説明

粉塵満量状態報知機能を有するコンクリート等の切削装置

【課題】ダストケース内に収容された粉塵が満量になった状態で、運転が継続されてしまうという事態を好適に回避することができるコンクリート等の切削装置を提供する。
【解決手段】集塵装置によって回収された粉塵を収容するダストケース4が機体2内に保持されるように構成され、ダストケース4の内側には、インナートレイ6が配置され、インナートレイ6は、ダストケース4の底面の上方において弾性的に支持されることにより、粉塵の蓄積量に応じて下降するように構成され、インナートレイ6内の粉塵が満量となり、インナートレイ6が満量位置まで下降した場合に、この状態を検知する満量検知手段(接近スイッチ8、マグネット9)、及び、この状態を報知する満量報知手段を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の舗装面や、コンクリート表面を切断又は切削するコンクリート等の切削装置に関し、特に、切削屑等の粉塵を回収する集塵装置を付帯したコンクリート等の切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートカッターによって、道路の舗装面やコンクリートに対し切削作業を行うと、切削屑等の粉塵が生じる。この粉塵は、産業廃棄物として回収する必要があり、従来のコンクリートカッターにおける粉塵回収方法としては、いわゆる「湿式」と「乾式」とがある。
【0003】
湿式の粉塵回収方法は、切削作業時にタンクから水を供給し、粉塵を水に吸着させて泥状にし、これを回収するというものである。一方、乾式の粉塵回収方法は、カッターブレード周りに被せるブレードカバー内の空気を集塵装置によって吸引して、粉塵を回収するというものであり、吸引空気から粉塵を分離し、切削装置の機体に取り付けられた粉塵回収容器(ダストケース)内に、分離した粉塵を収容するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−241825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乾式のコンクリートカッターの運転を継続すると、回収した粉塵がダストケース内において次第に蓄積していくことになり、ダストケース内の粉塵が満量に達した場合には、コンクリートカッターの運転を停止し、機体からダストケースを取り外して、回収した粉塵を機外へ排出する必要がある。しかしながら、従来のコンクリートカッターにおいては、ダストケース内の粉塵が満量になったことを作業者に知らせるような構造になっていないため、運転中に粉塵が満量になった場合でも、そのまま運転が継続されてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、ダストケース内の粉塵が満量になったことを検知して作業者に報知する手段を搭載することにより、上記のような従来技術における課題を好適に解決することができるコンクリート等の切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコンクリート等の切削装置は、集塵装置によって回収された粉塵を収容するダストケースが機体内に保持されるように構成され、ダストケースの内側には、インナートレイが配置され、インナートレイは、ダストケースの底面の上方において弾性的に支持されることにより、粉塵の蓄積量に応じて下降するように構成され、インナートレイ内の粉塵が満量となり、インナートレイが満量位置まで下降した場合に、この状態を検知する手段(満量検知手段)、及び、この状態を報知する手段(満量報知手段)を有していることを特徴としている。
【0008】
尚、満量検知手段は、インナートレイに取り付けられたマグネットと、ダストケースの装着スペースに配置され、規定値以上の磁気を検知した場合に信号を出力し、或いは、接続される導線の開閉状態を切り替えるように構成された接近スイッチと、によって構成されることが好ましく、また、インナートレイが満量位置よりも上方に位置している場合には磁気が検知されず、満量位置まで下降した場合に磁気が検知されるような相対位置関係をもって、接近スイッチとマグネットとが配置されていることが好ましい。
【0009】
また、満量検知手段は、インナートレイに取り付けられた磁性体と、ダストケースの装着スペースに配置され、磁性体が一定の距離まで近づいた場合に信号を出力し、或いは、接続される導線の開閉状態を切り替えるように構成された接近スイッチと、によって構成することもでき、この場合、インナートレイが満量位置よりも上方に位置している場合には磁性体が検知されず、満量位置まで下降した場合に磁性体が検知されるような相対位置関係をもって、接近スイッチと磁性体とが配置されていることが好ましい。
【0010】
また、満量報知手段は、満量検知手段から出力される信号を受けて、或いは、接続される導線の開閉状態の切替により点灯或いは点滅する警告ランプ、及び/又は、満量検知手段から出力される信号を受けて、或いは、接続される導線の開閉状態の切替により鳴動する警告ブザーであることが好ましく、更に、インナートレイが満量位置まで下降した状態が検知された場合、切削装置のブレードに回転駆動力を供給するエンジン又はモーターが停止するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るコンクリート等の切削装置は、集塵装置によって回収した粉塵の満量状態を検知し、作業者に報知されるようになっているため、ダストケース内に収容された粉塵が満量になった状態で、切削装置の運転が継続されるという事態を好適に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態に係る切削装置1の機体2内に装着されたダストケース4(初期位置)、及び、機体2等の断面図である。
【図2】図2は、図1に示したダストケース4内の粉塵が満量となり、満量位置まで下降した状態を示す、ダストケース4等の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に沿って本発明「コンクリート等の切削装置」の実施形態について説明する。この切削装置1においては、集塵装置(図示せず)によって回収された粉塵を収容するダストケース4(略直方体状のボックス型容器)が、図1に示すように、機体2の側方(或いは後方)から、機体2内に形成された装着スペース3(空洞部)の奥へ向かって差し込まれた状態で、機体2内に保持されるように構成されている。
【0014】
ダストケース4は、上方が開放されており(或いは、上方において部分的な開口部を有しており)、このダストケース4を装着スペース3内の適正な位置にセットして集塵装置を稼働させると、集塵装置によって分離回収された粉塵が、装着スペース3の上方において開口するダスト排出部5から落下して、ダストケース4内に収容されるようになっている。
【0015】
尚、ダストケース4の内側には、図1に示すように、インナートレイ6が配置されており、このインナートレイ6は、ダストケース4の底面との間に配置された複数個(本実施形態においては四つ)のコイルバネ7(弾性材料)によって、ダストケース4の底面の上方において弾性的に支持されている。
【0016】
インナートレイ6は、粉塵が未だ収容されていない「空の状態」にあるとき(或いは、「空」に近い状態にあるとき)、図1に示す位置(初期位置)に保持されるが、粉塵が蓄積されていくと、粉塵の重量により、コイルバネ7を圧縮しながら次第に沈み込んでいき、粉塵が満量になると、図2に示す位置(満量位置)まで下降する。
【0017】
そして、本実施形態においては、インナートレイ6が、図2に示す満量位置まで下降すると、その状態が接近スイッチ8によって検知され、作業者に報知されるよう構成されており、ダストケース4内に収容された粉塵が満量になった状態で、切削装置1の運転が継続されることを回避できるようになっている。
【0018】
より詳細には、図示されているように、ダストケース4の装着スペース3の奥に、接近スイッチ8が配置され、インナートレイ6の奥側の側壁部6aの外側面には、マグネット9(磁性体)が取り付けられている。接近スイッチ8は、規定値以上の磁気を検知した場合に信号を出力するように構成され、一定の磁力線を発する磁性体を近づけていくと、接近スイッチ8から一定の距離まで磁性体が近づいた時点で信号が出力されることになる。
【0019】
本実施形態においては、インナートレイ6が図2に示す満量位置よりも上方に位置している場合にはマグネット9の磁気が検知されず、図2に示す満量位置まで下降した場合にマグネット9の磁気が検知されるような相対位置関係をもって接近スイッチ8とマグネット9とが配置されており、また、接近スイッチ8は、高さ位置を調整できるように取り付けられている。
【0020】
そして、この切削装置1においては、インナートレイ6が満量となり、図2に示す満量位置まで下降して、マグネット9の磁気が接近スイッチ8によって検知された場合、接近スイッチ8から出力される信号に基づいて、切削装置1のエンジン(切削ブレードに回転駆動力を供給するエンジン又はモーター)が強制的に停止されるとともに、切削装置1の操作ハンドルの近傍に配置された警告ランプが点灯し、或いは、警告ブザーが鳴り、インナートレイ6が満量となったことを作業者に報知できるようになっている。
【0021】
尚、本実施形態においては、インナートレイ6は、コイルバネ7によって下側から支持されているが、粉塵の蓄積量に応じて次第に沈み込んでいくように弾性的に支持されていれば、必ずしも下側から支持されていなくともよく、例えば、コイルバネ或いは他の弾性材料によって上方から吊り下げられるように構成してもよい。
【0022】
また、本実施形態においては、接近スイッチ8として、磁気検出型のものが使用され、規定値以上の磁気を検知した場合に信号を出力するように構成されているが、マグネット以外の磁性体(鉄など)が一定の距離まで近づいた時点で信号を出力する金属検出型の接近スイッチを用いることもできる。この場合、ダストケース4やその他の要素を合成樹脂で構成し、インナートレイ6が図2に示す満量位置よりも上方に位置している場合には磁性体が検知されず、図2に示す満量位置まで下降した場合に磁性体が検知されるような相対位置関係をもって接近スイッチと磁性体とを配置する。
【0023】
また、接近スイッチは、磁気或いは磁性体を検知した場合に、信号を出力するのではなく、接続される導線の開閉状態(通電状態と非通電状態とを)を切り替えるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1:切削装置、
2:機体、
3:装着スペース、
4:ダストケース、
5:ダスト排出部、
6:インナートレイ、
7:コイルバネ、
8:接近スイッチ、
9:マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集塵装置によって回収された粉塵を収容するダストケースが機体内に保持されるように構成され、
ダストケースの内側には、インナートレイが配置され、
インナートレイは、ダストケースの底面の上方において弾性的に支持されることにより、粉塵の蓄積量に応じて下降するように構成され、
インナートレイ内の粉塵が満量となり、インナートレイが満量位置まで下降した場合に、この状態を検知する満量検知手段、及び、この状態を報知する満量報知手段を有していることを特徴とするコンクリート等の切削装置。
【請求項2】
満量検知手段が、インナートレイに取り付けられたマグネットと、ダストケースの装着スペースに配置され、規定値以上の磁気を検知した場合に信号を出力し、或いは、接続される導線の開閉状態を切り替えるように構成された接近スイッチと、によって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート等の切削装置。
【請求項3】
インナートレイが満量位置よりも上方に位置している場合には磁気が検知されず、満量位置まで下降した場合に磁気が検知されるような相対位置関係をもって、接近スイッチとマグネットとが配置されていることを特徴とする、請求項2に記載のコンクリート等の切削装置。
【請求項4】
満量検知手段が、インナートレイに取り付けられた磁性体と、ダストケースの装着スペースに配置され、磁性体が一定の距離まで近づいた場合に信号を出力し、或いは、接続される導線の開閉状態を切り替えるように構成された接近スイッチと、によって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート等の切削装置。
【請求項5】
インナートレイが満量位置よりも上方に位置している場合には磁性体が検知されず、満量位置まで下降した場合に磁性体が検知されるような相対位置関係をもって、接近スイッチと磁性体とが配置されていることを特徴とする、請求項4に記載のコンクリート等の切削装置。
【請求項6】
満量報知手段が、満量検知手段から出力される信号を受けて、或いは、接続される導線の開閉状態の切替により点灯或いは点滅する警告ランプ、及び/又は、満量検知手段から出力される信号を受けて、或いは、接続される導線の開閉状態の切替により鳴動する警告ブザーであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のコンクリート等の切削装置。
【請求項7】
インナートレイが満量位置まで下降した状態が検知された場合、切削装置のブレードに回転駆動力を供給するエンジン又はモーターが停止するように構成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のコンクリート等の切削装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−108321(P2013−108321A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256089(P2011−256089)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000175386)三笠産業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】