端子金具付き電線の製造方法及び端子金具付き電線
【課題】被覆電線と端子金具との接続部分に水分が侵入することを防止できる端子金具付電線の製造方法及び端子金具付き電線を提供する。
【解決手段】被覆電線20の芯線22を、端子金具30の円筒形状をなすバレル部31に挿通し、当該バレル部31を圧縮変形させるかしめ工程を行って被覆電線20と端子金具30とを接続する。ここで、このかしめ工程において、バレル部31がその一部に円筒形状が残こるように圧縮変形する。そして、その後、バレル部31の円筒形状部分と被覆電線20の絶縁被覆21の端部との間にわたって熱収縮チューブ40を被せて収縮させると、収縮性チューブが絶縁被覆21及びバレル部31の円筒形状部分の外周に密着する。これにより、収縮性チューブを被せて収縮させた際にバレル部31の非圧着部33と熱収縮チューブ40の端部40Bとの間に隙間が生じにくく、水分の浸入を防ぐことができる。
【解決手段】被覆電線20の芯線22を、端子金具30の円筒形状をなすバレル部31に挿通し、当該バレル部31を圧縮変形させるかしめ工程を行って被覆電線20と端子金具30とを接続する。ここで、このかしめ工程において、バレル部31がその一部に円筒形状が残こるように圧縮変形する。そして、その後、バレル部31の円筒形状部分と被覆電線20の絶縁被覆21の端部との間にわたって熱収縮チューブ40を被せて収縮させると、収縮性チューブが絶縁被覆21及びバレル部31の円筒形状部分の外周に密着する。これにより、収縮性チューブを被せて収縮させた際にバレル部31の非圧着部33と熱収縮チューブ40の端部40Bとの間に隙間が生じにくく、水分の浸入を防ぐことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具付き電線の製造方法及び端子金具付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車に使用される被覆電線では、その軽量化や低コスト化を図るために、銅合金製の従来の芯線に代えてアルミ製の芯線を使用することがある。一方、被覆電線と接続される端子金具については、アルミ製よりも高い強度が得られる銅合金製のものが望ましい。
【0003】
また、端子金具として、被覆電線の芯線が円筒形状のクローズドバレル部に挿入されてかしめられるクローズドバレル型を用いることにより、カシメ片の強度を充分に確保することが困難なオープンバレル型端子金具を使用するよりも、より強い強度で芯線をかしめることが可能になる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−120384公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被覆電線を端子金具に導通接続させるにあたって、接続部分に進入する水分が問題となることがある。特に、被覆電線の芯線と端子金具とが異種の金属によって形成されている場合には、両者の接続部分に水分が介在すると両金属が水中にイオンとして溶け込んで電気化学的反応によって腐食が進行する電食が発生することが知られている。
【0005】
そこで、図12に示すように、接続部分にチューブを外挿し、被覆電線2の被覆からクローズドバレル部3に亘って覆い、これにより被覆電線2と端子金具1との接続部分への水分の浸入を防ぎ、前記した電食の発生を防止する技術が開発されている。
【0006】
しかしながら、上記構成では、芯線1Aとクローズドバレル部3の接続の際に、図13に示す円筒形状のクローズドバレル部3が、例えば、六角圧着機5で外部からかしめられると(図14)、図15に示すように、非円形に変形する。そして、図16に示すように、防水のためのチューブ6を被せると、かしめられた部分が六角形である(円形ではない)ため、クローズドバレル部とチューブ6との間に隙間gが生じやすい。そのため、この隙間gから水分が浸入しやすく、この水分により電食等が発生するおそれがある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、被覆電線と端子金具との接続部分に水分が侵入することを防止できる端子金具付電線の製造方法及び端子金具付き電線を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の端子金具付き電線の製造方法は、被覆電線の芯線を、端子金具の円筒形状をなすクローズドバレル部に挿通し、当該クローズドバレル部を圧縮変形させるかしめ工程を行って前記被覆電線と前記端子金具とを接続する端子金具付電線の製造方法であって、前記かしめ工程において、前記クローズドバレル部をその一部に前記円筒形状が残るように圧縮変形させ、その後、前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分と前記被覆電線の絶縁被覆の端部との間にわたって収縮性チューブを被せてその収縮性チューブが前記絶縁被覆及び前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分に密着するように収縮させるところに特徴を有する。
【0009】
上記製造方法において、前記被覆電線の芯線と端子金具とは異種の金属で形成されていてもよい。また、前記収縮性チューブを透明にしてもよい。
【0010】
本発明の端子金具付き電線は、被覆電線の芯線が、端子金具の円筒形状をなすクローズドバレル部に挿通され、当該クローズドバレル部が、かしめ工程により圧縮変形されることで前記被覆電線と前記端子金具とが接続された端子金具付電線であって、前記端子金具は、前記クローズドバレル部の一部に前記円筒形状が残るように圧縮変形されており、前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分と前記被覆電線の絶縁被覆の端部との間にわたって被せられた収縮性チューブの収縮により、前記収縮性チューブが前記絶縁被覆及び前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分に密着されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、クローズドバレル部がその一部に円筒形状が残るように圧縮変形されているから、収縮性チューブは、電線の絶縁被覆だけでなくクローズドバレル部の円筒形状部分にも密着する。これにより、水分の浸入を防ぐことができる。
【0012】
また、被覆電線の芯線と端子金具とが異種の金属によって形成されている場合であっても、クローズドバレル部と収縮性チューブとの間に隙間が生じにくく、水分の浸入を防ぐことができるから、この隙間から浸入する水分に起因する電食を防止することができる。
また、収縮性チューブを透明にすると、被覆電線と端子金具の接続状態を目視により確認することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1の端子金具付き電線の製造方法について、図1〜図11を参照して説明する。
本実施形態の端子金具付き電線10は、図1に示すように、被覆電線20の先端部に端子金具30が圧着接続されてなり、例えば電気自動車において走行用の動力源を構成するバッテリ、インバータ、モータなどの装置(図示せず)の間に配索されるものである。
【0014】
被覆電線20は、複数の細いアルミ線を螺旋状に撚り合わせてなる芯線22を樹脂製の絶縁被覆21(絶縁層)で被覆したものであり、その端末部においては、絶縁被覆21が剥き取られて芯線22が露出されている(端部21Aまで被覆されている)。図3に示すように、この被覆電線20の断面形状は芯線22と絶縁被覆21の双方が略円形とされている。なお、本実施形態の被覆電線20は、銅合金製の従来の芯線に代えてアルミ製の芯線22を使用することで、軽量化や低コスト化が図られている。
【0015】
端子金具30は、図5に示すように、円筒形状のバレルを有するいわゆるクローズドバレル型であって、被覆電線20が圧着されるバレル部31(本発明の「クローズドバレル部」に相当)と、バッテリー等の電気機器に取り付けられる環状の端子部35と、からなり、アルミ製よりも高い強度が得られる銅合金製とされている。
【0016】
バレル部31は、図2に示すように、楕円の円筒形状をなし、その端子部側(の端部)が閉塞された閉口端とされ、芯線22の挿入側は開口した開口端となっている(図1、図4参照)。芯線22が開口端側から先端が突き当たる位置まで挿入されている。
【0017】
そして、後述するかしめ工程の際には、図6、図7に示すように、圧着機50によりバレル部31のうち電線方向の略中央部がかしめられて非円形(六角形)に変形して芯線22と圧着された圧着部32とされる。これにより、バレル部31のうち圧着部32よりも端子部35側(圧着部32と端子部35との間)は、圧着されず円筒形状のままで残された非圧着部33とされる。この略円形(楕円形)の外周として残された非圧着部33と、円形の絶縁被覆21とにわたって後述する熱収縮チューブ40で被覆(密着)される。
【0018】
端子部35は、バレル部31の長さ方向にバレル部31と連続して設けられており、バッテリー端子等の棒状の端子に円環の孔35Aから挿入されて導通が図られる。
【0019】
熱収縮チューブ40(本発明の「収縮性チューブ」に相当)は、図1に示すように、円筒形状をなし、加熱により収縮が可能で水分を通さない防水性の樹脂材料(例えば、電子線架橋ポリエチレンなど)からなる。この熱収縮チューブ40は、透明のものが用いられており、芯線22とバレル部31との接続状態を視認できるようになっている。製造当初(熱収縮前)における熱収縮チューブ40の径の大きさは、圧着した端子金具を容易に挿通できる大きさとなっている。
【0020】
次に、端子金具付き電線の製造方法について説明する。
被覆電線を端子金具へ圧着するかしめ工程、熱収縮チューブで被覆する工程の順に行われる。
(かしめ工程)
図5に示すように、被覆電線20の端部にて絶縁層を剥ぎ取り芯線22を露出させた芯線22を端子金具30の円筒形状のバレル部31に突き当たるまで挿通する。
そして、アルミはんだをバレル部31の内部に入れ、バレル部31と芯線22とをはんだ付けする。
【0021】
次に、図8に示すように、圧着機50により、バレル部31のうち端子部35側の端部(非圧着部33)を残して、バレル部31の略中央部(圧着部32)を全周に亘ってかしめる。これにより、図9に示すように、かしめられた部分(圧着部32)は、バレル部31が六角形に圧縮変形するとともに(図14参照)、その内部の芯線22もバレル部31の変形に応じて六角形に圧縮変形して、端子金具30のバレル部31と被覆電線20の芯線22が圧着接続される。一方、図6に示すように、バレル部31のうち圧着部32よりも端子部35側の端部(非圧着部33)については、かしめられておらず、バレル部31の非圧着部33の周面は円形のままとなっている。
【0022】
(熱収縮チューブで被覆する工程)
次に、図10に示すように、熱収縮チューブ40を端子金具30の圧着された被覆電線20に通し、図11に示すように、これらをヒータ60で熱しながら回転させる。すると、熱収縮チューブ40の全体が徐々に収縮していく。
そして、熱収縮チューブ40の全体が被覆電線20の絶縁被覆21から芯線22及び端子金具30の露出した部分(かしめられた部分)、非圧着部33まで密着してはりつく。即ち、被覆電線20側にあっては、図3に示すように、熱収縮チューブ40の被覆電線20側の環状の端部40Aが被覆電線20の円形の絶縁被覆21に隙間なく密着した状態で取り付けられる。一方、端子金具30側にあっては、図2に示すように、反対側の熱収縮チューブ40の環状の端部40Bが、バレル部31の楕円形の外周(非圧着部33)に隙間なく密着した状態で取り付けられる。
【0023】
本実施形態では、被覆電線20の芯線22を、端子金具30の円筒形状をなすバレル部31(クローズドバレル部)に挿通し、当該バレル部31を圧縮変形させるかしめ工程を行って被覆電線20と端子金具30とを接続する。ここで、このかしめ工程において、バレル部31がその一部に円筒形状が残るように圧縮変形するようになっている。
そして、その後、バレル部31の円筒形状部分と被覆電線20の絶縁被覆21の端部との間にわたって熱収縮チューブ40を被せて収縮させると、熱収縮チューブ40が絶縁被覆21及びバレル部31の円筒形状部分の外周に密着する。
【0024】
これにより、バレル部31の円筒形状部分の外周は円形状であるため、収縮性チューブを被せて収縮させた際にバレル部31の非圧着部33と熱収縮チューブ40(収縮性チューブ)の端部40Bとの間に隙間が生じにくく、水分の浸入を防ぐことができる。
【0025】
また、被覆電線20の芯線22と端子金具30とは異種の金属で形成されている。
本実施形態のように、被覆電線20を端子金具30に導通接続させるにあたって、被覆電線20の芯線22と端子金具30とが異種の金属によって形成されている場合には、両者の接続部分に水分が介在すると両金属が水中にイオンとして溶け込んで電気化学的反応によって腐食が進行する電食が発生するおそれがある。
しかしながら、本実施形態によれば、バレル部31と熱収縮チューブ40との間に隙間が生じにくく、水分の浸入を防ぐことができるから、この隙間から浸入する水分に起因する電食を防止することができる。
【0026】
さらに、熱収縮チューブ40(収縮性チューブ)は透明であるから、被覆電線20と端子金具30の接続状態を目視により確認することが可能になる。
【0027】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)かしめ工程において芯線と端子金具を接続する方法としては、上記実施形態の六角圧着に限られず、他の圧着方法でもよい。
【0028】
(2)上記実施形態では、芯線22と端子金具30とが異種の金属によって形成されている構成としたが、同種の金属で形成されている構成としてもよい。この場合においても、接続部分に水分が浸入することを防止することができる。
(3)上記実施形態では、バレル部31が楕円の円筒形状のものを用いたが、これに限られず、真円形の円筒形状のものを用いてもよい。
(4)上記実施形態では、芯線22と端子金具30とを圧着接続した後に、熱収縮チューブ40を端子金具30の圧着された被覆電線20に通して熱収縮チューブ40を加熱収縮させる構成としたが、熱収縮チューブ40を端子金具30の取り付けられていない電線に通してから、端子金具30を取り付け圧着接続し、熱収縮チューブ40を移動させて端子金具30に被せ、加熱収縮させる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】端子金具付き電線の上面図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】図2のB−B断面図
【図4】端子金具付き電線の側面図
【図5】端子金具に芯線を挿入した図
【図6】かしめ工程後の上面図
【図7】かしめ工程後の側面図
【図8】かしめ工程中の側面図
【図9】かしめ工程後を説明する側面図
【図10】熱収縮チューブの収縮前の上面図
【図11】熱収縮チューブの加熱を説明する図
【図12】従来の端子金具付き電線の上面図
【図13】かしめ前の図
【図14】かしめ中の図
【図15】かしめ後の図
【図16】端子金具付き電線のC−C断面図
【符号の説明】
【0030】
10…端子金具付き電線
20…被覆電線
21…絶縁被覆
22…芯線
30…端子金具
31…バレル部
33…非圧着部
40…熱収縮チューブ(収縮性チューブ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具付き電線の製造方法及び端子金具付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車に使用される被覆電線では、その軽量化や低コスト化を図るために、銅合金製の従来の芯線に代えてアルミ製の芯線を使用することがある。一方、被覆電線と接続される端子金具については、アルミ製よりも高い強度が得られる銅合金製のものが望ましい。
【0003】
また、端子金具として、被覆電線の芯線が円筒形状のクローズドバレル部に挿入されてかしめられるクローズドバレル型を用いることにより、カシメ片の強度を充分に確保することが困難なオープンバレル型端子金具を使用するよりも、より強い強度で芯線をかしめることが可能になる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−120384公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被覆電線を端子金具に導通接続させるにあたって、接続部分に進入する水分が問題となることがある。特に、被覆電線の芯線と端子金具とが異種の金属によって形成されている場合には、両者の接続部分に水分が介在すると両金属が水中にイオンとして溶け込んで電気化学的反応によって腐食が進行する電食が発生することが知られている。
【0005】
そこで、図12に示すように、接続部分にチューブを外挿し、被覆電線2の被覆からクローズドバレル部3に亘って覆い、これにより被覆電線2と端子金具1との接続部分への水分の浸入を防ぎ、前記した電食の発生を防止する技術が開発されている。
【0006】
しかしながら、上記構成では、芯線1Aとクローズドバレル部3の接続の際に、図13に示す円筒形状のクローズドバレル部3が、例えば、六角圧着機5で外部からかしめられると(図14)、図15に示すように、非円形に変形する。そして、図16に示すように、防水のためのチューブ6を被せると、かしめられた部分が六角形である(円形ではない)ため、クローズドバレル部とチューブ6との間に隙間gが生じやすい。そのため、この隙間gから水分が浸入しやすく、この水分により電食等が発生するおそれがある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、被覆電線と端子金具との接続部分に水分が侵入することを防止できる端子金具付電線の製造方法及び端子金具付き電線を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の端子金具付き電線の製造方法は、被覆電線の芯線を、端子金具の円筒形状をなすクローズドバレル部に挿通し、当該クローズドバレル部を圧縮変形させるかしめ工程を行って前記被覆電線と前記端子金具とを接続する端子金具付電線の製造方法であって、前記かしめ工程において、前記クローズドバレル部をその一部に前記円筒形状が残るように圧縮変形させ、その後、前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分と前記被覆電線の絶縁被覆の端部との間にわたって収縮性チューブを被せてその収縮性チューブが前記絶縁被覆及び前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分に密着するように収縮させるところに特徴を有する。
【0009】
上記製造方法において、前記被覆電線の芯線と端子金具とは異種の金属で形成されていてもよい。また、前記収縮性チューブを透明にしてもよい。
【0010】
本発明の端子金具付き電線は、被覆電線の芯線が、端子金具の円筒形状をなすクローズドバレル部に挿通され、当該クローズドバレル部が、かしめ工程により圧縮変形されることで前記被覆電線と前記端子金具とが接続された端子金具付電線であって、前記端子金具は、前記クローズドバレル部の一部に前記円筒形状が残るように圧縮変形されており、前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分と前記被覆電線の絶縁被覆の端部との間にわたって被せられた収縮性チューブの収縮により、前記収縮性チューブが前記絶縁被覆及び前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分に密着されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、クローズドバレル部がその一部に円筒形状が残るように圧縮変形されているから、収縮性チューブは、電線の絶縁被覆だけでなくクローズドバレル部の円筒形状部分にも密着する。これにより、水分の浸入を防ぐことができる。
【0012】
また、被覆電線の芯線と端子金具とが異種の金属によって形成されている場合であっても、クローズドバレル部と収縮性チューブとの間に隙間が生じにくく、水分の浸入を防ぐことができるから、この隙間から浸入する水分に起因する電食を防止することができる。
また、収縮性チューブを透明にすると、被覆電線と端子金具の接続状態を目視により確認することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1の端子金具付き電線の製造方法について、図1〜図11を参照して説明する。
本実施形態の端子金具付き電線10は、図1に示すように、被覆電線20の先端部に端子金具30が圧着接続されてなり、例えば電気自動車において走行用の動力源を構成するバッテリ、インバータ、モータなどの装置(図示せず)の間に配索されるものである。
【0014】
被覆電線20は、複数の細いアルミ線を螺旋状に撚り合わせてなる芯線22を樹脂製の絶縁被覆21(絶縁層)で被覆したものであり、その端末部においては、絶縁被覆21が剥き取られて芯線22が露出されている(端部21Aまで被覆されている)。図3に示すように、この被覆電線20の断面形状は芯線22と絶縁被覆21の双方が略円形とされている。なお、本実施形態の被覆電線20は、銅合金製の従来の芯線に代えてアルミ製の芯線22を使用することで、軽量化や低コスト化が図られている。
【0015】
端子金具30は、図5に示すように、円筒形状のバレルを有するいわゆるクローズドバレル型であって、被覆電線20が圧着されるバレル部31(本発明の「クローズドバレル部」に相当)と、バッテリー等の電気機器に取り付けられる環状の端子部35と、からなり、アルミ製よりも高い強度が得られる銅合金製とされている。
【0016】
バレル部31は、図2に示すように、楕円の円筒形状をなし、その端子部側(の端部)が閉塞された閉口端とされ、芯線22の挿入側は開口した開口端となっている(図1、図4参照)。芯線22が開口端側から先端が突き当たる位置まで挿入されている。
【0017】
そして、後述するかしめ工程の際には、図6、図7に示すように、圧着機50によりバレル部31のうち電線方向の略中央部がかしめられて非円形(六角形)に変形して芯線22と圧着された圧着部32とされる。これにより、バレル部31のうち圧着部32よりも端子部35側(圧着部32と端子部35との間)は、圧着されず円筒形状のままで残された非圧着部33とされる。この略円形(楕円形)の外周として残された非圧着部33と、円形の絶縁被覆21とにわたって後述する熱収縮チューブ40で被覆(密着)される。
【0018】
端子部35は、バレル部31の長さ方向にバレル部31と連続して設けられており、バッテリー端子等の棒状の端子に円環の孔35Aから挿入されて導通が図られる。
【0019】
熱収縮チューブ40(本発明の「収縮性チューブ」に相当)は、図1に示すように、円筒形状をなし、加熱により収縮が可能で水分を通さない防水性の樹脂材料(例えば、電子線架橋ポリエチレンなど)からなる。この熱収縮チューブ40は、透明のものが用いられており、芯線22とバレル部31との接続状態を視認できるようになっている。製造当初(熱収縮前)における熱収縮チューブ40の径の大きさは、圧着した端子金具を容易に挿通できる大きさとなっている。
【0020】
次に、端子金具付き電線の製造方法について説明する。
被覆電線を端子金具へ圧着するかしめ工程、熱収縮チューブで被覆する工程の順に行われる。
(かしめ工程)
図5に示すように、被覆電線20の端部にて絶縁層を剥ぎ取り芯線22を露出させた芯線22を端子金具30の円筒形状のバレル部31に突き当たるまで挿通する。
そして、アルミはんだをバレル部31の内部に入れ、バレル部31と芯線22とをはんだ付けする。
【0021】
次に、図8に示すように、圧着機50により、バレル部31のうち端子部35側の端部(非圧着部33)を残して、バレル部31の略中央部(圧着部32)を全周に亘ってかしめる。これにより、図9に示すように、かしめられた部分(圧着部32)は、バレル部31が六角形に圧縮変形するとともに(図14参照)、その内部の芯線22もバレル部31の変形に応じて六角形に圧縮変形して、端子金具30のバレル部31と被覆電線20の芯線22が圧着接続される。一方、図6に示すように、バレル部31のうち圧着部32よりも端子部35側の端部(非圧着部33)については、かしめられておらず、バレル部31の非圧着部33の周面は円形のままとなっている。
【0022】
(熱収縮チューブで被覆する工程)
次に、図10に示すように、熱収縮チューブ40を端子金具30の圧着された被覆電線20に通し、図11に示すように、これらをヒータ60で熱しながら回転させる。すると、熱収縮チューブ40の全体が徐々に収縮していく。
そして、熱収縮チューブ40の全体が被覆電線20の絶縁被覆21から芯線22及び端子金具30の露出した部分(かしめられた部分)、非圧着部33まで密着してはりつく。即ち、被覆電線20側にあっては、図3に示すように、熱収縮チューブ40の被覆電線20側の環状の端部40Aが被覆電線20の円形の絶縁被覆21に隙間なく密着した状態で取り付けられる。一方、端子金具30側にあっては、図2に示すように、反対側の熱収縮チューブ40の環状の端部40Bが、バレル部31の楕円形の外周(非圧着部33)に隙間なく密着した状態で取り付けられる。
【0023】
本実施形態では、被覆電線20の芯線22を、端子金具30の円筒形状をなすバレル部31(クローズドバレル部)に挿通し、当該バレル部31を圧縮変形させるかしめ工程を行って被覆電線20と端子金具30とを接続する。ここで、このかしめ工程において、バレル部31がその一部に円筒形状が残るように圧縮変形するようになっている。
そして、その後、バレル部31の円筒形状部分と被覆電線20の絶縁被覆21の端部との間にわたって熱収縮チューブ40を被せて収縮させると、熱収縮チューブ40が絶縁被覆21及びバレル部31の円筒形状部分の外周に密着する。
【0024】
これにより、バレル部31の円筒形状部分の外周は円形状であるため、収縮性チューブを被せて収縮させた際にバレル部31の非圧着部33と熱収縮チューブ40(収縮性チューブ)の端部40Bとの間に隙間が生じにくく、水分の浸入を防ぐことができる。
【0025】
また、被覆電線20の芯線22と端子金具30とは異種の金属で形成されている。
本実施形態のように、被覆電線20を端子金具30に導通接続させるにあたって、被覆電線20の芯線22と端子金具30とが異種の金属によって形成されている場合には、両者の接続部分に水分が介在すると両金属が水中にイオンとして溶け込んで電気化学的反応によって腐食が進行する電食が発生するおそれがある。
しかしながら、本実施形態によれば、バレル部31と熱収縮チューブ40との間に隙間が生じにくく、水分の浸入を防ぐことができるから、この隙間から浸入する水分に起因する電食を防止することができる。
【0026】
さらに、熱収縮チューブ40(収縮性チューブ)は透明であるから、被覆電線20と端子金具30の接続状態を目視により確認することが可能になる。
【0027】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)かしめ工程において芯線と端子金具を接続する方法としては、上記実施形態の六角圧着に限られず、他の圧着方法でもよい。
【0028】
(2)上記実施形態では、芯線22と端子金具30とが異種の金属によって形成されている構成としたが、同種の金属で形成されている構成としてもよい。この場合においても、接続部分に水分が浸入することを防止することができる。
(3)上記実施形態では、バレル部31が楕円の円筒形状のものを用いたが、これに限られず、真円形の円筒形状のものを用いてもよい。
(4)上記実施形態では、芯線22と端子金具30とを圧着接続した後に、熱収縮チューブ40を端子金具30の圧着された被覆電線20に通して熱収縮チューブ40を加熱収縮させる構成としたが、熱収縮チューブ40を端子金具30の取り付けられていない電線に通してから、端子金具30を取り付け圧着接続し、熱収縮チューブ40を移動させて端子金具30に被せ、加熱収縮させる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】端子金具付き電線の上面図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】図2のB−B断面図
【図4】端子金具付き電線の側面図
【図5】端子金具に芯線を挿入した図
【図6】かしめ工程後の上面図
【図7】かしめ工程後の側面図
【図8】かしめ工程中の側面図
【図9】かしめ工程後を説明する側面図
【図10】熱収縮チューブの収縮前の上面図
【図11】熱収縮チューブの加熱を説明する図
【図12】従来の端子金具付き電線の上面図
【図13】かしめ前の図
【図14】かしめ中の図
【図15】かしめ後の図
【図16】端子金具付き電線のC−C断面図
【符号の説明】
【0030】
10…端子金具付き電線
20…被覆電線
21…絶縁被覆
22…芯線
30…端子金具
31…バレル部
33…非圧着部
40…熱収縮チューブ(収縮性チューブ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線の芯線を、端子金具の円筒形状をなすクローズドバレル部に挿通し、当該クローズドバレル部を圧縮変形させるかしめ工程を行って前記被覆電線と前記端子金具とを接続する端子金具付電線の製造方法であって、
前記かしめ工程において、前記クローズドバレル部をその一部に前記円筒形状が残るように圧縮変形させ、
その後、前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分と前記被覆電線の絶縁被覆の端部との間にわたって収縮性チューブを被せてその収縮性チューブが前記絶縁被覆及び前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分に密着するように収縮させることを特徴とする端子金具付き電線の製造方法。
【請求項2】
前記被覆電線の芯線と端子金具とは異種の金属で形成されていることを特徴とする請求項1記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項3】
前記収縮性チューブは透明であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項4】
被覆電線の芯線が、端子金具の円筒形状をなすクローズドバレル部に挿通され、当該クローズドバレル部が、かしめ工程により圧縮変形されることで前記被覆電線と前記端子金具とが接続された端子金具付電線であって、
前記端子金具は、前記クローズドバレル部の一部に前記円筒形状が残るように圧縮変形されており、
前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分と前記被覆電線の絶縁被覆の端部との間にわたって被せられた収縮性チューブの収縮により、前記収縮性チューブが前記絶縁被覆及び前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分に密着されていることを特徴とする端子金具付き電線。
【請求項1】
被覆電線の芯線を、端子金具の円筒形状をなすクローズドバレル部に挿通し、当該クローズドバレル部を圧縮変形させるかしめ工程を行って前記被覆電線と前記端子金具とを接続する端子金具付電線の製造方法であって、
前記かしめ工程において、前記クローズドバレル部をその一部に前記円筒形状が残るように圧縮変形させ、
その後、前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分と前記被覆電線の絶縁被覆の端部との間にわたって収縮性チューブを被せてその収縮性チューブが前記絶縁被覆及び前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分に密着するように収縮させることを特徴とする端子金具付き電線の製造方法。
【請求項2】
前記被覆電線の芯線と端子金具とは異種の金属で形成されていることを特徴とする請求項1記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項3】
前記収縮性チューブは透明であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項4】
被覆電線の芯線が、端子金具の円筒形状をなすクローズドバレル部に挿通され、当該クローズドバレル部が、かしめ工程により圧縮変形されることで前記被覆電線と前記端子金具とが接続された端子金具付電線であって、
前記端子金具は、前記クローズドバレル部の一部に前記円筒形状が残るように圧縮変形されており、
前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分と前記被覆電線の絶縁被覆の端部との間にわたって被せられた収縮性チューブの収縮により、前記収縮性チューブが前記絶縁被覆及び前記クローズドバレル部の前記円筒形状部分に密着されていることを特徴とする端子金具付き電線。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−230997(P2009−230997A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73851(P2008−73851)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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