説明

管の接続継手

【課題】 接続部材と管の接続状態が目視でき、軸方向の引張り力が強化された管の接続継手を提供すること。
【解決手段】 第1の継手部材10と第2の継手部材20とがともに自由回転可能に結合されている。第1の継手部材10は、筒体部分に滑り止め部11を設け、これに隣接して一方に接続筒部12を形成し、他方に第1の雄ネジ部13を形成し、滑り止め部との隣接部分に係合凹溝14を形成する。第2の継手部材20は、筒体部分が結合筒部21とこれに隣接して第2の雄ネジ部22を形成するとともに、結合筒部21の開口部の内周縁に係合突縁23を形成する。第1の継手部材10の接続筒部を第2の継手部材20の結合筒部内に挿入し、係合凹溝14に係合突縁23嵌合してカシメ止めする。第1及び第2の雄ネジ部13,22のネジ形状をフレキシブル管のネジ山に合致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管の接続継手に関しており、さらに詳しくは、表面に螺旋構造が形成されているフレキシブル管の接続継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から管の接続継手は多種のものが知られており、表面に螺旋構造が形成されているフレキシブル管(コルゲート管)の接続継手も提案されている。
【特許文献1】実願平2−68750号(実開平4−27290号)のマイクロフィルム
【0003】
特許文献1に記載された発明は、接続継手となるソケット型継手3(文献記載の符号であって、以下同じ)が、遊転自在に嵌合された一対の継手体4,5を有し、一方の継手体4が第1の可撓管1を螺入する第1の受口用螺子部6と、該第1の受口用螺子部6の内径より小径な内装用スリーブ7を一体的に構成し、他方の継手体5が第2の可撓管2を螺入する第2の受口用螺子部11と、上記内装用スリーブ7がOリング14を介して嵌合する外装用スリーブ12を一体的に構成し、上記内装用スリーブ7の外周に係止用突起10を周設し、上記外装用スリーブ12に上記係止用突起10が内装されて接続する第1及び第2の可撓管1,2の管軸方向の引張り力を支持する凹部13を周設したものであって、管の接続に際し、第1及び第2の受口用螺子部6,11を回転させることによって第1及び第2の可撓管1,2に螺入することができ、これ自体回転困難な可撓管の接続が容易となるというものである。
【0004】
上記の特許文献1の発明は、それまでの従来技術と比較して、可撓管の接続が容易となると言った利点があり、また、接続継手を塩ビ樹脂のブロー成形によって形成することにより、係止用突起10及び凹部13が周設されていても、その嵌合が樹脂弾性を利用して行われるから他の機械加工を併用せずに製造できる利点があると言うものである。
【0005】
しかし、提案された上記接続継手は、第1及び第2の受口用螺子部6,11が、第1及び第2の可撓管1,2の外側に嵌合される構造となっているから、第1の可撓管1と第1の受口用螺子部6ならびに第2の可撓管2と第2の受口用螺子部11がどの程度接続されているかが目視できないので、継手としての信頼度に欠けることの問題があり、また、継手が塩ビ樹脂製であるから、係止用突起10と凹部13の嵌合が樹脂弾性を利用して行われるので他の機械加工を併用せずに製造できるとされているが、容易に嵌合できると言うことは、一方では簡単に外れてしまうおそれがあり、いずれにしても高品位なものが期待できないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、接続部材と管の接続状態が目視でき、軸方向の引張り力が強化された管の接続継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
解決手段の第1は、表面に螺旋構造を形成したフレキシブル管を接続するためのものであって、筒体に形成した第1の継手部材と第2の継手部材がいずれも自由回転可能に結合されており、上記第1の継手部材は、筒体部分の中程に当該筒体よりも大径な滑り止め部を設け、該滑り止め部に隣接して一方に接続筒部を形成し、他方に第1の雄ネジ部を形成し、上記滑り止め部と上記接続筒体の境界部分に当該接続筒部よりも小径に形成した係合凹溝を設け、上記第1の雄ネジ部がフレキシブル管の螺旋形状に一致させたネジ山形状を有するものであり、上記第2の継手部材は、上記第1の継手部材の上記接続筒体を嵌合する結合筒部とこれに隣接して第2の雄ネジ部を形成し、上記結合筒部の開口部の内周縁に係合突縁を設け、上記第2の雄ネジ部がフレキシブル管の螺旋形状に一致させたネジ山形状を有するものであり、上記第1の継手部材の接続筒部を上記第2の継手部材の結合筒部内に挿入し、上記結合筒部の係合突縁と上記接続筒部の係合凹溝とを一致させ、当該結合筒体の開口縁部をカシメ止めによって上記第1及び第2の継手部材を回動自在に組み付けたことを特徴とするものである。
【0008】
解決手段の第2は、解決手段の第1において、第2の継手部材に設けた第2の雄ネジ部のネジ山形状が、細目ネジに形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1は、第1の継手部材と第2の継手部材がいずれも自由に回転できるように結合されており、第1及び第2の継手部材をフレキシブル管に接続するための第1及び第2の雄ネジ部が、フレキシブル管内に螺入して接続すれるものであるから、接続継手とフレキシブル管の接続状態が目視できるので、確実な接続が期待できるものであって、軸方向の引張り力が強化されるという効果を奏するものである。また、第1及び第2の継手部材の第1及び第2の雄ネジ部は、前者の雄ネジ部は滑り止め部よりも小径に形成されていて当該滑り止め部との間に段差があり、後者の雄ネジ部も結合筒部よりも小径に形成されていて当該結合筒部との間に段差があるから、フレキシブル管内に第1及び第2の雄ネジ部を螺入する時に、フレキシブル管が滑り止め部又は結合筒部に突き当たることを確認することで接続完了が判断できるので、不完全な接続を回避できることの効果がある。
【0010】
さらに、請求項1は、フレキシブル管の接続に工具を使用しないため、工具を使えない狭い場所での作業が可能となるものである。この他、継手は、配管設置後であっても継手が同一方向又は反対方向のいずれにも自由に回転することできるので、施工時又は施工後でも簡単に配管の捩じれを修正及び防止することが可能であり、特に長尺管の使用において施工作業が容易となる効果がある。
【0011】
また、請求項1では、部品の組み立てる際に溶接等が不要であり内部にバリや突起が残らない構造としたから、継手内に挿通する電線や光ケーブルを損傷することがないものとなる効果を奏する。
【0012】
請求項2は、接続継手の第2の継手部材に設けた第2の雄ネジ部のネジ山形状が、細目ネジに形成されているので、接続継手をフレキシブル管の接続に限らず、各種の構造物にねじ結合することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明に係る接続継手を示しており、Aは継手部材の結合前の状態を示す一部断面図、Bは継手部材の結合状態を示す一部断面図、図2は継手部材の結合前の各部材を示す斜視図、図3は接続継手にフレキシブル管を接続する状態を示しており、Aは接続途中を示す断面図、Bは接続完了時を示す断面図、図4は接続継手の他の変形を示す断面図である。
【0014】
図1から図3において、接続継手1は、表面に螺旋構造を形成したフレキシブル管2,3を接続するために使用するものであって、第1の継手部材10と第2の継手部材20とからなり、両者はいずれも自由回転ができるように結合されている。上記フレキシブル管2,3は、多種の用途があるが、実施形態では、電源コード4を地中に埋め込む時のケーブル保護管として使用することを想定しており、具体的な用途は、空港の滑走路に設置されている誘導灯のケーブル保護管として使用するものである。
【0015】
接続継手1の材質は、真鍮(C3604)にニッケルメッキを施したものであり、具体的な寸法は後述する実施例が標準となる。また、フレキシブル管2,3の材質は、ステンレス鋼(SUS304)であり、定尺ものとしての長さは50〜100mである。
【0016】
上記第1の継手部材10は、筒体部分の中程に当該筒体よりも大径に形成し、表面にローレット加工を施した滑り止め部11を設け、当該滑り止め部11に隣接して一方に接続筒部12を形成し、他方にフレキシブル管の螺旋形状に一致させたネジ山形状を有する第1の雄ネジ部13を形成したものである。なお、上記接続筒部12の基端部となる上記滑り止め部11との隣接部分に、当該接続筒部12の外径よりも小径な係合凹溝14が形成されている。
【0017】
また、上記第2の継手部材20は、筒体部分が上記第1の継手部材10の接続筒部12を嵌合する結合筒部21と、これに隣接してフレキシブル管の螺旋形状に一致させたネジ山形状を有するものであって、当該結合筒部21よりも小径な第2の雄ネジ部22を形成するとともに、当該結合筒部21の開口部分の内側周縁部に係合突縁23を設けたものである。なお、上記係合突縁23の内側の空間で段部24までの空間が上記第1の継手部材10が収容される空所25となる。
【0018】
上記したように、第1の雄ネジ部13及び第2の雄ネジ部22のネジ形状は、フレキシブル管2,3の螺旋形状に合致したものであるから、両者をねじ結合した場合は隙間なく結合できるものとなる。
【0019】
なお、第1及び第2の継手部材10,20は、いずれも自由に回転できるように結合されるものであるが、結合前は、第2の継手部材20の結合筒部21に形成した係合突縁23の内径が、第1の継手部材10の接続筒部12の外径よりも大径に形成されている。
【0020】
第1及び第2の継手部材10,20を結合するには、まず、第1の継手部材10の接続筒部12を第2の継手部材20の空所25に挿入し、該接続筒部12の端部が段部24に係合するまで挿入する。この時、第2の継手部材20の係合突縁23は、第1の継手部材10の係合凹溝14に達しているので、図1Bに示すように、第2の継手部材20の開口縁部をカシメ止め30によって組み付けるものである。これによって、当該係合突縁23は、第1の継手部材10の係合凹溝14内に嵌合されて両者は自由回転が可能になるが、軸方向の移動が阻止された状態で結合される。
【0021】
次に、図3を参照して、接続継手1を使用してフレキシブル管2,3を接続する手順を説明する。ここで、フレキシブル管2,3は、内部に電源コード4を収容して地中に埋設することを想定しており、具体的には、空港滑走路の照明設備に電源コードを配線するための電線保護管となるものであって、電源コードの分岐する部分又は照明設備に設けられた図示しない電源ボックス間に接続されていて、内部に収容した電源コード4を保護するものである。前述したように、フレキシブル管2,3は定尺ものとして50〜100mの長さがあるが、電源ボックスの間隔は一定していないから、電源コードの埋設工事をしている中でフレキシブル管は定尺ものだけでは賄えなくなってくることがある。
【0022】
上記した事態に対応するために本発明の接続継手1を使用してフレキシブル管2,3を接続するのである。接続作業は、その前段階として、フレキシブル管2、接続継手1、フレキシブル管3の順に電源コード4を挿通しておく。図3Aは、第2の継手部材20の第2の雄ネジ部22をフレキシブル管3にねじ込んで接続継手1とフレキシブル管3を結合した状態を示している。前述したように、第1及び第2の継手部材10,20は回転自在であるから、第2の継手部材20の第2の雄ネジ部22をフレキシブル管3にねじ込む時は、第1の継手部材10を掴んで固定しておけば、第2の継手部材20のみが自由に回転する。
【0023】
次いで、フレキシブル管2を第1の継手部材10に近づけ、前述とは逆に第2の継手部材20を固定し、第1の継手部材10の滑り止め部11を回転して第1の雄ネジ部13をフレキシブル管2にねじ込み、内部に電源コード4が収容されているフレキシブル管2,3を結合する。フレキシブル管2,3は、定尺ものを巻いた状態で片側を接続し、それを伸ばしながら敷設する。この時、フレキシブル管2,3が捩じれて行くが、当該接続継手1が回転するので管の捩じれは開放されているので、接続継手には負荷がかからず、継手は外れにくくなるという利点が生じる。
【0024】
フレキシブル管2,3と接続した接続継手1は、地中に埋設されるので、敷設された時点で防水効果を発揮させるために、当該接続継手1とフレキシブル管2,3の接続部分に図示しないビニールテープを巻いておくとよい。
【0025】
図4は、接続継手の他の変形を示しており、接続継手100の第2の継手部材120に設けられた第2の雄ネジ部122が、フレキシブル管3にねじ結合するものと異なり、通常の細目ネジとしたものであり、当該接続継手100を各種の構造物、例えば、上述した電源ボックス等にねじ結合ができるようになっている。
【0026】
なお、上記以外の他の部材は、第1の実施例と変わらないので、第1の実施例に付した符号に「100」を加えた数字で表し、詳細な説明は省略した。
【0027】
実施例
第1の継手部材(10)は、滑り止め部(11)の外径が15mm、接続筒部(12)の外径が10.8mm、第1の雄ネジ部(13)の外径が11.8mmであり、長さは、滑り止め部が6.5mm、接続筒部が7mm、第1の雄ネジ部が10mmであって、全長が23.5mmである。
第2の継手部材(20)は、結合筒部(21)の外径が16mm、第2の雄ネジ部(22)の外径が11.8mmであり、長さは、結合筒部径が13mm、第2の雄ネジ部が10mmであって、全長が23mmである。
因みに、第1の継手部材(10)を第2の継手部材(20)に結合した接続継手(1)の全体の長さは、39.5mmである。
また、フレキシブル管は、外径が13.8mm、内径が11.0mmであり、定尺ものとして50mないし100mの長さを有している。なお、図示は省略したが、フレキシブル管は被覆カバー付きである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る接続継手を示しており、Aは継手部材の結合前の状態を示す一部断面図、Bは継手部材の結合状態を示す一部断面図。
【図2】継手部材の結合前の状態を示す斜視図。
【図3】接続継手にフレキシブル管を接続する状態を示しており、Aは接続途中を示す断面図、Bは接続完了時を示す断面図。
【図4】接続継手の他の変形を示す断面図。
【符号の説明】
【0029】
1,100 接続継手
2,3 フレキシブル管
10,110 第1の継手部材
11,111 滑り止め部
12,112 接続筒部
13,113 第1の雄ネジ部
14,114 係合凹溝
20,120 第2の継手部材
21,121 結合筒部
22,122 第2の雄ネジ部
23,123 係合突縁
24,124 段部
25,125 空所
30、130 カシメ止め

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に螺旋構造を形成したフレキシブル管を接続するためのものであって、筒体に形成した第1の継手部材(10)と第2の継手部材(20)がいずれも自由回転可能に結合されており、上記第1の継手部材は、筒体部分の中程に当該筒体よりも大径な滑り止め部(11)を形成し、該滑り止め部に隣接して一方に接続筒部(12)を形成し、他方に第1の雄ネジ部(13)を形成し、上記滑り止め部と上記接続筒体の境界部分に当該接続筒部よりも小径に形成した係合凹溝(14)を設け、上記第1の雄ネジ部がフレキシブル管の螺旋形状に一致させたネジ山形状を有するものであり、上記第2の継手部材は、上記第1の継手部材の上記接続筒体を嵌合する結合筒部(21)とこれに隣接して上記結合筒体よりも小径な第2の雄ネジ部(22)を形成し、上記結合筒部の開口部の内周縁に係合突縁(23)を設け、上記第2の雄ネジ部がフレキシブル管の螺旋形状に一致させたネジ山形状を有するものであり、上記第1の継手部材の接続筒部を上記第2の継手部材の結合筒部内に挿入し、上記結合筒部の係合突縁と上記接続筒部の係合凹溝とを一致させ、当該結合筒体の開口縁部をカシメ止めによって上記第1及び第2の継手部材を回動自在に組み付けたことを特徴とする管の接続継手。
【請求項2】
第2の継手部材(120)に設けた第2の雄ネジ部(122)のネジ山形状が、細目ネジに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の管の接続継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−250250(P2009−250250A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94717(P2008−94717)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(391003738)昭和工業株式会社 (1)
【出願人】(501259961)株式会社イナバ (1)
【Fターム(参考)】