説明

粘着剤組成物、及びそれを用いてなる粘着積層体

【課題】架橋処理後に優れた粘着特性を発現し、殊に再剥離性に優れ、加熱処理及び高湿処理により浮きや剥がれの生じない、液晶ディスプレイ装置等のカラー表示装置に好適に用いられる粘着剤組成物の提供。
【解決手段】ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、ポリイソシアネート硬化剤(B)を5〜30重量部添加してなる粘着剤組成物であって、
ウレタン樹脂(A)が、ポリイソシアネート(a1)、ポリオール(a2)、及び一分子中に水酸基2個とカルボキシル基1個とを有するジオキシカルボン酸(a3)を反応させてなるポリウレタン(Ax)であるか、あるいはポリウレタン(Ax)に、更にジアミン(A4)を反応させてなるポリウレタンウレア(Ay)であり、
かつ、ウレタン樹脂(A)の酸価が、20〜80mgKOH/gであることを特徴とする粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ装置等のカラー表示装置に好適に用いられる粘着剤組成物に関する。更に詳しくは、架橋処理後に優れた粘着特性を発現し、殊に再剥離性に優れ、加熱処理及び高湿処理により浮きや剥がれの生じない粘着剤層を形成できる粘着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスやセラミックス、金属などの被着体に、粘着剤を介して有機高分子材料からなるフィルム等を貼合した場合、貼合せ経時により、フィルム端部分に剥がれが生じたり貼合せ部に浮きが生じたりするなど、好ましくない事態がしばしば発生する。
【0003】
このような事態を解決するために、一般的には、粘着剤構成成分の分子量を上げたり、架橋密度を高めたりするなどして、粘着特性を高めた強粘着性粘着剤を用いることが行われる。しかし、このような強粘着性粘着剤を使用した場合、粘着力や保持力は向上するものの、高温高湿下では、有機高分子材料からなるフィルムの収縮、膨潤によって発生する形状変化に粘着剤層が追従できなくなり、浮きや剥がれ等の問題発生の要因となっている。
【0004】
ところで、光学部材の中には、その表面に偏光板を貼合せて使用するものがあり、代表的な例として液晶表示装置(LCD)の液晶セルが挙げられる。液晶表示装置の部材である偏光板と液晶セルとの貼合せに用いる粘着剤に対しては、様々な環境下にあっても偏光板に剥がれや浮きが生じることのない耐久性と、液晶セルにおける光漏れを防止し得る性能が求められている。この光漏れは、特に高温高湿環境下において、偏光板の収縮・膨張といった寸法変化に伴う応力を粘着剤層で吸収することができない場合に、偏光板における残留応力が不均一になる結果生じる。
【0005】
このような光漏れの問題を解決するために、例えば粘着剤に可塑剤などの低分子量体を添加することで、適度に軟らかくして応力緩和性を付与する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、低分子量体の添加は、偏光板を剥離した際に被着体を汚染するブリスターの原因となる上、保持力を低下させることとなり、経時による浮きや剥がれ が発生しやすくなる。
【0006】
又、アクリル系単量体と、片末端に共重合可能な不飽和二重結合を有するマクロモノマーを共重合せしめた重量平均分子量(Mw)15万〜200万のグラフトポリマーを粘着成分とすることで、ブリスターが減少できるという技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法では、マクロモノマーの共重合性が悪いため、一部未反応のマクロモノマーが残り、物性に悪影響を与えることや、アクリル系単量体とマクロモノマーとの相溶性の点で、粘着層に濁りを生ずる場合があった。又、マクロモノマーはコストが高いという問題もあった。
【0007】
又、特定のスチレン系もしくはα−メチルスチレン系の粘着付与剤を、Mwが80万以上のアクリル系共重合体に添加することで、透明性に問題がない透明粘着フィルムを得る技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この粘着付与剤は、耐光性、耐熱性が悪く、紫外線下や高温の環境下で長期間放置すると、褐色に着色し、非常に外観が悪くなるという問題があった。
【0008】
粘着剤には、アクリル系樹脂と架橋剤とを含有するアクリル系粘着剤の他に、アクリル系樹脂にポリウレタン系樹脂を併用してなるものもある。例えば、ガラス転移温度(Tg)が−60〜−5℃のアクリル系樹脂とガラス転移温度(Tg)が−5℃以下のポリウレタン系樹脂等とを混合してなる粘着剤が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
又、アクリル系樹脂100重量部と、アミノ基含有ポリウレタン系樹脂10〜50重量部とを含有する粘着剤が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【0010】
更に、アクリル系樹脂と、水酸基含有ポリウレタン系樹脂とを含有する粘着剤が知られている(例えば、特許文献6参照)。
【0011】
このように、様々な樹脂を混合してなる粘着剤は、各樹脂の短所を相互に補いあい、被着体との接着性を高めたり、屈折率を上げたり、様々な性能を向上したりできると一般には考えられる。しかし、アクリル系樹脂と、ポリウレタン系樹脂とは相溶性が悪く、アクリル系樹脂に対し、ポリウレタン系樹脂を少量混合する程度であれば透明性をさほど損なうことはないが、ポリウレタン系樹脂を多く混合しようとすると、粘着剤自体が白化したり、分離したりする。偏光フィルム等を液晶セル用のガラスに貼着するための粘着剤には、極めて高度な透明性が要求される。そして、上記のような、相溶性の悪い粘着剤を用いて偏光フィルム等を液晶セル用のガラスに貼着しようとしても、粘着剤層に相分離や揺らぎが発生してしまうという問題点があった。
【0012】
又、液晶ディスプレイ等の製造工程において、偏光板を液晶セルなどの光学部品に貼合せするに際し、貼合せ位置にずれが生じた場合など、貼合せからある時間が経過した後に偏光板を剥離し、高価な液晶セルを再利用することが必要となる場合がある。従って、偏光板に塗布されている粘着剤を介して貼合した後、ある時間経過後であっても液晶セルから比較的容易に剥離することができる粘着剤が求められていた。これは、接着耐久性を付与するための強粘着力化とは相反する性質であって、これらを両立することが課題であった。更に、貼合せからある時間経過後であっても被着体から比較的容易に剥離することができると共に、剥離することができる時間帯から更に時間が経過した後において強粘着力化する粘着剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3272921号公報
【特許文献2】特公平7−98923号公報
【特許文献3】特開平11−12553号公報
【特許文献4】特開2003−073646号公報
【特許文献5】特開2004−083648号公報
【特許文献6】特開2002−053835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、液晶ディスプレイ装置等のカラー表示装置に用いられる光学部材の接着に好適な粘着剤組成物の提供を目的とし、更に詳しくは、架橋処理後に優れた粘着特性を発現し、殊に再剥離性に優れ、加熱処理および高湿処理により浮きや剥がれの生じない粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは前記の課題を解決するため、鋭意検討の結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の第1の発明は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、ポリイソシアネート硬化剤(B)を5〜30重量部添加してなる粘着剤組成物であって、
ウレタン樹脂(A)が、ポリイソシアネート(a1)、ポリオール(a2)、及び一分子中に水酸基2個とカルボキシル基1個とを有するジオキシカルボン酸(a3)を反応させてなるポリウレタン(Ax)であるか、あるいはポリウレタン(Ax)に、更にジアミン(A4)を反応させてなるポリウレタンウレア(Ay)であり、
かつ、ウレタン樹脂(A)の酸価が、20〜80mgKOH/gであることを特徴とする粘着剤組成物に関する。
【0016】
又、第2の発明は、ポリイソシアネート(a1)が、芳香族ポリイソシアネート又は、脂環族ポリイソシアネートであることを特徴とする第1の発明の粘着剤組成物に関する。
【0017】
又、第3の発明は、一分子中に水酸基2個とカルボキシル基1個とを有するジオキシカルボン酸(a3)が、2,2−ジメチロールブタン酸であることを特徴とする第1又は第2の発明の粘着剤組成物に関する。
【0018】
又、第4の発明は、ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が、20000〜500000であることを特徴とする第1〜3いずれかの発明の粘着剤組成物に関する。
【0019】
又、第5の発明は、ポリイソシアネート硬化剤(B)が、下記ジイソシアネート化合物(b1)のいずれかのトリメチロールプロパンアダクト体、ビュレット体、及びヌレート体から選ばれる少なくとも1つの硬化剤であることを特徴とする第1〜4いずれかの発明の粘着剤組成物に関する。
ジイソシアネート化合物(b1);トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート。
【0020】
又、第6の発明は、シランカップリング剤を含むことを特徴とする第1〜5いずれかの発明の粘着剤組成物に関する。
【0021】
又、第7の発明は、シート状基材の少なくとも一方の面に、第1〜6いずれかの発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層が積層されてなる粘着積層体に関する。
【0022】
又、第8の発明は、23℃における、粘着剤層の貯蔵弾性率(G’)が0.5〜1.6MPaであり、かつ、80℃における貯蔵弾性率(G’)が0.5〜1.0MPaであり、
更に、無アルカリガラスに貼合せた後、23℃で7日間経過後の粘着力が2〜10N/25mmであることを特徴とする第7の発明の粘着積層体に関する。
【0023】
又、第9の発明は、粘着剤層のゲル分率が、50〜100重量%である第7又は第8の発明の粘着積層体に関する。
【0024】
又、第10の発明は、シート状基材が光学部材であることを特徴とする第7〜9いずれかの発明の粘着積層体に関する。
【0025】
又、第11の発明は、光学部材が、偏光板である第10の発明の粘着積層体に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、液晶ディスプレイ装置等のカラー表示装置に用いられる光学部材の接着に好適な粘着剤組成物を提供できるようになった。更に詳しくは、架橋処理後に優れた粘着特性を発現し、殊に再剥離性に優れ、加熱処理および高湿処理により浮きや剥がれの生じない粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の粘着剤組成物について更に詳しく説明する。本発明の粘着剤組成物は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、ポリイソシアネート硬化剤(B)を5〜30重量部添加してなる粘着剤組成物であって、
ウレタン樹脂(A)が、ポリイソシアネート(a1)、ポリオール(a2)、及び一分子中に水酸基2個とカルボキシル基1個とを有するジオキシカルボン酸(a3)を反応させてなるポリウレタン(Ax)であるか、あるいはポリウレタン(Ax)に、更にジアミン(A4)を反応させてなるポリウレタンウレア(Ay)であり、
かつ、ウレタン樹脂(A)の酸価が、20〜80mgKOH/gであることを特徴とする。
【0028】
まず、ウレタン樹脂(A)のうち、ポリウレタン(Ax)について説明する。ポリウレタン(Ax)は、ポリイソシアネート(a1)、ポリオール(a2)、及び一分子中に水酸基2個とカルボキシル基1個とを有するジオキシカルボン酸(a3)を、反応させてなるウレタン樹脂であり、かつ、酸価が20〜80mgKOH/gであることを特徴とする。
【0029】
本発明に用いられるポリイソシアネート(a1)としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0030】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0031】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0032】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0033】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0034】
又、それらのビュレット体、ヌレート体、更にはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。密着性及び接着耐久性などを考慮すると、芳香族ポリイソシアネート、又は、脂環族ポリイソシアネートが好ましく、特に、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましい。これらのポリイソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明に用いられるポリオール(a2)としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、これらのポリオールとジイソシアネートとの反応物であるポリウレタンポリオール、多価アルコールのポリエーテル付加物等を用いることができる。
【0036】
本発明に用いるポリエステルポリオールとしては、2個以上の水酸基を有する化合物[但し、ポリオール(a2)は除く]とポリカルボン酸類との縮合反応により得ることができ、公知のポリエステルポリオールを用いることができる。
【0037】
又、その他のポリエステルポリオールとして、ポリカプロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等の、ラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等も挙げられる。
【0038】
2個以上の水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール等の脂肪族あるいは脂環族ジオール類;
1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、あるいはビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させてなるビスフェノール類等の芳香族ジオール類;
1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールブタン、1,1,1−トリメチロールペンタン、1,1,1−トリメチロールヘキサン、1,1,1−トリメチロールヘプタン、1,1,1−トリメチロールオクタン、1,1,1−トリメチロールノナン、1,1,1−トリメチロールデカン、1,1,1−トリメチロールウンデカン、1,1,1−トリメチロールドデカン、1,1,1−トリメチロールトリデカン、1,1,1−トリメチロールテトラデカン、1,1,1−トリメチロールペンタデカン、1,1,1−トリメチロールヘキサデカン、1,1,1−トリメチロールヘプタデカン、1,1,1−トリメチロールオクタデカン、1,1,1−トリメチロールノナデカン、1,1,1−トリメチロール−sec−ブタン、1,1,1−トリメチロール−tert−ペンタン、1,1,1−トリメチロール−tert−ノナン、1,1,1−トリメチロール−tert−トリデカン、1,1,1−トリメチロール−tert−ヘプタデカン、1,1,1−トリメチロール−2−メチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−3−メチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−2−エチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−3−エチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロールイソヘプタデカンなどのトリメチロール分岐アルカン類、トリメチロールブテン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールペンテン、トリメチロールヘキセン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールオクテン、トリメチロールデセン、トリメチロールドデセン、トリメチロールトリデセン、トリメチロールペンタデセン、トリメチロールヘキサデセン、トリメチロールヘプタデセン、トリメチロールオクタデセン、1,2,6−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、グリセリン等の3官能ポリオール類;
ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等の4官能以上のポリオール類を挙げることができる。
【0039】
これらの2個以上の水酸基を有する化合物は、それぞれを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
ポリカルボン酸類としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその無水物等;
o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、無水フタル酸等の芳香族ジカルボン酸及びその無水物等;
ダイマー酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸及びその無水物等が挙げられる。
更には、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテートカルボン酸、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸等の3官能以上のポリカルボン酸及びその無水物等が挙げられる。
【0041】
これらのポリカルボン酸類は、それぞれを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明に用いるポリエーテルポリオールとしては、公知のポリエーテルポリオールを用いることができる。例えば、水、や上記の2個以上の水酸基を有する化合物を開始剤として用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を重合させることにより得られるポリエーテルポリオール、具体的にはポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の官能基数が2以上のものを用いることができる。
【0043】
本発明に用いるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、(1)上記の2個以上の水酸基を有する化合物と炭酸エステルとの反応、(2)上記の2個以上の水酸基を有する化合物にアルカリの存在下でホスゲンを作用させる反応などで得られるものが挙げられる。
【0044】
(1)の製法で用いられる炭酸エステルとして具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0045】
又、上記ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールとジイソシアネートとの反応物であるポリウレタンポリオールは、両末端が水酸基になるように、これらのポリオールとジイソシアネートとをウレタン化反応させることで得ることができる。ジイソシアネートとしては、上記で例示したポリイソシアネート(a1)の中でイソシアネート基を2個有する化合物を用いることができる。
【0046】
又、多価アルコールのポリエーテル付加物とは、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の多価アルコールにポリエーテルポリオールを付加したものである。部分エステル化した多価アルコールとポリエーテルポリオールの付加物も利用できる。この場合、ポリエーテル部分はブロックポリマーであってもランダムポリマーであってもよい。ポリエーテルポリオールを付加した末端は水酸基であるが、部分的にアルキル基や芳香族炭化水素基で封鎖されていてもよい。
【0047】
本発明において、ポリオール(a2)は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。又、上記の2個以上の水酸基を有する化合物も併用することができる。これらポリオール(a2)のうち、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリエステルポリオールを使用することが、接着性、耐熱性、耐湿熱性、及び透明性に優れた粘着剤を得られるため、最も好ましい。
【0048】
又、これらのポリオール(a2)の分子量は、低分子量から高分子量まで使用可能であるが、好ましくは数平均分子量(Mn)が500〜20,000、更に好ましくは数平均分子量(Mn)が500〜10,000である。このようなポリオールを使用すると、密着性、濡れ性に優れる粘着剤組成物を得ることができる。数平均分子量(Mn)が500よりも小さいとポリウレタン(Ax)を合成した際に樹脂が硬くなりすぎて、初期接着性(タック)が発現しにくくなったり、プラスチック同士や、ガラス板とプラスチックフィルムとを積層した場合、接着強度が弱くなったりして好ましくない。例えば、そのような積層体を湿熱経時した場合、剥離しやすくなる。一方、数平均分子量(Mn)が20,000を超えるとポリウレタン(Ax)の溶媒への溶解性が低下し、又、粘着剤組成物の粘度が上昇するため、塗加工時の取り扱いが困難となり、好ましくない。
【0049】
本発明における一分子中に水酸基2個とカルボキシル基1個とを有するジオキシカルボン酸(a3)[以下、ジオキシカルボン酸(a3)と表記する場合がある。]としては、例えば、ジヒドロキシフマル酸、ジヒドロキシマレイン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)エタン酸(別名、ジメチロール酢酸)、2,3−ジヒドロキシプロパン酸(別名、グリセリン酸)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸(別名、2,2−ジメチロールプロピオン酸)、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸(別名、3,3−ジメチロールプロピオン酸)、2,3−ジヒドロキシ−2−メチルプロパン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸(別名、ジメチロール酪酸)、2,2−ジヒドロキシブタン酸(別名、2,2−ジメチロールブタン酸)、2,3−ジヒドロキシブタン酸、2,4−ジヒドロキシブタン酸(別名、3−デオキシテトロン酸)、3,4−ジヒドロキシブタン酸、2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルブタン酸、2,3−ジヒドロキシ−2−メチルブタン酸、2,3−ジヒドロキシ−2−エチルブタン酸、2,3−ジヒドロキシ−2−イソプロピルブタン酸、2,3−ジヒドロキシ−2−ブチルブタン酸、(R)−2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルブタン酸(別名、バントイン酸)、2,3−ジヒドロキシブタン二酸(別名、酒石酸)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ペンタン酸(別名、ジメチロール吉草酸)、3,5−ジヒドロキシ−3−メチルペンタン酸(別名、メバロン酸)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ヘキサン酸(別名、ジメチロールカプロン酸)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン酸(別名、ジメチロールエナント酸)、3,5−ジヒドロキシヘプタン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)オクタン酸(別名、ジメチロールカプリル酸)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ノナン酸(別名、ジメチロールベラルゴン酸)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)デカン酸(別名、ジメチロールカプリン酸)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ドデカン酸(別名、ジメチロールラウリン酸)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)テトラデカン酸(別名、ジメチロールミリスチン酸)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ペンタデカン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ヘキサデカン酸(別名、ジメチロールパルミチン酸)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタデカン酸(別名、ジメチロールマルガリン酸)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)オクタデカン酸(別名、ジメチロールステアリン酸)、ジメチロールオレイン酸、ジメチロールリノール酸、ジメチロールリノレン酸、ジメチロールアラコドン酸、ジメチロールドコサヘキサエン酸、ジメチロールエイコサペンタエン酸等の脂肪族系ジオキシカルボン酸類;
2,3−ジヒドロキシ安息香酸(別名、o−ピロカテク酸)、2,4−ジヒドロキシ安息香酸(別名、β−レゾルシン酸)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(別名、ゲンチジン酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸(別名、γ−レゾルシン酸)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(別名、プロトカテク酸)、3,5−ジヒドロキシ安息香酸(別名、α−レゾルシン酸)、2,6−ジヒドロキシ−4−メチル安息香酸、2,4−ジヒドロキシ−6−メチル安息香酸(別名、o−オルセリン酸)、3,5−ジヒドロキシ−4−メチル安息香酸、2,4−ジヒドロキシ−3,6−ジメチル安息香酸、2,3−ジヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ−5−メトキシ安息香酸、2,4−ジ(ヒドロキシメチル)安息香酸、3,4−ジ(ヒドロキシメチル)安息香酸、4−ブロモ−3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−2,6−ジヒドロキシ安息香酸、5−クロロ−2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシ(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)酢酸(別名、バニルマンデル酸)、D,L−3,4−ジヒドロキシマンデル酸、2,5−ジヒドロキシフェニル酢酸(別名、ホモゲンチジン酸)、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸(別名、ホモプロトカテク酸)、3,4−(メチレンジオキシ)フェニル酢酸、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン酸(別名、ヒドロカフェー酸)、3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)アクリル酸(別名、ウンベル酸)、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アクリル酸(別名、カフェー酸)、4,4’−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2,4−ジヒドロキシ桂皮酸、2,5−ジヒドロキシ桂皮酸、シンナミル−3,4−ジヒドロキシ―α―シアノ桂皮酸、2−ブロモ−4,5−メチレンジオキシ桂皮酸、3,4−メチレンジオキシ桂皮酸、4,5−メチレンジオキシ−2−ニトロ桂皮酸、2,6−ジヒドロキシイソニコチン酸、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、4,8−ジヒドロキシキノリン−2−カルボン酸(別名、キサンツレン酸)3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,6−ジヒドロキシピリジン−4−カルボン酸(別名、シトラジン酸)、2,4−ジヒドロキシチアゾール−5−酢酸、2−(1−チエニル)エチル−3,4−ジヒドロキシベンジリデンシアノ酢酸、二プロピオン酸−6−エストラジオール、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼン二酢酸、(2R,3R)−2,3−ジヒドロキシ−3−(フェニルカルバモイル)プロピオン酸等の芳香環あるいはヘテロ環含有系ジオキシカルボン酸類等が挙げられる。
【0050】
なお、芳香環を有する場合、2つの水酸基は芳香環に直結しないものが好ましい。特に凝集力、耐熱性、耐湿熱性の向上の面から、2,2−ジメチロールブタン酸が好ましい。
【0051】
本発明に用いられる、ジオキシカルボン酸(a3)は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0052】
ジオキシカルボン酸(a3)は水酸基を2個有するので、前述のポリオール(a2)と同様に水酸基成分として、ポリイソシアネート(a1)と重付加(ウレタン化反応)し、本発明のポリウレタン(Ax)を生成する。そして、ジオキシカルボン酸(a3)由来のカルボキシル基がポリウレタン(Ax)の側鎖のカルボキシル基となる。
【0053】
ウレタン化反応の際の活性に富むという点で、ジオキシカルボン酸(a3)中の2個の水酸基は共に一級であることが好ましい。一方、ジオキシカルボン酸(a3)中のカルボキシル基がウレタン化反応の際に、反応成分として機能すると、反応の際にゲル化し易く、ゲル化せずにウレタン樹脂(Ax)が得られても部分的に凝集し易かったりする。そこで、ウレタン化反応の際にはジオキシカルボン酸(a3)が、専ら水酸基成分として機能し、カルボキシル基はウレタン化反応の反応成分としては、機能しないように、ジオキシカルボン酸(a3)中のカルボキシル基は、二級又は三級であることが好ましい。ジオキシカルボン酸(a3)は、二級又は三級のカルボキシル基を1分子中に1個有することができる。又、ジオキシカルボン酸中のカルボキシル基は、ウレタン化反応を促進する触媒的な働きをする。
【0054】
この様にジオキシカルボン酸(a3)の中でも、1分子中に一級の水酸基を2個、二級又は三級のカルボキシル基を1個有する化合物を使用することで、部分凝集し難く、均一性に富み、良好な流動性を呈するポリウレタン(Ax)を得ることができる。更にこのようなポリウレタン(Ax)に後述するポリイソシアネート硬化剤(B)を配合した場合、硬化後に凝集力に富む粘着剤層を形成し得るポットライフの比較的長い粘着剤組成物を得ることができる。
【0055】
本発明のポリウレタン(Ax)は、ジオキシカルボン酸(a3)由来の構造を1〜25重量%含有することが好ましい。即ち、側鎖に導入されるカルボキシル基の量は、ジオキシカルボン酸(a3)由来の構造に依存する。側鎖に導入されたカルボキシル基は、後述のポリイソシアネート硬化剤(B)と架橋し粘着剤層を形成し、凝集力、接着性、耐熱性、耐湿熱性の向上に寄与する。しかし、ジオキシカルボン酸(a3)によって導入されたカルボキシル基が多すぎると粘着剤組成物のポットライフが短くなる。そこで、粘着剤組成物としてのポットライフと、粘着剤層の性能とのバランスから、ジオキシカルボン酸(a3)由来の構造は、ポリウレタン(Ax)中に5〜20重量%であることが特に好ましい。
【0056】
本発明のポリウレタン(Ax)の合成は無溶剤でも可能であるが、溶剤を用いて行うことがより好ましい。使用される溶剤としては、公知のものを使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;
トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;
ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;
ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤などであり、これらは単独使用でも2種以上の使用でも良い。ただし、水酸基を含有する溶剤は用いることができない。水酸基を含有する溶剤を用いるとポリイソシアネート(a1)が溶剤と反応してしまうため、目的のポリウレタン(Ax)を得ることができない。ポリウレタン(Ax)や後述するポリウレタンウレア(Ay)の溶解性、溶剤の沸点等の点から特にメチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエンが好ましい。
【0057】
ポリイソシアネート(a1)とポリオール(a2)とジオキシカルボン酸(a3)とを反応させてポリウレタン(Ax)をつくるウレタン化反応は、種々の方法が可能である。[I]全量仕込みで反応させる場合と、[II]ポリオール(a2)とジオキシカルボン酸(a3)とをフラスコに仕込み、ポリイソシアネート(a1)を滴下する方法に大別されるが、反応を精密に制御する場合は[II]が好ましい。ポリウレタン(Ax)を得る反応の温度は120℃以下が好ましい。更に好ましくは70〜110℃である。120℃を越えると、アロファネート反応が進行し所定の分子量と構造を有するポリウレタン(Ax)が得られなくなる。又、反応速度の制御が困難になる。ウレタン化反応は、70〜110℃で2〜20時間行うのが好ましい。
【0058】
ポリウレタン(Ax)の合成には、公知の触媒を使用しても良い。例えば3級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
【0059】
3級アミン系化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−(5,4,0)−ウンデセン−7(DBU)等が挙げられる。
【0060】
有機金属系化合物としては、例えば、錫系化合物、非錫系化合物を挙げることができる。錫系化合物としてはジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
【0061】
非錫系化合物としては、例えばジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネートなどの鉄系、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0062】
本発明のポリウレタン(Ax)の合成に触媒を使用する場合は、用いられる触媒としては、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、2−エチルヘキサン酸錫等が好ましく、場合によっては単独、もしくは併用することもできる。触媒の使用量としては、反応成分100重量部に対して0.001〜0.1重量部の範囲の量で用いる。0.001重量部未満であると、反応時間が長くなったり、反応自体が起こらなかったりする場合がある。0.1重量部を超える量を用いると、生成物が着色したり、使用するポリオール(a2)の分解反応を促進するという不都合を生じたりするため好ましくない。
【0063】
ポリウレタン(Ax)をポリウレタン(Ay)の前駆体として利用せず、そのままウレタン樹脂(A)として用いる場合、ポリウレタン(Ax)の合成にあたっては、ポリイソシアネート(a1)とポリオール(a2)とジオキシカルボン酸(a3)との配合比は、末端に水酸基が残るように、ポリイソシアネート(a1)中のイソシアネート基1モルに対して、ポリオール(a2)及びジオキシカルボン酸(a3)中の水酸基の合計が1モル以上であることが必要である。適切な配合比は、化合物の反応性、3価以上の化合物の存在比などで大きく左右されるが、ポリイソシアネート(a1)中のイソシアネート基1モルに対して、ポリオール(a2)及びジオキシカルボン酸(a3)中の水酸基の合計が1〜1.2モルであることが好ましい。1.2モルより多いと、未反応のポリオール(a2)及びジオキシカルボン酸(a3)が残留するおそれがある。又、1モルよりも小さいと、樹脂の分子量が大きくなりすぎ、ゲル化する場合がある。反応の終点は、滴定によるイソシアネート基の定量、IR測定によるイソシアネート基のピークの消失により判断する。
【0064】
次いで、ウレタン樹脂(A)のうち、ポリウレタンウレア(Ay)について説明する。ポリウレタンウレア(Ay)は、上記ポリウレタン(Ax)にジアミン(A4)を加えて、鎖延長反応を行うことで得ることができる。即ち、ポリウレタンウレア(Ay)は、ポリイソシアネート(a1)、ポリオール(a2)、及び一分子中に水酸基2個とカルボキシル基1個とを有するジオキシカルボン酸(a3)とを反応させてなるポリウレタン(Ax)に、更にジアミン(A4)を反応させてなるウレタン樹脂であり、かつ、酸価が20〜80mgKOH/gであることを特徴とする。
【0065】
ポリウレタンウレア(Ay)を合成する場合には、公知の鎖延長剤を利用した合成法を用いることができる。即ち、ジアミン(A4)は、鎖延長成分として作用する。ここでジアミン(A4)とは、2個の一級又は二級アミノ基を有する化合物であり、公知のものを使用することができる。具体的には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン等の脂肪族ジアミン;
イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂環式ジアミン;
フェニレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン;
更に、ダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン、及びポリオキシアルキレングリコールジアミン等を使用することができる。本発明で用いられるジアミン(A4)は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
ポリウレタン(Ax)に、更にジアミン(A4)を反応させるウレア化反応は、種々の方法が可能である。[III]全量仕込みで反応させる場合と、[IV]ポリウレタン(Ax)をフラスコに仕込み、ジアミン(A4)を滴下する方法、[V]ジアミン(A4)をフラスコに仕込み、ポリウレタン(Ax)を滴下する方法等があげられるが、反応を精密に制御する場合は[IV]、[V]が好ましい。ウレア化反応の温度は80℃以下が好ましい。更に好ましくは25〜80℃である。80℃を越えると、ウレア化反応が制御出来ず所望の分子量のポリウレタンウレア(Ay)が得られない場合がある。又、反応速度の制御が困難になる場合がある。ウレア化反応は、25〜80℃で1〜5時間行うのが好ましい。
【0067】
ポリウレタンウレア(Ay)の前駆体としてのポリウレタン(Ax)を合成する場合には、ポリイソシアネート(a1)とポリオール(a2)とジオキシカルボン酸(a3)との配合比は、末端にイソシアネート基が残るように、ポリオール(a2)及びジオキシカルボン酸(a3)中の水酸基の合計1モルに対して、ポリイソシアネート(a1)中イソシアネート基が1モル以上であることが必要である。適切な配合比は、化合物の反応性、3価以上の化合物の存在比などで大きく左右されるが、ポリオール(a2)及びジオキシカルボン酸(a3)中の水酸基の合計1モルに対して、ポリイソシアネート(a1)中のイソシアネート基が1〜1.2モルであることが好ましい。1.2モルより多いと、未反応のポリイソシアネート(a1)が残留するおそれがある。又、1モルよりも小さいと、樹脂の分子量が大きくなりすぎ、ゲル化する場合がある。反応の終点は、滴定によるイソシアネート基の定量により判断する。
【0068】
ポリウレタンウレア(Ay)を合成する場合には、ポリウレタン(Ax)とジアミン(A4)との配合比は、目的の分子量によって決定する。配合比は、目的の分子量によって異なるが、適切な配合比は、ポリウレタン(Ax)中のイソシアネート基1モルに対して、ジアミン(A4)中のアミノ基が0.2〜1.0モルであることが好ましい。化合物の反応性、3価以上の化合物の存在比などで大きく左右されるが、ポリウレタン(Ax)中のイソシアネート基1モルに対して、ジアミン(A4)中のアミノ基が0.2より少ないと、未反応のポリウレタン(Ax)が残留するおそれがある。また、1.0モルよりも多いと反応中にゲル化する場合がある。この様な理由により、ポリウレタン(Ax)とジアミン(A4)との配合比は、ポリウレタン(Ax)中のイソシアネート基1モルに対して、ジアミン(A4)中のアミノ基が0.4〜0.8モルであることがさらには好ましい。反応の終点は、滴定によるイソシアネート基の定量、IR測定によるイソシアネート基のピークの消失により判断する。
【0069】
本発明におけるウレタン樹脂(A)は、ポリウレタン(Ax)もしくはポリウレタンウレア(Ay)の少なくとも一方からなるものであり、両者を併用してもよい。
【0070】
本発明におけるウレタン樹脂(A)は、酸価が20〜80mgKOH/gであることを特徴とする。ウレタン樹脂(A)の酸価が20mgKOH/gより低いと、十分な接着強度、耐熱性、耐湿熱性が得られない。又、酸価が80mgKOH/gより高いと、凝集力が高すぎ粘着剤として十分な粘着力を得ることができない。以上の観点より、ウレタン樹脂(A)の酸価は30〜70mgKOH/gがより好ましく、特には、40〜60mgKOH/gが好ましい。なお、酸価の測定は、水酸化カリウムによる滴定法で行った。
【0071】
本発明でいう酸価は、下記式(1)で表される。
式(1)
酸価(mgKOH/g)={(5.61×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0072】
本発明におけるウレタン樹脂(A)は、重量平均分子量が20000〜500000であることが好ましい。重量平均分子量が20000未満であると、十分な凝集力が得られない場合があり、重量平均分子量が500000を超えると、凝集力が高すぎ、十分な接着強度が得られない場合がある。ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、20000〜300000が更に好ましく、30000〜200000が特に好ましい。なお、上記重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0073】
本発明の粘着剤組成物においてウレタン樹脂(A)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
次に、ポリイソシアネート硬化剤(B)について説明する。本発明に用いられるポリイソシアネート硬化剤(B)としては、前記したポリイソシアネート(a1)で例示した化合物の中で3官能以上の化合物を挙げることができる。密着性及び接着耐久性などを考慮すると、ジイソシアネート化合物(b1)のトリメチロールプロパンアダクト体、ビュレット体、及びヌレート体から選ばれる少なくとも1つの硬化剤であることが好ましく、その中でもジイソシアネート化合物(b1)が、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートであることがより好ましい。
【0075】
本発明の粘着剤組成物に使用する硬化剤としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ポリイソシアネート硬化剤(B)以外の硬化剤を併用することができる。ポリイソシアネート硬化剤(B)以外の硬化剤を併用することで、基材への密着性の制御、耐熱性、耐湿熱性の向上等が可能となる。具体的には、多官能アジリジン化合物、多官能カルボジイミド化合物、N−メチロール基含有化合物、多官能酸無水物、多官能エポキシ化合物、などが挙げられる。
【0076】
多官能アジリジン化合物としては、例えば、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0077】
本発明の多官能カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが挙げられる。このような高分子量ポリカルボジイミドとしては、日清紡績株式会社のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV−01、03、05、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0078】
N−メチロール基含有化合物としては、アミノ樹脂、フェノール樹脂が挙げられ、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、フェノール、クレゾール類、ビスフェノール類等の化合物とホルムアルデヒドとの付加化合物、又は、その部分縮合物が挙げられる。
【0079】
多官能酸無水物は、カルボン酸無水物基を2つ以上有する化合物であり特に限定されるものではないが、テトラカルボン酸二無水物、ヘキサカルボン酸三無水物、ヘキサカルボン酸二無水物、無水マレイン酸共重合樹脂などが挙げられる。又、反応中に脱水反応を経由して無水物と成りうるポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハーフエステルなどは、本発明でいう「多官能酸無水物」に含まれる。
【0080】
更に詳しく例示すると、テトラカルボン酸二無水物としては、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、新日本理化株式会社製「リカシッドTMTA−C」、「リカシッドMTA−10」、「リカシッドMTA−15」、「リカシッドTMEGシリーズ」、「リカシッドTDA」などが挙げられる。
【0081】
多官能エポキシ化合物としては、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。多官能エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、グリセリン・エピクロルヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、エチレングリコール・エピクロルヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン等が挙げられる。
【0082】
本発明の粘着剤組成物は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、ポリイソシアネート硬化剤(B)を5〜30重量部添加してなることを特徴とする。ポリイソシアネート硬化剤(B)の含有量が5重量部未満であると、十分な接着強度が得られず、耐熱性、耐湿熱性が不良となる。ポリイソシアネート硬化剤(B)の含有量が30重量部を超えると、架橋密度が高すぎ、粘着剤として十分な粘着力が得られない。以上の観点より、ポリイソシアネート硬化剤(B)の含有量は、10〜30重量部が好ましく、更には、15〜25重量部がより好ましい。
【0083】
本発明の粘着剤組成物は、酸価20〜80mgKOH/gのウレタン樹脂(A)100重量部に対して、ポリイソシアネート硬化剤(B)を5〜30重量部添加してなることを特徴とする。粘着剤の接着強度、耐熱性、耐湿熱性を向上させるために、ウレタン樹脂(A)の酸価を高くすることは、有効な手段である。しかし、併用するポリイソシアネート硬化剤の添加量が5重量部よりも少ない場合では、十分な接着強度、耐熱性、耐湿熱性を得ることはできない。又、30重量部よりも多い場合では、粘着剤の架橋密度が高くなりすぎ、十分な粘着力をえることができない。一方、粘着剤の接着強度、耐熱性、耐湿熱性を向上させるために、ポリイソシアネート硬化剤の添加量を多くすることは、有効な手段である。しかし、ウレタン樹脂(A)の酸価が20mgKOH/gよりも低い場合では、十分な接着強度、耐熱性、耐湿熱性を得ることはできない。又、ウレタン樹脂(A)の酸価が80mgKOH/gよりも高い場合では、ウレタン樹脂(A)の凝集力が強すぎるため、十分な粘着力を得ることができない。以上の観点より、ウレタン樹脂(A)の酸価は20〜80mgKOH/gであり、かつ、ポリイソシアネート硬化剤(B)の添加量は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、5〜30重量部であることが重要である。
【0084】
本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤を用いることで粘着剤層と被着体との密着性が良好となり、耐熱性、耐湿熱性を更に向上させることができる。シランカップリング剤の使用量は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜0.1重量部の範囲が好ましく、特に0.005〜5重量部の範囲が好ましい。
【0085】
本発明に用いられる、シランカップリング剤は特に制限がなく、例えば、γ−(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
5−ヘキセニルトリメトキシシラン、9−デセニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物;
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのアミノアルキル基を有するアルコキシシラン化合物;
γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、β−メルカプトメチルフェニルエチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、6−メルカプトヘキシルトリメトキシシラン、10−メルカプトデシルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘキサメチルシラザン、ジフェニルジメトキシシラン、1, 3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビニルトリス( 2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0086】
本発明の粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、各種樹脂、カップリング剤、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、充填剤及び老化防止剤等を配合しても良い。
【0087】
本発明の粘着剤組成物を使用して、粘着剤層とシート状基材とからなる粘着積層体を得ることができる。例えば、種々のシート状基材に本発明の粘着剤組成物を塗工、乾燥・硬化することによって粘着積層体を得ることができる。粘着剤層は、シート状基材の一方の面のみに設けられていてもよいし、両方の面に設けられていてもよい。
【0088】
粘着剤組成物を塗工するに際し、適当な液状媒体、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、その他の炭化水素系溶剤等の有機溶剤を添加して、粘度を調整することもできるし、粘着剤組成物を加熱して粘度を低下させることもできる。
【0089】
シート状基材としては、セロハン、各種プラスチックシート、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス板、金属板、木材等の平坦な形状のものが挙げられる。又、各種基材は単独でも用いることもできるし、複数のものを積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。更に表面を剥離処理したものを用いることもできる。
【0090】
各種プラスチックシートとしては、各種プラスチックフィルムともいわれ、ポリビニルアルコールフィルムやトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルム、ポリカーボネート系樹脂のフィルム、ポリノルボルネン系樹脂のフィルム、ポリアリレート系樹脂のフィルム、アクリル系樹脂のフィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルム、ポリスチレン樹脂のフィルム、ビニル系樹脂のフィルム、ポリアミド系樹脂のフィルム、ポリイミド系樹脂のフィルム、エポキシ系樹脂のフィルムなどが挙げられる。
【0091】
常法にしたがって適当な方法で上記シート状基材に粘着剤組成物を塗工した後、粘着剤組成物が有機溶媒や水等の液状媒体を含有する場合には、液状媒体を除去したり、粘着剤組成物が揮発すべき液状媒体を含有しない場合は、溶融状態にある接着剤層を冷却して固化したりして、シート状基材の上に粘着剤層を形成することができる。粘着剤層の厚さは、0.1〜200μmであることが好ましく、1〜100μmであることがより好ましい。0.1μm未満では十分な接着力が得られないことがあり、200μmを超えても接着力等の特性はそれ以上向上しない場合が多い。
【0092】
本発明の粘着剤組成物をシート状基材に塗工する方法としては、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては粘着剤組成物の硬化形態、膜厚や選択した溶剤にもよるが、通常60〜180℃程度の熱風加熱でよい。
【0093】
又、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.5〜1.6MPaであることが好ましい。23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.5MPa未満であると、十分な接着耐久性が得られない場合がある。又、23℃における貯蔵弾性率(G’)が1.6MPaよりも大きいと、十分な接着強度が得られない場合がある。以上の観点から特に好ましい23℃の貯蔵弾性率(G’)は0.6〜1.2MPaであり、最も好ましくは0.8〜1.0MPaである。又、80℃の貯蔵弾性率(G’)は、0.5〜1.0MPaが好ましい。80℃における貯蔵弾性率(G’)が0.5MPa未満であると、高温・高湿下での接着耐久性が不十分となり、浮きや剥がれなどが生じるおそれがある。又、80℃における貯蔵弾性率(G’)が、1.0MPaよりも大きいと、高温・高湿下における充分な接着強度が得られない場合がある。以上の観点から特に好ましい80℃の貯蔵弾性率(G’)は0.5〜0.8MPaであり、最も好ましくは特には0.5〜0.6MPaである。
【0094】
なお、前記貯蔵弾性率(G’)は、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製動的粘弾性測定装置「DYNAMIC ANALYZER RDA III」を用い、周波数:1Hz、温度:23℃、80℃で測定した。
【0095】
更に、本発明の粘着積層体は、無アルカリガラスに貼合せた後、23℃で7日間経過後の粘着力が2〜10N/25mmであることが好ましい。該粘着力が2N/25mm未満であると、粘着剤として不十分な接着強度であり、浮きや剥がれなどが生じるおそれがある。該粘着力が2N/25mm以上であると、粘着剤として十分な接着強度であり、被着体に十分に固定することができる。又、該粘着力が10N/25mmよりも大きいと、粘着積層体を被着体に貼合せた後、再剥離した際に、被着体を破壊するおそれがある。
【0096】
本発明の粘着剤組成物から得られる粘着剤層のゲル分率は、50〜100重量%であることが好ましい。ゲル分率が50%未満であると、十分な接着耐性を得ることができない場合がある。更には、80〜90重量%が好ましい。なお、本発明でいうゲル分率は、下記式(2)で表される。
式(2) ゲル分率(重量%)=(M2/M1)×100
M1:酢酸エチル溶剤で抽出する前の粘着剤層の重量
M2:酢酸エチル溶剤で抽出・乾燥した後の粘着剤層の重量
【0097】
本発明の粘着剤組成物は、光学部材の貼合せに好適に用いることができる。すなわち、本発明の粘着積層体において、シート状基材として光学部材を好ましく使用することができる。シート状の光学部材としては、具体的には、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム等を挙げることができる。
【0098】
粘着剤層の他の面には、剥離処理されたシート状基材を積層することができる。本発明の粘着積層体は、(ア)剥離処理されたシートの剥離処理面に粘着剤組成物を塗工、乾燥し、シート状の光学部材を粘着剤層の表面に積層したり、(イ)シート状の光学部材に粘着剤組成物を塗工、乾燥し、粘着剤層の表面に剥離処理されたシートの剥離処理面を積層したりすることによって得ることができる。
【0099】
このようにして得た粘着積層体から粘着剤層の表面を覆っていた剥離処理されたシートを剥がし、例えば、粘着剤層を液晶セル用ガラス部材に貼着することによって、「シート状の光学部材/粘着剤層/液晶セル用ガラス部材」という構成の液晶セル部材を得ることができる。本発明では、光学部材が偏光板である場合、特に有用であり、加熱処理及び高湿処理により浮きや剥がれの生じない積層体を得ることができる。
【0100】
この偏光板としては、前述したように、偏光フィルム単独からなるものであってもよいが、偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化してなるものが好ましい。又、この場合、粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm程度、好ましくは10〜50μm、更に好ましくは10〜30μmである。
【0101】
本発明の粘着剤組成物は、光学部材用粘着剤として好適であるほか、一般ラベル・シール、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、粘着性付与剤、接着剤、積層構造体用接着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、フィルム(ラミネート接着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、又、各種樹脂添加剤およびその原料等としても非常に有用に使用できる。
【実施例】
【0102】
以下に、この発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、この発明は、下記実施例に限定されない。又、下記実施例及び比較例中、「部」及び「%」は、特にことわらない限りそれぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
【0103】
[ポリウレタンの合成]
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコにトリレンジイソシアネート(商品名:コロネートT―100 日本ポリウレタン工業株式会社製)47.25部、クラレポリオールP−6010(2官能脂肪族ポリエステルポリオール 株式会社クラレ製)212.74部、2,2−ジメチロールブタン酸40.00部、トルエン100部を仕込み、100℃まで徐々に昇温し4時間反応を行い、ポリウレタン溶液を得た。得られたポリウレタンの重量平均分子量は35000、酸価は46.1mgKOH/gであった。
【0104】
(合成例2〜12)
表1の重量比率に従って各種原料を仕込み、合成例1と同様の方法でポリウレタンを合成した。
【0105】
[ポリウレタンウレアの合成]
(合成例13)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコにトリレンジイソシアネート(商品名:コロネートT―100 日本ポリウレタン工業株式会社製)33.44部、クラレポリオールP−6010(2官能脂肪族ポリエステルポリオール 株式会社クラレ製)245.86部、2,2−ジメチロールブタン酸20.76部、トルエン100部を仕込み、100℃まで徐々に昇温し4時間反応を行った。滴定でイソシアネート基残量を確認した後、40℃まで冷却し、酢酸エチル100部を加えた後、エチレンジアミン30部を1時間で滴下し、更に1時間反応を行い、ポリウレタンウレア溶液を得た。得られたポリウレタンウレアの重量平均分子量は105000、酸価は23.9mgKOH/gであった。
【0106】
(合成例14〜24)
表1の重量比率に従って各種原料を仕込み、合成例13と同様の方法でポリウレタンウレアを合成した。
【0107】
又、合成例1〜12により得られたポリウレタン、及び、合成例13〜24により得られたポリウレタンウレアについて、溶液の外観、重量平均分子量(Mw)、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)、酸価(AV)を以下の方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
【0108】
<溶液外観>
各樹脂溶液の外観を目視にて評価した。
【0109】
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定>
Mw、Mnの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との決定はポリスチレン換算で行った。又、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除したMw/Mnを求めた。
【0110】
<酸価(AV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(ポリウレタンもしくはポリウレタンポリウレアの溶液:約50%)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。溶液が淡紅色を呈し、30秒間保持するまで滴定を続けた。酸価は前記式(1)により求めた。酸価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
【0111】
【表1】

【0112】
(実施例1)
合成例1のポリウレタン100重量部(固形分換算)にトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(TDITMP)15重量部(固形分換算)を配合し、更に溶剤としてトルエンを加えて固形分を20%に調整して粘着剤組成物を得た。
【0113】
前記粘着剤組成物を、剥離シートとしての厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離シート[リンテック社製「SP−PET382050」]の剥離層上に、乾燥後の厚さが25μmになるように、ナイフ式塗工機で塗布したのち、90℃で1分間乾燥処理して粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、ポリビニルアルコール系偏光子の両面をトリアセチルセルロース系保護フィルム(以下、「TACフィルム」という)で挟んだ多層構造の偏光フィルムの片面を貼り合せ、「剥離フィルム/硬化した粘着剤層/TACフィルム/PVA/TACフィルム」という積層体を得た。次いで、得られた積層体を温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成させて、粘着剤層が剥離フィルムで被覆された積層体を得た。
【0114】
(実施例2〜20、比較例1〜10)
表2の重量比率に従って粘着剤組成物を得た。更に実施例1と同様にして粘着剤層が剥離フィルムで被覆された積層体を得た。尚、表2の重量比率は、全て固形分換算の数値である。
【0115】
【表2】

【0116】
実施例1〜20及び比較例1〜10で得られた粘着剤組成物及び積層体を以下の方法で評価した。その結果を表3に示す。
【0117】
(1)粘着力
上記積層体から、25mm幅、100mm長のサンプルを切り出し、剥離シートを剥がして(粘着剤層の厚さ25μm)、無アルカリガラス[コーニング社製「1737」]に貼付したのち、栗原製作所製オートクレーブにて、0.5MPa、50℃、20分間の条件で加圧した。その後、貼合せ直後および、23℃、相対湿度50%の環境下で、7日間放置したのち、同環境下で、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着力を測定した。
【0118】
(2)粘着剤の貯蔵弾性率 (G’)
貯蔵弾性率(G’)は、厚さ30μmの粘着剤層を積層し、8mmφ×3mm厚の円柱状の試験片を作製し、ねじり剪断法により、下記の条件で測定した。
測定装置:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製動的粘弾性測定装置「DYNAMIC ANALYZER RDA III」
周波数:1Hz
温度 :23℃、80℃
【0119】
(3)ゲル分率
粘着剤層を厚さ25μm、30mm×80mmのサイズにサンプリングして、金属製メッシュに包み粘着剤層のみの重さを精密天秤にて秤量した。このときの重さをM1とする。ソックスレー(抽出器)を用いて酢酸エチル溶剤に粘着剤層を浸漬させ、還流を行い16時間処理した。その後粘着剤層をとり出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下、24時間で風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後の粘着剤層のみの重さを精密天秤にて秤量した。このときの重さをM2とする。ゲル分率は、(M2/M1)×100(%)で表される。
【0120】
(4)塗膜外観
粘着剤層の外観を目視にて評価した。粘着剤層の外観に関しては、下記の3段階の評価基準に基づいて評価を行った。
○:「塗膜は透明で実用上全く問題がない」
△:「塗膜はわずかに白化しており、実用上問題がある」
×:「塗膜全面が白化しており、実用不可である」
【0121】
(5)耐熱性、耐湿熱性
積層体を150mm×80mmの大きさにカットし、剥離シートを剥がして厚さ1.1mmのフロートガラス板の両面に、それぞれの偏光板の吸収軸が直交するようにラミネータを用いて貼着した。続いて、この積層体が貼り付けられたガラス板を50℃5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させてガラス板に密着させ、積層体とガラス板との積層物を得た。
【0122】
耐熱性の評価として、上記積層物を120℃で1000時間放置した後の浮きハガレ、及び積層物に光を透過させたときの光漏れ(白抜け)を目視で観察した。又、耐湿熱性の評価として、上記積層物を80℃、相対湿度90%で1000時間放置した後の浮きハガレ、および積層物に光を透過させたときの光漏れ(白抜け)を目視で観察した。耐熱性、耐湿熱性それぞれについて、下記の4段階の評価基準に基づいて評価を行った。
◎:「浮きハガレ・白ぬけが全く認められず、実用上全く問題がない」
○:「わずかに浮きハガレ・白ぬけが認められるが、実用上問題がない」
△:「若干浮きハガレ・白ぬけが若干認められ、実用上問題がある」
×:「全面的に浮きハガレ・白ぬけがあり、実用不可である」
【0123】
(6)再剥離性(リワーク性)
粘着剤層が剥離シートで被覆された積層体を25mm×150mmの大きさにカットし、剥離シートを剥がし厚さ1.1mmのフロートガラスにラミネータを用いて貼り付け、50℃5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させてガラス板に密着させた。この試験片を23℃、相対湿度50%で1週間放置した後に、180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験を実施し、剥離後のガラス表面の曇りを目視で観察し、3段階で評価した。
○:「実用上全く問題がない」
△:「若干曇りが認められ、実用上問題がある」
×:「全面的に粘着剤の転着が認められ、実用不可である」
【0124】
評価結果を表3に示す。
【0125】
【表3】

【0126】
実施例1〜20に示すように、本発明の粘着剤組成物は、高い粘着力と適切な貯蔵弾性率の両立が可能であり、塗膜外観、耐熱性、耐湿熱性、光学特性、再剥離性に優れていることが分かる。これに対して、酸価の低いウレタン樹脂を使用した比較例1、比較例3、比較例5、比較例6では耐熱性、耐湿熱性が不良であり、酸価の高いウレタン樹脂を使用した比較例2、比較例4、では塗膜外観、耐熱性、耐湿熱性が不良であり、ポリイソシアネート硬化剤の含有量が低い比較例9、比較例10では、耐熱性、耐湿熱性が不良であり、ポリイソシアネート硬化剤の含有量が高い比較例7、比較例8では、塗膜外観、耐湿熱性が不良となっており、実用上問題が生じ、実用不可であることが分かる。
【0127】
本発明の粘着剤組成物は、光学積層体に要求される耐熱性、耐湿熱性、光学特性、再剥離性等に優れた特性を有している。特に、光学積層体の用途では、光学特性である光漏れが重要視され、近年のディスプレイの大型化に伴い、その要求性能はますます厳しくなってきている。そこで、本発明の粘着剤組成物は、上述のようにこれまでは困難であった粘着特性を発揮できるため、更に有用になると考えられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、ポリイソシアネート硬化剤(B)を5〜30重量部添加してなる粘着剤組成物であって、
ウレタン樹脂(A)が、ポリイソシアネート(a1)、ポリオール(a2)、及び一分子中に水酸基2個とカルボキシル基1個とを有するジオキシカルボン酸(a3)を反応させてなるポリウレタン(Ax)であるか、あるいはポリウレタン(Ax)に、更にジアミン(A4)を反応させてなるポリウレタンウレア(Ay)であり、
かつ、ウレタン樹脂(A)の酸価が、20〜80mgKOH/gであることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
ポリイソシアネート(a1)が、芳香族ポリイソシアネート又は、脂環族ポリイソシアネートであることを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
一分子中に水酸基2個とカルボキシル基1個とを有するジオキシカルボン酸(a3)が、2,2−ジメチロールブタン酸であることを特徴とする請求項1又は2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が、20000〜500000であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
ポリイソシアネート硬化剤(B)が、下記ジイソシアネート化合物(b1)のいずれかのトリメチロールプロパンアダクト体、ビュレット体、及びヌレート体から選ばれる少なくとも1つの硬化剤であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の粘着剤組成物。
ジイソシアネート化合物(b1);トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート。
【請求項6】
シランカップリング剤を含むことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
シート状基材の少なくとも一方の面に、請求項1〜6いずれか記載の粘着剤組成物から形成される粘着剤層が積層されてなる粘着積層体。
【請求項8】
23℃における、粘着剤層の貯蔵弾性率(G’)が0.5〜1.6MPaであり、かつ、80℃における貯蔵弾性率(G’)が0.5〜1.0MPaであり、
更に、無アルカリガラスに貼合せた後、23℃で7日間経過後の粘着力が2〜10N/25mmであることを特徴とする請求項7記載の粘着積層体。
【請求項9】
粘着剤層のゲル分率が、50〜100重量%である請求項7又は8記載の粘着積層体。
【請求項10】
シート状基材が光学部材であることを特徴とする請求項7〜9いずれか記載の粘着積層体。
【請求項11】
光学部材が、偏光板である請求項10記載の粘着積層体。


【公開番号】特開2010−180290(P2010−180290A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23214(P2009−23214)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】