説明

筐体の防水構造、及び電子機器

【課題】筐体の防水構造において、分割された筐体の固定が少ないフック部などで容易に行えるとともに、振動などでパッキンが外れることなく確実な防水を図る。
【解決手段】重ね合わせて合体される第一筐体1及び第二筐体2と、これら第一筐体及び第二筐体の間の全周に配置されるパッキン3と、を備える防水構造であって、第一筐体1には、第二筐体2の内周面に対し内側に離間して位置する凸部13を全周に設ける。そして、パッキン3は、前記凸部13と第二筐体2の内周面との間に圧入されるもので、当該パッキン3を前記凸部13に取り付ける。具体的には、パッキン3は、前記凸部13の少なくとも外周面及び先端面に固着されている。さらに、第二筐体2には、前記凸部13に対し内側に離間して位置する内側壁24が少なくとも部分的に設けられ、この内側壁24が第一筐体1の内周面に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の防水構造と、その防水構造による筐体を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器において、分割された二つのケースに設けられた溝にパッキンを嵌め込んで防水する構造が一般的である(例えば特許文献1参照)。
また、携帯型送信機の防水構造として、二つのケースの間に防水カバーの周囲端部を配置して、二つのケースにより防水カバーを挟持する構造がある(特許文献2、3参照)。
なお、秤の防水構造として、ケースに設けた凹部状の係合溝に、軟質ゴムで成形された防水ダイヤフラムの端部を圧入して防水を図るものもある(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2002−198664号公報
【特許文献2】特開平11−288635号公報
【特許文献3】特開2004−312621号公報
【特許文献4】特開2003−322556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1、または特許文献2、3の構造のように、分割された二つのケースによってパッキンあるいは防水カバー端部を上下から挟持すると、縦(上下)方向に弾性力が働くようになるため、分割されたケースを固定するのに多数のビス、または多数のフック部などが必要となってしまう。
また、特許文献4の構造のように、ケースに設けた凹部状の係合溝に、軟質ゴムの防水ダイヤフラムの端部を圧入しただけでは、防水ダイヤフラムの端部が振動などによって外れてしまい、防水機能が損なわれてしまう恐れがあった。
【0004】
本発明の課題は、筐体の防水構造において、分割された筐体の固定が少ないフック部などで容易に行えるとともに、振動などでパッキンが外れることなく確実な防水を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、重ね合わせて合体される第一筐体及び第二筐体と、これら第一筐体及び第二筐体の間の全周に配置されるパッキンと、を備える防水構造であって、前記第一筐体には、前記第二筐体の内周面に対し内側に離間して位置する凸部を全周に設け、前記パッキンは、前記凸部と前記第二筐体の内周面との間に圧入されるもので、当該パッキンを前記凸部に取り付けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の筐体の防水構造であって、前記パッキンは、前記凸部の少なくとも外周面及び先端面に固着されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の筐体の防水構造であって、前記第二筐体には、前記凸部に対し内側に離間して位置する内側壁が少なくとも部分的に設けられ、この内側壁が前記第一筐体の内周面に固定されることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の筐体の防水構造であって、前記第一筐体及び第二筐体の何れか一方には、振動源が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の防水構造による筐体を備える電子機器を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、縦方向に弾性力が働かず、固定する筐体間に反発力が発生することがないため、少ないフック部などによる固定ができて分割された筐体の固定が容易に行え、且つパッキンを一方の筐体に一体成形しているため、振動などによってもパッキンが外れることがなく確実な防水を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
図1から図3は本発明を適用した電子機器の実施形態1の構成として携帯電話の筐体を示したもので、1は上部筐体(以下、第一筐体と呼ぶ)、2は下部筐体(以下、第二筐体と呼ぶ)、3はパッキン、4は液晶表示パネル、5は中ケース、6は基板、7は透過パネル、8はクッション、9は振動ユニット(振動源)からなる表示部本体で説明する。
【0012】
この実施形態において、防水構造は、折り畳み式携帯電話の表示部本体を構成する第一筐体1及び第二筐体2と、その間の全周に配置されるパッキン3に適用したもので、パッキン3はゴム製である。
【0013】
ここで、図示例では、第一筐体1及び第二筐体2の間には、液晶表示パネル4、中ケース5及び基板6等が収容される。また、第一筐体1には、液晶表示パネル4の画面を透過させる透過パネル7がクッション8を介して取り付けられており、この透過パネル7の内面に振動ユニット9が接着固定されている。この振動ユニット9は圧電素子からなるもので、その振動により透過パネル7はパネルスピーカの振動板として機能する。
【0014】
なお、第一筐体1は、その一端側に報音孔11を有して、他端側にヒンジボス12を有している。以上の表示部本体は、図示しない操作部本体に対しヒンジ部を介して折り畳み可能に連結されている。なお、操作部本体も第一筐体1及び第二筐体2の構成として同様な防水構造としてもよい。
【0015】
具体的には、第一筐体1に、合体状態で第二筐体2の内周面に対し内側に離間して位置する凸部13が全周に形成されている。第二筐体2には、合体時に第一筐体1の凸部13を受け入れる凹部23が全周に形成されるとともに、この凹部23の内周側に内側壁24が形成されている。この内側壁24の存在により、凹部23は溝のように見える。なお、内側壁24は、第二筐体2の全周に形成しても、部分的(例えば平行する両側部に沿った部分)に形成してもいずれでも良い。
【0016】
そして、パッキン3は、第一筐体1の凸部13に取り付けられて、第二筐体2の内周面との間に圧入される。すなわち、このパッキン3は、第一筐体1の成形時において、その凸部13に、例えば液状シリコンやエラストマーの一体成形(インサート成形や二色成形)により設けられる。図示例において、パッキン3は、凸部13の外周面、先端面及び内周面に固着されていて、その外周面への固着部分が最も肉厚となっている。
【0017】
さらに、第一筐体1の内周面には、部分的(例えば平行する両側部の二箇所)にフック部15が形成される一方、第二筐体2の内側壁24から上方への突出部24a(図3参照)には、フック部15が係合する部分的な係合孔25が形成されている。
【0018】
第一筐体1及び第二筐体2の合体は、第一筐体1の凸部13に一体のパッキン3を第二筐体2の内周面に圧入して、凸部13を第二筐体2の凹部23に差し込むとともに、第一筐体1の内周面のフック部15を第二筐体2の内側壁24の係合孔25に差し込んで係合する。
【0019】
以上、実施形態の筐体の防水構造によれば、第一筐体1の凸部13に一体のパッキン3を第二筐体2の内周面に圧入して防水したため、従来のような縦(上下)方向に弾性力が働かず、固定する第一筐体1及び第二筐体2間に反発力が発生することがないため、少ないフック部など、実施形態では平行する両側部に沿ったフック部15及び係合孔25による固定ができて、分割された第一筐体1及び第二筐体2の固定が容易に行える。
【0020】
しかも、第一筐体1の凸部13に一体のパッキン3であるため、圧電素子からなる振動ユニット9の振動によりパネルスピーカの振動板として機能する透過パネル7の振動などによってもパッキン3が外れることがなく、確実な防水を図ることができる。
【0021】
また、縦(上下)方向に弾性力が働かない防水構造となり、第一筐体1及び第二筐体2の剛性を必要以上に持たせる必要がないため、筐体の肉厚を少なくして薄型化・小型化を図ることができる。
【0022】
(実施形態2)
図4は実施形態2を示すもので、前述した実施形態1と同様、1は第一筐体、2は第二筐体、3はパッキン、4は液晶表示パネル、5は中ケース、6は基板、7は透過パネル、8はクッション、9は振動ユニット、13は凸部、23は凹部である。
【0023】
すなわち、実施形態2では、前述した実施形態1の内側壁24を不要として、その内側壁24の無い凹部23に凸部13に一体のパッキン3を圧入した上で、第一筐体1及び第二筐体2を図示しないビス止めにより合体する。
【0024】
従って、実施形態2の筐体の防水構造によっても、前述した実施形態1と同様の作用効果が得られることに加えて、凹部23に内側壁24を設ける必要が無い分だけ第二筐体2及び第一筐体1の両側部の肉厚を小さくできることから、さらに筐体の肉厚を少なくして薄型化・小型化に寄与できるものとなる。
【0025】
(変形例)
なお、以上の実施形態においては、携帯電話としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラ、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書などの携帯電子機器を含む電子機器すべてに用いることができる。
また、実施形態では、二つの筐体をフック部による固定としたが、ビス止めでも良い。
さらに、実施形態では、凹部の内周側に内側壁を設けたが、内側壁は設けなくても良い。但し、その場合、二つの筐体の固定は、ビス止めとなる。
また、下部筐体に凸部及びパッキンを一体成形し、上部筐体に凹部を設けた構成のものであってもよい。
また、凸部、凹部及びパッキンの断面形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用した電子機器の実施形態1の構成を示すもので、携帯電話の筐体を示した概略正面図である。
【図2】図1の矢印A−A線に沿った拡大断面図である。
【図3】図2の構成部品の分解斜視図である。
【図4】実施形態2を示すもので、図2と同様の断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 第一筐体
13 凸部
15 フック部
2 第二筐体
23 凹部
24 内側壁
25 係合孔
3 パッキン
9 振動源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせて合体される第一筐体及び第二筐体と、
これら第一筐体及び第二筐体の間の全周に配置されるパッキンと、を備える防水構造であって、
前記第一筐体には、前記第二筐体の内周面に対し内側に離間して位置する凸部を全周に設け、
前記パッキンは、前記凸部と前記第二筐体の内周面との間に圧入されるもので、
当該パッキンを前記凸部に取り付けたことを特徴とする筐体の防水構造。
【請求項2】
前記パッキンは、前記凸部の少なくとも外周面及び先端面に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の筐体の防水構造。
【請求項3】
前記第二筐体には、前記凸部に対し内側に離間して位置する内側壁が少なくとも部分的に設けられ、
この内側壁が前記第一筐体の内周面に固定されることを特徴とする請求項1または2に記載の筐体の防水構造。
【請求項4】
前記第一筐体及び第二筐体の何れか一方には、振動源が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の筐体の防水構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の防水構造による筐体を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−111600(P2009−111600A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280399(P2007−280399)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】