説明

管内の詰まり状態判定装置及び方法

【課題】 管内を気体と液体とが交互に流れる状況にある場合に、管内の詰まり状態を簡易な方法で検出できるようにする。
【解決手段】 光を透過する材質からなる管1内での流体の詰まり状態を判定するために、管1を挟んで発光部2と受光部3とが対向配置される。管1内を気体Gと液体Lとが交互に流れる状況にある場合に、発光部2により光を照射すると、気体Gと液体Lとの屈折率の相違により受光部3により受光される受光強度が異なるので、その受光強度に応じた信号に基づいて管内の詰まり状態を判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置における分析後に、分析装置の洗浄を行い、残った試薬や洗浄液を、管を通して廃棄する際の管内の詰まり状態を判定するのに好適な管内の詰まり状態判定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液から分離した血清(試料)の分析、検査を行う分析装置では、試薬を用いた分析後に、装置の各部位(例えば分注ノズルや容器類)に残った試薬を廃棄するとともに、それら各部位に洗浄液を供給して洗浄し、その洗浄液を廃棄することが行われる。廃棄処理において、残った試薬や洗浄液は、ポンプにより吸引されて管(例えば可撓性を有するチューブ)を介して廃棄液タンクまで導かれる。このように比較的少量の液体を管を介して吸引することを繰り返すような状況では、管内には気体(空気)と液体(試薬や洗浄液)とが交互に流れうる。しかしながら、試薬や洗浄液が管内に留まって詰まりが発生すると、管内における気体及び液体の流れが滞ってしまい、液体の吸引や供給がスムーズに行われなくなる。
【0003】
流路内の詰まりを検出する手法として、例えば流量を直接測定し、流路内の流量変化を捉える方式がある。しかしながら、一般的に流量センサは高価であり、また、市販されている流量センサは流体のみ或いは気体のみが測定可能であることが多く、気液混合状態で流れる流路内の詰まりを検出することは難しいという問題がある。
【0004】
また、流路内の圧力変化を捉える方式もあり、この場合は気液混合状態で流れる流路内の詰まりを検出することも可能であるが、配管系が複雑になるとともに、やはり圧力センサが高価であるという問題がある。
【0005】
さらに、特許文献1には、流路内を通過する複数の流体(空気、試料、及び洗浄液)の吸光度の違いを利用して、検知部において光を照射して吸光度の高い特定液体(試料)を検出する流路内特定流体検出装置が開示されている。そして、ノズルが特定液体(試料)を吸引してから一定時間を経ても検知部に達しないときは、流路の詰まり等が生じたものと判断するようになっている。
【0006】
同様に、特許文献2には、流路を流れる血液サンプルはキャリア液(純水)より光吸収性が大であることを利用して、フォトカプラを用いて光吸収量の変化から血液サンプルの存在を検知する液体試料の流れ分析方法が開示されている。そして、所定時間の間、ポンプを作動させてもフォトカプラの位置まで血液サンプルが到達しない場合には、詰まりが生じたものと判定するようになっている。
【0007】
【特許文献1】実開平5−50349号公報
【特許文献2】特公平7−9416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に開示されているように吸引を開始してから検出位置に特定液体や血液サンプルが達するまでの時間を計測して詰まりを検出する場合、特定液体や血液サンプルが吸引された時点を特定しなければならず、そのための装置構成が必要となる。特に吸引開始時でなく、吸引開始後に詰まりを判定するためには、検出位置に到達した特定液体や血液サンプルがいつ吸引されたものであるかを特定しなければならず、信頼性に劣ってしまう。
【0009】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、管内を気体と液体とが交互に流れる状況にある場合に、管内の詰まり状態を簡易な方法で検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の管内の詰まり状態判定装置は、試薬を用いて試料の分析を行う分析装置にて、残った試薬、各部位の洗浄に使用された水や洗浄液をポンプにより吸引し、光を透過する材質からなる管を介して廃棄することにより上記管内を気体と液体とが交互に流れうる状況にある場合に、上記管内の詰まり状態を判定する管内の詰まり状態判定装置であって、上記管を挟んで発光手段と受光手段とが対向配置され、上記発光手段により照射される光のうち上記管内を透過する光を上記受光手段により受光して、上記受光手段により得られる受光強度に応じた信号に基づいて上記管内の詰まり状態を判定する構成にした点に特徴を有する。この場合に、上記受光手段から出力される受光強度に応じた信号を交流増幅する交流増幅手段と、上記交流増幅手段の出力信号と上閾値及び下閾値とを比較して、それら閾値のうちいずれか一方を超えた場合に信号を出力する比較手段と、上記比較手段から一定時間内に出力される信号のカウント値に基づいて上記管内の詰まり状態を判定する判定手段とを備えてもよい。さらに、上記判定手段は、上記管内が詰まり状態と判定した場合に、上記カウント値に基づいて、更に詰まり状態の度合いを判定するようにしてもよい。また、上記発光手段は、光源と、上記光源と上記管との間に配置されたスリット部材とにより構成され、また、上記受光手段は、受光素子と、上記受光素子と上記管との間に配置されたスリット部材とにより構成されるようにしてもよい。
本発明の管内の詰まり状態判定方法は、試薬を用いて試料の分析を行う分析装置にて、残った試薬、各部位の洗浄に使用された水や洗浄液をポンプにより吸引し、光を透過する材質からなる管を介して廃棄することにより上記管内を気体と液体とが交互に流れうる状況にある場合に、上記管内の詰まり状態を判定する管内の詰まり状態判定方法であって、上記管を挟んで対向配置された発光手段と受光手段とを用いて、上記発光手段により照射される光のうち上記管内を透過する光を上記受光手段により受光して、上記受光手段により得られる受光強度に応じた信号に基づいて上記管内の詰まり状態を判定する点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光を透過する材質からなる管を挟んで発光手段と受光手段とを対向配置し、気体と液体との屈折率の相違により変化する受光強度に基づいて管内の詰まり状態を判定するようにしたので、管内を気体と液体とが交互に流れる状況にある場合に、管内の詰まり状態を簡易な方法で検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。図1に、本発明を適用した管内の詰まり状態判定装置の概略構成を示す。管内の詰まり状態判定装置は、光を透過する材質(透明な高分子化合物やガラス等)からなる管(例えば可撓性を有するチューブ)1内を気体Gと液体Lとが交互に流れる状況にある場合に、その管1内の詰まり状態を判定し、例えば詰まりが生じていないかを判定するものである。
【0013】
まず、図8を参照して、本発明を適用した管内の詰まり状態判定装置が使用される分析装置について説明する。図8に示す分析装置は、試料を反応セルに分注して試薬と反応させる反応処理と、反応後に反応セルから残液を吸引し、更に反応セル及びノズル等を洗浄する洗浄処理とが可能である。
【0014】
周方向に沿って反応セルが並べられたテーブル801まわりには、試料を各反応セルに分注するための分注ノズル802と、各反応セル内の試料を攪拌するためのセル攪拌器803と、各反応セルを洗浄するための洗浄ノズル804とが配置される。
【0015】
また、テーブル801まわりには、容器状の形状を有し、分注ノズル802又はセル攪拌器803が挿入された状態でこれらを洗浄する洗浄器805a、805bが配設される。図8の分析装置では、洗浄器805aが分注ノズル802に、洗浄器805bがセル攪拌器803にそれぞれ対応して設けられている。洗浄器805a、805bは、その内部に精製水又は洗浄液が充填された状態で、分注ノズル802又はセル攪拌器803が挿入されることで、これらの外面を洗浄することができる。
【0016】
さらに、分析装置には、精製水が充填された精製水タンク806、洗浄液(洗剤等)が充填された洗浄液タンク807、反応後の残液等の廃液を貯えるための廃液用タンク808、809が設けられる。
【0017】
精製水タンク806は、ポンプ810aが配設された配管810を介して分注ノズル802、洗浄ノズル804、洗浄器805a、805bに接続する。なお、配管810は、後述する三方弁816の位置で配管810b、810cに分岐している。配管810bは分注ノズル802、洗浄器805a、805bに接続し、配管810cは洗浄ノズル804に接続している。三方弁810bは、ポンプ810aの駆動によって、精製水は精製水タンク806から分注ノズル802、洗浄ノズル804、及び各洗浄器805a、805bに供給される。
【0018】
また、洗浄液タンク807は、ポンプ811aが配設された配管811を介して洗浄ノズル804、洗浄器805a、805bに接続する。ポンプ811aの駆動によって、洗浄液は洗浄器807から洗浄ノズル804及び各洗浄器805a、805bに供給される。
【0019】
また、廃液用タンク808、809は、ポンプ812a、813aが配設された配管812、813を介して洗浄ノズル804、各洗浄器805a、805bに接続する。ポンプ812a、813aの駆動によって、反応セル内の廃液は洗浄ノズル804から吸引され廃液用タンク808、809に廃棄され、洗浄器805a、805bに溜まった廃液は吸引されて廃液用タンク808に廃棄される。
【0020】
また、分析装置には、三方弁815が、シリンダ814、分注ノズル802、及び配管810をつなぐ形で設けられている。三方弁815は、ポンプ810aで吸い上げられた精製水について、シリンダ814、分注ノズル802、及び配管810の間で精製水の供給先を切り替えて分注ノズル802による分注処理及び洗浄処理を実現するものである。すなわち、三方弁815は、配管810とシリンダ814とを直結するように切り替えることで精製水をシリンダ814に注入でき、シリンダ814に精製水が注入された状態でシリンダ814と分注ノズル802とを直結するように切り替えることで精製水の水圧による分注動作(試料の吸引・吐出動作)を行わせることができる。また、配管810と分注ノズル802とを直結するように切り替えることで、精製水を分注ノズル802から排出させて分注ノズル802内部の洗浄を行わせることができる。分注ノズル802内部の洗浄の際には、分注ノズル802は予め洗浄器805aに挿入しておき、洗浄液を洗浄器805aに排出する。
【0021】
また、配管810における分注ノズル802と洗浄ノズル804との分岐点にも三方弁816が設けられている。三方弁816は、ポンプ810aで吸引した精製水を分注ノズル802又は洗浄ノズル804のいずれかに供給するように経路を切り替えることができる。分注ノズル802では、精製水は分注処理及び洗浄処理の両方の目的に用いられるが、分注処理のために精製水をシリンダ814に供給する際に、洗浄処理に用いられる洗浄ノズル804にも同時に精製水が供給されると、シリンダ814への精製水の流入量が減少したり、洗浄ノズル804から精製水が流出したりして分注処理に支障が出る。このため、精製水の供給経路をいずれか一つに切り替える目的で三方弁816が設けられている。
【0022】
また、配管810における分注ノズル802と洗浄器805aとの分岐点にも三方弁817が設けられ、分注ノズル802と洗浄器805bとの分岐点にも三方弁818が設けられている。三方弁817、818は、ポンプ810aで吸引した精製水を分注ノズル802又は洗浄器805a、805bのいずれかに供給するように経路を切り替えることができる。三方弁817、818も、三方弁816と同様の理由により、各分岐点において精製水の供給経路をいずれか一つに切り替える目的で設けられている。
【0023】
三方弁815〜818による精製水の供給経路の切り替え動作について、処理別に説明する。なお、三方弁815〜818の切り替え動作は、図示しない弁制御部によって制御される。分注ノズル802による分注処理の場合、まず三方弁816において、ポンプ810a、分注ノズル802側の配管810bを直結するように弁が切り替わり、ポンプ810aの駆動によって分注ノズル802へ精製水が供給される。この際、三方弁818、817については予め、分注ノズル802側に精製水が供給されるよう弁を切り替えておく。供給された精製水が三方弁815に到達すると、三方弁815は、まずシリンダ814と配管810bとを直結するように弁が切り替わり、これによりシリンダ814に精製水が注入される。分注処理に必要な量の精製水が注入されると、三方弁815はシリンダ814と分注ノズル802とを直結するように弁が切り替わって精製水の注入が停止され、更にポンプ810aが停止されると、配管810bからの精製水の供給を終了する。以後、分注ノズル802は、シリンダ814のピストン動作によって、精製水の水圧を利用した分注処理が可能となる。
【0024】
分注ノズル802による洗浄処理の場合、三方弁816、817、818の切り替え動作は、上述した分注処理の場合と同様である。ポンプ810aにより精製水が三方弁815に到達すると、三方弁815は、配管810と分注ノズル802とを接続するように弁が切り替わる。これにより、分注ノズル802から精製水が排出され、分注ノズル802の内部の洗浄が行われる。
【0025】
洗浄ノズル804による洗浄処理の場合は、三方弁816において、ポンプ810aと、洗浄ノズル804側の配管810cを接続するように弁が切り替わり、ポンプ810aの駆動によって洗浄ノズル804へ精製水が排出され、反応セルの洗浄が可能となる。
【0026】
洗浄器805a、805bへの精製水の供給の場合、まず三方弁816によって、ポンプ810aと、分注ノズル802側の配管810bとを直結するように弁が切り替わり、ポンプ810aの駆動により分注ノズル802側へ精製水が供給される。この状態で三方弁817において洗浄器805aと配管810bとを直結するように弁が切り替わると、洗浄器805a内に精製水が供給され、次に三方弁818において洗浄器805bと配管810bとを接続するように弁が切り替わると、精製水は洗浄器805bに供給される。
【0027】
なお、上述した各処理において、三方弁815〜818は、切り替えの際に弁の開放度合いを調整して、精製水の流入量を調整するようにしてもよい。
【0028】
また、図8では図示を省略するが、洗浄器805a、805bの開口部近傍に、廃液用タンク808又は809に廃液を排出させるためにポンプが配設された配管を接続するようにしてもよい。このような構成により、洗浄器805a、805bから廃液が溢れ出しそうな状況において、ポンプを駆動させて当該配管を介して廃液を吸引し廃液用タンク808又は809に廃棄でき、洗浄器805a、805bから廃液が溢れ出すことによる汚染を防止することができる。
【0029】
次に、図8に示した分析装置における洗浄処理の動作について説明する。図8の分析装置では、反応セルがノンディスポーザブル(セミディスポーザブル)となっており、反応セルに反応処理後の残液等が残っていると、次回の反応処理に影響を及ぼすおそれがあるため、各反応セルを洗浄することが必要である。同様に、分注ノズル802がノンディスポーザブル(セミディスポーザブル)である場合も、汚染防止のため洗浄することが必要である。セル攪拌器803においても同様である。
【0030】
そこで、各反応セルでの反応処理過程又は反応処理後に洗浄処理を行う。すなわち、洗浄ノズル804を反応セル内に挿入し、ポンプ812a、813aを駆動することにより反応セル内の廃液を吸引して、廃液用タンク808、809に廃棄する。そして、ポンプ810a、811aを駆動することにより、洗浄ノズル804から反応セル内に洗浄液や精製水を供給し(吐出)し、更にポンプ812a、813aを駆動してそれを吸引して廃液用タンク808、809に廃棄することを繰り返して、反応セルを洗浄する。なお、洗浄液により洗浄を行う場合は、最後に精製水の吐出/吸引を繰り返して、反応セル内をゆすぐ。
【0031】
また、洗浄器805a、805bに対し、ポンプ810aを駆動することにより精製水が供給され、次にポンプ811aを駆動することにより洗浄液が供給され、これらの混合液に分注ノズル802及びセル攪拌器803を挿入してこれらの外面を洗浄する。また、分注ノズル802については、洗浄器805aに挿入された状態で、ポンプ810aを駆動して精製水を分注ノズル802に供給して排出させ、内面を洗浄する。そして、ポンプ812a、813aを駆動することにより洗浄器805a、805b内の洗浄後の液体(廃液)を吸引して、廃液用タンク808に廃棄する。
【0032】
以上述べた洗浄処理を行うに際して、例えば配管812、813内のゴミの付着、洗浄液による泡の滞留、ポンプ812a、813aの吸引能力の低下等により、廃液用タンク808、809への流れが滞ると、反応セルや洗浄器805a、805bから洗浄液等が溢れ出て、汚染が発生することにもなりかねない。また、吸引すべき洗浄液が反応セル内に残る場合もあり、分析結果に悪影響を及ぼすおそれもある。したがって、配管812、813内における流体の進行状況を監視して、廃液用タンク808、809への流れが滞りなくスムーズであることを確認する必要がある。そこで、図8に示すように、配管812、813に、本発明を適用した管内の詰まり状態判定装置100を配置するようにしている。また、詰まり状態判定装置100は、後述する洗浄処理の停止制御のため分析装置におけるポンプ812a、813aの駆動制御部(不図示)と接続している。
【0033】
ところで、配管812、813(以下、「管1」と称する)による廃液用タンクへの流れは、比較的少量の廃液を吸引することを繰り返すような状況となるため、図1に示すように、管1内を気体G(空気)と液体L(残液や洗浄液等)とが交互に流れる状況となる。
【0034】
本実施形態の管内の詰まり状態判定装置は、上述したように配管内を気体Gと液体Lとが交互に流れる状況にある場合に、その管1内の詰まり状態を判定するためのものであり、図1に示すように、管1を挟んで発光部2と受光部3とが対向配置される。
【0035】
発光部2は、例えば可視光を照射する汎用のLEDからなる光源2aと、光源2aと管1との間に配置されたスリット部材2bとにより構成される。また、受光部3は、例えば受光強度に応じた電気信号を発生するフォトトランジスタからなる受光素子3aと、受光素子3aと管1との間に配置されたスリット部材3bとにより構成される。
【0036】
図2に示すように、スリット部材2b、3bは、長さlと幅hの比が大きい矩形状のスリット21、31を有するものであり、長さl方向と管1の軸線とが平面視において直交するように配置される。管1を挟んで対向配置されたスリット21とスリット31とは、光源2aから照射される光を絞るとともに外部光が受光素子3aで受光されないようにし、管1の所定の横断面位置(検出位置)を光が透過するように光路4(図1)を形成する。
【0037】
管1内の詰まり状態を判定するに際して、図3に示すように、発光部2により光5を照射すると、光5が管1の外周面に入射して内周面1aに達する。
【0038】
ここで、液体Lの屈折率は管1自体の屈折率に近い値をとる(例えば水の屈折率は1.33程度であるのに対して、管1の材質として用いられる樹脂の屈折率は1.5程度)。したがって、検出位置を液体Lが流れている場合、図3に示すように、管1から液体Lに光5が入射するときに集光し、光5の多くは受光部3により受光される。
【0039】
それに対して、気体Gの屈折率は管1自体の屈折率と大きく異なる(空気の屈折率はほぼ1.0程度であるのに対して、管1の材質として用いられる樹脂の屈折率は1.5程度)。したがって、検出位置を気体Gが流れている場合、管1から気体G又は気体Gから管1に光5が入射するときに液体Lが流れているときと比べて大きく屈折する。また、屈折率の差から反射率も高くなるため、光5の大部分が進行方向を変えて受光部3に向かわなくなり、受光部3による受光強度は小さくなる。
【0040】
すなわち、図4に示すように、検出位置を液体L(L1〜L3)が流れている場合は、受光部3による受光強度(透過光量)は比較的大きくなり、検出位置を気体G(G1〜G3)が流れている場合は、受光部3での受光強度(透過光量)は比較的小さくなる。なお、受光部3の受光素子3aからは、受光強度に応じた電気信号が出力される。
【0041】
更に、図4(a)に示すように、管1内では液体Lと気体Gとの界面にてメニスカス6が形成される。検出位置にメニスカス6がある場合、光はメニスカス6で反射、散乱してしまい、受光強度(透過光量)が著しく小さくなり、図4(b)に示すように受光素子3aからの電気信号の波形にはピークpが現れる。
【0042】
以上の原理に基づいて管1内の詰まり状態を判定するのであるが、図1に示すように、受光素子3aにはアンプ(交流増幅器)7が接続する。交流増幅器7は、受光素子3aから出力される受光強度に応じた電気信号(図5(b))を交流増幅するものであり、これにより、図5(c)に示すように、交流信号のみが増幅された出力信号が得られる。
【0043】
交流増幅器7には2つのコンパレータA8、コンパレータB9が接続する。コンパレータA8では、交流増幅器7の出力信号の基準レベルより高い上閾値が設定されており、その上閾値と交流増幅器7の出力信号とを比較して、図5(d)に示すように、上閾値を超える場合だけパルスを出力する。同様に、コンパレータB9では、交流増幅器7の出力信号の基準レベルより低い下閾値が設定されており、その下閾値と交流増幅器7の出力信号とを比較して、図5(e)に示すように、下閾値を超える場合だけパルスを出力する。
【0044】
コンパレータA8、コンパレータB9にはOR回路10が接続する。OR回路10は、2つのコンパレータA8、コンパレータB9のうちいずれか1つから入力があればその信号を出力するものであり、これにより、図5(f)に示すように、気体Gと液体Lとの界面ごとにパルス列(2つのパルスにより構成される)信号Pが得られる。
【0045】
カウンタ11では、OR回路10からの出力信号に現れる信号Pをカウントする。そして、詰まり判定部12では、カウンタ11によるカウント数に基づいて管1内に詰まりが生じているか否かを判定する。つまり、図1の装置は、管1内の気体Gと液体Lとの界面における受光強度の変化をパルスで表わし、そのパルスのカウント数に基づいて管1内の詰まり状態を判定するものである。
【0046】
具体的にいえば、図5に示すように管1内を気体Gと液体Lとが交互に滞りなく流れる状況であれば、信号P間の時間間隔にはばらつきはあるものの、信号Pが順次カウントされるので、例えば一定時間内でのカウント数が予め設定された数(設定数)より多ければ、管1内の流れがスムーズであると判定する。
【0047】
それに対して、詰まりが生じて管1内の流れが滞ると、信号Pがカウントされる時間間隔は長くなる。また、管1内の流れが滞ると、図6(a)に示すように、受光素子3aから出力される電気信号の変化が緩慢なものとなるため、交流増幅器7からの出力信号が上閾値や下閾値を超えなくなり(図6(b))、コンパレータA8、コンパレータB9及びOR回路10を介して得られるパルスが少なくなったり、まったくなかったりする(図6(c)〜6(e))。したがって、一定時間内でのカウント数が設定数より少なければ、管1内に詰まりが生じている(詰まりかけている)と判定することができる。
【0048】
また、信号Pと次の信号Pとの時間間隔を記録していき、例えばある時点より前の信号P群間での時間間隔に比べて、後の信号P群間の時間間隔が長くなったような場合には、管1内の流れが滞りはじめたと判定するようにしてもよい。
【0049】
詰まり判定部12は、管1が詰まり状態と判定すると、表示部13に所定の通知を行い、更に洗浄処理の停止制御を行う。図1では、詰まり状態を通知する手段として表示部13を設けているが、他の通知手段(例えば警告音を発するブザー)としてもよい。
【0050】
図7は、本実施形態の管内の詰まり状態判定装置での処理動作を示すフローチャートである。洗浄処理を行っているときに(ステップS701)、詰まり判定部12は、既述したようにコンパレータA8、コンパレータB9及びOR回路10を介して得られる信号の一定時間内でのカウント数と設定数とを比較することにより詰まり判定を行い(ステップS702)、カウント数が設定値以上となり、詰まりが生じていないと判定した場合、ステップS701に戻って洗浄処理を続ける。
【0051】
それに対して、カウント数が設定値未満となり、詰まりが生じていると判定した場合は、ステップS703に移行して、詰まりの度合を判定する。例えば、パルスのカウント数が予め設定された閾値(設定数よりも小さな数値)よりも少なければ、完全詰まりが生じていると判定し、この場合は、分析装置の洗浄処理を直ちに停止し(ステップS704)、表示部13に異常の発生を表示することにより部品(例えば管自体)の交換要求を行う(ステップS705)。ステップS704において、詰まり判定部12は、同時にポンプ812a又は813aの駆動制御部を停止させる制御信号を出力する。一方、パルスのカウント数が閾値よりも多ければ、不完全詰まりが生じていると判定し、表示部13に異常の発生を表示することにより部品(例えば管自体)の交換要求を行う(ステップS706)。
【0052】
また、管1内において気体G及び液体Lのうちいずれか一方が長期間流れ続け、気体Gと液体Lとの替わる頻度が少ない場合には、気体Gと液体Lとの界面が受光部3のスリット31を通過するインターバルが長くなる。この場合、気体G及び液体Lが実際には滞りなく流れているにもかかわらず、カウント数が設定値を下回り、詰まり状態と誤って判定されるおそれがある。
【0053】
この場合、図1に示す詰まり判定部12において、パルスのカウント値の他に、コンパレータA8及びコンパレータB9から出力されるパルスの時間間隔を監視し、パルスのカウント数と総合して詰まり状態を判定することで、誤判定を防止することができる。
【0054】
図5(c)に示すように、管1内を気体Gと液体Lとが滞りなく流れる場合には、交流増幅器7の出力信号は一波形でレベルの上閾値及び下閾値を超えるため、コンパレータA8及びコンパレータB9からそれぞれパルスが出力される。一方、図6に示すように、管1内で詰まりが発生して流れが滞る場合には、交流増幅器7の出力信号は変化が緩慢となり、上閾値又は下閾値を超える頻度が減少し、パルスの発生が少なくなるか、まったくなくなる。
【0055】
すなわち、両コンパレータA、Bから出力されるパルスの時間間隔が極めて短い場合には、交流増幅器7の出力信号の一波形に基づいてこれらのパルスが生成されていると判断でき、気体G及び液体Lが滞りなく流れているものとみなすことができる。この現象は界面が受光部3のスリット31を通過するインターバルには影響しないので、この現象を利用して詰まり状態の誤判定を回避することができる。両コンパレータA、Bからのパルス時間間隔の長短の判定については、例えば詰まり判定部12において当該間隔の閾値を予め設定しておき、実際の時間間隔との比較によって判定する方法が考えられる。
【0056】
以上述べたように、本発明によれば、流体にセンサ類を直接接触させることなく、安価で簡易な装置構成により管1内の詰まりを検出することができる。また、検出位置にて順次得られる信号に基づいて詰まり状態を判定するようにしたので、吸引時点を特定する必要がなく、管内の詰まり状態を簡易に検出することができる。
【0057】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、本発明は実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。例えば、上記実施形態では図5で説明したようにパルスを得て詰まり状態を判定しているが、図4(b)に示すようなセンサ出力そのものから透過光量の大きい部分(液体層)を特定していき、透過光量の大きい部分が順次特定される場合には管1内の流れがスムーズであると判定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明を適用した管内の詰まり状態判定装置の概略構成を示す図である。
【図2】発光部及び受光部に含まれるスリット部材を示す平面図である。
【図3】検出位置において管内に液体がある場合の光の屈折の状態を示す図である。
【図4】管内の様子とセンサ出力との関係を説明するための図である。
【図5】管内の様子とセンサ出力、アンプ出力、コンパレータ出力、OR回路の出力との関係を説明するための図である。
【図6】流れが滞ったときのセンサ出力、アンプ出力、コンパレータ出力、OR回路の出力との関係を説明するための図である。
【図7】本実施形態の管内の詰まり状態判定装置での処理動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明を適用した管内の詰まり状態判定装置が使用される分析装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 管
2 発光部
2a 光源
2b スリット部材
3 受光部
3a 受光素子
3b スリット部材
4 光路
5 光
6 メニスカス
7 交流増幅器
8、9 コンパレータ
10 OR回路
11 カウンタ
12 詰まり判定部
13 表示部
21、31 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を用いて試料の分析を行う分析装置にて、残った試薬、各部位の洗浄に使用された水や洗浄液をポンプにより吸引し、光を透過する材質からなる管を介して廃棄することにより上記管内を気体と液体とが交互に流れうる状況にある場合に、上記管内の詰まり状態を判定する管内の詰まり状態判定装置であって、
上記管を挟んで発光手段と受光手段とが対向配置され、上記発光手段により照射される光のうち上記管内を透過する光を上記受光手段により受光して、上記受光手段により得られる受光強度に応じた信号に基づいて上記管内の詰まり状態を判定する構成にしたことを特徴とする管内の詰まり状態判定装置。
【請求項2】
上記受光手段から出力される受光強度に応じた信号を交流増幅する交流増幅手段と、
上記交流増幅手段の出力信号と上閾値及び下閾値とを比較して、それら閾値のうちいずれか一方を超えた場合に信号を出力する比較手段と、
上記比較手段から一定時間内に出力される信号のカウント値に基づいて上記管内の詰まり状態を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の管内の詰まり状態判定装置。
【請求項3】
上記判定手段は、上記管内が詰まり状態と判定した場合に、上記カウント値に基づいて、更に詰まり状態の度合いを判定することを特徴とする請求項2に記載の管内の詰まり状態判定装置。
【請求項4】
上記発光手段は、光源と、上記光源と上記管との間に配置されたスリット部材とにより構成され、また、上記受光手段は、受光素子と、上記受光素子と上記管との間に配置されたスリット部材とにより構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の管内の詰まり状態判定装置。
【請求項5】
試薬を用いて試料の分析を行う分析装置にて、残った試薬、各部位の洗浄に使用された水や洗浄液をポンプにより吸引し、光を透過する材質からなる管を介して廃棄することにより上記管内を気体と液体とが交互に流れうる状況にある場合に、上記管内の詰まり状態を判定する管内の詰まり状態判定方法であって、
上記管を挟んで対向配置された発光手段と受光手段とを用いて、上記発光手段により照射される光のうち上記管内を透過する光を上記受光手段により受光して、上記受光手段により得られる受光強度に応じた信号に基づいて上記管内の詰まり状態を判定することを特徴とする管内の詰まり状態判定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−317331(P2006−317331A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141215(P2005−141215)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】