説明

筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具

【課題】 空孔の多い紙や、薄い紙により構成される書籍に筆記しても筆跡の裏抜けを生じ難く、紙の裏面への筆記性を満たすと共に、紙の裏面に印刷してある文字を視認し難くなったり、視認できなくなることのない、実用性に富む筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具を提供する。
【解決手段】 非変色性顔料と、ビヒクルとからなり、前記非変色性顔料の平均粒子径が0.5〜4.0μmの範囲にあり、0.5μm未満の非変色性顔料が全非変色性顔料中の10体積%未満である筆記具用インキ組成物、及びそれを収容した筆記具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具に関する。更に詳細には、紙面に筆記した際、インキ組成物の裏抜けを生じ難い筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、染料と、有機溶剤と、単糖類もしくは二糖類のヒロドキシ安息香酸エステル又は単糖類もしくは二糖類のアルキル安息香酸エステルを含む油性インキが開示されている。
前記インキ組成物を収容した筆記具を用いて紙面に筆記して得られる筆跡は、インキ組成物の裏抜けを生じ難いことが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、前記インキ組成物は着色剤として染料を用いているため、空孔の多い紙や、薄い紙により構成される六法全書等の辞書に筆記すると筆跡の裏抜けが発生し、紙面の裏側に筆記できなくなったり、紙面の裏側に印刷してある文字を視認し難くなったり、或いは、文字を視認できなくなるといった不具合を生じる。
【特許文献1】特開平7−41714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は前述した問題点を解消しようとするものであって、即ち、空孔の多い紙や、薄い紙により構成される辞書等に筆記しても筆跡の裏抜けを生じ難い筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、前記した従来の筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具の問題点を解消しようとするものであって、即ち、非変色性顔料と、ビヒクルとからなり、前記非変色性顔料の平均粒子径が0.5〜4.0μmの範囲にあり、0.5μm未満の非変色性顔料が全非変色性顔料中の10体積%未満である筆記具用インキ組成物を要件とする。
更には、前記非変色性顔料が染料又は顔料をマイクロカプセル壁膜に内包したマイクロカプセル顔料であること、前記ビヒクルが水性ビヒクルであること、前記ビヒクル中に、高分子凝集剤と、側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、有機窒素硫黄化合物と、水溶性樹脂を含んでなること、前記ビヒクル中に2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール及び/又はその塩を含有してなること等を要件とする。
更には、前記筆記具用インキ組成物を収容したマーキングペン形態の筆記具を要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、空孔の多い紙や、薄い紙により構成される書籍に筆記しても筆跡の裏抜けを生じ難く、紙の裏面への筆記性を満たすと共に、紙の裏面に印刷してある文字を視認し難くなったり、視認できなくなることのない、実用性に富む筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の筆記具は、非変色性顔料と、ビヒクルとからなるインキ組成物を収容してなる。
前記非変色性顔料は、平均粒子径が0.5〜4.0μmの範囲にあり、0.5μm未満の非変色性顔料が全非変色性顔料中の10体積%未満であれば特に限定されるものではなく、一般顔料、蛍光顔料、一般染料や一般顔料をマイクロカプセル壁膜に内包したマイクロカプセル顔料、蛍光染料や蛍光顔料をマイクロカプセル壁膜に内包したマイクロカプセル顔料を挙げることができる。
前記非変色性顔料の平均粒子径が4.0μmを越えると、インキ中で非変色性顔料を安定的に保持することが困難になると共に、筆跡が擦過により剥離し易くなる。
前記非変色性顔料中の0.5μm未満の非変色性顔料は全非変色性顔料中の10体積%未満、好ましくは5体積%未満、より好ましくは3体積%未満である。0.5μm未満の非変色性顔料が10体積%以上の場合、25〜60g/m程度の空孔の多い紙や薄い紙により構成された書籍等に筆記した際、紙の裏側まで浸透する顔料が多くなって筆跡の裏抜けが発生し、紙面の裏側に筆記できなくなったり、紙面の裏側に印刷してある文字を視認し難くなったり、視認できなくなる。
前記非変色性顔料のうち、好ましくは、粒子径と粒子分布の調整が容易な一般染料や一般顔料をマイクロカプセル壁膜に内包したマイクロカプセル顔料、蛍光染料や蛍光顔料をマイクロカプセル壁膜に内包したマイクロカプセル顔料が用いられる。
前記染料や顔料をマイクロカプセル壁膜に内包したマイクロカプセル顔料としては、油溶性染料、分散染料、顔料を油性媒体中に分散又は溶解してなる着色体を内包したマイクロカプセル顔料が挙げられる。
前記油溶性染料及び分散染料はそれぞれカラーインデックスのソルベント染料及び分散染料に分類される染料から選ばれ、化学構造ではアゾ系、金属錯塩アゾ系、アンスラキノン系及び金属フタロシアニン系の構造を有する染料である。前記顔料はアゾ系、アンスラキノン系、縮合ポリアゾ系、チオインジゴ系、金属錯塩系、フタロシアニン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系及びキナクリドン系の有機顔料、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料である。
前記油性媒体は一塩基酸エステル、二塩基酸モノ−又はジエステル,多価アルコールの部分エステル乃至完全エステル等のエステル類、アルキルベンゼン,アルキルナフタレン等の芳香族炭化水素類、高級アルコール類、ケトン類、エーテル類から選ばれる1種又は2種以上の混合物である。
【0007】
前記マイクロカプセル顔料のマイクロカプセル化は、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与したり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0008】
前記ビヒクルは、有機溶剤を含む油性ビヒクル、或いは、水と、必要により有機溶剤を含む水性ビヒクルである。
前記有機溶剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができる。
前記顔料とビヒクルとからなるインキ組成物としては、ビヒクル中に剪断減粘性付与剤を含む剪断減粘性インキ、ビヒクル中に水溶性高分子凝集剤を含み、顔料を緩やかな凝集状態に懸濁させた凝集性インキを挙げることができる。
【0009】
前記剪断減粘性付与剤を添加することにより、顔料の凝集、沈降を抑制することができると共に、筆跡の滲みを抑制することができるため、良好な筆跡を形成できる。
更に、前記インキを充填する筆記具がボールペン形態の場合、不使用時のボールとチップの間隙からのインキ漏れを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類。N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を例示できる。
【0010】
前記水溶性高分子凝集剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性多糖類等が挙げられる。
前記水溶性多糖類としてはトラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリン、水溶性セルロース誘導体等が挙げられ、水溶性セルロース誘導体の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
本発明の可逆熱変色性水性インキ組成物においては、マイクロカプセル顔料粒子間のゆるい橋架け作用を示す水溶性高分子であればすべて適用することができるが、なかでも水溶性セルロース誘導体が有効に機能する。
なお、前記高分子凝集剤は二種以上を併用することもできる。
【0011】
前記非変色性顔料としてマイクロカプセル顔料を用いる系において、高分子凝集剤と共に、側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤及び有機窒素硫黄化合物を併用することにより、前記高分子凝集剤によるマイクロカプセル顔料のゆるい凝集体の分散性を向上させることができる。
前記側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤としては、側鎖に複数のカルボキシル基を有する櫛型高分子化合物であれば特に限定されるものではないが、側鎖に複数のカルボキシル基を有するアクリル高分子化合物が好適であり、前記化合物として日本ルーブリゾール社製の商品名:ソルスパース43000を例示できる。
【0012】
前記有機窒素硫黄化合物は、インキ組成物を筆記具に充填して実用に供する際、振動によるマイクロカプセル顔料の沈降をいっそう抑制する。
これは、マイクロカプセル顔料のゆるい凝集体を側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤によって分散させる分散性をより向上させるものである。
前記有機窒素硫黄化合物としては、チアゾール系化合物、イソチアゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾイソチアゾール系化合物から選ばれる化合物が用いられる。
前記有機窒素硫黄化合物として具体的には、2−(4−チアゾイル)−ベンズイミダゾール(TBZ)、2−(チオシアネートメチルチオ)−1,3−ベンゾチアゾール(TCMTB)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンから選ばれる一種又は二種以上の化合物が用いられ、好ましくは2−(4−チアゾイル)−ベンズイミダゾール(TBZ)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンから選ばれる一種又は二種以上の化合物が用いられる。
前記有機窒素硫黄化合物としては、(株)パーマケム・アジア製、商品名:トップサイド88、同133、同170、同220、同288、同300、同400、同500、同600、同700Z、同800、同950、北興産業(株)製、商品名:ホクスターHP、同E50A、ホクサイドP200、同6500、同7400、同MC、同369、同R−150を例示できる。
なお、前記側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、有機窒素硫黄化合物の質量比率は1:1〜1:10、好ましくは1:1〜1:5であり、前記範囲を満たすことにより、マイクロカプセル顔料のゆるい凝集体の分散性、及び、振動によるマイクロカプセル顔料の沈降抑制を十分に発現させることができる。
【0013】
前記水溶性樹脂は、紙面への固着性や粘性を付与するために添加すると共に、前述の側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、有機窒素硫黄化合物のインキ中での安定性を高める機能を有する。
前記水溶性樹脂としては、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等が挙げられ、好ましくはポリビニルアルコールが用いられる。
更に、前記ポリビニルアルコールは、けん化度が70〜89モル%の部分けん化度型ポリビニルアルコールがインキが酸性域でも可溶性に富むため、より好適に用いられる。
前記水溶性樹脂の添加量としては、インキ中に0.3〜3.0質量%、好ましくは0.5〜1.5質量%の範囲で添加される。
【0014】
また、前記インキをボールペンに充填して用いる場合は、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗を防止することが好ましい。
【0015】
更に、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール及び/又はその塩を含有させることにより、インキのpHが酸性或いはアルカリ領域であっても、一度凍結したインキが再度解凍された後に生じるマイクロカプセル顔料の分散不良や凝集を抑制でき、インキ粘度の上昇やそれに伴う筆跡カスレや淡色化を防止することができると共に、ボールペンに用いる場合はボールの腐食を防止することもできる。
その他、必要に応じてアクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の樹脂を添加して紙面への固着性や粘性を付与することもできる。
また、炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2−ベンズチアゾリン3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等のオリゴ糖類、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、分散剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を添加してもよい。
【0016】
前記インキは、マーキングペンチップやボールペンチップを筆記先端部に装着したマーキングペンやボールペン等の筆記具に充填して用いられる。
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に剪断減粘性インキを充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、さらにインキの端面には逆流防止用の液栓が密接しているボールペンを例示できる。
前記ボールペンチップについて更に詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、前記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
又、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.3〜3.0mm、好ましくは0.4〜1.5mm、より好ましくは0.5〜1.0mm径程度のものが適用できる。
前記インキを収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体が用いられる。
前記インキ収容管にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記インキ収容管とチップを連結してもよい。
尚、前記インキ収容管はレフィルの形態として、前記レフィルを樹脂製、金属製等の軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
【0017】
前記インキ収容管に収容したインキの後端にはインキ逆流防止体が充填される。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体は、増粘剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、前記増粘剤としては表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物等を挙げることができる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
【0018】
また、マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に繊維集束体からなるインキ吸蔵体を内蔵し、毛細間隙が形成された繊維加工体からなるマーキングペンチップを直接或いは中継部材を介して軸筒に装着してなり、前記インキ吸蔵体とチップが連結されてなるマーキングペンの前記インキ吸蔵体に凝集性インキを含浸させたマーキングペンや、チップの押圧により開放する弁体を介してチップとインキ収容管とを配置し、該インキ収容管内にインキを直接収容させたマーキングペン等を例示できる。
前記チップは、繊維の樹脂加工体、熱溶融性繊維の融着加工体、フェルト体等の従来より汎用の気孔率が概ね30〜70%の範囲から選ばれる連通気孔の多孔質部材であり、一端を砲弾形状、長方形状、チゼル形状等の目的に応じた形状に加工して実用に供される。
前記インキ吸蔵体は、捲縮状繊維を長手方向に集束させたものであり、プラスチック筒体やフィルム等の被覆体に内在させて、気孔率が概ね40〜90%の範囲に調整して構成される。
また、前記弁体は、従来より汎用のポンピング式形態が使用できるが、筆圧により押圧開放可能なバネ圧に設定したものが好適である。
【0019】
更に、前記ボールペンやマーキングペンの形態は前述したものに限らず、相異なる形態のチップを装着させたり、相異なる色調のインキを導出させるペン先を装着させた複合筆記具(両頭式やペン先繰り出し式等)であってもよい。
【実施例】
【0020】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
顔料の平均粒子径、粒度分布はレーザー式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−300)にて測定した。
なお、実施例中の部は質量部である。
実施例1
マイクロカプセル顔料の調製
黄色ソルベント染料〔バリファーストイエロー1109、オリエント化学工業(株)製〕10部、2−エチルヘキサン酸セチル15部を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は1.8μmであり、0.5μm未満の顔料が全顔料中の4.0体積%であった。
【0021】
筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料10.0部、ヒドロキシエチルセルロース0.5部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.2部、有機窒素硫黄化合物〔北興化学工業(株)製、商品名:ホクサイドR−150、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン25.0部、消泡剤0.02部、水62.78部を混合して筆記具用インキ組成物を得た。
【0022】
筆記具の作製(図1参照)
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体2内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒4内に収容し、ホルダー5を介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ3(チゼル型)を接続状態に組み立て、キャップ6を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
【0023】
前記筆記具を用いて辞書の文字上に筆跡(ハイライト)を形成した。
前記筆跡は、紙面の裏側から視認しても裏抜けは見られず、文字の視認を妨げることはなかった。
【0024】
実施例2
マイクロカプセル顔料の調製
ピンク色ソルベント染料(C.I.ソルベントレッド49)5部、イソステアリン酸イソセチル22.5部を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は2.0μmであり、0.5μm未満の顔料が全顔料中の4.5体積%であった。
【0025】
筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料10.0部、ヒドロキシエチルセルロース0.5部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.2部、有機窒素硫黄化合物〔北興化学工業(株)製、商品名:ホクサイドR−150、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン25.0部、消泡剤0.02部、水62.78部を混合して筆記具用インキ組成物を得た。
【0026】
筆記具の作製
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒内に収容し、ホルダーを介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ(砲弾型)を接続状態に組み立て、キャップを装着して筆記具(マーキングペン)を得た。
【0027】
前記筆記具を用いて紙面に筆記してピンク色の文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡を形成した紙面の裏側から視認しても裏抜けは見られなかった。
【0028】
実施例3
マイクロカプセル顔料の調製
黄色ソルベント染料〔バリファーストイエロー1109、オリエント化学工業(株)製〕10部、2−エチルヘキサン酸セチル15部を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は1.5μmであり、0.5μm未満の顔料が全顔料中の2.5体積%であった。
【0029】
筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料10.0部、ヒドロキシエチルセルロース0.5部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.2部、有機窒素硫黄化合物〔北興化学工業(株)製、商品名:ホクサイドR−150、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン25.0部、消泡剤0.02部、水62.78部を混合して筆記具用インキ組成物を得た。
【0030】
筆記具の作製(図2参照)
前記インキ7と、撹拌体8(SUS−304フェライト系ステンレス鋼球、直径3mm)を軸筒4内に内蔵し、ホルダー5を介して先端部にマーキングペンチップ3[チゼル型繊維ペン体(気孔率約53%)]を取り付け、キャップ6を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記軸筒内には弁機構9を備えてなり、前記弁機構は、弁座と、弁体と、前記弁体を弁座に圧接するように付勢する金属製スプリングからなり、筆記時のペン体への筆圧で弁が開く構造である。
【0031】
前記筆記具を用いて辞書の文字上に筆跡(ハイライト)を形成した。
前記筆跡は、紙面の裏側から視認しても裏抜けは見られず、文字の視認を妨げることはなかった。
【0032】
実施例4
マイクロカプセル顔料の調製
塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂で表面処理されたカーボンブラック加工顔料10部、2−エチルヘキサン酸セチル10部からなる着色体を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は2.0μmであり、0.5μm未満の顔料が全顔料中の3体積%であった。
【0033】
筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料10部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10部、グリセリン10部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水67.9部からなる筆記具用インキ組成物を調製した。
【0034】
筆記具の作製(図3参照)
前記インキ7をポリプロピレン樹脂からなるパイプ(インキ収容管10)に吸引充填し、樹脂製ホルダー5を介して0.5mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体11(液栓)を充填し、更に尾栓12をパイプの後部に嵌合させてレフィル13とした。更に、前記レフィルを軸筒4(先軸筒と後軸筒とからなる)内に組み込み、キャップ6を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具1(ボールペン)を得た。
【0035】
前記筆記具を用いて紙面に筆記して黒色の文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡を形成した紙面の裏側から視認しても裏抜けは見られなかった。
【0036】
実施例5
マイクロカプセル顔料の調製
塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂で表面処理されたスレンブルー加工顔料(チバガイギー社製マイクロリスブルーA3R−K)10部、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル10部を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は1.5μmであり、0.5μm未満の顔料が全顔料中の2体積%であった。
【0037】
筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料10部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10部、グリセリン10部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水67.9部からなる筆記具用インキ組成物を調製した。
【0038】
筆記具の作製(図4参照)
前記インキ7を先端にボールペンチップ3を固着したポリプロピレン製軸筒4に充填し、次いで、インキ追従体11を充填し、尾栓13を嵌合させた。
更に、ゴムシールを内在したキャップ6を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記ボールペンチップは、金属材料をドリルによる切削加工により形成したボール抱持部に直径0.7mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
【0039】
前記筆記具を用いて紙面に筆記して青色の文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡を形成した紙面の裏側から視認しても裏抜けは見られなかった。
【0040】
比較例1
マイクロカプセル顔料の調製
黄色ソルベント染料〔バリファーストイエロー1109、オリエント化学工業(株)製〕10部、2−エチルヘキサン酸セチル15部を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は1.5μmであり、0.5μm未満の顔料が全顔料中の13体積%であった。
【0041】
筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料10.0部、ヒドロキシエチルセルロース0.5部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.2部、有機窒素硫黄化合物〔北興化学工業(株)製、商品名:ホクサイドR−150、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン25.0部、消泡剤0.02部、水62.78部を混合して筆記具用インキ組成物を得た。
【0042】
筆記具の作製
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒内に収容し、ホルダーを介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ(チゼル型)を接続状態に組み立て、キャップを装着して筆記具(マーキングペン)を得た。
【0043】
前記筆記具を用いて辞書の文字上に筆跡(ハイライト)を形成した。
前記筆跡を紙面の裏側から視認すると裏抜けが見られ、文字の視認を妨げていた。
【0044】
比較例2
マイクロカプセル顔料の調製
塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂で表面処理されたスレンブルー加工顔料(チバガイギー社製マイクロリスブルーA3R−K)10部、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル10部を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は1.5μmであり、0.5μm未満の顔料が全顔料中の11体積%であった。
【0045】
筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料10部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10部、グリセリン10部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水67.9部からなる筆記具用インキ組成物を調製した。
【0046】
筆記具の作製
前記インキを先端にボールペンチップを固着したポリプロピレン製軸筒に充填し、次いで、インキ追従体を充填し、尾栓を嵌合させた。
更に、ゴムシールを内在したキャップを嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具(ボールペン)を得た。
なお、前記ボールペンチップは、金属材料をドリルによる切削加工により形成したボール抱持部に直径0.7mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
【0047】
前記筆記具を用いて紙面に筆記して黒色の文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡を形成した紙面の裏側から視認すると裏抜けを生じており、裏側に文字を筆記できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の筆記具の一実施例を示す説明図である。
【図2】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図3】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図4】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 筆記具
2 インキ吸蔵体
3 チップ
4 軸筒
5 ホルダー
6 キャップ
7 インキ
8 攪拌体
9 弁機構
10 インキ収容管
11インキ逆流防止体
12 尾栓
13 レフィル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非変色性顔料と、ビヒクルとからなり、前記非変色性顔料の平均粒子径が0.5〜4.0μmの範囲にあり、0.5μm未満の非変色性顔料が全非変色性顔料中の10体積%未満である筆記具用インキ組成物。
【請求項2】
前記非変色性顔料が染料又は顔料をマイクロカプセル壁膜に内包したマイクロカプセル顔料である請求項1記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項3】
前記ビヒクルが水性ビヒクルである請求項1又は2記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項4】
前記ビヒクル中に、高分子凝集剤と、側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、有機窒素硫黄化合物と、水溶性樹脂を含んでなる請求項3記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項5】
前記ビヒクル中に2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール及び/又はその塩を含有してなる請求項3又は4記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項6】
請求項4又は5記載の筆記具用インキ組成物を収容したマーキングペン形態の筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−150331(P2010−150331A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328103(P2008−328103)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】