが好ましい。
【0243】
低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
低屈折率層まで形成した反射防止フィルムの強度は、500g荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、反射防止フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が95゜以上であることが好ましい。更に好ましくは102゜以上である。特に、接触角が105°以上であると、指紋に対する防汚性能が著しく良化するため、特に好ましい。また、水の接触角が102°以上で、かつ、表面自由エネルギーが25dyne/cm以下であることがより好ましく、23dyne/cm以下であることが特に好ましく、20dyne/cm以下であることが更に好ましい。最も好ましくは、水の接触角が105°以上で、かつ、表面自由エネルギーが20dyne/cm以下である。
【0244】
(低屈折率層の形成)
低屈折率層は、重合性不飽和基を有する含フッ素防汚剤、重合性不飽和基を有する含フッ素共重合体、無機微粒子、その他所望により含有される任意成分を溶解あるいは分散させた塗布組成物を塗布と同時、又は塗布・乾燥後に電離放射線照射(例えば光照射、電子線ビーム照射等が挙げられる。)や加熱することによる架橋反応、又は、重合反応により硬化して、形成することが好ましい。
特に、低屈折率層が電離放射線硬化性の化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成される場合、架橋反応、又は、重合反応は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が1体積%以下の雰囲気で形成することにより、物理強度、耐薬品性に優れた最外層を得ることができる。
好ましくは酸素濃度が0.5体積%以下であり、更に好ましくは酸素濃度が0.1体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が0.05体積%以下、最も好ましくは0.02体積%以下である。
【0245】
酸素濃度を1体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。(紫外線吸収剤)
【0246】
紫外線吸収剤としては、紫外線吸収性を発現できるもので、公知のものがいずれも使用できる。そのような紫外線吸収剤のうち、紫外線吸収性が高く、電子画像表示装置で用いられる紫外線吸収能(紫外線カット能)を得るためにベンゾトリアゾール系又はヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤が好ましい。また、紫外線の吸収幅を広くするために、最大吸収波長の異なる紫外線吸収剤を2種以上併用することができる。
【0247】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチル−3′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−ter―ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1、1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−,C7〜9−ブランチ直鎖アルキルエステル、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール等が挙げられる。
【0248】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2‘−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチルオキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシエトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−5,5′−ジスルホベンゾフェノン・2ナトリウム塩等が挙げられる。
【0249】
紫外線吸収剤の含有量は、求める紫外線透過率や紫外線吸収剤の吸光度にもよるが、前記紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、通常20質量部以下、好ましくは1〜20質量部である。紫外線吸収剤の含有量が20質量部よりも多い場合には、硬化性組成物の紫外線による硬化性が低下する傾向があると共に、ハードコートフィルム10の可視光線透過率が低下するおそれもある。一方、1質量部より少ない場合には、ハードコートフィルム10の紫外線吸収性を十分に発揮することができなくなる。
【0250】
[偏光板]
本発明における偏光板は、上記光学フィルムと偏光膜とを有する。偏光膜としては、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜のいずれを用いてもよい。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の吸収軸は、フィルムの延伸方向に相当する。従って、縦方向(搬送方向)に延伸された偏光膜は長手方向に対して平行に吸収軸を有し、横方向(搬送方向と垂直方向)に延伸された偏光膜は長手方向に対して垂直に吸収軸を有す。
【0251】
偏光膜は一般に保護膜を有する。本発明において、上記光学フィルムは、偏光膜の保護膜として機能させることができる。上記光学フィルムとは別に偏光膜の保護膜を積層する場合は、保護膜として光学的等方性が高いセルロースエステルフィルムを用いることが好ましい。
【0252】
本発明における偏光板の好ましい製造方法は、上記光学フィルムと偏光膜とが、それぞれ長尺の状態で連続的に積層される工程を含む。該長尺の偏光板は用いられる画像表示装置の画面の大きさに合わせて裁断される。
【0253】
偏光膜として直線偏光膜を用い、上記光学フィルムと組み合わせることで、円偏光板又は楕円偏光板として機能する偏光膜一体型の光学フィルムを高い生産性で製造できる。これら円偏光板や楕円偏光板は、液晶表示装置のコントラスト向上や視野角拡大のために用いられたり、有機EL表示装置の反射防止膜として使用できたり、コレステリック液晶フィルムと積層することで輝度向上膜として用いられたり、3D表示装置の視角改善フィルムとして用いられたり、多数の用途を有する。
図2に本発明における偏光板の構成の例を2つ示したがこれらに限定されない。
【0254】
本発明の立体画像認識装置は、液晶表示装置と時分割画像表示遮断機器とを備えており、該液晶表示装置は液晶セル、及び該液晶セルの両側に1対の偏光板を備え、該時分割画像表示遮断機器は偏光子、液晶封入体、及びλ/4板Bを備える。該液晶表示装置の表示側偏光板及び該時分割画像表示遮断機器の偏光板は、偏光膜の一方の面に上記光学フィルムを積層し、偏光膜のもう一方の面には、光学異方性を有す光学補償フィルムを更に積層してもよい。視認者側から順に、本発明における光学フィルム、偏光膜、光学補償フィルム、液晶セル、と配置することで、あるいは、バックライト側から順に、本発明における光学フィルム、偏光膜、光学補償フィルム、液晶セル、と配置することで、該光学補償フィルムは、液晶表示装置のコントラストや視野角の補償フィルムとして機能させることができ、本発明における光学フィルムは、偏光膜の外側(視認者側又はバックライト側)に用いられるフィルムとして機能する。
【0255】
[液晶表示装置]
本発明における液晶表示装置は、液晶セル、及び該液晶セルの両側に1対の偏光板(表示側偏光板及びバックライト側偏光板)を備え、表示側偏光板の偏光子の視認側にλ/4板(前述のように透明支持体、配向膜、円盤状液晶化合物を含む光学異方性層を備える)を有し、該偏光子と該λ/4板とが、偏光子、透明支持体、配向膜、円盤状液晶化合物を含む光学異方性層の順でバックライト側から視認側に向かって配置されている。
もしくは、表示側偏光板の偏光子の視認側にλ/4板(前述のように透明支持体、配向膜、円盤状液晶化合物を含む光学異方性層を備える)を有し、該偏光子と該λ/4板とが、偏光子、円盤状液晶化合物を含む光学異方性層、配向膜、透明支持体の順でバックライト側から視認側に向かって配置されている。この層構成で偏光子とλ/4板を貼合しλ/4板一体型偏光板を作製する場合は、一般的に粘着剤などを使用することで可能となる。
液晶表示装置は、反射型、半透過型、透過型液晶表示装置等いずれであってもよい。液晶表示装置は一般的に、偏光板、液晶セル、及び必要に応じて位相差板、反射層、光拡散層、バックライト、フロントライト、光制御フィルム、導光板、プリズムシート、カラーフィルター等の部材から構成される。本発明においては、上記光学フィルムを液晶表示装置の外側(視認側)に使用するが、更にバックライト側に使用してもよい。液晶セルとしては特に制限されず、電極を備える一対の透明基板で液晶層を狭持したもの等の一般的な液晶セルが使用できる。液晶セルを構成する前記透明基板としては、液晶層を構成する液晶性を示す材料を特定の配向方向に配向させるものであれば特に制限はない。具体的には、基板自体が液晶を配向させる性質を有していている透明基板、基板自体は配向能に欠けるが、液晶を配向させる性質を有する配向膜等をこれに設けた透明基板等がいずれも使用できる。また、液晶セルの電極は、公知のものが使用できる。通常、液晶層が接する透明基板の面上に設けることができ、配向膜を有する基板を使用する場合は、基板と配向膜との間に設けることができる。前記液晶層を形成する液晶性を示す材料としては、特に制限されず、各種の液晶セルを構成し得る通常の各種低分子液晶性化合物、高分子液晶性化合物及びこれらの混合物が挙げられる。また、これらに液晶性を損なわない範囲で色素やカイラル剤、非液晶性化合物等を添加することもできる。
【0256】
前記液晶セルは、前記電極基板及び液晶層の他に、後述する各種の方式の液晶セルとするのに必要な各種の構成要素を備えていてもよい。前記液晶セルの方式としては、TN(Twisted Nematic)方式、STN(SuperTwisted Nematic)方式、ECB(Electrically Controlled Birefringence)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、VA(Vertical Alignment)方式、MVA(Multidomain Vertical Alignment)方式、PVA(Patterned Vertical Alignment)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式、HAN(Hybrid Aligned Nematic)方式、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)方式、ハーフトーングレイスケール方式、ドメイン分割方式、あるいは強誘電性液晶、反強誘電性液晶を利用した表示方式等の各種の方式が挙げられる。また、液晶セルの駆動方式も特に制限はなく、STN−LCD等に用いられるパッシブマトリクス方式、並びにTFT(Thin Film Transistor)電極、TFD(Thin Film Diode)電極等の能動電極を用いるアクティブマトリクス方式、プラズマアドレス方式等のいずれの駆動方式であってもよい。カラーフィルターを使用しないフィールドシーケンシャル方式であってもよい。
【0257】
本発明における偏光板は、反射型、半透過型、及び透過型液晶表示装置に好ましく用いられる。また、本発明における偏光板は、コレステリック液晶フィルムと組み合わされることで、輝度向上膜としても好ましく用いられる。反射型液晶表示装置は、反射板、液晶セル及び偏光板を、この順に積層した構成を有する。位相差板は、反射板と偏光膜との間(反射板と液晶セルとの間又は液晶セルと偏光膜との間)に配置される。反射板は、液晶セルと基板を共有していてもよい。半透過反射型液晶表示装置は、電液晶セルと、該液晶セルより観察者側に配置された偏光板と、前記偏光板と前記液晶セルの間に配置される少なくとも1枚の位相差板と、観察者から見て前記液晶層よりも後方に設置された半透過反射層を少なくとも備え、更に観察者から見て前記半透過反射層よりも後方に少なくとも1枚の位相差板と偏光板とを有す。このタイプの液晶表示装置では、バックライトを設置することで反射モードと透過モード両方の使用が可能となる。
【0258】
液晶セルは、VAモード、OCBモード、IPSモード、又はTNモードであることが好ましい。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の透過軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60乃至120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
【0259】
本発明における偏光板は、本発明における光学フィルム、偏光膜、光学補償フィルムとが積層されてなることが好ましい。該光学補償フィルムは液晶表示装置のコントラストや視野角の補償層としての機能を有することが好ましい。該光学補償フィルムは、ポリマーフィルムを延伸したり、液晶性化合物を配向させることで光学異方性を発現させたものを用いることができる。該光学補償フィルムは、使用される液晶表示装置のモードや配置される位置に応じて三次元方向の屈折率異方性を制御するのが好ましい。三次元方向の屈折率異方性は、液晶性化合物の分子形状や配向状態で制御してもよいし、支持体として用いる光学異方性を有すポリマーフィルムで制御してもよいし、それらを組み合わせて制御してもよい。
【0260】
前記光学補償フィルムの好ましい態様の一つは、液晶性化合物が含まれ、ディスコティック液晶化合物や棒状液晶化合物が好ましく用いられる。液晶性化合物の配向状態は垂直配向、水平配向、ハイブリッド配向、傾斜配向、ねじれ配向、螺旋配向のいずれかであることが好ましい。
ディスコティック液晶性化合物の垂直配向とは、ディスコティック液晶性化合物の円盤面がフィルム平面に対して実質的に垂直である(分子対称軸がフィルム平面と実質的に平行である)ことを意味する。フィルム平面に対する該円盤面の平均傾斜角は70〜90°であることが好ましく、75〜90°であることが更に好ましく、80〜90°であることが最も好ましい。
ディスコティック液晶性化合物の水平配向とは、ディスコティック液晶性化合物の円盤面がフィルム平面に対して実質的に平行である(分子対称軸がフィルム平面と実質的に垂直である)ことを意味する。フィルム平面に対する該円盤面の平均傾斜角は0〜20°であることが好ましく、0〜15°であることが更に好ましく、0〜10°であることが最も好ましい。
棒状液晶性化合物の垂直配向とは、棒状液晶性化合物の長軸(分子対称軸)がフィルム平面に対して実質的に垂直であることを意味する。フィルム平面に対する該長軸の平均傾斜角は70〜90°であることが好ましく、75〜90°であることが更に好ましく、80〜90°であることが最も好ましい。
棒状液晶性化合物の水平配向とは、棒状液晶性化合物の長軸(分子対称軸)がフィルム平面に対して実質的に水平であることを意味する。フィルム平面に対する該長軸の平均傾斜角は0〜20°であることが好ましく、0〜15°であることが更に好ましく、0〜10°であることが最も好ましい。
【0261】
前記光学補償フィルムが垂直配向したディスコティック液晶性化合物、あるいは、垂直配向した棒状液晶性化合物を含むとき、該光学異方性層はIPSモードなどの液晶表示装置の視野角補償フィルムとして好適に用いることができる。
IPSモード液晶表示装置の視野角補償フィルムとして用いる場合、ディスコティック液晶性化合物が垂直配向した光学異方性層の面内のレターデーションは、50〜200nmであることが好ましく、60〜180nmであることが更に好ましく、70〜160nmであることが最も好ましい。更に、該光学異方性層の厚さ方向のレターデーションは、−100〜−25nmであることが好ましく、−90〜−30nmであることが更に好ましく、−80〜−35nmであることが最も好ましい。また、透明支持体を含んでもよい。該支持体の面内のレターデーションは、0〜20nmであることが好ましく、0〜10nmであることが更に好ましく、0〜5nmであることが最も好ましい。更に、該支持体の厚さ方向のレターデーションは20〜120nmであることが好ましく、40〜100nmであることが更に好ましい。
IPSモード液晶表示装置の視野角補償フィルムとして用いる場合、棒状液晶性化合物が垂直配向した光学異方性層の面内のレターデーションは、0〜10nmであることが好ましく、0〜5nmであることが更に好ましく、0〜3nmであることが最も好ましい。更に、該光学異方性層の厚さ方向のレターデーションは、−400〜−80nmであることが好ましく、−360〜−100nmであることが更に好ましく、−320〜−120nmであることが最も好ましい。また、透明支持体を含んでもよい。該支持体の面内のレターデーションは、20〜150nmであることが好ましく、30〜130nmであることが更に好ましく、40〜110nmであることが最も好ましい。更に、該支持体の厚さ方向のレターデーションは、100〜300nmであることが好ましく、120〜280nmであることが更に好ましく、140nm〜260nmであることが最も好ましい。
【0262】
前記光学補償フィルムが、水平配向したディスコティック液晶性化合物、あるいは、水平配向した棒状液晶性化合物を含むときは、該光学異方性層はVAモードなどの液晶表示装置の視野角補償フィルムとして好適に用いることができる。
VAモード液晶表示装置の視野角補償フィルムとして用いる場合、ディスコティック液晶性化合物が水平配向した光学異方性層の面内のレターデーションは、0〜10nmであることが好ましく、0〜5nmであることがより好ましい。更に、該光学異方性層の厚さ方向のレターデーションは、30〜300nmであることが好ましく、40〜200nmであることがより好ましい。また、透明支持体を含んでもよい。該支持体の面内のレターデーションは、0〜40nmであることが好ましく、0〜20nmであることがより好ましい。更に、該支持体の厚さ方向のレターデーションは0〜200nmであることが好ましく、20〜150nmであることがより好ましい。
VAモード液晶表示装置の視野角補償フィルムとして用いる場合、棒状液晶性化合物が水平配向した光学異方性層の面内のレターデーションは、60〜140nmであることが好ましく、80〜120nmであることがより好ましい。更に、該光学異方性層の厚さ方向のレターデーションは、30〜70nmであることが好ましく、40〜60nmであることがより好ましい。また、透明支持体を含んでもよい。該支持体の面内のレターデーションは、0〜20nmであることが好ましく、0〜10nmであることがより好ましい。更に、該支持体の厚さ方向のレターデーションは、−30〜30nmであることが好ましく、−20nm〜20nmであることがより好ましい。
【0263】
前記光学補償フィルムがディスコティック液晶性化合物を含み、該ディスコティック液晶性化合物の円盤面がフィルム平面に対して傾いて配向しているとき、該光学異方性層はTNモード、OCBモード、ECBモード、HANモードなどの液晶表示装置の視野角補償フィルムとして好適に用いることができる。光学異方性層の厚さ方向において、ディスコティック液晶性化合物が実質的に一様の角度で傾斜配向していてもよいし、傾斜角度が異なるハイブリッド配向をしていてもよいが、ハイブリッド配向がより好ましい。
TNモード、OCBモード、ECBモード、HANモードなどの液晶表示装置の視野角補償フィルムとして用いる場合、ディスコティック液晶性化合物を含む光学異方性層の面内のレターデーションは、0〜50nmであることが好ましく、15〜45nmであることが更に好ましく、20〜40nmであることが最も好ましい。また、透明支持体を含んでもよい。該支持体の面内のレターデーションは、0〜60nmであることが好ましく、0〜50nmであることが更に好ましい。更に、該支持体の厚さ方向のレターデーションは、40〜300nmであることが好ましく、60nm〜200nmであることが更に好ましい。
【0264】
[時分割画像表示遮断機器]
本発明における時分割画像表示遮断機器は、偏光子、液晶封入体、及びλ/4板を備え、該偏光子の前記液晶表示装置側に該液晶封入体と該λ/4板とを有する。
時分割画像表示遮断機器としては、公知のいずれのものでもよいが、液晶(LC)シャッターメガネ、又はアクティブリターダーパネルと偏光メガネとからなるものが好ましい。
液晶シャッターメガネは、視認者側から外側(前記液晶表示装置側)に向かって、偏光板、液晶封入体の順に有することが好ましく、偏光板、液晶封入体、透明支持体、配向膜、光学異方性層の順に有することがより好ましい。
アクティブリターダーパネルは液晶封入体を含んでなる。アクティブリターダーパネルとしては、公知のいずれのものでもよい。
偏光メガネとしては公知のいずれのものでもよい。
アクティブリターダーパネル及び偏光メガネの少なくとも一方は本発明におけるλ/4板を有する。好ましくは偏光メガネの液晶表示装置側にλ/4板を有する場合である。また、アクティブリターダーパネルと偏光メガネとを用いる場合、前記液晶表示装置の表示側偏光板の外側(前面)に該アクティブリターダーパネルを設けることが好ましく、液晶表示装置の表示側偏光板とアクティブリターダーパネルとの間に充填剤を設けることがより好ましい。
液晶シャッターメガネ、又はアクティブリターダーパネルにおける液晶封入体としては、前記した液晶表示装置における各モードの液晶セルと同様のものが挙げられる。
【0265】
[立体画像認識装置]
本発明の立体画像認識装置は、前記液晶表示装置と時分割画像表示遮断機器とを備える。
液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸と時分割画像表示遮断機器の偏光子の吸収軸は直交又は平行であり、好ましくは、液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸と時分割画像表示遮断機器の偏光板の吸収軸が直交又は平行である。
液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸とλ/4板Aの遅相軸のなす角度は45°又は135°である。なお、「45°」又は「135°」とは、厳密な角度±5°未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。
液晶表示装置のλ/4板Aと時分割画像表示遮断機器のλ/4板Bの遅相軸は直交又は平行である。
図3〜6に本発明の立体画像認識装置の一例を示したが本発明はこれに限定されない。
液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸と時分割画像表示遮断機器の偏光板の吸収軸は平行であることが好ましい。
【実施例】
【0266】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0267】
・λ/4板の作製
[F102の作製]
<支持体(セルロースアセテートフィルムT1)の作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.7〜61.1%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 336質量部
メタノール(第2溶媒) 29質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
【0268】
別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤(A)16質量部、メチレンクロライド92質量部及びメタノール8質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション上昇剤溶液25質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、6.0質量部であった。
【0269】
【化40】

【0270】
得られたドープを、バンド延伸機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、70℃の温風で1分乾燥し、バンドからフィルムを140℃の乾燥風で10分乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%のセルロースアセテートフィルムT1を作製した。
【0271】
得られた長尺状のセルロースアセテートフィルムT1の幅は1490mmであり、厚さは80μmであった。また、550nmにおける面内レターデーション(Re)は8nm、厚み方向のレターデーション(Rth)は78nmであった。
【0272】
《液晶性化合物を含む光学異方性層の形成》
(アルカリ鹸化処理)
セルロースアシレートフィルムT1を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/mで塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0273】
(アルカリ溶液組成)
───────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤SF−1:C1429O(CHCHO)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
──────────────────────────────────
【0274】
(配向膜の形成)
上記のように鹸化処理した長尺状のセルロースアセテートフィルムに、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥した。
配向膜塗布液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー2959、チバ・ジャパン製) 0.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0275】
変性ポリビニルアルコール
【0276】
【化41】

【0277】
(ディスコティック液晶性化合物を含む光学異方性層の形成)
上記作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対して、ラビングローラーの回転軸は時計回りに45°の方向とした。
【0278】
下記の組成のディスコティック液晶化合物を含む塗布液(A)を上記作製した配向膜上に#2.7のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は36m/minとした。塗布液の溶媒の乾燥及びディスコティック液晶化合物の配向熟成のために、80℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にてUV照射を行い、液晶化合物の配向を固定化し光学異方性層を形成し、光学フィルムF102を得た。F102の光学異方性層の膜厚は1.7μmであった。
【0279】
光学異方性層塗布液(A)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のディスコティック液晶化合物 100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバ・ジャパン社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のピリジニウム塩 1質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP1) 0.4質量部
メチルエチルケトン 252質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0280】
【化42】

【0281】
【化43】

【0282】
【化44】

【0283】
作製した光学フィルムF102の評価結果を以下に示す。なお、遅相軸の方向はラビングローラーの回転軸と平行であった。すなわち、支持体の長手方向に対して、遅相軸は時計回りに45°の方向であった。別途、セルロースアセテートフィルムを支持体に用いる代わりに、ガラスを基板として用いてディスコティック液晶化合物を含む層を形成して、Re(0)、Re(40)及びRe(−40)を測定したところ、それぞれ、142.3nm、128.9nm及び128.7nmであった。これらの結果からディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることが確認できた。
Rth/Re + 0.5 = 0.57 (F102)
【0284】
[F101の作製]
上記実施例1のセルロースアセテートフィルムT1の作製おいて、フィルムの膜厚を変える以外は同様にして、セルロースアセテートフィルムT2を作製した。セルロースアセテートフィルムT2の厚さは60μmであり、550nmにおけるReは6nm、Rthは60nmであった。
実施例1と同様にして、セルロースアセテートフィルムT2の表面を鹸化処理し、更に配向膜を設けた。作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対して、ラビングローラーの回転軸は反時計回りに45°の方向とした。
【0285】
下記の組成のディスコティック液晶化合物を含む塗布液(B)を上記作製した配向膜上に#2.7のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は36m/minとした。塗布液の溶媒の乾燥及びディスコティック液晶化合物の配向熟成のために、120℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にてUV照射を行い、液晶化合物の配向を固定化し光学異方性層を形成し、光学フィルムF101を得た。F101の光学異方性層の膜厚は1.7μmであった。
【0286】
光学異方性層塗布液(B)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のディスコティック液晶化合物 100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のピリジニウム塩 1質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP2) 0.4質量部
メチルエチルケトン 252質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0287】
【化45】

【0288】
【化46】

【0289】
【化47】

【0290】
作製した光学フィルムF101の評価を実施例1と同様に行った。遅相軸の方向はラビングローラーの回転軸と直交していた。すなわち、支持体の長手方向に対して、遅相軸は時計回りに45°の方向であった。また、ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。
Rth/Re + 0.5 = 0.44 (F101)
【0291】
・立体表示装置用偏光板の作製
上記作製したF101の支持体表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3質量%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理した各フィルムと、同様のアルカリ鹸化処理したVA用位相差フィルム(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=50nm/125nm)を用意し、これらの鹸化した面が偏光膜側となるようにして偏光膜を間に挟んで貼り合わせ、F101とVA用位相差フィルムが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板P101を作製した。このとき偏光子の吸収軸とF101の遅相軸とのなす角度が135度になるようにした。また、偏光子の吸収軸とVA用位相差フィルムの遅相軸とのなす角度が90度になるようにした。
また、F101をF102にした以外は同様にして偏光板P102を作製した。
【0292】
・LCシャッターメガネの作製
SAMSUNG社製SSG−2100ABの視認者の目と反対側(パネル側)の偏光板をはがし、そこに上記作製したフィルムF101の支持体側を易接着層を介して貼合し、LCシャッターメガネG101を作製した。ここでG101のフィルムF101の遅相軸は、偏光板P101上のフィルムF101の遅相軸と直交するようにした。
また、F101をF102にした以外は同様にしてLCシャッターメガネG102を作製した。
LCシャッターメガネのLCをECB又はOCBとし、LC層の目側に偏光板、その逆側にフィルムF101を易接着層を介してそれぞれ貼合し、LCシャッターメガネG104を作製した。ここでG104のフィルムF101の遅相軸は、偏光板P101上のフィルムF101の遅相軸と直交するようにした。
LCシャッターメガネのLCをECB又はOCBとし、LC層の目側にフィルムF101更にその上に偏光板を易接着層を介してそれぞれ貼合し、LCシャッターメガネG105を作製した。ここでG105のフィルムF101の遅相軸は、偏光板P101上のフィルムF101の遅相軸と直交するようにした。
【0293】
・アクティブリターダーパネルの作製
(TNモードパネルの作製)
TNモード液晶セルとして、正の誘電率異方性を持つ液晶材料を基板間に真空注入で封入し、液晶層のΔn・dが450nmである液晶セルを作製した。液晶材料は誘電異方性が正で、屈折率異方性Δn=0.0854(589nm、20°C)、Δε=+8.5程度の液晶(例えばメルク社製のMLC−9100)を使用した。また、上下基板の内面にはラビング処理が施され、電圧無印加時に、液晶層は、上下基板間でツイスト角90°でねじれ配向した。
【0294】
(ECBモードパネルの作製)
ECBモード液晶セルは、セルギャップ3.5μmとし、正の誘電率異方層を持つ液晶材料を基板間に滴下注入で封入し、液晶層のΔn・dが300nmである液晶セルを作製した。液晶材料は誘電異方性が正で、屈折率異方性Δn=0.0854(589nm、20°C)、Δε=+8.5程度の液晶(例えばメルク社製のMLC−9100)を使用した。また、上下基板の内面にはラビング処理が施され、電圧無印加時に、液晶層は、上下基板間でねじれのない、交差角0°で配向した。
【0295】
(OCBモードパネルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、液晶セルの厚さを5.4μmに設定した。液晶セルの間隙にΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向の液晶セルを作製した。液晶セルのΔndは約750nmであった。これをベンド配向モードの液晶セルとして用いた。
【0296】
・偏光メガネの作製
P101を2枚用意し、偏光メガネG103を作製した。偏光メガネは、視認者側から、VA用位相差フィルム/偏光子/F101という構成である。
・立体表示装置の作製
TV:SAMSUNG社製UN46C7000の視認側の偏光板をはがし、上記作製した偏光板P101のVA用位相差フィルムとLCセルを易接着層を介して貼合し、立体表示装置T101を作製した。
また、P101をP102にした以外は同様にして立体表示装置T102を作製した。
なお、液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸と時分割画像表示遮断機器の偏光子の吸収軸は平行となるようにした。
【0297】
実施例1
G101とT101の構成を実施例1とした。
実施例2
G102とT102の構成を実施例2とした。
【0298】
(比較例)
・LCシャッターメガネ用偏光板の作製
フィルムF101とVA用位相差フィルム両方をTD80UL(富士フイルム社製)にした以外は、P101と同様に偏光板PH101を作製した。
・立体表示装置用偏光板の作製
フィルムF101をTD80UL(富士フイルム社製)にした以外は、P101と同様に偏光板PH102を作製した。
フィルムF101の光学異方性層側を易接着層を介して偏光膜と貼合した以外は、P101と同様に偏光板PH103を作製した。
比較例1
実施例1において、G101のF101をPH101に変更して、GH101を作製した。T101のP101をPH102に変更して、TH101を作製した。
比較例2
実施例1において、G101のF101の無い形態をGH102とした。
比較例3
実施例1において、T101のP101をPH103に変更して、TH103を作製した。
【0299】
評価結果
評価結果として、蛍光灯のある部屋で、パネル面の照度がおよそ100luxとなる環境下で、3D用メガネをかけ3D映像鑑賞時の(1)明るさ、(2)蛍光灯とフリッカー、(3)正面観察時の顔傾けによるクロストーク(二重像)、(4)斜め方向観察時のクロストークを官能評価した。
【0300】
明るさ
◎:暗さが全く気にならず3Dが非常に見やすい
○:暗さが気にならず3Dが見やすい
△:暗さが気になり3Dがやや見えにくい
×:暗さが気になり3Dが非常に見えにくい
【0301】
フリッカー
◎:全く気にならない
○:気にならない
△:やや気になる
×:非常に気になる
【0302】
クロストーク
◎:全く気にならない
○:気にならない
△:やや気になる
×:非常に気になる
【0303】
結果を表1に示す。メガネは両眼用あるが、同一の層構成のため、簡易的に片方のみ記載した。
表1から、本発明における各層構成は比較例の構成に比べて評価結果がよいことが理解できる。
また表2〜表7に示す実施例3から22における評価結果を示した。ここでもメガネは簡易的に片方のみ記載した。
【0304】
実施例3
実施例1のT101上に易接着層を介して低反射フィルムのクリアLR(富士フイルム製CVフィルムCV−LC:表にはCL−LRと記載)を貼合し、T103を作製した。
実施例4
実施例1のT101上に易接着層を介して低反射フィルムのクリアAR(SONYケミカル製 表にはCL−ARと記載)を貼合し、T104を作製した。
実施例5
実施例1のT101上に易接着層を介して写り込み抑制フィルムのCV−LU(富士フイルム製CVフィルム)を貼合し、T105を作製した。
実施例6
実施例1のT101上に易接着層を介して写り込み抑制フィルムのAGA1(サンリッツ社製)を貼合し、T106を作製した。
【0305】
実施例7
実施例1のT101とガラスの間に充填剤として光学弾性樹脂易接着層(SVR1100 ソニーケミカル製)を塗工し、ガラスの逆側のクリアLRを易接着層を介して貼合し、T107を作製した。
実施例8
比較例1のTH101において、ガラスの視認側にF101とクリアLRをこの順に、それぞれ易接着層を介して貼合し、TH101とガラスの間に充填剤として前記光学弾性樹脂易接着層を塗工し、T108を作製した。
実施例9
比較例1のTH101において、ガラスの視認側とパネル側にそれぞれクリアLRとF101を易接着層を介して貼合し、TH101とガラスの間に充填剤として光学弾性樹脂易接着層(SVR1100 ソニーケミカル製)を塗工し、T109を作製した。
【0306】
実施例10
実施例1のT101上に、両側にクリアLRを貼合したガラスを配置し、T110を作製した。
実施例11
比較例1のTH101上に、視認側とパネル側にそれぞれクリアLRとF101を易接着層を介して貼合したガラスを配置し、T111を作製した。
実施例12
比較例1のTH101上に、視認側にクリアLR、パネル側にクリアLRとF101をそれぞれ易接着層を介して貼合したガラスを配置し、T112を作製した。
実施例13
比較例1のTH101上に、視認側にクリアLRとF101、パネル側にクリアLRをそれぞれ易接着層を介して貼合したガラスを配置し、T113を作製した。
【0307】
実施例14
実施例7のT107のガラスをアクティブリターダー層に変え、T114を作製した。
実施例15
実施例8のT108のガラスをアクティブリターダー層に変え、T115を作製した。
実施例16
実施例9のT109のガラスをアクティブリターダー層に変え、T116を作製した。
【0308】
実施例17
実施例10のT110のガラスをアクティブリターダー層に変え、T117を作製した。
実施例18
実施例11のT111のガラスをアクティブリターダー層に変え、T118を作製した。
実施例19
実施例12のT112のガラスをアクティブリターダー層に変え、T119を作製した。
実施例20
実施例13のT113のガラスをアクティブリターダー層に変え、T120を作製した。
【0309】
実施例21
G104とT101の構成を実施例21とした。
実施例22
G105とT101の構成を実施例22とした。
表1同様、各層構成は比較例の構成に比べて評価結果がよいことが理解できる。
実施例23
実施例1で作製したF101の光学異方性層と偏光子を粘着剤(SK−2057 綜研化学製)で貼合した以外は同様に偏光板P103を作製し、実施例1のP101をP103に置き換えた以外は実施例1と同じ層構成で評価を実施した。結果は実施例1と略同等であることを確認した。
【0310】
【表1】

【0311】
【表2】

【0312】
【表3】

【0313】
【表4】

【0314】
【表5】

【0315】
【表6】

【0316】
【表7】

【0317】
表5及び6において、アクティブリターダーパネルについて、「ECB、OCB」は、ECBモード用アクティブリターダーパネル、又はOCBモード用アクティブリターダーパネルで実施したことを意味している。「TN、ECB、OCB」も同様である。また、表7におけるLCシャッターメガネについて「ECB、OCB」はECBモード用LCシャッターメガネ、又はOCBモード用LCシャッターメガネで実施したことを意味している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶セル、及び該液晶セルの両側に1対の偏光板を備えた液晶表示装置と、
偏光子、液晶封入体、及びλ/4板Bを備えた時分割画像表示遮断機器とを含む立体画像認識装置であって、
液晶表示装置の表示側偏光板の偏光子の視認側にはλ/4板Aが配置され、
時分割画像表示遮断機器の偏光子の前記液晶表示装置側には液晶封入体とλ/4板Bとが配置され、
液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸と時分割画像表示遮断機器の偏光子の吸収軸は直交又は平行であり、
液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸とλ/4板Aの遅相軸のなす角度は45°又は135°であり、
λ/4板Aとλ/4板Bの遅相軸は直交又は平行であり、
λ/4板A及びλ/4板Bは、透明支持体、配向膜、及び円盤状液晶化合物を含む光学異方性層を含み、
該光学異方性層において、該円盤状液晶化合物は前記光学異方性層平面に対して実質的に垂直に配向しており、
液晶表示装置の表示側偏光板の偏光子、λ/4板Aの透明支持体、λ/4板Aの配向膜、及びλ/4板Aの光学異方性層が視認側に向かってこの順で配置された立体画像認識装置。
【請求項2】
液晶セル、及び該液晶セルの両側に1対の偏光板を備えた液晶表示装置と、
偏光子、液晶封入体、及びλ/4板Bを備えた時分割画像表示遮断機器とを含む立体画像認識装置であって、
液晶表示装置の表示側偏光板の偏光子の視認側にはλ/4板Aが配置され、
時分割画像表示遮断機器の偏光子の前記液晶表示装置側には液晶封入体とλ/4板Bとが配置され、
液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸と時分割画像表示遮断機器の偏光子の吸収軸は直交又は平行であり、
液晶表示装置の表示側偏光板の吸収軸とλ/4板Aの遅相軸のなす角度は45°又は135°であり、
λ/4板Aとλ/4板Bの遅相軸は直交又は平行であり、
λ/4板A及びλ/4板Bは、透明支持体、配向膜、及び円盤状液晶化合物を含む光学異方性層を含み、
該光学異方性層において、該円盤状液晶化合物は前記光学異方性層平面に対して実質的に垂直に配向しており、
液晶表示装置の表示側偏光板の偏光子、λ/4板Aの光学異方性層、λ/4板Aの配向膜、及びλ/4板Aの透明支持体が視認側に向かってこの順で配置された立体画像認識装置。
【請求項3】
λ/4板A及びλ/4板Bの少なくとも一方における透明支持体の波長550nmにおける厚さ方向のレターデーションRthが0〜130nmである請求項1又は2に記載の立体画像認識装置。
【請求項4】
λ/4板A及びλ/4板Bの少なくとも一方において、下記式で表される値が0〜2である請求項1〜3のいずれか一項に記載の立体画像認識装置。
Rth/Re + 0.5
Reは波長550nmにおける面内レターデーション、Rthは波長550nmにおける厚み方向のレターデーション。
【請求項5】
λ/4板Aの表面に反射防止層を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の立体画像認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−18396(P2012−18396A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129624(P2011−129624)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】