説明

管理型廃棄物処分場、及びその施工方法

【課題】脆弱地盤への施設も容易にでき、また遮水性基礎壁の遮水性も安全性も十分に得られ、且つ深部にまで遮水性基礎壁が及んでもその付設コストが経済的であり、しかも地盤面以上の上部に盛土としての矢板壁等を必要とする場合でもそれを簡単に付設することができる管理型廃棄物処分場及びその施工方法を提供すること。
【解決手段】本発明の管理型廃棄物処分場は、廃棄物の収容層及びその下方の透水層の下部に存在する不透水層に至る側方の一部又は全周に遮水性基礎壁が設けられる廃棄物処分場において、上記遮水性基礎壁が焼却灰(F)とセメント(C)とからなる混合スラリーを用いたセメント系地盤混合処理工法によって形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理型廃棄物処分場及びその施工方法に関するものであり、より詳細には、廃棄物収容層の下方の透水層にも遮水構造が求められ、また軟弱地盤の改良も必要とされる管理型廃棄物処分場及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、管理型廃棄物処分場が敷設される場合、遮水構造が求められるため、廃棄物収容層から下方の透水層の深部に至るまで遮水性基礎壁或いは遮水構造を付設する必要がある。
従来、このような遮水構造としては、ソイルセメント遮水層を形成したもの(特許文献1を参照)、粘土の遮水層、ソイルセメント層、及びシルト層からなる多層遮水構造或いは壁が提案されている(特許文献2を参照)。
【0003】
また、軟弱地盤等に管理型廃棄物処分場が設けられる施工方法としては、地盤層にベントナイトを含む膨潤性粘土鉱物と、その層中に連続長繊維を分散状態で含有させるものなどが提案されている(特許文献3を参照)。
【0004】
図6(a)乃至(c)は、海又は湖が隣接する従来の管理型廃棄物処分場の概略断面図である。
通常、海又は湖に隣接するような場所にあっては、その臨界域に地表面以上の盛土壁、矢板壁、地中連続壁等が上部に必要される場合がある。
【0005】
図6(a)に示すように、従来の管理型廃棄物処分場41の臨海面の遮水壁42は、サンドコンパクションパイル43と、一対の矢板壁44と、一対の矢板壁44間に設けられた中詰材45とからなる。サンドコンパクションパイル43は、透水層46に埋設され、またパイル43に遮水効果がないため、複数の鋼管矢板がパイル43の上面から底部まで付設され、一対の矢板壁44が形成される。また、矢板壁44は鋼管矢板同士の継ぎ手に止水処理が成されている。
【0006】
図6(b)に示すように、従来の管理型廃棄物処分場51の臨界面の遮水壁52は、サンドコンパクションパイル43と、地中連続壁又は矢板壁44と、パイル43上に形成された盛土壁53とからなる。地中連続壁又は矢板壁44は盛土壁53の上方からパイル43の底部まで付設されている。
【0007】
図6(c)に示すように、従来の管理型廃棄物処分場61の臨界面の遮水壁62は、サンドコンパクションパイル43と、地中連続壁又は矢板壁44と、パイル43上に形成された盛土壁53と、ケーソン63、及びケーソン基礎64とからなる。地中連続壁又は矢板壁44は盛土壁53の上方からパイル43の底部まで付設されている。
また図7(a)乃至(d)は従来の陸地等に管理型廃棄物処分場を設計する場合をしめした概略断面図である。
【0008】
図7(a)に示すように、従来の管理型廃棄物処分場71の遮水壁72は盛土壁73、遮水シート74とから構成されている。また、図7(b)に示すように、従来の管理型廃棄物処分場81の遮水壁82は盛土壁53と、地中連続壁又は矢板壁44とから構成されている。そして、地中連続壁又は矢板壁44は盛土壁53の上面から透水層46の底部まで付設されている。図7(c)に示すように、従来の管理型廃棄物処分場91の遮水壁92は、掘られた透水層46に収容層93が形成され、収容層93の周囲には遮水シート74が敷設されている。更に、図7(d)に示すように、従来の管理型廃棄物処分場95の遮水壁97は、掘られた透水層46に収容層93が形成され、地中連続壁又は矢板壁44は上面から透水層46の底部まで付設されている。
【0009】
しかしながら、図6(a)乃至(c)に示すように、管理型廃棄物処分場41、51、61にあっては、サンドコンパクションパイル43には遮水性がないため、矢板壁等を付設するが上部からパイル43の底部に至り、また鋼管矢板の継ぎ手に遮水加工を施す必要がある。このような補助工法は施工コストを高め、また継ぎ手部の漏れが生じ易いため遮水に対する信頼性が悪い。
また、図7(a)又は(c)に示すように、遮水シート74の場合は、その破損が起こり易く、管理型廃棄物処分場としての安定性に欠ける可能性がある。
【0010】
更に、図7(b)又は(d)に示すように、地中連続壁又は矢板壁44を使用した場合も上述と同様な不具合が見られる。
【特許文献1】特開平9−88582号公報
【特許文献2】特開平10−277515号公報
【特許文献3】特開平9−41973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来の技術における課題及び要求に鑑みてなされたものであり、脆弱地盤への施設も容易にでき、また遮水壁の遮水性能にも安全性が十分に得られ、しかも基礎壁面の上部に矢板壁、地中連続壁等の遮水壁を必要とする場合でもそれを簡単且つ経済的に付設することができる管理型廃棄物処分場及びその施工方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、焼却灰、例えばフライアッシュ(F)、セメント(C)とからなる混合スラリー(必要により石膏(G)等を含むことあり。)とを用いたセメント系地盤混合処理工法(以下、FGC−DM法という。)により均一な低強度改良地盤が構築でき、また、その改良地盤が管理型廃棄物処分場の遮水壁として十分な遮水性を有していること、しかも、矢板、地中連続壁等の基礎壁天面で打設或いは付設が極めて容易且つ経済的にできることを見出し、本発明に至ったものである。
即ち、本発明に係る管理型廃棄物処分場及びその施工方法は、以下の構成或いは手段からなることを特徴とし、上記課題を解決するものである。
【0013】
(1)廃棄物の収容層及びその下方の透水層の下部に存在する不透水層に至る側方の一部又は全周に遮水性基礎壁が設けられる廃棄物処分場において、上記遮水性基礎壁が焼却灰(F)とセメント(C)とからなる混合スラリーを用いたセメント系地盤混合処理工法によって形成されていることを特徴とする管理型廃棄物処分場。
【0014】
(2)上記遮水性基礎壁は、その天面に矢板壁或いは地中連続壁からなる遮水壁が付設されて、該処分場の上部が該遮水壁によって形成されていることを特徴とする上記(1)記載の管理型廃棄物処分場。
(3)上記地盤混合処理して形成した遮水性基礎壁は、その一軸圧縮強度が100乃至1500kN/mの範囲にあり、且つ透水係数1×10−5cm/sec以下で厚さ5m以上の不透水性地層と同等以上の遮水性を有するものであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の管理型廃棄物処分場。
(4)上記混合スラリー中の上記焼却灰(F)に対するセメント(C)の配合質量比率(C/F)が2/10乃至20/10の範囲にあることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の管理型廃棄物処分場。
(5)上記混合スラリーには石膏(G)が添加され、上記焼却灰(F)に対する石膏(G)の配合質量比率(C/G)が1/10以下の範囲にあることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の管理型廃棄物処分場。
(6)上記混合スラリーの上記透水層の深部に添加される量が深部体積1m当たり100乃至400リットルの範囲にあることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の管理型廃棄処分場。
(7)上記混合スラリー中の焼却灰が汚泥の焼却灰、製鉄炉からのスラグ、又は火力発電所からのフライアッシュ(F)であることを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の管理型廃棄物処分場。
(8)上記焼却灰が発電所の電気集塵機で集塵されたフライアッシュ(F)であることを特徴とする上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の管理型廃棄物処分場。
【0015】
(9)上記(1)記載の管理型廃棄物処分場の施工方法において、上記深部の土層に上記混合スラリーを混合して上記遮水性基礎壁を形成することを特徴とする管理型廃棄物処分場の施工方法。
【0016】
(10)上記遮水性基礎壁の天面に矢板壁或いは地中連続壁からなる遮水壁を付設して該処分場に遮水壁を形成することを特徴とする上記(9)記載の管理型廃棄物処分場の施工方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る管理型廃棄物処分場によれば、廃棄物処分場の遮水性基礎壁がフライアッシュ(F)とセメント(C)とからなる混合スラリーを用いたセメント系地盤混合処理工法によって形成されているので、脆弱地盤への施設も容易にでき、また遮水性基礎壁の遮水性も安全性も十分に得られ、且つ深部にまで遮水性基礎壁が及んでもその付設コストが経済的であり、しかも地盤面以上の上部に盛土としての矢板壁等を必要とする場合でもそれを簡単に付設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る管理型廃棄物処分場及びその施工方法の好ましい実施の形態を詳述する。尚、本発明に係る管理型廃棄物処分場及びその施工方法は以下の実施形態及び実施例に限るものではない。
【0019】
図1(a)乃至(c)は、本発明に係る管理型廃棄物処分場の遮水性基礎壁が設けられる一例を示した概略断面図である。図2(a)乃至(c)は、本発明に係る管理型廃棄物処分場の遮水性基礎壁が設けられる他の例を示した概略断面図である。図3は、掘削処理機を使用して、本発明に係る管理型廃棄物処分場の遮水性基礎壁を構築する工程を示す概略図である。図4は本発明の混合スラリーと粘性土との混合率に対する透水係数の一例を示した特性線図である。図5(a)及び(b)は矢板壁或いは地中連続壁等の付設する際の打ち込みの適否を判定するマップエリアを示す図である。
【0020】
図1(a)乃至(c)に示すように、管理型廃棄物処分場1a乃至1cは、廃棄物の収容層2及びその下方の透水層3の下部に存在する不透水層に至る側方に遮水性基礎壁(FGC−DM)5が設けられる。上記遮水性基礎壁5は焼却灰であるフライアッシュ(F)と石膏(G)とセメント(C)とからなる混合スラリーを用いたセメント系地盤混合処理工法によって形成されている。尚、石膏(G)は必ずしも混合スラリー中に配合することはないが、必要があれば配合することが好ましい。
【0021】
図1(a)に示す管理型廃棄物処分場1aにあっては、上記遮水性基礎壁5は、上記混合処理工法により形成した基礎地盤壁で形成され、天面7に矢板壁9(複数の鋼矢板)が付設されて、遮水性基礎壁5の上部の遮水壁が矢板壁9によって形成されている。即ち、臨海側に面す遮水性基礎壁5は、透水層3の軟弱部分に上記遮水基礎壁5が形成され、廃棄物の収容層2と海層10との境界の上部に矢板壁9が付設され、矢板壁9内に中詰材11が充填されて遮水壁が形成されている。また、矢板壁9の矢板間の継ぎ目は必要な場合には止水施工がなされている。尚、矢板壁9は鋼矢板からなるが、鋼管矢板、或いはその他の矢板を用いても良い。
【0022】
図1(b)に示す管理型廃棄物処分場1bにあっては、上記遮水性基礎壁5は、その天面7から矢板9または地中連続壁13が付設され、上部には盛土壁15も形成されている。地中連続壁13は天面から遮水性基礎壁5を掘削しながら地盤とセメントとを混合或いはセメントを注入しながら付設される。上記遮水性基礎壁5は低高度であるため、上記掘削は容易に成され、補助工程等は必要とされない。
【0023】
尚、図1(c)に示す管理型廃棄物処分場1cにあっては上記地中連続壁13と共に、遮水性基礎壁5の天面7にはケーソン14が設けられ、地中連続壁13とケーソン14によって盛土形成している。
【0024】
また、図2(a)乃至(c)は、本発明に係る管理型廃棄処分場を陸に設けたものである。図2(a)に示すように、管理型廃棄処分場1dは遮水性基礎壁(FGC−DM)5と盛土壁15と矢板壁9又は地中連続壁13とからなる。上記遮水性基礎壁5は浸透層3の軟弱部分に上記混合スラリーを注入しながら形成され、矢板壁9は盛土壁15を貫通して遮水性基礎壁5の上層内に支持されている。図2(b)に示すように、管理型廃棄処分場1eは、上記遮水性基礎壁5は浸透層3の軟弱部分に上記遮水性基礎壁5が形成されると共に、盛土壁15の内部にも形成されている。また、図2(c)に示すように、管理型廃棄物処分場1fは、廃棄物の収容部2が透水層3に形成され、上記遮水性基礎壁5は透水層3に形成されている。
【0025】
本発明の各管理型廃棄物処分場1において、上記地盤混合処理して形成した遮水性基礎壁5の一軸圧縮強度が100乃至1500kN/mの範囲にあること、特に、100乃至1000kN/mの範囲にあることが望ましい。
遮水性基礎壁5の一軸圧縮強度1000kN/mを超えると、遮水性基礎壁5の天面7への矢板壁9、地中連続壁13等の付設が容易にできなくなり、その設置作業が不経済となる。
【0026】
本発明の管理型廃棄物処分場1において、上記地盤混合処理して形成した遮水性基礎壁5は、透水係数10−5cm/sec以下で厚さ5m以上の不透水性地層と同等以上の遮水性を有するものであることが望ましい。
設置する軟弱地盤の土質にもよるが、後述するFGC−DM法による地盤にあっては、1×10−5cm/sec程度、及びそれ以下の透水係数を十分に得ることができると共に、管理型廃棄物処分場における透水層の遮水が十分に得られる。
【0027】
本発明の管理型廃棄物処分場1において、上記遮水性基礎壁5はフライアッシュ(F)と石膏(G)とセメント(C)とからなる混合スラリーを用いたセメント系地盤混合処理工法(以下、FGC−DM工法という。)によって形成されている。
上記遮水性基礎壁5は、全体が軟弱地盤であれば、管理型廃棄物処分場1の周囲全体を上記基礎地盤壁としても良く、また海面或いは湖面等に面した一部にのみ上記基礎地盤壁を設けても良い。
【0028】
尚、上記遮水性基礎壁5は矢板を使用せず、上部を含めて全体を上記混合スラリーを用いたセメント系地盤混合処理工法によって形成されている基礎地盤壁とすることができるが上部壁が必要な場合、例えば、図1に示すように海面或いは湖面に隣接した上記遮水性基礎壁5のように、埋立地等の場合には上部に盛土壁が必要となることから、上部に矢板壁9、地中連続壁13等を付設するが、本発明の管理型廃棄物処分場1において、矢板壁9或いは地中連続壁13の付設が極めて容易であることから上記遮水性基礎壁5は特に好ましい。
【0029】
上記FGC−DM工法は、適用地盤の範囲が広く、工法の効果として沈下量が少なく安定に必要な地盤を幅の広い範囲の強度で得ることができることから、液状化対策、止水対策としての利用の他、杭や矢板の打設も可能となる工法である。また、この工法は仮設工事として、土留め矢板等を直接改良地盤に打設することが可能であり、従来のセメント系固化施工方法のような高圧噴射工法等の補助工法を併用せずに経済的な仮設工事が可能となる工法である。
【0030】
即ち、上記FGC−DM法によって上述したように低強度の均一地盤を経済的に構築でき、得られる改良軟弱盤壁(遮水性基礎壁5)は低強度均一地盤であるため、矢板壁9等の遮水工を通常の打設工法で行うことができる。また、このような地盤は、原地盤の透水係数を少なくとも2乃至4オーダーまで低下させることができ、しかも低強度改良地盤の挙動については、改良地盤を構造物(剛体)と考えるのではなく、通常の土と同じように考え剪断破壊を前提とした地盤の安定解析により評価することができる。
【0031】
従って、地表面以下の地盤の遮水機能はFGC−DM法による地盤改良体、地表面以上は、上記地盤に通常工法で打設した矢板等の一般的な遮水工法とを組み合わせることにより遮水機能を十分に確保すると共に、基礎地盤の安定については、通常の地盤と同様の安定解析により評価するものである。
【0032】
本発明の管理型廃棄物処分場1において、上記混合スラリー中の上記フライアッシュ(F)に対するセメント(C)の配合質量比率(C/F)が2/10乃至20/10の範囲にあることが好ましく、特に2/10乃至10/10の範囲にあることが好ましい。
上記配合比率が2/10未満であると、混合スラリーの添加量が増大し、施工時間が大幅に増大する等で経済的に均一な地盤とすることができない。一方、上記配合比率が20/10を超えると、上記改良地盤は高硬度となるため、上記矢板壁9等の打設が困難となる。また、配合セメント量の増加により、コストアップ等の不具合がある。
【0033】
また、上記混合スラリーには石膏(G)が添加すると良いが、上記焼却灰(F)に対する石膏(G)の配合質量比率(C/G)は1/10以下の範囲にあることが望ましい。
【0034】
本発明の管理型廃棄物処理場1において、上記混合スラリーの上記深部に添加される量は深部体積1m3あたり100リットルから400リットルの範囲にあることが好ましく、特に150リットルから250リットルの範囲にあることが好ましい。
【0035】
上記混合スラリーの添加量が100リットル/m3未満では通常のポンプによる圧送では不連続になるとともに改良された地盤は十分に均一とならないため、遮水機能を十分に付与することができない。一方、400リットル/m3を超えると通常の施工速度では地盤からスラリーが漏出することになり、漏出を防ぐためには施工速度を減じるなどの対応が必要となり、いずれにしても経済的で均一に地盤を改良することができない。
【0036】
本発明の管理型廃棄物処分場1において、上記混合スラリー中のフライアッシュ(F)は発電所の電気集塵機で集塵されたフライアッシュであることが好ましい。また、上記石膏(G)は発電所の排煙脱硫過程の副成される石膏からなることが好ましい。
【0037】
上記発電所等から発生する石炭灰等の産業副産物を混合材として上記混合スラリーに適用することができ、またその基礎地盤の信頼性が十分に確保される。これらの産業副産物を混合材とすることによって、今後、増加してくる大水深、基盤層深度が深いなどに対しても経済的な対応が十分にできる。
【0038】
次に、本発明に係る管理型廃棄物処分場の施工方法について簡単に説明する。
本発明の管理型廃棄物処分場の施工方法においては、先ず、上記深部の土層に上記混合スラリーを混合して深部に上記遮水性の基礎地盤壁を形成する。
【0039】
図1に示す上記遮水性基礎壁5は、主に軟弱地盤中に構築される。
例えば、海上施工船によって臨海部に上記遮水性基礎壁5を構成することができる。海上施工船は図示しないが、船上に中央制御室、処理タワー、固化材サイロ(セメント、フライアッシュ)、及びプラント部を具備しており、セメントサイロ及びプラント部で調製された混合スラリーは処理タワーの頂部から長尺な掘削処理機内に供給される。
【0040】
図3に示すように、上記処理機21の構造は、攪拌軸22と攪拌軸22に支持されている攪拌翼23とからなる。攪拌翼23は上部に設置された攪拌モータ24により攪拌され、上記遮水性基礎壁5を付設する軟弱地盤に当接され、その軟弱地盤を掘り探る。尚、攪拌軸22の内部を通って攪拌翼23先端からFGCスラリーが吐出される。
【0041】
次に、処理機21の遮水性基礎壁5を構築する工程を簡単に説明する。
図3に示すように先ず、(1)の工程で、遮水性基礎壁5を形成する場所に攪拌軸22を位置決めする。(2)乃至(4)の工程で、上記石炭灰及びセメントからなる改良材(FGCスラリー)を排出しながら攪拌軸22を浸水層3に挿入する。(5)及び(6)の工程で、攪拌軸22の挿入と引き抜きを繰り返して、土壌との攪拌を十分に行う。(7)及び(8)の工程で、処理機21の攪拌軸22が取り出される。上記工程は、所定の位置で繰り返して行なわれる。
【0042】
次に、図1(a)等に示すように遮水性基礎壁5の天面に矢板壁(複数の鋼管矢板)9を打設して、矢板壁9の鋼管矢板同士の継ぎ手を封止施工した後、矢板壁9間に中詰材を充填して管理型廃棄物処分場1を施工する。
【0043】
この場合、遮水性基礎壁5の強度は上述したように100乃至1500kN/mの範囲にあるため、内部削孔などを形成する必要がなく、直接打設することができる。
このように構成される管理型廃棄物処分場1及び施工方法にあって、上記遮水性基礎壁5は地震などに対しても十分な安全性が見られることが判る。
また、本発明の施工方法では、上記遮水性基礎壁は改良地盤の土質に合わせて、混合スラリーへのフライアッシュの配合量を調製することで廃棄物処分場に適した遮水機能を持たせることができる。
【実施例】
【0044】
本発明に係る管理型廃棄物処分場及びその施工方法を実施例により更に具体的に説明する。尚、本発明に係る管理型廃棄物処分場及びその施工方法は以下の実施例に限るものではない。
【0045】
管理型廃棄物処分場の付設予定地における海底の透水層から粘性土(K=1.3×10−5cm/sec)を採取して、その粘性土と下記表1で示す各成分比の混合スラリーとを混合して実施例1乃至9のサンプル改良地盤を作製した。
尚、表中のフライアッシュ(F)は、高砂石炭火力発電所から採取したもの、石膏(G)は、同発電所の燃焼ボイラーからの排脱硫装置から採取したもの、セメント(C)は秩父セメント社製の普通ポルトランドセメントを使用した。
【0046】
【表1】

【0047】
また、実施サンプルに対して以下の性能を評価した。その結果を表2及び図4に示した。評価試験は以下のとおりである。
(1)透水係数の評価方法
JIS A 1218 土の透水試験方法による。
(2)一軸圧縮強度の評価方法
JIS A 1216 土の一軸圧縮試験方法による。
(3)矢板の付設評価方法
通常矢板の打込みは、バイブロハンマにより実施され、地盤条件、使用鋼矢板・H型鋼の形式、打込み長によりバイブロハンマの規格が選定される。
【0048】
「建設省土木工事積算基準平成11年度版」によると図5(a)及び(b)に示すように定めている。
図において、N値換算で上限値50程度までないと直接打設に適さない。
また、N値と一軸圧縮強度(qu)の関係は、「地盤調査法(地盤工学会)」によれば、qu=12.5Nの式で示される。
これらを用いて矢板の付設評価を行なう。
N=50の場合で一軸圧縮強度(qu)=625kN/mとなるが、実施工上では、1,000kN/m以下であれば矢板の直接打設は可能と言われている。
【0049】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る管理型廃棄物処分場は、廃棄物の収容層及びその下方の透水層の下部に存在する不透水層に至る側方の一部又は全周に、遮水性基礎壁が設けられる廃棄物処分場であり、上記遮水性基礎壁がフライアッシュ(F)とセメント(C)とからなる混合スラリーを用いたセメント系地盤混合処理工法によって形成されていることから、脆弱地盤への施設も容易にでき、また遮水性基礎壁の遮水性も安全性も十分に得られ、且つ深部にまで遮水性基礎壁が及んでもその付設コストが経済的であり、しかも地盤面以上の上部に盛土としての矢板壁等を必要とする場合でもそれを簡単に付設することができる産業上の利用可能性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1(a)乃至(c)は、本発明に係る管理型廃棄物処分場の遮水性基礎壁の一例を示した概略断面図である。
【図2】図2(a)乃至(c)は、本発明に係る管理型廃棄物処分場の遮水性基礎壁の一例を示した概略断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る管理型廃棄物処分場の遮水性基礎壁を構築する工程を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の混合スラリーと粘性土との混合率に対する透水係数の特性線図である。
【図5】図5(a)及び(b)は矢板壁或いは地中連続壁等の付設する際の打ち込みの適否を判定するマップエリアを示す図である。
【図6】図6(a)乃至(c)は、従来の管理型廃棄物処分場の遮水性基礎壁の一例を示した概略断面図である。
【図7】図7(a)乃至(d)は、従来の管理型廃棄物処分場の遮水性基礎壁の一例を示した概略断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 管理型廃棄物処分場
2 廃棄物の収容層
3 透水層
5 遮水性基礎壁
9 矢板壁
13 地中連続壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の収容層及びその下方の透水層の下部に存在する不透水層に至る側方の一部又は全周に遮水性基礎壁が設けられる廃棄物処分場において、上記遮水性基礎壁が焼却灰(F)とセメント(C)とからなる混合スラリーを用いたセメント系地盤混合処理工法によって形成されていることを特徴とする管理型廃棄物処分場。
【請求項2】
上記遮水性基礎壁は、その天面に矢板壁或いは地中連続壁からなる遮水壁が付設されて、該処分場の上部が該遮水壁によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の管理型廃棄物処分場。
【請求項3】
上記地盤混合処理して形成した遮水性基礎壁は、その一軸圧縮強度が100乃至1500kN/mの範囲にあり、且つ透水係数1×10−5cm/sec以下で厚さ5m以上の不透水性地層と同等以上の遮水性を有するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の管理型廃棄物処分場。
【請求項4】
上記混合スラリー中の上記焼却灰(F)に対するセメント(C)の配合質量比率(C/F)が2/10乃至20/10の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の管理型廃棄物処分場。
【請求項5】
上記混合スラリーには石膏(G)が添加され、上記焼却灰(F)に対する石膏(G)の配合質量比率(C/G)が1/10以下の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の管理型廃棄物処分場。
【請求項6】
上記混合スラリーの上記透水層の深部に添加される量が深部体積1m当たり100乃至400リットルの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の管理型廃棄処分場。
【請求項7】
上記混合スラリー中の焼却灰が汚泥の焼却灰、製鉄炉からのスラグ、又は火力発電所からのフライアッシュ(F)であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の管理型廃棄物処分場。
【請求項8】
上記焼却灰が発電所の電気集塵機で集塵されたフライアッシュ(F)であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の管理型廃棄物処分場。
【請求項9】
上記請求項1記載の管理型廃棄物処分場の施工方法において、上記深部の土層に上記混合スラリーを混合して上記遮水性基礎壁を形成することを特徴とする管理型廃棄物処分場の施工方法。
【請求項10】
上記遮水性基礎壁の天面に矢板壁或いは地中連続壁からなる遮水壁を付設して該処分場に遮水壁を形成することを特徴とする請求項9記載の管理型廃棄物処分場の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−122783(P2006−122783A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312613(P2004−312613)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【Fターム(参考)】