系統連系電力変換システムの制御装置
【課題】電力系統異常が原因で起こる変圧器の偏磁を確実に抑制すること。
【解決手段】電力貯蔵装置7を有し直流を交流/交流を直流に変換する電力変換装置1を、変圧器2を介して電源0を有する電力系統・負荷8に並列に接続し、電力系統と連系する点に、電力系統から負荷8および電力変換装置1を切り離し可能な系統連系スイッチ9を備え、常時は、電力系統側から電力貯蔵装置7に電力を貯蔵/電力貯蔵装置7から電力を放出を行ない、電力系統の異常時には、系統連系スイッチ9を開放して電力変換装置1から負荷8に給電する系統連系電力変換システムの制御装置において、系統連系スイッチを投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電流制御器の、電源電圧成分と一致する軸成分/当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の大きさを制限して、電力変換装置の出力電圧を決定する手段を備える。
【解決手段】電力貯蔵装置7を有し直流を交流/交流を直流に変換する電力変換装置1を、変圧器2を介して電源0を有する電力系統・負荷8に並列に接続し、電力系統と連系する点に、電力系統から負荷8および電力変換装置1を切り離し可能な系統連系スイッチ9を備え、常時は、電力系統側から電力貯蔵装置7に電力を貯蔵/電力貯蔵装置7から電力を放出を行ない、電力系統の異常時には、系統連系スイッチ9を開放して電力変換装置1から負荷8に給電する系統連系電力変換システムの制御装置において、系統連系スイッチを投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電流制御器の、電源電圧成分と一致する軸成分/当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の大きさを制限して、電力変換装置の出力電圧を決定する手段を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置を変圧器を介して電源を有する電力系統と連系して構成される系統連系電力変換システムの制御装置に係り、特に電力系統事故等の異常が原因で起こる変圧器の偏磁を確実に抑制して、システムの運転継続性を高めるようにした系統連系電力変換システムの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば太陽電池やNaS電池等の直流電源を、電源を有する電力系統と連系する場合には、電力変換装置により直流を交流に変換して接続する必要がある。
【0003】
この場合、電力系統の電圧と上記直流電力を出力する直流電源との電圧整合や、電力変換装置からの直流分の流出を防止するために、電力変換装置を、その出力段に変圧器を設けて電源を有する電力系統と連系して、系統連系電力変換システムを構成していることが多い。
【0004】
電力変換装置は、任意の交流波形を出力することができる反面、スイッチング誤差や電力系統の影響によってその出力に直流成分が重畳し、連系用の変圧器を偏磁させてしまうことがある。
【0005】
そこで、最近では、このような変圧器の偏磁を抑制制御する制御装置が提案されてきている。
【0006】
図13は、この種の従来の系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図である。
【0007】
図13において、直流を交流または交流を直流に変換する電力変換装置1は、連系用の変圧器2を介して電源0を有する電力系統と連系して動作する。
【0008】
変圧器2の偏磁を抑制制御する制御装置は、電力変換装置1の出力電圧の直流成分を直流分検出回路3により検出し、その直流成分の逆向きの直流成分を偏磁抑制回路4により出力し、これを電力変換装置1の制御回路5の出力に重畳させて、PWMパターン発生回路6により電力変換装置1を制御するように構成されている。
【0009】
なお、図13中、Lは電力系統の系統インピーダンスを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述のような従来の系統連系電力変換システムの制御装置においては、次のような問題点がある。
【0011】
すなわち、電力変換装置1の出力電圧の直流成分の検出に際して、少なくとも1周期以上の出力電圧の検出が必要となるため、偏磁抑制制御の効果を得るためには時間がかかる。
【0012】
したがって、電力系統異常等が原因による短時間で生じる偏磁現象を抑制することは難しい。
【0013】
また、電力変換装置1の制御回路5の出力端に直流成分を重畳することは、制御回路5から見ると、その直流成分は外乱として認識される。
【0014】
そして、制御回路5は、この外乱の影響を無くすように働くため、偏磁抑制制御の効き目を弱くするように作用してしまうことがあり、偏磁抑制制御の効果が損なわれてしまう。
【0015】
本発明の目的は、電力系統事故等の異常が原因で起こる変圧器の偏磁を確実に抑制して、システムの運転継続性を高めることが可能な系統連系電力変換システムの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の観点に従った系統連系電力変換システムの制御装置は、直流電源から出力された直流電力を交流電力に変換する電力変換装置を、変圧器を介して、電源を有する電力系統及び負荷に接続し、前記電力系統と連系する点に、当該電力系統から前記負荷および前記電力変換装置を切り離し可能な系統連系スイッチを備え、常時は、前記電力変換装置から出力された交流電力と前記電力系統との電力不平衡補償を行ない、前記電力系統の異常時には、前記系統連系スイッチを開放して前記電力変換装置から前記負荷に給電するようにした系統連系電力変換システムの制御装置において、前記系統連系スイッチを開放して系統連系されていない場合に、電圧制御において、前記電力変換装置の出力電圧の直流成分を抑制するために、前記電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の変化率の大きさを制限して、前記電力変換装置の出力電圧を決定する制御手段を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の系統連系電力変換システムの制御装置によれば、系統連系スイッチを投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電流制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力または入力の大きさを制限するか、あるいは当該出力の変化率の大きさを制限するか、もしくは当該出力の変化率の大きさが設定値を超えた時に当該出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置の出力電圧を決定するか、または系統連系スイッチを開放して系統連系されていない場合に、電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電圧制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力または入力の大きさを制限するか、あるいは当該出力の変化率の大きさを制限するか、もしくは当該出力の変化率の大きさが設定値を超えた時に当該出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置の出力電圧を決定するか、もしくは系統連系スイッチを投入して系統連系されている場合に、システムの所定の電気量に基づいて、電力系統の異常を検知した場合に、電力変換装置の出力電流を制御する電流制御器への電流指令を零にするようにしているので、電力系統事故等の異常が原因で起こる変圧器の偏磁を確実に抑制して、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第1の実施の形態を示すブロック図。
【図2】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第2の実施の形態を示すブロック図。
【図3】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第3の実施の形態を示すブロック図。
【図4】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第4の実施の形態を示すブロック図。
【図5】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第5の実施の形態を示すブロック図。
【図6】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第6の実施の形態を示すブロック図。
【図7】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第7の実施の形態を示すブロック図。
【図8】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第8の実施の形態を示すブロック図。
【図9】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第9の実施の形態を示すブロック図。
【図10】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第10の実施の形態を示すブロック図。
【図11】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第11の実施の形態を示すブロック図。
【図12】高速バックアップ機能を有する電源システムの概略構成例を示すブロック図。
【図13】従来の系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明では、系統連系スイッチを投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電流制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力または入力の大きさを制限するか、あるいは当該出力の変化率の大きさを制限するか、もしくは当該出力の変化率の大きさが設定値を超えた時に当該出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置の出力電圧を決定するか、または、系統連系スイッチを開放して系統連系されていない場合に、電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電圧制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力または入力の大きさを制限するか、あるいは当該出力の変化率の大きさを制限するか、もしくは当該出力の変化率の大きさが設定値を超えた時に当該出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置の出力電圧を決定するか、もしくは、系統連系スイッチを投入して系統連系されている場合に、システムの所定の電気量に基づいて、電力系統の異常を検知した場合に、電力変換装置の出力電流を制御する電流制御器への電流指令を零にするようにすることにより、電力系統異常を迅速に検出して、電力系統異常時に無理な電流制御を継続することによって電力変換装置が出力する電圧時間積の増加を抑制して、変圧器の偏磁を確実に抑制するものである。
【0020】
以下、上記のような考え方に基づく本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図13と同一要素には同一符号を付して示している。
【0022】
図1において、電力を貯蔵する二次電池等の電力貯蔵装置7を有し、直流を交流または交流を直流に変換する電力変換装置1は、連系用の変圧器2を介して、電源0を有する電力系統および負荷8に並列に接続している。
【0023】
また、電力系統と連系する点に、この電力系統から負荷8および電力変換装置1を切り離し可能な系統連系スイッチ9を設けている。
【0024】
そして、常時は、電力系統側から電力貯蔵装置7に電力を貯蔵もしくは電力貯蔵装置7から電力を放出または無効電力補償もしくは高調波補償あるいは電力不平衡補償を行ない、電力系統の異常時には、系統連系スイッチ9を開放して電力変換装置1から負荷8に給電するようにしている。
【0025】
一方、制御装置は、位相検出回路10と、静止→回転変換回路11と、電流指令発生回路12と、制御器13と、制限回路14と、回転→静止変換回路15と、PWMパターン発生回路6とから構成している。
【0026】
位相検出回路10は、電力系統の電源電圧の位相を検出する。
【0027】
静止→回転変換回路11は、電力変換装置1の出力する電流を、位相検出回路10からの出力を用いて、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電源電圧成分と一致する軸成分の電流、および当該電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分の電流に変換する。
【0028】
電流指令発生回路12は、d−q回転座標上の電流指令を発生する。
【0029】
制御器13は、静止→回転変換回路11からの出力と電流指令発生回路12からの出力との差分を零とするような出力を発生する。
【0030】
制限回路14は、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の出力の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0031】
回転→静止変換回路15は、制御器13からの他方の軸の出力(本例では、電源電圧成分と一致する軸成分)の出力と、制限回路14からの出力とを入力し、位相検出回路10からの出力を用いて、静止座標上の電圧指令に変換する。
【0032】
PWMパターン発生回路6は、回転→静止変換回路15からの出力に基づいて、電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0033】
なお、図1中、Lは電力系統の系統インピーダンスを示している。
【0034】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0035】
図1において、電力変換装置1は、系統連系スイッチ9を投入して、変圧器2を介して電力系統と連系している。
【0036】
この系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている定常時は、電力貯蔵装置7に充電や電力貯蔵装置7から放電するため、制御電流源として動作する。
【0037】
電力変換装置1の出力する電流は、電源電圧の位相を検出する位相検出回路10からの出力を用い、静止→回転変換回路11で電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電流へと変換される。
【0038】
ここでは、d−q回転座標上の電源電圧の向きはq軸と一致するようにとっている。
【数1】
【0039】
この変換により得られた値は、d−q回転座標上の電流指令発生回路12からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0040】
なお、制御器13としては、例えば比例制御器や比例積分制御器、さらに必要に応じて、非干渉制御器が用いられる。
【0041】
そして、制限回路14にて、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわちここではd軸の出力に制限を与えてその出力の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0042】
制御器13からの他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力と、制限回路14からの出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【数2】
【0043】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0044】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、制御器13からの一方の軸、すなわちd軸の出力に制限を与えてその出力の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13からの他方の軸のみの出力、すなわちq軸の出力に制限を与えてその出力の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0046】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電流制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0047】
(第2の実施の形態)
図2は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0048】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図2に示すように、前記図1における制限回路14を、制御器13の入力段に設けた構成としている。
【0049】
制限回路14は、制御器13への一方の軸のみの入力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の入力の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0050】
回転→静止変換回路15は、制御器13からの一方の軸の出力と、他方の軸の出力とを入力し、位相検出回路10からの出力を用いて、静止座標上の電圧指令に変換する。
【0051】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0052】
なお、図1と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0053】
図2において、静止→回転変換回路11での変換により得られた値は、d−q回転座標上の電流指令発生回路12からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0054】
ここで、制限回路14にて、制御器13への一方の軸のみの入力、すなわちここではd軸の入力に制限を与えてその入力の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0055】
制御器13からの一方の軸の出力、すなわちここではd軸の出力と、他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【0056】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0057】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、制御器13への一方の軸、すなわちd軸の入力に制限を与えてその入力の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13への他方の軸のみの入力、すなわちq軸の入力に制限を与えてその入力の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0059】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電流制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの入力の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0060】
(第3の実施の形態)
図3は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0061】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図3に示すように、前記図1における制限回路14を省略し、これに代えて、変化率制限回路16を備えた構成としている。
【0062】
変化率制限回路16は、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の出力の変化率の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0063】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0064】
なお、図1と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0065】
図3において、静止→回転変換回路11での変換により得られた値は、d−q回転座標上の電流指令発生回路12からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0066】
そして、変化率制限回路16にて、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわちここではd軸の出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0067】
制御器13からの他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力と、変化率制限回路16からの出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【0068】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0069】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0070】
なお、本実施の形態では、制御器13からの一方の軸、すなわちd軸の出力の変化率に制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13からの他方の軸のみの出力、すなわちq軸の出力の変化率に制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0071】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電流制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0072】
(第4の実施の形態)
図4は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0073】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図4に示すように、前記図1における制限回路14を省略し、これに代えて、許容値付変化率制限回路17を備えた構成としている。
【0074】
許容値付変化率制限回路17は、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0075】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0076】
なお、図1と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0077】
図4において、静止→回転変換回路11での変換により得られた値は、d−q回転座標上の電流指令発生回路12からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0078】
そして、許容値付変化率制限回路17にて、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわちここではd軸の出力の変化率の大きさが、許容値以内の時にはその入力をそのまま出力するが、許容値を超えた時には、d軸の出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0079】
制御器13からの他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力と、許容値付変化率制限回路17からの出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【0080】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0081】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0082】
なお、本実施の形態では、制御器13からの一方の軸、すなわちd軸の出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13からの他方の軸のみの出力、すなわちq軸の出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0083】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電流制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0084】
(第5の実施の形態)
図5は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図1と同一要素には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0085】
図5において、制御装置は、位相検出回路10と、静止→回転変換回路11と、電圧指令発生回路18と、制御器13と、制限回路14と、回転→静止変換回路15と、PWMパターン発生回路6とから構成している。
【0086】
位相検出回路10は、電力系統の電源電圧の位相を検出する。
【0087】
静止→回転変換回路11は、電力変換装置1の出力する電圧を、位相検出回路10からの出力を用いて、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電源電圧成分と一致する軸成分の電圧、および当該電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分の電圧に変換する。
【0088】
電圧指令発生回路18は、d−q回転座標上の電圧指令を発生する。
【0089】
制御器13は、静止→回転変換回路11からの出力と電圧指令発生回路18からの出力との差分を零とするような出力を発生する。
【0090】
制限回路14は、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の出力の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0091】
回転→静止変換回路15は、制御器13からの他方の軸の出力(本例では、電源電圧成分と一致する軸成分)の出力と、制限回路14からの出力とを入力し、位相検出回路10からの出力を用いて、静止座標上の電圧指令に変換する。
【0092】
PWMパターン発生回路6は、回転→静止変換回路15からの出力に基づいて、電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0093】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0094】
図5において、電力変換装置1は、系統連系スイッチ9を投入して、変圧器2を介して電力系統と連系している。
【0095】
この系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている定常時は、電力貯蔵装置7に充電や電力貯蔵装置7から放電するため、制御電圧源として動作する。
【0096】
電力変換装置1の出力する電圧は、電源電圧の位相を検出する位相検出回路10からの出力を用い、静止→回転変換回路11で電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電圧へと変換される。
【0097】
ここでは、d−q回転座標上の電源電圧の向きはq軸と一致するようにとっている。
【0098】
この変換により得られた値は、d−q回転座標上の電圧指令発生回路18からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0099】
なお、制御器13としては、例えば比例制御器や比例積分制御器、さらに必要に応じて、非干渉制御器が用いられる。
【0100】
そして、制限回路14にて、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわちここではd軸の出力に制限を与えてその出力の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0101】
制御器13からの他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力と、制限回路14からの出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【0102】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0103】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0104】
なお、本実施の形態では、制御器13からの一方の軸、すなわちd軸の出力に制限を与えてその出力の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13からの他方の軸のみの出力、すなわちq軸の出力に制限を与えてその出力の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0105】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されていない場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上電圧制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0106】
(第6の実施の形態)
図6は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図5と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0107】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図6に示すように、前記図5における制限回路14を、制御器13の入力段に設けた構成としている。
【0108】
制限回路14は、制御器13への一方の軸のみの入力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の入力の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0109】
回転→静止変換回路15は、制御器13からの一方の軸の出力と、他方の軸の出力とを入力し、位相検出回路10からの出力を用いて、静止座標上の電圧指令に変換する。
【0110】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0111】
なお、図5と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0112】
図6において、静止→回転変換回路11での変換により得られた値は、d−q回転座標上の電圧指令発生回路18からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0113】
ここで、制限回路14にて、制御器13への一方の軸のみの入力、すなわちここではd軸の入力に制限を与えてその入力の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0114】
制御器13からの一方の軸の出力、すなわちここではd軸の出力と、他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【0115】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0116】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0117】
なお、本実施の形態では、制御器13への一方の軸、すなわちd軸の入力に制限を与えてその入力の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13への他方の軸のみの入力、すなわちq軸の入力に制限を与えてその入力の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0118】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されていない場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電圧制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの入力の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0119】
(第7の実施の形態)
図7は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図5と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0120】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図7に示すように、前記図5における制限回路14を省略し、これに代えて、変化率制限回路16を備えた構成としている。
【0121】
変化率制限回路16は、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の出力の変化率の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0122】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0123】
なお、図5と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0124】
図7において、静止→回転変換回路11での変換により得られた値は、d−q回転座標上の電圧指令発生回路18からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0125】
そして、変化率制限回路16にて、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわちここではd軸の出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0126】
制御器13からの他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力と、変化率制限回路16からの出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【0127】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0128】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0129】
なお、本実施の形態では、制御器13からの一方の軸、すなわちd軸の出力の変化率に制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13からの他方の軸のみの出力、すなわちq軸の出力の変化率に制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0130】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されていない場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電圧制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0131】
(第8の実施の形態)
図8は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図5と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0132】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図8に示すように、前記図5における制限回路14を省略し、これに代えて、許容値付変化率制限回路17を備えた構成としている。
【0133】
許容値付変化率制限回路17は、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0134】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0135】
なお、図5と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0136】
図8において、静止→回転変換回路11での変換により得られた値は、d−q回転座標上の電圧指令発生回路18からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0137】
そして、許容値付変化率制限回路17にて、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわちここではd軸の出力の変化率の大きさが、許容値以内の時にはその入力をそのまま出力するが、許容値を超えた時には、d軸の出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0138】
制御器13からの他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力と、許容値付変化率制限回路17からの出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【0139】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0140】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0141】
なお、本実施の形態では、制御器13からの一方の軸、すなわちd軸の出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13からの他方の軸のみの出力、すなわちq軸の出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0142】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されていない場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電圧制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0143】
(第9の実施の形態)
図9は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図1と同一要素には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0144】
図9において、制御装置は、位相検出回路10と、静止→回転変換回路11と、電圧減少分検出回路19と、電流指令零化回路20と、電流指令発生回路12とから構成している。
【0145】
位相検出回路10は、電力系統の電源電圧の位相を検出する。
【0146】
静止→回転変換回路11は、電力系統の電源電圧を、位相検出回路10からの出力を用いて、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電源電圧成分と一致する軸成分の電圧、および当該電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分の電圧に変換する。
【0147】
電圧減少分検出回路19は、静止→回転変換回路11からの出力のうち、電源電圧成分と一致する軸成分の電圧を入力とし、その電圧の減少分が設定値以上であることを検知する。
【0148】
電流指令零化回路20は、電圧減少分検出回路19からの出力を入力とし、電圧の減少分が設定値以上であることが検知されると、電力系統の異常と判定して電流指令発生回路12から発生する電流指令を零にする。
【0149】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0150】
図9において、電力変換装置1は、系統連系スイッチ9を投入して、変圧器2を介して電力系統と連系している。
【0151】
この系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている定常時は、電力貯蔵装置7に充電や電力貯蔵装置7から放電するため、制御電流源として動作する。
【0152】
電力系統に何らかの異常が発生した場合には、系統連系スイツチ9を開放して、電力変換装置1から負荷8に給電する。
【0153】
電力系統の電源電圧は、電源電圧の位相を検出する位相検出回路10からの出力を用い、静止→回転変換回路11で電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電圧へと変換される。
【0154】
ここでは、d−q回転座標上の電源電圧の向きは、q軸と一致するようにとっている。
【0155】
よって、電力系統が正常な時には、q軸成分のみ値があり、d軸成分は検出されない。
【0156】
一方、電力系統に何らかの異常が発生した場合には、q軸電圧成分Vqが急激に減少する。
【0157】
この減少を電圧減少分検出回路19にて検出し、この電圧減少値が設定値以上であることを検知すると、電力系統の異常と判定して、電流指令零化回路20により電流指令発生回路12からの電流指令を強制的に零にし、電力変換装置1の出力電流を零にする。
【0158】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電源電圧成分と一致する軸成分の減少分が設定値以上であることを検知することで、電力系統の異常と判定して電力変換装置1の出力電流指令を零にするようにしているので、電力系統異常を迅速に検出して、電力系統異常時に無理な電流制御を継続することによって電力変換装置1が出力する電圧時間積の増加を抑制することができ、電力系統異常時に電流制御を続けることによって生じる変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0159】
(第10の実施の形態)
図10は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図9と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0160】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図10に示すように、前記図9における電圧減少分検出回路19を省略し、これに代えて、電圧増加分検出回路21を備えた構成としている。
【0161】
電圧増加分検出回路21は、静止→回転変換回路11からの出力のうち、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分の電圧を入力とし、その電圧の増加分が設定値以上であることを検知する。
【0162】
電流指令零化回路20は、電圧増加分検出回路21からの出力を入力とし、電圧の増加分が設定値以上であることが検知されると、電力系統の異常と判定して電流指令発生回路12から発生する電流指令を零にする。
【0163】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0164】
なお、図9と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0165】
図10において、系統連系スイッチ8を投入して系統連系されている定常時は、電力系統の電源電圧成分は、q軸電圧成分Vqのみ値があり、d軸電圧成分Vdは検出されない。
【0166】
電力系統に何らかの異常が発生した場合には、d軸電圧成分Vdが急激に増加する。
【0167】
この増加を電圧増加分検出回路14にて検出し、この電圧増加値が設定値以上であることを検知すると、電力系統の異常と判定して、電流指令零化回路20により電流指令発生回路12からの電流指令を強制的に零にし、電力変換装置1の出力電流を零にする。
【0168】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分の増加分が設定値以上であることを検知することで、電力系統の異常と判定して電力変換装置1の出力電流指令を零にするようにしているので、電力系統異常を迅速に検出して、電力系統異常時に無理な電流制御を継続することによって電力変換装置1が出力する電圧時間積の増加を抑制することができ、電力系統異常時に電流制御を続けることによって生じる変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0169】
(第11の実施の形態)
図11は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図9と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0170】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図11に示すように、前記図9における静止→回転変換回路11および電圧減少分検出回路19を省略し、これに代えて、変化率検出回路22を備えた構成としている。
【0171】
変化率検出回路22は、前記位相検出回路10からの出力を入力とし、当該検出位相の変化率の大きさが制限値を超えたことを検知する。
【0172】
電流指令零化回路20は、変化率検出回路22からの出力を入力とし、検出位相の変化率の大きさが制限値を超えたことが検知されると、電力系統の異常と判定して電流指令発生回路12から発生する電流指令を零にする。
【0173】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0174】
なお、図9と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0175】
図11において、系統連系スイッチ8を投入して系統連系されている定常時は、連系点電圧は、位相検出回路10にてその位相が検出される。
【0176】
電力系統に何らかの異常が発生した場合には、検出位相が急激に変化する。
【0177】
この変化を変化率検出回路15にて検出し、この検出位相の変化率の大きさが制限値を超えたことを検知すると、電力系統の異常と判定して、電流指令零化回路20により電流指令発生回路12からの電流指令を強制的に零にし、電力変換装置1の出力電流を零にする。
【0178】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ8を投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧の位相を検出してその変化率の大きさが制限値を超えたことを検知することで、電力系統の異常と判定して電力変換装置1の出力電流指令を零にするようにしているので、電力系統異常を迅速に検出して、電力系統異常時に無理な電流制御を継続することによって電力変換装置1が出力する電圧時間積の増加を抑制することができ、電力系統異常時に電流制御を続けることによって生じる変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0179】
(その他の実施の形態)
図12は、高速バックアップ機能を有する電源システムの概略構成例を示すブロック図であり、図1乃至図11と同一要素には同一符号を付して示している。
【0180】
すなわち、本実施の形態による電源システムは、図12に示すように、電源を有する電力系統から負荷8および電力変換装置1を切り離し可能な系統連系スイッチ8と、電力変換装置1に備えられ、電力を貯蔵する二次電池等の電力貯蔵装置7と、電力変換装置1の出力を電力系統の電源電圧に一致させるための連系用の変圧器2と、電力系統の連系点の電圧を検出する電圧検出器23と、電力系統の連系点の電圧位相を検出する位相検出器10と、電力変換装置1の出力電圧を検出する電圧検出器24と、電力変換装置1の出力電流を検出する電流検出器25と、電力変換装置1の出力電圧を制御する電圧制御回路26と、電力変換装置1の出力電流を制御する電流制御回路27と、電力系統の異常を検出し系統連系スイッチ9を開放/投入する系統異常判定回路28と、電力系統の状態に応じて電流制御と電圧制御とを切り替える切替回路29とから構成している。
【0181】
かかる高速バックアップ機能を有する電源システムを構成する電力変換システムに、前記第1の実施の形態乃至第11の実施の形態のいずれかを適用することにより、本システムにおいても、前述の場合と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0182】
なお、図では、三相のシステムの場合について示しているが、これに限らず、単相のシステムに対しても、ほぼ同じ構成となる。
【符号の説明】
【0183】
0…電源、1…電力変換装置、2…変圧器、3…直流分検出回路、4…偏磁抑制回路、5…電力変換装置の制御回路、6…PWMパターン発生回路、7…電力貯蔵装置、8…負荷、9…系統連系スイッチ、10…位相検出回路、11…静止→回転変換回路、12…電流指令発生回路、13…制御器、14…制限回路、15…回転→静止変換回路、16…変化率制限回路、17…許容値付変化率制限回路、18…電圧指令発生回路、19…電圧減少分検出回路、20…電流指令零化回路、21…電圧増加分検出回路、22…変化率検出回路、23…電圧検出器、24…電圧検出器、25…電流検出器、26…電圧制御回路、27…電流制御回路、28…系統異常判定回路29…切替回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置を変圧器を介して電源を有する電力系統と連系して構成される系統連系電力変換システムの制御装置に係り、特に電力系統事故等の異常が原因で起こる変圧器の偏磁を確実に抑制して、システムの運転継続性を高めるようにした系統連系電力変換システムの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば太陽電池やNaS電池等の直流電源を、電源を有する電力系統と連系する場合には、電力変換装置により直流を交流に変換して接続する必要がある。
【0003】
この場合、電力系統の電圧と上記直流電力を出力する直流電源との電圧整合や、電力変換装置からの直流分の流出を防止するために、電力変換装置を、その出力段に変圧器を設けて電源を有する電力系統と連系して、系統連系電力変換システムを構成していることが多い。
【0004】
電力変換装置は、任意の交流波形を出力することができる反面、スイッチング誤差や電力系統の影響によってその出力に直流成分が重畳し、連系用の変圧器を偏磁させてしまうことがある。
【0005】
そこで、最近では、このような変圧器の偏磁を抑制制御する制御装置が提案されてきている。
【0006】
図13は、この種の従来の系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図である。
【0007】
図13において、直流を交流または交流を直流に変換する電力変換装置1は、連系用の変圧器2を介して電源0を有する電力系統と連系して動作する。
【0008】
変圧器2の偏磁を抑制制御する制御装置は、電力変換装置1の出力電圧の直流成分を直流分検出回路3により検出し、その直流成分の逆向きの直流成分を偏磁抑制回路4により出力し、これを電力変換装置1の制御回路5の出力に重畳させて、PWMパターン発生回路6により電力変換装置1を制御するように構成されている。
【0009】
なお、図13中、Lは電力系統の系統インピーダンスを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述のような従来の系統連系電力変換システムの制御装置においては、次のような問題点がある。
【0011】
すなわち、電力変換装置1の出力電圧の直流成分の検出に際して、少なくとも1周期以上の出力電圧の検出が必要となるため、偏磁抑制制御の効果を得るためには時間がかかる。
【0012】
したがって、電力系統異常等が原因による短時間で生じる偏磁現象を抑制することは難しい。
【0013】
また、電力変換装置1の制御回路5の出力端に直流成分を重畳することは、制御回路5から見ると、その直流成分は外乱として認識される。
【0014】
そして、制御回路5は、この外乱の影響を無くすように働くため、偏磁抑制制御の効き目を弱くするように作用してしまうことがあり、偏磁抑制制御の効果が損なわれてしまう。
【0015】
本発明の目的は、電力系統事故等の異常が原因で起こる変圧器の偏磁を確実に抑制して、システムの運転継続性を高めることが可能な系統連系電力変換システムの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の観点に従った系統連系電力変換システムの制御装置は、直流電源から出力された直流電力を交流電力に変換する電力変換装置を、変圧器を介して、電源を有する電力系統及び負荷に接続し、前記電力系統と連系する点に、当該電力系統から前記負荷および前記電力変換装置を切り離し可能な系統連系スイッチを備え、常時は、前記電力変換装置から出力された交流電力と前記電力系統との電力不平衡補償を行ない、前記電力系統の異常時には、前記系統連系スイッチを開放して前記電力変換装置から前記負荷に給電するようにした系統連系電力変換システムの制御装置において、前記系統連系スイッチを開放して系統連系されていない場合に、電圧制御において、前記電力変換装置の出力電圧の直流成分を抑制するために、前記電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の変化率の大きさを制限して、前記電力変換装置の出力電圧を決定する制御手段を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の系統連系電力変換システムの制御装置によれば、系統連系スイッチを投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電流制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力または入力の大きさを制限するか、あるいは当該出力の変化率の大きさを制限するか、もしくは当該出力の変化率の大きさが設定値を超えた時に当該出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置の出力電圧を決定するか、または系統連系スイッチを開放して系統連系されていない場合に、電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電圧制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力または入力の大きさを制限するか、あるいは当該出力の変化率の大きさを制限するか、もしくは当該出力の変化率の大きさが設定値を超えた時に当該出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置の出力電圧を決定するか、もしくは系統連系スイッチを投入して系統連系されている場合に、システムの所定の電気量に基づいて、電力系統の異常を検知した場合に、電力変換装置の出力電流を制御する電流制御器への電流指令を零にするようにしているので、電力系統事故等の異常が原因で起こる変圧器の偏磁を確実に抑制して、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第1の実施の形態を示すブロック図。
【図2】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第2の実施の形態を示すブロック図。
【図3】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第3の実施の形態を示すブロック図。
【図4】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第4の実施の形態を示すブロック図。
【図5】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第5の実施の形態を示すブロック図。
【図6】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第6の実施の形態を示すブロック図。
【図7】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第7の実施の形態を示すブロック図。
【図8】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第8の実施の形態を示すブロック図。
【図9】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第9の実施の形態を示すブロック図。
【図10】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第10の実施の形態を示すブロック図。
【図11】本発明による系統連系電力変換システムの制御装置の第11の実施の形態を示すブロック図。
【図12】高速バックアップ機能を有する電源システムの概略構成例を示すブロック図。
【図13】従来の系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明では、系統連系スイッチを投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電流制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力または入力の大きさを制限するか、あるいは当該出力の変化率の大きさを制限するか、もしくは当該出力の変化率の大きさが設定値を超えた時に当該出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置の出力電圧を決定するか、または、系統連系スイッチを開放して系統連系されていない場合に、電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電圧制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力または入力の大きさを制限するか、あるいは当該出力の変化率の大きさを制限するか、もしくは当該出力の変化率の大きさが設定値を超えた時に当該出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置の出力電圧を決定するか、もしくは、系統連系スイッチを投入して系統連系されている場合に、システムの所定の電気量に基づいて、電力系統の異常を検知した場合に、電力変換装置の出力電流を制御する電流制御器への電流指令を零にするようにすることにより、電力系統異常を迅速に検出して、電力系統異常時に無理な電流制御を継続することによって電力変換装置が出力する電圧時間積の増加を抑制して、変圧器の偏磁を確実に抑制するものである。
【0020】
以下、上記のような考え方に基づく本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図13と同一要素には同一符号を付して示している。
【0022】
図1において、電力を貯蔵する二次電池等の電力貯蔵装置7を有し、直流を交流または交流を直流に変換する電力変換装置1は、連系用の変圧器2を介して、電源0を有する電力系統および負荷8に並列に接続している。
【0023】
また、電力系統と連系する点に、この電力系統から負荷8および電力変換装置1を切り離し可能な系統連系スイッチ9を設けている。
【0024】
そして、常時は、電力系統側から電力貯蔵装置7に電力を貯蔵もしくは電力貯蔵装置7から電力を放出または無効電力補償もしくは高調波補償あるいは電力不平衡補償を行ない、電力系統の異常時には、系統連系スイッチ9を開放して電力変換装置1から負荷8に給電するようにしている。
【0025】
一方、制御装置は、位相検出回路10と、静止→回転変換回路11と、電流指令発生回路12と、制御器13と、制限回路14と、回転→静止変換回路15と、PWMパターン発生回路6とから構成している。
【0026】
位相検出回路10は、電力系統の電源電圧の位相を検出する。
【0027】
静止→回転変換回路11は、電力変換装置1の出力する電流を、位相検出回路10からの出力を用いて、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電源電圧成分と一致する軸成分の電流、および当該電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分の電流に変換する。
【0028】
電流指令発生回路12は、d−q回転座標上の電流指令を発生する。
【0029】
制御器13は、静止→回転変換回路11からの出力と電流指令発生回路12からの出力との差分を零とするような出力を発生する。
【0030】
制限回路14は、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の出力の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0031】
回転→静止変換回路15は、制御器13からの他方の軸の出力(本例では、電源電圧成分と一致する軸成分)の出力と、制限回路14からの出力とを入力し、位相検出回路10からの出力を用いて、静止座標上の電圧指令に変換する。
【0032】
PWMパターン発生回路6は、回転→静止変換回路15からの出力に基づいて、電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0033】
なお、図1中、Lは電力系統の系統インピーダンスを示している。
【0034】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0035】
図1において、電力変換装置1は、系統連系スイッチ9を投入して、変圧器2を介して電力系統と連系している。
【0036】
この系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている定常時は、電力貯蔵装置7に充電や電力貯蔵装置7から放電するため、制御電流源として動作する。
【0037】
電力変換装置1の出力する電流は、電源電圧の位相を検出する位相検出回路10からの出力を用い、静止→回転変換回路11で電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電流へと変換される。
【0038】
ここでは、d−q回転座標上の電源電圧の向きはq軸と一致するようにとっている。
【数1】
【0039】
この変換により得られた値は、d−q回転座標上の電流指令発生回路12からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0040】
なお、制御器13としては、例えば比例制御器や比例積分制御器、さらに必要に応じて、非干渉制御器が用いられる。
【0041】
そして、制限回路14にて、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわちここではd軸の出力に制限を与えてその出力の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0042】
制御器13からの他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力と、制限回路14からの出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【数2】
【0043】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0044】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、制御器13からの一方の軸、すなわちd軸の出力に制限を与えてその出力の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13からの他方の軸のみの出力、すなわちq軸の出力に制限を与えてその出力の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0046】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電流制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0047】
(第2の実施の形態)
図2は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0048】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図2に示すように、前記図1における制限回路14を、制御器13の入力段に設けた構成としている。
【0049】
制限回路14は、制御器13への一方の軸のみの入力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の入力の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0050】
回転→静止変換回路15は、制御器13からの一方の軸の出力と、他方の軸の出力とを入力し、位相検出回路10からの出力を用いて、静止座標上の電圧指令に変換する。
【0051】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0052】
なお、図1と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0053】
図2において、静止→回転変換回路11での変換により得られた値は、d−q回転座標上の電流指令発生回路12からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0054】
ここで、制限回路14にて、制御器13への一方の軸のみの入力、すなわちここではd軸の入力に制限を与えてその入力の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0055】
制御器13からの一方の軸の出力、すなわちここではd軸の出力と、他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【0056】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0057】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、制御器13への一方の軸、すなわちd軸の入力に制限を与えてその入力の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13への他方の軸のみの入力、すなわちq軸の入力に制限を与えてその入力の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0059】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電流制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの入力の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0060】
(第3の実施の形態)
図3は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0061】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図3に示すように、前記図1における制限回路14を省略し、これに代えて、変化率制限回路16を備えた構成としている。
【0062】
変化率制限回路16は、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の出力の変化率の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0063】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0064】
なお、図1と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0065】
図3において、静止→回転変換回路11での変換により得られた値は、d−q回転座標上の電流指令発生回路12からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0066】
そして、変化率制限回路16にて、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわちここではd軸の出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0067】
制御器13からの他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力と、変化率制限回路16からの出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【0068】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0069】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0070】
なお、本実施の形態では、制御器13からの一方の軸、すなわちd軸の出力の変化率に制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13からの他方の軸のみの出力、すなわちq軸の出力の変化率に制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0071】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電流制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0072】
(第4の実施の形態)
図4は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0073】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図4に示すように、前記図1における制限回路14を省略し、これに代えて、許容値付変化率制限回路17を備えた構成としている。
【0074】
許容値付変化率制限回路17は、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0075】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0076】
なお、図1と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0077】
図4において、静止→回転変換回路11での変換により得られた値は、d−q回転座標上の電流指令発生回路12からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0078】
そして、許容値付変化率制限回路17にて、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわちここではd軸の出力の変化率の大きさが、許容値以内の時にはその入力をそのまま出力するが、許容値を超えた時には、d軸の出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0079】
制御器13からの他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力と、許容値付変化率制限回路17からの出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【0080】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0081】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0082】
なお、本実施の形態では、制御器13からの一方の軸、すなわちd軸の出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13からの他方の軸のみの出力、すなわちq軸の出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0083】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電流制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0084】
(第5の実施の形態)
図5は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図1と同一要素には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0085】
図5において、制御装置は、位相検出回路10と、静止→回転変換回路11と、電圧指令発生回路18と、制御器13と、制限回路14と、回転→静止変換回路15と、PWMパターン発生回路6とから構成している。
【0086】
位相検出回路10は、電力系統の電源電圧の位相を検出する。
【0087】
静止→回転変換回路11は、電力変換装置1の出力する電圧を、位相検出回路10からの出力を用いて、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電源電圧成分と一致する軸成分の電圧、および当該電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分の電圧に変換する。
【0088】
電圧指令発生回路18は、d−q回転座標上の電圧指令を発生する。
【0089】
制御器13は、静止→回転変換回路11からの出力と電圧指令発生回路18からの出力との差分を零とするような出力を発生する。
【0090】
制限回路14は、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の出力の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0091】
回転→静止変換回路15は、制御器13からの他方の軸の出力(本例では、電源電圧成分と一致する軸成分)の出力と、制限回路14からの出力とを入力し、位相検出回路10からの出力を用いて、静止座標上の電圧指令に変換する。
【0092】
PWMパターン発生回路6は、回転→静止変換回路15からの出力に基づいて、電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0093】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0094】
図5において、電力変換装置1は、系統連系スイッチ9を投入して、変圧器2を介して電力系統と連系している。
【0095】
この系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている定常時は、電力貯蔵装置7に充電や電力貯蔵装置7から放電するため、制御電圧源として動作する。
【0096】
電力変換装置1の出力する電圧は、電源電圧の位相を検出する位相検出回路10からの出力を用い、静止→回転変換回路11で電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電圧へと変換される。
【0097】
ここでは、d−q回転座標上の電源電圧の向きはq軸と一致するようにとっている。
【0098】
この変換により得られた値は、d−q回転座標上の電圧指令発生回路18からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0099】
なお、制御器13としては、例えば比例制御器や比例積分制御器、さらに必要に応じて、非干渉制御器が用いられる。
【0100】
そして、制限回路14にて、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわちここではd軸の出力に制限を与えてその出力の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0101】
制御器13からの他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力と、制限回路14からの出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【0102】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0103】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0104】
なお、本実施の形態では、制御器13からの一方の軸、すなわちd軸の出力に制限を与えてその出力の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13からの他方の軸のみの出力、すなわちq軸の出力に制限を与えてその出力の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0105】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されていない場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上電圧制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0106】
(第6の実施の形態)
図6は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図5と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0107】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図6に示すように、前記図5における制限回路14を、制御器13の入力段に設けた構成としている。
【0108】
制限回路14は、制御器13への一方の軸のみの入力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の入力の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0109】
回転→静止変換回路15は、制御器13からの一方の軸の出力と、他方の軸の出力とを入力し、位相検出回路10からの出力を用いて、静止座標上の電圧指令に変換する。
【0110】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0111】
なお、図5と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0112】
図6において、静止→回転変換回路11での変換により得られた値は、d−q回転座標上の電圧指令発生回路18からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0113】
ここで、制限回路14にて、制御器13への一方の軸のみの入力、すなわちここではd軸の入力に制限を与えてその入力の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0114】
制御器13からの一方の軸の出力、すなわちここではd軸の出力と、他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【0115】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0116】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0117】
なお、本実施の形態では、制御器13への一方の軸、すなわちd軸の入力に制限を与えてその入力の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13への他方の軸のみの入力、すなわちq軸の入力に制限を与えてその入力の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0118】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されていない場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電圧制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの入力の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0119】
(第7の実施の形態)
図7は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図5と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0120】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図7に示すように、前記図5における制限回路14を省略し、これに代えて、変化率制限回路16を備えた構成としている。
【0121】
変化率制限回路16は、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の出力の変化率の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0122】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0123】
なお、図5と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0124】
図7において、静止→回転変換回路11での変換により得られた値は、d−q回転座標上の電圧指令発生回路18からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0125】
そして、変化率制限回路16にて、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわちここではd軸の出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0126】
制御器13からの他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力と、変化率制限回路16からの出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【0127】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0128】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0129】
なお、本実施の形態では、制御器13からの一方の軸、すなわちd軸の出力の変化率に制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13からの他方の軸のみの出力、すなわちq軸の出力の変化率に制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0130】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されていない場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電圧制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0131】
(第8の実施の形態)
図8は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図5と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0132】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図8に示すように、前記図5における制限回路14を省略し、これに代えて、許容値付変化率制限回路17を備えた構成としている。
【0133】
許容値付変化率制限回路17は、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわち電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみ(本例では、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分)の出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさを制限して、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0134】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0135】
なお、図5と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0136】
図8において、静止→回転変換回路11での変換により得られた値は、d−q回転座標上の電圧指令発生回路18からの出力との差分を求め、制御器13にてこの差分を零にするように出力を調整する。
【0137】
そして、許容値付変化率制限回路17にて、制御器13からの一方の軸のみの出力、すなわちここではd軸の出力の変化率の大きさが、許容値以内の時にはその入力をそのまま出力するが、許容値を超えた時には、d軸の出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限し、d−q回転座標上の変調波を得る。
【0138】
制御器13からの他方の軸の出力、すなわちここではq軸の出力と、許容値付変化率制限回路17からの出力は、位相検出回路10からの出力を用いて、回転→静止変換回路15にて静止座標上の電圧指令へと変換する。
【0139】
この回転→静止変換回路15からの出力により、PWMパターン発生回路6にて電力変換装置1の自己消弧型素子のオンオフを制御するゲートパルス信号を発生する。
【0140】
このようにして電力変換装置1の出力電圧を決定し、d軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0141】
なお、本実施の形態では、制御器13からの一方の軸、すなわちd軸の出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限する場合について説明しているが、これに限らず、制御器13からの他方の軸のみの出力、すなわちq軸の出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさに制限を与えてその出力の変化率の大きさを制限するようにしてもよく、この場合には、q軸の変調波の急激な変化を抑制することによって、電力変換装置1が出力する電圧時間積が増加することを抑制することができる。
【0142】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されていない場合に、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電圧制御器における、電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の変化率の大きさが許容値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさを制限して、電力変換装置1の出力電圧を決定するようにしているので、電力変換装置1の出力電圧の電圧時間積の増加を制限して、変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0143】
(第9の実施の形態)
図9は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図1と同一要素には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0144】
図9において、制御装置は、位相検出回路10と、静止→回転変換回路11と、電圧減少分検出回路19と、電流指令零化回路20と、電流指令発生回路12とから構成している。
【0145】
位相検出回路10は、電力系統の電源電圧の位相を検出する。
【0146】
静止→回転変換回路11は、電力系統の電源電圧を、位相検出回路10からの出力を用いて、電力系統の電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電源電圧成分と一致する軸成分の電圧、および当該電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分の電圧に変換する。
【0147】
電圧減少分検出回路19は、静止→回転変換回路11からの出力のうち、電源電圧成分と一致する軸成分の電圧を入力とし、その電圧の減少分が設定値以上であることを検知する。
【0148】
電流指令零化回路20は、電圧減少分検出回路19からの出力を入力とし、電圧の減少分が設定値以上であることが検知されると、電力系統の異常と判定して電流指令発生回路12から発生する電流指令を零にする。
【0149】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0150】
図9において、電力変換装置1は、系統連系スイッチ9を投入して、変圧器2を介して電力系統と連系している。
【0151】
この系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている定常時は、電力貯蔵装置7に充電や電力貯蔵装置7から放電するため、制御電流源として動作する。
【0152】
電力系統に何らかの異常が発生した場合には、系統連系スイツチ9を開放して、電力変換装置1から負荷8に給電する。
【0153】
電力系統の電源電圧は、電源電圧の位相を検出する位相検出回路10からの出力を用い、静止→回転変換回路11で電源電圧と同期回転するd−q回転座標上の電圧へと変換される。
【0154】
ここでは、d−q回転座標上の電源電圧の向きは、q軸と一致するようにとっている。
【0155】
よって、電力系統が正常な時には、q軸成分のみ値があり、d軸成分は検出されない。
【0156】
一方、電力系統に何らかの異常が発生した場合には、q軸電圧成分Vqが急激に減少する。
【0157】
この減少を電圧減少分検出回路19にて検出し、この電圧減少値が設定値以上であることを検知すると、電力系統の異常と判定して、電流指令零化回路20により電流指令発生回路12からの電流指令を強制的に零にし、電力変換装置1の出力電流を零にする。
【0158】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電源電圧成分と一致する軸成分の減少分が設定値以上であることを検知することで、電力系統の異常と判定して電力変換装置1の出力電流指令を零にするようにしているので、電力系統異常を迅速に検出して、電力系統異常時に無理な電流制御を継続することによって電力変換装置1が出力する電圧時間積の増加を抑制することができ、電力系統異常時に電流制御を続けることによって生じる変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0159】
(第10の実施の形態)
図10は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図9と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0160】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図10に示すように、前記図9における電圧減少分検出回路19を省略し、これに代えて、電圧増加分検出回路21を備えた構成としている。
【0161】
電圧増加分検出回路21は、静止→回転変換回路11からの出力のうち、電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分の電圧を入力とし、その電圧の増加分が設定値以上であることを検知する。
【0162】
電流指令零化回路20は、電圧増加分検出回路21からの出力を入力とし、電圧の増加分が設定値以上であることが検知されると、電力系統の異常と判定して電流指令発生回路12から発生する電流指令を零にする。
【0163】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0164】
なお、図9と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0165】
図10において、系統連系スイッチ8を投入して系統連系されている定常時は、電力系統の電源電圧成分は、q軸電圧成分Vqのみ値があり、d軸電圧成分Vdは検出されない。
【0166】
電力系統に何らかの異常が発生した場合には、d軸電圧成分Vdが急激に増加する。
【0167】
この増加を電圧増加分検出回路14にて検出し、この電圧増加値が設定値以上であることを検知すると、電力系統の異常と判定して、電流指令零化回路20により電流指令発生回路12からの電流指令を強制的に零にし、電力変換装置1の出力電流を零にする。
【0168】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ9を投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電源電圧成分と一致する軸と直交する軸成分の増加分が設定値以上であることを検知することで、電力系統の異常と判定して電力変換装置1の出力電流指令を零にするようにしているので、電力系統異常を迅速に検出して、電力系統異常時に無理な電流制御を継続することによって電力変換装置1が出力する電圧時間積の増加を抑制することができ、電力系統異常時に電流制御を続けることによって生じる変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0169】
(第11の実施の形態)
図11は、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の構成例を示すブロック図であり、図9と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0170】
すなわち、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置は、図11に示すように、前記図9における静止→回転変換回路11および電圧減少分検出回路19を省略し、これに代えて、変化率検出回路22を備えた構成としている。
【0171】
変化率検出回路22は、前記位相検出回路10からの出力を入力とし、当該検出位相の変化率の大きさが制限値を超えたことを検知する。
【0172】
電流指令零化回路20は、変化率検出回路22からの出力を入力とし、検出位相の変化率の大きさが制限値を超えたことが検知されると、電力系統の異常と判定して電流指令発生回路12から発生する電流指令を零にする。
【0173】
次に、以上のように構成した本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置の作用について説明する。
【0174】
なお、図9と同一部分の作用についてはその説明を省略し、ここでは異なる部分の作用についてのみ述べる。
【0175】
図11において、系統連系スイッチ8を投入して系統連系されている定常時は、連系点電圧は、位相検出回路10にてその位相が検出される。
【0176】
電力系統に何らかの異常が発生した場合には、検出位相が急激に変化する。
【0177】
この変化を変化率検出回路15にて検出し、この検出位相の変化率の大きさが制限値を超えたことを検知すると、電力系統の異常と判定して、電流指令零化回路20により電流指令発生回路12からの電流指令を強制的に零にし、電力変換装置1の出力電流を零にする。
【0178】
上述したように、本実施の形態による系統連系電力変換システムの制御装置では、系統連系スイッチ8を投入して系統連系されている場合に、電力系統の電源電圧の位相を検出してその変化率の大きさが制限値を超えたことを検知することで、電力系統の異常と判定して電力変換装置1の出力電流指令を零にするようにしているので、電力系統異常を迅速に検出して、電力系統異常時に無理な電流制御を継続することによって電力変換装置1が出力する電圧時間積の増加を抑制することができ、電力系統異常時に電流制御を続けることによって生じる変圧器2の偏磁を確実に抑制することができ、システムの運転継続性を高めることが可能となる。
【0179】
(その他の実施の形態)
図12は、高速バックアップ機能を有する電源システムの概略構成例を示すブロック図であり、図1乃至図11と同一要素には同一符号を付して示している。
【0180】
すなわち、本実施の形態による電源システムは、図12に示すように、電源を有する電力系統から負荷8および電力変換装置1を切り離し可能な系統連系スイッチ8と、電力変換装置1に備えられ、電力を貯蔵する二次電池等の電力貯蔵装置7と、電力変換装置1の出力を電力系統の電源電圧に一致させるための連系用の変圧器2と、電力系統の連系点の電圧を検出する電圧検出器23と、電力系統の連系点の電圧位相を検出する位相検出器10と、電力変換装置1の出力電圧を検出する電圧検出器24と、電力変換装置1の出力電流を検出する電流検出器25と、電力変換装置1の出力電圧を制御する電圧制御回路26と、電力変換装置1の出力電流を制御する電流制御回路27と、電力系統の異常を検出し系統連系スイッチ9を開放/投入する系統異常判定回路28と、電力系統の状態に応じて電流制御と電圧制御とを切り替える切替回路29とから構成している。
【0181】
かかる高速バックアップ機能を有する電源システムを構成する電力変換システムに、前記第1の実施の形態乃至第11の実施の形態のいずれかを適用することにより、本システムにおいても、前述の場合と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0182】
なお、図では、三相のシステムの場合について示しているが、これに限らず、単相のシステムに対しても、ほぼ同じ構成となる。
【符号の説明】
【0183】
0…電源、1…電力変換装置、2…変圧器、3…直流分検出回路、4…偏磁抑制回路、5…電力変換装置の制御回路、6…PWMパターン発生回路、7…電力貯蔵装置、8…負荷、9…系統連系スイッチ、10…位相検出回路、11…静止→回転変換回路、12…電流指令発生回路、13…制御器、14…制限回路、15…回転→静止変換回路、16…変化率制限回路、17…許容値付変化率制限回路、18…電圧指令発生回路、19…電圧減少分検出回路、20…電流指令零化回路、21…電圧増加分検出回路、22…変化率検出回路、23…電圧検出器、24…電圧検出器、25…電流検出器、26…電圧制御回路、27…電流制御回路、28…系統異常判定回路29…切替回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から出力された直流電力を交流電力に変換する電力変換装置を、変圧器を介して、電源を有する電力系統及び負荷に接続し、前記電力系統と連系する点に、当該電力系統から前記負荷および前記電力変換装置を切り離し可能な系統連系スイッチを備え、常時は、前記電力変換装置から出力された交流電力と前記電力系統との電力不平衡補償を行ない、前記電力系統の異常時には、前記系統連系スイッチを開放して前記電力変換装置から前記負荷に給電するようにした系統連系電力変換システムの制御装置において、
前記系統連系スイッチを開放して系統連系されていない場合に、電圧制御において、前記電力変換装置の出力電圧の直流成分を抑制するために、前記電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の変化率の大きさを制限して、前記電力変換装置の出力電圧を決定する制御手段
を備えたことを特徴とする系統連系電力変換システムの制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記電圧制御において、前記電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の変化率の大きさが設定値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさを制限すること
を特徴とする請求項1に記載の系統連系電力変換システムの制御装置。
【請求項1】
直流電源から出力された直流電力を交流電力に変換する電力変換装置を、変圧器を介して、電源を有する電力系統及び負荷に接続し、前記電力系統と連系する点に、当該電力系統から前記負荷および前記電力変換装置を切り離し可能な系統連系スイッチを備え、常時は、前記電力変換装置から出力された交流電力と前記電力系統との電力不平衡補償を行ない、前記電力系統の異常時には、前記系統連系スイッチを開放して前記電力変換装置から前記負荷に給電するようにした系統連系電力変換システムの制御装置において、
前記系統連系スイッチを開放して系統連系されていない場合に、電圧制御において、前記電力変換装置の出力電圧の直流成分を抑制するために、前記電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の変化率の大きさを制限して、前記電力変換装置の出力電圧を決定する制御手段
を備えたことを特徴とする系統連系電力変換システムの制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記電圧制御において、前記電力系統の電源電圧と同期回転する回転座標上の電源電圧成分と一致する軸成分または当該軸と直交する軸成分のいずれか一方の軸成分のみの出力の変化率の大きさが設定値を超えたことを検知すると、当該出力の変化率の大きさを制限すること
を特徴とする請求項1に記載の系統連系電力変換システムの制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−81797(P2010−81797A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296830(P2009−296830)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【分割の表示】特願2001−119838(P2001−119838)の分割
【原出願日】平成13年4月18日(2001.4.18)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【分割の表示】特願2001−119838(P2001−119838)の分割
【原出願日】平成13年4月18日(2001.4.18)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】
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