説明

粒子捕集装置及び噴霧熱分解装置

【課題】より実用的な噴霧熱分解装置用の粒子捕集装置を提供する。
【解決手段】噴霧熱分解法で合成された粒子を含む粒子含有ガスからの前記粒子の捕集装置であって、前記粒子含有ガスを導入及び排出が可能に形成された、所定の空間部を有する捕集部と、前記空間部中の前記粒子含有ガスに液滴を供給する液滴供給部と、を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子捕集装置及び噴霧熱分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスや金属粉末の合成方法として噴霧熱分解法が知られている。噴霧熱分解法は、セラミックスや金属の原料液をミスト化し、このミストを原料の熱分解温度以上の雰囲気にガス流とともに高温の反応室に供給して、溶媒の蒸発、金属塩の析出及び熱分解を経て、セラミックス又は金属粉末を得る。噴霧熱分解方法によれば、粒度分布が揃いほぼ球状の粒子を合成でき、たとえば、固体酸化物形燃料電池の電極用微粒子合成法として有用である。一方、粒子合成速度が低く量産化が困難であるという問題がある。
【0003】
噴霧熱分解法に関しては、ミストの生成と輸送の効率化と反応室の高効率熱変換による大量合成技術が試みられている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−246391号公報
【特許文献2】特開2010−18466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
噴霧熱分解法では、合成された粒子を捕集するには、従来、メンブレンフルターやバグフィルターなどのフィルター方式あるいはサイクロン方式が採用されている。
【0006】
しかしながら、本発明者らが、大量合成を意図した場合の粒子捕集方法を検討したところ、フィルター方式であると、合成の進行とともに目詰まりが顕著になり、大量合成や連続合成には使用できないことがわかった。また、フィルター方式では、フィルターの耐熱性の問題からも使用できないことがわかった。さらに、サイクロン方式では、目詰まりはないものの、噴霧熱分解法で合成される粒子の平均粒子径が1μm以下程度と小さいために捕集効率が著しく低いという問題があった。
【0007】
さらに、噴霧熱分解法では、合成粒子を含むガスが200℃〜500℃と高温のため、高温に耐性のある捕集装置が求められる。
【0008】
そこで、本発明は、噴霧熱分解装置に適したより実用的な粒子捕集装置を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、合成粒子含有ガスから効率的に、また連続的に合成粒子を捕集するための方法を種々検討した。その結果、粒子含有ガスに液滴を当てることにより、ガスから粒子を分離して、予想を超えて効率的に液体中に捕集できることを見出した。また、液滴の利用により効果的に高温の粒子含有ガスを冷却できること、さらに、粒子を含んだ液体を再び液滴化して利用することができることをも見出した。本明細書の開示は、これらの知見に基づいて、以下の手段を提供する。
【0010】
(1) 噴霧熱分解法で合成された粒子を含む粒子含有ガスからの前記粒子の捕集装置であって、
前記粒子含有ガスを導入及び排出が可能に形成された、所定の空間部を有する捕集部と、
前記空間部中の前記粒子含有ガスに液滴を供給する液滴供給部と、
を、を備える、捕集装置。
(2) 前記粒子含有ガスに対して供給された前記液滴と前記粒子とを貯留可能な液体貯留部を備える、(1)に記載の捕集装置。
(3) 前記液体貯留部内の液体を、前記液滴供給部から前記液滴として供給するための液体循環系を備える、(2)に記載の捕集装置。
(4) 前記液体貯留部から前記粒子を含む液体を排出する液体排出部と、前記液体貯留部へ液体を供給する液体供給部と、を備える、(2)又は(3)に記載の捕集装置。
(5) 前記液滴供給部は、多数の液滴を同時に噴出可能な噴出部を備える、(1)〜(4)のいずれかに記載の捕集装置。
(6) 前記液滴供給部は、前記粒子含有ガスの通過経路上の複数箇所において前記液滴を供給可能である、(1)〜(5)のいずれかに記載の捕集装置。
(7)さらに、前記粒子含有ガスと接触した液滴を固液分離する固液分離部を備える、(1)〜(6)のいずれかに記載の捕集装置。
(8) さらに、前記捕集部の冷却手段を備える、(1)〜(7)のいずれかに記載の捕集装置。
(9) 前記捕集部と前記液滴供給部とを含む粒子捕集ユニットを複数個備える、(1)〜(8)のいずれかに記載の捕集装置。
(10) 第1の前記粒子捕集ユニットは、噴霧熱分解装置の反応室から排出されるガス排出路に接続される容器状体を第1の捕集部として備え、
第2の前記粒子捕集ユニットは、前記第1の捕集部のガス排出路を第2の捕集部として備える、(9)に記載の捕集装置。
(11)(1)〜(10)のいずれかに記載の捕集装置を備える、噴霧熱分解装置。
(12)粒子の製造方法であって、
前記粒子の原料ミストを含むガスを所定温度に加熱された反応室に供給して熱分解する工程と、
前記反応室から排出される粒子を含有するガスに液滴を供給して、前記液滴に由来する液体中に前記粒子を捕集する工程と、
を備える、製造方法
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の粒子捕集装置における液滴による粒子回収作用の一例の概要を示す図である。
【図2】本粒子粒子捕集装置の一例を示す図である。
【図3】本粒子粒子捕集装置の他の一例を示す図である。
【図4】本熱分解装置の一例を示す図である。
【図5】実施例で用いた熱分解装置を示す図である。
【図6】実施例で合成した粒子のSEM像を示す図である。
【図7】実施例で合成した粒子の粒度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、粒子捕集装置及び噴霧熱分解装置に関する。本粒子捕集装置における液滴による粒子捕集作用の一例の概要を図1に示す。図1に示すように、本粒子捕集装置によれば、粒子含有ガス中の粒子が、液滴との接触により、液滴とともに流下ないし落下することで、粒子含有ガスから除去される。このため、多数個の粒子を効率的に回収できる。また、こうすることで、粒子含有ガスの排出経路における圧力損失を効果的に抑えることができ、連続的な合成及び捕集が可能となる。さらに、粒子を捕集した液体を、再び液滴化することで繰り返し粒子捕集用の媒体として用いることができる。さらにまた、液滴を用いることで、高温の合成粒子含有ガスを効率的に冷却することもできる。この結果、本粒子捕集装置は、高効率な噴霧熱分解装置に好ましいものとなっている。
【0013】
さらに、噴霧熱分解法によって得られる粒子の形態等に応じて液滴の状態を変化させることで、効率的に粒子を回収することができる。
【0014】
なお、本明細書において、「液滴」とは、液体を含む粒を意味する。液体のみで構成されるほか、液体中に微細な固体が分散されている構成も包含される。また、個々の液滴の形態は特に限定しない。液滴には、液体がノズル等を介して噴霧されるミスト状の形態のほか、液体が連続する落下ないし噴出される結果得られるシャワー状の形態も包含される。
【0015】
また、本明細書において、「液滴」を構成する液体は、特に限定しないが、好ましくは水性媒体であり、より好ましくは水である。必要ある場合には、水と相溶する有機溶媒や、酸性又はアルカリを呈する塩や緩衝能のある塩などを含めることができる。また、必要に応じ、界面活性剤などにより液滴の表面張力を低下させるようにしてもよい。
【0016】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図2及び図3には、それぞれ本粒子捕集装置の一例を示し、図4には、噴霧熱分解装置の一例を示す。
【0017】
(粒子捕集装置)
本粒子捕集装置2は、噴霧熱分解法で合成された粒子を含む粒子含有ガスからの粒子の捕集に好適である。噴霧熱分解法では、ミスト化された原料液が反応管に供給されて、反応管での熱分解等によって所定の組成を有する粒子として合成され、ガス流とともに反応管から排出される。噴霧熱分解法による合成粒子は、通常、1μm以下程度の平均粒子径を有する粒子であって、高温のガス中に含まれている。このため、粒子の回収及びフィルター等の捕集手段の耐熱性を考慮すると、液滴による捕集は、効率的かつ安定的に粒子を回収できる。また、1μm以下程度の微粒子を大量に含んでいたとしても、圧力損失を効果的に抑えることができる。さらに、粒子の粒度分布等に応じて、液滴の供給形態を変化させることで、粒子に応じた効率的な回収も可能である。
【0018】
(捕集部)
本粒子捕集装置2は、粒子の捕集部6を備えている。捕集部6は、粒子含有ガスの導入及び排出が可能に形成されている。例えば、捕集部6は、粒子含有ガスの導入と排出とが同時に可能なように、ガス導入部8とガス排出部10とを備えていてもよい。例えば、図2に示すような形態や図3に示す形態を採ることができる。なお、捕集部6における粒子含有ガスの通過経路は特に限定しない。捕集部の側方や底部側から上方や側方に向かってガスが通過する形態であってもよいし、捕集部の上方から下方、側方若しくは上方に向かう形態であってもよい。また、捕集部6は、これに限定せず、粒子ガス含有ガスのバッチ式処理が可能なガス導入部とガス排出部とを備えていてもよい。
【0019】
捕集部6は、同時に、液滴と粒子含有ガスとを接触させるための適当な空間部12を備えている。空間部12は、液滴とガス流とが適切に接触できる程度であればよく、その形態や大きさは特に限定されない。
【0020】
捕集部6を構成する材料は、特に限定しないで、公知の金属、セラミックス、プラスチック及び複合材料から適宜選択して利用できる。粒子含有ガスの温度を考慮すると、耐熱性材料であることが好ましい。また、捕集部6を構成する材料は、透明性を有することも好ましい。典型的には、塩化ビニル樹脂やポリプロピレン等の各種透明性プラスチック材料を利用できる。捕集部6を透明化することで、粒子の生成量や生成速度を目視にて観察できる。
【0021】
(液体貯留部)
本粒子捕集装置2は、粒子含有ガスに対して供給された液滴と粒子とを貯留可能な液体貯留部16を備えることができる。こうした液体貯留部16を備えることで、粒子の捕集媒体である液滴を集約するとともに、捕集した粒子も同時に集約回収できる。液体貯留部16は、例えば、図2に示すように、液滴の落下方向に備えられる。すなわち、捕集部6の下方の底部近傍を液体貯留部16とし、液体貯留部16に貯留される液体の液面の上方のヘッドスペース部分において粒子含有ガスを導入及び排出可能とし液滴との接触を可能とする空間部12とすることができる。
【0022】
また、液体貯留部16は、例えば、図3に示すような形態で、液滴の落下方向において備えられていてもよい。この場合、粒子含有ガスは、液体貯留部16の上方において導入及び排出され、当該上方において液滴と接触される。
【0023】
液体貯留部16の形態は特に限定されない。底部に向かって徐々に小径になる形態を採ってもよいし、ほぼ同径の筒状体であってもよい。
【0024】
(液体排出部)
液体貯留部16は、粒子を含んだ液体を排出可能な液体排出部を備えていてもよい。液体排出部を備えることで、液体貯留部16内の液体と粒子の量を減少させることができる。また、液体排出部を備えることで、液体貯留部16内への液体の過剰な蓄積を抑制することができるとともに、後述するように、液体を液体貯留部16に別途供給することで、液体貯留部16内の液体における粒子濃度を制御することができる。
【0025】
液体排出部は、開閉可能であることが好ましい。開閉量や開閉時間が調節可能であることが好ましく、より好ましくは、コンピュータ制御等によって、液体貯留部16の液量やスラリー濃度(粒子濃度)等に基づいて開閉制御される。なお、液体排出部は、液体とともに粒子を排出するものであるため、フィルターなどを設けてないことが好ましい。
【0026】
なお、液体貯留部16は、液体のみを排出可能な排出部を別途備えていてもよい。こうした排出部も、液量調整や粒子濃度調整に有用であることもある。
【0027】
(液体供給部)
本粒子捕集装置2は、液体貯留部16に液体を供給できる液体供給部を備えていてもよい。液体供給部を備えることで、液体貯留部16内の液量を調節できるほか、液体排出部と組み合わせて用いることで、液体貯留部16内の液体における適切な粒子濃度を維持することができる。噴霧熱分解による粒子合成が連続的に行われると、液体貯留部6内の液体の粒子濃度が高濃度になりすぎ、循環利用に適さなくなる場合があるからである。
【0028】
また、液体供給部を備えることで、貯留部16内の液体の粒子濃度を、液体循環系18を介して粒子捕集用の液滴として使用するのに好適に維持できる。この結果、粒子含有液体の液滴としての循環及び連続的利用が可能となる。液体貯留部16内の液体の循環利用を継続できることは、連続的に粒子を合成する噴霧熱分解法による効率的にかつ連続的な粒子の大量合成には極めて有利である。また、冷却を継続できる点においても有利である。
【0029】
液体供給部は、液体供給源と、当該液体供給源に接続され、その液体を液体貯留部6に供給可能な送液系を備えていればよい。送液系は、配管、ポンプなどの送液手段等を備えることができる。液体供給部から液体貯留部16への送液量は、液体中の粒子濃度や排出液量等に基づいて適宜設定される。なお、液体供給部から液体貯留部16への送液は、連続的であってもよいし、断続的であってもよく、あるいは必要に応じて行われるものであってもよい。
【0030】
捕集部6は、粒子含有ガスが液体貯留部16に貯留される液体に直接導入されないようになっていることが好ましい。すなわち、ガス導入のための管の排出口が液体貯留部16内の液体の液面より下方に位置されないようになっていることが好ましい。粒子含有ガスを液体貯留部16内の液体に導入すると、大きな泡が生じてしまい、再び粒子がガスとともに空間部12から排出される可能性があり、回収効率に劣る可能性があるからである。一方、粒子含有ガスを多数個の微小気孔を介して液体に導入してバブリングさせると、バブリングのための通気孔が粒子によって目詰まりを起こしてしまう可能性もある。さらに、粒子含有ガスを液体に直接導入すると、圧力損失が生じて、粒子含有ガスを排気させるための追加の送気ないし吸気装置が必要となるからである。
【0031】
(液体循環系)
本粒子捕集装置2は、液体貯留部16内の液体を、後述する液滴供給部26から液滴として供給するための液体循環系18を備えることもできる。液体循環系18は、液体貯留部16内の液体を排出又は吸引するポンプ手段20とポンプ手段20と液体貯留部16と液滴供給部捕集部6の空間部と接続する循環経路22とを備えている。こうした液体循環系18を備えることで、粒子の捕集媒体として用いる液体を循環利用でき、また、少ない水量で効果的に連続運転をすることが可能となる。
【0032】
液体循環系18は、液体貯留部16に貯留される液体の液面高さを超えないが、液滴とともに回収される粒子が沈殿ないし堆積する底部近傍よりも高い部位に循環経路22の接続部位を備えている。こうすることで、液体貯留部16に貯留される液体のみを効果的に循環利用できる。
【0033】
ポンプ手段20は特に限定しないで、公知のポンプから適宜選択して利用できる。
【0034】
(液滴供給部)
本粒子捕集装置2は、空間部12中の粒子含有ガスに液滴を供給する液滴供給部26を備えている。液滴供給部26は、空間部12内の粒子含有ガス中の粒子に液滴を接触可能になっていればよく、その形態は特に限定されない。典型的には、多数の液滴を同時に噴出可能な噴出部28を備えることができる。噴出部28は、より具体的には、複数個の液体噴出口が同心円状、複数個の液体噴出口×複数列の液体噴出口が配列されたアレイ状、あるいは複数の液体噴出口が一列に配列された状態等の各種形態のノズルが挙げられる。また、各噴出口が、それぞれ一つのノズルに対応して複数個のノズルが所定の形態に組み合わされていてもよい。さらに、これらが適宜組み合わされていてもよい。
【0035】
個々の噴出口からの液滴の噴出形態も特に限定されないで、細かい液滴からなるミスト状であってもよいし、連続した液滴が噴出される形態であってもよい。液滴の到達距離や時間あたりの液滴供給量等も、調整可能とすることができる。
【0036】
粒子含有ガスに対する液滴の供給形態も特に限定されない。捕集部6内に導入された粒子含有ガスに対して1個又は複数以上の噴出部28を備えるようにしてもよい。例えば、図2及び図3に示すように、粒子含有ガスの通過経路上の複数箇所に対して液滴を供給可能なノズルを有することもできる。こうした供給形態を採ることで、効果的に粒子を回収できる。
【0037】
(固液分離部)
本粒子捕集装置2は、さらに、粒子含有ガスと接触した液滴(液体)を固液分離する固液分離部30を備えることができる。固液分離部30は、粒子含有ガスと接触して液滴を含んだ液体を、連続式であるいはバッチ式で固液分離する手段とすることができる。固液分離手段として、公知の固液分離手段を適宜採用できる。例えば、図2に示すように、捕集部6の液体貯留部16から排出させた粒子含有液体を、そのままあるいは一定量を貯留してろ過等により固液分離する構成としてもよい。
【0038】
なお、固液分離部30は、必ずしも本粒子捕集装置2に備える必要はない。粒子を含んだ液体を装置2から回収後、別途固液分離装置に供給して、固液分離してもよい。
【0039】
(冷却手段)
本粒子捕集装置2は、捕集部6の冷却手段を備えることができる。冷却手段は、例えば、冷媒が導入される容器状のジャケットあるいはパイプ状であってもよい。捕集部6を冷却することで、高温の粒子含有ガスを冷却し又はそれによって加熱される捕集部6の構造材料の温度上昇を抑制して、捕集部6の耐熱性を補い安定使用が可能となる。冷却手段は、粒子含有ガスが導入及び排出され気液接触する部位(例えば、空間部12)だけでもよいが、液体貯留部6にまで及ぶ範囲で付与されていてもよい。こうすることで、液体循環系18を備える場合において、冷却された液滴を粒子含有ガスに供給できる。
【0040】
本粒子捕集装置2は、例えば、図4に示すように、捕集部6と液滴供給部26とを含む粒子捕集ユニットを、粒子含有ガスの通過経路に沿って複数個で備えることができる。こうすることで、効率的にかつ高率に粒子を捕集できる。複数個の粒子捕集ユニットは、直列、並列又は直列と並列とを組み合わせた形態で備えることができる。複数個の粒子捕集ユニットにおける、捕集部6や液滴供給部26の形態は、同一であっても異なっていてもよい。図4に示す形態では、より前段側に配置される粒子捕集ユニット32は、噴霧熱分解装置の反応室から排出されるガス排出路に接続される容器状体を第1の捕集部36として備え、より後段側においてガス排出口に接続される粒子捕集ユニット42は、前段側の捕集部36のガス排出路をその捕集部46として備えることができる。こうすることで、簡易な構成で、複数個の粒子捕集ユニットを設けることができる。また、前段側に容器状体の第1の捕集部36を備えることが好ましい。第1の捕集部36は、液滴供給部から液滴を粒子含有ガスに供給する形態として、容器の外部に近い部位(図4に示す形態では、捕集部36天井近傍)としやすく、供給される液滴の冷却に適している。また、捕集部36が容器状体であるため、十分な気液接触のための空間を確保できる。このため、反応室からの高温のガスを冷却された液滴で効果的に冷却することができる。同時に、効果的に粒子を捕集できる。
【0041】
以上説明したように、本粒子捕集装置2は、各種形態を採ることができる。そして、本粒子捕集装置2は、噴霧熱分解装置の反応室から排出されるガス排出経路に接続されて用いられ、当該装置による高効率な粒子合成速度に対応して粒子を効率的に回収することができる。
【0042】
(噴霧熱分解装置)
本明細書に開示される噴霧熱分解装置(以下、本分解装置という。)80は、本粒子捕集装置2を備えることができる。本分解装置80は、本粒子捕集装置2を備えることができるほか、公知の噴霧熱分解装置におけるミスト化装置、反応室、キャリアガス供給装置等を採用できる。
【0043】
ミスト化装置としては、原料の溶液又は懸濁液をミスト化するものであればよい。ミスト化手法は特に限定されないが、例えば、噴霧ノズルを用いたノズル式や超音波方式などが挙げられる。二流体ノズルや圧力噴霧ノズルなどノズル方式や超音波方式を採用するにあたっても、各種態様を採ることができる。反応室も、特に限定しないで公知の各種形態を適宜採用できる。また、キャリアガス供給装置は、反応室に所要量のミストMを供給可能に構成される。キャリアガスは外気又は特定ガス源からのガスを用いてもよい。キャリアガスの供給手法は特に限定されない。ミスト化装置におけるミスト生成時の噴射ノズルによる吸気を利用して外気等を取り込むものであってもよいし、送気ポンプでキャリアガスを供給してもよい。あるいは本粒子捕集装置2の後段において排気(吸引)ポンプを含むキャリアガス供給装置としてもよい。
【0044】
本分解装置80は、例えば、図4に示すように、二流体ノズル式であって、ミスト生成時の噴射ノズルによる吸気を利用して外気を挿入するミスト化装置(特許文献1等参照)を採用してもよい。また、本分解装置80は、図4に示すように、粒子捕集ユニット32、42を備えるようにしてもよい。
【0045】
本分解装置80は、例えば、図4等に示すように、排気を冷却するために、本捕集装置2の後段において排気を冷却するための冷却手段を備えることもできる。また、排気用のファンも適宜備えることができる。さらにまた、排気流量等を調節するための流量調節装置を備えていてもよい。
【0046】
本明細書に開示される粒子の製造方法は、粒子の原料ミストを含むガスを所定温度に加熱された反応室に供給して熱分解する工程と、反応室から排出される粒子を含有する粒子含有ガスに液滴を供給して、液滴に由来する液体中に粒子を捕集する工程と、を備えることができる。この製造方法によれば、噴霧熱分解法によって得られる粒子を効率的に捕集し、高効率な粒子の製造が可能となる。粒子含有ガスに液滴を供給するには、既に、本捕集装置2における捕集部6及び液滴供給部26において説明した各種態様を適用できる。また、本粒子捕集装置2におけるその他の態様も、本粒子製造方法に適用することができる。なお、本製造方法は、噴霧熱分解法における合成粒子の捕集方法としても実施することができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0048】
本実施例では、図5に概略を示す噴霧熱分解装置を用いた.すなわち、ミスト生成部、反応室及び粒子捕集装置を備えている。ミスト生成部は、二流体ノズルを2個備えており、それぞれの二流体ノズルへの供給空気圧でキャリアガス(外気)流量が調節可能となっている。また、反応室は、入り口から出口までの4つの加熱装置(電気炉)を備えている。
【0049】
粒子捕集装置は、底部に逆四角錐状で容量約1Lの液体貯留部を有し、その上方に容量約3Lの直方体状の空間部を有する捕集部を備えている。空間部の一部には、反応室からの排ガスが導入可能であり、他の一部から排ガスが排出可能に構成されている。この捕集部の外壁が中空二重となっており、冷水が循環可能に形成されている。この捕集部には、天井部からシャワー状に液滴を供給可能に散水シャワー(液滴供給部)を備えている。さらに、この捕集部の後段には、ガス流路を空間部として用いる捕集部を備えている。この後段側の捕集部には、複数個の噴出口を備える散水用ノズル(液滴供給部)を備えている。なお、それぞれの捕集部では、粒子捕集用媒体として水の液滴を用いた。
【0050】
このように構成した噴霧熱分解装置に対して、濃硝酸100mlに酸化サマリウム、硝酸セリウム、酢酸ニッケルをそれぞれ所定の量添加し、全カチオン量の5倍のモル数のエチレングリコールを添加することでSDC濃度0.2mol/L、NiO濃度1.08mol/Lの出発溶液を作製した。その後、この溶液を80℃で5hの熱処理を行うことによりキレート処理を行い、粘度1274mPa・s-1の燃料極構成元素を高濃度に含有する高粘性原料溶液を得た。得られた高粘性原料溶液中のSDC濃度は0.5mol/L、NiO濃度は2.71mol/Lである。なお、出発溶液250mlは上記熱処理後100mlにまで体積が減少した。この液を水で希釈して300mlとしてミスト原液として用いた。このミスト原液について、以下の条件で噴霧熱分解を実施し、液体貯留部に溜まった水をろ過後、乾燥し、乾燥後のNi−SDC複合微粒子につきSEM像を撮影するとともに粒度分布を測定した。結果を図6及び図7に示す。また、ミスト原液中から減少した原料の量と回収した粒子の量から粒子の捕集率を算出した。
【0051】
(噴霧熱分解条件)
(1)ミストは、二流体ノズルを2個用いて、それぞれの二流体ノズルへの供給空気圧を0.4MPaとした。なお、当該空気圧で外気をキャリアガスとして噴霧熱分解装置に供給するように構成した。
(2)ミストの通気口での流速が0.6m/sとなるように二流体ノズルへの供給空気圧でキャリアガス流量を調整した。
(3)反応室は、入り口から出口までの4つの加熱装置(電気炉)の設定温度を、いずれも700℃に設定した。
(4)捕集部内部での液滴(水)温度が約50℃となるようにした。
【0052】
図6及び図7に示すように、本装置によって得られる粒子は、ほぼ球状の粒子形態であり平均粒子径は約1.2μmであった。さらに、捕集率は、65%で極めて高率であった。この捕集率は、ミスト部反応室や配管系への付着・残留する原料や合成粒子による損失を含んでいる。したがって、本粒子捕集装置における捕集効率は一層高いと考えられる。これに対して、本実施例で用いた捕集装置に替えて従来のガラス製サイクロンを用いて同様に実験を行った場合、その捕集率は5%以下であった。
【0053】
以上のことから、本粒子捕集装置は、噴霧熱分解法により得られる粒子含有ガスから効率的に粒子を捕集できることがわかった。しかも、フィルター方式のように目詰まりもなくまた熱の問題も液滴を利用することで解決できることがわかった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧熱分解による合成粒子を含む粒子含有ガスからの前記粒子の捕集装置であって、
前記粒子含有ガスを導入及び排出が可能に形成された、所定の空間部を有する捕集部と、
前記空間部中の前記粒子含有ガスに液滴を供給する液滴供給部と、
を、を備える、捕集装置。
【請求項2】
前記粒子含有ガスに対して供給された前記液滴と前記粒子とを貯留可能な液体貯留部を備える、請求項1に記載の捕集装置。
【請求項3】
前記液体貯留部内の液体を、前記液滴供給部から前記液滴として供給するための液体循環系を備える、請求項2に記載の捕集装置。
【請求項4】
前記液体貯留部から前記粒子を含む液体を排出する液体排出部と、前記液体貯留部へ液体を供給する液体供給部と、を備える、請求項2又は3に記載の捕集装置。
【請求項5】
前記液滴供給部は、多数の液滴を同時に噴出可能な噴出部を備える、請求項1〜4のいずれかに記載の捕集装置。
【請求項6】
前記液滴供給部は、前記粒子含有ガスの通過経路上の複数箇所において前記液滴を供給可能である、請求項1〜5のいずれかに記載の捕集装置。
【請求項7】
さらに、前記粒子含有ガスと接触した液滴を固液分離する固液分離部を備える、請求項1〜6のいずれかに記載の捕集装置。
【請求項8】
さらに、前記捕集部の冷却手段を備える、請求項1〜7のいずれかに記載の捕集装置。
【請求項9】
前記捕集部と前記液滴供給部とを含む粒子捕集ユニットを複数個で備える、請求項1〜8のいずれかに記載の捕集装置。
【請求項10】
第1の前記粒子捕集ユニットは、噴霧熱分解装置の反応室から排出されるガス排出路に接続される容器状体を第1の捕集部として備え、
第2の前記粒子捕集ユニットは、前記第1の捕集部のガス排出路を第2の捕集部として備える、請求項9に記載の捕集装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の捕集装置を備える、噴霧熱分解装置。
【請求項12】
粒子の製造方法であって、
前記粒子の原料ミストを含むガスを所定温度に加熱された反応室に供給して熱分解する工程と、
前記反応室から排出される粒子を含有するガスに液滴を供給して、前記液滴に由来する液体中に前記粒子を捕集する工程と、
を備える、製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−86037(P2013−86037A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229779(P2011−229779)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000173522)一般財団法人ファインセラミックスセンター (147)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】