説明

籾殻成形体の製造方法及び籾殻成形体

【課題】少量の接着剤で充分な強度を有する籾殻成形体及びその製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】前記籾殻の粒子の表面にポリビニルアルコールを付着させ、吸水性粒子を主成分とする粉粒体、氷粒からなる粉粒体のいずれかと混合し、型に充填して、該造形体の内部の粒子間の隙間に水または水蒸気を送り込んで、前記籾殻の表面に付着させた前記ポリビニルアルコールを水溶液化し、この造形体を冷凍し、解凍し、乾燥する籾殻成形体の製造方法であり、この方法で得られた籾殻成形体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾殻をバインダで固着し成形した籾殻成形体の製造方法及びその製造方法で得られた籾殻成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状物の粒子同士が接着剤を介して結合されてなる成形体としてはパーティクルボードなどが知られている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
このような成形体においては、かさだかな成形体、すなわち、粒子間にある程度空隙が確保された成形体を得ようとすると接着剤の量を少なくする必要があり、この場合はそのために成形体は充分な強度が得られない。また、構造が密な成形体においても、接着剤の量を少なくすると成形体中の接着剤の分布の不均一さに起因して、充分な強度が得られない。
【0004】
一方、成形体用の粒状物としては、籾殻のような副産物の利用が考えられる。籾殻はそれ自体もかさだかであり、防音性や衝撃エネルギー吸収性能を要求される自動車用部材として、多孔質の成形体を得るうえで好適と考えられる。さらに、自動車用部材として籾殻を用いることは、地球環境の保護に寄与するところが大である。
【0005】
籾殻を接着剤で固化してなる成形体に関しては、籾殻に水を噴射して表面を濡らした後、小麦粉、米粉、ゴムパウダーなどの接着剤となる植物性接着剤粉を散布し、次いで水を噴射して植物性接着剤粉を液状化してから、撹拌機で撹拌混合し、次いでこの籾殻を加圧してブロックに成型した後、このブロックを加熱乾燥して接着剤を固化させて、籾殻の繊維方向を横方向に揃えた断熱緩衝材を形成することが開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法においては、液状化された接着剤が加熱乾燥の際にマイグレーションにより成形体の表面など高温がわに移行する傾向があり、均一な接着構造が得られないおそれがある。また、未粉砕の籾殻の集合体はかさだか過ぎて強度不足となるおそれがある。
【0006】
さらに、籾殻に破砕を加えることなく接着剤その他の固化材料を添加し、撹拌した上で、固化材料が硬化する以前に型へ入れて40〜70%の容量に圧縮し、その状態に保持して材料の固化を待ち、型を外して取り出す籾殻壁材の製造方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この方法においては、圧縮により籾殻粒子間の空隙が潰されて、成形体は連続気孔を有しないものとなり、十分な防音性と衝撃エネルギー吸収性能を有するものとはならない。
【0007】
また、多数の籾殻が硬化剤によって一体的に固化されていることを特徴とする籾殻を用いた建設資材が開示されている(例えば、特許文献4参照)。この建設資材は、例えば、籾殻及び接着剤を大型の攪拌機やミキサー車等を用いて攪拌し、次に地盤上に混合された籾殻及び接着剤を流し込み、大型の平板状治具で平らに均し養生することによって得られるものであり、建設資材の50重量%ほどが接着剤であり、通気性はあるものの、十分な衝撃エネルギー吸収性能を有するものとはならない。また、このような籾殻及び接着剤を流し込む態様においては、接着剤の含有比率が10重量%ほどでは資材に十分な強度が得られない。
【0008】
これらの問題点を解決するものとして、籾殻の粒子の表面にポリビニルアルコールを付着させ、型に充填して得た充填成形体の内部の籾殻の粒子間の隙間に熱水または水蒸気を送り込んで、籾殻の粒子の表面に付着させたポリビニルアルコールを水溶液化し、次いで充填成形体を冷凍した後解凍し乾燥する籾殻成形体の製造方法が本願発明者を発明者の一員として開示されている(例えば、特許文献5参照)。この方法により、少量の接着剤で充分な強度を有する成形体及びその製造方法が提供される。
【0009】
しかし、この方法は、それまでの方法に比べて少量の接着剤で充分な強度を有する成形体が得られるとはいえ、籾殻の粒子間の隙間に熱水または水蒸気を送り込むことにより籾殻表面のポリビニルアルコールが水分で希釈されて籾殻に吸収され、籾殻表面に残留して接着剤として寄与するポリビニルアルコールが少なくなる傾向にあり、籾殻粒子同士の十分な接着力を得るためには接着剤として寄与するポリビニルアルコールの量を上回る量のポリビニルアルコールをあらかじめマージン確保のため籾殻の粒子の表面に付着させておく必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−162104号公報
【特許文献2】特開平6−8968号公報
【特許文献3】特開平11−159055号公報
【特許文献4】特開2003−13512号公報
【特許文献5】特開2008−260201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、少量の接着剤で充分な強度を有する籾殻成形体及びその製造方法を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の要旨とするところは、籾殻の粒子を主成分とする粉粒体(粉粒体[1])を準備する工程、
前記籾殻の粒子の表面にポリビニルアルコールを付着させ、表面に該ポリビニルアルコールが付着された籾殻の粒子を主成分とする粉粒体(粉粒体[2])を得る付着工程、
吸水性粒子を主成分とする粉粒体(粉粒体[3])、または氷粒からなる粉粒体(粉粒体[4])のいずれかを準備する工程、
前記粉粒体[2]と前記粉粒体[3]、または前記粉粒体[4]のいずれかを混合し、前記粉粒体[2]と、前記粉粒体[3]、または前記粉粒体[4]のいずれかとからなる粉粒体(粉粒体[5])を得る工程、
該粉粒体[5]を型に充填して造形体を得る充填工程、
該造形体の内部の粒子間の隙間に水または水蒸気を送り込んで、前記籾殻の表面に付着させた前記ポリビニルアルコールを水溶液化する工程、
前記前記ポリビニルアルコールが水溶液化された前記造形体を冷凍し、冷凍体を得る工程、
該冷凍体を解凍し解凍体を得る工程、
該解凍体を乾燥する工程
を含む籾殻成形体の製造方法であることにある。
【0013】
前記粉粒体[1]は粉砕された籾殻を含み得る。
【0014】
前記粉粒体[1]は、微粉砕された籾殻、コロイダルシリカ、石英ガラスの粉末、籾殻焼成灰、の群から選択される1または複数種の微粉末を含み得る。
【0015】
前記粉粒体[1]は、籾殻燻炭を含み得る。
【0016】
また、本発明の要旨とするところは、前記籾殻成形体の製造方法で得られた籾殻成形体からなる自動車用部材であることにある。
【0017】
籾殻成形体においては、前記粉粒体[5]が前記粉粒体[2]と前記粉粒体[4]からなり得る。
【0018】
籾殻成形体においては、前記粉粒体[5]が前記粉粒体[2]と前記粉粒体[3]からなり得、該粉粒体[3]が吸水性繊維の片を主成分とし得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、少量の接着剤で充分な強度を有する籾殻成形体及びその製造方法が提供される。
【0020】
本発明によると、少量の接着剤で充分な強度を有しかさだかな籾殻成形体及びその製造方法が提供される。
【0021】
本発明によると、この籾殻成形体による、吸音性、衝撃エネルギー吸収性に優れた自動車用部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の籾殻成形体の製造方法において用いられる金型装置の構成の一例を示す側面からみた模式図である。
【図2(a)】本発明の籾殻成形体を製造方法により籾殻成形体を連続的に製造する態様の一例を示す工程フロー説明図である。
【図2(b)】図2(a)に続く工程フロー説明図である。
【図2(c)】図2(b)に続く工程フロー説明図である。
【図2(d)】図2(c)に続く工程フロー説明図である。
【図2(e)】図2(d)に続く工程フロー説明図である。
【図2(f)】図2(e)に続く工程フロー説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の籾殻成形体の製造方法は、
籾殻の粒子を主成分とする粉粒体(粉粒体[1])を準備する工程、
前記籾殻の粒子の表面にポリビニルアルコールを付着させ、表面に該ポリビニルアルコールが付着された籾殻の粒子を主成分とする粉粒体(粉粒体[2])を得る付着工程、
吸水性粒子を主成分とする粉粒体(粉粒体[3])または、氷粒からなる粉粒体(粉粒体[4])を準備する工程、
前記粉粒体[2]と前記粉粒体[3]または前記粉粒体[4]を混合し、前記粉粒体[2]と前記粉粒体[3]または前記粉粒体[4]とからなる粉粒体(粉粒体[5])を得る混合工程、
該粉粒体[5]を型に充填して造形体を得る充填工程、
該造形体の内部の粒子間の隙間に水または水蒸気を送り込んで、前記籾殻の表面に付着させた前記ポリビニルアルコールを水溶液化する工程、
前記前記ポリビニルアルコールが水溶液化された前記造形体を冷凍し、冷凍体を得る工程、
該冷凍体を解凍し解凍体を得る工程、
該解凍体を乾燥する工程
を含む籾殻成形体の製造方法である。
【0024】
本明細書においては、粉粒体は粒子の集合体をいい、粒子は、3軸平均径(日刊工業新聞社発行、粉体工学会編:粉体工学便覧 初版;1990年7月30日発行、1〜2ページに記載)が1〜10000μmのものをいう。粒子の形状は特に限定されず、例えば、同書第2ページに記載されている各種形状や、球形、筒形、柱形、繊維形状、板形状、殻形状、ランダム形状など各種形状を有するものが挙げられ、またこれら例示以外の範疇の特殊な形状が排除されるものではない。
【0025】
粉粒体の原料素材
この製造方法における粉粒体(粉粒体[1])の主成分としての籾殻は、粉砕されないもの、あるいは粉砕されて粒子が細かくされたものが必要に応じて所定の比率に混合されたもの、が用いられる。この粉粒体には、そのほかに若干の増量剤が含まれていてもよい。増量剤としてはおがくず、そばがらなどが挙げられる。増量剤の含有量は10重量%以下であることが好ましい。
【0026】
付着工程
本発明においては、まず、この籾殻の粒子の表面にポリビニルアルコールを付着させる。この付着は、例えば、この籾殻を主成分とする粉粒体(粉粒体[1])とポリビニルアルコール水溶液とを攪拌混合してなる混合体を乾燥することにより行うことができる。この乾燥も混合体を攪拌しつつ行われることが好ましい。このポリビニルアルコール水溶液の濃度は8〜12重量%であることが好ましい。9〜11重量%であることが籾殻の粒子の表面に均一にポリビニルアルコールの被膜が形成されるうえでさらに好ましい。粉粒体[1]とポリビニルアルコール水溶液との混合比率は重量比1:1〜1:3であることが好ましい。4:10〜6:10であることが籾殻の粒子の表面に均一にポリビニルアルコールの被膜が形成されるうえでさらに好ましい。籾殻とポリビニルアルコールとの乾燥重量比は5:1〜10:1であることが高強度の成形体を得るうえで好ましい。籾殻はポリビニルアルコール水溶液と混合する前に予め吸湿状態にしておいてもよい。
【0027】
籾殻の粒子の表面にポリビニルアルコールを付着させる方法としては、籾殻を主成分とする粉粒体(粉粒体[1])とポリビニルアルコールの微粒子粉体とさらに好ましくは展着剤とを攪拌混合させるものであってもよい。この場合、籾殻の粒子の表面にポリビニルアルコールの微粒子がまぶされた状態で付着する。また、籾殻を予め湿潤状態にしたうえでポリビニルアルコールの微粒子粉体を加えて混合してもよい。
【0028】
ポリビニルアルコールは籾殻の粒子の表面に吸湿した状態で付着されてもよい。
【0029】
吸水性粒子を主成分とする粉粒体(粉粒体[3])
吸水性粒子を主成分とする粉粒体としては、綿、麻、レーヨン、カポック、ケナフ、パルプ等のセルロース繊維や、羊毛、絹などの動物繊維の繊維片や、カルボキシメチルセルロース、ナイロン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などの粒子、ナイロン繊維、ポリビニルアルコール系繊維などの吸水性繊維の繊維片、おがくず、珪藻土、など吸水性素材からなる粒子が挙げられる。吸水性繊維の繊維片としては平均繊維長は3〜10mmであることが好ましい。繊維径は10〜50μmであることが好ましい。
【0030】
吸水性粒子は絶乾状態の粒子の重量をW1、この絶乾状態の粒子を25℃90%RHの雰囲気に10時間放置したときの重量をW2としたときの、((W2−W1)/W1)×100(%)が4%以上であるものをいう。
【0031】
氷粒(粉粒体[4])
氷粒は粒子状の氷であり、平均径が0.5〜2mmのものをいう。
【0032】
混合工程
粉粒体[2]と粉粒体[3]または粉粒体[4]との混合はこれらの粉粒体を混合槽中で攪拌して行うことが好ましい。粉粒体[3]が用いられ、粉粒体[3]が吸水性繊維の繊維片である場合は粉粒体[2]と吸水性繊維の繊維片とを混合攪拌することにより、繊維片が籾殻に絡みついて籾殻同士の結合力を増大させることができる。
【0033】
粉粒体[2]と粉粒体[3]または粉粒体[4]との混合比(重量比)は、2:1〜10:1であることが好ましい。
【0034】
充填工程、取り出し工程
充填工程においては粉粒体[5]を所定の形状の型内に、例えば、圧空で送り込んで造形体を得る。次いで、この型内に水蒸気を送り込むことにより、造形体の内部の籾殻の粒子の間の隙間を水蒸気及びこの水蒸気のドレインで充満させる。水蒸気に代えて、あるいは水蒸気とともに水を型内に送り込んでもよい。水の温度は40℃以上であることが好ましい。
【0035】
この充填と型内への水蒸気や水の送り込みは、例えば、特開2000−176956に記載の加圧圧縮充填法による金型装置により好適に行うことができる。すなわち、例えば、図1に示すような金型装置1により行うことができる。図1の金型装置1においては、充填用粉粒体が充填されるキャビティ5を形成するよう、凸型金型31と凹型金型21がフレーム33、23に固定されて、相互に密接して対向配置される。フレーム23、33の各内側で凹、凸金型21、31の裏面側には、水蒸気が供給されるチャンバ2とチャンバ3がそれぞれ形成されている。そして、凹型金型21は通常固定されているが、凸型金型31は、凹型金型21内にキャビティ5を形成した状態から後退移動(図面視右方向へ)し、充填用粉粒体が充填された造形体を取り出すことができ、また充填操作のため前進移動(図面視左方向へ)できる開閉駆動装置(図示せず)を伴って移動可能に配置されている。そして、この金型21、31には、加熱用水蒸気などの用役が通過できるよう多数のベントホール22、32がその全面にわたって透設されている。
【0036】
それぞれのチャンバ2、3には、水蒸気を供給するための上部用役口24、34が設けられ、減圧ポンプあるいはドレン配管(いずれも不図示)に接続されている。
【0037】
この金型装置を用いる充填方法は、(1)金型を型閉してキャビティ5を形成し、このキャビティ5内に、充填用粉粒体を充填する充填工程、(2)造形体に水蒸気あるいは水を送り込む工程。(3)その後、造形体を必要に応じて冷却させる冷却工程、(4)冷却後、型開して、所定形状の造形体として金型装置から取り出す取り出し工程、という手順からなる。
【0038】
充填工程について、さらに述べるならば、充填工程は、外部の原料サービスタンク(不図示)に収容した充填用粉粒体(粉粒体[2])を、供給パイプ41を通じ、フィーダ26を介してキャビティ5内に送入し充填する工程である。充填用粉粒体は圧縮エアによりベンチュリー効果でキャビティ5内に送入される。充填する工程にはクラッキング充填法、加圧充填法あるいは加圧圧縮充填法などがあるが、いずれも充填用粉粒体とともに送り込まれた圧縮エアは、キャビティ5からベントホール22、32を通じて両側チャンバ2、3に抜き出され、外部に排出される。
【0039】
また、この充填方法においては、中間型閉してキャビティを形成し、さらに型閉してこのキャビティより容積の小さいキャビティを形成するような金型を用いることができる。このような金型を用いて、(1)金型を中間型閉して形成したキャビティ内に充填用粉粒体を充填し、(2)造形体に水蒸気または水を送り込み、(3)その後、この金型をさらに型閉して造形体を圧縮し、次いで必要に応じて冷却し、(4)型開して、所定形状の造形体として金型装置から取り出す取す、という手順をとることができる。このような態様によれば、より高密度の造形体を得ることができる。
【0040】
あるいは、このような金型を用いて、(1)金型を中間型閉して形成したキャビティ内に充填用粉粒体を充填し、(2)この金型をさらに型閉して造形体を圧縮し、(3)その後造形体に水蒸気や水を送り込んで、次いで必要に応じて冷却し、(4)型開して、所定形状の造形体として金型装置から取り出す取す、という手順をとることができる。このような態様によっても、より高密度の造形体を得ることができる。
【0041】
充填工程における水蒸気の送り込みにより籾殻の粒子に付着しているポリビニルアルコールが含水して水溶液化し、またこのため籾殻の粒子の表面に粘着性が発現し、籾殻の粒子同士が接着されて造形体に自立の形態保持性が与えられる。これにより、造形体を型開した金型から比較的容易に取出すことができる。送り込まれる水蒸気は大気圧の水蒸気、いわゆる生蒸気であってよい。生蒸気より高圧の水蒸気であってもよい。さらに、本発明の金型装置1を用いた態様においては、上述のように水蒸気のかわりにあるいは水蒸気とともに水が造形体に送り込まれてもよい。
【0042】
このとき、粉粒体[5]が粉粒体[2]すなわち、表面にポリビニルアルコールが付着された籾殻の粒子を主成分とする粉粒体のみで構成されているとすると、蒸気や水が送り込まれたときにその水分の一部がポリビニルアルコールを溶解させた状態で籾殻の中空部や素材に吸収され、籾殻表面に付着するポリビニルアルコールの量が減少する傾向にある。従って、籾殻粒子同士の接着に必要な、籾殻表面に付着するポリビニルアルコールの量を確保するためには、充填工程に投入する籾殻(粉粒体[2])にはマージンを確保するためその量以上のポリビニルアルコールを籾殻表面に付着させておく必要がある。
【0043】
これに対して、粉粒体[5]が粉粒体[2]と、粉粒体[3]すなわち吸水性粒子を主成分とする粉粒体とで構成されている場合は、蒸気や水が送り込まれたときに水分の一部がポリビニルアルコールを溶解させることなく吸水性粒子に吸収され、またポリビニルアルコール水溶液中のポリビニルアルコールは吸水性粒子に吸収されないので、水分の一部がポリビニルアルコールを溶解させた状態で籾殻の中空部や素材に吸収される現象を妨げることができ、籾殻表面に付着するポリビニルアルコールが籾殻粒子同士の接着に効率よく使用されることになる。従って、充填工程に投入する籾殻(粉粒体[2])にマージンを確保するためその量以上のポリビニルアルコールを籾殻表面に付着させておく必要がない。あるいは粉粒体[3]がない場合に比べそのマージンを少なくすることができる。
【0044】
また、粉粒体[5]が粉粒体[2]と、粉粒体[4]すなわち氷粒とで構成されている場合も、蒸気や水が送り込まれたときに水分の一部がポリビニルアルコールを溶解させることなく氷粒にトラップされて、水分の一部がポリビニルアルコールを溶解させた状態で籾殻の中空部や素材に吸収される現象を妨げることができ、籾殻表面に付着するポリビニルアルコールが籾殻粒子同士の接着に効率よく使用されることになる。従って、充填工程に投入する籾殻(粉粒体[2])にマージンを確保するためその量以上のポリビニルアルコールを籾殻表面に付着させておく必要がない。あるいは粉粒体[3]がない場合に比べそのマージンを少なくすることができる。
【0045】
金型装置1を用いた態様においては、キャビティに送り込む粉粒体[2]は乾燥状態であることが粉粒体[2]の空気による移送が円滑に行われて好ましい。粉粒体[2]が湿潤状態である場合は、器具による押し込みなどの機械的な充填方法が用いられることが好ましい。
【0046】
本発明の他の態様においては、多孔質の材料あるいは孔あきの材料からなる型に充填用粉粒体を充填し、その造形体の籾殻の粒子の間隙に、その材料の連通孔を経由して水、好ましくは40℃以上の熱水を流入させることにより、籾殻の粒子の表面のポリビニルアルコールを含水させて水溶液化してもよい。この流入は、例えば、型に充填されている造形体を型ごと水に浸漬することにより行うことができる。あるいは造形体を充填した状態の型の内部にその材料の連通孔を経由して水を圧入することにより造形体の籾殻の粒子の間隙に水を流入させてもよい。水蒸気を造形体の籾殻の粒子の間隙に吹き込んでドレン化させてもよい。
【0047】
減圧密閉梱包体
金型から取り外された造形体を真空包装用のフィルム袋に入れてその袋の内部を減圧して密封し、減圧密閉梱包体を得る。減圧密閉梱包体を得る工程は真空包装用の公知の器具や装置、と公知の真空包装用フィルムを用いて行うことができる。減圧密閉梱包体中の造形体は大気圧で加圧されて圧縮状態になっている。袋の中の内圧を所定の圧に設定することにより、造形体にかかる圧縮圧を調整して造形体の密度を制御することができる。
【0048】
本発明のさらに他の態様においては、型に充填された充填用粉粒体(造形体)を型ごと冷凍してもよい。この場合は、充填用粉粒体を型ごと真空包装して冷凍してもよい。あるいは、型を閉められた状態に固定することにより造形体を圧縮し、造形体を袋に入れることなく型ごと冷凍してもよい。
【0049】
本発明のまたさらに他の態様においては、型に充填された充填用粉粒体(造形体)を第2の型に収め、次いで造形体を第2の型ごと冷凍してもよい。この場合は、充填用粉粒体を型ごと真空包装して冷凍してもよい。あるいは、型を閉められた状態に固定することにより造形体を圧縮し、造形体を袋に入れることなく第2の型ごと冷凍してもよい。
【0050】
冷凍体
減圧密閉梱包体、あるいは型や第2の型ごと冷凍された造形体は公知の冷凍装置を用いて冷凍処理して冷凍体を得ることができる。例えば、冷凍食品用の冷凍装置を用いて連続的に減圧密閉梱包体を供給して連続的に冷凍処理することができる。冷凍温度は−10〜−30℃であることが好ましい。減圧密閉梱包体を冷凍することにより、減圧密閉梱包体中の造形体を圧縮状態で冷凍することができる。あるいは造形体を型や第2の型ごと冷凍することにより、型中の造形体を圧縮状態で冷凍することができる。
【0051】
解凍体
解凍体は、冷凍された減圧密閉梱包体,あるいは型や第2の型ごと冷凍された造形体を公知の加熱装置を用いて解凍処理して得ることができる。例えば、ヒートポンプ方式の加熱装置が好適に用いられる。減圧密閉梱包体は連続的に加熱装置に供給して連続的に解凍することもできる。なお、減圧密閉梱包体の冷凍、解凍は複数回繰り返して行われてもよい。この凍結、解凍により造形体中のポリビニルアルコール水溶液がゲル化される。とくに、籾殻中のシリカがポリビニルアルコールのゲル化反応を促進させることにより、強固なゲル体が生成される。また、この解凍処理により、減圧密閉梱包体中の造形体を圧縮状態で解凍することができる。この造形体は、圧縮状態で冷凍、解凍されているので構造は安定した緻密さを実現できる。
【0052】
なお、本発明において、造形体の内部の籾殻の粒子間の隙間に水または水蒸気を送り込んで籾殻の粒子の表面に付着させた付着用物を希釈または水溶液化する工程は、造形体中のポリビニルアルコール水溶液の濃度をこのゲル化に適した濃度にするために行われる。
【0053】
乾燥工程
乾燥工程においては、解凍された造形体をフィルム袋から取出してあるいは型や第2の型を開放して、造形体を加熱乾燥する。乾燥は50〜120℃で加熱して行うことが好ましい。例えば、1〜10℃/minの昇温速度で50〜120℃まで昇温して加熱することにより行うことができる。この乾燥により、強固に3次元化したSi/ポリビニルアルコールのゲルに含まれている水分が除去されて、ポーラスなスポンジ状の構造物となり、籾殻の粒子がその構造体に堅固に捕捉された構造体が得られる。
【0054】
本発明のかかる製造方法により、籾殻の粒子同士がポリビニルアルコールをバインダとして強固に接合された籾殻成形体が得られる。
【0055】
籾殻とポリビニルアルコール水溶液とを混合して成形した成形体を単に加熱した場合は、前述のように、液状化された接着剤が加熱乾燥の際にマイグレーションにより成形体の表面など高温がわに移行する傾向があり、均一な接着構造が得られないそれがあるが、本発明においては、造形体中の含水ポリビニルアルコールを凍結、解凍することにより含水ポリビニルアルコールがゲル化され、これにより、ポリビニルアルコール分子同士がSiを反応促進剤として3次元的に結びつき、含水ポリビニルアルコールの自然流動が阻害されて、乾燥時のマイグレーションが防止されて成形体全体にわたり均一な接着がなされる。
【0056】
さらに、籾殻に含まれるシリカ成分が遊離して含水ポリビニルアルコールに架橋剤として3次元的に作用してゲル化を促進するとともに、乾燥後の接着力の向上にも寄与するものと考えられる。この結果、高強度の成形体が得られる。
【0057】
従って、本発明においては、充填用粉粒体にシリカ成分を含む微粉末を含有させることがゲル化の促進にとって有効である。このシリカ成分を含む微粉末に含まれるシリカ成分も遊離して含水ポリビニルアルコールに架橋剤として作用してゲル化をさらに促進するとともに、乾燥後の接着力の向上にも寄与すると考えられる。シリカ成分を含む微粉末としては微粉砕された籾殻、コロイダルシリカ、石英ガラスの粉末、籾殻焼成灰などが挙げられる。微粉末の粒子径は100μm以下であることがゲル化を促進させるうえで好ましい。微粉末はナノオーダーの微粉末であってもよい。
【0058】
また、本発明の態様の一例においては、前述の付着工程におけるように、籾殻の粒子にポリビニルアルコール水溶液を付着させたのち乾燥し、表面に乾燥されたポリビニルアルコールが付着した籾殻の粒子を得て、その後ふたたびその付着したポリビニルアルコールを湿潤させて水溶液状態とする。従来のように、単にポリビニルアルコール水溶液と籾殻とを混合したのち乾燥してポリビニルアルコールをバインダとして籾殻の粒子同士を接着する場合は、この混合により籾殻の粒子表面に付着したポリビニルアルコール水溶液中の水分が籾殻の粒子に吸収されて、この水溶液が濃縮され、高濃度のポリビニルアルコール水溶液が籾殻の粒子表面に付着している状態となる。
【0059】
このような状態では十分なゲル化が行われず、籾殻の粒子同士の上述の強固な結合を得ることができない。これに対して、本発明においては、籾殻の粒子表面に付着した乾燥されたポリビニルアルコールにふたたび水分を供給することにより、ゲル化が十分に行われる濃度のポリビニルアルコール水溶液を籾殻の粒子表面に存在させることができる。さらに、このとき供給する水分の量を調節することにより水溶液の濃度をゲル化が十分に行われる濃度に制御することができる。さらには、籾殻の粒子表面の水溶液の濃度を、籾殻の粒子表面に粘着性を与えるのに適した濃度に制御することもできる。
【0060】
本発明の態様の他の一例においては、籾殻の粒子に吸水したポリビニルアルコールあるいはポリビニルアルコール水溶液を付着させたのちふたたび水分を供給することにより、ゲル化が十分に行われる濃度のポリビニルアルコール水溶液を籾殻の粒子表面に存在させることができる。単に籾殻の粒子に吸水したポリビニルアルコールあるいはポリビニルアルコール水溶液を付着させた場合は、水分が籾殻に吸収されてポリビニルアルコールの濃度が高くなり、ゲル化が十分に行われる濃度のポリビニルアルコール水溶液を籾殻の粒子表面に安定して存在させることができない。
【0061】
本発明においては、このようにして得られた籾殻成形体をさらにフィルムで囲撓することにより、元来耐水性に劣るものとされる籾殻の成形体に優れた耐水性を付与できる。また、籾殻特有の匂いをほぼ遮断することができる。
【0062】
また、本発明においては、粉粒体[5]が粉粒体[2]と粉粒体[3]からなる場合は、造形体に水を侵入させたとき水分が粉粒体[3]にも吸収されるのでポリビニルアルコールのマイグレーションが生じにくくなる。
【0063】
さらに、本発明においては、粉粒体[5]が粉粒体[2]と粉粒体[3]からなり、その粉粒体[3]が繊維片である場合、繊維片が成形体の補強材として機能するので、強靭な籾殻成形体を得ることができる。また、繊維片の繊維長が籾殻の径以上である場合は繊維片が籾殻に絡みついて補強材としての補強効果が高まり、さらに強靭な籾殻成形体を得ることができる。
【0064】
粉粒体[3]が天然繊維やポリ乳酸のような生分解性の素材から構成されている場合は、籾殻成形体も生分解性を有することになる。
【0065】
また、粉粒体[5]が粉粒体[2]と粉粒体[4]すなわち氷粒からなる場合は、冷凍された造形体中に存在している氷粒が、造形体の解凍により融解し、乾燥により、その氷粒の跡が空洞となるので、極めてかさだかな籾殻成形体を得ることができる。
【0066】
加えて、粉粒体[5]が粉粒体[2]と粉粒体[4]すなわち氷粒からなる場合は、造形体の凍結に要する時間やエネルギを低減することができる。
【0067】
また、氷粒は融解して水になるので、造形体に注入する水や水蒸気の量を削減することができる。
【0068】
本発明の籾殻成形体は、籾殻を加熱炭化させた籾殻燻炭を含有させることによって籾殻特有の匂いをほぼ解消することができる。また、これにより、籾殻成形体に脱臭能を付与することができる。例えば、籾殻燻炭を粉粒体[1]に混入させれおくことにより籾殻燻炭を含有した籾殻成形体が得られる。籾殻燻炭に代えて活性炭の粉粒物を用いても脱臭能が得られるが、籾殻燻炭はポリビニルアルコールのゲル化を促進させて成形体の強度向上に寄与するので好ましい。
【0069】
また、本発明の籾殻成形体を製造方法によれば、この方法が冷凍、解凍というバッチ式の工程を含んでいるにも拘わらず、優れた特性の籾殻成形体をほぼ無人でかつ連続的に工業的に製造することが可能である。この態様の一例を図2に示す。図2(a)において、開梱装置104にセットされた籾殻の梱包体102から放出された籾殻−Aが、送粒装置106の投入口108に投入されて送粒パイプ111を経て秤量器110に供給される。一方、開梱装置105にセットされた籾殻の梱包体103から放出された籾殻−Bが、送粒装置107の投入口109に投入されて送粒パイプ109を経て粉砕機112に供給されて粉砕されて粉砕籾殻となる。粉砕籾殻は次いで篩選別装置114で所定の粒度に選別された後、送粒パイプ116を経て秤量器113に供給される。秤量された籾殻Aと秤量された粉砕籾殻がそれぞれ送粒パイプ118、送粒パイプ119を経て混練機120に供給されポリビニルアルコール水溶液とともに混練される。籾殻Aと粉砕籾殻とで(粉粒体[1])が構成される。ポリビニルアルコール水溶液については、ポリビニルアルコールと水とを混合調整する調整タンク122に供給されたものがFIC(流量表示制御器)124、送液ライン126を経て混練機120に供給される。図中、符号117は粉粉粒体移送用のブロア、符号125は液送用のポンプ、符号127は混練物移送送用ポンプである。混練物の移送はスパイラルコンベアのような移送手段によってもよい。
【0070】
混練機120にて混練された籾殻・ポリビニルアルコール水溶液混練物は、図2(b)に示すように、輸送パイプ128を経て乾燥サイロ130に供給され乾燥される。乾燥サイロ130には送風機134とヒーター132により乾燥用の熱風が供給される。混練物は乾燥サイロ130で乾燥されて粉粒体(粉粒体[2])となる。この粉粒体は、表面にポリビニルアルコールが薄膜状に付着した籾殻の粒子からなる。
【0071】
次いで粉粒体[2]は送粒パイプ346、秤量器313,送粒パイプ309を経て混合槽301に投入される。混合槽301には別系列から粉粒体[3]すなわち吸水性粒子を主成分とする粉粒体、あるいは粉粒体[4]すなわち氷粒が、送粒パイプ303、秤量器314、送粒パイプ318を経由して投入され攪拌手段304により攪拌され粉粒体[5]となる。粉粒体[3]あるいは粉粒体[4]はバッチ式に直接混合槽301に投入してもよい。
【0072】
粉粒体[5]は、送粒パイプ336、貯留槽337を経て図1に示す金型装置1と同様の構成の充填装置138に供給される。充填装置138は閉型するとキャビティを形成する一対の金型140、142を備える。充填装置138はさらにキャビティ内に粉粒体を供給する供給管144と、キャビティ内に圧空を導入する圧空導入管150を備える。供給管144と圧空導入管150とはそれぞれ、管先で合流している。金型140は、ボイラ等の水蒸気源145から水蒸気をキャビティに吹き込むための水蒸気吹き込み路155を備える。金型142は、キャビティ内に供給された圧空や水蒸気をパージする不図示の排出路を備える。また、金型142は、金型142を金型140に対して進退させ開型、閉型を行うための進退手段160を備える。
【0073】
貯留槽137に貯留されている粉粒体[5]が圧空導入管150に圧空源161から供給された圧空の作用で吸引されて供給管144からそれぞれキャビティ内に供給され、圧空の作用で圧縮される。その後水蒸気吹き込み路155から水蒸気がキャビティ内に吹き込まれ、籾殻に付着しているポリビニルアルコールが湿潤して水溶液状態となり、かつ籾殻の粒子同士が粘着し、自立性の造形体が得られる。
【0074】
自立性の造形体は、開型後金型から取出されてコンベア162により移送されて中間コンベア164に達する。中間コンベア164上でこの自立性の造形体166が減圧包装袋168でバキュウム装置170を用いて減圧包装されて減圧密閉梱包体となる。この減圧密閉梱包体172は、次いで、図2(c)に示すように、冷凍室174に供給されて冷凍される。冷凍室174は螺旋状のコンベア177を内蔵し、コンベア177で搬送されているあいだに減圧密閉梱包体が不図示の冷凍機により低温化した冷凍室174の中で冷凍される。冷凍室174から排出された冷凍された減圧密閉梱包体は、次いで解凍室182に供給される。解凍室182は螺旋状のコンベア187を内蔵し、コンベア187で搬送されているあいだに減圧密閉梱包体が不図示の加熱機により高温化した解凍室182の中で解凍される。
【0075】
解凍された減圧密閉梱包体は解凍室182から排出され、開梱されて造形体184から減圧包装袋168が分離される。図2(d)に示すように、次いで造形体184が乾燥室188、次いで乾燥室189に導入される。乾燥室188、乾燥室189も螺旋状のコンベア189、コンベア191をそれぞれ内蔵し、コンベア189、コンベア191で搬送されているあいだに造形体が不図示の加熱機により高温化した乾燥室188、189の中で加熱乾燥され籾殻成形体となる。乾燥室188、乾燥室189の乾燥温度は例えばそれぞれ80℃、120℃に設定される。
【0076】
得られた籾殻成形体は、図2(e)に示すように、検査用コンベア190で搬送される途中で検査されたのち、シュリンク包装機192でシュリンク包装され、製品となって製品運搬車194に積載されて搬出される。シュリンク包装機192は熱収縮フィルム196を供給するフィルム供給部198と、籾殻成形体200を熱収縮フィルムで包装する包装部202と、包装された籾殻成形体200を加熱炉204に導入する導入コンベア206を備える。包装後の熱収縮フィルム196は加熱炉204で加熱収縮されてフィルムで囲撓された複合籾殻成形体210が得られる。
【0077】
なお、本願発明の態様に替えて、未粉砕、あるいは1〜10メッシュパス程度に粉砕した籾殻を含む粉粒体とポリビニルアルコール水溶液とが混合されて表面が粘着性を有する粉粒体からなる被成形物を押出して型に圧入して成形する態様が考えられるが、このような態様は、被成形物が成形用の型に流入されるまでの押出管路で一旦閉塞すると、管路の内壁との摩擦力に起因する背圧がその管路の上流方向に積算されて完全に管路が閉塞された状態となることが多く、円滑な成形を行うことは難しい。すなわち、型に流入されるときの粉粒体の粒子の表面は粘着性をほとんどあるいは全く有しない状態であることが好ましい。また、この流入は機械的な圧力によるよりも、図2(b)に示すような風送等の気体による搬送によることが流入路の閉塞が起こらず好ましい。
【0078】
なお、図2に示す態様は、本発明の籾殻成形体の製造方法の態様の一例に過ぎず、本発明は図2に示す態様に限定されるものではない。また、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【0079】
本発明の製造方法により得られた籾殻成形体は、高強度であり、かつ衝撃吸収性に優れる。また、吸音性に優れる。この特長を活かして、自動車用の内装分野や外装分野の部材として好適に使用される。とくには嵩上げボード用デッキボード用の部材や、ニーボルスター用部材として好適に用いることができる。また、吸音性や調湿性や天然の触感や色目に優れた建材として好適に用いることができる。さらには、ヘルメットの芯材や電子装置用の衝撃吸収材としても好適に用いることができる。また、音波吸収能を有するインテリア用材、音波吸収能や調湿機能を有するパネル、として好適に用いることができる。
【実施例】
【0080】
[実施例1]
籾殻100重量部、籾殻を粉砕分級した平均粒径100μmの籾殻微粉末20重量部、ポリビニルアルコールの8重量%水溶液200重量部を混練して混練物を得た。この混練物を攪拌しつつ80℃に加熱して乾燥し、粉粒体[2]を得た。この粉粒体[2]とコットンの綿くず(平均繊維長5mm)を重量比5:1で混合攪拌し粉粒体[5]を得た。この粉粒体[5]の120gを縱10cm横14.5cm、厚さ2.4cmのキャビティを有する型に入れて加圧成形し造形体とした。造形体を加圧状態でキャビティ内に0.2MPaの水蒸気源から水蒸気を3分間導入して造形体を処理した。処理後の造形体は自立性の成形体であった。開型してこの成形体を型から取出して真空包装用フィルムを用いて真空包装機で真空包装し、減圧密閉梱包体を得た。この減圧密閉梱包体の内部の圧力は76mmHgであった。この減圧密閉梱包体を−20℃で20分間冷凍したのち室温で解凍した。解凍後袋から造形体を取出して80℃20分の加熱により加熱乾燥し籾殻成形体を得た。この籾殻成形体の曲げ強度は0.6MPa、みかけ比重は約0.34であり、自動車内装材として充分な強度を有していた。この籾殻成形体を厚さ40μmのポリエチレン系フィルムで密封包装した包装体は耐水性が良くかつ吸音性に優れ、とくにデッキボード用の部材として好適に使用できるものであった。
【0081】
[実施例2]
実施例1で用いたと同様の粉粒体[2]と、氷粒(平均径1mm)とを重量比5:1で混合攪拌し粉粒体[5]を得た。この粉粒体[5]の120gから実施例1と同様にして籾殻成形体を得た。この籾殻成形体の曲げ強度は0.4MPa、みかけ比重は約0.28であり、かさだかであるにもかかわらず自動車内装材として使用可能な強度を有していた。
【0082】
[比較例1]
籾殻100重量部、籾殻を粉砕分級した平均粒径100μmの籾殻微粉末20重量部、ポリビニルアルコールの10重量%水溶液200重量部を混練して混練物を得た。この混練物を攪拌しつつ80℃に加熱して乾燥し、粉粒体[2]を得た。この粉粒体[2]の120gを縱10cm横14.5cm、厚さ2.4cmのキャビティを有する型に入れて加圧成形し造形体とした。造形体を加圧状態でキャビティ内に0.2MPaの水蒸気源から水蒸気を3分間導入して造形体を処理した。処理後の造形体は自立性の成形体であった。開型してこの成形体を型から取出して真空包装用フィルムを用いて真空包装機で真空包装し、減圧密閉梱包体を得た。この減圧密閉梱包体の内部の圧力は76mmHgであった。この減圧密閉梱包体を−20℃で20分間冷凍したのち室温で解凍した。解凍後袋から造形体を取出して80℃20分の加熱により加熱乾燥し籾殻成形体を得た。この籾殻成形体の曲げ強度は0.5MPa、みかけ比重は約0.34であった。
【0083】
[比較例2]
籾殻100重量部、籾殻を粉砕分級した平均粒径100μmの籾殻微粉末20重量部、ポリビニルアルコールの10重量%水溶液200重量部を混練して混練物を得た。この混練物を攪拌しつつ80℃に加熱して乾燥し、粉粒体[2]を得た。この粉粒体[2]の100gを縱10cm横14.5cm、厚さ2.4cmのキャビティを有する型に入れて加圧成形し造形体とした。造形体を加圧状態でキャビティ内に0.2MPaの水蒸気源から水蒸気を3分間導入して造形体を処理した。処理後の造形体は自立性の成形体であった。開型してこの成形体を型から取出して真空包装用フィルムを用いて真空包装機で真空包装し、減圧密閉梱包体を得た。この減圧密閉梱包体の内部の圧力は76mmHgであった。この減圧密閉梱包体を−20℃で20分間冷凍したのち室温で解凍した。解凍後袋から造形体を取出して80℃20分の加熱により加熱乾燥し籾殻成形体を得た。この籾殻成形体の曲げ強度は0.35MPa、みかけ比重は約0.28であり、かさだかではあるが強度が低かった。
【0084】
[実施例3]
混練物として、籾殻70重量部、籾殻を粉砕分級した平均粒径100μmの籾殻微粉末10重量部、籾殻燻炭30重量部、ポリビニルアルコールの7重量%水溶液200重量部を混練したものを用いたほかは実施例1と同様にして籾殻成形体を得た。この籾殻成形体は自動車内装材として充分な強度を有しており、また籾殻特有の匂いが殆ど感じられなかった。さらに、自動車室内に載置しておくと室内の脱臭効果があった。
【0085】
[実施例4]
混練物として、籾殻100重量部、籾殻焼成灰10重量部、ポリビニルアルコールの10重量%水溶液210重量部を混練したものを用いたほかは実施例1と同様にして籾殻成形体を得た。この籾殻成形体は自動車用部材として充分な強度を有し、かつ吸音性に優れていた。
【符号の説明】
【0086】
1:金型装置
2、3:チャンバ
5:キャビティ
31:凸型金型
21:凹型金型
22、32:ベントホール
106:送粒装置
107:送粒装置
110:秤量器
112:粉砕機
114:篩選別装置
113:秤量器
120:混練機
122:調整タンク
130:乾燥サイロ
137:貯留槽
138:充填装置
140、142:金型
144:供給管
145:水蒸気源
150:圧空導入管
160:進退手段
161:圧空源
155:水蒸気吹き込み路
162:コンベア
164:中間コンベア
166:自立性の造形体
168:減圧包装袋
170:バキュウム装置
172:減圧密閉梱包体
174;冷凍室
182:解凍室
184:造形体
188:乾燥室
189:乾燥室
192:シュリンク包装機
196:熱収縮フィルム
200:籾殻成形体
202:包装部
204:加熱炉
210:複合籾殻成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
籾殻の粒子を主成分とする粉粒体(粉粒体[1])を準備する工程、
前記籾殻の粒子の表面にポリビニルアルコールを付着させ、表面に該ポリビニルアルコールが付着された籾殻の粒子を主成分とする粉粒体(粉粒体[2])を得る付着工程、
吸水性粒子を主成分とする粉粒体(粉粒体[3])、または氷粒からなる粉粒体(粉粒体[4])のいずれかを準備する工程、
前記粉粒体[2]と前記粉粒体[3]、または前記粉粒体[4]のいずれかを混合し、前記粉粒体[2]と、前記粉粒体[3]、または前記粉粒体[4]のいずれかとからなる粉粒体(粉粒体[5])を得る工程、
該粉粒体[5]を型に充填して造形体を得る充填工程、
該造形体の内部の粒子間の隙間に水または水蒸気を送り込んで、前記籾殻の表面に付着させた前記ポリビニルアルコールを水溶液化する工程、
前記前記ポリビニルアルコールが水溶液化された前記造形体を冷凍し、冷凍体を得る工程、
該冷凍体を解凍し解凍体を得る工程、
該解凍体を乾燥する工程
を含む籾殻成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の籾殻成形体の製造方法で得られた籾殻成形体からなる自動車用部材。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図2(e)】
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【図2(f)】
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【公開番号】特開2011−206927(P2011−206927A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74012(P2010−74012)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】