説明

競技用計測システム、および、タイム補正方法

【課題】簡易な構成にて、競技者個々の正確な競技タイムを取得できる競技用計測システム等を提供する。
【解決手段】競技のスタート前に無線タグ80は、ループコイル11a上にて時刻セットモードに移行し、送信機41から送られた時刻セット用の時刻情報によって、タイマ機器30bと同期したランニングタイムの計時を開始する。競技がスタートすると無線タグ80は、ループコイル11b,11c上にてタイム計測モードに移し、ループコイル21a,21b上にて電磁場の変極点を検出すると、自己が計時するランニングタイムから競技タイムを計測する。ゴール後に無線タグ80は、ループコイル11d上にてタイム送信モードに移行し、送受信機61から送られたタイム補正用の時刻情報等に基づいて各地点の競技タイムを適宜補正した後に、タイム情報を生成して送受信機61に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、より簡易な構成にて、競技者個々の正確な競技タイムを取得することのできる競技用計測システム、および、タイム補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マラソン競技において、競技者個々のゴールタイムを計測(計時)する試みがなされている。例えば、競技者のゼッケン等にバーコードを印刷しておき、ゴールした競技者のバーコードをリーダにて読み取った時刻に基づいて、競技者個々のゴールタイムを計測する計測システムも実用化されている。
最近では、各計時ポイントにおける通過タイムも含めた競技タイムを計測可能とするために、非接触にて競技者個々の競技タイムを計測する試みがなされている。例えば、競技者にタグ送信機を保持させ、このタグ送信機から送られる情報により、競技タイムを計測する計測システムが開発され、実用化に向けた運用試験等が試みられている。
【0003】
具体的に、ランニングタイムを自ら計時する無線タグを競技者に保持させ、また、トリガ信号発生装置から計時地点の計測ゾーンにトリガ信号を送信するようにした競技用計測システムでは、無線タグを保持する競技者が計測ゾーンを走行すると、トリガ信号に応答した無線タグが、その時点のランニングタイムにより計測タイム(競技タイム)を特定する。そして、無線タグがこの計測タイム等を計測タイム受信機に送信することにより、各競技者のタイム集計を行う技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−300256号公報(第7−15頁、第10図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の競技用計測システムでは、計測ゾーンより手前で、時刻同期のための時刻情報がランニングタイム送信機から無線タグに送信され、無線タグの計時する時刻が補正される。このため、計測ゾーンにて計測される計測タイムは、誤差のない正確な値となる。そして、無線タグは、この計測タイムを計測タイム受信機に直ちに送信する。
すなわち、特許文献1に記載の競技用計測システムでは、途中の計時地点においても、正確な計測タイムをほぼリアルタイムに収集することができる。そのため、例えば、テレビ放送される大規模なマラソン競技において、このようにリアルタイムに収集した計測タイムを速報データとして、使用することもできる。
【0005】
一方、市民マラソンのような小規模なマラソン競技では、途中の計時地点における計測タイムをリアルタイムに収集する必要がなく、競技終了後に、各計時地点の計測タイムを収集して、競技者に提供できれば充分となっている。
そのため、小規模なマラソン競技にて用いられる競技用計測システムの場合、途中の計時地点に配置する設備等をかなり簡略化できることが予想される。
【0006】
しかしながら、設備等の簡略化により、ゴール地点を含めた各計時地点の計測タイムが正確に計測できなくなることも、起こり得る。例えば、途中の計時地点において、無線タグに、時刻同期のための時刻情報を送らない場合等である。そして、計測タイムが正確に計測できなくなると、実際の着順と、計測タイムによる先行着とが異なるような事態も生じ得る。
このような事態が生じてしまうと、小規模なマラソン競技といえども、実用に耐えないことになる。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、より簡易な構成にて、競技者個々の正確な競技タイムを取得することのできる競技用計測システム、および、タイム補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る競技用計測システムは、
競技者が携帯する無線機器と、スタート地点に配置され、基準時刻に基づいた第1の時刻情報を前記無線機器に供給する時刻供給装置と、ゴール地点に配置され、前記基準時刻に基づいた第2の時刻情報を前記無線機器に供給すると共に前記無線機器からタイム情報を取得するタイム取得装置と、を含む競技用計測システムであって、
前記無線機器には、
前記時刻供給装置から供給される前記第1の時刻情報及び、前記タイム取得装置から供給される前記第2の時刻情報を取得する時刻情報取得手段と、
前記時刻情報取得手段にて前記第1の時刻情報が取得されると、前記第1の時刻情報に基づいて、前記基準時刻と同期した時刻の計時を開始する計時手段と、
競技者が走行する走路上に生成された電磁場を検出する電磁場検出手段と、
前記電磁場検出手段にて検出された前記電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ポイントを検出する計時ポイント検出手段と、
前記計時ポイント検出手段にて前記計時ポイントが検出された際に、前記計時手段にて計時された時刻を競技タイムとして計測するタイム計測手段と、
前記タイム計測手段にて計測された前記競技タイムを記憶する記憶手段と、
前記時刻情報取得手段にて前記第2の時刻情報が取得されると、前記計時手段が計時している時刻の誤差を算定し、算定した前記誤差に基づいて、前記記憶手段にて記憶された前記競技タイムを線形的に補正するタイム補正手段と、
前記タイム補正手段にて補正された前記競技タイムを含む前記タイム情報を前記タイム取得装置に供給するタイム供給手段と、が設けられている、
ことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、無線機器において、時刻情報取得手段は、時刻供給装置から供給される第1の時刻情報(例えば、時刻セット用の時刻情報)及び、前記タイム取得装置から供給される第2の時刻情報(例えば、タイム補正用の時刻情報)を取得する。また、計時手段は、前記時刻情報取得手段にて前記第1の時刻情報が取得されると、この第1の時刻情報に基づいて、基準時刻(例えば、ランニングタイム)と同期した時刻の計時を開始する。電磁場検出手段は、競技者が走行する走路上に生成された電磁場を検出する。計時ポイント検出手段は、前記電磁場検出手段にて検出された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ポイント(例えば、計時ライン)を検出する。タイム計測手段は、前記計時ポイント検出手段にて計時ポイントが検出された際に、計時手段にて計時された時刻を競技タイムとして計測する。記憶手段は、前記タイム計測手段にて計測された競技タイムを記憶する。タイム補正手段は、前記第2の時刻情報が取得されると、計時手段は計時している時刻の誤差を算定し、算定した前記誤差に基づいて、前記記憶手段にて記憶された前記競技タイムを線形的に補正する。そして、タイム供給手段は、前記タイム補正手段にて補正された前記競技タイムを含むタイム情報をタイム取得装置に供給する。
この結果、より簡易な構成にて、競技者個々の正確な競技タイムを取得することができる。
【0010】
前記タイム補正手段は、前記第2の時刻情報にて示される前記基準時刻から、前記計時手段が計時している時刻における現時点の誤差を算定し、算定した前記現時点の誤差を前記競技タイムが計測された際に相当する相当誤差に修正し、修正した前記相当誤差に基づいて、前記競技タイムを補正してもよい。
【0011】
前記記憶手段は、前記時刻情報取得手段が取得した前記第1の時刻情報を更に記憶し、
前記タイム補正手段は、前記第1の時刻情報にて示される前記基準時刻から前記第2の時刻情報にて示される前記基準時刻までの全体時間に対する、前記第1の時刻情報にて示される前記基準時刻から前記競技タイムまでの経過時間の割合を求め、求めた前記割合に算定した前記現時点の誤差を乗じることにより前記相当誤差を求め、求めた前記相当誤差に基づいて前記競技タイムを補正してもよい。
【0012】
前記時刻供給装置及び前記タイム取得装置は、スタート予定時刻に基づいた前記第1及び前記第2の時刻情報を前記無線機器に供給し、
前記タイム取得装置は、前記無線機器から前記タイム情報を取得すると、取得した前記タイム情報に含まれる前記競技タイムを、実際のスタート時刻と前記スタート予定時刻との時差を示す差分に基づいて、一律に補正してもよい。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係るタイム補正方法は、
競技者が携帯する無線機器と、スタート地点に配置され、基準時刻に基づいた第1の時刻情報を前記無線機器に供給する時刻供給装置と、ゴール地点に配置され、前記基準時刻に基づいた第2の時刻情報を前記無線機器に供給すると共に前記無線機器からタイム情報を取得するタイム取得装置と、を含むシステムにおける前記無線機器のタイム補正方法であって、
前記無線機器において、前記時刻供給装置から供給される前記第1の時刻情報及び、前記タイム取得装置から供給される前記第2の時刻情報を取得する時刻情報取得ステップと、
前記時刻情報取得ステップにて前記第1の時刻情報が取得されると、前記第1の時刻情報に基づいて、前記基準時刻と同期した時刻の計時を開始する計時ステップと、
競技者が走行する走路上に生成された電磁場を検出する電磁場検出ステップと、
前記電磁場検出ステップにて検出された前記電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ポイントを検出する計時ポイント検出ステップと、
前記計時ポイント検出ステップにて前記計時ポイントが検出された際に、前記計時ステップにて計時された時刻を競技タイムとして計測するタイム計測ステップと、
前記タイム計測ステップにて計測された前記競技タイムを自己の記憶部に格納する格納ステップと、
前記時刻情報取得ステップにて前記第2の時刻情報が取得されると、前記計時ステップにて計時された時刻の誤差を算定し、算定した前記誤差に基づいて、前記格納ステップにて格納された前記競技タイムを線形的に補正するタイム補正ステップと、
前記タイム補正ステップにて補正された前記競技タイムを含む前記タイム情報を前記タイム取得装置に供給するタイム供給ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、無線機器において、時刻情報取得ステップは、時刻供給装置から供給される第1の時刻情報(例えば、時刻セット用の時刻情報)及び、前記タイム取得装置から供給される第2の時刻情報(例えば、タイム補正用の時刻情報)を取得する。また、計時ステップは、前記時刻情報取得ステップにて前記第1の時刻情報が取得されると、この前記第1の時刻情報に基づいて、基準時刻(例えば、ランニングタイム)と同期した時刻の計時を開始する。電磁場検出ステップは、競技者が走行する走路上に生成された電磁場を検出する。計時ポイント検出ステップは、前記電磁場検出ステップにて検出された前記電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ポイント(例えば、計時ライン)を検出する。タイム計測ステップは、前記計時ポイント検出ステップにて前記計時ポイントが検出された際に、前記計時ステップにて計時された時刻を前記競技タイムとして計測する。格納ステップは、前記タイム計測ステップにて計測された前記競技タイムを自己の記憶部に格納する。タイム補正ステップは、前記時刻情報取得ステップにて前記第2の時刻情報が取得されると、前記計時ステップにて計時された時刻の誤差を算定し、算定した前記誤差に基づいて、前記格納ステップにて格納された前記競技タイムを線形的に補正する。そして、タイム供給ステップは、前記タイム補正ステップにて補正された前記競技タイムを含む前記タイム情報をタイム取得装置に供給する。
この結果、より簡易な構成にて、競技者個々の正確な競技タイムを取得することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、より簡易な構成にて、競技者個々の正確な競技タイムを取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態にかかる競技用計測システムについて、以下図面を参照して説明する。なお、一例として、競技用計測システムが市民マラソン等の小規模なマラソン競技に適用され、複数地点にて競技タイムを計測するものの、速報データとしてリアルタイムに収集する必要が無い場合について説明する。
【0017】
(実施形態1)
図1は、この発明の実施形態に適用される競技用計測システムの構成の一例を示す模式図である。なお、以下ではゴールに至る途中で競技タイムの計時(計測)を行う幾つかの地点(中継地点等)を、便宜的にまとめて途中計時地点として説明する。
【0018】
図示するように、競技用計測システムは、スタート地点に設置された変調磁場発生装置10a、ループコイル11a、タイマ機器30a,30b、時刻供給装置としての送信コントロールボックス40、送信機41、時刻セットコンソール50と、途中計時地点(中継地点等)に設置された変調磁場発生装置10b、ループコイル11b、磁場発生装置20a、ループコイル21aと、ゴール地点に配置された変調磁場発生装置10c,10d、ループコイル11c,11d、磁場発生装置20b、ループコイル21b、タイマ機器30c、タイム取得装置としての送受信コントロールボックス60、送受信機61、処理装置70と、各競技者RNにそれぞれ携帯される無線機器としての無線タグ80と、を含んで構成される。
【0019】
変調磁場発生装置10(10a〜10d)は、例えば、走路の沿道に配置され、ループコイル11(11a〜11d)上に電磁場を発生させる。
具体的に変調磁場発生装置10は、所定周波数に同期した正弦波を発生させる正弦波発生回路と、送信すべきマットID(固有の識別情報)に従って、正弦波を所定方式にて変調させる変調回路と、変調させた信号(変調信号)を増幅してループコイル11に供給する電力増幅回路とを含んで構成される。
なお、変調磁場発生装置10a〜10cには、それぞれの配置地点を示すマットIDが定められている。つまり、変調磁場発生装置10a〜10cには、順に、スタート地点、途中計時地点、そして、ゴール地点を示すマットIDが定められている。
また、変調磁場発生装置10dには、タイム収集場所を示すマットIDが定められている。
【0020】
ループコイル11(11a〜11d)は、例えば、略方形に形成されたコイルであり、変調磁場発生装置10から供給される変調信号に基づいて、変調された電磁場を生成する。
具体的にループコイル11は、一例として、図2(a)に示すように、競技者RNの走行方向(図2(b)矢印A方向)に対して直交する方向に延びる直線bを中心線として、並行に所定距離だけ隔てた直線a、cに沿って、略方形(矩形)が形成されている。そして、1辺に給電点sを有するように形成され、この給電点sから矢印方向に電流が流れるようになっている。
ループコイル11は、変調磁場発生装置10から給電点sを通じて変調信号が供給されると、変調された電磁場をコイル上に生成する。具体的には、図2(b)に示すような電磁場を生成する。この電磁場には、一例として、図2(c)に示すようなOOK(On−Off−Keying)等の振幅変調方式にて変調されたマットID(プリアンブル及びマットID)が重畳されている。
そのため、ループコイル11上を、競技者RNが通過した場合にだけ、無線タグ80にマットIDが送信されることになる。
なお、上述したように、変調磁場発生装置10a〜10dには、異なるマットIDが定められているため、ループコイル11a〜11dからは、異なるマットIDが無線タグ80に送信される。
【0021】
図1に戻って、磁場発生装置20(20a,20b)は、例えば、走路の沿道に配置され、ループコイル21上に電磁場を発生させる。具体的に磁場発生装置20は、所定周波数に同期した正弦波を発生させる正弦波発生回路と、発生させた正弦波を増幅してループコイル21に供給する電力増幅回路とを含んで構成される。
【0022】
ループコイル21(21a,21b)は、略「8の字」形状に形成されたコイルであり、走路上における計時ポイントに適宜配置される。
ループコイル21は、一例として、図3(a)に示すように、矩形(方形)のコイル部を競技者RNの走行方向(矢印A方向)に2つ連ねたような8の字に形成されている。より詳細には、ループコイル21は8の字順方向巻きとなっており、8の字の中心(中点)、すなわち交差部に給電点sを有するように形成され、この給電点sを通って競技者RNの走行方向に対して直交する方向に延びる直線bを中心線として、略平行に所定距離だけ隔てた直線a,bに沿って、8の字の上下部が形成されている。なお、ループコイル21は、この直線bが計時を行うための図1に示す計時ラインLに重なるように配置される。
【0023】
そして、ループコイル21は、図3(a)の給電点sから矢印方向に電流が流れるようになっており、磁場発生装置20から正弦波が供給されると、コイル上に交流電磁場を生成する。具体的には、図3(b)に示すように、一方のコイル部上に第1の電磁場210aを生成するとともに、他方のコイル部上に第1の電磁場210aに対して競技者RNの走行方向(矢印A方向)に隣接し且つ第1の電磁場210aと電磁力を打ち消しあう第2の電磁場210bを生成する。
つまり、直線b上の電磁場の電磁界強度は、第1の電磁場210aと第2の電磁場210bとの電磁場の磁力の打ち消しにより、その両側の電磁界強度よりも極めて小さくなっている(例えば、電磁界強度が”0”となっている)。
【0024】
図3(b)に示すような電磁場中を、電磁場の検出方向(検出コイル面Dに対して直角な方向)が走路と垂直(つまり、検出コイル面Dが走路に対して平行方向)に配置された電磁場検出コイルC(後述する無線タグ80のLFアンテナ81)が矢印B方向に移動すると、図3(c)に示すような電磁界強度分布が得られる。つまり、電磁場検出コイルCは、走路に対して垂直方向の磁束をコイル面Dにて捉えることになるため、丁度中心にて、電磁界強度が極めて小さくなる(例えば、電磁界強度が”0”となる)図3(c)に示すような電磁界強度分布を検出する。
このため、競技者RNがループコイル21上を、矢印B方向に沿って通過した場合に、無線タグ80は、計時ラインL上(直線b上)を、第1の電磁場210aと第2の電磁場210bとの間の電磁場の変極点(後述するトリガポイント)として検出することができる。
【0025】
図1に戻って、タイマ機器30(30a〜30c)は、競技における基準時刻となるランニングタイムを計時する。このタイマ機器30は、競技のスタート予定時刻までダウンカウントし、スタート予定時刻に丁度0(00:00:00.00)となり、その時点からアップカウントによりランニングタイムを計時する。
例えば、競技の開始前に全てのタイマ機器30がスタート地点に集められ、図4(a)に示すように、各タイマ機器30(30a〜30c)をケーブルCBで接続して、同時にダウンカウントを開始させる。つまり、ダウンカウントする時間(残り時間)をセットすると共に、セットした時間を考慮した適切なタイミングで、グリップスイッチGSからダウンカウント開始信号を供給する。これにより、各タイマ機器30は、同期してダウンカウントを開始し、スタート予定時刻から同期したランニングタイムを計時することになる。
この他にも、GPS(Global Positioning System)衛星等から得られる標準時刻を共通に計時してもよい。
例えば、図4(b)に示すように、標準時刻受信機KJが接続されたタイマ機器30aと他のタイマ機器30(30b,30c)とをケーブルCBで接続して、共通に標準時刻の計時を開始させる。
【0026】
このように、各タイマ機器30にて同期した時刻(ランニングタイム等)の計時が開始した後に、途中計時地点及びゴール地点に配置されるタイマ機器30b,30cが適宜搬送される。
その後、競技が開始され、図4(c)に示すように、スタートピストルSPと接続されたタイマ機器30aにスタート信号が供給されると、このタイマ機器30aは、スタート時刻とランニングタイムとの時差、つまり、実際のスタート時刻とスタート予定時刻との差分を求める。そして、後述するように、ゴール地点の処理装置70にこの差分が入力され、収集された競技タイムが一律に補正される。
【0027】
図1に戻って、送信コントロールボックス40は、タイマ機器30bと接続されており、送信機41を介して、スタート前の競技者RNの無線タグ80に向けて、ランニングタイム(より詳細には、ダウンカウント中のタイム)を送信する。つまり、ループコイル11a上にて、上述のスタート地点を示すマットIDを受信して時刻セットモードに移行した無線タグ80に向けて、時刻セット用の時刻情報を送信して計時を開始させる。
【0028】
送信機41は、送信コントロールボックス40に制御され、上述した時刻セット用の時刻情報(ダウンカウント中のタイム)を無線タグ80に送信する。
【0029】
時刻セットコンソール50は、送信コントロールボックス40を制御したり、送信コントロールボックス40の動作状況等を表示したりするコンソール端末であり、競技役員等により、制御・監視用として適宜使用される。
【0030】
ゴール地点に配置される送受信コントロールボックス60は、タイマ機器30cと接続されており、送受信機61を介して、ゴール後の競技者RNの無線タグ80に向けて、正確なランニングタイムを送信する。つまり、ループコイル11d上にて、上述のタイム収集場所を示すマットIDを受信してタイム送信モードに移行した無線タグ80に向けて、タイム(精度)補正用の時刻情報を送信する。
そして、送受信コントロールボックス60は、送受信機61を介して、無線タグ80から送られるタイム情報を受信する。つまり、途中計時地点及びゴール地点にて計測された競技タイム(各地点の競技タイム)が含まれるタイム情報を、無線タグ80から受信する。
なお、無線タグ80は、上述したタイム補正用の時刻情報等に基づいて、各地点の競技タイムを適宜補正した後に、タイム情報を生成して送受信機61に送信するものとする。この競技タイムの補正については、無線タグ80の構成を後述する際に、詳細に説明する。
【0031】
送受信機61は、送受信コントロールボックス60に制御され、上述したタイム補正用の時刻情報(正確なランニングタイム)を無線タグ80に送信し、また、応答して無線タグ80から送られるタイム情報(各地点の競技タイム)を受信する。
【0032】
処理装置70は、送受信コントロールボックス60を通じて、各競技者RNのタイム情報(各地点の競技タイム)をそれぞれ収集する。そして、全ての競技タイムについて、実際のスタート時との差分を一律に補正し、最終的な競技タイムを取得する。
つまり、タイマ機器30(30a〜30c)及び、無線タグ80が、スタート予定時刻からアップカウントされるランニングタイムを計時しており、計測される競技タイムも、このランニングタイムを基準としている。このため、実際のスタート時刻とスタート予定時刻との差分を用いて、全ての競技タイムを一律に補正することで、時差が解消された競技タイムがそれぞれ得られることになる。
【0033】
一方、競技者RNに携帯(保持)される無線タグ80は、競技者RNと共に走路上を移動し、スタート地点から幾つかの途中計時地点を通過してゴール地点まで到達する。
なお、無線タグ80は、スタート前にループコイル11a上に生成される電磁場を検出すると、時刻セットモードに移行し、受信した時刻セット用の時刻情報によって、タイマ機器30と同期したランニングタイムの計時を開始する。
また、競技がスタートし、競技者RNが途中計時地点やゴール地点に到達すると、無線タグ80は、ループコイル11b,11c上に生成される電磁場を検出してタイム計測モードに移行する。そして、ループコイル21a,21b上に生成される電磁場の変極点を検出すると、その時点で自己が計時するランニングタイム(後述する計時部86が計時する時刻)から競技タイムを計測する。
更に、無線タグ80は、ループコイル11d上に生成される電磁場を検出すると、タイム送信モードに移行し、受信したタイム補正用の時刻情報等に基づいて各地点の競技タイムを適宜補正した後に、タイム情報を生成して送受信機61に送信する。
【0034】
より詳細に説明すると、無線タグ80は、図5に示すように、LFアンテナ81と、増幅回路82と、電磁場検出手段及び計時ポイント検出手段としての検出回路83と、復調回路84と、タイム計測手段及びタイム補正手段としての制御部85と、計時手段としての計時部86と、記憶手段としての記憶部87と、時刻情報取得手段及びタイム供給手段としての通信回路88と、を含んで構成される。
【0035】
LF(Low Frequency)アンテナ81は、上述したループコイル11及び、ループコイル21から発生される電磁場を検出する。つまり、変調磁場発生装置10によりループコイル11上に生成された電磁場(変調有り)又は、磁場発生装置20によりループコイル21上に生成された電磁場(変調無し)を検出する。
そして、LFアンテナ81は、検出した電磁界強度を示す検出信号を増幅回路82に供給する。
【0036】
増幅回路82は、LFアンテナ81から供給される検出信号を適宜増幅して、検出回路83及び復調回路84に供給する。
【0037】
検出回路83は、増幅回路82から供給される検出信号に従って、ループコイル11,21上への到達をそれぞれ検出し、更に、ループコイル21上における電磁場の変極点を検出する。
ループコイル11上において、検出回路83は、図6(a)に示すように、LFアンテナで受信する電磁場の電磁界強度が閾値以上になると検出出力を「HI」とし、電磁界強度が閾値以下になると検出出力を「LO」とする。なお、検出回路83は、変調の有無も合わせて検出する。つまり、一旦「HI」となった状態から後述のプリアンブルやマットIDを示す「HI」「LO」の組み合わせが変調速度で表れ、このパルス列を検出できれば、検出回路83は、無線タグ80(競技者RN)がループコイル11上に到達したことを検出することになる。
一方、ループコイル21上において、検出回路83は、図6(b)に示すように、LFアンテナで順次受信する第1の電磁場210a、第2の電磁場210bの電磁場強度が閾値以上になると検出出力を「HI」とする。ループコイル21の生成する電磁場には変調がかかっていないために、1回目に「HI」となった状態が所定期間以上持続し、これにより検出回路83は変調が無いことを検出する。検出回路83は、変調が無いときに、無線タグ80がループコイル21上に到達したことを検出する。そうして、検出回路83は、第2の電磁場210bを検出して2回目に「HI」となった状態を電磁場の変極点として検出する。つまり、図6(b)に示す2回目に「HI」となった状態を、ループコイル21上におけるトリガポイントとして特定する。
【0038】
図5に戻って、復調回路84は、検出回路83がループコイル11上に到達したことを検出すると(「HI」となった状態から変調も検出すると)、マットIDを復調して取得する。つまり、ループコイル11上に生成された電磁場に重畳されているマットIDを受信する。
例えば、図7(a)に示すような電磁場に、図7(b)に示すようなマットID(プリアンブル及びマットID)が重畳されている場合に、復調回路84は、図示しない周知のAGC回路(Automatic Gain Control)により、レベル調整を行った後に、マットIDを復調する。これにより、ループコイル11(変調磁場発生装置10)の個体差や環境等により、生成される電磁場のレベルが異なる場合でも、マットIDを適切に取得できる。
【0039】
図5に戻って、制御部85は、無線タグ80全体を制御する。例えば、スタート前に、復調回路84がスタート地点を示すマットIDを復調(受信)すると、制御部85は、時刻セットモードに移行する。つまり、通信回路88にて時刻セット用の時刻情報(ダウンカウント中のタイム)を受信し、計時部86にこのタイムをセットして、タイマ機器30と同期した時刻の計時(ダウンカウント)を開始させる。なお、計時部86は、後述するように、ダウンカウント終了後、アップカウントによりランニングタイムを計時する。
また、競技のスタート後に、復調回路84が途中計時地点やゴール地点を示すマットIDを復調(受信)すると、制御部85はタイム計測モードに移行する。そして、検出回路83がループコイル21上における電磁場の変極点を検出したタイミングで、計時部86が計時する時刻(ランニングタイム)を競技タイムとして計測する。制御部85は、このように計測した競技タイムを、記憶部87に順次記憶する。
【0040】
更に、復調回路84がタイム収集場所を示すマットIDを復調(受信)すると、制御部85はタイム送信モードに移行する。つまり、通信回路88にてタイム補正用の時刻情報(正確なランニングタイム)を受信し、計時部86が計時するランニングタイムとの誤差を求め、記憶部87に記憶した各競技タイムを、リニア(線形的)に補正する。そして、適宜補正した各競技タイムを含んだタイム情報を生成して、送受信機61に送信する。
【0041】
以下、このようなタイム送信モード時における各競技タイムの補正について、より詳細に説明する。
まず、制御部85は、タイム補正用の時刻情報を受信したタイミングで、計時部86にて計時されたランニングタイムを特定し、特定したランニングタイムが、正確なランニングタイムと比較してどれくらいの誤差を生じているか算定する。つまり、計時部86が計時する時刻における現時点の誤差を算定する。
具体的に制御部85は、以下の数式1により、計時部86が計時する時刻における現時点の誤差を算定する。
【0042】
[数1]
Δt=TT−TE
Δt:誤差
TT:計時部86が計時していたランニングタイム
TE:タイム補正用のランニングタイム
【0043】
そして、制御部85は、この誤差(つまり、現時点の誤差)を、各競技タイムが計測された際に相当する誤差に適宜修正した後、各競技タイムをリニアに補正する。
具体的に制御部85は、以下の数式2により、途中計時点及びゴール地点の競技タイムをそれぞれリニアに補正する。つまり、
【0044】
【数2】

【0045】
つまり、時刻セット用のランニングタイム(ダウンカウントの時刻)TSとタイム補正用のランニングタイム(現時点の時刻)TEとを加算した全体時間を分母とし、時刻セット用のランニングタイム(ダウンカウントの時刻)TSと補正前の競技タイムTnとを加算した経過時間を分子として、全体時間に対する競技タイムTnまでの経過時間の割合を求める。そして、この割合を現時点の誤差となるΔtに乗じることで、競技タイムTnが計測された際に相当する相当誤差が求まる。そして、この相当誤差を用いて競技タイムTnを補正することで、正確な競技タイムTn’を求めることができる。
そして、制御部85は、このようにリニアに補正した各競技タイムからタイム情報を生成して、送受信機61に送信する。
【0046】
計時部86は、通信回路88がスタート前に受信した時刻情報(時刻セット用のランニングタイムTS、より詳細には、ダウンカウント中のタイム)に基づいて、タイマ機器30と同期した時刻の計時を開始する。つまり、セットした時刻からダウンカウントを開始し、やがて、時刻が丁度0(00:00:00.00)になると、その時点からアップカウントにより、ランニングタイムを計時する。
なお、計時部86は、高安定水晶発振器を備えており、同期後の時刻の計時をある程度安定して維持することが可能となっている。
【0047】
記憶部87は、例えば、不揮発性メモリからなり、競技タイム等を記憶する。
この記憶部87には、少なくとも各途中計時地点用及び、ゴール地点用の記憶エリアがそれぞれ設けられており、競技タイムが計測される毎に対応する記憶エリアに格納可能となっている。つまり、上述したマットIDに応じて、途中計時地点用の各記憶エリア又は、ゴール地点用の記憶エリアに、競技タイム等が適宜格納される。
また、記憶部87は、スタート前に受信した時刻情報(時刻セット用のランニングタイムTS)を記憶する。この時刻情報は、上述したタイム補正用のランニングタイムTE(正確なランニングタイム)と共に、各地点の競技タイムを補正する際に使用される。
更に、記憶部87は、例えば、別エリアに、無線タグ80毎(競技者RN毎)に異なる固有の識別情報(タグID)等を予め記憶している。
【0048】
通信回路88は、所定の通信アンテナを介して、上述した送信機41から送られる時刻セット用の時刻情報や、上述した送受信機61から送られるタイム補正用の時刻情報を受信する。
また、通信回路88は、制御部85によって各地点の競技タイム(補正後の競技タイムTn’)を含むタイム情報が生成されると、このタイム情報を送受信機61に向けて送信する。
【0049】
以下、このような構成の競技用計測システムの動作について、図8〜図10を参照して説明する。図8は、無線タグ80が実行するタイム計測処理を説明するためのフローチャートであり、図9は、無線タグ80が実行するタイム補正処理を説明するためのフローチャートであり、そして、図10は、処理装置70が実行するスタート時差補正処理を説明するためのフローチャートである。
最初に図8を参照してタイム計測処理について説明する。
【0050】
まず、無線タグ80は、電磁場を検出するまで待機する(ステップS10)。すなわち、スタートを待つ競技者RN、又は、スタート後に走行する競技者RNが、ループコイル11又はループコイル21まで到達し、ループコイル11,21上に生成される電磁場を、検出回路83が検出するまで、無線タグ80は、後続処理の実行を待機する。
【0051】
無線タグ80は、電磁場を検出すると、変調の有無を判別する(ステップS11)。つまり、検出回路83は、検出した電磁場が変調されているか否かを判別する。なお、電磁場が変調されている場合に、ループコイル11上に到達したと判別し、逆に、電磁場が変調されていない場合に、ループコイル21上に到達したと判別する。
【0052】
無線タグ80は、電磁場が変調されていると判別すると(ループコイル11上に到達したと判別すると)、マットIDを受信する(ステップS12)。つまり、復調回路84は、電磁場に重畳されているマットIDを復調して取得する。
【0053】
無線タグ80は、取得したマットIDがスタート地点を示すIDであるか否かを判別する(ステップS13)。つまり、スタート前に、スタート地点のループコイル11a上にて、マットIDを受信したか否かを判別する。
【0054】
無線タグ80は、スタート地点のIDであると判別すると、時刻セット用の時刻情報を受信し、タイマ機器30と同期した時刻の計時を開始する(ステップS14)。つまり、時刻セットモードに移行し、通信回路88が送信コントロールボックス40(送信機41)から送られる時刻情報(時刻セット用のランニングタイムTS)を受信すると、制御部85は、計時部86にこのタイムをセットして、計時(ダウンカウント)を開始させる。
【0055】
そして、無線タグ80は、この時刻情報を記憶部87に記憶し(ステップS15)、上述したステップS10に処理を戻す。
【0056】
また、上述のステップS13にて、スタート地点のIDでないと判別した場合に、無線タグ80は、タイム収集場所を示すIDであるか否かを判別する(ステップS16)。つまり、ゴール後のループコイル11d上にて、マットIDを受信したか否かを判別する。
【0057】
無線タグ80は、タイム収集場所のIDでない(つまり、途中計時地点やゴール地点の示すマットIDである)と判別すると、タイム計測モードへ移行し(ステップS17)、上述したステップS10に処理を戻す。
【0058】
そして、上述したステップS11にて、電磁場が変調されていないと判別した場合(ループコイル21上に到達したと判別した場合)、無線タグ80は、変極点を検出するまで待機する(ステップS18)。つまり、検出回路83が、1回目にループコイル21上における電磁場の変極点を検出するまで待機する。なお、検出回路83は、ステップS10において1回目に電磁場の電磁界強度が閾値以上となったことを検出した後、変調も無く2回目に電磁界強度が閾値以上となったことを検出した際に、電磁場の変極点として検出する。
【0059】
そして、変極点が検出されると、無線タグ80は、競技タイム(補正前の競技タイムTn’)を計測し、記憶部87に格納する(ステップS19)。つまり、制御部85は、上述したステップS12にて受信したマットIDに応じて、記憶部87における、途中計時地点用の各記憶エリア又は、ゴール地点用の記憶エリアに、競技タイムを適宜格納する。
競技タイムを格納後、無線タグ80は、上述したステップS10に処理を戻す。
【0060】
また、上述したステップS16にて、タイム収集場所のIDであると判別された場合に、無線タグ80は、タイム情報送信処理へ処理を進める。
つまり、ゴール後のループコイル11d上にて、タイム収集場所であることを示すマットIDを受信したため、無線タグ80は、タイム送信モードに移行し、以下に説明するタイム情報送信処理を実行する。
続いて、図9を参照して、このタイム情報送信処理について説明する。
【0061】
タイム情報送信処理を開始すると、無線タグ80は、タイム補正用の時刻情報を受信する(ステップS21)。つまり、通信回路88は、送受信コントロールボックス60(送受信機61)から送られる時刻情報(タイム補正用のランニングタイムTE)を受信する。
【0062】
無線タグ80は、計時部86が計時する時刻の誤差を算定する(ステップS22)。つまり、制御部85は、時刻情報を受信したタイミングで、計時部86にて計時されたランニングタイムを特定し、特定したランニングタイムが、時刻情報のランニングタイムを基準としてどれくらいの誤差Δtを生じているか算定する。
具体的に制御部85は、上述した数式1により、計時部86が計時する時刻の誤差を算定する。
【0063】
無線タグ80は、記憶部87から計時開始時の時刻情報を読み出す(ステップS23)。つまり、スタート前に送信機41から送られた時刻セット用の時刻情報(時刻セット用のランニングタイムTS、つまり計時を開始した時刻)を記憶部87から読み出す。
【0064】
無線タグ80は、各地点の競技タイム(Tn)を記憶部87から読み出し、リニア(線形的)に補正する(ステップS24)。つまり、ステップS22にて算定した誤差(すなわち、現時点の誤差)を、各競技タイムが計測された際に相当する値に適宜修正した後、各競技タイムをリニアに補正する。
具体的に制御部85は、上述した数式2により、途中計時点及びゴール地点の競技タイムをそれぞれリニアに補正する。
【0065】
無線タグ80は、補正後の各競技タイム(Tn’)からタイム情報を生成し、送受信機61に送信する(ステップS25)。例えば、各地点の競技タイムと、タグIDを含んだ所定フォーマットのタイム情報を生成し、送受信機61に送信する。
【0066】
このように、上述した図8のタイム計測処理により、途中計時地点及びゴール地点にて、各競技タイムが計測されて記憶される。そして、上述した図9のタイム情報送信処理により、各地点の競技タイムがリニアに補正された後に、補正後の各競技タイムを含むタイム情報が送受信機61に送信される。
【0067】
次に、図10を参照してスタート時差補正処理について説明する。この処理は、実際のスタート時刻とスタート予定時刻との差分、つまり、上述した図4(c)に示す差分が、ゴール地点の処理装置70に供給されて開始される。
【0068】
まず、処理装置70は、差分を取得する(ステップS31)。つまり、実際のスタート時刻とスタート予定時刻との差分を取得する。
【0069】
処理装置70は、送受信コントロールボックス60がタイム情報を受信するまで待機する(ステップS32)。つまり、送受信コントロールボックス60が、ゴールした競技者RNの無線タグ80から送られるタイム情報を、送受信機61を介して受信するまで待機する。なお、送受信コントロールボックス60がタイム情報を受信すると、そのタイム情報は、処理装置70に供給される。
【0070】
そして、送受信コントロールボックス60がタイム情報を受信し、そのタイム情報を取得すると、処理装置70は、送受信コントロールボックス60から取得した差分を用いて、各競技タイムを一律に補正する(ステップS33)。つまり、タイム情報に含まれる各競技タイムが、スタート予定時刻からアップカウントされるランニングタイムを基準に計測されているため、差分を用いて、各競技タイムを一律に補正する。
【0071】
処理装置70は、時差が解消された各競技タイムを記憶する(ステップS34)。つまり、時差が解消された最終的な各競技タイムを、例えば、タイム情報に含まれるタグIDと対応付けて記憶する。
【0072】
処理装置70は、所定の競技者数分の処理を終えたか否かを判別する(ステップS35)。例えば、上位1000人までの競技者RNに対応する競技タイムの収集を終えたかどうかを判別する。
なお、所定人数分の処理を終えていないと判別すると、処理装置70は、ステップS32に処理を戻し、上述したステップS32〜S35の処理を繰り返し実行する。
一方、所定人数分の処理を終えたと判別すると、処理装置70は、スタート時差補正処理を終える。
【0073】
このようなスタート時差補正処理により、実際のスタート時刻とスタート予定時刻との時差が解消され、正確な競技タイムが収集されることになる。
この結果、より簡易な構成にて、競技者個々の正確な競技タイムを取得することができる。
【0074】
(他の実施形態)
上記の実施形態では、処理装置70に差分を供給することで、各競技タイムの時差を一律に補正する場合について説明したが、他の装置等がスタート時の時差を解消してもよい。
例えば、競技者RNがゴール地点に到達する前に、送受信コントロールボックス60を通じて、タイマ機器30cに差分が入力されている状況で、送受信コントロールボックス60が、各競技タイムの時差を補正してもよい。
以下、送受信コントロールボックス60がスタート時の時差を解消する場合について、説明する。
【0075】
タイマ機器30cに差分が入力されると、タイマ機器30cでは、実際のスタート時点からのランニングタイムを計時することになる。そして、無線タグ80が計時するスタート予定時刻からアップカウントしているランニングタイムとの間で、当然に時差が生じている。
そのため、タイム補正用の時刻情報として、そのままでは使用することができない。これは、無線タグ80(計時部86)のランニングタイムが、時間の経過と共にリニアに誤差が生じて(拡大して)いるため、経過時間に左右されない差分によって、スタート時の時差が解消されたタイマ機器30cのランニングタイムでは、その誤差を適切に補正することができない。
【0076】
そこで、送受信コントロールボックス60は、タイム補正用の時刻情報を無線タグ80に送信する際に、タイマ機器30cが計時しているランニングタイムから差分を戻して、元のランニングタイム(スタート予定時刻からアップカウントしたランニングタイム)を復元する。そして、この元のランニングタイムからタイム補正用の時刻情報を生成すると、送受信機61を介して無線タグ80に送信する。
この場合、上記と同様に、スタート予定時刻からアップカウントしたランニングタイムを、タイム補正用の時刻情報として送ることになるため、無線タグ80では、上述した数式1により、計時部86が計時する時刻の誤差を算定し、そして、上述した数式2により、途中計時点及びゴール地点の競技タイムをそれぞれリニアに補正することができる。
【0077】
やがて、無線タグ80からタイム情報が送られ、送受信機61を介して受信すると、送受信コントロールボックス60は、差分を用いて、タイム情報に含まれる各競技タイムを一律に補正する。つまり、送受信コントロールボックス60が全ての競技タイムについて、スタート時の時差を解消する。
そして、送受信コントロールボックス60は、正確な各競技タイムをタグIDと共に、処理装置70に供給する。
【0078】
このように、送受信コントロールボックス60がスタート時の時差を解消するため、処理装置70では、純粋に、競技タイムの収集管理を行うだけでよくなる。
【0079】
上記の実施形態では、無線通信によって、無線タグ80に時刻情報を送信し、また、無線タグ80からタイム情報を受信する場合について説明した。
しかしながら、これらの送信・受信タイミングが、スタート前及びゴール後であるため、無線通信の代わりに、有線通信を採用してもよい。
以下、無線タグ80との情報通信を有線により行う場合について、図11を参照して説明する。
【0080】
図11は、本発明の他の実施形態に適用される競技用計測システムの構成の一例を示す模式図である。この競技用計測システムは、上述した図1の競技用計測システムから、スタート地点の変調磁場発生装置10a、ループコイル11a、及び、送信機41と、ゴール地点の変調磁場発生装置10d、ループコイル11d、及び、送受信機61とを、省略したものとなっている。
なお、他の構成は、図1の競技用計測システムと同様である。
【0081】
この競技用計測システムでは、無線タグ80との情報通信を有線により行う。つまり、スタート前に、無線タグ80を送信コントロールボックス40に接続し、送信コントロールボックス40から無線タグ80に時刻セット用の時刻情報(ダウンカウント中のタイム)を供給する。
この時刻情報を取得すると、無線タグ80は、タイマ機器30と同期した時刻の計時(ダウンカウント)を開始する。そして、このように計時を開始した無線タグ80を競技者RNに配布する。
【0082】
競技がスタートすると、無線タグ80は、途中計時地点及びゴール地点(ループコイル21上)で競技タイムがそれぞれ計測し、記憶部87に順次記憶する。
【0083】
そして、ゴールした競技者RNから無線タグ80を回収すると、無線タグ80を送受信コントロールボックス60に接続し、送受信コントロールボックス60から無線タグ80にタイム補正用の時刻情報(正確なランニングタイム等)を供給する。
この時刻情報を取得すると、無線タグ80は、上述した数式1により、計時部86が計時する時刻の誤差を算定し、また、上述した数式2により、途中計時点及びゴール地点の競技タイムをそれぞれリニアに補正する。そして、無線タグ80は、補正した各競技タイムからタイム情報を生成し、送受信コントロールボックス60に供給する。
【0084】
無線タグ80からタイム情報を取得すると、送受信コントロールボックス60(又は、処理装置70)は、差分を用いて、タイム情報に含まれる各競技タイムを一律に補正する。つまり、スタート時の時差を解消した最終的な競技タイムを得る。
【0085】
このように、無線タグ80との情報通信を有線により行う場合でも、正確な競技タイムを取得することができる。そして、スタート地点及びゴール地点に配置する構成を、更に省略できるので、より簡易な構成の競技用計測システムを実現できる。
つまり、より簡易な構成にて、競技者個々の正確な競技タイムを取得することができる。
【0086】
また、この場合、無線タグ80から有線にてタイム情報を取得することから、ゴール後に競技者RNから無線タグ80を回収することが必要条件となり、回収の徹底が促進される。そして、回収忘れ等が生じた場合でも、未収集のタイム情報等から、未回収の無線タグ80(競技者RN)を特定することも容易となる。
【0087】
上記の実施形態では、競技用計測システムがマラソン競技に適用される場合について説明したが、他の競技にも適宜適用可能である。例えば、陸上のクロスカントリ競技等に適用してもよい。
【0088】
以上説明したように、本発明によれば、より簡易な構成にて、競技者個々の正確な競技タイムを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態に適用される競技用計測システムの構成の一例を示す模式図である。
【図2】(a)はループコイルの形状(略矩形形状)の一例を示す模式図であり、(b)は生成される電磁場を説明するための模式図であり、(c)は電磁場に重畳されるマットID等を説明するための模式図である。
【図3】(a)はループコイルの形状(略8の字形状)の一例を示す模式図であり、(b)は生成される電磁場を説明するための模式図であり、(c)は電磁場の強度分布を説明するための模式図である。
【図4】(a),(b)は、タイマ機器にて、同期したランニングタイムが計時されるまでを説明するための模式図であり、(c)は差分について説明するための模式図である。
【図5】無線タグの構成の一例を示すブロック図である。
【図6】(a),(b)は、電磁場の検出の様子を説明するための模式図である。
【図7】(a)は生成される電磁場を説明するための模式図であり、(b)は電磁場に重畳されるマットID等を説明するための模式図であり、(c)はレベル調整を行った後に、マットIDを復調する様子を説明するための模式図である。
【図8】本発明の実施形態に適用されるタイム計測処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に適用されるタイム情報送信処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態に適用されるスタート時差補正処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の他の実施形態に適用される競技用計測システムの構成の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0090】
10a〜10d 変調磁場発生装置
11a〜11d ループコイル
20a,20b 磁場発生装置
21a,21b ループコイル
30a〜30c タイマ機器
40 送信コントロールボックス
41 送信機
50 時刻セットコンソール
60 送受信コントロールボックス
61 送受信機
70 処理装置
80 無線タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
競技者が携帯する無線機器と、スタート地点に配置され、基準時刻に基づいた第1の時刻情報を前記無線機器に供給する時刻供給装置と、ゴール地点に配置され、前記基準時刻に基づいた第2の時刻情報を前記無線機器に供給すると共に前記無線機器からタイム情報を取得するタイム取得装置と、を含む競技用計測システムであって、
前記無線機器には、
前記時刻供給装置から供給される前記第1の時刻情報及び、前記タイム取得装置から供給される前記第2の時刻情報を取得する時刻情報取得手段と、
前記時刻情報取得手段にて前記第1の時刻情報が取得されると、前記第1の時刻情報に基づいて、前記基準時刻と同期した時刻の計時を開始する計時手段と、
競技者が走行する走路上に生成された電磁場を検出する電磁場検出手段と、
前記電磁場検出手段にて検出された前記電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ポイントを検出する計時ポイント検出手段と、
前記計時ポイント検出手段にて前記計時ポイントが検出された際に、前記計時手段にて計時された時刻を競技タイムとして計測するタイム計測手段と、
前記タイム計測手段にて計測された前記競技タイムを記憶する記憶手段と、
前記時刻情報取得手段にて前記第2の時刻情報が取得されると、前記計時手段が計時している時刻の誤差を算定し、算定した前記誤差に基づいて、前記記憶手段にて記憶された前記競技タイムを線形的に補正するタイム補正手段と、
前記タイム補正手段にて補正された前記競技タイムを含む前記タイム情報を前記タイム取得装置に供給するタイム供給手段と、が設けられている、
ことを特徴とする競技用計測システム。
【請求項2】
前記タイム補正手段は、前記第2の時刻情報にて示される前記基準時刻から、前記計時手段が計時している時刻における現時点の誤差を算定し、算定した前記現時点の誤差を前記競技タイムが計測された際に相当する相当誤差に修正し、修正した前記相当誤差に基づいて、前記競技タイムを補正する、
ことを特徴とする請求項1に記載の競技用計測システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記時刻情報取得手段が取得した前記第1の時刻情報を更に記憶し、
前記タイム補正手段は、前記第1の時刻情報にて示される前記基準時刻から前記第2の時刻情報にて示される前記基準時刻までの全体時間に対する、前記第1の時刻情報にて示される前記基準時刻から前記競技タイムまでの経過時間の割合を求め、求めた前記割合に算定した前記現時点の誤差を乗じることにより前記相当誤差を求め、求めた前記相当誤差に基づいて前記競技タイムを補正する、
ことを特徴とする請求項2に記載の競技用計測システム。
【請求項4】
前記時刻供給装置及び前記タイム取得装置は、スタート予定時刻に基づいた前記第1及び前記第2の時刻情報を前記無線機器に供給し、
前記タイム取得装置は、前記無線機器から前記タイム情報を取得すると、取得した前記タイム情報に含まれる前記競技タイムを、実際のスタート時刻と前記スタート予定時刻との時差を示す差分に基づいて、一律に補正する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の競技用計測システム。
【請求項5】
競技者が携帯する無線機器と、スタート地点に配置され、基準時刻に基づいた第1の時刻情報を前記無線機器に供給する時刻供給装置と、ゴール地点に配置され、前記基準時刻に基づいた第2の時刻情報を前記無線機器に供給すると共に前記無線機器からタイム情報を取得するタイム取得装置と、を含むシステムにおける前記無線機器のタイム補正方法であって、
前記無線機器において、前記時刻供給装置から供給される前記第1の時刻情報及び、前記タイム取得装置から供給される前記第2の時刻情報を取得する時刻情報取得ステップと、
前記時刻情報取得ステップにて前記第1の時刻情報が取得されると、前記第1の時刻情報に基づいて、前記基準時刻と同期した時刻の計時を開始する計時ステップと、
競技者が走行する走路上に生成された電磁場を検出する電磁場検出ステップと、
前記電磁場検出ステップにて検出された前記電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ポイントを検出する計時ポイント検出ステップと、
前記計時ポイント検出ステップにて前記計時ポイントが検出された際に、前記計時ステップにて計時された時刻を競技タイムとして計測するタイム計測ステップと、
前記タイム計測ステップにて計測された前記競技タイムを自己の記憶部に格納する格納ステップと、
前記時刻情報取得ステップにて前記第2の時刻情報が取得されると、前記計時ステップにて計時された時刻の誤差を算定し、算定した前記誤差に基づいて、前記格納ステップにて格納された前記競技タイムを線形的に補正するタイム補正ステップと、
前記タイム補正ステップにて補正された前記競技タイムを含む前記タイム情報を前記タイム取得装置に供給するタイム供給ステップと、
を備えることを特徴とするタイム補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−292491(P2007−292491A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118017(P2006−118017)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【出願人】(500198210)セイコータイムシステム株式会社 (8)
【Fターム(参考)】