説明

粘着性ハイドロゲル、その製造用組成物及びその用途

【課題】皮膚に対する繰返し粘着力が発現し、加工性や貼付中の衣服へのゲル付着のない粘着性ハイドロゲルを提供する。
【解決手段】重合性単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックスに、構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含有するポリマーを含むことで上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性ハイドロゲル、その製造用組成物及びその用途に関する。更に詳しくは、皮膚に対する繰返し粘着性が向上した粘着性ハイドロゲル、その製造用組成物及びその用途に関する。
【0002】
本発明の粘着性ハイドロゲルは、生体に貼付するサージカルテープ、カテーテルや点滴用のチューブ/心電図電極/その他センサー類の固定用テープ、湿布剤、創傷被覆剤、人工肛門等の固定用テープ、電気治療器用導子/磁気治療器固定用粘着材/経皮吸収剤の担体兼粘着材等の生体に貼付して用いる粘着材として、また、ハイドロゲルドレッシングや超音波測定用のカップリング材として、更には、建材/電子材料等の工業用粘着材としても好適に使用できる。
【背景技術】
【0003】
ハイドロゲルは皮膚に対して低刺激性であり、また蒸れを低減できるため、人肌に優しい素材である。更に、粘着性・導電性が付与できるため生体に貼付する生体電極用パッドや心電図用電極、創傷被覆剤等の幅広い分野で利用されている。
【0004】
近年の医療分野では電気を体内に流したり、体内の電気信号を取り出してモニターに写したり等の行為が頻繁に行われている。家庭でも電気を流すことで筋肉をほぐしたり、神経を刺激したりする治療方法がある。それには一般に外部から電気を流すための導体と皮膚表面で何らかの導電性媒体が必要となる。この導電性媒体にハイドロゲルが利用されている。それは、ハイドロゲルが粘着性を有しているため使用中に皮膚から剥れることが少ないことや、皮膚と密着していることで安定した電気を流すことができるためである。また、ハイドロゲルには水や電解質等が含まれているため微弱な電気をも安定に流すことができ、生体電極等の分野には非常に適した材料であると言える。
【0005】
このような粘着性ハイドロゲルの粘着力は、主に、ハイドロゲルの表面張力と粘弾性に起因すると考えられている。すなわち、ハイドロゲルの表面張力をコントロールし、被着体との濡れ性を高くすることで、粘着に有効な接触面積が増大し、結果的に粘着力が上昇すると考えられる。また、粘弾性を制御することで、接触時や剥離時の変形挙動が変わり、それが粘着力に影響すると考えられる。これらについては、特表2002−521140号公報(特許文献1)にも記載されている。
【0006】
特許文献1によれば、診断電極は、長時間の粘着力は要求されないが、5〜10分の使用にわたって毛で覆われ脂ぎった乾いた皮膚および湿った皮膚に接着しなければならない。また、監視電極は、より長い時間にわたって接着しなければならず、ホルター電極は、物理的運動、発汗、水等に起因して粘着力が破壊されやすいため、最善の粘着力と快適さが必要と記載されている。
【0007】
この粘着性ゲルは、上記のような因子をコントロールすることで、粘着力を制御し、高粘着であると同時に、剥離時に感じる痛みも低減しているが、あくまでも単回使用を想定したものである。つまり、これらの生体用電極は、主に保険点数が適用される医療現場等で使用されるため、感染等の防止の意味もあり、原則的に使い捨てされる。従って、繰返し使用することを考慮する必要がなく、初期段階の粘着力を高めることを目的として開発されてきた。
【0008】
また、特開2007−112972号公報(特許文献2)にも粘着性ハイドロゲルの粘着力の改良に関して記載されている。この公報によると、非イオン性重合性単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックスとは非架橋であるアクリル酸/メタクリル酸の共重合体を、高分子マトリックスを形成する重合性単量体100重量部に対して0.15〜15重量部含むハイドロゲルが開示されている。このハイドロゲルは、従来のポリビニルピロリドン等の水溶性高分子を添加したハイドロゲルに比べて、粘着力が1.5倍以上に向上し、単回使用に際しては好適に利用される。しかしながら、この公報も初期の粘着力を高めることを目的としており、繰返し使用に関しては記載されていない。
【0009】
また、特開平6−319793号公報(特許文献3)にはアクリル系重合体とこれと相溶する室温で液状ないしはペースト状の成分を含む粘着剤が開示されている。これによると、アクリル系重合体100重量部とこの重合体と相溶する室温で液状ないしはペースト状の成分が30〜100重量部からなる粘着剤組成物であって、この液状ないしはペースト状の成分が、炭素数8〜18の一塩基酸ないしは多塩基酸と炭素数が14〜18の分岐アルコールのエステル及び/または炭素数が14〜18の不飽和脂肪酸ないしは分岐酸と4価以下のアルコールのエステルからなり、且つ上記アクリル系重合体の40〜80重量%が架橋により不溶化されていることで、皮膚接着性が良好で皮膚刺激がほとんどなく、角質損傷が極めて軽微で安全な医療用粘着剤が得られる。また、例えば医療用具や医療用機器に使用した場合、粘着剤に含まれている液状ないしペースト状の成分が医療用具や医療用機器に移行することないため機器類を損なう恐れがなく、更に支持体への移行もないため、支持体の選択範囲の拡大が可能である医療用粘着剤が得られる。
【0010】
更に、特許第3014188号(特許文献4)及び特許第2700835号(特許文献5)にはアルキル基の炭素数が4以上のアクリル酸アルキルエステルを主成分として、共重合可能なモノマーを共重合させた共重合体と相溶する液体成分を含む架橋ゲル層が開示されている。これによると、支持体の少なくとも片面にアルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これと共重合できる単量体を共重合して得られるアクリル酸アルキルエステル系共重合体と、該共重合体と相溶する(有機)液状成分とを含むことによって、皮膚面への接着性や密着性が良好で、しかも皮膚面から剥離除去する際に物理的刺激を極力与えず、皮膚面を損傷させることのない粘着剤が開示されている。
【0011】
しかしながら、上記のような粘着剤でも、貼付中の粘着剤成分の移行や剥離除去時の皮膚への損傷の低減を目的とするものであって、皮膚への繰返し使用に関する記載やゲルの柔軟性と加工性に関する記載がほとんどない。更に、上記特許文献4及び5では粘着剤を形成する重合体もしくは共重合体にN−アルキルスルホン酸アクリルアミド単量体を用いることができると明細書に記載があるが、これはゲルを形成する主骨格として上記単量体が用いられるものであり、本発明ではゲルの主骨格を形成する重合体や共重合体とは別にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドポリマーを含むことを特徴としており、その点で上記の特許文献とは大きく異なる。
【0012】
ところが、近年では医療の枠を超えて、痩身や筋力トレーニングを目的としたEMSが普及し、一般家庭で使用される機会が増えてきた。一般家庭等で使用される場合、電極パッドの耐久性が要求される。即ち、粘着性ゲルにおいては、繰返し貼付しても粘着力が低下しないことが必要とされる。
【0013】
また、粘着性ゲルの繰返し粘着性が向上すると、本来、使い捨て使用されている医療現場での使用においてもメリットが生じる。例えば、貼付位置が正確でなかった場合、貼付位置修正のために貼り直しを行う際には、繰返し粘着性に優れている方が有利であると言える。
【0014】
繰返し粘着力の低下の主な原因は、ゲルを皮膚から剥離する際に、皮膚表面から脱落した角質がゲルの表面に付着し、有効な粘着面積が低下することが挙げられる。
【0015】
前記の課題を解決する方法として、初期の粘着力を低下させて剥離時の角質付着量を抑えることが考えられるが、初期の粘着力を低下させるということは、皮膚との密着性を損なうことになるため、前記の問題を解決する最良の手段とは言い難い。また、粘着力を低下させても、角質の付着が無くなるわけではないため、もともと弱い粘着力が、更に低くなることにつながる。
【0016】
これに対し、ゲルに柔軟性を付与させることで凹凸のある皮膚への追従が容易になり、皮膚との親和性が低くても初期粘着力を発現しやすくすることが考えられる。皮膚との親和性が低いため剥離時の角質付着量も少なくなり、次に貼付する際に粘着を発現する箇所が比較的多く残っているため繰返し使用時にも粘着力が得られる。
【0017】
しかしながら、このような柔軟性に富むゲルは加工時にゲルの切断が難しく、切断面が綺麗に整わないことや、皮膚に貼付中にゲルの周囲にゴミが付着したり、衣服にゲルが付着したりする等の問題が起こりやすい。
【0018】
繰返し粘着力を改良する他の方法として、特許第3437124号(特許文献6)に数回の皮膚貼付により汚れた粘着面を水洗することにより粘着力を回復させて再使用が可能なハイドロゲルに関する特許がある。
【0019】
これによると、前述のとおり、ゲルを皮膚から剥離する際に皮膚から脱落した角質等により粘着表面が汚れることで粘着力が著しく低下した際に、ゲル表面を水につけて指先で洗うことや水に浸した布で軽く拭く行為により粘着力が初期値まで回復することが可能となる。これにより、家庭用等の使用の際には何度も繰返し使用することができ、極めて経済的でまた省資源的であり、繰返し用途では好適に使用ができる。
【0020】
しかし、上記のハイドロゲルは、繰返し使用後、粘着力を回復させるために水洗等の作業が必要であるため、特に家庭等で使用される際には、回復方法等の取り扱いに注意を要する。つまり、確実に粘着力を回復させるためには、洗浄方法や乾燥方法等、取扱説明書等で指定した条件を守らなければならない。すなわち、ハイドロゲルであるため、水と接触すれば吸水する性質があり、吸水した状態では粘着力が発現しない。従って、再使用するためには指定の条件で余剰水分を蒸発させ、元の状態に回復させる必要がある。また、必要以上に長時間水と接触させると、過度に吸水し、組成の復元が困難になる場合もある。
【0021】
【特許文献1】特表2002−521140号公報
【特許文献2】特開2007−112972号公報
【特許文献3】特開平6−319793号公報
【特許文献4】特許第3014188号
【特許文献5】特許第2700835号
【特許文献6】特許第3437124号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って、水洗せずに繰り返し使用が可能になれば水洗の手間が省け、また、ゲルが乾燥するのを待つことなく再使用が可能となり、使用者にとって有益な効果が期待できる。
【0023】
また、繰返し水洗することは、徐々にゲルの機能が低下するため、無限に繰り返して使用できるわけではない。従って、寿命を延ばすためには、一回使用毎に水洗するのではなく、一定回数水洗無しで繰返し使用し、ある程度粘着力の低下が生じた段階で水洗等の対処を行えれば更なる長寿命化が期待できる。
【0024】
よって、皮膚に対する繰返し粘着性が向上した、すなわち皮膚に繰返し貼付しても粘着力の低下が抑制された粘着性ハイドロゲルを提供する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の発明者等は、鋭意検討した結果、架橋された高分子ゲルマトリックスに、構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含有するポリマーを含ませることで、皮膚に対して繰返し貼付できる粘着力が発現し、加工性や貼付中の衣服へのゲル付着のない粘着性ハイドロゲルを意外にも見出し、本発明に至った。
【0026】
かくして本発明によれば、重合性単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックスに、水と、多価アルコールと、構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーとを含む粘着性ハイドロゲルからなり、前記構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーが、前記ハイドロゲル中の水以外の成分を100重量部とした場合、0.1〜45重量部含まれる粘着性ハイドロゲルが提供される。
【0027】
また、本発明によれば、上記粘着性ハイドロゲルの製造に使用される組成物であって、重合性単量体と、架橋性単量体と、水と、多価アルコールと、構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーとを含む粘着性ハイドロゲルの製造用組成物が提供される。
【0028】
更に、本発明によれば、前記粘着性ハイドロゲルを含むゲルシートが提供される。
更に、前記粘着性ハイドロゲルからなるゲル層と導電層とを有する電極が提供される。
【発明の効果】
【0029】
本発明の粘着性ハイドロゲルは、構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーを添加することで、従来の粘着性ハイドロゲルに比べて、皮膚への凹凸に追従し粘着力を保持しながら、凝集性を保持しているために加工性に優れ、貼付中にゲルが衣服に付着することもない。また、繰返し使用後に水洗等の煩わしい作業を必要とせず、皮膚へ10回貼付後の皮膚粘着力が初期の皮膚粘着力の80%以上を維持した粘着性ハイドロゲルが得られる。
【0030】
更に、繰返し使用後、粘着力を回復するための水洗等の作業が不要であるため、洗浄作業においてゲル組成が変わることや洗浄の仕方でゲルが破壊されることがなく、剥離直後から繰返し使用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の粘着性ハイドロゲルは、重合性単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックス、水、多価アルコール及び構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーを含むことを特徴とする。
【0032】
具体的な重合性単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の非電解質系アクリルアミド誘導体、ターシャルブチルアクリルアミドスルホン酸(TBAS)及び(又は)その塩、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド(DMAEAA)塩酸塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)塩酸塩等の電解質系アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、スルホプロピルメタクリレート(SPM)及び(又は)その塩、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(QDM)等の電解質系アクリル誘導体、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の非電解質系アクリル誘導体、ビニルピロリドン、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド等のビニルアミド誘導体、アリルアルコール等が挙げられる。これら重合性単量体は、単独または複数使用することが可能である。
【0033】
架橋性単量体としては、分子内に重合性を有する炭素−炭素二重結合を2つ以上有しさえすれば特に限定されない。具体的には、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N'−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチリロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の多官能(メタ)アクリルアミド、多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これら架橋性単量体は、単独または複数使用することが可能である。
【0034】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0035】
上記重合性単量体と架橋性単量体とが重合・架橋することで高分子マトリックスが形成される。本発明の粘着性ハイドロゲル中に含まれる高分子マトリックスの割合は、粘着性ハイドロゲル中の水以外の成分を100重量部とした場合、10〜70重量部であることが好ましく、10〜50重量部であることがより好ましい。
【0036】
更に、高分子マトリックス製造の際の架橋性単量体の割合は、使用する重合性単量体種や架橋性単量体種によっても異なるが、一般的に重合性単量体100重量部に対して0.01〜0.5重量部であることが好ましく、0.05〜0.25重量部であることがより好ましい。形状安定性をもたせるために、架橋性単量体は0.01重量部以上が好ましく、また保型性を損なわない程度に柔軟性を有している方が、粘着剤として使用する際の初期タックが得やすい事から0.5重量部以下が好ましい。
【0037】
本発明に用いられる多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオールの他、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール縮合体、ポリオキシエチレングリセリン等の多価アルコール変成体等が使用可能である。これら多価アルコールは、単独または複数使用することが可能である。
【0038】
これら多価アルコールの中で、ハイドロゲルを実際に使用する温度領域(例えば室内で使用する場合は20℃前後)で液状の多価アルコールを使用することが好ましい。
【0039】
多価アルコールの含有量は、粘着性ハイドロゲル中の水以外の成分を100重量部とした場合、20〜80重量部であることが好ましく、30〜60重量部であることがより好ましい。多価アルコールの添加量が、前述の範囲にある場合は、得られたゲル体の乾燥による物性変化が小さく、高い粘着力が得られるため好ましい。
【0040】
本発明では上記高分子マトリックスと構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーとを含むことを特徴とする。該構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、配合液の調整のし易さや得られるゲルが最適な粘着力を有するために700万以下が好ましい。また、凝集性のあるゲルを得るために50万以上が好ましい。
【0041】
前記構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーの含有量は、目的とする粘着特性や加工特性を持ったゲルを得るために、前記ゲル中の水以外の成分を100重量部とした場合、0.1重量部以上で45重量部以下であり、好ましくは、0.5〜40重量部、0.5〜35重量部、0.5〜30重量部、0.5〜25重量部、0.5〜20重量部、0.5〜15重量部、より具体的には、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、11重量部、12重量部、13重量部、14重量部、15重量部である。
【0042】
構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むことで解離によりポリマー鎖中の静電気的な反発が大きくなり伸張しやすくなるため、高分子マトリックス中の空間において該ポリマーが広がりを持ちやすく、またそれら高分子量ポリマーの絡まりによる凝集性が高くなるため、得られるゲルが高い凝集力を持った粘着性物質になると考えられる。
【0043】
前記構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーは他のモノマーと共重合されていても問題ない。市販されているものには、例えばアクリル酸とN−アルキルスルホン酸アクリルアミドの共重合体があり、好適に使用される(例えば、アクリル酸とアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の共重合体(日本純薬社製 商品名アロンビスAH−305))。
【0044】
前記構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーが他のモノマーとの共重合体である場合、その共重合比は2:8〜8:2が好ましく、2:8〜5:5がより好ましい。
【0045】
更に、粘着性ハイドロゲルに電解質を添加することにより導電性のゲルが得られる。例えば、導電性のゲルの用途が心電図測定用電極、低周波治療器用電極、各種アース電極等の生体電極である場合は、比抵抗が0.1〜10kΩ・cmであることが好ましい。
【0046】
電解質としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属やマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属のハロゲン化物、炭酸、硫酸、リン酸等の鉱酸塩、有機塩、アンモニウム塩等が使用可能である。この内、生体電極である場合は、中性〜弱酸性であるものが好ましい。
【0047】
電解質の含有量は、電極として使用する場合には低インピーダンス化することが必要であり、好ましい添加量としては、粘着性ハイドロゲル中の水以外の成分を100重量部とした場合、0.1〜10重量部がよい。また、添加する電解質を均一に配合液中に溶解させるには10重量部以下であることが好ましい。より好ましい含有量は、2〜8重量部である。
【0048】
粘着性ハイドロゲルに含まれる水の含有量は特に制限されないが、最終的に得られるゲルの粘着特性や電気特性を最適な値とするために、粘着性ハイドロゲル全体に対して10〜40重量%が好ましいと考えられる。周りの環境によりゲルの物性が大きく変化しない程度の水分量を保持させることが必要である。マトリックス中の水分量が極端に低いと、放置される環境によっては経時的に吸水が起こることが予想される。それとは反対にマトリックス中の水分量が極端に多いと、経時的に水分の蒸散が起こると予想される。このようにゲル中の極端な水分量の変化により粘着力や電気性能が著しく変化しないように、選択される重合性単量体や多価アルコールの物性を考慮しつつ、水分量を決定する必要がある。
【0049】
粘着性ハイドロゲルは、必要に応じて他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、防腐剤、殺菌剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤、香料、界面活性剤、着色剤、薬効成分(例えば、抗炎症剤、ビタミン剤、美白剤等)が挙げられる。
【0050】
上記他の添加剤の内、薬効成分を添加する方法としては、あらかじめ組成物に溶解又は分散させ、重合・架橋する方法と、一旦生成した粘着性ハイドロゲルに後から添加する方法が挙げられる。これらの内、前者の方法は、ラジカル重合反応を伴うゲル生成時に、薬効成分がラジカルに攻撃され、薬効を失う場合があるため、後者の方法による薬効成分添加の方がより好ましい。
【0051】
本発明の粘着性ハイドロゲルは液状のモノマー配合液を重合架橋してゲル化するため、用途に合わせて適宜成型することが可能である。
例えば、粘着剤として使用する場合等は、厚さが0.01mm〜2.0mmのゲルシートに成型されていることがある。その場合、粘着性ハイドロゲルの少なくとも片面に保護フィルムを設けることが好ましい。
【0052】
粘着性ハイドロゲルの片面に設けられた保護フィルムをセパレーターとして用いる場合は、両面に離型処理されていることが好ましい。この場合、表裏異なる剥離強度に調整することが好ましい。また、前記保護フィルムを支持体として用いる場合は片面に離型処理を行うことで、粘着性ハイドロゲルと接着されているのと逆の面(裏面)に、セパレーターとしての機能を付与することが可能である。
【0053】
また、本発明のゲルシートは両面に保護フィルムを設けることがある。前記保護フィルムは、セパレーターとして工程の途中で剥離され別のフィルム等に貼り変えられる場合もあり、支持体や台紙として最終製品まで付属し、そのまま最終ユーザーに利用される場合もある。
【0054】
通常、粘着剤は支持体にコートされ、いわゆる、粘着テープとして使用される。また、導電性(イオン伝導性)を有したゲルシートの場合、支持体の代わりに導電層を有する支持体を組み合わせることで、生体電極として使用することが可能である。
【0055】
保護フィルムをセパレーターとして用いる場合、フィルム状に成型可能な樹脂又は紙であれば特に制限されない。中でも、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、紙又は樹脂フィルムをラミネートした紙等が好適に用いられる。セパレーターのゲルと接する面には離型処理がなされていることが好ましい。また、必要に応じて両面に離型処理されていても差し支えない。両面に離型処理する場合は、表裏の剥離強度に差をつける場合もある。離型処理の方法としては、シリコーンコーティングが挙げられる、特に、熱又は紫外線で架橋、硬化反応させる焼き付け型のシリコーンコーティングが好ましい。
【0056】
一方、支持体として利用する場合は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等の樹脂フィルムを離型処理せずに使用するのが好ましい。特に、ポリウレタンは柔軟性があり、水蒸気透過性を有するものも存在することから特に好ましい。同時に、ポリオール変性されたポリエステルも柔軟性と水蒸気透過性を有するものがある。前記のポリオール変性されたポリエステルは、ポリウレタン以上に水蒸気透過性が優れるものもあり、本発明の粘着性ハイドロゲルを生体用粘着剤として使用する場合、最も好ましい支持体となる。これらの柔軟フィルムは、通常単独では柔らかすぎ、製造工程での取り扱いが困難なため、キャリアとしてポリオレフィンやポリエステル、或いは紙等がラミネートされている。
【0057】
前記保護フィルムは、ゲルシートの製品形態に応じて最適な材料が選択される。例えば、ゲルシートを短冊で取り扱う場合は、両面に保護フィルムを設けるのが好ましい。これら保護フィルムの材質は、前記の通りフィルム状に成型可能な樹脂又は紙であれば特に制限されない。また、ロール状に巻き取る場合でも、両面に保護フィルムを設ける場合がある。この場合、片面に設けられている保護フィルム(多くの場合はセパレーターである)は断面積1mm2当たり300gの荷重をかけた時の伸張率が5.0%以上であり、もう一方に設けられている保護フィルム(セパレーター又は支持体)は1mm2当たり300gの荷重をかけた時の伸張率が1.0%以下であることが好ましい。
【0058】
厚さが0.1mm以下の薄いゲルシートの場合は、表裏に設けるフィルム等の特性をあまり考慮する必要は無いが、厚さが0.5mm以上になると、ロール状に巻き取った際の内周・外周の差が顕著になり、表裏のフィルム等の伸長率のバランスを考慮しないと、巻き崩れ、段ズレ、トンネリング等と呼ばれる現象が生じ、ロール外観が悪化すると共に、シートに皺が入ったり、変形したりする等、多くの問題を引き起こす。
【0059】
本発明の粘着性ハイドロゲルをシート状に成形する際、必要に応じて中間基材として不織布又は織布を埋設することも可能である。これら中間基材は、ゲルの補強、裁断時の保形性を改善するために用いられる。例えば、粘着性ハイドロゲルを加工用の中間素材として流通する場合、末端の加工業者での取り扱いを容易にするために必要となる事がある。不織布および織布の材質は、セルロース、絹、麻等の天然繊維やポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維、または、それらの混紡が使用可能であり、必要に応じて、バインダーが用いられ、更に、着色される場合がある。
【0060】
本発明の粘着性ハイドロゲルの製造方法について説明する。本発明の粘着性ハイドロゲルは、1.配合液を作成し、2.重合架橋反応と同時に任意の形状に成型することにより得られる。
【0061】
1.配合液の作成:重合性単量体と架橋性単量体、重合開始剤、イオン交換水を混合・攪拌して溶解する。必要に応じて、電解質、添加剤を添加する。次に、N−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーを攪拌しながら少しずつ添加し、無色透明の均一な溶液になるまで攪拌する。
【0062】
尚、N−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーを添加する場合は、少しずつ添加することが好ましい。または、多価アルコール等に分散させた溶液を少しずつ添加することが好ましい。該ポリマーは吸水性が非常に高いため、瞬時に水と混合させるとダマができ易く完全に溶解させるのに非常に時間が掛かったり、前もって水溶液にする場合も非常に粘度の高い液となり易かったりするため、取り扱いが困難となるためである。
【0063】
2.重合架橋反応、成型:得られたモノマー配合液を型枠に注入して重合架橋反応させ、任意の形状で粘着性ハイドロゲルを得ることができる。ベースフィルムと保護フィルムの間にモノマー配合液を流し込み、一定の厚みに保持した状態で重合架橋反応させ、シート状の粘着性ハイドロゲルを得ることができる。更に、保護フィルム(支持体)上にモノマー配合液を薄層コーティングし、重合架橋反応させることで更に薄いフィルム状の粘着性ハイドロゲルが得られる。
【0064】
重合架橋する方法としては、一般的なラジカル重合の他、レドックス重合、光重合、放射線重合等が可能である。例えば、厚み又は深さが10mm以上の型枠に注入して重合架橋させる場合は、レドックス重合や一般的なラジカル重合が適している。逆に、厚みが数ミリメートル〜数マイクロメートルのシート又はフィルム状に成型する場合は光重合が適している。光照射による重合は、反応速度が速い反面、分厚い材料の場合は光が透過する際に減衰し、厚み方向でのバラツキが生じる可能性がある。放射線による重合は、光よりも透過力に優れるが、設備が大がかりになるため、生産規模が大きい場合に適している。
【0065】
紫外線を照射させて重合・架橋する場合、粘着性ハイドロゲル組成物に照射される積算の照射量は1000mJ/cm2以上であることが好ましい。重合反応を十分に促進するためには積算照射量が1000mJ/cm2以上であればよく、積算照射量2000mJ/cm2以上あればゲル中の残存モノマー量を100ppm以下にまで低減することができ、より好ましい。また、積算照射量の上限は必ずしも限定されることはなく、前述の通り、重合反応が十分に進むだけの照射量があればよい。しかしながら、過剰な照射は装置の大型化や余分なエネルギー使用を招いたり、また発生する熱を除去する必要があったりする等の問題を引き起こす可能性があるため、最小限の照射量にすることが望ましい。
【0066】
尚、2枚の樹脂フィルムをゲルの両面に配置し、光照射によりゲルを生成する際、光を照射する側に配置されるトップフィルムは、光を遮蔽しない材質を選択する必要がある。
【0067】
光重合開始剤は、紫外線や可視光線で開裂し、ラジカルを発生するものであれば特に限定されないが、中でもα−ヒドロキシケトン、α−アミノケトン、ベンジルメチルケタール、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセン等が好ましい。
【0068】
光重合開始剤の具体例としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(製品名:ダロキュア1173,チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(製品名:イルガキュア184,チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名:イルガキュア2959,チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(製品名:イルガキュア907,チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(製品名:イルガキュア369,チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)等が挙げられる。これらを単独または複数を組み合わせて使用することが可能である。
【0069】
光重合開始剤の濃度は、重合反応を十分に行い、残存モノマーを低減するためには、モノマー配合液に対して0.01重量%以上であることが好ましく、反応後の残開始剤による変色(黄変)や、臭気を防ぐためには1.0重量%以下であることが好ましい。
【0070】
更に、本発明では、粘着性ハイドロゲルの製造用組成物が提供される。
上記組成物は、重合性単量体、架橋性単量体、水、多価アルコール、構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーを含んでいる。
【0071】
上記組成物中、重合性単量体と架橋性単量体を合わせた割合は、水を除いた組成物全体を100重量部とした場合、10〜70重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜50重量部である。
【0072】
上記組成物中の多価アルコールの割合は、水を除いた組成物全体を100重量部とした場合、20〜80重量部であることが好ましく、より好ましくは30〜60重量部である。
【0073】
上記組成物中の構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーの割合は、水を除いた組成物全体を100重量部とした場合、0.1〜45重量部であり、好ましくは0.5〜40重量部、0.5〜35重量部、0.5〜30重量部、0.5〜25重量部、0.5〜20重量部、0.5〜15重量部である。
【0074】
前記重合性単量体と架橋性単量体との割合は、重合性単量体100重量部に対して、架橋性単量体が0.01〜0.5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.25重量部である。
前記粘着性ハイドロゲルの製造用組成物は、その構成成分を1液又は2液のどちらの状態にしてもよい。
【0075】
前記粘着性ハイドロゲルの製造用組成物には、必要に応じて重合開始剤が含まれていてもよい。
重合開始剤の種類は特に限定されないが、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤の例および量は、前記の記載が参照される。
【0076】
本発明の粘着性ハイドロゲルは皮膚への安全性と粘着性を保持しており、また電解質の添加により導電性を容易に付与できることから電極パッド等の粘着導電部位として好適に使用できる。このような使用例について説明すると、カーボン等の導電物質が練りこまれた導電層の片面に粘着性ハイドロゲルを積層させ、その層の反対面に非導電性の支持体を積層させる。この積層体に例えば銅線等の導電性物質が導電層と接する形で取り付けられ、それが端子となり、外部からもしくは外部のモニター等へ、導電層とハイドロゲルを通じて電気を流すことができる粘着性ハイドロゲルを含んだ電極となる。
【0077】
上記の粘着性ハイドロゲルを含む電極は一例であり、記載方法以外の方法で外部へまたは外部からハイドロゲルを通して電気を流す構造であれば電極として好適に利用できる。
【0078】
導電層には、ポリエステル系又はポリウレタン系樹脂をバインダーとしてカーボンペーストにより形成されたカーボンコート層、Ag/AgCl等の金属やカーボン等を含む導電性インクを印刷コーティングした層、樹脂フィルム上に金属箔(アルミ、ステンレス、Ag等)、もしくはカーボン等を練りこんだ導電性フィルムをラミネートした層等が使用される。導電層は引っ張り等、外部から力が働いた際に容易に切れないような強度を保持していることが望ましい。容易に千切れるような場合には、電極を製造する際に途中で導電層が切れたり、伸張により最終製品の電極が変形したり、更に使用者の取り扱い方によっては電極中の導電層が千切れたりすることで、火傷等を誘引する可能性がある。一方で、凹凸のある皮膚面へ貼付するため、柔軟性も必要とされる。使用に際して不具合が起こらないような物性を持った導電層の選択が必要である。
【0079】
非導電性の支持体は、樹脂フィルムの材質は特に限定されないが、印刷に適した合成紙(ポリプロピレンに無機フィラーを添加したもの)、PET、OPPフィルム等が好ましい。また、外観を向上させるために支持体の導電層と接する面とは反対の面に対して化粧印刷を施したり、紙、不織布、発砲体(ポリエチレン、ポリエチレンビニルアセテート、ポリウレタン等の軟質の発泡シート)、ポリウレタン等のフィルムもしくはシートがラミネートされたりしていても良い。非導電性の支持体と導電層と貼り合わせる場合には支持体の導電層に接着させる面に粘着処理がされていることが好ましく、導電層と支持体を複数組み合わせてラミネートされたものを用いても差し支えない。非導電層は、使用中に導電層から容易に剥れたり、千切れたりすることがないようにする必要がある。また、凹凸のある皮膚面に追従するために、柔軟性がある方が好ましい。
【0080】
端子には、支持体と導電層がラミネートされたフィルムの場合は、前述の粘着性ハイドロゲルを積層させる際に、フィルムの一部にハイドロゲルが積層されていない部分を形成し、その部分が端子となりクリップ等で挟まれてリード線と接続される。カシメ構造を有する電極の場合は、導電性を有していれば特に限定されないが、ステンレス等の金属やカーボンンを練りこんだ樹脂成型品であるスナップ端子と樹脂の成型品にAg/AgCl等の金属をコーティングしたようなエレメントがカシメられた構造の部分が端子となり外部へ接続される。
【0081】
また、金属線等を使用する場合は、金属線の一部が導電層と支持体に挟まれた構造で、導電層と支持体の積層部からはみ出した部分は非導電性の樹脂等で覆われており、金属線の先端がリード線と接続されることで外部へ接続される。
【0082】
したがって、本発明の粘着性ハイドロゲルは、生体に貼付するサージカルテープ、カテーテルや点滴用のチューブ/心電図電極/その他センサー類の固定用テープ、湿布剤、創傷被覆剤、人工肛門等の固定用テープ、電気治療器用導子/磁気治療器固定用粘着材/経皮吸収剤の担体兼粘着材等の生体に貼付して用いる粘着材として、また、ハイドロゲルドレッシングや超音波測定用のカップリング剤として、更には、建材/電子材料等の工業用粘着材として好適に使用することができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の各性質の評価方法を下記する。
【0084】
(180°皮膚繰返し粘着力測定)
不織布で裏打ちしたサンプルを20mm×100mmの短冊状に切り出し、この試験片を予めアルコールで軽く拭いた左上腕内側に2分間貼付する。(株)オリエンテック製テンシロンにセットし、1000mm/分の速度で180°方向に剥離する際の力を初期の粘着力とする。剥離した試験片を体の他の部分に貼付と剥離を3回繰返した後、予めアルコールで軽く拭いた左上腕内側に2分間貼付し、上記と同様の方法で180°方向に剥離し、5回目の粘着力とする。同様な方法で10回目の粘着力を測定し、初期粘着力に対する粘着力保持率を算出した。尚、測定は温度23℃、湿度60%の雰囲気で行った。
【0085】
(比抵抗測定)
サンプルを20mm×200mmの角型に切り出し、この試験片の両面にステンレス板を貼り合せ、ステンレス板間に1kHz、10Vp−pの電流を流した時のインピーダンスを測定する。得られたインピーダンス(I)と、試験片の面積(S)及び厚み(d)から以下の式により、比抵抗を算出した。
比抵抗(Ω・cm)=I(Ω)÷d(cm)×S(cm2
【0086】
(凝集性測定)
20mm角にカットしたゲルサンプルのトップフィルムを剥離し、50mm角の合成紙(品名:ピーチコート、日清紡績株式会社製)に貼り付ける(A面)。ゲルのもう一方の面の保護フィルムは剥離せずに、同サイズの合成紙を重ね(B面)、3kg/cm2の圧力で2.5秒押さえつける。押さえつけた後、B面の合成紙を取りさり、保護フィルムの周囲にはみ出したゲルの最大のはみ出し長さを測定した。
【0087】
(分子量測定)
試料約20mgを遠沈管に秤量し、HPLC用蒸留水10mLを加えて溶解後、溶解液をろ過せずにそのまま測定した。標準物質には、Shodex製プルランを使用した。
測定は島津製作所(株)製 HPLC LC−6Aを、カラムにはOHpad SB−806M HQ×2を用いた。(カラム温度:40℃、溶媒:0.2M硝酸ナトリウム、流量:0.7mL/分)
【0088】
実施例1
1)重合性単量体としてアクリルアミドを18g、架橋性単量体としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.027g、多価アルコールとしてグリセリン55g、溶媒として水を20.4gを混合し、溶解攪拌して粘着性ハイドロゲル組成物を得た。次に、その配合液に対して、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製 商品名イルガキュア2959)を0.13g加えて更に攪拌溶解した。
【0089】
次に、共重合比7:3のアクリル酸とアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の共重合体(日本純薬社製 商品名アロンビスAH−305、重量平均分子量450万)を1.0gとグリセリン5gを攪拌し、ポリマーを分散させた。その分散液を上記配合液に少しずつ添加し、更に2時間攪拌した。
【0090】
2)次に、ガラス上に置いたシリコン処理を施した厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルム上のポリカーボネート製型枠(130mm×130mm、厚さ1.0mm)に組成物を流し込み、更に型枠上にシリコン処理を施した38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを気泡が入らないように置き、石英ガラスを乗せて厚みを制御したものを製作した。これをピーク強度50mW/cm2の紫外線ランプで紫外線を60秒照射して取りだし、型枠より切り出してサンプルとした。
得られたサンプルの180°皮膚繰返し粘着力と比抵抗を測定、凝集性を確認し結果を表1に示す。
【0091】
実施例2
重合性単量体としてN,N’−ジメチルアクリルアミドを31.7g、架橋性単量体としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.05g、多価アルコールとしてグリセリン28.6g、溶媒として水を33.7gを混合し、溶解攪拌して粘着性ハイドロゲル組成物を得た。次に、その配合液に対して、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製 商品名イルガキュア2959)を0.13g加えて更に攪拌溶解した。
【0092】
次に、アクリル酸とアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の共重合ポリマー(日本純薬社製 商品名アロンビスAH−305)を1.0gとグリセリン5gを攪拌し、ポリマーを分散させた。その分散液を上記配合液に少しずつ添加し、更に2時間攪拌した。
【0093】
その配合液を実施例1−2)に記載と同様な方法で重合し、サンプルを得た。
得られたサンプルの180°皮膚繰返し粘着力と比抵抗を測定、凝集性を確認し結果を表1に示す。
【0094】
実施例3
重合性単量体としてN,N’−ジメチルアクリルアミドを14g、架橋性単量体としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.02g、多価アルコールとしてグリセリン42.7g、溶媒として水を23.3gを混合し、溶解攪拌して粘着性ハイドロゲル組成物を得た。次に、その配合液に対して、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製 商品名イルガキュア2959)を0.13g加えて更に攪拌溶解した。
【0095】
次に、アクリル酸とアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の共重合ポリマー(日本純薬社製 商品名アロンビスAH−305)を10gとグリセリン10gを攪拌し、ポリマーを分散させた。その分散液を上記配合液に少しずつ添加し、更に2時間攪拌した。
その配合液を実施例1−2)に記載と同様な方法で重合し、サンプルを得た。
得られたサンプルの180°皮膚繰返し粘着力と比抵抗を測定、凝集性を確認し結果を表1に示す。
【0096】
実施例4
重合性単量体としてN,N’−ジメチルアクリルアミドを20g、架橋性単量体としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.03g、多価アルコールとしてグリセリン51g、電解質として塩化ナトリウム2g、溶媒として水を20gを混合し、溶解攪拌して粘着性ハイドロゲル組成物を得た。次に、その配合液に対して、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製 商品名イルガキュア2959)を0.13g加えて更に攪拌溶解した。
【0097】
次に、アクリル酸とアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の共重合ポリマー(日本純薬社製 商品名アロンビスAH−305)を1.5gとグリセリン5gを攪拌し、ポリマーを分散させた。その分散液を上記配合液に少しずつ添加し、更に2時間攪拌した。
その配合液を実施例1−2)に記載と同様な方法で重合し、サンプルを得た。
得られたサンプルの180°皮膚繰返し粘着力と比抵抗を測定、凝集性を確認し結果を表1に示す。
【0098】
実施例5
重合性単量体としてアクリル酸を23g、架橋性単量体としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.03g、多価アルコールとしてグリセリン51g、溶媒として水を20g混合し、溶解攪拌して粘着性ハイドロゲル組成物を得た。次に、その配合液に対して、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製 商品名イルガキュア2959)を0.13g加えて更に攪拌溶解した。
【0099】
次に、アクリル酸とアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の共重合ポリマー(日本純薬社製 商品名アロンビスAH−305)を1.0gとグリセリン5gを攪拌し、ポリマーを分散させた。その分散液を上記配合液に少しずつ添加し、更に2時間攪拌した。
その配合液を実施例1−2)に記載と同様な方法で重合し、サンプルを得た。
得られたサンプルの180°皮膚繰返し粘着力と比抵抗を測定、凝集性を確認し結果を表1に示す。
【0100】
比較例1
重合性単量体としてアクリルアミドを20g、架橋性単量体としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.027g、多価アルコールとしてグリセリン59.9g、溶媒として水を20gを混合し、溶解攪拌して粘着性ハイドロゲル組成物を得た。次に、その配合液に対して、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製 商品名イルガキュア2959)を0.13g加えて更に攪拌2時間攪拌し溶解した。
【0101】
その配合液を実施例1−2)に記載と同様な方法で重合し、サンプルを得た。
得られたサンプルの180°皮膚繰返し粘着力と比抵抗を測定、凝集性を確認し結果を表1に示す。
【0102】
比較例2
重合性単量体としてアクリルアミドを20g、架橋性単量体としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.06g、多価アルコールとしてグリセリン59.9g、溶媒として水を20gを混合し、溶解攪拌して粘着性ハイドロゲル組成物を得た。次に、その配合液に対して、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製 商品名イルガキュア2959)を0.13g加えて更に攪拌2時間攪拌し溶解した。
【0103】
その配合液を実施例1−2)に記載と同様な方法で重合し、サンプルを得た。
得られたサンプルの180°皮膚繰返し粘着力と比抵抗を測定、凝集性を確認し結果を表1に示す。
【0104】
比較例3
重合性単量体としてN,N’−ジメチルアクリルアミドを15g、架橋性単量体としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.027g、溶媒として水を50gを混合し、溶解攪拌して粘着性ハイドロゲル組成物を得た。次に、その配合液に対して、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製 商品名イルガキュア2959)を0.13g加えて更に攪拌溶解した。
次に、アクリル酸とアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の共重合ポリマー(日本純薬社製 商品名アロンビスAH−305)を25gとグリセリン10gを攪拌し、ポリマーを分散させた。その分散液を上記配合液に少しずつ添加し、更に2時間攪拌した。
【0105】
その配合液を実施例1−2)に記載と同様な方法で重合し、サンプルを得た。
得られたサンプルの180°皮膚繰返し粘着力と比抵抗を測定、凝集性を確認し結果を表1に示す。
【0106】
比較例4
重合性単量体としてアクリルアミドを20g、架橋性単量体としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.03g、多価アルコールとしてグリセリン59g、電解質として塩化ナトリウムを2g、溶媒として水を18gを混合し、溶解攪拌して粘着性ハイドロゲル組成物を得た。次に、アクリル酸とメタクリル酸の共重合体(日本純薬社製ジュリマーAC−20H)を0.7gを混合し、更に攪拌した。次に、その配合液に対して、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製 商品名イルガキュア2959)を0.13g加えて更に2時間攪拌溶解した。
【0107】
その配合液を実施例1−2)に記載と同様な方法で重合し、サンプルを得た。
得られたサンプルの180°皮膚繰返し粘着力と比抵抗を測定、凝集性を確認し結果を表1に示す。
【0108】
【表1−1】

【表1−2】

【0109】
上記結果から、実施例1〜5で得られた粘着性ハイドロゲルは、180°皮膚繰返し粘着力試験において、10回目でもその粘着力は低下せず(84%以上の維持率)、更に、凝集性試験において、優れた凝集性を有していた。
【0110】
一方、比較例1のように、重合性単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックスにポリマーを含まないハイドロゲルは、180°皮膚繰返し粘着力試験において、10回目でもその粘着力は低下しないものの、凝集性試験において、凝集性が劣っていた。
【0111】
また、比較例2で得られたものは初期皮膚粘着力が低いために使用に適さない。
更に、比較例4のように、重合性単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックスに水溶性ポリマーを含むハイドロゲルは、凝集性試験において、すぐれた凝集性は有するが、180°皮膚繰返し粘着力試験において、10回目でその粘着力が顕著に低下した。
【0112】
これらの結果より、重合性単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックスに、構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含有するポリマーを含むことで、皮膚に対する繰返し粘着力が発現し、加工性や貼付中の衣服へのゲル付着のない粘着性ハイドロゲルが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックスに、水と、多価アルコールと、構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーとを含む粘着性ハイドロゲルからなり、前記構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーが、前記ハイドロゲル中の水以外の成分を100重量部とした場合、0.1〜45重量部含まれることを特徴とする粘着性ハイドロゲル。
【請求項2】
前記構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーが、アクリル酸とN−アルキルスルホン酸アクリルアミドの共重合体である請求項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項3】
前記重合性単量体がアクリルアミド誘導体からなる請求項1または2に記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項4】
更に電解質を含み、前記粘着性ハイドロゲル中の水以外の成分を100重量部とした場合、前記電解質が0.1〜10重量部含まれる請求項1〜3のいずれか1つに記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の粘着性ハイドロゲルの製造に使用される組成物であって、重合性単量体と、架橋性単量体と、水と、多価アルコールと、構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーとを含むことを特徴とする粘着性ハイドロゲルの製造用組成物。
【請求項6】
水を除いた組成物全体を100重量部とした場合、重合性単量体と架橋性単量体を合わせた割合が10〜70重量部、多価アルコールの割合が20〜80重量部、構成単位にN−アルキルスルホン酸アクリルアミドを含むポリマーの割合が0.1〜45重量部であり、前記架橋性単量体の割合が、重合性単量体100重量部に対して、0.01〜0.5重量部である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の粘着性ハイドロゲルを含むことを特徴とするゲルシート。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の粘着性ハイドロゲルからなるゲル層と導電層とを有することを特徴とする電極。

【公開番号】特開2009−227924(P2009−227924A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78133(P2008−78133)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】