説明

竹長維管束集合体およびその製造方法、並びにこれを用いたブロック材

【課題】ブロック材の製造に適した長繊維で、経時的に起こる硬化が少なく、かつ接着性がよい竹長維管束集合体と、この竹長維管束集合体を用いて、機械的強度に優れたブロック材を提供する。
【解決手段】(1)竹植物の茎部分を圧縮して平面状にする圧縮工程、(2)前記茎部分の表面部分を除去する表皮除去工程、(3)圧力3〜10atm、温度130〜200℃の条件で、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、石灰、界面活性剤から選ばれる一種以上からなる柔軟剤を含む水に浸漬してなる柔軟化工程、(4)圧縮して維管束を分離させる分繊工程、を順次経て製造される。また、ブロック材は、この竹長維管束集合体に熱硬化性樹脂を含浸させ、金型中、加熱下で加圧成型して製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹長維管束集合体およびこれを用いたブロック材に関する。
【背景技術】
【0002】
竹は発育速度が速く生産性の高い天然資源であり、その繊維は、高強度、高剛性、高反発力、低伸縮性など優れた特徴を有している。この竹繊維を製造するために、例えば竹材を、高圧雰囲気下に置いた後、一気に大気圧中に放出して爆砕する繊維状竹材の製造方法〔特許文献1参照〕、竹を短冊状竹片とした後、解繊機内に送り込み、解繊機のインペラ−と、解繊細溝との間で短冊状竹片を解繊し、所定の径まで解繊された竹繊維を解繊機の周面に付設されているスクリーンで選別して取出す手法〔特許文献2参照〕、竹材を冷凍して組織中水分の凝固膨張により内部に歪を蓄積させ、次いでこれを解凍して維管束の内部組織中に多数の空孔あるいはき裂が生じさせて、リグニンに由来する単繊維間の結着力が低下させた後に解繊する方法〔特許文献3参照〕、竹材を高圧釜内に水又は湯と共に入れて高温高圧下で煮沸し、この後解繊機を使用して解繊処理する方法〔特許文献4参照〕などの製造方法が提案されている。これらの提案は、竹が長手方向に破断されて、ほとんどが短繊維や粉末となり、10mmを越える竹の長繊維を製造することが難しく、従って竹繊維を板などのブロック材とするには、短繊維を補強繊維とする補強繊維プラスチック成形体〔特許文献5参照〕であった。
【0003】
一方、竹の長い繊維を製造するために、所定長さに切断した竹材を圧力釜内で100℃以上の温度及び該温度に対応する水蒸気圧下に加熱及び加圧する加熱加圧操作と、圧力缶内の圧力を急速に解放する減圧操作とを繰り返し行って、所定長さの竹繊維を得る方法〔特許文献6参照〕、長手方向に間隔を以って裁断された竹材を圧縮して開裂させて平板状に圧縮形成し、圧縮形成された平板状の竹材を、加熱水蒸気の雰囲気下で蒸煮し、蒸煮された竹材を、常圧下で、常温より高い温度下で解繊する方法〔特許文献7参照〕の提案がある。
また、竹繊維を混合した強化したプラスチック成形品についての報告〔例えば、特許文献8参照〕もある。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−7903号公報
【特許文献2】特開2000−71209号公報
【特許文献3】特開2005−153160号公報
【特許文献4】特開2006−150819号公報
【特許文献5】特開2003−253011号公報
【特許文献6】特開2003−155677号公報
【特許文献7】特開2005−193405号公報
【特許文献8】特開2006−176642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、竹繊維は、解繊した後でも時間の経過とともに硬化し、脆くなる性質があり、このために竹繊維を取り扱う時や、竹繊維をブロック材に配合する工程で竹繊維が破断したり、さらにブロック材とした後でも内部で経時的に強度劣化を招くという問題を有していた。また、竹材は、竹の外側表皮部に油分を多く含んでおり、ブロック材としたとき、繊維と樹脂との接着不充分な部分が生じ、ブロック材内部に空隙を作ることがあり、やはり強度劣化を招く原因となっていた。
かかる問題点を解決すべくなされた本発明の目的は、ブロック材の製造に適した長繊維で、経時的に起こる硬化が少なく、かつ油分の少なく樹脂との接着性がよい竹長維管束集合体(以降、特に断りのない限り単に「維管束集合体」と記す。)と、この維管束集合体を用いて、機械的強度に優れたブロック材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明は維管束集合体の製造方法であり、(1)竹植物の茎部分を圧縮して平面状にする圧縮工程、(2)前記茎部分における表皮部分を除去する表皮除去工程、(3)圧力3〜10atm、温度130〜200℃の条件で、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、石灰、界面活性剤から選ばれる一種以上からなる柔軟剤を含む水に浸漬してなる柔軟化工程、(4)圧縮して維管束を分離させる分繊工程、を順次経て製造される。
【0007】
ここで、圧縮工程を竹植物の茎部分を水に浸漬して行うのが好ましい。また、柔軟化工程は、先ず圧力3〜10atm下で温度130〜200℃の水に浸漬し、次いで常圧下で80〜100℃で水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、石灰、界面活性剤から選ばれる一種以上からなる柔軟剤を含む水に浸漬して行うこともできる。
【0008】
また、柔軟剤は、陽イオン界面活性剤、特にアルキルアンモニウム化合物、ハロゲン化アルキルアンモニウム化合物から選ばれる一種以上であるのが好ましい。
【0009】
また、本発明は、前記の維管束集合体を用いたブロック材であり、維管束集合体に、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン(イソシアネート)樹脂、ユリア樹脂などの熱硬化性樹脂(以降、特に断りない限り単に「樹脂」と記す)を含浸させ、金型中、加熱下で加圧成型してブロック材とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、経時的に起こる硬化が少ない、かつ油分の少ない維管束集合体が得られ、樹脂で接着して機械的強度に優れたブロック材が製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、維管束集合体と、および維管束集合体を用いたブロック材に関する。
竹の断面は、水分を運搬するための道管と、主に養分を運搬する師管と、これら道管と師管の周りを取り囲む維管束鞘が木質部に囲まれている。本発明における維管束集合体は、竹材を構成する維管束鞘を主とする維管束が完全に分繊化された状態でなく、複数本の維管束が一部残存するリグニンなどにより結着された集合体であり、「竹長維管束集合体」における「長」は、維管束集合体製造前の被処理竹材の長さである。
【0012】
本発明における竹植物は、イネ科タケ亜科に属する竹であり、特に好ましくはマダケ属に属するモウソウチク、マダケ、ハチクである。また、後述するように部分的な混和材的な使用でメダケ属に属するメダケなども使用しうる。竹は、好ましいくは2年以上、さらに好ましくは3年以上生育したものが本発明の目的に合う。竹の伐採から本発明の実施までの経過は限定されないが、竹は伐採して時間が経過すると硬くなる性質があり、従って、本発明で用いるには伐採した後早急に使用するのが好ましい。
【0013】
本発明の維管束集合体は、(1)天然の竹を圧縮して平面状にする圧縮工程、(2)竹の表皮部分を除去する表皮除去工程、(3)高温加圧下に水で処理し、かつ柔軟剤を含有させて竹を柔軟にさせる柔軟化工程、次いで(4)高圧でプレスすることで維管束を小さい集合体に分離させる分繊工程、を経て製造される。図1には、本発明の維管束集合体の製造工程の段階をフロー図で示した。以下、各工程を詳細に説明する。
【0014】
(1)圧縮工程
本発明は、葉および小枝部分を取り除いた竹の茎部分用いる。竹は種類や成長度によるが、長いものでは全長15〜20mに達することがあり、先端の細い部分、および小枝部分を取り除くと、本発明で使用できる長さは通常10m以下となる。本発明では、被処理竹〔以降、特に断りのない限り単に「竹」と記す〕の長さは特に制限するものではなく、10m以上になっても、あるいは短く裁断したものでも使用しうるが、長い方が有利である。また、竹は、断面円形状のまま使用してもよいが、好ましくは長さ方向に沿って2以上に分割して使用するのが操作上有利である。
【0015】
竹は、伐採後速やかに用いるのがよいが、竹林における伐採と維管束集合体の製造を連続して行うのは実質難しいことが多い。しかし、本発明の維管束集合体の製造には、含水率が高い竹が有利であるので、維管束集合体製造前に、予め好ましくは1日以上水に浸漬して竹の含水率を高めておくとよい。
【0016】
圧縮処理は、回転する上下対になったローラーの間に竹材を挿入し、ローラー間の圧力で押し潰す圧延ローラープレスで実施する。このとき、複数の対のローラーを並べた多段圧延ローラープレスを用い、前段では比較的圧を小さく、徐々に圧を高くしていくのがよい。本発明では、好ましくは5〜20段、さらに好ましくは10〜15段圧延ローラープレスを用い、後段でのローラーではローラーにかかる圧力を好ましくは5〜20MPa、さらに好ましくは7〜15MPaとする。温度は、通常室温である。圧延ローラープレスにより竹材の組織が押し潰されて一部分繊、いわゆる粗砕されるとともに、竹材の曲面部が平面になる。
【0017】
ローラーは、その表面の円周方向に沿って複数の溝を設けるのが好ましい。溝は、断面が四角形状でもよいが、溝の壁面が斜面になってローラー表面で広く、奥で狭くなった三角形状または台形状とし、幅が1〜5mm、好ましくは2〜3mm程度、深さが1〜5mm、好ましくは2〜3mm程度とするのがよい。竹材組織は、圧延ローラーによる上下方向の圧搾により押し潰されるが、三角形状または台形状の溝の場合には、さらに斜面の壁による部分的な横方向の力が加わり、より効率よく押し潰されていく。従って、溝は、前段ローラーでは広い間隔、例えば5〜10mm間隔とし、後段ローラーにいくに従い間隔を狭くしていき、最終段ローラーでは、例えば1〜3mm間隔にしていくのがよい。
【0018】
(2)表皮除去工程
次いで、平面になった竹材から、その表皮、具体的には表面から0.5〜1mm部分を除去する。圧縮処理工程により竹材の曲面はなくなり、平面になっているので、表皮除去は、プレーナーで削り取る、あるいはサンダーで研磨することで容易に実施できる。
表皮除去工程を行わず、竹の表皮を含んだまま維管束集合体とすると、竹の表皮に多く含まれる油成分が維管束集合体に残り、維管束集合体をブロック材としたとき油成分により樹脂との接着効果に阻害を及ぼし、ブロック材内部の維管束間に部分的な隙間を作りブロック材に欠陥を生じることがある。表皮を除去することでこの問題は解決するので、表皮を除去することは、特に維管束集合体からブロック材を製造するに際して重要である。
【0019】
(3)柔軟化工程
柔軟化処理は、圧縮処理された竹材を、耐圧容器中で、水、好ましくは柔軟化剤を含む水に浸漬し、圧力3〜10atm、好ましくは4〜6atmで、130〜200℃、好ましくは温度140〜160℃とし、この条件下に20〜200分、好ましくは30〜120分保持して行う。ここに挙げた圧力、温度、処理時間の範囲より低圧、低温、短時間では柔軟化処理が不充分なことがあり、また逆にこの範囲より高温、高圧、長時間では柔軟化処理された竹材に性能上の問題はないが、特に性能の向上もなく工程上の無駄になる。また、耐圧容器中で、柔軟化剤を含まず水のみ使用して上記条件に保持し、耐圧容器から取出して直ちに、好ましくは1日以内に、温度80〜100℃とした柔軟化剤を含む水に浸漬して20〜200分、好ましくは30〜120分処理することでも本発明の目的は達せられる。
【0020】
柔軟剤は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、石灰などのアルカリ剤、または陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤を、一種単独あるいは二種以上の混合で使用される。このうち、アルキルアンモニウム化合物〔例えば、ジオクチルアンモニウム、ジオレイルアンモニウム、ジ牛脂アルキルアンモニウム、ジヤシアルキルアンモニウム、トリデシルアンモニウム〕、ハロゲン化アルキルアンモニウム化合物〔例えば、臭化ヘキサデシルエーテルジメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化オクタデシルトリメチルアンモニウム、臭化オクタデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム〕などの陽イオン界面活性剤が好ましく、特に塩化テトラデシルジメチルアンモニウム(塩化ベンザルコニウム)が好ましい。
柔軟剤は、3〜20重量%、好ましくは5〜10重量%の水溶液として用いるが、一部水溶性の有機溶剤を混合して用いてもよい。
【0021】
竹の維管束は、時間の経過とともに硬化する性質があるが、上記柔軟剤処理により、この硬化を大幅に遅らせることができる。
【0022】
(4)分繊工程
柔軟化工程で柔らかくなった竹材は、再度圧延ローラープレスで加圧して分繊化される。この際、上記したように維管束は、時間の経過とともに硬化する性質があるので、例え柔軟剤処理したものであっても柔軟化工程後速やかに、好ましくは1日以内に分繊工程を行うのがよい。
分繊工程は、圧延ローラープレスが使用され、その圧延ローラープレスは、圧縮工程における圧延ローラープレスと同じでよいが、ここでの被処理竹は既に圧縮され、柔らかくなっているので、圧縮工程の場合より上下ローラー間の間隔を狭くして、大きな圧力、好ましくは5〜20MPa、さらに好ましくは8〜15MPaで行い、温度を好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは60〜70℃とする。この工程では、既に竹は柔らかくなって、かつ水分を含んでいるので、圧延されることにより竹材中の水分が絞り出され、同時に竹材中のリグニン類も流出する。しかし、リグニン類は完全に除去されずに一部残り、維管束が完全には分繊されずに維管束集合体となる。
【0023】
分繊された維管束集合体は、乾燥機で水分を除去し、含水率10重量%以下、好ましくは5〜6重量%とし、本発明の維管束集合体が出来上がる。
【0024】
以上の工程で製造された維管束集合体は、ブロック材とすることができる。ここで、ブロック材は、角材、棒、平板状などが一般的であるが、その他アーチ型材など金型形状により任意の形状にすることもできる。図1には、ブロック材の製造工程のフローも併せ示している。
【0025】
ブロック材の製造は、上記した維管束集合体に樹脂(接着剤)を含浸させ、室温にて金型中に充填して加圧し、次いで、この状態で所定温度に所定時間保持して硬化させる。加熱温度、加熱時間などの硬化条件は、用いる樹脂の種類や性状に合わせて決められるが、通常120〜220℃で、1〜20時間保持して行われる。硬化後、冷却させてから金型から抜いた後、2〜10日またはそれ以上の長期間に亘り常温に放置して養生されて、本発明のブロック材となる。
【0026】
ブロック材の製造に使用される維管束集合体は、モウソウチク、マダケ、ハチクなどマダケ属の竹植物からのものが繊維長が長く、かつ強度も高いので好ましいが、これらの維管束集合体とともに、維管束集合体を充填した隙間を埋めるようにこれらと混ぜてメダケやオダケなど比較的小さな竹植物からの維管束集合体も使用し得る。特に、竹植物の入手状況によっては、このような小さな竹植物の有効利用の観点から好ましいことがある。
【0027】
樹脂は、ブロック材の使用目的によって決められるものであり、本発明は特に限定するものではないが、一般に繊維強化樹脂に使用される熱硬化性樹脂であり、例示すればエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂を予備重合した樹脂などであり、一種単独でも、二種以上の樹脂の混合物であってもよい。また、これらの熱硬化性樹脂とともに硬化剤、硬化促進剤、離型剤、脱泡剤、紫外線吸収剤、充填材などの各種添加剤などを加えることがあるが、本発明は、ブロック材の性能を損なわない範囲でこれら各種添加剤の使用を制限するものではない。
【0028】
維管束集合体と樹脂との混合割合は、任意に決められが、通常、維管束集合体と樹脂が(80:20)〜:(90:10)(重量比)である。ブロック材は、維管束集合体に樹脂を含浸させ、これを金型に充填して加圧して成型されるが、維管束集合体と樹脂との混合比率、さらに金型に加える圧力の大きさを調整することにより、ブロック材の密度を限られた範囲ではあるが、任意に設定することができる。
【0029】
ブロック材を製造するにあたり、維管束集合体を一方向に並べて製造されたとき、そのブロック材は、維管束集合体の長さ方向の強度が、その直角方向の強度より高くなるのはいうまでもない。このような強度に方向を作らず各方向に均一な強度とするためには、ブロック材の製造段階において維管束集合体を一方向のみでなく、直角方向、さらに斜め方向などに随意に並べること達成される。また、曲面金型を使用すれば、アーチ型成型物とすることもできる。
成形後のブロック材は、必要により周囲を切削したり、任意の形状に切り出し使用目的に合うようにする。
【0030】
本発明のブロック材は、構造材、外装材、内装材、造作材などとして建築用材、家具類などの部材に使用できる。特に維管束集合体を用いたブロック材は、金属材料やコンクリート類に比べて軽量であり、しかも木材に比べて高強度であるという特徴を有している。
【実施例】
【0031】
1.維管束集合体の製造
1)圧縮工程
外径が約100mm、肉厚約10mmのモウソウタケを長さ方向に3分割し、室温で2日間水に浸漬しておいた後、これを直径250mmのローラーを上下対にして14対並べた14連圧延ローラープレス〔(株)清本鉄工製〕を用い、室温にて、始めの2連のローラープレスは、曲面状の竹材が入るので対になるローラーの間隔を広くし、順次この間隔を狭くして圧縮効果を高め、最終ローラーは、圧力10Mpaとして圧縮、平面化させた。また、ローラー表面には、幅が2mm、深さが2mmの溝を、始めの2連は約10mm間隔、次いで4連づつ約5mm間隔、約3mm間隔、約2mm間隔として順次間隔を狭く形成させた。
【0032】
2)表皮除去工程
上記圧縮工程で圧縮、平面化した竹材を、プレーナーで竹の外表面に相当する部分を厚さ7mm削り取った。
【0033】
3)柔軟化工程
上記圧縮、平面化し、表皮部分を取り除いた竹材を耐圧容器に入れ、塩化テトラデシルジメチルアンモニウム(塩化ベンザルコニウム)の7重量%水溶液を竹材が完全に浸漬する程度に入れ、5atm、160℃で120分処理した。
【0034】
4)分繊工程
上記柔軟化した竹材を、直ちに圧縮工程で用いた14連圧延ローラープレス〔(株)清本鉄工製〕にて、室温下、最終ローラーの圧力14MPaで分繊させた。最後に、ベルトコンベアー式乾燥機を用い70℃で乾燥して、含水率5重量%の維管束集合体とした。
【0035】
2.ブロック材の製造
1)ブロック材の製造
上記工程で得られた維管束集合体を、維管束集合体と樹脂(溶剤を除く樹脂部分)が85:15(重量比)となるように樹脂溶液に浸漬して含浸せしめ、50℃で1時間乾燥した。樹脂として、イソシアネート系樹脂〔コニシ(株)製、「CU3」(商品名)〕、またはレゾルシノールフェノール共縮体系樹脂〔(株)〕オーシカ製、「ディアノールD−40」(商品名)〕を用いた。樹脂が含浸された維管束集合体を、底面が100mm×3000mmの金型に、金型長辺に竹長維管束集合体の長さ方向にして並べ、積層して充填し、真空プレスにより高さ200mmになるまで加圧し、この状態で200℃で2時間保持し、樹脂を硬化させた。冷却後、硬化物を金型から取出し成型品とした。ここでは、樹脂が含浸された維管束集合体の量を変えて、加える圧力をそれぞれ変えることで成型後の体積が同じくなるようにしており、これにより成型品の密度を変えている。
また、比較例として、表皮除去を行わず、かつ柔軟剤を使用しない以外は同様にして製造した維管束集合体を用いてブロック材を製造した。
【0036】
2)ブロック材の観察
本発明の維管束集合体を用いたブロック材も、比較例としての表皮を除去せず、柔軟剤を使用しない維管束集合体を用いたブロック材も成型されたブロック材の外観は同じであった。これらのブロック材を、長辺と直交するように(すなわち、維管束を切断する方向に)10ヵ所で切断し、各切断面におけるボイド(空隙)の数を肉眼で観察した。各試料について10ヵ所の観測数を平均してボイド数とした。その結果を表1に示す。
【0037】
3)ブロック材の物性
日本農林規格の構造用集成材曲げC試験に準拠して曲げ剛性、曲げ強度を測定した。
試験片:成型品を切削して、幅150mm×厚17mm×長500mmの板にして試験に供した。尚、試験片の長さ500mmを維管束集合体の長さ方向とした。
試験機:ミネビア(株)製、「TG−50kN」(型番)を用いた。
試験方法:4点曲げ試験〔2支点(支点間距離420mm)の上に試料板を置き、支点間を等分する2点に集中載荷(各支点位置から内側140mmに載荷点、荷重間距離140mm)する〕により、載荷速度毎分8mm(毎分300kgf/cm)での荷重を試験機内蔵ロードセルから、曲げ変位を試料中央部1箇所においた変位計で測定した。測定は、各試料につき4回行い、平均値をもって測定値とした。
【0038】
【表1】

【0039】
この結果から、本発明のブロック材は、比較のブロック材と比べて曲げ剛性は大きな差がないが、曲げ強度が高いことがわかる。また、本発明のブロック材はボイドが少なくなっており、接着が良好であると推測される。比較のブロック材は、維管束が一部切断され、またボイドが多いことから曲げ強度に影響したと推測される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の維管束集合体は、経時的に起こる硬化が少なく、かつ油分の少ないために樹脂との接着性がよい。従って、本発明の維管束集合体を樹脂と一緒にして加圧成型したブロック材は機械的強度に優れており、建築用の構造材、外装材、内装材、造作材など、家具類などの部材として使用できる。特にこのブロック材は、金属材料やコンクリート類に比べて軽量であり、木材に比べて高強度であるという特徴を有し、広い用途を有し、産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】竹長維管束集合体、およびブロック材の製造工程フロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)竹植物の茎部分を圧縮して平面状にする圧縮工程、(2)前記茎部分における表皮部分を除去する表皮除去工程、(3)圧力3〜10atm、温度130〜200℃の条件で、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、石灰、界面活性剤から選ばれる一種以上からなる柔軟剤を含む水に浸漬してなる柔軟化工程、(4)圧縮して維管束を分離させる分繊工程、を順次経て製造されることを特徴とする竹長維管束集合体の製造方法。
【請求項2】
前記圧縮工程が、竹植物の茎部分を水に浸漬してから行われることを特徴とする請求項1に記載の竹長維管束集合体の製造方法。
【請求項3】
前記柔軟化工程が、圧力3〜10atm下で温度130〜200℃の水に浸漬し、次いで常圧下で80〜100℃で水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、石灰、界面活性剤から選ばれる一種以上からなる柔軟剤を含む水に浸漬して行われることを特徴とする請求項1に記載の竹長維管束集合体の製造方法。
【請求項4】
前記柔軟剤が、陽イオン界面活性剤であることを特徴とする請求項1に記載の竹長維管束集合体の製造方法。
【請求項5】
前記陽イオン界面活性剤が、アルキルアンモニウム化合物、ハロゲン化アルキルアンモニウム化合物から選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項4に記載の竹長維管束集合体の製造方法。
【請求項6】
前記竹植物が、モウソウチク、マダケ、ハチクから選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の竹長維管束集合体の製造方法。
【請求項7】
前記請求項1ないし6いずれか1項に記載の方法により製造された竹長維管束集合体。
【請求項8】
前記請求項7に記載の竹長維管束集合体に熱硬化性樹脂を含浸させ、金型中、加熱下で加圧成型して製造されることを特徴とするブロック材。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン(イソシアネート)樹脂、ユリア樹脂から選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項8に記載のブロック材。

【図1】
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【公開番号】特開2009−166397(P2009−166397A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8422(P2008−8422)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(304049075)株式会社タケックス・ラボ (8)
【Fターム(参考)】