説明

粒状物成形品及びその製造方法

【課題】軽量高硬度でかつ吸音性能に優れ、しかも物性の異なる複数部位を後工程の接着作業によることなく一体に成形した粒状物成形品を得る。
【解決手段】粒状物をバインダーと共に加熱加圧して前記バインダーで結合してなる粒状物成形品10において、前記粒状物が嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位12a,12bと、一種類の粒状物からなる部位11とを一体に成形した。前記粒状物が一種類からなる部位11はポリウレタン発泡体の単独粒状物とし、前記粒状物が嵩密度の異なる複数種類からなる部位12a,12bはポリウレタン発泡体の粒状物と発泡スチロールの粒状物との混合粒状物とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物をバインダーと共に加熱加圧して前記バインダーで結合した粒状物成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粒状物をバインダーと共に加熱加圧して前記バインダーで結合した粒状物成形品は、種々の用途に用いられている。例えば、ベッドのスペーサ、家具やソファの芯材、建材等に用いられている。そして軽量高硬度の成形品が一般に好まれるが、特に車両用内装材に用いられるものは、燃費向上の点から、軽量高硬度のものがより好ましく、さらに車両用内装材の中でも車両用フロアマットにおいては、軽量高硬度に加え、車両内外の振動、騒音を吸収緩和するために吸音性も求められている。
【0003】
従来、車両用内装材用の粒状物成形品には、粒状物としてポリウレタン発泡体の粒状物が用いられていた。また、軽量高硬度の要求に応えるため、バインダーを増量することが考えられる。しかし、バインダーを増量すると粒状物成形品の硬度が増すものの、増量したバインダーの硬化によって粒状物成形品の表面特性が損なわれ、吸音性に劣るようになる。
【0004】
さらに、車両用フロアマットは、両サイドと中央部とで硬さを異ならせたり、物性を異ならせたりしたものが用いられており、従来では、両サイドと中央部用に複数の部材を別個に形成し、その後の接着により接合一体としていた。しかし、複数の部材を接着するための接着工程が余分に必要となったり、接合部に段差を生じて車体へ取り付ける際に所定の公差や精度が求められたりする問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2001−253034号公報
【特許文献2】特開2004−299208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、軽量高硬度でかつ吸音性能に優れ、しかも物性の異なる複数部位を後工程の接着作業によることなく一体に成形した粒状物成形品及びその製造方法の提供を目的とするものであり、さらには車両用内装材、特には車両用マットとして好適な異硬度の粒状物成形品及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、粒状物をバインダーと共に加熱加圧して前記バインダーで結合してなる粒状物成形品において、嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と、一種類の粒状物からなる部位とが一体に成形されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と、前記一種類の粒状物からなる部位とは、互いに硬度が異なることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記粒状物が粉砕物からなることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記一種類の粒状物はポリウレタン発泡体の単独粒状物からなり、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物はポリウレタン発泡体の粒状物と発泡スチロールの粒状物とからなることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から4の何れか一項において、前記粒状物成形品が車両用フロアマットとして用いられることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、粒状物とバインダーとよりなる成形原料を成形型内に投入し、前記成形型内で加熱加圧して前記粒状物を前記バインダーで結合する粒状物成形品の製造方法において、前記成形原料として嵩密度の異なる複数種類の粒状物とバインダーとからなる複数種類粒状物成形原料と、前記複数種類の粒状物のうち一種類の粒状物とバインダーとからなる単独粒状物成形原料とを用い、前記複数種類粒状物成形原料と前記単独粒状物成形原料を混ざらないように前記成形型内に投入領域を分けて投入し、その後に前記加熱加圧を行うことにより、嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と一種類の粒状物からなる部位を形成すると共に、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と前記一種類の粒状物からなる部位を前記バインダーで一体に接合することを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6において、前記複数種類粒状物成形原料と前記単独粒状物成形原料を成形型内に投入する際、予め前記成形型内を仕切りで複数の投入領域に区画し、前記複数種類粒状物成形原料と前記単独粒状物成形原料を混ざらないように前記複数の投入領域に区分して投入した後、前記仕切りを前記成形型内から除去し、その後に前記加熱加圧を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項6または7において、前記複数種類粒状物成形原料を構成する嵩密度の異なる複数種類の粒状物のうち一種類の粒状物を、前記単独粒状物成形原料を構成する粒状物とすることを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項6から8の何れか一項において、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と前記一種類の粒状物からなる部位の硬度を互いに異ならせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、粒状物をバインダーと共に加熱加圧して前記バインダーで結合してなる粒状物成形品において、嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と、一種類の粒状物からなる部位とが一体に成形されているため、硬度等の物性が異なる複数の部位からなる粒状物成形品とすることができる。しかも、硬度を高めるためにバインダーを増量した場合には、増量したバインダーの硬化によって粒状物成形品の表面特性が損なわれ、吸音性に劣るようになるが、請求項1の発明によれば、そのような不具合を生じるおそれがなく、粒状物成形品の吸音性を高めることができる。また、嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と、一種類の粒状物からなる部位とが一体に成形されているため、両部位の境界において段差を生じることがなく、成形型の精度を管理するだけで製品の品質を高めることが可能となる。なお、請求項1〜9において、粒状物の嵩密度は、容積既知の容器に粒状物を加圧することなく充填し、容器の容積で容器内の粒状物の重量を除した値である。
【0017】
請求項2の発明によれば、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と、前記一種類の粒状物からなる部位とは、互いに硬度が異なるため、硬さの異なる複数部位からなる異硬度一体成形品を得ることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、粒状物を粉砕物で構成したことから、粒状物の表面が粉砕による凹凸を備えたものとなり、表面の凹凸により粒状物がバインダーで確実に結合して分離のおそれのない粒状物成形品が得られる。また、粒状物が均一に分散され、重量分布のムラ等のない成形品が得られる。
【0019】
請求項4の発明によれば、前記一種類の粒状物はポリウレタン発泡体の単独粒状物からなり、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物はポリウレタン発泡体の粒状物と発泡スチロールの粒状物とからなるため、軽量高硬度でかつ吸音性能に優れた粒状物成形品が得られる。
【0020】
請求項5の発明によれば、車両用フロアマットとして求められる軽量高硬度及び良好な吸音性を発揮することができ、さらには異硬度とすることができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、物性を異ならせた複数の部位で構成される粒状物成形品を容易に得ることができる。また、複数の部位の硬度を異ならせた異硬度一体成形品を容易に得ることができる。しかも、硬度を高めるためにバインダーを増量した場合には、増量したバインダーの硬化によって粒状物成形品の表面特性が損なわれ、吸音性に劣るようになるが、請求項6の発明によれば、そのような不具合を生じるおそれがなく、得られる粒状物成形品の吸音性を高めることができる。また、複数の部材を、後工程による接着作業で接合するのと異なり、製造作業を簡略にできるのみならず、両部位の境界において段差を生じることがなく、成形型の精度を管理するだけで製品の品質を高めることが可能となる。
【0022】
請求項7の発明によれば、成形型内に存在する仕切りによって、前記複数種類粒状物成形原料と前記単独粒状物成形原料を混ざらないようにして成形型内に投入することができ、嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と一種類の粒状物からなる部位の境界を一定にすることができるのみならず、仕切りを除去して加熱加圧を行うため、両部位の接合を仕切りに邪魔されることなく確実かつ強固に行うことができる。それにより、製品の品質低下を抑え、品質のバラツキを少なくすることができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、前記複数種類粒状物成形原料を構成する嵩密度の異なる複数種類の粒状物のうち一種類の粒状物を、前記単独粒状物成形原料を構成する粒状物とするため、粒状物の選択が容易となると共に、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と前記一種類の粒状物からなる部位における物性の調整を容易に行うことができる。
【0024】
請求項9の発明によれば、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と前記一種類の粒状物からなる部位の硬度を互いに異ならせることとしたため、車両用フロアマットして好適な異硬度一体成形品を容易に得ることができる。しかも異硬度の調整を、一種類の粒状物と嵩密度が異なる複数種類の粒状物とによって、容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は本発明の一実施例にかかる粒状物成形品の斜視図である。図1に示す粒状物成形品10は、粒状物をバインダーと共に加熱加圧して前記バインダーで結合したものであり、車両内装用フロアマットとして用いられるものである。
【0026】
前記粒状物成形品10は、中央の一種類の粒状物からなる部位11とその左右に形成された嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位12a,12bとからなる。前記一種類の粒状物からなる部位11は隆起した形状からなり、一方、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位12a,12bは前記一種類の粒状物からなる部位11を左右両側から挟むようにして車幅方向の両側に一体に形成されている。本実施例では、前記一種類の粒状物からなる部位11は高硬度部位とされ、一方、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位12a,12bは軽量高硬度部位とされている。さらに前記一種類の粒状物からなる部位11は、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位12a,12bよりも高硬度とされている。
【0027】
前記一種類の粒状物からなる部位11及び前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位12a,12bを構成する粒状物は、粒径2〜10mmのものが好ましい。前記粒状物の粒径が2mm未満になると、粒状物成形品10における粒状物の影響が小さくなって粒状物成形品10全体がバインダーの硬化物のようになり、良好な吸音性が得られなくなる。それに対して、前記粒状物の粒径が10mmより大になると、粒状物成形品10の使用中に粒状物間で破断し易くなる。また、前記粒状物は粉砕物で構成されるのが好ましい。前記粒状物を粉砕物で構成することにより、前記粒状物の表面が凹凸となり、バインダーによる粒状物同士の結合が強固となる。前記粒状物は、廃棄品を粉砕したもの、あるいは未使用製品を粉砕したものの何れでもよく、あるいは両者の混合であってもよい。なお、粉砕は公知の粉砕装置を用いて行うことができる。
【0028】
前記粒状物の材質は、弾性体が好ましく、例えば、ポリウレタン発泡体、フェノール発泡体、発泡スチロール、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等のポリオレフィン発泡体、ゴム等を挙げることができ、発泡体及び非発泡体の何れでもよい。特に、前記粒状物成形品10の軽量性を高めるには、前記粒状物の材質として発泡体が好ましい。
【0029】
前記一種類の粒状物からなる部位11における粒状物は、前記種々の粒状物のうち一種類のもので構成される。さらに本実施例では、単独で使用した場合に、他の粒状物と併用した場合よりも硬度が高いものが、前記一種類の粒状物として使用される。特にポリウレタン発泡体の粉砕物からなる粒状物は好ましいものである。ポリウレタン発泡体の粒状物を前記一種類の粒状物として用いることにより、前記一種類の粒状物からなる部位11の硬度を高くすることができると共に良好な吸音性を得ることができる。さらに、前記一種類の粒状物からなる部位11の粒状物は、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位12a,12bを構成する複数種類の粒状物のうちから選択された一種類の粒状物とするのが好ましい。また、前記一種類の粒状物の嵩密度は、前記粒状物成形品10の用途に応じて適宜決定されるが、車両用フロアマットの場合、10〜20kg/mが好ましい。
【0030】
一方、前記複数種類の粒状物からなる部位12a,12bにおける粒状物は、嵩密度の異なる複数種類の粒状物で構成される。前記複数種類の粒状物の嵩密度は、前記粒状物成形品10の用途に応じて適宜決定される。前記粒状物成形品10が車両用フロアマットの場合、嵩密度5〜10kg/mの粒状物と嵩密度10〜20kg/mの粒状物との少なくとも2種類の粒状物で構成するのが好ましい。また、前記粒状物は粉砕物で構成されるのが好ましい。
【0031】
前記複数種類の粒状物からなる部位12a,12bにおける粒状物の材質は、前記種々の材質のうち、前記一種類の粒状物からなる部位11を構成する粒状物よりも軽量及び低硬度となる材質の組み合わせが好ましい。特にポリウレタン発泡体の粉砕物からなる粒状物と発泡スチロールの粉砕物からなる粒状物の組み合わせは、前記粒状物成形品10を軽量高硬度及び良好な吸音性を有するものとするうえで好ましいものである。ポリウレタン発泡体の粉砕物からなる粒状物は嵩密度10〜20kg/m、発泡スチロールの粉砕物からなる粒状物は嵩密度5〜10kg/mのものが好ましい。また、前記ポリウレタン発泡体の粒状物と前記発泡スチロールの粒状物の混合比(重量比)は、ポリウレタン発泡体の粒状物:発泡スチロールの粒状物=8:2〜9:1が好ましい。前記発泡スチロールの粒状物が多すぎると粒状物成形品の引張り強度、伸び等の物理的強度が不足するようになる。一方、発泡スチロールの粒状物が少なすぎると軽量性に劣るようになる。
【0032】
前記一種類の粒状物からなる部位11及び前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位12a,12bにおける粒状物を結合する前記バインダーは、従来、粒状物成形品の製造に用いられている公知のものを使用することができる。バインダーの例として、ウレタンプレポリマー、溶剤型ポリウレタン、二液無溶剤型ポリウレタン、水性エマルジョン等を挙げることができるが、それらの中でも、湿分で硬化するウレタンプレポリマータイプが作業性等の点から好適である。前記バインダーと粒状物の量は、バインダーと粒状物の合計重量を100とした場合に、バインダーの重量:粒状物の重量=10:90〜70:30が好ましい。バインダーの量が少ない場合、粒状物の結合不良となって、得られる粒状物成形品において粒状物が分離し易くなったり硬度が低くなったりする。それに対してバインダーの量が過剰になると、バインダーの硬化によって粒状物成形品の表面特性が損なわれ、吸音性に劣るようになる。
【0033】
前記粒状物成形品10の製造方法について説明する。前記粒状物成形品10の製造は、成形原料調製工程と、成形原料振り分け投入工程と、仕切り除去工程と、加熱圧縮硬化工程と、脱型工程とにより行われる。
【0034】
成形原料調製工程では、嵩密度の異なる複数種類の粒状物とバインダーとからなる複数種類粒状物成形原料と、前記複数種類の粒状物のうち一種類の粒状物とバインダーとからなる単独粒状物成形原料を調製する。
【0035】
前記複数種類粒状物成形原料の調製は、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物を混合すると共に前記粒状物にバインダーを付着させることにより行う。前記混合は、公知の混合攪拌装置を用いて行うことができる。なお、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物の材質、粒径、バインダーとの混合割合、バインダーの種類等は、前記のとおりである。それに対して、前記単独粒状物成形原料の調製は、前記一種類の粒状物に前記バインダーを付着させることにより行われる。なお、前記一種類の粒状物の材質、粒径、バインダーとの混合割合、バインダーの種類等は、前記のとおりである。また、前記粒状物に対するバインダーの付着は、公知の方法で行うことができる。例として、混合攪拌中の粒状物にバインダーをスプレー塗布する方法や、スプレー塗布後に混合攪拌装置(ブレンダー)で粒状物とバインダーを混合する方法、あるいは粒状物とバインダーを直接混合攪拌装置に投入して混合する方法などがある。
【0036】
成形原料振り分け投入工程では、前記複数種類粒状物成形原料と前記単独粒状物成形原料を混ざらないようにして成形型内に投入領域を分けて投入する。
【0037】
図2に成形型20の一実施例を示す。前記成形型20は、下型21と上型31とよりなる。前記下型21は、上面が下型成形面22を構成し、一方、前記上型31は下面が上型成形面32を構成する。前記下型成形面22と前記上型成形面32は、前記粒状物成形品10の形状に対応させた形状からなり、前記下型成形面22では中央部が隆起し、一方、前記上型成形面32では中央部が窪んでいる。
【0038】
また、前記下型21は、前記粒状物成形品10の側面を形成するための側壁23が前記下型成形面22の縁に立設されると共に、一組の対向する側壁23a,23bについてはエアーシリンダ等の前進後退装置25a,25bにより側壁23a,23b間の間隔を、前記粒状物成形品10の脱型時に広げることができるようにされている。さらに、前記隆起した中央部の両側には、前記下型成形面22から上方へ突出して前記成形型20内を両側投入領域20a,20bと中央投入領域20cに区画し、一方、前記下型成形面22の下方へ収納されることにより前記成形型20内から除去される仕切り26a,26bが、エアーシリンダ等の昇降装置27a,27bにより昇降可能に設けられている。なお、前記仕切り26a,26bは、前記下型成形面22の上方から取り外し可能に取り付けるようにしてもよい。さらに、前記下型21には前記成形型20内を加熱する加熱手段として蒸気や所定温度のオイル等の熱媒を通す熱媒用配管28が設けられている。なお、前記成形型20内に直接蒸気を供給して成形型内を加熱するようにしてもよい。
【0039】
前記仕切り26a,26bにより区画された前記両側投入領域20a,20bに、図3のように前記複数種類粒状物成形原料42を投入し、一方、前記中央投入領域20cに前記単独粒状物成形原料41を投入する。なお、前記熱媒用配管28には、蒸気や所定温度のオイル等を通して前記下型21を前記バインダーの種類に応じて所要温度に加熱しておく。
【0040】
仕切り除去工程では、前記複数種類粒状物成形原料42及び前記単独粒状物成形原料41の投入後、図4のように、前記仕切り26a,26bを前記成形型20内から除去する。本実施例では、前記仕切り26a,26bを前記下型成形面22の下方へ収納する。これにより、前記複数種類粒状物成形原料42と前記単独粒状物成形原料41間に前記仕切り26a,26bが介在しなくなり、前記仕切り26a,26bが存在していた位置で前記複数種類粒状物成形原料42と前記単独粒状物成形原料41の接触が可能となる。
【0041】
加熱圧縮硬化工程では、図5のように、前記上型31により前記下型21に蓋をし、前記複数種類粒状物成形原料42と前記単独粒状物成形原料41を、前記下型成形面22と前記上型成形面32間で加熱加圧することにより、前記複数種類粒状物成形原料42と前記単独粒状物成形原料41をその境界部位(前記仕切り26a,26bの存在していた位置)で接触させると共に、前記バインダーを硬化させて前記粒状物を結合させる。これにより、前記単独粒状物成形原料41からは一種類の粒状物からなる部位11が形成され、また、前記複数種類粒状物成形原料42からは嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位12a,12bが形成され、さらに前記両部位11,12a,12bが前記バインダーによって一体に接合される。
【0042】
脱型工程では、図6の(6−A)及び(6−B)のように前記成形型20を開け、前記一種類の粒状物からなる部位11の両側に前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位12a,12bが一体に接合された前記粒状物成形品10を脱型して得る。その際、前記側壁23a,23bの間隔を広げて前記粒状物成形品10を脱型し易くする。
【実施例】
【0043】
以下実施例について説明する。発泡スチロール製の箱を粉砕機に投入して得られた発泡スチロールの粉砕物を、直径6mmのメッシュでふるいにかけて直径6mmの発泡スチロール粒状物を得た。得られた発泡スチロール粒状物を2Lのビーカーに摺り切りとなるように充填してビーカー及び発泡スチロール粒状物の全体重量を測定し、その測定重量からビーカーのみの重量を差し引いて得られた発泡スチロール粒状物の重量14gを、ビーカーの容積で除して発泡スチロール粒状物の嵩密度を測定したところ7kg/mであった。
【0044】
また、密度の異なる二種類のポリウレタン発泡体をそれぞれ粉砕機に投入して得られたポリウレタン発泡体の粉砕物を、直径6mmのメッシュでふるいにかけて直径6mmの二種類のポリウレタン発泡体粒状物を得た。得られた二種類のポリウレタン発泡体粒状物を、それぞれ前記発泡スチロール粒状物の場合と同様にして2Lのビーカーに摺り切りとなるように投入し、ビーカー及びポリウレタン発泡体粒状物の全体重量を測定し、その測定重量からビーカーのみの重量を差し引いて得られたポリウレタン発泡体粒状物の重量20gを、ビーカーの容積で除してポリウレタン発泡体粒状物の嵩密度を測定したところ、一方のポリウレタン発泡体粒状物の嵩密度は10kg/m、他方のポリウレタン発泡体粒状物の嵩密度は15kg/mであった。
【0045】
(実施例1)
混合攪拌装置に前記嵩密度10kg/mのポリウレタン発泡体粒状物を7000g投入して混合攪拌し、混合攪拌中のポリウレタン発泡体粒状物に、バインダーとして湿分硬化型のウレタンプレポリマー(品名;M−12、イノアックコーポレーション社製)を3000gスプレー塗布装置(明治電機製)により塗布し、10000gの単独粒状物成形原料(一種類粒状物成形原料)を調製した。また、同様にして混合攪拌装置に前記嵩密度10kg/mのポリウレタン発泡体粒状物を7650g投入して混合攪拌し、混合攪拌中のポリウレタン発泡体粒状物に、バインダーとして湿分硬化型のウレタンプレポリマー(品名;M−12、イノアックコーポレーション社製)を1000gスプレー塗布装置(明治電機製)により塗布し、その後混合攪拌装置に前記嵩密度7kg/mの発泡スチロール粒状物を1350g投入して混合攪拌し、10000gの複数種類粒状物成形原料を調製した。
【0046】
前記図2及び図3で示したように、車両用フロアマットの成形型20における仕切り26a,26bで区画された中央投入領域20c(底面寸法:300×650mm)に、前記単独粒状物成形原料41を600g投入し、また、前記仕切り26a,26bで区画された両側投入領域20a,20b(各領域20a,20bの底面寸法:700×650mm)に前記複数種類粒状物成形原料42をそれぞれ910g投入した。その際、前記成形型20の熱媒用配管28には100℃の蒸気を供給して下型21を加熱した。
【0047】
次に、図4で示したように前記仕切り26a,26bを下降させて前記成形型20内から除去し、その後、図5のように前記上型31で前記下型21に蓋をして、前記単独粒状物成形原料41及び前記複数種類粒状物成形原料42をプレスすることにより、加熱加圧した。その際、前記下型成形面22と前記上型成形面32の間隔を、前記中央投入領域20cでは10mm、前記両側投入領域20a,20bでは70mmとすることにより前記加圧を行った。前記加熱加圧時に前記バインダーを硬化させることにより、図6のように前記一種類の粒状物からなる部位11の両側に前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位12a,12bが一体に接合された前記粒状物成形品10を形成し、その後、前記上型31を上昇させて前記成形型20を開け、さらに前記側壁23a,23b間を広げて前記粒状物成形品10を成形型20から取り出して実施例1の粒状物成形品とした。
【0048】
(実施例2)
前記嵩密度15kg/mのポリウレタン発泡体粒状物7000gを混合攪拌装置に投入して混合攪拌し、混合攪拌中のポリウレタン発泡体粒状物に、バインダーとして湿分硬化型のウレタンプレポリマー(品名;M−12、イノアックコーポレーション社製)を3000gスプレー塗布装置(明治電機製)により塗布し、10000gの単独粒状物成形原料を調製した。また、同様にして混合攪拌装置に前記嵩密度15kg/mのポリウレタン発泡体粒状物を7650g投入して混合攪拌し、混合攪拌中のポリウレタン発泡体粒状物に、バインダーとして湿分硬化型のウレタンプレポリマー(品名;M−12、イノアックコーポレーション社製)を1000gスプレー塗布装置(明治電機製)により塗布し、その後混合攪拌装置に前記嵩密度7kg/mの発泡スチロール粒状物を1350g投入して混合攪拌し、第2実施異例の複数種類粒状物成形原料を10000g調製した。
【0049】
実施例2における単独粒状物成形原料を前記中央投入領域20cに600g投入し、また、前記両側投入領域20a,20bに、実施例2における複数種類粒状物成形原料42をそれぞれ910g投入し、実施例1と同様にして実施例2の粒状物成形品を製造した。
【0050】
(比較例1)
比較のため、前記中央投入領域20c及び前記両側投入領域20a,20bの何れにも前記実施例1の複数種類粒状物成形原料42を投入して比較例1の粒状物成形品を製造した。なお、前記複数種類粒状物成形原料42の投入量は、実施例1,2の各領域の密度と略等しくするため、前記中央投入領域20cで300g、一方、前記両側投入領域20a,20bではそれぞれ1010gとした。
【0051】
(比較例2)
また、前記中央投入領域20c及び前記両側投入領域20a,20bの何れにも前記実施例1の単独粒状物成形原料41を投入して比較例2の粒状物成形品を製造した。なお、比較例2は、前記中央投入領域20cで形成された部位の密度と、前記両側投入領域20a,20bで形成された部位の密度を同一にした例である。また、比較例2では、前記中央投入領域20cで形成された部位の密度を実施例1,2と略等しくするため、前記中央投入領域20cの投入量を600gとした。
【0052】
前記実施例1〜実施例2及び比較例1〜比較例2比較例の粒状物成形品について、全体の重量(g)、全体密度(kg/m)を測定し、また中央投入領域で形成された部位(実施例では一種類の粒状物からなる部位)と、両側投入領域で形成された部位(実施例では複数種類の粒状物からなる部位)について、密度(kg/m)、硬度(N)、引張り強度(MPa)、伸び(%)、吸音性を測定した。なお、密度はJIS K 7222:1999、硬度はJIS K 6400−2:2004、引張り強度及び伸びについてはJIS K 6400−5:2004、吸音性についてはJIS A 1405(ISO 10534−2)の垂直入射吸音率に基づきそれぞれ測定した。測定結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1の測定結果から理解されるように、実施例1及び実施例2では、中央投入領域で形成された部位(一種類の粒状物からなる部位)は、両側投入領域で形成された部位(複数種類の粒状物からなる部位)よりも硬度が高くなっており、一方、両側投入領域で形成された部位(複数種類の粒状物からなる部位)は、中央投入領域で形成された部位(一種類の粒状物からなる部位)よりも軽量と(密度が低く)なっている。また、実施例1,2は比較例2よりも全体重量として軽量である。比較例1は、中央投入領域と両側投入領域に同一の原料(実施例1の複数種類粒状物成形原料)を、それぞれ充填量を変えて充填することにより、それぞれの領域で形成された部位の密度を変更させているが、硬度を所望の値とすることが難しい。比較例2は、中央投入領域で形成された部位と両側投入領域で形成された部位の密度を同一にすると共に中央投入領域で形成された部位の密度を実施例に合わせているため、全体重量が重くなると共に、両側投入領域で形成された部位の硬度が高くなり、硬度の調整が難しい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施例にかかる粒状物成形品の斜視図である。
【図2】本発明の製造方法の一実施例に用いられる成形型の断面図である。
【図3】同製造方法の一実施例における成形原料投入を示す成形型の断面図である。
【図4】同製造方法の一実施例における仕切り除去を示す成形型の断面図である。
【図5】同製造方法の一実施例における加熱加圧を示す成形型の断面図である。
【図6】同製造方法の一実施例における脱型を示す成形型の断面図である。
【符号の説明】
【0056】
10 粒状物成形品
11 一種類の粒状物からなる部位
12a,12b 嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位
20 成形型
21 下型
22 下型成形面
26a,26b 仕切り
31 上型
32 上型成形面
41 単独粒状物成形原料
42 複数種類粒状物成形原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物をバインダーと共に加熱加圧して前記バインダーで結合してなる粒状物成形品において、嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と、一種類の粒状物からなる部位とが一体に成形されていることを特徴とする粒状物成形品。
【請求項2】
前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と、前記一種類の粒状物からなる部位とは、互いに硬度が異なることを特徴とする請求項1に記載の粒状物成形品。
【請求項3】
前記粒状物が粉砕物からなることを特徴とする請求項1または2に記載の粒状物成形品。
【請求項4】
前記一種類の粒状物はポリウレタン発泡体の単独粒状物からなり、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物はポリウレタン発泡体の粒状物と発泡スチロールの粒状物とからなることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の粒状物成形品。
【請求項5】
前記粒状物成形品が車両用フロアマットとして用いられることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の粒状物成形品。
【請求項6】
粒状物とバインダーとよりなる成形原料を成形型内に投入し、前記成形型内で加熱加圧して前記粒状物を前記バインダーで結合する粒状物成形品の製造方法において、
前記成形原料として嵩密度の異なる複数種類の粒状物とバインダーとからなる複数種類粒状物成形原料と、前記複数種類の粒状物のうち一種類の粒状物とバインダーとからなる単独粒状物成形原料とを用い、
前記複数種類粒状物成形原料と前記単独粒状物成形原料を混ざらないように前記成形型内に投入領域を分けて投入し、
その後に前記加熱加圧を行うことにより、嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と一種類の粒状物からなる部位を形成すると共に、前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と前記一種類の粒状物からなる部位を前記バインダーで一体に接合することを特徴とする粒状物成形品の製造方法。
【請求項7】
前記複数種類粒状物成形原料と前記単独粒状物成形原料を成形型内に投入する際、予め前記成形型内を仕切りで複数の投入領域に区画し、
前記複数種類粒状物成形原料と前記単独粒状物成形原料を混ざらないように前記複数の投入領域に分けて投入した後、前記仕切りを前記成形型内から除去し、
その後に前記加熱加圧を行うことを特徴とする請求項6に記載の粒状物成形品の製造方法。
【請求項8】
前記複数種類粒状物成形原料を構成する嵩密度の異なる複数種類の粒状物のうち一種類の粒状物を、前記単独粒状物成形原料を構成する粒状物とすることを特徴とする請求項6または7に記載の粒状物成形品の製造方法。
【請求項9】
前記嵩密度の異なる複数種類の粒状物からなる部位と前記一種類の粒状物からなる部位の硬度を互いに異ならせることを特徴とする請求項6から8の何れか一項に記載の粒状物成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−326329(P2007−326329A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160565(P2006−160565)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】