管体の再生方法
【課題】枝管部分の施工が容易な管体の再生方法を提供する。
【解決手段】建造物に配管された本管1の途中から枝管2が分岐された管体の再生方法であって、本管及び枝管の内面に発生した錆3等を除去する工程と、枝管内に予め成形された被覆管5を挿入する工程と、織布または不織布等からなるチューブ状の芯材7bに硬化性樹脂液7cを含浸させて反転用内貼り材7eを形成する工程と、反転用内貼り材の一端を本管の一端側に接続する工程と、本管の一端側から本管と反転用内貼り材の間に圧力流体を供給すると同時に、予め反転用内貼り材内に挿入した索条10を牽引して反転用内貼り材の内外面を反転させながら本管の内面に反転用内貼り材を密着させて本管の内面に内貼り管を形成する工程と、本管の内面に内貼り管を形成する際被覆管の本管側端部を内貼り管の一部で被覆する工程とからなり、枝管部分の施工が容易に行える。
【解決手段】建造物に配管された本管1の途中から枝管2が分岐された管体の再生方法であって、本管及び枝管の内面に発生した錆3等を除去する工程と、枝管内に予め成形された被覆管5を挿入する工程と、織布または不織布等からなるチューブ状の芯材7bに硬化性樹脂液7cを含浸させて反転用内貼り材7eを形成する工程と、反転用内貼り材の一端を本管の一端側に接続する工程と、本管の一端側から本管と反転用内貼り材の間に圧力流体を供給すると同時に、予め反転用内貼り材内に挿入した索条10を牽引して反転用内貼り材の内外面を反転させながら本管の内面に反転用内貼り材を密着させて本管の内面に内貼り管を形成する工程と、本管の内面に内貼り管を形成する際被覆管の本管側端部を内貼り管の一部で被覆する工程とからなり、枝管部分の施工が容易に行える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルや集合住宅等の建造物に配管された管体の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや集合住宅等の建造物には、給排水管や冷暖房の配管等、多数の管体が縦横に張りめぐらされている。これら管体の多くは、鋳鉄管や白ガス管等の鋼管が使用されているが、長期間使用していると内部から錆が発生し、これを放置すると管体の肉厚が徐々に減少して孔が開き、漏水の原因となる。
特に築後30年以上を経過した建造物に配管されている管体の多くは老朽化が進み、何時漏水が起きてもおかしくない状況にある。
また建築物に配管された管体に漏水が発生すると、上水道の場合断水が発生し、また下水道の場合排水ができなくなると同時に、漏れた水が住居部分に漏水して財産等に多大な損失を与えかねないため、漏水が発生する前に対策を講じる必要がある。
このため従来から建造物に配管された給排水管等の管体を再生する方法(工法)が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、織布や不織布よりなる樹脂吸収材に硬化性樹脂液を含浸させたチューブ状のライニング材を再生すべき管体内へ引き込んだら、圧力流体を注入してライニング材を加圧反転させながら、同時に牽引ロープを牽引して、ライニング材により管体の内面を被覆する管のライニング方法が記載されている。
また特許文献2には、管体の一部を切断して、切断面にエポキシ樹脂を含浸させた筒状の布製シートを接続した状態で筒状布製シートを反転させながら管体内へ挿入し、筒状布製シートが管体の内面に付着したら、筒状布製シート内に筒状ビニールシートを挿入してこれを圧力流体(空気)で膨張させて、筒状ビニールシートの膨張圧により筒状布製シートを管体の内面に密着させる排水立て管の更生方法が記載されている。
【特許文献1】特開2002−160295号公報
【特許文献2】特開2006−57643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビルや集合住宅等の建造物に配管された管体の多くは、径の大きい本管と、本管より分岐された径の小さい枝管より構成されており、長期間使用していると、本管のみならず枝管も老朽化して、漏水の原因となる。
このため、本管のみならず枝管の再生も必要となるが、前記特許文献1に記載の管のライニング方法では、本管の再生は可能であるが、本管より分岐された枝管の内面はライニングできないため、枝管の再生は困難である問題がある。
【0005】
一方特許文献2に記載の排水立て管の更正方法では、本管より分岐された枝管がある場合、予め筒状布製シートに枝管部を形成しておき、これを管体内へ反転挿入している。
しかしこの方法では次のような問題がある。
すなわちエポキシ樹脂が含浸された筒状布製シートは伸縮性があり、このため予め枝管部を形成した筒状布製シートを管体内へ反転挿入する際、筒状布製シートが伸縮したり、枝管部の位置が周方向へ回転するため、枝管部を本管より分岐された枝管へ挿入するのは至難である。
また、たとえ筒状布製シートに形成した枝管部が本管より分岐された枝管に達しても、位置がずれている場合、枝管部を強制的に枝管内へ引き込む必要があり、枝管が長い場合、引き込み作業が困難であると共に、たとえ引き込めたとしても枝管部を引っ張った際、本管側の筒状布製シートに捩れが生じ、シワの原因となったり、施工後のライニング層の肉厚に変化が生じ、この部分の耐久性が著しく低下する問題もある。
本発明はかかる問題を改善するためになされたもので、枝管部分の施工が容易な管体の再生方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の管体の再生方法は、建造物に配管された本管の途中から枝管が分岐された管体の再生方法であって、本管及び枝管の内面に発生した錆等を除去する工程と、枝管内に予め成形された被覆管を挿入する工程と、織布または不織布等からなるチューブ状の芯材に硬化性樹脂液を含浸させて反転用内貼り材を形成する工程と、反転用内貼り材の一端を本管の一端側に接続する工程と、本管の一端側から前記本管と反転用内貼り材の間に圧力流体を供給すると同時に、予め反転用内貼り材内に挿入した索条を牽引して反転用内貼り材の内外面を反転させながら本管の内面に反転用内貼り材を密着させて、本管の内面に内貼り管を形成する工程と、本管の内面に内貼り管を形成する際被覆管の本管側端部を内貼り管の一部で被覆する工程とからなる。
【0007】
前記構成により、枝管に挿入した被覆管の本管側端部を、本管の内面を被覆する際に内貼り管が覆うため、枝管部分の施工が容易な上、本管の内面を被覆する内貼り管が被覆管の端部に接着して、本管と枝管の分岐部が2重構造となるため、本管と枝管の分岐部からの漏水を確実に防止することができる。
また枝管を被覆する枝管部を内貼り管に予め設ける必要がないため、前記特許文献2に記載したような枝管部を強制的に枝管内へ引き込む作業が不要となり、これによって本管内面を被覆する内貼り管が捩れてシワの原因となったり、内貼り管の肉厚が部分的に変化することもないので、本管と枝管の分岐部を被覆する被覆層の耐久性及び信頼性を向上させることができる。
【0008】
本発明の管体の再生方法は、被覆管の一端が本管内に突出するよう枝管内に被覆管を挿入した後拡張工具により突出部を拡開して、被覆管の一端部に本管の内面に密着する鍔部を形成した後、本管の内面に内貼り管を形成したものである。
【0009】
前記構成により、内貼り管と被覆管との接触面積が鍔部により増大するため、本管と枝管の分岐部を被覆する被覆部分の防水効果がさらに向上する。
【0010】
本発明の管体の再生方法は、一端部が本管内に突出しないように枝管内に被覆管を挿入し、かつ反転用内貼り材を反転して本管の内面に内貼り管を形成する際、圧力流体により反転用内貼り材の一部を被覆管の一端側に張り出させて被覆管の端部を内貼り管で被覆したものである。
【0011】
前記構成により、本管内において被覆管の端部に鍔部を形成する工程が省略できるため、作業性の向上と施工期間の短縮化が図れる。
【0012】
本発明の管体の再生方法は、被覆管に熱を加えることにより元の形状に膨張する熱膨張管を使用したものである。
【0013】
前記構成により、被覆管を予め枝管の内径より小径に成形しておくことにより、枝管内への挿入が容易となり、また熱を加えることにより膨張して枝管の内面に密着するため、枝管の内周面と被覆管の外周面との間に隙間が生じることがない。
【0014】
本発明の管体の再生方法は、ゴム等の弾性材料により予め一端側に鍔部を成形した被覆管を形成し、かつ被覆管の鍔部側より枝管に挿入して、枝管内を被覆管で覆うと共に、鍔部を本管の内面に密着させた後、本管の内面に内貼り管を形成したものである。
【0015】
前記構成により、本管内において被覆管の端部に鍔部を形成する工程が省略できるため、作業性の向上と施工期間の短縮化が図れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の管体の再生方法によれば、枝管に挿入した被覆管の本管側端部を、本管の内面を被覆する内貼り管が覆った2重構造となるため、本管と枝管の分岐部からの漏水を確実に防止できると共に、本管内面を被覆する内貼り管が捩れてシワの原因となったり、内貼り管の肉厚が部分的に変化することもないので、本管と枝管の分岐部を被覆する被覆層の耐久性及び信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を、図面を参照して詳述する。
図1ないし図8は管体の再生方法の施工手順を示す工程図、図9は再生された管体の枝管付近を示す断面図、図10及び図11は再生方法の変形例を示す説明図である。
本発明により再生しようとする管体は、例えばビルや集合住宅等の建造物に配管された給排水管や冷暖房用配管等であり、何れも長期間使用している間に老朽化し、漏水が発生しそうなものを対象としているが、勿論使用年数が短くとも老朽化を防止する目的で再生工事を行う場合も含まれる。
建造物に配管された管体の多くは、比較的径の大きい本管1と、本管1より分岐された比較的径の小さい枝管2とからなり、何れも鋳鉄管や白ガス管等の鋼管が使用されており、これら管体の接続には、チーズ等の継手(図示せず)が使用されている。
また本管1や枝管2は、長期間使用している間に内面に錆3が発生しているので、管体の再生に当たっては、まずこの錆3を除去する必要がある。
【0018】
図1は本管1内の錆3を除去している状態を示すもので、本管1の開口端側から公知の錆除去手段4を回転させながら挿入し、本管1の内面に発生した錆3を順次除去すると共に、本管1の錆3を除去したら、同様な方法で枝管2内の錆3も除去する。
本管1及び枝管2内面の錆3を除去したら、次に枝管2の開放端側から被覆管5を図2に示すように挿入する。
被覆管5は、外径が枝管2の内径よりやや小径に成形された合成樹脂管で、熱膨張管と称する形状記憶樹脂等を使用している。
すなわち熱膨張管は熱を加える元の形状(寸法)に戻る形状記憶樹脂よりなり、予め外径が枝管2の内径よりやや小径となるように成形されており、熱を加えると外径が枝管2の内径にほぼ等しい元の形状にまで膨張するようになっている。
この熱膨張管よりなる被覆管5を、枝管2の長さに余長分Lを加えた長さに切断し、枝管2内に挿入した際本管1側となる端部の内面(図2の破線で示す部分)を粗面5aとして、後述する内貼り管7との密着性を高める処理を行う。
【0019】
粗面処理が終了したら被覆管5の外周面にエポキシ樹脂等の接着剤を塗布し、かつ熱を加えない状態で粗面5a側から枝管2内へ被覆管5を挿入して、被覆管5の余長部Lが本管1内へ突出したら、次に被覆管5の端末処理を行う。
端末処理とは、被覆管5の余長部Lを熱変形させて端部に鍔部5bを形成するもので、図3に示すような拡張治具6を使用する。
拡張治具6は、ガイド管6a内に回転軸6bが回転自在に挿入されており、ガイド管6aの先端には一対の挟着板6cの間に挟着された筒状の弾性体6dが設けられている。
回転軸5bの先端にはねじ部5eが形成されていて、このねじ部6eは挟着板6cの一方に固着されたナット6fに螺合されている。
前記構成された拡張治具6は、平時は弾性体6dの外径が枝管2の内径よりやや小径となっており、被覆管5の端部を拡張するに当っては、まず被覆管5内に熱風を送って被覆管5を加熱することにより被覆管5全体を軟化させるか、本管1と枝管2の分岐部を外側からバーナ等の加熱手段で加熱して被覆管5の端部を軟化させ、この状態で弾性体6d側より拡張治具6を枝管2内へ挿入する。
【0020】
そして弾性体6dが本管1内に達したら、回転軸6bを回転させてナット6fを締め上げ、挟着板6cの間で弾性体6dを挟圧することにより、図3に示すように弾性体6dの外径を膨張させる。
これによって加熱により軟化状態にある被覆管5の端部が外側へ順次拡開されて、図4に示すように被覆管5の端部に鍔部5bが形成される。
鍔部5bの形成が完了したら、回転軸6bを逆方向に回転させて弾性体6dを元の形状に復帰させ、この状態で拡張治具6を枝管2内より引き抜いたら、被覆管5内にさらに熱風を送って被覆管5を元の形状にまで膨張させるか、枝管2の外側から枝管2全体を加熱して被覆管5を元の形状にまで膨張させる。
これによって枝管2の内周面に被覆管5の外周面が密着され、枝管2の内周面が被覆管5により被覆された状態になり、また枝管2の内周面と被覆管5の外周面との間に隙間が生じることもない。
【0021】
一方枝管2内面の被覆が完了したら、本管1の再生を実施する。
本管1の再生に当っては、図5に示すように反転用内貼り材7eと、反転用内貼り材7eを反転させる反転手段8及び反転用内貼り材7eを牽引して、反転用内貼り材7eの反転を補助する牽引手段9を使用する。
内貼り材7aは、図6に示すようにポリエステル樹脂繊維糸を織成したチューブ状の芯材7bと、芯材7bの周囲を被覆するポリエチレンやビニール等の樹脂フィルムよりなる2重構造の保護チューブ7dとからなり、芯材7bに2液性エポキシ樹脂よりなる硬化性樹脂液7cを含浸させることにより図7に示す反転用内貼り材7eが形成されるようになっており、反転用内貼り材7e内には予め紐状の索条10が全長に亘って挿入されている。なお保護チューブ7dを2重構造としたのは、一方が破損しても他方が硬化性樹脂液7cの漏出を防止するためである。また芯材7bには不織布を使用してもよい。
また反転手段8は、密閉構造のケース8aと、ケース8a内に設けられた反転用内貼り材7eをコイル状に巻き取る巻き取りリール8bと、反転用内貼り材7eを本管1内に送り出す送り出し管8cと、送り出し管8cに取り付けられた反転用内貼り材固定部材8dと、反転用内貼り材固定部材8dと本管1の端部を接続する弾性体よりなる蛇腹状のガイド管8eと、ケース8a内に圧縮空気を供給するエア供給手段(図示せず)とからなり、牽引手段9は、索条10を巻き取るウインチ9aを有している。
【0022】
次に本管1を再生する方法について説明すると、再生する本管1の下端側(上端側でもよい)に反転手段8と牽引手段9を設置する。
また施工する前段階として、まず保護チューブ7d内に芯材7bを挿入して内貼り材7aを形成する。
次に内貼り材7aの一端側から内貼り材7a内に2液を混合したエポキシ樹脂よりなる硬化性樹脂液7cを注入するが、工事の作業性を考慮して、硬化時間が2〜6時間程度の2液性エポキシ樹脂よりなる硬化性樹脂液液7cを使用するとよい。
内貼り材7a内に硬化性樹脂液7cの注入が完了したら、芯材7bに硬化性樹脂液7cが均一に含浸されるように床面に敷設したゴムシート等の養生シート(図示せず)上に内貼り材7aを延設して、芯材7bを被覆する保護チューブ7dの上からローラ等で加圧し、芯材7bと硬化性樹脂液7cをよく馴染ませることにより、図7に示すように芯材7bに硬化性樹脂液7cを均一に含浸させた被覆層7fを内面に有する反転用内貼り材7eを形成する。
【0023】
その後反転手段8のケース8a内に設けられた巻き取りリール8bに、一端側より反転用内貼り材7eを巻き取ったら、反転手段8の送り出し管8cより反転用内貼り材7eの他端側を引き出して、送り出し管8cに接続された反転用内貼り材固定部材8dの端部に反転用内貼り材7eの他端を適宜手段で気密に固定し、またガイド管8eを再生すべき本管1の下端側端部に、図5に示すように接続する。
このとき予め反転用内貼り材7e内に挿入しておいた索条10の一端を、本管1内を経て本管1の上端側へ引き出し、さらに滑車11を迂回させた後牽引手段9のウインチ9aに端部を取り付けて、索条10を牽引できる状態となるように準備する。
以上のようにして施工の準備が完了したら、エア供給手段により反転手段8のケース8a内に例えば0.7〜1kgf/cm2の圧縮空気を供給し、同時に牽引手段9により索条10の牽引を開始する。
【0024】
ケース8a内に供給された圧縮空気は、図5に示すように送り出し管8cより反転用内貼り材7eの周囲と反転用内貼り材固定部材8dの内周面との間に達し、端部が反転用内貼り材固定部材8dに固定された反転用内貼り材7eは内側と外側が反転して、硬化性樹脂液7cが含浸されて濡れた状態の被覆層7f内面が外側となった状態でガイド管8eより本管1内へ押し出され、反転用貼り材7eの内面が本管1の内面に圧着されると同時に、保護チューブ7dにより被覆された外面が内側になる。
その後圧縮空気と索条10の牽引による反転用内貼り材7eの反転作用も加わって、本管1内面に反転用内貼り材7eが順次密着され、本管1の内面に内貼り管7が形成される。
そして反転用内貼り材7eが本管1より分岐された枝管2に達すると、枝管2の端部に形成された鍔部5bの上から鍔部5bが内貼り管7により被覆され、このとき内貼り管7内の圧力により内貼り管7の一部が図8に示すように枝管2内に半球状に膨張する。
その後さらに内貼り管7による本管1の被覆作業が進行し、本管1より分岐された枝管2が複数ある場合は、前記動作を繰り返しながら本管1内面の被覆を行い、反転用内貼り材7eが本管1の上端に達したところで内貼り管7による本管1内面の被覆を完了する。
【0025】
以上のようにして内貼り管7による本管1内の被覆が完了したら、芯体7aに含浸された硬化性樹脂液7cが硬化するまで2〜6時間待機する。
冬期のように気温が低いため硬化性樹脂液7cの硬化までに長時間を要したり、短時間で硬化性樹脂液7cを硬化させたい場合は、熱風やバーナ等の加熱手段で本管1を加熱する。
そして硬化性樹脂液7cの硬化が完了したら、内貼り管7の内面に密着する保護チューブ7dを剥離しながら取り除き、最後に本管1内の端部からはみ出した反転用内貼り材7eの余剰部分を切除し、また枝管2側からホールソー等の穿孔工具を挿入して、本管1と枝管2の接続部分に形成された半球状の閉塞部7gを切除する。
図9は再生が完了した本管1と枝管2の分岐部分を示すもので、被覆管5の鍔部5bの部分を内貼り管7が覆う2重構造となる上、予め被覆管5の内面に形成した粗面5aにより鍔部5bと内貼り管7が強固に接着しているため、この部分からの漏水を確実に防止できるようになる。
【0026】
一方前記実施の形態では、被覆管5に熱膨張管を使用したが、ゴムや軟質樹脂等の弾性材料により一端側に予め鍔部5bが成形された被覆管5を形成し、この被覆管5を鍔部5b側より枝管2内に挿入して、被覆管5の有する弾性を利用して鍔部5bを本管1内面に密着させ、また被覆管5の外周面を枝管2内面に密着させてから本管1の再生工事を行うようにしてもよい。
また図10及び図11に示す変形例のように、熱膨張管よりなる被覆管5を端部が本管1内に突出しないように枝管2内に挿入し、この状態で本管1の再生工事を行うようにしてもよい。
【0027】
この場合前記実施の形態で使用した圧力のほぼ2倍の2kgf/cm2程度の圧縮空気を本管1内へ供給することにより、枝管2に達した反転用内貼り材7eの一部を枝管2内に大きく突出させるが、このとき突出部が流体圧力により破損するのを防止するため、図10に示すように予め枝管2内にゴム等の弾性体からなるストッパ12を介在させて反転用内貼り材7eの突出範囲を規制する。
その後本管1内を被覆する内貼り管7の硬化性樹脂液7cが硬化するのを待って、まずストッパ12を取り除き、次に枝管2側から挿入した穿孔工具により、枝管2側に大きく突出した内貼り管7の閉塞部7gを切除することにより、図11に示すように枝管2部分の処理を行うもので、内貼り管7と被覆管5との重なり部分2重構造となるため、被覆管5側に鍔部5bを形成しなくとも漏水を確実に防止することができる。
【0028】
なお前記実施の形態では、反転用内貼り材7eを反転させるのに圧縮空気を使用したが、その他の圧力流体を使用してもよく、また反転用内貼り材7eの反転後内貼り管7内に樹脂フィルムよりなる弾性チューブを挿入して、この弾性チューブを圧力流体で膨張させ、膨張した弾性チューブにより内貼り管7を本管1の内面に圧着させることにより、本管1の内面に内貼り管7を確実に密着させるようにしてもよい。
また牽引手段9を使用せずに、索状10を作業員が手で牽引して反転用内貼り材7eの反転を補助するようにしてもよいと共に、被覆管5の端部に鍔部5bを形成するのに、枝管2側から膨張袋を収縮させた状態で挿入し、本管1内部で膨張袋を膨張させることにより、予め軟化させた被覆管5の端部を拡開して、被覆管5の端部に鍔部5bを形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態になる管体の再生方法における錆の除去工程を示す工程図である。
【図2】本発明の実施の形態になる管体の再生方法における被覆管の挿入工程を示す工程図である。
【図3】本発明の実施の形態になる管体の再生方法における被覆管の端末処理工程を示す工程図である。
【図4】本発明の実施の形態になる管体の再生方法における被覆管の端末処理後を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態になる管体の再生方法における内貼り管の反転工程を示す工程図である。
【図6】本発明の実施の形態になる管体の再生方法に使用する内貼り材の断面構造を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態になる管体の再生方法に使用する反転用内貼り材の断面構造を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態になる管体の再生方法における本管と枝管の分岐部付近の被覆工程を示す工程図である。
【図9】本発明の実施の形態になる管体の再生方法により本管と枝管の分岐部付近を被覆した後の断面図である。
【図10】本発明の実施の形態になる管体の再生方法の変形例を示す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態になる管体の再生方法の変形例により本管と枝管の分岐部付近を被覆した状態の説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 本管
2 枝管
3 錆
5 被覆管
5b 鍔部
6 拡張工具
7 内貼り管
7a 内貼り材
7b 芯材
7c 硬化性樹脂液
7e 反転用内貼り材
8 反転手段
9 牽引手段
10 索条
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルや集合住宅等の建造物に配管された管体の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや集合住宅等の建造物には、給排水管や冷暖房の配管等、多数の管体が縦横に張りめぐらされている。これら管体の多くは、鋳鉄管や白ガス管等の鋼管が使用されているが、長期間使用していると内部から錆が発生し、これを放置すると管体の肉厚が徐々に減少して孔が開き、漏水の原因となる。
特に築後30年以上を経過した建造物に配管されている管体の多くは老朽化が進み、何時漏水が起きてもおかしくない状況にある。
また建築物に配管された管体に漏水が発生すると、上水道の場合断水が発生し、また下水道の場合排水ができなくなると同時に、漏れた水が住居部分に漏水して財産等に多大な損失を与えかねないため、漏水が発生する前に対策を講じる必要がある。
このため従来から建造物に配管された給排水管等の管体を再生する方法(工法)が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、織布や不織布よりなる樹脂吸収材に硬化性樹脂液を含浸させたチューブ状のライニング材を再生すべき管体内へ引き込んだら、圧力流体を注入してライニング材を加圧反転させながら、同時に牽引ロープを牽引して、ライニング材により管体の内面を被覆する管のライニング方法が記載されている。
また特許文献2には、管体の一部を切断して、切断面にエポキシ樹脂を含浸させた筒状の布製シートを接続した状態で筒状布製シートを反転させながら管体内へ挿入し、筒状布製シートが管体の内面に付着したら、筒状布製シート内に筒状ビニールシートを挿入してこれを圧力流体(空気)で膨張させて、筒状ビニールシートの膨張圧により筒状布製シートを管体の内面に密着させる排水立て管の更生方法が記載されている。
【特許文献1】特開2002−160295号公報
【特許文献2】特開2006−57643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビルや集合住宅等の建造物に配管された管体の多くは、径の大きい本管と、本管より分岐された径の小さい枝管より構成されており、長期間使用していると、本管のみならず枝管も老朽化して、漏水の原因となる。
このため、本管のみならず枝管の再生も必要となるが、前記特許文献1に記載の管のライニング方法では、本管の再生は可能であるが、本管より分岐された枝管の内面はライニングできないため、枝管の再生は困難である問題がある。
【0005】
一方特許文献2に記載の排水立て管の更正方法では、本管より分岐された枝管がある場合、予め筒状布製シートに枝管部を形成しておき、これを管体内へ反転挿入している。
しかしこの方法では次のような問題がある。
すなわちエポキシ樹脂が含浸された筒状布製シートは伸縮性があり、このため予め枝管部を形成した筒状布製シートを管体内へ反転挿入する際、筒状布製シートが伸縮したり、枝管部の位置が周方向へ回転するため、枝管部を本管より分岐された枝管へ挿入するのは至難である。
また、たとえ筒状布製シートに形成した枝管部が本管より分岐された枝管に達しても、位置がずれている場合、枝管部を強制的に枝管内へ引き込む必要があり、枝管が長い場合、引き込み作業が困難であると共に、たとえ引き込めたとしても枝管部を引っ張った際、本管側の筒状布製シートに捩れが生じ、シワの原因となったり、施工後のライニング層の肉厚に変化が生じ、この部分の耐久性が著しく低下する問題もある。
本発明はかかる問題を改善するためになされたもので、枝管部分の施工が容易な管体の再生方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の管体の再生方法は、建造物に配管された本管の途中から枝管が分岐された管体の再生方法であって、本管及び枝管の内面に発生した錆等を除去する工程と、枝管内に予め成形された被覆管を挿入する工程と、織布または不織布等からなるチューブ状の芯材に硬化性樹脂液を含浸させて反転用内貼り材を形成する工程と、反転用内貼り材の一端を本管の一端側に接続する工程と、本管の一端側から前記本管と反転用内貼り材の間に圧力流体を供給すると同時に、予め反転用内貼り材内に挿入した索条を牽引して反転用内貼り材の内外面を反転させながら本管の内面に反転用内貼り材を密着させて、本管の内面に内貼り管を形成する工程と、本管の内面に内貼り管を形成する際被覆管の本管側端部を内貼り管の一部で被覆する工程とからなる。
【0007】
前記構成により、枝管に挿入した被覆管の本管側端部を、本管の内面を被覆する際に内貼り管が覆うため、枝管部分の施工が容易な上、本管の内面を被覆する内貼り管が被覆管の端部に接着して、本管と枝管の分岐部が2重構造となるため、本管と枝管の分岐部からの漏水を確実に防止することができる。
また枝管を被覆する枝管部を内貼り管に予め設ける必要がないため、前記特許文献2に記載したような枝管部を強制的に枝管内へ引き込む作業が不要となり、これによって本管内面を被覆する内貼り管が捩れてシワの原因となったり、内貼り管の肉厚が部分的に変化することもないので、本管と枝管の分岐部を被覆する被覆層の耐久性及び信頼性を向上させることができる。
【0008】
本発明の管体の再生方法は、被覆管の一端が本管内に突出するよう枝管内に被覆管を挿入した後拡張工具により突出部を拡開して、被覆管の一端部に本管の内面に密着する鍔部を形成した後、本管の内面に内貼り管を形成したものである。
【0009】
前記構成により、内貼り管と被覆管との接触面積が鍔部により増大するため、本管と枝管の分岐部を被覆する被覆部分の防水効果がさらに向上する。
【0010】
本発明の管体の再生方法は、一端部が本管内に突出しないように枝管内に被覆管を挿入し、かつ反転用内貼り材を反転して本管の内面に内貼り管を形成する際、圧力流体により反転用内貼り材の一部を被覆管の一端側に張り出させて被覆管の端部を内貼り管で被覆したものである。
【0011】
前記構成により、本管内において被覆管の端部に鍔部を形成する工程が省略できるため、作業性の向上と施工期間の短縮化が図れる。
【0012】
本発明の管体の再生方法は、被覆管に熱を加えることにより元の形状に膨張する熱膨張管を使用したものである。
【0013】
前記構成により、被覆管を予め枝管の内径より小径に成形しておくことにより、枝管内への挿入が容易となり、また熱を加えることにより膨張して枝管の内面に密着するため、枝管の内周面と被覆管の外周面との間に隙間が生じることがない。
【0014】
本発明の管体の再生方法は、ゴム等の弾性材料により予め一端側に鍔部を成形した被覆管を形成し、かつ被覆管の鍔部側より枝管に挿入して、枝管内を被覆管で覆うと共に、鍔部を本管の内面に密着させた後、本管の内面に内貼り管を形成したものである。
【0015】
前記構成により、本管内において被覆管の端部に鍔部を形成する工程が省略できるため、作業性の向上と施工期間の短縮化が図れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の管体の再生方法によれば、枝管に挿入した被覆管の本管側端部を、本管の内面を被覆する内貼り管が覆った2重構造となるため、本管と枝管の分岐部からの漏水を確実に防止できると共に、本管内面を被覆する内貼り管が捩れてシワの原因となったり、内貼り管の肉厚が部分的に変化することもないので、本管と枝管の分岐部を被覆する被覆層の耐久性及び信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を、図面を参照して詳述する。
図1ないし図8は管体の再生方法の施工手順を示す工程図、図9は再生された管体の枝管付近を示す断面図、図10及び図11は再生方法の変形例を示す説明図である。
本発明により再生しようとする管体は、例えばビルや集合住宅等の建造物に配管された給排水管や冷暖房用配管等であり、何れも長期間使用している間に老朽化し、漏水が発生しそうなものを対象としているが、勿論使用年数が短くとも老朽化を防止する目的で再生工事を行う場合も含まれる。
建造物に配管された管体の多くは、比較的径の大きい本管1と、本管1より分岐された比較的径の小さい枝管2とからなり、何れも鋳鉄管や白ガス管等の鋼管が使用されており、これら管体の接続には、チーズ等の継手(図示せず)が使用されている。
また本管1や枝管2は、長期間使用している間に内面に錆3が発生しているので、管体の再生に当たっては、まずこの錆3を除去する必要がある。
【0018】
図1は本管1内の錆3を除去している状態を示すもので、本管1の開口端側から公知の錆除去手段4を回転させながら挿入し、本管1の内面に発生した錆3を順次除去すると共に、本管1の錆3を除去したら、同様な方法で枝管2内の錆3も除去する。
本管1及び枝管2内面の錆3を除去したら、次に枝管2の開放端側から被覆管5を図2に示すように挿入する。
被覆管5は、外径が枝管2の内径よりやや小径に成形された合成樹脂管で、熱膨張管と称する形状記憶樹脂等を使用している。
すなわち熱膨張管は熱を加える元の形状(寸法)に戻る形状記憶樹脂よりなり、予め外径が枝管2の内径よりやや小径となるように成形されており、熱を加えると外径が枝管2の内径にほぼ等しい元の形状にまで膨張するようになっている。
この熱膨張管よりなる被覆管5を、枝管2の長さに余長分Lを加えた長さに切断し、枝管2内に挿入した際本管1側となる端部の内面(図2の破線で示す部分)を粗面5aとして、後述する内貼り管7との密着性を高める処理を行う。
【0019】
粗面処理が終了したら被覆管5の外周面にエポキシ樹脂等の接着剤を塗布し、かつ熱を加えない状態で粗面5a側から枝管2内へ被覆管5を挿入して、被覆管5の余長部Lが本管1内へ突出したら、次に被覆管5の端末処理を行う。
端末処理とは、被覆管5の余長部Lを熱変形させて端部に鍔部5bを形成するもので、図3に示すような拡張治具6を使用する。
拡張治具6は、ガイド管6a内に回転軸6bが回転自在に挿入されており、ガイド管6aの先端には一対の挟着板6cの間に挟着された筒状の弾性体6dが設けられている。
回転軸5bの先端にはねじ部5eが形成されていて、このねじ部6eは挟着板6cの一方に固着されたナット6fに螺合されている。
前記構成された拡張治具6は、平時は弾性体6dの外径が枝管2の内径よりやや小径となっており、被覆管5の端部を拡張するに当っては、まず被覆管5内に熱風を送って被覆管5を加熱することにより被覆管5全体を軟化させるか、本管1と枝管2の分岐部を外側からバーナ等の加熱手段で加熱して被覆管5の端部を軟化させ、この状態で弾性体6d側より拡張治具6を枝管2内へ挿入する。
【0020】
そして弾性体6dが本管1内に達したら、回転軸6bを回転させてナット6fを締め上げ、挟着板6cの間で弾性体6dを挟圧することにより、図3に示すように弾性体6dの外径を膨張させる。
これによって加熱により軟化状態にある被覆管5の端部が外側へ順次拡開されて、図4に示すように被覆管5の端部に鍔部5bが形成される。
鍔部5bの形成が完了したら、回転軸6bを逆方向に回転させて弾性体6dを元の形状に復帰させ、この状態で拡張治具6を枝管2内より引き抜いたら、被覆管5内にさらに熱風を送って被覆管5を元の形状にまで膨張させるか、枝管2の外側から枝管2全体を加熱して被覆管5を元の形状にまで膨張させる。
これによって枝管2の内周面に被覆管5の外周面が密着され、枝管2の内周面が被覆管5により被覆された状態になり、また枝管2の内周面と被覆管5の外周面との間に隙間が生じることもない。
【0021】
一方枝管2内面の被覆が完了したら、本管1の再生を実施する。
本管1の再生に当っては、図5に示すように反転用内貼り材7eと、反転用内貼り材7eを反転させる反転手段8及び反転用内貼り材7eを牽引して、反転用内貼り材7eの反転を補助する牽引手段9を使用する。
内貼り材7aは、図6に示すようにポリエステル樹脂繊維糸を織成したチューブ状の芯材7bと、芯材7bの周囲を被覆するポリエチレンやビニール等の樹脂フィルムよりなる2重構造の保護チューブ7dとからなり、芯材7bに2液性エポキシ樹脂よりなる硬化性樹脂液7cを含浸させることにより図7に示す反転用内貼り材7eが形成されるようになっており、反転用内貼り材7e内には予め紐状の索条10が全長に亘って挿入されている。なお保護チューブ7dを2重構造としたのは、一方が破損しても他方が硬化性樹脂液7cの漏出を防止するためである。また芯材7bには不織布を使用してもよい。
また反転手段8は、密閉構造のケース8aと、ケース8a内に設けられた反転用内貼り材7eをコイル状に巻き取る巻き取りリール8bと、反転用内貼り材7eを本管1内に送り出す送り出し管8cと、送り出し管8cに取り付けられた反転用内貼り材固定部材8dと、反転用内貼り材固定部材8dと本管1の端部を接続する弾性体よりなる蛇腹状のガイド管8eと、ケース8a内に圧縮空気を供給するエア供給手段(図示せず)とからなり、牽引手段9は、索条10を巻き取るウインチ9aを有している。
【0022】
次に本管1を再生する方法について説明すると、再生する本管1の下端側(上端側でもよい)に反転手段8と牽引手段9を設置する。
また施工する前段階として、まず保護チューブ7d内に芯材7bを挿入して内貼り材7aを形成する。
次に内貼り材7aの一端側から内貼り材7a内に2液を混合したエポキシ樹脂よりなる硬化性樹脂液7cを注入するが、工事の作業性を考慮して、硬化時間が2〜6時間程度の2液性エポキシ樹脂よりなる硬化性樹脂液液7cを使用するとよい。
内貼り材7a内に硬化性樹脂液7cの注入が完了したら、芯材7bに硬化性樹脂液7cが均一に含浸されるように床面に敷設したゴムシート等の養生シート(図示せず)上に内貼り材7aを延設して、芯材7bを被覆する保護チューブ7dの上からローラ等で加圧し、芯材7bと硬化性樹脂液7cをよく馴染ませることにより、図7に示すように芯材7bに硬化性樹脂液7cを均一に含浸させた被覆層7fを内面に有する反転用内貼り材7eを形成する。
【0023】
その後反転手段8のケース8a内に設けられた巻き取りリール8bに、一端側より反転用内貼り材7eを巻き取ったら、反転手段8の送り出し管8cより反転用内貼り材7eの他端側を引き出して、送り出し管8cに接続された反転用内貼り材固定部材8dの端部に反転用内貼り材7eの他端を適宜手段で気密に固定し、またガイド管8eを再生すべき本管1の下端側端部に、図5に示すように接続する。
このとき予め反転用内貼り材7e内に挿入しておいた索条10の一端を、本管1内を経て本管1の上端側へ引き出し、さらに滑車11を迂回させた後牽引手段9のウインチ9aに端部を取り付けて、索条10を牽引できる状態となるように準備する。
以上のようにして施工の準備が完了したら、エア供給手段により反転手段8のケース8a内に例えば0.7〜1kgf/cm2の圧縮空気を供給し、同時に牽引手段9により索条10の牽引を開始する。
【0024】
ケース8a内に供給された圧縮空気は、図5に示すように送り出し管8cより反転用内貼り材7eの周囲と反転用内貼り材固定部材8dの内周面との間に達し、端部が反転用内貼り材固定部材8dに固定された反転用内貼り材7eは内側と外側が反転して、硬化性樹脂液7cが含浸されて濡れた状態の被覆層7f内面が外側となった状態でガイド管8eより本管1内へ押し出され、反転用貼り材7eの内面が本管1の内面に圧着されると同時に、保護チューブ7dにより被覆された外面が内側になる。
その後圧縮空気と索条10の牽引による反転用内貼り材7eの反転作用も加わって、本管1内面に反転用内貼り材7eが順次密着され、本管1の内面に内貼り管7が形成される。
そして反転用内貼り材7eが本管1より分岐された枝管2に達すると、枝管2の端部に形成された鍔部5bの上から鍔部5bが内貼り管7により被覆され、このとき内貼り管7内の圧力により内貼り管7の一部が図8に示すように枝管2内に半球状に膨張する。
その後さらに内貼り管7による本管1の被覆作業が進行し、本管1より分岐された枝管2が複数ある場合は、前記動作を繰り返しながら本管1内面の被覆を行い、反転用内貼り材7eが本管1の上端に達したところで内貼り管7による本管1内面の被覆を完了する。
【0025】
以上のようにして内貼り管7による本管1内の被覆が完了したら、芯体7aに含浸された硬化性樹脂液7cが硬化するまで2〜6時間待機する。
冬期のように気温が低いため硬化性樹脂液7cの硬化までに長時間を要したり、短時間で硬化性樹脂液7cを硬化させたい場合は、熱風やバーナ等の加熱手段で本管1を加熱する。
そして硬化性樹脂液7cの硬化が完了したら、内貼り管7の内面に密着する保護チューブ7dを剥離しながら取り除き、最後に本管1内の端部からはみ出した反転用内貼り材7eの余剰部分を切除し、また枝管2側からホールソー等の穿孔工具を挿入して、本管1と枝管2の接続部分に形成された半球状の閉塞部7gを切除する。
図9は再生が完了した本管1と枝管2の分岐部分を示すもので、被覆管5の鍔部5bの部分を内貼り管7が覆う2重構造となる上、予め被覆管5の内面に形成した粗面5aにより鍔部5bと内貼り管7が強固に接着しているため、この部分からの漏水を確実に防止できるようになる。
【0026】
一方前記実施の形態では、被覆管5に熱膨張管を使用したが、ゴムや軟質樹脂等の弾性材料により一端側に予め鍔部5bが成形された被覆管5を形成し、この被覆管5を鍔部5b側より枝管2内に挿入して、被覆管5の有する弾性を利用して鍔部5bを本管1内面に密着させ、また被覆管5の外周面を枝管2内面に密着させてから本管1の再生工事を行うようにしてもよい。
また図10及び図11に示す変形例のように、熱膨張管よりなる被覆管5を端部が本管1内に突出しないように枝管2内に挿入し、この状態で本管1の再生工事を行うようにしてもよい。
【0027】
この場合前記実施の形態で使用した圧力のほぼ2倍の2kgf/cm2程度の圧縮空気を本管1内へ供給することにより、枝管2に達した反転用内貼り材7eの一部を枝管2内に大きく突出させるが、このとき突出部が流体圧力により破損するのを防止するため、図10に示すように予め枝管2内にゴム等の弾性体からなるストッパ12を介在させて反転用内貼り材7eの突出範囲を規制する。
その後本管1内を被覆する内貼り管7の硬化性樹脂液7cが硬化するのを待って、まずストッパ12を取り除き、次に枝管2側から挿入した穿孔工具により、枝管2側に大きく突出した内貼り管7の閉塞部7gを切除することにより、図11に示すように枝管2部分の処理を行うもので、内貼り管7と被覆管5との重なり部分2重構造となるため、被覆管5側に鍔部5bを形成しなくとも漏水を確実に防止することができる。
【0028】
なお前記実施の形態では、反転用内貼り材7eを反転させるのに圧縮空気を使用したが、その他の圧力流体を使用してもよく、また反転用内貼り材7eの反転後内貼り管7内に樹脂フィルムよりなる弾性チューブを挿入して、この弾性チューブを圧力流体で膨張させ、膨張した弾性チューブにより内貼り管7を本管1の内面に圧着させることにより、本管1の内面に内貼り管7を確実に密着させるようにしてもよい。
また牽引手段9を使用せずに、索状10を作業員が手で牽引して反転用内貼り材7eの反転を補助するようにしてもよいと共に、被覆管5の端部に鍔部5bを形成するのに、枝管2側から膨張袋を収縮させた状態で挿入し、本管1内部で膨張袋を膨張させることにより、予め軟化させた被覆管5の端部を拡開して、被覆管5の端部に鍔部5bを形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態になる管体の再生方法における錆の除去工程を示す工程図である。
【図2】本発明の実施の形態になる管体の再生方法における被覆管の挿入工程を示す工程図である。
【図3】本発明の実施の形態になる管体の再生方法における被覆管の端末処理工程を示す工程図である。
【図4】本発明の実施の形態になる管体の再生方法における被覆管の端末処理後を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態になる管体の再生方法における内貼り管の反転工程を示す工程図である。
【図6】本発明の実施の形態になる管体の再生方法に使用する内貼り材の断面構造を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態になる管体の再生方法に使用する反転用内貼り材の断面構造を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態になる管体の再生方法における本管と枝管の分岐部付近の被覆工程を示す工程図である。
【図9】本発明の実施の形態になる管体の再生方法により本管と枝管の分岐部付近を被覆した後の断面図である。
【図10】本発明の実施の形態になる管体の再生方法の変形例を示す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態になる管体の再生方法の変形例により本管と枝管の分岐部付近を被覆した状態の説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 本管
2 枝管
3 錆
5 被覆管
5b 鍔部
6 拡張工具
7 内貼り管
7a 内貼り材
7b 芯材
7c 硬化性樹脂液
7e 反転用内貼り材
8 反転手段
9 牽引手段
10 索条
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物に配管された本管の途中から枝管が分岐された管体の再生方法であって、前記本管及び前記枝管の内面に発生した錆等を除去する工程と、前記枝管内に予め成形された被覆管を挿入する工程と、織布または不織布等からなるチューブ状の芯材に硬化性樹脂液を含浸させて反転用内貼り材を形成する工程と、前記反転用内貼り材の一端を前記本管の一端側に接続する工程と、前記本管の一端側から前記本管と前記反転用内貼り材の間に圧力流体を供給すると同時に、予め前記反転用内貼り材内に挿入した索条を牽引して前記反転用内貼り材の内外面を反転させながら前記本管の内面に前記反転用内貼り材を密着させて、前記本管の内面に内貼り管を形成する工程と、前記本管の内面に前記内貼り管を形成する際前記被覆管の前記本管側端部を前記内貼り管の一部で被覆する工程とを具備することを特徴とする管体の再生方法。
【請求項2】
前記被覆管の一端が前記本管内に突出するよう前記枝管内に前記被覆管を挿入した後拡張工具により前記突出部を拡開して、前記被覆管の一端部に前記本管の内面に密着する鍔部を形成した後、前記本管の内面に前記内貼り管を形成してなる請求項1に記載の管体の再生方法。
【請求項3】
一端部が前記本管内に突出しないように前記枝管内に前記被覆管を挿入し、かつ前記反転用内貼り材を反転して前記本管の内面に前記内貼り管を形成する際、圧力流体により前記反転用内貼り材の一部を前記被覆管の一端側に張り出させて前記被覆管の端部を前記内貼り管で被覆してなる請求項1に記載の管体の再生方法。
【請求項4】
前記被覆管に、熱を加えることにより元の形状に膨張する熱膨張管を使用してなる請求項1ないし3の何れかに記載の管体の再生方法。
【請求項5】
ゴム等の弾性材料により予め一端側に鍔部を成形した被覆管を形成し、かつ前記被覆管の前記鍔部側より前記枝管に挿入して、前記枝管内を前記被覆管で覆うと共に、前記鍔部を前記本管の内面に密着させた後、前記本管の内面に前記内貼り管を形成してなる請求項1に記載の管体の再生方法。
【請求項1】
建造物に配管された本管の途中から枝管が分岐された管体の再生方法であって、前記本管及び前記枝管の内面に発生した錆等を除去する工程と、前記枝管内に予め成形された被覆管を挿入する工程と、織布または不織布等からなるチューブ状の芯材に硬化性樹脂液を含浸させて反転用内貼り材を形成する工程と、前記反転用内貼り材の一端を前記本管の一端側に接続する工程と、前記本管の一端側から前記本管と前記反転用内貼り材の間に圧力流体を供給すると同時に、予め前記反転用内貼り材内に挿入した索条を牽引して前記反転用内貼り材の内外面を反転させながら前記本管の内面に前記反転用内貼り材を密着させて、前記本管の内面に内貼り管を形成する工程と、前記本管の内面に前記内貼り管を形成する際前記被覆管の前記本管側端部を前記内貼り管の一部で被覆する工程とを具備することを特徴とする管体の再生方法。
【請求項2】
前記被覆管の一端が前記本管内に突出するよう前記枝管内に前記被覆管を挿入した後拡張工具により前記突出部を拡開して、前記被覆管の一端部に前記本管の内面に密着する鍔部を形成した後、前記本管の内面に前記内貼り管を形成してなる請求項1に記載の管体の再生方法。
【請求項3】
一端部が前記本管内に突出しないように前記枝管内に前記被覆管を挿入し、かつ前記反転用内貼り材を反転して前記本管の内面に前記内貼り管を形成する際、圧力流体により前記反転用内貼り材の一部を前記被覆管の一端側に張り出させて前記被覆管の端部を前記内貼り管で被覆してなる請求項1に記載の管体の再生方法。
【請求項4】
前記被覆管に、熱を加えることにより元の形状に膨張する熱膨張管を使用してなる請求項1ないし3の何れかに記載の管体の再生方法。
【請求項5】
ゴム等の弾性材料により予め一端側に鍔部を成形した被覆管を形成し、かつ前記被覆管の前記鍔部側より前記枝管に挿入して、前記枝管内を前記被覆管で覆うと共に、前記鍔部を前記本管の内面に密着させた後、前記本管の内面に前記内貼り管を形成してなる請求項1に記載の管体の再生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−87442(P2008−87442A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274081(P2006−274081)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(598007274)ジャパン・エンヂニアリング株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(598007274)ジャパン・エンヂニアリング株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]