説明

筒型マウントおよび筒型マウントに用いる別体ストッパゴム

【課題】成形性および組付性の問題を解消しつつ、両端の係止部を筒状とすることができる別体ストッパゴム、および、その別体ストッパゴムを備えた筒型マウントを提供する。
【解決手段】別体ストッパゴム19を構成する第一係止部19bは、別体ストッパゴム本体19aと同一平板状に成形される。この第一係止部19bは、該平板の法線方向に貫通する穴であって、穴内周の周長が内筒部材の前記一端の外周面の周長以下であり、且つ、平板状において第一方向が長手方向となる長穴が形成される。そして、第一係止部19bは、内筒部材11の他端側からすぐり孔22を挿通させた後に、別体ストッパゴム本体19aに対して屈曲変形させ且つ長穴を変形させた状態で内筒部材11の一端に係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、別体ストッパゴムを備える筒型マウントおよび当該別体ストッパゴムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
筒型マウントは、内筒部材と、外筒部材と、これらを弾性連結する本体ゴム弾性体を備える。そして、内筒部材と外筒部材との径方向への相対変位を規制するために、内筒部材の外周面に加硫接着された内筒ストッパゴムと、外筒部材の内周面に加硫接着され、内筒ストッパゴムに対向する外筒ストッパゴムを備えるようにしている。
【0003】
ところで、内筒ストッパゴムと外筒ストッパゴムとが当接した状態で、内筒部材と外筒部材とが軸方向に相対移動すると、内筒ストッパゴムと外筒ストッパゴムとが摺動するため、異音が生じるおそれがある。これを解決するために、自己潤滑ゴムからなる別体ストッパゴムを、内筒ストッパゴムと外筒ストッパゴムとの間のすぐり孔に配置することがある。
【0004】
しかし、内筒部材と外筒部材が軸方向に相対移動することに起因して、別体ストッパゴムは、内筒ストッパゴムまたは外筒ストッパゴムに対して軸方向に摺動して、結果として別体ストッパゴムがすぐり孔から離脱するおそれがある。そのため、別体ストッパゴムを内筒部材または外筒部材に係止する必要がある。そこで、別体ストッパゴムに、すぐり孔から離脱しないように、内筒部材または外筒部材に係止される係止部を設けることが考えられる。
【0005】
ここで、上記態様とは異なるが、別体ストッパゴムをすぐり孔に挿入する構成は、例えば、特開平8−226480号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1に記載されている別体ストッパゴムは、すぐり孔に挿入される部分に加えて、その一端側にサイドストッパを設けている。このサイドストッパは、外筒部材に対して軸方向に係合することで、別体ストッパゴムがすぐり孔から離脱することを防止している。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の別体ストッパゴムは、一端側のみにサイドストッパを設けているため、一方方向にはサイドストッパがストッパとして機能するが、反対方向にはサイドストッパがストッパとして機能せず、別体ストッパゴムがすぐり孔から離脱するおそれがある。
【0007】
また、上記の他に、別体ストッパゴムとして、例えば、特開2006−90406号公報(特許文献2)の図12〜図15には、内筒の両端に係止される構成が開示されている。特許文献2の当該部分に記載の別体ストッパゴムは、すぐり孔に挿入される部分と、その両端に内筒の両端に係止する係止部が一体成形されている。これにより、別体ストッパゴムは、軸方向の両方向に、すぐり孔から離脱することを防止できる。
【特許文献1】特開平8−226480号公報
【特許文献2】特開2006−90406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2の当該部分に記載の別体ストッパゴムの係止部は、C字型に形成されており、周方向の一部が開口している。このようにC字型に形成している理由は、金型形状の都合のため、係止部をC字型にしなければ両端に係止部を有する別体ストッパゴムを成形できないためであると考えられる。さらには、一方の係止部は、組み付けの際に、すぐり孔を挿入しなければならない。そこで、係止部をC字型にすることで、容易に変形できるようにしておき、すぐり孔を容易に挿入できるようにすることも起因していると考えられる。
【0009】
このような別体ストッパゴムを、上述した内筒ストッパゴムと外筒ストッパゴムとの間のすぐり孔に配置する別体ストッパゴムに適用することを考える。しかし、特許文献2の当該部分に記載の別体ストッパゴムは、係止部がC字型であるために、内筒部材から離脱するおそれがある。特に、当該別体ストッパゴムは、内筒部材と外筒部材が軸方向に相対移動することに起因して、内筒ストッパゴムまたは外筒ストッパゴムに対して軸方向に摺動する。従って、別体ストッパゴムをすぐり孔から離脱させる大きな力が生じる。そのため、係止部は、周方向に開口部を有していない筒状、すなわち穴が形成された形状とし、内筒部材に取り付けられる相手取付部材に挿通されることで、確実に係止部が内筒部材から離脱しないようにすることが望まれる。しかし、両端の係止部を筒状にすると、上述したような、別体ストッパゴムの成形性および組付性の問題が生じる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、成形性および組付性の問題を解消しつつ、両端の係止部を筒状とすることができる別体ストッパゴム、および、その別体ストッパゴムを備えた筒型マウントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
<筒型マウント>
本発明の筒型マウントは、振動源側部材および振動受け側部材の一方に連結される内筒部材と、振動源側部材および振動受け側部材の他方に連結され、内筒部材の径方向外方に離隔して配置される外筒部材と、内筒部材の外周面と外筒部材の内周面とを弾性連結する本体ゴム弾性体と、内筒部材の外周面に固着され外筒部材の内周面から離隔して形成される内筒ストッパゴムと、外筒部材の内周面に固着され内筒ストッパゴムとの間にすぐり孔を介して対向するように形成される外筒ストッパゴムと、すぐり孔に挿入される平板状の別体ストッパゴム本体、別体ストッパゴム本体に一体成形され内筒部材の一端に係止される第一係止部、および、別体ストッパゴム本体の第一係止部とは反対側端部に一体成形され内筒部材の他端に係止される第二係止部を備える別体ストッパゴムとを備える。
【0012】
ここで、別体ストッパゴム本体における一端から他端に向かう方向を第一方向と定義し、別体ストッパゴム本体の平板状における第一方向に直交する方向を第二方向と定義する。そして、このように定義した場合に、第一係止部は、以下のようにする。すなわち、第一係止部は、別体ストッパゴム本体と同一平板状に成形される。そして、第一係止部は、該平板の法線方向に貫通する穴であって、穴内周の周長が内筒部材の一端の外周面の周長以下であり、且つ、平板状において第一方向が長手方向となる長穴が形成される。さらに、内筒部材の他端側からすぐり孔を挿通させた後に、別体ストッパゴム本体に対して屈曲変形させ且つ長穴を変形させた状態で内筒部材の一端に係止する。
【0013】
つまり、本発明において、第一係止部には、穴が形成されており、当該穴が内筒部材に係止される。しかし、従来である特許文献2の当該部分の別体ストッパゴムは、金型形状の都合により、係止部に穴を形成することができなかった。この理由についてより検討すると、特許文献2の当該部分の別体ストッパゴムは、コの字型形状に成形していたため、係止部に穴を形成できず、C字型にしていたことが分かった。そして、本発明における別体ストッパゴムによれば、少なくとも、別体ストッパゴム本体と第一係止部が同一平板状に成形される。つまり、本発明における別体ストッパゴムは、コの字型形状とならないようにしている。これにより、金型形状の都合を考えた場合において、別体ストッパゴムは成形が可能な形状となる。
【0014】
さらに、第一係止部に形成される穴は、長穴としている。そして、この長穴の長手方向が、第一方向となるようにしている。従って、第一係止部の第二方向の幅を、第一方向の幅より狭くすることができる。さらに、第一係止部は別体ストッパゴム本体と同一平板状に成形されている。このように、第一係止部の第二方向の幅を狭くするに加えて、第一係止部が別体ストッパゴム本体と同一平板状とすることで、第一係止部をすぐり孔に挿入しやすくなる。
【0015】
また、第一係止部に形成されている穴は、長穴であって、変形させた状態で内筒部材の一端に係止される。ここで、第一係止部を含む別体ストッパゴムは、ゴムからなるため、変形可能である。従って、第一係止部を変形させること、および、変形させた状態で内筒部材の一端に係止することは、容易である。さらに、長穴の内周の周長が内筒部材の一端の外周面の周長以下であって、第一係止部を変形させた状態で内筒部材の一端に係止するようにすることで、第一係止部の内筒部材に対する係止力を大きくすることができる。従って、第一係止部を内筒部材に係止した後に、第一係止部が内筒部材から離脱することを抑制する効果を奏する。
【0016】
また、第二係止部は、穴が形成された板状からなり、別体ストッパゴム本体に対して屈曲した状態で成形されるようにするとよい。これにより、別体ストッパゴム全体の第一方向の幅を狭くすることができる。従って、一つの型で、別体ストッパゴムの取り数を多くすることができる。つまり、低コスト化を図ることができる。
【0017】
この場合、第二係止部の穴は、内筒部材の他端の外周形状に対応する穴形状とするとよい。第二係止部の穴を変形させることなく、内筒部材の他端に係止することができる。従って、第二係止部の内筒部材への係止が非常に容易となる。
【0018】
ここで、第二係止部は、別体ストッパゴム本体に対して屈曲した状態で成形されることを上述したが、この他に、以下のようにしてもよい。すなわち、第二係止部は、別体ストッパゴム本体と同一平板状に成形される。さらに、第二係止部は、該平板の法線方向に貫通する穴であって、穴内周の周長が内筒部材の他端の外周面の周長以下であり、且つ、平板状において第一方向が長手方向となる長穴が形成される。そして、第二係止部は、別体ストッパゴム本体に対して屈曲変形させ且つ長穴を変形させた状態で内筒部材の他端に係止する。
【0019】
つまり、第二係止部は、第一係止部と同様の形状からなる。これにより、第一方向における方向性を無くすことができる。つまり、別体ストッパゴムを、すぐり孔に挿入する際に、第一係止部側と第二係止部側とを区別することを必要としない。従って、別体ストッパゴムの組付性が向上する。
【0020】
また、別体ストッパゴム本体と第一係止部との境界部のうち、別体ストッパゴム本体に対して第一係止部を屈曲変形する側とは反対側の面に第一凹溝が形成されるとよい。これにより、別体ストッパゴム本体に対して第一係止部を屈曲変形することが容易となる。さらに、第一係止部が、成形状態の位置、すなわち、別体ストッパゴム本体と同一平板状の位置に復元する力を小さくすることができる。従って、第一係止部を内筒部材に係止した後において、第一係止部と内筒部材との係止状態を確実に維持できる。
【0021】
また、第二係止部が上述したように別体ストッパゴムと同一平板状に成形される場合には、以下のようにするとよい。すなわち、別体ストッパゴム本体と第二係止部との境界部のうち、別体ストッパゴム本体に対して第二係止部を屈曲変形する側とは反対側の面に第二凹溝が形成されるとよい。これにより、別体ストッパゴム本体に対して第二係止部を屈曲変形することが容易となる。さらに、第二係止部が、成形状態の位置、すなわち、別体ストッパゴム本体と同一平板状の位置に復元する力を小さくすることができる。従って、第二係止部を内筒部材に係止した後において、第二係止部と内筒部材との係止状態を確実に維持できる。
【0022】
また、本発明の筒型マウントにおいて、第一係止部の第二方向の幅は、別体ストッパゴム本体の第二方向の幅以下であるとよい。これにより、別体ストッパゴム本体の第二方向の幅を広くしつつ、第一係止部をすぐり孔に挿入しやすくなる。ここで、別体ストッパゴム本体の第二方向の幅を広くすることで、内筒ストッパゴムと外筒ストッパゴムとが当接することを抑制できる。つまり、異音の発生を抑制できる。
【0023】
また、本発明の筒型マウントにおいて、第一係止部の第一方向の先端部から第一方向に延在し、第二方向の幅を第一係止部の第二方向の幅以下とし、且つ、第一係止部に一体成形される延在部を備えるとよい。これにより、第一係止部をすぐり孔に挿入する前に、延在部をすぐり孔に挿入しておき、その後に延在部を引っ張ることで、第一係止部をすぐり孔に挿入してすぐり孔から外に出すことが容易となる。
【0024】
そして、この延在部は、第一係止部がすぐり孔を挿通した後に切断されるとよい。延在部は、第一係止部をすぐり孔に挿通するために用いるため、その後は不要となる。そして、延在部を切断することで、筒型マウントを相手部材に組み付けた後に実際に機能する際に、延長部が他の部位に接触などによる影響を防止できる。
【0025】
また、本発明の筒型マウントにおいて、別体ストッパゴム本体は、自己潤滑ゴムからなり、前記内筒部材および前記該当部材が前記振動源側部材および前記振動受け側部材に連結された状態において内筒ストッパゴムおよび外筒ストッパゴムに当接した状態で挟持されるようにしてもよい。別体ストッパゴム本体が内筒ストッパゴムおよび外筒ストッパゴムに当接した状態で挟持されるため、内筒部材と外筒部材とが軸方向に相対移動することに起因して、別体ストッパゴムが内筒ストッパゴムと外筒ストッパゴムとの間であるすぐり孔から離脱する大きな力が生じる。しかし、この場合であっても、本発明によれば、上述したように、別体ストッパゴム本体が離脱することを確実に防止できる。そして、別体ストッパゴム本体を自己潤滑ゴムからなることで、別体ストッパゴム本体が内筒ストッパゴムまたは外筒ストッパゴムに対して摺動したとしても、異音の発生を抑制できる。
【0026】
なお、自己潤滑ゴムは、公知のように、所定のゴム母材に潤滑剤が含有されたもので、この潤滑剤がゴム表面に漸次滲出されることにより、自己潤滑性が永続的に確保され得るように構成されたものである。自己潤滑ゴムとしては、従来から公知のものを採用できる。例えば、特開昭63−179942号公報に記載されているように、NR、BR、IR、SBR、CR、NBR、EPDM、IIR、または、これらのブレンドポリマ等、従来から防振ゴムとして一般に使用されるゴム材料(母材ゴム)に、潤滑剤として、シリコーンオイルが含有せしめられたものや、特開平1−255719号公報に記載されているように、熱硬化型ポリウレタンエラストマにシリコーンオイルが含有せしめられたもの、または特開平8−270728号公報に記載されているような公知のゴム材料に、不飽和脂肪酸アミドが含有せしめられてなるもの、更には特開平10−60179号公報に記載されるように、公知のゴム材料に、ポリエチレングリコール型界面活性剤が含有せしめてられてなるもの等が、適宜に使用される。
【0027】
<筒型マウントに用いる別体ストッパゴム>
ここで、上述においては、本発明を筒型マウントとして捉えた場合について説明した。この他に、本発明は、筒型マウントに用いる別体ストッパゴムとして捉えることもできる。
【0028】
すなわち、本発明は、振動源側部材および振動受け側部材の一方に連結される内筒部材と、振動源側部材および振動受け側部材の他方に連結され、内筒部材の径方向外方に離隔して配置される外筒部材と、内筒部材の外周面と外筒部材の内周面とを弾性連結する本体ゴム弾性体と、内筒部材の外周面に固着され外筒部材に対して離隔して形成される内筒ストッパゴムと、外筒部材の内周面に固着され内筒ストッパゴムとの間にすぐり孔を介して対向するように形成される外筒ストッパゴムと、を備える筒型マウントに用いる別体ストッパゴムである。
【0029】
そして、本発明の別体ストッパゴムは、すぐり孔に挿入される平板状の別体ストッパゴム本体と、別体ストッパゴム本体に一体成形され内筒部材の一端に係止する第一係止部と、別体ストッパゴム本体の前記第一係止部とは反対側端部に一体成形され内筒部材の他端に係止する第二係止部とを備える。
【0030】
さらに、別体ストッパゴム本体における一端から前記他端に向かう方向を第一方向と定義し、別体ストッパゴム本体の平板状における第一方向に直交する方向を第二方向と定義した場合に、第一係止部は、以下のようにする。すなわち、第一係止部は、別体ストッパゴム本体と同一平板状に成形される。そして、第一係止部は、該平板の法線方向に貫通する穴であって、穴内周の周長が内筒部材の一端の外周面の周長以下であり、且つ、平板状において第一方向が長手方向となる長穴が形成される。さらに、内筒部材の他端側からすぐり孔を挿通させた後に、別体ストッパゴム本体に対して屈曲変形させ且つ長穴を変形させた状態で内筒部材の一端に係止する。
【0031】
このように、本発明の別体ストッパゴムによれば、上述した本発明の筒型マウントを構成する別体ストッパゴムによる効果と同一の効果を奏することができる。また、本発明の別体ストッパゴムには、上述した本発明の筒型マウントにおける他の特徴的事項について、同様に適用することができる。この場合も、上記同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の筒型マウントを構成する別体ストッパゴムによれば、成形性および組付性の問題を解消しつつ、両端の係止部を筒状とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
【0034】
<第一実施形態>
(筒型マウント1の構成)
筒型マウント1は、例えば、エンジンマウントや、サスペンションブッシュマウントなどに適用される。エンジンマウントとして適用する場合には、筒型マウント1は、振動源側部材であるエンジンなどと、それを支持する振動受け側部材であるエンジンフレームなどとの間に配置され、エンジンが発生する振動がエンジンフレームに伝達されることを抑制する働きを有する。
【0035】
ここで、第一実施形態においては、筒型マウント1を車両用エンジンマウントに適用した場合について説明する。第一実施形態の筒型マウント1の構成について図1〜図3を参照して説明する。図1は、筒型マウント1の軸方向から見た図である。ただし、図1は、筒型マウント1をエンジンおよびエンジンフレームに連結する前の状態を示す。図2は、図1のA−A断面図、すなわち、筒型マウント1の軸方向に切断した図である。図3は、図2のB−B断面図、すなわち、筒型マウント1の軸方向中央部を径方向に切断した図である。ここで、図1〜図3において、図の上下方向は、車両上下方向に対応する。そこで、以下の説明において、上側とは、車両上側を意味し、下側とは、車両下側を意味する。
【0036】
図1〜図3に示すように、筒型マウント1は、内筒部材11と、外筒部材12と、本体ゴム弾性体13、13と、上側内筒ストッパゴム14と、下側内筒ストッパゴム15と、上側外筒ストッパゴム16と、下側外筒ストッパゴム17と、軸端部ストッパゴム18、18と、別体ストッパゴム19とから構成される。
【0037】
内筒部材11は、金属からなり、円筒状に形成されている。この内筒部材11は、振動源側部材であるエンジン側の軸状部材に(図示せず)連結される。具体的には、内筒部材11の内部を、エンジン側の軸状部材が挿通されて連結される。ここで、内筒部材11は、図1〜図3に示すように、軸方向が車両上下方向に直交するように配置されている。つまり、内筒部材11がエンジン側の軸状部材に連結されると、エンジンの荷重により、図1〜図3の状態よりもさらに下側に移動することになる。
【0038】
外筒部材12は、金属からなり、内筒部材11の外径よりも大きな内接円を有する筒状に形成されている。この外筒部材12は、車両上下方向に潰れた長円断面形状からなる筒状部12aと、筒状部12aの一端側(図2の左側)から径方向内方に屈曲して延びるように形成された第一フランジ部12bと、筒状部12aの他端側(図2の右側)から径方向外方に屈曲して延びるように形成された第二フランジ部12cとから構成される。そして、外筒部材12の筒状部12aの外周面には、エンジンフレーム側の部材が圧入や挟み込みなどにより連結される。この外筒部材12は、その軸方向が内筒部材11の軸方向に平行となるように、内筒部材11に対して径方向外方に離隔して配置される。ここで、筒型マウント1をエンジンおよびエンジンフレームに連結する前の状態においては、外筒部材12の軸中心は、内筒部材11の軸中心に対してずれている。ただし、筒型マウント1をエンジンおよびエンジンフレームに連結した状態においては、外筒部材12の軸中心が、内筒部材11の軸中心にほぼ一致するように、あるいは、両者の軸中心間距離が縮まるようになる。
【0039】
本体ゴム弾性体13、13は、内筒部材11の外周面と外筒部材12の内周面とを弾性連結する。具体的には、本体ゴム弾性体13、13は、内筒部材11の外周面のうち図2の左右端面と、外筒部材12の内周面のうち車両上下方向の中心から僅かに下側の左右両側部分とを、それぞれ加硫接着により弾性連結する。ここで、エンジンの振動は、主として車両上下方向の振動であるが、車両上下方向に直交する方向、すなわち筒型マウント1の軸方向に振動することもある。そして、本体ゴム弾性体13は、エンジンのこれらの振動がエンジンフレーム側へ伝達されることを抑制するように作用する。この本体ゴム弾性体13は、例えば、NRなどの従来から防振ゴムとして一般に使用されるゴム材料からなる。
【0040】
上側内筒ストッパゴム14は、内筒部材11の外周面のうち本体ゴム弾性体13が連結される部分より上側部分に加硫接着されている。下側内筒ストッパゴム15は、内筒部材11の外周面のうち本体ゴム弾性体13が連結される部分より下側部分に加硫接着されている。そして、これらの内筒ストッパゴム14、15は、周方向において、ほぼ同等の肉厚となるように、且つ、外筒部材12の内周面から離隔して形成されている。
【0041】
上側外筒ストッパゴム16は、外筒部材12の内周面のうち本体ゴム弾性体13が連結される部分より上側部分に加硫接着されている。この上側外筒ストッパゴム16は、周方向において、ほぼ同等の肉厚となるように形成されている。さらに、上側外筒ストッパゴム16は、上側すぐり孔21を介して、上側内筒ストッパゴム14および本体ゴム弾性体13の上側面に対向するように形成されている。この上側すぐり孔21は、軸方向に亘って貫通形成されている。従って、上側外筒ストッパゴム16は、上側内筒ストッパゴム14と共に、内筒部材11が外筒部材12に対して上側への過大変位が生じた場合に、ストッパとして機能する。
【0042】
下側外筒ストッパゴム17は、外筒部材12の内周面のうち本体ゴム弾性体13が連結される部分より下側部分に加硫接着されている。この下側外筒ストッパゴム17は、図2に示すように軸方向から見た場合に、台形状からなるように形成されている。さらに、下側外筒ストッパゴム16は、下側すぐり孔22を介して、下側内筒ストッパゴム15および本体ゴム弾性体13の下側面に対向するように形成されている。この下側すぐり孔22は、軸方向に亘って貫通形成されている。従って、下側外筒ストッパゴム17は、下側内筒ストッパゴム15と共に、内筒部材11が外筒部材12に対して下側への過大変位が生じた場合に、ストッパとして機能する。
【0043】
軸端部ストッパゴム18、18は、外筒部材12の第一フランジ部12bおよび第二フランジ部12cの軸方向外側面のうち車両下側部分に、それぞれ加硫接着されている。この軸端部ストッパゴム18、18は、それぞれ内筒部材11に連結されるエンジン側の部材に対して軸方向に当接可能に配置されている。つまり、軸端部ストッパゴム18、18は、内筒部材11が外筒部材12に対して軸方向への過大変位が生じた場合に、ストッパとして機能する。
【0044】
ここで、上側内筒ストッパゴム14、下側内筒ストッパゴム15、上側外筒ストッパゴム16、下側外筒ストッパゴム17、軸端部ストッパゴム18、18は、何れも、本体ゴム弾性体13と一体成形されている。
【0045】
別体ストッパゴム19は、本体ゴム弾性体13などとは別体に成形されたストッパゴムである。この別体ストッパゴム19は、下側すぐり孔22に挿入される平板状の別体ストッパゴム本体19aと、別体ストッパゴム本体19aに一体成形され内筒部材11の一端(図2の左端)に係止される第一係止部19bと、別体ストッパゴム本体の第一係止部19bとは反対側端部に一体成形され内筒部材11の他端(図2の右端)に係止される第二係止部19cと、第一係止部19bの先端部から延在する細幅状の第一延在部19dと、第二係止部19cの先端部から延在する細幅状の第二延在部19eとから構成される。なお、各部の詳細については、後述する。
【0046】
そして、別体ストッパゴム19のうち下側すぐり孔22に挿入される別体ストッパゴム本体19aは、筒型マウント1をエンジンおよびエンジンフレームに連結した状態において、下側内筒ストッパゴム15および下側外筒ストッパゴム17に当接した状態で挟持されている。つまり、内筒部材11が外筒部材12に対して上側への過大変位が生じない状態の他は、別体ストッパゴム本体19aは、下側内筒ストッパゴム15および下側外筒ストッパゴム17に当接した状態となる。
【0047】
ここで、別体ストッパゴム19は、自己潤滑ゴムからなる。自己潤滑ゴムは、上述したように、公知のように、所定のゴム母材に潤滑剤が含有されたもので、この潤滑剤がゴム表面に漸次滲出されることにより、自己潤滑性が永続的に確保され得るように構成されたものである。
【0048】
(別体ストッパゴム19の成形時の詳細構成)
次に、別体ストッパゴム19の成形時の詳細構成について、図4を参照して説明する。図4(b)は、別体ストッパゴム19の正面図である。なお、図4(b)は、筒型マウント1に組み付けた状態においては、車両下側から見た図に相当する。図4(a)は、図4(b)におけるC−C断面図である。ここで、別体ストッパゴム19は、図4に示す成形時の形状と、図1〜図3に示すように筒型マウント1に組付時の形状が異なる。
【0049】
まず、別体ストッパゴム19の成形時の形状について説明する。別体ストッパゴム19は、上述したように、別体ストッパゴム本体19aと、第一係止部19bと、第二係止部19cと、第一延在部19dと、第二延在部19eとから構成される。ここで、図4(b)における左右方向を第一方向と定義し、図4(b)における上下方向を第二方向と定義する。そして、別体ストッパゴム19は、図4(a)(b)の左右対称に形成されている。
【0050】
別体ストッパゴム本体19aは、第一方向が長手方向となる平板状からなる。詳細には、図4に示すように、別体ストッパゴム本体19aの第一方向の中央部が、長方形の平板状からなり、この第一方向の両端部が、中央部の第二方向幅よりも狭幅の長方形の平板状からなる。そして、別体ストッパゴム本体19aの第一方向の中央部の肉厚が、その第一方向の両端部の肉厚に比べて薄肉に形成されている。
【0051】
第一係止部19bは、別体ストッパゴム本体19aと同一平板状であって、第一方向の一方側(図4の左側)に一体成形されている。この第一係止部19bは、当該平板の法線方向(図4(a)の上下方向)に貫通する長穴が形成された環状からなる。この第一係止部19bに形成される長穴は、第一方向が長手方向となる。さらに、この長穴の内周の周長が、内筒部材11の一端(図2の左端)の外周面の周長以下に設定されている。さらに、第一係止部19bの第二方向の幅w2は、別体ストッパゴム本体19aの第二方向の最大幅w1より狭くなるように形成されている。さらに、この第一係止部19bの第二方向の幅w2は、下側外筒ストッパゴム17の台形上辺幅に相当する(図1参照)。また、第一係止部19bの肉厚は、別体ストッパゴム本体19aの第一方向の両端部の肉厚とほぼ同等に形成されている。
【0052】
そして、別体ストッパゴム本体19aと第一係止部19bとの境界部のうち図4(a)の下側面には、第二方向に平行な第一凹溝19fが形成されている。一方、当該境界部のうち図4(a)の上側は、別体ストッパゴム本体19aおよび第一係止部19bのうち図4(a)の上側面に対して図4(a)の上側に突出している。つまり、当該境界部は、U字型を上下反転させた形状からなる。そして、この境界部の肉厚は、第一係止部19bの肉厚に比べて薄く形成されている。なお、後述するが、この第一凹溝19fが形成されている面は、別体ストッパゴム19を内筒部材11に組み付ける際に、別体ストッパゴム本体19aに対して第一係止部19bを屈曲変形する側とは反対側の面に相当する。
【0053】
第二係止部19cは、別体ストッパゴム本体19aと同一平面状であって、第一方向の他方側(図4の右側)に一体成形されている。この第二係止部19cは、第一係止部19bを図4の左右対称にした形状からなる。そして、第二係止部19cに形成される長穴の内周の周長は、内筒部材11の他端(図2の右端)の外周面の周長以下に設定されている。なお、第二係止部19cは、実質的に、第一係止部19bと同一形状からなるため、説明を省略する。
【0054】
さらに、別体ストッパゴム本体19aと第二係止部19cとの境界部についても、別体ストッパゴム本体19aと第一係止部19bとの境界部に対して、図4の左右対称にした形状からなる。つまり、当該境界部には、第一凹溝19fに左右対称となる第二凹溝19gが形成されている。なお、この第二凹溝19gが形成されている面は、別体ストッパゴム19を内筒部材11に組み付ける際に、別体ストッパゴム本体19aに対して第二係止部19cを屈曲変形する側とは反対側の面に相当する。
【0055】
第一延在部19dは、細長板状に形成されている。この第一延在部19dは、第一係止部19bと同一平板状であって、第一係止部19bの第一方向の先端部(図4の左端部)から第一方向に延在するように、第一係止部19bに一体成形されている。この第一延在部19dの第二方向の幅w3は、第一係止部19bの第二方向の幅w2よりも十分に狭く形成されている。また、第一延在部19dの第一方向長さは、第一係止部19bの第一方向長さとほぼ同等にされている。そして、第一延在部19dの肉厚は、第一係止部19bの肉厚よりも薄く形成されている。この第一延在部19dは、別体ストッパゴム19を内筒部材11などへ組み付ける際に用いるもので、組付後に切断する。
【0056】
第二延在部19eは、第一延在部19dと同形状からなり、第二係止部19cと同一平板状であって、第二係止部19cの第一方向の先端部(図4の右端部)から第一方向に延びるように、第二係止部19cに一体成形されている。
【0057】
(別体ストッパゴム19の組み付け)
上述したような形状からなる別体ストッパゴム19は、図1〜図3に示したように、筒型マウント1の本体に組み付けられる。そこで、以下に、別体ストッパゴム19を筒型マウント1の本体への組み付けについて、図1〜図4を適宜参照しながら説明する。ここで、別体ストッパゴム19は、図4の左右対称形状であるため、実際には、第一係止部19bと第二係止部19c、および、第一延在部19dと第二延在部19eとを区別する必要はないが、便宜上、これらを区別して説明する。
【0058】
まず、図4に示すように成形された別体ストッパゴム19のうち、第一延在部19fを、下側すぐり孔22のうち図2の右側から挿入する。ただし、このとき、第一凹溝19fおよび第二凹溝19gが下側を位置するようにしておく。ここで、第一延在部19fの第二方向の幅w3は、下側外筒ストッパゴム17の台形上辺幅よりも狭いため、第一延在部19fを下側すぐり孔22に非常に容易に挿入することができる。
【0059】
続いて、第一延在部19fを下側すぐり孔22のうち図2の左側から引っ張り出す。このとき、第一延在部19fを下側すぐり孔22のうち図2の左側から僅かに引っ張り出した状態においては、第一係止部19bが下側すぐり孔22に挿入された状態となる。ここで、第一係止部19bの第二方向の幅w2は、下側外筒ストッパゴム17の台形上辺幅と同等であるため、第一係止部19bを下側すぐり孔22へ挿入することは容易である。
【0060】
続いて、第一延在部19fを図2の左側へさらに引っ張り出して、下側すぐり孔22を完全に通過させる。そうすると、第一係止部19bが、下側すぐり孔22のうち図2の左側から出てくる。このとき、別体ストッパゴム本体19aが下側すぐり孔22に挿入しようとする。ただし、別体ストッパゴム本体19aの第二方向の幅w1は、下側外筒ストッパゴム17の台形上辺幅よりも広いため、図1および図3に示すように、端部を下側へ屈曲変形させながら、別体ストッパゴム本体19aを下側すぐり孔22へ挿入させる。
【0061】
続いて、第一係止部19b全てを図2の左側へさらに引っ張り出して、下側すぐり孔22を完全に挿通させる。そして、別体ストッパゴム本体19aが下側すぐり孔22に完全に挿入される状態にする。続いて、第一係止部19bを別体ストッパゴム本体19aに対して図2の上側に屈曲変形させる。ここで、境界部のうち第一係止部19bを屈曲変形させる側とは反対側の面に第一凹溝19fが形成されているため、非常に容易に屈曲変形できる。そして、第一係止部19bの長穴の小さい幅側を拡大するように変形させて、内筒部材11の一端(図2の左端)に係止する。
【0062】
一方、第二係止部19cは、下側すぐり孔22に挿入されない。そして、第二係止部19cを別体ストッパゴム本体19aに対して図2の上側に屈曲変形させる。ここで、境界部のうち第二係止部19cを屈曲変形させる側とは反対側の面に第二凹溝19gが形成されているため、非常に容易に屈曲変形できる。そして、第二係止部19cの長穴の小さい幅側を拡大するように変形させて、内筒部材11の他端(図2の右端)に係止する。
【0063】
続いて、第一延在部19dを第一係止部19bから切断し、第二延在部19eを第二係止部19cから切断する。ここで、第一延在部19dおよび第二延在部19eは、細長板状で、薄肉に形成されているため、容易に切断できる。そして、これらを切断することで、筒型マウント1をエンジンおよびエンジンフレームに組み付けた後に実際に機能する際に、延長部19d、19eが他の部位に接触などによる影響を防止できる。
【0064】
このように、非常に容易に、別体ストッパゴム19を筒型マウント1の本体へ組み付けることができる。そして、第一係止部19bおよび第二係止部19cが環状からなり、これらを内筒部材11の端部に係止しているため、係止力が大きくなる。従って、第一係止部19bおよび第二係止部19cを内筒部材11に係止した後に、内筒部材11から離脱することを抑制できる。特に、第一係止部19bおよび第二係止部19cは長穴であるため、より係止力が高くなる。
【0065】
(筒型マウント1の動作)
次に、筒型マウント1の動作について説明する。筒型マウント1の本体に別体ストッパゴム19が組み付けられた状態において、エンジン側の軸状部材を内筒部材11に連結する。具体的には、エンジン側の軸状部材を、内筒部材11、第一係止部19bおよび第二係止部19cを挿通して、連結される。これにより、第一係止部19bおよび第二係止部19cは、内筒部材11から離脱することが完全に防止できる。そして、別体ストッパゴム本体19aから見た場合には、その両端に位置する第一係止部19bと第二係止部19cが内筒部材11に係止されているので、別体ストッパゴム本体19aが下側すぐり孔22から離脱することを確実に防止できる。さらに、エンジンフレーム側の部材を外筒部材12に連結する。
【0066】
このように、エンジンおよびエンジンフレームに連結したとき、図示しないが、エンジンの荷重により、内筒部材11が外筒部材12に対して下側へ移動する。そうすると、別体ストッパゴム19は、下側内筒ストッパゴム15および下側外筒ストッパゴム17に当接した状態となる。さらには、別体ストッパゴム19が下側内筒ストッパゴム15および下側外筒ストッパゴム17により上下方向に圧縮され、両者に挟持された状態となる。つまり、この状態が、基本状態となる。従って、この基本状態を基準として、エンジンが上下方向に振動する場合には、内筒部材11が外筒部材12に対して上下方向に移動し、エンジンが軸方向に振動する場合には、内筒部材11が外筒部材12に対して軸方向に移動することになる。
【0067】
特に、内筒部材11が外筒部材12に対して軸方向に移動するときには、下側内筒ストッパゴム15と別体ストッパゴム本体19aとが摺動し、且つ、下側外筒ストッパゴム17と別体ストッパゴム本体19aとが摺動する。この摺動により、別体ストッパゴム本体19aは、下側すぐり孔22から離脱するような力を受ける。しかし、上述したように、別体ストッパゴム本体19aは第一係止部19bおよび第二係止部19cにより確実に下側すぐり孔22から離脱することを規制されているため、当該力を受けたとしても、別体ストッパゴム本体19aは下側すぐり孔22から離脱することはない。
【0068】
さらに、別体ストッパゴム19は、自己潤滑ゴムからなる。従って、別体ストッパゴム本体19aが下側内筒ストッパゴム15および下側外筒ストッパゴム17に対して摺動したとしても、異音の発生を防止できる。また、当然ではあるが、別体ストッパゴム本体19aの存在により、下側内筒ストッパゴム15と下側外筒ストッパゴム17との直接の接触を防止できるため、これに起因する異音の発生を防止できる。そして、別体ストッパゴム本体19aの第二方向の幅w1を大きくしていることからも、この効果を十分に発揮できる。
【0069】
また、第一実施形態の別体ストッパゴム19は、図4の左右対称形状としたことにより、第一係止部19b側と第二係止部19c側とを区別する必要がない。従って、作業性が良好となる。
【0070】
<第一実施形態の変形態様>
次に、第一実施形態の別体ストッパゴム19の変形態様について、図5を参照して説明する。図5(b)は、当該変形態様における別体ストッパゴム119の正面図であって、第一実施形態の図4(b)に対応する図である。図5(a)は、図5(b)のD−D断面図であって、第一実施形態の図4(a)に対応する図である。ここで、第一実施形態の変形態様における別体ストッパゴム119は、図5(a)(b)において左右対称形状であると共に、図5(a)において上下対称形状とされている。
【0071】
当該変形態様における別体ストッパゴム119は、上記第一実施形態の別体ストッパゴム19に対して、各部の形状が僅かに異なる部分があるが、実質的に、第一凹溝19fおよび第二凹溝19gを有しない形状にしたものである。そこで、図5においては、第一実施形態の別体ストッパゴム19と実質的に同一構成については、同一符号を付す。
【0072】
図5に示すように、別体ストッパゴム119は、別体ストッパゴム本体19aと第一係止部19bとの境界部、および、別体ストッパゴム本体19aと第二係止部19cとの境界部が、第一係止部19bおよび第二係止部19cの肉厚に比べて薄肉に形成されている。つまり、当該境界部が、屈曲変形しやすいようにしている。
【0073】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態の別体ストッパゴム219について、図6を参照して説明する。図6(b)は、第二実施形態における別体ストッパゴム219の正面図であって、第一実施形態の図4(b)に対応する図である。図6(a)は、図6(b)のE−E断面図であって、第一実施形態の図4(a)に対応する図である。図6(c)は、図6(a)の右側面図である。ここで、第二実施形態における別体ストッパゴム219は、上記第一実施形態の別体ストッパゴム19に対して、第二係止部219c、および、別体ストッパゴム本体19aと第二係止部219cとの境界部の形状が相違すると共に、第二延在部19eを有しない点が相違する。そこで、当該相違部分のみについて説明し、その他の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
別体ストッパゴム219は、別体ストッパゴム本体19aと、第一係止部19bと、第二係止部219cと、第一延在部19dとから構成される。第二係止部219cは、円形穴が形成された板状からなり、別体ストッパゴム本体19aに対して図6(a)の上側に90度屈曲した状態で、別体ストッパゴム本体19aの第一方向の他方側(図6(a)(b)の右側)に一体成形されている。ここで、第二係止部219cに形成される円形穴は、第一方向に貫通している。さらに、この円形穴の内径は、内筒部材11の他端(図2の右端)の外周面の外径と同一または僅かに小さく形成されており、第二係止部219cが内筒部材11の他端に係止可能な形状にされている。このように、第二係止部219cに形成される円形穴は、内筒部材11の他端の外周形状に対応する形状とされている。また、別体ストッパゴム本体19aと第二係止部219cとの境界は、両者を単に屈曲形成しているのみで、第一実施形態のような第二凹溝19gに相当するものは形成していない。
【0075】
このような形状からなる別体ストッパゴム219を筒型マウント1の本体に組み付けは、以下のように行う。第一延在部19dを下側すぐり孔22に挿入し、第一係止部19bが下側すぐり孔22から完全に挿通させる状態までは、第一実施形態と同様である。その後、第二係止部219cを、内筒部材11の他端に係止する。このとき、第二係止部219cの円形穴は、内筒部材11の他端の外周形状に対応する形状であるため、容易に係止できる。続いて、第一係止部19bを内筒部材11の一端に係止する。この係止は、第一実施形態に記載したとおりである。このようにして、別体ストッパゴム219を筒型マウント1の本体に組み付ける。
【0076】
第二実施形態の別体ストッパゴム219は、図6(a)(b)において左右対称でもなく、図6(a)において上下対称でもないため、その方向を区別する必要がある。つまり、別体ストッパゴム219の第一延在部19dを正しい向きに合わせて、下側すぐり孔22に挿入する必要がある。このように方向性を判断しなければならないが、第二係止部219cの円形穴が内筒部材11の他端の外周形状に対応しているため、別体ストッパゴム本体19aを下側すぐり孔22に挿入してしまえば、第二係止部219cを内筒部材11に非常に容易に係止できる。さらに、第二実施形態の別体ストッパゴム219は、第一実施形態の別体ストッパゴム19が有していた第二延在部19eが存在しない。従って、第二延在部19eを切断することも不要となり、且つ、材料コストの低減にもつながる。
【0077】
さらに、第二実施形態の別体ストッパゴム219は、第一実施形態およびその変形態様の別体ストッパゴム19、119に対して、第一方向の幅が小さくすることができる。これは、第二係止部219cを別体ストッパゴム本体19aに対して屈曲した状態で成形するためである。従って、別体ストッパゴム219を成形する際に、一つの型で、別体ストッパゴム219の取り数を多くすることができる。これにより、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】筒型マウント1の軸方向から見た図である。ただし、筒型マウント1をエンジンおよびエンジンフレームに連結する前の状態を示す。
【図2】図1のA−A断面図、すなわち、筒型マウント1の軸方向に切断した図である。
【図3】図2のB−B断面図、すなわち、筒型マウント1の軸方向中央部を径方向に切断した図である。
【図4】第一実施形態の別体ストッパゴム19を示す図である。
【図5】第一実施形態の変形態様における別体ストッパゴム119を示す図である。
【図6】第二実施形態における別体ストッパゴム219を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1:筒型マウント、
11:内筒部材、
12:外筒部材、
12a:筒状部、 12b:第一フランジ部、 12c:第二フランジ部、
13:本体ゴム弾性体、
14:上側内筒ストッパゴム、 15:下側内筒ストッパゴム、
16:上側外筒ストッパゴム、 17:下側外筒ストッパゴム、
18:軸端部ストッパゴム、
19、119、219:別体ストッパゴム
19a:別体ストッパゴム本体、 19b:第一係止部、
19c、219c:第二係止部、 19d:第一延在部、 19e:第二延在部、
19f:第一凹溝、 19g:第二凹溝、
21:上側すぐり孔、 22:下側すぐり孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源側部材および振動受け側部材の一方に連結される内筒部材と、
前記振動源側部材および前記振動受け側部材の他方に連結され、前記内筒部材の径方向外方に離隔して配置される外筒部材と、
前記内筒部材の外周面と前記外筒部材の内周面とを弾性連結する本体ゴム弾性体と、
前記内筒部材の外周面に固着され前記外筒部材の内周面から離隔して形成される内筒ストッパゴムと、
前記外筒部材の内周面に固着され前記内筒ストッパゴムとの間にすぐり孔を介して対向するように形成される外筒ストッパゴムと、
前記すぐり孔に挿入される平板状の別体ストッパゴム本体、前記別体ストッパゴム本体に一体成形され前記内筒部材の一端に係止される第一係止部、および、前記別体ストッパゴム本体の前記第一係止部とは反対側端部に一体成形され前記内筒部材の他端に係止される第二係止部を備える別体ストッパゴムと、
を備える筒型マウントであって、
前記別体ストッパゴム本体における前記一端から前記他端に向かう方向を第一方向と定義し、前記別体ストッパゴム本体の平板状における前記第一方向に直交する方向を第二方向と定義した場合に、
前記第一係止部は、
前記別体ストッパゴム本体と同一平板状に成形され、
該平板の法線方向に貫通する穴であって、穴内周の周長が前記内筒部材の前記一端の外周面の周長以下であり、且つ、前記平板状において前記第一方向が長手方向となる長穴が形成され、
前記内筒部材の他端側から前記すぐり孔を挿通させた後に、前記別体ストッパゴム本体に対して屈曲変形させ且つ前記長穴を変形させた状態で前記内筒部材の一端に係止することを特徴とする筒型マウント。
【請求項2】
前記第二係止部は、穴が形成された板状からなり、前記別体ストッパゴム本体に対して屈曲した状態で成形される請求項1に記載の筒型マウント。
【請求項3】
前記第二係止部の前記穴は、前記内筒部材の前記他端の外周形状に対応する穴形状である請求項2に記載の筒型マウント。
【請求項4】
前記第二係止部は、
前記別体ストッパゴム本体と同一平板状に成形され、
該平板の法線方向に貫通する穴であって、穴内周の周長が前記内筒部材の前記他端の外周面の周長以下であり、且つ、前記平板状において前記第一方向が長手方向となる長穴が形成され、
前記別体ストッパゴム本体に対して屈曲変形させ且つ前記長穴を変形させた状態で前記内筒部材の他端に係止する請求項1に記載の筒型マウント。
【請求項5】
前記別体ストッパゴム本体と前記第一係止部との境界部のうち、前記別体ストッパゴム本体に対して前記第一係止部を屈曲変形する側とは反対側の面に第一凹溝が形成される請求項1に記載の筒型マウント。
【請求項6】
前記別体ストッパゴム本体と前記第二係止部との境界部のうち、前記別体ストッパゴム本体に対して前記第二係止部を屈曲変形する側とは反対側の面に第二凹溝が形成される請求項4に記載の筒型マウント。
【請求項7】
前記第一係止部の前記第二方向の幅は、前記別体ストッパゴム本体の前記第二方向の幅以下である請求項1に記載の筒型マウント。
【請求項8】
前記第一係止部の前記第一方向の先端部から前記第一方向に延在し、前記第二方向の幅を前記第一係止部の前記第二方向の幅以下とし、且つ、前記第一係止部に一体成形される延在部を備える請求項1に記載の筒型マウント。
【請求項9】
前記延在部は、前記第一係止部が前記すぐり孔を挿通した後に切断される請求項8に記載の筒型マウント。
【請求項10】
前記別体ストッパゴム本体は、自己潤滑ゴムからなり、前記内筒部材および前記該当部材が前記振動源側部材および前記振動受け側部材に連結された状態において前記内筒ストッパゴムおよび前記外筒ストッパゴムに当接した状態で挟持される請求項1に記載の筒型マウント。
【請求項11】
振動源側部材および振動受け側部材の一方に連結される内筒部材と、
前記振動源側部材および前記振動受け側部材の他方に連結され、前記内筒部材の径方向外方に離隔して配置される外筒部材と、
前記内筒部材の外周面と前記外筒部材の内周面とを弾性連結する本体ゴム弾性体と、
前記内筒部材の外周面に固着され前記外筒部材に対して離隔して形成される内筒ストッパゴムと、
前記外筒部材の内周面に固着され前記内筒ストッパゴムとの間にすぐり孔を介して対向するように形成される外筒ストッパゴムと、
を備える筒型マウントに用いる別体ストッパゴムであって、
前記すぐり孔に挿入される平板状の別体ストッパゴム本体と、
前記別体ストッパゴム本体に一体成形され前記内筒部材の一端に係止する第一係止部と、
前記別体ストッパゴム本体の前記第一係止部とは反対側端部に一体成形され前記内筒部材の他端に係止する第二係止部と、
を備え、
前記別体ストッパゴム本体における前記一端から前記他端に向かう方向を第一方向と定義し、前記別体ストッパゴム本体の平板状における前記第一方向に直交する方向を第二方向と定義した場合に、
前記第一係止部は、
前記別体ストッパゴム本体と同一平板状に成形され、
該平板の法線方向に貫通する穴であって、穴内周の周長が前記内筒部材の前記一端の外周面の周長以下であり、且つ、前記平板状において前記第一方向が長手方向となる長穴が形成され、
前記内筒部材の他端側から前記すぐり孔を挿通させた後に、前記別体ストッパゴム本体に対して屈曲変形させ且つ前記長穴を変形させた状態で前記内筒部材の一端に係止することを特徴とする筒型マウントに用いる別体ストッパゴム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−223794(P2008−223794A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58924(P2007−58924)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】