説明

糖尿病の処置のためのBACE2阻害剤としての2−アミノジヒドロ[1,3]チアジン

本発明は、糖尿病、特に2型糖尿病の治療又は予防のための、式(I):(式中、R〜Rは、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲に定義されたとおりである)のアミノジヒドロチアジン及びその薬学的に許容される塩の使用、ならびにそれらを含有する医薬組成物の使用に関する。式(I)の化合物は、BACE2の選択的阻害剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは糖尿病、特に2型糖尿病のような代謝疾患の治療又は予防のためのアミノジヒドロチアジン誘導体の使用に関する。
【0002】
特に、本発明は、糖尿病、特に2型糖尿病の治療又は予防のための医薬の製造のための、式(I):
【化1】


[式中、
は、C1−7−アルキル又はC3−7−シクロアルキルであり;
は、水素、C1−7−アルキル、ハロゲン、シアノ及びC1−7−アルコキシからなる群より選択され;
は、アリール又はヘテロアリールであり、該アリール又はヘテロアリールは、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル、オキソ及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0003】
式(I)の化合物は、BACE2の選択的阻害剤である。
【0004】
2型糖尿病(T2D)は、インスリン抵抗性及び膵臓β細胞からの不十分なインスリン分泌によって生じ、血中グルコース調節の不全及び過血糖に至る(M Prentki & CJ Nolan, "Islet beta-cell failure in type 2 diabetes." J. Clin. Investig. 2006, 116(7), 1802-1812)。T2Dの患者は、微小血管性及び大血管性疾患ならびに糖尿病ネフロパシー、網膜症及び心血管疾患を含む幅広い関連合併症を起こす危険性が高い。2000年には推計で1.71億人が症状を有しており、この数字が2030年までには倍になるであろうという予想(S Wild, G Roglic, A Green, R.Sicree & H King, "Global prevalence of diabetes", Diabetes Care 2004, 27(5), 1047-1053)は、この疾患を深刻な医療問題にしている。T2Dの有病率の上昇は、世界の人口の座りがちな生活様式の増加と高エネルギーの食物摂取に関係している(P Zimmet, KGMM Alberti & J Shaw, "Global and societal implications of the diabetes epidemic" Nature 2001, 414, 782-787)。
【0005】
β細胞不全及びそれに伴うインスリン分泌の劇的な低下及び過血糖は、T2Dの発症を示す(M Prentki & CJ Nolan, "Islet beta-cell failure in type 2 diabetes." J. Clin. Investig. 2006, 116(7), 1802-1812)。最新の処置は、明白なT2Dの特性となるβ細胞量の損失を防止しない。しかしながら、近年のGLP−1類似体、ガストリン及び他の薬剤の開発は、β細胞の保存及び増殖が、グルコース耐性の改良及び明白なT2Dのより遅い進行を達成し、導くことができることを示している(LL Baggio & DJ Drucker, "Therapeutic approaches to preserve islet mass in type 2 diabetes", Annu. Rev. Med. 2006, 57, 265-281)。
【0006】
Tmem27は、β細胞増殖(P Akpinar, S Kuwajima, J Kreutzfeldt, M Stoffel, "Tmem27: A cleaved and shed plasma membrane protein that stimulates pancreatic β cell proliferation", Cell Metab. 2005, 2, 385-397)及びインスリン分泌(K Fukui, Q Yang, Y Cao, N Takahashi et al., "The HNF-1 target Collectrin controls insulin exocytosis by SNARE complex formation", Cell Metab. 2005, 2, 373-384)を促進しているタンパク質であることが確認された。Tmem27は、全長細胞Tmem27の分解に起因して、β細胞の表面から恒常的に排出される42kDaの膜糖タンパク質である。トランスジェニックマウスのTmem27の過剰発現は、β細胞量を増加させ、DIOモデルの糖尿病における糖耐性を改良する(K Fukui, Q Yang, Y Cao, N Takahashi et al., "The HNF-1 target Collectrin controls insulin exocytosis by SNARE complex formation", Cell Metab. 2005, 2, 373-384, P Akpinar, S Kuwajima, J Kreutzfeldt, M Stoffel, "Tmem27: A cleaved and shed plasma membrane protein that stimulates pancreatic β cell proliferation", Cell Metab. 2005, 2, 385-397)。更に、齧歯目のβ細胞増殖アッセイ(例えばINS1e細胞を使用する)におけるTmem27のsiRNAノックアウトは、増殖速度を減らし、β細胞量の制御におけるTmem27の役割を示す。
【0007】
生体外で、BACE2は、Tmem27の配列に基づくペプチドを切断する。密接に関連したプロテアーゼBACE1はこのペプチドを切断せず、BACE1単独の選択的な抑制はβ細胞の増殖を強化しない。BACE1(β部位APP開裂酵素に関するBACE(別名βセクレターゼ))は、アルツハイマー病の病因及び末梢神経細胞の髄鞘の形成において関係するとされてきた。
【0008】
酷似相同体BACE2は、膜結合アスパルチルプロテアーゼであり、齧歯目の膵臓β細胞においてTmem27と共局在化する(G Finzi, F Franzi, C Placidi, F Acquati et al., "BACE2 is stored in secretory granules of mouse and rat pancreatic beta cells", Ultrastruct Pathol. 2008, 32(6), 246-251)。APP(I Hussain, D Powell, D Howlett, G Chapman et al., "ASP1 (BACE2) cleaves the amyloid precursor protein at the β-secretase site" Mol Cell Neurosci. 2000, 16, 609-619)及びIL−1R2(P Kuhn, E Marjaux, A Imhof, B De Strooper et al., "Regulated intramembrane proteolysis of the interleukin-1 receptor II by alpha-, beta-, and gamma-secretase" J. Biol. Chem. 2007, 282(16), 11982-11995))を分解させることができることもまた、公知である。
【0009】
したがって、BACE2の阻害が、前糖尿病患者及び糖尿病患者においてβ細胞量を保存及び復元し、インスリン分泌を刺激する可能性を有する、2型糖尿病のための処置として提案された。したがって、選択的なBACE2阻害剤を提供することが本発明の目的である。そのような化合物が治療活性物質として、特にBACE2の阻害に関連する疾患の治療及び/又は予防に有効である。
【0010】
本発明の化合物は、BACE2の強力かつ選択的な阻害剤であるゆえに、公知の化合物より優れている。これらは、従来技術において既知の化合物と比較して強化された治療的可能性が期待され、糖尿病、好ましくは2型糖尿病、代謝症候群及び広範囲にわたる代謝異常の治療及び予防のために使用することができる。
【0011】
特に明記しない限り、下記の定義は本発明を記載するために用いるさまざまな用語の意味及び範囲を例示、定義するために記載される。
【0012】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を表し、フッ素、塩素及び臭素が好ましく、フッ素及び塩素がより好ましい。
【0013】
用語「低級アルキル」又は「C1−7−アルキル」は、単独で又は組み合わされて、1〜7個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、特に好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を表す。直鎖状又は分岐鎖状のC1−7アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert.−ブチル、ペンチルの異性体、ヘキシルの異性体及びヘプチルの異性体であり、好ましくはメチル及びエチルであり、最も好ましくはメチルである。
【0014】
用語「低級アルコキシ」又は「C1−7−アルコキシ」は、基R’−O−を表し、ここでR’は低級アルキルであり、用語「低級アルキル」は、先に与えられた意味を有する。低級アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec.−ブトキシ及びtert.−ブトキシであり、好ましくはメトキシ及びエトキシである。
【0015】
用語「低級ハロゲンアルキル」又は「ハロゲン−C1−7−アルキル」は、低級アルキル基の少なくとも1個の水素原子が、ハロゲン原子、好ましくはフルオロ又はクロロ、最も好ましくはフルオロで置き換えられている、上記と同義の低級アルキルを表す。好ましい低級ハロゲンアルキル基は、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、フルオロメチル及びクロロメチルであり、トリフルオロメチル又はジフルオロメチルが特に好ましい。
【0016】
用語「低級ハロゲンアルコキシ」又は「ハロゲン−C1−7−アルコキシ」は、低級アルコキシ基の少なくとも1個の水素原子が、ハロゲン原子、好ましくはフルオロ又はクロロ、最も好ましくはフルオロで置き換えられている、上記と同義の低級アルコキシ基を表す。好ましいハロゲン化低級アルコキシ基は、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシ及びクロロメトキシであり、トリフルオロメトキシが特に好ましい。
【0017】
用語「低級ヒドロキシアルキル」又は「ヒドロキシ−C1−7−アルキル」は、低級アルキル基の少なくとも1個の水素原子が、ヒドロキシ基で置き換えられている、上記と同義の低級アルキル基を表す。好ましい低級ヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシメチル又はヒドロキシエチルである。
【0018】
用語「アリール」は、6〜14個の炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する、芳香族の単環式又は多環式の系を表す。好ましいアリール基は、フェニル及びナフチルであり、フェニルが最も好ましい。
【0019】
用語「ヘテロアリール」は、窒素、酸素及び/又は硫黄より選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、かつ加えて窒素、酸素及び/又は硫黄より選択される1個又は3個の原子を含むことができる、芳香族又は部分的に不飽和の5又は6員環、例えばピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、6−オキソ−1,6−ジヒドロピリダジニル、5−オキソ−4,5−ジヒドロピラジニル、ピロリル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル及びチアゾリルを表す。用語「ヘテロアリール」はさらに、2つの5又は6員環を含み、1つ又は両方の環が、窒素、酸素又は硫黄より選択される1、2又は3個の原子を含むことができる、二環式の芳香族又は部分的に不飽和の基、例えばキノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル、チエノ[2,3−c]ピリジル、キノキサリニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、インダゾリル及び3,4−ジヒドロ−1H−イソキノリニルを表す。好ましいヘテロアリール基は、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、イソキノリニル、チエノ[2,3−c]ピリジル及びベンゾ[b]チエニルであり、チエニル、オキサゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル及びピラジニルがより好ましく、そしてピリジルが最も好ましい。
【0020】
式(I)の化合物は、薬学的に許容される塩を形成することができる。用語「薬学的に許容される塩」は、遊離塩基又は遊離酸の生物学的有効性及び特性を保持し、生物学的にも他の意味でも好ましくないものではない塩を表す。好ましくは、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、生理学的に適合した鉱酸、例えば塩酸、硫酸、亜硫酸もしくはリン酸との;又は有機酸、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、オキシル酸、乳酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、コハク酸もしくはサリチル酸との酸付加塩である。特に好ましい、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、塩酸塩、ギ酸塩又はトリフルオロ酢酸塩のような酸付加塩である。
【0021】
式(I)の化合物はまた、溶媒和、例えば水和していることができる。溶媒和は、製造過程でもたらされるか、又は例えば最初は無水である式(I)の化合物の吸湿特性の結果(水和)として起こることができる。用語「薬学的に許容される塩」はまた、生理学的に許容される溶媒和物も含む。
【0022】
「異性体」は、同一の分子式を有するが、それらの原子の結合の順序もしくは性質、又はそれらの原子の空間内における配置が異なる化合物である。それらの原子の空間内における配置が異なる異性体を「立体異性体」という。他方の鏡像ではない立体異性体を「ジアステレオマー」といい、そして鏡像を重ねあわすことのできない立体異性体を「鏡像異性体」といい、時に光学異性体ともいう。4個の非同一の置換基に結合した炭素原子を「キラル中心」という。
【0023】
詳細には、本発明は、代謝障害、好ましくは糖尿病の治療又は予防のための医薬の製造のための、式(I):
【化2】


[式中、
は、C1−7−アルキル又はC3−7−シクロアルキルであり;
は、水素、C1−7−アルキル、ハロゲン、シアノ及びC1−7−アルコキシからなる群より選択され;
は、アリール又はヘテロアリールであり、該アリール又はヘテロアリールは、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル、オキソ及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0024】
好ましくは本発明は、Rが、メチル又はエチルである式(I)の化合物の、上記の使用に関する。
【0025】
が、C1−7−アルキル、ハロゲン、シアノ及びC1−7−アルコキシからなる群より選択される式(I)の化合物の使用がまた好ましい。より好ましいものは、Rが、ハロゲンである式(I)の化合物の、上記の使用である。
【0026】
さらに好ましいものは、Rが、ヘテロアリールであり、該ヘテロアリールが、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている式(I)の化合物の、上記の使用である。より好ましくは、Rは、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、イソキノリニル、チエノ[2,3−c]ピリジル及びベンゾ[b]チエニルからなる群より選択されるヘテロアリールであり、該ヘテロアリールは、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている。
【0027】
特に好ましいものは、化合物が、5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド(化合物J)又はその薬学的に許容される塩である、代謝障害、好ましくは糖尿病の治療又は予防のための医薬の製造のための、式(I)の化合物の使用である。
【0028】
また好ましいものは、Rが、フェニルであり、該フェニルが、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている、式(I)の化合物の上記の使用である。
【0029】
2型糖尿病の治療又は予防のための医薬の製造のための、先に本明細書で定義された式(I)の化合物の使用が、特に好ましい。
【0030】
本発明はまた、代謝疾患の治療又は予防に使用するための、好ましくは糖尿病、特に2型糖尿病の治療又は予防に使用するための、式(I):
【化3】


[式中、
は、C1−7−アルキル又はC3−7−シクロアルキルであり;
は、水素、C1−7−アルキル、ハロゲン、シアノ及びC1−7−アルコキシからなる群より選択され;
は、アリール又はヘテロアリールであり、該アリール又はヘテロアリールは、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル、オキソ及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0031】
さらに本発明は、Rが、メチル又はエチルである、代謝疾患の治療又は予防に使用するための、上記の式(I)の化合物に関する。
【0032】
本発明はさらに、Rが、C1−7−アルキル、ハロゲン、シアノ及びC1−7−アルコキシからなる群より選択され、より具体的には、Rが、ハロゲンである、代謝疾患の治療又は予防に使用するための、上記の式(I)の化合物に関する。
【0033】
特に、本発明は、Rが、ヘテロアリールであり、該ヘテロアリールが、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている、代謝疾患の治療又は予防に使用するための、上記の式(I)の化合物に関する。より具体的には、本発明は、Rが、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、イソキノリニル、チエノ[2,3−c]ピリジル及びベンゾ[b]チエニルからなる群より選択されるヘテロアリールであり、該ヘテロアリールが、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基で置換されている、代謝疾患の治療又は予防に使用するための、上記の式(I)の化合物に関する。
【0034】
本発明はさらに、化合物が、5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミドである、代謝疾患の治療又は予防に使用するための、上記の式(I)の化合物に関する。
【0035】
本発明はまた、Rが、フェニルであり、該フェニルが、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている、代謝疾患の治療又は予防に使用するための、上記の式(I)の化合物に関する。
【0036】
特に好ましいものは、代謝疾患の治療又は予防に使用するための、好ましくは糖尿病、特に2型糖尿病の治療又は予防に使用するための、式(J):
【化4】


を有する式(I)の化合物である。
【0037】
さらに、本発明は、式(Ia):
【化5】


[式中、
は、エチルであり;
は、C1−7−アルキル、ハロゲン、シアノ及びC1−7−アルコキシからなる群より選択され;
は、アリール又はヘテロアリールであり、該アリール又はヘテロアリールは、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル、オキソ及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている]
を有する式(I)の新規な化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0038】
好ましいものは、Rが、ハロゲンである上記の式(Ia)の化合物であり、Rが、フルオロである式(Ia)の化合物が最も好ましい。
【0039】
また好ましいものは、Rが、ヘテロアリールであり、該ヘテロアリールが、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている、本発明による式(Ia)の化合物である。より好ましくは、Rは、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、イソキノリニル、チエノ[2,3−c]ピリジル及びベンゾ[b]チエニルからなる群より選択されるヘテロアリールであり、該ヘテロアリールは、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている。
【0040】
さらに好ましい式(Ia)の化合物は、Rが、フェニルであり、該フェニルが、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されているものである。
【0041】
特に好ましい、本発明の式(Ia)の化合物は、下記:
5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
N−[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−4−クロロ−ベンズアミド、
5−クロロ−ピラジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
5−クロロ−ピリミジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
3−フェニル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
4−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
6−メチル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
3,6−ジクロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
6−クロロ−3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
イソキノリン−3−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
チエノ[2,3−c]ピリジン−7−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
5−メチル−チオフェン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
1−メチル−1H−ピラゾール−3−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
2−メチル−オキサゾール−4−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド及び
2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド
又はその薬学的に許容される塩である。
【0042】
式(Ia)の化合物の薬学的に許容される塩はまた、個別に好ましい本発明の化合物を構成する。
【0043】
特に好ましいものは、HCl、ギ酸及びトリフルオロ酢酸(CFCOOH)を有する式(Ia)の化合物の塩、すなわち、塩酸塩、ギ酸塩及びトリフルオロ酢酸塩である。最も好ましいものは、ギ酸を有する式(Ia)の化合物の塩、すなわちギ酸塩である。
【0044】
この群のなかでは、下記の塩:
5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、
ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、
N−[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−4−クロロ−ベンズアミド;ギ酸との塩、
5−クロロ−ピラジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、
5−クロロ−ピリミジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、
3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、
3−フェニル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、
4−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、
6−メチル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、
3,6−ジクロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、
6−クロロ−3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、
イソキノリン−3−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、
チエノ[2,3−c]ピリジン−7−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、
ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、
5−メチル−チオフェン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、
1−メチル−1H−ピラゾール−3−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、
2−メチル−オキサゾール−4−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩、及び
2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩が、特に好ましい。
【0045】
当業者は、式(I)の化合物は、互変異性型、例えば下記の互変異性型:
【化6】


で存在できることを理解するであろう。
【0046】
全ての互変異性体は、本発明に包含される。
【0047】
式(I)の化合物は、1個の不斉炭素原子を有しており、光学的に純粋な鏡像異性体及び鏡像異性体の混合物、例えばラセミ体の形態で存在することができる。光学的に活性な形態は、例えばラセミ体の分割、不斉合成又は不斉クロマトグラフィー(キラルな吸着剤又は溶離剤を用いたクロマトグラフィー)により得ることができる。本発明は、全てのこれらの形態を包含する。
【0048】
本発明はまた、上記と同義の式(Ia)の化合物を調製する方法であって、
a)式(II):
【化7】


[式中、Rは、請求項1と同義であり、Protは、アミノ保護基である]
で示されるアミンを、式(III):
【化8】


[式中、Rは、請求項11と同義である]
で示されるカルボン酸と、カップリング試薬の存在下、塩基性条件下で反応させて、式(IV):
【化9】


で示される化合物を得て、そして式(IV)の化合物を、酸を利用して脱保護して、式(I):
【化10】


[式中、R〜Rは、請求項11と同義である]
で示される化合物を得ること、及び所望であれば、
b)得られた化合物を、薬学的に許容される塩へと変換すること、を含む方法に関する。
【0049】
用語「アミノ保護基」は、保護基、例えばBz(ベンゾイル)、Ac(アセチル)、Trt(トリチル)、Boc(t−ブチルオキシカルボニル)、CBz(ベンジルオキシカルボニル又はZ)、Fmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニル)、MBz(4−メトキシCBz)、Poc(2−フェニルプロピル(2)−オキシカルボニル)及びBpoc[(1−[1,1’−ビフェニル]−4−イル−1−メチルエトキシ)カルボニル]を表す。特に、アミノ保護基は、Boc(tert−ブチルオキシカルボニル)である。
【0050】
適切なカップリング試薬は、カルボジイミド又はウロニウム塩、例えばN,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチル−カルボジイミド−塩酸塩(EDCI)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)及び1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム−3−オキシドへキサフルオロホスファート(HATU)である。用語「塩基性条件下で」は、塩基、好ましくはジイソプロピルエチルアミン(DIEA)もしくはトリエチルアミン(TEA)のようなアルキルアミン、又はN−メチルモルホリンもしくは4−(ジメチルアミノ)−ピリジンのような第三級アミンの存在を意味する。反応は、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルアセトアミド(DMAc)のような適切な溶媒中、0℃〜周囲温度の間の温度で実施される。
【0051】
脱保護に好ましい酸は、硫酸又は塩酸、より好ましくは塩酸(エーテル、好ましくはジエチルエーテル又は1,4−ジオキサンのような溶媒中)、又は未希釈のトリフルオロ酢酸又はギ酸であり、最も好ましくはアセトニトリル及び水の混合物中のギ酸である。
【0052】
本発明による式(I)の化合物の調製のために用いられる方法及び手順のより詳細な記載は、実施例にて見出すことができる。
【0053】
先に本明細書において記載されているように、本発明の式(I)又は(Ia)の化合物は、BACE2の阻害に関連する疾患の処置のための医薬として用いることができる。
【0054】
本願明細書において後述されるように、本発明の式(I)又は(Ia)の化合物は、糖尿病患者及び、耐糖能異常があるか又は前糖尿病病状の状態にある非糖尿病性患者のβ細胞機能及び刺激性インスリン分泌を保存、復元する際に有用である。これらは、1型糖尿病の発症の防止又は処置に、又は2型糖尿病患者がインスリン治療を必要とするのを遅らせるか又は防止する際に有用でありえる。式(I)の化合物は更に、高インスリン血症を改善するために有用であり、糖尿病又は前糖尿病患者において、そして、代謝症候群に関連した危険を低下させる際に、それはしばしば起こる。
【0055】
したがって、表現「BACE2活性の阻害に関連する疾患」は、疾患、例えば代謝性及び心血管疾患、特に糖尿病、より特には2型糖尿病、妊娠性糖尿病、空腹時血糖異常、耐糖能異常、インスリン抵抗性、前糖尿病、代謝症候群、1型糖尿病、糖尿病性ネフロパシー、糖尿病の合併症(糖尿病性網膜症及び糖尿病性神経障害を含む)、慢性腎臓疾患、脂質異常症、アテローム硬化症、心筋梗塞、高血圧ならびにさらなる代謝性及び心血管性障害を意味する。好ましい態様において、表現「BACE2活性の阻害に関連する疾患」は、糖尿病、特に2型糖尿病、耐糖能異常、前糖尿病、代謝症候群に関する。より好ましくは、表現「BACE2活性の阻害に関連する疾患」は、糖尿病、最も好ましくは2型糖尿病に関する。
【0056】
本発明はまた、上記で定義されたとおりの式(Ia)の化合物と、薬学的に許容される担体及び/又は佐剤を含む医薬組成物に関する。より具体的には、本発明は、BACE2活性の阻害と関連する疾患の処置に有用な医薬組成物に関する。
【0057】
更に、本発明は、医薬として、特にBACE2活性の阻害に関連する疾患の治療又は予防のための医薬として使用するための、上記で定義された通りの式(Ia)の化合物に関する。特に好ましいものは、糖尿病、特に2型糖尿病に用いられる、式(I)の化合物である。
【0058】
式(I)又は(Ia)の化合物及び/又はそれらの薬学的に許容される塩は、医薬として、例えば、経腸、非経口又は局所投与の医薬製剤の形態で使用することができる。これらは、例えば、経口的に、例としては錠剤、コーティング剤、糖衣剤、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤又は懸濁剤の剤形で、経腸的に、例としては坐剤の剤形で、非経口的に、例としては注射用液剤もしくは懸濁剤又は注入用液剤の剤形で、あるいは局所的に、例としては軟膏、クリーム剤又は油剤の剤形で投与することができる。経口投与が好ましい。
【0059】
医薬製剤の製造は、記載された式(I)の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩を、場合により他の薬学的に有益な物質と組み合わせて、適切であり、非毒性であり、不活性であり、治療上適合性のある固体又は液体担体材料、及び所望であれば通常の医薬佐剤と一緒にガレヌス製剤の投与形態にする、当業者に周知であろう方法により実施することができる。
【0060】
適切な担体材料は、無機担体材料のみならず、有機担体材料でもある。したがって、例えば、乳糖、トウモロコシデンプン又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩を、錠剤、コーティング錠、糖衣錠及び硬ゼラチンカプセル剤の担体材料として使用することができる。軟ゼラチンカプセル剤に適切な担体材料は、例えば、植物油、ロウ、脂肪、ならびに半固形及び液状ポリオールである(しかし、軟ゼラチンカプセル剤の場合、活性成分の性質によっては、担体を必要としないこともある)。液剤及びシロップ剤の製造に適切な担体材料は、例えば、水、ポリオール、ショ糖、転化糖等である。注射液に適切な担体材料は、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール及び植物油である。坐剤に適切な担体材料は、例えば、天然又は硬化油、ロウ、脂肪、及び半液体又は液体ポリオールである。局所用製剤に適切な担体材料は、グリセリド、半合成及び合成グリセリド、硬化油、液体ロウ、流動パラフィン、液体脂肪アルコール、ステロール、ポリエチレングリコール及びセルロース誘導体である。
【0061】
通常の安定剤、防腐剤、湿潤剤及び乳化剤、稠度向上剤、風味向上剤、浸透圧を変更する塩、緩衝物質、可溶化剤、着色剤及びマスキング剤、ならびに酸化防止剤が医薬佐剤として考慮される。
【0062】
式(I)の化合物の投与量は、制御される疾患、患者の年齢及び個別の病状ならびに投与形式に依存して広い範囲内で変化することができ、もちろん、各々の特定の症例に個別の要求に適合される。成人患者では、約1〜1000mg、特に約1〜300mgの1日量が考慮される。疾患の重篤度及び正確な薬物動態学的プロフィールに応じて、化合物は1又は複数の1日の投与単位、例えば1〜3投与単位で投与されることができる。
【0063】
医薬調製物は、便利には約1〜500mg、好ましくは1〜100mgの式(I)の化合物を含む。
【0064】
他の態様において、本発明は、BACE2活性の阻害に関連する疾患、好ましくは糖尿病、特に2型糖尿病の治療又は予防のための方法であって、治療有効量の、式(I):
【化11】


[式中、
は、C1−7−アルキル又はC3−7−シクロアルキルであり;
は、水素、C1−7−アルキル、ハロゲン、シアノ及びC1−7−アルコキシからなる群より選択され;
は、アリール又はヘテロアリールであり、該アリール又はヘテロアリールは、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル、オキソ及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を、ヒト又は動物に投与することを含む方法に関する。
【0065】
代謝パラメータ、例えば血中グルコース、血漿インスリン、インスリン抵抗性及びインスリン感応性における、式(I)の化合物の効果は、4週間処置した6週齢のZucker Diabetic Fatty(ZDF)ラットを用いる長期試験において評価した。長期間作用性GLP−1類似体であるリラグルチド(NN2211、CAS登録番号204656-20-2)が、陽性対照として用いられた。リラグルチドは、2型糖尿病の処置のために英国及びドイツでの商品名Victozaとして発売されている。3週間の処置の後、経口糖耐性試験(oGTT)を、一晩絶食したラットに実施した。3〜4週の処置の後、そして麻酔の後、ZDFラット(1日当たり2/3)は、膵臓手術及び低/高グルコース媒体を用いるインシチューでの灌流を受けた。この試験の結果は、実施例21で述べる。
【0066】
要約すると、式(I)の化合物(実施例1)は、17日間の経口投与の後ZDFネズミの負荷試験後グルコースレベルを減少し、したがって糖耐性の改良により測定されるように、慢性の処置の後、膵臓の機能を改善する。式(I)の化合物は、17日間の経口投与及び最後の薬品注入(慢性の効果)の18時間後に、ZDFラットのインスリンレベル(グルコース負荷試験後ピーク及び最高で60分)を更に上昇させた。式(I)の化合物を用いる慢性の処置は、肝臓(HOMA)又は末梢(MATSUDA)インスリン抵抗性指数に影響を与えなかった。対照的に、式(I)の化合物を用いる処置は、HOMA β細胞指数を改善した。式(I)の化合物を用いる処置は、基礎膵臓インスリン分泌を減らして、したがって膵臓インスリン分泌プロフィールを6週齢の非糖尿病性ZDFラットのそれに正常化した。よって、式(I)の化合物は、膵臓機能の保護及び高インスリン血症の防止のために有用でありえる。
【0067】
下記において、図面を簡単に説明する:
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ビヒクル、リラグルチド又は様々な量の実施例1の化合物を用いて17日間処置した、8.5週齢ZDFラットにおいて実施した経口糖耐性試験(oGTT)の結果を示すグラフである。oGTTは18日目に実施した。
【図2】ビヒクル、実施例1の化合物又はリラグルチドのいずれかを用いて17日間処置した、8.5週齢ZDFラットにおけるoGTTの間のグルコース偏位を示すグラフである。
【図3】グルコース負荷前に測定したFBGについての、実施例1の化合物を用いた長期的処置の効果を図示したグラフである(一晩の絶食後条件での空腹時血糖)。
【図4】ビヒクル、実施例1の化合物又はリラグルチドのいずれかを用いて17日間処置した、8.5週齢ZDFラットにおけるoGTTの間のインスリンレベルを示すグラフである。
【図5】ビヒクル、実施例1の化合物又はリラグルチドのいずれかを用いて17日間処置した、8.5週齢ZDFラットにおけるoGTTの間の血漿インスリンAUCの量(0〜120分間)を示すグラフである。AUCは、曲線下面積を意味する。Y単位はng/ml*分である。
【図6】肝臓(HOMA)又は身体全体のインスリン耐性(MATSUDA)指数により決定したインスリン耐性及びインスリン感応性ならびにHOMA−β指数により決定したβ細胞感応性についての、ビヒクル、実施例1の化合物又はリラグルチドのいずれかを用いた処置の効果を図示するグラフである。以下の計算式を用いた:HOMA_IR指数=(空腹時血糖(mU/ml)×FBG(mM)/22.5;ISI MATSUDA=1000/√(Go×Io×Gpriem×Ipriem)、Priem=OGTT間のグルコース又はインスリンを意味する。HOMA−β細胞=(20×FI)/(FBG−3.5)。データは平均±SEMで表した;(群当たりN=6)、ISI MATSUDA中の**は、分散分析に続くDunnettのPost Hoc試験でビヒクルに対してp<0.01であることを意味する。
【図7】ビヒクル、実施例1の化合物又はリラグルチドのいずれかを用いて処置した後の9〜10週齢ZDFラットの、インシチューの膵臓インスリンプロフィール(ng/ml)を示すグラフである。最後の用量は、膵灌流の18時間前に投与した(慢性効果)。
【図8】未処置(−)又は実施例1の化合物で72時間処置した(+)ヒトドナー2名から単離したヒト膵島の溶解物のイムノブロッティングの結果である。実施例1の化合物で処理したヒト膵臓ランゲルハンス島は、全長TMEM27の保存及びBACE2の自己触媒活性の阻害を示した。
【0069】
下記の実施例は、本発明を更に詳細に説明するために役立つ。しかしながら、それらはいかなる方法でもその範囲を制限することを意図しない。
【0070】
略語:
DIEA=ジイソプロピルエチルアミン、DMF=N,N−ジメチルホルムアミド、HATU=1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム−3−オキシドへキサフルオロホスファート、HPLC=高速液体クロマトグラフィー、LDA=リチウムジイソプロピルアミド、MS=質量スペクトル、THF=テトラヒドロフラン。
【0071】
実施例1
【化12】


中間体 5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸(3−アセチル−4−フルオロ−フェニル)−アミド(A)の合成
THF(750ml)中の5−クロロ−ピリジン−2−カルボニルクロリド(30.5g、調製はH.G. Brunner, EP353187, 1990に記載されている)の溶液に、1−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−エタノン(25.3g、調製はM.Q. Zhang et al., J. Heterocyclic Chem. 28, 673, 1991に記載されている)及びNEt(18.4g)を、温度を20〜30℃の間に保ちながら連続して加えた。懸濁液を22℃で2時間撹拌し、蒸発させた。残留物を酢酸エチル及びNaHCO飽和水溶液の間に分配し、有機層を水で洗浄し、乾燥させ、そして蒸発させた。残留物をペンタンでトリチュレートし、濾過し、そして残留物を乾燥させて、標記化合物(48.0g、99%)を淡褐色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 293.0 [M+1]+
【0072】
中間体 5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[4−フルオロ−3−(1−ヒドロキシ−1−メチル−アリル)−フェニル]−アミド(B)の合成
THF(850ml)及びジエチルエーテル(850ml)中の5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸(3−アセチル−4−フルオロ−フェニル)−アミド(47.7g)の懸濁液に、−78℃で、ビニルマグネシウムクロリド(THF中1.7M 、240ml)を、温度を−60℃以下に保ちながら加えた。混合物を−60℃で1時間、−20℃で3時間撹拌し、そしてNHCl飽和水溶液(1500ml)でクエンチした。混合物を酢酸エチル(250ml)で希釈し、層を分離し、そして水層を酢酸エチルで再度抽出した。合わせた有機層をNaHCO飽和水溶液(600ml)及びブライン(600ml)で洗浄し、乾燥させ、そして蒸発させた。残留物を沸騰した酢酸エチル(80ml)に溶解し、粘度のある懸濁液が得られるまで再度蒸発させた。懸濁液をペンタン/ジエチルエーテルの混合物(3:1、20ml)及び未希釈のペンタン(50ml)で希釈し、濾過し、そして残留物を乾燥させて、標記化合物(40.0g、77%)を淡黄色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 319.1 [M - 1]-
【0073】
中間体 5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((E)−3−カルバムイミドイルスルファニル−1−メチル−プロペニル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;塩酸との塩(C)の合成
HClの酢酸溶液(1M 、260ml)中のチオウレア(11.11g)及び5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[4−フルオロ−3−(1−ヒドロキシ−1−メチル−アリル)−フェニル]−アミド(46.8g)の溶液を、22℃で30分間、40℃で3時間撹拌した。混合物を蒸発させ、残留物をトルエンと共蒸留(codistilled)させ、そしてエチルエーテル(600ml)でトリチュレートした。懸濁液を濾過し、そして残留物を乾燥させて、標記化合物(54.2g、90%)を淡褐色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 379.2 [M+1]+
【0074】
5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド(化合物J)の合成
【化13】


トリフルオロ酢酸(275ml)中の5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((E)−3−カルバムイミドイルスルファニル−1−メチル−プロペニル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;塩酸との塩(54.8g)の褐色溶液に、0℃でトリフルオロメタンスルホン酸(31.5ml)を加え、22℃で3時間撹拌を続けた。混合物を蒸発させ、そして残留物をNaCO飽和水溶液及び酢酸エチルの間に分配した。水層を酢酸エチルで2回抽出し、そして合わせた有機層をブラインで洗浄した。生成物が洗浄手順の間に既に沈殿したので、懸濁液を濾過して、ラセミ体の標記生成物をオフホワイトの固体として得た(4.81g、10%)。濾液の層を分離し、有機層を乾燥させ、そして約400mlまで蒸発させ、そして濾過した。残留物を酢酸エチル及びジエチルエーテルで洗浄し、そして乾燥させて、第二部分のラセミ体の標記化合物をオフホワイトの固体として得た(22.6g、45%)。MS (ESI): m/z = 379.2 [M+1]+
【0075】
該ラセミ体を、アセトニトリル/i−プロパノール(85:15)を用いるキラルHPLCカラム(Chiralpak AD、20uM、250×110mm)で8バッチで光学分割して、5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((R)−2−アミノ−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド(12.8g)をより早く溶離した生成物として、そして5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド(12.0g)を後で溶離した生成物として得た。
【0076】
実施例2〜19
【化14】


中間体 1−(2−フルオロ−5−ニトロフェニル)プロパン−1−オン(D)の合成
1−(2−フルオロフェニル)プロパン−1−オン(54g、355mmol)を、−20℃で硫酸(180mL)に滴下し、次に発煙硝酸(27mL)を混合物に、温度が決して−15℃を超えないような速度で加えた。混合物を10分間撹拌し、次に氷に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、HO、NaHCO水溶液及びブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、そして蒸発させた。粗物質をシリカクロマトグラフィーに付し(ペンタン/酢酸エチル、10:1)、標記生成物(40g、58%)を得た。MS (ESI): m/z = 198.0 [M+1]+
【0077】
中間体 (R)−2−メチル−プロパン−2−スルフィン酸[1−(2−フルオロ−5−ニトロ−フェニル)−プロパ−(E)−イリデン]−アミド(E)の合成
1−(2−フルオロ−5−ニトロフェニル)プロパン−1−オン(41.5g、211mmol)及び(R)−(+)−tert−ブチルスルフィンアミド(51.0g、421mmol)をTHF(250mL)に溶解し、次にチタン(IV)エトキシド(154g、675mmol)を室温で加え、混合物を70℃で3時間撹拌して、室温に冷ました。混合物をブライン(400ml)で処理し、懸濁液を10分間撹拌し、そしてdicalite上で濾過した。層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水で洗浄し、乾燥させ、そして蒸発させた。残留物をペンタン/酢酸エチル(5:1)を用いてシリカクロマトグラフィーに付して、標記生成物(50g、78%)を得た。MS (ESI): m/z = 301.0 [M+1]+
【0078】
中間体 (S)−3−((R)−1,1−ジメチルエチルスルフィンアミド)−3−(2−フルオロ−5−ニトロフェニル)ペンタン酸tert−ブチル(F)の合成
THF(200mL)中のtBuOAc(40.0g、351mmol)の溶液を、LDAの溶液(2M 、200mL)に−78℃で加え、混合物を同じ温度で30分間撹拌し、次にTHF(200mL)中のトリイソプロポキシチタン(IV)クロリド(92.0g、353mmol)を、この混合物に加えた。30分後、(R)−2−メチル−プロパン−2−スルフィン酸[1−(2−フルオロ−5−ニトロ−フェニル)−プロパ−(E)−イリデン]−アミド(30.0g、100mmol)を混合物に加え、混合物を−78℃で1時間撹拌し、そして次に氷水浴で冷却したNHCl水溶液に注いだ。混合物を酢酸エチルで希釈し、濾過し、有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、そしてクロマトグラフィー(ペンタン/酢酸エチル、3:1)により精製して、標記化合物(20.9g、61%)を得た。MS (ESI): m/z = 417.0 [M+1]+
【0079】
中間体 (S)−3−アミノ−3−(2−フルオロ−5−ニトロフェニル)ペンタン酸(G)の合成
(S)−3−((R)−1,1−ジメチルエチルスルフィンアミド)−3−(2−フルオロ−5−ニトロフェニル)ペンタン酸tert−ブチル(20.9g、50.0mmol)をHCl(300mL、1,4−ジオキサン中4M )に溶解し、次に混合物を90℃で15時間撹拌した。混合物を室温に冷まし、そして減圧下で濃縮した。褐色の油状物をエーテルでトリチュレートして、標記生成物(10.0g、66.0%)を得た。MS (ESI): m/z = 257.0 [M+1]+
【0080】
中間体 (S)−3−アミノ−3−(2−フルオロ−5−ニトロフェニル)ペンタン−1−オール(H)の合成
(S)−3−アミノ−3−(2−フルオロ−5−ニトロフェニル)ペンタン酸(10.0g、39.0mmol)をTHF(100mL)中にて懸濁し、ボラン(200mL、THF中1M )を滴下して処理した。混合物を室温で30時間撹拌し、そして次に氷水に注いだ。混合物を4N 水酸化ナトリウム水溶液でpH=9に塩基性化し、酢酸エチルで抽出し、有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、そして濃縮して、標記生成物(5.0g、60%)を得た。MS (ESI): m/z = 243.0 [M+1]+
【0081】
中間体 (S)−3−(2−フルオロ−5−ニトロ−フェニル)−3−イソチオシアナト−ペンタン−1−オール(I)の合成
(S)−3−アミノ−3−(2−フルオロ−5−ニトロフェニル)ペンタン−1−オール(5.0g、21.0mmol)をトルエン(30mL)及び水(30mL)の混合物に懸濁させた。懸濁液に、炭酸カリウム(8.0g、58mmol)、次いでチオホスゲン(2.85g、25mmol)を氷水浴での冷却下で加えた。混合物を30分間撹拌し、酢酸エチル(100ml)及び水(50mL)で希釈し、そして混合物を濾過した。有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、そして減圧下で濃縮して、粗製の標記化合物(5.0g)を暗色の油状物として得て、これを次の工程に直接用いた。
【0082】
中間体 2−((S)−3−クロロ−1−エチル−1−イソチオシアナト−プロピル)−1−フルオロ−4−ニトロ−ベンゼン(K)の合成
トルエン(50mL)中の(S)−3−(2−フルオロ−5−ニトロ−フェニル)−3−イソチオシアナト−ペンタン−1−オール(5.0g、粗製物)の溶液に、塩化チオニル(5.0mL、70mmol)及びDMF(0.5mL)を加え、そして混合物を80℃で3時間加熱した。混合物を22℃に冷却し、氷水に注ぎ、そして酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、そしてクロマトグラフィー(ペンタン/酢酸エチル、20:1)により精製して、標記化合物(4.0g、64%)を得た。
【0083】
中間体 (S)−4−エチル−4−(2−フルオロ−5−ニトロフェニル)−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イルアミン(L)の合成
THF(40ml)中の2−((S)−3−クロロ−1−エチル−1−イソチオシアナト−プロピル)−1−フルオロ−4−ニトロ−ベンゼン(4.0g、13mmol)の溶液に、水中のアンモニア(26mL、25〜28%)を氷水浴での冷却下で加え、そして混合物を6時間室温で撹拌した。混合物を水及び酢酸エチルで希釈し、有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、そして減圧下で濃縮して、粗製の標記生成物(3.0g、80%)を得た。
【0084】
中間体 [(S)−4−エチル−4−(2−フルオロ−5−ニトロ−フェニル)−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(M)の合成
ジクロロメタン(50mL)中の(S)−4−エチル−4−(2−フルオロ−5−ニトロフェニル)−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イルアミン(3.0g、10.6mmol)の溶液に、EtN(3.2g、31.8mmol)及びBocO(2.78g、12.7mmol)を加え、撹拌を22℃で10時間続けた。混合物を蒸発させ、残留物を酢酸エチル及び水の間に分配し、有機層をNaSOで乾燥させ、蒸発させ、そしてクロマトグラフィーにより精製して、標記生成物(3.5g、88%)を得た。MS (ESI): m/z = 384.0 [M+1]+
【0085】
中間体 [(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(N)の合成
メタノール(50mL)中の[(S)−4−エチル−4−(2−フルオロ−5−ニトロ−フェニル)−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(3.4g、8.9mmol)の溶液に、Pd/C(5.0g、10%)を加え、そして混合物を水素化し30Psiで2時間水素化した。触媒を濾過により除去し、濾液を蒸発させ、そして残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製して(ペンタン/酢酸エチル、3:1)、純粋な標記生成物(2.3g、74%)を得た。MS (ESI): m/z = 354.0 [M+1]+
【0086】
[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び炭酸のカップリング
一般的手順
DMF(0.8ml)中の[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.11mmole)の溶液に、HATU(0.14mmole)、炭酸(0.13mmole)及びDIEA(0.44mmole)を連続して加え、そして撹拌を22℃で2時間続けた。混合物をギ酸を用いて酸性化し、そしてアセトニトリル及び水(ギ酸0.1%を含有する)の勾配を用いてのprep. RP−18 HPLC上で精製した。t−ブチルオキシカルボニルで保護された中間体を含有する画分を蒸発させ、残留物をHO/CHCN/HCOOH(1:1:0.1、2.0ml)の混合物に溶解し、そして50℃で2時間撹拌した。混合物を蒸発させて、純粋なアミドをギ酸塩として得た。
【0087】
実施例2
5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化15】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(24mg)を無色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 393.2 [M+H]+
【0088】
実施例3
ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化16】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及びピリジン−2−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(31mg)を淡黄色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 359.3 [M+H]+
【0089】
実施例4
N−[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−4−クロロ−ベンズアミド;ギ酸との塩
【化17】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び4−クロロ−安息香酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(27mg)を無色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 392.2 [M+H]+
【0090】
実施例5
5−クロロ−ピラジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化18】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び5−クロロ−ピラジン−2−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(13mg)を無色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 394.1 [M+H]+
【0091】
実施例6
5−クロロ−ピリミジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化19】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び5−クロロ−ピリミジン−2−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(25mg)を淡黄色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 394.1 [M+H]+
【0092】
実施例7
3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化20】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(36mg)を無色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 427.2 [M+H]+
【0093】
実施例8
3−フェニル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化21】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び3−フェニル−ピリジン−2−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(38mg)を無色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 435.3 [M+H]+
【0094】
実施例9
4−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化22】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び4−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(31mg)を無色の油状物として得た。MS (ESI): m/z = 393.2 [M+H]+
【0095】
実施例10
6−メチル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化23】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び6−メチル−ピリジン−2−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(28mg)を無色の油状物として得た。MS (ESI): m/z = 373.1 [M+H]+
【0096】
実施例11
3,6−ジクロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化24】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び3,6−ジクロロ−ピリジン−2−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(32mg)を無色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 427.1 [M+H]+
【0097】
実施例12
6−クロロ−3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化25】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び6−クロロ−3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(35mg)を無色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 461.2 [M+H]+
【0098】
実施例13
イソキノリン−3−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化26】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及びイソキノリン−3−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(40mg)を無色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 409.3 [M+H]+
【0099】
実施例14
チエノ[2,3−c]ピリジン−7−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化27】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及びチエノ[2,3−c]ピリジン−7−カルボン酸(調製はFrohn, M. et al., Bioorg. & Med. Chem. Lett., 2008, 18, 5023に記載されている)のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(41mg)を無色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 415.2 [M+H]+
【0100】
実施例15
ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化28】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及びベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(48mg)を無色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 414.2 [M+H]+
【0101】
実施例16
5−メチル−チオフェン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化29】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び4−メチル−チオフェン−2−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(22mg)を無色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 378.3 [M+H]+
【0102】
実施例17
1−メチル−1H−ピラゾール−3−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化30】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び1−メチル−1H−ピラゾール−3−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(27mg)を淡黄色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 362.3 [M+H]+
【0103】
実施例18
2−メチル−オキサゾール−4−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化31】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び2−メチル−オキサゾール−4−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(21mg)を淡黄色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 363.3 [M+H]+
【0104】
実施例19
2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド;ギ酸との塩
【化32】


[(S)−4−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸のカップリング、続いての中間体の脱保護で、標記化合物(29mg)を無色の固体として得た。MS (ESI): m/z = 379.3 [M+H]+
【0105】
実施例20
以下の試験を、式(I)の化合物の活性を決定するために実施した:
【0106】
BACE2阻害に対する免疫蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイ
BACE2酵素細胞外ドメイン(プラスミド"pET17b-T7-hu proBACE2"に由来する)は、Ostermann et al., "Crystal Structure of Human BACE2 in Complex with a Hydroxyethylamine Transition-state Inhibitor", Journal of Molecular Biology 2006, 355, 249-261に記載されているとおりに調製した。プロ酵素は、4℃で、70μg/mlの濃度で保存した。
【0107】
FRETアッセイは、基本的にはGrueninger-Leitch et al., Journal of Biological Chemistry (2002) 277(7) 4687-93 ("Substrate and inhibitor profile of BACE (beta-secretase) and comparison with other mammalian aspartic proteases")に記載されているように実施した。要約すると、ペプチドはプロテアーゼによって切断されるように設計される。無傷ペプチドに対してルシファーイエロー蛍光がdabcylによって消光されるように、ペプチドはN末端でdabcylを用いて、C末端でルシファーイエローを用いて標識される。BACE2によってペプチドが切断される場合、消光は除去され、そして蛍光シグナルが生成する。
【0108】
アッセイは、Grueninger et al. 2002に記載されているように、5μMの基質濃度を使用し、pH4.5で実施した。TMEM27配列に基づくFRETペプチドが構築された。dabcyl-QTLEFLKIPS-LucY。BACE2はこの配列に対して高い活性を有し、これは公知のAPPに基づく基質とは無関係である。反対にBACE1は、このペプチドに対する活性はわずかであった。
【0109】
アッセイ読み出しは、BACE2活性の相対的測定を与える蛍光強度の変化の初速度である。小さい値は高い阻害に、大きい値は低い阻害に対応する。BACE2に対する化合物のIC50値(すなわち50%酵素活性を阻害する濃度)を決定するために、典型的には、プロテアーゼの低、高及び中程度の阻害を与えるために経験的に選択される濃度の範囲で、12のアッセイがなされた。IC50値は、阻害剤濃度の範囲に対して発生するこれらのアッセイ値及びSigmoidal Dose-Response Modelを用いたカーブフィッティング・ソフトウェアXLfit(IDBS)を使用して決定した。
【0110】
式(I)による好ましい化合物は、好ましくは5nM〜50μM、より好ましくは5nM〜1μMの、上記アッセイにおける阻害活性(IC50)を有する。
【0111】
例えば、以下の化合物は、上記のアッセイにおいて以下のIC50値を示した:
【0112】
【表1】

【0113】
実施例21
単離したヒト膵臓ランゲルハンス島中におけるTMEM27開裂の測定による、BACE2阻害の検出
2人の異なるドナーから新たに単離したヒト膵島(51歳男性、BMI:27.5kg/m2;62歳女性、BMI:22.2kg/m2;ドナー当たりおよそ3000の膵島)は、Dr. D. Bosco(Cell Isolation and Transplantation Center、Department of Surgery、Geneva、Switzerland)から得て、10%FCS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン及び100μg/mlゲンタマイシン(Sigma)が補充された5.6mmol/lグルコースのCMRL-1066(Invitrogen)中で、実験の前に2日間保持した。本研究は倫理審査委員会より承認を受けている。抜擢した膵島は、実施例1の化合物200nMの存在下又は非存在下で72時間培養した。膵島を遠心分離により回収し、総タンパク質をCELYA溶解緩衝液CLB1(Cat*9000、Zeptosens)を用いて、製造者のプロトコルに従い抽出した。
【0114】
総膵島タンパク質(10μg)は、NuPAGE 4〜12%bis-TrisGel(Cat*NP0321Box、Invitrogen)により分画し、iBlotシステム(Cat*IB3010-01、Invitrogen)を用いてニトロセルロースへと移動した。イムノブロッティングは、一次抗体:マウス抗−TMEM27モノクローナル抗体(Roche Clone-3/3、1μg/ml);マウス抗−BACE2モノクローナル抗体(Roche Clone-1/9、1μg/ml);ウサギ抗−GAPDHモノクローナル抗体(Cat*2118、Cell Signaling、1:4,000希釈)、続いてHRP−共役抗−マウス又は抗−ウサギ二次抗体(Pierce)を用いて、検出について強化された化学発光(Pierce)を使用して実施した。
【0115】
ウエスタンブロット(図8)は、実施例1の化合物が、C−末端を認識するマウス抗−hTMEM27モノクローナル抗体(Roche clone 3/3)により検出される、TMEM27の全長を安定化したことを示している。hTMEM27は、TMEM27のヒト配列に対応する。BACE2阻害は、マウス抗−hBACE2(1/9)モノクローナル抗体により認識されるように、成熟BACE2(下方のバンド)からプロBACE2(上方のバンド)へのシフトをもたらす。他のアスパラギン酸プロテアーゼと同様に、BACE2は成熟過程の間にそのプロ配列の開裂を要求する不活性なチモーゲンとして発現する。プロBACE2は、酵素的活性化に対する自己触媒的プロドメイン過程を必要とする。実施例1の化合物によるBACE触媒活性の阻害は、成熟BACE2の減少及びプロBACE2における増加を導く。BACE2活性の阻害はまた、ヒト膵島における全長TMEM27の増加及び安定化の機構の根拠をなす。
【0116】
実施例22
実施例1の化合物(5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド)の、Zucker Diabetic Fatty(ZDF)ラットにおける代謝効果
【0117】
この試験は、オスZDFラット[ZDF/gmiCrl fa/fa]及び痩せたラット[ZDF/gmiCrl fa/+](Charles River Laboratories、Sulzfeld、Germany)を用いて実施した。ZDFラットは、インスリン抵抗性、β細胞欠損及び高血糖症を特徴とするヒト2型糖尿病の一般的に用いられるモデルである。オスの糖尿病の発症は、糖尿病誘発性の食事を与えられたとき、8〜10週齢の時点である。実験のはじめに6週齢である全てのラット(ZDF及び痩せたラット)は、特別食("PURINA PMI 5008"、ZDF_diet = Ssniff R/M-H)を与えられ、そしてケージ(タイプ3)あたり1匹を住まわせた。周囲温度は約21℃であり、相対湿度は55〜65%であった。室内で12時間、明−暗サイクルを維持し、全ての試験は明るい段階の間に実施した。食料及び水道水の入手は自由である。
【0118】
6週齢のZDFラットは、経口での強制餌養(皮下注によって投与されなければならなかったリラグルチドを用いる処置を除く)により投与される5つの処置の1つを受けるために、無作為に分けた:
第1群は、ビヒクルとしてゼラチンを摂取された(n=11)。
第2群は、日毎に0.2mg/kgの実施例1の化合物を摂取された(n=11)。用量は24時間後におよそ50%のBACE2阻害を誘導するように計算した。
第3群は、日毎に5mg/kgの実施例1の化合物を摂取された(n=11)。BACE2阻害活性に基づいて、最大効果に対して計算される用量である。
第4群は、日毎に30mg/kgの実施例1の化合物を摂取された(n=11)。この用量では、BACE2活性は完全に阻害される。
第5群は、日毎に皮下注射で0.4mg/kgのリラグルチドを摂取された(n=11)。
痩せたラットの対照群(n=11)は、ビヒクルを摂取された。
【0119】
【表2】

【0120】
体重及び食物摂取は、毎日測定された。血中グルコースは、すべてのラットにおいて週一回測定された。3週の処置の後、oGTTを、群当たり6体の一晩絶食したラットに実施した。約4週、そして麻酔の後、1日及び群当たり2〜3体のZDFラットは、低/高グルコース条件を有する膵臓手術及びインシチューでの膵臓灌流を受けた。ラット当たり120の溶出画分を、ブドウ糖及びインスリンの定量化のために集めた。
【0121】
経口糖耐性試験(oGTT)
oGTTは、処置の18日目に行われた。約16時間の後処理の一晩断食後、ラットは強制餌養によって2g/kgのグルコース負荷を与えられた。血液サンプルは、グルコース負荷試験の直前(0分)、ならびにグルコース負荷試験の+10、+30、+60及び+120分後に集められ、血中グルコース及び他の血漿パラメータを決定した。
【0122】
血中グルコースは、血中グルコースモニタリングシステム(Accu-Chek Aviva、Roche Diagnostics GmbH、Rotkreuz、Switzerland)を用いて測定した。インスリンは、Mercodia Rat Insulin ELISA(Mercodia AB、Uppsala、Sweden)を用いるELISAによって測定した。
【0123】
結果は図1に示している。データはWindows用ソフトウェアSAS/JMP(version 6.0.0、SAS Institute Inc.、Cary、NC)を用いて解析した。データは平均±SEM(平均の標準誤差)として表した。ラットの数は各群につき6体であった。比較はビヒクルに対して、分散分析、ANOVAに続くpost hoc Dunnettの試験を用いて行った。
【0124】
ビヒクルの群は、時間0における適度に上昇した空腹時血中グルコースレベル(ほぼ6mM)、次いでこの年齢のZDFラットにおける激しいグルコース不耐性を示している経口グルコース負荷試験の後記録される、高くかつ継続するグルコース偏位によって特徴づけられる。
【0125】
実施例1の化合物を用いての処置は、グルコース曲線下面積(AUC 0〜120分)を用量依存的に減らした。実施例1の化合物(30mg/kg)による糖耐性の向上は、ビヒクルと比較してグルコース負荷試験後30’、60’及び120’で有意性が見られた。実施例1の化合物を用いての処置は、全体の負荷試験後グルコースAUCを減少させる際の長期にわたる有効性を誘導した。リラグリチド(2型糖尿病の処置のため市場に出されている薬)が、陽性対照として用いられた。実施例1の化合物(30mg/kg)の有効性は、リラグリチド(0.4mg/kg)を用いる慢性の処置によって誘導されるそれの近くであった。
【0126】
ビヒクル、実施例1の化合物又はリラグルチドのいずれかを用いて17日間処理される8.5週齢のZDFラットのoGTTの間のグルコース偏位の定量化は、図2に更に図示されている。AUCは、曲線下面積(0〜120分)を表す。単位はmM*minである。AUCは、台形積分則によって計算される。この計算は、グルコース負荷試験後の0〜120分を表す。
【0127】
実施例1の化合物を用いた長期的処置は、30mg/kgで有意な値に到達するグルコースAUC(***ビヒクルと比較してp<0.001、分散分析に続くPost hoc Dunnettの試験)の用量依存的減少を誘導する。データは平均±SEMとして表される。
【0128】
8.5週間目のZDFラットの空腹時血糖(FBG)における実施例1の化合物を用いた長期的処置の効果は、図3に示している。実施例1の化合物(0.2〜5〜30mg/kg)を用いた長期的処置は、有意性は見られずに一晩絶食の条件後の空腹時血中グルコース(FBG)を減らす傾向を示した。同様に、リラグルチドは、FBG減少に対して統計学的に有意ではない傾向を示した。予想されるとおり、痩せたラットは年齢を適合させたZDF−ビヒクル処置ラットと比較してより低いFBGによって特徴づけられる。データは、平均±SEMとして表される。比較は、分散分析に続いてpost hoc Dunnettの試験を使用して、ビヒクルに対してなされた。
【0129】
ビヒクル、実施例1の化合物又はリラグリチドのいずれかを用いての17日間処置した8.5週齢のZDFラットにおけるoGTTの間のインスリンレベルは、図4に示している。ZDFラットは0時間にグルコース(2g/kg)を用いて負荷をかけた:ビヒクル処置ZDFラットは、グルコース負荷試験に従うインスリンの急速かつ顕著な増加を特徴とする。実施例1の化合物を用いての長期的処置は、oGTTの間に分泌したインスリンレベルにおいて用量依存的な増加を誘導する。増加は主にインスリン分泌のピークで観察された。実施例1の化合物を用いての処置は、ビヒクルと比べて空腹時インスリンレベルを変化させなかった。リラグルチドを用いての長期的処置は、空腹時及び負荷試験後インスリンレベルを共に減少させた。データは平均±SEMで表した。比較は、実施例1の化合物で処理した群対ビヒクルの群の間で、分散分析に続いてpost hoc Dunnettの試験を用いて行った。
【0130】
ビヒクル、実施例1の化合物又はリラグルチドのいずれかを用いて17日間処置した、8.5週齢のZDFラットにおけるoGTTの間のインスリンAUC(0〜120分間)は、図5に更に図示している。AUCは曲線下面積を表す。Y単位はng/ml*分間である。AUCは、台形則によって計算した。この計算は、グルコース負荷試験後0〜120分で行った。実施例1の化合物を用いての慢性処置は、優位性は見られずにインスリンレベルに容量依存的な増加を誘導する。データは、平均±SEMとして表した。
【0131】
加えて、HOMA_IR、ISI Matsuda及びHOMA β細胞指数は、ビヒクル、実施例1の化合物又はリラグルチドのいずれかを用いての17日間処置後の8.5週齢ZDFラットにおいて測定されるデータから計算した。データは図6に図示し、平均±SEM(群当たりN=6)として表した。比較は、分散分析に続くpost hoc Dunnettの試験を使用して、実施例1の化合物で処置した群とビヒクルとの間でなされた。実施例1の化合物を用いての長期的処置は、肝臓(HOMA)又は全身のインスリン抵抗性(MATSUDA)指数に影響を与えなかった。対照的に、実施例1の化合物は、HOMA−βインスリン抵抗性指数を用量依存的に改善した。これは実施例1の化合物が膵島及びβ細胞機能を改良していることを示唆する。
【0132】
インシチューの膵灌流におけるβ細胞機能の評価
ラットは、麻酔をかけられた(最初にTemgesic(0.1ml/100g)、次に麻酔カクテル:Ketamine(77mg/kg)、Xylazine(11mg/kg)、腹腔内注入、体積2ml/kg)。膵臓は、共にカニューレを挿入された腹部大動脈及び門脈との接続を保ちながら、他の連結している臓器から、そして神経ならびに静脈及び輸入性及び輸出性の動脈から外科的に単離した。一旦手術がされると、ラットは温度調節された箱(37℃)に入れられ、膵臓は腹部大動脈を経て注入ポンプに接続した。
【0133】
グルコース促進インスリン分泌(GSIS)は、図7に設計されるプロトコルに記載されているとおり、低/高グルコース濃度を含むKrebs-Ringer緩衝剤を用いて膵臓を灌流することによって得られた。基本的に、膵臓は、最初に基礎インスリン分泌を安定させながら、低グルコース濃度(2.8mM)を含む新たに用意されたKrebs-Ringer液(5ml/分)を用いて約30分間灌流された。次いで、高グルコース濃度溶液(16.7mM)による第1の刺激が膵臓を感作するために与えられ、適度の第1相及び第2相インスリン分泌に至った。最後に、約75分での高グルコース濃度(16.7mM)を用いた膵臓の第2の刺激が、急速及び高い第1相、続いて保持されかつ長続きする第2相、ならびに「オフ反応」により示される完全なインスリン分泌を導いた(図7のビヒクルの曲線を参照されたい)。実施例1の化合物(30mg/kg)を用いての処置は、ビヒクルと比較して基礎インスリン分泌及びAUCのオフ反応を減少した。実施例1の化合物は、インスリン分泌プロフィール(第1相/第2相)を正常化して、したがって高インスリン血症を防止する。
【0134】
膵臓溶出分画は、規則的な時間間隔で96ウェルプレート(門脈にもたらされるカテーテルを介して)に集められて、直ちに4℃に冷却され、その後−20℃で分析されるまで貯蔵された。少なくとも、ラット当たり120の溶出した画分が、グルコース及びインスリンレベルの測定のために集められた。
【0135】
実施例A
下記の成分を含有するフィルムコーティング剤は常法により製造することができる。
【0136】
【表3】


活性成分を篩にかけ、微晶質セルロースと混合し、混合物を水中のポリビニルピロリドンの溶液で顆粒化する。顆粒をデンプングリコール酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムと混合し、圧縮して、それぞれ120又は350mgの核を得る。上記のフィルムコートの水溶液/懸濁液を核に塗布する。
【0137】
実施例B
下記の成分を含有するカプセル剤は常法により製造できる。
【0138】
【表4】


成分を篩にかけ、混合し、サイズ2のカプセルに充填する。
【0139】
実施例C
注射剤は下記の組成を有することができる。
【0140】
【表5】


活性成分を、ポリエチレングリコール400と注射用水(一部)の混合物に溶解する。酢酸によりpHを5.0に調整する。水の残量を加えて、容量を1.0mlに調整する。溶液を濾過し、適切な過剰量を使用してバイアルに充填し、滅菌する。
【0141】
実施例D
下記の成分を含有する軟ゼラチンカプセル剤は常法により製造できる。
【0142】
【表6】


活性成分を、温かく溶融している他の成分に溶解し、混合物を適切な大きさの軟ゼラチンカプセルに充填する。充填された軟ゼラチンカプセル剤を、通常の手順に従って処理する。
【0143】
実施例E
下記の成分を含有するサッシェは常法により製造できる。
【0144】
【表7】


活性成分を、乳糖、微晶質セルロース及びナトリウムカルボキシメチルセルロースと混合し、水中のポリビニルピロリドンの混合物で造粒する。顆粒をステアリン酸マグネシウム及び風味添加剤と混合し、サッシェに充填する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病の治療又は予防のための医薬の製造のための、式(I):
【化33】


[式中、
は、C1−7−アルキル又はC3−7−シクロアルキルであり;
は、水素、C1−7−アルキル、ハロゲン、シアノ及びC1−7−アルコキシからなる群より選択され;
は、アリール又はヘテロアリールであり、該アリール又はヘテロアリールは、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル、オキソ及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項2】
が、メチル又はエチルである式(I)の化合物の、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
が、C1−7−アルキル、ハロゲン、シアノ及びC1−7−アルコキシからなる群より選択される式(I)の化合物の、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
が、ハロゲンである式(I)の化合物の、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
が、ヘテロアリールであり、該ヘテロアリールが、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている式(I)の化合物の、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
が、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、イソキノリニル、チエノ[2,3−c]ピリジル及びベンゾ[b]チエニルからなる群より選択されるヘテロアリールであり、該ヘテロアリールが、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている式(I)の化合物の、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミドである式(I)の化合物の、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
が、フェニルであり、該フェニルが、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている式(I)の化合物の、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
2型糖尿病の治療又は予防のための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
糖尿病の治療又は予防に使用するための、式(I):
【化34】


[式中、
は、C1−7−アルキル又はC3−7−シクロアルキルであり;
は、水素、C1−7−アルキル、ハロゲン、シアノ及びC1−7−アルコキシからなる群より選択され;
は、アリール又はヘテロアリールであり、該アリール又はヘテロアリールは、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル、オキソ及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
式(Ia):
【化35】


[式中、
は、エチルであり;
は、C1−7−アルキル、ハロゲン、シアノ及びC1−7−アルコキシからなる群より選択され;
は、アリール又はヘテロアリールであり、該アリール又はヘテロアリールは、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル、オキソ及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている]
を有する、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
が、ハロゲンである、請求項11に記載の式(Ia)の化合物。
【請求項13】
が、フルオロである、請求項11又は12に記載の式(Ia)の化合物。
【請求項14】
が、ヘテロアリールであり、該ヘテロアリールが、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている、請求項11〜13のいずれか一項に記載の式(Ia)の化合物。
【請求項15】
が、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、イソキノリニル、チエノ[2,3−c]ピリジル及びベンゾ[b]チエニルからなる群より選択されるヘテロアリールであり、該ヘテロアリールが、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている、請求項14に記載の式(Ia)の化合物。
【請求項16】
が、フェニルであり、該フェニルが、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている、請求項11〜13のいずれか一項に記載の式(Ia)の化合物。
【請求項17】
5−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
N−[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−4−クロロ−ベンズアミド、
5−クロロ−ピラジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
5−クロロ−ピリミジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
3−フェニル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
4−クロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
6−メチル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
3,6−ジクロロ−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
6−クロロ−3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
イソキノリン−3−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
チエノ[2,3−c]ピリジン−7−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
5−メチル−チオフェン−2−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
1−メチル−1H−ピラゾール−3−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド、
2−メチル−オキサゾール−4−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミド及び
2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸[3−((S)−2−アミノ−4−エチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−4−イル)−4−フルオロ−フェニル]−アミドからなる群より選択される、請求項11に記載の式(Ia)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
請求項11に記載の式(Ia)の化合物を調製する方法であって、
a)式(II):
【化36】


[式中、Rは、請求項1と同義であり、Protは、アミノ保護基である]
で示されるアミンを、式(III):
【化37】


[式中、Rは、請求項11と同義である]
で示されるカルボン酸と、カップリング試薬の存在下、塩基性条件下で反応させて、式(IV):
【化38】


で示される化合物を得て、そして式(IV)の化合物を、酸を利用して脱保護して、式(I):
【化39】


[式中、R〜Rは、請求項11と同義である]
で示される化合物を得ること、及び所望であれば、
b)得られた化合物を、薬学的に許容される塩へと変換すること、を含む方法。
【請求項19】
請求項11〜17のいずれか一項に記載の式(Ia)の化合物ならびに薬学的に許容される担体及び/又は佐剤を含む、医薬組成物。
【請求項20】
BACE2活性の阻害に関連する疾患の治療又は予防のための、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
糖尿病の処置又は予防のための方法であって、治療有効量の、式(I):
【化40】


[式中、
は、C1−7−アルキル又はC3−7−シクロアルキルであり;
は、水素、C1−7−アルキル、ハロゲン、シアノ及びC1−7−アルコキシからなる群より選択され;
は、アリール又はヘテロアリールであり、該アリール又はヘテロアリールは、非置換であるか又はC1−7−アルキル、ハロゲン、ハロゲン−C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン−C1−7−アルコキシ、シアノ、ヒドロキシ−C1−7−アルキル、オキソ及びフェニルからなる群より選択される1、2又は3個の基により置換されている]
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を、ヒト又は動物に投与することを含む方法。
【請求項22】
本明細書において先に定義された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−503838(P2013−503838A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527352(P2012−527352)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063071
【国際公開番号】WO2011/029803
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】