説明

立体的表示方法

【課題】3次元データについて、特殊な表示装置等を用いることなく、ワークの傾きや重なりを認識することが可能な立体的表示方法を提供する。
【解決手段】ワーク1の3次元データと、3次元データについて所定の視点から視認した場合における2次元データを作成する視覚化装置20と、2次元データの表示が可能である表示装置21と、を準備し、観察者が3次元データを視認する視点と、3次元データを回転させる際の最大回転角である最大角度及び最小回転角である最小角度と、3次元データを回転させる際に中心軸となる回転中心軸とを決定し、回転中心軸を基準として前記3次元データを最小角度と最大角度の間で回転させた場合の複数の回転角度において、視点から3次元データを視認した場合における2次元データを、視覚化装置20によって複数作成し、表示装置21に複数の2次元データを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元データの立体的表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、鋳物素形材などのワークは、メッシュボックス等の容器に乱雑にバラ積みされた状態で工場内或いは業者間で搬送される。このように複数のワークがバラ積みされた状態から、ワークを1つずつ取り出すことを、「バラ積みピッキング」または単に「ピッキング」と呼ぶ。
従来、メッシュボックス等の容器にバラ積みされた複数のワークからワークピッキングする場合、作業者による手作業によるか、自動化されていても、ある程度ワークを整列させておく必要があり、いずれの場合も人による重量物のハンドリング作業が発生する。
【0003】
そこで、このような人による重量物のハンドリング作業をなくすために、例えば特許文献1が開示されている。
【0004】
また、バラ積みピッキング装置に関連して、物体の位置と姿勢を認識する手段として、特許文献2〜5が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−69542号明細書、「バラ積みピッキング装置におけるワークピッキング方法」
【特許文献2】特許第3904605号公報、「複合センサーロボットシステム」
【特許文献3】特開2009−128192号明細書、「物体認識装置およびロボット装置」
【特許文献4】特開2009−216480号明細書、「三次元位置姿勢計測方法および装置」
【特許文献5】特開2009−216503号明細書、「三次元位置姿勢計測方法および装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メッシュボックス等の容器にバラ積みされたワークの3次元データを表示するにあたり、従来では単一の視点から表示を行っていたため、ワークの傾きや重なりを正確に把握することができないという問題点があった。
また、3次元データを表示させるためには、かかる表示を可能にするための特殊な表示装置やセンサを準備する必要があった。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、3次元データについて、特殊な表示装置等を用いることなく、ワークの傾きや重なりを認識することが可能な立体的表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、ワークの表示方法であって、
前記ワークの3次元データと、
前記3次元データについて所定の視点から視認した場合における2次元データを作成する視覚化装置と、
前記2次元データの表示が可能である表示装置と、を準備し、
(A)観察者が前記3次元データを視認する視点と、前記3次元データを回転させる際の最大回転角である最大角度及び最小回転角である最小角度と、前記3次元データを回転させる際に中心軸となる回転中心軸とを決定し、
(B)前記回転中心軸を基準として前記3次元データを前記最小角度と前記最大角度の間で回転させた場合の複数の回転角度において、前記視点から前記3次元データを視認した場合における2次元データを、前記視覚化装置によって複数作成し、
(C)前記表示装置に前記複数の2次元データを表示する、ことを特徴とする立体的表示方法が提供される。
【0009】
本発明の実施形態によれば、前記(B)において、前記回転は、前記回転角度が前記最大角度まで増加した後、前記最小角度に向けて折り返し、これを繰り返す。
【0010】
また、本発明の別の実施形態によれば、前記(B)において、前記回転を行う時間を有するタイマを準備し、
前記回転は、前記タイマに入力された時間だけ行われる。
【0011】
さらに、本発明の別の実施形態によれば、前記(B)において、前記視覚化装置は、前記3次元データの回転角度の増加に比例して、回転速度を増加させる。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の装置および方法によれば、3次元データについて、所定の視点から見た複数の2次元データを作成することによって、特殊な表示装置等を用いることなく、ワークの傾きや重なりを認識することが可能になる。

【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の立体的表示方法で用いる立体的表示装置の全体構成図である。
【図2】視覚化装置における入力及び出力データについての模式図である。
【図3】3次元データの回転についての説明図である。
【図4】式(2)及び式(3)についてのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の立体的表示方法で用いる立体的表示装置の全体構成図である。
【0016】
この図において、1はワーク、3は容器、10はバラ積みピッキング装置、11は手先部、12はロボット、14はハンド、16は3次元距離センサ、16aはセンサ台、16bは信号線、18は3次元データ記憶装置、19は条件入力装置、20は視覚化装置、21は表示装置、22は指示入力装置である。
【0017】
ロボット12は、3次元の作動空間内で手先部11の位置と姿勢を制御可能な3次元ロボットである。この3次元の作動空間は、手先部11が移動可能なワーキングエリアである。
この例において、ロボット12は多関節型ロボットである。しかし、本発明はこれに限定されず、3次元の作動空間内、すなわちロボット座標系内で手先部11の位置と姿勢を数値制御で移動できる限りで、その他の形式のロボットであってもよい。
また、ロボット12は車輪、台車等で走行可能なロボットであってもよい。
【0018】
ハンド14は、ロボット12の手先部11に取り付けられワーク1を把持可能に構成されている。ハンド14は、ロボット制御装置20によりロボット座標系において制御される。
【0019】
3次元距離センサ16は、ロボット12の作動空間内に設けられたセンサ台16aに一定の姿勢で静置されている。「一定の姿勢」は、この例では距離センサ16の計測方向が下向きとなる姿勢である。しかし、この姿勢は任意であり、斜め下向きでも横向きでもよい。
また、センサ台16aは、この例では、作動空間内に固定されているが、移動可能に構成してもよい。
【0020】
3次元距離センサ16は、フレキシブルな信号線16bにより視覚化装置20に接続されており、3次元距離センサ16により計測された3次元形状データは信号線16bを介して視覚化装置20に入力される。
【0021】
3次元距離センサ16は、具体的には、レーザスキャナやレーザレーダを用いることが望ましい。
【0022】
この例において、3次元距離センサ16は、センサ台16aに固定されているが、着脱可能な構成を有し、ハンド14に接続可能な接続部(図示しない)を有する構成であってもよい。
上記接続部を有する場合には、以下の各動作を実行することによってワーク1の認識及びロボット12による把持を行うことができる。
(1)ハンド14を移動し、ハンド14によりハンド14に3次元距離センサ16を取り付ける。
(2)ハンド14を移動し、3次元距離センサ16によりバラ積みされたワーク全体の3次元形状データをハンド14で把持可能な位置精度で計測する。
この際、ワーク全体の3次元形状データを単一の位置から前記位置精度で計測できない場合は、複数の位置から分割して計測する。
(3)ハンド14を移動し、ハンド14によりハンド14から距離センサ16を取り外す。
(4)ハンド14により把持可能なワーク1を順に把持して搬送先に搬送する。
【0023】
3次元データ記憶装置18は、3次元距離センサ16によって計測したワーク1の3次元データを保持しておく装置である。
3次元距離センサ16が、複数の位置から分割して計測を行っていた場合には、各計測結果の位置的関係を認識しながら保持する。
【0024】
視覚化装置20は、3次元データ記憶装置18に保持された3次元データから、以下の手順で2次元データを作成する。なお、図2は視覚化装置20における入力及び出力データについての模式図である。
(1)図3(A)に示す観察者の視点を表す視点座標値、観察者の上方向を示す画面上方向、視点座標値からワーク1の観測対象点に向けた視線方向、3次元データを回転させる際の回転中心軸について条件入力装置19から入力を受ける。
(2)ワーク1の計測に必要な回転角度(最大角度及び最小角度)を決定する。
(3)上記回転中心軸を基準とし、図3(B)に示すように、最小角度(この例では−20°)から最大角度(この例では20°)について3次元データを回転させながら、上記視点座標値から視認した場合の2次元データを複数作成する。
【0025】
なお、最大角度及び最小角度は、両角度の絶対値が等しくなるように設定(例えば、最大角度が30°及び最小角度が−30°)されていてもよいし、ワーク1の状態によっては上記最大角度及び最小角度の絶対値が等しくない値に設定することも可能である。
【0026】
また、2次元データの作成は、2次元データ作成間隔は一定に設定し、3次元データの回転速度を随時変更することによって、作成する2次元データの調整を行うことを想定している。
【0027】
条件入力装置19によって、タイマが入力された場合には、タイマ値から回転する角度(最小角度及び最大角度)を算出することも可能である。
かかる場合において、タイマ値をt[ms]、最大角度θmax、最小角度θmin、周期T[ms]とすると、回転角θは以下の式(1)で表される。

【数1】

さらに、f(t)は、例えば、以下のように表される。
【数2】

【数3】

式(2)は、回転速度を一定とした場合の式であり、図4(A)は、かかる式のグラフである。なお、式(2)におけるmodは割り算の余りを表している。
この例における回転方法は、回転角度が最大角度まで増加した後、最小角度に向けて折り返すものであり、この動きを一定の周期Tで繰り返す回転方法を想定している。
式(3)は、回転角度を三角関数で表現した場合であり、図4(B)は、かかる式のグラフである。式(2)と比較して、最小角度及び最大角度における折り返しが滑らかになるという特徴を有している。かかる場合、3次元データの回転角度の絶対値が増加するに従って2次元データの作成回数が減少する。
【0028】
表示装置21は、視覚化装置20が作成した2次元データについて、例えば、上記式(2)又は式(3)に従って連続的に表示させる。
【0029】
指示入力装置22は、表示装置21によって2次元表示された3次元データに従って、ロボット12を操作する装置である。
指示入力装置22は、表示装置21にタッチパネル機能等を持たせることによって、表示装置21と同一機構する構成でもよい。
【0030】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1 ワーク、3 容器、
10 バラ積みピッキング装置、
11 手先部、12 ロボット、
14 ハンド、16 3次元距離センサ、
16a センサ台、16b 信号線、
18 3次元データ記憶装置、
19 条件入力装置、
20 視覚化装置、21 表示装置、
22 制御装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの表示方法であって、
前記ワークの3次元データと、
前記3次元データについて所定の視点から視認した場合における2次元データを作成する視覚化装置と、
前記2次元データの表示が可能である表示装置と、を準備し、
(A)観察者が前記3次元データを視認する視点と、前記3次元データを回転させる際の最大回転角である最大角度及び最小回転角である最小角度と、前記3次元データを回転させる際に中心軸となる回転中心軸とを決定し、
(B)前記回転中心軸を基準として前記3次元データを前記最小角度と前記最大角度の間で回転させた場合の複数の回転角度において、前記視点から前記3次元データを視認した場合における2次元データを、前記視覚化装置によって複数作成し、
(C)前記表示装置に前記複数の2次元データを表示する、ことを特徴とする立体的表示方法。
【請求項2】
前記(B)において、前記回転は、前記回転角度が前記最大角度まで増加した後、前記最小角度に向けて折り返し、これを繰り返す、ことを特徴とする請求項1に記載の立体的表示方法。
【請求項3】
前記(B)において、前記回転を行う時間を有するタイマを準備し、
前記回転は、前記タイマに入力された時間だけ行われる、ことを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の立体的表示方法。
【請求項4】
前記(B)において、前記視覚化装置は、前記3次元データの回転角度の増加に比例して、回転速度を増加させる、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の立体的表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−160064(P2012−160064A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19808(P2011−19808)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】