説明

粒子状ワックス複合材料、その製造方法及びその使用

【課題】 本願発明の目的は、少なくとも従来の粒子から派生する不利益点を避けるか又は少なくとも減少させるフィラー粒子及びこれらフィラー粒子を具備する分散系、特に分散液を提供することであり、そのような粒子を調製する方法を提供することにある。
【解決手段】 本願発明の特徴は、無機有機ハイブリッド粒子又はワックスベースの有機材料及び無機材料からなる複合粒子を提供することにあり、前記複合粒子が、単一構造において又は単一粒子において、ワックスの特性と、無機材料、特に無機ナノ粒子の特性とを結合し、塗装材料及び塗装系に対するフィラー粒子としてのそれらを用いたことは、結果として力学的特性における十分な改善、特に耐摩耗性、特に引っ掻き抵抗及び/若しくは摩耗抵抗の向上を生じ、その他の必須の性能特性(例えば、表面平滑度、光沢等)を維持するか、所定の条件下で改善するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、粒子状ワックス含有複合材料(「ワックス複合材料」又は「ワックスナノ複合材料」)に関するものであり、特に無機有機ハイブリッド複合材料の形での複合材料に関するものであり、且つそれらの製造方法に関するものであり、その使用に関するものである。
【0002】
本願発明は、特に無機有機複合材料、複合ナノ粒子に関するものであり、該複合粒子が、少なくとも1つのワックスを具備するか少なくとも1つのワックスからなる少なくとも1つの有機ベース材料及び無機ベース材料を具備するものであり、さらにそれらを製造する方法に関するものであり、その使用に関するものである。
【0003】
さらに本願発明は、塗装材料及び、ペンキ、インキ、すべての種類の分散、プラスチック、発泡体、化粧品、特にマニキュア液、接着剤、シーラント等の塗装系における使用に関する。
【0004】
さらにまた、本願発明は、フィラー又は成分として、特に上述した系におけるこれらの複合粒子の使用に関する。
【0005】
また、本願発明は、これらの複合粒子を具備する塗装材料及び塗装系、ペンキ、インキ等、プラスチック、発泡体及び化粧品、特にマニキュア液のような系に関する。
【0006】
さらに、本願発明は、キャリヤ媒体又は分散媒体にこれらの複合粒子を具備する分散を提供するものである。
【背景技術】
【0007】
塗装系及び分散系(例えば、ペンキ、印刷用インキのようなインキ、塗装剤)及びプラスチックの力学的特性を改良するために、特に引っ掻き抵抗及び摩耗抵抗のような耐摩耗性を向上させるために、付加剤及びフィラー、例えばワックス又は無機フィラー粒子(例えばナノ粒子と呼ばれるもの)の結合は、原則的に当業者には公知である。
【0008】
従来技術から知られている無機フィラー粒子は、所定の環境下で、それらが使用される塗装系(例えばペンキ)の引っ掻き抵抗を改善するが、下記する応用において、結果として塗装膜(例えば、ペンキ膜)の脆性を上昇させる可能性がある。さらに、これらのフィラー粒子の結合は、結果として塗装系の要求されない懸濁及び透明性の不足を生じる。さらにまた、相対的に高いフィラー含有量が、所望の効果を達成するために必要とされ、これが結果としての分散系を安定させることを困難にし、コスト領域において所望されないものである。
【0009】
WO2007/072189A2は、ナノ珪酸塩を具備するシリル化ポリマーエマルジョンに関するものであり、塗装系への使用に関する。しかしながら、そこに記載されたエマルジョンについて、常に所望の性能特性を得ることができるものではない。
【0010】
EP0960871A2は、ミネラル構造材料を処理するための水溶液調製に関するものであり、該水溶性調製は、多官能性カルボシラン及び/若しくはその縮合生成物のエマルジョンに加えて、オルガノポリシロキサンのエマルジョン及び水分散性又は水乳化有機ポリマー、さらに無機ナノ粒子を具備するものである。
【0011】
特開平07−138484号公報は、ワックス、オイル又は樹脂の混合物及び例えばタルク又はシリカ等の粉状無機材料から製造された押出成型品の製品に関するものである。結合される付加的な成分は、ワックスで押出作業における改良された流れ能力を含む効果を有することが記載されている。
【0012】
特開平06−166756号公報は、不活性液、好ましくはペルフルオロペンタンのようなハイドロフルオロカーボンにおいて0.1〜100μmの粒子径を有し、乳化剤としてワックスの100重量部当たり1〜20重量部の量の疎水化シリカを使用して微細に分割されたワックス粒子のエマルジョンに関するものである。乳化剤としてのみ使用されるこの疎水化シリカは、親水性シリカの表面を疎水化剤、特にハロゲン化アルキルシラン若しくはアルコキシシランを反応させることによって得られる。
【0013】
特開2004−339515号公報は、表面改質特性を有する沈降シリカの調製に関するものであり、これによって調製されたシリカは、ペンキのつや消し剤として使用されるものである。この表面改質は、ポリエチレンワックスによるシリカ表面の処理によって実行され、その結果としてワックスコートされたシリカ粒子が生じるものである。
【0014】
KR10−2004−0098585Aは、ポリオルガノシロキサンポリマーでコートされた表面を有する沈降シリカに関し、またそれを製造する方法に関する。この表面改質シリカは、透明な塗装材料のつや消し剤として使用されるものである。
【0015】
さらに、KR10−2005−0094496Aは、ワックス粒子とラテックス粒子との間の結合状態を改良するためのコアシェルポリマーラテックスの調製方法に関するもので、上述したワックスエマルジョンを調製する必要を排除することによって調製処置を簡略化するものである。この方法において調製された生成品は、電子写真イメージ装置、特にコピー機のトナー組成品として使用される。
【0016】
WO95/31508A1は、つや消し剤として使用されるワックスコートされたシリカ粒子に関する。
【0017】
さらに、EP1182233B1は、ワックスでシリカを覆う方法に関するもので、その意図は、そこに記載されたシリカが、ペンキのつや消し剤として使用されることである。
【0018】
EP1204701B1は、コーティング上に存在するフィラー粒子の濃度勾配を特徴とする物質上の硬化コーティングに関するもので、表面に近接するコーティング領域内での結合するフィラー粒子の濃度が、下方に位置するコーティングの領域内の粒子の濃度よりも大きいことを開示する。しかしながら、この結果として、コーティングの不均一性により、改善は、表面の領域を除いて部分的にのみ達成されることになる。
【0019】
US2006/0228642A1は、内部ワックスコアと外部ラテックスシェルを有するコアシェル構造を有するポリマーラテックス粒子を調製する方法に関し、その意図は、その粒子をトナー組成品として使用可能にすることである。
【0020】
塗装系の力学的特性を改善するための、特に耐摩耗性を向上させるためのワックス含有複合粒子は、従来技術においてまだ提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】WO 207/072189 A2
【特許文献2】EP 0 960 871 A2
【特許文献3】特開平07−138484号公報
【特許文献4】特開平06−166756号公報
【特許文献5】特開2004−339515号公報
【特許文献6】KR 10−2004−0098585 A
【特許文献7】KR 10−2005−0094496 A
【特許文献8】WO 95/31508 A1
【特許文献9】EP 1 182 233 B1
【特許文献10】EP 1 204 701 B1
【特許文献11】US 2006/0228642 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
そのため、本願発明の目的は、特に上述した系に使用されるのに適し、少なくとも従来の粒子から派生する不利益点を避けるか又は少なくとも減少させる上述した種類のフィラー粒子及びこれらフィラー粒子を具備する分散系、特に分散液を提供することであり、そのような粒子を調製する方法を提供することである。
【0023】
さらに、本願発明の目的は、最初の特定された系に結合される時に、効果的な性能促進を実行し、塗装系及び分散系(例えば、ペンキ、印刷用インキなどのインキ、コーティング等)の力学的特性を改善するために、特にその耐摩耗性、特に引っ掻き抵抗及び摩耗抵抗を向上させるために、これらの系の他の必須の性能特性(例えば、光沢作用、表面平滑度、密着性等)に悪影響を及ぼすことなしに、最初に特定された種類の革新的なフィラー粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述された問題を解決するために、本願発明は、請求項1に記載されたワックス含有無機有機複合粒子、特に複合ナノ粒子を提案し、さらに利益的な具体例をそれに続く従属項で示すものである。
【0025】
さらに、本願発明は、請求項16〜29に再現されるように、本願発明の複合粒子を調製する方法を提供するものである。
【0026】
さらにまた、本願発明は、該当する使用請求項(請求項30〜32)に再現されるように、本願発明による複合粒子の新しい使用を提供するものである。
【0027】
また、本願発明は、キャリヤ媒体又は分散媒体に、本願発明の複合粒子を具備する分散を提供するものである(請求項33)。
【0028】
さらに、本願発明は、本願発明の複合粒子を具備する塗装材料及び塗装系、特にペンキ、インキ等、プラスチック、発泡体、化粧品、特にマニキュア液、接着剤、及びシーラントを提供することにある(請求項34)。
【0029】
下記の記載において、本願発明のそれぞれの様相だけに関連する見解が、この事実が明白な言及を要求することなしに、本願発明の他の様相に等しく且つ対応して適用されることが望ましい。
【0030】
本願発明の第1の様相によれば、本願発明は、無機有機複合粒子、特に複合ナオ粒子、少なくとも1つのワックスを具備するか少なくとも1つのワックスからなる少なくとも1つの有機ベース材料と、無機ベース材料を具備する複合粒子を提供することにある。
【0031】
本願発明の特徴は、無機有機ハイブリッド粒子又はワックスベースの有機材料及び無機材料からなる複合粒子を提供することにある。この種の複合粒子は、現在まで提供されていない。これらの粒子は、単一構造において又は単一粒子において、ワックスの特性と、無機材料、特に無機ナノ粒子の特性とを結合し、上述した種類の塗装材料及び塗装系に対するフィラー粒子としてのそれらの結合は、結果として力学的特性における十分な改善、特に耐摩耗性、特に引っ掻き抵抗及び/若しくは摩耗抵抗の向上を生じ、その他の必須の性能特性(例えば、表面平滑度、光沢等)を維持するか、所定の条件下で改善するものである。
【0032】
本願発明に関して、これらの複合粒子は、1〜2000μm、特に1〜1000nm、好ましくは2〜750nm、より好ましくは5〜600nm、最も好ましくは10〜500nmの粒子サイズを有する。この粒子サイズは、例えば透過型電子顕微鏡、分析超遠心又は光散乱法によって測定される。
【0033】
前記複合粒子の無機ベース材料は、無機ナノ粒子の形で、0.5〜750nmの範囲内、特に、1〜500nmの範囲内、好ましくは2〜250nmの範囲内、より好ましくは5〜150nmの範囲内、最も好ましくは10〜100nmの範囲内の粒子サイズで存在するもので、その粒子サイズは、透過型電子顕微鏡、分析超遠心又は光散乱法によって測定される。これらの無機粒子には、ワックスを具備するかワックスからなる有機材料が沈着されるものである。
【0034】
当然のことながら、本願発明に関して特定されるサイズ表示及び範囲表示のすべては、必要な場合には、それぞれの場合について、特別な応用について、本願発明の範囲を離れることなしに、そこから派生するものである。
【0035】
特に、前記複合粒子は、均質な及び/若しくは安定した集合体に、有機ベース材料及び無機ベース材料を具備する。前記有機ベース材料は、下記に詳述されるように、無機ベース材料に沈着されることが望ましい(例えば、沈着によって)。
【0036】
本願発明の複合粒子における無機材料及び有機材料のそれぞれの割合に関して、これらの割合は、広い範囲内で変化可能であり、複合材料における無機ベース材料に対する有機ベース材料、特にワックスの重量ベース比率は、1:50〜200:1、特に1:20〜100:1、好ましくは1:1〜50:1の範囲内で変化するものである。
【0037】
本願発明の複合粒子の無機ベース材料に関して、無機ベース材料は、少なくとも1つの無機酸化物(例えば、TiO2, ZnO, Al2O3, SiO2, CeO2, Fe2O3, Fe3O4等)、水酸化物(例えばAl[OH]3等)、水酸化酸化物(例えば、AlOOH等)、硫酸塩(例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等のアルカリ土類金属硫酸塩、)、リン酸塩(リン酸カルシウム、リン酸ランタン等のアルカリ土類金属リン酸塩)、硫化物(硫化カドミウム、硫化亜鉛等)、炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩)、窒化物(例えば、AlN, Si3N4等)、珪酸塩(例えば、珪酸カルシウム等のアルカリ土類金属珪酸塩、層状珪酸塩及びフィロ珪酸塩等)、炭化物(例えば、SiC等)、単層又は多層カーボンナノチューブ及び/若しくは金属/要素(例えば、銀、銅、フラーレン)から形成され、又はそれら化合物の他の混合物から形成され、又はその化合物を具備することが望ましい。
【0038】
無機酸酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、硫酸塩、リン酸塩、硫化物、炭酸塩、窒化物、珪酸塩、炭化物、及び/若しくは金属/要素からなる上述した無機ベース材料は、それぞれの媒体において低い溶解度構造を有する。
【0039】
特に、前記無機ベース材料は、少なくとも1つの金属又は半金属の少なくとも1つの酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、硫酸塩、リン酸年、硫化物、炭酸塩、窒化物、珪酸塩、又はそれら化合物の他の混合物又は組合せから成ることが望ましく、またそれら化合物を具備することが望ましい。
【0040】
本願発明の複合粒子の無機ベース材料は、アルミニウム、シリコン、亜鉛、チタン、セリウム及び/若しくは鉄の少なくとも1つの酸化物、水酸化物及び/若しくは水酸化酸化物、アルカリ土類金属硫酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩又はリン酸ランタン、硫化カドミウム又は硫化亜鉛、アルカリ土類金属炭酸塩、窒化アルミニウム又は窒化シリコン、アルカリ土類金属珪酸塩、炭化シリコン、カーボンナノチューブ又は銀、それら化合物の他の混合物又は組合せから形成されることが望ましく、又はその化合物を具備することが望ましい。
【0041】
本願発明の無意気ベース材料を形成するための好ましい選択は、下記する化合物から与えられる:TiO2, ZnO, Al2O3, SiO2, CeO2, Fe2O3, Fe3O4, Al(OH)3, Al(O)OH、アルカリ土類金属硫酸塩(例えば硫酸バリウム、硫酸カルシウム等)、アルカリ土類金属リン酸塩(例えばリン酸カルシウム)、リン酸ランタン、硫化カドミウム、硫化亜鉛、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、AlN, Si3N4、アルカリ土類金属珪酸塩(例えば、珪酸カルシウム等)、SiC及び/若しくは銀、及びそれらの化合物の他の混合物又は組合せ。
【0042】
前記無機ベース材料は、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化亜鉛及び/若しくは二酸化チタンから形成されることが好ましく、又はそれら化合物を具備することが望ましい。
【0043】
本願発明の複合粒子の無機ベース材料は、二酸化珪素(例えば、高分散SiO2又はポリシリカの形の)又は酸化アルミニウムから形成されることが望ましい。
【0044】
本願発明の複合粒子の有機ベース材料に関して、この有機ベース材料は、少なくとも1つのワックスから形成されるか、そのワックスを具備するものである。この場合、ワックスは、特に(i)特に植物性、動物性及び鉱物性ワックスである天然ワックス、(ii)化学的変性ワックス、(iii)合成ワックス、及びそれらの混合物からなる群から選択されることが望ましい。
【0045】
本願発明の好ましい例の1つによれば、使用される本願発明の複合粒子の有機ベース材料は、合成ワックス、特にポリオレフィンベースのワックス、好ましくは酸化ポリオレフィンに基づくワックスである。
【0046】
ワックスの概念に関しては、その言語は、自然に又は人工的に又は合成的に得ることのでき、下記する特性を有する一連の物質に関する現象論的表示である:ワックスは、20℃で練り可能状態であり、固体は冷たく硬く、粗い状態から微細な状態までの結晶構造であり、半透明から不透明であるが、ガラス質ではなく、40℃以上で分解なしに溶解するが、融点を少し超えると相対的に低い粘性を有するものであり、非繊維質であり、強い温度依存傾向及び溶解度を示し、且つ緩やかな圧力下で磨くことが可能であるものである。もし上述した特性の1つ以上が欠落した場合、この物質は、DGF(ドイツ脂肪科学協会)によれば、ワックスではない(注、DGF標準法 M−I 1(75))。
【0047】
ワックスは、主に同様の合成又は天然製品(例えば、樹脂、プラスチック塊、金属石けん等)と、50℃〜90℃の間において異なっており、約200℃までの例外的なケースとして、それらは液体溶解、低粘度状態へ移行し、見かけ上灰形成化合物が存在しない。
【0048】
ワックスは、ペースト、ゲルを形成し、一般的に煤をだしながら燃える。
【0049】
それらの由来によれば、ワックスは3つの群に分割される。いわゆる(i)植物ワックス(例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、日本蝋、エスパルトグラスワックス、コルクワックス、グアルマワックス、米ぬかワックス、サトウキビワックス、オーリークリーワックス、モンタンワックス等)、動物ワックス(蜜蝋、セラックワックス、鯨蝋、ラノリン又は羊毛ワックス、尾羽油ワックス等)、及び鉱物ワックス(例えば、セレシン、オゾケライト、又は地蝋等)の天然ワックス、(ii)ハードワックスを含む化学的変性ワックス(例えば、モンタンエステルワックス、サソルワックス、水素化ホホバワックス等)、(iii)ポリアルキレンワックス、ポリアルキレングリコールワックス(例えば、ポルエチレングリコールワックス)を含む合成ワックス、等である。
【0050】
天然の最新の(「再生可能」)ワックスの主成分は、長鎖脂肪アルコール、トリテルペンアルコール又はステロイドアルコールを有する長鎖脂肪酸のエステル(蝋酸)であり、これらのワックスエステルは、いわゆるワックス石けんに乳化能力を引き起こす遊離カルボキシル及び/若しくはヒドロキシル基を含むものである。褐炭又は石油から精製されるような天然化石ワックスは、−フィッシャートロプシュ合成からのワックス又はポリアルキレンワックス(例えば、ポリエチレンワックス)のような−長鎖炭化水素からなるものである。しかしながら、出所によって、前者は、分岐式又は脂環式炭化水素を具備することが望ましい。これらの「炭化水素」ワックスは、それに続く酸化等によって官能化され、ポリオレフィンワックスの場合は、カルボキシル基を有するコモノマーによって官能化される。
【0051】
ワックスの概念に関するさらなる詳細については、例えばロンプケミエレクシコン第10編、第6巻、1999年、ゲオルグ論文出版、シュタットガルト/ニューヨーク、第4906頁、表題「ワックス」、及びそこに引用されている引例、特にCosm.Toil.101、49(1986)及びDGF標準法、M分冊−ワックス及びワックス生成物−第7追補05/1999、シュタットガルト、科学出版社を参照し、上述した文献は、本願明細書の全般において参照することが可能であるものである。
【0052】
本願発明によれば、使用される有機ベース材料は、無機ベース材料と相互作用することができ、特に物理学的及び/若しくは化学的結合を形成することができる官能基を有するワックスである。
【0053】
前記官能基は、O、N及び/若しくはSの群から選択されるヘテロ原子、好ましくはOからなるヘテロ原子を有する基、好ましくは水酸基、ポリエーテル基、特にポリアルキレンオキシド基及び/若しくはカルボキシル基、特に好ましくは、ポリエーテル基及び/若しくは水酸基等の極性基であることが好ましい。これらのワックスの官能基は、無機材料に関してワックス材料の親和性をもたらすか、向上させるもので、改良され、より安定した接着性をもたらすものである。
【0054】
本願発明の特別な具体例によれば、本願発明の無機有機複合粒子の無機ベース材料は、表面改質構造であり、ポリシロキサン基、特に付加的に有機的に改質されたポリシロキサン基によって実行された表面改質を有するものである。一方で、この具体例において、本願発明の複合粒子の無機ベース材料の表面には、ポリシロキサン基が、物理学的/化学的結合、特に化学的共有結合によって付与される。
【0055】
ポリシロキサン基、特に付加的に有機的に改質されたポリシロキサン基による対応する表面改質は、特にそれらが塗装材料及び塗装系へフィラーとして結合される時に、本願発見栄の複合粒子の性能特性において向上又は改善の効果を有する。特に、ポリシロキサン基での表面改質は、結果として本願発明の複合粒子を含む分散の沈殿傾向及びゲル形成傾向を減少させる。さらに、乾燥及び/若しくは硬化塗装系の脆化が、効果的に弱められる。表面改質のさらなる利点は、分散系へのフィラー粒子としての本願発明の複合粒子の結合において、バイダーとの相互作用が有益に影響を受け、これによって非表面改質粒子に対して透明度及び屈折率が改善され、屈折率における減少された差異の結果として、光散乱を十分に少なくすることができるものである。
【0056】
ポリシロキサン基、好ましくは付加的に有機的に改質されたポリシロキサン基による表面改質は、従来技術から当業者には原則的に公知である。この点において、出願人による特許公開公報DE10 2005 006 870A1又はEP1 690 902A2及びDE10 2007 030 285A1又はPCT/EP2007/006273を参照することができ、特にこれらの全体的開示内容を、引例として参照することができる。上述したすべての公報は、ポリシロキサン、好ましくは化学的、特に共有結合を介しての金属又は半金属酸物の若しくは水酸化物の表面の表面改質に関するものである。
【0057】
本願発明の第2の様相によれば、本願発明は、上述したような本願発明の無機有機複合粒子の調製方法であり、この方法において、少なくとも1つのワックスを具備するか少なくとも1つにワックスからなる少なくとも1つの有機ベース材料と、無機ベース材料が、それらを具備する媒体から結合的に沈着され、且つ/又は、少なくとも1つのワックスを具備するか少なくとも1つのワックスルからなる少なくとも1つの有機ベース材料が、無機ベース材料に沈着され、その結果として少なくとも1つのワックスを具備するか少なくとも1つのワックスから成る有機ベース材料と、無機ベース材料からなる本願発明の複合粒子が生じるものである。
【0058】
本願発明の複合粒子は、有機ベース及び無機ベース材料の結合沈殿(「共沈」)によって得られ、且つ/又は、無機ベース材料上に有機ベースを沈着させることによって、特に無機粒子上に、好ましくは無機ナノ粒子上にワックスを沈着させることによって得られるものである。
【0059】
本願発明による無機有機複合粒子の調製方法に関して、本願発明による下記する処置は、ワックスからなるかワックスを具備する少なくとも1つの有機ベース材料と、無機ベース材料とを、それらを具備する媒体から結合的に沈殿させること、且つ/又は、少なくとも1つのワックスからなるか少なくとも1つのワックスを具備する有機ベース材料が、無機ベース材料上に沈着され、そこでそれと密接に混合されることである。
【0060】
本願発明の方法が実行される媒体は、同様に上述した開始材料(例えば、ワックス含有有機ベース材料及び無機ベース材料)と混合され、所望により、さらに特に乳化剤(例えば、アニオン乳化剤又はカチオン乳化剤等のイオン乳化剤、又は非イオン乳化剤)、湿潤剤、抗酸化物質、安定剤、中和剤(例えば、水酸化物、アミン等)、触媒、濃厚剤、分散剤、殺生物剤等、及びこれら化合物の混合物から成る群から選択される材料及び/若しくは付加剤と混合される。
【0061】
本願発明の方法について、前記処置は、下記のような沈着であり、本願発明の複合粒子は、結果として1〜2000nmの範囲内、特に1〜1000nmの範囲内、好ましくは2〜750nmの範囲内、より好ましくは5〜600nmの範囲内、最も好ましくは10〜500nmの範囲内の粒子サイズを有するものである。
【0062】
前記無機ベース材料は、無機粒子の形で、特に無機ナノ粒子の形で、特に0.5〜750nmの範囲内、特に1〜500nmの範囲内、好ましくは2〜250nmの範囲内、より好ましくは5〜150nmの範囲内、最も好ましくは10〜100nmの範囲内の粒子サイズを有して使用されるものである。これらの粒子において、有機材料、特にワックスが、付与又は沈着される。
【0063】
本願発明によれば、処置は、開始材料が、有機ベース材料、特にワックスの無機ベース材料に対する重量比において、1:50〜200:1、特に1:20〜100:1、好ましくは1:1〜50:1の範囲内において使用されるものである。
【0064】
本願発明の方法の第1の変形例によれば、処置は、最初に、ワックス粒子の水性エマルジョンが、上述したように、このエマルジョンに分散された無機粒子、特に無機ナノ粒子の存在において調製され、これがワックス粒子の融点以上の温度まで加熱され、そしてそのエマルジョンが、ワックス粒子の融点以下の温度まで冷却され、ワックスが無機粒子に沈着され、それらが親密に混合されて、本願発明の無機有機複合粒子が形成される。冷却は、例えば、付加的に冷却された媒体(例えば、さらなる付加剤と一緒の水)の導入で実行される。
【0065】
本願発明の方法の第2の変形例によれば、最初の調製に代えて、溶液内に分散された無機粒子、特に無機ナノ粒子が存在する少なくとも1つのワックス溶液を調製し、そして、そこに分散された無機粒子を有するワックス溶液中に沈殿剤を導入し、ワックスが沈殿し、無機粒子上に沈着して、それらが密接に混合され、本願発明の無機有機複合粒子が形成される。
【0066】
本願発明の方法の第3の変形例によれば、最初に、少なくとも1つのワックスの溶液を調製し、それに続いて無機粒子、特に無機ナノ粒子の分散が、ワックスの沈殿剤に導入され、その結果として、ワックスは無機粒子上に沈殿して沈着し、それらが密接に混合されて、本願発明の無機有機複合材料が形成される。
【0067】
上述した理由に関して、本願発明によれば、使用される無機ベース材料、特に無機粒子、好ましくは無機ナノ粒子に、ポリシロキサン基の付与による表面改質が施される。これについての詳細は、上述した引例を参照することが望ましい。
【0068】
使用される無機材料に関して、不必要な重複説明を避けるために、本願発明の複合粒子に関する上記記載を参照し、本願発明の方法に関して等しく適用することが望ましい。
【0069】
使用されるワックスに関して、不必要な重複説明を避けるために、本願発明の複合粒子に関する上記記載を参照し、本願発明の調製方法に関して対応して適用することが望ましい。
【0070】
本願発明について、本願発明の複合粒子を調製するために、無機材料に対して、特にそこに沈着される本願発明による方法において結合されたミクロ化されたワックスを使用することができる。
【0071】
本願発明の第3の様相によれば、本願発明は、フィラーとして本願発明の複合粒子を使用することにある。本願発明の複合粒子は、特に、塗装材料及び塗装系、特にペンキ、インキ等、すべての種類の分散、プラスチック、発泡体、化粧品、特にマニキュア液、接着剤及びシーラントに、フィラー又は含有物又は付加剤としてそれらの容量において使用されることにある。
【0072】
さらに、本願発明の複合粒子は、上述した系において、力学的特性の改善に貢献するために、特に耐摩耗性の向上、好ましくは引っ掻き抵抗及び/若しくは摩耗抵抗の向上のために使用されることができる。
【0073】
本願発明の第4の様相によれば、本願発明は、キャリヤ媒体又は分散媒体において本願発明の複合粒子を具備する分散を提供することにある。
【0074】
本願発明の第5の様相によれば、本願発明は、本願発明の複合粒子を具備する塗装材料及び塗装系、特にペンキ、インキ等、プラスチック、発泡体、化粧品、特にマニキュア液、接着剤及びシーラントを提供することにある。
【0075】
本願発明の複合材料について、第1に、有機無機ベースハイブリッド粒子又は複合粒子が提供されたことであり、上記系に結合される時に、結果として、十分な性能促進、特に力学的特性、特に耐摩耗性、好ましくは引っ掻き抵抗及び/若しくは摩耗抵抗の十分な改善を生じるものである。
【0076】
本願発明を介して、最初に、1つの複合材料において、無機ベースナノ粒子とワックス含有粒子との性能利点を一体化することに成功したことである。上記系(例えば、塗装材料及び塗装系、特にペンキ、インキ等、プラスチック、発泡体、化粧品、特にマニキュア液、接着剤及びシーラント)へ結合される時に、本願発明の複合粒子の効果は、十分な性能の促進であり、それらが、それらの系の力学的特性、特に引っ掻き抵抗及び摩耗抵抗等の耐摩耗性の改善について、これらの系の他の必須性能特性(例えば、光沢性能、表面平滑度、接着能力等)への逆効果なしに、最適であるものである。
【0077】
この方法において、前記系に関する効果的なフィラーは、例えば、塗装系(例えば、ペンキ及びインキ)へ結合されるとき、塗装の力学的特性、摩耗抵抗及び引っ掻き抵抗を、光沢への逆効果なしに、改善することができるものである。これに対して、従来技術では、ワックス含有分散又はミクロ化ワックスは、結果として力学的特性、特に摩耗抵抗については改善することができるが、臨まれないつや消し効果がでてしまうという不具合を有する。
【0078】
本願発明の複合粒子の提供によって、ワックスエマルジョン又はワックス分散において安定的に無機ベースナノ粒子を分散させることに成功した。これに対して、従来技術の現状では、無機ナノ粒子分散は、通常はワックスベース薬剤と両立しないものであり、少なくともこの形では、従来技術の現在の状態では取得することができないものである。
【0079】
本願発明の複合粒子への無機ナノ粒子の導入の結果として、無機ナノ粒子は、分散状態において効果的に安定させられる。これに対して従来技術では、無機ナノ粒子とワックスの間の大きな密度差が、安定した生成物の製造を不可能にするか又は困難にしている。本願発明の複合粒子の分散は、相対的に長い時間にわたって安定しており、純粋無機ナノ粒子と比べて十分に減少した沈殿作用に役立つ。一方で、本願発明の複合粒子では、無機ナノ粒子は、安定して分散された状態を維持するので、ある意味で沈殿に対しても安定していると言える。
【0080】
上述したように、本願発明の複合粒子は、純ワックスエマルジョン、純無機ナノ粒子分散、又はその混合物のそれぞれの場合と比較して、結果として塗装の一部に改善された力学的特性を生じ、純ワックスベース系と比較して、結果として生じる塗装の光沢特性を実質的に損なわないものである。
【0081】
例えばワックス及び無機ナノ粒子であるそれぞれの構成成分又はそれらの春水に物理学的な混合物と比較して、本願発明の複合粒子は、特に塗装の力学的特性に関して相乗効果を示し、純粋材料と比較して、特に純粋無機ナノ粒子分散と比較して、本願発明の複合粒子の量を十分に減少させることが可能である。
【0082】
ミネラル材料から形成される従来技術のミネラルフィラー粒子と量において比較すると、本願発明の複合粒子は、十分に低い密度又は固有重量を有している。この結果は、同等の特性及び/若しくは効果を得るために、純粋ミネラルフィラー粒子と比較して、当該系の力学的特性が、フィラー粒子の容量比率によって決定されるので、本願発明の複合粒子の十分に低い重量特性が使用される必要がある。コスト削減を考慮すると、これはより減少したフィラー含有量の結果としてそれらの処理において改善される高い性能を有する分散を生じる。
【0083】
さらに、従来技術の純粋無機フィラー粒子は、純粋バインダーと比較して高い屈折率を有し、当該バインダーへの結合が結果として懸濁又は光沢の減少を結果として生じるという不具合を有する。この現象は、本願発明に複合粒子では観察されず、言い換えると、従来のミネラルフィラー粒子と比較して、上述された理由によって、本願発明の複合粒子の十分に少ない量が要求されるので、本願発明の複合粒子について、当該バインダー系への結合は、全く懸濁を生じないものである。
【0084】
さらに、本願発明のフィラー粒子は、特に長時間の安定性及び相安定性を有して、その表面での十分な分離又は蓄積無しに、当該系に容易に安定的に結合される。その結果として、性能促進が、全体的に系にわたって均一に達成される。
【0085】
本願発明の複合粒子及び本願発明の分散の応用可能性は、極端に広い。本願発明の複合粒子の極端に高い効果と本願発明の分散の極端に高い効果の結合による応用の広い可能性は、従来の粒子及び分散をはるかに超えている。
【0086】
本願発明の複合粒と分散は、例えばペンキ、接着剤、プラスチック等を与えるための加工される現存系への付加によって使用される。本願発明の複合粒子又は本願発明の分散の少ない量の付加を介して、大変向上した力学的抵抗が得られる。驚くべきことに、当該系、特にペンキ、プラスチック等の他の加工特性は影響を受けないか、すこししか影響されないので、これらの応用の場合においた他のパラメータについて新しい最適化は必要ないものである。
【0087】
そのため、本願発明の複合粒子とその分散は、すべての種類の塗装材料、プラスチック、接着剤、シーラント等に使用するのに適している。
【0088】
本願発明のさらなる具体例、改良例、変形例は、本願発明の範囲から逸脱することなしに、本明細書を読解することによって当業者には、容易に認識可能であり、且つ現実化可能である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
本願発明は、下記する実施例を使用して説明されるが、これによって本願発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0090】
実施例1:有機無機ワックス/Al複合粒子の調製及びその使用
【0091】
303gの酸化HDPEワックスが、80gの約40nmの粒子サイズを有するAl分散液(水50%)と、70gのアニオン乳化剤、34gのジエチルエタノールアミン(中和剤)、4gの亜硫酸ナトリウム(抗酸化物質)、及び315gの水と共に混合され、この混合液が、145℃の温度まで加熱された。この全混合液は、15分間この温度で維持される。
【0092】
本願発明によって最適で、典型的なテストに使用されるワックスは、125〜140℃の範囲内の融点と、10〜40KOH/gの範囲内の酸性度指数を有している。例えば、ビックケミー株式会社、ドイツ製のAQUACER(登録商標)のHDPEワックスエマルジョンが、使用可能である。
【0093】
それに続いて、175gの水及び19gのジエチルエタノールアミンが、80℃に加熱され、上記混合液に注入される。それから、全体的な混合液は、40℃まで冷却される。
【0094】
これにより、ワックス/Al複合ナノ粒子のエマルジョンが与えられた。粒子状複合構造の形成の結果として、無機ナノ粒子の沈殿作用は、十分に改善され、且つ、これは粒子の沈殿が実質上のなくなること又は十分に減少したことを明白にするものであり、元のAl2O3ナノ粒子分散にわたって著しい改善を達成し、改善された取り扱い特性を引き起こすものである。
【0095】
この方法において得られたワックス/Al複合ナノ粒子系は、2成分PU塗装系(塗装複合物に基づきAlとして演算されたワックス/Al複合ナノ粒子の量:4重量%)に結合され、その後、塗装に関する性能特性、特に光沢度、引っ掻き抵抗及び潤滑性について試験された。純粋ワックスエマルジョン又は純粋ナノ粒子分散に関して、本願発明の複合粒子は、結果として生じる塗装の光沢特徴を制限することなしに、純粋ワックス分散に関して引っ掻き抵抗及び摩耗抵抗を改善したことを示している。さらに、表面の平滑度も、悪影響を受けなかった。この結果は、下記する表に示されている。
【実施例2】
【0096】
実施例2:有機無機ワックス/Al2O3複合粒子の調製及びその使用
【0097】
実施例1が繰り返されるが、ワックスがキシレンに溶解されること、Al分散及び他の成分が付加されること、ブチルアセテートが沈殿剤として、ワックス/Al複合ナノ粒子が沈殿して得られる量で付加されることが変更されている。従って、それに続き段階は省略する。
【0098】
この方法で得られたワックス/Al複合ナノ粒子系は、上述した性能テストが実施され、その結果は下記する表に示される。
【実施例3】
【0099】
実施例3:有機無機ワックス/Al複合粒子の調製とその使用
【0100】
ここで実施例2が繰り返されるが、ワックスのための沈殿剤の付加が、ブチルアセテートベースのAl分散の使用を介して、Al分散の付加の一部として実行されたことが変更されている。
【0101】
この方法で得られたワックス/Al複合ナノ粒子系は、上述した性能テストが実施され、その結果は下記する表に示される。
【実施例4】
【0102】
実施例4:有機無機ワックス/SiO複合粒子の調製とその使用
【0103】
上述した実施例1から3が繰り返されるが、Alナノ粒子が、約40nmの粒子サイズを有するSiOに置き換えられている点が変更されている。
【0104】
この方法で得られるワックス/SiO複合ナノ粒子は、上述した性能テストが実施され、その結果は下記する表に示される。
【0105】
性能テスト:
【0106】
比較参照データ及び純粋ワックスでコートされたサンプルを除いて、すべて他のサンプルは、塗料組成物(乾燥重量)において、使用される塗料組成物又は塗装分散に基づいて、無機ナノ粒子(例えば、酸化アルミニウム粒子又は二酸化シリコン粒子)として演算された4重量%の量で、上述されたフィラー粒子を具備する。
【0107】
引っ掻き抵抗は、500、1000、2000及び4000サイクルの後のサトラテスト法によって測定され、結果として生じる摩耗抵抗は、学校段階システムによって、1〜5の評価段階で評価される(1=大変良い〜5=不十分)。この目的のために、それぞれの塗装は、同じ塗装厚さに適用され、24時間同じ条件下で乾燥及び硬化に委ねられた。その結果、3日間の貯蔵の後、サトラ引っ掻き抵抗試験が当業者には普通に知られる条件下において、上記サイクルで、塗装の表面で回転する摩耗ディスクによって実行された。
【0108】
光沢度は、60度の角度で、ISO2813に対応するDIN EN 67530に従って測定された。
【0109】
表面平滑度(「滑り」)は、滑り抵抗における百分率減少を介して滑り特性を測定することによって測定される。この測定方法において、塗装表面で定義された物質の摩擦力が測定される。500gの定義された下張りフェルトを有するおもりが、一定の速度で塗装面にわたって引張機で押される。これを達成するために要求される力は、電子力変換器によって測定される。比較参照データに関して、要求された力における減少が、比較参照データと比較され、百分率で、力の値から演算される。プラスの値の場合、前記サンプルは、比較参照データよりも円滑であり、マイナスの値の場合、前記サンプルは、比較参照データよりも粗いことを示している。本願の場合、大変低い値が要求される。
【0110】
摩耗抵抗は、500gの負荷において、ASTM D 4060(重量損失が報告される)にしたがって、テイバー摩耗法によって測定された。報告されたパラメータは、mg単位の重量損失である。
【0111】
【表1】

【0112】
上記結果は、本願発明の粒子の結合を介して摩耗抵抗及び引っ掻き抵抗において十分な改善が達成されたことを示している。さらに、上記特別な量における本願発明の粒子の結合は、他の性能特性においてほとんど劣化が生じなかった。
【0113】
上記テストは、本願発明の系及び粒子の改良された性能能力を明らかにしている。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に複合ナノ粒子である無機有機複合粒子であって、該複合粒子が、少なくとも1つのワックスを具備するか少なくとも1つのワックスからなる少なくとも1つの有機ベース材料と、無機ベース材料とを具備することを特徴とする複合粒子。
【請求項2】
前記複合粒子が、1〜2000nmの範囲内、特に1〜1000nmの範囲内、好ましくは2〜750nmの範囲内、より好ましくは5〜600nmの範囲内、最も好ましくは10〜500nmの範囲内の粒子サイズを有することを特徴とする請求項1記載の複合粒子。
【請求項3】
前記複合粒子が、均質及び/若しくは安定した構造体に、有機ベース材料及び無機ベース材料を具備すること、且つ/又は、有機ベース材料が、無機ベース材料上に沈着されることを特徴とする請求項1又は2記載の複合粒子。
【請求項4】
該複合粒子において、無機ベース材料に対する特にワックスである有機ベース材料の重量比が、1:50〜200:1の範囲内、特に1:20〜100:1の範囲内、好ましくは1:1〜50:1の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の複合粒子。
【請求項5】
複合粒子の無機ベース材料は、無機ナノ粒子の形で存在し、無機ナノ粒子の粒子サイズが、0.5〜750nmの範囲内、特に1〜500nmの範囲内、好ましくは2〜250nmの範囲内、より好ましくは5〜150nmの範囲内、最も好ましくは10〜100nmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の複合粒子。
【請求項6】
前記複合粒子の無機ベース材料は、少なくとも1つの無機酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、硫酸塩、リン酸塩、硫化物、炭酸塩、窒化物、珪酸塩、炭化物、及び/若しくは金属、又はそれらの化合物の混合物又は組合せから形成されるか、その化合物を具備することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の複合粒子。
【請求項7】
前記複合粒子の無機ベース材料は、少なくとも1つの金属又は半金属、又は他の金属要素の少なくとも1つの酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、硫酸塩、リン酸塩、硫化物、炭酸塩、窒化物、珪酸塩及び/若しくは窒化物、又はそれらの化合物の混合物又は組合せから形成されるか、その化合物を具備することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の複合粒子。
【請求項8】
前記複合粒子の無機ベース材料は、アルミニウム、珪素、亜鉛、チタン、セリウム及び/若しくは鉄の少なくとも1つの酸化物、水酸化物及び/若しくは水酸化酸化物、アルカリ土類金属硫酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩又はリン酸ランタン、硫化カドミウム又は硫化亜鉛、アルカリ土類金属炭酸塩、窒化アルミニウム、又は窒化珪素、アルカリ土類金属珪酸塩、炭化珪素、カーボンナノチューブ又は銀、それら化合物の混合物又は組合せから形成されるか、その化合物を具備することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の複合粒子。
【請求項9】
前記複合粒子の無機ベース材料は、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化亜鉛および/若しくは二酸化チタンから形成されるか、その化合物を具備することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の複合粒子。
【請求項10】
前記複合粒子の有機ベース材料は、少なくとも一つのワックスから形成されるか、該ワックスを具備するものであり、該ワックスが、(i)植物性ワックス、動物性ワックスおよび鉱物性ワックスである天然ワックス、(ii)化学的変性ワックス、(iii)合成ワックス、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の複合粒子。
【請求項11】
前記ワックスが、合成ワックスであり、特にポリオレフィンベースのワックス、好ましくは酸化ポリオレフィンに基づくワックスであることを特徴とする請求項10記載の複合粒子。
【請求項12】
複合粒子の有機ベース材料、特にワックスは、無機ベース材料と相互作用することができ、特に物理学的及び/若しくは化学的結合を形成することができる官能基を具備することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の複合粒子。
【請求項13】
前記官能基が、極性基であり、特にO、N及び/若しくはSの群から選択されるヘテロ原子を有する基、好ましくはOを有する基であり、好ましくは水酸基、ポリエーテル基、特にポリアルキレンオキシド基、及び/若しくはカルボキシル基、最も好ましくはポリエーテル基及び/若しくは水酸基であることを特徴とする請求項12記載の複合粒子。
【請求項14】
前記複合粒子の無機ベース材料は、特にポリシロキサン基によって表面改質されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の複合粒子。
【請求項15】
有機ベース材料及び無機ベース材料の結合沈殿(「共沈」)によって取得されること、無機ベース材料上への有機ベース材料の沈着、特に無機粒子上、好ましくは無機ナノ粒子上へのワックスの沈着によって取得されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の複合粒子。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1つに記載の無機有機複合粒子を調整する方法であって、少なくとも1つのワックスを具備するか少なくとも1つのワックスからなる有機ベース材料及び無機ベース材料が、それらを具備する媒体から結合的に沈殿されること、且つ/又は、少なくとも1つのワックスを具備するか少なくとも1つのワックスからなる少なくとも1つの有機ベース材料が、無機ベース材料上に沈着され、その結果として、少なくとも1つのワックスを具備するか少なくとも1つのワックスからなる有機ベース材料と、無機ベース材料からなる複合粒子を生じることを特徴とする方法。
【請求項17】
無機ベース材料が、無機ナノ粒子の形で使用され、該無機ナノ粒子の粒子サイズが、0.5〜750nmの範囲内、特に1〜500nmの範囲内、好ましくは2〜250nm、より好ましくは5〜150nm、元も好ましくは10〜100nmの範囲内であること、且つ/又は、それに続く沈殿によって、複合粒子が、結果として1〜2000nmの範囲内、特に1〜1000nmの範囲内、好ましくは2〜750nmの範囲内、より好ましくは5〜600nmの範囲内、最も好ましくは10〜500nmの範囲内の粒子サイズを有することを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
開始材料は、無機ベース材料に対する有機ベース材料の重量ベースの比率が、1:50〜200:1の範囲内、特に1:20〜100:1の範囲内、好ましくは1:1〜50:1の範囲内であることを特徴とする請求項16又は17記載の方法。
【請求項19】
使用される無機ベース材料は、少なくとも1つの無機酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、硫酸塩、リン酸塩、硫化物、炭酸塩、窒化物、珪酸塩、炭化物及び/若しくは金属要素、又はそれら化合物の他の混合物若しくは組合せであり、特に少なくとも1つの金属若しくは半金属若しくはその他の少なくとも1つの金属の少なくとも1つの酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、硫酸塩、リン酸塩、硫化物、炭酸塩、窒化物、珪酸塩及び/若しくは炭化物、又はそれらの化合物の他の混合物又は組合せであり、好ましくは、アルミニウム、シリコン、亜鉛、チタン、セリウム及び/若しくは鉄の少なくとも1つの酸化物、水酸化物及び/若しくは水酸化酸化物、アルカリ土類金属硫酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩又はリン酸ランタン、硫化カドミウム又は硫化亜鉛、アルカリ土類金属炭酸塩、窒化アルミニウム又は窒化珪素、アルカリ土類金属珪酸塩、炭化珪素、カーボンナノチューブ又は銀、又はそれら化合物の他の混合物又は組合せであり、より好ましくは、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化亜鉛及び/若しくは二酸化チタン、特に好ましくは二酸化珪素、酸化亜鉛及び/若しくは二酸化チタン、最も好ましくは二酸化珪素であることを特徴とする請求項16〜18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
使用される有機ベース材料は、(i)特に植物性ワックス、動物性ワックス及び鉱物性ワックスである天然ワックス、(ii)化学的変性ワックス、(iii)合成ワックス、及びそれらの混合物の群から選択されるワックスであることを特徴とする請求項16〜19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
使用されるワックスは。合成ワックスであり、特にポリオレフィンベースのワックスであり、好ましくは酸化ポリオレフィンに基づくワックスであることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
使用される有機ベース材料は、無機ベース材料と相互作用し、そこに物理学的及び/若しくは化学的結合を形成することができる官能基を有するワックスであることを特徴とする請求項16〜21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
使用される有機ベース材料は、O、N及び/若しくはSの群から選択されるヘテロ原子、好ましくはOを有する基である極性基を具備するワックスであることを特徴とする請求項16〜22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
使用される有機ベース材料は、水酸基、ポリエーテル基、特にポリアルキレンオキシド基及び/若しくはカルボキシル基、好ましくはポリエーテル基及び/若しくは水酸基を具備するワックスであり、特に好ましくはポリエーテル基及び/若しくはヒドロキシル基官能化ワックスであることを特徴とする請求項16〜23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
さらなる含有物及び/若しくは付加剤が媒体に付加され、特に乳化剤、湿潤剤、抗酸化物質、安定化剤、中和剤、濃厚剤、分散剤及び殺生物剤及びそれらの混合物の群から選択されることを特徴とする請求項16〜24のいずれか1つに記載された方法。
【請求項26】
最初に、ワックス粒子のエマルジョンは、このエマルジョンに分散される無機粒子、特に無機ナノ粒子の存在において調製され、該ワックス粒子の融点以上の温度まで加熱され、その後該ワックス粒子の融点以下まで冷却されて、該ワックスが、無機粒子上に沈着され、無機有機複合粒子が形成されることを特徴とする請求項16〜25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
最初に、少なくとも1つのワックス溶液が、この溶液に分散される無機粒子、特に無機ナノ粒子の存在において調製され、その後沈殿剤が前記ワックス溶液に導入されて、該ワックスが前記無機粒子に沈着され、無機有機複合材料が形成されることを特徴とする請求項16〜25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
最初に、少なくとも1つのワックス溶液が調製され、その後無機粒子、特に無機ナノ粒子が分散され、ワックスの沈殿剤に導入され、前記ワックスが無機粒子に沈着して、無機有機複合粒子が形成されることを特徴とする請求項16〜25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
前記無機ベース材料、特に無機粒子、好ましくは、無機ナノ粒子は、ポリシロキサン基の適用によって表面改質されることを特徴とする請求項16〜28のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
請求項1〜15のいずれか1つに記載の複合粒子をフィラーとして使用すること。
【請求項31】
請求項1〜15のいずれか1つに記載の複合粒子を、塗装材料及び塗装系、特にペンキ、インキ等、すべての種類の分散、プラスチック、発泡体、化粧品、特にマニキュア液、接着剤、及びシーラントに、フィラーとして使用すること。
【請求項32】
力学的特性の改善、特に耐摩耗性の向上、好ましくは引っ掻き抵抗及び/若しくは摩耗抵抗の向上のための請求項30又は31に記載の使用。
【請求項33】
分散に基づいて、0.01〜50重量%の範囲内、好ましくは0.1〜30重量%の範囲内、より好ましくは0.2〜20重量%の範囲内、最も好ましくは0.5〜10重量%の範囲内の量で、キャリヤ媒体又は分散媒体に、請求項1〜15のいずれか1つに記載の複合粒子を分散させること。
【請求項34】
請求項1〜15のいずれか1つに記載の複合粒子を具備することを特徴とする塗装材料及び塗装系、特にペンキ、インキ等、プラスチック、発泡体、化粧品、特にマニキュア液、接着剤及びシーラント。

【公表番号】特表2011−518901(P2011−518901A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505388(P2011−505388)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002217
【国際公開番号】WO2009/129908
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(596089399)ビック−ケミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (21)
【Fターム(参考)】