説明

端面研削方法

【課題】既存の装置を用いて厚み寸法の小さい薄型ワークの研削を支障なく行う。
【解決手段】砥石と定盤20との間に開口部35aを有したワーク保持用のキャリア35を介在させ、前記開口部35aに挿入したワークWを、砥石と定盤20とにより挟み込んだ状態で砥石により研削する端面研削方法。厚み寸法がキャリア35よりも小さく、かつキャリア35とワークWとの厚み方向の寸法差よりも大きい厚み寸法をもつ研削補助部材40とワークWとを厚み方向に重ね合わせた状態で互いに磁力で結合させてキャリア35の開口部35aに挿入してワークWの被研削面を加工するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型ワークの端面を研削する端面研削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、上下に配置された砥石車と加圧部材との間に、ワーク保持部材により保持したワークを配置し、砥石車を回転駆動しながらその軸方向に切込み送りすることによってワークの片面を研削する端面研削装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
この装置において、ワーク保持部材は、上下方向に貫通する開口部を有したプレート状の構成とされ、前記開口部にワークを挿入(遊嵌)して加圧部材により支持させ、ワークのうちワーク保持部材から上方に突出する部分(被研削面)を前記砥石車により研削させるようになっている。
【特許文献1】特開2004−25385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の端面研削装置は、ワークのうちワーク保持部材から上方に突出する部分を砥石車により研削する構成であるため、ワーク保持部材の厚み寸法に満たず、被研削面をワーク保持部材から上方に突出させることがでないような薄型のワークを加工することは不可能であった。しかし近年、より厚み寸法の小さな薄型のワークを端面研削装置により研削することが求められており、この点を解決することが必要となっている。
【0005】
そこで、より薄いワークを研削できるようにワーク保持部材の厚み寸法を小さくすることも考えられているが、ワーク保持部材の剛性を確保する上でこれにも自ずと限界があり、従って、根本的な対策とはなっていない。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、既存の装置を用いて、厚み寸法の小さい薄型ワークの研削を行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の端面研削方法は、互いに対向する対向面を有し、少なくとも一方側が砥石車からなる一対の加工用部材の前記対向面の間に、当該対向面の並び方向と平行な厚み方向に貫通するワーク保持用開口部を有したワーク保持部材を介在させ、前記ワーク保持用開口部にワークを挿入して前記加工用部材により挟み込んだ状態でこのワークの端面を前記砥石車により研削する端面研削方法であって、前記ワーク保持部材として厚み方向の寸法がワークよりも大きいものを用い、厚み方向の寸法が前記ワーク保持部材よりも小さく、かつワーク保持部材とワークとの厚み方向の寸法差よりも大きい厚み寸法をもつ研削補助部材とワークとを厚み方向に重ね合わせた状態で互いに磁力で結合させて前記ワーク保持用開口部に挿入し、前記ワーク保持部材から厚み方向に突出する側のワーク端面を前記砥石車により研削するようにしたものである。
【0008】
このように、見かけ上、ワークの厚みを稼いで当該ワークを研削する方法によれば、ワーク保持部材よりも厚み寸法の小さい薄型のワークを適切に加工することができる。しかも、ワークと研削補助部材とを磁力で結合させているので、ワークが研削補助部材から分離してワーク保持用開口部の外側に持ち出されることを有効に防止することができる。従って、例えばワークと研削補助部材との間にクーラントが侵入してワークが補助部材から浮き上がり、これによってワークがワーク保持用開口部から持ち出されて研削が困難になるといった不都合を有効に回避することができる。
【0009】
この方法では、上記のようにワークと研削補助部材とを厚み方向に重ね合わせて加工を行うので、両端が被研削面であるワークについては、当該ワークの一方側の端面に前記研削補助部材を重ね合わせて他方側の端面を研削した後、前記研削補助部材を取外し、他方側の端面に前記研削補助部材を重ね合わせて前記一方側の端面を研削するようにすればよい。この方法によれば、ワーク両端をそれぞれ研削することができる。
【0010】
なお、ワークと研削用補助部材とを磁力で結合させるには、研削用補助部材に磁石を予め埋設しておくようにしてもよいし、例えば前記研削補助部材として磁性体からなるものを用い、予め当該研削補助部材を磁化させておくようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の端面研削方法によれば、ワーク保持部材の厚み寸法よりも薄い薄型ワークの研削を適切に行うことができる。従って、既存の研削装置をそのまま用いて、より厚み寸法の小さい薄型のワークを研削することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好ましい実施の形態について図面を用いて説明する。
【0013】
本発明に係る端面研削方法について説明する前に、この方法が適用される端面研削装置の一例について説明する。図1および図2は、端面研削装置の要部を概略的に示している。
【0014】
これらの図に示すように、端面研削装置は、主軸ヘッド10、定盤20およびワーク保持機構30等を有している。
【0015】
主軸ヘッド10は、図外のコラムに上下動可能に支持されている。主軸ヘッド10の中心には鉛直方向に延びる主軸12が回転可能に支持されており、この主軸12の下端部に砥石16が取り付けられている。
【0016】
砥石16は、円環状の砥石面16aをもつカップ型の砥石車からなり、砥石ホルダ14を介して主軸12の先端(下端)に固定されている。そして、主軸ヘッド10に内蔵される図外のモータにより前記主軸12が回転駆動されることにより、当該主軸12と一体に砥石16が回転するようになっている。
【0017】
主軸ヘッド10は、送り機構に連結されている。この送り機構は、主軸ヘッド10を上下方向に案内する図外のガイドと、このガイドに沿って延び、主軸ヘッド10のナット部分10aに螺合挿入されるねじ軸17と、このねじ軸17を駆動する送りモータ18等とを含む直動機構からなり、前記ねじ軸17の回転に伴い主軸ヘッド10を上下方向(送り)に移動させるように構成されている。
【0018】
定盤20は、前記主軸ヘッド10の下方に配置されている。この定盤20は、砥石16の前記砥石面16aと同一径寸法を有する平坦な円形支持面20aを有した短円柱状の部材で、前記コラムに固定的に組み付けられている。
【0019】
ワーク保持機構30は、定盤20を挟んでその左右両側にそれぞれ設けられている。同図に示すように、ワーク保持機構30は、案内プレート32と、このプレート上に配置されるキャリアアーム33と、このキャリアアーム33を駆動する駆動機構等とから構成とされ、薄板状のワークWを前記キャリアアーム33により砥石16と定盤20の間で保持するように構成されている。
【0020】
詳しく説明すると、前記案内プレート32は略円環状に形成され、上部に、定盤20の前記支持面20aとほぼ面一(等しい高さ位置)の平坦な案内面を有している。図2に示すように、案内プレート32の外周には、定盤20の輪郭に対応した円弧状の切欠きが形成されており、この切欠き部分に定盤20が嵌り込んで密接するように、前記案内プレート32が定盤20に対して配置されている。
【0021】
キャリアアーム33は、平面視略長方形のプレート状の部材である。キャリアアーム33の長手方向両端部にはワーク保持部34がそれぞれ設けられている。これらワーク保持部34には、上下方向に貫通する開口部35aを有する円盤状を成し、かつキャリアアーム33とほぼ等しい厚み寸法(図1では上下方向の寸法)を有するキャリア35が装着されており、ワークWが、このキャリア35の開口部35aに遊嵌(挿入)された状態で当該キャリア35により保持されるようになっている。つまり、当実施形態では、これらキャリアアーム33およびキャリア35等が本発明におけるワーク保持部材に相当する。
【0022】
開口部35aは、キャリア35の中心軸回りに複数個設けられており、これにより片方のワーク保持部34において複数のワークWを保持することが可能となっている。なお、このキャリア35は交換可能であり、これにより保持可能なワークWのサイズや数が変更可能となっている。
【0023】
詳細図を省略するが、キャリア35はその中心軸回りに回転可能に支持され、キャリアアーム33に搭載される図外のモータにより回転駆動されるように構成されている。
【0024】
前記キャリアアーム33は、前記案内プレート32の中心部に配置される駆動軸36の上端部に固定されており、図外の旋回モータの作動により当該駆動軸36と一体に回転駆動されるようになっている。そしてこのキャリアアーム33の旋回に伴い、各ワーク保持部34を、砥石16と定盤20との間の作業位置とこの位置から180°旋回した案内プレート32上のワーク交換位置とに交互に配置できるようになっている。すなわち、一方側のワーク保持部34に保持されたワークWの研削中に、他方側のワーク保持部34に対してワークWの入れ替えを行えるように構成されている。
【0025】
なお、各ワーク保持機構30は定盤20を挟んで左右対称に構成されており、図2に示すように、この装置では、各ワーク保持機構30のキャリアアーム33により保持したワークWを、砥石16のうちその回転中心を挟んだ互いに反対側の位置で同時に加工するようになっている。
【0026】
次に、この端面研削装置によるワークWの研削作業について本発明に係る端面研削方法を踏まえつつ説明する。
【0027】
この端面研削装置によりワークWを研削するには、まず、ワーク交換位置においてキャリア35の各開口部35aにワークWを挿入する。ワークWは、被研削面を上向きにした状態で開口部35aに挿入する。このようにワークWを開口部35aに挿入すると、ワークWは、案内プレート32により支持され、その上面(被研削面)がキャリア35の上方に突出した状態となる。
【0028】
なお、これはワークWの厚み寸法(図1の上下方向の寸法)がキャリアアーム33(キャリア35)の厚み寸法よりも大きい場合であり、厚み寸法がキャリアアーム33の厚み寸法に満たないワークWについては、ワークWをそのまま開口部35aに挿入しても被研削面をキャリア35の上方に突出させることはできない。そのため、この場合には、図3に示すような研削補助部材40を使用する。
【0029】
この研削補助部材40(以下、単に補助部材40という)は、厚み寸法が前記キャリアアーム33(キャリア35)よりも小さく、かつキャリアアーム33とワークWとの厚み寸法の差よりも大きい厚み寸法をもつ金属製又は樹脂製のプレート状の部材である。この補助部材40には所定の配置で磁石42が埋設されており、この補助部材40をワークWの非研削面側に重ね合わせてワークWと補助部材40とを磁力で結合(一体化)させ、このワークWと補助部材40の積層体を、被研削面が上向きとなる状態でキャリア35の前記開口部35aに挿入する。このようにすれば、図4に示すように、ワークWの見かけ上の高さ寸法を稼ぐことができ、ワークWの被研削面をキャリア35よりも上方に突出させることができる。
【0030】
ワークWのセット後、キャリアアーム33を駆動し、これによりワークWを案内プレート32に沿って案内しながら当該プレート32から定盤20上にワークWを移し前記作業位置に配置する。この際、主軸ヘッド10は、定盤20の上方の所定の待機位置に配置されている。
【0031】
ワークWを作業位置にセットした後、図外の供給装置によりワークWに対して研削クーラントの供給を開始するとともに砥石16を回転駆動し、さらに主軸ヘッド10を送り駆動して所定の切込み開始位置に砥石16を配置する。そして、キャリア35を回転駆動するとともに、主軸ヘッド10の切込み送りを開始し、ワークWの被研削面に砥石16の砥石面16aを押し当ててワークWを研削する。
【0032】
こうして所定の切込み送り量だけ主軸ヘッド10を切込み送りしてワークWを研削した後、主軸ヘッド10を前記待機位置にリセットする。これによりワークWの研削が終了する。研削の終了後は、キャリアアーム33を駆動してワークWを定盤20上(作業位置)から案内プレート32上の前記ワーク交換位置に移し、これによって一連の研削動作が終了することとなる。
【0033】
なお、以上は、ワークWの片面を研削する場合であり、上下両側(両端)が被研削面とされるワークWについては、一方側の被研削面の加工が終了した後、上下の向きを変えてキャリア35にワークWをセットすることにより、上記と同様の手順で他方側の被研削面を加工することができる。この場合、補助部材40を用いた薄型のワークWについては、一方側の被研削面の加工が終了した後、補助部材40を取外して当該一方側の面に付け(重ね)直した上で、残りの被研削面を上向きにした状態でワークWをキャリア35にセットする。これにより他方側の被研削面を同様にして加工することができる。
【0034】
以上のように、補助部材40をワークWに重ね合わせて研削する方法によれば、キャリアアーム33(キャリア35)よりも厚み寸法の小さいワークWについても、支障なく研削を行うことができる。そのため、既存の研削装置をそのまま用いて、キャリアアーム33(キャリア35)よりも厚み寸法の小さい薄型のワークを加工することが可能となる。
【0035】
しかも、補助部材40とワークWとを磁力で結合(一体化)させているので、ワークWと補助部材40とが容易に分離することがない。従って、例えばワークWと補助部材40との間にクーラントが侵入してワークWがキャリア35から浮き上がり、ワークWがキャリア35(開口部35a)の外側に持ち出されるといった不都合を有効に回避することができ、軽量の薄型ワークWについても良好に研削を行うことができる。
【0036】
なお、上述した実施形態では、補助部材40として予め磁石42を埋設したものを用いることによりワークWと補助部材40とを磁力で結合させているが、例えば全体が磁性体からなる補助部材40を予め磁化させておくことにより、両者を磁力で結合させるようにしてもよい。
【0037】
また、上述した実施形態では、端面研削装置として砥石16と定盤20との間にワークWを配置した状態でワークWの被研削面を砥石16により研削する、いわゆる片面研削装置を用いてワークWを研削する場合に本発明の方法を適用した例について説明したが、勿論、一対の砥石車の間にワークWを配置してワークWを研削する、いわゆる両面研削装置を用いてワークWを研削する場合についても本発明の方法は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】端面研削装置の要部を示す縦断面略図である。
【図2】端面研削装置の要部を示す平断面図である。
【図3】ワークおよび研削補助部材の一例を示す斜視概略図である。
【図4】本発明に係る端面研削方法を説明するための端面研削装置の要部縦断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 主軸ヘッド
12 主軸
16 砥石
16a 砥石面
20 定盤
20a 支持面
40 研削補助部材
42 磁石
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する対向面を有し、少なくとも一方側が砥石車からなる一対の加工用部材の前記対向面の間に、当該対向面の並び方向と平行な厚み方向に貫通するワーク保持用開口部を有したワーク保持部材を介在させ、前記ワーク保持用開口部にワークを挿入して前記加工用部材により挟み込んだ状態でこのワークの端面を前記砥石車により研削する端面研削方法であって、
前記ワーク保持部材として厚み方向の寸法がワークよりも大きいものを用い、厚み方向の寸法が前記ワーク保持部材よりも小さく、かつワーク保持部材とワークとの厚み方向の寸法差よりも大きい厚み寸法をもつ研削補助部材とワークとを厚み方向に重ね合わせた状態で互いに磁力で結合させて前記ワーク保持用開口部に挿入し、前記ワーク保持部材から厚み方向に突出する側のワーク端面を前記砥石車により研削することを特徴とする端面研削方法。
【請求項2】
請求項1に記載の端面研削方法において、
両端が被研削面である前記ワークについては、当該ワークの一方側の端面に前記研削補助部材を重ね合わせて他方側の端面を研削した後、前記研削補助部材を取外し、他方側の端面に前記研削補助部材を重ね合わせて前記一方側の端面を研削することを特徴とする端面研削方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の端面研削方法において、
前記研削補助部材として磁性体からなるものを用い、予め当該研削補助部材を磁化させておくことを特徴とする端面研削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−83080(P2009−83080A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259573(P2007−259573)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【Fターム(参考)】