説明

管状ねじ山付き接続部のコンポーネントのねじ山付き要素のための、摩擦係数順応性を示す潤滑剤組成物

ねじ山付き接続部の組立てのためのフィルム形成用潤滑剤組成物は、ねじ山付き管状接続部(JF)のコンポーネント(T2、T1)のねじ山付き要素(EM、EF)の少なくとも1つのねじ山(FE、FI)および組立当接部(BVM、BVF)を、ねじ山(FE、FI)および上記組立当接部(BVM、BVF)に接着する固体フィルムで覆うように意図されており、上記組立当接部(BVM、BVF)は、端部組立相の間に上記ねじ山付き管状接続部(JF)の別のコンポーネント(T1、T2)の別の当接部(BVF、BVM)を接触支持するように意図されており、上記潤滑剤組成物は、マトリクスを含む。マトリクスは、潤滑の補完物として、上記組成物に、少なくとも閾値に等しい肩トルクを与えるように選択された、少なくとも1つの流動抵抗性材料をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石油用途で使用されるねじ山付き管状接続部のコンポーネントに関し、より正確には組立当接部(make−upabutment)を備える管状ねじ山付き接続部のコンポーネントのねじ山付き要素部分の潤滑に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで使用される用語「コンポーネント」は、他のコンポーネントとねじ山付き管状接続部を構成するように他のコンポーネントへねじ山により組み立てられることを意図された如何なる要素または付属品をも意味する。コンポーネントは例えば、比較的長い管(特に、長さ約10メートル)、長さ数10センチメートルの管状継ぎ手、上記の管のための付属品(ハンガーまたはクロスオーバー、安全弁、または工具継ぎ手、など)であり得る。
【0003】
そのようなコンポーネントは、例えば井戸を掘削または加工するために使用され得る。その際に、コンポーネントは、炭化水素などの井戸または同様な井戸の中に降ろすために互いに接続されて、ドリルストリング(drillstring)、ケーシングストリング(casing string)またはライナーストリング(linerstring)あるいはまたチュービングストリング(tubing string)を構成する。
【0004】
ねじ山付き要素は、コンポーネント(チューブあるいはカップリング)の端部において、まず掘削部位が輸送または保管の間に腐食から保護されるように製造されなければならず、その目的のために、従来、工場から出荷される際に保護用グリースまたは油で被覆されていた。
【0005】
井戸において、ねじ山付き要素は、複数の組立ておよび分解作業を経なければならない。組立作業は、回転させる方向を変える回数に応じて組立(または締め)トルクを表わすプロフィール(または輪郭)により決定づけられる。テーパー付きねじ山による上質なねじ山付き接合部の対応する組立トルクプロフィールの例が、図1に図示されている。図1に示すように、組立トルクプロフィールは、一般的に4つの部分に分けることができる。第1の部分P1は、管状ねじ山付き接続部の第1のコンポーネントの雄型ねじ山付き要素(またはピン)の外側ねじ山が、同じ管状ねじ山付き接続部の第2のコンポーネントの対応する雌型ねじ山付き要素(ボックス)の内側ねじ山による如何なる径方向締め(干渉フィット)も含まない区間である。第2の部分P2は、雄型および雌型のねじ山の幾何学的干渉が組立作業の進展に比例して増える径方向締め(干渉)を発生させる(低いが増加する組立トルクを発生させる)区間である。第3の部分P3は、雄型ねじ山要素の端部の外縁における密封要素が金属/金属密封を作るための雌型ねじ山要素の対応する密封面と径方向に干渉する区間である。第4の部分P4は、雄型ねじ山付き要素の前方端面が雌型ねじ山要素のねじ込み当接部(make−upabutment)の環状面により軸方向に当接している区間である。この第4の部分P4は、端部組立相(terminal phase of make−up)に相当する。
【0006】
第3の部分P3の終わりと第4の部分P4の初めに相当する組立トルクCABは、肩トルク(shoulderingtorque)と呼ばれる。第4の部分P4の終わりに相当する組立トルクCPは、可塑化トルク(plastification torque)と呼ばれる。この可塑化トルクCPを超えることは、雄型ねじ込み当接部(雄型ねじ山付き要素の端部)および/または雌型ねじ込み当接部(雌型ねじ山付き要素の環状面の後方に配置される領域)は、密封面間の接触による密封性能の低下を引き起こし得るプラスチック変形の原因であると考えられている。可塑化トルクCPの値と肩トルクCABの値との差は、肩トルク抵抗(torqueon shoulder resistance)と呼ばれ、CSB(CSB=CP−CAB)として定義されている。
【0007】
管状ねじ山付き接続部は、例えば引張強さのみならず使用状況における不慮の分解に関して、ねじ山付きアセンブリーの最適な機械強度を示すとともに、最適な密封性能を示す、組立終了時(endof make−up)における最適な締めを目的としている。よってねじ山付き接続部の設計者が定義するにあたり、与えられた型のねじ山接続部のための最適な組立トルク値であって、その型の接続部のアセンブリーの全てにおいて、(当接部の可塑化およびそれに起因する弊害を防ぐために)可塑化トルクCPより低くかつ肩トルクCABより高くしなければならない。つまり、CABより低いトルクで組立てを終えると、雄型および雌型要素の相対的に正しい位置決めおよびそれによる互いの密封面に対する適切な締めが保証されない。肩トルクCABの有効値は雄型および雌型ともにねじ山および密封面の有効直径により決まるので、同じ型の接続部のための一方のアセンブリーから他方のアセンブリーまでに大きく変動し、かつ最適な組立トルクに適した値は実質的に肩トルクCABより大きい。従って、肩トルクの値が大きくなれば、組立トルクを決定付けることができる許容値が大きくなるであろうし、ねじ山付き接続部が作業中に生じるより大きな力に耐えられるようになるであろう。
【0008】
組立ておよび分解作業における摩損(galling)からねじ山などの繊細な部分を保護するために、ねじ山には従来保護グリースを施さずにAPIRP 5A3(以前のAPI Bull. 5A2)にしたがったグリースなどの特別な組立グリースを被覆していた。そのような鉛などの重金属および/または毒性の金属で充たされたグリースの使用は、井戸の先端において二度目の被覆作業を行う必要があることに加えて、組立ての間にねじ山から漏れ出した余分なグリースが井戸や環境の汚染をもたらすという弊害を招く。
【0009】
他の型の保護も提案されている。
【0010】
化学的作用を伴う少なくとも1種の極圧添加剤を含んだペースト状またはワックス状(セミドライと呼ばれる)の潤滑剤の薄層を使用して、2つの連続したコーティングを、ねじ山付き要素の製造所において行う一度のコーティングに置き換えることが提案されている。この薄層は、輸送および保管の間に埃または砂の粒子による汚染からの機械的保護が必要であるという弊害を受けるセミドライ被膜を構成する。
【0011】
他の提案では、グリースを、ねじ山付き要素の製造所において適用する固相の様々な保護コーティングであって基板に付着する固体マトリックスを含み、固体潤滑剤の粒子が分散したものに、置き換えることが提案されており、特に二硫化モリブデンMoSが挙げられる。
【0012】
国際公開第2006/104251号は、乾燥固体膜により覆われた粘性潤滑層を有するねじ山付き接続部に関する。この膜は潤滑性ではない。この潤滑層は固体ではない。
【0013】
出願の時点では公開されていないが、仏国特許出願第0702634号は、マトリクス内に分散され、組成物に、潤滑剤の補完物として、少なくとも閾値に等しい肩トルク抵抗を得るために選択された摩擦係数を提供するように選択された、ブレーキ添加剤を含む潤滑剤組成物に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2006/104251号
【特許文献2】仏国特許出願第0702634号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】米国石油協会仕様書API RP 5A3
【非特許文献2】米国石油協会仕様書API 7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このように、本発明は、状況を改善すること、より正確には、最適化された標準的な組立トルク値(API RP 5A3によるグリースを用いて決定された標準値)が使用され得るように、API RP 5A3規格によるグリースで被覆された同じねじ山付き要素を有するねじ山付き接続部のために得られたものから定義された肩トルク抵抗のための選択値を取得するために選択された摩擦係数を有する潤滑剤組成物(またはコーティング)を提供することを目的とする。これは、この型の接続および基準APIグリースのために最適化された組立トルクの値を減少させることを回避することが可能であり、極端な場合には、当接部の機能を保証することができなくなることを回避することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的のため、本発明は、ねじ山および下方組立当接部に接着するフィルムを備えるねじ山付き管状接続部のコンポーネントのねじ山付き要素の少なくとも1つのねじ山および組立当接部を覆うように意図された、ねじ山付き接続部の組立てのためのフィルム形成用潤滑剤組成物であって、上記組立当接部は、端部組立相の間に上記ねじ山付き管状接続部の別のコンポーネントの別の当接部を接触支持するように意図されており、上記潤滑剤組成物はマトリクスを含む、フィルム形成用潤滑剤組成物を提案する。マトリクスは、潤滑の補完物として、上記組成物に、少なくとも閾値に等しい肩トルク抵抗を与えるように選択された、少なくとも1つの流動抵抗性材料を含む。
【0018】
言い換えると、本発明は、ねじ山付き接続部の組立て用の潤滑剤組成物であって、部分的に覆う必要のあるねじ山付き要素が締め動作の最後に受けなければならないヘルツ応力に応じて弾性効果が選択されてもよい、潤滑剤組成物を提案する。弾性効果は、摩擦速度に応じて選択されてもよい。
【0019】
検討される用途の制約によっては、組成物は、完全な形状、より具体的には融解状態になって噴霧される固体状であるか、または有機化合物または水の中で分散もしくは乳化された状態で希釈されてもよい。
【0020】
ねじ山付き接続部組立潤滑剤の組成物は、多くの変形例に分類されてもよく、少なくともそのうちのいくつかは組合せ可能な特徴であって、具体的には:
上記流動抵抗性材料は、API RP 5A3型グリースの基準肩トルク抵抗値の少なくとも90%に等しい閾値に等しい肩トルク抵抗値を得ることができるように配置されており、
上記流動抵抗性材料は、上記ねじ山付き管状接続部(JF)のために取得されたAPI RP 5A3型グリースの基準肩トルク抵抗値の95%、好ましくは100%、より好ましくは120%に等しい閾値に少なくとも等しい肩トルク抵抗値を得ることができるように配置されており、
上記流動抵抗性材料は、重量組成として、アルファピネン、ペンタエリトリトールでエステル化されたロジン酸および樹脂酸、グリセリンで水素化およびエステル化されたロジン酸および樹脂酸、ならびに/または重合化されたロジンに基づく、1%から99%のテルペン樹脂を含み、
流動抵抗性材料は、重量組成として、ペンタエリトリトールでエステル化された1%から99%のロジン酸および樹脂酸を含み、
組成物は、重量組成として、10%から25%の流動抵抗性材料を含み、
流動抵抗性材料は、重量組成として、1%から10%のポリアルキルメタクリレートを含み、
組成物は5%から20%のポリエチレンワックスを含み、
組成物は、0から5%のポリエチレン/ポリテトラフルオロエチレン複合材料を含み、
組成物は、10%から25%、好ましくは10%から20%のエステル化ロジンを含み、
組成物は、0から20%、好ましくは4%から12%のカルナバワックスを含み、
組成物は、10%から35%、好ましくは20%から26%のステアリン酸亜鉛を含み、
組成物は、10%から40%、好ましくは18%から22%のケイ酸オルトリン酸ストロンチウムカルシウム亜鉛を含み、
組成物は、1%から12%、好ましくは4.5%から7%のフッ化黒鉛を含み、
組成物は、0から4%のポリテトラフルオロエチレンを含み、
組成物は、1%から3%の窒化ホウ素を含み、
組成物は、2%から8%、好ましくは3%から6%の二硫化タングステンを含み、
組成物は、重量組成として、2%から8%の結合剤を含み、
組成物は、引裂荷重の比較的高い値および/または強力な粒子間相互作用または粒子間の誘引結合および/または中程度から高いモース硬度および/または運動に対して抵抗的もしくは対向する流体挙動を有する、鉱物または無機物粒子の分散によって構成される、少なくとも1つのブレーキ添加剤を含み、各ブレーキ添加剤は、少なくとも酸化ビスマス、酸化チタン、コロイド状シリカ、およびカーボンブラックからなる群より選択され、
組成物は、マトリクス中に分散された固体潤滑剤の粒子を含み、
上記固体潤滑剤粒子は、クラス1、2、3、および4のうちの少なくとも1つからの潤滑剤の粒子を含み、
固体潤滑剤の粒子は、クラス2からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子およびクラス1からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子を含み、
固体潤滑剤の粒子は、クラス2からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子およびクラス4からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子を含み、
固体潤滑剤の粒子は、クラス1からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子、クラス2からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子、およびクラス4からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子を含み、
固体潤滑剤の粒子は、フッ化黒鉛、硫化錫、硫化ビスマス、フッ化カルシウム、および二硫化タングステンより選択された、クラス2からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子を含み、
固体潤滑剤の粒子は、クラス4からの固体潤滑剤として少なくともポリテトラフルオロエチレン粒子を含み、
固体潤滑剤の粒子は、球状または管状の形状を有する少なくとも1つのフラーレンの少なくとも分子を含み、
上記マトリクスは固体粘稠性を有し、これはベタ付かず、粘弾性挙動を呈する少なくとも1つの結合剤を含み、
上記マトリクスは、少なくとも1つの金属石けんを含み、
石けんは、少なくともステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウム、およびステアリン酸ビスマスからなる群より選択され、
上記マトリクスは、植物性、動物性、鉱物性、または合成起源の少なくとも1つのワックスを含み、
上記マトリクスは、100℃で少なくとも850mm/sの動粘性率を有する少なくとも1つの液体ポリマーを含み、
上記液体ポリマーは、少なくとも1つのポリアルキルメタクリレート、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリシロキサン、およびポリジアルキルシロキサンからなる群より選択され、
固体潤滑剤粒子は、球状形状または管状形状を有する少なくとも1つのフラーレンの分子を含んでもよく、
マトリクスは、アルカリケイ酸塩などの、少なくとも1つの鉱物結合剤を含んでもよく、
マトリクスは、ベタ付かない固体粘稠性を有し、エラストマまたはラテックスなどの少なくとも1つの粘弾性結合剤を含んでもよく、
固体潤滑剤の重量組成は、例えば、フッ化黒鉛20%から99%、窒化ホウ素5%から30%、ポリテトラフルオロエチレン1%から80%であってもよく、
固体潤滑剤の重量組成は、例えば、硫化錫20%から99%、窒化ホウ素5%から30%、ポリテトラフルオロエチレン1%から80%であってもよく、
固体潤滑剤の重量組成は、例えば、硫化ビスマス20%から99%、窒化ホウ素5%から30%、ポリテトラフルオロエチレン1%から80%であってもよく、
マトリクスは、ペースト粘稠性を有してもよい(すなわち滴点を有する)。この場合、潤滑剤組成物は、化学作用を伴う少なくとも1つの極圧添加剤を含んでもよい。
【0021】
その調査を通じて、出願人は、当接部の形状を保存すること、および組立て/分解作業の数を増加させることを可能にする、例えば基準値の100%以上の高肩トルク抵抗、または例えば基準値の120%以上の非常に高い肩トルク抵抗の重要性に気が付いた。
【0022】
本発明はまた、ねじ山付き管状接続部のコンポーネントのねじ山付き要素も提案し、これは、組立作業終了時に上記ねじ山付き管状接続部の別のコンポーネントの別の当接部が接触支持しなければならない少なくとも1つのねじ山および組立当接部を含み、少なくとも1つのねじ山および組立当接部は、ねじ山および組立当接部の表面に接着して、上記の型の潤滑剤組成物で構成される、薄層で被覆される。
【0023】
ねじ山付き要素はいくつかの変形例において入手可能であってもよく、その特徴の少なくともいくつかは組み合わせられてもよく、具体的には:
10μmから50μmの範囲の潤滑剤組成物厚みで少なくとも部分的に覆われてもよく、
組立作業の後に、別のねじ山付き要素の対応する密封面と緊密密封接触するように意図され、潤滑剤組成物で覆われた、密封面も含んでもよく、
その組立当接部は管状当接面であってもよく、
潤滑剤組成物で覆われたその表面は、上記潤滑剤組成物を吸着または吸収できるようにする幾何学的、物理的、および/または化学的特性を有してもよく、
その表面は、腐食保護機能を有するコーティングまたはフィルムで被覆されていてもよい。
【0024】
本発明はまた、少なくとも一方が上述の型である雄型ねじ山付き要素および雌型ねじ山付き要素を含む、ねじ山付き管状接続部も提案する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の説明および添付図面より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】組立トルクプロファイル(巻き数に応じたトルク)の一例を示す図である。
【図2】VAM TOP型ねじ山付き管状接続部の第1コンポーネントの雌型要素の一実施形態を示す、縦軸XXに沿った断面図である。
【図3】VAM TOP型ねじ山付き管状接続部の第2コンポーネントの雄型要素の一実施形態を示す、縦軸XXに沿った断面図である。
【図4】図2および3に示される雄型および雌型要素を組み付けることによって構成されるVAM TOP型ねじ山付き管状接続部の一実施形態を示す、縦軸XXに沿った断面図である。
【図5】ブリッジマン型機械の一実施形態を示す機能図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
添付図面は、本発明を裏付けるのに役立つばかりではなく、適切であれば、その定義づけにも寄与する。
【0028】
本発明の目的は、特にその肩トルク抵抗値によって定義される組立トルクプロファイルに対応するねじ山付き管状接続部のコンポーネントのねじ山付き要素にかかる、少なくとも閾値に等しい肩トルク抵抗の値を得るように選択された摩擦係数を有するねじ山付き接続部の組立てのための、フィルム形成用潤滑剤(またはコーティング)組成物を提供することである。
【0029】
コンポーネントはこれ以降、炭化水素井戸の掘削または開発を対象とし、VAMファミリー(登録商標)また同等品の結合または一体型ねじ山付き管状接続部の少なくとも1つの雄型または雌型ねじ山付き要素を備えるものとして、見なされるであろう。しかしながら、本発明は、この型の使用にも、上記で引用された型のねじ山付き管状接続部の型にも、限定されない。事実上、本発明は、同じ潤滑剤組成物(またはコーティング)を使用して潤滑化されなければならない少なくとも1つのねじ山および組立当接部を備える少なくとも1つの雄型または雌型ねじ山付き要素を含む場合、その使用とは無関係に、いずれの型のねじ山付き管状接続部にも関する。回転速度は、ねじ山の係合後の組立開始時にはほぼ10から30rpm程度であってもよく、組立終了時には最大2から5rpmであってもよい。直径はおおむね50から400mmであり、線速度は組立開始時の0.3m/sから組立終了時の0.005m/sの範囲である。さらに、接触圧は、密封および当接領域において、組立開始時には低く、組立終了時には非常に高い。摩擦距離は、組立開始時から終了時まで、ねじ山においては長い。摩擦距離は、組立終了時には、密封および当接領域において非常に短い。潤滑剤組成物は、凝着摩耗およびねじ山のクリープを減少させながら、例えば組立終了時にほぼ1.5GP程度の極圧、および超低速に適応するように意図されている。速度の大きな減少およびヘルツ応力増加の中での摩擦の増加は、有利である。ブリッジマン試験は、想定される潤滑剤組成物の試験に適していると証明されているが、対照的に、例えばアムスラー試験機を使用する試験などは、接続部の組立て中には存在しない圧延条件下の接触に関するので、組立領域には関連しない。密封領域および当接部の組立てに対するこれらの非常に特殊な要件は、その他の使用のために設計された潤滑剤組成物がただちに除外されるべきであることを意味している。
【0030】
図2および3に示されるように、コンポーネントT1またはT2は、ねじ山付き雌型EFまたは雄型EM要素(または端部)によって終端される本体または正規部(regular portion)PCを含む。
【0031】
雌型ねじ山付き要素EF(図2参照)は、少なくとも1つの内側ねじ山F1と、例えば内側ねじ山F1の下流に配置された内側環状面(VAM TOP型ねじ山付き接続部の場合には凸状円錐形)の形状の組立当接部BVFと、を含む。
【0032】
雌型ねじ山付き要素EFの自由端部はここで、基準(reference)の役割を果たす。その結果、自由端部の後のいずれの要素も、その下流として定義される。図2に示される例において、内側ねじ山F1は自由端部の下流に配置されているが、当接組立部BVFの上流である。
【0033】
ここで使用される「内側」という用語は、雌型ねじ山付き要素EFの縦軸XXに向けて配向された表面に設けられた部分(または表面)を意味する。
【0034】
図2に示されるように、雌型ねじ山付き要素EFは随意的に、内側ねじ山FIと組立当接部BVFとの間に介在する金属/金属密封面SEFを含んでもよい。
【0035】
雄型ねじ山付き要素(図3参照)は、少なくとも1つの外側ねじ山FEと、例えば自由端部において外側ねじ山FEの上流に配置された環状端面(VAM TOP型ねじ山付き接続部の場合には凹状円錐形)の形状の組立当接部BVMと、を含む。
【0036】
雄型ねじ山付き要素EMの自由端部は、この場合に基準の役割を果たす。その結果、自由端部の後にあるものはいずれも、その下流にあると称される。
【0037】
「外側」という用語は、雄型ねじ山付き要素EMの縦軸XXに対向する半径方向に配向された表面に設けられた要素(または表面)を意味する。
【0038】
図3に示されるように、雄型ねじ山付き要素EMは随意的に、組立当接部BVMと外側ねじ山FEとの間に介在する金属/金属密封面SEMを含んでもよい。
【0039】
外側ねじ山FEのように、内側ねじ山FIが、互いに軸方向および/または半径方向に距離を置いて円錐形または先細形の表面上に設けられた1つ以上の明らかなねじ山付き部分であってもよいことは、留意すべきである。
【0040】
図4に示されるように、ねじ山付き管状接続部JFは、組立て(assembling)によって、第1コンポーネントT1の雌型ねじ山付き要素EFを第2コンポーネントT2の雄型ねじ山付き要素EMに組み付けることによって構成される。上記組立ては、図1に示される型の組立トルクプロファイルによって定義され、肩トルクCAB、可塑化トルクCP、および肩トルク抵抗CSBを特徴とする(それぞれの定義は導入部で説明されている)。
【0041】
組立ては、雌型ねじ山付き要素EFおよび/または雄型ねじ山付き要素EMの組立当接部BVFおよび/またはBVMおよび内側ねじ山FIおよび/または外側ねじ山FEおよび随意的に金属/金属密封面SEFおよびSEMのうちの少なくとも1つが潤滑剤コーティング(または組成物)で覆われたときに行なわれる。このコーティング(または組成物)は、製造所において雌型EFおよび/または雄型EMネジ付要素上に堆積されてもよい。
【0042】
潤滑剤組成物は、フィルム形成性質を有する。これは、基層上において、そこに接着するように意図された薄層(フィルム)を形成することができる。これは、少なくとも1つの流動抵抗性材料を含むマトリクスを含む。以下に記載されるように、そのような潤滑剤組成物は、組立当接部の摩擦可塑化と称される状態の間(すなわち締め付け相の最後に)、「流動抵抗(rheoresostamt)」挙動を提供するように意図されている。可塑化特性に加えて弾性特性を得ることで、摩擦応力下においてせん断力を増加させることが可能になる。せん断力は、弾性コンポーネントが大きくせん断率が高いときにより高くなる。流動抵抗効果は、摩擦特性を保持して肩トルクの値を許容範囲内に維持している間に得られ、マトリクスの流動抵抗特性を変化させることが可能なせん断による加熱を防止し、ハンパリングと称される、過剰な潤滑効果の影響を受けやすくする応力のレベルを超えてフィルムが破断することを防止し、フィルム効果を防止して、多くの組立て/分解作業を可能にする。マトリクスの流動抵抗性材料形成部品は、そうでなければ基本的に可塑化特性を有する、弾性特性を有する組成物を提供する。
【0043】
マトリクスは、結合剤(バインダー)とも称され、活性成分を所定の部位に結合または運搬することができる。これは不均一系における凝集剤の役割も果たし、結合または運搬する活性成分の機能を補完する機能を有してもよい。これはベタ付かない固体粘稠性を有してもよく、またはペースト粘稠性を有してもよい(すなわち滴点を有してもよい)。しかしながら、好ましくは、特に低周波および/または低せん断応力において、塑性または粘塑性係数よりも大きい弾性係数を有する流動抵抗挙動、および潤滑性を呈する。この場合の「低周波」という用語は、7.5Hz未満の周波数を意味する。
【0044】
組成物は、例えば基準値の95%から105%の範囲である、0.1Hzから100Hzの範囲の基準値を有する、広い周波数範囲にわたって、略一定の弾性係数を有してもよい。
【0045】
減衰定数または位相角δは、正弦変形周期の間に保存されてその後返還されたエネルギー全体に放散されたエネルギーの比率を示す。位相角δは、具体的には0.1から少なくとも7.5Hzまでの、低い値を取ってもよい。位相角δは、0.2Hzで50°未満、0.5Hzで30°未満、1Hzで15°未満、5Hzで10°未満、および/または10Hzで6°未満であってもよい。せん断強度は良好であり、それゆえに例えば基準値の90%超の高肩トルク抵抗となる。
【0046】
弾性特性は、マトリクス中に流動抵抗性材料が存在するおかげで、実質上高い。弾性および粘性係数は、少なくとも選択された範囲内において、周波数とは実質的に無関係である。流動抵抗性材料は、少なくとも1つのロジンおよび/または樹脂酸、および/または少なくとも1つの高粘性ポリマー、例えばアルキル化合物、具体的にはポリアルキルメタクリレート、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリシロキサン、および/または合成エラストマ、具体的には油中溶液内にあって、例えばスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体またはエチレン−オクテン共重合体、または天然エラストマ、例えばラテックスまたはゴム型のもの、を含んでもよい。エステル化ロジンおよびポリアルキルメタクリレートが同時に存在することで、申し分のない相乗効果を提供した。
【0047】
仏国特許出願第0702634号に従って摩擦を変更するために、摩擦を変更する色素形成剤を添加することが可能である。色素はマトリクスの組成物の一部を形成しない。
【0048】
ここで使用される「固体粘稠性」という用語は、液状でも気体状でもペースト状でもない粘稠性(または状態)を意味する。より正確には、この場合のマトリクス(またはフィルム)は、ベタ付く性質によって大気中のほこりを捕らえることを防ぐために、および/またはマトリクス(またはフィルム)と接触する表面を汚染するのを防ぐために、および/または組立て/分解中の移動、排水、もしくは噴出によって環境を汚染するのを防ぐために、保存または使用の間に組成物が曝されるのに対応する温度よりも高い融点を有する場合に、固体状態(または粘稠性)であると見なされる。
【0049】
ねじ山付き管状接続部の組立ておよび分解の間の摩擦メカニズムは、直面する摩擦速度の多様さによって複雑化される。速度は、組立て中は比較的高く、組立(または締め付け相)終了時または分解(緩め相)開始時にはほぼゼロであってもよい。さらに、ヘルツ応力は同じ摩擦期間において非常に高く、結果的に境界条件を生じる。
【0050】
「ヘルツ応力(または圧力)」という用語が、表面領域によって分割された、表面との接触によって印加される(およびそこで弾性変形を引き起こす)荷重を意味することは、想起されるべきである。高ヘルツ応力下において、固体非可塑性材料は、材料の疲労によってその耐用年数を減少させる内部せん断を受ける可能性があり、その一方で固体可塑性材料は、摩擦面の発生を伴って、流れの法則に則ってこのせん断を受ける。
【0051】
上述の動力応力による問題を克服するために、その特性が事実上可塑性であって、直面する比率状況の全てに適応しながら応力下で粘性流を許容するマトリクスを使用することは、有利である。いくつかの構成要素によって形成されるマトリクスは、多様なせん断の存在下においてより良く機能する。これは実際に、その他の活性要素を所定の場所に維持し、安定した転写フィルムの生産または舌片効果(leafing effect)に貢献することができる。
【0052】
一例として、ポリエチレンまたはアクリル結合剤など、粘塑性ポリマーのカテゴリに分類される、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(または樹脂)を含む固体マトリクスを使用することが可能である。ポリエチレンは、ポリアミド6、ポリアミド11、またはポリプロピレンなど、その他の粘塑性ポリマーの場合と同様に、融解状態において高粘度に関わる塗布問題に悩まされないため、興味深い。有利なポリエチレンは、105℃より高い融点を有するものである。しかしながら、80℃から400℃の融点を有するマトリクスが使用されてもよい。
【0053】
「熱可塑性」という用語が、それぞれの温度TおよびT(硝子転移温度および溶融温度)まで加熱することによって可逆的に軟化された後に溶融され、固められその後冷却によってガラス化されることが可能な可溶性ポリマーを表すことは、想起されるべきである。熱可塑性ポリマーは、熱硬化性ポリマーとは対照的に、化学反応を伴わずに変形させられる。熱硬化性ポリマーはこの場合、摩擦下で、静的および安定した乾燥固体構造(ベタ付かない)を維持しながら、粘流を得るために使用される。対照的に、通常は、熱硬化性ポリマーは、応力の下で、まったくまたはほとんど粘性挙動を示さない。
【0054】
マトリクスが固体粘稠性および高強度機械的挙動を有する必要があるときに、エポキシ、ポリウレタン、シリコーン、アルキルウレタン、またはホルモフェノール樹脂などの、熱硬化型結合剤を含んでもよいことを留意すべきである。この型のマトリクスの変形例において、ケイ酸塩などの鉱物結合剤、またはチタン酸塩などのキレート、または有機ケイ酸塩を使用することも可能である。これらの場合、組成物はやはりベタ付かない。
【0055】
マトリクスは、ベタ付かない固体粘稠性および粘塑性挙動も有してもよい。この場合、エラストマまたはラテックスを含んでもよい。
【0056】
準静的状態において、非常に高い摩擦荷重に関する限界潤滑応力に対応するために、少なくとも1種類の潤滑剤が、マトリクス内に分散されることが可能である。
【0057】
ここで使用される「固体潤滑剤」という用語は、2つの摩擦面の間に介在するときに、摩擦係数を減少させ、表面の摩耗および損傷を減少させることが可能な、固体の安定した物体を意味する。これらの物体は、その機能的メカニズムおよび構造によって、異なるカテゴリに分類され得る:
クラス1:例えば窒化ホウ素(BN)など、その潤滑特性をその結晶構造に依存し、特定の結晶面の間の低せん断力の下で引裂する特性を有する固体、
クラス2:例えば二硫化モリブデンMoS、フッ化黒鉛、硫化錫、硫化ビスマス、または二硫化タングステンなど、その潤滑特性をクラス1に示されるようにその結晶構造に、および金属面と反応するその組成における化学元素にも依存し、比較的安定した潤滑転写層の形成を促進する表面結合の追加特性を提供する固体、
クラス3:例えば特定のチオ硫酸塩化学型化合物、またはDesilube Technologies,Inc.によるDesilube 88など、複雑な引裂プラスチックまたは潤滑剤組成物を形成することが可能な金属面との化学反応からその潤滑特性が生じる固体、
クラス4:例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、またはポリアミドなど、摩擦応力下、特にせん断を受けるときの、可塑性または粘塑性挙動からその潤滑特性が生じる固体。
【0058】
この分類は、例えば、Ecole Nationale Superieure des Petroles et Moteurs(フランス)のEric Gard氏による、「Solid lubricants」と題される講義からの文献に記載されている。
【0059】
これらのクラスに加えて、クラス1の下位クラス1〜3として分類される、フラーレンの特定のカテゴリがある。
【0060】
当業者には周知のように、乾燥および流体力学的状態にあるときの固体潤滑剤は、流体または粘塑性物質中に分散されると、安定的に表面に結合される傾向があり、それによって自身の摩擦特性を変化させる。これらは化学的または生理化学的な結合によって表面に転写および結合され、その結果、摩擦に対する大きな耐性を生じ、摩擦特性を向上させる。固体の性質に応じて、これは表面に、荷重および摩擦速度の広範なスペクトルにわたって高荷重表面応力(ヘルツ応力)および低摩擦係数によって生じた極圧の下での耐摩耗保護、強度、および耐摩耗特性を付与する。転写フィルム効果または舌片効果を発生させる上記特性は、ねじ山付き管状接続部の組立ておよび分解の間に生じるものなど、それぞれの方法で表面が圧迫される型の摩擦に使用される。
【0061】
組成物は、単独のフッ化黒鉛または単独の硫化錫または単独の硫化ビスマスなど、1つの固体潤滑剤のみを含んでもよい。
【0062】
しかしながら、異なるクラスに属する少なくとも2つの固体潤滑剤の組み合わせての使用は相乗効果を生むことができ、そのため潤滑性能が非常に良好である。ここで使用される「相乗効果」という用語は、塩基特性を有する固体潤滑剤の組合せの結果として個別に得られる上記潤滑剤の累積塩基特性よりも優れた性能を生じる状態を意味する。
【0063】
本発明において使用される好適な固体潤滑剤は少なくとも、フッ化黒鉛または硫化錫または硫化ビスマスなど、今まであまり使用されてこなかったクラス2からの化合物を含む。これらは、金属と結合するより優れた能力およびより良い極圧性能において、(腐食の出現を促進する可能性のある)黒鉛または(特に水分の存在下において不安定であり、鋼を腐食させる硫黄の酸化物、または鋼を硫化物応力腐食割れさせる、すなわちSSCに対して弱くさせる可能性のある硫化水素を放出するとして知られている)硫化モリブデンなどの伝統的な固体潤滑剤とは異なる。その他のクラスからの固体潤滑剤とともに相乗的に使用されると、これらは並はずれた性能を実現することができる。
【0064】
上述のクラス2からの化合物は、クラス1、3、および4のうちの少なくとも1つからの固体潤滑剤とともに粒子の形状で使用されてもよい。このように、クラス2からの少なくとも1つの固体潤滑剤およびクラス4からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子、またはクラス1からの少なくとも1つの固体潤滑剤およびクラス2からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子、またはクラス2からの少なくとも1つの固体潤滑剤およびクラス3からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子、またはクラス1からの少なくとも1つの固体潤滑剤、クラス2からの少なくとも1つの固体潤滑剤、およびクラス4からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子を使用することが可能である。
【0065】
クラス2/クラス4の相乗効果と比較すると、クラス1、2、および4を組み合わせたシステムでの部位条件下で、組立ておよび分解周期数の実質的な増加が観察された。
【0066】
例示によれば、クラス1からの固体潤滑剤の粒子は、窒化ホウ素の粒子であってもよい。再度例示によれば、クラス2からの固体潤滑剤の粒子は、フッ化黒鉛、硫化錫、硫化タングステン、または硫化ビスマスの粒子であってもよい。クラス3からの粒子は、Desilube88(Desilube Technologies Inc.より販売)の粒子であってもよい。再び例示によれば、クラス4からの固体潤滑剤の粒子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の粒子(クラス4)であってもよい。特に良好な相乗効果は、以下の組合せによって得られる:フッ化黒鉛(クラス2)/PTFE/窒化ホウ素(クラス1)、硫化タングステン(クラス1)/PTFE(クラス4)/窒化ホウ素(クラス1)、および硫化ビスマス(クラス2)/PTFE(クラス4)/窒化ホウ素(クラス1)。
【0067】
上記のように、潤滑剤組成物は、マトリクス(または結合剤)および固体潤滑剤のいずれかの粒子の補完物として、少なくとも1つのブレーキ添加剤(または色素)を含んでもよい。各ブレーキ添加剤(または色素)は、マトリクス中に分散する。
【0068】
ブレーキ添加剤(または色素)は、覆う必要のある雄型EMまたは雌型EF変形要素のうち少なくとも1つのねじ山付き管状接続部の組立トルクプロファイルに応じて選択される。より正確には、それ(ら)は、その潤滑特性の補完物として、取得される閾値に少なくとも等しい肩トルク抵抗CSB値を許容するように選択された摩擦係数を有する組成物を提供するように選択される。
【0069】
ねじ山付き管状接続部の組立トルクプロファイルに、およびひいてはそれを生じるモードに応じた潤滑条件における組立ての間に印加される運動を「制動」する能力を備える組成物を提供する特定の物理的特性に応じて、各ブレーキ添加剤が選択されることは理解される。実際に、第3の介在物体(この場合は潤滑剤組成物)によって分離される相対摩擦下の2つの物質は、その特性を少なくとも2つの要因に依存する:マトリクスの流動学的挙動、および上記第3の物体の組成物に加わる特定の固体化合物の挙動である。第3の物体の流体学的挙動は、油の場合には流体力学的であり、特定のワックスおよびポリマーの場合には粘塑性であり、特定の非延性または超硬質無機化合物の場合には粒状であってもよい。
【0070】
第3の物体の組成物に加わる特定の固体化合物の挙動は、以下の特定のパラメータに応じて異なる:
流体力学的または粘塑性媒体中の第3の物体の濃度、
モース硬度によって特徴付けられる、固体化合物の粒子の硬度または圧潰強度、
原則的に結晶構造に依存する、応力の度合いが異なる固体組成物の結晶の引裂能力、
固体化合物粒子の形状および表面エネルギーに依存する微粒子相互作用、および上記粒子間の結合能力(ファンデルワールス型結合を通じた原子間の引力、粒子の化学的性質の機能)、これらの相互作用は運動に対抗する傾向がある、
せん断力およびひいては運動に対抗することが可能な特定の超高分子量有機添加剤の逆流体挙動(または逆チキソトロピー)。
【0071】
潤滑剤組成物の成分型のそれぞれの比率が、使用される固体マトリクスの型(熱可塑性、熱硬化性、またはその他)に原則的に依存することに留意することが、重要である。一例として、固体マトリクスが熱可塑型であるとき、潤滑剤組成物は、およそ75%からおよそ97%の範囲のマトリクス比率、およびおよそ3%からおよそ25%の範囲の固体潤滑剤比率を含んでもよい。
【0072】
さらに、互いに対する潤滑剤組成物の成分の3つの型の様々な比率の変化が、特にこれが部分的に覆う必要のあるねじ山付き管状接続部の型、および、特に部位条件下において、そのねじ山付き管状接続部が受ける応力に依存することが理解される。
【0073】
潤滑剤組成物の3つの型の成分(固体マトリクス、固体潤滑剤、およびブレーキ添加剤)のそれぞれの重量組成は、例えば、コンピュータ上で動作するソフトウェアを用いて実行される理論的なシミュレーション、およびブリッジマン型機械として当業者(トライボロジーの専門家)に知られている機械を使用して実行されるトライボロジー試験を使用して、決定されてもよい。この型の機械は、D Kuhlmann−Wilsdorfらによる記事「Plastic flow between Bridgmann anvils under high pressures」(J Mater Res,vol 6,no 12,1991年12月)に具体的に記載されている。
【0074】
ブリッジマン型機械の模式的機能例が、図5に示されている。この機械は:
選択された速度で回転駆動することが可能なディスクDQ、
ディスクDQの第1面に固定された、好ましくは円錐型の、第1アンビルEC1、
第1面に対向する、ディスクDQの第2面に固定された、好ましくは円錐型の、第2アンビルEC2、
選択された軸方向圧力Pを印加することが可能な、例えばピストンなどの、第1のEP1および第2のEP2圧力要素、
第1圧力要素EP1の1つの面に固定された、好ましくは円柱型の、第3アンビルEC3、
第2圧力要素EP2の1つの面に固定された、好ましくは円柱型の、第4アンビルEC4、を含む。
【0075】
潤滑剤組成物を試験するために、ねじ山付き要素を構成するものと同一の材料の2つの片が潤滑剤組成物で覆われ、第1のS1および第2のS2標本を形成する。次に、第1標本S1は第1のEC1および第3のEC3アンビルの自由面の間に介在され、第2標本S2が第2のEC2および第4のEC4アンビルの自由面の間に介在される。次に、ディスクDQは、各圧力要素EP1およびEP2を使用して選択された軸方向圧力P(例えばおよそ1.5Gpa程度)を印加しながら、選択された速度で回転し、各試料S1およびS2が受ける組立トルクが測定される。
【0076】
軸方向圧力、回転速度、および回転角度は、組立終了時の当接面のヘルツ応力および相対速度をシミュレートするためのブリッジマン試験において選択される。
【0077】
このような機械のおかげで、試料S1およびS2に対する対応する組立トルクを測定するために、ならびに上記試料S1およびS2が所定の組立トルクプロファイルにほぼ従うか否か、および特にこれらがそのプロファイルに対して選択された閾値に少なくとも等しい肩トルク抵抗値CSBを発生させることができるか否かを確認するために、多くの異なるペア(組立トルク、回転速度)を決定することが可能である。ブリッジマン型機械を用いて実行されるこれらの試験が、本発明の潤滑剤組成物で覆われた標本で測定されたトルクと、同じ潤滑剤組成物で覆われたねじ山付き要素の組立作業中に得られた肩トルク抵抗CSBのパーセンテージとの間の相関関係を確立することができることは理解される。
【0078】
組成物の特定の選択された特性を改善するために、そのマトリクスは、限定的な説明によって以下に述べられるものなどの、付加的な要素を含んでもよい。
【0079】
このように、組成物のマトリクスの改良された可塑性は、デブリ(debris)再凝集特性の向上と同様に、部位条件下における組立ておよび分解ステップの数に関する良好な結果を提供する、カルシウム、リチウム、アルミニウム、ビスマス、ナトリウム、マグネシウム、または亜鉛石けん(またはステアリン酸)を含む、金属石けん型の化学化合物を添加することによって得られてもよい。「金属石けん」という用語が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属石けんおよびその他の金属の石けんなど、可溶性化合物を意味することは、想起されるべきである。一例として、特定の腐食防止剤とともに相乗効果を提供するステアリン酸亜鉛などの金属石けんを使用することができる。
【0080】
一例として、組成物によって提供される潤滑性を改善するために、特に組立て/分解作業中のデブリ阻止および再凝集特性を最適化するために、そのマトリクスは、植物性、動物性、鉱物性、または合成起源のワックスなど、天然油脂を含んでもよい。「ワックス」という用語が、その硬質性または事実上のペースト粘稠性、溶融温度、および滴点がその性質に応じて幅広く異なってもよい、様々な起源(鉱物、特に油の蒸留に由来するもの、植物、動物、または合成)の潤滑剤特性を有する可溶性物質を意味することは、想起されるべきである。一例として、カルナバワックスを使用することが可能である。マトリクスは、例えばテルペン樹脂またはテルペン樹脂誘導体、特にロジンなどの樹脂(鉱物、植物、または合成)を含むときに増加した粘性を有してもよい。ロジンはペンタエリトリトールでエステル化されてもよい。「Les Derives Resiniques et Terpeniques」社より販売されているDertoline P2Lを使用することができる。
【0081】
腐食防止剤の必要とされる量に応じて、デブリ捕捉または再凝集特性の劣化が観察される可能性があることに留意する。この不都合を克服するために、ポリアルキルメタクリレート(PAMA)、ポリブテン、ポリイソブテン、またはポリシロキサンなどの超粘性ポリマーを使用することができる。このように、VISCOPLEX 6−950の商品名でROHMAXより販売されている、100℃で850mm/sの動粘性率を有するPAMAを用いて、デブリ再凝集の良好な結果が得られるだろう。
【0082】
一例として、組成物が腐食の様々な態様に対して覆う必要のある表面の保護を改善するために、そのマトリクスは腐食防止剤を含んでもよい。「腐食防止剤」という用語が、表面に塗布される液体または固体物質に、化学的、電気化学的、または物理化学的なメカニズムによってこれを保護する能力を付与する添加剤を意味することは、想起されるべきである。
【0083】
耐腐食性は、選択された腐食防止剤を、その他のメカニズムによって腐食を阻止する化合物と組み合わせることによっても改善されることができる。先に示されたように、ステアリン酸亜鉛は特に、マトリクスの潤滑挙動に大きく貢献しながら、腐食防止剤との相乗効果を示す。
【0084】
主な耐腐食保護試験は、リン酸マンガン処理(8から20g/mのリン酸塩蒸着)によって処理されたプレート上で、ISO規格9227に従って実行され、ISO EN 2846−3に従って指標Reによって決定される、生理食塩水霧試験である。標準に従って実行される生理食塩水霧試験の成績(腐食出現時間において20%の増加)は、単純な水中分散として添加される、ナノメートルサイズ(平均200nm)の酸化亜鉛粒子を挿入することによって改善されることができる。
【0085】
一例として、表面上に連続的な引裂構造を形成しながら、組成物に安定した方法で、表面粗さによって形成された部位を遮断させ、表面損傷過程および伝播を阻止させるために、組成物は、球状の形状の少なくとも1つのフラーレンの分子を含んでもよい。「フラーレン」という用語が、単層または多層として、閉鎖もしくは開放された管または閉鎖球の形状の構造を有する分子材料を意味することが、想起されるべきである。球状フラーレンは、単層で数十nm、多層で100nmを超える寸法を有する。そのサイズおよび相互作用能力のため、フラーレンが、運動に対する粘性抵抗の付加的減少を導入することによって、媒体の流体力学に対する決定的効果を有してもよいことを、留意すべきである。
【0086】
一例として、処理済み面の視覚的識別を可能にするために、組成物のマトリクスは、少なくとも1つの着色剤を含んでもよい。その量が摩擦性能を劣化させることがなければ、いずれの型の周知の有機着色剤が使用されてもよい。一例として、およそ1%の量の着色剤が使用されてもよい。
【0087】
一例として、例えば熱または紫外線放射への曝露に起因する酸化による劣化からコーティングを保護するために、組成物のマトリクスは、随意的に少なくとも1つの抗酸化物質を含んでもよい。ポリフェノール化合物、ナフチルアミン誘導体、および有機亜リン酸塩が、抗酸化物質の主要な群を構成することが、想起されるだろう。
【0088】
Halox(登録商標)SZP391の商標名で販売されているケイ酸オルトリン酸ストロンチウムカルシウム亜鉛は、腐食防止剤として満足できる結果をもたらした。
【0089】
組成物の要素の混和性は、その均質化をさせる共溶媒によって強化されてもよい。アクリル官能基を有する共重合体、例えばDisperplast(登録商標)1018の商標名で販売されているものなどが使用されてもよい。
【0090】
随意的に、組成物は、例えばPolyfluo(登録商標)400XFの商標名で販売されているものなど、剤形を疎水性および撥水性(hydrofugic)にする目的で、ポリエチレン/ポリテトラフルオロエチレン複合材料を含んでもよい。
【0091】
雄型EMおよび雌型EFねじ山付き要素の潤滑化される部分の表面処理は、有利であると証明することができる。実際に、組立ておよび分解試験は、適切な転写フィルムを得るために、サンドブラストもしくはショットピーニングなどの機械的処理によって、または、結晶性鉱物表面蒸着、例えば酸などによる化学攻撃、表面の化学変換を生じるリン酸亜鉛、リン酸マンガン、またはシュウ酸塩処理に基づく反応性または非反応性処理を使用する、表面の物理的もしくは化学的修飾によって、潤滑剤組成物を吸着または吸収することができるように表面を被覆して変更することが、好ましいことを示している。これらの表面処理のうち、リン酸塩化は、基本的な耐腐食保護に加えて、摩擦に絶えられる、高強度で非常に安定した転写フィルムを確立することになる、適切な接着を有する表面を生成することができるので好ましい。
【0092】
また、具体的には孔に挿入され得る寸法を有するナノ材料で表面の孔を含浸することからなる、補完的表面処理を実行することも、好ましい。上記含浸の目的は、孔によって形成された部位を、コーティングのための良好な接着を維持しながら表面を腐食から保護する不動態化作用を伴う材料を用いて、遮断および飽和することである。
【0093】
ここで、組成物の2つの非限定例を提示する。これらの例は、Vallourec and Mannesmann Tubes社のOCTG(Oil Country Tubular Goods:産油国向け管状製品)部門によって公開された技術文書を使用した、低合金鋼(グレードL80)における、公称直径177.8mm(7インチ)、単位長さあたりの重量43.15kg/m(29lb/ft)のVAM TOP HC型ねじ山付き管状接続部によく適合する。雄型ねじ山付き要素は、例えば、コーティング(組成物)の塗布の前に亜鉛によるリン酸塩化を受け(4から20g/mの範囲の層の重量)、雌型ねじ山付き要素はマンガンによるリン酸塩化を受けている(8から20g/mの範囲の層の重量)。雄型EMおよび雌型EFねじ山付き要素は130℃まで予備加熱され、その後、150℃で融解状態に保たれている潤滑剤組成物の35μm厚の層がホットスプレーによって塗布される、組成物は、以下の重量組成を有する:
LICOWAX(登録商標)PE 520の商標名でCLARIANT社より販売されているポリエチレンワックス:15%、
ペンタエリトリトールでエステル化されたロジン、特にDERTOLINE(登録商標)P2Lの商標名でLES DERIVES RESINIQUES ET TERPENIQUES (DRT)社より販売されているもの:15%、
LANCO(登録商標)1955SFの商標名で販売されているカルナバワックス:5%、
LIGASTAB(登録商標)ZN70の商標名で販売されているステアリン酸亜鉛:25%、
VISCOPLEX(登録商標)6−950の商標名でROHMAX社より販売されているPAMA:8%、
Halox(登録商標)SZP391の商標名で販売されているケイ酸オルトリン酸ストロンチウムカルシウム亜鉛:20%、
フッ化黒鉛:5%、
窒化ホウ素:2%、
二硫化タングステン:5%、
Disperplast(登録商標)1018の商標名で販売されている、官能基を有する共重合体:5%。
【0094】
この例において、マトリクスの型は粘弾性である、固体潤滑剤は、二硫化タングステンおよびフッ化黒鉛からなる。
【0095】
一変形例において、組成物は、重量で10%から25%、好ましくは10%から20%の、ロジンエステル樹脂を含む。
【0096】
組成物は、以下の通りである:
ポリエチレンワックス:10%、
Polyfluo(登録商標)400XFの商標名で販売されている、ポリエチレン/ポリテトラフルオロエチレン複合材料:5%、
ペンタエリトリトールでエステル化されたロジン:15%、
カルナバワックス:7%、
ステアリン酸亜鉛:25%、
PAMA:8%、
ケイ酸オルトリン酸ストロンチウムカルシウム亜鉛:15%、
フッ化黒鉛:7%、
Algoflon(登録商標)L203の商標名で販売されているポリテトラフルオロエチレン:2%、
窒化ホウ素:1%、
Disperplast(登録商標)1018の商標名で販売されている、官能基を有する共重合体:5%。
【0097】
一変形例において、重量パーセンテージは、上に上げられた2つの例の間である。
【0098】
一変形例において、例えば、130℃まで予備加熱された雄型EMおよび雌型EFねじ山付き要素へのホットスプレーによって、以下の重量組成を有して150℃で融解状態に保たれている潤滑剤組成物の35μm厚の層を塗布することが可能である:
ポリエチレンワックス:12%、
Polyfluo(登録商標)400XFの商標名で販売されている、ポリエチレン/ポリテトラフルオロエチレン複合材料:3%、
ペンタエリトリトールでエステル化されたロジン:15%、
カルナバワックス:7%、
ステアリン酸亜鉛:25%、
PAMA:8%、
ケイ酸オルトリン酸ストロンチウムカルシウム亜鉛:18%、
フッ化黒鉛:6%、
二硫化タングステン:2%、
Disperplast(登録商標)1018の商標名で販売されている、官能基を有する共重合体:4%。
【0099】
この変形例において、マトリクスの型はまた、粘弾性である。
【0100】
一変形例において、重量組成は以下の通りである:
ポリエチレンワックス:17%、
Polyfluo(登録商標)400XFの商標名で販売されている、ポリエチレン/ポリテトラフルオロエチレン複合材料:1%、
ペンタエリトリトールでエステル化されたロジン:20%、
カルナバワックス:5%、
ステアリン酸亜鉛:19%、
PAMA:10%、
ケイ酸オルトリン酸ストロンチウムカルシウム亜鉛:12%、
フッ化黒鉛:5%、
ポリテトラフルオロエチレン:1%、
窒化ホウ素:2%、
二硫化タングステン:3%、
Disperplast(登録商標)1018の商標名で販売されている、官能基を有する共重合体:5%。
【0101】
官能基を有する共重合体は、カップリング剤の役割を果たす。
【0102】
一変形例において、以下の構成要素の各々の重量パーセンテージは、0.1%未満、好ましくは0.01%未満であってもよい:スルホン酸およびカルボン酸カルシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、三酸化ビスマス、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、アルキル化ジフェニルアミン、亜リン酸トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)。
【0103】
上記ホットスプレー技術は、潤滑剤組成物を液相で高温のまま保持すること、および自動温度調整されたジェット噴霧器を使用して噴霧することからなる。潤滑剤組成物は、その融点よりも10℃から50℃高い温度まで加熱され、確実に表面が適切に覆われるように、予備加熱された表面上に融点よりも高い温度で噴霧される。
【0104】
このホットスプレー技術を使用する代わりに、例えば、水性乳剤の形態の潤滑剤組成物を噴霧することが可能である。乳剤および基層は周囲温度であってもよく、そのため乾燥時間が必要である。乾燥時間は、潤滑剤組成物を60℃から80℃の間まで、および/または表面を50℃から150℃の間まで予備加熱することによって、著しく削減されるだろう。
【0105】
本発明は、例示のみによって与えられた、上記の潤滑剤組成物の例および(雄型および雌型)ねじ山付き要素の例に限定されるものではなく、添付請求項の範囲に含まれる、当業者が予想し得るいずれの変形例をも包含する。
【0106】
従って、本発明は、上述のもの(VAM TOP)とは異なる型のねじ山付き要素にも関する。一例として、本発明は、内側当接部を備えるねじ山付き管状接続部のねじ山付き要素であって、結合されたもの(例えばNEW VAM、VAM ACE、DINOVAM、VAM HW ST型のものなど)、または一体型フラッシュ(integral flush)もしくはセミフラッシュ型のもの(例えばVAM SL、VAM MUST、VAM HP、VAM HTF型のものなど)にも関する。
【0107】
本発明はまた、仕様書API 7によって、または特定の製造業者からのより厳格な仕様書によって定義される、パイプまたはその他の回転掘削コンポーネント用のねじ山付き接続部の要素(非限定的な例示によれば、高級ねじ山付き接続部VAM EIS、VAM TAURUS、TORQMASTER TM4、ならびにそのような接続部の派生型および発展型など)にも関する。
【0108】
さらに、上記において、原則的に、1つ以上の固体潤滑剤を含む潤滑剤組成物、および少なくとも1つの流動抵抗性材料を含む固体粘稠性を備えるマトリクスを記載した。しかしながら、本発明は、ペースト状マトリクス、化学作用を伴う少なくとも1つの極圧添加剤、および1つ以上のブレーキ添加剤を含む、セミドライ潤滑剤組成物にも関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ山(FE、FI)および組立当接部(BVM、BVF)に接着する固体フィルムを備えるねじ山付き管状接続部(JF)のコンポーネント(T2、T1)のねじ山付き要素(EM、EF)の少なくとも1つのねじ山(FE、FI)および前記組立当接部(BVM、BVF)を覆うように意図された、ねじ山付き接続部の組立てのためのフィルム形成用潤滑剤組成物であって、前記組立当接部(BVM、BVF)は、端部組立相の間に前記ねじ山付き管状接続部(JF)の別のコンポーネント(T1、T2)の別の当接部(BVF、BVM)を接触支持するように意図されており、前記潤滑剤組成物はマトリクスを含み、マトリクスは、潤滑の補完物として、前記組成物に、少なくとも閾値に等しい肩トルク抵抗値を与えるように選択された、少なくとも1つの流動抵抗性材料をさらに含み、前記マトリクスは、ベタ付かない固体粘稠性を有することを特徴とする、潤滑剤組成物。
【請求項2】
前記流動抵抗性材料が、前記ねじ山付き管状接続部(JF)のために取得されたAPI RP 5A3型グリースの基準肩トルク抵抗値の95%、好ましくは100%に等しい閾値に少なくとも等しい肩トルク抵抗値を得ることができるように配置されている、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
重量組成として10%から25%の流動抵抗性材料を含む、請求項1または2に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
流体抵抗性材料が、重量組成として、アルファピネン、ペンタエリトリトールでエステル化されたロジン酸および樹脂酸、グリセリンで水素化およびエステル化されたロジン酸および樹脂酸、および/または重合化されたロジンに基づく、1%から99%のテルペン樹脂を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
流体抵抗性材料が、重量組成として、ペンタエリトリトールでエステル化された1%から99%のロジン酸および樹脂酸を含む、請求項4に記載の潤滑剤組成物。
【請求項6】
重量組成として、10%から20%のポリエチレンワックス、0から5%のポリエチレン/ポリテトラフルオロエチレン複合材料、10%から25%、好ましくは10%から20%のエステル化ロジン、0から20%、好ましくは4%から12%のカルナバワックス、20%から30%、好ましくは20%から26%のステアリン酸亜鉛、15%から25%、好ましくは18%から22%のケイ酸オルトリン酸ストロンチウムカルシウム亜鉛、4%から12%、好ましくは4.5%から7%のフッ化黒鉛、0から4%のポリテトラフルオロエチレン、1%から3%の窒化ホウ素、2%から8%、好ましくは3%から6%の二硫化タングステン、および/または2%から8%の結合剤を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項7】
引裂荷重の比較的高い値および/または強力な粒子間相互作用または粒子間の誘引結合および/または高いモース硬度および/または運動に対して抵抗的もしくは対向する流体挙動を有する、鉱物または無機物粒子の分散によって構成される、少なくとも1つのブレーキ添加剤を含み、各ブレーキ添加剤は、少なくとも酸化ビスマス、酸化チタン、コロイド状シリカ、およびカーボンブラックからなる群より選択される、請求項1から6のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項8】
マトリクス中に分散された固体潤滑剤の粒子を含み、前記固体潤滑剤の粒子は、クラス1、2、3、および4のうちの少なくとも1つからの潤滑剤の粒子を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
前記マトリクスが、粘弾性挙動を呈する少なくとも1つの結合剤を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項10】
前記マトリクスが少なくとも1つの金属石けんを含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項11】
石けんが、少なくともステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウム、およびステアリン酸ビスマスからなる群より選択される、請求項10に記載の潤滑剤組成物。
【請求項12】
前記マトリクスが、植物性、動物性、鉱物性、または合成起源の少なくとも1つのワックスを含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項13】
前記マトリクスが、100℃で少なくとも850mm/sの動粘性率を有する少なくとも1つの液体ポリマーを含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項14】
前記液体ポリマーが、少なくともポリアルキルメタクリレート、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリジアルキルシロキサン、およびポリシロキサンからなる群より選択される、請求項13に記載の潤滑剤組成物。
【請求項15】
ねじ山付き管状接続部(JF)のコンポーネント(T2、T1)のねじ山付き要素(EM、EF)において、前記ねじ山付き要素(EM、EF)は、組立作業終了時に前記ねじ山付き管状接続部(JF)の別のコンポーネント(T1、T2)の当接部(BVF、BVM)が接触支持しなければならない少なくとも1つのねじ山(FE、FI)および組立当接部(BVM、BVF)を含み、少なくとも前記ねじ山(FE、FI)および前記組立当接部(BVM、BVF)が、ねじ山(FE、FI)および組立当接部(BVM、BVF)の表面に接着して、上記請求項の1つに記載の潤滑剤組成物で構成される、薄層で被覆されていることを特徴とする、ねじ山付き要素。
【請求項16】
10μmから50μmの範囲の厚みの潤滑剤組成物で少なくとも部分的に覆われていることを特徴とする、請求項15に記載のねじ山付き要素。
【請求項17】
前記組立作業の後に、別のねじ山付き要素(EF、EM)の対応する密封面(SEF、SEM)と緊密密封接触するように意図され、前記潤滑剤組成物で覆われた、密封面(SEM、SEF)も含むことを特徴とする、請求項15または16に記載のねじ山付き要素。
【請求項18】
表面が、腐食に対して保護するように作用するコーティングまたはフィルムで予備被覆されていることを特徴とする、請求項15から17のいずれか1項に記載のねじ山付き要素。
【請求項19】
雄型ねじ山付き要素および雌型ねじ山付き要素を含むねじ山付き管状接続部において、前記ねじ山付き要素のうち少なくとも1つが請求項15から18のいずれか1項に記載のものであることを特徴とする、ねじ山付き管状接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−505934(P2012−505934A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531377(P2011−531377)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007100
【国際公開番号】WO2010/043316
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(504255249)ヴァルレック・マンネスマン・オイル・アンド・ガス・フランス (30)
【氏名又は名称原語表記】VALLOUREC MANNESMANN OIL & GAS FRANCE
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】