説明

管ライニング材

【課題】構成が簡単で遮光性の高い管ライニング材を提供する。
【解決手段】管ライニング材1は光硬化性樹脂、あるいは光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材10の外表面に遮光性フィルム12を熱溶着してなる。このような構成では、管状樹脂吸収材の外表面全体が熱溶着した遮光性フィルムで被覆されるので、遮光性フィルムは、管状樹脂吸収材に対して位置ずれすることがなく、管状樹脂吸収材に含浸された光硬化性樹脂が不用意に外光に当たって硬化してしまうのを防止することができる。また、遮光性フィルムは、ポリエチレンなどの高気密性のプラスチックフィルムを製造する過程で、遮光顔料を該プラスチックフィルムに添加することにより容易に得られるので、従来から行われていたプラスチックフィルムによる被覆工程をそのまま利用して遮光性の高い管ライニング材を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂を含浸させた柔軟な管状樹脂吸収材からなる管路更生用の管ライニング材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水管等の管路が老朽化した場合、該管路を地中から掘出することなくこれにライニングを施して当該管路を補修する管ライニング工法が、既に実用に供されている。この管ライニング工法では、外表面がプラスチックフィルムで被覆された管状樹脂吸収材に未硬化の液状硬化性樹脂を含浸して成る管ライニング材が流体圧によって管路内に反転又は引き込みにより挿入される。管ライニング材は、その後管路の内壁に押圧したままに保持され、管ライニング材に含浸された硬化性樹脂が硬化されて管路の内壁が硬化した管ライニング材でライニングされる。
【0003】
ところで、管状樹脂吸収材に含浸される硬化性樹脂として、熱触媒が添加される硬化性樹脂(熱硬化性樹脂)、あるいは光触媒が添加される硬化性樹脂(光硬化性樹脂)が使用されている。光硬化性樹脂を使用する場合には、管路の内壁に押圧されて円形状に保持されている管ライニング材内に光照射装置(UVランプ、可視光線光源等)を走行させることにより、光硬化性樹脂が硬化される。熱硬化性樹脂の場合には、熱水又は熱気などの熱媒を管ライニング材に作用させて、樹脂を硬化させている。
【0004】
また、光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂の両方を、管状樹脂吸収材に含浸させることも提案されている(特許文献1)。このような管ライニング材は、管路に挿入された状態では、光硬化性樹脂が内側にくるようになっており、まず光硬化性樹脂が光照射により硬化し、その硬化の際に発生する熱により熱硬化性樹脂が硬化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−33970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
管状樹脂吸収材に光硬化性樹脂を含浸してなる管ライニング材の場合には、管ライニング材が外光に当たると、光硬化性樹脂が硬化する恐れがある。従って、管ライニング材は、その全体を遮光性フィルムで包んで管ライニング材に光が照射されることがないようにして、更生現場に搬送され、更生すべき管路内に引き込まれている。
【0007】
この場合、遮光性フィルムは、単に管ライニング材全体を外部から包んでいるだけなので、遮光性フィルムが管ライニング材に対して位置ずれし、管ライニング材が不用意に外光にさらされてしまう、という問題があった。
【0008】
この位置ずれを防止するために、遮光性フィルムを管ライニング材の外表面に熱溶着して管ライニング材を遮光することも考えられる。しかしながら、管ライニング材の管状樹脂吸収材の外表面は、通常ポリエチレンなどのプラスチックフィルムにより熱溶着で被覆されているので、その上に遮光性フィルムを熱溶着することは、管ライニング材の製造工程を増加することになるとともに、被覆フィルム層が2層となって不経済になる。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、構成が簡単で遮光性の高い管ライニング材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、
管路内に挿入されて管路の内周面を更生するための管ライニング材であって、
硬化性樹脂を含浸した管状の樹脂吸収材と、
該管状の樹脂吸収材の外表面に熱溶着された遮光性フィルムと、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、
管路内に挿入されて管路の内周面を更生するための管ライニング材であって、
硬化性樹脂を含浸した管状の樹脂吸収材の外表面に遮光性フィルムを熱溶着してなる外部ライニング材と、
前記外部ライニング材の内周面に密着され、硬化性樹脂を含浸した管状の樹脂吸収材からなる内部ライニング材と、から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、光硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材の外表面に管状の遮光性フィルムを熱溶着しているので、遮光性フィルムは、管状樹脂吸収材に対して位置ずれすることがない。従って、管ライニング材を確実に遮光することができ、管状樹脂吸収材に含浸された光硬化性樹脂が不用意に外光に当たって硬化してしまうのを防止することができる。
【0013】
また、管状樹脂吸収材の外表面には、遮光性フィルムが1層形成されるだけなので、管ライニング材の製造コストを減少させることができる。
【0014】
更に、遮光性フィルムは、ポリエチレンなどの高気密性のプラスチックフィルムを製造する過程で、着色顔料を該プラスチックフィルムに添加することにより容易に得られるので、従来から行われていた高気密性のプラスチックフィルムによる被覆工程をそのまま利用することができ、簡単な工程で遮光性が高くしかも高気密性の管ライニング材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は遮光性フィルムを管状樹脂吸収材に巻き付ける状態を示した斜視図、(b)は遮光性フィルムが取り付けられた管状樹脂吸収材からなる管ライニング材の斜視図である。
【図2】遮光性フィルムを管状樹脂吸収材に熱溶着する状態を示した説明図である。
【図3】管ライニング材を2層構造にする工程を示した説明図である。
【図4】管状樹脂吸収材を2層構造にし外表面に遮光性フィルムを熱溶着した管ライニング材の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付した図を参照して本発明を実施するための実施例を説明する。
【実施例】
【0017】
図1(a)は、管ライニング材を構成する柔軟な管状樹脂吸収材10の外表面に平坦な遮光性フィルム12を巻き付ける状態を示している。
【0018】
管状樹脂吸収材10は、所定幅で所定長さの帯状樹脂吸収材を丸め、その両端部10aを突き合せて縫製し、突き合わせ部にポリウレタン、ポリエチレンあるいはポリプロピレン製のテープ11を被着することにより製造される。
【0019】
管状樹脂吸収材10は、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンなどのプラスチック繊維を用いた不織布、織布、あるいはマット;あるいはガラス繊維を用いた織布、あるいはマット;あるいは上記プラスチック繊維とガラス繊維を組み合わせた不織布、織布、あるいはマットからなる。
【0020】
このような管状樹脂吸収材10の外表面に、図1(a)に示したような帯状の遮光性フィルム12が巻き付けられる。遮光性フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、又は塩化ビニール等のプラスチックフィルムを製造するときに、キノフタロン系あるいはイソインドリノン系の有機顔料を添加して着色することにより得られ、紫外線あるいは可視光などを遮光することができる。
【0021】
このような遮光性フィルム12を管状樹脂吸収材10の外表面に巻き付けて、図1(b)に示すように、その両端部12aを重ね合わせ、その重ね合わせ部を接着することにより、管状樹脂吸収材10が筒状になった遮光性フィルム12により密着した状態で被覆される。
【0022】
遮光性フィルム12で被覆された管状樹脂吸収材10は、図2に示すように、内部に圧縮空気を供給することにより、あるいは管状樹脂吸収材を真空引きすることにより円形に膨張される。図2には図示してないが、実際には、筒状のインライナーを内部に入れてこのインライナーを介して遮光性フィルムと管状樹脂吸収材が円形に膨張される。このように円形に拡径した状態で、遮光性フィルム12と管状樹脂吸収材10並びにインライナー(不図示)は、加熱炉(不図示)を通過され、その通過中に、矢印で示したように、周囲から加熱される。これにより、遮光性フィルム12が管状樹脂吸収材10の管長方向に渡って外表面全体に均一に熱溶着される。
【0023】
このようにして、管状樹脂吸収材10の外周面に遮光性フィルム12が熱溶着されたら、内部に作用していた圧力を解消すると共に、管状樹脂吸収材10と遮光性フィルム12を収縮させ、内部のインライナーを除去して、全体として扁平になった管ライニング材1が得られる。
【0024】
遮光性フィルム12が熱溶着された管状樹脂吸収材10には、公知の方法で、液状の未硬化の光硬化性樹脂が含浸される。光硬化性樹脂は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はエポキシ樹脂などの液状硬化性樹脂に光触媒を添加することにより得られる。
【0025】
管状樹脂吸収材10には、光硬化性樹脂のほかに、液状の熱硬化性樹脂を含浸させることもできる。このような熱硬化性樹脂は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はエポキシ樹脂などの液状硬化性樹脂に熱触媒を添加することにより得られる。
【0026】
管状樹脂吸収材に熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂を含浸させる場合には、管ライニング材が管路に挿入された状態で、光硬化性樹脂が内周面側に、また熱硬化性樹脂が外周面側にくるように、含浸させる。
【0027】
なお、本実施例では、管ライニング材が管路に挿入されて硬化する準備ができた状態で、管路の内周面と対向する面が、管ライニング材ないしその管状樹脂吸収材の外表面(外周面)とされる。
【0028】
上述した管状樹脂吸収材は、図3に示したように、内部ライニング材20を管状樹脂吸収材10内に挿入して2層構造とすることもできる。その場合、遮光性フィルム12が熱溶着された管状樹脂吸収材10は、外部ライニング材15となる。
【0029】
内部ライニング材20の管状樹脂吸収材21としては、その密度が外部ライニング材15の樹脂吸収材10より高密度であるものを用い、管ライニング材の水密性を高める。外部ライニング材15の樹脂吸収材10として、例えば、ニードルパンチング加工されたポリエステルなどプラスチック繊維からなる不織布を用いた場合、管状樹脂吸収材10と同じ材質の樹脂吸収材を圧縮してニードルパンチング加工することにより、樹脂吸収材10より密度の高い樹脂吸収材21を製作することができる。あるいは、樹脂吸収材10としてスパンボンド加工されたプラスチック繊維からなる不織布を用い、同じ材質で目付けがそれより大きく、重量のあるスパンボンド加工された不織布を樹脂吸収材21に用いることにより、樹脂吸収材10より密度の高い樹脂吸収材21を得ることができる。
【0030】
内部ライニング材20の樹脂吸収材21は、所定幅で所定長さの帯状樹脂吸収材を丸め、その両端部を突き合せて縫製し、外部ライニング材15の管状樹脂吸収材10と同様な管状樹脂吸収材に形成される。
【0031】
また、管状樹脂吸収材21の内周面には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、又は塩化ビニール等のプラスチックフィルムからなるインナーチューブ22が剥離可能に被着され、その内面が保護される。このインナーチューブ22は、剥離可能なので、管路が更生された後、管ライニング材から剥離され、外部に排除することができる。
【0032】
内部ライニング材20は、反転によりあるいは引き込みにより外部ライニング材15に挿入され、外部ライニング材15と内部ライニング材20の2層構造からなる管ライニング材1が製作される。このように製作された管ライニング材1の断面構造が図4に図示されている。
【0033】
なお、外部ライニング材15の管状樹脂吸収材10と内部ライニング材20の管状樹脂吸収材21には、公知の方法で、光硬化性樹脂、あるいは光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂が含浸されている。管状樹脂吸収材21に含浸される光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂のそれぞれの特性は、管状樹脂吸収材10に含浸される光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂と同じにする。
【0034】
管ライニング材1は、既設管路内に引き込みにより挿入される。このとき、遮光フィルム12は、図1(b)、図3(図4)に示したように、管ライニング材1の外周面となっている。管ライニング材1は、管路内で圧縮空気により円形に拡径され、遮光性フィルム12が管路(不図示)の内周面に密着するようになる。その状態で、管ライニング材は光照射装置により内部から光照射され、管状樹脂吸収材に含浸されている光硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂が硬化され、管路の内周面が管ライニング材により更生される。
【0035】
本発明の管ライニング材1では、1層構造であれ、2層構造であっても、管状樹脂吸収材の外表面全体が熱溶着した遮光性フィルムで被覆されるので、遮光性フィルムは、管状樹脂吸収材に対して位置ずれすることがなく、管状樹脂吸収材に含浸された光硬化性樹脂が不用意に外光に当たって硬化してしまうのを防止することができる。
【0036】
更に、遮光性フィルムは、ポリエチレンなどの高気密性のプラスチックフィルムを製造する過程で、遮光顔料を該プラスチックフィルムに添加することにより容易に得られるので、従来から行われていたプラスチックフィルムによる被覆工程をそのまま利用することができ、簡単な工程で遮光性が高く、しかも気密性の高い管ライニング材を製造することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 管ライニング材
10 管状樹脂吸収材
12 遮光性フィルム
15 外部ライニング材
20 内部ライニング材
21 管状樹脂吸収材
22 インナーチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路内に挿入されて管路の内周面を更生するための管ライニング材であって、
硬化性樹脂を含浸した管状の樹脂吸収材と、
該管状の樹脂吸収材の外表面に熱溶着された遮光性フィルムと、
を有することを特徴とする管ライニング材。
【請求項2】
前記硬化性樹脂が光硬化性樹脂、あるいは光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の管ライニング材。
【請求項3】
管路内に挿入されて管路の内周面を更生するための管ライニング材であって、
硬化性樹脂を含浸した管状の樹脂吸収材の外表面に遮光性フィルムを熱溶着してなる外部ライニング材と、
前記外部ライニング材の内周面に密着され、硬化性樹脂を含浸した管状の樹脂吸収材からなる内部ライニング材と、
から構成されることを特徴とする管ライニング材。
【請求項4】
前記内部ライニング材の樹脂吸収材の密度が外部ライニング材の樹脂吸収材より高密度であることを特徴とする請求項3に記載の管ライニング材。
【請求項5】
前記外部ライニング材と内部ライニング材の管状樹脂吸収材に含浸される硬化性樹脂が光硬化性樹脂、あるいは光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項3又は4に記載の管ライニング材。
【請求項6】
前記遮光性フィルムが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、又は塩化ビニール等のプラスチックフィルムを製造するときに、有機顔料を添加して着色することにより得られる遮光性フィルムであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の管ライニング材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−201887(P2010−201887A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52784(P2009−52784)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(592057385)株式会社湘南合成樹脂製作所 (61)
【Fターム(参考)】