説明

端末装置、情報通信システム及び警報器

【課題】警報器から読み出して記憶した情報のうちのユーザに直接表示することが望ましい情報のみを表示可能とする端末装置、及び警報器を提供する。
【解決手段】ガス保安システム1は警報器20とコンピュータ10を備えている。警報器20のメモリ22にはメンテナンス用データを記憶する第1記憶領域61と解析用データを記憶する第2記憶領域62とが設けられている。コンピュータ10は警報器20と通信して情報を読み出して記憶する。コンピュータ10はメンテナンス用データを記憶する第1記憶領域51と解析用データを記憶する第2記憶領域52とが設けられたメモリ部12と表示部14とMPU11を備えている。MPU11は表示部14に第1記憶領域51に記憶されたメンテナンス用データを表示することを許容するとともに表示部14に第2記憶領域52に記憶された解析用データを表示することを規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の警報器と通信して、当該警報器の読み出して記憶する端末装置、この端末装置を備えた情報通信システム及び警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の建造物には、一酸化炭素の濃度など測定して、この一酸化炭素の濃度が所定の値を超えるとブザーなどを鳴らして警報する警報器が取り付けられる。この種の警報器は、当該警報器の動作にかかる情報やセンサが測定した結果を示す情報を記憶する。従来の警報器は、故障すると、前述した建造物から取り外されて、工場などでメンテナンスが施される。このため、従来の警報器は、メンテナンスの度に建造物から取り外す必要があった。
【0003】
この種の問題を解決するために、特許文献1では、警報器に通信手段を設けておき、該警報器に端末装置を近づけることで、当該警報器の情報を読み出して、端末装置に記憶することが提案されている。
【特許文献1】特開2005−208885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に示す端末装置では、警報器の情報を単に記憶されるだけであり、端末装置に各種の情報を記憶する際に、ユーザからの問い合わせに答えることができなかった。このため、前述した端末装置に表示装置を設けることが望まれている。しかし、端末装置に表示装置を設けると、全ての情報をユーザに表示してしまい、望ましくない。
【0005】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、警報器から読み出して記憶した情報のうちのユーザに直接表示することが望ましい情報のみを表示可能とする端末装置、この端末装置を備えた通信システム及び警報器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載の端末装置は、警報器と通信して、当該警報器が記憶した情報を読み出して記憶する端末装置において、前記警報器が記憶した情報のうちのユーザに予め開示されることが定められた情報を記憶する第1記憶領域と前記ユーザに予め開示されないことが定められた情報を記憶する第2記憶領域とが設けられた記憶手段と、情報を表示可能な表示部と、前記表示部に前記第1記憶領域に記憶された情報を表示することを許容するとともに、前記表示部に前記第2記憶領域に記憶された情報を表示することを規制する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の発明の情報通信システムは、警報器と、この警報器と通信して当該警報器が記憶した情報を読み出して記憶する端末装置とを備えた情報通信システムにおいて、前記端末装置として、請求項1記載の端末装置を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の発明の警報機は、ユーザに予め開示されることが定められた情報を記憶する第1記憶領域と前記ユーザに予め開示されないことが定められた情報を記憶する第2記憶領域とが設けられた記憶手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように請求項1に記載した本発明の端末装置によれば、制御手段がユーザに予め開示されないことが定められた情報を表示部に表示することを規制し、ユーザに予め開示されることが定められた情報を表示部に表示することを許容するので、ユーザに直接表示することが望ましい情報のみを表示可能とする。したがって、ユーザに必要な情報のみを開示するので、メンテナンス時の作業効率が向上する。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の端末装置を備えているので、ユーザに直接表示することが望ましい情報のみを表示可能とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、ユーザに予め開示されないことが定められた情報と、ユーザに予め開示されることが定められた情報とを区別して、記憶するので、前述した情報のうちの必要に応じた情報のみを端末装置に読み出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態にかかる情報通信システムとしてのガス保安システムを、図1を参照して以下に説明する。
【0013】
ガス保安システム1は、図1に示すように、CO漏れ警報器(以下、警報器ともいう)20と、端末装置としてのポータブルコンピュータ10(以下、単に、コンピュータと記す)とを備えている。
【0014】
警報器20は、予め定められたプログラムに従って動作するマイクロプロセッサ(MPU)21と、記憶手段としてのメモリ部22と、ガス検出部(センサともいう)23と、通信部24と、報知部26と、を有している。MPU21は、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)21a、CPU21aのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM21b、各種のデータを格納するとともにCPU21aの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM21c等を有して構成しており、MPU21にはメモリ部22とガス検出部23と通信部24と報知部26とが電気的に接続されている。
【0015】
ROM21bには、CPU21aを機能させるためのプログラム、所定濃度以上のCOをガス検出部23で検出したときに警報を行うためのプログラム等を記憶している。
【0016】
メモリ部22は、EEPROM等が用いられ、MPU21によって、メンテナンス用テータが書き込まれる第1記憶領域61と、解析用データが書き込まれる第2記憶領域62とが設けられている。
【0017】
第1記憶領域61に書き込まれるメンテナンス用テータとは、例えば、監視開始時タイマ、監視開始時濃度勾配、警報前最大濃度、警報経過時間、積算値クリア経過時間、COセンサ故障履歴、電池電圧低下履歴、使用開始からの動作時間、CO濃度(リアルタイムデータ)、COHb到達積算値(リアルタイムデータ)、サーミスタ温度(リアルタイムデータ)などのユーザに予め開示されることが定められた情報で、ユーザに直接表示することが望ましい情報であり、警報器20自体の動作に関する情報である。
【0018】
第2記憶領域62に書き込まれる解析用データとは、例えば、センサ生データ(AD変換値)、CO濃度(演算値)、COHb到達積算値(リアルタイムデータ)、温度(サーミスタ電圧)、CO駆動履歴(5秒、10秒、15秒、30秒、駆動回数)、センサ生データ(リアルタイムAD変換値)などのユーザに予め開示されないことが定められた情報で、ユーザに直接表示することが望ましくない情報であり、警報器20自体が測定した結果を示す情報である。
【0019】
ガス検出部23は、CO(一酸化炭素)の酸化反応によりCO濃度に応じた電流が流れる電気化学式センサを用いており、CO濃度に応じた電流を電圧に変換してMPU21に出力している。
【0020】
通信部24は、MPU21によって制御され、赤外線などを送受信することで、コンピュータ10の通信部13に接続される。通信部24は、MPU21から入力されるメモリ部22に記憶されたメンテナンス用データと解析用データのうち少なくとも一方をコンピュータ10に送信すると共に、コンピュータ10から受信した信号が示す電文をMPU21に出力する。
【0021】
報知部26は、MPU21から入力される音声情報を音声信号に変換し、アンプにより増幅してスピーカ等から出力すると共に、MPU21から入力される各種情報をLCD(liquid crystal display)等の表示器に表示する。
【0022】
警報器20は、ガス検出部23などが検出するなどして得られた前述したメンテナンス用データと解析用データとを、MPU21がメモリ部22の第1記憶領域61と第2記憶領域62に適宜書き込む。
【0023】
コンピュータ10は、予め定められたプログラムに従って動作する制御手段としてのマイクロプロセッサ(MPU)11を有している。MPU11は、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)11a、CPU11aのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM11b、各種のデータを格納するとともにCPU11aの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM11c等を有して構成している。
【0024】
MPU11は、後述するメモリ部12の第1記憶領域51に記憶されたメンテナンス用データが表示部14に表示されることを許容し、メモリ部12の第2記憶領域52に記憶された解析用データが表示部14に表示されることを規制する。
【0025】
コンピュータ10は、さらに、記憶手段としてのメモリ部12と、通信部13と、表示部14と、操作部15を有している。そして、メモリ部12と通信部13と表示部14との各々は、MPU11に電気的に接続されている。
【0026】
メモリ部12は、前記電池からの電力供給が断たれた場合でも、格納された各種データの保持が可能であり、CPU11aの処理作業に必要な各種格納エリアを有する電気的消去/書き換え可能な読み出し専用のメモリ(EEPROM)等が用いられる。
【0027】
メモリ部12は、MPU11によって、メンテナンス用テータが書き込まれる第1記憶領域51と、解析用データが書き込まれる第2記憶領域52とが設けられている。第1記憶領域51に書き込まれるメンテナンス用テータとは、警報器20のメモリ部22の第1記憶領域61に書き込まれるメンテナンス用テータと同一のデータである。第2記憶領域52に書き込まれる解析用データとは、警報器20のメモリ部22の第2記憶領域62に書き込まれる解析用テータと同一のデータである。
【0028】
通信部13は、MPU11によって制御され、コンピュータ10の筐体の外部に露出して設けられている。通信部13は、赤外線などを送受信することで、警報器20の通信部 に接続される。通信部13は、MPU11から入力される各種電文を示す信号を警報器20に送信すると共に、警報器20から受信したメンテナンス用テータと解析用データとのうちの少なくとも一方をMPU11に出力する。
【0029】
表示部14は、例えば、LCD(liquid crystal display)が用いられ、MPU11からの指示通りに各種の情報を表示する。操作部15は、コンピュータ10に各種の情報を入力したり、当該コンピュータ10を操作するために用いられる。
【0030】
このように構成したコンピュータ10は、警報器20に近づけられると、通信部13から赤外線を警報器20の通信部24に出射して、当該警報器20と通信する。そして、コンピュータ10は、警報器20のメモリ部22の第1記憶領域61中のメンテナンス用データと、警報器20のメモリ部22の第2記憶領域62中の解析用データとのうちの少なくとも一方を読み出して、MPU11がメモリ部12の第1記憶領域51と第2記憶領域52に書き込んで、第1記憶領域51にメンテナンス用データを記憶し、第2記憶領域52に解析用データを記憶する。
【0031】
そして、コンピュータ10は、操作部15から入力された命令とおりの情報を表示部14に表示する。このとき、コンピュータ10は、操作部15からメンテナンス用データを表示する命令が入力されると、メンテナンス用データを表示部14に表示する。コンピュータ10は、操作部15から解析用データを表示する命令が入力されても、当該解析用データを表示部14に表示せずに、当該解析用データを表示できないことを示す情報を表示部14に表示する。
【0032】
本実施形態によれば、MPU11がユーザに予め開示されないことが定められた情報を表示部14に表示することを規制し、ユーザに予め開示されることが定められた情報を表示部14に表示することを許容するので、ユーザに直接表示することが望ましい情報のみを表示可能とする。したがって、ユーザに必要な情報のみを開示するので、メンテナンス時の作業効率が向上する。
【0033】
また、ガス保安システム1は、前述したコンピュータ10を備えているので、ユーザに直接表示することが望ましい情報のみを表示可能として、メンテナンス時の作業効率が向上する。
【0034】
警報器20が、ユーザに予め開示されないことが定められた情報と、ユーザに予め開示されることが定められた情報とを区別して、記憶するので、前述した情報のうちの必要に応じた情報のみをコンピュータ10に読み出すことができる。
【0035】
本発明では、メンテナンス用データと解析用データのうち少なくとも一方即ちどちらか一方又は両方をコンピュータ10が警報器20のメモリ部22から読み出して、メモリ部12の第1記憶領域51と第2記憶領域52に書き込めばよい。
【0036】
また、前述した実施形態では、コンピュータ10を端末装置として用いている。しかしながら、本発明では、携帯可能であれば、コンピュータ10以外の各種の装置を端末装置として用いても良い。
【0037】
このように上述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態にかかるガス保安システムの基本構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ガス保安システム(情報通信システム)
10 ポータブルコンピュ−タ(端末装置)
11 MPU(制御手段)
12 メモリ部(記憶手段)
14 表示部
20 警報器
22 メモリ部(記憶手段)
51 第1記憶領域
52 第2記憶領域
61 第1記憶領域
62 第2記憶領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
警報器と通信して、当該警報器が記憶した情報を読み出して記憶する端末装置において、
前記警報器が記憶した情報のうちのユーザに予め開示されることが定められた情報を記憶する第1記憶領域と前記ユーザに予め開示されないことが定められた情報を記憶する第2記憶領域とが設けられた記憶手段と、
情報を表示可能な表示部と、
前記表示部に前記第1記憶領域に記憶された情報を表示することを許容するとともに、前記表示部に前記第2記憶領域に記憶された情報を表示することを規制する制御手段と、を備えたことを特徴とする端末装置。
【請求項2】
警報器と、
この警報器と通信して当該警報器が記憶した情報を読み出して記憶する端末装置とを備えた情報通信システムにおいて、
前記端末装置として、請求項1記載の端末装置を備えたことを特徴とする情報通信システム。
【請求項3】
ユーザに予め開示されることが定められた情報を記憶する第1記憶領域と前記ユーザに予め開示されないことが定められた情報を記憶する第2記憶領域とが設けられた記憶手段を備えたことを特徴とする警報器。

【図1】
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【公開番号】特開2008−242669(P2008−242669A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80320(P2007−80320)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】