説明

管継手

【課題】管体の挿入が容易で且つ管挿入と逆方向に移動しなくても接続を完了させる。
【解決手段】支持手段3が、ロックリング2の外周部2bにおいて係止爪2aが傾斜状に突出する側の面2cと当接して支持することにより、管体Bの挿入に伴って外周部2bを弾性変形させて係止爪2aが管挿入方向へ移動し、また管体Bの挿入が終了すると、外周部2bを弾性復元させて係止爪2aが管抜け方向へ移動して管体Bの外周面B1に食い込み、この状態では抜け止め手段4が、ロックリング2の外周部2bにおいて係止爪2aが傾斜状に突出する側と反対の面2dと当接して支持することにより、管体Bを管抜け方向へ引き抜こうとしても管体Bが管抜け方向へ移動しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば合成樹脂やゴムなどの軟質材料からなる変形可能なホースやチューブ、又は硬質材料からなる変形不能なパイプなどの管体を、継手本体に対し差し込むだけで接続できる工具不要なワンプッシュ式の管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管継手として、挿入した配管に内圧が作用して抜け方向に変位するとロックリングが食い込んで係止する方式であり、継手本体内に内部部材(カラー)を介して断面略「く」の字状のロックリングが、継手本体内を僅かに進退変位可能に配置され、配管の抜け方向に内部部材の抜け止め材を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−232720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来の管継手では、継手本体に対し管体(配管)の挿入後に逆の管抜け方向へ移動することによりロックリングが食い込んで係止する方式であるため、管体を挿入しただけでは確実に接続できず、この挿入状態で例えば地震などの振動や衝撃が作用すると、継手本体から管体が抜け出るおそれがあった。
それにより、管体がその内部に流体を通す導管である場合には流体が漏れ出す可能性があるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、管体の挿入が容易で且つ管挿入と逆方向に移動しなくても接続を完了させること、などを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために本発明は、円筒状のニップルと、これに対向して傾斜状に突出する係止爪が周設されたロックリングとを備え、これらニップル及びロックリングとの間に管体が挿入されることで、この管体の外周面に前記ロックリング内周の前記係止爪を食い込ませて該管体を抜け不能に接続する管継手であって、前記ロックリングの外周部において前記係止爪が傾斜状に突出する側の面と当接して該外周部を弾性変形可能に支持する支持手段と、前記ロックリングの外周部において前記係止爪が傾斜状に突出する側と反対の面と当接して該外周部を弾性変形不能に支持する抜け止め手段とを備え、前記支持手段は、前記管体の挿入時に前記係止爪が前記管体の挿入方向へ移動自在となるように前記外周部を弾性変形可能に支持するとともに、前記管体の挿入終了時に前記係止爪が前記管体の挿入方向と逆の管抜け方向へ移動自在となるように前記外周部を弾性的に形状復元可能に支持し、前記抜け止め手段は、前記係止爪が前記管抜け方向へ移動不能となるように前記外周部を支持したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
前述した特徴を有する本発明は、支持手段が、ロックリングの外周部において係止爪が傾斜状に突出する側の面と当接して支持することにより、管体の挿入に伴って外周部を弾性変形させて係止爪が管挿入方向へ移動し、また管体の挿入が終了すると、外周部を弾性復元させて係止爪が管抜け方向へ移動して管体の外周面に食い込み、この状態では抜け止め手段が、ロックリングの外周部において係止爪が傾斜状に突出する側と反対の面と当接して支持することにより、管体を管抜け方向へ引き抜こうとしても管体が管抜け方向へ移動しないので、管体の挿入が容易で且つ管挿入と逆方向に移動しなくても接続を完了させることができる。
その結果、継手本体に対し管体の挿入後に逆の管抜け方向へ移動させてロックリングを食い込ませる必要がある従来のものに比べ、管体を挿入しただけで確実に接続でき、例えば地震などの振動や衝撃が作用しても、継手本体から管体が外れることがなく、長期に亘って接続状態を保持できる。
それにより、管体がその内部に流体を通す導管であっても流体が漏れ出す事故を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る管継手の全体構成を示す一部切欠正面図である。
【図2】部分的な拡大断面図であり、(a)が正面図、(b)が(a)の(2B)−(2B)線に沿える縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る管継手Aは、図1〜図2に示すように、その継手本体A1に円筒状のニップル1と、これに対向して傾斜状に突出する係止爪2aが周設されたロックリング2とを、主要な構成要素として備えている。
これらニップル1とロックリング2との間に形成される環状の管挿入スペースSに対し、管体Bが挿入されることで、管体Bの外周面B1にロックリング2内周の係止爪2aを食い込ませて管体Bをその挿入方向(以下「管挿入方向」という)と逆方向となる管体Bの抜け方向(以下「管抜け方向」という)へ引き抜き不能に接続している。
【0010】
ニップル1の外周面1aには、挿入された管体Bの内周面B2と対向する環状のパッキン1bを突設して、管体Bの内周面B2に弾性的に圧接させることが好ましい。
図1及び図2(a)に示される例では、ニップル1において後述するロックリング2の係止爪2aよりも管挿入方向の外周面1aに、一対の環状溝1cを凹設し、これら環状溝1cに断面形状が山形状に突出するパッキン1bを嵌着している。
また、その他の例として図示しないが、異なる断面形状のパッキン1bを配置することも可能である。
【0011】
ロックリング2は、例えばステンレスなどの金属などの板材でその内径が管体Bの外径よりも若干小さく且つ外径が管体Bの外径よりも大きい円環状に形成され、その内周には複数の係止爪2aを有し、これら係止爪2aの基部は外周部2bによって連結される。係止爪2a及び外周部2b又は少なくとも外周部2bを弾性変形可能に形成することが好ましい。
係止爪2aは、周方向へ所定間隔毎に複数突設され、これら係止爪2aを管挿入方向へ断面くの字形に傾斜するように屈曲形成して、各係止爪2aの先端を管挿入スペースSに向けそれぞれ突出させている。
ロックリング2の外周部2bは、周方向へ連続する円環状や周方向の一部を切断したC形状などに形成され、その外径を後述する支持手段3や抜け止め手段4の内径よりも大きくなるように設定している。
【0012】
さらに、継手本体A1には、ロックリング2の外周部2bにおいて係止爪2aが傾斜状に突出する側の面2cと当接して外周部2bを弾性変形可能に支持する支持手段3と、ロックリング2の外周部2bにおいて係止爪2aが傾斜状に突出する側と反対の面2dと当接して外周部2bを弾性変形不能に支持する抜け止め手段4とを備えている。
【0013】
支持手段3は、ロックリング2の外周部2bにおいて係止爪2aが傾斜状に突出する側の面2cの一部又は全部を、管体Bの挿入時に弾性変形可能に支持するとともに、管体Bの挿入終了時に弾性的に形状復元可能に支持している。
すなわち、支持手段3によって外周部2bの一部又は全部を、管挿入スペースSへ管体Bを挿入した時には、それに伴ってロックリング2の係止爪2aが管挿入方向へ移動(揺動)するように弾性変形させるとともに、管体Bの挿入が終了した時には、それに伴って管挿入方向へ移動したロックリング2の係止爪2aが管抜け方向へ移動(揺動)するように弾性復元させている。
詳しくは、ロックリング2の外周部2bにおいて周方向の一部を管挿入方向へ弾性変形不能に支持することが好ましい。
図1及び図2(a)(b)に示される例では、継手本体A1に、ニップル1の外周面1aと略平行に管抜け方向へ突出する外筒5が設けられ、この外筒5の管抜け方向の先端面を支持手段3としている。
また、その他の例として図示しないが、継手本体A1にニップル1及び外筒5を二重筒状に一体形成して、この外筒の管抜け方向の先端面や該外筒の内周面に形成される凹状の段部が支持手段3となるように構成することも可能である。
【0014】
抜け止め手段4は、ロックリング2の外周部2bにおいて係止爪2aが傾斜状に突出する側と反対の面2dを、管体Bに管抜け方向へ力が作用した時には、それに伴ってロックリング2の係止爪2aが管抜け方向へ移動不能となるように支持している。
図1及び図2(a)(b)に示される例では、外筒5に対して円筒状のキャップ6が設けられ、このキャップ6の管挿入方向の先端面を抜け止め手段4としている。
また、その他の例として図示しないが、継手本体A1に外筒5及びキャップ6を一体形成して、その内周面に形成される凹状の段部が抜け止め手段4となるように構成することも可能である。
【0015】
一方、管体Bは、例えば塩化ビニル樹脂などの軟質合成樹脂又はゴムなどからなる可撓性を有するホースや、このホースよりも小径な可撓性を有するチューブなどの可撓性管、又は例えばポリプロピレンなどの硬質合成樹脂からなる剛性を有するパイプなどの剛性管である。
【0016】
そして、本発明の実施形態に係る管継手Aによると、図2(a)の二点鎖線に示すように、ニップル1とロックリング2との間に形成される管挿入スペースSに管体Bが挿入されると、その先端に位置する切断面B3がロックリング2の係止爪2aに突き当たって、これら係止爪2aが管挿入方向へ押圧される。
これに伴い、ロックリング2の外周部2bが弾性変形して、係止爪2aを管挿入方向へ移動(揺動)し、それにより、管体Bがスムーズに挿入可能となる。
【0017】
その後、図1に示すように、管体Bの先端の切断面B3がニップル1の末端に形成される突き当たり面1dに当接するなどして、管体Bの挿入が終了すると、管体Bの外周面B1から係止爪2aへの押圧が解除されるため、ロックリング2の外周部2bが弾性的に形状復元して、管挿入方向へ移動(揺動)した係止爪2aが管抜け方向へ移動(揺動)して管体Bの外周面B1に食い込む。
それにより、継手本体A1のニップル1に対して管体Bが接続され、管体Bの内周面B2にパッキン1bの先端が圧接してシールされる。
この接続状態では、抜け止め手段4がロックリング2の外周部2bを管抜け方向へ移動不能に支持しているため、管体Bを管抜け方向へ引き抜こうとしても、ロックリング2の係止爪2aが管体Bの外周面B1に食い込んで管抜け方向へ係止されるため、管体Bが管抜け方向へ移動しない。
その結果として、管体Bの挿入が容易であり、且つ管挿入と逆方向となる管抜け方向に管体Bを移動しなくても継手本体A1に対する管体Bの接続を完了させることができる。
【0018】
さらに、ロックリング2の外周部2bが弾性変形可能に形成され、支持手段3が、ロックリング2の外周部2bの一部を管挿入方向へ弾性変形不能に支持している場合には、挿入した管体Bがロックリング2の係止爪2aに突き当たることにより、ロックリング2の外周部2bにおいて支持手段3による不支持部分が管挿入方向へ弾性変形して、係止爪2aが管挿入方向へ移動する。
また管体Bの挿入が終了すると、ロックリング2の外周部2bにおいて弾性変形した支持手段3による不支持部分が弾性的に形状復元して、係止爪2aが管体Bの外周面B1に向け突出して食い込む。
それにより、管体Bの挿入に対して係止爪2をスムーズに往復動させて確実に食い込むようにすることができる。
その結果、管体Bをスムーズで且つ確実に接続することができる。
次に、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0019】
この実施例は、図1及び図2(a)(b)に示すように、支持手段3が、周方向へ所定間隔毎に配設した複数の突起3aであり、これら突起3aをそれぞれロックリング2の外周部2bにおいて係止爪2aが傾斜状に突出する側の面2cに当接させることで、ロックリング2の外周部2bにおいて周方向の一部、すなわち突起3aと当接する部分のみが、管挿入方向へ弾性変形不能に支持されている。
【0020】
図1及び図2(a)(b)に示される例では、継手本体A1となる外筒5の管抜け方向の先端面に突起3aを周方向へ等間隔毎に4個それぞれ一体に突出形成している。
また、その他の例として図示しないが、突起3aを周方向へ等間隔毎に3個又は5個以上形成したり、外筒5と別個に形成された突起付きのリングを配置することも可能である。
【0021】
さらに、図示される例では、継手本体A1のニップル1に対して外筒5を例えば押し込み嵌合などによって着脱不能に装着し、外筒5の外周面に形成される段部5aに対して、キャップ6を例えば押し込み嵌合などによって着脱不能に装着している。
また、その他の例として図示しないが、少なくとも外筒5に対してキャップ6を着脱自在に取り付けて容易に分解できることも可能である。
【0022】
このような本発明の実施例に係る管継手Aによると、ロックリング2の外周部2bにおいて周方向の一部を、支持手段3となる突起3aによって管挿入方向へ弾性変形不能に支持している。
そのため、挿入した管体Bがロックリング2の係止爪2aに突き当たると、ロックリング2の外周部2bにおいて支持手段3の突起3aが当接していない円弧状の不支持部分2b′が、それぞれ管挿入方向へ弾性変形して、係止爪2aが管挿入方向へ移動(揺動)する。
その後、管体Bの挿入が終了すると、ロックリング2の外周部2bにおいて弾性変形した突起3aが当接していない円弧状の不支持部分2b′が、それぞれ弾性的に形状復元して、係止爪2aが管体Bの外周面B1に向け突出して食い込む。
それにより、簡単な構造で管体Bの挿入に対して係止爪2をスムーズに往復動させて確実に食い込むようにすることができるという利点がある。
【0023】
特に、継手本体A1(外筒5)に支持手段3として複数の突起3aを周方向へ所定間隔毎に突出形成した場合には、部品点数を最小に抑えることができて、部品管理の簡素化と製造コストの低減化が図れるという利点がある。
【0024】
なお、図示例では、管継手Aが、継手本体A1の軸線方向両端部にそれぞれ管体Bが接続される中間用継手である場合を示しているが、これに限定されず、継手本体A1の軸線方向一端部のみに管体Bが接続され、他端部には他の機器の管接続口に接続するための接続具が設けられるものであっても良い。
さらに、例えば特開2004−232720号公報に記載されるように、ロックリング2の係止爪2aの管挿入方向へ押圧するリリースを設け、このリリースの操作により管体Bの外周面B1への係止爪2aの食い込み状態を解除してこれを引き抜き可能にしても良い。
【符号の説明】
【0025】
1 ニップル 1a 外周面
2 ロックリング 2a 係止爪
2b 外周部 2c 係止爪が突出する側の面
2d 係止爪が突出する側と反対の面 3 支持手段
3a 突起 4 抜け止め手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のニップルと、これに対向して傾斜状に突出する係止爪が周設されたロックリングとを備え、これらニップル及びロックリングの間に管体が挿入されることで、この管体の外周面に前記ロックリング内周の前記係止爪を食い込ませて該管体を抜け不能に接続する管継手であって、
前記ロックリングの外周部において前記係止爪が傾斜状に突出する側の面と当接して該外周部を弾性変形可能に支持する支持手段と、
前記ロックリングの外周部において前記係止爪が傾斜状に突出する側と反対の面と当接して該外周部を弾性変形不能に支持する抜け止め手段とを備え、
前記支持手段は、前記管体の挿入時に前記係止爪が前記管体の挿入方向へ移動自在となるように前記外周部を弾性変形可能に支持するとともに、前記管体の挿入終了時に前記係止爪が前記管体の挿入方向と逆の管抜け方向へ移動自在となるように前記外周部を弾性的に形状復元可能に支持し、
前記抜け止め手段は、前記係止爪が前記管抜け方向へ移動不能となるように前記外周部を支持したことを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記ロックリングの外周部が弾性変形可能に形成され、
前記支持手段が、前記ロックリングの外周部の一部を管挿入方向へ弾性変形不能に支持していることを特徴とする請求項1記載の管継手。
【請求項3】
前記支持手段が、周方向へ所定間隔毎に配設した複数の突起であり、前記ロックリングの外周部において前記突起と当接する部分を管挿入方向へ弾性変形不能に支持していることを特徴とする請求項2記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−52634(P2012−52634A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197350(P2010−197350)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000134534)株式会社トヨックス (122)
【Fターム(参考)】