説明

粘着性高分子ゲル、該ゲル製造用組成物及び粘着テープ

【課題】十分な透湿性と粘着性とを有する高分子ゲル、並びに支持体上に該高分子ゲルの層を有する粘着テープ提供する。
【解決手段】ジヒドロキシシクロアルカン誘導体のモノ(メタ)アクリレートを重合することによって得られる重合体から構成される高分子マトリックスと、両親媒性の多価アルコールとを含有する粘着性高分子ゲル。該多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の低分子化合物やポリプロピレングリコール等のポリエーテルが使用され、特にポリエーテルが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性高分子ゲル、該ゲル製造用組成物及び粘着テープに関する。本発明の粘着性高分子ゲル及び粘着テープは、生体用、医療、衛生材料、工業用材料として幅広く使用可能である。特に、サージカルテープや、カテーテル、点滴用チューブ、心電図電極のようなセンサー等の固定用テープや、湿布剤や、創傷被覆剤や、人工肛門の固定用テープや、電気治療器用導子、磁気治療器固定用粘着材や、経皮吸収剤の担体兼粘着材等の生体用用途、建材、電子材料分野での粘着剤や、ディスプレイやタッチパネルのスペーサー,充填剤,防振材,衝撃吸収及び緩衝材や、電池用のゲル化剤等の工業用用途に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
粘着性高分子ゲルは、高分子マトリックス中に、溶媒、可塑剤、粘着性付与剤、保湿剤等を保持した構成を有している。この高分子ゲルは、高分子マトリックスとして、親水性高分子を使用したハイドロゲルと、疎水性高分子を使用したオルガノゲルに大別される。
【0003】
ハイドロゲルの代表例としては、ポリアクリル酸やポリアクリルアミド等の親水性高分子からなる高分子マトリックスに、水、可塑剤等を含有した高分子ゲルが挙げられる。一方、オルガノゲルとしては、ポリアクリルエステル樹脂のような疎水性高分子からなる高分子マトリックスに、常温で液状の脂肪族エステルのような可塑剤等を含有した高分子ゲルが挙げられる。
【0004】
上記高分子ゲルの内、ハイドロゲルは透湿性に優れるため、生体用の粘着剤として用いれば、長時間貼付しても蒸れにくく、かぶれにくいというメリットがある。しかし、極度の発汗状態や、入浴時のように蒸発する速度よりも吸水量が多くなる状態や、単位時間当たり吸水量は多くなくとも、密閉環境下のようなゲル中の過剰な水分が蒸発できない状態では、ゲルの平衡バランスが崩れることになる。この場合、ハイドロゲル中の可塑剤等が流出しやすくなる。
【0005】
これに対して、オルガノゲルは、高分子マトリックスから可塑剤まで疎水性であるため、上記状態下でもゲル中の可塑剤等の流失がほとんど起こらない。
しかし、オルガノゲルは、透湿性が殆どないため、長時間生体に貼付すると皮膚かぶれが生じるという課題がある。また、吸水性がないため、貼付対象物が湿っていると粘着力が低下するという課題がある。そこで、オルガノゲルに親水性の可塑剤を保持させることで、透湿性を向上させることが考えられる。しかし、疎水性モノマーと親水性の可塑剤とは通常相溶しないので、ゲルを形成することが難しい。また、まれにゲルを形成できても、時間の経過により可塑剤がゲルからブリードしてしまうため、粘着性に乏しいゲルとなってしまう。
【0006】
特開2005−304756号公報(特許文献1)には、透湿性が改善され、十分な粘着性を有するオルガノゲルを備えた皮膚貼付用粘着テープが提案されている。この粘着テープは、
(1)アクリル系共重合体100重量部と、室温で液状又はペースト状のカルボン酸エステル20〜120重量部とを含有する粘着剤層と、通気度が5cc/cm2/秒以上である基材とからなり、
(2)粘着テープ全体の透湿度が600g/m2・24h・40℃・30%(相対湿度)R.H.以上であり、
(3)アクリル系共重合体が、アクリル酸アルキルエステル40〜80重量%、アルコキシ基含有エチレン性不飽和単量体10〜60重量%、及び、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体1〜10重量%を含む単量体混合物から得られる。
上記公報では、疎水性モノマーとしてのアクリル酸エステルと、透湿性付与剤としてのアルコキシ基含有エチレン性不飽和単量体とを使用して高分子ゲルを形成している。
【特許文献1】特開2005−304756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記公報では、オルガノゲルの高分子マトリックスが、アクリル酸エステルのような疎水性モノマーに由来する樹脂からなり、透湿性付与剤として、脂肪酸エステルや脂肪酸グリセリンエステル等の室温で液状又はペースト状のカルボン酸エステルが使用されている。上記公報では、カルボン酸エステルが界面活性剤的に作用して透湿度が向上すると記載されている。しかし、脂肪族エステルや脂肪酸グリセリンエステルは実質「油」であり、ほとんど親水性がないため、透湿性は付与できても、その程度は低いものとなってしまう。
【0008】
ここで、後述の比較例7は、上記公報発明のゲルの例である。JIS Z0208により測定されるこのゲルの透湿度は、約1000g/m2・24h・40℃・90%R.H.程度と低いため、このゲルでは皮膚かぶれの防止が不十分である。
そのため、皮膚かぶれを防止しうる、具体的には、好ましくは2000g/m2以上の十分な透湿性を有しながらも、優れた粘着性を発揮する粘着性高分子ゲルの提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者等は、ヒドロキシ基を有する特定の(メタ)アクリレートと、親水性及び親油性(両親媒性)の多価アルコールとを重合開始剤の存在下で重合させたゲルが、透湿性を向上し、更に粘着性を兼ね備えたゲルとなることを意外にも見い出し本発明に至った。
【0010】
かくして本発明によれば、ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートに由来する重合体から構成される高分子マトリックスと、両親媒性の多価アルコールとを含むことを特徴とする粘着性高分子ゲルが提供される。
【0011】
また、本発明によれば、支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に設けられた上記粘着性高分子ゲルの層とを含み、前記支持体が、2000g/m2・24h・40℃・90%R.H.以上の透湿性を有することを特徴とする粘着テープが提供される。
【0012】
更に、本発明によれば、ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートと、両親媒性の多価アルコール及び重合開始剤とを含むことを特徴とする粘着性高分子ゲル製造用組成物が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大量の水に接触してもゲルが膨潤せず、被着対象物から脱落すること、ゲル中の可塑剤等が流失すること、粘着性が低下することなく、かつ優れた透湿性を有するオルガノゲルである高分子ゲルを提供できる。言い換えると、オルガノゲルに良好な透湿性を付与した粘着性高分子ゲルが得られる。
本発明によれば、皮膚に長時間貼付した際に、発汗が生じた場合でも蒸れることがなく、かつ皮膚刺激を生じにくい粘着性高分子ゲルを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の粘着性高分子ゲル(以下、単にゲルとも称する)は、高分子マトリックス中に、少なくとも多価アルコールを含有するオルガノゲルである。
なお、本発明によれば、高分子マトリックスのみをイオン交換水に60分浸漬した時の給水倍率が2倍以下の膨潤性の少ないゲルを提供できる。
【0015】
本発明のゲルは、厚さが50μmの場合、2000g/m2・24h・40℃・90%R.H.以上の透湿性を有することが好ましく、2500〜35000g/m2・24h・40℃・90%R.H.の透湿性を有することがより好ましい。
【0016】
なお、通常ならばオルガノゲルが透湿性を有することは矛盾していると感じられるかもしれない。しかし、本発明のゲルは、高分子マトリックスの樹脂がジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートの重合体であり、多価アルコールを含有している。これらはいずれも親水基のヒドロキシ基を有しているので、ゲルに優れた透湿性を付与できると発明者等は考えている。
【0017】
また、多価アルコールは親水基を有すると同時に、疎水基も有している。この疎水基と高分子マトリックスとの間に相互作用が働くことにより、大量の水と接触した場合でも多価アルコールの流失が生じにくくなる。また、ヒドロキシル基が豊富に存在することで、水との良好な親和性が得られる。
【0018】
高分子マトリックスは、ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートに由来する重合体を含む。なお、(メタ)アクリレートとは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートとしては、シクロアルカンジオールの(メタ)アクリレート及びシクロアルカンジアルコールの(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0019】
ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートは、
(1)メタクリレートの場合、ジヒドロキシシクロアルカン誘導体部分の全炭素原子の数は4以上であることが好ましく、4〜18であることがより好ましく、
(2)アクリレートの場合、ジヒドロキシシクロアルカン誘導体部分の全炭素原子の数が6以上であることが好ましく、6〜18であることがより好ましい。
【0020】
また、ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレート中、シクロアルカンは、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロノナン、シクロデカン、ジシクロペンタン、ノルボルネン、ボルナン、アダマンタン等が好ましい。なお、シクロアルカンは、メチル基、エチル基等のアルキル側鎖を有していても差し支えない。
【0021】
上記シクロアルカンジオールは、シクロアルカンをジヒドロキシ化又はジヒドロキシアルキル化して得ることができる。
更に、ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートは、ジヒドロキシシクロアルカン誘導体と(メタ)アクリル酸とを1:1でエステル化することで得ることができる。
【0022】
具体的なジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートとしては、シクロペンタンジオール(メタ)アクリレート、アダマンタンジオール(メタ)アクリレート、シクロペンタンジメタノール(メタ)アクリレート、シクロペンタンジエタノール(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオール(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジエタノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0023】
また、高分子マトリックスは、架橋性モノマーにより架橋されていてもよい。架橋性モノマーとは、分子内に重合性を有する二重結合を2以上有しているジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート等が使用可能である。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘプタンジオール(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能(メタ)アクリルアミドや、テトラアリロキシエタン、ジアリルアミン誘導体等が挙げられる。これら架橋性モノマーは、単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
架橋性モノマーの使用量は、高分子マトリックス製造用の全モノマーに対して2重量%以下であることが好ましい。この場合、適度な粘着力、耐水性、膨潤性を備えたゲルを得ることができる。
【0025】
本発明のゲル製造用のジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートは、水への溶解性が極めて低い(例えば、水100gに対する溶解量が1g以下)。そのため、ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートを重合して得られる高分子マトリックスは、水難溶性の性質を示す。ところが、末端にヒドロキシル基を有しているため、特に、多価アルコールと高い親和性を有する。
【0026】
被着対象物が湿っている場合、初期粘着性を向上させるために、イオン性モノマーを上記ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートと共重合させてもよい。イオン性モノマーは、高分子マトリックス形成用の全モノマー中、5重量%以下であることが好ましい。
【0027】
なお、5重量%を超えるイオン性モノマーを上記ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートと共重合させると、吸水力が高くなり過ぎることがある。この場合、より多くの水分を吸収できるので、ぬれた被着対象物に対する粘着発現性を高くできる。しかし、吸水能が高くなりすぎ、ゲルに水が接触したとき、必要以上に吸水してしまうことがある。この場合、ゲルの組成変化、体積膨張、粘着力低下が生じ、耐水性が損なわれることがある。
【0028】
イオン性モノマーの共重合により、水難溶性の高分子マトリックスの一部に親水基であるイオン性の官能基を導入できる。その結果、高分子マトリックスにわずかな吸水性を持たせることができるので、若干の水ならばゲル中に吸収できる。そのため、被着対象物表面と高分子ゲルとの粘着界面に水が残らず、両者を密着できる。
【0029】
また、同じ親水基でもイオン性モノマー由来の官能基は、水と接触することで解離し、イオンが生じる。そのため、ゲルの水和力を高くでき、かつゲル内部の浸透圧を高くできる。この結果、より迅速に湿った被着対象物表面の水分を吸収し、湿った面に対する初期粘着性を発現できる。
【0030】
なお、例え一部に親水性基を導入したとしても、上記使用量の範囲においては高分子マトリックス全体の水難溶性が維持される。従って、全体として水和力が低いため、ゲル自体の保水性も低い。よって、粘着界面以外の面からゲル中に一旦吸収された過剰な水分を蒸発させることでゲルの平衡状態を回復できる。
【0031】
イオン性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アリルカルボン酸等の不飽和カルボン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホブチル(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレートが使用可能である。これらモノマーには、pH調整や、吸水性の制御のため、塩を形成させてもよい。塩を形成する場合、対イオンとしては、特に限定されず、有機イオン及び無機イオンのいずれも使用できる。この内、有機イオンが好ましい。具体的には、カチオンならばアミン類、アニオンならばスルホン酸、カルボン酸等が挙げられ、これらは、溶媒や他のモノマーとの相溶性を制御しやすいため好ましい。
【0032】
疎水性モノマーを上記ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートと共重合させてもよい。これにより、高分子マトリックスの疎水性や、重合後の高分子マトリックス中の直鎖部分のガラス点移転や粘弾性を制御できる。
【0033】
疎水性モノマーとしては、イソブチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキルアクリレート、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル置換アクリルアミド誘導体が挙げられる。
【0034】
その他、両親媒性モノマーを高分子マトリックスと共重合させてもよい。このモノマーとしては、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N‐アクリロイルピペリジン、N‐アクリロイルピロリジン、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0035】
多価アルコールとしては、両親媒性を有することが必要となる。そのために、高分子マトリックスの疎水性部分と多価アルコールの疎水性基との相互作用により、多価アルコールの流出を大幅に低減できる。具体的な多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリブタンジオール、ポリグリセリン、これらの誘導体等が挙げられる。これら多価アルコールは25℃で液状のものが好ましい。また、これら多価アルコールは2種以上使用してもよい。上記多価アルコールの内、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリブタンジオール、ポリグリセリン等のポリオール及びそのエーテル付加物のような比較的親油性が高い多価アルコールが好ましい。
【0036】
上記多価アルコール中、ポリエーテル付加(ポリ)グリセリンが更に好ましい。ポリエーテル付加(ポリ)グリセリンは、(ポリ)グリセリンのヒドロキシル基が上記ポリオールで変性された多価アルコールである。このポリエーテル付加(ポリ)グリセリンは、分岐構造を有している。従って、立体障害性が高く結晶性に劣るため、高分子量であっても25℃で液状を呈する。このように液体の多価アルコールは、ゲルの溶媒成分又は可塑剤として好適に作用する。
【0037】
ポリエーテル付加(ポリ)グリセリンは、付加したポリエーテル基の直鎖部分に疎水性のメチレン基やアルキル基が存在する。ポリエーテル基が分岐したような構造で立体的に広がっている。そのため、高分子マトリックスの疎水性部分と、ポリエーテル付加(ポリ)グリセリンの疎水性基との相互作用により、ポリエーテル付加(ポリ)グリセリンが、高分子マトリックスから流出することがほとんどない。
【0038】
ポリエーテル付加(ポリ)グリセリンの具体例として、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンジグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0039】
多価アルコールの使用量は、高分子マトリックス100重量部に対して、20〜300重量部であることが好ましい。この範囲であれば、ゲルに適度な柔軟性と粘着性を付与すると同時に、十分な透湿性を発現できる。より好ましくは、50〜200重量部である。
【0040】
本発明のゲルには、必要に応じて防腐剤、殺菌剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、安定剤、pH調整剤、香料、界面活性剤、着色剤等や、抗炎症剤、ビタミン剤、美白剤その他の薬効成分を添加してもよい。
本発明のゲルは、通常、液状のモノマー配合液を重合してゲル化させるため、用途に合わせて適宜成型できる。例えば、粘着テープとして使用する場合は、厚さが0.01mm〜2.0mmのシート状に成型されていることが望ましい。
【0041】
ここで、本発明によれば、0.3mmの厚さを有する場合、1rad/sで400〜15000Pa、100rad/sで1000〜20000Paの弾性率、1rad/sで100〜4000Pa、100rad/sで1000〜15000Paの粘性率を示すゲルを提供できる。この範囲の弾性率及び粘性率を有することで、被粘着面の形状に容易に追随し、引き剥がし時に残存の少ないゲルを提供できる。なお、より好ましくは、1rad/sで600〜12000Pa、100rad/sで2000〜17000Paの弾性率、1rad/sで200〜3000Pa、100rad/sで2000〜13000Paの粘性率である。
【0042】
ゲルの両面には、表面を保護するためのセパレーターを設けることが好ましい。セパレーターのうち片側は支持体であってもよい。もう一方は、ベースフィルムとして最終製品まで付属していることが好ましい。この場合のセパレーターは、末端ユーザーが使用する直前に剥離できる。なお、支持体とは、ゲルを補強し、テープの形態を保持させるためのフィルム、不織布、織布等のことを指す。通常、ゲルは支持体にコートされ、いわゆる、粘着テープとして使用される。
【0043】
セパレーターとしては、フィルム状に成型可能な樹脂又は紙であれば特に制限されない。中でも、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン等からなる樹脂フィルム、紙、又は樹脂フィルムをラミネートした紙等が好適に用いられる。特に、ベースフィルムとして使用する場合は、二軸延伸したPETフィルムや、OPP、ポリオレフィンをラミネートした紙が好ましい。
【0044】
セパレーターがゲルと接する面には離型処理がなされていることが好ましい。また、必要に応じてセパレーターの両面が離型処理されていても差し支えない。両面に離型処理する場合は、表裏の剥離強度に差をつけてもよい。離型処理の方法としては、シリコーンコーティングが挙げられる、特に、熱又は紫外線で架橋、硬化反応させる焼き付け型のシリコーンコーティングが好ましい。
【0045】
セパレーターの内、前記ベースフィルムの逆の面に配置されるトップフィルムは、ゲルの製品形態に応じて最適な材料が選択される。例えば、ゲルを短冊で取り扱う場合は、前記の通りフィルム状に成型可能な樹脂又は紙であれば特に制限されないが、ベースフィルムと同様に離型処理されていることが好ましい。
【0046】
ゲルをロール状に巻き取って保管、物流する場合、トップフィルムは柔軟であることが望ましい。柔軟性を有するフィルムは、ロール巻の内周側及び/又は外周側に使用してもよいが、外周側に配置することがより好ましい。具体的には、ベースフィルム、ゲル、トップフィルムの3層構造のゲルシートをロールに巻く際、少なくとも片側の(ロールの外周側に位置する)トップフィルムが延びれば、巻き皺を低減できる。柔軟性がないフィルムを両面に使用する場合、巻皺が発生する危険性が高いため好ましくない。
【0047】
また、支持体としては、離型処理しているか又はしていない樹脂フィルムが使用できる。樹脂フィルムとしては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等が挙げられる。特に、樹脂フィルムには、透湿性が2000g/m2・24h・40℃・90%R.H.以上であり、透水性を有していない透湿性フィルムを選択することが好ましい。この選択により、ゲルの透湿性を活かし、耐水性が更に向上した粘着テープを得ることが可能となる。
【0048】
透湿性フィルムとしては、水蒸気は透過するが、液体の水は透過しないフィルムが使用できる。例えば、微多孔透湿性フィルム、ポリウレタン、変性ポリエステルフィルム等が挙げられる。特に、ポリウレタンや変性ポリエステルフィルムは、柔軟性、伸縮性に富み、生体に使用するのに適している。更に、ポリオール変性されたポリエステルフィルムは、ポリウレタンフィルム以上に透湿性が優れるものがあり、その支持体が最も好ましい。これらの透湿性フィルムは、通常単独では柔らかすぎ、製造工程での取扱が困難である場合が多いため、キャリアとして、ポリオレフィンやポリエステル、あるいは紙等がラミネートされていてもよい。
【0049】
上記支持体を備えた粘着テープは、例えば、ゲル形成後、支持体を貼付する方法と、支持体に直接モノマー配合液をコーティングし、紫外線照射してゲルを生成させる方法により製造できる。
【0050】
例えば、粘着テープを加工用の中間素材として流通させる場合、末端の加工業者での取り扱いが容易であることが望まれる。粘着テープは、必要に応じて中間基材として不織布又は織布がゲルに埋設されていてもよい。ゲルをシート状に成形する際、これら中間基材は、ゲルの補強、裁断時の保形性を改善する役割を果たす。不織布及び織布の材質は、セルロース、絹、麻等の天然繊維やポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維、又は、それらの混紡が使用可能である。不織布及び織布は、必要に応じて、バインダーにより結着していてもよく、着色されていてもよく、導電処理されていてもよい。
【0051】
また、不織布及び織布の代わりにフィルムを使用してもよい。使用可能なフィルムはポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等の樹脂フィルムが挙げられる。これらフィルムには穴があけられていても、多層構造を有していても、着色されていてもよい。
【0052】
以下、ゲルの製造方法について説明する。
ゲルは、例えば、(1)モノマー及び多価アルコールを含むモノマー配合液を作製し、(2)重合反応と同時に任意の形状に成型することにより得られる。
【0053】
(1)モノマー配合液の作製
ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートと、必要に応じて架橋性モノマー、イオン性モノマー、重合開始剤を混合・攪拌して溶解する。次に、必要に応じて電解質、添加剤等を添加して溶解するまで攪拌する。次に、多価アルコールを添加して無色透明のモノマー配合液を作製する。なお、添加剤がもともと着色している場合や、染料、顔料を添加した場合、無色透明でなくてもよい。
【0054】
(2)重合反応と成型
得られたモノマー配合液を任意の形状の型枠に注入し、次いで重合させることでゲルが得られる。また、2枚の樹脂フィルム(ベースフィルム、トップフィルム)の間にモノマー配合液を流し込み、一定の厚みに保持した状態で重合させることでシート状のゲルが得られる。更に、1枚の樹脂フィルム(ベースフィルム又は支持体)上にモノマー配合液を薄層コーティングし、重合させることでフィルム状(シート状より薄い)のゲルが得られる。
【0055】
重合方法としては、一般的なラジカル重合の他、レドックス重合、光重合、放射線重合等が挙げられる。例えば、厚み又は深さが10mm以上の型枠に注入して重合させる場合は、レドックス重合や一般的なラジカル重合が適している。逆に、厚みが数ミリメートル〜数マイクロメートルのシート又はフィルム状に成型する場合は光重合が適している。光照射による重合は、反応速度が速い反面、分厚い材料の場合は光が透過する際に減衰し、厚み方向でのバラツキが生じる可能性がある。放射線による重合は、光よりも透過力に優れるが、設備が大がかりになるため、生産規模が大きい場合に適している。
【0056】
なお、2枚の樹脂フィルムをゲルの両面に配置し、光照射によりゲルを生成する際、光を照射する側に配置されるトップフィルムは、光を遮蔽しない材質を選択する必要がある。また、前記の支持体として例示したフィルムは、トップフィルムとして使用しない方がよい。特に、前記の支持体に、紫外線の照射による劣化の可能性がある場合は、直に紫外線が照射される側に配置することになるため好ましくない。
【0057】
光重合開始剤は、紫外線や可視光線で開裂し、ラジカルを発生するものであれば特に限定されない。例えば、α−ヒドロキシケトン、α−アミノケトン、ベンジルメチルケタール、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセン等が挙げられる。
【0058】
光重合開始剤の具体例としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(製品名:ダロキュア1173,チバスペシャリティーケミカルズ社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(製品名:イルガキュア184,チバスペシャリティーケミカルズ社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名:イルガキュア2959,チバスペシャリティーケミカルズ社製)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(製品名:イルガキュア907,チバスペシャリティーケミカルズ社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(製品名:イルガキュア369,チバスペシャリティーケミカルズ社製)等が挙げられる。これらを単独又は複数組み合わせて使用してもよい。
【0059】
光重合開始剤の濃度は、重合反応を十分に行い、残存モノマーを低減するためには、モノマー配合液に対して0.01重量%以上であることが好ましく、反応後の残開始剤による変色(黄変)や、臭気を防ぐためには1重量%以下であることが好ましい。
【0060】
通常、油性のゲルは、(1)有機溶剤中でアクリルエステルモノマーを重合した後、溶剤を蒸発、乾燥させて直鎖状ポリマーを得る工程、次に(2)脂肪族エステルからなる可塑剤と架橋剤、必要に応じて重合開始剤を添加して、フィルム状に成型する工程、次に(3)加熱、又は、光照射して架橋反応させる工程、により得られている。
【0061】
これに対して、本発明では、有機溶媒を使わず、モノマー、可塑剤等各必要成分の混合物に加熱、又は、光照射、放射線照射等を行うことでゲルが得られる。そのため、精製の必要がなく経済的であり、環境にもやさしく、また、安全性の面でも残留溶剤の心配がない点が優れている。
【0062】
本発明のゲル及び粘着テープは、生体用、医療、衛生材料、工業用材料として幅広く使用可能である。特に、サージカルテープや、カテーテル、点滴用チューブ、心電図電極のようなセンサー等の固定用テープや、湿布剤や、創傷被覆剤や、人工肛門の固定用テープや、電気治療器用導子、磁気治療器固定用粘着材や、経皮吸収剤の担体兼粘着材等の生体用用途、建材、電子材料分野での粘着剤や、ディスプレイやタッチパネルのスペーサー,充填剤,防振材,衝撃吸収及び緩衝材や、電池用のゲル化剤等の工業用用途に使用可能である。
【0063】
更に、本発明では上記ゲル製造用組成物も提供される。この組成物は、ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートと、両親媒性の多価アルコール及び重合開始剤とを含む。これら組成物の構成成分は、いずれも上記で例示した成分を上記した割合で使用できる。また、上記構成成分以外の成分(例えば、防腐剤、殺菌剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、安定剤、pH調整剤、香料、界面活性剤、着色剤等や、抗炎症剤、ビタミン剤、美白剤その他の薬効成分)を含んでいてもよい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の各性質の評価方法を下記する。
(透湿度(g/m2・24h・40℃・90%R.H.))
ゲルの透湿度(水蒸気透過度)は、JIS Z0208 防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)により、40℃、90%R.H.の条件で測定する。ここで、湿度90%の条件は、多量の水とゲルが接触した場合を想定している。なお、透湿度は、特開2005−304756に記載の通り、ゲルの厚みに反比例すると考えられるため、実際に使用する状況を想定して厚さ50μm又は目付50g/m2あたりの透湿度に換算する。
なお、35000g/m2・24h・40℃・90%R.H.を超える透湿度は、測定用のポットが飽和するため測定できない。この透湿度を超える場合、「>35000」と標記する。
【0065】
(吸水倍率)
予め重量(g)を測定したゲルを20℃のイオン交換水に60分浸水させた後の重量(g)を測定する。下記式から給水倍率を算出する。
吸水倍率(倍)=浸水後のゲル重量/浸水前のゲル重量
【0066】
(流失率)
予め重量(g)を測定したゲルを20℃のイオン交換水に60分浸水させた後、120℃のオーブン中で120分乾燥させた後の重量(g)を測定する。下記式から、多価アルコールの流失率を算出する。
流失率(%)=(浸水前のゲル重量−乾燥後のゲル重量)/浸水前のゲル重量×100
【0067】
(粘着力)
ゲルの片面に、支持体としての合成紙を貼付し、20mm幅の短冊状にカットして測定用サンプルを得る。このサンプルを用いて、JISZ0237「90度剥離」に従い、ベークライトに対する粘着力を測定する。
【0068】
(耐水粘着力)
ゲルの耐水粘着力を次の方法で測定する。
20mm幅の短冊状にカットしたシート状のゲルをベークライト板に貼付してサンプルを得る。このサンプルをイオン交換水に浸水する。20分後イオン交換水からサンプルを取り出し、表面の水を切った後にポリエステル不織布を貼付して補強する。次いで、上記粘着力測定と同様にして粘着力を測定する。測定された粘着力が耐水粘着力を意味する。
【0069】
(粘弾性率)
弾性率及び粘性率は、Reologica Instruments A.B.社製のDynAlyser DAR−100を使用して測定する。サンプルは、シートから直径20mmの円状に打ち抜いたゲルを使用する。測定条件は、温度37℃、周波数0.1〜0.01rad/sとする。
【0070】
(実施例1)
まず、ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートとしてのシクロヘキサンジメタノールアクリレート(CHDM)100重量部に対して、重合開始剤としての1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(商品名:イルガキュア2959,チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.38重量部を混合、撹拌し、完全溶解した。得られた溶液に多価アルコールとしてのポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル(ポリオキシプロピレンの重合度:14,25℃で液状,製品名:SCP−1000,阪本薬品工業社製)150重量部を混合、更に撹拌し、無色透明のモノマー配合液を得た。
【0071】
次に、得られたモノマー配合液をシリコーンコーティングされたPETフィルム上に滴下した。その上から同じくシリコーンコーティングされたPETフィルムを被せることで、液を均一に押し広げて、液滴の厚さが0.3mmになるように固定した。なお、測定を行う際、シート状のゲルに支持体を貼付せずに取り扱うことを考慮し、ゲル補強のための中間基材としてトリコットハーフ(ナイロン、15デニール)をゲル中に介在させた。次に、メタルハライドランプを使用してエネルギー量3000mJ/cm2の紫外線をモノマー配合液に照射することにより厚さ0.3mmの粘着性高分子ゲルを得た。得られたゲルは、無色透明で、ブリードが見られなかった。
得られたゲルの透湿度、給水倍率、流失率、粘着力及び耐水粘着力を測定し、結果を表1に示す。また、得られたゲルの粘弾性を測定し、結果を表2に示す。
【0072】
(実施例2)
重合開始剤を0.3重量部、多価アルコールを100重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして粘着性高分子ゲルを得た。得られたゲルは、無色透明で、ブリードが見られなかった。
得られたゲルの透湿度、給水倍率、流失率、粘着力及び耐水粘着力を測定し、結果を表1に示す。また、得られたゲルの粘弾性を測定し、結果を表2に示す。
【0073】
(実施例3)
多価アルコールとしてポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル(ポリオキシプロピレンの重合度:9,製品名:SCP−750,25℃で液状,阪本薬品工業社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして粘着性高分子ゲルを得た。得られたゲルは、無色透明で、ブリードが見られなかった。
得られたゲルの透湿度、給水倍率、流失率、粘着力及び耐水粘着力を測定し、結果を表1に示す。また、得られたゲルの粘弾性を測定し、結果を表2に示す。
【0074】
(実施例4)
多価アルコールとしてポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル(ポリオキシプロピレンの重合度:18,25℃で液状,製品名:SCP−1200,阪本薬品工業社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして粘着性高分子ゲルを得た。得られたゲルは、無色透明で、ブリードが見られなかった。
得られたゲルの透湿度、給水倍率、流失率、粘着力及び耐水粘着力を測定し、結果を表1に示す。また、得られたゲルの粘弾性を測定し、結果を表2に示す。
【0075】
(実施例5)
シクロヘキサンジメタノールアクリレート100重量部に対して、イオン性モノマーとしてアクリル酸を0.5重量部、重合開始剤としての1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン0.38重量部を混合、撹拌し、完全溶解した。以降の工程を実施例1と同様にすることで粘着性高分子ゲルを得た。得られたゲルは、無色透明で、ブリードが見られなかった。
得られたゲルの透湿度、給水倍率、流失率、粘着力及び耐水粘着力を測定し、結果を表1に示す。また、得られたゲルの粘弾性を測定し、結果を表2に示す。
【0076】
(実施例6)
アクリル酸の量を1.25重量部にしたこと以外は、実施例5と同様にして粘着性高分子ゲルを得た。得られたゲルは、無色透明で、ブリードが見られなかった。
得られたゲルの透湿度、給水倍率、流失率、粘着力及び耐水粘着力を測定し、結果を表1に示す。また、得られたゲルの粘弾性を測定し、結果を表2に示す。
【0077】
(実施例7)
多価アルコールとしてポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル(ポリオキシプロピレンの重合度:9,25℃で液状,製品名:SCP−750,阪本薬品工業社製)を使用したこと以外は、実施例5と同様にして粘着性高分子ゲルを得た。得られたゲルは、無色透明で、ブリードが見られなかった。
得られたゲルの透湿度、給水倍率、流失率、粘着力及び耐水粘着力を測定し、結果を表1に示す。また、得られたゲルの粘弾性を測定し、結果を表2に示す。
【0078】
(実施例8)
シクロヘキサンジメタノールアクリレート100重量部に対して、架橋性モノマーとしてのポリエチレングリコールジメタクリレート(PDE)を0.075重量部、重合開始剤としての1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン0.38重量部を混合、撹拌し、完全溶解した。以降の工程を実施例3と同様にすることで粘着性高分子ゲルを得た。得られたゲルは、無色透明で、ブリードが見られなかった。
得られたゲルの透湿度、給水倍率、流失率、粘着力及び耐水粘着力を測定し、結果を表1に示す。また、得られたゲルの粘弾性を測定し、結果を表2に示す。
【0079】
(実施例9)
ポリエチレングリコールジメタクリレートの量を0.25重量部としたこと以外は、実施例8と同様にして粘着性高分子ゲルを得た。得られたゲルは、無色透明で、ブリードが見られなかった。
得られたゲルの透湿度、給水倍率、流失率、粘着力及び耐水粘着力を測定し、結果を表1に示す。また、得られたゲルの粘弾性を測定し、結果を表2に示す。
【0080】
(実施例10)
多価アルコールとしてのSCP−1000の代わりに、ポリプロピレングリコール(PPG,25℃で液状,製品名ニューポールPPG400;三洋化成社製)を66.4重量部使用し、重合開始剤を0.25重量部使用したこと以外は、実施例1と同様にして粘着性高分子ゲルを得た。得られたゲルは、無色透明で、ブリードが見られなかった。
得られたゲルの透湿度、給水倍率、流失率、粘着力及び耐水粘着力を測定し、結果を表1に示す。また、得られたゲルの粘弾性を測定し、結果を表2に示す。
【0081】
(実施例11)
多価アルコールとしてのSCP−1000の代わりに、ポリオキシエチレングリコールグリセリルエーテル(25℃で液状,製品名ユニオックスG−450;日本油脂社製)を66.4重量部使用し、重合開始剤を0.25重量部使用したこと以外は、実施例1と同様にして粘着性高分子ゲルを得た。得られたゲルは、無色透明で、ブリードが見られなかった。
得られたゲルの透湿度、給水倍率、流失率、粘着力及び耐水粘着力を測定し、結果を表1に示す。また、得られたゲルの粘弾性を測定し、結果を表2に示す。
【0082】
(比較例1)
重合性モノマーとしてのN,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)100重量部に対して、架橋性モノマーとしてのN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)を0.17重量部、水を65重量部混合撹拌し、均一に溶解した。得られた溶液に、多価アルコールとしてのポリグリセリンを335重量部添加し、更に、重合開始剤としての1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オンを0.65重量部添加し、均一に溶解するまで撹拌し、無色透明なモノマー配合液を得た。
【0083】
得られたモノマー配合液を使用すること以外は、実施例1と同様にして高分子ハイドロゲルを得た。
得られたゲルの透湿度、給水倍率、流失率及び粘着力を測定し、結果を表1に示す。なお、耐水粘着力は、ゲルが脱落したため測定できなかった。
【0084】
(比較例2)
重合性モノマーとしてのアクリルアミド100重量部に対して、架橋性モノマーとしてのN,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.14重量部、水を90重量部混合撹拌し、均一に溶解した。得られた溶液に、多価アルコールとしてのグリセリンを300重量部添加し、更に、重合開始剤としての1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オンを0.5重量部添加し、均一に溶解するまで撹拌し、無色透明なモノマー配合液を得た。
【0085】
得られたモノマー配合液を使用すること以外は、実施例1と同様にして高分子ハイドロゲルを得た。
得られたゲルの透湿度、給水倍率、流失率及び粘着力を測定し、結果を表1に示す。なお、耐水粘着力は、ゲルが脱落したため測定できなかった。
【0086】
(比較例3)
疎水性モノマーとしてのイソブチルアクリルアミド(IBMA)100重量部に対して、重合開始剤としての1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン0.15重量部を添加し均一に溶解するまで撹拌し、無色透明なモノマー配合液を得た。
【0087】
得られたモノマー配合液を使用すること以外は、実施例1と同様にして疎水性樹脂シートを得た。
得られたシートの透湿度及び給水倍率を測定し、結果を表1に示す。なお、粘着力及び耐水粘着力は、シートが粘着性を有していないため測定できなかった。
【0088】
(比較例4)
シクロヘキサンジメタノールアクリレート100重量部に対して、重合開始剤としての1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン0.38重量部を混合、撹拌し、完全溶解した。得られた溶液に多価アルコールを使用せず、脂肪族エステルであるステアリン酸n−ブチルを150重量部混合、更に撹拌し、無色透明のモノマー配合液を得た。
【0089】
得られたモノマー配合液を用いて実施例1と同様にしてゲルの作製を試みた。しかし、重合直後に相分離し、白濁すると共に、柔軟性がなく、もろい重合物が得られた。得られた重合物に粘着力は全くなく、また、脂肪族エステルが表面にブリードアウトした状態(多価アルコールと重合物が分離した状態)となり、ゲルが得られなかった。従って、各種特性の正確な測定が不可能であるため測定の対象としなかった。
【0090】
(比較例5)
ステアリン酸n−ブチルのかわりにフタル酸ジオクチルを使用したこと以外は比較例4と同様にしてゲルの作製を試みた。しかし、比較例4と同様の結果になり、ゲルが得られなかった。従って、各種特性の正確な測定が不可能であるため測定の対象としなかった。
【0091】
(比較例6)
シクロヘキサンジメタノールアクリレート100重量部に対して、重合開始剤としての1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン0.15重量部を混合、撹拌し、完全溶解して無色透明のモノマー配合液を得た。
【0092】
得られたモノマー配合液を使用すること以外は、実施例1と同様にして疎水性樹脂シートを得た。
得られたシートの透湿度及び給水倍率を測定し、結果を表1に示す。なお、粘着力及び耐水粘着力は、シートが粘着力を有していないため測定できなかった。
【0093】
(比較例7)
アクリル酸2−エチルヘキシル100重量部に対して、イソブチルアクリルアミド46重量部、架橋性モノマーとしての1,9−ノナンジオールジアクリレート(NDA)を0.15重量部、イオン性モノマーとしてアクリル酸を7.6重量部、重合開始剤としての1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン0.45重量部を混合、撹拌し、完全溶解した。得られた溶液に多価アルコールを使用せず、脂肪族エステルであるフタル酸ジオクチルを70重量部混合、更に撹拌し、無色透明のモノマー配合液を得た。
【0094】
得られたモノマー配合液を使用すること以外は、実施例1と同様にして高分子ゲルを得た。
得られたゲルの透湿度、給水倍率、流失率、粘着力及び耐水粘着力を測定し、結果を表1に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
表1から以下のことが分かる。
(透湿度)
実施例のゲルは、50μm換算で、2800〜5000g/m2・24h・40℃・90%R.H.という非常に高い透湿度を発揮した。比較例1及び2のハイドロゲルは吸湿性が非常に高く、ゲルが膨潤し透湿度が測定不能であった。比較例3及び6の疎水性樹脂のシートは、透湿度が780g/m2・24h・40℃・90%R.H.以下とかなり低かった。また、比較例7は、特開2005−304756号公報に含まれる高分子ゲルであり、その透湿度は1080g/m2・24h・40℃・90%R.H.とかなり低かった。
【0098】
(吸水倍率)
比較例2と1のハイドロゲルの2.3倍と2.8倍に対して、実施例のゲルの吸水倍率は1.1〜1.7倍と、約半分である。測定の際、比較例のハイドロゲルは完全に水切りするのは困難なため、より吸水倍率の少ない実施例のゲルの方が、実際より高めの吸水倍率になっている可能性がある。また、ハイドロゲルは吸水しながら多価アルコールの流失が進んでいるため、高分子マトリックスに対する吸水倍率は測定値よりも多くなると考えられる。更に、比較例3及び6の疎水性樹脂のシートは全く水を吸わないことがわかる。また、比較例7の高分子ゲルは、その構成成分がいずれも疎水性であるため、全く水を吸わないことがわかる。
【0099】
(流失率)
実施例のゲルの流失率がいずれも15%以下であるのに対して、比較例のハイドロゲルの流失率は70〜80%と極めて多い。この結果より、実施例のゲルは、優れた耐水性を有することがわかる。
【0100】
(粘着力)
実施例のゲルは、380g〜700g程度を示し、実用上特に支障はない。また、この粘着力の差に応じて、用途を使い分けすることが好ましい。比較例7の高分子ゲルは、粘着力が低いことがわかる。また、比較例3及び6の疎水性樹脂のシートは、そもそも粘着性がなく測定しなかった。
【0101】
(耐水粘着力)
実施例のゲルは、多量の水と接触した後でも粘着力が低下することなく、ベークライト板にしっかりと粘着していた。通常、この様に多量の水と接触する等、特に耐水性を要求される用途においては、裏面に防水性の支持体を用いる等の工夫がなされるが、上記実施例はこのような支持体を設けず、ゲル単体での評価を行っている。このことからも実施例のゲルが優れた耐水粘着力を有することが分かる。逆に、比較例1と2のハイドロゲルは浸水中に膨潤し、粘着力がなくなってしまい、ベークライト板から剥離、脱落し、浸水後の粘着力を測定することができなかった。比較例7の高分子ゲルは、耐水粘着力が低いことがわかる。また、比較例3及び6の疎水性樹脂のシートは、そもそも粘着性がなく測定しなかった。
【0102】
以上のように、実施例のゲルは、高レベルの透湿性と、従来のハイドロゲルでは到底実現できない耐水性を兼ね備えていることが確認できた。
なお、実施例及び比較例で使用した原料の使用量を表3にまとめて示す。
【0103】
【表3】

【0104】
(実施例12)
Roll to Roll装置を用いたロール状の粘着テープの製造方法を図1を用いて説明する。
原反ロールから繰り出されたシリコーンコーティングされたPETフィルム1上に、実施例1で使用したモノマー配合液8を滴下した。モノマー配合液滴下面に、原反ロールから繰り出されたシリコーンコーティングされたPETフィルム2を被せる。この際、ゲル補強のための中間基材として原反ロールから繰り出されたトリコットハーフ(ナイロン製15デニール)3をモノマー配合液滴下面に位置するように、PETフィルム1と2の間に介在させた。
【0105】
次いで、液厚が0.3mmになるように、2本のロール4の間を通してモノマー配合液を押し広げた。この後、メタルハライドランプ5によりエネルギー量3000mJ/cm2の紫外線を照射することで、シート状の粘着テープを得た。
得られた粘着テープのPETフィルム2を剥離してロールに巻き取った。次いで、原反ロールから繰り出されたシリコーンコーティングされたポリエチレンフィルム6を、PETフィルム2に代えて粘着テープ上に貼付した。
この後、ポリエチレンフィルム6が外側になるようにシート状の粘着テープを巻き取ることで、ロール状の粘着テープ7を得た。
得られたロール状の粘着テープ7の概略図を図2に示す。図中、9はゲルを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】実施例のロール状の粘着テープの製造方法の概略説明図である。
【図2】実施例のロール状の粘着テープの概略図である。
【符号の説明】
【0107】
1、2 PETフィルム
3 トリコットハーフ
4 ロール
5 メタルハライドランプ
6 ポリエチレンフィルム
7 ロール状の粘着テープ
8 モノマー配合液
9 ゲル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートに由来する重合体から構成される高分子マトリックスと、両親媒性の多価アルコールとを含むことを特徴とする粘着性高分子ゲル。
【請求項2】
前記多価アルコールが、前記高分子マトリックス100重量部に対して、20〜300重量部含有される請求項1に記載の粘着性高分子ゲル。
【請求項3】
前記ゲルが、2000g/m2・24h・40℃・90%R.H.以上の透湿性を有する請求項1又は2に記載の粘着性高分子ゲル。
【請求項4】
前記ゲルが、1rad/sで400〜15000Pa、100rad/sで1000〜20000Paの弾性率、1rad/sで100〜4000Pa、100rad/sで1000〜15000Paの粘性率を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の粘着性高分子ゲル。
【請求項5】
支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に設けられた請求項1〜4のいずれか1つに記載の粘着性高分子ゲルの層とを含み、前記支持体が、2000g/m2・24h・40℃・90%R.H.以上の透湿性を有することを特徴とする粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着性高分子ゲルの層が、セパレータフィルムで覆われている請求項5に記載の粘着テープ。
【請求項7】
ロール状に巻かれている請求項5又は6に記載の粘着テープ。
【請求項8】
ジヒドロキシシクロアルカン誘導体の(メタ)アクリレートと、両親媒性の多価アルコール及び重合開始剤とを含むことを特徴とする粘着性高分子ゲル製造用組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−262308(P2007−262308A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91609(P2006−91609)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】