説明

粉体材料とその製造方法、粉体材料の圧密原料及びその装置

化学的に結合したセラミック材料を水和させるバインダー相と反応する液体と追随飽和する能力を有するセメントベースの系からなるバインダー相の粉体材料。
本発明によれば、粉体材料は粉末粒子の顆粒の形で存在し、顆粒の密度が55%を越える圧密度で、平均30〜250μmの大きさを示す。本発明は、また、粉体材料の圧密原料と粉体材料からのセラミック材料の製造に関連する方法に関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バインダー相と反応して化学的に結合したセラミック材料を水和させる液体と追随飽和する能力を有するセメントベースの系からなるバインダー相の粉体材料に関係する。本発明は、また、粉体材料の圧密原料と粉体材料からのセラミック材料の製造に関連した方法に関係する。加えて、本発明は、粉体材料の貯蔵及び粉体材料をそのバインダー相と反応する液体と混合する装置に関連する。
【0002】
本発明は、セメント系タイプの材料、特に、アルミン酸塩、珪酸塩、リン酸塩、硫酸塩、及びそれらの混合物、好ましくはCa、Sr、及びBaからなるグループの陽イオンを有する材料から構成されるグループの化学的に結合したセラミック材を含むセメントベースの系の水和結合作用機構に関連する。本発明は特に、歯科及び整形外科領域内における応用バイオ材料向けに開発されたものであるが、これはまた、建設その他の目的の、セメントベースの系の材料としての応用にも向いている。
【背景技術】
【0003】
そのようなセメントベースの系において、その強度は、とりわけ、系における粉末粒子の圧密度に依存する。単純に、圧密度を高くすればするほど、高強度に到達できる可能性は高くなる。この原理は、化学的に結合したセラミック材料に水和反応を起こさせるバインダー相と反応する液体と追随飽和する能力を有する粉体材料から圧密原料を製造するのに利用されてきた。例えば、特許文献1(SE463,493号)、特許文献2(WO 00/21489号)、及び特許文献3(WO 01/76535号)を参照されたい。
【0004】
しかしながら、ひとつの問題は、圧密原料が密度の低い粉体材料から高い圧密度へ直接圧密化された場合、材料の加工性が失われることである。歯科用充填材料の応用分野では、水和反応に必要な少量の液体を吸収するようにされた後、歯科医が型取り具でその部分に圧を加える際に、乾燥していて加工性に乏しいと歯科医によって経験されるであろう材料への「スパッタリング」が虫歯位置において施される時、これは圧密原料として表現される。
【0005】
セメントベースの系の良好な加工性を得る方法のひとつには、圧密原料として形成せずに、バインダー相と反応する液体に直接、密度の低い粉体材料を浮かせ、必要に応じて最初の水抜きの後、最終の水抜きを行う締め固めを行ってから、間隙たとえば虫歯に直接、圧密化する方法がある。例えば、特許文献4(SE502,987号)と特許文献5(WO 01/76534号)を参照されたい。ここで、問題は、虫歯に直接、固結される場合には高度の圧密化を行うのは、セラミック材料の強度に悪影響があるので不可能であるということにある。
【0006】
特に、歯科充填材に関連しては、セラミック仕上げ材料には放射線不透過性(X線陰影度)と同時に半透明性も示すものでなければならないという要望がある。人の歯、特に、エナメル質は光を放つ。半透明と言われる歯を通じた光の拡散のされ方は、透明とは区別されなくてはならない。半透明材料の定義は次のようなものである。「光を反射し、伝播させ、吸収する材料。材料を物体と観察者の間に置く時、その材料を通して物体をはっきりとは見ることができない」[非特許文献1]。半透明性を測定する方法には、白色の背景と黒色の背景でのそれぞれの反射光量の比で決める方法がある(ISO9917)。不透明性が30〜90%の間にあれば、材料は半透明、90%を越えれば不透明、35%未満なら透明と言われる。人の歯の象牙質はおよそ70%の不透明度を持つのに対し、エナメル質は35%前後の不透明度を持つ。歯科充填材料が天然の歯の外見をまねる能力は、半透明な材料に大きく左右される。今日において普通の、例えば、Zr0やSn0というX線陰影物質は半透明性を乱すので、半透明性と放射線不透過性とを同時に達成することは至難の目標である。例えば、損傷を受けた骨や、骨の欠損部への骨の充填のような整形外科の応用分野では、本発明に基づく組成と強度改善及びX線陰影度が必要不可欠なものとなる。
【特許文献1】スウェーデン特許 SE463,493号
【特許文献2】国際出願 WO 00/21489号
【特許文献3】国際出願 WO 01/76535号
【特許文献4】スウェーデン特許 SE502,987号
【特許文献5】国際出願 WO 01/76534号
【特許文献6】国際出願 WO 00/21489号
【非特許文献1】Lemire、Burk、「歯科医業における色」J.M.Ney会社(1975)
【非特許文献2】S.Ban, K.J.Anusavice,「脆性歯科材料の破壊応力に関する試験方法への影響」J Dent Res 69(12):1791〜1799、1990年12月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような問題を解決し、それによって粉体材料、すなわち、化学的に結合したセラミック材料と水和反応するバインダー相と反応する液体と追随飽和する能力を有するセメントベースの系の材料からなるバインダー相で、良好な加工性とともに高度の圧密度を示すものを提供することを狙いとしている。さらに、本発明のもうひとつの目的は、放射線不透過性と同時に半透明性を示すような材料を提供することにある。加えて、本発明は、粉体材料の貯蔵と、それをバインダー相と反応する液体と混合するための装置を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的その他は、請求項に示すような本発明による粉体材料、方法、及び装置によって達成される。
【0009】
本発明によれば、粉体材料は、粉状粒子の顆粒の形で存在し、その顆粒は55%を超える圧密度を示し、その平均サイズは30〜250μmである。このような高度に圧密化された小さな顆粒を用いて、材料の形状形成は、次のような手段によって高度に圧密化された系の加工性の制約を残すことなく行われることができる。すなわち、55%を越える、好ましくは60%を越える、さらには必要なら65%を越える、そしてさらに必要なら最高は70%を越える最終的な高圧密度の系において、混錬、押し出し成型、錠剤射出、超音波照射のような手段によって、流動性を保ったまま容易に形状形成を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、化学的に結合したセラミック材料と水和反応するバインダー相と反応する液体と追随飽和する能力を有するセメントベースの系の材料からなるバインダー相で、良好な加工性とともに高度の圧密度を示す粉体材料が提供される。さらに、本発明によれば、放射線不透過性と同時に半透明性を示すような材料が提供される。加えて、本発明によれば、粉体材料の貯蔵と、それをバインダー相と反応する液体と混合するための装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の原理は、事前圧縮で高度に圧密化された物質の微粒化後の顆粒が、マイクロメーターの大きさの状態にある同じ顆粒間に、百万分の数十の接触点を含むという事実に基づいている。
【0012】
これらの微細な粒子が相互に圧縮されて新たな物質が形成される場合、新たな接触点が生まれ、それらの新たな接触点は同じ高い圧密度にはない。これらの新たな接触点における低い圧密度は、全体の圧密度が新たな接触点における低い圧密度によってほんのわずか下がる一方で、加工性は改善されることになる。これは、全接触点数のうちの極めてわずかな部分を構成するだけの新たな接触点に起因するものである。
【0013】
たとえば、たとえ1千個の新たな接触点が形成されたとしても、これらの接触表面は全接触表面積の千分の一にも満たず、言い換えれば、これらは究極の密度にほんの少しの影響しか与えず、この究極の密度は本発明による顆粒のより高い圧密度によって決まる。その上、本発明による系に関する一般的な固化機構は、水との反応による固体材料の溶解現象を含んでおり、この現象はイオンの形成につながり、飽和溶解と水和沈殿につながるので、詰まった顆粒間個々の接触ゾーンは、他の接触点と区別がほとんどつかない。
【0014】
セメントが添加液体により水和反応を起こす系において、新たな接触点はますます固化された相によって埋められ、このことは水和反応や固化反応後に均質性が増すということを意味する。そのような方法で最終的な圧密度が上がることによって、より密度の高い最終製品が得られ、これにより、製品の加工性が極めて良好になるだけでなく、強度が増したり、放射線不透過物質の量を少なくできたり、半透明性の達成のしやすさなどの可能性につながる。
【0015】
本発明の一態様によれば、顆粒は60%を越える、さらに必要なら65%を越える、さらに尚一層必要なら70%を越える圧密度を示すものが望ましい。顆粒は、平均サイズで30〜250μm、必要に応じて50〜200μm、なお一層必要なら70〜150μmであることが望ましい。他方、顆粒における粉状粒子は最大粒子サイズが20μm未満で好ましくは10μmが望ましい。ここで、最大粒子サイズを有する顆粒を構成するのは粉状粒子のごく限られた部分でしかないことは注意されなければならない。顆粒のサイズはレーザー回折法によって測定される。高度に圧密化された顆粒は、たとえば、冷間静水圧プレス成形、薄膜層の平板プレス成形、水力波動技術、あるいは急速圧密化といったものにより所定の圧密度に締め固められた粉体材料によって製造され、圧密化された材料が粒状化された後は、所定サイズの顆粒に、たとえば粉砕あるいは破砕されたりして製造される。
【0016】
本発明の別の態様によれば、セメントベースの系は、好ましくはCa、Sr、Baからなるグループにおける陽イオンを有するアルミン酸塩、珪酸塩、リン酸塩、硫酸塩及びそれらの混合物から成るグループにおける化学結合セラミック材料を含む。歯科充填材料に関して、カルシウムアルミン酸塩セメントが最も好まれ、バインダー相は、3CaO・AlとCaO・2Alの間にある組成でおよそ12CaO・7Al(ガラス相では任意)の組成を有することが好適である。特許文献6(WO 00/21489号)に述べられているように、カルシウムアルミン酸塩セメントはまた、セラミック材料に長期にわたる寸法上の安定特性を与えるようにした添加剤を補正する1種類あるいは2種類以上の膨張剤を含めることができる。その場合、たとえば、容積で全容積の30%未満まで、好ましくは容積で1〜20%、さらに好ましくは容積で1〜10%の1種類あるいは2種類以上の別のセメントバインダー相を使用するのが望ましい。普通ポルトランドセメント(OPCセメント)の混合剤あるいは目の細かい水晶性シリカを使用するのが都合が良い。さらには、セラミック材料は水和された状態で少なくとも50HV、好ましくは少なくとも100HV、またさらに好ましくは120〜200HVの硬度(ビッカース硬度)を有するのが望ましい。
【0017】
本発明のさらに別の態様によれば、セラミック材料は、水和された状態で、35〜90%に相当する半透明性、好ましくは40〜85%、さらに好ましくは50〜80%の不透明度を有する。顆粒は、セラミック材料の半透明性を保持したり、増やすと同時に、一方では放射線不透過性をセラミック材料に与えるために使われる添加剤を含んでいるのが望ましい。
【0018】
さらに、また別の本発明によれば、顆粒はバインダー相に加えて、水和バインダー相の屈折率から最大15%、好ましくは最大10%、さらに好ましくは最大5%ずれた可視光屈折率を示す1種類または2種類以上の添加剤を、容積にして50%まで、好ましくは10〜40%まで、さらに好ましくは20〜35%含んでも良い。バインダー相と添加剤との間の屈折率の相似性により半透明性が得られる。添加剤はガラス、好ましくは珪酸塩ガラスの顆粒から構成されるのが好ましく、当該添加剤は5g/cmの密度を越える原子、すなわち、周期律でV(バナジウム)以上の重金属、中でもBa、Sr、Zr、La、Eu、Ta、及び/またはZnを含んでいるのが望ましい。バリウムあるいはストロンチウムあるいはその両方を含む添加剤を用いる場合の有利な点は、バリウム及びストロンチウムは、カルシウムと同じ原子グループなので、バリウムやストロンチウムといったものはバインダー相の一部となり、ある点でカルシウムに置き換わる点にある。重い原子を有するガラスを使用する場合、半透明性と放射線不透過性を同時に達成することができる。上述要件を満足する1種類あるいは2種類以上の添加材料の例としては、珪酸塩ガラス、バリウムアルミニウム硼珪酸塩ガラス、バリウム硫酸塩、バリウムフッ化物、ジルコニウム亜鉛ストロンチウム硼珪酸塩ガラス、アパタイト、フッ化アパタイト、その他類似の材料がある。これらの材料の中で、バリウムはストロンチウムと入れ替えが可能で、その材料にはフッ化物を含むことができる。
【0019】
当該添加剤は、半透明性に貢献し、化学結合セラミック材料に水和反応を起こさせるバインダー相と反応する液体と追随飽和する能力を示すガラス相を含んでいることも考えられる。それ故、添加剤は反応性である。最大の利点は、もし、添加剤が粉体材料のバインダー相と同じ要素から構成されていれば、それらはすべての波長で同一か、あるいはほぼ同一の屈折率を有するという点である。出来るなら、ガラス相の当該添加剤はガラス相にカルシウムアルミン酸塩を含み、3CaO・Al相とCaO・2Al相の中間のどこかで、ほぼ12CaO・7Alの組成の相で、液体との反応を遅延させるようにした安定剤を有するものが良い。また別の実施例によれば、ガラス相の当該添加剤はガラスアイオノマーガラス、すなわち、ガラスアイオノマーセメントで使用されることで知られるガラスで、好ましくは容積にして25%未満、さらに好ましくは容積にして15%未満、さらに好ましくは容積にして10%未満を含むのが良い。
【0020】
代替案あるいは組合わせ案として、前記添加剤はバイオ活性あるいはバイオ再吸収性のある材料を含むのが良い。
【0021】
添加材料はまた、球形、規則的な形、不規則な形、ウィスカー状、板状等々とどのような形態、形状でも構わない。添加剤の粒子は20μm未満であることが必要で、好ましくは10μm、さらに好ましくは5μm未満でなくてはならない。しかしながら、添加剤は、本発明による添加剤として用いられるように既知の方法でグラスファイバーとして製造することも考えられる。
【0022】
さらに別の本発明の態様によれば、本発明による顆粒は、事前に圧密化されていない粉体材料、好ましくは、顆粒を構成している残りのもの、あるいは残りの部分をなす主なものの顆粒の粉体材料と同じセメントベースの系を、容積にして50%まで、好ましくは5〜30%、さらに好ましくは10〜20%含んでいる組成に存在する。事前に圧密化されていない粉体材料は20μm未満、好ましくは15μm未満、さらに好ましくは10μm未満の最大粒子サイズを示すものが良い。事前に圧密化されていない粉体材料は、強度を増加させ、さらに水和バインダー相の屈折率と最大で15%、望むらくは最大10%、さらに好ましくは最大5%ずれた可視光屈折率を示す板状、ファイバー状、あるいはウィスカー状の充填剤を、40%まで、好ましくは5〜30%まで、さらに好ましくは10〜20%まで追加して含んでも良い。充填剤を上述の任意のタイプの添加剤で構成することが可能であり、あるいは純粋に強度増進ものでも良いが、バインダー相と屈折率で上述されたものより大きくずれないものが望ましい。材料の例としては珪酸塩ガラス、Al及びCaO・Si0がある。このような純粋に強度の増進をはかる充填剤は、また、勿論、実際の顆粒、好ましくは上述の内容物の中で使用されても良い。
【0023】
さらに、前々頁から前頁の説明による放射線不透過性に関する貢献因子として働かせるために充填剤を添加しても良い。
【0024】
本発明による粉体材料はまた、55%を越える、好ましくは60%を越える、さらにさらに好ましくは65%、最良な場合は70%を越える平均圧密度を有する圧密原料として形成されても良い。圧密原料は、最大外部寸法で最大8mm、最小寸法で最小0.3mmを示すもので、その直径あるいは幅が1〜8mm、好ましくは2〜5mmさらにその高さは0.3〜5mm、好ましくは0.5〜4mmが良い。圧密原料の別の態様に関しては、特許文献3(WO 01/76535号)に言及されていて、参考のためここにその内容がまとめられている。
【0025】
本発明の別の実施例によれば、材料は、バインダー相と反応する液体に浮遊させることが可能であり、この場合、材料はできた浮遊物の水を抜いた後、材料がバインダー相と他の残留液体との間の反応によって固化してしまう前に圧密化される。最終的には圧密は、55%を越える、好ましくは60%を越える、好ましくは65%、さらに好ましくは最高70%を越える圧密度で行われるのが望ましい。歯科充填剤あるいは整形外科組成のような応用分野に加えて、電気工学、ミクロ機械工学、光学用の基板材料や型材料のような領域や、バイオセンサー技術での応用が見られる。環境上の側面から、材料にはさらにもっと別の応用分野に関する大きな利用領域、すなわち、無機物のパテとしての利用領域が与えられることになるだろう。浮遊物の製造方法に関する別の様相に関して、特許文献5(WO 01/76534号)に言及がなされており、参考のためその内容がここにまとめられている。
【0026】
任意の添加剤、あるいは顆粒と上記による事前に圧密化されていない粉体材料を含む、好ましくは顆粒状のものだけからなる材料は、さらに別の実施例によると、バインダー相と反応する液体と混合することができ、この場合、生成する浮遊体を隙間に直接注入した後に隙間が埋まるようにできる。出来れば、この液体には、浮遊体の均質性を適切に保つために水と硬化促進剤、拡散剤、流動化剤あるいはその両方が含まれるのが好ましい。硬化促進剤は水和反応をスピードアップするもので、好ましくはアルカリ金属塩からなるものが良い。例えば塩化リチウムや炭化リチウムといったリチウム塩を用いるのが最も望ましい。流動化剤はリグノスルホン酸塩あるいはクエン酸塩あるいはその両方、EDTAあるいは、PEGあるいは単位量を含むPEGの入った物質化合物を含むヒドロキシカルボキシあるいはその両方からなるものが良い。また、セラミック材料が製造される時に圧密原料が液体を吸収するようになる材料が圧密原料に圧密される実施例におけるのと同じように、浮遊体から水を抜いて圧密化する実施例では、硬化促進剤、拡散剤、あるいは流動化剤あるいはその両方が用いられるのは当然である。
【0027】
図1における装置10は、バインダー相と反応する液体ならびに本発明による顆粒を貯蔵するようになっている。さらに、特に、一定量の顆粒が第1チャンバー1に保管され、顆粒量と所要の水セメント比に見合う液体量が第2チャンバー2に保管される。チャンバ−のサイズ、形や充填度は変わっても良いが、通常、充填度は100%に近い。チャンバー1、2はお互い通行路5で連結されているが、この通行路は貯蔵部でシール3(たとえば薄膜)によってシールされている。第1チャンバー1には第2チャンバー2よりも圧力が低いのが望ましい。化学結合セラミック材料が顆粒と液体から作られる時には、シール3が破られ、そのときの圧力差が推進力となるかあるいは第2チャンバー2の圧搾の助けを借りるか、あるいは、重力の助けを借りて、あるいはその両方を借りて液体が第2チャンバー2から第1チャンバー1に流れる。それ故、液体の供給は密閉された空間で行われる。
【0028】
第1チャンバー1は少なくとも、壁4を通じて顆粒/液体の機械的な処理を可能にさせる壁材料でできた壁4で設計されている。第1チャンバー1はフレキシブルな袋で構成されるのが望ましい。また、第2チャンバーは同じ材料で作っても良く、シール3はたとえば2つのチャンバー間の溶接で構成しても良い。
機械的な処理とは、たとえば練り、回転、ハンドプレス等々で良い。
材料はその後、付加装置へと搬送される。
【0029】
図2は本発明による装置の第2実施例を示す。装置20では、第2チャンバー2が第1チャンバー1の内部に設けられている。第2チャンバー2は薄膜の形かあるいは薄膜を含む壁6を有しており、液体に加えてボール7(たとえばプラスチックボール)が備わっている。装置20全体を揺動することによって、ボールが薄膜を破る。ここで、また、チャンバー1と2の間に圧力差があった方が好ましい。
【0030】
勿論、顆粒のある第1チャンバーが液体のある第2チャンバーの内部に設けられるように装置が設計されても良い。いずれにしても、揺動と圧力差によって、液体と材料の混合が行われペーストが形成される。その後、ペーストは注射器によって材料で充填されるべき間隙に塗られる。
【0031】
本発明による装置は、材料が歯科あるいは整形外科材料で構成される場合、特に、材料の貯蔵、分配及び準備に都合が良いが、その他の応用分野でも利用できる。
【実施例】
【0032】
[実施例1]圧密化の程度と顆粒サイズが、水和材料の曲げ強度へ及ぼす影響を調べるために一連のテストが行われた。
[原材料]CA相のカルシウムアルミン酸塩、珪灰石(CaO−SiO、CS)のファイバー、歯科用ガラス
例を以下に記述する。
a)粉体から作られた水和材料の曲げ強度
b)珪灰石のファイバーの入った粉体から作られた水和材料の曲げ強度
c)サイズ50μm及び圧密度60%の顆粒から作られた水和材料の曲げ強度
d)サイズ150μm及び圧密度60%の顆粒から作られた水和材料の曲げ強度
e)サイズ50μm及び圧密度70%の顆粒から作られた水和材料の曲げ強度
f)サイズ150μm及び圧密度70%の顆粒から作られた水和材料の曲げ強度
g)サイズ100μm及び圧密度65%の顆粒から作られた水和材料の曲げ強度
【0033】
以上のaからgの例における粉体混合物の顆粒サイズの構成は:顆粒のサイズは最大13μmで、顆粒の平均サイズは3.5μm及び、容積にして15%のCA、及び、最大長さ10μm、直径0.5μm及び容積にして25%の放射線不透過性の歯科用ガラスを有しているCSファイバーである。
【0034】
以上のaからgの例における粉体はボールミルの中で充填率35%の不活性のシリコン窒化物のミルボールと混合された。研磨液としてイソプロパノールが使用されている。溶剤が排出された後、c及びdの粉体が204MPaで圧密度60%まで、e及びfの粉体は307MPaで圧密度70%まで、そしてgについては254MPaで圧密度65%まで冷間静水圧プレス成形された。
【0035】
cからgまでの圧縮粉体はその後、上記のサイズの顆粒にそれぞれ粉砕された。その混合顆粒はその後、水、LiCl、分散剤、及び流動化剤からなる液体と0.2の水セメント比(重量比)でペースト状に混合された。その後、1週間、材料は、2軸配置(3個のボール上のボール)で曲げ強度を計測するまで37℃の湿潤状態におかれた[非特許文献1]。結果を表1に示す。
【0036】
[表1]

【0037】
結果は、材料における強度の増強は、材料製造用に使う最初の材料として粉体よりもむしろ顆粒を用いる方が達成できるということを示している。ファイバーの添加によっても強度の増加がある程度認められるであろう。
【0038】
[実施例2]圧密化の程度が、水和材料の曲げ強度へ及ぼす影響を調べるために一連のテストが行われた。
[原材料]CA相のカルシウムアルミン酸塩、歯科用ガラス、珪灰石(CaO−SiO、CS)のファイバー
例を以下に記述する。
a)粉体から製造された水和材料の曲げ強度
b)顆粒から製造された水和材料の曲げ強度
【0039】
例a〜bにおける粉体混合物の粒子のサイズと組成は次の通り。粒子サイズ最大13μm、粒子平均サイズ3.5μm及び容積15%の最大長さ10μmのCSファイバー、及び直径0.5μmで容積25%の放射線不透過性歯科用ガラス。
【0040】
例にあげた粉末はボールミルで、充填率35%の不活性シリコン窒化物のミルボールと混合された。研磨液としてはイソプロパノールが使用された。溶剤が排出された後、bの粉末は、60%の圧密度まで204MPaで冷間静水圧プレス成形された。その後、プレスされた粉末bは100μmのサイズの顆粒に破砕された。その顆粒はその後、水、LiCl、分散剤及び流動化剤からなる液体と0.19の水セメント比(重量比)でペースト状に混合された。シリンダー状の試験体がこのペーストから作られた。粉末混合物からは、60%の圧密度を有する圧密原料が冷間静水圧プレス成形により製造されて、この圧密原料は薄いLiCl溶液によって湿らされた。その材料はその後、1週間、2軸配置(3個のボール上のボール)で曲げ強度を計測するまで37℃の湿潤状態におかれた[非特許文献1]。結果を表1に示す。
【0041】
[表1]

【0042】
結果は、事前に圧密化された顆粒から圧密材料を製造することによって、最終形状に圧縮することによって得られるのと同様に、高曲げ強度がその材料について得られている。
【0043】
本発明はこれらの実施例に限られず、様々なものになり得ることができるが、いずれも請求項の範囲内である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、化学的に結合したセラミック材料と水和反応するバインダー相と反応する液体と追随飽和する能力を有するセメントベースの系の材料からなるバインダー相で、良好な加工性とともに高度の圧密度を示す粉体材料が提供される。さらに、本発明によれば、放射線不透過性と同時に半透明性を示す材料が提供される。加えて、本発明によれば、粉体材料の貯蔵と、それをバインダー相と反応する液体と混合するための装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1は、第1実施例による粉体材料の貯蔵及びバインダー相と反応する液体との混合のための装置を示す。
図2は第2実施例による粉体材料の貯蔵とバインダー相と反応する液体との混合のための装置を示す。
【符号の説明】
【0046】
1 第1チャンバー
2 第2チャンバー
3 シール
4 壁
5 通行路
6 シール
7 ボール
10 装置
20 装置
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー相と反応して化学的に結合したセラミック材料を水和させる液体と追随飽和する能力を有するセメントベースの系からなるバインダー相の粉体材料であって、該粉体材料が、顆粒状の粉末粒子であり、その顆粒が55%を越える圧密度と30〜250μmの平均サイズを示すことを特徴とする粉体材料。
【請求項2】
前記顆粒が、少なくとも60%を越える、好ましくは65%を越える、さらに好ましくは70%を越える圧密度を示すことを特徴とする請求項1に記載の粉体材料。
【請求項3】
前記顆粒が、50〜200μm、好ましくは70〜150μmの平均サイズを示すことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粉体材料。
【請求項4】
前記粉末粒子が、最大粒子サイズで20μm未満、好ましくは10μm未満を示すことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の粉体材料。
【請求項5】
前記セメントベースの系が、アルミン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、及びこれらの混合物からなるグループのセメントを含み、好ましくはCa、Sr、及びBaから構成されるグループの陽イオンを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の粉体材料。
【請求項6】
前記顆粒が、50%までの、好ましくは10〜40%までの、さらに好ましくは20〜35%の、1種類あるいは2種類以上の添加剤を含み、該添加剤が、水和バインダー相の屈折率と、最大15%、好ましくは最大10%、さらに好ましくは最大5%ずれた可視光屈折率を示すことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の粉体材料。
【請求項7】
前記添加剤が、ガラス粒子、好ましくは珪酸塩ガラスからなり、前記添加剤が、好ましくは5g/cmの密度を越える原子、好ましくは周期律でバナジウム以上の重金属、さらに好ましくはBa、Sr、Zr、La、Eu、Ta、及び/またはZnを含んでいることを特徴とする請求項6に記載の粉体材料。
【請求項8】
前記添加剤が、バインダー相と反応して化学的に結合したセラミック材料を水和させる液体と追随飽和する能力を示すガラス相からなることを特徴とする請求項6に記載の粉体材料。
【請求項9】
前記顆粒が、50%までの、好ましくは5〜30%までの、さらに好ましくは10〜20%の事前に圧密化されていない粉体材料と混合された状態で存在し、好ましくは顆粒中の粉体材料と同一のセメントベースの系からなることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一つに記載の粉体材料。
【請求項10】
事前に圧密化されていない粉体材料が、20μm未満の、好ましくは15μm未満、さらに好ましくは10μm未満の最大粒子サイズを示すことを特徴とする請求項9に記載の粉体材料。
【請求項11】
事前に圧密化されていない粉体材料が、40%までの、好ましくは5〜30%の、さらに好ましくは10〜20%の、好ましくは板状、ファイバー状あるいはウィスカー状の補強用充填剤を含み、該充填剤が、好ましくは水和バインダー相の屈折率と、最大15%、好ましくは最大10%、さらに好ましくは最大5%ずれた可視光の屈折率を示すことを特徴とする請求項9に記載の粉体材料。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一つに記載の粉体材料から構成され、平均圧密度が55%を越える、好ましくは60%を越える、さらに好ましくは65%、最大で70%を越えることを特徴とする圧密原料。
【請求項13】
粉体材料、すなわち、バインダー相と反応して化学的に結合したセラミック材料を水和させる液体と追随飽和する能力を有するセメントベースの系からなるバインダー相からセラミック材料を製造することに関連した方法で、前記粉体材料が55%を越える圧密度まで圧密化された後、粉体粒子の30〜250μmの平均サイズを示す顆粒に細かく分割されることを特徴とするセラミック材料の製造方法。
【請求項14】
前記粉体材料が、請求項1乃至請求項11までのいずれか一つに記載の粉体材料であることを特徴とする請求項13による製造方法。
【請求項15】
前記顆粒が、50%まで、好ましくは5〜50%、さらに好ましくは10〜20%の、顆粒状の粉体材料と同一のセメントベースの系の事前に圧密化されていない粉体材料と混合されていることを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
前記材料が、平均圧密度が55%を越える、好ましくは60%を越える、さらに好ましくは65%を越える、最高では70%を越える圧密原料に圧密化されることを特徴とする請求項13乃至請求項15までのいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項17】
前記材料が、バインダー相と反応する液体中に浮遊し、バインダー相と任意の残留液体との間の反応によって材料が固化する前に生成懸濁液/ペーストの水を抜き、圧密化されることで、前記材料の圧密度が55%を越える、好ましくは60%を越える、さらに好ましくは65%を越える、最高では70%を越えることを特徴とする請求項13乃至請求項15までのいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項18】
バインダー相と反応する液体が前記顆粒の中に分散されており、生成ペーストがセラミック材料で充填される空間に塗られることを特徴とする請求項13乃至請求項15までのいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項19】
液体が前記顆粒に供給された後、詰め込みや注入によってセラミック材料で充填されるべき空間に塗り込められるペーストに対して、その顆粒に回転、練り、あるいはハンドプレスによって圧縮がかけられて一体となることを特徴とする請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
バインダー相と反応する前記液体が、水と硬化促進剤、分散剤、及び/又は流動化剤を含むことを特徴とする請求項13乃至請求項15までのいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項21】
粉体材料の貯蔵用及び液体との混合用の装置(10、20)で、前記装置が請求項1乃至請求項11までのいずれか一つに記載の顆粒を保管する第1チャンバー(1)、及びバインダー相と反応する前記液体を保管する第2チャンバー(2)、及びチャンバー(1、2)間の開封可能なシール(3、6)を含むことを特徴とする混合装置。
【請求項22】
前記第1チャンバー(1)よりも前記第2チャンバー(2)の方が圧力が大きいことを特徴とする請求項21に記載の混合装置。
【請求項23】
少なくとも、前記第1チャンバー(1)が、壁(4)を介して粉体材料の加工処理が可能になる壁材料からなる壁(4)を有することを特徴とする請求項21に記載の混合装置。


【公表番号】特表2006−502106(P2006−502106A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−515295(P2004−515295)
【出願日】平成15年6月11日(2003.6.11)
【国際出願番号】PCT/SE2003/000956
【国際公開番号】WO2004/000241
【国際公開日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【出願人】(502370421)ドクサ アクティボラグ (8)
【Fターム(参考)】