説明

粘着剤用アクリル系エステルポリマーシロップの製造方法

低い重合温度において少ない量の開始剤を使用しても20乃至70%の重合転換率でアクリル系エステルポリマーシロップを重合することができるのみならず、同時に短い半減期を有する開始剤を使用することによって反応時間を短縮し生産性を向上させることができ、ゲル効果なく安定的な重合が連続的に行われる塊状重合によるアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法を提供する。完全混合式連続反応器、単量体溶液貯蔵槽、及び開始剤溶液貯蔵槽とを含む重合装置を用いたアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法であって、a)単量体溶液貯蔵槽及び開始剤溶液貯蔵槽にそれぞれ単量体溶液と開始剤溶液を供給する段階;b)前記a)段階における単量体溶液貯蔵槽及び開始剤溶液貯蔵槽の溶存酸素量を0.0001乃至3ppmで保持しながら、単量体溶液及び開始剤溶液を完全混合式連続反応器にそれぞれ分離供給し且つ連続反応器の供給直前に混合して供給する段階;及びc)前記b)段階において連続反応器に供給された溶液の混合物を70乃至150℃の温度、常圧乃至10気圧で平均滞留時間を30乃至240分で保持しながら、連続的に塊状重合させる段階;とを含むことを特徴とするアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塊状重合によるアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法に関するものであって、より詳しくは低い重合温度において少ない量の開始剤を使用しても20乃至70%の重合転換率でアクリル系エステルポリマーシロップを重合し得るのみならず、同時に短い半減期を有する開始剤を使用することによって反応時間を短縮し生産性を向上させることができ、ゲル効果なく安定的な重合が連続的に行われる塊状重合によるアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、アクリル系エステルポリマーシロップは無定形の透明な熱可塑性ポリマーであり、透明性に優れて粘着力の調節が容易であって各種粘着シート(sheet)、保護コーティング膜、接着剤など色々な用途で使用されている。
【0003】
このようなアクリル系エステルポリマーシロップは溶液重合、乳化重合、または懸濁重合などの方法で製造されたが、前記方法は残留物の除去に多いエネルギーが消費されるのみならず、高機能の発揮が難しく、重合の後に溶媒を除去しなければならないエネルギー過消費型の重合方法であり、最近は塊状重合且つ光重合によってアクリル系エステルポリマーシロップを製造する成り行きである。
【0004】
塊状重合は連続方法と不連続方法である回分式重合方法とがあり、現在までには主に回分式(batch)重合方法が用いられている。しかし、前記回分式重合方法は生産性及びエネルギー節約の側面から非常に不利であり、反応中に急激な発熱と反応を誘発させるゲル効果を伴うため、色々な制御技術が要求される。
【0005】
一般的な回分式反応器における塊状重合の実行は溶媒が存在しないから熱伝達が難しく、転換率の増加に伴う粘度の急激な上昇によって既に生成されたラジカルの停止反応が減少され、結局部分的なゲル形成などのような現象が生じて不均一な樹脂を得易い。
【0006】
このような短所を克服するために回分式反応器を用い、反応条件を最大限穏やかにして重合を行う方法があるが、この方法は反応系の温度を一定水準で保持しながら反応系の転換率乃至粘度が一定水準に到ったときに重合を強制に停止する方法である。
【0007】
例えば、日本特開平1−011652号には重合禁止剤の投入方法が開示されており、日本特開平9−067495号には単量体の投入による急冷などの方法が開示されているが、前記の重合方法としては反応後半部の粘度の急激な上昇と反応後の物性差異発生の問題点に対する解決策を提示することができず、さらに製造されたポリマーシロップ内には重合開始剤が残存するから重合完了の後に貯蔵安定性が良くないという問題点があって、根本的な解決手段にはならない。
【0008】
従って、回分式反応器を用いて暴走反応が無く、分子量の調節が良くできる方案に対する研究が持続的に進められてきた。
【0009】
実質的に開始剤を使用せず、反応を暴走させることなく塊状重合を行った例として、日本公開特許第2001−302705号はチオール基とカルボキシル基とを共に有する化合物を使用して実質的な開始剤の存在無く塊状重合を行っているが、開始剤の存在無く重合を行う場合には熱的に発生したラジカルの転移を通じて反応がなされるため、反応が非常に遅くなって、割に高温で反応を施さなければならなく、重合効率が低いという問題点がある。
【0010】
また、開始剤を使用しながら暴走反応なく塊状重合を行った例として、日本公開特許第2000−313704号は10時間半減期温度が41℃以下の重合開始剤の量を0.0001乃至0.5重量部の範囲内で使用して、反応温度20乃至80℃において自己発熱を用いて反応物の最高発熱温度を100乃至140℃の範囲に到達させることにより、10乃至50%の重合率を有するアクリルポリマーシロップを製造している。このような方式の重合特性は自己発熱を用いて反応が進められ、反応初期には急激に増加されたラジカルの濃度によって転換率が急激に上昇するようになり、従って最高発熱温度を示し、その以後に上昇された高い温度において開始剤が大部分消耗されて反応が安定化することによって、暴走反応が生じないようになるという利点がある。しかし、前記のように低温の半減期温度を有する開始剤を使用する場合に、その取り扱いと保管がかなり難しくて最も注意が要求され、連続反応でない回分式反応であるため生産性に劣りまた非常に非経済的という問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は低い重合温度において少ない量の開始剤を使用しても20乃至70%の重合転換率でアクリル系エステルポリマーシロップを重合することができるのみならず、同時に短い半減期を有する開始剤を使用することによって反応時間を短縮して生産性を向上させることができ、ゲル効果なく安定的な重合が連続的に行われる塊状重合によるアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は完全混合式連続反応器、単量体溶液貯蔵槽、及び開始剤溶液貯蔵槽とを含む重合装置を用いたアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法であって、
a)単量体溶液貯蔵槽及び開始剤溶液貯蔵槽にそれぞれ単量体溶液と開始剤溶液を供給する段階;
b)前記a)段階における単量体溶液貯蔵槽及び開始剤溶液貯蔵槽の溶存酸素量を0.0001乃至3ppmで保持しながら、単量体溶液及び開始剤溶液を完全混合式連続反応器にそれぞれ分離供給し、且つ連続反応器の供給直前に混合して供給する段階;及び
c)前記b)段階において連続反応器に供給された溶液の混合物を70乃至150℃の温度、常圧乃至10気圧で平均滞留時間を30乃至240分において保持しながら連続的に塊状重合させる段階;を含むことを特徴とするアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法を提供する。
【0013】
以下、本発明について下記のようにより詳細に説明する。
【0014】
本発明のアクリル系エステルポリマーシロップの製造は完全混合式連続反応器、単量体溶液貯蔵槽、及び開始剤溶液貯蔵槽とを含む通常の重合装置で行い、その方法を詳しく説明すると、次の通りである。
【0015】
a)貯蔵槽に溶液供給
本段階は単量体溶液貯蔵槽及び開始剤溶液貯蔵槽にそれぞれ単量体溶液と開始剤溶液を供給する段階であって、前記単量体溶液はi)アクリル系エステル単量体、及びii)分子量調節剤とを含み、前記開始剤溶液はi)アクリル系エステル単量体、ii)分子量調節剤、及びiii)40乃至135℃の10時間半減期温度を有する開始剤とを含む。
【0016】
本発明に使用される前記i)のアクリル系エステル単量体は炭素数1乃至12のアルキル基を有するアクリル系エステル単量体を使用することができ、ここにこれと共重合できる極性アクリル系単量体と混合して使用することができる。
【0017】
前記アクリル系エステル単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、またはイソノニル(メタ)アクリレートなどを使用し得る。
【0018】
前記アクリル系エステル単量体と共重合できる極性アクリル系単量体は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、またはフマル酸などのカルボキシル基を含有する単量体;ヒドロキシ(メタ)アクリレート、またはヒドロキシ(メタ)メチルアクリレートなどのヒドロキシ基を含有する単量体;またはアクリルイミド、N-ビニルピロリドン、またはN-ビニルカプロラクタムなどの窒素を含有する単量体などを使用する。前記極性アクリル系単量体の含量は大きく限られてはいないが、一般的にアクリル系エステル単量体100重量部に対して1乃至20重量部で使用することが良い。
【0019】
なお、前記アクリル系エステル単量体に、スチレンまたはベンゾイル(メタ)アクリレートなどのスチレン系単量体のような第3の不飽和単量体を共重合することができるのは勿論である。
【0020】
本発明に使用される前記ii)の分子量調節剤はメルカプタン(mercaptan)類の連鎖移動剤としてチオール基(-SH)を有する有機化合物であれば特に限られていなく、具体的にエチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、またはドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン類;フェニルメルカプタンまたはベンジルメルカプタンなどのチオールフェノール類;チオグリコール酸または3-メルカプトプロピオン酸などの水酸基含有のメルカプタン類;またはペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプト)プロピオネートなどの機能基を二つ以上有するメルカプタン類などを単独且つ2種以上混合して使用し得る。
【0021】
前記分子量調節剤は、100,000乃至700,000の重量平均分子量が常用粘着剤を製造するために使用される単量体の総重量対比0.0001乃至5重量%で使用することが望ましい。その含量が0.0001重量%未満である場合にはポリマーシロップの分子量があまりにも大きくなって重合が急激に進めるという問題点があり、5重量%を超える場合には重合速度が遅くなり、分子量があまりにも低くなって粘着剤或いは接着剤としての物性が低下されるという問題点がある。
【0022】
本発明に使用される前記iii)の開始剤は半減期が短くて滞留時間即ち、反応時間を短縮して生産性を増大させることができ、重合転換率を低下させず、少ない量で使用できる開始剤が良い。
【0023】
従って、本発明に使用される前記開始剤は70乃至150℃の重合温度の条件で40乃至135℃の10時間半減期温度を有するものが望ましい。前記開始剤の半減期が10時間である時の温度が40℃未満の場合は、保管温度が低過ぎて保管安定性に問題があり、使用するとしても開始剤の半減期が短過ぎて適切な転換率を得るためには過量の開始剤を使用しなければならず、この場合、過量の開始剤の使用による副産物の発生量が大きく生じる問題点がある。また、重合開始剤の半減期が10時間である時の温度が135℃を超えると、開始剤の分解速度が遅過ぎて安定な重合を行うためには重合時間を大幅増やさなければならず、従って、生産性が低下されて非経済的であるという問題点がある。
【0024】
前記開始剤は40乃至135℃の10時間半減期温度を有するアゾ系開始剤またはペルオキシド系開始剤を使用し得る。
【0025】
具体的に、前記アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビス[イソブチロニトリル](AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−メチルブチロニトリル]、アゾビスイソブタノールジアセテート、1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、または2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリルなどを使用し得る。
【0026】
また、前記ペルオキシド系開始剤としては、ジアシルペルオキシド系、ペルオキシエステル系、ペルオキシジカーボネート系、ヒドロペルオキシド系、ペルオキシケタール系、ケトンペルオキシド系、またはジアルキルペルオキシド系などの開始剤を使用し、例えば、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド(BPO)、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミル−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、t−ブチル−イソプロピルモノペルオキシカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−アミルペルオキシアセテート、t−ブチル−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、t−アミルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、2,5−ジヒドロペルオキシ−2,5−ジメチルヘキサン、クメンヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、1,1−ジ(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ−t−アミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、または2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン−3などがある。
【0027】
前記のような開始剤は単量体の総重量対比0.00001乃至1重量%で使用するのが望ましく、さらに望ましくは0.00005乃至0.1重量%で使用することである。その含量が0.00001重量%未満である場合には重合率が低過ぎて生産性が低下するという問題点があり、1重量%を超える場合には重合率が高過ぎてゲル効果による暴走反応が生じるという問題点がある。
【0028】
b)連続反応器に供給
本段階は、前記a)段階において単量体溶液が供給された単量体溶液貯蔵槽及び開始剤溶液が供給された開始剤溶液貯蔵槽の溶存酸素量を0.0001乃至3ppmで保持しながら単量体溶液及び開始剤溶液を完全混合式連続反応器に供給する段階である。
【0029】
この際、前記単量体溶液及び開始剤溶液の供給は連続反応器にぞれぞれ分離して供給することもでき、連続反応器に供給する前に予め混合して供給することもできる。
【0030】
前記単量体溶液貯蔵槽及び開始剤溶液貯蔵槽の溶存酸素量が0.0001ppm未満である場合は過量の窒素を使ってバブリング(bubbling)したり、高真空を保持しなければならないためかなり非経済的という問題点があり、溶存酸素量が3ppmを超える場合は暴走反応が生じるという問題点がある。
【0031】
c)連続塊状重合
本段階は、前記b)段階において連続反応器に供給された溶液混合物を70乃至150℃、望ましくは80乃至140℃の重合反応温度、常圧乃至10気圧の条件で平均滞留時間を30乃至240分で保持しながら連続的に塊状重合させる段階である。
【0032】
前記塊状重合時、温度が70℃未満である場合には、適切な転換率と分子量を有する粘着剤の製造時に粘度が非常に高くなって、反応物の排出且つ熱伝達がよくできないため、部分的にゲルが発生し、ラジカルの停止反応が正常にならないため暴走反応が生じるという問題点があり、150℃を超える場合は、過量の開始剤を使用して重合を行わなければ高い転換率が得られないという問題点がある。
【0033】
また、前記塊状重合時、滞留時間が30分未満である場合には開始剤が重合物に残留して反応完了後の重合安定性に問題があり、240分を超える場合には生産性が低下するという問題点がある。
【0034】
前記のような段階からなる本発明のアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法は、最終の重合転換率が20乃至70%であって、最も安定な重合を行うことができるという利点がある。
【0035】
前記のような本発明は、光学的製品に特に適合した接着剤または粘着剤用の高純度アクリル系エステルポリマーシロップを連続的な塊状重合方法にて重合することにおいて、ゲル効果のない状態で重合転換率を高めることができ、重合時間を短縮させることができ、少ない量でも反応できるようにした開始剤として40乃至135℃の10時間半減期温度を有するペルオキシド系開始剤またはアゾ系開始剤を使用し、ゲル効果のない安定な重合を行うために完全混合式連続反応器、単量体溶液貯蔵槽、及び開始剤溶液貯蔵槽を含む重合装置を使用し、単量体溶液貯蔵槽内の単量体溶液と開始剤溶液貯蔵槽内の開始剤溶液の溶存酸素量を0.0001乃至3ppmで保持させながらそれぞれが貯蔵槽からそれぞれの溶液を完全混合式連続反応器に供給して特定の重合条件下において重合することに特徴がある。
【0036】
また、図1は前記のような本発明のアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法を行うための重合装置の概略図であり、以下、図面を参照して本発明を説明すると、次の通りである。
【0037】
25℃以下で保持するようになっている単量体溶液貯蔵槽1に貯蔵されている単量体溶液は配管8を介して排出され、定量ポンプ4を用いて配管9を通過した後、完全混合式連続反応器3に投入する前に開始剤溶液と混合される。25℃以下に保持するようになっている開始剤溶液貯蔵槽2に貯蔵されている開始剤溶液は配管10を介して排出され、定量ポンプ5を用いて配管11を通過した後、完全混合式連続反応器3に投入する前に配管12で単量体溶液と混合されて完全混合式連続反応器3に投入される。反応温度が70乃至150℃で保持されているジャケット(jacket)のある完全混合式連続反応器3の液位を一定に保持しながら、20乃至70%の転換率を有するアクリル系エステルポリマーシロップを配管8を介して排出させ、ギアポンプ6を用いて配管14を通過させた後、濾過システム7を通過させ最終のアクリル系エステルポリマーシロップを得るようになる。ここで、配管13及び14はアクリル系エステルポリマーシロップの粘度に応じて加熱することも冷却することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明がよりわかるように望ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するもののみであり、本発明の範囲が下記実施例に限られるものではない。
【0039】
<実施例>
実施例1
単量体として2−エチルヘキシルアクリレート96重量%とアクリル酸4重量%、及び分子量調節剤としてペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプト)プロピオネートを単量体対比0.08重量%を混合した単量体溶液を単量体溶液貯蔵槽1に6kgで準備し、単量体として2−エチルヘキシルアクリレート96重量%とアクリル酸4重量%、分子量調節剤としてペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプト)プロピオネートを単量体対比0.08重量%、及び開始剤として2,2’−アゾビス[イソブチロニトリル](AIBN)を単量体対比0.0004重量%を混合した開始剤溶液を開始剤溶液貯蔵槽2に2kgで準備した。
【0040】
前記準備した単量体溶液貯蔵槽1の単量体溶液と開始剤溶液貯蔵槽2の開始剤溶液を700mL/分の窒素でそれぞれ30分間バブリングして残存するそれぞれの貯蔵槽内の溶存酸素量を0.8ppmで保持した。この際、単量体溶液及び開始剤溶液の温度は20℃以下で保持した。
【0041】
その後、連続反応用単量体溶液と連続反応用開始剤溶液をそれぞれ配管8、10を介して排出し、定量ポンプ4、5を用いて配管9、11を通過させた後、配管12で完全混合し、完全混合式連続反応器3に投入させて連続重合反応を行い始めた。
【0042】
反応温度が133℃で保持されているジャケットのある完全混合式連続反応器3の液位を一定に保持しながら、60%の転換率を有するアクリルポリマーシロップを配管13を介して排出させ、ギアポンプ6を用いて配管14を通過させた後、濾過システム7を通過させて最終的にアクリル系エステルポリマーシロップを収得した。
【0043】
この際、連続反応時、単量体溶液は平均に10.9g/分に供給し、開始剤溶液は1.6g/分に供給し、連続反応の中、ジャケットの温度は反応温度対比±5℃を保持した。また、一定の滞留時間の間隔でサンプリングし、平均滞留時間は2時間で保持した。
【0044】
実施例2
前記実施例1から開始剤としてAIBNを単量体対比0.00025重量%で使用し、重合反応温度を100℃とし、単量体溶液と開始剤溶液をそれぞれ平均に8.7g/分と2.1g/分に供給し、平均滞留時間を2.3時間で保持したことを除いては、実施例1と同一に行ってアクリル系エステルポリマーシロップを製造した。
【0045】
実施例3
前記実施例1から開始剤として1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを単量体対比0.00025重量%で使用し、重合反応温度を125℃とし、単量体溶液と開始剤溶液をそれぞれ平均に8g/分と2g/分に供給し、平均滞留時間を2.5時間で保持したことを除いては、実施例1と同一に行ってアクリル系エステルポリマーシロップを製造した。
【0046】
実施例4
前記実施例1から開始剤としてV−65を単量体対比0.00019重量%で使用し、重合反応温度を90℃とし、単量体溶液と開始剤溶液をそれぞれ平均に11g/分と2g/分に供給し、平均滞留時間を1.9時間で保持したことを除いては、実施例1と同一に行ってアクリル系エステルポリマーシロップを製造した。
【0047】
実施例5
前記実施例1から開始剤としてBPOを単量体対比0.00094重量%で使用し、重合反応温度を110℃とし、単量体溶液と開始剤溶液をそれぞれ平均に8.3g/分と1.9g/分に供給し、平均滞留時間を2.5時間で保持したことを除いては、実施例1と同一に行ってアクリル系エステルポリマーシロップを製造した。
【0048】
前記製造したアクリル系エステルポリマーシロップの重合転換率、重量平均分子量(Mw)、分子量分布、連続重合の転換率とを測定し、その結果を下記表1に示した。
【0049】
前記実施例1乃至5から製造したアクリル系エステルポリマーシロップをサンプリングした後、重量平均分子量(Mw)、重合転換率、連続重合の転換率、分子量分布(polydispersity index, PDI)とを測定し、その結果を下記表1に示した。
【0050】
【表1】

【0051】
前記表1からわかるように、本発明に従って製造した実施例1乃至5はゲル発生や粘度上昇、及びこれに伴う撹拌不良もなく、安定的にアクリル系エステルポリマーシロップを製造することができた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によると、低い重合温度及び少ない量の開始剤の使用でも20乃至70%の重合転換率で重合することができ、短い半減期を有する開始剤を使用することによって反応時間を短縮し、結局は生産性を高めることができ、ゲル効果なく最も安定的な重合が連続的に行われるアクリル系エステルポリマーシロップを製造することのできるという効果がある。
【0053】
前記から本発明の記載された具体例のみに対して詳細に説明したが、本発明の技術思想範囲内で当業者にとって多様な変形及び修正が可能であることは明らかであり、このような変形及び修正が添付された特許請求範囲に属することも当然である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による重合反応を行うための重合装置の概略図である。
【符号の説明】
【0055】
1 単量体溶液貯蔵槽
2 開始剤溶液貯蔵槽
3 完全混合式連続反応器
4、5 定量ポンプ
6 ギアポンプ
7 濾過システム(filter system)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全混合式連続反応器、単量体溶液貯蔵槽、及び開始剤溶液貯蔵槽を含む重合装置を用いたアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法であって、
a)単量体溶液貯蔵槽及び開始剤溶液貯蔵槽にそれぞれ単量体溶液と開始剤溶液を供給する段階;
b)前記a)段階における単量体溶液貯蔵槽及び開始剤溶液貯蔵槽の溶存酸素量を0.0001乃至3ppmで保持しながら、単量体溶液及び開始剤溶液を完全混合式連続反応器にそれぞれ分離供給し、且つ連続反応器の供給直前に混合して供給する段階;及び
c)前記b)段階において連続反応器に供給された溶液の混合物を70乃至150℃の温度、常圧乃至10気圧で平均滞留時間を30乃至240分において保持しながら、連続的に塊状重合させる段階;を含むことを特徴とするアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法。
【請求項2】
前記a)段階における単量体溶液がi)アクリル系エステル単量体、及びii)分子量調節剤とを含み、前記開始剤溶液がi)アクリル系エステル単量体、ii)分子量調節剤、及びiii)40乃至135℃の10時間半減期温度を有する開始剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法。
【請求項3】
前記i)のアクリル系エステル単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソノニル(メタ)アクリレートとからなる群から1種以上選ばれる炭素数1乃至12のアルキル基を有するアクリル系エステル単量体であることを特徴とする請求項2に記載のアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法。
【請求項4】
前記i)のアクリル系エステル単量体がこれと共重合できる極性アクリル系単量体と混合して使用されることを特徴とする請求項2に記載のアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法。
【請求項5】
前記極性アクリル系単量体は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、またはフマル酸のカルボキシル基を含有する単量体;ヒドロキシ(メタ)アクリレートまたはヒドロキシ(メタ)メチルアクリレートのヒドロキシ基を含有する単量体;及びアクリルイミド、N−ビニルピロリドンまたはN−ビニルカプロラクタムの窒素を含有する単量体とからなる群から1種以上選ばれる極性アクリル系単量体をアクリル系エステル単量体100重量部に対して1乃至20重量部で混合されることを特徴とする請求項4に記載のアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法。
【請求項6】
前記i)のアクリル系エステル単量体はスチレンまたはベンゾイル(メタ)アクリレートの不飽和単量体をさらに混合して使用することを特徴とする請求項2に記載のアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法。
【請求項7】
前記ii)の分子量調節剤はメルカプタン(mercaptan)類の連鎖移動剤としてチオール基(-SH)を有する有機化合物から1種以上選ばれることを特徴とする請求項2に記載のアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法。
【請求項8】
前記ii)の分子量調節剤は単量体の総重量対比0.0001乃至5重量%で使用されることを特徴とする請求項2に記載のアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法。
【請求項9】
前記iii)の開始剤は40乃至135℃の10時間半減期温度を持つアゾ系開始剤またはペルオキシド系開始剤から単独且つ2種以上を使用することを特徴とする請求項2に記載のアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法。
【請求項10】
前記iii)の開始剤が単量体の総重量対比0.00001乃至1重量%で使用されることを特徴とする請求項2に記載のアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法。
【請求項11】
前記アクリル系エステルポリマーシロップの最終の重合転換率が20乃至70%であることを特徴とする請求項1に記載のアクリル系エステルポリマーシロップの製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の製造方法から製造されたアクリル系エステルポリマーシロップを含むことを特徴とする粘着剤。

【図1】
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【公表番号】特表2008−519137(P2008−519137A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540273(P2007−540273)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002104
【国際公開番号】WO2006/129974
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】