糸巻取機及び糸巻取ユニット
【課題】巻き取り開始直後の糸速度を正確に取得可能な糸巻取機を提供する。
【解決手段】精紡機は、巻取装置13と、紡績装置9と、ロータリエンコーダ機構と、糸継装置43と、継目モニタ47と、台車制御部と、を備えている。巻取装置13は、パッケージ45に紡績糸10を巻き取る。紡績装置9は、巻取装置13に紡績糸10を供給する。ロータリエンコーダ機構は、パッケージ45の回転速度を検出するためのものである。糸継装置43は、紡績装置9とパッケージ45との間の紡績糸10を糸継ぎして継ぎ目99を形成する。継目モニタ47は、紡績糸10の走行方向で糸継装置43の下流側に配置され、継ぎ目をモニタする。台車制御部は、ロータリエンコーダ機構の検出結果に基づいて取得した紡績糸10の走行速度と、継目モニタ47によるモニタ結果と、に基づいて、糸継装置43が形成した継ぎ目が正常であるか否かを判断する。
【解決手段】精紡機は、巻取装置13と、紡績装置9と、ロータリエンコーダ機構と、糸継装置43と、継目モニタ47と、台車制御部と、を備えている。巻取装置13は、パッケージ45に紡績糸10を巻き取る。紡績装置9は、巻取装置13に紡績糸10を供給する。ロータリエンコーダ機構は、パッケージ45の回転速度を検出するためのものである。糸継装置43は、紡績装置9とパッケージ45との間の紡績糸10を糸継ぎして継ぎ目99を形成する。継目モニタ47は、紡績糸10の走行方向で糸継装置43の下流側に配置され、継ぎ目をモニタする。台車制御部は、ロータリエンコーダ機構の検出結果に基づいて取得した紡績糸10の走行速度と、継目モニタ47によるモニタ結果と、に基づいて、糸継装置43が形成した継ぎ目が正常であるか否かを判断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸継装置で形成された糸の継ぎ目を検査するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
糸をボビンに巻き取ってパッケージを形成する糸巻取機が知られている。この種の糸巻取機には、例えば特許文献1が開示する紡績機がある。特許文献1に記載されているように、この紡績機は、繊維束に撚りを加えて紡績糸を生成する紡績部と、紡績部が生成した紡績糸をボビンに巻き取ってパッケージを形成する巻取部を備えている。
【0003】
また特許文献1の紡績機は、紡績部とパッケージの間の紡績糸が分断状態となったときに、紡績部側の糸とパッケージ側の糸を接合(糸継ぎ)する糸継台車を備えている。この糸継台車は、糸継装置を備えている。糸継装置は、紡績部側の糸端とパッケージ側の糸端を接合して、継ぎ目を形成する。また、糸継台車は、紡績部側の糸とパッケージ側の糸を捕捉して糸継装置まで案内する糸端捕捉手段と、パッケージを糸解舒方向に回転させる逆転手段とを備えている。
【0004】
近年、糸継装置において形成される継ぎ目の良否が厳しく問われるようになってきている。即ち、糸端同士の接合が不十分な不良継ぎ目は糸強度が弱いため、このような不良継ぎ目がパッケージに混入することは極力避けなければならない。そこで、万が一糸継装置で不良継ぎ目が形成されてしまったとしても、これがパッケージに巻き取られる前に検出できるように、糸の継ぎ目の品質をリアルタイムで監視する継目監視装置が提案されている。例えば特許文献2は、糸継装置(撚り継ぎ装置)で形成された糸の継ぎ目(撚り継ぎ結合部)の引張り強さ及び糸寸法(糸の直径)をチェックするための検査装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−284812号公報
【特許文献2】特開昭55−101561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
糸継装置で継ぎ目が形成された糸は、巻取部による巻取動作によって走行する。これにより、前記継ぎ目が継目監視装置を通過し、このときに継目監視装置において継ぎ目の検査が行われる。従って、継目監視装置においては、走行している糸の継ぎ目を検査することになる。このため、継ぎ目の品質を正確に判定するためには、糸の走行速度に関する情報が必要となる。
【0007】
ところで、糸継装置による糸継ぎは、巻取部による糸の巻き取りを停止し、糸の走行を中断した状態で行う。そして、継ぎ目が形成されると、巻取部による糸の巻き取りを再開する。従って、糸継装置で形成された継ぎ目が継目監視装置を通過するときは、糸の巻取を再開した直後であり、当該糸の走行速度が時々刻々と変化している最中である。このとき、糸の走行速度がどのように変化していくかは、パッケージの質量(パッケージの慣性)や、糸のワックスの有無など、様々な条件によって千差万別である。このため、糸の継ぎ目が継目監視装置を通過するときの当該糸の走行速度は、条件によって毎回異なる。
【0008】
従来は、パッケージの質量や糸のワックスの有無などの各種条件において、糸の継ぎ目が継目監視装置を通過するときの糸速度を特殊な測定器で測定する実験を予め行っておき、実際の糸の巻き取り時においては、前記実験により求めた経験式から糸速度を算出できるようにしていた。しかしながら、全ての条件において上記の経験式が当てはまるという保証はなく、常に正確な糸速度を得ることができているとは言いがたい。このため、継目監視装置における継ぎ目の検査精度も不十分であると考えられ、改善の余地があった。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、巻き取り開始直後の糸速度を正確に取得可能な糸巻取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、この糸巻取機は、巻取部と、給糸部と、パッケージ回転速度検出部と、糸継装置と、継目監視装置と、判断部と、を備える。前記巻取部は、パッケージに糸を巻き取る。前記給糸部は、前記巻取部に糸を供給する。前記パッケージ回転速度検出部は、前記パッケージの回転速度を検出するためのものである。前記糸継装置は、前記給糸部と前記パッケージとの間の前記糸を糸継ぎして継ぎ目を形成する。前記継目監視装置は、前記糸の走行方向で前記糸継装置の下流側に配置され、前記継ぎ目をモニタする。前記判断部は、前記パッケージ回転速度検出部の検出結果に基づいて取得した前記糸の走行速度と、前記継目監視装置によるモニタ結果と、に基づいて、前記糸継装置が形成した継ぎ目が正常であるか否かを判断する。
【0012】
このように、パッケージの回転速度の実測値に基づいて、巻取再開時の糸速度を精度良く取得することができる。そして、このようにして取得した糸速度に基づいて継ぎ目の品質を判断することにより、継ぎ目の品質を正確に判定することができる。
【0013】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、前記パッケージに接触して回転する接触ローラを備える。前記パッケージ回転速度検出部は、前記接触ローラの回転速度を検出する。
【0014】
即ち、パッケージに接触して回転する接触ローラの回転速度に基づいて、前記パッケージの回転速度を精度良く求めることができる。
【0015】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、前記給糸部及び前記巻取部を備えた糸巻取ユニットを複数備える。前記糸巻取ユニットの前記巻取部は、前記糸を巻き取る方向に前記パッケージを回転させる巻取ドラムを備える。前記糸巻取機は、前記糸巻取ユニットが備える前記巻取ドラムを、前記複数の糸巻取ユニットで共通して駆動する駆動源を更に備える。前記接触ローラは、前記巻取ドラムとは別部材として設けられている。
【0016】
このように、複数の糸巻取ユニットで共通して駆動される巻取ドラムによってパッケージを回転させることにより、複数の糸巻取ユニットで一斉に糸を巻き取ることができる。この構成の場合、各糸巻取ユニットで共通して巻取ドラムを駆動するので、当該巻取ドラムの回転速度からは個々のパッケージの回転速度を検出することができない。そこで、上記のように巻取ドラムとは別に設けた接触ローラの回転速度に基づいて、パッケージの回転速度を検出することにより、継ぎ目品質の判断のために、各糸巻取ユニットで個別にパッケージの回転速度の実測値を得ることができる。
【0017】
上記の糸巻取機において、前記接触ローラは、前記糸が解舒される方向に前記パッケージを回転させる逆回転ローラであることが好ましい。
【0018】
接触ローラが、パッケージの回転速度を検出する機能と、パッケージを逆回転させる機能と、の2つの機能を兼ねることにより、糸巻取機の構成をシンプルにすることができる。
【0019】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、ローラ移動部と、制御部と、を備える。前記ローラ移動部は、前記接触ローラを、前記パッケージに接触した位置と前記パッケージから離間した位置との間で移動させる。前記制御部は、前記接触ローラの回転と、前記糸継装置による継ぎ目の形成と、前記ローラ移動部による前記接触ローラの移動と、を少なくとも制御する。前記制御部は、前記給糸部と前記パッケージとの間の前記糸が分断状態となったときに、前記接触ローラが前記パッケージに接触するように前記ローラ移動部を制御するとともに、前記糸が解舒される方向に前記パッケージを回転させるように前記接触ローラの回転を制御する。前記制御部は、前記接触ローラによって回転される前記パッケージから解舒された前記糸と、前記給糸部側の糸と、を糸継ぎして継ぎ目を形成するように前記糸継装置を制御する。前記制御部は、前記糸継ぎの終了後、少なくとも前記継ぎ目が前記継目監視装置を通過するまでの間は、前記接触ローラが前記パッケージに接触した状態を保つように前記ローラ移動部を制御する。
【0020】
このように、糸継ぎの終了後、接触ローラがパッケージに接触した状態を保つことにより、糸の継ぎ目が継目監視装置を通過するときのパッケージの回転速度を、接触ローラの回転によって取得することができる。これにより、継ぎ目の品質を精度良く判断することができる。
【0021】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、前記接触ローラの回転駆動源と、前記接触ローラと前記回転駆動源との間の駆動の伝達を断接制御するクラッチと、を備える。前記クラッチは、少なくとも、前記継ぎ目が前記継目監視装置を通過するときは、前記駆動の伝達を切断するように制御する。
【0022】
これにより、継ぎ目が継目監視装置を通過するときに、接触ローラを抵抗なく回転させることができるので、当該接触ローラによってパッケージの回転速度を精度良く取得することができる。
【0023】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、前記糸継装置と、前記継目監視装置と、前記接触ローラと、を有する糸継台車を備える。前記糸継台車は、複数の糸巻取ユニット間を走行可能であるとともに、前記糸が分断状態となった糸巻取ユニットの近傍に停止して、当該糸巻取ユニットに対して前記糸継装置による糸継ぎを行う。
【0024】
このように、糸継ぎに必要な構成を搭載して走行する糸継台車を設けたことにより、これらの構成を糸巻取ユニットそれぞれに設ける構成と比べて、糸巻取機全体の構成を簡素化して、コストダウンを図ることができる。
【0025】
上記の糸巻取機において、前記給糸部は、旋回空気流によって繊維束に撚りを加えて紡績糸を生成する空気紡績装置であることが好ましい。
【0026】
即ち、空気紡績装置は高速紡績が可能であるため、巻取部における糸の巻き取り速度も速い。このため、巻き取りを再開したときの糸の加速も急激であり、糸の速度を経験式などにより予測することは困難である。そこでこのような空気紡績装置を備えた糸巻取機において、パッケージの回転速度の実測値に基づいて糸の速度を検出するという本発明の構成を採用することにより、糸の速度を精度良く取得することができる。
【0027】
本発明の別の観点によれば、以下の構成の糸巻取ユニットが提供される。即ち、この糸巻取ユニットは、巻取部と、給糸部と、パッケージ回転速度検出部と、糸継装置と、継目監視装置と、判断部と、を備える。前記巻取部は、パッケージに糸を巻き取る。前記給糸部は、前記巻取部に糸を供給する。前記パッケージ回転速度検出部は、前記パッケージの回転速度を検出するためのものである。前記糸継装置は、前記給糸部と前記パッケージとの間の前記糸を糸継ぎして継ぎ目を形成する。前記継目監視装置は、前記糸の走行方向で前記糸継装置の下流側に配置され、前記継ぎ目をモニタする。前記判断部は、前記パッケージ回転速度検出部の検出結果に基づいて取得した前記糸の走行速度と、前記継目監視装置によるモニタ結果と、に基づいて、前記糸継装置が形成した継ぎ目が正常であるか否かを判断する。
【0028】
このように、パッケージの回転速度の実測値に基づいて、巻取再開時の糸速度を精度良く取得することができる。そして、このようにして取得した糸速度に基づいて継ぎ目の品質を判断することにより、継ぎ目の品質を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る精紡機の全体的な構成を示す正面図。
【図2】紡績ユニット及び糸継台車の側面図。
【図3】紡績装置の断面図。
【図4】紡績ユニットで糸切れが発生した様子を示す側面図。
【図5】糸継台車の糸捕捉部で紡績糸を吸引捕捉する様子を示す側面図。
【図6】糸継台車の糸捕捉部で紡績糸を案内した様子を示す側面図。
【図7】糸継装置を糸継位置まで進出させた様子を示す側面図。
【図8】クランプ部によって糸が把持されたときの糸継装置の側面断面図。
【図9】糸端が解撚される様子を示す糸継装置の側面断面図。
【図10】糸端同士が撚り合わされる様子を示す糸継装置の側面断面図。
【図11】糸継ぎの終了後、紡績糸の巻き取りを再開した直後の様子を示す側面図。
【図12】継目モニタを継ぎ目が通過する様子を示す糸継装置の側面断面図。
【図13】逆転駆動機構の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の一実施形態に係る糸巻取機としての精紡機について、図面を参照して説明する。図1に示す精紡機(紡績機)1は、並設された多数の紡績ユニット(糸巻取ユニット)2と、糸継台車3と、ブロアボックス80と、原動機ボックス5と、を備えている。
【0031】
ブロアボックス80内には、各紡績ユニット2に負圧を供給するための負圧源などが配置されている。また、原動機ボックス5内には、各紡績ユニット2に共通の駆動源が配置されている。
【0032】
図2に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって順に配置された、ドラフト装置7と、紡績装置(給糸部)9と、糸貯留装置12と、巻取装置(巻取部)13と、を主要な構成として備えている。各紡績ユニット2は、ドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績装置9で紡績して紡績糸10を生成し、この紡績糸10を巻取装置13でボビン48に巻き取る。紡績糸10が巻き取られたボビン48を、パッケージ45と称する。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、通常巻取時での繊維束8及び紡績糸10の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。また、通常巻取時とは、紡績装置9と巻取装置13との間の紡績糸10が連続状態にあり、かつ、パッケージ45が略一定の周速で回転駆動されて紡績糸10が略一定速で巻き取られている状態を言うものとする。
【0033】
ドラフト装置7は、精紡機1が備えるフレーム6の上端近傍に設けられている。このドラフト装置7は、上流側から順に、バックローラ16、サードローラ17、ゴム製のエプロンベルト18を装架したミドルローラ19、及びフロントローラ20の4つのドラフトローラを備える。各ドラフトローラは、所定の回転速度で回転駆動される。また、ドラフト装置7は、各ドラフトローラに対向するように配置された対向ローラを有している。ドラフト装置7は、繊維束8の原料であるスライバ15を、回転するドラフトローラと、これに対向する対向ローラとの間で挟み込んで搬送することにより、所定の幅となるまで引き伸ばして(ドラフトして)繊維束8とするように構成されている。
【0034】
フロントローラ20のすぐ下流側には、紡績装置9が配置されている。ドラフト装置7でドラフトされた繊維束8は、紡績装置9に供給される。紡績装置9は、ドラフト装置7から供給された繊維束8に撚りを加えて、紡績糸10を生成する。紡績装置9で生成された紡績糸10は、後述の巻取装置13で巻き取られる。従って、紡績装置9は、巻取装置13に紡績糸10を供給する給糸部であると言うことができる。
【0035】
本実施形態の精紡機1では、紡績装置9として、旋回気流を利用して繊維束8に撚りを与える空気式のものが採用されている。図3に示すように、紡績装置9は、ノズルブロック35と、中空ガイド軸体23と、繊維案内部22と、を主に備えている。
【0036】
ノズルブロック35と中空ガイド軸体23の間には、紡績室26が形成されている。ノズルブロック35には、紡績室26内に空気を噴出する空気噴出ノズル27が形成されている。繊維案内部22には、紡績室26内に繊維束8を導入する導入口21が形成されている。空気噴出ノズル27は、紡績室26内に空気を噴出して旋回気流を発生させることができるように構成されている。
【0037】
この構成で、ドラフト装置7から供給された繊維束8は、導入口21を有する繊維案内部22によって紡績室26内に案内される。紡績室26内において、繊維束8は、旋回気流によって中空ガイド軸体23の周囲を振り回されることにより、撚りが加えられて紡績糸10となる。撚りが加えられた紡績糸10は、中空ガイド軸体23の軸中心に形成された糸通路29を通って、下流側の糸出口(図略)から紡績装置9の外部に送出される。
【0038】
なお、前記導入口21には、その先端を紡績室26内に向けて配置された針状のガイドニードル22aが配置されている。導入口21から導入される繊維束8は、このガイドニードル22aに巻き掛かるようにして紡績室26内に案内される。これにより、紡績室26内に導入される繊維束8の状態を安定させることができる。また、このようにガイドニードル22aに巻き掛かるように繊維束8が案内されるので、紡績室26内で繊維に撚りが加えられても、繊維案内部22よりも上流側に撚りが伝播することが防止される。これにより、紡績装置9による加撚がドラフト装置7に影響を与えることを防止できる。ただし、ガイドニードル22aを省略して、繊維案内部22の下流側端部がガイドニードル22aの役割を果たすように構成しても良い。
【0039】
図2に示すように、紡績装置9の下流側には巻取装置13が配置されている。巻取装置13は、クレードルアーム71と、巻取ドラム72と、トラバース装置75と、を備えている。
【0040】
前記巻取ドラム72は、一方向に一定の回転速度で回転駆動されている。前記クレードルアーム71は、紡績糸10を巻回するためのボビン48を回転可能に支持することができる。また、このクレードルアーム71は、支軸73まわりに揺動可能に支持されている。クレードルアーム71は、前記ボビン48(又はこれに紡績糸10を巻いて形成されるパッケージ45)を支持した状態で支軸73まわりに揺動することにより、前記ボビン48(又はパッケージ45)の外周を、巻取ドラム72に対して接触又は離間させることができるように構成されている。前記ボビン48(又はパッケージ45)の外周を、回転駆動されている巻取ドラム72に接触させることにより、当該ボビン48(又はパッケージ45)を一方向に従動回転させて、当該ボビン48(又はパッケージ45)に紡績糸10を巻き取ることができる。以下の説明で、巻取ドラム72がパッケージ45を回転させる方向を、「巻取方向」と呼ぶ。なお、各紡績ユニット2の巻取装置13が備える巻取ドラム72は、複数の紡績ユニット2で共通の駆動源(図略)によって、一斉に回転駆動されるように構成されている。なお、この駆動源は、前記原動機ボックス5内に設けられている。これにより、複数の紡績ユニット2においてパッケージ45を一斉に同じ周速で回転させ、紡績糸10を一斉に巻き取ることができる。
【0041】
トラバース装置75は、紡績糸10に係合可能なトラバースガイド76を備えている。このトラバースガイド76は、図略の駆動手段によって、前記巻取ドラム72の軸方向と平行な方向に往復動されるように構成されている。なお、この駆動手段は、前記原動機ボックス5内に設けられている。この構成で、巻取ドラム72を回転駆動させながら、紡績糸10を係合させたトラバースガイド76を往復駆動することにより、紡績糸10を綾振り(トラバース)しつつパッケージ45に巻き取るようになっている。
【0042】
紡績装置9と巻取装置13との間には、糸貯留装置12が設けられている。糸貯留装置12は、図2に示すように、糸貯留ローラ14と、当該糸貯留ローラ14を回転駆動する電動モータ25と、を備えている。
【0043】
糸貯留ローラ14は、その外周面に一定量の紡績糸10を巻き付けて一時的に貯留することができるように構成されている。糸貯留ローラ14の外周面に紡績糸10を巻き付けた状態で当該糸貯留ローラ14を所定の回転速度で回転させることにより、紡績装置9から紡績糸10を所定の速度で引き出して下流側に搬送することができる。また、糸貯留装置12は、糸貯留ローラ14の外周に紡績糸10を一時的に貯留するように構成されていることから、紡績装置9と巻取装置13との間で一種のバッファとして機能する。これにより、紡績装置9における紡績速度と、巻取装置13における巻取速度と、が何らかの理由により一致しない場合の不具合(例えば紡績糸10のたるみなど)を解消することができる。
【0044】
紡績装置9と糸貯留装置12との間の位置には、糸品質測定器59が設けられている。紡績装置9で紡出された紡績糸10は、糸貯留装置12で巻き取られる前に前記糸品質測定器59を通過するようになっている。糸品質測定器59は、走行する紡績糸10の太さを図略の静電容量式センサによって監視するように構成されている。糸品質測定器59は、紡績糸10の糸欠点(紡績糸10の太さなどに異常がある箇所)を検出した場合に、糸欠点検出信号を図示しないユニットコントローラへ送信するように構成されている。なお、糸品質測定器59は静電容量式のセンサに限らず、例えば光透過式のセンサで紡績糸10の太さを監視する構成であっても良い。また、糸品質測定器59は、紡績糸10に含まれる異物を糸欠点として検出するように構成されていても良い。
【0045】
糸品質測定器59の近傍には、当該糸品質測定器59で紡績糸10の糸欠点が検出された際に、直ちに当該紡績糸10を切断するためのカッタ(図略)が配置されている。なお、紡績ユニット2は、このカッタの代わりに、紡績装置9への空気の供給を停止して、紡績糸10の生成を中断することにより当該紡績糸10を切断しても良い。
【0046】
図1に示すように、精紡機1のフレーム6には、紡績ユニット2が並ぶ方向に沿って、糸継台車走行レール41が配設されている。前記糸継台車3は、この糸継台車走行レール41の上を走行することができるように構成されている。これにより、糸継台車3は、複数の紡績ユニット2の間を走行することができる。
【0047】
糸継台車3は、図1及び図2に示すように、糸継装置43と、糸捕捉部(サクションパイプ44及びサクションマウス46)と、継目モニタ(継目監視装置)47と、逆転駆動機構49と、移動手段30と、を備えている。また、糸継台車3は、当該糸継台車3の各構成を制御するための図略の台車制御部を備えている。
【0048】
前記サクションパイプ44とサクションマウス46は、それぞれ軸を中心に上下方向に回動可能に構成されている。サクションパイプ44は、その先端に吸引空気流を発生させることにより、紡績装置9から送出される紡績糸10を吸い込んで吸引捕捉できるように構成されている(図5参照)。サクションマウス46は、その先端に吸引空気流を発生させることにより、巻取装置13に支持されたパッケージ45から紡績糸10を吸い込んで吸引捕捉できるように構成されている(図5参照)。また、サクションパイプ44とサクションマウス46は、前記紡績糸10を吸引捕捉した状態で回動することにより、当該紡績糸10を、糸継装置43の正面側(図6の左側)に対面する位置まで案内する(図6の状態)。なおサクションパイプ44及びサクションマウス46の動作は、前記台車制御部によって制御されている。
【0049】
糸継装置43は、サクションパイプ44によって案内された紡績装置9側の紡績糸10と、サクションマウス46によって案内されたパッケージ45側の紡績糸10と、を糸継ぎ(接合)することができるように構成されている。この糸継装置43は、旋回空気流によって糸端同士に撚りを加えることにより継ぎ目を形成するスプライサ装置として構成されている。ただし、糸継装置43の構成はこれに限らず、例えば機械式のノッタであっても良い。この糸継装置43による継ぎ目の形成は、前記台車制御部によって制御されている。なお、この糸継装置43は、糸継台車3が紡績ユニット2で停止したときに、紡績糸10の走行方向で巻取装置13と糸貯留装置12との間に位置している。
【0050】
移動手段30は、糸継装置43を、通常巻取時の糸道(紡績糸10の走行経路、図2では図面上下方向)に対して接近又は離間する方向に移動させることが可能に構成されている。糸継装置43は、通常巻取時の糸道に接近した位置(例えば図7に示す位置)において、糸継作業を行う。このときの糸継装置43の位置を、「糸継位置」と呼ぶ。また糸継装置43は、糸継作業を行わないときには、通常巻取時の糸道から離間した位置(例えば図2に示す位置)に退避しておく。このときの糸継装置43の位置を、「退避位置」と呼ぶ。
【0051】
移動手段30は、レール37と、エアシリンダ38と、を備えている。レール37は、糸継台車3の台車本体に設けられている。このレール37は直線状に細長く形成されており、その長手方向が、通常巻取時の糸道に対して略直交する方向(紡績ユニット2の前後方向、図2では図面左右方向)に沿って配設されている。一方、糸継装置43は、支持ブラケット36に取り付けられている。支持ブラケット36は、レール37によって支持されているとともに、当該レール37の長手方向に沿って移動可能に構成されている。従って、支持ブラケット36に取り付けられている糸継装置43は、通常巻取時の糸道に対して略直交する方向で、移動可能である。
【0052】
前記エアシリンダ38は、糸継装置43をレール37に沿って駆動するための移動駆動源である。エアシリンダ38の一端は、糸継台車3の台車本体に取り付けられ、他端は前記支持ブラケット36に取り付けられている。このエアシリンダ38を伸縮させることにより、糸継装置43を、レール37に沿った方向(通常巻取時の糸道に対して直交する方向)で直線移動させることができる。なお、上記エアシリンダ38の伸縮動作は、前記台車制御部によって制御されている。
【0053】
次に、糸継装置43の構成を、図10を参照して詳細に説明する。図10に示すように、糸継装置43は、糸継ノズル94と、クランプ部97と、糸道規制部材(糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98)と、カッタ92と、解撚パイプ82と、を主要な構成として備えている。
【0054】
糸継ノズル(加撚部)94は、糸継装置43の本体正面側に配置されている。この糸継ノズル94には、紡績糸10が通過可能な糸継孔90が形成されている。糸継孔90の内側には圧縮空気を噴出するための図略の噴出口が形成されている。糸継ノズル94は、噴出口から糸継孔90の内部に圧縮空気を噴出することにより、当該糸継孔90内部に旋回気流を発生させるように構成されている。
【0055】
糸継装置43は2本の解撚パイプ(解撚部)82を有している。解撚パイプ82は細長い円筒状に形成されるとともに、その長手方向を糸継装置43の前後方向に向けて互いに平行に配置される。2本の解撚パイプ82は糸走行方向に略平行な方向に並べて配置され、それぞれが一端を糸継装置43の正面に開口させている。また、それぞれの解撚パイプ82には、当該解撚パイプ82の内側に圧縮空気を噴出することで、背面側(糸道とは反対側)に向かう空気流を発生させる空気噴出孔が形成されている。
【0056】
なお、糸継ノズル94と解撚パイプ82は、何れも糸継装置43の本体に固定的に設けられている。従って、移動手段30が糸継装置43を移動させる際、前記糸継ノズル94及び解撚パイプ82は、糸継装置43の本体と一体的に移動する。
【0057】
糸道規制部材(糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98)は、糸継装置43の本体に対して回動可能に設けられたレバー状の部材である。ただし、図8から図10及び図12では、糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98の断面のみを示している。糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98は、紡績糸10に接触することにより、当該紡績糸10の糸道を規制することができるように配置されている。糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98によって糸道を規制している様子を、図8等に示す。また、糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98は、紡績糸10に接触しない位置まで回動することができるように構成されている。これにより、糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98によって規制されていた紡績糸10を開放した状態とすることができる。
【0058】
クランプ部97は、糸走行方向において糸継ノズル94の上下に1つずつ設けられている。このクランプ部97は開閉可能に構成されており、閉じた状態で紡績糸10を把持することができるように構成されている。カッタ92は、糸走行方向において糸継ノズル94の上下に1つずつ設けられている。カッタ92は、紡績糸10を切断することができるように構成されている。
【0059】
糸継装置43は、糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98の回動動作、クランプ部97の開閉動作、及び前記カッタ92による切断動作を行わせるための図略のカム機構を備えている。また糸継装置43は、前記カム機構の駆動源である電動モータ60を有している。この電動モータ60の動作を適宜制御することにより、紡績糸10の把持、切断、糸道の規制などを適切なタイミングで行うことができる。電動モータ60の動作は、前記台車制御部によって制御されている。図2等に示すように、電動モータ60は、糸継装置43の本体の近傍に配置されており、当該糸継装置43の本体に対して固定されている。従って、移動手段30が糸継装置43を移動させる際、前記電動モータ60と、前記カム機構と、このカム機構によって駆動される部材(糸寄せレバー96、糸押さえレバー98、クランプ部97、及びカッタ92)は、一体的に移動する。
【0060】
糸継装置43のすぐ下流側には、糸継装置43で糸継ぎされた紡績糸10の品質を測定する継目モニタ47が配置されている。本実施形態において、継目モニタ47は、静電容量式のセンサによって、糸継装置43によって形成された継ぎ目の太さを監視するように構成されている。もっとも、継目モニタ47の構成はこれに限らず、例えば光透過式のセンサによって継ぎ目の太さを監視するように構成しても良い。継目モニタ47によって検出された情報は、前記台車制御部に送信される。なお、この継目モニタ47は、前記支持ブラケット36に固定されている。従って、移動手段30が糸継装置43を移動させる際、継目モニタ47は、糸継装置43と同時に移動する。
【0061】
続いて逆転駆動機構49について、図2及び図13を参照して説明する。図2に示すように、逆転駆動機構49は、第1支持アーム61及び第2支持アーム62と、逆回転ローラ(接触ローラ)63と、リンクロッド64と、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66と、を備えている。更に、逆転駆動機構49は、図13に示すように、逆回転ローラ63の駆動源である逆回転ローラ駆動モータ67を備えている。
【0062】
前記第1支持アーム61の一端側は、糸継台車3の筐体本体に対して回転可能に取り付けられている。また、第1支持アーム61の他端側には、前記第2支持アーム62が回動可能に取り付けられている。第2支持アーム62の先端には、前記逆回転ローラ63が回転可能に設けられている。リンクロッド64の基端は、糸継台車3の筐体に対して回動可能に設けられている。このリンクロッド64の先端は、第2支持アーム62に連結されている。また、このリンクロッド64には逆回転ローラ進退用エアシリンダ66が取り付けられており、当該逆回転ローラ進退用エアシリンダ66の進退によってリンクロッド64を回動させることができるようになっている。
【0063】
以上のように、第1支持アーム61、第2支持アーム62、及びリンクロッド64によってリンク機構が構成されている。当該リンク機構に接続された前記逆回転ローラ進退用エアシリンダ66を伸縮制御することによって、第2支持アーム62の先端の逆回転ローラ63を進退させることができるように構成されている。これにより、逆回転ローラ63を、パッケージ45に接触しない「退避位置」(例えば図2に示す位置)と、パッケージ45に接触する「接触位置」(例えば図5に示す位置)と、の間で移動させることができる。従って、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66は、ローラ移動部であると言える。なお、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66の動作は、前記台車制御部によって制御されている。
【0064】
図13に示すように、第1支持アーム61の回動支点には、前記逆回転ローラ駆動モータ67の駆動力が入力されている。この逆回転ローラ駆動モータ67の駆動力は、第1支持アーム61の内部に設けられた第1伝動ベルト68を介して、第2支持アーム62の回動支点に配置された中間プーリ69に入力される。当該中間プーリ69に入力された駆動力は、更に、第2支持アーム62の内部に設けられた第2伝動ベルト70を介して、駆動入力プーリ50に入力される。駆動入力プーリ50と、逆回転ローラ63との間には、クラッチ51が設けられている。以上の構成により、クラッチ51を接続状態とすることで、逆回転ローラ駆動モータ67の駆動力により逆回転ローラ63を回転駆動することができる。また、クラッチ51を切断することにより、逆回転ローラ63と逆回転ローラ駆動モータ67とを切り離し、逆回転ローラ63を自由に回転させることができる。なお、このクラッチ51の動作は、前記台車制御部によって制御されている。
【0065】
逆転駆動機構49は、逆回転ローラ63の回転速度を検出するロータリエンコーダ機構52を備えている。ロータリエンコーダ機構52は、逆回転ローラ63の周方向に沿って等間隔で配置された複数の磁石53と、当該磁石53を検出してパルス信号を出力するホールセンサ54と、から構成されている。前記複数の磁石53は、逆回転ローラ63と一体的に回転する。一方、ホールセンサ54は第2支持アーム62に取り付けられている。この構成で、逆回転ローラ63の回転に応じて、ホールセンサ54からパルス信号が出力される。ロータリエンコーダ機構52の検出結果(ホールセンサ54が出力するパルス信号)は、前記台車制御部に出力される。
【0066】
次に、糸継台車3による糸継作業について説明する。この糸継作業は、ある紡績ユニット2において、紡績装置9とパッケージ45との間の紡績糸10が何らかの理由により分断状態となったときに行われる。
【0067】
ある紡績ユニット2において、例えば図4のように紡績装置9とパッケージ45との間の紡績糸10が分断状態になると、当該紡績ユニット2のユニットコントローラは、クレードルアーム71を揺動駆動して、巻取ドラム72からパッケージ45を離間させるように制御を行うとともに、巻取装置13に備えられた図示しないブレーキ機構を作動させる。これにより、パッケージ45は回転を停止する。
【0068】
続いて、前記ユニットコントローラは、糸継台車3に対して制御信号を送信する。制御信号を受信した糸継台車3は、糸継台車走行レール41上を前記紡績ユニット2まで走行して停止する。糸継台車3が紡績ユニット2の間を走行する際には、移動手段30は、糸継装置43を退避位置まで退避させておく。
【0069】
糸継台車3が目的の紡績ユニット2で停止すると、台車制御部は、図5に示すように、サクションパイプ44及びサクションマウス46をそれぞれ回転させ、紡績装置9側の糸端とパッケージ45側の糸端を吸引して捕捉する。
【0070】
またこのとき、台車制御部は、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66を制御することにより、逆回転ローラ63を接触位置まで進出させて、当該逆回転ローラ63をパッケージ45に接触させる。更に、台車制御部は、前記クラッチ51を接続状態にするとともに、前記逆回転ローラ駆動モータ67によって逆回転ローラ63を巻取ドラム72とは反対方向に回転駆動する。これにより、パッケージ45は、巻取方向とは逆方向(以下、解舒方向)に回転駆動される。この状態で、パッケージ45表面の紡績糸10をサクションマウス46によって吸引することにより、当該紡績糸10がパッケージ45から引き出され、サクションマウス46に捕捉される。
【0071】
続いて、台車制御部は、紡績糸10を捕捉した状態のサクションパイプ44及びサクションマウス46を反対方向に回転させることで、前記捕捉した紡績糸10を、糸継装置43の正面側に対面する位置まで案内する(図6の状態)。サクションパイプ44及びサクションマウス46による紡績糸10の案内が終了すると、台車制御部は、逆回転ローラ駆動モータ67の回転を停止させる。更に、台車制御部は、クラッチ51を切断して、逆回転ローラ63を逆回転ローラ駆動モータ67から切り離す。これにより、逆回転ローラ63の回転を停止し、パッケージ45が静止する。なお、本実施形態において、台車制御部は、逆回転ローラ63によるパッケージ45の逆回転が終了した後も、逆回転ローラ63を退避させず、当該逆回転ローラ63がパッケージ45の外周に接触した状態を保つように、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66を制御する。
【0072】
続いて、移動手段30は、エアシリンダ38を伸ばして、糸継装置43を糸道に近づける方向に移動させ、糸継位置まで進出させる。糸継位置まで糸継装置43が進出することにより、サクションパイプ44が捕捉している紡績装置9側の紡績糸10と、サクションマウス46が捕捉しているパッケージ45側の紡績糸10が、糸継装置43に導入される(図7の状態)。また、図7等に示すように、移動手段30が糸継装置43を糸継位置まで進出させたときに、紡績糸10が継目モニタ47に導入されるように、当該継目モニタ47が配置されている。従って、糸継装置43を糸継位置まで進出させることにより、継目モニタ47による紡績糸10の検査が可能になる。
【0073】
糸継位置まで進出した糸継装置43は、糸寄せレバー96を回動させて紡績糸10に接触させることにより、糸継ノズル94の糸継孔90に紡績糸10が導入されるように糸道を規制する(図8の状態)。糸継装置43は、この状態でクランプ部97を閉じることにより、当該クランプ部97によって紡績糸10を把持する。
【0074】
続いて台車制御部は、解撚パイプ82内に圧縮空気の噴出を開始させる。これにより、解撚パイプ82内には、糸継装置43の背面側(図8の図面右側)に向かう空気流が発生するとともに、当該解撚パイプ82の正面側(図8の図面左側)の開口部には吸引空気流が発生する。これと前後して、台車制御部は、カッタ92を動作させて、サクションパイプ44と糸継装置43の間の紡績糸10、及びサクションマウス46と糸継装置43の間の紡績糸10をそれぞれ切断させる。前記切断によって形成された糸端は、それぞれ解撚パイプ82によって吸引され、当該解撚パイプ82の内部に引き込まれる。そして、引き込まれた糸端は、解撚パイプ82内の空気流の作用を受けて繊維の撚りが解かれ、解撚される(図9)。
【0075】
糸端の解撚が終了すると、台車制御部は、解撚パイプ82内部への圧縮空気の噴出を終了させる。更に、台車制御部は、糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98によって紡績糸10糸道を更に屈曲させることにより、解撚された糸端を解撚パイプ82から引きずり出す。解撚パイプ82から引き出された糸端は、糸継ノズル94の糸継孔90内で、互いに重ね合わされた状態でセットされる(図10)。この状態で糸継孔90内に圧縮空気を噴出させることで、当該糸継孔90内に旋回流を発生させ、繊維に撚りを加える。これにより、紡績装置9側の紡績糸10の糸端と、パッケージ45側の紡績糸10の糸端と、が撚り合わされて結合され、継ぎ目が形成される。
【0076】
継ぎ目が形成されると、台車制御部は、糸糸継孔90への空気の噴出を停止させる。更に、台車制御部は、クランプ部97を開いて、把持されていた紡績糸10を開放させるとともに、糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98による糸道の規制を解除させる。これと前後して、紡績ユニット2のユニットコントローラは、クレードルアーム71を揺動させ、パッケージ45の外周面を、回転する巻取ドラム72に接触させる(図11の状態)。
【0077】
このとき、パッケージ45は巻取ドラム72に向けて移動することにとになるが、糸継台車3の逆転駆動機構49は、移動するパッケージ45に逆回転ローラ63を追従させ、当該逆回転ローラ63をパッケージ45に接触させた状態を維持できるように構成されている。
【0078】
以上の構成で、巻取ドラム72に接触したパッケージ45の回転が再開し、紡績糸10の巻き取りが再開される。また、パッケージ45に接触している逆回転ローラ63が、パッケージ45の回転によって従動回転する。
【0079】
このとき、前述のロータリエンコーダ機構52から、逆回転ローラ63の回転に応じたパルス信号が、台車制御部に入力される。台車制御部は、前記パルス信号に基づいて、逆回転ローラ63の回転速度を求める。
【0080】
続いて台車制御部は、ロータリエンコーダ機構52からのパルス信号に基づいて求めた上記逆回転ローラ63の回転速度から、更にパッケージ45の回転速度を求める。即ち、逆回転ローラ63は、パッケージ45によって従動回転されているものであるから、当該逆回転ローラ63の回転速度に基づいて、パッケージ45の回転速度を精度良く求めることができる。このように、ロータリエンコーダ機構52の検出結果に基づいてパッケージ45の回転速度を求めることができるので、当該ロータリエンコーダ機構52は、パッケージ回転速度検出部であると言うこともできる。なお、台車制御部が求めるパッケージ45の「回転速度」は、パッケージ45の角速度、パッケージ45の周速、パッケージ45の単位時間あたりの回転数など、当該パッケージ45の回転の速さを示す情報であれば良く、特定の形式に限定されるものではない。本実施形態では、逆回転ローラ63は、パッケージ45の外周に接触して回転しているので、当該逆回転ローラ63の回転速度に基づいて、パッケージ45の周速を容易に得ることができる。そこで、本実施形態の台車制御部は、パッケージ45の回転速度として、当該パッケージ45の周速を取得するように構成されている。
【0081】
紡績糸10の巻き取りを再開すると、図12に示すように、糸継装置43で形成された継ぎ目99が継目モニタ47を通過する。このとき、当該継ぎ目99が継目モニタ47によって検査される。台車制御部は、継目モニタ47による検査結果に基づいて、継ぎ目99の品質を判断する。従って、台車制御部は判断部であるということができる。例えば、継ぎ目99が所定の太さや長さなどの寸法条件を満たさない不良継ぎ目であった場合、糸継台車3は、当該不良継ぎ目を図略のカッタにより切断除去するとともに、糸継装置43による糸継ぎをやり直す。
【0082】
ところで、台車制御部において、例えば継ぎ目99の長さを判定しようとした場合、当該継ぎ目99が継目モニタ47を通過するのに要した時間と、当該継ぎ目99が継目モニタ47を通過したときの速度(即ち、紡績糸10の走行速度)の情報が必要となる。そこで台車制御部は、上記のようにして求めたパッケージ45の周速に基づいて、紡績糸10の走行速度を算出するように構成されている。即ち、紡績糸10はパッケージ45の外周に巻き取られることで走行するので、パッケージ45の周速に基づいて、紡績糸10の走行速度(糸速度)を容易に算出することができる。
【0083】
台車制御部は、上記のようにして求めた紡績糸10の走行速度と、継目モニタ47による検査結果に基づいて、継ぎ目99の品質を判断する。このように、実際に測定したパッケージ45の回転速度に基づいて取得した紡績糸10の走行速度によって継ぎ目99の品質を判断するので、当該継ぎ目99の品質を精度良く判定することができる。
【0084】
なお、パッケージ45は巻取ドラム72にも接触して回転しているので、当該巻取ドラム72の回転速度に基づいてパッケージ45の回転速度を取得する構成も考えられる。しかし本実施形態の精紡機1は、巻取ドラム72が複数の紡績ユニット2で共通の駆動源で駆動されており、常に一定の回転速度で回転駆動される構成である。停止状態にあるパッケージ45を、一定速度で回転を続けている巻取ドラム72に接触させると、パッケージ45と巻取ドラム72との間でスリップが発生する。従って、巻き取り再開直後のパッケージ45の回転速度は、巻取ドラム72の回転速度からは求めることができない。そこで上記のように、巻取ドラム72とは別のローラ(逆回転ローラ63)の回転速度に基づいてパッケージ45の回転速度を求めるように構成したものである。これにより、巻取ドラム72が複数の紡績ユニット2で共通駆動される精紡機1であっても、各パッケージ45の回転速度を正確に求めることができる。
【0085】
そして、継目モニタ47による継ぎ目99の検査が終了すると、移動手段30は、糸継装置43を退避位置まで移動させる。これと前後して、台車制御部は、逆回転ローラ63をパッケージ45から離間させ、退避位置まで移動させるように、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66を制御する。これにより、糸継台車3が走行可能となり、他の紡績ユニット2まで走行することができる。
【0086】
以上で説明したように、本実施形態の精紡機1は、巻取装置13と、紡績装置9と、ロータリエンコーダ機構52と、糸継装置43と、継目モニタ47と、台車制御部と、を備えている。巻取装置13は、パッケージ45に紡績糸10を巻き取る。紡績装置9は、巻取装置13に紡績糸10を供給する。ロータリエンコーダ機構52は、パッケージ45の回転速度を検出するためのものである。糸継装置43は、紡績装置9とパッケージ45との間の紡績糸10を糸継ぎして継ぎ目99を形成する。継目モニタ47は、紡績糸10の走行方向で糸継装置43の下流側に配置され、継ぎ目99をモニタする。台車制御部は、ロータリエンコーダ機構52の検出結果に基づいて取得した紡績糸10の走行速度と、継目モニタ47によるモニタ結果と、に基づいて、糸継装置43が形成した継ぎ目99が正常であるか否かを判断する。
【0087】
このように、パッケージ45の回転速度の実測値に基づいて、巻取再開時の糸速度を精度良く取得することができる。そして、このようにして取得した糸速度に基づいて継ぎ目99の品質を判断することにより、継ぎ目99の品質を正確に判定することができる。
【0088】
本実施形態の精紡機1は、パッケージ45に接触して回転する逆回転ローラ63を備えている。ロータリエンコーダ機構52は、逆回転ローラ63の回転速度を検出する。
【0089】
即ち、パッケージ45に接触して回転する逆回転ローラ63の回転速度に基づいて、前記パッケージ45の回転速度を精度良く求めることができる。
【0090】
本実施形態の精紡機1は、紡績装置9及び巻取装置13を備えた紡績ユニット2を複数備えている。紡績ユニット2の巻取装置13は、紡績糸10を巻き取る方向に前記パッケージ45を回転させる巻取ドラム72を備えている。精紡機1は、紡績ユニット2が備える巻取ドラム72を、複数の紡績ユニット2で共通して駆動する駆動源を、原動機ボックス5内に備えている。逆回転ローラ63は、巻取ドラム72とは別部材として設けられている。
【0091】
このように、複数の紡績ユニット2で共通して駆動される巻取ドラム72によってパッケージ45を回転させることにより、複数の紡績ユニット2で一斉に紡績糸10を巻き取ることができる。この構成の場合、各紡績ユニット2で共通して巻取ドラム72を駆動するので、巻取ドラム72の回転速度からは個々のパッケージ45の回転速度を検出することができない。そこで、上記のように巻取ドラム72とは別の逆回転ローラ63の回転速度に基づいて、パッケージ45の回転速度を検出することにより、継ぎ目99の品質の判断のために、各紡績ユニット2で個別にパッケージ45の回転速度の実測値を得ることができる。
【0092】
本実施形態の精紡機1において、逆回転ローラ63は、紡績糸10が解舒される方向にパッケージ45を回転させる。
【0093】
逆回転ローラ63が、パッケージ45の回転速度を検出する機能と、パッケージ45を逆回転させる機能と、の2つの機能を兼ねることにより、精紡機1の構成をシンプルにすることができる。
【0094】
本実施形態の精紡機1は、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66と、台車制御部と、を備えている。逆回転ローラ進退用エアシリンダ66は、逆回転ローラ63を、パッケージ45に接触した位置とパッケージ45から離間した位置との間で移動させる。台車制御部は、逆回転ローラ63の回転と、糸継装置43による継ぎ目の形成と、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66による逆回転ローラ63の移動と、を制御している。台車制御部は、紡績装置9とパッケージ45との間の紡績糸10が分断状態となったときに、逆回転ローラ63がパッケージ45に接触するように逆回転ローラ進退用エアシリンダ66を制御するとともに、紡績糸10が解舒される方向にパッケージ45を回転させるように前記逆回転ローラ63の回転を制御する。台車制御部は、逆回転ローラ63によって回転されるパッケージ45から解舒された紡績糸10と、紡績装置9側の紡績糸10と、を糸継ぎして継ぎ目99を形成するように糸継装置43を制御する。台車制御部は、糸継ぎの終了後、少なくとも継ぎ目99が継目モニタ47を通過するまでの間は、前記逆回転ローラ63がパッケージ45に接触した状態を保つように、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66を制御する。
【0095】
このように、糸継ぎの終了後、逆回転ローラ63がパッケージ45に接触した状態を保つことにより、紡績糸10の継ぎ目99が継目モニタ47を通過するときのパッケージ45の回転速度を、逆回転ローラ63の回転によって取得することができる。これにより、継ぎ目99の品質を精度良く判断することができる。
【0096】
本実施形態の精紡機1は、逆回転ローラ駆動モータ67と、逆回転ローラ63と逆回転ローラ駆動モータ67との間の駆動の伝達を断接制御するクラッチ51と、を備える。クラッチ51は、継ぎ目99が継目モニタ47を通過するときは、駆動の伝達を切断するように制御する。
【0097】
これにより、継ぎ目99が継目モニタ47を通過するときに、逆回転ローラ63を抵抗なく回転させることができるので、当該逆回転ローラ63によってパッケージ45の回転速度を精度良く取得することができる。
【0098】
本実施形態の精紡機1は、糸継装置43と、継目モニタ47と、逆回転ローラ63と、を有する糸継台車3を備えている。糸継台車3は、複数の紡績ユニット2間を走行可能であるとともに、紡績糸10が分断状態となった紡績ユニット2の近傍に停止して、紡績ユニット2に対して糸継装置43による糸継ぎを行う。
【0099】
このように、糸継ぎに必要な構成を搭載して走行する糸継台車3を設けたことにより、これらの構成を紡績ユニット2それぞれに設ける構成と比べて、精紡機1全体の構成を簡素化して、コストダウンを図ることができる。
【0100】
本実施形態の精紡機1において、紡績装置9は、旋回空気流によって繊維束8に撚りを加えて紡績糸10を生成する空気紡績装置である。
【0101】
即ち、空気紡績装置は高速紡績が可能であるため、巻取装置13における紡績糸10の巻き取り速度も速い。このため、巻き取りを再開したときの紡績糸10の加速も急激であり、紡績糸10の速度を経験式などにより予測することは困難である。そこでこのような空気紡績装置を備えた精紡機1において、パッケージ45の回転速度の実測値に基づいて紡績糸10の速度を検出するという本実施形態の構成を採用することにより、紡績糸10の速度を精度良く取得することができる。
【0102】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0103】
上記実施形態では、逆回転ローラ63によってパッケージ45の回転速度を検出する構成としたが、パッケージ45に接触させて回転することにより当該パッケージ45の回転速度を検出するための接触ローラを、逆回転ローラ63とは別に設けても良い。
【0104】
継ぎ目99の品質の判断は糸継台車3の台車制御部によって行うものとしたが、これに限らず、例えば紡績ユニット2のユニットコントローラや、精紡機1全体を制御する中央制御部で継ぎ目99の品質を判断するように構成しても良い。
【0105】
上記実施形態では、糸継台車3が糸継装置43等を備える構成としたが、これに代えて、以下のように構成しても良い。即ち、紡績ユニット2は、巻取装置13と、紡績装置9と、ロータリエンコーダ機構52と、糸継装置43と、継目モニタ47と、ユニットコントローラと、を備える。巻取装置13は、パッケージ45に紡績糸10を巻き取る。紡績装置9は、巻取装置13に紡績糸10を供給する。ロータリエンコーダ機構52は、パッケージ45の回転速度を検出するためのものである。糸継装置43は、紡績装置9とパッケージ45との間の紡績糸10を糸継ぎして継ぎ目99を形成する。継目モニタ47は、紡績糸10の走行方向で糸継装置43の下流側に配置され、継ぎ目99をモニタする。ユニットコントローラは、ロータリエンコーダ機構52の検出結果に基づいて取得した紡績糸10の走行速度と、継目モニタ47によるモニタ結果と、に基づいて、糸継装置43が形成した継ぎ目99が正常であるか否かを判断する。
【0106】
このように、上記実施形態で糸継台車3が備えていた各構成を、各紡績ユニット2が備えるように構成しても良い。
【0107】
上記実施形態では、紡績糸10の走行方向が高さ方向の上から下に向かっているが、紡績糸10の走行方向は特に限定されず、例えば下から上に向かって紡績糸10が走行する構成にも本願発明を適用することができる。
【0108】
また図2等では、紡績糸10の糸道が略上下方向となっているが、これに限定されない。例えば、巻取装置13が図2で示された位置よりも紡績ユニット2の奥側に配置されている場合、糸道は、正面側から奥側へ傾斜して形成されることになる。
【0109】
図1等では、精紡機1は糸継台車3を1台備えているが、紡績ユニット2の数に応じて糸継台車3を複数備えることも可能である。
【0110】
逆回転ローラ63を進退させるためのローラ移動部の構成は、エアシリンダ(逆回転ローラ進退用エアシリンダ66)に限らず、例えばモータなどの他のアクチュエータであっても良い。
【0111】
クラッチ51を切断するタイミングは、逆回転ローラ63によるパッケージ45の逆回転が終了したときに限らず、遅くとも継ぎ目99が継目モニタ47を通過する前にクラッチ51が切断されていれば良い。ただし、逆回転ローラ駆動モータ67から逆回転ローラ63までの駆動伝達経路が接続されていても、当該逆回転ローラ63の回転の抵抗にならないようであれば、継ぎ目99が継目モニタ47を通過するときにクラッチ51が接続されたままであっても良い。もっとも、この場合はクラッチ51を省略することができる。
【0112】
逆回転ローラ63は、パッケージ45の逆回転が終了した時点で当該パッケージ45からいったん離間し、その後、パッケージ45の回転を再開させる直前に、再びパッケージ45に接触させるようにしても良い。要は、継ぎ目99が継目モニタ47を通過するときに逆回転ローラ63がパッケージ45に接触していれば、当該逆回転ローラ63の回転速度に基づいて、継ぎ目99が継目モニタ47を通過するときの糸速度を求めることができる。
【0113】
上記実施形態では、継ぎ目99の検査が終了したあとで(継ぎ目99が継目モニタ47を通過したあとで)、当該逆回転ローラ63をパッケージ45から離間させるものとした。継ぎ目99が継目モニタ47を通過したか否かは、継目モニタ47の検出結果に基づいて知ることができる。従って、継目モニタ47の検出結果に基づいて、逆回転ローラ63をパッケージ45から離間させるように構成すれば良い。しかしこれに限らず、巻取装置13による紡績糸10の巻き取り再開後、継目モニタ47を継ぎ目99が通過するのに十分な時間が経過したことにより、逆回転ローラ63をパッケージ45から離間させるように構成しても良い。
【0114】
逆回転ローラ63の回転速度を検出する構成は、ロータリエンコーダ機構52に限らず、適宜の構成を利用することができる。
【0115】
上記実施形態では、巻取ドラム72を、複数の紡績ユニット2で共通して駆動する構成とした。しかしこれに限定される訳ではなく、巻取ドラム72を、それぞれの紡績ユニット2で個別に駆動する構成としても良い。なお、この場合、巻取ドラム72は、各紡績ユニット2で異なる回転速度で回転させることができる。このような構成においては、パッケージ45との間にスリップが生じないように巻取ドラム72を回転させることも可能である。従って、この場合は、巻取ドラム72の回転速度に基づいてパッケージ45の回転速度を求めるように構成しても良い。この構成の場合、巻取ドラム72を接触ローラとして把握することができる。また、この場合は、巻取ドラム72を逆方向に回転させることにより、パッケージ45を逆回転させるように制御することもできる。この場合は、逆回転ローラ63を省略しても良い。
【0116】
上記実施形態では、糸貯留装置12の糸貯留ローラ14を回転させることにより、紡績装置9から紡績糸10を引き出す構成とした。これに代えて、例えば特開2005−220484号公報に記載されているように、デリベリローラとニップローラとによって紡績糸を挟み込んで回転することにより、紡績装置から紡績糸を引き出す糸送り装置を設けても良い。
【0117】
糸継装置43を糸道に対して移動可能とする構成は、省略することもできる。
【0118】
紡績装置は、空気紡績式の紡績装置に限らず、他の形式の紡績装置を備えた紡績機にも本願発明の構成を適用することができる。また、本発明の構成は、紡績機に限らず、自動ワインダなどの他の種類の糸巻取機にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0119】
1 精紡機(糸巻取機)
2 紡績ユニット(糸巻取ユニット)
9 紡績装置(給糸部)
10 紡績糸
13 巻取装置(巻取部)
43 糸継装置
47 継目モニタ(継目監視装置)
52 ロータリエンコーダ機構(パッケージ回転速度検出部)
63 逆回転ローラ(接触ローラ)
72 巻取ドラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸継装置で形成された糸の継ぎ目を検査するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
糸をボビンに巻き取ってパッケージを形成する糸巻取機が知られている。この種の糸巻取機には、例えば特許文献1が開示する紡績機がある。特許文献1に記載されているように、この紡績機は、繊維束に撚りを加えて紡績糸を生成する紡績部と、紡績部が生成した紡績糸をボビンに巻き取ってパッケージを形成する巻取部を備えている。
【0003】
また特許文献1の紡績機は、紡績部とパッケージの間の紡績糸が分断状態となったときに、紡績部側の糸とパッケージ側の糸を接合(糸継ぎ)する糸継台車を備えている。この糸継台車は、糸継装置を備えている。糸継装置は、紡績部側の糸端とパッケージ側の糸端を接合して、継ぎ目を形成する。また、糸継台車は、紡績部側の糸とパッケージ側の糸を捕捉して糸継装置まで案内する糸端捕捉手段と、パッケージを糸解舒方向に回転させる逆転手段とを備えている。
【0004】
近年、糸継装置において形成される継ぎ目の良否が厳しく問われるようになってきている。即ち、糸端同士の接合が不十分な不良継ぎ目は糸強度が弱いため、このような不良継ぎ目がパッケージに混入することは極力避けなければならない。そこで、万が一糸継装置で不良継ぎ目が形成されてしまったとしても、これがパッケージに巻き取られる前に検出できるように、糸の継ぎ目の品質をリアルタイムで監視する継目監視装置が提案されている。例えば特許文献2は、糸継装置(撚り継ぎ装置)で形成された糸の継ぎ目(撚り継ぎ結合部)の引張り強さ及び糸寸法(糸の直径)をチェックするための検査装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−284812号公報
【特許文献2】特開昭55−101561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
糸継装置で継ぎ目が形成された糸は、巻取部による巻取動作によって走行する。これにより、前記継ぎ目が継目監視装置を通過し、このときに継目監視装置において継ぎ目の検査が行われる。従って、継目監視装置においては、走行している糸の継ぎ目を検査することになる。このため、継ぎ目の品質を正確に判定するためには、糸の走行速度に関する情報が必要となる。
【0007】
ところで、糸継装置による糸継ぎは、巻取部による糸の巻き取りを停止し、糸の走行を中断した状態で行う。そして、継ぎ目が形成されると、巻取部による糸の巻き取りを再開する。従って、糸継装置で形成された継ぎ目が継目監視装置を通過するときは、糸の巻取を再開した直後であり、当該糸の走行速度が時々刻々と変化している最中である。このとき、糸の走行速度がどのように変化していくかは、パッケージの質量(パッケージの慣性)や、糸のワックスの有無など、様々な条件によって千差万別である。このため、糸の継ぎ目が継目監視装置を通過するときの当該糸の走行速度は、条件によって毎回異なる。
【0008】
従来は、パッケージの質量や糸のワックスの有無などの各種条件において、糸の継ぎ目が継目監視装置を通過するときの糸速度を特殊な測定器で測定する実験を予め行っておき、実際の糸の巻き取り時においては、前記実験により求めた経験式から糸速度を算出できるようにしていた。しかしながら、全ての条件において上記の経験式が当てはまるという保証はなく、常に正確な糸速度を得ることができているとは言いがたい。このため、継目監視装置における継ぎ目の検査精度も不十分であると考えられ、改善の余地があった。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、巻き取り開始直後の糸速度を正確に取得可能な糸巻取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、この糸巻取機は、巻取部と、給糸部と、パッケージ回転速度検出部と、糸継装置と、継目監視装置と、判断部と、を備える。前記巻取部は、パッケージに糸を巻き取る。前記給糸部は、前記巻取部に糸を供給する。前記パッケージ回転速度検出部は、前記パッケージの回転速度を検出するためのものである。前記糸継装置は、前記給糸部と前記パッケージとの間の前記糸を糸継ぎして継ぎ目を形成する。前記継目監視装置は、前記糸の走行方向で前記糸継装置の下流側に配置され、前記継ぎ目をモニタする。前記判断部は、前記パッケージ回転速度検出部の検出結果に基づいて取得した前記糸の走行速度と、前記継目監視装置によるモニタ結果と、に基づいて、前記糸継装置が形成した継ぎ目が正常であるか否かを判断する。
【0012】
このように、パッケージの回転速度の実測値に基づいて、巻取再開時の糸速度を精度良く取得することができる。そして、このようにして取得した糸速度に基づいて継ぎ目の品質を判断することにより、継ぎ目の品質を正確に判定することができる。
【0013】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、前記パッケージに接触して回転する接触ローラを備える。前記パッケージ回転速度検出部は、前記接触ローラの回転速度を検出する。
【0014】
即ち、パッケージに接触して回転する接触ローラの回転速度に基づいて、前記パッケージの回転速度を精度良く求めることができる。
【0015】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、前記給糸部及び前記巻取部を備えた糸巻取ユニットを複数備える。前記糸巻取ユニットの前記巻取部は、前記糸を巻き取る方向に前記パッケージを回転させる巻取ドラムを備える。前記糸巻取機は、前記糸巻取ユニットが備える前記巻取ドラムを、前記複数の糸巻取ユニットで共通して駆動する駆動源を更に備える。前記接触ローラは、前記巻取ドラムとは別部材として設けられている。
【0016】
このように、複数の糸巻取ユニットで共通して駆動される巻取ドラムによってパッケージを回転させることにより、複数の糸巻取ユニットで一斉に糸を巻き取ることができる。この構成の場合、各糸巻取ユニットで共通して巻取ドラムを駆動するので、当該巻取ドラムの回転速度からは個々のパッケージの回転速度を検出することができない。そこで、上記のように巻取ドラムとは別に設けた接触ローラの回転速度に基づいて、パッケージの回転速度を検出することにより、継ぎ目品質の判断のために、各糸巻取ユニットで個別にパッケージの回転速度の実測値を得ることができる。
【0017】
上記の糸巻取機において、前記接触ローラは、前記糸が解舒される方向に前記パッケージを回転させる逆回転ローラであることが好ましい。
【0018】
接触ローラが、パッケージの回転速度を検出する機能と、パッケージを逆回転させる機能と、の2つの機能を兼ねることにより、糸巻取機の構成をシンプルにすることができる。
【0019】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、ローラ移動部と、制御部と、を備える。前記ローラ移動部は、前記接触ローラを、前記パッケージに接触した位置と前記パッケージから離間した位置との間で移動させる。前記制御部は、前記接触ローラの回転と、前記糸継装置による継ぎ目の形成と、前記ローラ移動部による前記接触ローラの移動と、を少なくとも制御する。前記制御部は、前記給糸部と前記パッケージとの間の前記糸が分断状態となったときに、前記接触ローラが前記パッケージに接触するように前記ローラ移動部を制御するとともに、前記糸が解舒される方向に前記パッケージを回転させるように前記接触ローラの回転を制御する。前記制御部は、前記接触ローラによって回転される前記パッケージから解舒された前記糸と、前記給糸部側の糸と、を糸継ぎして継ぎ目を形成するように前記糸継装置を制御する。前記制御部は、前記糸継ぎの終了後、少なくとも前記継ぎ目が前記継目監視装置を通過するまでの間は、前記接触ローラが前記パッケージに接触した状態を保つように前記ローラ移動部を制御する。
【0020】
このように、糸継ぎの終了後、接触ローラがパッケージに接触した状態を保つことにより、糸の継ぎ目が継目監視装置を通過するときのパッケージの回転速度を、接触ローラの回転によって取得することができる。これにより、継ぎ目の品質を精度良く判断することができる。
【0021】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、前記接触ローラの回転駆動源と、前記接触ローラと前記回転駆動源との間の駆動の伝達を断接制御するクラッチと、を備える。前記クラッチは、少なくとも、前記継ぎ目が前記継目監視装置を通過するときは、前記駆動の伝達を切断するように制御する。
【0022】
これにより、継ぎ目が継目監視装置を通過するときに、接触ローラを抵抗なく回転させることができるので、当該接触ローラによってパッケージの回転速度を精度良く取得することができる。
【0023】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、前記糸継装置と、前記継目監視装置と、前記接触ローラと、を有する糸継台車を備える。前記糸継台車は、複数の糸巻取ユニット間を走行可能であるとともに、前記糸が分断状態となった糸巻取ユニットの近傍に停止して、当該糸巻取ユニットに対して前記糸継装置による糸継ぎを行う。
【0024】
このように、糸継ぎに必要な構成を搭載して走行する糸継台車を設けたことにより、これらの構成を糸巻取ユニットそれぞれに設ける構成と比べて、糸巻取機全体の構成を簡素化して、コストダウンを図ることができる。
【0025】
上記の糸巻取機において、前記給糸部は、旋回空気流によって繊維束に撚りを加えて紡績糸を生成する空気紡績装置であることが好ましい。
【0026】
即ち、空気紡績装置は高速紡績が可能であるため、巻取部における糸の巻き取り速度も速い。このため、巻き取りを再開したときの糸の加速も急激であり、糸の速度を経験式などにより予測することは困難である。そこでこのような空気紡績装置を備えた糸巻取機において、パッケージの回転速度の実測値に基づいて糸の速度を検出するという本発明の構成を採用することにより、糸の速度を精度良く取得することができる。
【0027】
本発明の別の観点によれば、以下の構成の糸巻取ユニットが提供される。即ち、この糸巻取ユニットは、巻取部と、給糸部と、パッケージ回転速度検出部と、糸継装置と、継目監視装置と、判断部と、を備える。前記巻取部は、パッケージに糸を巻き取る。前記給糸部は、前記巻取部に糸を供給する。前記パッケージ回転速度検出部は、前記パッケージの回転速度を検出するためのものである。前記糸継装置は、前記給糸部と前記パッケージとの間の前記糸を糸継ぎして継ぎ目を形成する。前記継目監視装置は、前記糸の走行方向で前記糸継装置の下流側に配置され、前記継ぎ目をモニタする。前記判断部は、前記パッケージ回転速度検出部の検出結果に基づいて取得した前記糸の走行速度と、前記継目監視装置によるモニタ結果と、に基づいて、前記糸継装置が形成した継ぎ目が正常であるか否かを判断する。
【0028】
このように、パッケージの回転速度の実測値に基づいて、巻取再開時の糸速度を精度良く取得することができる。そして、このようにして取得した糸速度に基づいて継ぎ目の品質を判断することにより、継ぎ目の品質を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る精紡機の全体的な構成を示す正面図。
【図2】紡績ユニット及び糸継台車の側面図。
【図3】紡績装置の断面図。
【図4】紡績ユニットで糸切れが発生した様子を示す側面図。
【図5】糸継台車の糸捕捉部で紡績糸を吸引捕捉する様子を示す側面図。
【図6】糸継台車の糸捕捉部で紡績糸を案内した様子を示す側面図。
【図7】糸継装置を糸継位置まで進出させた様子を示す側面図。
【図8】クランプ部によって糸が把持されたときの糸継装置の側面断面図。
【図9】糸端が解撚される様子を示す糸継装置の側面断面図。
【図10】糸端同士が撚り合わされる様子を示す糸継装置の側面断面図。
【図11】糸継ぎの終了後、紡績糸の巻き取りを再開した直後の様子を示す側面図。
【図12】継目モニタを継ぎ目が通過する様子を示す糸継装置の側面断面図。
【図13】逆転駆動機構の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の一実施形態に係る糸巻取機としての精紡機について、図面を参照して説明する。図1に示す精紡機(紡績機)1は、並設された多数の紡績ユニット(糸巻取ユニット)2と、糸継台車3と、ブロアボックス80と、原動機ボックス5と、を備えている。
【0031】
ブロアボックス80内には、各紡績ユニット2に負圧を供給するための負圧源などが配置されている。また、原動機ボックス5内には、各紡績ユニット2に共通の駆動源が配置されている。
【0032】
図2に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって順に配置された、ドラフト装置7と、紡績装置(給糸部)9と、糸貯留装置12と、巻取装置(巻取部)13と、を主要な構成として備えている。各紡績ユニット2は、ドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績装置9で紡績して紡績糸10を生成し、この紡績糸10を巻取装置13でボビン48に巻き取る。紡績糸10が巻き取られたボビン48を、パッケージ45と称する。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、通常巻取時での繊維束8及び紡績糸10の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。また、通常巻取時とは、紡績装置9と巻取装置13との間の紡績糸10が連続状態にあり、かつ、パッケージ45が略一定の周速で回転駆動されて紡績糸10が略一定速で巻き取られている状態を言うものとする。
【0033】
ドラフト装置7は、精紡機1が備えるフレーム6の上端近傍に設けられている。このドラフト装置7は、上流側から順に、バックローラ16、サードローラ17、ゴム製のエプロンベルト18を装架したミドルローラ19、及びフロントローラ20の4つのドラフトローラを備える。各ドラフトローラは、所定の回転速度で回転駆動される。また、ドラフト装置7は、各ドラフトローラに対向するように配置された対向ローラを有している。ドラフト装置7は、繊維束8の原料であるスライバ15を、回転するドラフトローラと、これに対向する対向ローラとの間で挟み込んで搬送することにより、所定の幅となるまで引き伸ばして(ドラフトして)繊維束8とするように構成されている。
【0034】
フロントローラ20のすぐ下流側には、紡績装置9が配置されている。ドラフト装置7でドラフトされた繊維束8は、紡績装置9に供給される。紡績装置9は、ドラフト装置7から供給された繊維束8に撚りを加えて、紡績糸10を生成する。紡績装置9で生成された紡績糸10は、後述の巻取装置13で巻き取られる。従って、紡績装置9は、巻取装置13に紡績糸10を供給する給糸部であると言うことができる。
【0035】
本実施形態の精紡機1では、紡績装置9として、旋回気流を利用して繊維束8に撚りを与える空気式のものが採用されている。図3に示すように、紡績装置9は、ノズルブロック35と、中空ガイド軸体23と、繊維案内部22と、を主に備えている。
【0036】
ノズルブロック35と中空ガイド軸体23の間には、紡績室26が形成されている。ノズルブロック35には、紡績室26内に空気を噴出する空気噴出ノズル27が形成されている。繊維案内部22には、紡績室26内に繊維束8を導入する導入口21が形成されている。空気噴出ノズル27は、紡績室26内に空気を噴出して旋回気流を発生させることができるように構成されている。
【0037】
この構成で、ドラフト装置7から供給された繊維束8は、導入口21を有する繊維案内部22によって紡績室26内に案内される。紡績室26内において、繊維束8は、旋回気流によって中空ガイド軸体23の周囲を振り回されることにより、撚りが加えられて紡績糸10となる。撚りが加えられた紡績糸10は、中空ガイド軸体23の軸中心に形成された糸通路29を通って、下流側の糸出口(図略)から紡績装置9の外部に送出される。
【0038】
なお、前記導入口21には、その先端を紡績室26内に向けて配置された針状のガイドニードル22aが配置されている。導入口21から導入される繊維束8は、このガイドニードル22aに巻き掛かるようにして紡績室26内に案内される。これにより、紡績室26内に導入される繊維束8の状態を安定させることができる。また、このようにガイドニードル22aに巻き掛かるように繊維束8が案内されるので、紡績室26内で繊維に撚りが加えられても、繊維案内部22よりも上流側に撚りが伝播することが防止される。これにより、紡績装置9による加撚がドラフト装置7に影響を与えることを防止できる。ただし、ガイドニードル22aを省略して、繊維案内部22の下流側端部がガイドニードル22aの役割を果たすように構成しても良い。
【0039】
図2に示すように、紡績装置9の下流側には巻取装置13が配置されている。巻取装置13は、クレードルアーム71と、巻取ドラム72と、トラバース装置75と、を備えている。
【0040】
前記巻取ドラム72は、一方向に一定の回転速度で回転駆動されている。前記クレードルアーム71は、紡績糸10を巻回するためのボビン48を回転可能に支持することができる。また、このクレードルアーム71は、支軸73まわりに揺動可能に支持されている。クレードルアーム71は、前記ボビン48(又はこれに紡績糸10を巻いて形成されるパッケージ45)を支持した状態で支軸73まわりに揺動することにより、前記ボビン48(又はパッケージ45)の外周を、巻取ドラム72に対して接触又は離間させることができるように構成されている。前記ボビン48(又はパッケージ45)の外周を、回転駆動されている巻取ドラム72に接触させることにより、当該ボビン48(又はパッケージ45)を一方向に従動回転させて、当該ボビン48(又はパッケージ45)に紡績糸10を巻き取ることができる。以下の説明で、巻取ドラム72がパッケージ45を回転させる方向を、「巻取方向」と呼ぶ。なお、各紡績ユニット2の巻取装置13が備える巻取ドラム72は、複数の紡績ユニット2で共通の駆動源(図略)によって、一斉に回転駆動されるように構成されている。なお、この駆動源は、前記原動機ボックス5内に設けられている。これにより、複数の紡績ユニット2においてパッケージ45を一斉に同じ周速で回転させ、紡績糸10を一斉に巻き取ることができる。
【0041】
トラバース装置75は、紡績糸10に係合可能なトラバースガイド76を備えている。このトラバースガイド76は、図略の駆動手段によって、前記巻取ドラム72の軸方向と平行な方向に往復動されるように構成されている。なお、この駆動手段は、前記原動機ボックス5内に設けられている。この構成で、巻取ドラム72を回転駆動させながら、紡績糸10を係合させたトラバースガイド76を往復駆動することにより、紡績糸10を綾振り(トラバース)しつつパッケージ45に巻き取るようになっている。
【0042】
紡績装置9と巻取装置13との間には、糸貯留装置12が設けられている。糸貯留装置12は、図2に示すように、糸貯留ローラ14と、当該糸貯留ローラ14を回転駆動する電動モータ25と、を備えている。
【0043】
糸貯留ローラ14は、その外周面に一定量の紡績糸10を巻き付けて一時的に貯留することができるように構成されている。糸貯留ローラ14の外周面に紡績糸10を巻き付けた状態で当該糸貯留ローラ14を所定の回転速度で回転させることにより、紡績装置9から紡績糸10を所定の速度で引き出して下流側に搬送することができる。また、糸貯留装置12は、糸貯留ローラ14の外周に紡績糸10を一時的に貯留するように構成されていることから、紡績装置9と巻取装置13との間で一種のバッファとして機能する。これにより、紡績装置9における紡績速度と、巻取装置13における巻取速度と、が何らかの理由により一致しない場合の不具合(例えば紡績糸10のたるみなど)を解消することができる。
【0044】
紡績装置9と糸貯留装置12との間の位置には、糸品質測定器59が設けられている。紡績装置9で紡出された紡績糸10は、糸貯留装置12で巻き取られる前に前記糸品質測定器59を通過するようになっている。糸品質測定器59は、走行する紡績糸10の太さを図略の静電容量式センサによって監視するように構成されている。糸品質測定器59は、紡績糸10の糸欠点(紡績糸10の太さなどに異常がある箇所)を検出した場合に、糸欠点検出信号を図示しないユニットコントローラへ送信するように構成されている。なお、糸品質測定器59は静電容量式のセンサに限らず、例えば光透過式のセンサで紡績糸10の太さを監視する構成であっても良い。また、糸品質測定器59は、紡績糸10に含まれる異物を糸欠点として検出するように構成されていても良い。
【0045】
糸品質測定器59の近傍には、当該糸品質測定器59で紡績糸10の糸欠点が検出された際に、直ちに当該紡績糸10を切断するためのカッタ(図略)が配置されている。なお、紡績ユニット2は、このカッタの代わりに、紡績装置9への空気の供給を停止して、紡績糸10の生成を中断することにより当該紡績糸10を切断しても良い。
【0046】
図1に示すように、精紡機1のフレーム6には、紡績ユニット2が並ぶ方向に沿って、糸継台車走行レール41が配設されている。前記糸継台車3は、この糸継台車走行レール41の上を走行することができるように構成されている。これにより、糸継台車3は、複数の紡績ユニット2の間を走行することができる。
【0047】
糸継台車3は、図1及び図2に示すように、糸継装置43と、糸捕捉部(サクションパイプ44及びサクションマウス46)と、継目モニタ(継目監視装置)47と、逆転駆動機構49と、移動手段30と、を備えている。また、糸継台車3は、当該糸継台車3の各構成を制御するための図略の台車制御部を備えている。
【0048】
前記サクションパイプ44とサクションマウス46は、それぞれ軸を中心に上下方向に回動可能に構成されている。サクションパイプ44は、その先端に吸引空気流を発生させることにより、紡績装置9から送出される紡績糸10を吸い込んで吸引捕捉できるように構成されている(図5参照)。サクションマウス46は、その先端に吸引空気流を発生させることにより、巻取装置13に支持されたパッケージ45から紡績糸10を吸い込んで吸引捕捉できるように構成されている(図5参照)。また、サクションパイプ44とサクションマウス46は、前記紡績糸10を吸引捕捉した状態で回動することにより、当該紡績糸10を、糸継装置43の正面側(図6の左側)に対面する位置まで案内する(図6の状態)。なおサクションパイプ44及びサクションマウス46の動作は、前記台車制御部によって制御されている。
【0049】
糸継装置43は、サクションパイプ44によって案内された紡績装置9側の紡績糸10と、サクションマウス46によって案内されたパッケージ45側の紡績糸10と、を糸継ぎ(接合)することができるように構成されている。この糸継装置43は、旋回空気流によって糸端同士に撚りを加えることにより継ぎ目を形成するスプライサ装置として構成されている。ただし、糸継装置43の構成はこれに限らず、例えば機械式のノッタであっても良い。この糸継装置43による継ぎ目の形成は、前記台車制御部によって制御されている。なお、この糸継装置43は、糸継台車3が紡績ユニット2で停止したときに、紡績糸10の走行方向で巻取装置13と糸貯留装置12との間に位置している。
【0050】
移動手段30は、糸継装置43を、通常巻取時の糸道(紡績糸10の走行経路、図2では図面上下方向)に対して接近又は離間する方向に移動させることが可能に構成されている。糸継装置43は、通常巻取時の糸道に接近した位置(例えば図7に示す位置)において、糸継作業を行う。このときの糸継装置43の位置を、「糸継位置」と呼ぶ。また糸継装置43は、糸継作業を行わないときには、通常巻取時の糸道から離間した位置(例えば図2に示す位置)に退避しておく。このときの糸継装置43の位置を、「退避位置」と呼ぶ。
【0051】
移動手段30は、レール37と、エアシリンダ38と、を備えている。レール37は、糸継台車3の台車本体に設けられている。このレール37は直線状に細長く形成されており、その長手方向が、通常巻取時の糸道に対して略直交する方向(紡績ユニット2の前後方向、図2では図面左右方向)に沿って配設されている。一方、糸継装置43は、支持ブラケット36に取り付けられている。支持ブラケット36は、レール37によって支持されているとともに、当該レール37の長手方向に沿って移動可能に構成されている。従って、支持ブラケット36に取り付けられている糸継装置43は、通常巻取時の糸道に対して略直交する方向で、移動可能である。
【0052】
前記エアシリンダ38は、糸継装置43をレール37に沿って駆動するための移動駆動源である。エアシリンダ38の一端は、糸継台車3の台車本体に取り付けられ、他端は前記支持ブラケット36に取り付けられている。このエアシリンダ38を伸縮させることにより、糸継装置43を、レール37に沿った方向(通常巻取時の糸道に対して直交する方向)で直線移動させることができる。なお、上記エアシリンダ38の伸縮動作は、前記台車制御部によって制御されている。
【0053】
次に、糸継装置43の構成を、図10を参照して詳細に説明する。図10に示すように、糸継装置43は、糸継ノズル94と、クランプ部97と、糸道規制部材(糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98)と、カッタ92と、解撚パイプ82と、を主要な構成として備えている。
【0054】
糸継ノズル(加撚部)94は、糸継装置43の本体正面側に配置されている。この糸継ノズル94には、紡績糸10が通過可能な糸継孔90が形成されている。糸継孔90の内側には圧縮空気を噴出するための図略の噴出口が形成されている。糸継ノズル94は、噴出口から糸継孔90の内部に圧縮空気を噴出することにより、当該糸継孔90内部に旋回気流を発生させるように構成されている。
【0055】
糸継装置43は2本の解撚パイプ(解撚部)82を有している。解撚パイプ82は細長い円筒状に形成されるとともに、その長手方向を糸継装置43の前後方向に向けて互いに平行に配置される。2本の解撚パイプ82は糸走行方向に略平行な方向に並べて配置され、それぞれが一端を糸継装置43の正面に開口させている。また、それぞれの解撚パイプ82には、当該解撚パイプ82の内側に圧縮空気を噴出することで、背面側(糸道とは反対側)に向かう空気流を発生させる空気噴出孔が形成されている。
【0056】
なお、糸継ノズル94と解撚パイプ82は、何れも糸継装置43の本体に固定的に設けられている。従って、移動手段30が糸継装置43を移動させる際、前記糸継ノズル94及び解撚パイプ82は、糸継装置43の本体と一体的に移動する。
【0057】
糸道規制部材(糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98)は、糸継装置43の本体に対して回動可能に設けられたレバー状の部材である。ただし、図8から図10及び図12では、糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98の断面のみを示している。糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98は、紡績糸10に接触することにより、当該紡績糸10の糸道を規制することができるように配置されている。糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98によって糸道を規制している様子を、図8等に示す。また、糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98は、紡績糸10に接触しない位置まで回動することができるように構成されている。これにより、糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98によって規制されていた紡績糸10を開放した状態とすることができる。
【0058】
クランプ部97は、糸走行方向において糸継ノズル94の上下に1つずつ設けられている。このクランプ部97は開閉可能に構成されており、閉じた状態で紡績糸10を把持することができるように構成されている。カッタ92は、糸走行方向において糸継ノズル94の上下に1つずつ設けられている。カッタ92は、紡績糸10を切断することができるように構成されている。
【0059】
糸継装置43は、糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98の回動動作、クランプ部97の開閉動作、及び前記カッタ92による切断動作を行わせるための図略のカム機構を備えている。また糸継装置43は、前記カム機構の駆動源である電動モータ60を有している。この電動モータ60の動作を適宜制御することにより、紡績糸10の把持、切断、糸道の規制などを適切なタイミングで行うことができる。電動モータ60の動作は、前記台車制御部によって制御されている。図2等に示すように、電動モータ60は、糸継装置43の本体の近傍に配置されており、当該糸継装置43の本体に対して固定されている。従って、移動手段30が糸継装置43を移動させる際、前記電動モータ60と、前記カム機構と、このカム機構によって駆動される部材(糸寄せレバー96、糸押さえレバー98、クランプ部97、及びカッタ92)は、一体的に移動する。
【0060】
糸継装置43のすぐ下流側には、糸継装置43で糸継ぎされた紡績糸10の品質を測定する継目モニタ47が配置されている。本実施形態において、継目モニタ47は、静電容量式のセンサによって、糸継装置43によって形成された継ぎ目の太さを監視するように構成されている。もっとも、継目モニタ47の構成はこれに限らず、例えば光透過式のセンサによって継ぎ目の太さを監視するように構成しても良い。継目モニタ47によって検出された情報は、前記台車制御部に送信される。なお、この継目モニタ47は、前記支持ブラケット36に固定されている。従って、移動手段30が糸継装置43を移動させる際、継目モニタ47は、糸継装置43と同時に移動する。
【0061】
続いて逆転駆動機構49について、図2及び図13を参照して説明する。図2に示すように、逆転駆動機構49は、第1支持アーム61及び第2支持アーム62と、逆回転ローラ(接触ローラ)63と、リンクロッド64と、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66と、を備えている。更に、逆転駆動機構49は、図13に示すように、逆回転ローラ63の駆動源である逆回転ローラ駆動モータ67を備えている。
【0062】
前記第1支持アーム61の一端側は、糸継台車3の筐体本体に対して回転可能に取り付けられている。また、第1支持アーム61の他端側には、前記第2支持アーム62が回動可能に取り付けられている。第2支持アーム62の先端には、前記逆回転ローラ63が回転可能に設けられている。リンクロッド64の基端は、糸継台車3の筐体に対して回動可能に設けられている。このリンクロッド64の先端は、第2支持アーム62に連結されている。また、このリンクロッド64には逆回転ローラ進退用エアシリンダ66が取り付けられており、当該逆回転ローラ進退用エアシリンダ66の進退によってリンクロッド64を回動させることができるようになっている。
【0063】
以上のように、第1支持アーム61、第2支持アーム62、及びリンクロッド64によってリンク機構が構成されている。当該リンク機構に接続された前記逆回転ローラ進退用エアシリンダ66を伸縮制御することによって、第2支持アーム62の先端の逆回転ローラ63を進退させることができるように構成されている。これにより、逆回転ローラ63を、パッケージ45に接触しない「退避位置」(例えば図2に示す位置)と、パッケージ45に接触する「接触位置」(例えば図5に示す位置)と、の間で移動させることができる。従って、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66は、ローラ移動部であると言える。なお、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66の動作は、前記台車制御部によって制御されている。
【0064】
図13に示すように、第1支持アーム61の回動支点には、前記逆回転ローラ駆動モータ67の駆動力が入力されている。この逆回転ローラ駆動モータ67の駆動力は、第1支持アーム61の内部に設けられた第1伝動ベルト68を介して、第2支持アーム62の回動支点に配置された中間プーリ69に入力される。当該中間プーリ69に入力された駆動力は、更に、第2支持アーム62の内部に設けられた第2伝動ベルト70を介して、駆動入力プーリ50に入力される。駆動入力プーリ50と、逆回転ローラ63との間には、クラッチ51が設けられている。以上の構成により、クラッチ51を接続状態とすることで、逆回転ローラ駆動モータ67の駆動力により逆回転ローラ63を回転駆動することができる。また、クラッチ51を切断することにより、逆回転ローラ63と逆回転ローラ駆動モータ67とを切り離し、逆回転ローラ63を自由に回転させることができる。なお、このクラッチ51の動作は、前記台車制御部によって制御されている。
【0065】
逆転駆動機構49は、逆回転ローラ63の回転速度を検出するロータリエンコーダ機構52を備えている。ロータリエンコーダ機構52は、逆回転ローラ63の周方向に沿って等間隔で配置された複数の磁石53と、当該磁石53を検出してパルス信号を出力するホールセンサ54と、から構成されている。前記複数の磁石53は、逆回転ローラ63と一体的に回転する。一方、ホールセンサ54は第2支持アーム62に取り付けられている。この構成で、逆回転ローラ63の回転に応じて、ホールセンサ54からパルス信号が出力される。ロータリエンコーダ機構52の検出結果(ホールセンサ54が出力するパルス信号)は、前記台車制御部に出力される。
【0066】
次に、糸継台車3による糸継作業について説明する。この糸継作業は、ある紡績ユニット2において、紡績装置9とパッケージ45との間の紡績糸10が何らかの理由により分断状態となったときに行われる。
【0067】
ある紡績ユニット2において、例えば図4のように紡績装置9とパッケージ45との間の紡績糸10が分断状態になると、当該紡績ユニット2のユニットコントローラは、クレードルアーム71を揺動駆動して、巻取ドラム72からパッケージ45を離間させるように制御を行うとともに、巻取装置13に備えられた図示しないブレーキ機構を作動させる。これにより、パッケージ45は回転を停止する。
【0068】
続いて、前記ユニットコントローラは、糸継台車3に対して制御信号を送信する。制御信号を受信した糸継台車3は、糸継台車走行レール41上を前記紡績ユニット2まで走行して停止する。糸継台車3が紡績ユニット2の間を走行する際には、移動手段30は、糸継装置43を退避位置まで退避させておく。
【0069】
糸継台車3が目的の紡績ユニット2で停止すると、台車制御部は、図5に示すように、サクションパイプ44及びサクションマウス46をそれぞれ回転させ、紡績装置9側の糸端とパッケージ45側の糸端を吸引して捕捉する。
【0070】
またこのとき、台車制御部は、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66を制御することにより、逆回転ローラ63を接触位置まで進出させて、当該逆回転ローラ63をパッケージ45に接触させる。更に、台車制御部は、前記クラッチ51を接続状態にするとともに、前記逆回転ローラ駆動モータ67によって逆回転ローラ63を巻取ドラム72とは反対方向に回転駆動する。これにより、パッケージ45は、巻取方向とは逆方向(以下、解舒方向)に回転駆動される。この状態で、パッケージ45表面の紡績糸10をサクションマウス46によって吸引することにより、当該紡績糸10がパッケージ45から引き出され、サクションマウス46に捕捉される。
【0071】
続いて、台車制御部は、紡績糸10を捕捉した状態のサクションパイプ44及びサクションマウス46を反対方向に回転させることで、前記捕捉した紡績糸10を、糸継装置43の正面側に対面する位置まで案内する(図6の状態)。サクションパイプ44及びサクションマウス46による紡績糸10の案内が終了すると、台車制御部は、逆回転ローラ駆動モータ67の回転を停止させる。更に、台車制御部は、クラッチ51を切断して、逆回転ローラ63を逆回転ローラ駆動モータ67から切り離す。これにより、逆回転ローラ63の回転を停止し、パッケージ45が静止する。なお、本実施形態において、台車制御部は、逆回転ローラ63によるパッケージ45の逆回転が終了した後も、逆回転ローラ63を退避させず、当該逆回転ローラ63がパッケージ45の外周に接触した状態を保つように、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66を制御する。
【0072】
続いて、移動手段30は、エアシリンダ38を伸ばして、糸継装置43を糸道に近づける方向に移動させ、糸継位置まで進出させる。糸継位置まで糸継装置43が進出することにより、サクションパイプ44が捕捉している紡績装置9側の紡績糸10と、サクションマウス46が捕捉しているパッケージ45側の紡績糸10が、糸継装置43に導入される(図7の状態)。また、図7等に示すように、移動手段30が糸継装置43を糸継位置まで進出させたときに、紡績糸10が継目モニタ47に導入されるように、当該継目モニタ47が配置されている。従って、糸継装置43を糸継位置まで進出させることにより、継目モニタ47による紡績糸10の検査が可能になる。
【0073】
糸継位置まで進出した糸継装置43は、糸寄せレバー96を回動させて紡績糸10に接触させることにより、糸継ノズル94の糸継孔90に紡績糸10が導入されるように糸道を規制する(図8の状態)。糸継装置43は、この状態でクランプ部97を閉じることにより、当該クランプ部97によって紡績糸10を把持する。
【0074】
続いて台車制御部は、解撚パイプ82内に圧縮空気の噴出を開始させる。これにより、解撚パイプ82内には、糸継装置43の背面側(図8の図面右側)に向かう空気流が発生するとともに、当該解撚パイプ82の正面側(図8の図面左側)の開口部には吸引空気流が発生する。これと前後して、台車制御部は、カッタ92を動作させて、サクションパイプ44と糸継装置43の間の紡績糸10、及びサクションマウス46と糸継装置43の間の紡績糸10をそれぞれ切断させる。前記切断によって形成された糸端は、それぞれ解撚パイプ82によって吸引され、当該解撚パイプ82の内部に引き込まれる。そして、引き込まれた糸端は、解撚パイプ82内の空気流の作用を受けて繊維の撚りが解かれ、解撚される(図9)。
【0075】
糸端の解撚が終了すると、台車制御部は、解撚パイプ82内部への圧縮空気の噴出を終了させる。更に、台車制御部は、糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98によって紡績糸10糸道を更に屈曲させることにより、解撚された糸端を解撚パイプ82から引きずり出す。解撚パイプ82から引き出された糸端は、糸継ノズル94の糸継孔90内で、互いに重ね合わされた状態でセットされる(図10)。この状態で糸継孔90内に圧縮空気を噴出させることで、当該糸継孔90内に旋回流を発生させ、繊維に撚りを加える。これにより、紡績装置9側の紡績糸10の糸端と、パッケージ45側の紡績糸10の糸端と、が撚り合わされて結合され、継ぎ目が形成される。
【0076】
継ぎ目が形成されると、台車制御部は、糸糸継孔90への空気の噴出を停止させる。更に、台車制御部は、クランプ部97を開いて、把持されていた紡績糸10を開放させるとともに、糸寄せレバー96及び糸押さえレバー98による糸道の規制を解除させる。これと前後して、紡績ユニット2のユニットコントローラは、クレードルアーム71を揺動させ、パッケージ45の外周面を、回転する巻取ドラム72に接触させる(図11の状態)。
【0077】
このとき、パッケージ45は巻取ドラム72に向けて移動することにとになるが、糸継台車3の逆転駆動機構49は、移動するパッケージ45に逆回転ローラ63を追従させ、当該逆回転ローラ63をパッケージ45に接触させた状態を維持できるように構成されている。
【0078】
以上の構成で、巻取ドラム72に接触したパッケージ45の回転が再開し、紡績糸10の巻き取りが再開される。また、パッケージ45に接触している逆回転ローラ63が、パッケージ45の回転によって従動回転する。
【0079】
このとき、前述のロータリエンコーダ機構52から、逆回転ローラ63の回転に応じたパルス信号が、台車制御部に入力される。台車制御部は、前記パルス信号に基づいて、逆回転ローラ63の回転速度を求める。
【0080】
続いて台車制御部は、ロータリエンコーダ機構52からのパルス信号に基づいて求めた上記逆回転ローラ63の回転速度から、更にパッケージ45の回転速度を求める。即ち、逆回転ローラ63は、パッケージ45によって従動回転されているものであるから、当該逆回転ローラ63の回転速度に基づいて、パッケージ45の回転速度を精度良く求めることができる。このように、ロータリエンコーダ機構52の検出結果に基づいてパッケージ45の回転速度を求めることができるので、当該ロータリエンコーダ機構52は、パッケージ回転速度検出部であると言うこともできる。なお、台車制御部が求めるパッケージ45の「回転速度」は、パッケージ45の角速度、パッケージ45の周速、パッケージ45の単位時間あたりの回転数など、当該パッケージ45の回転の速さを示す情報であれば良く、特定の形式に限定されるものではない。本実施形態では、逆回転ローラ63は、パッケージ45の外周に接触して回転しているので、当該逆回転ローラ63の回転速度に基づいて、パッケージ45の周速を容易に得ることができる。そこで、本実施形態の台車制御部は、パッケージ45の回転速度として、当該パッケージ45の周速を取得するように構成されている。
【0081】
紡績糸10の巻き取りを再開すると、図12に示すように、糸継装置43で形成された継ぎ目99が継目モニタ47を通過する。このとき、当該継ぎ目99が継目モニタ47によって検査される。台車制御部は、継目モニタ47による検査結果に基づいて、継ぎ目99の品質を判断する。従って、台車制御部は判断部であるということができる。例えば、継ぎ目99が所定の太さや長さなどの寸法条件を満たさない不良継ぎ目であった場合、糸継台車3は、当該不良継ぎ目を図略のカッタにより切断除去するとともに、糸継装置43による糸継ぎをやり直す。
【0082】
ところで、台車制御部において、例えば継ぎ目99の長さを判定しようとした場合、当該継ぎ目99が継目モニタ47を通過するのに要した時間と、当該継ぎ目99が継目モニタ47を通過したときの速度(即ち、紡績糸10の走行速度)の情報が必要となる。そこで台車制御部は、上記のようにして求めたパッケージ45の周速に基づいて、紡績糸10の走行速度を算出するように構成されている。即ち、紡績糸10はパッケージ45の外周に巻き取られることで走行するので、パッケージ45の周速に基づいて、紡績糸10の走行速度(糸速度)を容易に算出することができる。
【0083】
台車制御部は、上記のようにして求めた紡績糸10の走行速度と、継目モニタ47による検査結果に基づいて、継ぎ目99の品質を判断する。このように、実際に測定したパッケージ45の回転速度に基づいて取得した紡績糸10の走行速度によって継ぎ目99の品質を判断するので、当該継ぎ目99の品質を精度良く判定することができる。
【0084】
なお、パッケージ45は巻取ドラム72にも接触して回転しているので、当該巻取ドラム72の回転速度に基づいてパッケージ45の回転速度を取得する構成も考えられる。しかし本実施形態の精紡機1は、巻取ドラム72が複数の紡績ユニット2で共通の駆動源で駆動されており、常に一定の回転速度で回転駆動される構成である。停止状態にあるパッケージ45を、一定速度で回転を続けている巻取ドラム72に接触させると、パッケージ45と巻取ドラム72との間でスリップが発生する。従って、巻き取り再開直後のパッケージ45の回転速度は、巻取ドラム72の回転速度からは求めることができない。そこで上記のように、巻取ドラム72とは別のローラ(逆回転ローラ63)の回転速度に基づいてパッケージ45の回転速度を求めるように構成したものである。これにより、巻取ドラム72が複数の紡績ユニット2で共通駆動される精紡機1であっても、各パッケージ45の回転速度を正確に求めることができる。
【0085】
そして、継目モニタ47による継ぎ目99の検査が終了すると、移動手段30は、糸継装置43を退避位置まで移動させる。これと前後して、台車制御部は、逆回転ローラ63をパッケージ45から離間させ、退避位置まで移動させるように、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66を制御する。これにより、糸継台車3が走行可能となり、他の紡績ユニット2まで走行することができる。
【0086】
以上で説明したように、本実施形態の精紡機1は、巻取装置13と、紡績装置9と、ロータリエンコーダ機構52と、糸継装置43と、継目モニタ47と、台車制御部と、を備えている。巻取装置13は、パッケージ45に紡績糸10を巻き取る。紡績装置9は、巻取装置13に紡績糸10を供給する。ロータリエンコーダ機構52は、パッケージ45の回転速度を検出するためのものである。糸継装置43は、紡績装置9とパッケージ45との間の紡績糸10を糸継ぎして継ぎ目99を形成する。継目モニタ47は、紡績糸10の走行方向で糸継装置43の下流側に配置され、継ぎ目99をモニタする。台車制御部は、ロータリエンコーダ機構52の検出結果に基づいて取得した紡績糸10の走行速度と、継目モニタ47によるモニタ結果と、に基づいて、糸継装置43が形成した継ぎ目99が正常であるか否かを判断する。
【0087】
このように、パッケージ45の回転速度の実測値に基づいて、巻取再開時の糸速度を精度良く取得することができる。そして、このようにして取得した糸速度に基づいて継ぎ目99の品質を判断することにより、継ぎ目99の品質を正確に判定することができる。
【0088】
本実施形態の精紡機1は、パッケージ45に接触して回転する逆回転ローラ63を備えている。ロータリエンコーダ機構52は、逆回転ローラ63の回転速度を検出する。
【0089】
即ち、パッケージ45に接触して回転する逆回転ローラ63の回転速度に基づいて、前記パッケージ45の回転速度を精度良く求めることができる。
【0090】
本実施形態の精紡機1は、紡績装置9及び巻取装置13を備えた紡績ユニット2を複数備えている。紡績ユニット2の巻取装置13は、紡績糸10を巻き取る方向に前記パッケージ45を回転させる巻取ドラム72を備えている。精紡機1は、紡績ユニット2が備える巻取ドラム72を、複数の紡績ユニット2で共通して駆動する駆動源を、原動機ボックス5内に備えている。逆回転ローラ63は、巻取ドラム72とは別部材として設けられている。
【0091】
このように、複数の紡績ユニット2で共通して駆動される巻取ドラム72によってパッケージ45を回転させることにより、複数の紡績ユニット2で一斉に紡績糸10を巻き取ることができる。この構成の場合、各紡績ユニット2で共通して巻取ドラム72を駆動するので、巻取ドラム72の回転速度からは個々のパッケージ45の回転速度を検出することができない。そこで、上記のように巻取ドラム72とは別の逆回転ローラ63の回転速度に基づいて、パッケージ45の回転速度を検出することにより、継ぎ目99の品質の判断のために、各紡績ユニット2で個別にパッケージ45の回転速度の実測値を得ることができる。
【0092】
本実施形態の精紡機1において、逆回転ローラ63は、紡績糸10が解舒される方向にパッケージ45を回転させる。
【0093】
逆回転ローラ63が、パッケージ45の回転速度を検出する機能と、パッケージ45を逆回転させる機能と、の2つの機能を兼ねることにより、精紡機1の構成をシンプルにすることができる。
【0094】
本実施形態の精紡機1は、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66と、台車制御部と、を備えている。逆回転ローラ進退用エアシリンダ66は、逆回転ローラ63を、パッケージ45に接触した位置とパッケージ45から離間した位置との間で移動させる。台車制御部は、逆回転ローラ63の回転と、糸継装置43による継ぎ目の形成と、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66による逆回転ローラ63の移動と、を制御している。台車制御部は、紡績装置9とパッケージ45との間の紡績糸10が分断状態となったときに、逆回転ローラ63がパッケージ45に接触するように逆回転ローラ進退用エアシリンダ66を制御するとともに、紡績糸10が解舒される方向にパッケージ45を回転させるように前記逆回転ローラ63の回転を制御する。台車制御部は、逆回転ローラ63によって回転されるパッケージ45から解舒された紡績糸10と、紡績装置9側の紡績糸10と、を糸継ぎして継ぎ目99を形成するように糸継装置43を制御する。台車制御部は、糸継ぎの終了後、少なくとも継ぎ目99が継目モニタ47を通過するまでの間は、前記逆回転ローラ63がパッケージ45に接触した状態を保つように、逆回転ローラ進退用エアシリンダ66を制御する。
【0095】
このように、糸継ぎの終了後、逆回転ローラ63がパッケージ45に接触した状態を保つことにより、紡績糸10の継ぎ目99が継目モニタ47を通過するときのパッケージ45の回転速度を、逆回転ローラ63の回転によって取得することができる。これにより、継ぎ目99の品質を精度良く判断することができる。
【0096】
本実施形態の精紡機1は、逆回転ローラ駆動モータ67と、逆回転ローラ63と逆回転ローラ駆動モータ67との間の駆動の伝達を断接制御するクラッチ51と、を備える。クラッチ51は、継ぎ目99が継目モニタ47を通過するときは、駆動の伝達を切断するように制御する。
【0097】
これにより、継ぎ目99が継目モニタ47を通過するときに、逆回転ローラ63を抵抗なく回転させることができるので、当該逆回転ローラ63によってパッケージ45の回転速度を精度良く取得することができる。
【0098】
本実施形態の精紡機1は、糸継装置43と、継目モニタ47と、逆回転ローラ63と、を有する糸継台車3を備えている。糸継台車3は、複数の紡績ユニット2間を走行可能であるとともに、紡績糸10が分断状態となった紡績ユニット2の近傍に停止して、紡績ユニット2に対して糸継装置43による糸継ぎを行う。
【0099】
このように、糸継ぎに必要な構成を搭載して走行する糸継台車3を設けたことにより、これらの構成を紡績ユニット2それぞれに設ける構成と比べて、精紡機1全体の構成を簡素化して、コストダウンを図ることができる。
【0100】
本実施形態の精紡機1において、紡績装置9は、旋回空気流によって繊維束8に撚りを加えて紡績糸10を生成する空気紡績装置である。
【0101】
即ち、空気紡績装置は高速紡績が可能であるため、巻取装置13における紡績糸10の巻き取り速度も速い。このため、巻き取りを再開したときの紡績糸10の加速も急激であり、紡績糸10の速度を経験式などにより予測することは困難である。そこでこのような空気紡績装置を備えた精紡機1において、パッケージ45の回転速度の実測値に基づいて紡績糸10の速度を検出するという本実施形態の構成を採用することにより、紡績糸10の速度を精度良く取得することができる。
【0102】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0103】
上記実施形態では、逆回転ローラ63によってパッケージ45の回転速度を検出する構成としたが、パッケージ45に接触させて回転することにより当該パッケージ45の回転速度を検出するための接触ローラを、逆回転ローラ63とは別に設けても良い。
【0104】
継ぎ目99の品質の判断は糸継台車3の台車制御部によって行うものとしたが、これに限らず、例えば紡績ユニット2のユニットコントローラや、精紡機1全体を制御する中央制御部で継ぎ目99の品質を判断するように構成しても良い。
【0105】
上記実施形態では、糸継台車3が糸継装置43等を備える構成としたが、これに代えて、以下のように構成しても良い。即ち、紡績ユニット2は、巻取装置13と、紡績装置9と、ロータリエンコーダ機構52と、糸継装置43と、継目モニタ47と、ユニットコントローラと、を備える。巻取装置13は、パッケージ45に紡績糸10を巻き取る。紡績装置9は、巻取装置13に紡績糸10を供給する。ロータリエンコーダ機構52は、パッケージ45の回転速度を検出するためのものである。糸継装置43は、紡績装置9とパッケージ45との間の紡績糸10を糸継ぎして継ぎ目99を形成する。継目モニタ47は、紡績糸10の走行方向で糸継装置43の下流側に配置され、継ぎ目99をモニタする。ユニットコントローラは、ロータリエンコーダ機構52の検出結果に基づいて取得した紡績糸10の走行速度と、継目モニタ47によるモニタ結果と、に基づいて、糸継装置43が形成した継ぎ目99が正常であるか否かを判断する。
【0106】
このように、上記実施形態で糸継台車3が備えていた各構成を、各紡績ユニット2が備えるように構成しても良い。
【0107】
上記実施形態では、紡績糸10の走行方向が高さ方向の上から下に向かっているが、紡績糸10の走行方向は特に限定されず、例えば下から上に向かって紡績糸10が走行する構成にも本願発明を適用することができる。
【0108】
また図2等では、紡績糸10の糸道が略上下方向となっているが、これに限定されない。例えば、巻取装置13が図2で示された位置よりも紡績ユニット2の奥側に配置されている場合、糸道は、正面側から奥側へ傾斜して形成されることになる。
【0109】
図1等では、精紡機1は糸継台車3を1台備えているが、紡績ユニット2の数に応じて糸継台車3を複数備えることも可能である。
【0110】
逆回転ローラ63を進退させるためのローラ移動部の構成は、エアシリンダ(逆回転ローラ進退用エアシリンダ66)に限らず、例えばモータなどの他のアクチュエータであっても良い。
【0111】
クラッチ51を切断するタイミングは、逆回転ローラ63によるパッケージ45の逆回転が終了したときに限らず、遅くとも継ぎ目99が継目モニタ47を通過する前にクラッチ51が切断されていれば良い。ただし、逆回転ローラ駆動モータ67から逆回転ローラ63までの駆動伝達経路が接続されていても、当該逆回転ローラ63の回転の抵抗にならないようであれば、継ぎ目99が継目モニタ47を通過するときにクラッチ51が接続されたままであっても良い。もっとも、この場合はクラッチ51を省略することができる。
【0112】
逆回転ローラ63は、パッケージ45の逆回転が終了した時点で当該パッケージ45からいったん離間し、その後、パッケージ45の回転を再開させる直前に、再びパッケージ45に接触させるようにしても良い。要は、継ぎ目99が継目モニタ47を通過するときに逆回転ローラ63がパッケージ45に接触していれば、当該逆回転ローラ63の回転速度に基づいて、継ぎ目99が継目モニタ47を通過するときの糸速度を求めることができる。
【0113】
上記実施形態では、継ぎ目99の検査が終了したあとで(継ぎ目99が継目モニタ47を通過したあとで)、当該逆回転ローラ63をパッケージ45から離間させるものとした。継ぎ目99が継目モニタ47を通過したか否かは、継目モニタ47の検出結果に基づいて知ることができる。従って、継目モニタ47の検出結果に基づいて、逆回転ローラ63をパッケージ45から離間させるように構成すれば良い。しかしこれに限らず、巻取装置13による紡績糸10の巻き取り再開後、継目モニタ47を継ぎ目99が通過するのに十分な時間が経過したことにより、逆回転ローラ63をパッケージ45から離間させるように構成しても良い。
【0114】
逆回転ローラ63の回転速度を検出する構成は、ロータリエンコーダ機構52に限らず、適宜の構成を利用することができる。
【0115】
上記実施形態では、巻取ドラム72を、複数の紡績ユニット2で共通して駆動する構成とした。しかしこれに限定される訳ではなく、巻取ドラム72を、それぞれの紡績ユニット2で個別に駆動する構成としても良い。なお、この場合、巻取ドラム72は、各紡績ユニット2で異なる回転速度で回転させることができる。このような構成においては、パッケージ45との間にスリップが生じないように巻取ドラム72を回転させることも可能である。従って、この場合は、巻取ドラム72の回転速度に基づいてパッケージ45の回転速度を求めるように構成しても良い。この構成の場合、巻取ドラム72を接触ローラとして把握することができる。また、この場合は、巻取ドラム72を逆方向に回転させることにより、パッケージ45を逆回転させるように制御することもできる。この場合は、逆回転ローラ63を省略しても良い。
【0116】
上記実施形態では、糸貯留装置12の糸貯留ローラ14を回転させることにより、紡績装置9から紡績糸10を引き出す構成とした。これに代えて、例えば特開2005−220484号公報に記載されているように、デリベリローラとニップローラとによって紡績糸を挟み込んで回転することにより、紡績装置から紡績糸を引き出す糸送り装置を設けても良い。
【0117】
糸継装置43を糸道に対して移動可能とする構成は、省略することもできる。
【0118】
紡績装置は、空気紡績式の紡績装置に限らず、他の形式の紡績装置を備えた紡績機にも本願発明の構成を適用することができる。また、本発明の構成は、紡績機に限らず、自動ワインダなどの他の種類の糸巻取機にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0119】
1 精紡機(糸巻取機)
2 紡績ユニット(糸巻取ユニット)
9 紡績装置(給糸部)
10 紡績糸
13 巻取装置(巻取部)
43 糸継装置
47 継目モニタ(継目監視装置)
52 ロータリエンコーダ機構(パッケージ回転速度検出部)
63 逆回転ローラ(接触ローラ)
72 巻取ドラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージに糸を巻き取る巻取部と、
前記巻取部に糸を供給する給糸部と、
前記パッケージの回転速度を検出するためのパッケージ回転速度検出部と、
前記給糸部と前記パッケージとの間の前記糸を糸継ぎして継ぎ目を形成する糸継装置と、
前記糸の走行方向で前記糸継装置の下流側に配置され、前記継ぎ目をモニタする継目監視装置と、
前記パッケージ回転速度検出部の検出結果に基づいて取得した前記糸の走行速度と、前記継目監視装置によるモニタ結果と、に基づいて、前記糸継装置が形成した継ぎ目が正常であるか否かを判断する判断部と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記パッケージに接触して回転する接触ローラを備え、
前記パッケージ回転速度検出部は、前記接触ローラの回転速度を検出することを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項2に記載の糸巻取機であって、
前記接触ローラは、前記糸が解舒される方向に前記パッケージを回転させる逆回転ローラであることを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項3に記載の糸巻取機であって、
前記接触ローラを、前記パッケージに接触した位置と前記パッケージから離間した位置との間で移動させるローラ移動部と、
前記接触ローラの回転と、前記糸継装置による継ぎ目の形成と、前記ローラ移動部による前記接触ローラの移動と、を少なくとも制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記給糸部と前記パッケージとの間の前記糸が分断状態となったときに、前記接触ローラが前記パッケージに接触するように前記ローラ移動部を制御するとともに、前記糸が解舒される方向に前記パッケージを回転させるように前記接触ローラの回転を制御し、
前記接触ローラによって回転される前記パッケージから解舒された前記糸と、前記給糸部側の糸と、を糸継ぎして継ぎ目を形成するように前記糸継装置を制御し、
前記糸継ぎの終了後、少なくとも前記継ぎ目が前記継目監視装置を通過するまでの間は、前記接触ローラが前記パッケージに接触した状態を保つように前記ローラ移動部を制御することを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の糸巻取機であって、
前記接触ローラの回転駆動源と、
前記接触ローラと前記回転駆動源との間の駆動の伝達を断接制御するクラッチと、
を備え、
前記クラッチは、少なくとも、前記継ぎ目が前記継目監視装置を通過するときは、前記駆動の伝達を切断するように制御することを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項2から5までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記給糸部及び前記巻取部を備えた糸巻取ユニットを複数備え、
前記糸巻取ユニットの前記巻取部は、前記糸を巻き取る方向に前記パッケージを回転させる巻取ドラムを備え、
前記糸巻取ユニットが備える前記巻取ドラムを、前記複数の糸巻取ユニットで共通して駆動する駆動源を更に備え、
前記接触ローラは、前記巻取ドラムとは別部材として設けられていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項6に記載の糸巻取機であって、
前記糸継装置と、前記継目監視装置と、前記接触ローラと、を有し、前記複数の糸巻取ユニット間を走行可能であるとともに、前記糸が分断状態となった糸巻取ユニットの近傍に停止して、当該糸巻取ユニットに対して前記糸継装置による糸継ぎを行う糸継台車を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記給糸部は、旋回空気流によって繊維束に撚りを加えて紡績糸を生成する空気紡績装置であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項9】
パッケージに糸を巻き取る巻取部と、
前記巻取部に糸を供給する給糸部と、
前記パッケージの回転速度を検出するためのパッケージ回転速度検出部と、
前記給糸部と前記パッケージとの間の前記糸を糸継ぎして継ぎ目を形成する糸継装置と、
前記糸の走行方向で前記糸継装置の下流側に配置され、前記継ぎ目をモニタする継目監視装置と、
前記パッケージ回転速度検出部の検出結果に基づいて取得した前記糸の走行速度と、前記継目監視装置によるモニタ結果と、に基づいて、前記糸継装置が形成した継ぎ目が正常であるか否かを判断する判断部と、
を備えることを特徴とする糸巻取ユニット。
【請求項1】
パッケージに糸を巻き取る巻取部と、
前記巻取部に糸を供給する給糸部と、
前記パッケージの回転速度を検出するためのパッケージ回転速度検出部と、
前記給糸部と前記パッケージとの間の前記糸を糸継ぎして継ぎ目を形成する糸継装置と、
前記糸の走行方向で前記糸継装置の下流側に配置され、前記継ぎ目をモニタする継目監視装置と、
前記パッケージ回転速度検出部の検出結果に基づいて取得した前記糸の走行速度と、前記継目監視装置によるモニタ結果と、に基づいて、前記糸継装置が形成した継ぎ目が正常であるか否かを判断する判断部と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記パッケージに接触して回転する接触ローラを備え、
前記パッケージ回転速度検出部は、前記接触ローラの回転速度を検出することを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項2に記載の糸巻取機であって、
前記接触ローラは、前記糸が解舒される方向に前記パッケージを回転させる逆回転ローラであることを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項3に記載の糸巻取機であって、
前記接触ローラを、前記パッケージに接触した位置と前記パッケージから離間した位置との間で移動させるローラ移動部と、
前記接触ローラの回転と、前記糸継装置による継ぎ目の形成と、前記ローラ移動部による前記接触ローラの移動と、を少なくとも制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記給糸部と前記パッケージとの間の前記糸が分断状態となったときに、前記接触ローラが前記パッケージに接触するように前記ローラ移動部を制御するとともに、前記糸が解舒される方向に前記パッケージを回転させるように前記接触ローラの回転を制御し、
前記接触ローラによって回転される前記パッケージから解舒された前記糸と、前記給糸部側の糸と、を糸継ぎして継ぎ目を形成するように前記糸継装置を制御し、
前記糸継ぎの終了後、少なくとも前記継ぎ目が前記継目監視装置を通過するまでの間は、前記接触ローラが前記パッケージに接触した状態を保つように前記ローラ移動部を制御することを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の糸巻取機であって、
前記接触ローラの回転駆動源と、
前記接触ローラと前記回転駆動源との間の駆動の伝達を断接制御するクラッチと、
を備え、
前記クラッチは、少なくとも、前記継ぎ目が前記継目監視装置を通過するときは、前記駆動の伝達を切断するように制御することを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項2から5までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記給糸部及び前記巻取部を備えた糸巻取ユニットを複数備え、
前記糸巻取ユニットの前記巻取部は、前記糸を巻き取る方向に前記パッケージを回転させる巻取ドラムを備え、
前記糸巻取ユニットが備える前記巻取ドラムを、前記複数の糸巻取ユニットで共通して駆動する駆動源を更に備え、
前記接触ローラは、前記巻取ドラムとは別部材として設けられていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項6に記載の糸巻取機であって、
前記糸継装置と、前記継目監視装置と、前記接触ローラと、を有し、前記複数の糸巻取ユニット間を走行可能であるとともに、前記糸が分断状態となった糸巻取ユニットの近傍に停止して、当該糸巻取ユニットに対して前記糸継装置による糸継ぎを行う糸継台車を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記給糸部は、旋回空気流によって繊維束に撚りを加えて紡績糸を生成する空気紡績装置であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項9】
パッケージに糸を巻き取る巻取部と、
前記巻取部に糸を供給する給糸部と、
前記パッケージの回転速度を検出するためのパッケージ回転速度検出部と、
前記給糸部と前記パッケージとの間の前記糸を糸継ぎして継ぎ目を形成する糸継装置と、
前記糸の走行方向で前記糸継装置の下流側に配置され、前記継ぎ目をモニタする継目監視装置と、
前記パッケージ回転速度検出部の検出結果に基づいて取得した前記糸の走行速度と、前記継目監視装置によるモニタ結果と、に基づいて、前記糸継装置が形成した継ぎ目が正常であるか否かを判断する判断部と、
を備えることを特徴とする糸巻取ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−67892(P2013−67892A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206504(P2011−206504)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
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