説明

粒子状物質除去装置

【課題】 ディーゼルエンジン排ガス等に含まれる可燃性の粒子状物質を効率よく捕集し少ないエネルギーで燃焼除去し、排ガスを浄化するコンパクトな装置を与えること。
【解決手段】断熱性セラミック繊維でフィルタを作り、排ガスを濾過し捕集された粒子状物質でフィルタの圧力損失が高くなった場合には、ガス流を遮ってヒータ要素でフィルタ表面を加熱し、粒子状物質を燃焼除去する。フィルタが断熱性を持つことを利用し、フィルタの粒子状物質捕集面近くに断熱材を配置し、フィルタ表面と断熱材の間にヒータ要素を組み込む。加熱効率が高く、少ない熱エネルギーでフィルタの再生を行うことができる。断熱材をフィルタ兼用とすることによりコンパクト化できる。フィルタ材の上流側に帯電要素を配置することによって、フィルタ材の粒子状物質の捕集性能が高まり、圧力損失上昇速度が抑制され、粒子状物質の加熱効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンなどから排出されるガス中の粒子状物質(Particulate Matter:PM)を捕集し、除去する装置に関する。ディーゼルエンジンは大型自動車のエンジンとして広く採用されている。軽油、重油を燃料とし経済性に富む。ディーゼルエンジンはガソリンエンジンのような点火プラグがない。圧縮比が大きくて圧縮したエンジンに軽油、重油を霧状に吹き込むことによって発火させる。熱効率が高く、排気量が大きく、力が強く、長寿命であるという優れた長所がある。
【0002】
しかしディーゼルエンジンは排ガスが重大な環境汚染を引き起こす。ひとつは窒素酸化物NOxを排出するということである。もうひとつは未燃物(おもに炭素微粒子)を排ガスに含むということである。空気と燃料の比率によってこれらの排出量が変わる。空気量を増やすと窒素酸化物が増える。空気量を減らすと未燃物(粒子状物質:PM)の排出が増える。ここで排ガスに含まれる粒子状物質(PM)という言葉を用いるが、それは可燃性の粒子状物質である。主に未燃の炭素微粒子のことである。炭素微粒子の残留のため排ガスは黒みを帯びる。
【0003】
未燃物を減らすためには供給空気量を増やせばよいが、そうすると窒素酸化物が増えるからそれも限界がある。だからディーゼルエンジン排ガス中には必ず炭素が含まれる。排ガス中に炭素が含まれるのでこれを除去してから大気中へ放出しなければならない。
【0004】
排ガス中に炭素は微粒子固体として存在する。排ガスを目の細かいフィルタに通すと、粒子状物質(主に炭素微粒子)を濾過除去できる。フィルタに粒子状物質が溜まっていく。この過程を排ガスの浄化という。フィルタに粒子状物質をいつまでも溜めておくわけには行かない。圧力損失が増えてガス流がフィルタを通り難くなる。だからある程度溜まると、粒子状物質をフィルタから除去しなければならない。粒子状物質は主に炭素からなり、炭素は燃やすことができる。燃やすと二酸化炭素になってしまうので好都合である。そこである程度粒子状物質が溜まると燃焼除去する。これをフィルタの再生と言っている。
【0005】
炭素を燃やす時に新たに外部から空気を入れると、フィルタ、炭素粒子、雰囲気の温度が下がり、補償するため多大の加熱エネルギーが必要になる。そこで捕集された炭素を燃焼するとき、外部空気を入れず高温の排ガスに含まれる酸素を利用する。だからガス導入による温度下落はない。排ガスは燃焼後のガスであるから酸素は存在しないように思われるが事実はそうではない。5〜10%程度の酸素が排ガスに含まれる。残留酸素を使って炭素を燃焼除去する。それにより加熱エネルギーを節減できる。
【背景技術】
【0006】
ディーゼルエンジンから排出されるガス中の粒子状物質除去装置としては、セラミックハニカム構造体からなるフィルタと、セラミック繊維からなるフィルタを利用する装置が知られている。セラミックハニカム、セラミック繊維フィルタのいずれも排ガスをフィルタに通して粒子状物質を細孔や網目に引っかけて除去する(濾過)ものである。ある程度粒子状物質(炭素粒子など)が蓄積されると、燃焼し二酸化炭素にして大気中へ放散する。
【0007】
【特許文献1】特開2005−337153
【特許文献2】特開平08−312329
【0008】
特許文献1は、セラミックハニカム構造体からなるフィルタであって、通気性多孔質構造を持つハニカム壁面によって粒子状物質を濾過するものである。ハニカム壁面に捕捉される粒子状物質は、ガスを一時的に高温に加熱することによって酸化燃焼除去される。加熱燃焼手段としては、酸化触媒に燃料を吹き付け燃焼させるものや、電気ヒータで加熱燃焼させるものなどが提案されている。
【0009】
特許文献2は、セラミック繊維からなるフィルタとして、通気性を持つ薄い布状の高耐熱性の炭化珪素セラミック繊維の織物をプリーツ状に成形したものによって粒子状物質を濾過するものを開示している。
【0010】
特許文献2は、セラミック繊維に捕捉された粒子状物質が、セラミック繊維を挟み込むように配置された電気ヒータによる加熱によって酸化燃焼除去されるものを開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載のセラミックハニカム構造体を持つフィルタは、密度が高いので非常に高い粒子状物質(炭素粒子)捕集効率を有する。しかしセラミックハニカムフィルタは高価であって、破損しても容易に交換できない。そのため破損しないよう高い耐久性が要求される。セラミックハニカムフィルタは、硬質の壁面を多数持つので、捕捉した粒子状物質を加熱燃焼除去する際に、強い熱応力や局所的な過熱によって、亀裂が入ったり溶損する場合がある。そのようなセラミックハニカムフィルタの損傷を防ぐために、ガスの状態の監視、フィルタの粒子状物質捕集状況の予測、エンジン制御との複雑な連携などを必要とする。そのため、扱いが非常に難しいという問題があった。
【0012】
特許文献2に記載のセラミック繊維からなるフィルタは、柔らかい繊維からなるので、熱応力、局所加熱による亀裂発生といった問題がない。その点では扱い易い。しかし従来のセラミック繊維フィルタは、セラミックハニカム構造体からなるフィルタに比べて、粒子状物質捕集効率が低いという欠点がある。また捕集した粒子状物質を電気ヒータで加熱し酸化燃焼除去するために、大きい電力を要するという問題があった。
【0013】
本発明はそのような従来の問題を解決し、耐久性に優れ、捕集した粒子状物質の加熱燃焼除去に要する消費電力を著しく低減することのできる粒子状物質除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[第1の発明(フィルタ/ヒータ/断熱材)]
上記の課題を解決するための粒子状物質除去装置の第1の発明は、断熱性を有するセラミック繊維からなる通気性フィルタ材と、通気性フィルタ材の粒子状物質捕集面に近接する形で配置した断熱材と、通気性フィルタ材と断熱材の間に配置される粒子状物質加熱燃焼除去用のヒータ要素と、通気性フィルタ材へのガス流入を操作する開閉弁とからなり、開閉弁が開状態の時は通気性フィルタ材の加熱を行わず通気性フィルタで粒子状物質を捕集し、開閉弁が閉状態となって通気性フィルタ材へのガス流入が抑制されたときに、ヒータ要素で通気性フィルタ材の加熱を行って、通気性フィルタ材に捕集された粒子状物質を燃焼除去する。
【0015】
通気性フィルタ材の粒子状物質捕集面に近接する形で断熱材を配置することによって、ヒータ要素による通気性フィルタ材の粒子状物質捕集面の加熱効率が高まり、通気性フィルタ材に捕集した粒子状物質を、少ない熱エネルギーで燃焼除去することができる。
【0016】
[第2の発明(フィルタ/ヒータ/フィルタ)]
前記課題を解決するための粒子状物質除去装置の第2の発明は、断熱性を有するセラミック繊維からなる通気性フィルタ材と、通気性フィルタ材に捕集した粒子状物質を加熱燃焼除去するヒータ要素と、通気性フィルタ材へのガス流入を操作する開閉弁とからなり、2つ以上の通気性フィルタ材が粒子状物質捕集面を相対向する形で近接配置され、近接配置された通気性フィルタ材への粒子状物質捕集面の間にヒータ要素を配置し、開閉弁が開状態の時は通気性フィルタ材への加熱を行わずに通気性フィルタ材で粒子状物質を捕集し、開閉弁が閉状態となって通気性フィルタ材へのガス流入が抑制されたときに、ヒータ要素で通気性フィルタ材の加熱を行って通気性フィルタ材に捕集された粒子状物質を燃焼除去する。
【0017】
断熱性を有する通気性フィルタ材の粒子状物質捕集面を相対向する形で近接配置することによって、ヒータ要素による通気性フィルタ材の粒子状物質捕集面の加熱効率が高まり、通気性フィルタ材に捕集した粒子状物質を、少ない熱エネルギーで燃焼除去することができる。
【0018】
[第3の発明(帯電+濾過)]
前記課題を解決するための粒子状物質除去装置の第3の発明は、第1または第2の発明の粒子状物質除去装置において、通気性フィルタ材の上流側に粒子状物質を帯電させる帯電要素を設けたことを特徴とする。排ガス中の粒子状物質を予め帯電させることによって通気性フィルタ材の粒子状物質捕集効率を高める。またフィルタ材の圧力損失上昇速度を抑制する。
【0019】
さらに通気性フィルタ材に捕集される粒子状物質を通気性フィルタ材の上流側表面に局在化することができる。それによってヒータ要素による粒子状物質の燃焼効率が一層高くなり、より少ない熱エネルギーで通気性フィルタ材の再生が可能になる。
【0020】
[第4の発明(ρcdとk/dによる限定)]
前記課題を解決するための粒子状物質除去装置の第4の発明は、第1、第2、第3の発明の粒子状物質除去装置において、断熱性を有する通気性フィルタ材の熱伝導率k(単位W/mK)と厚さd(単位m)の比(熱伝導率を厚さで除したもの:k/d:単位W/mK)が50W/mK以下、より好ましくは20W/mK以下であり、且つ通気性フィルタ材の嵩密度ρ(単位kg/m)と比熱c(単位J/kgK)と厚さd(単位m)の積ρcd(単位J/mK)が次の(1)式を満たすものであるとする。
【0021】
ρcd≦600k/d[−ln{1−0.019(k/d)}] (1)
【0022】
より好ましくは(2)式を満たすものとする。
【0023】
ρcd≦600k/d[−ln{1−0.0475(k/d)}](2)
【0024】
ρcdはフィルタ単位面積当たりの熱容量である。k/dはフィルタの表裏面間での伝熱の容易さを示す。断熱性が重要なので伝熱困難な方がよい。だから伝熱容易さに対してk/d≦50W/mK或いはk/d≦20W/mKという伝熱困難の条件を課す。
【0025】
さらにフィルタの単位面積当たりの熱容量ρcdに対し上のような条件を付け、フィルタは熱容量が小さいものであることを要求する。フィルタは伝熱困難性と低熱容量を備えることが必要である。
【0026】
[第5の発明(生体溶解性繊維のフィルタ材への使用)]
前記課題を解決するための粒子状物質除去装置の第5の発明は、第1、第2、第3、第4の発明の粒子状物質除去装置において、通気性フィルタ材の組成が二酸化珪素(シリカ;SiO)、酸化マグネシウム(マグネシア;MgO)、酸化カルシウム(カルシア;CaO)を主たる成分とする生体溶解性繊維であることを特徴とするものである。
【0027】
[第6の発明(複数フィルタユニット、連続浄化、再生の巡回)]
前記課題を解決するための粒子状物質除去装置の第6の発明は、第1〜第5の発明の粒子状物質除去装置において、開閉弁と通気性フィルタ材の組み合わせを2つ以上持ち、ガスが供給される間、少なくとも1つの開閉弁が開状態となるよう、各開閉弁の開閉動作を制御することを特徴とするものである。フィルタユニットの内どれか1つは、排ガスを通しフィルタが粒子状物質除去をするので、連続的に排ガスの浄化を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の装置は、断熱性を有する通気性セラミック繊維をフィルタとして排ガス流路に設け、近接してヒータ要素を設け、ディーゼルエンジン排ガスなどに含まれる粒子状物質(PM:炭素微粒子など)を除去するものである。
【0029】
フィルタが目詰まりしてくれば、ガス流を遮ってヒータ要素でフィルタ表面を加熱し、粒子状物質を燃焼除去してフィルタを再生する。
【0030】
本発明の特徴は、断熱性を持つフィルタを利用し、フィルタの粒子状物質捕集面に近接する形で断熱材を配置し、フィルタ表面と断熱材の間にヒータ要素を組み込んだことである。ヒータ要素によって捕集された粒子状物質を燃やす。
【0031】
外部から新たに空気を入れず、排ガス中の酸素だけを使って粒子状物質(主に炭素微粒子)を燃やす。熱が逃げないのでフィルタの加熱効率が高い。少ない熱エネルギーの供給によってフィルタの再生を行うことができる。
【0032】
断熱材とフィルタを別体とすることもできる。或いは断熱材をフィルタ兼用とすることによって、コンパクト化を図ることもできる。
【0033】
またフィルタ材の上流側に帯電要素を配置することによって、排ガス中の粒子状物質を帯電させ、フィルタ材の粒子状物質捕集性能が高まる。それによって圧力損失上昇速度も抑制される。さらに粒子状物質の加熱効率も一層向上する。
【0034】
本発明によって少ない熱エネルギー(電気ヒータを使う場合は、少ない消費電力)でフィルタの再生が可能で、粒子状物質の除去性能に優れた粒子状物質除去装置を提供する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
[第1の発明について]
通気性フィルタ材に捕集した粒子状物質を電気ヒータで加熱し、燃焼除去する手法が、例えば特許文献2に開示されている。
【0036】
しかしながら、この方法では電気ヒータに多大な電力を要する。例えばディーゼルエンジンの排ガス浄化の用途にこの方法を適用すると、エンジンの燃費を著しく悪化させる。
【0037】
特許文献2の電気ヒータに多大の電力を要した原因は、熱効率の悪さにある。熱効率が悪い原因は、電気ヒータによって供給される熱エネルギーが、フィルタに捕捉された粒子状物質の加熱以外に散逸損失があり、この散逸損失を十分に下げることができなかったからである。
【0038】
本発明者らは、市販されている繊維径数ミクロン、嵩密度130kg/m,厚み15mm程度のセラミック繊維からなるブランケットがディーゼルエンジントラックの排ガスに含まれる粒子状物質の捕集に優れた適性を持つ事を実験的に見い出した。
【0039】
このセラミック繊維からなるブランケットは、ディーゼルトラックの排ガスを線速度1m/s以下で流通させると、圧力損失は1000Pa程度(0.01atm)であった。このブランケットの粒子状物質捕集効率はセラミックハニカム構造体(特許文献1)からなるフィルタには及ばないものの、炭化珪素セラミック繊維の織物をプリーツ状に成形したフィルタ(特許文献2)よりは粒子状物質捕集効率が高いということを実験的に見い出した。
【0040】
更にその上に、それにこのセラミック繊維からなるブランケットが、非常に良好な断熱性と耐熱性を持つということを見い出した。そのような性質に着目して本発明を成したものである。
【0041】
断熱性、耐熱性が良いフィルタを用いるのは、フィルタの再生を容易にするためである。
【0042】
本発明の粒子状物質捕集除去装置は、濾過そのものよりフィルタ再生に重点がある。
【0043】
低いエネルギー消費で簡単にフィルタ再生を行えるようにすることが本発明の目的である。
【0044】
本願発明の第一の発明では、通気性フィルタ材に断熱性を有するものを用い、且つ通気性フィルタ材に断熱材を近接配置し、該通気性フィルタ材と断熱材の間にヒータ要素を配置する。そうすることによって、ヒータ要素からの熱エネルギーが、通気性フィルタ材の粒子状物質捕集面の加熱以外に外部へ散逸することを抑制している。熱エネルギーの散逸損失が殆ど0である。ヒータエネルギーが殆ど全部粒子状物質の加熱燃焼に使われる。そのため通気性フィルタ材に捕集した粒子状物質をより少ない熱エネルギーで燃焼除去することができる。
【0045】
この作用について詳しく説明する。
実験の一例を図1、図2に示す。ディーゼルトラックの排ガスを流通させて粒子状物質(炭素微粒子など)を捕集したセラミック繊維フィルタ上に電熱線(ニクロム線)を設けた。電熱線に通電し粒子状物質を燃焼させた。そして粒子状物質燃焼除去の様子を調べた。
【0046】
図1は、粒子状物質捕集後のセラミック繊維フィルタ上に電熱線を設け、電熱線の上に断熱材を設けず、外部に露出した電熱線で粒子状物質を加熱する実験を示す。静止空気中でこの状態で加熱する。左が加熱初期を示す。フィルタ上の黒い部分が粒子状物質(炭素微粒子)である。右が加熱2分後の状態を示す。フィルタ表面は依然として黒い。多くの粒子状物質がフィルタ上に残留している。露呈したヒータでは熱の逃げのため温度が上がらず、粒子状物質を充分に加熱燃焼できないということである。
【0047】
図2は粒子状物質捕集後のセラミック繊維フィルタの上に電熱線を設け、更にセラミック繊維断熱材で電熱線を覆い、その状態で同じ電力を電熱線に与えフィルタを加熱した実験を示す。左は加熱初期の写真である。白っぽく見えるのは断熱材である。右は加熱2分後に断熱材を取って内部の状態を現したものである。電熱線の存在する中央部は白っぽくなっている。炭素微粒子(粒子状物質)が中央部では殆ど燃焼し消失したということを示す。粒子状物質が殆ど燃焼除去されている。
【0048】
何れも室内の静止空気中で行った。ヒータ電力と加熱時間も同一である。それなのに電熱線が露呈した図1では、炭素が殆どそのまま残り、電熱線を断熱材で覆い温度下落を防ぐ図2では、炭素微粒子は殆ど燃焼消去されている。
【0049】
この実験の結果から、セラミック繊維フィルタ・ヒータに近接してセラミック繊維を配置し、ヒータを両側からセラミック繊維で覆うようにすることによって熱の逃げを防ぎ、著しくヒータの熱効率が高くなり、少ない熱エネルギーでフィルタに捕集した粒子状物質を充分に燃焼除去できることを見い出した。
【0050】
ここで重要な事は、静止空気中であっても、ヒータの上に断熱材を置かなければ図1に示すように極めて熱効率が悪く、フィルタに捕集した粒子状物質を燃焼除去できないということである。空気自体は熱伝導率が低いが、対流現象によって簡単に熱の散逸が起こってしまうのである。
【0051】
従来技術では加熱効率を高めるため、フィルタに流入するガスを遮断して加熱することが行われてきた。加熱部位の周囲の空気が対流現象によって、熱容量が大きくて熱伝導性の高い金属や、熱伝導性は低くても熱容量の大きいバルク状のセラミックに熱を伝えてしまう。そのため加熱エネルギーの散逸損失が大きかった。
【0052】
[第1の発明について(フィルタ/ヒータ/断熱材)]
本発明では、断熱性を有するセラミック繊維からなる通気性フィルタ材の粒子捕集面に近接する形で断熱材を配置し、通気性フィルタ材と断熱材との間にヒータ要素を配置する。そのためガス流を抑制すれば熱の散逸が抑制される。より少ない熱エネルギーで、通気性フィルタ材の粒子状物質捕集面を効率よく加熱することができる。
【0053】
なお断熱材としては、熱容量の小さいものが好ましい。セラミック繊維や気孔率の高いスポンジ状のセラミックが適している。
【0054】
また断熱材は加熱時に一時的に通気性フィルタ材に密着させる処置を講じても良い。しかし必ずしも密着させる必要はない。断熱材と通気性フィルタ材の間隙の空気が、対流現象で間隙外に流出しにくい構造になっていればよい。実験によれば、断熱材と通気性フィルタ材の間隙が数cm程度でも、密着させた場合と遜色のない加熱特性が得られるということを確認した。
【0055】
[第2の発明について(フィルタ/ヒータ/フィルタ]
本発明の第2の発明は、通気性フィルタ材として用いるセラミック繊維の断熱性を利用して、第1の発明の断熱材を通気性フィルタ材に置き換えたものである。第1の発明よりもさらにコンパクトで熱利用効率の高い装置を実現することができる。
【0056】
[第3の発明について(帯電+濾過)]
本発明の第3の発明は、第1、第2の発明において、通気性フィルタ材の上流側に粒子状物質を帯電させる帯電要素を追加配置したものである。帯電要素によって排ガス中の粒子状物質が帯電すると、静電力によって、粒子状物質が通気性フィルタ材を構成するセラミック繊維に付着しやすくなる。
【0057】
帯電要素を負極性直流コロナ放電管とし、フィルタ材を市販されている繊維径数ミクロン、嵩密度130kg/m、厚み15mm程度のセラミック繊維からなるブランケットとして、排ガスを通し粒子状物質を捕集する実験をした。このフィルタに、線速度1m/s以下でディーゼルトラックの排ガスを流通させた。
【0058】
粒子状物質捕集効率は、セラミックハニカム構造体からなるフィルタ(特許文献1など)と同程度もしくはそれ以上になることを見い出した。これは粒子を帯電させると捕集効果が著しく増大するということである。帯電にはそれ以外にも2つの優れた効果がある。
【0059】
セラミック繊維からなる通気性フィルタ材は、粒子状物質の捕集量が増えるにつれ、ガスの流路が粒子状物質で埋められて狭まるため、圧力損失が上昇する。しかしこの発明では、帯電要素によって粒子状物質を帯電させるので、セラミック繊維からなる通気性フィルタ材の圧力損失、上昇速度が抑制されるということを見い出した。これは新規な効果の1つである。
【0060】
粒子状物質が帯電すると通気性フィルタ材に捕捉される際に、粒子状物質同士が静電力で適度に反発しながら通気性フィルタ材に堆積する。それで表面に局在し、そのためガス流路の狭窄が緩和されるものと考えられる。
【0061】
粒子状物質を捕集した後の、セラミック繊維からなる通気性フィルタ材の断面を観察した。
【0062】
粒子状物質を帯電要素で帯電しない場合は、深層濾過のような形、つまり粒子状物質がフィルタの奥(下流側)の方まで入り込む形でフィルタに捕集される。つまりフィルタの厚み方向で捕集粒子密度はほぼ同一である。
【0063】
粒子状物質を帯電要素で帯電する場合は、表面濾過のような形、つまり粒子状物質が主にフィルタの表面(上流側)で主に捕集される。フィルタの奥の方(下流側)まで入り込まないで、表面で殆どが捕獲されるのである。そのため圧力損失の上昇速度が遅くなる。
【0064】
それだけでなくフィルタ厚み方向に不均一な捕集粒子分布は、ヒータ加熱にとって極めて好都合であることが分かる。フィルタ表面(上流側)で高密度、裏面(下流側)で低密度の粒子分布になるが、ヒータは表面近くにあり、粒子とヒータ距離が接近し、微粒子はヒータによってより強力に加熱される。複雑な多孔質であるフィルタの目の奥にある微粒子に、ヒータの熱線(赤外)は輻射によっては届かない。断熱性の高いフィルタなので、熱伝導によってなかなか奥の微粒子まで熱が届かない。
【0065】
空気対流はフィルタの複雑な網目構造で抑制されるから、対流で熱が奥まで伝わらない。つまりフィルタ網目の奥に捉えられた微粒子は、フィルタの断熱性多孔性が却って仇になりヒータ加熱が困難になる。ところが排ガスを帯電させると、表面濾過になり微粒子は表面に局在し、輻射、伝導、対流によって熱が容易に微粒子に伝わるので、捕集微粒子のヒータ加熱が著しく有効になる。
【0066】
つまり粒子状物質は帯電要素によって帯電すると、ヒータ要素による加熱によって、最も温度が高くなるフィルタ表面(上流側表面)に局在化して捕集されることになる。そのためヒータ要素により粒子状物質の燃焼効率がより一層高くなり、より少ない熱エネルギーで炭素粒子などを燃焼消去でき、通気性フィルタ材の再生が可能になる。
【0067】
それらの作用効果は、排ガス中の粒子状物質を帯電させれば得られるものであって、帯電要素としては、コロナ放電が使いやすい。コロナ放電の他に放電現象によって空間中に帯電粒子を供給できる他の放電方式、例えば無声放電などでも良いし、また放射線や電子線などの他の帯電手段を用いることもできる。
【0068】
[第4の発明について(k/dとρckの範囲)]
本発明の第4の発明は、第1〜3の発明において、断熱性を有する通気性フィルタ材の熱伝導率k(単位W/mK)と厚さd(単位m)の比(つまり熱伝導率を厚さで除したもの;k/d)が50W/mK以下、より好ましくは20W/cmK以下であり、且つ通気性フィルタ材の嵩密度ρ(単位kg/m)と比熱(単位J/kgK)と厚さd(単位m)の積ρcdが前述の(1)式を満足し、より好ましくは(2)式を満足することを特徴とする。
【0069】
通気性フィルタ材の粒子状物質捕集面を、粒子状物質の燃焼除去に必要な温度まで加熱するのに要するヒータ要素の能力を考える上で、通気性フィルタ材の熱伝導率kと厚さdの比および通気性フィルタ材の嵩密度ρと比熱cとに関する要件は重要である。以下に詳しく説明する。
【0070】
まず粒子状物質の燃焼除去に必要な加熱温度について説明する。
【0071】
例としてディーゼルエンジン排ガス中の粒子状物質を除去する場合を考える。この場合、粒子状物質は主としてカーボンである。酸化燃焼除去するには550℃以上に加熱する必要がある。
【0072】
電気炉を用いて粒子状物質を捕集した通気性フィルタ材の小片を空気中で加熱し、加熱温度と処理時間の関係を調べた。その結果を図3、図4に示す。
【0073】
図3の写真は、加熱時間と加熱温度を変化させて加熱処理した後の通気フィルタ小片17個の外観である。加熱温度は800℃、700℃、650℃、600℃の4種類である。加熱時間は10分、7分、5分、3分、1分の5種類である。これら小片を温度、時間の順に縦横に並べて写真を撮ったものである。通気性セラミック繊維フィルタはもともと白い色をしているが、粒子状物質を濾過したフィルタは黒色の粒子状物質で真っ黒になってしまう。黒く見えるものは粒子状物質が大量に付着しているということである。
【0074】
加熱処理前は、フィルタの面にカーボンを主体とする粒子状物質が表面を覆っているので黒く見える。加熱処理後は、カーボンが燃焼してフィルタの地の白い色が見える。つまり白く見えるようになれば再生できており良い結果である。表面が黒いままだと、炭素粒子が大量に残存しフィルタが再生されていないということである。
【0075】
600℃の加熱温度では10分経っても小片は黒い。カーボンが全面に残っている。だから600℃では、10分加熱しても(炭素)粒子状物質の酸化燃焼除去効果は少ない。
【0076】
図4は横軸に加熱温度(℃)、縦軸に加熱時間(分)を取り、図3のフィルタの加熱処理を、その加熱時間、温度の座標点に対応させたものである。○は再生良好、△は中程度、×は再生不良であることを表す。
【0077】
図4の右下がり曲線が臨界線である。これより右上に加熱時間、加熱温度があるような処理によってフィルタ再生ができ、これより左下の加熱時間、加熱温度の処理ではフィルタ再生ができないということである。
【0078】
加熱温度650℃では加熱時間3分では黒く、加熱時間7分で白くなる。これから加熱温度650℃の場合は、7分程度で十分な酸化燃焼除去効果が得られることが分かる。
【0079】
加熱温度700℃では、1分では黒く、3分、5分、7分で白くなっている。この結果から700℃の加熱では3分程度で十分な酸化燃焼除去効果があることが分かる。
【0080】
800℃の加熱温度では1分、3分、5分、7分加熱でフィルタ片が白くなっている。800℃加熱の場合は1分でも十分な効果が上がる。実用的には700℃以上で数分(3分〜7分)程度の加熱時間とするのが良い。
【0081】
なお、セラミック繊維の材質を適切に選定することによって、900℃程度でも十分な耐久性を持つセラミック繊維が市販されている。900℃とすれば1分以下でフィルタ再生が可能である。
【0082】
ディーゼルトラックの排ガス温度は、アイドリング時で70℃程度、都市部走行時で平均200℃程度以下である。このような条件下で、粒子状物質の燃焼除去(フィルタ再生)を行うためには、500K(℃でも同じ)から600K程度の温度上昇量を数分程度維持できる加熱能力が必要となる。
【0083】
ディーゼルトラックなど車載用途で、ヒータ要素として電気ヒータを用いる場合、フィルタ再生に必要なヒータ消費電力は1kW程度以下であることが望ましい。また加熱時間は10分程度以下であることが望ましい。これより大きい電力、長い加熱時間とすると経済性において劣り望ましくない。
【0084】
そのような制約下で、前記のような粒子状物質の燃焼除去を行うためには、フィルタの材質と形状の選定が重要になる。
【0085】
通気性フィルタ材をシート状として最も簡単にモデル化して考える。
【0086】
フィルタ材の熱伝導率をk(単位W/mK)、フィルタの厚さをd(単位m)、フィルタ面積をS(単位m)とする。フィルタ材の粒子状物質捕集面A(上流側面)と他方の面B(下流側面)との温度差ΔT(単位K)があるとする。温度差ΔTがあって厚みがdなので温度勾配がΔT/dである。熱流は温度勾配に熱伝導率kを掛けたものkΔT/dである。フィルタの面積をSとするとそのS倍の熱流kSΔT/dが高温側Aから低温側Bへ流れる。そのような熱流を流すには、ヒータ要素がそれと同じ熱量を発生すればよい。
【0087】
だから、厚みd、熱伝導率k、面積Sで、表裏面温度差ΔTのフィルタを加熱するために、次式で表される発熱量Q(単位W)のヒータ要素が必要である。
【0088】
Q(W)=SkΔT/d (3)
【0089】
この式を変形して、ヒータ要素の単位面積あたりの必要な発熱量Q/Sが求められる。
【0090】
Q/S = kΔT/d (4)
【0091】
k/dに温度差ΔTを乗じた値に等しい発熱密度Q/S(単位W/m)を持つヒータ要素が必要である。
【0092】
ヒータ要素として電気ヒータを用いると仮定する。発熱密度を高くするとヒータの寿命が短くなることが一般に知られている。
【0093】
ヒータの耐久性の観点から、実用的な発熱密度を25kW/m以下、より好ましくは10kW/m以下にするのが望ましい。つまり
【0094】
Q/S = kΔT/d ≦ 25000W/m (5)
【0095】
とする必要がある。より好ましくは
【0096】
Q/S = kΔT/d ≦ 10000W/m (6)
【0097】
とする。これでヒータの発熱密度の上限が与えられる。
【0098】
前述の通り、ディーゼルエンジンの粒子状物質の燃焼除去のためには、実用上500K(℃でも同じ)程度の温度上昇が必要となる場合がある。そのような場合に対応するために、ΔTを500Kとおいてみる。その条件で決まるk/dは、より低い温度差ΔTにおいても(5)或いは(6)を満足することができる。だからΔT=500Kとして考えれば良い。
【0099】
k/d≦50W/mK (7)
【0100】
となるが、より好ましくは、
【0101】
k/d≦20W/mK (8)
【0102】
としたフィルタ材料、形状のものを選ぶべきである。
【0103】
つまり(7)、より好ましくは(8)で示される熱伝導率kと厚さdの比k/dを持つフィルタ材を採用することで、ヒータ要素の耐久性に対する要求を緩和することができる。それによってフィルタの実用的な加熱再生が可能となる。
【0104】
一方、通気性フィルタ材の粒子状物質捕集面を所望の温度に上昇するためには、有限の昇温時間が必要になる。
【0105】
この昇温時間を決めるのは、通気性フィルタ材の比熱c(単位J/kgK)とフィルタ材の嵩密度ρ(単位kg/m)とフィルタ厚みd(単位m)である。
【0106】
先と同様に通気性フィルタ材をシート状として簡単にモデル化し、フィルタの加熱面と非加熱面の温度差の時間変化ΔT(t)は次の式によって概略評価することができる。
【0107】
ΔT(t)=ΔT×{1−exp(−t/τ)} (9)
【0108】
ここで、
【0109】
ΔT=(Q/S)×(d/k) (10)
【0110】
τ=(D×ρ×c+d×ρ×c/2)×(d/k)(11)
【0111】
D:断熱材とフィルタの間の空気層の厚さ
ρ:空気の密度、c;空気の比熱
【0112】
Dをdと同程度とすれば、一般にD×ρ×cはd×ρ×c/2に比べて十分に小さい。空気の項を無視する近似で、τは、
【0113】
τ〜d×ρ×c/2k=dρc/2k (12)
である。
【0114】
(9)、(12)式から分かるように、τは昇温時間の時定数に相当する。τの3倍の時間が経過すれば、ΔT(t)はΔTの95%以上に達する。工学的にはほぼ熱平衡に達したものと考えることができる。そこで、前述の(7)式、(8)式の条件との整合性を考え、(9)式を次の(13)式のように書き換えても工学的な意味合いはほぼ同じである。
【0115】
ΔT(t)=ΔT×{1−exp(−t/τ)}/0.95 (13)
【0116】
前述のとおり、ディーゼルエンジンの粒子状物質の燃焼除去のためには、実用上500(K)程度の温度上昇が必要となるケースがあり、これに対応できる必要がある。
【0117】
また、実用的には加熱時間は10分程度以下とするのが好ましい。粒子状物質の燃焼のための高温維持時間を5分とすると、昇温時間は5分(=300秒)以下にできることが望ましい。つまり、(13)式において、t=300(秒)でΔT(t)が500(K)以上になることが望ましい。これを式で表現すれば、
【0118】
500(K)≧ΔT×{1−exp(−300(秒)/τ)}/0.95(14)
【0119】
(14)式を(10)式、(12)式を用いて書き換えると次式を得る。
【0120】
ρcd≦−2×(k/d)×300/ln{1−0.95×(k/d)・(500/(Q/S))} (15)
【0121】
(15)式の右辺にマイナスの符号が付くのは、右辺の分母の自然対数がマイナスの値になるためである。だから右辺は正である。この式の持つ物理的意味合いは、昇温時間を実用的な値に短くするためには、フィルタ材の単位面積当たりの熱容量に対応する嵩密度ρと比熱cと厚みdの積ρcdが(15)式で規定される数値以下であることが重要である、ということである。
【0122】
当然ながら、フィルタの温度上昇時間を短くするためには、フィルタの熱容量ρcdSが小さいことが望ましいのである。
【0123】
ところで、前述のとおり、発熱密度(ワット密度)Q/S(W/m)は実用的には25(KW/m)以下、より好ましくは10(KW/m)以下にするのが良い。従って(15)式は次のように書き換えることができる。
【0124】
ρcd≦−600×(k/d)/ln{1−0.019×(k/d)}(16)
【0125】
となる。右辺は正である。k/dが50W/mKより小さいので自然対数lnの真数は正である。より望ましくは
【0126】
ρcd≦−600×(k/d)/ln{1−0.0475×(k/d)}(17) という条件になる。
【0127】
これはk/dが20W/mKより小さいと自然対数lnの真数は正である。このようにして得られた(16)式が前掲の(1)式であり、(17)式が前掲の(2)式である。
【0128】
以上、要するに、フィルタ材としては、(7)式、(1)式を同時に満足する。また、より望ましくは、(8)式と(2)式を同時に満足するものを採用することによって、より少ない熱エネルギーの投入で効率よくフィルタの加熱再生が可能となる装置を提供することができるのである。
【0129】
[第5の発明について(生体溶解性繊維)]
本発明の第5の発明は、第1から第4の発明の粒子状物質除去装置において、通気性フィルタ材のセラミック繊維の組成が二酸化珪素(SiO:シリカ)、酸化マグネシウム(MgO:マグネシア)、酸化カルシウム(CaO:カルシア)を主たる成分とする生体溶解性繊維であることを特徴とするものである。
【0130】
セラミック繊維の組成を非アルミナ系で、二酸化珪素(シリカ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化カルシウム(カルシア)を主たる成分とする生体溶解性繊維とすることによって、装置が破損するなど何らかの原因で、フィルタ材のセラミック繊維の屑が装置外へ排出されても、生体への影響の少ない装置を提供する事ができる。
【0131】
[第6の発明について(複数のフィルタユニット;濾過・再生を順次切り替える)]
本発明の第6の発明は、第1〜第5の発明の粒子状物質除去装置において、開閉弁と通気性フィルタ材の組み合わせを2つ以上持ち、ガスが供給される間、少なくとも1つの開閉弁が開状態になるよう、各開閉弁の開閉動作を制御することを特徴とする。
【0132】
これにより、通気性フィルタ材の加熱再生時にガスの供給を停止したり、ガスを未処理のままバイパスする必要がなくなり、連続的に粒子状物質の捕集と通気性フィルタ材の再生が可能となる。
【実施例1】
【0133】
[実施例1(第1の発明の実施例)]
[実施例1−1(図5、図6)]
第1の発明の第1の実施例を図5、図6に示す。図5は排ガスを濾過浄化する状態を、図6はフィルタ再生の状態を示す。筐体1はガス入口2と、フィルタ3と、ガス出口4を有する。筐体1の中心線に沿って、ガス入口2から粒子状物質Zを有する排ガスGが流入する。筐体1の内部の空間は前室12と後室13があり隔壁14、64で仕切られる。前室12はガスを流入させるだけの空間である。後室13にはフィルタ3、断熱材6、ヒータ7などが設けられ、濾過作用、再生作用を実行する部分である。
【0134】
隔壁14、64の間はフィルタ入口17となっている。フィルタ入口17の直前には開閉弁5があり、フィルタ入口17を開閉することによって、ガスを流通・遮断している。フィルタ3ではガスの流れが軸線と直交する方向に変わる。フィルタ3は厚みd、幅w、長さlを持ったセラミック繊維Fを長手方向(軸線)に設けたものである。セラミック繊維の前端は隔壁14に、後端は隔壁15によって支持される。フィルタの通気面は、通気性を持ち適度な強度を持つ支持材、例えば金網やパンチングメタルなどによって下流側から保持される。なお、熱容量が小さく、フィルタ外への伝熱ロスが少ない通気性材料、たとえば目が粗くて線径の細い金網などをフィルタ上流側の面に置いて、長期使用時の繊維のほつれを防ぐようにしてもよい。
【0135】
フィルタ3に対向してセラミック繊維Fによる断熱材6が長手方向に伸びるよう設けられる。断熱材6の前端は隔壁64に、後端は隔壁65によって支持される。フィルタの通気面は、通気性を持ち適度な強度を持つ支持材、例えば金網やパンチングメタルなどによって下流側から保持される。なお、熱容量が小さく、フィルタ外への伝熱ロスが少ない通気性材料、たとえば目が粗くて線径の細い金網などをフィルタ上流側の面に置いて、長期使用時の繊維のほつれを防ぐようにしてもよい。
【0136】
フィルタ3も断熱材6も同様な材質のセラミック繊維で構成できる。断熱材6はガスが通らず濾過作用はない。断熱作用だけである。フィルタ3はガスが通り濾過作用がある。フィルタ3は断熱作用もある。
【0137】
フィルタ3と断熱材6の間に、両者に近接して軸線方向に伸びる電気ヒータ7が設けられる。電気ヒータ7は、外部のヒータ電源8からコードを通じて給電される。途中にスイッチ9がある。フィルタ3と断熱材6で挟まれる狭い上流側流路18が軸線方向にできる。上流側流路18の入口17が開閉弁5によって開閉される。フィルタ3の外側の空間は軸線に平行な下流側流路19となっている。
【0138】
開閉弁5が開いている場合、ガス入口2から入った排ガスGは前室12で広がり、フィルタ入口17から上流側流路18に入る。断熱材6の方は封鎖されているので流れない。排ガスGはフィルタ3の多孔質繊維の中へ入る。フィルタ3を軸線と直交する方向に通り抜ける。粒子状物質Zはフィルタ3のセラミック繊維の間に濾過されて残る。粒子状物質Zの除去された浄化ガスRは下流側流路19に入り、軸線と平行に流れを変えてガス出口4から出ていく。
【0139】
この例ではヒータ熱を閉じ込めるため、粒子状物質Zを捕集するシート状の通気性セラミック繊維フィルタ3に対向して、シート状の断熱材6を近接配置する。断熱材6とセラミック繊維フィルタ3の狭い間隙に電気ヒータがあるので、加熱が効率的に行われる。断熱材6とフィルタ3の間隙は1cm〜5cm程度(0.01m〜0.05m)である。その間隙の上流側流路18を通ってガスがフィルタ3に流れるようになっている。
【0140】
排ガスGを濾過するときは開閉弁5を開く。開閉弁5が開状態のときはフィルタ3に排ガスGが流れ、排ガスG中の粒子状物質Zはフィルタ3に捕集され、ガスが浄化される(図5)。このとき電気ヒータには通電しない。
【0141】
やがてフィルタ3は粒子状物質Zによって目詰まりし、圧力損失が増大していく。そこで定期的或いは随時、粒子状物質Zをフィルタから除去する必要がある。粒子状物質Zは炭素微粒子を主体とし可燃性である。燃やすことによって除去できる。フィルタ3に捕集した粒子状物質Zを加熱燃焼除去する時は、開閉弁5を閉状態にし、フィルタ入口17を閉ざす。
【0142】
ガスの流れを遮断してからスイッチ9を閉じて、電気ヒータ7に通電する(図6)。ヒータによって上流側流路18やフィルタ3の温度が500K近く上昇する。フィルタ3、断熱材6があるので電気ヒータ7の熱は逃げず、有効に粒子状物質Zを加熱することができる。フィルタ3に捕集された粒子状物質Zが加熱燃焼し除去される。燃焼ガスUがガス出口4から排出される。これをフィルタの再生という。
【0143】
フィルタの再生が完了したら、スイッチ9を遮断し電気ヒータ7への通電を停止する。開閉弁5を開状態に戻し、再び排ガスGをフィルタ3へ流し、排ガスGから粒子状物質Zを捕集できるようにする。このようにフィルタ3は粒子状物質捕集と加熱再生の過程を繰り返す。
【0144】
フィルタの加熱再生のタイミングは用途に応じて、例えばタイマー制御で所定の時間で自動的に加熱再生を行うようにしてもよいし、或いはフィルタの圧力損失やフィルタの上流側の圧力を検出し、その値が設定値以上になれば再生するようにしてもよい。
【0145】
また加熱時間は、ガス温度と粒子状物質の堆積量や燃焼温度に応じて適宜選定すればよい。フィルタ温度やガス温度を検出して加熱時間を制御するようにしてもよい。
【0146】
電気ヒータの制御としては、電流制御、オンオフ制御など一般的に知られている手法を採用することができる。
【0147】
フィルタ材には、セラミック繊維からなる高温用耐火断熱繊維が有用である。例えば、新日化サーマルセラミックス株式会社の商品名SCブランケット1260(主成分はアルミナと二酸化珪素(シリカ)、最高使用温度1260℃、平均繊維径3μm、比熱1.05kJ/kgK、嵩密度130kg/cm、平均温度600℃における熱伝導率0.12W/mK)等を用いることができる。
【0148】
フィルタ材としては、その他同社の他のセラミック繊維ブランケットであるSCブランケットSC1400やSC1600M、イソライト工業株式会社のセラミック繊維ブランケットであるイソウール1260ブランケット、イソウール1500エースブランケット、イソウールウエットフェルトなどといったものが適用できる。
【0149】
これらは1000℃以上の耐熱性を持ち、平均繊維径は3μm〜5μm程度、熱伝導率は0.05W/mK〜0.6W/mKで、嵩密度は70kg/m〜160kg/m程度である。
【0150】
断熱材にもフィルタ材と同様に高温用耐火断熱繊維が有用である。フィルタ材と同じ素材を断熱材として用いることもできる。通気性を重視せず断熱性を重視するなら、フィルタ材と異なる種類の高温用耐火断熱繊維を用いることもできる。
【0151】
セラミック繊維からなる断熱用のブランケットは、ガス流の圧力で変形しやすいので、金網などで保持するのがよい。なお、フィルタのガス出口側であれば、金網など熱伝導や熱容量の比較的大きな素材を使用しても、フィルタそのものが断熱性を持つので特に影響はない。
【0152】
またガス流の圧力による変形を抑制する方法として、フィルタ材を一旦600℃以上で高温処理してから使用すると変形量が少なくなる。
【0153】
粒子状物質の捕集性能の観点からは、フィルタ部のガスの線速度が3m/s以下、より好ましくは1m/s以下となるようにガス流量に応じてフィルタ面積を設定すると良い。
【0154】
例えばディーゼルエンジンの排ガスの微粒子を除去する用途の場合、ディーゼルエンジンの排気量を5L(リットル:0.005m)とし、その代表的なエンジン回転数が2000rpmであったとし、そのときの排気温度が200℃であったとする。排気風量は約8m/min(=0.134m/s)となる。フィルタ部のガス流の線速度を1m/s程度にするには、フィルタ面積を0.134m程度にすればよい。
【0155】
もしもディーゼルエンジンの排気量が5L(リットル)で、その代表的なエンジン回転数が3000rpmで、そのときの排気温度が450℃であったとすると、排気風量は約18.5m/min(=0.308m/s)となる。フィルタ部のガス流の線速度を1m/s程度にするには、フィルタ面積を0.308m程度にすればよい。
【0156】
ディーゼル自動車の排気風量が時間的に変動する場合は、排気風量が最大となる条件にフィルタ面積を合わせるのが1つの方法である。或いは、各排気風量における微粒子含有量を必要浄化性能に応じて、代表的な排気風量を適宜選定してフィルタ面積を設計すればよい。
【0157】
またフィルタの厚さdは5mm以上(0.005m)とするのが良い。特に12.5mm〜25mm(0.0125m〜0.025m)程度のものを使用するのが好ましい。
【0158】
フィルタ単位面積当たりの電気ヒータ投入電力と、加熱10分後のフィルタ表面温度の上昇量の関係を測定したものを図22に示す。横軸はフィルタ単位面積当たりの電気ヒータ電力(kW/m)で、縦軸は加熱後10分でのフィルタ表面の温度上昇(K)である。フィルタ面積1m当たり3kWの電力投入で温度上昇量は500Kに達する。フィルタ面積1m当たり6kWの電力投入で温度上昇量は700Kに達する。これはフィルタと断熱材で電気ヒータを挟みこんでいるからである。
【0159】
もしもフィルタ表面を開放空間にすると、空気による自然対流伝熱による熱損失のため、6kWの電力投入でも温度上昇量は200Kにも達しない。
【0160】
フィルタ材と断熱材との間の空間から熱が放散するのを防ぐために、フィルタ材と断熱材以外の部分、例えば開閉弁の内側に高温用耐火断熱繊維などの断熱材を取り付けても良い。
【0161】
電気ヒータとしてはニクロム線が適している。ニクロム線は500℃を越える高温域でも耐久性に優れ、又ディーゼルエンジンの排ガス中でも腐食しにくい。ニクロム線は直線状、コイル状、網目状など種々の形状のものを利用する事ができる。使用するヒータ電源の出力特性との兼ね合いで所望の電気抵抗値になるように、また、局部的に異常加熱とならないよう形状、線径を適宜選定すればよい。またタングステン、タンタルなどを電気ヒータとすることもできる。
【0162】
この例ではヒータ要素として電気ヒータを用いたが、これ以外にバーナーや高温空気吹き込みなど他の手法を用いることもできる。
【0163】
[実施例1−2(図7、図8)]
本発明の第1の発明のもう1つの実施例を図7に示す。これは図5に示したものと基本構成は同じであるが、フィルタに近接配置する断熱材と開閉弁を1つの部材で兼ねるようにしたものである。断熱材をフィルタに近接配置する必要があるのは、フィルタを加熱再生する時だけであるので、そのような構成としてもよい。
【0164】
図7は濾過時、図8は再生時を示す。筐体1の中の後室13にはフィルタ3が流れと直交する方向に伸びるよう設けられる。フィルタ3はセラミック繊維Fよりなる。隔壁14、14によって両側が挟まれて支持される。フィルタの通気面は、通気性を持ち適度な強度を持つ支持材、例えば金網やパンチングメタルなどによって下流側から保持される。なお、熱容量が小さく、フィルタ外への伝熱ロスが少ない通気性材料、たとえば目が粗くて線径の細い金網などをフィルタ上流側の面に置いて、長期使用時の繊維のほつれを防ぐようにしてもよい。
フィルタ3は熱伝導率が低く、ある程度の厚みを持つセラミック繊維で作られる。
【0165】
フィルタ3の前方の前室12には、フィルタ3に対向するように移動式の断熱材6が設けられる。断熱材はセラミック繊維Fよりなる。断熱材6を凹型金属製の保持体52が支持する。保持体52には操作棒53が固定される。操作棒53は、筐体1の滑り軸受54を突き抜けて外部から進退操作できる。操作棒53によって断熱材6が前後し、流路が開閉されるので、この断熱材6、操作棒53、保持体52は開閉弁5となる。
【0166】
図7のように操作棒53が引かれ、断熱材6がフィルタ3から離れると、流路が開き排ガスGがフィルタ3へ流入し、粒子状物質Zが濾過される。濾過された浄化ガスRはガス出口4から出ていく。このときは電気ヒータ7には通電しない。
【0167】
圧力損失が増えると粒子状物質を除去する再生を行う。フィルタ再生の場合は、操作棒53を押し込み、断熱材6を電気ヒータ7の直近まで押し込む。電気ヒータ7は、セラミック繊維よりなるフィルタ3と断熱材6で包囲される。スイッチ9を閉じ電気ヒータ7に通電する。ヒータ熱によってフィルタに付着した粒子状物質Zが燃焼し二酸化炭素になる。燃焼ガスUはガス出口4から排除される。
【実施例2】
【0168】
[実施例2(第2の発明の実施例:断熱材・フィルタ兼用:図9、図10、図11)]
本発明の第2の発明の実施例を図9に示す。これは通気性フィルタ材が断熱性を持つことを更に活用したものである。実施例1の第1例(図5、図6)における断熱材6を通気性フィルタ材3そのものとする。図5、6の装置と同様の効果を持ちながら容積当たりのフィルタ面積をより大きく取れる。通気性フィルタ材は図示する断面を持つ平板構造でも良い。また同軸円筒構造であっても良い。
【0169】
また、フィルタ部の構造を図11に示すような二重円筒構造とすることによって、容積当たりのフィルタ面積を大きくとることも可能である。
【0170】
図9は濾過の状態を、図10は再生の状態を示す。
【0171】
図9、10において、縦長の筐体1はガス入口2、ガス出口4、前室12、後室13を持つ。後室13には長手方向に伸び互いに対向する2つのフィルタ3、3が設けられる。フィルタ3は熱伝導が悪く熱容量が小さいセラミック繊維Fによって構成される。前端は隔壁14に、後端は隔壁15によって支持される。フィルタの通気面は、通気性を持ち適度な強度を持つ支持材、例えば金網やパンチングメタルなどによって下流側から保持される。なお、熱容量が小さく、フィルタ外への伝熱ロスが少ない通気性材料、たとえば目が粗くて線径の細い金網などをフィルタ上流側の面に置いて、長期使用時の繊維のほつれを防ぐようにしてもよい。
隔壁14の中央はフィルタ入口17となっている。これを開閉する開閉弁5が設けられる。対向するヒータ3、3によって挟まれる中央空間には電気ヒータ7が設けられる。ヒータ電源8はコード、スイッチ9を介して電気ヒータ7に繋がっている。
【0172】
浄化の過程は図9に示す状態になっている。粒子状物質Zを含む排ガスGが、ガス入口2、前室12、フィルタ入口17を通りフィルタ3の中央空間に到る。ここから両側のフィルタ3、3のセラミック繊維多孔質空間を通り抜ける。粒子状物質Zが除去される。粒子状物質Zは次第にフィルタ3、3に溜まっていく。浄化ガスRはガス出口4から出ていく。
【0173】
再生の過程は図10に示す状態になっている。開閉弁5によってフィルタ入口17を閉じる。スイッチ9を閉じる。ヒータ電源8から電力が電気ヒータ7に供給される。ヒータが強く加熱される。温度が上がり粒子状物質Zが酸化燃焼する。燃焼ガスUはガス出口4から排除される。
【0174】
これは図5、6の断熱材6を持つフィルタ3としたものである。同じ材料だから保温効果は同じである。このようにするとフィルタの断面積を約二倍に増やすことができる。
【0175】
フィルタ3、3の形状は図5、6のように対向平板形状(厚みd,幅w、長さl)でもよい。
【0176】
或いは円筒形のフィルタとしてもよい。円筒形のフィルタの中心に電気ヒータ7を設けるようにできる。そのような構造であれば断面図は図9、10と同じになる。
【0177】
或いは2重円筒形のフィルタとすることもできる。それを図11に示す。図11の(1)は中心線に沿う縦断面図、(2)は中心線直交断面図である。内円筒フィルタ3と、円筒電気ヒータ7、外円筒フィルタ3よりなる二重構造である。フィルタ入口17は円環状となる。上流側流路18,18も円環状となる。下流側流路19、19は内外に2つできる。
【実施例3】
【0178】
[実施例3(第3の発明の実施例;帯電):図12、図13、図14、図15]
これらはそれぞれ図5、6の濾過装置の上流側に帯電要素として、コロナ放電部を設けたものである。ガス中でコロナ放電を発生させ、ガス中にイオンを供給し、このイオンが粒子状物質に付着することによって粒子状物質が帯電する。コロナ放電を発生させるため、装置内にコロナ放電電極を配置する。コロナ放電電極に高電圧を印加することによって、ガス中に不平等電界が形成される。コロナ放電電極近傍でガスが電離し、イオンが供給される。そのため捕集効率が著しく増強される。
【0179】
[実施例3−1(図12、図13)]
本発明の第3の発明の第1の実施例を図12、図13に示す。図12は濾過状態を、図13は再生状態である。これは図5、6の濾過装置の前室12に帯電要素を設けたものである。筐体1の後室には、隔壁14、15によって保持される長手方向に伸びるフィルタ3と、これに対向する断熱材6が設けられる。フィルタ入口17を開閉する開閉弁5があること、フィルタ3と断熱材6の間に近接して電気ヒータ7が設置される点は図5、6の装置と同じである。
【0180】
異なる点は前室12に帯電要素24を新たに設置したことである。外側のコロナ放電電極22を中央部で高電圧碍子23で絶縁支持し、内部電極には高電圧電源20から負の直流高電圧が印加される。
【0181】
ガス入口2から導入された粒子状物質Zを含む排ガスGは、帯電要素によって帯電し、帯電した粒子状物質含有ガスG’となる。これがフィルタ入口17からフィルタ3、3へと流入する。フィルタでの粒子状物質の濾過や、流路を閉じ電気ヒータで加熱し粒子状物質を燃焼除去する再生は、図5、6の装置と同様である。
【0182】
[実施例3−2(図14、図15)]
本発明の第3の発明の第2の実施例を図14、図15に示す。これは図9、10の濾過装置の前室12に帯電要素を設けたものである。筐体1の後室には、隔壁14、15によって保持される長手方向に伸びる2つのフィルタ3、3があり、その間に電気ヒータ7がある。フィルタ入口17に開閉弁5があり、濾過と再生を切り替える。そのような点は図9、10の装置と同じである。
【0183】
異なる点は前室12に帯電要素24を新たに設置したことである。外側のコロナ放電電極22を中央部で高電圧碍子23で絶縁支持し、内部電極には高電圧電源20から負の直流高電圧が印加される。
【0184】
ガス入口2から導入された粒子状物質Zを含む排ガスGは帯電要素によって帯電し、帯電した粒子状物質含有ガスG’となる。これがフィルタ入口17からフィルタ3、3へと流入する。フィルタでの粒子状物質の濾過や、流路を閉じ電気ヒータで加熱し粒子状物質を燃焼除去する再生は、図9、10の装置と同様である。
【0185】
コロナ放電電極22としては、細い線電極や鋭い突起構造を持った板を組み合わせものなど一般的なものが使用できる。
【0186】
ディーゼルエンジンの排ガス処理など、高温・振動・腐食性の環境で用いる場合は、ステンレスなど耐熱性、耐食性に優れた金属で突起構造を持たせたものを用いて、コロナ放電電極とするのがよい。
【0187】
電極間距離を20mm〜50mm程度(0.02m〜0.05m)、突起先端の曲率半径を0.5mm以下、好ましくは0.2mm程度以下とすれば、20kV以下の印加電圧によって実用的なコロナ放電を発生させることができる。
【0188】
印加電圧の形態としては、直流電圧、交流電圧、パルス電圧などを用いることができる。その中でも負極性の直流電圧が比較的帯電効果が大きい。
【0189】
コロナ放電で消費する電力としては、排気量5L(リットル)のディーゼルエンジンで50W程度以下の消費電力で後述するような効果を得ることができる。
【0190】
上流側に負極性直流コロナ放電によるコロナ放電部を配置したときを例にして、帯電要素を設けた場合の効果を述べる。
【0191】
排気量5L(リットル)のディーゼルエンジンを回転数2000rpmで運転したときの排ガスをフィルタで濾過したとき、捕集した粒子状物質の形態が、帯電要素の有無によってどのように変化するのかを調べた。その結果を図24、図25に示す。
【0192】
帯電要素には、コロナ放電発生用高電圧給電碍子一本の周囲に、内径約60mm(0.06m)の円管を8本並列に配置し、各円管の中心軸上に有効放電長約80mm(0.08m)の突起付き電極(突起先端の曲率半径0.2mm)を配置した同軸円筒コロナ放電管を用いた。円管は接地電位とした。突起付き電極には13kV〜15kV程度の負極性の直流電圧を印加して、円管内に負コロナ放電を発生させる。コロナ放電電流は約3mAである。
【0193】
帯電要素がない場合、粒子状物質はフィルタの奥の方まで入り込んで捕集される。フィルタは深層濾過という形態で粒子状物質を捕捉する。
【0194】
帯電要素がある場合、粒子状物質はフィルタの表面で捕捉されている。フィルタは表面濾過という形態で粒子状物質を捕捉する。このようになる理由については既に説明した。
【0195】
フィルタを加熱再生する場合、フィルタ内の温度分布は加熱面側が最も高く、下流側へいくに従って温度が低くなる。帯電要素を設けた場合には、粒子状物質は加熱時に温度が高い方の面に集中して捕捉される。図3、4に示すように、より短い加熱時間でフィルタを再生することが可能となる。フィルタ再生に必要な熱エネルギーがより少なくて済む。
【0196】
図26は、帯電要素の有無による濾過経過時間とフィルタ圧力損失増大の関係を示すグラフである。横軸は時間、縦軸はフィルタ圧力損失である。破線は帯電させない場合を、実線は帯電させた場合を表す。図26に示すように帯電要素を設けることによって、フィルタの圧力損失上昇速度が抑制される。そのため再生サイクルをより長くすることができる。
【0197】
時間平均で考えると、フィルタ再生に要する熱エネルギーを更に低減することができる、ということである。
【0198】
図27はガス中の粒子状物質の平均粒径と粒子密度分布の測定結果を示す。横軸は粒状物の平均粒径(nm)、縦軸はその粒径の濃度分布(cm−3)である。いずれのガスも粒径が70nm〜90nm程度が最も多い。粒径が増大すると共に濃度も減少する。
【0199】
処理前の排ガスGで80nm直径の粒子濃度は4×10cm−3である。帯電要素なしのフィルタで濾過した場合、80nm直径の粒子濃度は2×10cm−3である。帯電要素があるフィルタで濾過した場合、80nm粒径の濃度は10cm−3である。帯電要素のある装置は帯電要素のない装置に比べて約1/20に粒子数が減っている。つまり帯電要素を設ける事によって粒子状物質の捕集効率が飛躍的に向上する。
【実施例4】
【0200】
[実施例4(第4の発明の実施例)]
第4の発明の実施例について説明する。
これは上記の実施例1〜3において、断熱性を有する通気性フィルタ材の熱伝導率k(単位W/mK)と厚さd(単位m)の比k/d(単位W/mK))が50W/mK以下((7)式)であり、より好ましくは20W/mK以下((8)式)であり、且つ通気性フィルタ材の嵩密度ρ(単位kg/m)と比熱c(単位J/kgK)と厚さd(単位m)の積ρcd(単位J/mK)が(1)式、より好ましくは(2)式を満足することを特徴としている。この(1)式、(2)式の持つ意味については既に説明した通りである。
【0201】
横軸にk/dを、縦軸にρcdを取って、(7)式と(1)式および(8)式、(2)式の条件式を図示したものを図33、図34に示す。
【0202】
図3、4に示したような高温域でも使用可能な代表的な耐熱材料の嵩密度ρ、比熱c、熱伝導率kを表1に示す。物性値は温度依存性を持つので、ここではカタログなどに記載されている500℃ないし1000℃での代表的な数値を示している。必ずしも本発明の動作温度での物性値ではない。
【0203】
表1の数値を用いて各材料のk/dとρcdの関係を計算したものを図33、図34に重ねてプロットしている。
【0204】
フィルタ厚さd=0.01mの場合のものを図33に示す。フィルタ厚さd=0.05mの場合のものを図34に示す。これらの図によって、各フィルタの適正をより簡便に評価することができる。
【0205】
【表1】

【0206】
図33、図34は、表1の材料A、B、C、D、E、F、Gにおいてd=0.01m、d=0.05mとした時のk/dとそれに対するρcdの値を示したものである。横軸はk/d(W/mK)、縦軸はρcd(J/mK)である。上の逆L字型のグラフは(1)式の不等式からきたρcdの上限を与えるもの。下の逆L字型のグラフは(2)式の不等式によりρcdの上限を与えるものである。これらのグラフの縦の部分は、k/d≦50W/mK、k/d≦20W/mKというk/dの限界を表現している。
【0207】
図33、図34に示すように、アルミナ(A)や石英ガラス(B)のバルク材料では(7)式と(1)式とを同時に満足することができない。嵩密度が大きすぎ熱伝導率が高すぎるからである。これらのバルク材料に通気性を持たせる加工をしてもなお嵩密度、熱伝導率が大きく、本発明のフィルタには適さない。
【0208】
バルク材料では本発明のフィルタにならない。バルク材料に比べて格段に熱伝導率が小さく、嵩密度の低い素材でなければ本発明のフィルタとして不適である。そのような要件を満足する代表的な素材がセラミック繊維である。
【0209】
セラミック繊維には炭化珪素(SiC)系、アルミナ・シリカ・ボリア系、アルミナ・シリカ系、シリカ系、などのいくつかの種類がある。
【0210】
炭化珪素系セラミック繊維(C)は比較的熱伝導率が高く、フィルタの厚みが薄いと温度上昇に必要なワット密度が高すぎて実用的でなくなる。炭化珪素系セラミック繊維では、フィルタの厚みを0.05m程度以上に厚くしないと本発明の要件を満足することができない。
【0211】
炭化珪素系セラミック繊維でも、繊維の組成を変える事によって熱伝導率が表1に示した値よりも小さく、嵩密度が同程度以下の通気性に優れた素材にすることができれば、フィルタの厚みをより薄くすることができ、よりコンパクトな装置を構成することができる。
【0212】
アルミナ・シリカ・ボリア系セラミック繊維織布(D)は熱伝導率は低いが、嵩密度が大きいため昇温時間がやや長くなる。アルミナ・シリカ・ボリア系セラミック繊維で繊維の加工法を変えるなどして、表1に示した値と同程度以下の熱伝導率で、より嵩密度の低い通気性素材を作ることができれば、昇温時間をより短くすることができ、より熱効率のよい装置を構成することができる。
【0213】
アルミナ・シリカ系セラミック繊維ブランケット(E)やシリカ系セラミック繊維ブランケット(F、G)は表1の例に示したように、熱伝導率が低く、嵩密度は小さい。フィルタ厚さd=0.01m〜0.05mの範囲でも、十分に本発明の要件を満足することができる。特により好ましい条件である(8)式と(2)式の条件をも満たす事ができる。
【0214】
従って加熱再生に要する熱エネルギーの低減という観点と、装置のコンパクト化という観点で、アルミナ・シリカ系セラミック繊維ブランケット(E)やシリカ系セラミック繊維ブランケット(F、G)は、炭化珪素系セラミック繊維フェルト(C)やアルミナ・シリカ・ボリア系セラミック繊維織布(D)よりも優れている。
【0215】
図35は、図33、図34において、昇温時間を100秒(sec)にした場合の曲線((15)式中の300を100に置き換えれば)を図33、34に重ね書きしたものである。
【0216】
図35において、甲曲線はQ/S=25kW/mで300sec以内に500K昇温できるρcdの上限を表す。乙曲線はQ/S=25kW/mで100sec以内に500K昇温できるρcdの上限を表す。丙曲線はQ/S=10kW/mで300sec以内に500K昇温できるρcdの上限を表す。丁曲線はQ/S=10kW/mで100sec以内に500K昇温できるρcdの上限を表す。
【0217】
もっとも厳しい条件を課すのは丁曲線であり10kW/mの発熱密度で、100秒内に500℃(増加分なので℃もKも同じ)上昇するというものである。
【0218】
丁曲線より下にはd=0.02m、d=0.01mの材料Eと、d=0.02mの材料Gだけがあり、この3つだけが上の条件(10kW/m、100秒)に適合する。
【0219】
丙曲線(10kW/m、300秒)より下には、それ以外に、d=0.05mnのEと、d=0.05mの材料Gとが追加される。
【0220】
乙曲線(25kW/m、100秒)より下には、上の5つの例の他に、d=0.01mの材料G、d=0.01mの材料Dが加わる。
【0221】
甲曲線(25kW/m、300秒)より下には、上の7つの例の他に、d=0.02mの材料Dが加わる。
【0222】
この図から分かるように表1に示したようなρ、c、kの値を持つアルミナ・シリカ系セラミック繊維ブランケットや、シリカ系セラミック繊維ブランケットでは、フィルタ厚みdを適切に選定することによって、実用的に好ましいワット密度10kW/mで100秒以内(丁曲線)に500Kの昇温を達成する事が可能である。
【0223】
アルミナ・シリカ系のセラミック繊維ブランケットとしては、例えば前掲の新日化サーマルセラミック株式会社の商品名SCブランケット1260やイソライト工業株式会社の商品名イソウール1260ブランケットなどを採用することができる。
【0224】
シリカ系のセラミック繊維ブランケットとしては、市販の生体溶解性繊維ブランケット(第5の発明の実施例で詳しく述べる)を採用することができる。
【0225】
粒子状物質の浄化性能の観点からは、フィルタの厚さはd=0.01m程度以上あれば十分である。図33、34に示した特性図の中でヒータ要素に要求されるワット密度と昇温時間の観点から、厚みを適宜選定すればよい。
【0226】
アルミナ・シリカ系のセラミック繊維ブランケットやシリカ系のセラミック繊維ブランケットは断熱材として、d=0.006m〜0.05mのものが市販されている。通常、d=0.006m、0.013m、0.025m、0.05m程度のものが標準的に生産されているので、d=0.013m〜0.025m程度の厚みのブランケットを使用するのがよい。
【0227】
ここに例示した、アルミナ・シリカ系セラミック繊維ブランケットやシリカ系セラミック繊維ブランケットは、表1に例示した炭化珪素系セラミック繊維フェルトや、アルミナ・シリカ・ボリア系セラミック繊維織布よりも安価である。アルミナ・シリカ系セラミック繊維ブランケットやシリカ系セラミック繊維ブランケットをフィルタに採用すると、より経済的な装置を構成することができる。
【0228】
アルミナ・シリカ系セラミック繊維ブランケットやシリカ系セラミック繊維ブランケットは素材として柔らかく、取り付け方やガス流の抵抗でシートの厚みが変化する場合もある。
【0229】
図33、図34、図35に示したように、これらのセラミック繊維ブランケットは(7)式、(8)式の要件を満たすdの範囲が比較的広いので(この例ではd=0.01m〜0.05m)、このような使用条件に伴う厚みの変化に対応できるように、初期の素材の厚さを適宜選定したり、ヒータ要素のワット密度や昇温時間の設計に適度な余裕を持たせれば良い。
【実施例5】
【0230】
[実施例5(第5の発明の実施例)]
第5の発明の実施例について説明する。
これは上記の実施例1〜4において、セラミック繊維からなる通気性フィルタのセラミック繊維が生体溶解性のセラミック繊維であることを特徴とするものである。
【0231】
生体溶解性繊維は、EU指令97/69/ECにおいて、次の何れかを満足するものとして規定されるものである。
【0232】
(1)短期吸入による生体内滞留試験で、20μmより長い繊維が10日未満の荷重半減期を持つもの。
【0233】
(2)器官内注入による短期の生体内滞留試験で、20μmより長い繊維が40日未満の荷重半減期を持つもの。
【0234】
(3)腹膜内投与試験で過大な発ガン性の証拠がないことが確認できる。
【0235】
(4)長期吸入試験で、関連ある病原性変化もしくは腫瘍性変化がない。
【0236】
生体溶解性のセラミック繊維として代表的なものは、二酸化珪素(シリカ)と酸化マグネシウム(MgO)、又は二酸化珪素(シリカ)と酸化マグネシウム(MgO)と酸化カルシウム(CaO)とを主成分とするものである。
【0237】
具体的には、新日化サーマルセラミック株式会社のSUPERWOOL(商標)、米国UNIFRAX社のISOFRAX(商標)、INSULFRAX(商標)などがある。いずれも最高使用温度は1000℃以上である。繊維径は3〜5μm、繊維長は約30mmである。
【0238】
ブランケット状のものは嵩密度として96kg/m、128kg/m、160kg/mのものが市販されている。
【0239】
熱伝導率は、温度600℃で0.14W/mK〜0.24W/mKである。温度800℃で0.19W/mK〜0.37W/mKである。
【0240】
図28は米国UNIFRAX社のISOFRAX(商標)ブランケットの電子顕微鏡写真である。
【実施例6】
【0241】
[実施例6(第6の発明の実施例)]
[実施例6−1(図16、図17)]
本発明の第6の発明の1つ目の実施例を図16、図17に示す。
筐体1がガス入口2、ガス出口4、前室12、後室13を有する。前室12には帯電要素24が設けられる。これはコロナ放電電極22、高電圧電源20、高電圧碍子23等を含む。後室13には2つの円筒状のフィルタ3、3が軸線に平行に並列して設けられる。隔壁14には2つのフィルタ入口17、17がある。開閉弁5は2つのフィルタ入口17、17の何れかを閉じることができる。入口17に続くのは上流側流路18である。これも2つある。円筒フィルタ3、3の外側は下流側流路19、19である。フィルタユニット3、3の中心には電気ヒータ7、7が設けられる。ヒータ電源8から二組のコードが伸び、スイッチ91、92も2つある。
【0242】
図16では開閉弁5は上のフィルタユニット3の入口17を閉じている。スイッチ91が閉じ電気ヒータ7に熱エネルギーが発生する。これがフィルタ3の粒子状物質Zを加熱燃焼させる。燃焼ガスUはガス出口4から排除される。下のフィルタユニットは入口17が開いている。電気ヒータ7はオフになっている。排ガスGは帯電要素24で帯電し、帯電ガスG’は下フィルタ3に入る。粒子状物質Zがフィルタ3によって濾過され除去される。浄化ガスRはガス出口4から排除される。
【0243】
図17は開閉弁5が下のフィルタユニット3の入口17を閉じる。下側のフィルタユニットで電気ヒータ18が通電加熱される。フィルタ3に付着している粒子状物質Zを加熱燃焼させる。燃焼ガスUはガス出口4から排出される。上側のフィルタユニットは濾過作用をしている。
【0244】
この実施例は、フィルタユニット3、3を2つ組み込み、同時に全ユニットを再生(フィルタユニットの弁を閉じてヒータ再生を行う操作)せず、少なくとも1つのフィルタユニットはガスを流し続けるようにする。一方は浄化に、他方は再生に割り振ることによって、常に排ガス浄化が可能である。
【0245】
例えば交互に再生操作を行う事によって、ガスの供給を停止することなく連続的にガスの浄化をすることが可能になる。
【0246】
各フィルタの再生のタイミングは、タイマー制御やエンジンの運転状況に連動した制御等、用途に応じて適宜のパターンを採用することができる。
【0247】
[実施例6−2(図18)]
例えばディーゼルエンジンの排気量が5L(リットル)(0.005m)で、その代表的なエンジン回転数が3000rpm、排気温度が450℃であったとする。排気風量は約18.5m/min(=0.308m/s)となる。
【0248】
フィルタ部のガス流の線速度を1m/s程度以下にするにはフィルタ面積を0.3m程度以上にすればよい。
【0249】
この場合、フィルタを加熱再生するためのヒータ要素のワット密度を、実用的な10kW/m程度にしたとすると、必要電力は3kW程度になる。
【0250】
ディーゼル車両に搭載し、一般的なバッテリーを電源として電気ヒータによる加熱再生を行うような場合は、加熱再生時のみの一時的なものとは言え、所要電力は1kW程度以下にする事が望ましい。
【0251】
そこで、例えば、フィルタを3つ以上のユニットで構成し、各フィルタユニットの捕集面積を0.1m程度以下にして、切替弁によって時間をずらして順次加熱再生する方式を採用すれば、装置全体としては、再生時に必要となる電力を1kW程度以下に抑えることができる。第6発明のもう1つの実施例を図18に示す。
【0252】
この例ではドーナッツ型のフィルタユニットを4つ、筐体の軸方向に4つ並べて配置している。1つのフィルタユニットはドーナッツ型のフィルタを2枚向かい合わせに配置し、その間隙に電気ヒータを設けている。このフィルタユニットは円筒の隔壁に収納されており、該円筒の円周に4つの環状(リング状)のガス入口を形成している。開閉弁は、該ガス入口の一つを閉状態にできる大きさを持ったリング状の蓋板であって、この蓋板が該円筒の外周面を直線往復運動するスライド式である。蓋板50と蓋板50を前後に直線運動させる操作棒51と筐体1に設けた滑り軸受54からなる。操作棒51は滑り軸受け54に保持され軸線に平行に進退できる。蓋板50は4つのフィルタユニットの入口17の何れか1つを閉じることができる。
【0253】
この例では、左から3つ目のフィルタユニットが閉じ、そのフィルタユニットの電気ヒータが発熱し粒子状物質を燃やしている。その他の1、2、4番面のフィルタユニットはガス入口が開いており排ガスGが流入する。フィルタ3を通り抜けるときに粒子状物質がフィルタ3によって濾過される。ガス出口4には浄化ガスRと燃焼ガスUが出てくる。4つのフィルタユニットの内3つは濾過し、1つが再生している。連続的に排ガス処理を行うことができる。
【0254】
この開閉弁は、エアシリンダや歯車機構などで駆動すればよい。フィルタ再生はフィルタユニット1つについてのみ行う。再生対象となるフィルタユニットを順次変えることによって、ガスの連続浄化を可能にしている。
【0255】
[実施例6−3(図19、図20、図21)]
第6発明の3つ目の実施例を図19〜図21に示す。
これは排気量5L(リットル)のディーゼルトラックの微粒子除去装置の例である。筐体1の上流側に帯電要素24としてコロナ放電部(22、23)を設け、下流側のフィルタ部は4つ(2×2)の二重同軸円筒型のフィルタユニットで1つの装置を構成している(図19)。フィルタユニットは外筒、電気ヒータ、内筒よりなる。フィルタ部の直前にある回転スライド式開閉弁5で4つのフィルタユニットの何れか1つが閉じ、その他の3つが開くというような流路制御を実現している。回転スライド式開閉弁5は、回転スライド円板55と回転スライド式開閉弁駆動機構56よりなる。
【0256】
コロナ放電部は、コロナ放電発生用高電圧給電碍子1本の周囲に、内径約60mm(0.06m)の円管を8本並列配置し、各円管の中心軸上に有効放電長約80mm(0.08m)の突起付き電極(突起先端の曲率半径は0.2mm=0.0002m)を配置した同軸円筒コロナ放電管で構成される。円管は接地電位とし、突起付き電極には負極性の直流電圧を印加して、円管内に負コロナ放電を発生させている。
【0257】
エンジンの運転条件によって、排気温度は70℃〜500℃(343K〜773K)程度まで変化する。また排気中に含まれる微粒子の濃度も変化する。この排気温度と微粒子濃度の影響によって、コロナ放電の電圧電流特性は変化する。経験的には印加電圧を10kV〜15kV程度の範囲として、コロナ放電電流が2mA〜5mA程度になるように制御すればよい。コロナ放電電力は約50W程度である。
【0258】
フィルタ部は、同一の形状を持つ二重同軸円筒型のフィルタユニット4つからなる。1つのフィルタユニットは外径約80mm(0.08m)、内径約15mm(0.015m)、長さ約350mm(0.35m)の大きさを持つ。セラミック繊維フィルタには厚さ約13mm(0.013m)、嵩密度128kg/mの生体溶解性繊維からなるブランケット(米国UNIFRAX社の製品名ISOFRAX)を用いている。
【0259】
この例ではシート状のブランケットを円筒形に丸めた形で使用しているが、その代わりに初めから円筒状に成形したものを用いても良い。
【0260】
フィルタユニットは1つ当たりの微粒子捕集面積は約0.1mである。セラミック繊維フィルタは8mm(0.008m)の間隙で微粒子捕集面を対向させてある。この間隙にヒータ要素としてコイル状のニクロム線からなる電気ヒータを設けている。
【0261】
ニクロム線の線径は0.7mm(0.0007m)である。コイル径は約5mm(0.005m)である。フィルタユニット1つ当たりのニクロム線の合成抵抗は0.6Ωである。標準的な車載用バッテリーを2台直列接続して得られる直流電圧24Vの印加で、約1kWの加熱をすることができる。
【0262】
フィルタユニット1つ当たりの微粒子捕集面積が約0.1mなので、加熱時のワット密度(電力密度)は10kW/mである。
【0263】
開閉弁5は回転スライド式である。フィルタユニットの端部を保持する隔壁14に接触して、回転スライド円板55が回転スライド式開閉弁駆動機構56によって回転する。この開閉弁5もエアシリンダや歯車機構などで駆動すればよい。
【0264】
これもフィルタ再生はフィルタユニット1つについてのみ行う。再生対象となるフィルタユニットを順次変えていくことによりガスの連続浄化を可能とする。
【0265】
回転スライド式開閉弁の動作の概要を図20、図21に示す。この回転スライド式開閉弁は、1つのフィルタユニットの3つのガス入口17に対応する大きさの円形の開口部49が中心角90゜、90゜、180゜をなす位置に3つ開いている。4つのフィルタユニットの内、3つのフィルタユニットにのみ排ガスを流し(濾過)、1つのフィルタユニットには排ガスを流さない(再生)ようにしている。例えば図20、図21に示すように、説明の便宜のため、4つのフィルタユニットにA、B、C、Dの名前を付ける。
【0266】
あるタイミングでは図20のように、回転スライド式開閉弁の開口部49がA、B、Dの流入口に一致している。つまり4つのフィルタユニットA、B、C、Dの内、A、B、Dには排ガスを流し、Cには排ガスを流さない状態が作られている。この状態で、フィルタユニットCの電気ヒータに通電する。ユニットCを加熱する。粒子状物質Z(炭素微粒子)が燃焼する。粒状物がなくなりフィルタユニットCが再生される。
【0267】
それに続くタイミングでは図21に示すように、フィルタユニットDが閉じている。フィルタユニットA、B、Cでは排ガスの濾過を、フィルタユニットDではフィルタ再生を行う。
【0268】
このように回転スライド式開閉弁を1/4ずつ回転させて、順次再生処理するフィルタユニットをA、B、C…と変更していく。このようにしてフィルタユニットを複数設けることによって、排ガスを連続的に流しながらフィルタユニットを順次加熱再生することができる。
【0269】
この装置をディーゼルトラックの排気ガス(排気量5L(リットル)、エンジン回転数2000rpm)の微粒子除去に適用したときの、装置全体の圧力損失の時間変動を測定した例を図23に示す。
【0270】
この例ではタイマー制御により一定時間間隔(この例では約40分)で回転スライド式開閉弁を回転させている(図23において矢印で示すタイミング)。
【0271】
排ガス温度は約160℃で、1つのフィルタユニットの加熱再生は1kWの電力投入で約6分である(平均消費電力約150W)。
【0272】
回転スライド式開閉弁が停止している状態では、フィルタユニットが微粒子を捕集し、徐々に目詰まりが進行して圧力損失が増加する。回転スライド式開閉弁が1/4回転すると、前述のように、再生が完了したフィルタユニットに排ガスが流れ始める。そのため一時的に増加していた圧力損失が低下する。
【0273】
[実施例6−4(図29、図30、図31)]
第6発明の4つ目の実施例を図29、図30、図31に示す。構造は図19〜図21のものと同様である。図19〜図21の回転スライド式開閉弁を、各フィルタユニットについて独立した開閉弁5、5で置き換えたものである。開閉弁5は、隔壁14にあるガス入口に接離する蓋板57と、蓋板57を動かすリンク58、リンク58を廻す駆動棒59よりなる。
【0274】
この例ではエアシリンダや歯車機構で駆動棒59を出し入れすることによって、フィルタユニットのガス流入口に一時的に蓋をするような開閉弁を示している。
【0275】
図30と図31にこの開閉弁5の動作を模式的に示す。
図30は開閉弁5の開状態を示す。駆動棒59は右側に引かれている。リンク58が蓋板57を隔壁14から引き離す。フィルタ入口17が開く。帯電ガスG’がフィルタユニットへ入っていく。粒子状物質がフィルタ3によって捕集される。
【0276】
図31は開閉弁の閉状態を示す。駆動棒59が左側へ押し出される。リンク58が蓋板57を隔壁14へ押し付ける。フィルタ入口17が閉ざされる。電気ヒータ7に通電し粒子状物質を燃やす。
【0277】
この装置をディーゼルトラックの排気ガス(排気量5L(リットル))、エンジン回転数2000rpmに適用したときの、装置全体の圧力損失を測定した例を図32に示す。
【0278】
この例では約40分間隔で4つあるフィルタユニットA、B、C、Dの開閉弁を順次動作させている。
【0279】
図32は4つのフィルタユニットを持つ装置において、圧力損失の時間変化を測定した結果を示すグラフである。横軸は時間、縦軸は圧力損失(kPa)である。図32に現れるように、時刻tまでは全フィルタユニットの開閉弁5は開状態となっており、全フィルタユニットA、B、C、Dに排ガスが流れている。全てのフィルタユニットA、B、C、Dが排ガス浄化を行っている。段々フィルタが目詰まりするので圧力損失が増えていく。
【0280】
時刻tで、フィルタユニットAの開閉弁を閉じる。それまで4つに分散して流れていた排ガスが、フィルタユニットB、C、Dだけに流れる。これら3つのフィルタユニットに流れる排ガス量が一時的に増大する。3つのフィルタユニットに流れる排ガスの流速が増えるので、装置全体の圧力損失が一時的に増加する。
【0281】
時刻t〜tの間は、閉じたフィルタユニットAの電気ヒータに通電する。フィルタユニットAの粒子状物質(炭素微粒子)Zは燃焼除去される。その燃焼ガスUは浄化ガスRと共に排出される。排ガス温度160℃、ヒータ電力約1kW(ワット密度10kW/m)で、約6分の加熱燃焼処理で貯留粒子状物質Zが燃焼し尽くす。フィルタユニットAが再生される。
【0282】
フィルタユニットAの再生が完了した時刻tでフィルタユニットAの電気ヒータの通電を停止する。フィルタユニットAの開閉弁を開に戻す。フィルタユニットAには炭素微粒子(粒子状物質)がない。tで装置全体の圧力損失が急激に減少する。
【0283】
時刻t〜tでは再び全てのフィルタユニットA、B、C、Dに排ガスGが流れる。浄化されたガスRが排出される。粒子状物質Zがフィルタユニットに溜まり圧力損失が増える。
【0284】
時刻tでフィルタユニットBの開閉弁を閉じる。更に圧力損失が増える。フィルタユニットBの電気ヒータに通電する。tまで通電しフィルタユニットBの粒子状物質(炭素微粒子)を加熱燃焼する。燃焼ガスUは浄化ガスRとして排出される。6分で再生が行われる。再生の完了した時刻tでフィルタユニットBの開閉弁を開く。圧力損失が減少する。
【0285】
時刻t〜tでは再び全てのフィルタユニットA、B、C、Dに排ガスを流す。粒子状物質がフィルタユニットに溜まり圧力損失が高まる。tでフィルタユニットCの開閉弁を閉じCのヒータで加熱しフィルタCを再生する。そのように順次ひとつずつ再生を繰り返す。3つのフィルタユニットは開いているから連続的に排ガス浄化を行なうことができる。
【0286】
この例では、フィルタユニットの再生のタイミングをタイマー制御で実施しているが、エンジンの運転状況やその履歴および排ガス温度などに基づいて、マイコン制御などを行うこともできる。
【0287】
また排ガス温度が高く、フィルタに捕集した粒子状物質の加熱燃焼に必要な温度上昇量が少なくて済む場合は、電気ヒータのオンオフ制御や電流制御などにより加熱に注入するエネルギーを適宜調整すればよい。
【0288】
また、ディーゼルエンジンの運転状況やフィルタに堆積した粒子状物質の量によって、加熱燃焼除去に必要な酸素が不足する場合も考えられる。このような場合には、開閉弁の開度を調整し、完全に弁を閉じないで排ガスを僅かに流しながら酸素を供給したり、外気を導入して加熱燃焼再生を行っても良い。別の手法として、一旦開閉弁を閉じたフィルタユニットの弁を一時的に開状態にして、フィルタユニット内のガスを入れ替えることによって酸素を補給し、再度開閉弁を閉じて加熱燃焼除去をすればよい。
【0289】
一般に、酸素濃度が極端に薄くなる運転状況では排ガス温度が高いため、温度上昇量が少なくて済む。また本発明では加熱に要する時間が短くて済むので、このような操作を行っても経済的なフィルタの再生が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0290】
【図1】炭素微粒子を濾過したフィルタ表面に電気ヒータを設け、静止空気中で空気中に露呈したままのヒータでフィルタを加熱する実験の構成図。左は加熱中を示し、黒いのは炭素粒子が表面に現れているからである。右は加熱2分後(静止空気)の状態を示す。炭素微粒子は殆どが残存している。
【0291】
【図2】排ガスを濾過し炭素微粒子を有するフィルタ表面に電気ヒータを設け、更に断熱材で覆い、静止空気中で断熱材で保温されたヒータでフィルタを加熱する実験の構成図。左は加熱中を示す。白っぽいのは断熱材である。右は加熱2分後に断熱材を取り除いた状態を示す。燃焼して中央部で炭素微粒子は殆ど消失している。
【0292】
【図3】排ガスを濾過し炭素微粒子を有するフィルタを加熱温度を600℃、650℃、700℃、800℃として、1分、3分、5分、7分、10分加熱した後のフィルタの一部小片を取って加熱温度と加熱時間の順に並べて撮影した写真。黒いのは炭素微粒子が残っており、白いのは炭素が燃えて消失しフィルタの地色が見えている。
【0293】
【図4】排ガスを濾過し炭素微粒子を有するフィルタを加熱温度を600℃、650℃、700℃、800℃として、1分、3分、5分、7分、10分加熱した後のフィルタの色合いなどから、燃焼除去が不良(×)なものと、中程度のもの(△)と燃焼除去が良好(○)なものを、加熱温度を横軸に、加熱時間を縦軸にしてグラフにプロットしたもの。
【0294】
【図5】本発明の第1の構成を示し、排ガス流路に平行にセラミック繊維のフィルタを設け、フィルタに対向してセラミック繊維断熱材を固定し、フィルタと断熱材の間に電気ヒータを設置し、ガス入口側に開閉弁を設けた排ガス濾過装置の開閉弁を開き、排ガスを流通(濾過)させた時の状態を示す断面図。
【0295】
【図6】本発明の第1の構成を示し、排ガス流路に平行にセラミック繊維のフィルタを設け、フィルタに対向してセラミック繊維断熱材を固定し、フィルタと断熱材の間に電気ヒータを設置し、ガス入口側に開閉弁を設けた排ガス濾過装置の開閉弁を閉じ、排ガスを遮断しヒータ加熱してフィルタ再生する時の状態を示す断面図。
【0296】
【図7】本発明の第2の構成を示し、排ガス流路にセラミック繊維のフィルタを設け、セラミック繊維フィルタの入口側に電気ヒータを設置し、フィルタに対向して断熱材を面に直交する方向に往復運動するように設けた排ガス濾過装置において、断熱材を電気ヒータから離隔させて開閉弁を開き排ガスを流通(濾過)させた時の状態を示す断面図。
【0297】
【図8】本発明の第2の構成を示し、排ガス流路にセラミック繊維のフィルタを設け、セラミック繊維フィルタの入口側に電気ヒータを設置し、対向して断熱材を面に直交する方向に往復運動するように設けた排ガス濾過装置の断熱材をヒータに接近させガス流路を閉じ、排ガスを遮断しヒータ加熱しフィルタ再生をする時の状態を示す断面図。
【0298】
【図9】本発明の第3の構成を示し、排ガス流路に平行に円筒状のセラミック繊維のフィルタを設け、円筒セラミック繊維フィルタの中心に電気ヒータを設置し、ガス入口に開閉弁を設けた排ガス濾過装置において、開閉弁を開き排ガスを対向したセラミック繊維フィルタに流通(濾過)させた時の状態を示す断面図。
【0299】
【図10】本発明の第3の構成を示し、排ガス流路に平行に円筒状のセラミック繊維のフィルタを設け、円筒セラミック繊維フィルタの中心に電気ヒータを設置し、ガス入口に開閉弁を設けたガス濾過装置において、開閉弁を閉じ排ガスを遮断してヒータ加熱し炭素微粒子を燃焼除去しフィルタ再生をする時の状態を示す断面図。
【0300】
【図11】本発明の円筒状セラミック繊維フィルタの縦断側面図(1)と縦断正面図(2)。内フィルタ・電気ヒータ・外フィルタが同心構造となっている。排ガスは電気ヒータのある中間円筒から流入し、内側と外側のフィルタで濾過され内外の流路へ排出される。
【0301】
【図12】本発明の第4の構成を示し、排ガス流路の前段にコロナ放電による帯電要素を設け排ガスの微粒子を帯電させるようにし、排ガス流路の後段に流路に平行にセラミック繊維のフィルタを設け、フィルタに対向してセラミック繊維断熱材を固定し、セラミック繊維フィルタと断熱材の中間に電気ヒータを設置し、ガス入口に開閉弁を設けた排ガス濾過装置において、開閉弁を開き帯電した排ガスを対向したセラミック繊維フィルタに流通させ粒子状物質を濾過する時の状態を示す断面図。
【0302】
【図13】本発明の第4の構成を示し、排ガス流路の前段にコロナ放電による帯電要素を設け排ガスの微粒子を帯電させるようにし、排ガス流路の後段に流路に平行にセラミック繊維のフィルタを設け、フィルタに対向してセラミック繊維断熱材を固定し、セラミック繊維フィルタと断熱材の中間に電気ヒータを設置し、ガス入口に開閉弁を設けた排ガス濾過装置において、開閉弁を閉じ電気ヒータに通電しフィルタを加熱して滞留した炭素微粒子を燃焼除去しフィルタを再生するときの状態を示す断面図。
【0303】
【図14】本発明の第5の構成を示し、排ガス流路の前段にコロナ放電による帯電要素を設け排ガスの微粒子を帯電させるようにし、排ガス流路の後段に流路に平行に円筒状のセラミック繊維のフィルタを設け、セラミック繊維フィルタの中心に電気ヒータを設置し、ガス入口に開閉弁を設けた排ガス濾過装置において、開閉弁を開き帯電した排ガスを円筒形セラミック繊維フィルタに流通させ粒子状物質を濾過する時の状態を示す断面図。
【0304】
【図15】本発明の第5の構成を示し、排ガス流路の前段にコロナ放電による帯電要素を設け排ガスの微粒子を帯電させるようにし、排ガス流路の後段に流路に平行に円筒状のセラミック繊維のフィルタを設け、セラミック繊維フィルタの中心に電気ヒータを設置し、ガス入口に開閉弁を設けた排ガス濾過装置において、開閉弁を閉じ電気ヒータに通電しフィルタを加熱して滞留した炭素微粒子を燃焼除去しフィルタを再生するときの状態を示す断面図。
【0305】
【図16】本発明の第6の構成を示し、排ガス流路の前段にコロナ放電による帯電要素を設け排ガスの微粒子を帯電させるようにし、排ガス流路の後段に流路に平行に円筒状のセラミック繊維のフィルタを2つ平行に設け、それぞれのセラミック繊維フィルタの中心に電気ヒータを設置し、2つのフィルタのガス入口に択一的に開閉する開閉弁を設けた排ガス濾過装置において開閉弁を操作し、一方(下方)のフィルタは帯電した排ガスを円筒形セラミック繊維フィルタに流通させ粒子状物質を濾過し、他方(上方)のフィルタは流路から遮断しヒータに通電し濾過し滞留した粒子状物質を燃焼しフィルタを再生させる状態を示す断面図。
【0306】
【図17】本発明の第6の構成を示し、排ガス流路の前段にコロナ放電による帯電要素を設け排ガスの微粒子を帯電させるようにし、排ガス流路の後段に流路に平行に円筒状のセラミック繊維のフィルタを2つ平行に設け、それぞれのセラミック繊維フィルタの中心に電気ヒータを設置し、2つのフィルタのガス入口に択一的に開閉する開閉弁を設けた排ガス濾過装置において開閉弁を操作し、一方(上方)のフィルタは帯電した排ガスを円筒形セラミック繊維フィルタに流通させ粒子状物質を濾過し、他方(下方)のフィルタは流路から遮断しヒータに通電し濾過し滞留した粒子状物質を燃焼しフィルタを再生させる状態を示す断面図。
【0307】
【図18】本発明の第7の構成を示し、筐体の軸に併せて、ドーナッツ型のセラミック繊維のフィルタを2枚向かい合わせにして、その間に電気ヒータを配置したものを1つのフィルタユニットとし、このフィルタユニットを4つ、筐体の軸方向に並べたものである。1つのフィルタユニットには外周面に環状(リング状)のガス流入口があり、全体で4つの環状(リング状)のガス流入口が設けられ、この並んだ4つの環状の排ガス流入口の面を摺動する、環状の開閉弁を設けてある。この排ガス濾過装置において、開閉弁を動かして、複数フィルタの何れか一つの流入口を閉ざし、それ以外のフィルタは排ガスを流通させて、排ガスから粒子状物質を捕集し粒子状物質を貯留してゆき、開閉弁によって流入口が閉ざされたフィルタでは電気ヒータに通電して滞留した炭素微粒子を燃焼除去しフィルタを再生させる状態を示す断面図。
【0308】
【図19】本発明の第8の構成を示し、排ガス流路の前段にコロナ放電による帯電要素を設け排ガスの微粒子を帯電させるようにし、排ガス流路の後段に流路に平行に二重円筒状のセラミック繊維のフィルタを4つ平行に設け、それぞれのセラミック繊維フィルタの中心に電気ヒータを設置し、4つのフィルタの4つのガス入口に回転スライド式の開閉弁を設けた排ガス濾過装置において、回転スライド開閉弁を操作し、3つのフィルタには帯電した排ガスを円筒形セラミック繊維フィルタに流通させ粒子状物質を濾過し、1つ(上方)のフィルタは流路から遮断しヒータに通電し濾過し滞留した粒子状物質を燃焼し、フィルタを再生させる状態を示す断面図。
【0309】
【図20】図19に示した4つのフィルタユニットA、B、C、Dを持つ本発明の第8の構成において、回転スライド式開閉弁の動作を示すための左側面図。回転スライド円板の3つの開口がフィルタユニットA、B、Dに一致し、フィルタユニットA、B、Dは排ガスの濾過を行っており、フィルタユニットCは開閉弁の盲板部で閉ざされ、フィルタユニットCは加熱されて粒子状物質が燃焼除去されている。
【0310】
【図21】図19に示した4つのフィルタユニットA、B、C、Dを持つ本発明の第8の構成において、回転スライド式開閉弁の動作を示すための左側面図である。回転スライド円板の3つの開口がフィルタユニットA、B、Cに一致し、フィルタユニットA、B、Cは排ガスの濾過を行っており、フィルタユニットDは開閉弁の盲板部で閉ざされ、フィルタユニットDは加熱されて粒子状物質が燃焼除去されている。
【0311】
【図22】本発明のセラミック繊維フィルタにおいて、フィルタ再生時のヒータ面積当たりの電気ヒータ電力(kW/m)と、ヒータ加熱10分後のフィルタ表面の温度上昇量(K)の関係を示すグラフ。
【0312】
【図23】本発明の粒子状物質を含む排ガス濾過装置において、フィルタに粒子状物質が捕集堆積することによる圧力損失の増加とフィルタ再生による圧力損失の瞬時の低下が、時間的に繰り返されることを示すための装置全体の圧力損失の変動のグラフ。
【0313】
【図24】帯電要素がない装置で、排ガスをフィルタで濾過した場合の、フィルタにおける粒子状物質の堆積状態を示すためのフィルタ断面の写真。粒子状物質はフィルタの奥まで到達する深層濾過となる。
【0314】
【図25】帯電要素がある装置で、帯電した微粒子を含む排ガスをフィルタで濾過した場合の、フィルタにおける粒子状物質の堆積状態を示すためのフィルタ断面の写真。粒子状物質は反発力のため奥までいかず表面に滞留する表面濾過になる。反発力があり微粒子は集合せず隙間があって圧力損失の上昇が遅い。
【0315】
【図26】粒子状物質を含む排ガスをセラミック繊維フィルタで濾過する装置において、帯電要素がない場合と、帯電要素がある場合において、フィルタの圧力損失の時間的な増大の速度が異なる事を示すグラフ。
【0316】
【図27】処理前の排ガス、帯電要素のない装置で処理した後のガス、帯電要素のある装置で処理した後のガスの中に含まれる粒子状物質の平均粒径とその粒径を持つ粒子数濃度の分布を示すグラフ。本発明の帯電要素のない装置で濾過すると約1/10程度に粒子数濃度が減少する。帯電要素のある装置で濾過すると約1/200程度に粒子数濃度が減少する。
【0317】
【図28】本発明でフィルタの材料として用いるセラミック繊維の電子顕微鏡写真。
【0318】
【図29】本発明の第9の構成を示し、排ガス流路の前段にコロナ放電による帯電装置を設け排ガスの微粒子を帯電させるようにし、排ガス流路の後段に流路に平行に2重円筒状のセラミック繊維のフィルタを2つ平行に設け、それぞれのセラミック繊維内外フィルタの中間に円筒形の電気ヒータを設置し、2つのフィルタのガス入口に独立に開閉する2つの開閉弁を設けた排ガス濾過装置において開閉弁を操作し、一方(下方)のフィルタには帯電した排ガスを円筒形セラミック繊維フィルタに流通させ粒子状物質を濾過し、他方(上方)のフィルタは流路から遮断しヒータに通電し濾過し滞留した粒子状物質を燃焼しフィルタを再生させる状態を示す断面図。
【0319】
【図30】図29に示した本発明の第9の構成において、独立開閉弁の動作を示す図。開閉弁はガス流入口から離れている。開状態であり、排ガスの濾過が実行されている。
【0320】
【図31】図29に示した本発明の第9の構成において、独立開閉弁の動作を示す図。開閉弁はガス流入口を閉ざしている。閉状態であり、ヒータ加熱によって粒子状物質が燃焼しフィルタの再生が実行されている。
【0321】
【図32】図29、30、31に示した4つのフィルタユニットと各フィルタユニットについて独立した開閉弁を持つ濾過装置において、開閉弁を操作することによって1つのフィルタユニットを閉鎖し粒子状物質をヒータで加熱燃焼させ再生させると、圧力損失が上昇と下降を繰り返すことを示すグラフ。
【0322】
【図33】フィルタの厚みをd、熱伝導率をk、高密度をρ、比熱をcと表し、横軸をk/d(W/mK)に、縦軸をρcd(J/mK)としたグラフにおいて、本発明の(1)式及び(2)式によって表現される領域を示し、厚みd=0.01mで材質、形態、密度などの異なる7つのフィルタについてk/dとρcdの値を示し、それらフィルタ材料の本発明のフィルタに対する適合、不適合を示すためのグラフ。試料A、B、Cは不適。試料D、E、F、Gは(1)式を満たす。試料E、Fは(2)式をも満たす。
【0323】
【図34】横軸をk/d(W/mK)に、縦軸をρcd(J/mK)としたグラフにおいて、本発明の(1)式及び(2)式によって表現される領域を示し、厚みd=0.05mで材質、形態、密度などの異なる7つのフィルタについてk/dとρcdの値を示し、それらフィルタ材料の本発明のフィルタに対する適合、不適合を示すためのグラフ。試料A、B、Dは不適。試料C、E、F、Gは(1)式を満たす。試料E、F、Gは(2)式をも満たす。
【0324】
【図35】横軸をk/d(W/mK)に、縦軸をρcd(J/mK)としたグラフにおいて、ヒータのパワー密度Q/S=25kW/mで300sec以内に500K昇温できるρcdの上限を実線(甲)で示す。Q/S=25kW/mで100sec以内に500K昇温できるρcdの上限を一点鎖線(乙)で示す。Q/S=10kW/mで500sec以内に300K昇温できるρcdの上限を二点鎖線(丙)で示す。Q/S=10kW/mで100sec以内に500K昇温できるρcdの上限を破線(丁)で示す。
【符号の説明】
【0325】
1筐体
2ガス入口
3フィルタ
4ガス出口
5開閉弁
6断熱材
7電気ヒータ
8ヒータ電源
9スイッチ
12前室
13後室
14隔壁
15隔壁
17フィルタ入口
18上流側流路
19下流側流路
20高電圧電源
22コロナ放電電極
23高電圧碍子
24帯電要素
49開口部
50蓋板
51操作棒
52保持体
53操作棒
54滑り軸受
55回転スライド円板
56回転スライド式開閉弁駆動機構
57蓋板
58リンク
59駆動棒
64隔壁
65隔壁
91スィッチ
92スィッチ
F セラミック繊維
G 排ガス
G’帯電ガス
R 浄化ガス
U 燃焼ガス
Z 粒子状物質


【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性を有するセラミック繊維からなり粒子状物質を含む排ガスの流路に設けられ粒子状物質を捕集する通気性フィルタ材と、通気性フィルタ材の粒子状物質捕集面に近接配置された断熱材と、該通気性フィルタ材と該断熱材の間に配置されフィルタ材に捕集された粒子状物質を加熱燃焼除去するヒータ要素と、通気性フィルタ材への排ガス流入を操作する開閉弁とからなり、開閉弁が開状態のときは通気性フィルタ材の加熱を行わずに通気性フィルタ材に粒子状物質を捕集させ、開閉弁が閉状態となって通気性フィルタ材へのガス流入が抑制されたときにヒータ要素で通気性フィルタ材の加熱を行って通気性フィルタ材に捕集した粒子状物質を燃焼除去することを特徴とする粒子状物質除去装置。
【請求項2】
断熱性を有するセラミック繊維からなり粒子状物質を含む排ガスの流路に設けられ粒子状物質を捕集する通気性フィルタ材と、通気性フィルタ材の粒子状物質捕集面に近接配置され通気性フィルタ材に捕集された粒子状物質を加熱燃焼除去するためのヒータ要素と、通気性フィルタ材への排ガス流入を操作する開閉弁とからなり、2つ以上の通気性フィルタ材が粒子状物質捕集面を相対向して近接配置され、近接配置された通気性フィルタ材の粒子状物質捕集面の間に該ヒータ要素を配置し、開閉弁が開状態のときは通気性フィルタ材の加熱を行わず通気性フィルタ材に粒子状物質を捕集させ、開閉弁が閉状態となって通気性フィルタ材へのガス流入が抑制された時にヒータ要素で通気性フィルタ材の加熱を行って通気性フィルタ材に捕集した粒子状物質を燃焼除去することを特徴とする粒子状物質除去装置。
【請求項3】
通気性フィルタ材の上流側に粒子状物質を帯電させる帯電要素を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の粒子状物質除去装置。
【請求項4】
セラミック繊維からなる通気性フィルタ材の熱伝導率k(単位W/mK)と厚さd(単位m)の比k/d(熱伝導率を厚さで除したもの;単位W/mK)が50W/mK以下であり、且つ通気性フィルタ材の嵩密度ρ(単位kg/m)と比熱c(単位J/kgK)と厚さd(単位m)の積ρcd(単位J/m2K)が
ρcd≦600(k/d)/{−ln(1−0.019k/d)}
を満たすものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の粒子状物質除去装置。(lnは自然対数)。
【請求項5】
セラミック繊維からなる通気性フィルタ材の熱伝導率k(単位W/mK)と厚さd(単位m)の比k/d(熱伝導率を厚さで除したもの;単位W/mK)が20W/mK以下であり、かつ通気性フィルタ材の嵩密度ρ(単位kg/m)と比熱c(単位J/kgK)と厚さd(単位m)の積ρcdが
ρcd≦600(k/d)/{−ln(1−0.0475k/d)}
を満たすものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の粒子状物質除去装置。(lnは自然対数)。
【請求項6】
セラミック繊維からなる通気性フィルタ材の組成が二酸化珪素(シリカ:SiO)、酸化マグネシウム(マグネシア:MgO)、酸化カルシウム(カルシア:CaO)を主成分とする生体溶解性繊維のものであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の粒子状物質除去装置。
【請求項7】
開閉弁と通気性フィルタ材の組み合わせを2つ以上持ち、排ガスが供給される間少なくとも1つの開閉弁が開状態となるよう、各開閉弁の開閉動作を制御することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の粒子状物質除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2008−64015(P2008−64015A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242357(P2006−242357)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【特許番号】特許第4023514号(P4023514)
【特許公報発行日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】