説明

粒子三次元配列体を利用した反応容器及び反応装置

液体試料中の標的物質と粒子表面に固定された反応物質との遭遇確率を高め、反応効率を向上させることができる、粒子三次元配列体を利用した反応容器、及び該反応容器を利用した反応装置を提供することを目的とし、本発明により提供される反応容器は、液体試料を収容し得る反応室を有する反応容器本体と、前記反応室内に収納された固体支持体と、表面に所定の反応物質が固定された複数の粒子とを備えた反応容器であって、前記粒子が、前記固体支持体の表面に固定された状態で前記反応室内に三次元に配列していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に所定の反応物質が固定された粒子の三次元配列体を利用した反応容器及び反応装置に関する。また、本発明は、粒子三次元配列体の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
標的核酸の検出、分離等の際には、標的核酸と相補的な塩基配列を有するプローブが固定された固体支持体が用いられる。例えば、プローブが固体化された固体支持体と標的核酸を含む液体試料とを接触させ、プローブと標的核酸とをハイブリダイズさせた後、洗浄等によって標的核酸以外の物質を除去することによって、標的核酸の検出、分離等が行われる。
【0003】
プローブを固定化した固体支持体の一例として、スライドガラス等の固体支持体の表面上に多数のプローブを配列して固定化したDNAアレイ(DNAチップ)がある。このようなDNAアレイは、遺伝子の発現、変異、多型性等の解析を並列して行なう際に非常に有用である。
【0004】
DNAアレイの作製方法としては、例えば、プローブとして用いられるオリゴヌクレオチドを固体支持体表面で直接合成する方法と、予め調製しておいたオリゴヌクレオチド(場合によってポリヌクレオチド)を固体支持体表面に固定化する方法とが知られている。
【0005】
前者の方法の代表例としては、光照射で選択的に除去される保護基の使用と、半導体製造に利用されるフォトリソグラフィー技術及び固相合成技術とを組み合わせて、マトリックスの所定の領域でプローブを選択的に合成する方法がある。
【0006】
また、後者の方法の代表例としては、(1)cDNAやPCR産物をポリ陽イオン(ポリリシン、ポリエチレンイミン等)で表面処理した固体支持体表面にスポットし、DNAの荷電を利用して固体支持体に静電結合させる方法、(2)反応活性基を導入したオリゴヌクレオチドを合成し、表面処理した固体支持体表面に該オリゴヌクレオチドをスポットし、固体支持体表面に共有結合させる方法がある。
【0007】
前者の方法では複雑な工程を経るためコスト高になる等の理由から、DNAアレイの作製方法としては一般的に後者の方法が用いられる。
【0008】
標的核酸の検出感度を向上させるためは、1スポット当たりのプローブ密度を出来るだけ高くすることが必要である。後者の方法では、プローブ含有液を固体支持体表面へ滴下することによりプローブを固体支持体表面にスポットするので、1スポット当たりのプローブ密度は、1スポット当たりのプローブ量に依存する。
【0009】
1スポット当たりのプローブ量を増加させるために、プローブを固体支持体表面に直接結合させるのではなく、プローブを粒子に集積させた後、プローブを集積させた粒子(プローブ集積化粒子)を固体支持体表面に一次元又は二次元に固定する方法が考え出されている(特許文献1,特許文献2,特許文献3,特許文献4)。
【特許文献1】米国特許第6,133,436号公報
【特許文献2】特開2001−281251号公報
【特許文献3】特開2000−346842号公報
【特許文献4】特開平11−243997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、プローブ集積化粒子を利用した上記方法では、プローブ集積化粒子を一次元又は二次元に固定しているので、標的核酸を含む液体試料とプローブ集積化粒子との反応の場は一次元又は二次元となる。すなわち、標的核酸は、液体試料中に分散している(すなわち、液体試料中に三次元に存在している)にも関わらず、プローブ集積化粒子は一次元又は二次元に配置されているため、両者の遭遇確率は低く、反応効率は低いものとなっていた。
【0011】
そこで、本発明は、第一に、液体試料中の標的物質と粒子表面に固定された反応物質との遭遇確率を高めて反応効率を向上させることができる、粒子三次元配列体を利用した反応容器、及び該反応容器を利用した反応装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、第二に、粒子三次元配列体を効率よく作製することができる、粒子三次元配列体の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記課題を解決するために、本発明の反応容器は、液体試料を収容し得る反応室を有する反応容器本体と、前記反応室内に収納された固体支持体と、表面に所定の反応物質が固定された複数の粒子とを備えた反応容器であって、前記粒子が、前記固体支持体の表面に固定された状態で前記反応室内に三次元に配列していることを特徴とする。
【0014】
本発明の反応容器において、反応室は、液体試料中の標的物質と粒子表面の反応物質との反応の場となる。液体試料が反応室内に収容されると、液体試料中の標的物質は反応室内に分散し、反応室内に三次元に存在する。反応室内には、表面に反応物質が固定された粒子が三次元に配列しているので、液体試料中の標的物質と粒子表面の反応物質との反応の場は三次元となり、両者の遭遇確率は高く、両者の反応効率が向上する。
【0015】
「液体試料」とは、試験、検査、分析等に供される液体を意味し、本発明の反応容器を用いて行なう試験、検査、分析等の目的に応じて、標的物質を含有する液体又は標的物質を含有する可能性がある液体が適宜選択される。なお、本明細書で定義された用語は、本明細書全体を通じて同義に用いられるものとする。
【0016】
「標的物質」とは、検出、分離等の対象となる物質を意味し、本発明の反応容器を用いて行なう試験、検査、分析等の目的に応じて、構造や機能等が公知の物質又は未知の物質が適宜選択される。標的物質の種類は特に限定されるものではなく、その具体例としては、核酸、タンパク質、抗原、抗体、酵素、糖鎖等の生体関連物質が挙げられる。なお、「核酸」には、DNA及びRNAの他、これらの類似体又は誘導体(例えば、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエートDNA等)が含まれる。また、核酸の塩基長は特に限定されるものではなく、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドのいずれであってもよい。また、核酸は一本鎖及び二本鎖のいずれの状態であってもよく、これらの混合状態であってもよい。
【0017】
「反応物質」とは、標的物質と反応させる物質を意味し、本発明の反応容器を用いて行なう試験、検査、分析等の目的に応じて、標的物質との反応性を有する物質又は標的物質との反応性を有する可能性がある物質が適宜選択される。反応物質は、構造や機能等が公知の物質及び未知の物質のいずれであってもよく、反応物質の種類は特に限定されるものではない。反応物質が有する(又は有する可能性がある)標的物質との反応性はいかなる反応性であってもよく、例えば、共有結合、イオン結合、ファンデルワールス力、水素結合、配位結合、化学的吸着、物理的吸着等の結合様式によって標的物質と結合する性質が挙げられる。標的物質と反応物質との組み合わせの具体例としては、核酸/相補的核酸、受容体タンパク質/リガンド、酵素/基質、抗体/抗原等が挙げられる。
【0018】
粒子の表面に固定される反応物質の数は特に限定されるものではないが、粒子の表面に複数の反応物質が固定されていること、すなわち、粒子の表面に反応物質が集積化されていることが好ましい。
【0019】
「所定の反応物質」とは、各粒子の表面に固定する反応物質の種類を予め決めておくことを意味する。各粒子の表面に固定する反応物質の種類は1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0020】
「固体支持体」とは、表面に粒子を固定できる三次元構造体を意味し、その形状、サイズ等は反応室内に収納可能である限り特に限定されるものではない。固体支持体の材質は、液体試料に対して不溶性の材質であり、液体試料の溶媒の種類等に応じて適宜選択できる。固体支持体の材質の一般的な具体例としては、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリビニリデンジフルオライド等)、金属(例えば、鉄、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、シリコン等)、ガラス、セラミックス、これらの複合材料等が挙げられる。固体支持体は非膨潤性であることが好ましいが、膨潤性であってもよい。固体支持体表面は多孔質であっても無孔質であってもよいが、固体支持体表面が多孔質である場合には無孔質である場合よりも多くの粒子を固体支持体表面に固定することができる。
【0021】
「粒子」とは、表面に反応物質を固定できる微小な三次元構造体を意味し、その形状、サイズ等は特に限定されるものではない。粒子の形状は、例えば球形であり、好ましい粒径は直径約1μm〜約100μmである。粒子の材質は、液体試料に対して不溶性の材質であり、液体試料の溶媒の種類等に応じて適宜選択できる。粒子の材質の一般的な具体例としては、スチレン、クロルスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、スチレンスルホン酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン、(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレングリコール−ジ−(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、トリブロモプロピルアクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル等の芳香族ビニル化合物、α,β−不飽和カルボン酸のエステル類又はアミド類、α,β−不飽和ニトリル化合物、ハロゲン化ビニル化合物、共役ジエン化合物、低級脂肪酸ビニルエステル等のビニル系単量体の1種以上を重合して得られるポリマー;アガロース、デキストラン、セルロース、カルボキシメチルセルロース等の多糖類の架橋体;メチル化アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン等の蛋白質の架橋体;ガラス、セラミックス等の無機材料;鉄、シリコン等の金属;これらの複合材料等が挙げられる。粒子は非膨潤性であることが好ましいが、膨潤性であってもよい。粒子表面は多孔質であっても無孔質であってもよいが、粒子表面が多孔質である場合には無孔質である場合よりも多くの反応物質を固定することができる。
【0022】
固体支持体又は粒子の「表面」とは、液体(例えば液体試料)と接触し得る面を意味し、固体支持体又は粒子の外面(外部表面)はもちろんのこと、液体が浸潤し得る固体支持体又は粒子の内面(内部表面)(例えば、固体支持体又は粒子が有する細孔の内部表面)も含まれる。
【0023】
反応室の構造は、液体試料を収容し得る限り特に限定されるものではなく、例えば、上端に開口部を有する凹部として反応容器本体に形成することができる。反応室が開口部を有するとき、本発明の反応容器は反応室の開口部を封止する蓋部材を備えていてもよい。反応室の個数は特に限定されるものでなく、1個であってもよいし、複数個であってもよい。反応室は薄板によって構成されていることが好ましい。反応室が薄板によって構成されることによって、反応室内の液体試料の温度制御を迅速かつ効率よく行なうことができるとともに、反応室内への光の照射及び反応室内から発せられる光の検出を行なう際の照射条件や受光条件の設定が容易となる。
【0024】
「粒子が三次元に配列している」とは、全ての粒子が同一平面上に位置することがないように粒子が配列していることを意味する。
【0025】
固体支持体への粒子の固定及び粒子への反応物質の固定は、種々の結合様式によって行なうことができる。結合様式の具体例としては、ストレプトアビジン又はアビジンとビオチンとの特異的相互作用、疎水性相互作用、磁性相互作用、極性相互作用、共有結合(例えば、アミド結合、ジスルフィド結合、チオエーテル結合等)の形成、架橋剤による架橋等が挙げられる。これらの結合様式による固定が可能となるように、公知の技術を用いて、固体支持体表面、粒子表面又は反応物質に適当な化学修飾を施すことができる。なお、粒子への反応物質の固定は、粒子を固体支持体に固定した後に行なってもよいが、粒子への反応物質の固定を簡便かつ効率的に行なう点から、粒子を固体支持体に固定する前に行なうことが好ましい。
【0026】
ストレプトアビジン又はアビジンとビオチンとの特異的相互作用以外にも、マルトース結合タンパク質/マルトース、ポリヒスチジンペプチド/ニッケルやコバルト等の金属イオン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/グルタチオン、カルモジュリン/カルモジュリン結合ペプチド、ATP結合タンパク質/ATP、核酸/相補的核酸、受容体タンパク質/リガンド、酵素/基質、抗体/抗原、IgG/プロテインA等の特異的相互作用を利用して、固体支持体への粒子の固定及び粒子への反応物質の固定を行なうこともできる。
【0027】
固体支持体と粒子との結合様式及び粒子と反応物質との結合様式は、結合パートナー同士(固体支持体と粒子、粒子と反応物質)が容易に離脱しない結合様式であることが好ましい。このような結合様式としては、例えば、アビジン又はストレプトアビジンとビオチンとの相互作用、共有結合の形成、架橋剤による架橋等が挙げられる。
【0028】
アビジン又はストレプトアビジンとビオチンとの相互作用を利用する場合には、例えば、アビジン又はストレプトアビジンでコーティングされた粒子を、ビオチンでコーティングされた固体支持体に結合させることができる。また、ビオチンを導入した反応物質(例えば、5’末端をビオチン化したプライマーを用いてPCRを行なうことにより得られたビオチン化核酸)を、アビジン又はストレプトアビジンでコーティングされた粒子に結合させることができる。なお、アビジン又はストレプトアビジンとビオチンとを逆にして、例えば、ビオチンでコーティングされた粒子をアビジン又はストレプトアビジンでコーティングされた固体支持体に結合させることができる。粒子と反応物質との結合についても同様である。
【0029】
共有結合の形成を利用する場合には、固体支持体表面、粒子表面又は反応物質に存在する官能基を利用して共有結合を形成させることができる。共有結合を形成し得る官能基の具体例として、カルボキシル基、アミノ基、水酸基等が挙げられる。例えば、固体支持体の表面にカルボキシル基が存在する場合には、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)等のカルボジイミド類でカルボキシル基を活性化させた後、粒子の表面に存在するアミノ基と反応させることにより、固体支持体と粒子とをアミド結合させることができる。また、固体支持体の表面にアミノ基が存在する場合には、無水コハク酸等の環状酸無水物を用いてアミノ基をカルボキシル基に変換した後、粒子の表面に存在するアミノ基と反応させることにより、固体支持体と粒子とをアミド結合させることができる。粒子と反応物質との結合についても同様にして行なうことができる。なお、反応物質が核酸である場合、核酸の反応性(相補的核酸とのハイブリダイズ性)を損なわないように、核酸の5’末端又は3’末端に導入したリンカー配列を介して核酸を粒子に結合させることが好ましい。
【0030】
架橋剤による架橋を利用する場合には、架橋対象物質が有する官能基と反応し得る種々の架橋剤を使用できる。架橋剤の具体例としては、二官能性試薬、三官能性試薬等の多官能性試薬が挙げられる。このような多官能性試薬の具体例としては、N-スクシンイミジル(4-イオードアセチル)アミノベンゾエート(N-succinimidyl(4-iodoacetyl)aminobenzoate)(SIAB)、ジマレイミド(dimaleimide)、ジチオ-ビス-ニトロ安息香酸(dithio-bis-nitrobenzoic acid)(DTNB)、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(N-succinimidyl-S-acetyl-thioacetate)(SATA)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(N-succinimidyl-3-(2-pyridyldithio)propionate)(SPDP)、スクシンイミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(succinimidyl 4-(N-maleimidomethyl)cyclohexane-1-carboxylate)(SMCC)、6-ヒドラジノニコチミド(6-hydrazinonicotimide)(HYNIC)等が挙げられる。
【0031】
(2)本発明の反応容器の第一態様では、前記反応室内に複数の固体支持体が収納されており、前記粒子が各固体支持体の表面に一次元、二次元又は三次元に配列している。
【0032】
本発明の反応容器において、反応室内に収納される固体支持体の個数は1個であってもよいし複数個であってもよいが、本態様に係る反応容器においては、反応室内に複数の固体支持体が収納されている。反応室内に収納される固体支持体の個数が1個である場合には、1個の固体支持体の表面に粒子を三次元に配列させる必要があるが、反応室内に収納される固体支持体の個数が複数個である場合には、各固体支持体の表面に粒子を一次元、二次元又は三次元に配列させることができる。すなわち、本態様に係る反応容器においては、各固体支持体の表面に一次元、二次元又は三次元に配列している粒子を組み合わせることにより、各固体支持体の表面の粒子を全体として反応室内に三次元に配列させる。各固体支持体の表面に粒子が一次元又は二次元に配列している場合には、各固体支持体の表面の粒子が全体として同一平面上に位置することがないように、反応室内の各固体支持体の位置を調節する。
【0033】
(3)本発明の反応容器の第二態様では、前記固体支持体の表面が、曲面又は同一平面上にない複数の平面を含んで構成されており、前記粒子が、前記曲面に三次元に配列しているか、あるいは前記複数の平面に一次元又は二次元に配列している。
【0034】
本態様に係る反応容器において、固体支持体の表面が曲面を含んで構成されている場合、曲面は三次元的な広がりを有するので、粒子を曲面に三次元に配列させることにより、粒子を反応室内に三次元に配列させることができる。表面が曲面を含んで構成される固体支持体の具体例としては、螺旋状部材、可撓性を有するシート状部材を湾曲させた部材、円柱状部材、円筒状部材、円錐状部材等が挙げられる。
【0035】
本態様に係る反応容器において、固体支持体の表面が同一平面上にない複数の平面を含んで構成されている場合、平面は二次元的な広がりを有するので、粒子は各平面に一次元又は二次元に配列するが、同一平面上にない複数の平面に一次元又は二次元に配列する粒子を組み合わせることによって、粒子を全体として反応室内に三次元に配列させることができる。同一平面上にない複数の平面を有する固体支持体の具体例としては、可撓性を有するシート状部材を曲折させた部材、角柱状部材、角筒状部材、角錐状部材等が挙げられる。
なお、本態様に係る反応容器において、固体支持体の表面に曲面及び同一平面上にない複数の平面の両者が含まれており、両者に粒子が配列していてもよい。
【0036】
(4)本発明の反応容器の第三態様では、前記固体支持体が螺旋状部材からなる。
螺旋状部材の表面は曲面を含んで構成されているので、粒子を曲面に三次元に配列させることにより、粒子を反応室内に三次元に配列させることができる。螺旋状部材としては、例えば、可撓性を有する細長形状部材を螺旋状に成形したものを使用できる。細長形状の具体例としては、糸状、紐状、棒状、テープ状等の形状が挙げられる。細長形状部材が金属等のように形態保持性を有する材質からなる場合には、細長形状部材自体を螺旋状に成形することができる。また、細長形状部材がそのような形態保持性を有しない場合には軸部材に巻装することにより螺旋状に成形することができる。軸部材は巻く物の中心となり得る限り、その形状や構造は特に限定されるものではなく、例えば、棒状部材、円柱状部材、円筒状部材、角柱状部材、角筒状部材等を軸部材として使用できる。
【0037】
(5)本発明の反応容器の第四態様では、前記固体支持体が、可撓性を有するシート状部材を湾曲及び/又は曲折させた部材からなる。
可撓性を有するシート状部材を湾曲させた部材の表面は曲面を含んで構成されているので、粒子を曲面に三次元に配列させることにより、粒子を反応室内に三次元に配列させることができる。また、可撓性を有するシート状部材を曲折させた部材の表面は、同一平面上にない複数の平面を含んで構成されているので、これら複数の平面に粒子を一次元又は二次元に配列させることにより、粒子を全体として反応室内に三次元に配列させることができる。
【0038】
「可撓性」とは、湾曲、曲折等によって任意の形状に変形が可能であることを意味し、シート状部材の材質、厚み等は可撓性を有する限り特に限定されるものではない。シート状部材を湾曲させた部材の形状としては、例えば、U字状、波線状、円筒状等が挙げられ、シート状部材を曲折させた部材の形状としては、例えば、「く」の字状、「コ」の字状、鋸歯状、角筒状等が挙げられる。
【0039】
粒子はシート状部材の片面にのみ配列させてもよいが、液体試料中の標的物質と粒子表面の反応物質との反応効率をより一層向上させる点から両面に配列させることが好ましい。
【0040】
(6)本発明の反応容器の第五態様では、前記粒子が、前記反応物質の種類に応じて前記固体支持体の表面の所定箇所に固定されている。
本発明の反応容器において、各粒子の表面に固定される反応物質の種類は同一であってもよいし異なっていてもよいが、本態様に係る反応容器においては、各粒子の表面にそれぞれ異なる反応物質が固定されており、各粒子は、反応物質の種類に応じて固体支持体の表面の所定箇所に固定されている。これによって、各粒子の表面に固定されている反応物質の種類を、各粒子の固体支持体上の固定箇所に基づき識別でき、複数種類の反応物質について、標的物質との反応性を並列して解析することが可能となる。
【0041】
「固体支持体の所定箇所」とは、各粒子の表面に固定される反応物質の種類と対応付けて、各粒子の固定箇所を予め決めておくことを意味する。
各粒子の固定箇所は、粒子の固体支持体表面への固定の際に、異なる反応物質が固定されている粒子間のクロスコンタミネーションが生じないように調節する。異なる反応物質が固定されている粒子間のクロスコンタミネーションを防止するために、固体支持体に複数の凹部を形成させて、各凹部に対応する粒子を固定してもよい。
【0042】
(7)本発明の反応容器に係る第六態様では、前記粒子が、前記反応物質の種類に応じて所定の標識物質を有する。
本態様に係る反応容器においては、各粒子の表面にそれぞれ異なる反応物質が固定されており、各粒子は、反応物質の種類に応じて所定の標識物質を有する。これによって、各粒子の表面に固定されている反応物質の種類を、各粒子が有する標識物質の種類に基づき識別でき、複数種類の反応物質について、標的物質との反応性を並列して解析することが可能となる。
【0043】
「所定の標識物質」とは、各粒子の表面に固定される反応物質の種類と対応付けて、各粒子が有する標識物質の種類を予め決めておくことを意味する。
標識物質の具体例としては、蛍光色素(例えば、Marine Blue,Cascade Blue,Cascade Yellow,Fluorescein,Rhodamine,Phycoerythrin,CyChrome,PerCP,Texas Red,Allophycocyanin,PharRed等の他、Cy2,Cy3,Cy3.5,Cy5,Cy7等のCy系色素、Alexa-488,Alexa-532,Alexa-546,Alexa-633,Alexa-680等のAlexa系色素、BODIPY FL,BODIPY TR-等のBODIPY系色素)等の蛍光性物質、放射性同位元素(例えば、3H、14C、32P、33P、35S、125I)等の放射性物質等が挙げられる。標識物質として蛍光色素を用いる場合、蛍光色素の種類と含有量とを組み合わせることにより多種多様な標識が可能となる。
【0044】
蛍光色素による標識化は、例えば、予め表面にアミノ基を導入しておいた粒子に活性エステルを有する蛍光色素を反応させることにより、あるいは、予め表面にカルボキシル基又はアミノ基を導入しておいた粒子に、カルボキシル基との結合反応が可能な官能基(例えばアミノ基)を有する蛍光色素又はアミノ基との結合反応が可能な官能基(例えばカルボキシル基)を有する蛍光色素を、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)等のカルボジイミド類の存在下で反応させることにより行なうことができる。また、重合反応によって粒子を合成する際に反応液中に蛍光色素を添加しておくことにより、あるいは、ラジカル重合の重合反応の終了直後でラジカルが残存している間に当該ラジカルと反応性を有する蛍光色素を添加することにより、蛍光色素による粒子の標識化を行なうことができる。
【0045】
(8)本発明の反応容器の第七態様では、前記固体支持体又は前記粒子が、乾燥により接着力を発揮するポリマーを表面に有しており、前記ポリマーの接着力により前記粒子が前記固体支持体の表面に固定されている。
【0046】
本態様に係る反応容器においては、含水状態にあるポリマーを固体支持体と粒子との間に介在させ、当該ポリマーを乾燥させることにより、粒子を固体支持体の表面に容易に固定することができる。
乾燥により接着力を発揮するポリマーとしては、例えば、タンパク質、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらのポリマーが乾燥により発揮する接着力は、粒子が固定された固定支持体の表面が浸潤しても保持される。
【0047】
(9)本発明の反応容器の第八態様では、前記粒子が磁性粒子であって、前記粒子が磁力によって前記固体支持体の表面に固定されている。
本態様に係る反応容器においては、固体支持体への粒子の固定に磁性相互作用を利用することによって固定操作を容易に行なうことができる。また、磁力の強さを調節することによって、結合パートナー同士(固体支持体と粒子)が容易に離脱しない結合様式とすることができる。
【0048】
「磁性粒子」とは、磁性体を含んで構成される粒子を意味し、磁性粒子の具体例としては、水酸化鉄、酸化鉄水和物、γ−Fe、Fe等を含んで構成される粒子が挙げられる。
【0049】
(10)本発明の反応容器の第九態様では、前記固体支持体に磁石が設けられており、前記磁石の作用によって前記粒子が前記固体支持体の表面に固定されている。
本態様に係る反応容器において、磁石を設ける位置は特に限定されるものではなく、例えば、固体支持体が円筒状、角筒状等のように内部空間を有する場合には、当該内部空間に磁石を嵌装することができる。「磁石」の具体例としては、永久磁石、電磁石、超伝導磁石等が挙げられる。
【0050】
(11)本発明の反応容器の第十態様では、前記固体支持体が磁石で構成されており、前記磁石の作用によって前記粒子が前記固体支持体の表面に固定されている。
【0051】
(12)本発明の反応容器の第十一態様では、前記固体支持体の表面の磁束密度が均一である。
本態様に係る反応容器においては、固体支持体表面の磁束密度が均一であるので、磁性粒子を固体支持体表面の所定箇所に確実に固定できる。したがって、各粒子の表面に異なる反応物質が固定されている場合に粒子間のクロスコンタミネーションを効果的に防止できる。
【0052】
(13)本発明の反応容器の第十二態様では、前記反応物質が、生体関連物質である。
【0053】
(14)本発明の反応容器の第十三態様では、前記生体関連物質が核酸又はタンパク質である。
本態様に係る反応容器は、DNAアレイやタンパク質アレイと同様の用途に用いることができる。
【0054】
(15)本発明の反応容器の第十四態様では、前記反応容器本体が光透過性材料で構成されている。
本態様に係る反応容器においては、反応容器本体が光透過性材料で構成されることによって、反応室内から発せられる光(例えば蛍光や化学発光)を反応容器の外部にて検出できる。反応室内から発せられる光が、反応室内で生じた反応結果(例えば、標的物質と反応物質との反応の有無)の指標となる場合には、反応室内から発せられる光を検出することによって、反応結果を判別できる。例えば、蛍光標識した標的物質を含有する液体試料を反応室内に収容し、標的物質と反応物質とを接触させた後、反応室内から液体試料を除去し、必要に応じて反応室内を洗浄液で洗浄し、次いで、反応室内から発せられる光を検出することによって、標的物質と反応物質との反応の有無を判別できる。
【0055】
光透過性材料の種類は特に限定されるものではなく、透明または半透明であって反応容器本体に必要とされる強度を有する材料であればいかなるものを使用してもよい。光透過性材料の具体例としては、プラスチック、ガラス等が挙げられる。
【0056】
(16)本発明の反応容器の第十五態様では、前記反応容器本体が、前記反応室内の反応室に連通する液体流入出口を有する。
本態様に係る反応容器においては、反応室内への液体試料の収容、反応室内からの液体試料の除去、反応室内への洗浄液の収容、反応室内からの洗浄液の除去等、各種液体の反応室への流入及び反応室からの流出を、反応室に連通する液体流入出口を介して容易に行なうことができる。
【0057】
(17)本発明の第一の反応装置は、第十四態様に係る反応容器(前記(15)参照)の反応容器と、前記反応容器の反応室内へ光を照射する光源と、前記反応室内からの光を検出する検出部とを備えたことを特徴とする。
本発明の反応装置においては、反応室内への光の照射及び反応室内からの光の検出の自動化を図ることができる。
【0058】
(18)本発明の第二の反応装置は、第十五態様に係る反応容器(前記(16)参照)と、前記反応容器の液体流入出口を介して前記反応容器の反応室への液体の流入及び前記反応室からの液体の流出を行なう液体吸引・吐出装置とを備えたことを特徴とする。
本発明の反応装置においては、反応室内への液体試料の収容、反応室内からの液体試料の除去、反応室内への洗浄液の収容、反応室内からの洗浄液の除去等、各種液体の反応室への流入及び反応室からの流出の自動化を図ることができる。
【0059】
(19)本発明の粒子三次元配列体の作製方法は、以下の工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする。
(a)可撓性を有する固体支持体の表面の一次元又は二次元に配列する複数箇所に、粒子含有液を一度にスポッティングする工程
(b)前記粒子含有液中の粒子を前記固体支持体の表面に固定させる工程
(c)前記固体支持体を変形させて前記粒子を前記固体支持体の表面に三次元に配列させる工程
【0060】
固体支持体表面の複数箇所に粒子含有液を一度にスポッティングすることによって粒子三次元配列体を効率よく作製できるが、固体支持体表面の複数箇所に粒子含有液を一度にスポッティングする際、三次元に配列する複数箇所にスポッティングするよりも、一次元又は二次元に配列する複数箇所にスポッティングする方が、スポッティング操作が容易である。そこで、本発明の粒子三次元配列体の作製方法においては、固体支持体表面の一次元又は二次元に配列する複数箇所に、粒子含有液を一度にスポッティングし、その後、固体支持体を変形させることにより粒子を固体支持体の表面に三次元に配列させる。
【0061】
「粒子三次元配列体」とは、表面に複数の粒子が三次元に配列している固体支持体を意味し、本発明の反応容器の反応室内に収容されている固体支持体は「粒子三次元配列体」に相当する。
【0062】
粒子含有液の溶媒は粒子及び固体支持体を腐食しない限り特に限定されるものではなく、粒子と固体支持体との結合様式等に応じて適宜選択される。粒子含有液に含有される粒子表面には反応物質が固定されていなくてもよいが、本発明の反応容器に利用できる粒子三次元配列体を効率よく作製する点から、粒子表面には反応物質が固定されていることが好ましい。粒子表面に反応物質が固定されている場合には、反応物質の種類に応じた所定箇所に粒子含有液をスポッティングすることが好ましい。
【0063】
固体支持体としては、その表面に粒子含有液を一次元又は二次元にスポッティングし得るものが選択される。このような固体支持体としては、例えば、糸状部材、紐状部材、テープ状部材、シート状部材等が挙げられる。固体支持体の材質は、固体支持体が可撓性を有するように選択される。
【0064】
工程(a)におけるスポッティングは、例えば、先端部が一次元又は二次元に配列する複数の突起部を有するスポッティング部材を用いて行なうことができる。同一箇所へのスポッティング回数は1回であっても複数回であってもよいが、スポット当たりの粒子量を多くする点から複数回であることが好ましい。
【0065】
工程(b)における固体支持体表面への粒子の固定は、固体支持体と粒子との所定の結合様式によって行なうことができる。
【0066】
工程(c)における固体支持体の変形は、固体支持体の可撓性を利用して容易に行なうことができる。固体支持体表面に一次元又は二次元に配列している粒子は、固体支持体を変形させることによって固体支持体表面に三次元に配列することとなる。固体支持体の変形態様は、粒子が固体支持体表面に三次元に配列し得る限り特に限定されるものでないが、固体支持体として糸状、紐状、棒状、テープ状等の細長形状部材を使用する場合には、例えば螺旋状への変形が挙げられる。また、固体支持体としてシート状部材を使用する場合には、例えば湾曲及び/又は曲折よる変形が挙げられる。
【0067】
(20)本発明の作製方法の第一態様では、複数の粒子含有液収容部のそれぞれに収容されている粒子含有液を、前記複数の粒子含有液収容部の配置に対応して設けられた複数の突起部を有するスポッティング部材を用いて前記固体支持体の表面の複数箇所に一度にスポッティングする。
【0068】
本態様に係る作製方法においては、固体支持体表面の複数箇所に粒子含有液を一度にスポッティングすることによって効率よく粒子三次元配列体を作製できる。固体支持体表面に粒子含有液を三次元にスポッティングする場合、各突起部の形態(例えば突起部の長さ)を固体支持体表面の形態に応じて適宜変更させる必要があるので、同一形態のスポッティング部材を使用できない。これに対して、本態様に係る作製方法においては、固体支持体表面に粒子含有液を一次元又は二次元にスポッティングするので、各突起部の形態を固体支持体表面の形態に応じて適宜変更させる必要がなく、同一形態のスポッティング部材を繰り返り使用できる。したがって、粒子含有液のスポッティングの自動化を図ることができる。
【0069】
粒子含有液収容部の構造は、粒子含有液を収容し得る限り特に限定されるものではなく、例えば、上端に開口部を有する凹部としてプラスチック製プレートに形成することができる。粒子含有液収容部の個数は複数である限り特に限定されるものではないが、例えば、プラスチック製プレートに8×12個形成することができる。
【0070】
突起部の形状、構造等は、粒子含有液収容部に進入し、粒子含有液収容部に収容されている粒子含有液を保持し、固体支持体と接触することによって保持している粒子含有液をスポッティングできる限り特に限定されるものではない。突起部の具体例としては、先端が尖った突起部、先端に凹部が形成されている突起部、先端がフック状の突起部等が挙げられる。
【0071】
(21)本発明の作製方法の第二態様では、前記固体支持体がシート状部材であって、前記工程(c)において前記シート状部材を湾曲及び/又は曲折させる。
本態様に係る作製方法においては、シート状部材を湾曲及び/又は曲折させることによりシート状部材を変形させる。シート状部材を湾曲させた部材の形状としては、例えば、U字状、波線状、円筒状等が挙げられ、シート状部材を曲折させた部材の形状としては、例えば、「く」の字状、「コ」の字状、鋸歯状、角筒状等が挙げられる。
固体支持体としてシート状部材を使用する場合、工程(a)において、シート状部材の片面にのみ粒子含有液をスポッティングしてもよいが、両面にスポッティングすることが好ましい。
【0072】
(22)本発明の作製方法の第三態様では、前記固体支持体が細長形状部材であって、前記工程(c)において前記細長形状部材を螺旋状に変形させる。
本態様に係る作製方法においては、細長形状部材を螺旋状に変形させる。細長形状の具体例としては、糸状、紐状、棒状、テープ状等の形状が挙げられる。細長形状部材は軸部材に巻装することにより螺旋状に変形させることができる。このような軸部材は、細長形状部材が金属等のように形態保持性を有する材質からなる場合には特に必要ないが、細長形状部材がそのような形態保持性を有しない場合には必要となる。軸部材は巻く物の中心となり得る限り、その形状や構造は特に限定されるものではなく、棒状部材、円柱状部材、円筒状部材、角柱状部材、角筒状部材等を軸部材として使用できる。
【0073】
(23)本発明の作製方法の第四態様では、前記粒子が磁性粒子である。
本態様に係る作製方法においては、磁性粒子を利用するので粒子の操作性が向上する。例えば、粒子へ磁石を作用させることによって粒子を容易に捕集できるので、粒子の洗浄、高濃度の粒子含有液の調製等を容易に行なうことができる。
【0074】
(24)本発明の作製方法の第五態様では、前記固体支持体が磁石で構成されている。
本態様に係る作製方法においては、磁性相互作用を利用することによって固体支持体への磁性粒子の固定を容易に行なうことができる。また、磁石の強さを調節することによって、結合パートナー同士(固体支持体と磁性粒子)が容易に離脱しない結合様式とすることができる。
【0075】
(25)本発明の作製方法の第六態様では、前記固体支持体の表面の磁束密度が均一である。
本態様に係る作製方法においては、固体支持体表面の磁束密度が均一であるので、磁性粒子を固体支持体表面の所定箇所に確実に固定できる。したがって、各粒子の表面に異なる反応物質が固定されている場合に粒子間のクロスコンタミネーションを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の反応装置の一実施形態を示す一部断面図である。
【図2】表面にオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドからなるプローブが固定された粒子の作製手順を示す説明図である。
【図3】プローブ固定化粒子を用いて粒子三次元配列体を作製する手順を示す説明図である。
【図4】プローブ固定化粒子を用いて粒子三次元配列体を作製する手順を示す説明図である(図3の続き)。
【図5】プローブ固定化粒子を作製する際に利用する分注機の一部断面図である。
【図6】光照射・光検出装置の別の実施形態を示す斜視図である。
【図7】粒子三次元配列体の別の実施形態を示す斜視図である。
【図8】粒子三次元配列体の別の実施形態を示す斜視図である。
【図9】(a)は、反応容器本体21の別の実施形態を示す一部断面図であり、(b)及び(c)は、固体支持体の別の実施形態を示す一部断面図及び上面図である。
【符号の説明】
【0077】
1・・・反応装置
2・・・反応容器
21・・・反応容器本体
22・・・粒子三次元配列体
23・・・紐状部材(固体支持体)
24・・・粒子群
25・・・軸部材
26・・・反応室
3・・・液体吸引・吐出装置
4・・・光照射・光検出装置
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の反応装置の一実施形態を示す一部断面図である。
図1に示すように、反応装置1は、反応容器2と液体吸引・吐出装置3と光照射・光検出装置4とを備える。
【0079】
反応容器2は、反応室26を有する反応容器本体21と、反応室26に収容された粒子三次元配列体22とを備える。反応容器本体21は、円筒状の太径部211と、太径部211よりも小さい径をもつ円筒状の細径部212とを有し、太径部211の下端部と細径部212の上端部とは連続している。反応容器本体21の内部には反応室26が形成されており、反応室26には液体を収容できるようになっている。細径部212の下端部には、反応室26と連通する液体流入出口213が設けられており、液体流入出口213を介して反応室26へ液体の流入及び反応室26からの液体の流出を行なうことができるようになっている。
【0080】
粒子三次元配列体22は、円柱状の軸部材25と、軸部材25に巻装された紐状部材23と、紐状部材23の表面の所定箇所に固定された複数の粒子群24とを備える。各粒子群24に複数の粒子が含まれており、同一の粒子群24に含まれる各粒子の表面には、同一の反応物質が固定されている。粒子表面に固定されている反応物質の種類は粒子群24間で異なっており、各粒子群24は、粒子表面に固定されている反応物質の種類に応じて紐状部材23の表面の所定箇所に固定されている。したがって、各粒子群24の固定箇所に基づいて、各粒子群24の粒子表面に固定されている反応物質の種類を識別できるようになっている。紐状部材23は、軸部材25に巻装されることによって螺旋状に成形されており、複数の粒子群24は、螺旋状に成形された紐状部材23の表面に固定されることによって、反応室26内に三次元に配列している。
【0081】
液体吸引・吐出装置3は、反応容器本体21の太径部211の上端開口部214にO-リング30を介して装着されたノズル部31と、ノズル部31とパイプ33を介して連通するシリンダ32とを備え、反応室26内を減圧又は加圧することによって、反応室26に対する液体の吸引及び吐出を、液体流入出口213を介して行なうことができるようになっている。
【0082】
光照射・光検出装置4は、励起光Eを発射する光源41と、ミラー42と、レンズ43,45と、光学フィルター44と、電気的に接続された検出器46、コントローラー47及び表示装置48とを備える。光照射・光検出装置4は、光源41から発射される励起光Eをミラー42及びレンズ43を介して反応室26内に照射できるとともに、反応室26内からの蛍光をレンズ43、ミラー42、光学フィルター44及びレンズ45を介して検出器46で検出し、コントローラー47でデータを処理して表示装置48にデータを表示できるようになっている。また、光照射・光検出装置4は、駆動装置(図示せず)によって上下方向に移動して走査できるとともに、太径部211の周囲を360度回転移動して走査できるようになっており、光照射・光検出装置4を移動させることによって反応室26の全体に対して励起光の照射及び蛍光の検出を行なうことができるようになっている。
【0083】
反応装置1における反応は、液体吸引・吐出装置3を操作して標的物質を含有する液体試料を液体流入出口213から反応室26内に吸引し、反応室26内において、液体試料中の標的物質と各粒子群24の粒子表面の反応物質とを接触させることにより生じさせ、その反応結果は光照射・光検出装置4によって検出される。
【0084】
各粒子群24の粒子表面に固定する反応物質の種類を適宜変更させることによって、反応装置1を多種多様な用途に用いることができる。例えば、各粒子群24の粒子表面に固定する反応物質として、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドからなるプローブを選択することによって、反応装置1を、標的核酸の塩基配列決定、標的核酸の変異検出、標的核酸の多型解析(SNPs解析)、遺伝子発現プロファイル解析等の用途に用いることができる。
【0085】
反応装置1の使用例として、反応装置1を用いた遺伝子発現プロファイル解析を図1に基づいて説明する。
図1に示すように、反応容器2の下方には容器60が設置されており、容器60内には、蛍光標識された標的DNA501を含有する液体試料50が収容されている。標的DNA501は、被験者の組織や細胞から抽出したmRNAを、蛍光標識されたヌクレオチドを用いて逆転写することにより得られた、蛍光標識されたDNAであり、標的DNA501には多種多様な塩基配列からなるDNAが含まれている。
【0086】
各粒子群24の粒子表面に固定されている反応物質は、特定の遺伝子と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブ又はポリヌクレオチドプローブである。各粒子群24の粒子表面に固定されているプローブの種類(すなわち、プローブが特異的にハイブリダイズする遺伝子の種類)は、粒子群24間で異なっており、各粒子群24は、粒子表面に固定されているプローブの種類に応じて紐状部材23の表面の所定箇所に固定されている。したがって、各粒子群24の固定箇所に基づいて、各粒子群24の粒子表面に固定されているプローブの種類を識別できるようになっている。
【0087】
反応装置1を用いた遺伝子発現プロファイル解析は以下のステップ1a〜6aによって行なわれる。
ステップ1aでは、液体流入出口213を容器60内に進入させ、液体吸引・吐出装置3を操作して、容器60内の液体試料50を反応室26内に吸引する。なお、反応装置1には、反応容器2を上下方向に移動させる機構(図示せず)が設けられており、この機構によって液体流入出口213の各種容器内への進入及び各種容器内からの退出を行なうことができるようになっている。
【0088】
ステップ2aでは、反応室26内において標的DNA501と各粒子群24の粒子表面のプローブとを反応させる。液体試料50が反応室26に収容されると、液体試料50中の標的DNA501は反応室26内に分散し、反応室26内に三次元に存在する。一方、反応室26内には、表面にプローブが固定された複数の粒子からなる複数の粒子群24が三次元に配列している。したがって、液体試料50中の標的DNA501と各粒子群24の粒子表面のプローブとの反応の場は三次元となり、両者の遭遇確率は高く、両者の反応効率も高い。
【0089】
ステップ3aでは、液体吸引・吐出装置3を操作して、反応室26内の液体試料50を液体流入出口213から反応室26外へ吐出する。
【0090】
ステップ4aでは、反応容器2を洗浄液51が収容された容器61の上方に移動させた後、液体流入出口213を容器61内に進入させ、液体吸引・吐出装置3を操作して、容器61内の洗浄液51を反応室26内に吸引する。なお、反応装置1には、反応容器2を左右方向に移動させる機構(図示せず)が設けられている。
【0091】
ステップ5aでは、洗浄液51によって反応室26内を洗浄した後、液体吸引・吐出装置3を操作して、反応室26内の洗浄液51を反応室26外へ吐出する。これにより、各粒子群24の粒子表面のプローブとハイブリダイズせずに反応室26内に残存している標的DNA501は、反応室26内から除去される。
【0092】
ステップ6aでは、光照射・光検出装置4を操作して、反応室26内へ励起光を照射するとともに、反応室26内から発せられる蛍光(すなわち、何れかの粒子群24の粒子表面のプローブとハイブリダイズした標的DNA501が発する蛍光)を検出する。そして、蛍光が発せられる部位を特定し、その部位から標的DNA501がハイブリダイズしたプローブを同定することにより、被験者の組織や細胞において発現している遺伝子を同定する。こうして、被験者の遺伝子発現プロファイルを解析することができ、ある疾患とその疾患に罹病したときの遺伝子発現プロファイルとを関連付けておくことにより、被験者の遺伝子発現プロファイルから被験者がある疾患に罹病しているか否かを診断することができる
【0093】
反応装置1を用いた標的核酸の塩基配列決定、標的核酸の変異検出、標的核酸の多型解析(SNPs解析)等についても、蛍光標識された標的核酸と、各粒子群24の粒子表面に固定された塩基配列が既知のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドからなるプローブとを用いて、ステップ1a〜6aと同様に行なうことができる。
【0094】
反応装置1においては、例えば、次のような変更が可能である。なお、以下の変更例において、図1に示す部材及び部分と同一の部材及び部分は同一の符号で表す。
【0095】
光照射・光検出装置4を、図6に示す光照射・光検出装置7に変更が可能である。光照射・光検出装置7は、先端部が環状に整列した多数の光ファイバ72と、光ファイバ72の先端部を支持する支持部材71とを備え、光ファイバ72を介して反応室26内に励起光を照射できるとともに、光ファイバ72を介して反応室26内からの蛍光を検出できるようになっている。また、光照射・光検出装置7は、支持部材71を上下方向に移動させる機構(図示せず)を備え、支持部材71を上下方向に移動させることによって反応室26の全体に対して励起光の照射及び蛍光の検出を行なうことができるようになっている。
【0096】
粒子三次元配列体22を、図7及び図8の(a)〜(h)に示す粒子三次元配列体22a〜22hに変更が可能である。粒子三次元配列体22aは、円柱状部材23aと、円柱状部材23aの側面に固定された複数の粒子群24とからなり、粒子群24は円柱状部材23aの側面に三次元に配列している。粒子三次元配列体22bは、円筒状部材23bと、円筒状部材23bの外側面に固定された複数の粒子群24とからなり、粒子群24は円筒状部材23bの外側面に三次元に配列している。粒子三次元配列体22c,22dは、可撓性を有するシート状部材23c,23dと、シート状部材23c,23dの両面に固定された複数の粒子群24とからなり、シート状部材23c,23dの湾曲によって粒子群24はシート状部材23c,23dの表面に三次元に配列している。粒子三次元配列体22eは、角柱状部材23eと、角柱状部材23eの側面に固定された複数の粒子群24とからなり、粒子群24は角柱状部材23eの側面に三次元に配列している。粒子三次元配列体22fは、角筒状部材23fと、角筒状部材23f側面に固定された複数の粒子群24とからなり、粒子群24は角筒状部材23fの側面に三次元に配列している。粒子三次元配列体22g,22hは、可撓性を有するシート状部材23g,23hと、シート状部材23g,23hの両面に固定された複数の粒子群24とからなり、シート状部材23g,23hの曲折によって粒子群24はシート状部材23g,23hの表面に三次元に配列している。なお、粒子三次元配列体22e〜22hにおいて、粒子群24は角柱状部材23e、角筒状部材23f及び曲折したシート状部材23g,23hの表面を構成する各平面に二次元に配列しているが、各平面は同一平面上にないので、粒子群24は全体として三次元に配列している。
【0097】
反応容器本体21を、図9(a)に示す反応容器本体21aに変更が可能である。反応容器本体21aは液体流入出口213を有せず、これに伴って液体吸引・吐出装置3も省略される。反応室26内への液体の流入及び反応室26内からの液体の流出は、反応容器本体21aの上端開口部を介して行なわれる。
【0098】
図9(a)に示す反応容器本体21aの反応室26内に収納された固体支持体22を、図9(b)及び(c)に示す固体支持体22iに変更することが可能である。5つの固体支持体22iは、反応容器本体21aの上端開口部214に装着された蓋部材27に固定された状態で、反応室26内に収納されている。固体支持体22iはシート状であり、その両面に複数の粒子群24が一次元に配列している。各固体支持体22iの反応室26内における位置は、粒子群24が同一平面上に位置することがないように調節されており、これによって各固体支持体22iの表面に一次元に配列している粒子群24は全体として反応室内26内に三次元に配列している。
【0099】
表面にオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドからなるプローブが固定された粒子の作製手順を図2のステップ1b〜ステップ8bに示すとともに、当該粒子を用いて粒子三次元配列体22を作製する手順を、図3及び図4のステップ9b〜ステップ14bに示す。
【0100】
図2に示すステップ1b〜ステップ8bは、図5に示す分注機9を用いて行なわれる。図5に示す分注機9は、液体を収容する容器91と、容器91内に挿入して液体を吸引又は吐出する先細りに形成された先端部95、液体を貯溜する太めの貯溜部92、並びに先端部95及び貯溜部92を連通させる細めの液通路93を有するピペットチップPと、貯溜部92の開口にノズルNを着脱自在に嵌着してピペットチップP内を負圧又は加圧してピペットチップPに液体を吸引又は吐出させる分注ユニット(図示せず)と、液通路93の外側面に対して近接離間自在に設けた磁石Mと、磁石Mを液通路93に近接離間させる磁石駆動装置(図示せず)と、分注ユニットの動作及び移動、ノズルNとピペットチップPとの着脱、並びに磁石駆動装置のピペットチップPへの磁石Mの近接離間を制御する制御装置(図示せず)とを備える。液通路93は、磁石Mが作用する磁石作用部931を有し、磁石MがピペットチップPに最も近く接近した場合には、磁石作用部931の内壁面に磁性粒子を付着・保持させることができ、磁石MがピペットチップPから最も離れた場合には、磁石作用部931の内壁面への磁性粒子の付着・保持状態を解除させることができる。
【0101】
ステップ1bでは、PCRを利用して、ビオチン化されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドからなるビオチン化プローブPr1を調製する。PCR反応装置10に装着された容器V1にはPCR反応液L1が収容されており、PCR反応液L1には、鋳型となる核酸、当該核酸に特異的にハイブリダイズし得るビオチン化プライマー、PCRバッファー等が含まれている。PCR反応装置10を操作してPCRを行なうと、PCR反応液L1中でビオチン化プローブPr1が増幅する。
【0102】
ステップ2bでは、容器V1内のPCR反応液L1に、ピペットチップP内の粒子含有液L2を吐出させる。粒子含有液L2には、表面がアビジンコーティングされた磁性粒子MBが含まれている。
【0103】
ステップ3bでは、ピペットチップPによる吸引・吐出を繰り返し、PCR反応液L1と粒子含有液L2との混合液L3を調製する。ピペットチップPによる吸引・吐出を繰り返すことにより、ビオチン化プローブPr1が磁性粒子MBの表面にビオチン−アビジン結合を介して固定されて、プローブ固定化粒子PB1が形成される。プローブ固定化粒子PB1の表面には、複数のビオチン化プローブPr1が固定されている(すなわち集積化されている)。
【0104】
ステップ4bでは、プローブ固定化粒子PB1を含む混合液L3をピペットチップP内に吸引するとともに、磁石MをピペットチップPに接近させる。プローブ固定化粒子PB1は、ピペットチップPの磁石作用部931を通過する際に、ピペットチップPの外側に配設された磁石Mの作用によって磁石作用部931の内壁面に捕集され、プローブ固定化粒子PB1の粒子集合体S1が形成される。
【0105】
ステップ5bでは、ピペットチップPの内壁面に粒子集合体S1を保持したまま、粒子集合体S1を除く混合液L3を容器V1内に吐出する。
【0106】
ステップ6bでは、ピペットチップPの内壁面に粒子集合体S1を保持したまま、ピペットチップPを、洗浄液L4を収容する容器V2の設置場所まで移送し、ピペットチップPによる洗浄液L4の吸引及び吐出を繰り返す。これにより、粒子集合体S1が洗浄され、粒子集合体S1に含まれる夾雑物(例えば、磁性粒子MBに固定されていないビオチン化プローブPr1、PCR反応液L1に含まれる鋳型となる核酸やプライマー等)が除去される。
【0107】
ステップ7bでは、ピペットチップPの内壁面に粒子集合体S1を保持したまま、ピペットチップPを、緩衝液L5を収容する容器V3の設置場所まで移送し、ピペットチップPによる緩衝液L5の吸引及び吐出を繰り返すとともに、磁石MをピペットチップPから離反させる。
【0108】
こうしてステップ8bにおいて、プローブ固定化粒子PB1を含有する粒子含有液BL1が容器V3内に調製される。
【0109】
ステップ1b〜ステップ8bを繰り返して、それぞれ異なる塩基配列を有するビオチン化プローブPr1,Pr2,・・・・・・Pr(n)(nは任意の自然数である。以下同様。)を調製し、各プローブについてプローブ固定化粒子PB1,PB2,・・・・・PB(n)を含有する粒子含有液BL1,BL2,・・・・・・BL(n)を調製する。
【0110】
ステップ9bでは、8×48個の粒子含有液収容部C1〜C384が等間隔に設けられたプレートPLTを準備し、粒子含有液収容部C1〜C384にそれぞれ粒子含有液BL1〜BL384を収容する。なお、プレートPLTには、8個の粒子含有液収容部からなる列が48列設けられており、第1列は粒子含有液収容部C1〜C8、第2列は粒子含有液収容部C9〜16、第三列は粒子含有液収容部C17〜C24、・・・・・・・・、第48列は粒子含有液収容部C377〜C384からなる。次いで、ステップ9bでは、粒子含有液収容部の配置に対応して設けられた8本の突起部J1〜J8を有するスポッティング部材SPTを準備し、スポッティング部材SPTの突起部J1〜J8をそれぞれ第1列の粒子含有液収容部C1〜C8内に進入させる。なお、図3に示すように、突起部J1〜J8は、粒子含有液を保持しやすいようにフック状となっている。また、突起部J1〜J8は略同一の長さを有しており、紐状部材23の表面に一度に接触できるようになっている。
【0111】
ステップ10bでは、スポッティング部材SPTの突起部J1〜J8を、それぞれ粒子含有液収容部C1〜C8内の粒子含有液BL1〜BL8に浸漬させて、スポッティング部材SPTの突起部J1〜J8に、それぞれ粒子含有液BL1〜BL8を保持させる。
【0112】
ステップ11bでは、スポッティング部材SPTの突起部J1〜J8を、紐状部材23の表面に一度に接触させ、紐状部材23の表面の一次元に配列する所定箇所に粒子含有液BL1〜BL8を一度にスポッティングする。
【0113】
ステップ12bでは、紐状部材23の表面にスポッティングされた粒子含有液BL1〜BL8を乾燥させ、プローブ固定化粒子PB1〜PB8を紐状部材23の表面に固定させる。第2列〜第48列の粒子含有液収容部についてもステップ9b〜12bを繰り返すことにより、紐状部材23の表面の所定箇所にプローブ固定化粒子PB1〜PB384を固定させる。第2列〜第48列の粒子含有液収容部についてステップ9b〜14bを繰り返す際には、使用済みのスポッティング部材SPTを洗浄して用いてもよいし、未使用のスポッティング部材SPTを用いてもよい。
【0114】
プローブ固定化粒子PB1〜PB384のように表面がタンパク質でコーティングされた粒子(プローブ固定化粒子PB1〜PB384の表面はアビジンコーティングされている)は、スポッティングされた粒子含有液を乾燥させることによって容易に紐状部材23の表面に固定することができる。スポッティングされた粒子含有液BL1〜BL384中には、それぞれ複数個のプローブ固定化粒子PB1〜PB384が含有されており、プローブ固定化粒子PB1〜PB384はそれぞれ粒子群となって、紐状部材23の表面の所定箇所に固定される。
【0115】
粒子含有液BL1〜BL384は、紐状部材23の表面の一次元に配列する所定箇所にスポッティングされるが、スポッティングされた粒子含有液BL1〜BL384が紐状部材23の周囲に浸潤する場合があり、この場合、プローブ固定化粒子PB1〜PB384は紐状部材23の周囲に三次元に配列することとなる。したがって、粒子含有液BL1〜BL384を紐状部材23の表面に一次元にスポッティングしたからといって、必ずしもプローブ固定化粒子PB1〜PB384が紐状部材23の表面に一次元に配列するわけではない。後述するステッププ13bにおいて、プローブ固定化粒子PB1〜PB384を最終的に三次元に配列させるのであるから、プローブ固定化粒子PB1〜PB384の固定化段階で、プローブ固定化粒子PB1〜PB384が紐状部材23の表面に三次元に固定されたとしても何ら問題ない。
【0116】
ステップ13bでは、表面にプローブ固定化粒子PB1〜PB384が固定された紐状部材23を軸部材25に巻装する。
【0117】
こうしてステップ14bにおいて、粒子三次元配列体22が作製される。粒子三次元配列体22において、プローブ固定化粒子PB1〜PB384はそれぞれ粒子群となって、紐状部材23の表面に三次元に配列している。
【0118】
プローブ固定化粒子PB1〜PB384を固定する固体支持体としては、紐状部材23以外にも、可撓性を有する種々の形状の固体支持体を用いることができる。例えば、可撓性を有するテープ部材を用いる場合には、テープ状部材の表面の一次元又は二次元に配列する所定箇所に粒子含有液BL1〜BL384をスポッティングした後、テープ状部材を軸部材25に巻装することによって、粒子三次元配列体(図示せず)を作製することができる。また、可撓性を有するシート状部材を用いる場合には、シート状部材の両面の一次元又は二次元に配列する所定箇所に粒子含有液BL1〜BL384をスポッティングした後、シート状部材を湾曲及び/又は曲折することによって、図7(c)及び(d)並びに図8(g)及び(h)に示す粒子三次元配列体22c、22d、22g、22hを作製することができる。
【0119】
プローブ固定化粒子PB1〜PB384は磁性粒子MBを含んで構成されるものであるから(ステップ2b参照)、プローブ固定化粒子PB1〜PB384を固定する固体支持体として磁石を用いることにより、プローブ固定化粒子PB1〜PB384と固体支持体との磁性相互作用を利用してプローブ固定化粒子PB1〜PB384の固定操作を容易に行なうことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料を収容し得る反応室を有する反応容器本体と、前記反応室内に収納された固体支持体と、表面に所定の反応物質が固定された複数の粒子とを備えた反応容器であって、
前記粒子が、前記固体支持体の表面に固定された状態で前記反応室内に三次元に配列していることを特徴とする前記反応容器。
【請求項2】
前記反応室内に複数の固体支持体が収納されており、前記粒子が各固体支持体の表面に一次元、二次元又は三次元に配列していることを特徴とする請求項1記載の反応容器。
【請求項3】
前記固体支持体の表面が、曲面又は同一平面上にない複数の平面を含んで構成されており、前記粒子が、前記曲面に三次元に配列しているか、あるいは前記複数の平面に一次元又は二次元に配列していることを特徴とする請求項1又は2記載の反応容器。
【請求項4】
前記固体支持体が螺旋状部材からなることを特徴とする請求項3記載の反応容器。
【請求項5】
前記固体支持体が、可撓性を有するシート状部材を湾曲及び/又は曲折させた部材からなることを特徴とする請求項3記載の反応容器。
【請求項6】
前記粒子が、前記反応物質の種類に応じて前記固体支持体の表面の所定箇所に固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の反応容器。
【請求項7】
前記粒子が、前記反応物質の種類に応じて所定の標識物質を有することを特徴とする請求項1又は2記載の反応容器。
【請求項8】
前記固体支持体又は前記粒子が、乾燥により接着力を発揮するポリマーを表面に有しており、前記ポリマーの接着力により前記粒子が前記固体支持体の表面に固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の反応容器。
【請求項9】
前記粒子が磁性粒子であって、前記粒子が磁力によって前記固体支持体の表面に固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の反応容器。
【請求項10】
前記固体支持体に磁石が設けられており、前記磁石の作用によって前記粒子が前記固体支持体の表面に固定されていることを特徴とする請求項9記載の反応容器。
【請求項11】
前記固体支持体が磁石で構成されており、前記磁石の作用によって前記粒子が前記固体支持体の表面に固定されていることを特徴とする請求項9記載の反応容器。
【請求項12】
前記固体支持体の表面の磁束密度が均一であることを特徴とする請求項9記載の反応容器。
【請求項13】
前記反応物質が、生体関連物質であることを特徴とする請求項1又は2記載の反応容器。
【請求項14】
前記生体関連物質が核酸又はタンパク質であることを特徴とする請求項13記載の反応容器。
【請求項15】
前記反応容器本体が光透過性材料で構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の反応容器。
【請求項16】
前記反応容器本体が、前記反応室内に連通する液体流入出口を有することを特徴とする請求項1又は2記載の反応容器。
【請求項17】
請求項15記載の反応容器と、前記反応容器の反応室内へ光を照射する光源と、前記反応室内からの光を検出する検出部とを備えたことを特徴とする反応装置。
【請求項18】
請求項16記載の反応容器と、前記反応容器の液体流入出口を介して前記反応容器の反応室への液体の吸引及び前記反応室からの液体の吐出を行なう液体吸引・吐出装置とを備えたことを特徴とする反応装置。
【請求項19】
以下の工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする粒子三次元配列体の作製方法。
(a)可撓性を有する固体支持体の表面の一次元又は二次元に配列する複数箇所に、粒子含有液を一度にスポッティングする工程
(b)前記粒子含有液中の粒子を前記固体支持体の表面に固定させる工程
(c)前記固体支持体を変形させて前記粒子を前記固体支持体の表面に三次元に配列させる工程
【請求項20】
前記工程(a)において、複数の粒子含有液収容部のそれぞれに収容されている粒子含有液を、前記複数の粒子含有液収容部の配置に対応して設けられた複数の突起部を有するスポッティング部材を用いて、前記固体支持体の表面の複数箇所に一度にスポッティングすることを特徴とする請求項19記載の作製方法。
【請求項21】
前記固体支持体がシート状部材であって、前記工程(c)において前記シート状部材を湾曲及び/又は曲折させることを特徴とする請求項19記載の作製方法。
【請求項22】
前記固体支持体が細長形状部材であって、前記工程(c)において前記細長形状部材を螺旋状に変形させることを特徴とする請求項19記載の作製方法。
【請求項23】
前記粒子が磁性粒子であることを特徴とする請求項19記載の作製方法。
【請求項24】
前記固体支持体が磁石で構成されていることを特徴とする請求項23記載の作製方法。
【請求項25】
前記固体支持体の表面の磁束密度が均一であることを特徴とする請求項24記載の反応容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【国際公開番号】WO2005/064334
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516707(P2005−516707)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019638
【国際出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(502338292)ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】