説明

端子付き電線の製造方法及び端子付き電線

【課題】製造工程が煩雑になるのを抑制しながら、圧着片の端部のバリによって電線の絶縁被覆部が破損するのを抑制するとともに、圧着片の端部のバリが周辺の部材に接触することによる不都合を回避する。
【解決手段】端子付き電線の製造方法では、連続端子の第1圧着片15aと第2圧着片15bをそれらの結合部36で剪断する工程において、第1圧着片15aの端部にその表面側へ突出するバリ16aが形成される一方、第2圧着片15bの端部にその裏面側へ突出するバリ16bが形成されるように剪断を行い、第1圧着片15aと第2圧着片15bを絶縁被覆部2bに圧着する工程において、第1圧着片15aの表面と第2圧着片15bの表面が絶縁被覆部2bの周面に接触し、第1圧着片15aの端部のバリ16aが第2圧着片15bの裏面に当接するとともに、第2圧着片15bの端部のバリ16bが第1圧着片15aの表面に当接するように圧着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線の製造方法及び端子付き電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1には、端子の圧着片を電線の絶縁被覆部に巻回させた状態で圧着することによって電線に端子を取り付ける端子付き電線の製造方法が開示されている。一般的に、端子の製造時には金属板から端子の展開形状を持つ端子原板を打ち抜き、その打ち抜いた端子原板を曲げ加工することによって端子を作製する。そして、端子原板を金属板から打ち抜く際には、その端部にバリが形成される。このバリが端子の圧着片の端部に残っていると、圧着片を電線の絶縁被覆部に圧着するときにそのバリが絶縁被覆部に接触して絶縁被覆部が破損する虞がある。また、バリが端子の外側に突出した状態であれば、端子の周辺の部材にバリが引っ掛かる等の不都合が生じる。そこで、特許文献1では、上記のようなバリをスエージ加工等の潰し加工によって除去している。
【特許文献1】特開2001−319702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1のようにバリを除去する作業を行う場合には、工程数が増加し、その結果、端子付き電線の製造工程が煩雑になるという問題点がある。
【0004】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、製造工程が煩雑になるのを抑制しながら、圧着片の端部のバリによって電線の絶縁被覆部が破損するのを抑制するとともに、圧着片の端部のバリが周辺の部材に接触することによる不都合を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明による端子付き電線の製造方法は、特定方向に配列された複数の端子を一体に有し、前記各端子が前記特定方向に沿った一方側に延びる第1圧着片と他方側に延びる第2圧着片をそれぞれ含むとともに、前記各端子の第1圧着片と隣り合う別の前記端子の第2圧着片とが相互に繋がっている連続端子を準備する工程と、繋がっている前記第1圧着片と前記第2圧着片をそれらの端部に対応する位置で厚み方向にそれぞれ剪断して切り離す工程と、切り離された前記各端子の前記第1圧着片と前記第2圧着片を電線の絶縁被覆部に巻回して圧着する工程とを備えている。そして、前記第1圧着片と前記第2圧着片をそれらの結合部で剪断する工程では、前記第1圧着片の端部にその表面側へ突出するバリが形成される一方、前記第2圧着片の端部にその裏面側へ突出するバリが形成されるように剪断を行い、前記第1圧着片と前記第2圧着片を前記絶縁被覆部に圧着する工程では、前記第1圧着片の表面と前記第2圧着片の表面が前記絶縁被覆部の周面に接触し、前記第1圧着片の端部のバリが前記第2圧着片の裏面に当接するとともに、前記第2圧着片の端部のバリが前記第1圧着片の表面に当接するように圧着する。
【0006】
この端子付き電線の製造方法では、互いに繋がっている端子の第1圧着片と第2圧着片をそれらの端部に対応する位置でそれぞれ剪断する工程において、第1圧着片の端部にその表面側へ突出するバリが形成される一方、第2圧着片の端部にその裏面側へ突出するバリが形成される。しかし、次の圧着工程、すなわち、端子の第1圧着片と第2圧着片を電線の絶縁被覆部に巻回して圧着する工程では、第1圧着片の表面と第2圧着片の表面が絶縁被覆部の周面に接触し、第1圧着片の端部のバリが第2圧着片の裏面に当接する一方、第2圧着片の端部のバリが第1圧着片の表面に当接するように圧着が行われるので、前記バリによる不都合を解消できる。
【0007】
具体的に、第1圧着片と第2圧着片が電線の絶縁被覆部に圧着される際、第1圧着片の端部のバリは絶縁被覆部の径方向内側に向かって突出するように配置されるが、このバリが第2圧着片の裏面に当接するように圧着が行われるので、このバリが電線の絶縁被覆部と接触することが防がれる。逆に、第2圧着片の端部のバリは絶縁被覆部の径方向外側へ向かって突出するように配置されるが、このバリが第1圧着片の表面に当接するように、すなわち、このバリを第1圧着片が覆うように圧着が行われるので、このバリが周辺の部材、例えばゴム製のシール材に接触してこれを傷つけるといったことが防がれる。
【0008】
つまり、この端子付き電線の製造方法では、第1圧着片の端部のバリと第2圧着片の端部のバリを除去する作業を行わなくても、それらのバリが電線の絶縁被覆部に接触することが防がれるとともに周辺の部材に接触することが防がれる。その結果、製造工程が煩雑になるのを抑制しながら、第1圧着片の端部のバリ及び第2圧着片の端部のバリによって電線の絶縁被覆部が破損するのを抑制することができるとともに、第1圧着片の端部のバリ及び第2圧着片の端部のバリが周辺の部材に接触することによる不都合を回避することができる。
【0009】
本発明による端子付き電線は、絶縁被覆部を有する電線と、当該電線の絶縁被覆部に圧着された第1圧着片と第2圧着片を有する端子とを備えている。そして、前記第1圧着片と前記第2圧着片は、前記端子の中心軸を挟んだ両側にそれぞれ配置されているとともに前記電線の絶縁被覆部の周面に巻回された状態で圧着されており、前記第1圧着片の前記第2圧着片と反対側の端部は、前記絶縁被覆部の径方向内側に突出したバリを有する一方、前記第2圧着片の前記第1圧着片と反対側の端部は、前記絶縁被覆部の径方向外側に突出したバリを有し、前記第1圧着片の端部のバリは前記第2圧着片の外側の面に当接するとともに、前記第2圧着片の端部のバリは前記第1圧着片の内側の面に当接している。
【0010】
この端子付き電線では、端子の第1圧着片と第2圧着片が電線の絶縁被覆部の周面に巻回された状態で圧着されているとともに、第1圧着片の第2圧着片と反対側の端部が絶縁被覆部の径方向内側に突出したバリを有する一方、第2圧着片の第1圧着片と反対側の端部が絶縁被覆部の径方向外側に突出したバリを有している。しかし、第1圧着片の端部のバリが第2圧着片の外側の面に当接しているとともに第2圧着片の端部のバリが第1圧着片の内側の面に当接しているので、前記バリによる不都合を解消できる。
【0011】
具体的に、第1圧着片の端部のバリは絶縁被覆部の径方向内側に向かって突出しているが、このバリは第2圧着片の外側の面に当接しているので、このバリが電線の絶縁被覆部と接触することが防がれる。逆に、第2圧着片の端部のバリは絶縁被覆部の径方向外側に向かって突出しているが、このバリが第1圧着片の内側の面に当接するように、すなわち、このバリを第1圧着片が覆っているので、このバリが周辺の部材、例えばゴム製のシール材に接触してこれを傷つけるといったことが防がれる。
【0012】
つまり、この端子付き電線では、第1圧着片の端部のバリと第2圧着片の端部のバリを除去する作業を行わなくても、それらのバリが電線の絶縁被覆部に接触することが防がれるとともに周辺の部材に接触することが防がれる。その結果、製造工程が煩雑になるのを抑制しながら、第1圧着片の端部のバリ及び第2圧着片の端部のバリによって電線の絶縁被覆部が破損するのを抑制することができるとともに、第1圧着片の端部のバリ及び第2圧着片の端部のバリが周辺の部材に接触することによる不都合を回避することができる。
【0013】
本発明による端子付き電線の製造方法は、中心軸を挟んで両側にそれぞれ延びる第1圧着片と第2圧着片を含み、前記第1圧着片の前記第2圧着片と反対側の端部がその表面側から突出するバリを有するとともに、前記第2圧着片の前記第1圧着片と反対側の端部がその裏面側から突出するバリを有する端子を準備する工程と、前記端子の前記第1圧着片と前記第2圧着片を電線の絶縁被覆部に巻回して圧着する工程とを備えている。そして、前記第1圧着片と前記第2圧着片を前記絶縁被覆部に圧着する工程では、前記第1圧着片の表面と前記第2圧着片の表面が前記絶縁被覆部の周面に接触し、前記第1圧着片の端部のバリが前記第2圧着片の裏面に当接するとともに、前記第2圧着片の端部のバリが前記第1圧着片の表面に当接するように圧着する。
【0014】
この端子付き電線の製造方法では、端子の第1圧着片と第2圧着片を電線の絶縁被覆部に巻回して圧着する工程では、第1圧着片の表面と第2圧着片の表面が絶縁被覆部の周面に接触し、第1圧着片の端部のバリが第2圧着片の裏面に当接する一方、第2圧着片の端部のバリが第1圧着片の表面に当接するように圧着が行われるので、前記バリによる不都合を解消できる。
【0015】
具体的に、第1圧着片と第2圧着片が電線の絶縁被覆部に圧着される際、第1圧着片の端部のバリは絶縁被覆部の径方向内側に向かって突出するように配置されるが、このバリが第2圧着片の裏面に当接するように圧着が行われるので、このバリが電線の絶縁被覆部と接触することが防がれる。逆に、第2圧着片の端部のバリは絶縁被覆部の径方向外側へ向かって突出するように配置されるが、このバリが第1圧着片の表面に当接するように、すなわち、このバリを第1圧着片が覆うように圧着が行われるので、このバリが周辺の部材、例えばゴム製のシール材に接触してこれを傷つけるといったことが防がれる。
【0016】
つまり、この端子付き電線の製造方法では、第1圧着片の端部のバリと第2圧着片の端部のバリを除去する作業を行わなくても、それらのバリが電線の絶縁被覆部に接触することが防がれるとともに周辺の部材に接触することが防がれる。その結果、製造工程が煩雑になるのを抑制しながら、第1圧着片の端部のバリ及び第2圧着片の端部のバリによって電線の絶縁被覆部が破損するのを抑制することができるとともに、第1圧着片の端部のバリ及び第2圧着片の端部のバリが周辺の部材に接触することによる不都合を回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、製造工程が煩雑になるのを抑制しながら、第1圧着片の端部のバリ及び第2圧着片の端部のバリによって電線の絶縁被覆部が破損するのを抑制することができるとともに、第1圧着片の端部のバリ及び第2圧着片の端部のバリが周辺の部材に接触することによる不都合を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態による端子付き電線の構成を示した斜視図である。まず、図1を参照して、本発明の一実施形態による端子付き電線の構成について説明する。
【0020】
本実施形態による端子付き電線は、被覆電線2(電線)と、その被覆電線2に取り付けられた端子4とからなる。被覆電線2は、金属材料からなる芯線部2aと絶縁材料からなる絶縁被覆部2bとを有しており、絶縁被覆部2bは芯線部2aの先端近傍の部分を残してそれ以外の部分を被覆している。
【0021】
端子4は、金属材料によって形成されている。この端子4は、コネクタのハウジングに装着され、そのコネクタと相手側のコネクタとが嵌合したときに相手側のコネクタの端子と結合して電気的な接続を取るものである。そして、端子4は、電気接続部11と、ワイヤバレル13と、インシュレーションバレル15とを一体に有している。これら電気接続部11、ワイヤバレル13及びインシュレーションバレル15は、端子4の軸方向に沿ってこの順番で設けられている。
【0022】
電気接続部11は、上記相手側コネクタの端子と電気的に接続される部分である。また、ワイヤバレル13は、被覆電線2の前記芯線部2aの露出された先端近傍の部分に圧着されている。
【0023】
また、インシュレーションバレル15は、被覆電線2の絶縁被覆部2bに圧着されている。このインシュレーションバレル15は、互いに繋がった第1圧着片15aと第2圧着片15bとからなる。第1圧着片15aと第2圧着片15bとは、それぞれ端子4の中心軸を挟んで左右両側に配置されている。このインシュレーションバレル15の第1圧着片15aと第2圧着片15bが被覆電線2の絶縁被覆部2bの周面に巻回された状態で圧着されている。第1圧着片15aの第2圧着片15bと反対側の端部は、絶縁被覆部2bの径方向内側に突出したバリ16aを有している。一方、第2圧着片15bの第1圧着片15aと反対側の端部は、絶縁被覆部2bの径方向外側に突出したバリ16bを有している。そして、第1圧着片15aの上記端部近傍の部分と第2圧着片15bの上記端部近傍の部分とは絶縁被覆部2bの径方向において互いに重なっている。そして、第1圧着片15aの上記端部のバリ16aは第2圧着片15bの外側の面に当接するとともに、第2圧着片15bの上記端部のバリ16bは第1圧着片15aの内側の面に当接している。
【0024】
図2〜図8は、本発明の一実施形態による端子付き電線の製造プロセスを説明するための図である。次に、図1〜図8を参照して、本発明の一実施形態による端子付き電線の製造方法について説明する。
【0025】
まず、金属薄板から図2に示した端子原板を打ち抜く。この端子原板は、特定方向に配列された複数の同形の端子展開部24を一体に有している。各端子展開部24は、上記端子4の展開形状を有している。そして、各端子展開部24は、それぞれ、電気接続部展開部31と、ワイヤバレル展開部33と、インシュレーションバレル展開部35とを一体に有している。これら電気接続部展開部31、ワイヤバレル展開部33及びインシュレーションバレル展開部35は、端子展開部24の配列方向と直交する方向にこの順番で設けられている。電気接続部展開部31は、上記電気接続部11の展開形状を有しており、ワイヤバレル展開部33は、上記ワイヤバレル13の展開形状を有している。また、インシュレーションバレル展開部35は、上記インシュレーションバレル15の展開形状を有している。そして、インシュレーションバレル展開部35は、第1圧着片15aと第2圧着片15bとからなる。なお、この端子原板において、第1圧着片15aは上記端子4における第1圧着片15aの展開形状を有しており、第2圧着片15bは上記端子4における第2圧着片15bの展開形状を有している。すなわち、この端子原板において、第1圧着片15aは端子展開部24の中心線に対して各端子展開部24の配列方向に沿った一方側に延びているとともに、第2圧着片15bは各端子展開部24の配列方向に沿った他方側に延びている。また、この第1圧着片15aと第2圧着片15bは、端子展開部24の中心線に対して両側にそれぞれ均等な長さで延びている。そして、各端子展開部24の第1圧着片15aの端部と隣り合う別の端子展開部24の第2圧着片15bの端部とが相互に直接繋がっている。この繋がっている第1圧着片15aと第2圧着片15bの結合部36は、隣り合う端子展開部24間の位置に設けられている。
【0026】
次に、上記した端子原板を曲げ加工することによって、図3に示すように特定方向に配列された複数の端子4を一体に有する連続端子を作製する。この際、電気接続部展開部31を曲げ加工することにより電気接続部11が形成されるとともに、ワイヤバレル展開部33を曲げ加工することにより端子4の軸方向に垂直な断面が略U字状のワイヤバレル13が形成される。なお、この際、インシュレーションバレル展開部35の曲げ加工は行わず、図2に示した端子原板におけるインシュレーションバレル展開部35の形態が保持される。このようにして、インシュレーションバレル展開部35によって各端子4が直接繋がった連続端子が作製される。この後、作製された連続端子が順次リールに巻き取られる。
【0027】
次に、上記の連続端子を用いて端子付き電線を作製する。この端子付き電線の製造プロセスでは、リールに巻かれた連続端子を圧着機に装着する。圧着機では、リールから連続端子が引き出されて各端子4が順番に供給されるとともに、供給された各端子4が順番に切り離される。具体的には、図4〜図6に示すプロセスで圧着機の切断刃100a,100bにより各端子4の第2圧着片15bと隣り合う端子4の第1圧着片15aとがそれらの結合部36で厚み方向に剪断されることによって各端子4が切り離される。この際、端子4の第2圧着片15bの端部が切断刃100bにより上方へ押される一方、その端子4に隣り合う端子4の第1圧着片15aの端部が切断刃100aにより下方へ押されて両者の結合部36が厚み方向に剪断される。これにより、図6に示すように、第1圧着片15aの端部にはその表面側に突出するバリ16aが形成される一方、第2圧着片15bの端部にはその裏面側に突出するバリ16bが形成される。この後、切り離された端子4の第1圧着片15aと第2圧着片15bが曲げ起こされることによって、断面略U字状のインシュレーションバレル15(図7参照)が形成される。
【0028】
そして、ワイヤバレル13内に芯線部2aが位置するとともにインシュレーションバレル15内に絶縁被覆部2bが位置するように端子4に対して被覆電線2がセットされる。その後、図7に示すように、ワイヤバレル13が芯線部2aに圧着される。また、図8に示す状態を経て図1に示すように、インシュレーションバレル15の第1圧着片15aと第2圧着片15bが絶縁被覆部2bに圧着される。この際、第1圧着片15aの表面と第2圧着片15bの表面が絶縁被覆部2bの周面に接触した状態で、第1圧着片15aと第2圧着片15bが絶縁被覆部2bの周面に巻回されて圧着される。そして、この際、第1圧着片15aの端部が第2圧着片15bの端部の外側に重なった状態で圧着される。この状態で第1圧着片15aの端部のバリ16aは第2圧着片15bの裏面に当接するとともに、第2圧着片15bの端部のバリ16bは第1圧着片15aの表面に当接する。以上のようにして、図1に示した端子付き電線が作製される。
【0029】
以上説明したように、本実施形態による端子付き電線の製造方法では、互いに繋がっている端子4の第1圧着片15aと第2圧着片15bをそれらの端部に対応する位置にある結合部36で剪断する工程において、第1圧着片15aの端部にその表面側へ突出するバリ16aが形成される一方、第2圧着片15bの端部にその裏面側へ突出するバリ16bが形成される。しかし、次の圧着工程、すなわち、端子4の第1圧着片15aと第2圧着片15bを被覆電線2の絶縁被覆部2bに巻回して圧着する工程では、第1圧着片15aの表面と第2圧着片15bの表面が絶縁被覆部2bの周面に接触し、第1圧着片15aの端部のバリ16aが第2圧着片15bの裏面に当接する一方、第2圧着片15bの端部のバリ16bが第1圧着片15aの表面に当接するように圧着が行われるので、前記バリ16a,16bによる不都合を解消できる。
【0030】
具体的に、第1圧着片15aと第2圧着片15bが被覆電線2の絶縁被覆部2bに圧着される際、第1圧着片15aの端部のバリ16aは絶縁被覆部2bの径方向内側に向かって突出するように配置されるが、このバリ16aが第2圧着片15bの裏面に当接するように圧着が行われるので、このバリ16aが被覆電線2の絶縁被覆部2bと接触することが防がれる。逆に、第2圧着片15bの端部のバリ16bは絶縁被覆部2bの径方向外側に向かって突出するように配置されるが、このバリ16bが第1圧着片15aの表面に当接するように、すなわち、このバリ16bを第1圧着片15aが覆うように圧着が行われるので、このバリ16bが周辺の部材に接触することが防がれる。例えば、端子付き電線を防水コネクタのゴム製のシール材の挿通孔に圧入する際に、第2圧着片15bの端部のバリ16bがシール材の挿通孔の内壁面に接触してこれを傷つけるといったことが防がれる。
【0031】
つまり、この端子付き電線の製造方法では、第1圧着片15aの端部のバリ16aと第2圧着片15bの端部のバリ16bを除去する作業を行わなくても、それらのバリ16a,16bが被覆電線2の絶縁被覆部2bに接触することが防がれるとともに周辺の部材に接触することが防がれる。その結果、製造工程が煩雑になるのを抑制しながら、第1圧着片15aの端部のバリ16a及び第2圧着片15bの端部のバリ16bによって被覆電線2の絶縁被覆部2bが破損するのを抑制することができるとともに、第1圧着片15aの端部のバリ16a及び第2圧着片15bの端部のバリ16bが周辺の部材に接触することによる不都合を回避することができる。
【0032】
また、本実施形態の端子付き電線による効果は、上記端子付き電線の製造方法による効果と同様である。
【0033】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0034】
例えば、上記実施形態では、第1圧着片15aと第2圧着片15bが均等な長さを有する端子4を用いて端子付き電線を製造したが、これに限らず、第1圧着片と第2圧着片が互いに異なる長さを有する端子を用いて端子付き電線を製造してもよい。例えば、このような製造プロセスでは、図9に示すような上記実施形態の変形例による端子原板を金属板から打ち抜く。この端子原板では、端子展開部24の中心軸に対して右側に延びる第1圧着片55aが左側に延びる第2圧着片55bよりも長くなっている。これにより、端子展開部24の第1圧着片55aとその端子展開部24に隣り合う別の端子展開部24の第2圧着片55bとの結合部56は、隣り合う端子展開部24,24間の位置からずれた位置に配置されている。そして、この端子原板を用いて上記実施形態と同様に連続端子を作製し、その後、作製した連続端子を用いて端子付き電線を作製する。
【0035】
この際、繋がっている第1圧着片55aと第2圧着片55bをそれらの結合部56で圧に方向に剪断して切り離す。その後、各端子の第1圧着片55aと第2圧着片55bを曲げ起こして図10に示すような断面形状のインシュレーションバレル55を形成する。このインシュレーションバレル55では、第1圧着片55aが第2圧着片55bに比べて上方へ長く延びている。この後、図11に示す状態を経て図12に示すように、インシュレーションバレル55の第1圧着片55aと第2圧着片55bを絶縁被覆部2bに圧着する。この際、第1圧着片55aは第2圧着片55bの外側に重なるように圧着される。また、第1圧着片55aと第2圧着片55bは、端子の中心線から第2圧着片55b側にずれた位置で重なって圧着される。
【0036】
また、上記実施形態では、所定の端子4の第1圧着片15aとその端子4に隣り合う端子4の第2圧着片15bとが直接繋がっている連続端子を用いて端子付き電線を製造する場合を例にとって説明したが、これに限らず、所定の端子の第1圧着片とその端子に隣り合う端子の第2圧着片が所定の連結部分を介して一体に繋がっている連続端子を用いて端子付き電線を製造する場合にも本発明を適用することができる。
【0037】
また、上記実施形態による端子付き電線の製造プロセスの説明では、金属板から端子原板を打ち抜く工程から端子4を被覆電線2に圧着する工程までを連続して行うように説明したが、本発明はこの製造プロセスに限定されるものではない。例えば、既に作製された上記構成を有する連続端子があれば、それを用いることにより上記連続端子の作製までの工程を省いて端子付き電線を製造してもよい。また、既に個別に形成された上記構成の端子4があれば、それを用いることにより上記端子4の形成までの工程を省いて端子付き電線を製造してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態による端子付き電線の構成を示した斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による端子付き電線の製造に用いる端子原板の平面図である。
【図3】端子付き電線の製造時に図2に示した端子原板から作製する連続端子の平面図である。
【図4】図3に示した連続端子の各端子を第1圧着片と第2圧着片の結合部で剪断する際のプロセスを説明するための図である。
【図5】図3に示した連続端子の各端子を第1圧着片と第2圧着片の結合部で剪断する際のプロセスを説明するための図である。
【図6】図3に示した連続端子の各端子を第1圧着片と第2圧着片の結合部で剪断する際のプロセスを説明するための図である。
【図7】切り離された各端子が被覆電線に圧着される際のプロセスを説明するための斜視図である。
【図8】切り離された各端子が被覆電線に圧着される際のプロセスを説明するための斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態の変形例による端子付き電線の製造に用いる端子原板の平面図である。
【図10】図9に示した端子原板から形成される端子のインシュレーションバレルの断面図である。
【図11】図10に示したインシュレーションバレルが被覆電線に圧着される際のプロセスを説明するための断面図である。
【図12】図10に示したインシュレーションバレルが被覆電線に圧着された後の状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0039】
2 被覆電線(電線)
2b 絶縁被覆部
4 端子
15a、55a 第1圧着片
15b、55b 第2圧着片
16a、16b バリ
36 結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定方向に配列された複数の端子を一体に有し、前記各端子が前記特定方向に沿った一方側に延びる第1圧着片と他方側に延びる第2圧着片をそれぞれ含むとともに、前記各端子の第1圧着片と隣り合う別の前記端子の第2圧着片とが相互に繋がっている連続端子を準備する工程と、
繋がっている前記第1圧着片と前記第2圧着片をそれらの端部に対応する位置で厚み方向にそれぞれ剪断して切り離す工程と、
切り離された前記各端子の前記第1圧着片と前記第2圧着片を電線の絶縁被覆部に巻回して圧着する工程とを備え、
前記第1圧着片と前記第2圧着片をそれらの結合部で剪断する工程では、前記第1圧着片の端部にその表面側へ突出するバリが形成される一方、前記第2圧着片の端部にその裏面側へ突出するバリが形成されるように剪断を行い、
前記第1圧着片と前記第2圧着片を前記絶縁被覆部に圧着する工程では、前記第1圧着片の表面と前記第2圧着片の表面が前記絶縁被覆部の周面に接触し、前記第1圧着片の端部のバリが前記第2圧着片の裏面に当接するとともに、前記第2圧着片の端部のバリが前記第1圧着片の表面に当接するように圧着する、端子付き電線の製造方法。
【請求項2】
絶縁被覆部を有する電線と、
当該電線の絶縁被覆部に圧着された第1圧着片と第2圧着片を有する端子とを備え、
前記第1圧着片と前記第2圧着片は、前記端子の中心軸を挟んだ両側にそれぞれ配置されているとともに前記電線の絶縁被覆部の周面に巻回された状態で圧着されており、
前記第1圧着片の前記第2圧着片と反対側の端部は、前記絶縁被覆部の径方向内側に突出したバリを有する一方、前記第2圧着片の前記第1圧着片と反対側の端部は、前記絶縁被覆部の径方向外側に突出したバリを有し、
前記第1圧着片の端部のバリは前記第2圧着片の外側の面に当接するとともに、前記第2圧着片の端部のバリは前記第1圧着片の内側の面に当接している、端子付き電線。
【請求項3】
中心軸を挟んで両側にそれぞれ延びる第1圧着片と第2圧着片を含み、前記第1圧着片の前記第2圧着片と反対側の端部がその表面側から突出するバリを有するとともに、前記第2圧着片の前記第1圧着片と反対側の端部がその裏面側から突出するバリを有する端子を準備する工程と、
前記端子の前記第1圧着片と前記第2圧着片を電線の絶縁被覆部に巻回して圧着する工程とを備え、
前記第1圧着片と前記第2圧着片を前記絶縁被覆部に圧着する工程では、前記第1圧着片の表面と前記第2圧着片の表面が前記絶縁被覆部の周面に接触し、前記第1圧着片の端部のバリが前記第2圧着片の裏面に当接するとともに、前記第2圧着片の端部のバリが前記第1圧着片の表面に当接するように圧着する、端子付き電線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−84630(P2008−84630A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261724(P2006−261724)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】