説明

筒状抵抗器取付具および筒状抵抗器取付方法

【課題】基板への筒状抵抗器の取付け、取外し、あるいは、交換の作業性を向上できる筒状抵抗器取付具を提供することである。
【解決手段】筒状抵抗器取付具10は、固定部20、一対の起立部30および一対の支持部40を有し、1枚の金属板を折り曲げることにより形成されている。起立部30は、金属板を固定部20の両端から折り曲げることにより形成されている。支持部40は、金属板を起立部30の終端から折り曲げることにより形成され、下片41および上片42を有する。一対の支持部40は、筒状抵抗器の内部に挿入され、互いに近づく方向に付勢されることにより筒状抵抗器を挟持できるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板面に筒状抵抗器を取り付けるための筒状抵抗器取付具および筒状抵抗器の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の筒状抵抗器取付具の例が、特許文献1に開示されている。以下、この特許文献1について説明する。
【0003】
特許文献1に開示されている取付具は、筒状抵抗器の両側から挟み込む一対の取付具からなる。各取付具は、支持部、立上り部、嵌入部および屈伸部からなり、これらを1枚の板状部材により一体的に形成したものである。支持部は、基板面に固定される部位である。立上り部は、支持部の終端から連続して基板面に対してほぼ垂直に起立している。嵌入部は、立上り部の終端から連続して側方へ屈出しU字状に折り返されていて、筒状抵抗器の空洞部に嵌め入れられる。屈伸部は、嵌入部の終端から下へ屈曲していて、嵌入部が形作るU字状の幅を維持すべくU字状の開放部を閉じるように渡し掛けられている。
【0004】
基板面に筒状抵抗器を取り付ける際には、一対の取付具の嵌入部をそれぞれ筒状抵抗器の両端から筒状抵抗器の空洞部へ挿入し、筒状抵抗器に一対の取付具を装着する。その後、取付具の支持部を基板面にボルト等で固定する。この作業により、筒状抵抗器が基板面に取り付けられる。
【特許文献1】特開平11−101204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている筒状抵抗器取付具では、基板面に筒状抵抗器を取り付ける際には、筒状抵抗器に取付具を装着した後、基板面に取付具を固定する。しかしながら、電力変換器等に用いられる大型の筒状抵抗器の取付作業においては、筒状抵抗器が装着された取付具を支えながら、基板面に取付具をボルト等で固定する作業は困難である。垂直な基板面等への取付作業の場合には、なおさら困難となる。
【0006】
また、基板面から筒状抵抗器を取り外す際には、基板面から取付具を取り外した後、取付具から筒状抵抗器を取り外す。よって、取付作業と同様に困難である。
【0007】
また、筒状抵抗器の交換の際には、基板面から取付具を取り外した後でなければ、取付具から筒状抵抗器を取り外すことができないため、作業性が良くない。
【0008】
さらに、特許文献1に開示されている取付具において、筒状抵抗器に取付具を装着する前に、基板面に取付具を固定しようとした場合には、一対の取付具の相互間の位置決めが必要となり、やはり作業性が良くない。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、基板への筒状抵抗器の取付け、取外し、あるいは、交換の作業性を向上できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る筒状抵抗器取付具は、基板に筒状抵抗器を取り付ける筒状抵抗器取付具であって、基板に固定される固定部と、弾性部材からなり前記固定部の両端から互いに対向して屈曲された一対の起立部と、一対の前記起立部の終端から互いに近づく方向に屈曲された下片と一対の前記下片の終端から互いに離れる方向に折り返された一対の上片とを有し筒状抵抗器の両端から筒状抵抗器の内部に挿入され互いに近づく方向に付勢されることにより筒状抵抗器を挟持できるように構成されている一対の支持部とを具備している。
【0011】
また、本発明に係る筒状抵抗器の取付方法は、基板に筒状抵抗器を取り付ける方法であって、前記基板に固定される固定部と、弾性部材からなり前記固定部の両端から互いに対向して屈曲された一対の起立部と、一対の前記起立部の終端から互いに近づく方向に屈曲された下片と一対の前記下片の終端から互いに離れる方向に折り返された一対の上片とを有し前記筒状抵抗器の両端から前記筒状抵抗器の内部に挿入され互いに近づく方向に付勢されることにより前記筒状抵抗器を挟持できるように構成されている一対の支持部とを具備した前記筒状抵抗器取付具を前記基板に固定する工程と、その後、一対の前記支持部を互いに離れる方向に広げて前記筒状抵抗器の両端から前記筒状抵抗器の内部に挿入することにより筒状抵抗器取付具に前記筒状抵抗器を装着する工程とを具備している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板への筒状抵抗器の取付け、取外し、あるいは、交換の作業性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1の実施形態]
本発明に係る筒状抵抗器取付具の第1の実施形態について、図1ないし図4を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る筒状抵抗器取付具の斜視図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る筒状抵抗器取付具の正面図であって、筒状抵抗器を基板に取り付けた状態を示す図である。図3は、図2の側面図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係る筒状抵抗器取付具の正面図であって、筒状抵抗器への装着前の状態および装着後の状態における筒状抵抗器取付具を示す図である。
【0014】
まず、本実施形態に係る筒状抵抗器取付具10の構造について図1を用いて説明する。筒状抵抗器取付具10は、固定部20、起立部30および支持部40を有し、1枚の金属板を折り曲げることにより形成されている。この金属板は、その長さが筒状抵抗器50の軸方向の長さの例えば3倍程度で、その幅が筒状抵抗器50の内径(直径)より小さい薄板である。この金属板は、弾性を有し、例えば、ばね鋼からなる。
【0015】
固定部20は、その長さが筒状抵抗器50の長さと同程度の金属板からなる。固定部20には、ねじ止めにより基板60に固定部20を固定するために、貫通孔21が形成されている。
【0016】
起立部30は、金属板を固定部20の両端から折り曲げることにより形成されている。一対の起立部30は、固定部20に対して同方向に折り曲げられ、互いに対向している。
【0017】
支持部40は、金属板を起立部30の終端(固定部20と反対側の端部)から折り曲げることにより形成され、下片41および上片42を有する。一対の支持部40は、互いに対向している。
【0018】
一対の下片41は、金属板を起立部30の終端から互いに近づく方向(筒状抵抗器取付具10の内方)に折り曲げることにより形成され、互いに対向している。また、一対の上片42は、金属板を下片41の終端(起立部30と反対側の端部)から互いに離れる方向(筒状抵抗器取付具10の側方)にV字状に折り曲げることにより形成され、互いに対向している。下片41と上片42とは、略同一の長さであり、互いに隣接した下片41と上片42とは、互いに対向している。
【0019】
支持部40には、所定の弾性を得るために、互いに隣接した下片41と上片42とに渡る貫通穴(切欠部43)が形成されている。
【0020】
次に、本実施形態に係る筒状抵抗器取付具10を用いた筒状抵抗器50の取付け状態について図2および図3を用いて説明する。
【0021】
筒状抵抗器50は、本体部51、端子部52および碍子部53を有する筒状体であり、内部に両端を貫通している空洞部54を形成している。本体部51は、内周に抵抗線が巻回されている筒状体であり、空洞部54の一部を形成している。端子部52は、本体部の外周面に配置され、筒状抵抗器50の端子を形成している。碍子部53は、セラミック等の絶縁体からなる環状体であり、本体部51の両端に接合されている。
【0022】
筒状抵抗器取付具10は、基板60の表面に固定されている。ここでいう基板60とは、例えば、回路基板や電気機器のフレーム等である。固定部20は、ワッシャ72を介して貫通孔21にねじ71を挿入してねじ止めすることにより、基板60の表面に固定される。
【0023】
筒状抵抗器50の空洞部54には、筒状抵抗器50の両端から一対の支持部が挿入されている。筒状抵抗器50は、その端部(碍子部53)の内縁55が下片41の側部44および上片42の側部45に接することにより、支持されている。なお、碍子部53は、筒状抵抗器取付具10と本体部51とを絶縁するために設けられている。
【0024】
また、起立部30が弾性を有しているため、装着後の状態では、一対の起立部30および一対の支持部40は、互いに近づく方向に付勢されている。すなわち、図4に示すように、装着後における固定部20と起立部30とのなす角θ2は、装着前における固定部20と起立部30とのなす角θ1より大きい。よって、筒状抵抗器50は、その両端から一対の支持部40により狭持されている。
【0025】
さらに、支持部40が弾性を有しているため、装着後の状態では、互いに隣接した下片41と上片42とは、互いに離れる方向に付勢されている。すなわち、図4に示すように、装着後における下片41と上片42とのなす角θ4は、装着前における下片41と上片42とのなす角θ1より小さい。よって、筒状抵抗器50は、その内縁に対して下片41と上片42とが離れる方向の力が働くことにより支持されている。
【0026】
次に、本実施形態に係る筒状抵抗器取付具10を用いた基板60への筒状抵抗器50の取付方法について説明する。
【0027】
まず、基板60の表面に筒状抵抗器取付具10を固定する。その後、一対の起立部30および一対の支持部40を互いに離れる方向(筒状抵抗器取付具の側方)に広げて、筒状抵抗器50の両端から空洞部54に支持部40を挿入して、筒状抵抗器取付具10に筒状抵抗器50を装着する。なお、筒状抵抗器取付具10に筒状抵抗器50を装着した後に、基板60の表面に筒状抵抗器取付具10を固定しても良い。
【0028】
本実施形態に係る筒状抵抗器取付具10を用いた場合における筒状抵抗器50の交換方法について説明する。
【0029】
一対の起立部30および一対の支持部40を互いに離れる方向(筒状抵抗器取付具の側方)に広げて、筒状抵抗器取付具10から筒状抵抗器50を取り外す。その後、筒状抵抗器取付具10に新たな筒状抵抗器50を装着する。
【0030】
以下、本実施形態に係る筒状抵抗器取付具10による効果について説明する。
【0031】
本実施形態に係る筒状抵抗器取付具10を用いれば、基板60に筒状抵抗器50を取り付ける際、基板60に筒状抵抗器取付具10を固定した後、筒状抵抗器取付具10に筒状抵抗器50を装着できる。よって、大型の筒状抵抗器50の取付作業の場合においても、あるいは、垂直な基板面等への取付作業の場合においても、筒状抵抗器50が装着された筒状抵抗器取付具10を支えながら、基板60に筒状抵抗器取付具10を取り付ける必要がなく、作業性が向上する。同様の理由から、基板60から筒状抵抗器50を取り外す際にも、作業性が向上する。
【0032】
また、筒状抵抗器50の交換の際には、基板60から筒状抵抗器取付具10を取り外さなくても、筒状抵抗器取付具10から筒状抵抗器50を取り外すことができるため、作業性が向上し、作業時間および作業コストを低減できる。
【0033】
さらに、固定部20、一対の起立部30および一対の支持部40が一体に形成されているため、筒状抵抗器取付具10の位置決めが容易であり、作業性が向上する。
【0034】
[第2の実施形態]
本発明に係る筒状抵抗器取付具の第2の実施形態について、図5を用いて説明する。図5は、本発明の第2の実施形態に係る筒状抵抗器取付具の斜視図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であって、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0035】
本実施形態に係る筒状抵抗器取付具10は、1本の環状の金属線を折り曲げることにより形成されている。この金属線は、筒状抵抗器50の荷重に耐えられる強度を有している。
【0036】
固定部20は、略平行に延びる一対の金属線により形成されている。起立部30は、固定部20を形成している一対の金属線が固定部20の両端から折り曲げられることにより形成されている。固定部20は、図示しない固定具を用いて基板60に固定される。
【0037】
支持部40は、下片41、上片42および連結部46を有する。下片41は、起立部30を形成している一対の金属線が起立部30の終端から筒状抵抗器取付具10の内方に折り曲げられることにより形成されている。上片42は、下片41を形成している一対の金属線が下片41の終端から筒状抵抗器取付具10の側方に折り曲げられることにより形成されている。連結部46は、上片42を形成している一対の金属線の終端同士を繋いでいる。
【0038】
本実施形態によれば、筒状抵抗器取付具10を構成する金属の使用量を抑えることができ、コストを低減できる。また、高い弾性を得ることができる。本実施形態に係る筒状抵抗器取付具10は、特に、小型の筒状抵抗器50用の取付具に適している。
【0039】
[他の実施形態]
上記各実施形態は単なる例示であって、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば各実施形態の特徴を組み合わせても良い。
【0040】
また、上記各実施形態に係る筒状抵抗器取付具10の材質は、所定の弾性および強度を得ることができれば、セラミックやプラスチック等の絶縁材を用いることができる。この場合には、筒状抵抗器50の碍子部53は不要である。
【0041】
さらに、固定部20、起立部30および支持部40は、1つの部材(金属板や金属線)等から一体に形成されている必要はなく、個々の部材を接合して一体に形成されていても良い。
【0042】
なお、説明の都合上、基板60の表面が上向きであるとして下片41および上片42等の文言を用いたが、基板60は上向きであるとは限らず、また、上片42が下片41の上方にあるとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る筒状抵抗器取付具の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る筒状抵抗器取付具の正面図であって、筒状抵抗器を基板に取り付けた状態を示す図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る筒状抵抗器取付具の正面図であって、筒状抵抗器への装着前の状態および装着後の状態における筒状抵抗器取付具を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る筒状抵抗器取付具の斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
10…筒状抵抗器取付具、20…固定部、21…貫通孔、30…起立部、40…支持部、41…下片、42…上片、43…切欠部、44…下片の側部、45…上片の側部、46…連結部、50…筒状抵抗器、51…本体部、52…端子部、53…碍子部、54…空洞部、55…筒状抵抗器の端部の内縁、60…基板、71…ねじ、72…ワッシャ、θ1…筒状抵抗器の装着前における固定部と起立部とのなす角、θ2…筒状抵抗器の装着後における固定部と起立部とのなす角、θ3…筒状抵抗器の装着前における下片と上片とのなす角、θ4…筒状抵抗器の装着後における下片と上片とのなす角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に筒状抵抗器を取り付ける筒状抵抗器取付具であって、
基板に固定される固定部と、
弾性部材からなり、前記固定部の両端から互いに対向して屈曲された一対の起立部と、
一対の前記起立部の終端から互いに近づく方向に屈曲された下片と一対の前記下片の終端から互いに離れる方向に折り返された一対の上片とを有し、筒状抵抗器の両端から筒状抵抗器の内部に挿入され、互いに近づく方向に付勢されることにより筒状抵抗器を挟持できるように構成されている一対の支持部と、
を具備することを特徴とする筒状抵抗器取付具。
【請求項2】
前記支持部は、弾性部材からなり、
各前記支持部の前記下片と前記上片とが互いに離れる方向に付勢されることにより筒状抵抗器を支持できるように構成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の筒状抵抗器取付具。
【請求項3】
前記固定部、前記起立部および前記支持部が一体に形成されていること、
を特徴とする請求項1または2に記載の筒状抵抗器取付具。
【請求項4】
前記固定部、前記起立部および前記支持部が1枚の板状部材を折り曲げて形成されていること、
を特徴とする請求項3に記載の筒状抵抗器取付具。
【請求項5】
前記下片から前記上片に渡る切欠部が形成されていること、
を特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の筒状抵抗器取付具。
【請求項6】
前記固定部、前記起立部および前記支持部が1本の線状部材を折り曲げて形成されていること、
を特徴とする請求項3に記載の筒状抵抗器取付具。
【請求項7】
基板に筒状抵抗器を取り付ける方法であって、
前記基板に固定される固定部と、弾性部材からなり前記固定部の両端から互いに対向して屈曲された一対の起立部と、一対の前記起立部の終端から互いに近づく方向に屈曲された下片と一対の前記下片の終端から互いに離れる方向に折り返された一対の上片とを有し前記筒状抵抗器の両端から前記筒状抵抗器の内部に挿入され互いに近づく方向に付勢されることにより前記筒状抵抗器を挟持できるように構成されている一対の支持部とを具備した前記筒状抵抗器取付具を前記基板に固定する工程と、
その後、一対の前記支持部を互いに離れる方向に広げて前記筒状抵抗器の両端から前記筒状抵抗器の内部に挿入することにより筒状抵抗器取付具に前記筒状抵抗器を装着する工程と、
を具備した筒状抵抗器取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−123782(P2010−123782A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296577(P2008−296577)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】