説明

筒状部品の検査方法および通気部材の製造方法

【課題】多数のカメラや大口径のレンズを使用することなく、多数の筒状部品を同時に検査できるようにする。
【解決手段】検査対象である通気部材18を縦横5列ずつのマトリクス状に並べる。コーナに配置された4つの通気部材18と向かい合う位置のそれぞれにカメラ12を準備する。4つのカメラ12は、互いに死角を補完し合うことによって、通気部材18との相対位置関係を変化させなくても、並べられた全ての通気部材18の内側底面18p全体を画像に収めることができる位置に設置されている。通気部材18が配置されている領域を撮像し、4つのカメラ12から取得した4つの画像を処理することにより、全ての通気部材18について、それらの内側底面18pに欠陥が生じているかどうかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップや缶のような筒状部品を複数個並べて同時に検査する方法に関する。また、その方法を用いた検査工程を含む、通気部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筒状部品を検査する方法として、例えば、下記特許文献1,2に開示されている方法が知られている。
【0003】
図11に示すように、筒状部品90の検査は、通常、1つの筒状部品90に対して1台のカメラ92を使用する。筒状部品90の内側底面を真上からカメラ92で撮像し、得られた画像を処理して良否を判定する。複数の筒状部品90をこの方法で同時に検査しようとすると、部品数と同数のカメラが必要となる。しかしながら、部品数と同数のカメラを使用することは、コストやスペースの問題から非現実的である。
【0004】
複数の筒状部品を1台のカメラで同時に撮像する方法としては、図12に示すように、画角0度のテレセントリックレンズ94を使用する方法が挙げられる。確かに、テレセントリックレンズ94を使用すれば複数の部品を1台のカメラ92で同時に撮像可能であるが、部品が配置されている領域すべてを視野とすることができる大口径のレンズは非常に高価である。また、テレセントリックレンズ94を使用すると、部品が少し傾いただけで直ちに死角を生じ、良否を正確に判定できない可能性がある。
【特許文献1】特開平10−085536号公報
【特許文献2】特許第3091268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような問題に鑑み、本発明は、多数のカメラや大口径のレンズを使用することなく、多数の筒状部品を同時に検査できる、筒状部品の検査方法を提供する。また、その方法を用いた検査工程を含む、通気部材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、
底部と開口部とを有する筒状部品の検査方法であって、
開口部が同じ方向を向くように複数の筒状部品を所定配列で並べる工程と、
複数のカメラで死角を補完し合うことによって、筒状部品とカメラとの相対位置関係を変化させなくても、並べられた全ての筒状部品の内側底面全体を画像に収める(いずれかのカメラの視野に収める)ことができるように、筒状部品よりも少数のカメラを開口部と向かい合う位置に準備する工程と、
筒状部品が配置されている領域をカメラで撮像する工程と、
カメラから取得した画像を処理し、全ての筒状部品について、それらの内側底面に欠陥が生じているかどうかを判定する工程と、
を含む、筒状部品の検査方法を提供する。
【0007】
他の側面において、本発明は、
両端に開口部を有する筒状の本体と、その本体に取り付けられて底面を形成する通気膜とを含む通気部材を製造する工程と、
通気部材を検査対象の筒状部品として、上記方法によって検査する工程と、
検査の結果に基づいて通気部材を良品と不良品とに選別する工程と、
を含む、通気部材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
上記検査方法においては、いくつかのカメラを用いて複数の筒状部品を一括して撮像し、得られた画像から筒状部品の内側底面に欠陥が生じているかどうかを判定する。複数の筒状部品の内側底面を1台のカメラで撮像しようとしても、テレセントリックレンズを使用しない限り、全ての筒状部品の内側底面全体を画像に収めることはできない。これに対し、本発明にかかる検査方法によれば、あるカメラの死角となる領域を別のカメラで補うことができるので、筒状部品の数よりも少ない台数のカメラを用いて撮像を行う場合であっても、死角(見えない領域)を作ることなく検査することが可能となる。したがって、検査に使用する装置の大型化や複雑化を招くことなく、処理能力を向上させることができる。
【0009】
例えば、ある1つの筒状部品に着目すると、第1カメラから得られた第1画像に内側底面の一部領域が写り、第1カメラの隣に配置された第2カメラから得られた第2画像に残部が写るという形になる。ただし、真上にカメラがある場合には、そのカメラから得られる1つの画像に内側底面全体が写ることになる。さらに、本発明にかかる検査方法によれば、筒状部品が傾いて治具等に固定されている場合であっても、あるカメラによって撮像される領域は小さくなるが、別のカメラによって撮像される領域が大きくなるので、画像に収めることができない領域は、よほどのことがない限り生じない。
【0010】
また、本発明にかかる検査方法は、カメラとの相対位置関係を変化させながら順番に検査を行っていくことが難しい検査対象の場合に特に有効である。例えば、自動車のECUボックスやヘッドライトハウジングに取り付けられる通気部材(図2A,2B参照)は、通気作用をもたらす多孔質膜の水漏れ検査を出荷前に実施する。その水漏れ検査は、多孔質膜によって形成された外側底面に水圧をかけたときに、同じく多孔質膜によって形成された内側底面に水漏れが生ずるかどうかを調べる検査とされる。このような水漏れ検査を流れ作業で行うことは困難であり、通気部材の1つ1つを専用の検査治具に固定した状態で行うことを要する。そのため、検査工程に費やされる時間が長くなりがちである。こうした検査工程に本発明にかかる方法を適用すれば、生産設備の大型化や複雑化を伴うことなく、検査工程に費やされる時間を大幅に短縮でき、ひいては生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明にかかる検査方法の概要を示す模式図である。検査対象である筒状部品の一例は、自動車のECUボックスやヘッドライトハウジングに取り付けられる通気部材18である。図2Aに示すごとく、通気部材18は、両端に開口部を有する筒状の本体20と、その本体20の一端に取り付けられて内側底面18pを形成する通気膜22とを含む。通気膜22が取り付けられた通気部材18は、一端に通気膜22からなる底部を有し、他端の開口部から内側底面18pを視認可能である。
【0013】
通気部材18の本体20は、例えばゴム弾性を有する樹脂からなる円筒部品である。通気膜22は、液体(例えば水)の通過を禁止し、気体の通過を許容する機能を持った樹脂多孔質膜であり、熱溶着により、または接着剤を用いて本体20に固定されている。通気膜22が本体20にしっかり取り付けられているかどうか、言い換えれば、通気膜22に水圧をかけても本体20内に水が入り込まないかどうかを画像処理によって検査する。
【0014】
まず、図1に示すように、通気膜22が取り付けられていない側の開口部が上を向くように、複数の通気部材18をn×m(n,mはともに3以上の整数)のマトリクス状に並べる。本実施形態では、25個の通気部材18の水漏れ検査を一度に行うために、縦横5列の配置を採用している。
【0015】
通気膜22に水圧をかけながらカメラ12による撮像を行うために、図3に示すような検査治具16を使用することができる。検査治具16は、水を収容することが可能なチャンバ16hが内部に形成され、通気部材18を装着するための開口部161と、チャンバ16hに水を注入するための注水口162とがチャンバ16hの上下に設けられている。図1では検査治具16の記載を省略している。また、検査治具16は、図3に示す構造を縦横5列ずつ備えている。すなわち、一括検査を行うべき通気部材18の数(本実施形態では25個)に等しい数だけ上記構造を備えている。
【0016】
図3に示すごとく、通気部材18は、通気膜22がチャンバ16h内に露出し、反対側の開口部がチャンバ16h外に露出するように、検査治具16の開口部161に装着される。開口部161には、検査治具16と通気部材18との隙間を埋めるシールリング163が配置されており、チャンバ16h内の水が隙間から漏れてこないようになっている。通気部材18を開口部161に装着したのち、注水口162からチャンバ16hに水を注入することにより、通気部材18の通気膜22に適切な水圧がかかる仕組みである。通気膜22が損傷していたり、本体20への接着が不十分だったりする場合には、水が内側に漏れてくるので、その漏れをカメラ12でとらえる。
【0017】
水漏れの有無の判定材料となる画像は、図1に示すごとく、4台のカメラ12から取得することができる。通気部材18が配置された領域を撮像する4台のカメラ12は、例えば2次元CCDを撮像素子として備えたものであり、コーナーに配置された4つの通気部材18と向かい合う位置のそれぞれに準備される。具体的には、コーナーに配置された通気部材18の真上にカメラ12を1台ずつ設置する。このようにすれば、カメラ12の使用台数を最小限に抑えながらも、全ての通気部材18の内側底面18p全体を画像に収めることが可能となる。
【0018】
図4に示すごとく、通気部材18の内側底面18pの最大幅がW1、その内側底面18pから開口端18rまでの高さがH1であるとき、画角θが下記(式1)を満足するレンズ14がカメラ12に使用されている。本実施形態では、円筒形の通気部材18が検査対象なので、通気部材18の内側底面18pの最大幅W1は、内側底面18pの直径または本体20(図2A)の通気膜22側の開口径に等しい。平面視で方形状の内側底面の場合には、最大幅W1は対角線の長さとなる。
(W1/2)/H1>tan(θ/2)・・・(式1)
【0019】
画角が大きくするということは、カメラ12の中心から離れたところにある通気部材18の死角が大きくなることを意味する。本発明においては、複数台(4台)のカメラ12を用いることで全ての視野をカバーできるとしているが、画角が大きすぎると1台のカメラ12の死角を他のカメラで補うことが難しくなる。したがって、必須というわけではないが、上記(式1)のごとく、通気部材18の底面と高さとの関係によって決まる角度より小さい画角を持つレンズ14を使用することが推奨される。
【0020】
4台のカメラ12は、通気部材18が配置されている領域全体を視野にとらえ、かつ通気部材18との相対位置関係を変化させなくても、並べられた全ての通気部材18の内側底面18p全体を画像に収めることができる位置に設置されている。レンズ14の焦点距離とカメラ12の露光面の大きさによって定まる画角θ、カメラ12から通気部材18の内側底面18pまでの距離、通気部材18が配置されている領域の広さ、通気部材18の大きさ等の様々な要因により、個々のカメラ12は、真下にあるもの以外の通気部材18の内側底面18p全体を画像に収めることができない。しかしながら、4台のカメラ12が協力する(お互いの死角を補完し合う)ことによって、それらカメラ12と通気部材18との相対位置関係を変化させることなく、並べられた全ての通気部材18の内側底面18p全体を画像に収めることが可能となる。このようにすれば、カメラ12と通気部材18との相対位置関係を変化させるための機構が不要、または大幅に簡略化することができるため、低コストにも関わらずスループット(処理能力)の高い検査装置を提供することが可能となる。
【0021】
図5Aは、通気部材の配置とカメラの視野との関係を示す模式図である。左端の通気部材18aの内側底面は、真上に設置された第1カメラ12aによって全体が撮像される。同様に、右端の通気部材18eの内側底面は、第2カメラ12bによって撮像される。カメラから通気部材までの距離や画角などの条件を調整することにより、第2カメラ12bで左端の通気部材18aの内側底面の一部を撮像する、あるいは第1カメラ12aで右端の通気部材18eの内側底面の一部を撮像することが可能である。例えば、図5Bに示すごとく、第1カメラ12aの視野13の1/4の領域に、通気部材18の配置されている領域全体が収まるようにするとよい。
【0022】
次に、外から2番目の通気部材18b,18dの内側底面については、第1カメラ12aと第2カメラ12bとが分担して撮像する。すなわち、第1カメラ12aの死角となる領域を第2カメラ12bが撮像し、第2カメラ12bの死角となる領域を第1カメラ12aが撮像する。第1カメラ12aが撮像する領域と第2カメラ12bが撮像する領域とが重複しており、いずれのカメラ12a,12bにも撮像されない領域が存在しない。同様に、中央の通気部材18cの内側底面18pは、第1カメラ12aと第2カメラ12bが分担して撮像する。例えば、図1に示すマトリクスの中央に位置する通気部材18については、4台のカメラ12により死角のない撮像が可能となる。
【0023】
図12で説明したテレセントリックレンズ94を使用すると、通気部材18が少しでも傾くと死角ができ、画像に収めることができない領域が生じてしまう。これに対し、本実施形態の方法によれば、通気部材18が規定姿勢から多少傾いたとしても、ある1台のカメラ12の死角を他のカメラ12で補うことができるので、内側底面全体を確実に画像に収めることができる。
【0024】
また、図6Aに示すごとく、レンズ14の中心とカメラ12の露光面の中心(方形状の撮像素子の対角線の交点)とが高さ方向で一致するように、レンズ14をカメラ12の真下に配置してもよいが、このような配置によると、カメラの視野の1/4しか検査に使用することができず、3/4は無効な視野となってしまう。
【0025】
そこで、図6Bに示すごとく、レンズ14の中心がカメラ12の露光面(結像範囲)の中心から、通気部材18の配置領域の中央方向にずれて位置するように、カメラ12とそのカメラ12に使用するレンズ14との位置関係を調整するとよい。このように、レンズ14を所定量シフトさせることで、カメラ12の露光面全体を有効利用できるようになる。レンズ14のシフト量は、例えば、カメラ12に用いられている撮像素子の対角線の長さの1/2とすることができる。
【0026】
次に、検査工程の詳細な流れを説明する。まず、図7に示すのは、図1に示す検査で使用する検査装置の構成を示すブロック図である。検査装置100は、通気部材18の内側底面18pを撮像する4台のカメラ12と、それら4台のカメラ12から画像を取得する画像処理モジュール30と、画像処理モジュール30から転送されてくる画像を解析して水漏れの有無を判定する解析用コンピュータ32と、解析用コンピュータ32の判定結果を出力する表示部としてのモニタ34とを含む。解析用コンピュータ32は、検査治具16(図3参照)に注水を行うためのポンプ36のコントローラも兼ねている。
【0027】
図8は、解析用コンピュータで実行される検査プログラムのフローチャートである。この検査プログラムが起動すると、まず、検査治具16のチャンバ16hに注水が行なわれる(ステップS1)。これにより、通気部材18の通気膜22に所定の水圧がかかる。通気膜22に水圧がかかった状態は一定時間保たれる。その間に水漏れがないかをステップS2以下の処理でチェックする。
【0028】
注水が完了したら、4台のカメラ12に撮像指令を与える。それら4台のカメラ12によって撮像された4つの画像は、画像処理モジュール30のメモリに格納される。解析用コンピュータ32は、画像処理モジュール30のメモリに格納された4つの画像を第1組(n=1)の画像として取得し、自身のメインメモリに格納する(ステップS2)。次に、予め定めた所定時間(例えば数秒)待機するとともに、組番号nを計測するカウンタをインクリメントする(ステップS3,S4)。
【0029】
所定時間Tn待機したのち、第2組(n=2)の画像を、第1組の画像と同様の手順で取得する(ステップS5)。このように、通気部材18とカメラ12との相対位置関係を維持しつつ、予め定めた時間スケジュールでカメラ12による通気部材18の撮像を行う。待機時間Tnは、一定であってもよいし、画像の組ごとに異なっていてもよい。
【0030】
次に、解析用コンピュータ32は、メインメモリに格納されている第1組(n=1)の画像と、同じくメインメモリに格納されている第2組(n=2)の画像との差分画像を生成する(ステップS6)。生成した差分画像を、予め定めた閾値で2値化する(ステップS7)。こうして得られた2値化画像より、水漏れの有無を判定する(ステップS8)。つまり、直近の過去に取得した画像と現在取得した画像との差分画像に基づいて、内側底面18pに欠陥(水漏れ)が生じているかどうかを判定する。水漏れありとの判定を下す基準は、例えば、2値化画像の面積または寸法が予め定めた所定値を上回ることである。
【0031】
ステップS8において、水漏れありと判定した場合には、水漏れが発生している通気部材18を特定するために、1つ1つの通気部材18に予め付与された番号をNG番号としてモニタ34に表示出力する(ステップS10)。さらに、ステップS9において、規定の判定回数に達したかどうかを確かめ、達していない場合にはステップS3からの処理を繰り返し行う。判定回数は、例えば10回程度に設定することができる。判定回数に代えて、所定の検査時間が経過したかどうかを検査終了の条件としてもよい。
【0032】
検査の最中、水圧が加わることで通気膜22の形状や輝度が徐々に変化する場合がある。このような変形は水漏れが発生していない場合にも起こる可能性があり、このような変形を誤ってNGと判定しないようにする工夫が必要である。図8のフローチャートに示す本実施形態によれば、時系列で取得した第n組の画像と第(n+1)組の画像との差分画像を生成し、生成した差分画像を適切な閾値で2値化することによって得た2値化画像を用いて、水漏れの有無を判定する。
【0033】
以上のように、決められた時間ごとに連続して(時系列で)画像を取得し、これらの画像間の違いを見出す。このような手法を採用すると、通気膜22の変形が判定結果に影響をほとんど及ぼさず、誤判定の発生確率を相当低くできる。また、差分画像を時系列で生成するので、突発的に水漏れが発生した場合にも、これを見逃さずに、直ちにNG判定を下すことができる。
【0034】
また、図9に示すように、撮像対象が複雑な形状を有していたとしても、過去の画像40と現在の画像41との差分画像を生成し、その差分画像の2値化を行うことで、簡単に欠陥42(水漏れ)を抽出することが可能となる。
【0035】
以上のようにして、検査治具16に装着した通気部材18の通気膜22に外部から水を接触させた状態でカメラ12による撮像を行い、内側底面18pに水漏れが生じるかどうかを判定する。
【0036】
なお、本実施形態では、検査の開始から終了まで通気膜22にかける水圧を一定としているが、チャンバ16hへの注水量を徐々に増加したりすることによって、通気膜22にかかる水圧が経時変化する(具体的には徐々に高くなる)ようにしてもよい。また、本実施形態では、判定回数が規定回数に達するまでは水漏れ判定を繰り返し行うようにしているが、水漏れを検出した時点で検査を停止するようにしてもよい。具体的には、図8のフローチャートに示す検査プログラムの実行を停止し、検査治具16のチャンバ16h内の水を排水する。そのようにすれば、周囲に水が溢れ出し、不具合のない製品や装置に水がかかったり、作業スペースが水で濡れたりすることを防止できる。
【0037】
また、水圧をかけている期間における通気膜22自身の変化が判定結果に及ぼす影響をさらに小さくするために、下記(1)(2)のような工夫を講ずることができる。
(1)水圧をかけ始めた後に、予め定めた待機時間が経過することを条件として、図8のフローチャートのステップS2からの処理を開始する。
(2)水圧をかけ始めた時点から一定時間が経過するまでの初期段階では画像取得の時間間隔を短くし、上記一定時間が経過した後は画像取得の時間間隔を長くする。
【0038】
また、より高精度な検査を行うためには、撮像するべき通気部材18の内部に影が生じないように照明することが望ましい。例えば、図12に示すごとく、ハーフミラー24を用いた同軸落射照明によれば、そうした影が通気部材18の内部に生じないので、本発明の方法に好適である。
【0039】
また、内側底面18pと併せて本体20の内周面をカメラ12で撮像し、取得した画像を処理することにより、本体20に損傷等が生じていないかどうかを検査するようにしてもよい。
【0040】
本実施形態の検査方法を通気部材18の製造工程に適用する場合には、通気部材18を製造する工程をまず行う。次に、通気部材18を検査対象となる筒状部品として、本実施形態の方法によって水漏れ検査を行う(検査工程)。そして、その検査工程の結果に基づいて、通気部材18を良品と不良品とに選別する(選別工程)。
【0041】
良品として選別された通気部材18には、図2Bに示す通気部材18Bのように、通気膜22を保護するカバー21を取り付ける工程をさらに実施することができる。カバー21は、検査工程で水漏れが認められず、良品として選別された通気部材18にのみ取り付けられる。図2Bの通気部材18Bからみると、図2Aの通気部材18は中間製品なので、その中間製品の時点で良否を判定することにより、カバー21が無駄にならずに済む。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明にかかる検査方法は、通気部材以外の筒状部品、例えば、食品を詰めるカップや缶の検査にも好適に採用できる。また、筒状部品が円筒形である必要はなく、横断面が方形や三角形の筒状部品であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明にかかる検査方法の概要を示す模式図
【図2A】検査対象である通気部材の断面図
【図2B】通気部材の他の例の断面図
【図3】検査治具への通気部材の装着状態を示す断面模式図
【図4】レンズの画角と死角との関係を示す模式図
【図5A】通気部材の配置とカメラの視野との関係を示す模式図
【図5B】通気部材の配置とカメラの視野との関係を示す平面模式図
【図6A】カメラとレンズの位置関係を示す模式図
【図6B】図6Aに続く模式図
【図7】検査装置のブロック図
【図8】検査プログラムのフローチャート
【図9】NG判定となる画像例
【図10】光源の好適な配置を示す模式図
【図11】筒状部品の従来の検査方法を示す模式図
【図12】筒状部品の従来の他の検査方法を示す模式図
【符号の説明】
【0044】
12 カメラ
14 レンズ
16 検査治具
18 通気部材(筒状部品)
18p 内側底面
18r 開口端
20 本体
22 通気膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と開口部とを有する筒状部品の検査方法であって、
前記開口部が同じ方向を向くように複数の前記筒状部品を所定配列で並べる工程と、
複数のカメラで死角を補完し合うことによって、前記筒状部品と前記カメラとの相対位置関係を変化させなくても、並べられた全ての前記筒状部品の内側底面全体を画像に収めることができるように、前記筒状部品よりも少数の前記カメラを前記開口部と向かい合う位置に準備する工程と、
前記筒状部品が配置されている領域を前記カメラで撮像する工程と、
前記カメラから取得した画像を処理し、全ての前記筒状部品について、それらの内側底面に欠陥が生じているかどうかを判定する工程と、
を含む、筒状部品の検査方法。
【請求項2】
前記筒状部品をn×m(n,mはともに3以上の整数)のマトリクス状に並べ、
コーナーに配置された4つの前記筒状部品と向かい合う位置のそれぞれに前記カメラを準備する、請求項1記載の筒状部品の検査方法。
【請求項3】
レンズの中心が前記カメラの露光面の中心から、前記筒状部品の配置領域の中央方向にずれて位置するように、前記カメラとそのカメラに使用する前記レンズとの位置関係を調整する、請求項2記載の筒状部品の検査方法。
【請求項4】
前記筒状部品と前記カメラとの相対位置関係を維持しつつ、予め定めた時間スケジュールで前記カメラによる撮像を行い、
直近の過去に取得した前記画像と現在取得した前記画像との差分画像に基づいて、前記内側底面に欠陥が生じているかどうかを判定する、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の筒状部品の検査方法。
【請求項5】
前記筒状部品は、両端に開口部を有する筒状の本体と、前記本体に取り付けられて前記内側底面を形成する通気膜とを含む通気部材であり、
検査治具に装着された前記通気部材の前記通気膜に外部から水を接触させた状態で前記カメラによる撮像を行い、前記内側底面に水漏れが生じるかどうかを判定する、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の筒状部品の検査方法。
【請求項6】
両端に開口部を有する筒状の本体と、前記本体に取り付けられて底面を形成する通気膜とを含む通気部材を製造する工程と、
前記通気部材を検査対象の前記筒状部品として、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の方法によって検査する工程と、
前記検査の結果に基づいて前記通気部材を良品と不良品とに選別する工程と、
を含む、通気部材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−8868(P2008−8868A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182397(P2006−182397)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】