説明

等速自在継手

【課題】 ブーツの共回りを確実に防止し、ブーツの耐久性を向上させると共に等速自在継手自体の回転フリクションを減少させる。
【解決手段】 一端に開口部13を有する外側継手部材10と、その外側継手部材10との間でボール30を介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材20とを備え、外側継手部材10の開口部13を閉塞する筒状のブーツ60の端部62,64を、外側継手部材10の開口端部11と内側継手部材20から延びるシャフト50とにそれぞれ装着した等速自在継手であって、外側継手部材10の開口端部11とブーツ60の大径端部62との間、およびシャフト50とブーツ60の小径端部64との間に、外側継手部材10およびシャフト50の回転に対してブーツ60を静止状態に保持するニードル軸受82,83を介在させ、そのニードル軸受82,83にシール部材82c,83cを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械の動力伝達系において使用され、例えば自動車のステアリング装置やドライブシャフト等に組み込まれる等速自在継手に関し、詳しくは、継手外部からの異物侵入や継手内部からのグリース漏洩を防止するブーツの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の動力伝達系、例えばステアリング装置やドライブシャフト等には、角度変位のみを許容する構造を有する固定式等速自在継手が組み込まれている。この種の等速自在継手は、継手内部に充填したグリースの漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、ゴムあるいは樹脂製の蛇腹状ブーツを装着した構造が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、ツェッパ型と称されるボールタイプの固定式等速自在継手を例示する。この固定式等速自在継手は、外側継手部材110と、その外側継手部材110の内部に収容された内側継手部材120、ボール130およびケージ140からなる内部部品とで構成され、内側継手部材120の軸孔にシャフト150の軸端を圧入により嵌合させた構造を具備する。
【0004】
一方、ブーツ160は、その一方の大径端部162を外側継手部材110の開口端部111の外周面にブーツバンド172で締め付け固定し、他方の小径端部164を内側継手部材120から延びるシャフト150の外周面にブーツバンド174で締め付け固定することにより、外側継手部材110とシャフト150との間に装着され、外側継手部材110およびブーツ160の内部にグリース(図示せず)を封入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−10561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したようにステアリング装置やドライブシャフト等に使用される等速自在継手では、外側継手部材110に対してシャフト150が作動角をとることができるように、その外側継手部材110の開口端部111およびシャフト150に装着されたブーツ160は、複数の山部166と谷部168とが交互に連続的に形成された蛇腹形状を有する。
【0007】
また、ブーツ160の大径端部162を外側継手部材110の開口端部111にブーツバンド172により締め付け固定すると共に、ブーツ160の小径端部164をシャフト150にブーツバンド174により締め付け固定した構造となっている。このことから、外側継手部材110に対してシャフト150が作動角をとった状態では、外側継手部材110およびシャフト150の回転と共にブーツ160が変形した状態で回転することになる。
【0008】
このように外側継手部材110とシャフト150との間に装着されたブーツ160が変形した状態で回転する場合、そのブーツ160は変形を伴いながら伸縮することになる。この時、ブーツ160の山部166と谷部168には大きな応力が作用して屈曲疲労を受け易く、ブーツ160の耐久性が低下するという問題が生じる。
【0009】
また、ブーツ160が変形しながら伸縮するに際して、ブーツ160の山部166同士が接触した場合の摩擦力や反発弾性力が作用することにより、等速自在継手自体の回転フリクションが増加するという問題もあった。
【0010】
これらの問題を解消するため、外側継手部材110の開口端部111とブーツ160の大径端部162との間、およびシャフト150とブーツ160の小径端部164との間に軸受などの回転機構を介在させた構造が考えられる。このような構造を採用すれば、外側継手部材110およびシャフト150の回転に対してブーツ160を静止状態に保持することができる。この場合、外側継手部材110に対してシャフト150が作動角をとった状態であっても、静止状態にあるブーツ160は変形するだけで伸縮することがない。
【0011】
その結果、ブーツ160の屈曲疲労を軽減することができて耐久性の向上が図れる。また、ブーツ160の変形に伴う接触部分の摩擦力や反発弾性力を軽減することができて回転フリクションの低減を図ることができる。
【0012】
しかしながら、回転機構の軸受内部に水や異物が混入すると、その水や異物の混入により回転機構における回転トルクが大きくなって外側継手部材110およびシャフト150の回転によりブーツ160が共回りしてしまうことになる。
【0013】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、ブーツの共回りを確実に防止し、ブーツの耐久性を向上させると共に等速自在継手自体の回転フリクションを減少させ得る等速自在継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、一端に開口部を有する外側継手部材と、その外側継手部材との間でトルク伝達部材を介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材とを備え、外側継手部材の開口部を閉塞する筒状のブーツの端部を、外側継手部材の開口端部と内側継手部材から延びる軸部材とにそれぞれ装着した等速自在継手であって、外側継手部材の開口端部とブーツの端部との間、および軸部材とブーツの端部との間に、外側継手部材および軸部材の回転に対してブーツを静止状態に保持する回転機構を介在させ、その回転機構あるいはブーツの端部のいずれか一方にシール機構を設けたことを特徴とする。
【0015】
本発明では、外側継手部材の開口端部とブーツの端部との間、および軸部材とブーツの端部との間に介在させた回転機構により、外側継手部材および軸部材の回転に対してブーツを静止状態に保持することができるので、外側継手部材に対して軸部材が作動角をとった状態であっても、静止状態にあるブーツは変形するだけで伸縮することがない。また、回転機構あるいはブーツの端部のいずれか一方にシール機構を設けたことにより、継手内部に水や異物が混入することを未然に防止できるので、外側継手部材および軸部材の回転によりブーツが共回りすることを確実に防止できる。その結果、ブーツの屈曲疲労を軽減することができて耐久性の向上が図れる。また、ブーツの変形に伴う接触部分の摩擦力や反発弾性力を軽減することができて回転フリクションの低減を図ることができる。
【0016】
本発明における回転機構としては、組み付けの簡便性や低トルク性能の点で軸受が望ましい。この軸受としては、低フリクションが要望される用途に好適な転がり軸受がある。なお、回転機構に設けられたシール機構としては、軸受の端部に設けられたシール部材が可能である。また、ブーツの端部に設けられたシール機構としては、ブーツの端部から一体的に延びて回転機構の端部を覆う鍔部が可能である。
【0017】
本発明におけるブーツは、山部と谷部とを交互に連続的に形成した蛇腹形状を有することが望ましい。このブーツが蛇腹形状であれば、外側継手部材に対して軸部材が作動角をとることが容易となる。特に、外側継手部材に対する軸部材の作動角が可変の場合には蛇腹形状が有効である。また、その作動角が固定の場合であっても、ブーツの取り付け時に作動角を変えることができるので作業性の面で好ましい。
【0018】
本発明におけるブーツは、その断面形状が外側継手部材および軸部材の軸線に対して左右非対称であることが望ましい。本発明におけるブーツは、外側継手部材および軸部材の回転に対して静止状態を保持して回転しない構造となっていることから、断面形状が外側継手部材および軸部材の軸線に対して左右非対称であっても、従来のようにブーツが回転する場合に生じていた応力が作用することはない。
【0019】
本発明におけるブーツは、外側継手部材に対して軸部材が作動角をとった状態でのブーツ伸長側のブーツ膜長よりもブーツ縮小側のブーツ膜長を短くすることが望ましい。本発明におけるブーツは、外側継手部材および軸部材の回転に対して静止状態を保持して回転しない構造となっていることから、断面形状が外側継手部材および軸部材の軸線に対して左右非対称であってもよく、その場合、外側継手部材に対して軸部材が作動角をとった状態でのブーツ伸長側のブーツ膜長よりもブーツ縮小側のブーツ膜長を短くすれば、ブーツの変形による応力作用を抑制することができて耐久性の向上が図れる。
【0020】
本発明におけるブーツは、弾性体あるいは金属からなることが望ましい。ブーツを弾性体で構成すれば、外側継手部材に対して軸部材が作動角をとった時にブーツの変形を容易に許容する。また、ブーツを金属で構成すれば、外側継手部材および軸部材がトルクを伴って回転した場合の放熱性を良好なものにすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、外側継手部材の開口端部とブーツの端部との間、および軸部材とブーツの端部との間に介在させた回転機構により、外側継手部材および軸部材の回転に対してブーツを静止状態に保持することができるので、外側継手部材に対して軸部材が作動角をとった状態であっても、静止状態にあるブーツは変形するだけで伸縮することがない。また、回転機構あるいはブーツの端部のいずれか一方にシール機構を設けたことにより、継手内部に水や異物が混入することを未然に防止できるので、外側継手部材および軸部材に対するブーツの共回りを確実に防止できる。そのため、ブーツの屈曲疲労を軽減することができて耐久性の向上が図れる。また、ブーツの変形に伴う接触部分の摩擦力や反発弾性力を軽減することができて回転フリクションの低減を図ることができる。その結果、長寿命で高性能の等速自在継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る等速自在継手の第一の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の等速自在継手が作動角をとった状態を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係る等速自在継手の第二の実施形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係る等速自在継手の第三の実施形態を示す縦断面図である。
【図5】本発明に係る等速自在継手の第四の実施形態を示す縦断面図である。
【図6】図5の等速自在継手が作動角をとった状態を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る等速自在継手の第五の実施形態を示す縦断面図である。
【図8】等速自在継手の従来例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る等速自在継手の実施形態を以下に詳述する。以下の実施形態では、ステアリング装置やドライブシャフト等に組み込まれる固定式等速自在継手(ツェッパ型等速自在継手)を例示するが、本発明は、アンダーカットフリー型等速自在継手などの他の固定式等速自在継手や、トリポード型およびダブルオフセット型等速自在継手のような摺動式等速自在継手にも適用可能である。使用される用途として好ましいのは、回転中に作動角を変化させることが無く、しかも高作動角で使用されることの多いステアリング用等速自在継手やプロペラシャフト用等速自在継手である。
【0024】
以下で詳述する各実施形態における固定式等速自在継手は、外側継手部材10と、その外側継手部材10の内部に収容された内側継手部材20と、外側継手部材10と内側継手部材20との間に介在してトルクを伝達するトルク伝達部材としてのボール30と、外側継手部材10と内側継手部材20との間に介在してボール30を保持するケージ40とで構成され、軸部材であるシャフト50の軸端を内側継手部材20の軸孔に圧入でセレーション嵌合させた構造を具備する。
【0025】
外側継手部材10は一端に開口部13を有するカップ状をなし、球面状内周面の円周方向等配位置に、軸方向に延びる複数のトラック溝12が形成されている。また、内側継手部材20は、球面状外周面の円周方向等配位置に、軸方向に延びる複数のトラック溝22が形成されている。外側継手部材10のトラック溝12と内側継手部材20のトラック溝22とは対をなしてボールトラックを形成し、各ボールトラックに一個のボール30がそれぞれ組み込んである。ケージ40は外側継手部材10の球面状内周面と内側継手部材20の球面状外周面との間に摺動自在に介在し、各ボール30はケージ40のポケットに収容されて円周方向で等間隔に保持されている。
【0026】
この固定式等速自在継手において、外側継手部材10と内側継手部材20とがどのような作動角をとっても、ケージ40に案内されたボール30は常に作動角の二等分線に垂直な平面内に維持され、継手の等速性が確保される。
【0027】
この種の等速自在継手は、継手内部に充填したグリースの漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、例えば樹脂製のブーツ60が装着されている。このブーツ60は、その一方の大径端部62を外側継手部材10の開口端部11の外周面にブーツバンド72で締め付け固定し、他方の小径端部64を内側継手部材20から延びるシャフト50の外周面にブーツバンド74で締め付け固定することにより、外側継手部材10とシャフト50との間に装着され、外側継手部材10およびブーツ60の内部にグリース(図示せず)を封入している。
【0028】
ブーツ60の大径端部62と小径端部64との間は、複数の山部66a,66bと谷部68a,68bとを交互に連続的に形成した蛇腹形状をなす。このように、ブーツ60が蛇腹形状をなすことにより、外側継手部材10に対してシャフト50が作動角をとることが容易となる。特に、外側継手部材10に対するシャフト50の作動角が可変の場合には蛇腹形状が有効である。また、その作動角が固定の場合であっても、ブーツ60の取り付け時に作動角を変えることができるので作業性の面で好ましい。
【0029】
図1および図2に示す第一の実施形態における等速自在継手は、外側継手部材10の開口端部11とブーツ60の大径端部62との間、およびシャフト50とブーツ60の小径端部64との間に、外側継手部材10およびシャフト50の回転に対してブーツ60を静止状態に保持する回転機構としての軸受80,81を介在させた構造を具備する。この回転機構としては、組み付けの簡便性や低トルク性能の点を考慮すると軸受80,81が好適である。
【0030】
また、軸受としては、低フリクションが要望される用途に好適な転がり軸受80,81を使用することが可能で、この第一の実施形態では、転がり軸受80,81の一例としてニードル軸受82,83を例示している。なお、外側継手部材10側のニードル軸受82では、外側継手部材10の開口端部11の外周面を内側軌道面とし、シャフト50側のニードル軸受83では、シャフト50の外周面を内側軌道面としている。
【0031】
前述した回転機構としての転がり軸受80,81としては、ニードル軸受82,83の他に、図3に示す第二の実施形態のように深溝玉軸受84,85や、図4に示す第三の実施形態のように複列調心玉軸受86,87を使用することも可能である。このように自動調心軸受を使用すれば、ブーツ60に作用する応力をより一層低減できる。その他の玉軸受としては、アンギュラ玉軸受、スラスト玉軸受、自動調心玉軸受などが使用可能である。この場合、玉軸受84〜87の内輪84a〜87aは外側継手部材10の開口端部の外周面およびシャフト50の外周面に圧入され、また、ニードル軸受82,83の外輪82b,83bおよび玉軸受84〜87の外輪84b〜87bにブーツ60の大径端部62および小径端部64がブーツバンド72,74により締め付け固定される。
【0032】
なお、第一の実施形態のようにニードル軸受82,83を使用した場合、第二の実施形態のように深溝玉軸受84,85を使用した場合と比較して等速自在継手の外径を小さくすることができてコンパクト化が容易に図れる点で有効である。その他の転がり軸受80,81としては、円筒ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、円すいころ軸受、スラスト円すいころ軸受や自動調心ころ軸受などが使用可能である。
【0033】
以上の各実施形態のように、外側継手部材10の開口端部11とブーツ60の大径端部62との間、およびシャフト50とブーツ60の小径端部64との間に介在させた回転機構としてのニードル軸受82,83、深溝玉軸受84,85、複列調心軸受86,87などの転がり軸受80,81により、外側継手部材10およびシャフト50の回転に対してブーツ60を静止状態に保持することができるので、外側継手部材10に対してシャフト50が作動角をとった状態であっても、静止状態にあるブーツ60は変形するだけで伸縮することがない。
【0034】
その結果、ブーツ60の屈曲疲労を軽減することができて耐久性の向上が図れる。また、ブーツ60の変形に伴って山部66b同士が接触する場合(例えば図2参照)の摩擦力や反発弾性力を軽減することができ、等速自在継手自体の回転フリクションの低減を図ることができる。
【0035】
また、第一の実施形態では、回転機構としてのニードル軸受82,83にシール機構としてのシール部材82c,83cを設けている(図1および図2参照)。第二の実施形態では、回転機構としての深溝玉軸受84,85にシール機構としてのシール部材84c,85cを設けている(図3参照)。これらのシール部材82c〜85cは弾性材料からなり、例えば、静止側である外輪82b〜85bに外周端部が固定され、回転側である外側継手部材10および内輪84a,85aに内周端部が摺動可能に接触する構造を具備する。また、シール機構としては、回転機構に設けられたシール部材以外に、第三の実施形態のように、ブーツ60の大径端部62および小径端部64を一体的に延設して径方向内側に屈曲させて複列調心軸受86,87の端部を覆う鍔部62a,64aとすることも可能である(図4参照)。
【0036】
以上のようにニードル軸受82,83および深溝玉軸受84,85にシール部材82c〜85cを設けたり、ブーツ60の端部に鍔部62a,64aを設けたりすることにより、回転機構あるいはブーツ60の端部から継手内部の潤滑材が漏出することを未然に防止できると共に、継手内部に水や異物が混入することを未然に防止できるので、水や異物の混入によりニードル軸受82,83、深溝玉軸受84,85および複列調心軸受86,87での回転トルクが大きくなることを阻止することができるので、外側継手部材10およびシャフト50の回転によりブーツ60が共回りすることを確実に防止できる。
【0037】
なお、回転機構の潤滑材は、外側継手部材10およびブーツ60内に封入されるグリースと共用することが可能であるが、そのグリースと異なるグリースを使用することも可能である。外側継手部材10およびブーツ60内のグリースと回転機構のグリースとを共用しない場合には、回転機構の両側にシール部材を配設することが好ましい。
【0038】
また、ブーツ60は、その断面形状が外側継手部材10およびシャフト50の軸線に対して左右非対称、つまり、山部66a,66bと谷部68a,68bの少なくとも一方の直径中心が継手の中心軸上に位置しない非同心円形状であることが望ましい。
【0039】
このブーツ60は、外側継手部材10およびシャフト50の回転に対して静止状態を保持して回転しない構造となっていることから、断面形状が外側継手部材10およびシャフト50の軸線に対して左右非対称であっても、従来のようにブーツが回転する場合に生じていた応力が作用することはない。従って、一方向のみに作動角をとる場合、外側継手部材10に対してシャフト50が作動角をとった状態でのブーツ伸長側のブーツ膜長よりもブーツ縮小側のブーツ膜長を短くすればよい。
【0040】
例えば、第一〜第三の実施形態(図1〜図4参照)のように、ブーツ伸長側(図中の継手中心軸よりも上側)の山部66aと谷部68aの差よりもブーツ縮小側(図中の継手中心軸よりも下側)の山部66bと谷部68bの差を小さくしたり、あるいは、図5に示す第四の実施形態のようにブーツ伸長側(図中の継手中心軸よりも上側)の山部66cと谷部68cの数よりもブーツ縮小側(図中の継手中心軸よりも下側)の山部66dと谷部68dの数を少なくしたりすることが可能である。
【0041】
このようにすれば、図2に示す第一の実施形態および図6に示す第四の実施形態のように、外側継手部材10に対してシャフト50が作動角をとった時にブーツ60の変形により山部66b同士が接触することにより作用する応力を抑制することができて耐久性の向上が図れる。
【0042】
以上の各実施形態では、ブーツ60の取り付け時に作動角を変えることができる点で有効な蛇腹形状のブーツ60について説明したが、取り付け時に作動角を変えることが不要な場合には、図7に示す第五の実施形態のように、蛇腹なしの形状を有するブーツ61を使用することも可能である。この場合、ブーツ61内の空間容積が小さくなるので、等速自在継手の内部に封入するグリース量を削減することができてコスト面や環境面で好ましい。
【0043】
また、以上の各実施形態におけるブーツ60,61は、弾性体(エラストマー)あるいは金属のいずれかの素材で成形されている。ブーツ60,61を弾性体で構成すれば、外側継手部材10に対してシャフト50が作動角をとった時にブーツ60,61の変形を容易に許容する。また、ブーツ60,61を金属で構成すれば、外側継手部材10およびシャフト50がトルクを伴って回転した場合の放熱性を良好なものにすることができる。
【0044】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0045】
10 外側継手部材
11 外側継手部材の開口端部
13 外側継手部材の開口部
20 内側継手部材
30 トルク伝達部材(ボール)
50 軸部材(シャフト)
60,61 ブーツ
62 ブーツの(大径)端部
64 ブーツの(小径)端部
62a,64a シール機構(鍔部)
66a〜66d 山部
68a〜68d 谷部
80,81 回転機構(転がり軸受)
82c〜85c シール機構(シール部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を有する外側継手部材と、前記外側継手部材との間でトルク伝達部材を介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材とを備え、前記外側継手部材の開口部を閉塞する筒状のブーツの端部を、前記外側継手部材の開口端部と前記内側継手部材から延びる軸部材とにそれぞれ装着した等速自在継手であって、
前記外側継手部材の開口端部とブーツの端部との間、および前記軸部材とブーツの端部との間に、前記外側継手部材および軸部材の回転に対してブーツを静止状態に保持する回転機構を介在させ、前記回転機構あるいは前記ブーツの端部のいずれか一方にシール機構を設けたことを特徴とする等速自在継手。
【請求項2】
前記ブーツの端部に設けられたシール機構は、前記ブーツの端部から一体的に延びて回転機構の端部を覆う鍔部とした請求項1に記載の等速自在継手。
【請求項3】
前記回転機構を軸受とした請求項1又は2に記載の等速自在継手。
【請求項4】
前記回転機構を転がり軸受とした請求項3に記載の等速自在継手。
【請求項5】
前記回転機構に設けられたシール機構は、前記軸受の端部に設けられたシール部材である請求項3又は4に記載の等速自在継手。
【請求項6】
前記ブーツは、山部と谷部とを交互に連続的に形成した蛇腹形状を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の等速自在継手。
【請求項7】
前記ブーツは、その断面形状が前記外側継手部材および軸部材の軸線に対して左右非対称である請求項1〜6のいずれか一項に記載の等速自在継手。
【請求項8】
前記ブーツは、前記外側継手部材に対して前記軸部材が作動角をとった状態でのブーツ伸長側のブーツ膜長よりもブーツ縮小側のブーツ膜長を短くした請求項7に記載の等速自在継手。
【請求項9】
前記ブーツは、弾性体あるいは金属からなる請求項1〜8のいずれか一項に記載の等速自在継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−31936(P2012−31936A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171983(P2010−171983)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】