説明

筒状ジョイント

この筒状ジョイントは、内溝(18)が設けられ、この内溝に差込口端部(6)が挿入されるベル状端部(4)と、シール部材(8)と、固定要素(12)とを備えている。溝は溝壁(20)を形成している。差込口端部(6)とベル状端部(4)とは、半径方向隙間(J)を形成している。固定要素(12)は、固定歯(36)と、隙間(J)が第1隙間範囲内にある場合に壁(20)に対して適応される接触面(28)とを備えている。隙間が第2隙間範囲にある場合には、固定要素(12)は、溝壁(20)の周りに固定のための固定点(34)を形成し、固定歯(36)は、固定要素(12)の飛び梁効果によって外面(22)の中に噛み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の管要素のベル状端部であって、該ベル状端部は中心軸に沿って延びるとともに、内溝と第2の管要素の差込口端部が挿入される開放先端部とを備え、前記内溝は円錐台形状の溝壁を形成し、該溝壁は前記中心軸と第1の角度を形成するとともに、前記ベル端部の開放先端に向かって縮径されつつ前記中心軸に対して傾斜するベル状端部と、前記内溝中に配置されたシール部材と、前記差込口端部を前記ベル状端部に対して固定するように設けられた少なくとも1つの固定要素とを備え、前記差込口端部と前記ベル状端部とは、これら差込口端部とベル状端部との間の径方向の隙間を形成し、この隙間は第1、若しくは第2隙間範囲のいずれかにあり、前記隙間の第2隙間範囲は、前記隙間の第1隙間範囲より小さいタイプの筒状ジョイントに関する。
【0002】
本発明は特に、飲料水又は公衆衛生のための排水を輸送する管に適用される。
【背景技術】
【0003】
このタイプの筒状ジョイントは、従来技術において既知である。筒状ジョイントが嵌合状態にある場合、及び管の使用中には、圧力下にある流体は管要素の中を流れる。圧力下にある流体の影響の下で、差込口端部とベル状端部とは互いから離隔しようとする。さらに、シール部材はベル状端部と差込口端部との間から押し出される又は外されてしまう危険さえある。
【0004】
既知である筒状ジョイントは固定要素を備え、この固定要素が差込口端部をベル状端部に対して固定し、よって組み合わされた管要素の間の軸方向の離隔を妨げている。
【0005】
一方、滑動することによってのみ、ベル状端部の内溝と協働する固定要素が知られている。しかし、ベル状端部と差込口端部との間にわずかな隙間がある場合には、固定要素の軸方向の移動が、差込口端部の挿入中にエラストマーの大きな体積の圧縮を必要とするので、これら固定要素は非常に大きな嵌合力を必要とする。さらに、これら筒状ジョイントは、差込口端部とベル状端部との間の大きな角度的ずれを許容しない。
【0006】
エラストマー中に埋め込まれているとともに、固定要素を固定することによる、差込口端部とベル状端部との間のアーチ状控え壁によって独占的に作動する固定要素もまた知られている。これら固定要素は、ベル状端部と差込口端部との間にわずかな隙間がある場合には非常に大きな嵌合力を必要とする。さらに、管要素の間の隙間が大きく、内部圧が高い場合には、固定要素は、差込口端部の後戻りに抵抗せず完全に戻ってしまい、固定を動作不能にする危険がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、これら欠点を克服し、差込口端部をベル状端部に嵌合する際に必要とされる力を減少し、広い隙間の範囲における効果的な固定を可能にする筒状ジョイントを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって本発明は、固定要素が、差込口端部の外側表面に噛み合うように設けられた少なくとも1つの主固定歯と、シール部材に応力がかかっていないときに中心軸に対して第2の角度で傾斜する接触面とを備え、この第2の角度が第1の傾斜角と実質的に同一であり、固定要素は溝壁に適用されて、加圧中及び隙間が第1隙間範囲にある場合に、楔効果によって固定を達成するように設けられていること、及び加圧中及び隙間が第2隙間範囲にある場合に、固定要素はこの要素の固定点を溝壁の周りに形成するように設けられ、主固定歯は、差込口端部とベル状端部との間において固定要素のアーチ状控え壁の効果によって外面の中に噛み込むように設けられていることを特徴とする、前述されたタイプの筒状ジョイントに関している。
【0009】
特定の実施形態によれば、筒状ジョイントは以下の特徴のうちの1つ以上を備えている。
【0010】
−接触面は、隙間が第1隙間範囲内にある場合には平坦状態であり、差込口端部をベル状端部から取り除く方向に差込口端部がベル状端部から引き抜かれる場合には溝壁上を滑動するように設けられており、固定要素は、溝壁状の接触面の滑動によって、解放された先端部に向かって軸方向に、また半径方向に内側に向かって動く。
【0011】
−固定要素の接触面が溝壁上に適用される場合に、主固定歯は中心軸に対して内部に向かって実質的に半径方向に延在する。
【0012】
−固定要素は内面を備え、半径方向隙間が最小の隙間である場合に、中心軸に実質的に平行に延在し、最小の隙間は第2隙間範囲の下限を構成する。
【0013】
−固定要素は、主固定歯の差込口端部への進入を制限するように設けられた停止部を備える。
【0014】
−停止部は、ベル状端部の解放された先端部から軸方向に離間するように延在する。
【0015】
−固定要素は予備固定歯を備え、この予備固定歯は、ベル状端部の解放された先端部に向かう方向に主固定歯から軸方向にずれており、予備固定歯は、隙間が最小の隙間に近い場合に差込口端部の外面上に固定されるように設けられている。
【0016】
−予備固定歯は予備固定面を備え、この予備固定面はベル状端部の解放された先端部から離れる方向に向き、固定要素の内面と所定の角度を形成する。
【0017】
−主固定歯は非直線状の形状を有し、特に円弧のような形状とされている。
【0018】
−主固定歯は直線状の形状を有する。
【0019】
−筒状ジョイントは少なくとも1つの押出防止要素を有し、これら押出防止要素は、差込口端部とベル状端部との間のシール部材の押し出しを防止するように設けられる。
【0020】
−押出防止要素は、シール部材の材料の耐変形性より大きな耐変形性を有する、特にポリアミド、ポリエチレン、又はポリプロピレンのようなプラスティック材料からなる。
【0021】
−押出防止要素はシール部材に固定される。
【0022】
−押出防止要素は、2つの固定要素の間に円周状に配置される。
【0023】
−押出防止要素は固定要素の1つを担持する。
【0024】
−固定要素は、この固定要素を支持する押出防止要素からのギャップを定める。
【0025】
−固定要素は、差込口端部の硬度より硬い材料、特に金属から製造される。
【0026】
−筒状ジョイントは少なくとも1つの円周状スペーサーを備え、このスペーサーは弾性材料からなり、特にシール部材と一体であり、所定の固定要素と別の固定要素との間に、又は押出防止要素に近接して配置される。
【0027】
−固定要素は、少なくとも1つの固定部材、特にねじ又はアンカースタッドによって、シール部材又は押出防止要素に固定される。
【0028】
−固定要素は実質的に三角形状の断面を有する。
【0029】
−固定要素は、シール部材に近接する接合面を形成する。
【0030】
−第1の角度は10°〜55°である。
【0031】
本発明は、添付の図面を参照しつつ、単に例示として与えられた以下の説明を読むことにより、より良く理解することができるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】組み合わされていない状態にある、本発明による筒状ジョイントの斜視図である。
【図2】差込口端部の挿入の前の、図1の筒状ジョイントの一部の長手方向断面図であり、シール部材はベル状端部に配置され、差込口端部は省略されている。
【図3】図2に対応する図であり、筒状ジョイントは、差込口端部とベル状端部との間に形成された最小の隙間の場合の組み立てられた状態にある。
【図4】図2に対応する図であり、筒状ジョイントは、差込口端部とベル状端部との間に形成された中間的な隙間の場合の組み立てられた状態にある。
【図5】図2に対応する図であり、筒状ジョイントは、差込口端部とベル状端部との間に形成された最大の隙間の場合の組み立てられた状態にある。
【図6】図5と同様の図であり、差込口端部は所定の角度でベル状端部からずれている。
【図7】本発明による筒状ジョイントの第2の実施形態を示す、図3におけるのと同様の図であり、予備の固定歯を備えている。
【図8】本発明の第3の実施形態による筒状ジョイントの固定要素と押出防止要素を設けられたシール部材の斜視図である。
【図9】組み立てられていない状態の図8のシール部材の一部分の斜視図である。
【図10】本発明の第4の実施形態による筒状ジョイントのシール部材の斜視図である。
【図11】組み立てられていない状態にある図10のシール部材の一部分の斜視図である。
【図12】本発明の第5の実施形態による筒状ジョイントのシール部材の一部分の組み立てられていない状態の斜視図である。
【図13】組み立てられていない状態の本発明の第6の実施形態による筒状ジョイントの知るシール部材の一部分の斜視図である。
【図14】組み立てられた状態の図13のシール部材の断面図である。
【図15】本発明の第7の実施形態による筒状ジョイントのシール部材の斜視図である。
【図16】組み立てられていない状態にある図15のシール部材の一部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明による、一般的に符号2によって示された筒状ジョイントを示している。
【0034】
筒状ジョイント2は、ベル状端部4を設けられた第1の管要素と、差込口端部6を有する第2の管要素と、シール部材8と、押出防止要素10と、固定要素12とを備えている。
【0035】
筒状ジョイント2は、中心軸X−Xを規定している。用語「軸方向」、「半径方向」、及び「円周状」との用語は、今後はこの中心軸X−Xとの関係で使用される。
【0036】
ベル状端部4及び差込口端部6は、たとえば鋳鉄から製造される。さらに、これら管要素は保護層(図示されず)でコーティングすることができる。
【0037】
ベル状端部4は、対応するフランジを設けられたパイプ要素(図示されず)に接続するための固定フランジ14と、組み立てられていない状態では差込口端部6の方へ向かう開放先端部16を備えている。ベル状端部4は、内側環状溝部18(図2参照)をさらに備えている。この例においては、内溝18は実質的に円弧形状の断面を有するが、例えば長方形状の断面のような別の形状を有することができる。溝部18は、中心軸X−Xに向かって傾斜している溝壁20を形成している。この壁20は円錐台形状であり、ベル状端部の開放先端部16に向かって縮径されている。壁20は中心軸X−Xと、約10°〜55°の角度を形成している。
【0038】
図3を参照すると、押出防止要素10及び固定要素12を設けられたシール部材8が、筒状ジョイント2の組み立てられた状態におけるベル状端部の内側溝18の中に挿入されている。シール部材8は固定フランジ14に面する側に軸方向に配置され、シール部材8に固定された固定要素12と押出防止要素10とは、開放先端16に面する側に軸方向に配置されている。
【0039】
ベル状端部4は半径方向内面21を有し、この内面21は、開放先端16と溝壁20との間に延在している。この表面21は実質的に円筒状であり軸X−Xの周りで半径Rによって規定されている。差込口端部6は、この軸X−Xの周りに半径rによって規定される円柱状半径方向外面22を有している。ベル状端部4及び差込口端部6の製造中、半径R及びrは、製造公差の範囲内にある。結果的に、内面21と外面22は、半径Rとrとの間の隙間J=R−rを定めている。製造公差に依存して、この隙間Jは、半径Rが最大で半径rが最小である場合に得られる最大の隙間Jmax(図5参照)と、半径Rが最小で半径rが最大である場合に得られる最小の隙間Jmin(図3参照)との間にある。
【0040】
しかし、より一般的には、差込口端部とベル状端部との間の隙間は、最大の隙間Jmaxと最小の隙間Jminとの間にある中間的な隙間Jmedである。
【0041】
シール部材8は、例えばゴムから製造されている。シール部材8は、基体部24とシールリップ26とを備えている。
【0042】
固定要素12のそれぞれは、差込口端部6の表面より硬い、金属のような材料から製造された要素である。固定要素12は、図1に示された断面を有し、固定スタッド40(下記参照)から離れて、中心軸X−Xの周りの円弧全体に亘って延在している。固定要素12は、好ましくは10°〜50°である中心軸X−Xの周りの角度範囲にわたっている。示された実施形態においては、固定要素12は、固定要素12それぞれが約36度の角度範囲にわたるように(図1参照)、軸X−Xの周りに不均一に分散している。
【0043】
負荷のかかっていない状態のシール部材の位置を示す図2を参照すると、固定要素12の断面は略三角形状である。このように、固定要素12は、半径方向外側に方向付けられた構成部分を有する円錐台形状の接触面28、半径方向内面30、及びシール部材8に隣接し、固定要素12をシール部材8に接続する接合面32を形成している。図2に示される構成においては、接触面28は軸X−Xに対して角度βで傾斜し、この角度は実質的に中心軸X−Xに対する溝壁20の傾斜角と同一である。よって、接触面28は壁20に対して同一平面的に設けられている。シール部材8の負荷のかかっていない状態においては、接合面32は中心軸X−Xに対して半径方向に延在している。さらに、接触面28及び接合面32は、半径方向区画のそれらの結合点において、固定要素12が溝壁20の周りを固定することができる固定位置34を形成している。
【0044】
内面30と接合面32との間の結合領域において、固定要素12は、差込口端部の外面22に噛み込むように設けられた主固定歯36を備えている。この歯は開放先端部16から離れる方向に向き、固定要素の内面30と角度γを形成する主固定面37を備えている。
【0045】
最後に、固定要素12は、主固定歯36の差込口端部6への進入を制限するように設けられた停止部38が設けられている。停止部38は、ベル状端部の開放先端部から離隔する方向に延在し、接合面32から突出している。
【0046】
固定要素12はシール部材8に固定されている。この目的のために、固定要素12は、接合面32上に突出する1つ以上のアンカースタッド40を担持している。スタッド40のそれぞれは、オーバーモールドによってシール部材に固定されている。
【0047】
固定要素12の相対的な動作性を保障するために、固定要素12は、アンカースタッド40によってのみシール部材8に固定されている。接合面32とシール部材との間の接触領域には他の固定手段はない。
【0048】
図1に示されているように、押出防止要素10は、固定要素12の断面にほぼ対応する厳密に三角形状の断面を有している。しかし、押出防止要素の断面は、主固定歯36及び停止部38を有さない。押出防止要素10は中心軸X−Xの周りに円弧の形状を有するとともに、2つの隣り合う固定要素12の間で円周方向に延在している。したがって、固定要素12との組み合わせにおいて押出防止要素10は、シール部材8のエラストマーが、管要素が加圧されるときに、差込口端部6の外面22とベル状端部4の内面21とによって区画される環状空間を通じて外側に突出するのを防止している。
【0049】
押出防止要素10は、好ましくはポリアミド、ポリエチレン、又はポリプロピレンのようなプラスティック材料から製造される。
【0050】
押出防止要素10は、いずれかの好適な手段によってシール部材8に固定されている。押出防止要素10は、特に糊付け、オーバーモールド、クリック式固定、ねじ止め、又はリベット固定によって固定することができる。
【0051】
本発明による筒状ジョイントは、以下のように組み立てられる。
【0052】
まず、押出防止要素10と固定要素12がシール部材8に固定される。したがって、シール部材8、固定要素12、及び押出防止要素10は、単一ユニットとして取り扱うことができる。固定要素12と押出防止要素10とを設けられたシール部材8は、次いで内溝18中に手動で配置される。このように、ジョイントは図2に示される構成をとる。
【0053】
差込口端部6のベル状端部4中への差し込みの間に、固定要素12は図2における時計方向に固定され、シールリップ26は半径方向外側に圧縮され、よって固定後に、主固定歯36が外面22に対して存在するが外面22中に噛み込むことなく、内面30が差込口端部の外面22にほぼ平行である構造になる。このことは、固定要素12が相対的な移動性を有しエラストマー中に埋め込まれないという事実が、差込口端部の嵌合の間に固定要素12に押し付けられるエラストマーの反発による前進を制限し、よって差込口端部の外面22中への主歯36の固定というリスクを減少させ、よって外面コーティングを損傷しないようにするので、外面保護コーティングを設けられた差込口端部6の場合には特に有利である。
【0054】
ジョイントが加圧される場合、固定要素12の作動は、内面21と外面22との間に存在する半径方向の隙間Jに応じて異なる。
【0055】
隙間Jが、隙間が大きく、図5における隙間Jmaxと同じ程度である隙間の第1の範囲内にある場合、作動は以下のようである。
【0056】
高い内部圧力の下での差し込み口端部の後戻りの間に、固定要素12はまず、差込口端部6の外面22上に存在する主固定歯36の周りに、その接触面28が溝壁20に対向するまで半時計方向に回転し、固定点を形成する。このように固定要素12は、接触面28の溝壁20上における滑動によって、楔効果によって固定が達成されるまでベル状端部4の開放先端16に向かって軸方向に、また内側に向かって半径方向に動き、固定要素12の固定歯36の差込口端部6の外面22への進行する侵入を生じさせる。このように、例えば隙間Jmaxの場合に対応する図5に示されたタイプの固定構成が得られる。
【0057】
好都合には、ベル状端部4の内側に向かって軸方向に突出する停止部38は、差込端部6への固定歯36の侵入を制限し、差込口端部を損傷する恐れのある過剰な侵入を防止する。
【0058】
隙間Jが、第1隙間範囲にある隙間より小さい隙間に対応し、特に隙間Jmin(図3参照)及び隙間Jmed(図4参照)をもたらす小さな第2隙間範囲にある場合、作動は以下のようである。
【0059】
内圧の影響下における差込口端部6の後戻り中には、固定要素12はまず、差込口端部6の外面22上にあり、固定点を形成する主固定歯36の周りに半時計方向に、固定点34がベル状端部4の溝壁4に対向する位置になるまで枢動する。このとき、固定要素12は固定点34の周りに半時計方向に枢動し、よって、固定要素12が固定歯36及び固定点34それぞれによって差込口端部6とベル状端部4との間に飛び梁を形成するまで、主固定歯36を差込口端部6の外面の中に徐々に進入させ、アーチ状控え壁効果による固定を生じさせる。
【0060】
図3に示された隙間Jminを有する固定構成においては、固定要素12の内面30は実質的に差込口端部の外面22に平行であり、図4における隙間Jmedを有する固定構成においては、固定要素の内面30は外面22と所定の角度を形成する。
【0061】
上述された実施形態においては、固定点34を形成する面32と28との間の角度は鋭角であり、ベル状端部4の溝18中の固定点34のアンカーリングを容易化して、回転の安定した中心を形成する。
【0062】
図6は、差込口端部6とベル状端部4との間の角度的ずれを有するジョイントを示している。単一の主固定歯36は、差込口端部6及びベル状端部4が大きな角度的ずれの場合でさえも信頼性高く固定されるのを可能としていることが理解される。
【0063】
図7は本発明による筒状ジョイントの第2の実施形態を示しており、これは以下のように上述のジョイントと異なっている。
【0064】
好都合に、固定挿入部材12の半径方向内面30は、予備固定歯50を備えている。この予備歯50は、主固定歯36から離れて、すなわち、ベル状端部4の開放先端部16の側に配置されている。この予備固定歯50は、隙間Jが小さい場合に、すなわち最小の隙間Jminに近い場合に、差込口端部6の外面22上の主固定歯36の滑動に対して固定を保障するように設けられており、滑動のこの危険は、この固定歯36の領域における支持作用の外面22に対する小さい傾斜角のために、わずかな隙間の場合には高くなる可能性がある。予備固定歯50は予備固定面52を備え、この予備固定面52は、固定要素の内面30と予備角度δを形成する。この予備角度δは、角度γより大きい。
【0065】
図8及び9を参照して記載された第3の実施形態によれば、押出防止要素10は、シール部材8の周縁の周りに均一に分散された固定要素12の間に挿入されている。押出防止要素10は、シール部材8と一体化されている円周状スペーサー56によって固定要素12から分離されており、このスペーサー56は、内部圧力の影響の下で押し出されないように小さい円周寸法を有している。これらスペーサーは、シール部材8の弾性を改良し、よってシール部材8のベル状端部中への導入のためにシール部材8の変形を容易化する。
【0066】
固定に関しては、固定要素12及び押出防止要素10には、アンカ−スタッド40が設けられており、このアンカースタッド40は、接合面32と一体化されており、これらスタッド40はシール部材8のエラストマーにオーバーモールドされている。好都合なことに、アンカースタッド40は前以って接着剤でカバーされて、スタッド40が鋳型中への射出の後にエラストマーに接着することを可能にしている。結果として、シール部材8が成形されると、固定要素12及び押出防止要素10を除去することは不可能となる。しかし、アンカースタッド40がエラストマーに接続されている限り、固定要素12が好都合にシール部材に対して弾性又は可動性をいくらか維持するということに注意すべきである。
【0067】
図10及び11を参照して記載された第4の実施形態においては、シール部材8は2列の押出防止要素を担持しており、これら押出防止要素は、軸方向に見た場合に、円弧の部分からなる一般的形状を有し、シール部材8への接続のための接合面を備えている。第1の列の要素10は堅固な部分を有し、前述の押出防止要素と同一である。第2の列の押出要素10は、固定要素12を支持する機能を有する。この目的のために、固定要素12のそれぞれは、固定要素12を第2の列の押出防止要素10中の対応する収容凹部58の中にスナップ固定するためのスナップ固定用スタッド40を有し、第2の列の押出防止要素10は固定要素の支持部として作用している。第4の実施形態によるシール部材を得るために、固定要素12は関係する押出防止要素10上にまずクリップ止めされ、次いで押出防止要素10の全てのプラスティック製接合面が接着剤でコーティングされ、一旦これら要素10が鋳型中に位置付けされると、シール部材8のエラストマーが最後に射出される。結果として、押出防止要素10のエラストマーに対する接着にもかかわらず、固定要素12それ自体が、単にそれらを支持している押出防止要素10上にクリップされている限り弾性又は柔軟性をいくらか維持する。
【0068】
さらに、固定要素12が第2の列の押出防止要素10に取り付けられているので、固定要素12が円弧状に湾曲している上述の実施形態とは対照的に、差込口端部5とベル状端部との形状が合っている必要はない。したがって、この実施形態においては、固定要素12は直線状の内部及び外部形状、特に直線状の主固定歯36を有する。したがってこのことは、同じ固定要素12を、図1〜9において内側に湾曲した固定要素12によって許容される直径方向の許容誤差より大きな、管の直径方向の許容誤差範囲に使用することができるので、有利である。
【0069】
第5の実施形態(図12参照)は、押出防止要素10に固定要素12を固定する方法によってのみ、第4の実施形態と異なり、固定はアンカースタッドの代わりにねじ40によって達成されている。ねじ40の頭40Aはシール部材8の方に向いた回転された側に配置されており、ねじ40のねじ溝部分40Bは固定要素12の雌ねじ溝の中にねじ込まれている。
【0070】
図13及び14に示される第6の実施形態は、図12を参照して記載された実施形態の変形体であり、固定要素12はこの実施形態において反対側の方向の押出防止支持体10にねじ止めされている。ねじ40の頭40Aは、固定要素12の凹部に順応し、ねじ溝部分40Bは、押出防止要素10の雌ねじ部分にねじ込まれている。一方、押出防止要素10のオーバーモールド後のこの第6の実施形態のねじ40は、エラストマーに接触しておらず、よって固定要素12をエラストマーから独立させていること、他方で、ねじ止め後には、固定要素12と押出防止要素10との間にはギャップEがあり、よって固定を達成するために固定要素12によって必要とされる動きを容易化する全体的な柔軟性を固定要素12に保障していることに注意する必要がある。
【0071】
図15及び16は第7の実施形態を示している。図15は、押出防止要素10と固定要素12とを担持しているシール部材8の斜視図である。図16はシール部材8の一部分を示しており、要素10と12は組み立てられていない。シール部材8には、環状部材の平坦な弧状の一般的形状を有する固定要素12が設けられている。固定要素12は、例えば硬化された鋼のような処理された金属から形成され、ジョイントを固定するように意図されている。三角形状部位からなる押出防止要素10は、エラストマーの押し出しに作用することを意図されており、固定要素12に取り付けられている。押出防止要素10は、強固なプラスティクス材料、又は例えば軟鋼のような未処理の金属から作成される。2つの要素10及び12は互いにねじ40によって接続され、ねじの頭40Aはシール部材8のエラストマー中にオーバーモールドされる。
【0072】
固定要素12は、円弧形状の部位を構成し、この部位の半径方向の内端は、円周状にずれており間隙用溝60によって互いから離隔されている複数の主固定歯36を有する固定ギアの歯を構成する。この場合、歯36の間の、間隙用溝によって形成された半径方向の内面は、は36の差込口端部6の中への進入を制限することを可能とし、よって第1の実施形態を参照して記載された停止部38を好都合に置き換えている。
【0073】
所定の変形体においては、円周状ギアの歯は、上述の固定要素12の場合のように連続的な歯36によって置き換えることが出来る。
【0074】
固定要素12は押出防止要素10とシール部材8との間に挟みこまれている。2つの組み立てられた要素10及び12は、断面において、前述の固定要素12の場合と略同様に三角形状の一般的な形状を有している。よって、固定要素12の接触面28は、押出防止要素10と一体化されている追加的な接触面28Aによって拡張されている。
【0075】
しかし、固定要素12がここでは縮小された軸方向の厚みを有し、よって固定要素12のコストを、図1〜9を参照して記載された固定要素12のコストに比べて大幅に削減することを可能にしているということに注意する必要がある。
【0076】
最後に、図15及び16におけるこの実施形態が、それぞれに押出防止要素を設けられているとともにシール部材8の周縁の周りに均一に分散されている固定要素12を備えている場合、このタイプの2つの隣接する固定要素の間にいずれの固定要素を有することなく、上述の実施形態におけるように、押出防止要素10の位置決めを行うことを予想することが出来る。
【0077】
特定の実施形態に関連付けて記載された様々な特徴は、他の実施形態に同様に適用することが出来るということに注意すべきである。
【0078】
最後に、本発明による複合的な固定シール部材の、ベル状端部4の内側溝中への嵌合は、ベル状端部4の狭い開口先端部16の中に容易に導入できるように、単にシール部材8をカージオイド形状に変形することによって手動で行うことができることが理解できるだろう。
【符号の説明】
【0079】
4・・・ベル状端部
6・・・差込口端部
8・・・シール部材
10・・・押出防止要素
12・・・固定要素
16・・・開口先端部
18・・・内溝
20・・・溝壁
22・・・外面
28・・・接触面
34・・・固定点
36・・・主固定歯
38・・・停止部
40・・・固定部材
50・・・予備固定歯
52・・・予備固定面
56・・・スペーサー
X−X・・・中心軸
E・・・ギャップ
J・・・隙間
α・・・第1の角度
β・・・第2の角度
δ・・・角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−ベル状端部(4)が中心軸に沿って延在し、内溝(18)と、第2の管要素の差込口端部(6)が挿入される開口先端部(16)とを備え、前記内溝が円錐台形状の溝壁(20)を形成し、該溝壁が前記中心軸と第1の角度(α)を形成するとともに、前記ベル状端部(4)の前記解放先端部(16)に向かって縮径しつつ前記中心軸に対して傾斜している、第1の管要素の取り付け部(4)と、
−前記内溝(18)中に配置されているシール部材(8)と、
−前記差込口端部(6)を前記ベル状端部(4)に対して固定するように設けられた少なくとも1つの固定要素(12)と、
を備えるタイプの筒状ジョイントであって、
−前記差込口端部(6)と前記ベル状端部(4)とが、これら前記差込口端部(6)と前記ベル状端部(4)との間に半径方向の隙間(J)を形成し、該隙間が、第1隙間範囲又は第2隙間範囲のいずれかにあり、前記第2隙間範囲の隙間が前記第1隙間範囲の隙間より小さい、筒状ジョイントにおいて、
前記固定要素(12)が、前記差込口端部(6)の外面(22)の中に噛み込むように設けられた少なくとも1つの主固定歯(36)と接触面(28)とを備え、前記接触面(28)は、前記シール部材が応力をかけられていない場合に、前記中心軸(X−X)に対して第2の角度(β)で傾斜しており、前記第2の角度(β)が前記第1の傾斜角度と実質的に同一であり、前記接触面(28)は、前記溝壁(20)を備えるとともに、加圧中及び前記隙間(J)が前記第1隙間範囲にある場合に楔効果によって固定を達成するように設けられ、
加圧中及び前記隙間が前記第2隙間範囲にある場合に、前記固定要素(12)が、該要素(12)の固定点(34)を前記溝壁(20)の周りに形成するように設けられ、前記主固定歯(36)が、前記差込口端部(6)と前記ベル状端部(4)との間の前記固定要素(12)の円弧状控え壁効果によって前記外面(22)の中に噛み込むように設けられている、
ことを特徴とする筒状ジョイント。
【請求項2】
前記隙間(J)が第1隙間範囲にある場合に、前記接触面(28)は平坦な状態であり、前記ベル上端部(4)から前記差込口端部を取り除くことを意図する方向にベル状端部(4)から引き抜かれる場合には、前記差込口端部(6)は前記溝壁(20)上を滑動するように設けられ、前記固定要素(12)は、前記溝壁状の前記接触面(28)の滑動によって、前記開放先端部(16)に向かって軸方向に、また内部に向かって半径方向に移動することを特徴とする請求項1に記載の筒状ジョイント。
【請求項3】
前記固定要素(12)の前記接触面(28)は前記溝壁(20)に設けられ、前記主固定歯(36)は前記中心軸(X−X)に対して内側に向かって略半径方向に延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載の筒状ジョイント。
【請求項4】
前記固定要素(12)は、半径方向の隙間が最小の隙間(Jmin)である場合に、前記中心軸(X−X)に略平行に延在し、前記最小の隙間は、前記第2隙間範囲の下限を構成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の筒状ジョイント。
【請求項5】
前記固定要素(12)は、前記主固定歯(36)の前記差込口端部(6)中への進入を制限するように設けられた停止部(38)を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の筒状ジョイント。
【請求項6】
前記停止部(38)は、前記ベル状端部(4)の前記開放先端部(16)から離間するように軸方向に延在していることを特徴とする請求項5に記載の筒状ジョイント。
【請求項7】
前記固定要素(12)は、前記主固定歯(36)から前記ベル状端部(4)の解放先端部(16)に向かう方向に軸方向にずれている予備固定歯(50)を備え、該予備固定歯(50)は、前記隙間(J)が最小隙間(Jmin)に近い場合に、前記差込口端部(6)の外面(22)上に固定されるように設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の筒状ジョイント。
【請求項8】
前記予備固定歯(50)は予備固定面(52)を備え、外予備固定面(52)は、前記ベル状端部(4)の前記解放先端部(16)から離れるほうに向いており、前記固定要素(12)の前記内面と角度(δ)を形成していることを特徴とする請求項7に記載の筒状ジョイント。
【請求項9】
前記主固定歯(36)は、非直線状の形状、特に円弧状に形作られていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の筒状ジョイント。
【請求項10】
前記主固定歯(36)は直線状の形状を有していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の筒状ジョイント。
【請求項11】
前記差込口端部(6)と前記ベル状端部(4)との間で前記シール部材(8)の押し出しを防止するように設けられている少なくとも1つの押出防止要素(10)を備えていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の筒状ジョイント。
【請求項12】
前記押出防止要素(10)は、前記シール部材(8)の材料の耐変形性より大きな耐変形性を有している材料、特にポリアミド、ポリエチレン、又はポリプロピレンから作られていることを特徴とする請求項11に記載の筒状ジョイント。
【請求項13】
前記押出防止要素(10)は、前記シール部材(8)に固定されていることを特徴とする請求項11又は12に記載の筒状ジョイント。
【請求項14】
前記押出要素(10)は、2つの固定要素(12)の間で円周状に配置されていることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の筒状ジョイント。
【請求項15】
前記押出防止要素(10)は、前記固定要素(12)のうちの1つを担持していることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の筒状ジョイント。
【請求項16】
前記固定要素(12)は、前記固定要素(12)を支持している前記押出防止要素(10)からのギャップ(E)を定め、該ギャップ(E)は、前記固定要素に前記シール部材(8)に対する可動性を付与していることを特徴とする請求項15に記載の筒状ジョイント。
【請求項17】
前記固定要素(12)は、前記差込口端部(6)の材料の硬度より大きな硬度の材料から、特に金属から製造されていることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の筒状ジョイント。
【請求項18】
弾性を有する材料から作られ、特に前記シール部材と一体とされた少なくとも1つの円周状スペーサー(56)を備え、該スペーサー(56)は、固定要素(12)ともう1つの隣接する固定要素との間に、若しくは押出防止要素(10)に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の筒状ジョイント。
【請求項19】
前記固定要素(12)は、少なくとも1つの固定部材(40)、特にねじ又はアンカースタッドによって、前記シール部材(8)又は押出防止要素(10)に固定されていることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の筒状ジョイント。
【請求項20】
前記固定要素(12)は、実質的に三角形状の断面を有していることを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の筒状ジョイント。
【請求項21】
前記固定要素(12)は、前記シール部材(8)に隣接する接合面(32)を形成していることを特徴とする請求項1〜20に記載の筒状ジョイント。
【請求項22】
前記第1の角度(α)は、10°〜55°にあることを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載の筒状ジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−508472(P2010−508472A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533904(P2009−533904)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001779
【国際公開番号】WO2008/053100
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(503288565)
【Fターム(参考)】