説明

管理装置と画像形成システム

【課題】 ネットワーク上の機器に対して不定期な応答要求を出さなくても、ネットワーク上の機器の状態を判定できるようにする。
【解決手段】 CPUのスリープ判定部は、ステップ12で、画像形成装置から取得した第1機器情報と第2機器情報の内容に違いがあるか否かを判断し、違いが有ると判断したら、ステップ13で、画像形成装置はスリープ中であると判断し、ステップ14で、ネットワーク制御部へ定期送信抑制信号を送信し、ネットワーク制御部が画像形成装置に対して定期的に要求する機器情報要求パケットの送信を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネットワーク上の機器の状態を管理するPC、サーバを含む管理装置と、ネットワーク上の複数の端末装置が共有して利用するファクシミリ装置、プリンタ、複写機、複合機を含む画像形成装置とその画像形成装置の状態を管理する管理装置とからなる画像形成システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワーク上の機器に対して定期的に応答要求を出し、その応答要求に対する応答状態の変化を検出し、その検出結果から機器がエラー状態であると判断すると、上記機器を利用するユーザへその旨を電子メールで通知する技術があった。
しかし、上述の技術では、ネットワーク上の機器から応答がなかった場合、その機器がエラー状態であるか否かを判断することができない。
そこで、ネットワーク上の機器に対して所定のタイミングで応答要求を出し、その応答要求に対する応答状態の変化を検出し、その検出結果(例えば、機器がエラー状態であることや正常状態であること)をネットワーク上の所定の端末装置へメールで知らせる管理装置(例えば、特許文献1参照)があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のような従来の管理装置では、ネットワークに接続されている機器が正常か異常かを判断するために、定期的な問い合わせの他に任意のタイミングで応答要求を出すので、ネットワーク上の機器が待機状態よりも消費電力が低い状態(スリープ状態)にする機能を有し、そのスリープ中の時に不定期な問い合わせに答えるために待機状態に戻さなければならなくなり、省電力効果が低減するという問題があった。
この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ネットワーク上の機器に対して不定期な応答要求を出さなくても、ネットワーク上の機器の状態を判定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は上記の目的を達成するため、ネットワーク上の機器の機器情報を取得して保持し、その保持した機器情報に基づいて上記機器の状態を管理する管理装置において、上記取得した機器情報を記憶する記憶手段と、上記機器から新たに取得した機器情報の内容と、上記記憶手段に先に記憶されている機器情報の内容を比較し、その2つの機器情報の内容が互いに異なる場合、上記記憶手段に先に記憶されている機器情報と区別して上記新たに取得した機器情報を上記記憶手段に記憶させると共に、上記機器の機器情報が更新されたと判定する更新判定手段と、上記更新判定手段によって上記機器の機器情報が更新されたと判定された場合、上記記憶手段から上記先に記憶されている機器情報と上記新たに取得した機器情報とを読み出し、その2つの機器情報の内容に基づいて上記機器がスリープ中か否かを判定するスリープ判定手段を設けた管理装置を提供する。
【0005】
また、上記スリープ判定手段によって上記機器がスリープ中であると判定された場合、上記機器からの機器情報の定期的な取得を抑えるように制御する手段を設けるとよい。
さらに、上記スリープ判定手段を、上記2つの機器情報の内容について、一方が上記機器の応答する内容として適切な内容であるのに対し、もう一方が通常では得られないような不適切な内容である場合に上記機器がスリープ中であると判定する手段にするとよい。
また、上記機器がスリープ中と判定された場合、上記先に記憶されている機器情報の内容を表示する手段を設けるとよい。
さらに、上記不適切な内容とは、一方の機器情報がSNMP通信で取得したMIBオブジェクトのうちの通常は書き換え可能なオブジェクトを示しているのに対し、もう一方の機器情報が書き換えを拒絶するような内容、又は一方の機器情報がSNMP通信で取得したMIBオブジェクトが存在するという応答であったのに対し、もう一方の機器情報はMIBオブジェクトが存在しないことを示す内容であるとするとよい。
【0006】
また、上記機器がスリープ中と判定された場合、上記機器に対して上記機器がスリープ中では取得できない情報を要求するとき、上記機器に対してヌルデータを送信して上記機器をスリープ状態から復帰させ、上記機器から上記スリープ中では取得できない情報を取得する手段を設けるとよい。
さらに、上記のような管理装置と、その管理装置が管理する機器である画像形成装置とにより構成されている画像形成システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
この発明による管理装置は、ネットワーク上の機器に対して不定期な応答要求を出さなくても、ネットワーク上の機器の状態を判定することができる。
また、この発明による画像形成システムは、ネットワーク上の機器に対して不定期な応答要求を出さなくても、ネットワーク上の画像形成装置の状態を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図2に示す各ホスト装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施例のホスト装置と画像形成装置からなる画像形成システムの構成を示す図である。
【図3】図1に示す第nホスト装置が定期的に画像形成装置の機器情報を取得するときの処理を示すフローチャート図である。
【図4】図1に示す第nホスト装置において画像形成装置がスリープ中か否かを判定する処理を示すフローチャート図である。
【0009】
【図5】図1に示す第nホスト装置において画像形成装置がスリープ中か否かの判定結果に基づいて表示するときの処理を示すフローチャート図である。
【図6】RFC1213に定義されているMIBツリーのサンプルを示す図である。
【図7】プリンタMIBを利用したプリンタの機器情報の一例を示す図である。
【図8】図1に示す第nホスト装置においてスリープ中と判定した画像形成装置に印刷を依頼するときの処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
〔実施例〕
まず、この発明の実施例における用語について説明する。
スリープ:ネットワーク上の機器の消費電力が通常動作時の消費電力よりも少ない状態のことをいう。例えば、機器がファクシミリ装置、プリンタ、複写機、複合機を含む画像形成装置の場合、印刷実行中ではなく、印刷要求を待っているような状態であり、印刷時よりも低い消費電力の状態で待機している状態のことをいう。
ホスト装置:ネットワーク上の機器の状態を管理するPC、サーバを含む管理装置に相当する。また、ネットワーク上の機器に接続されたデジタルカメラを含む装置の状態を管理又は監視することが可能な装置をいう。このホスト装置は、ネットワーク上の機器を後述するSNMPを利用して機器情報を収集し、その機器情報に基づいて機器を管理・監視する場合、SNMPマネージャと呼ばれる。
【0011】
画像形成装置:ネットワーク上の端末装置が利用するファクシミリ装置、プリンタ、複写機、複合機を含む機器である。ホスト装置によってネットワーク経由で管理・監視されるネットワーク機器であり、上記ホスト装置に対してエージェントと呼ぶ。
シンプルネットワークマネジメントプロトコル(Simple Network Management Protocol:SNMP):今日、幅広く使用されているネットワークを管理するためのプロトコルである。
マネジメントインフォメーションベース(Management Information Base:MIB):SNMPを用いてネットワークを管理する際に使用されるツリー構造の情報データベースである。
【0012】
MIBオブジェクト(MIB OBJECT):MIBに格納されている一つ一つの情報をオブジェクト(OBJECT)と呼ぶ。このオブジェクトのことをMIBオブジェクトと表記する。このMIBオブジェクトは情報の要素によってツリー構造で管理されており、それぞれのMIBオブジェクトにはオブジェクトID(OBJECT ID:OID)という識別子が付与されている。SNMPマネージャ(ホスト装置)は、エージェント(ネットワーク経由で監視されるネットワーク機器)に対して、OIDを指定して情報の取得や設定の変更を要求することができる。
ネットワーク:有線又は無線によるインターネット、ローカルエリアネットワーク(Local Area Network:LAN)を含む通信網である。
【0013】
図2は、この発明の実施例のホスト装置と画像形成装置からなる画像形成システムの構成を示す図である。
この画像形成システムは、多数のホスト装置(図中の第1ホスト装置〜第nホスト装置:nは正の整数)1と1台の画像形成装置2とがネットワーク3を介して通信可能に接続されており、各ホスト装置1が画像形成装置2の印刷,スキャナ等の各種機能を共有して使用するネットワーク環境が構築されている。
また、各ホスト装置1は定期的に画像形成装置2の状態(スリープ中か否かの状態を含む)を示す機器情報を収集して保持し、その機器情報に基づいて画像形成装置2を管理している。
【0014】
図1は、図2に示す各ホスト装置の主要部の構成を示すブロック図であり、同図では、複数のホスト装置を代表して、第nホスト装置1を示している。
この第nホスト装置1には、CPU10が搭載されている。
このCPU10は、図示を省略したROMに格納された制御プログラムを、作業領域であるRAMを使用して実行することにより、ネットワーク制御部11,更新判定部12,スリープ判定部13の機能を果たす。
ネットワーク制御部11は、ネットワーク3上の画像形成装置2の間で機器情報取得パケット、印刷データを含むネットワークデータの送信及び受信の制御を行う。
このネットワーク制御部11は、ネットワーク3上の画像形成装置2の状態を把握するために、SNMPプロトコルに従い、「Get Request」「Get next Request」「Set Request」を含むコマンドを使用して、画像形成装置2に対して定期的に機器情報取得パケットを送り、画像形成装置2に機器情報を要求する。
【0015】
画像形成装置2は、第nホスト装置1からの「Get Request」「Get Next Request」「Set Request」を含むコマンドによる機器情報取得パケットを受信すると、「Get Response」「Set Response」を含むコマンドによる応答パケットで自装置の状態を示す機器情報を返送する。
ネットワーク制御部11が上記応答パケットによって取得した画像形成装置2の機器情報は更新判定部12に送られる。
更新判定部12は、ハードディスク装置を含む記憶部14に記憶されている保管済み機器情報である前回に取得した画像形成装置2の機器情報(「第2機器情報」という)を読み出し、今回取得した最新の機器情報(最新情報)と比較し、今回取得した機器情報の内容が第2機器情報の内容と異なると判断すると、上記第2機器情報を第1機器情報として記憶部14に記憶し、今回取得した機器情報を第2機器情報として記憶部14に記憶する。
【0016】
したがって、記憶部14には、画像形成装置2から取得した機器情報について、ある時間に取得して状態が変わる前の各機器情報を第1機器情報1a,1b....1nとして記憶して保持され、応答内容が変わり、更新された後の各機器情報を第2機器情報2a,2b,2c...2nとして記憶して保持される。図中の機器情報に付したサフィックスのa,b,c,...nは同じ種類の「request」に対する「response」であるという形で保管している。
更新判定部12は、機器情報の更新を検出すると、スリープ判定部13に情報更新通知を通知する。
スリープ判定部13は、更新判定部12から情報更新通知を受け取ると、その情報更新通知で通知された機器情報の該当するサフィックスの第1機器情報と第2機器情報を記憶部14から読み出し、その第1機器情報と第2機器情報の内容から、画像形成装置2がスリープ中(通常待機状態より消費電力が少ない状態)か否(スリープ状態から通常待機状態へ移行した状態)かを判定する。
【0017】
スリープ判定部13は、画像形成装置2がスリープ中であると判定すると、ネットワーク制御部11へ送信する定期送信抑制信号をアサートにする。
ネットワーク制御部11は、スリープ判定部13からの定期送信抑制信号がアサートされると、定期的に画像形成装置2の状態を把握するために送信していた、「Get Request」「Get Next Request」「Set Request」のコマンドを含む機器情報取得パケットの送信を極力行わないように制御する。
このような制御をすることにより、画像形成装置2がスリープ状態から解除される回数を削減することが可能となる。
【0018】
また、第nホスト装置1において画像形成装置2の状態の情報を表示したり、画像形成装置2の消耗品を管理するときには、画像形成装置2がスリープ中(スリープ状態に移行している)と判定した場合、LCDを含むディスプレイである表示部15に、記憶部14に保存されている該当する第1機器情報の状態を表示、または第1機器情報を使用するので、画像形成装置2の状態を表示させたりする度に機器情報を収集し、画像形成装置2を頻繁にスリープ状態から復帰させるようなことを防ぐことができる。
さらに、画像形成装置2がスリープ中でないと判定した場合には、第2機器情報の値(最新の値)を使用しても、再度、機器情報の取得のための「Get Request」「Get Next Request」「Set Request」を送信しても、画像形成装置2の省エネルギー効果を低減させることがない。
【0019】
次に、第nホスト装置1が定期的に画像形成装置2の機器情報を取得するときの処理について詳しく説明する。
図3は、第nホスト装置1が定期的に画像形成装置2の機器情報を取得するときの処理を示すフローチャート図である。
第nホスト装置1は、ネットワーク3上の画像形成装置2の状態を定期的に把握するために、SNMPプロトコルの「Get Request」「Get Next Request」「Set Request」を含むコマンド使用し、画像形成装置2に対し、機器情報取得パケット(Set Requestの場合、設定)によって機器情報の要求を送信する。
画像形成装置2は、上記機器情報取得パケットを受信すると、「Get Response」「Set Response」を含むコマンドを使用し、応答パケットで自装置の状態を示す情報を含む機器情報を第nホスト装置1へ返す。
【0020】
図3に示すように、ステップ(図中「S」で示す)1で、画像形成装置はスリープ中か否かを判断する。
ここでは、ネットワーク制御部はスリープ判断部の定期送信抑制信号がアサートされているか否かを確認し、定期送信抑制信号がアサートされていれば画像形成装置はスリープ中であると判断し、この処理を終了して、定期送信によるネットワーク機器の機器情報取得を行わない。
一方、ステップ1の判断で、定期送信抑制信号がアサートされていない場合には画像形成装置はスリープ中ではないか、または、十分な情報が集っていないために画像形成装置がスリープ中か否かを判断できないかのいずれかであり、ここでは画像形成装置はスリープ中ではない判断し、ステップ2へ進む。
ステップ2では、この場合には定期送信により画像形成装置の機器情報取得処理を行うために、画像形成装置へSNMP通信で機器情報取得パケットを送信する。
【0021】
画像形成装置の機器情報の取得には、「Get Request」「Get Next Request」「Set Request」を含むコマンドによる機器情報取得パケットを送り、画像形成装置2からツリー構造のMIBオブジェクトの情報を取得するということを逐次行っていく。
ここで画像形成装置2から逐次得られた全ての応答パケットの情報を記憶部14に記憶していくと、記憶部14のメモリ容量を圧迫する原因となるので、記憶部14に格納するMIBオブジェクトは予め候補を絞っておくとよい。
【0022】
図6は、RFC1213に定義されているMIBツリーのサンプルを示す図である。
最初の標準MIBとしてRFC1156で定義されたのはMIB−1であり、管理対象オブジェクトは114種類定義されているが、OIDの割り当てを単純でわかり易くするために8個のグループ(system,interfaces,at:address translation,ip,icmp,tcp,udp,egp)に分類している。
その後のRFC1213において、新たに57種類の管理対象オブジェクトが追加され、171種類の管理対象オブジェクトを11種類に分類したMIB−2が定義された。
11個のグループはsystem,interfaces,at:address translation,ip,icmp,tcp,udp,egp,oim,transmission,snmpとなる。
【0023】
例えば、systemグループには、機器(この実施例では「画像形成装置2」)のシステムに関する設定が管理されていて、その内訳はsysDescr:entityの情報、sysObjectID:ベンダのOID,sysUpTime:最後に初期化されてからの経過時間、sysContact:ノードの管理者の情報、sysName:ドメイン名、sysLocation:ノードの物理的な位置,sysServices:Entityが提供するサービスを示している。
これらの情報をOIDを元に管理することが可能となっている。
また、interfacesグループには、機器の保有するハードウェアインターフェースに関係する設定が管理されている。
最初のオブジェクトであるifNumberには、この機器が保有するインターフェース数が格納されており、その数に応じて設定を格納するテーブル行が追加される。
その内訳は公知なので説明を省略する。
【0024】
例えば、ifTypeを参照したいときには、機器を管理する側のホスト装置(この実施例では「第nホスト装置1」)がsystemのOIDのGET SNMPv2−SMIパケット(OIDはinterfaces)を送信すると、そのGET SNMPv2−SMIパケットで指定されているOID(interfaces)に所属していて、その機器で管理することが可能なOID情報であるifNumberのOIDとifTableのOIDをホストPCに返す。
この時にifNumberのOIDに所属する値はIFの数となるが、ifTableのOIDに所属する値は、その下の階層として持っているオブジェクトの数になる。
図6に示したツリーの場合には、ifindexからifSpecificまでで22のオブジェクトとなる。
【0025】
ここで、ホスト装置は、ネットワークに接続されている機器はifTypeというオブジェクトを管理対象として保持していることを認識できるので、GET SNMPv2−SMIパケットのOIDにifTypeを指定して送信すると、機器からifTypeの値を取得することが可能となる。
このような制御を行うことで、ネットワーク上の機器(画像形成装置2)の管理対象オブジェクトを、ホスト装置(第nホスト装置1)は参照して操作することが可能となっている。
この中の全てのMIBに対する応答結果のオブジェクトを記憶部14に記憶するのではなく、予め、スリープ中の応答と通常状態の応答として判断できるようなオブジェクトだけを記憶部14への保存対象として管理する。
【0026】
例えば、画像形成装置2の場合、hrDeviceStatus,hrPrinterStatus等は定期的に第nホスト装置1が機器情報として取得してくるMIBオブジェクトであり、また、これらのMIBオブジェクトは、画像形成装置2がスリープ中であるが、そのままで使用できる状態であるということを示す状態が存在していないので、このhrDeviceStatusやhrPrinterStatusは記憶部14への保存対象としても良い。
【0027】
図3の説明に戻り、ステップ3で、画像形成装置から応答パケットを受信すると、ステップ4で、更新判定部は記憶部に先に保存されている同じMIBオブジェクト(前回の取得で記憶されたMIBオブジェクト)の内容を参照し、今回取得したMIBオブジェクトの内容と比較し、今回取得した機器情報は最新情報か否かを判断する。
もし、記憶部14に保存されていたMIBオブジェクトと、今回取得したMIBオブジェクトの内容が異なっていた場合には、最新情報と判断し、ステップ5で、更新判定部はスリープ判定部に情報更新通知(更新されたMIBオブジェクトがわかるような識別情報を含むとよい)を送信し、ステップ6で、記憶部に先に保存されていたMIBオブジェクト(第2機器情報)を記憶部上で第1機器情報として記憶し、今回取得したMIBオブジェクトを第2機器情報として保存して、この処理を終了する。
【0028】
このようにして、記憶部14上には常に同じ画像形成装置2のMIBオブジェクトについて、その画像形成装置2の状態が変化する前の第1機器情報と最新の情報である第2機器情報が保管されることになる。
もし、記憶部14上に今回取得したMIBオブジェクトと同じOIDのMIBオブジェクトが第2機器情報として保管されていない場合には、更新判定部12は比較を行わずに記憶部14に第2機器情報として今回取得したMIBオブジェクトを保管する。
このときには、更新判定部12はスリープ判定部13への情報更新通知を送信しない。
一方、ステップ4の判断で、取得した機器情報が最新情報ではないと判断したら、すなわち、記憶部から取得した第2機器情報と今回取得したMIBオブジェクトの内容が一致している場合には、更新判定部は記憶部上の第1機器情報も第2機器情報も更新しないし、スリープ判定部への情報更新通知も行わないで、この処理を終了する。
つまり、更新判定部12がスリープ判定部13に情報更新通知を送信する条件としては、第2機器情報と今回取得した機器情報(MIBオブジェクト)の内容が異なるときだけになる。
【0029】
このようにして、第nホスト装置1では、画像形成装置2から定期的に取得した複数の応答パケットの内容の内、過去の機器情報(応答内容が変わる前の内容の機器情報)と新たに取得した機器情報(応答内容が過去のものと変わった内容の機器情報)の2つを記憶し、その2つの機器情報の内容を比較することにより、ネットワーク上に定期的な要求の他に追加して特別なパケットによる要求を発信せずに、画像形成装置2がスリープ中か否かを判定することが可能になる。
【0030】
この実施例では、画像形成装置2に対して定期的なタイミングで取得する機器情報の違いをただ検出するのではなく、前回は正常応答(通常応答してくると想定されている範疇の応答)であったにも関わらず、明らかに異なる応答をした場合(応答が無い場合ではない)に、省エネルギー状態に入っているという判断を行う。また、機器情報を時系列的に記憶する際、その時系列の時間については、必ず、前後ではなく、例えば、前回の内容と変更が無ければ、前回の内容を保存したままにし、内容に変更が有れば新しい内容を記憶する。
こうすることで、2つの機器情報を記憶するだけで常に画像形成装置2の状態の変化を検出することを可能としている。
【0031】
次に、第nホスト装置1において画像形成装置2がスリープ中か否かを判定する処理について詳しく説明する。
図4は、第nホスト装置1において画像形成装置2がスリープ中か否かを判定する処理を示すフローチャート図である。
スリープ判定部13は、ステップ11で情報更新通知を受信したか否かを判断し、情報更新通知を受信したら、ステップ12で、記憶部から第1機器情報と第2機器情報を読み出してそれぞれの内容を比較し、第1機器情報と第2機器情報の内容に違いが有るか否かを判断する。
【0032】
上記判断では、具体的には、例えば、第1機器情報の内容ではオブジェクトが存在するという内容であったのに、第2機器情報ではオブジェクトが存在しないといった内容になっている場合、第1機器情報ではエラーになっていないが、第2機器情報では本来エラーになることはありえない箇所がエラー発生を通知している場合、第1機器情報では書き換え可能であったのに第2機器情報では書き込み自体が行えないと示されている場合のように、本来ありえないような応答にある時点から内容が変化している場合は、第1機器情報と第2機器情報の内容に違いが有ると判断する。
ステップ12で第1機器情報と第2機器情報の内容に違いが有ると判断したら、ステップ13で、画像形成装置はスリープ中であると判断し、ステップ14で、ネットワーク制御部へ定期送信抑制信号を送信し、ネットワーク制御部が機器情報取得パケットを送信しないように制御し、この処理を終了する。
【0033】
一方、ステップ12で第1機器情報と第2機器情報の内容に違いが無いと判断したら、ステップ15で、画像形成装置はスリープ中ではないと判断し、ステップ16で、ネットワーク制御部への定期送信抑制信号を解除し、ネットワーク制御部が定期的に機器情報取得パケットを送信するように戻し、この処理を終了する。
このようにして、画像形成装置2がスリープ中であると判定した場合には、ネットワーク制御部11からの画像形成装置2の機器情報取得のための定期的なSNMP通信(Get Request,Get Next Request,Set Request)の送信を行わないように制御することが可能となり、画像形成装置2をスリープ状態のままに維持することが可能となる。
したがって、画像形成装置2を長い時間スリープ状態としておくことが可能となり、消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0034】
次に、スリープ状態を判定するために、画像形成装置2からスリープ中であることを示す情報を送信した場合、ネットワークパケットがネットワーク3上に流れるためにネットワークトラフィックが増加する。
また、そのネットワークパケットを受け取った第nホスト装置1が、その送られてきたネットワークパケットがスリープ中であることを示していることを理解できないと、第nホスト装置1としては、何を意味しているか不明なネットワークパケットを受け取っただけで意味がない。
この場合、画像形成装置2と第nホスト装置1の両方が双方の状態を確認できるような変更を同時に搭載していないと、画像形成装置2がスリープ中であることを認識することができない。
【0035】
上記画像形成装置2がプリンタである場合にはプリンタMIBを利用できる。
図7は、プリンタMIBを利用したプリンタの機器情報の一例を示す図である。
第nホスト装置1は、プリンタの状態を把握するために、「Get Request」または「Get Next Request」で定期的にプリンタに対し、「hrDeviceStatus」「hrPrinterStatus」を送信する。
プリンタは「hrDeviceStatus」「hrPrinterStatus」を受信すると、それに応答する「Get Response」を応答する。
「hrDeviceStatus」「hrPrinterStatus」ではともに、プリンタが使用可能な状態でスリープ中を表すような状態は存在しない。
【0036】
図7に示すように、「hrDeviceStatus」「hrPrinterStatus」はともに、「other(1)」「running(2)」「idle(3)」「printing(4)」「down(5)」を使用して、「hrDeviceStatus」「hrPrinterStatus」でプリンタの状態を表すが、これらの値をあえて、図7にない値として「Get Response」を返したり、または、そもそも「hrPrinterStatus」というOIDは存在しないというように、本来プリンタであれば絶対に存在するMIBオブジェクトをあたかも存在していないかのように応答したり、「Set Request」で書き換えできるはずの値を書き換えできないというように「Set Response」で応答してきた場合、スリープ判定部13はプリンタがスリープ中であると判定する。
【0037】
なお、一例としてプリンタMIBを挙げたが特にプリンタに限る必要はない。
また、決め打ちの実装をする場合には、変わる前の第1機器情報と最新の情報である第2機器情報を取得及び比較せずに第2機器情報だけ使用すればよいが、様々な種類のネットワークデバイスではサポートしているMIBオブジェクト自体も種類が異なるし、第nホスト装置1側も様々な機器を監視するため、その時の応答と製品との結びつけを行うには実装が困難となる。
そこで、予め取得しておいた第1機器情報の内容と、新しく取得した機器情報であり、第1機器情報と異なる内容の機器情報を比較することによって、第1機器情報の内容はネットワーク機器として通常ありうる範囲の応答内容であるが、新しく取得した機器情報(第2機器情報)がネットワーク機器として通常ありえないような内容の応答を返した場合はスリープ中であるという判定をすることによって、製品毎の実装依存を排除しながらも、ネットワーク上の機器への定期的な機器情報の取得を排除することができる。
【0038】
このようにして、ネットワーク3上の画像形成装置2からスリープ時に余分なネットワークパケットが送信されるわけではないので、ネットワークパケットを増加させずに済む。また、ネットワーク3上の画像形成装置2の応答内容が通常ではありえない値になっているだけで、第nホスト装置1としては内容を把握することは可能であり、スリープ中か否かの状態を把握するための新たなネットワークパケットによるネットワークトラフィックの増加を抑えることが可能になる。
【0039】
次に、この実施例の第nホスト装置1では、画像形成装置2がスリープ中か否かを判定するために、ある時間とその後の時間で取得した2つの機器情報を必要としている。
ただし、今回取得した機器情報とそれより以前の時間で取得した直前の機器情報を比較対象と必ずしもしているわけではない。
その理由としては、ある時間に取得したときの機器情報と、今回新しく取得した機器情報を比較したときに互いの内容が同じ場合には、画像形成装置2は正常に動作しているのかと、スリープ中であるのかが判断できないからである。
もし、予め設定された特定値になっていればスリープ中であると判断できるのであれば、1回の機器情報の取得で容易に判定可能であるが、ネットワーク3上の画像形成装置2の種別が不明であり、その画像形成装置2がスリープ時にどんな応答を返してくるかを理解した上で第nホスト装置1上のプログラムの開発をしないと、ホスト装置はネットワーク3上の画像形成装置2がスリープ中か否かを判定することができない。
【0040】
これは、第nホスト装置1と画像形成装置2とが共に同じメーカの製品であれば容易に対応可能と考えられるが、どちらかが他社の製品の場合には細かい仕様が不明なために、期待する効果が得られないことが考えられる。
そこで、第nホスト装置1では、まずは、画像形成装置2の正常な応答結果のMIBオブジェクトの内容を保持しておき、その保存しておいた正常なMIBオブジェクトの内容と比較して明らかに尋常でない内容の応答結果を取得したときに、画像形成装置2がスリープ中であると判定することによって、第nホスト装置1側のプログラム開発時に各製品の振る舞いを気にせずに実装することが可能になるので、開発の手間を削減することも可能になる。
【0041】
次に、画像形成装置2は異常動作しているわけではなく、ただスリープ中であるだけで、印刷コマンドがくれば使用できるのに、使用できないような状態に扱われていると、遠隔地から管理しているときに壊れてしまったと思われたり、正しい機器情報をスリープ中に取得できないことにより、画像形成装置2の稼動率が低いと思われることがある。
そこで、CPU10は、画像形成装置2がスリープ中であると判定した場合、記憶部14の第1機器情報の内容を表示部15に表示することにより、画像形成装置2スリープ中であっても、第nホスト装置1上では通常稼動状態として扱われていることを、第nホスト装置1の作業者に示すことができるので、画像形成装置2が壊れていると間違われたり、稼働率が低いと思われることがなくなる。
【0042】
図5は、第nホスト装置1において画像形成装置2がスリープ中か否かの判定結果に基づいて表示するときの処理を示すフローチャート図である。
CPU10は、ステップ21で、スリープ判定部による判定結果に基づいて画像形成装置はスリープ中か否かを判断し、スリープ中なら、ステップ22で、表示部に記憶部の第1機器情報を表示し、この処理を終了する。
また、ステップ21の判断で、画像形成装置はスリープ中ではないと判断したら、ステップ23で、表示部に記憶部の第2機器情報を表示し、この処理を終了する。
【0043】
次に、第nホスト装置1は、画像形成装置2がスリープ中か否かを判定し、スリープ中と判定した場合には、画像形成装置2の機器情報を取得するための「Get Request」「Get Next Request」を含む機器情報取得パケットの定期的な送信を抑制するように制御する。
しかしながら、画像形成装置2に印刷を依頼する場合、印刷時には画像形成装置2にセットされている原稿のサイズと方向を含む用紙情報、プリンタガンマの情報を含む印刷に必要な情報を取得しないと、第nホスト装置1では画像形成装置2へ送信する印刷データを生成できない。
【0044】
第nホスト装置1は、この印刷に必要な情報を取得する際、SNMPの「Get Request」「Get Next Request」のコマンドを使用して機器情報として取得するが、画像形成装置2がスリープ中の場合には、原稿サイズ、方向、プリンタガンマの情報は画像形成装置2のプリンタのエンジンを起動していないと状態が把握できないため、正しい原稿サイズ、方向、プリンタガンマの情報が含まれた機器情報が返信されない可能性がある。
【0045】
そこで、第nホスト装置1は、画像形成装置2に対して印刷を依頼する必要が生じた場合、画像形成装置2の原稿サイズと方向を含む用紙情報、プリンタガンマを含む印刷前に必要な情報が取得できていないとき、画像形成装置2へヌル(全て“0(ゼロ)”のデータ)データを印刷データとして送信し、画像形成装置2をスリープ状態から復帰させ、その後に、画像形成装置2に対してSNMPの「Get Request」「Get Next Request」のコマンドを使用して原稿サイズと方向を含む用紙情報、プリンタガンマを含む印刷前に必要な情報を含む機器情報を取得する。
【0046】
図8は、第nホスト装置1においてスリープ中と判定した画像形成装置2に印刷を依頼するときの処理を示すフローチャート図である。
CPU10は、画像形成装置がスリープ中であると判定した場合、その画像形成装置2への印刷要求が生じたとき、ステップ31で、画像形成装置に対しての印刷に必要な情報(原稿のサイズと方向を含む用紙情報、プリンタガンマの情報)が有るか否かを判断し、有れば、ステップ32で、その印刷に必要な情報に基づいて印刷データを作成し、画像形成装置へ印刷データを送信して印刷を開始させ、この処理を終了する。
【0047】
また、ステップ31の判断で、画像形成装置に対しての印刷に必要な情報がなければ、ステップ33で、画像形成装置へヌルデータの印刷データを送信し、画像形成装置をスリープ状態から通常の印刷可能な状態に復帰させ、画像形成装置に対して印刷に必要な情報が含まれた機器情報を取得し、最初の処理に戻り、今度は、ステップ31で印刷に必要な情報が有ると判断し、ステップ32で、その印刷に必要な情報に基づいて印刷データを作成し、画像形成装置へ印刷データを送信して印刷を開始させ、この処理を終了する。
このようにして、画像形成装置2のスリープ状態を最大限維持しつつ、印刷自体も正しく行うことが可能となる。
【0048】
上述の処理例では、画像形成装置2への印刷に必要な情報について説明したが、画像形成装置2から取得すべきその他の情報が正しく取得できていないと判断した場合にも、上述と同様にしてヌルデータを転送することでスリープ状態から復帰させることにより、画像形成装置2から所望の正しい情報を取得することができる。
このようにして、スリープ中と判定した画像形成装置2へヌルデータを送信することによりスリープ状態から復帰させ、正しい機器情報を取得できるので、正常に印刷を行うことが可能となるし、印刷させるためのスリープ復帰なので、スリープ時間を無駄に短縮させるようなことはない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明による管理装置と画像形成システムは、ファクシミリ装置、プリンタ、複写機、複合機を含む画像形成装置、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータにおいて適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:第1ホスト装置〜第nホスト装置 2:画像形成装置 3:ネットワーク 10:CPU 11:ネットワーク制御部 12:更新判定部 13:スリープ判定部 14:記憶部 15:表示部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【特許文献1】特開2003−006068号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク上の機器の機器情報を取得して保持し、その保持した機器情報に基づいて前記機器の状態を管理する管理装置において、
前記取得した機器情報を記憶する記憶手段と、
前記機器から新たに取得した機器情報の内容と、前記記憶手段に先に記憶されている機器情報の内容を比較し、その2つの機器情報の内容が互いに異なる場合、前記記憶手段に先に記憶されている機器情報と区別して前記新たに取得した機器情報を前記記憶手段に記憶させると共に、前記機器の機器情報が更新されたと判定する更新判定手段と、
前記更新判定手段によって前記機器の機器情報が更新されたと判定された場合、前記記憶手段から前記先に記憶されている機器情報と前記新たに取得した機器情報とを読み出し、その2つの機器情報の内容に基づいて前記機器がスリープ中か否かを判定するスリープ判定手段とを設けたことを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記スリープ判定手段によって前記機器がスリープ中であると判定された場合、前記機器からの機器情報の定期的な取得を抑えるように制御する手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の管理装置。
【請求項3】
前記スリープ判定手段は、前記2つの機器情報の内容について、一方が前記機器の応答する内容として適切な内容であるのに対し、もう一方が通常では得られないような不適切な内容である場合に前記機器がスリープ中であると判定する手段であることを特徴とする請求項1又は2記載の管理装置。
【請求項4】
前記機器がスリープ中と判定された場合、前記先に記憶されている機器情報の内容を表示する手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記不適切な内容とは、一方の機器情報がSNMP通信で取得したMIBオブジェクトのうちの通常は書き換え可能なオブジェクトを示しているのに対し、もう一方の機器情報が書き換えを拒絶するような内容、又は一方の機器情報がSNMP通信で取得したMIBオブジェクトが存在するという応答であったのに対し、もう一方の機器情報はMIBオブジェクトが存在しないことを示す内容であることを特徴とする請求項3記載の管理装置。
【請求項6】
前記機器がスリープ中と判定された場合、前記機器に対して前記機器がスリープ中では取得できない情報を要求するとき、前記機器に対してヌルデータを送信して前記機器をスリープ状態から復帰させ、前記機器から前記スリープ中では取得できない情報を取得する手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の管理装置と、前記管理装置が管理する機器である画像形成装置とにより構成されていることを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−191523(P2010−191523A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32712(P2009−32712)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】