説明

紙、厚紙又は繊維材料の他の移動ウェブに多層を直接塗被するための方法

本発明は、紙、厚紙又は繊維材料の他の移動ウェブの製造及び/又は仕上げ中に、紙、厚紙又は繊維材料の他の移動ウェブに多層を直接適用するための方法に関し、多層(2)の個々の層は、複数の液状からペースト状の塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)、特に水性の顔料懸濁液から形成される。本発明によれば、個々の塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)は、それぞれの事前の乾燥なしに、過剰量なしに互いの混合なしにまた接触なしに、繊維質ウェブ(1)に放出されるように意図され、次に続く塗被媒体又は次に続く層よりも低い比重(p1〜pn)及び/又はより低い粘度(η1〜ηn)及び/又はより低い表面張力(δ1〜δn)を有する塗被媒体は、より高い比重(p1〜pn)及び/又はより高い粘度(η1〜ηn)及び/又はより高い表面張力(δ1〜δn)を有する塗被媒体又は層に塗被され、この結果、繊維ウェブ(1)では、第1の層又は下層(U)は、最高値を有する塗被媒体であり、頂部層(D)は、最低値を有する塗被媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、厚紙又は繊維材料の他の移動ウェブの製造及び/又は仕上げ中に、紙、厚紙又は繊維材料の他の移動ウェブに、多層を直接塗被するための方法に関し、多層の個々の層が複数の液状からペースト状の塗被媒体、特に水性の顔料懸濁液から形成される。
【背景技術】
【0002】
経済的理由で、紙、厚紙又は他の繊維ウェブは、現在、主に最高10m以上の大きな幅で、同様に高い機械速度で製造されまた仕上げられる。
【0003】
優れた印刷可能性を達成するために、これらのウェブは、オフライン又はオンラインで運転される塗工工程によって処理されなければならない。このため、非接触塗被の形態の現在の塗工方法が使用されることが多く、塗被される媒体は輪郭層として繊維ウェブに堆積される。塗被媒体は、無機顔料、天然又は合成のバインダ及び化学助剤の混合物から構成される。この例の塗工基材の平滑性及び粗さは、基材、すなわち繊維ウェブの基本的な粗さ又は平滑度に左右される。塗被媒体の量を節約できるために、1:1方法として公知のものでこの塗被を実施するための試みが行われている。このことは、塗工すべき繊維ウェブに留まるのと同じ量の媒体のみを塗被すればよいことを意味する。これと反対に、塗被媒体量の約8〜10倍を塗被しなければならず、次に、様々なドクタ要素によって所望の塗工量、例えば6〜12g/m2に再び掻き取られなければならない過剰塗被方法が知られている。このことから、1:1の塗被の場合、塗被すべき量が非常に小さいことが理解される。
【0004】
いずれにしろ、意図は、ウェブ幅又は動作幅全体に達する均一な塗被層の達成である。
【0005】
より速く繊維ウェブが機械の中を走る場合、均一性に対するこの要件を実施することは、なおさら困難であり、さらに、繊維ウェブ及び塗被媒体の品質にも左右される。公知の1:1のアプリケータ又は塗被ユニットは、カーテン及びスプレアプリケータである。
【0006】
閉じられまた実質的に重力に従うカーテンを製造するこの種類のアプリケータは、独国特許出願公開第A1−19755625号明細書に見ることができる。圧力で作動するスプレアプリケータが、独国特許出願公開第A1−4402627号明細書によって開示されている。
【0007】
述べたように、カーテンアプリケータで製造されまた特定の力、例えば塗被媒体に付与される静電力に基づきあるいは重力の影響下で移動面又は繊維ウェブに落ちるカーテン、同様にスプレアプリケータからのスプレ噴射も、各々の場合に輪郭コートとして繊維ウェブに堆積され、ある時間後に膜としてそこに固定化される。
【0008】
繊維ウェブの高レベルの適用範囲、したがってより優れた印刷品質を達成できるために、繊維ウェブは、頻繁に繰り返して塗工する必要がある。
【0009】
従来技術によれば、このため、各々のウェブ側面について前後に配置されかつ大部分が過剰塗被で動作する複数のアプリケータが必要とされる。
【0010】
この場合、国際公開第98/48113−A1号パンフレットが参照される。
【0011】
従来の文献でない独国特許出願公開第A110057729号明細書には、二重コート、すなわち互いに重なり合う層を単一のアプリケータでまた接触なしにかつ過剰媒体なしに塗被できる塗被ユニット及び方法がすでに開示されている。
【0012】
この場合、2つの「コート」の混合がそれらの境界領域で頻繁に行われ、このことは、中間乾燥の後にのみ第2のコートを塗被できることを意味し、これは、工程及び装置に関して追加の出費を伴う。この装置又はこの方法は、2つよりも多くの層を塗被しなければならない場合に不適切である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のことに基づき、本発明の目的は、中間乾燥なしに移動繊維ウェブの片側に多層を塗被できる適切な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、請求項1の特徴によって達成される。
【0015】
請求項1によれば、本発明の目的は、個々の塗被媒体が、それぞれの事前の乾燥なしに、すなわち、ウェットオンウェットでまた過剰量なしに、すなわち1:1でまた接触なしに、繊維ウェブに堆積されることによって達成される。この場合、本発明によれば、次に続く塗被媒体又は次に続く層よりも低い比重及び/又はより低い粘度及び/又はより低い表面張力を有する前記塗被媒体は、より高い比重及び/又はより高い粘度及び/又はより高い表面張力を有する塗被媒体又は層に塗被される。この結果、繊維ウェブは、前述の値の内の最高値を有する塗被媒体と接触することになる。言い換えれば、繊維質ウェブに配置された第1の層は、前述の値の内の最高値を有する層であり、頂部層は、最低値を有する塗被媒体又は層である。
【0016】
例えば、より軽い塗被媒体(より低い比重を有する)は、その物理的の浮力効果のためより重い層に位置して留まる。
【0017】
この結果、個々の塗被媒体のブレンド又は混合又は相分離は行われない。このようにして形成された多層は、この結果、非常に具体的に形成可能である。しかし、主に、このような多層は、未塗工の繊維ウェブの優れた適用範囲を保証する。このことが単一でコンパクトなアプリケータで達成できるという事実により、本発明のさらなる利点を構成する巨大投資が節減される。
【0018】
本発明による代替実施形態において、多層を形成するための個々の塗被媒体が互いに別々に放出され、また個々の塗被媒体又は液体流が放出されるとき、それらが共に導かれるか又は繊維ウェブの方向に集中させられて、サンドウィッチ状の多重噴射又は多重カーテンを形成し、すでに強固にされた多層として集中形態の繊維ウェブに塗被されることを意図できる。
【0019】
集中は、機械幅のノズルからの放出に続き直ちに、あるいは個々の噴射又は個々のカーテンが形成された後にのみ、実施することができる。集中に続き、アプリケータの種類(自由噴射ノズルアプリケータ又はカーテンアプリケータ)に応じて、サンドウィッチ状の噴射又はサンドウィッチ状のカーテンが生成される。両方の場合、すでにある程度まで安定化された「予め製作された」層が繊維ウェブに置かれる。
【0020】
この代わりとして、個々の塗被媒体を個々の噴射又は個々のカーテンとして互いに別々に放出し、また個々の塗被媒体を互いに別々に繊維ウェブに塗被することも可能であり、この繊維ウェブで、個々の塗被媒体は互いに層状に重ねられて、前記多層を形成する。
【0021】
層が個々に又は集中形態で塗被されるかどうかは、アプリケータがコンパクトに構成されなければならない程度、アプリケータ用の取り付け空間、又は使用すべき塗被媒体の種類に左右されるか、あるいは製品種類に左右される。
【0022】
両方の場合、繊維ウェブの方向のその放出中に、個々の塗被媒体又は集中噴射又はカーテンを平坦な案内要素の上方に案内することが可能である。この案内要素は、好ましくは斜めに設定される。この結果、噴射又は1つ又は複数の多重カーテンの安定化が達成される。
【0023】
特定の例では、個々のカーテンが、サンドウィッチの方法でこの斜めのガイド面に最初に集中させられ、多層又は多重カーテンを形成するために組み合わせられ、次に多層又は多重カーテンが前方に繊維ウェブに案内される場合、有利であり、この場合、前記層又はカーテンは、すでに形成されかつ安定化された多層として繊維ウェブに堆積されかつ固定されることができる。例えば、サンドウィッチ状のカーテンは、1つの個々のカーテンよりも安定している。
【0024】
本発明によれば、多層は、少なくとも2つ〜最大10、好ましくは3つの層から形成されることが意図される。この数で、未塗工の繊維ウェブの特に優れた適用範囲が、少量の個々の層に可能である。
【0025】
本発明の改良形態において、各々の場合に機械幅の広いスロットノズルから、あるいは各々の場合に共通のノズルに属する機械幅の広いスロットから、個々の塗被媒体を個々の噴射又は個々のカーテンとして放出することを意図することができ、個々の噴射又はカーテンの間の距離は、1m未満、特に50cm未満、好ましくは約20cmであり、また個々の幅スロットからの連続放出の時間間隔は、4〜100ミリ秒に設定される。
【0026】
「機械幅」という用語は、製造されるべき又は仕上げられるべき繊維ウェブの幅を少なくとも意味すると理解すべきである。
【0027】
塗被された多層が高い平滑性を有するために、この多層が均等化又は平滑化要素によって均一にされるか又は平滑にされる場合、適切である。この場合、媒体は掻き取られず、その代わりに、層は、説明したように単に均一にされるか又は均等化されるに過ぎない。
【0028】
本発明の別の改良形態は、流量QT(合計流量について)を達成する集中多重噴射又は多重カーテンで構成されることができる。流量は、個々のカーテンの個々の液体流の和から構成される。合計流量QTは、0.5〜30リットル/分/m、特に3〜20リットル/分/m、好ましくは1〜12リットル/分/mであることができる。この多層のために、特に、5〜70%の固体含有量を有する塗被媒体が適切である。
【0029】
塗被すべき合計塗工量Δmは、次のように計算することができる。
Δm total=Σ(hiii)、i=2〜最大10(好ましくは2〜3)
ここで、hiは、湿潤膜厚又はm2当たりの個々の塗被媒体の単位面積当たりの体積であり、Kiは、それぞれの塗被媒体の固体含有量であり、またpiは、それぞれの塗被媒体の比重である。
【0030】
個々の塗被媒体又は液体流は、多重噴射又は多重カーテンを形成するための塗被ノズルから流出し、各々の場合に、次のように計算可能な特定の外側方向の流動速度を有する。
Vi=Qi/Si
ここで、m3/分/mのQiは、各々の個々の塗被媒体の流量を示し、Siは、塗被媒体を放出するスロット間隙のmの間隙幅を示す。
【0031】
本発明によれば、個々の塗被媒体又は層の間の粘度及び/又は表面張力及び/又は比重の差がより高いと、集中多重噴射又は多重カーテン内及び/又は多層内の個々の塗被媒体の混合を回避することができる。
【0032】
本発明者は、放出される個々の媒体又は液体流の膨張挙動における差がより低いと、製造される多重カーテンがより安定していることを確認した。
【0033】
本発明によれば、<50%、特に<30%、好ましくは≦10%の領域の粘度差を確立すべきである。
【0034】
底部に位置する第1の層の粘度(ブルックフィールド100rpmによる)は、500〜100mPasにあるべきである。
【0035】
本発明の別の改良形態において、個々の隣接する塗被媒体に対し作用する膨張力は、30%、特に<20%、好ましくは0<5%を示すことが意図され、膨張力差の設定は、アクリルエステル又はアクリル酸又はメタクリル酸又はアクリルアミド又はアクリロニトリル等をベースとするシックナなどの化学添加剤を加えることによって調整され、これらの化学添加剤の割合は、0.01〜3T、特に0.01〜0.5T、好ましくは0.01〜0.2Tであり、またTは、選択された塗工色における乾燥顔料量の100部当たりの割合である。
【0036】
さらに、炭酸カルシウム又はカオリン又はTiO2又はタルクなどの無機顔料の繊度が頂部に向かって上昇するように多層が形成される場合、非常に有利である。このことは、含有されるより微細な無機顔料、すなわち顔料粒子の最小直径を有する各層が、上に位置するそれぞれの層に存在すべきであることを意味し、多層の頂部層は、次に最後に、最も微細な顔料及び顔料の最高の漂白度を含む。
【0037】
次の混合比が提案される。
−100T(T=部分)CaCO3(*)
−100Tカオリン(*)
−5〜50Tのカオリンを有するCaCO3とカオリンとの混合物(*)
−異なる比率のCaCO3+カオリン及びTiO2又はタルク、CaCO3及びカオリンの割合が支配的である
((*):含有される1つ又は複数の顔料、すなわち炭酸塩のみ又はカオリンのみの乾燥重量に基づく)。
【0038】
この場合、含有される顔料の乾燥重量に基づき、4〜20部の大きさのバインダ量を含有することができる。
【0039】
適切なバインダは、スターチ(トウモロコシ、ジャガイモ、タピオカ、小麦、大麦等)、カゼイン等のような天然のバインダ、及びラテックス(スチレンブタジエンをベースとする又はアクリレート等をベースとする)などの合成バインダである。
【0040】
用意される助剤は、
−粘度及び弾性を調整するためのシックナ(0.01〜10T)
−カーテン安定性を調整するための乳化剤又は界面活性剤(0.01〜3T)
−泡の形成を回避するための消泡剤(0.01〜1T)
−関連の「キャリア」を有する蛍光漂白剤、0.01〜23T
−耐湿剤(架橋剤)、0.01〜3T
−特定の媒体(潤滑剤等)、0.01〜1T
−塗工色を着色するための着色物質、0.1〜5T
−多層カーテンの個々の膜の境界面の間の分離を強化するための界面活性物質、0.01〜1Tであることができ、
この場合、Tは、塗被媒体内の乾燥顔料量の100部当たりの剤の割合を意味する。
【0041】
多層の塗被は、カーテンアプリケータで最も有利に実行することができ、このアプリケータで、複数の異なる液状からペースト状の塗被媒体が、実質的に重力に従い及び/又は静電力の影響下で方向付けられる複数のカーテンの形態であるいは1つの集中しかつ閉じたカーテンの形態で移動繊維ウェブに放出される。
【0042】
代わりに、多層の塗被をスプレ又は自由噴射ノズルアプリケータで実行することも可能であり、このアプリケータで、複数の異なる液状からペースト状の塗被媒体が、圧力下で繊維ウェブに方向付けられた複数の噴射の形態であるいは単一の集中噴射の形態で移動繊維ウェブに放出される。
【0043】
以下、模範的な実施形態を用いて本発明についてより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
図では、同一の構成要素又は要素には同一の名称が与えられる。
【0045】
図1は、複数の異なる液体流Q1、Q2、Q3、Q4、Qn(実施例では、5つの異なる媒体が示されている)から構成された多層2が直接塗被される繊維ウェブ1を示している。多層2の厚さは比較的一定であり、比較的繊維ウェブ表面のトポグラフィとは無関係である。選択した実施例の個々の液体流は、繊維ウェブ1に垂直に落ちる等しい数の個々のカーテンV1〜Vnの形態で放出されることを理解できる。このために使用される接触なしに作用するカーテンアプリケータは、ここには同様に示されていない。
【0046】
個々の液体流Q1〜Qnは、複数の塗工色を含み、これらの塗工色は、それらの組成物及び流動性に関し異なることができ、またそれらの各々は、無機顔料、天然又は合成バインダ及び化学助剤の混合物から構成される。
【0047】
個々の液体流Q1〜Qnは、事前の乾燥なしに、すなわちウェットオンウェットで、また過剰量なしに、すなわち1:1で、また接触なしに繊維ウェブ1に放出される。この場合、本発明によれば、次に続く塗被媒体又は次の液体流又は次に続く層よりも低い比重p及び/又はより低い粘度η及び/又はより低い表面張力δiを有する塗被媒体は、より高い比重及び/又はより高い粘度及び/又はより高い表面張力を有する塗被媒体又は層に塗被される。この結果、繊維ウェブ1は、最高値を有する塗被媒体(この場合、比重p1、粘度η1及び表面張力δ1を有するQ1である)と接触する。言い換えれば、繊維ウェブに配置された第1の層又は下層Uは、最高値を有する層であり、頂部層Dは、p、η又はδの最低値を有する塗被媒体Qn又は層である。
【0048】
このことは、次のように示すことができる。
p1>p2 >p3>p4>pn...pi
η1>η2>η3>η4>ηn...ηi
δ0>δ1>δ2>δ3>δ4>δn...δi
(ここで、δ0は、未塗工の紙の表面張力であり、δ1−nは、個々の着色層の表面張力である)。
【0049】
図2は、図1に原理的に記述されているような多層2の塗被について断面で概略的に示したダブルカーテンアプリケータ3の実施例を使用する本発明の塗被を示している。
【0050】
物理的に分離された2つのカーテンV1とV2形態で、斜めに設定されたガイド面6に塗被される2つの異なる塗被媒体又は液体流Q1とQ2用の2つの送り室4と5を見ることができる。ガイド面6は、第1のカーテンV1の方向に傾いている。このガイド面6で、2つのカーテンV1とV2が組み合わせられるか又は集中させられて、二重層7を形成し、この集中形態で、すなわち多重カーテン8(ここでは二重カーテン)として、互いに上下に配置され、このようにして、走行方向Lに下に移動する繊維ウェブ1に放出される。この場合、第2のカーテンV2又は液体流Qnから得られる層は、頂部層Dとして繊維ウェブに位置することになる。頂部層Dは、層又は液体流Q1の下層U、又は複数のカーテンの場合に同様に下に位置するさらなる層よりもより微細な粒子及びより低い値を有する。垂直に落ちる集中カーテンの長さは、約50〜300mmである。
【0051】
最後に図2には、塗被された多層2、ここでは二重層を均等化、したがって平滑化するように意図されるブレード状の均等化要素9も示されている。
【0052】
図3は、多層2の塗被の異なる原理を示している。図2に示した解決方法から明らかなように、本図ではガイド面6がない。多重又は二重カーテン8を形成するためのカーテンV1とV2の集中は、ここでは、静電力の作用下で実施される。適切な電極10は、ここに示したカーテンV1とV2を中心に向かって共に引っ張り、この結果、ここでも、カーテンV2は、上層、すなわち図1による多重コート2の頂部層Dを再び形成する。
【0053】
図4に示した変形例では、分配室4と5から得られる塗被媒体Q1とQ2は、ガイド面又は他の力の関係なしに、アプリケータ3のスロットノズル11から現れ出た直後に集中される。2つの異なる塗被媒体Q1とQ2を分離するために、単に、アプリケータ3の内部に、例えばポリ四フッ化エチレンの隔壁12があるに過ぎない。既存のカーテンV2は、図1の場合の説明に従って頂部層Dとして再び生じることが理解できる。
【0054】
図5は、事前の集中なしに個々に放出される2つのカーテンV1とV2から、多層も繊維ウェブ1に放出できることを示すように意図される。多層2では、V2が頂部層Dとして再び堆積される。均等化要素9は、同様に再び図4と図5に示されている。
【0055】
図2と図3に示したアプリケータ3は、平行に配置されかつ各々の場合に別個の送りシステム13と14によって充填される複数の広いスロットノズル11を収容することも付言したい。多重カーテン8の形成中、高い安定性及び最適条件を保証するために、特に、次の状態を維持しなければならない。
【0056】
1.ノズルからの、あるいは塗被媒体が集中される点における個々の塗被媒体の外側方向の流動速度は、カーテン8の断面で、速度特性が図6に示した速度特性と同様であるように選択される。
【0057】
例a)すべての塗被媒体又は液体流Q1〜Qnの外側方向の流動速度は等しく、この結果、個々の液状塗被媒体の相境界の間の相対速度なしの速度特性が確立される。剪断又は伸長工程は、多重カーテン内の相境界で行われない。
【0058】
例b)流動速度は、多層カーテンの中心から外側方向に連続的に減少する。内部塗被媒体は、外部塗被媒体よりも高い外側方向の流動速度を有する。隣接する塗被媒体の間の速度差は、最適に20%以下(好ましくは<10%、特に好ましくは<5%)でなければならない。速度特性の凸状の推移が確立される。
【0059】
例c)流動速度は、多層カーテンの中心から外側方向に連続的に上昇する。内部媒体は、外部媒体よりも低い速度を有する。隣接する媒体の間の速度差は、最適に20%以下でなければならない。速度特性の凹状の推移が確立される。
【0060】
ジグザグと同様の推移を有する速度特性は、多層カーテンの形成に不適切であるが、この理由は、相対速度により、伸長及び混合工程が開始され、これによって多重又は多層カーテンが変形し、ゆがみ又は破断するからである。
【0061】
示したすべての図では、炭酸カルシウム又はカオリン又はTiO2又はタルクなどのより微細でより白い顔料は、多層2のこの頂部層Dを形成することが当てはまる。このように、本発明による方法は、高品質塗布層を可能にする。したがって、本発明は、高い印刷品質を示すように意図される紙及び厚紙ウェブに特に適切である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】カーテンアプリケータによって多層で塗工された繊維ウェブの実施例を使用する本発明の原理の概略図である。
【図2】本発明による多層が塗被される本発明によるカーテンアプリケータの概略図である。
【図3】本発明による多層が塗被される本発明によるカーテンアプリケータの概略図である。
【図4】本発明による多層が塗被される本発明によるカーテンアプリケータの概略図である。
【図5】本発明による多層が塗被される本発明によるカーテンアプリケータの概略図である。
【図6】多重カーテンの速度特性を示した本発明の原理の概略図である。
【符号の説明】
【0063】
1 繊維ウェブ
2 多層
3 二重カーテンアプリケータ
4 送り室
5 送り室
6 ガイド面
7 二重層
8 多重カーテン
9 均等化要素
10 電極
11 スロットノズル
12 隔壁
13 送りシステム
14 送りシステム
D 頂部層
L 走行方向
P、Pi 比重
Q1,Q2,Q3,...,Qn 液体流
T 合計流量
Si スロットノズルのギャップ幅
U 下層
V1,V2,V3,...,Vn 個々のカーテン
Vi 個々の塗被媒体又は液体流の外側方向の流動速度
Δm 合計塗工量
hi 湿潤膜厚又は個々の塗被媒体又は液体流の単位面積当たりの体積
Ki 個々の塗被媒体又は液体流の固体含有量
pi 個々の塗被媒体又は液体流の比重
η、ηi 粘度
δ、δi、δo 表面張力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、厚紙又は繊維材料の他の移動ウェブの製造及び/又は仕上げ中に、前記紙、厚紙又は繊維材料の他の移動ウェブに多層を直接塗被するための方法であって、多層(2)の個々の層が複数の液状からペースト状の塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)から、特に水性の顔料懸濁液から形成される方法であって、
前記個々の塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)が、それぞれの事前の乾燥なしに、過剰量なしに互いの混合なしにまた接触なしに、前記繊維質ウェブ(1)に放出され、次に続く塗被媒体又は次に続く層よりも低い比重(p1〜pn)及び/又はより低い粘度(η1〜ηn)及び/又はより低い表面張力(δ1〜δn)を有する前記塗被媒体が、より高い比重(p1〜pn)及び/又はより高い粘度(η1〜ηn)及び/又はより高い表面張力(δ1〜δn)を有する塗被媒体又は層に塗被され、この結果、前記繊維ウェブ(1)では、第1の層又は下層(U)が、最高値を有する塗被媒体であり、前記頂部層(D)が、最低値を有する塗被媒体であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記個々の塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)が互いに別々に放出され、また前記個々の塗被媒体又は液体流が放出されるとき、前記個々の塗被媒体又は液体流が共に導かれるか又は前記繊維ウェブ(1)の方向に集中させられて、サンドウィッチ状の多重噴射又は多重カーテン(8)を形成し、すでに強固にされた多層(2)として集中形態の繊維ウェブに塗被されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記個々の塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)が、個々の噴射又は個々のカーテン(V1,V2...Vn)として互いに別々に放出され、かつ前記繊維ウェブ(1)に互いに別々に重ね合わせて塗被され、次に、前記繊維ウェブで多層(2)を形成することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記個々の塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)が、個々の噴射又は個々のカーテン(V1,V2...Vn)として互いに別々に放出され、また前記個々の塗被媒体又は液体流が前記繊維ウェブ(1)の方向に放出されるとき、平坦なガイド面(6)の上方に各々案内されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記個々の塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)が、個々の噴射又は個々のカーテン(V1,V2...Vn)として互いに別々に放出され、また前記個々の塗被媒体又は液体流が前記繊維ウェブ(1)の方向に放出されるとき、平坦なガイド面(6)の上方に案内され、前記平坦なガイド面で、前記個々の塗被媒体又は液体流が共に導かれるか又は集中させられて、多層(2)を形成し、その後、サンドウィッチ状の多重噴射又は多重カーテン(8)として前記繊維ウェブ(1)に前方に案内され、前記繊維ウェブ(1)で、前記層又はカーテンが、すでに形成された多層(2)として前記繊維ウェブに堆積されかつ固定されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記多層(2)が、少なくとも2つ〜最大10、好ましくは3つの層から形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記個々の塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)が、各々の場合に機械幅の広いスロットノズル(11)から、あるいは各々の場合に共通のノズルに属する機械幅の広いスロットから個々の噴射又は個々のカーテン(V1,V2...Vn)として放出され、前記個々の噴射又はカーテン(V1、V2...Vn)の間の距離が、1m未満、特に50cm未満、好ましくは約20cmであり、また個々のスロットノズル(11)からの連続放出の時間間隔が、≦2秒、特に0≦1秒、好ましくは≦0.5秒に設定されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記繊維ウェブ(1)に塗被された前記多層(2)が、均等化又は平滑化要素(9)で均一にされるか又は平滑にされることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記集中多重噴射又は多重カーテン(8)が、前記個々の層の流量又は液体流(Q1...Qn)から構成される流量(Qi)を達成し、(Qi)が0.5〜30リットル/分/m、特に3〜20リットル/分/m、好ましくは1〜12リットル/分/mにあることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
固体含有量が5〜70%である塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)が、前記多層(2)を形成するために選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記多層(2)を形成するための前記個々の塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)に、次式、すなわち、
Vi=Qi/Si
のように計算される外側方向の流動速度が各々の場合に加えられ、式中、Qi[m3/分/m]は各々の個々の塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)の流量を示し、Si[m]は前記個々の塗被媒体が放出されるスロットノズル(11)の間隙幅を示すことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記個々の塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)又は層の間の粘度(η)及び/又は表面張力(δ)及び/又は粘弾性特性又は伸長性又は膨張力及び/又は比重(p)の差がより高いと、前記集中多重噴射又は多重カーテン(8)内及び/又は前記多層(2)内の前記個々の塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)の混合が回避されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記個々の隣接する塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)の膨張力が、最大30%、特に<20%、好ましくは0<5%であり、膨張力の設定が、アクリルエステル又はアクリル酸又はメタクリル酸又はアクリルアミド又はアクリロニトリル等をベースとするシックナなどの化学添加剤を加えることによって調整され、前記化学添加剤の割合が、0.01〜3T、特に0.01〜0.5T、好ましくは0.01〜0.2Tであり、またTは、それぞれの塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)における、特に塗工色における乾燥顔料量の100部当たりの割合であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
含有されるより微細な無機顔料、すなわち、炭酸カルシウム又はカオリン又はTiO2又はタルクなどの顔料粒子の最小直径を有する各層が、上に位置するそれぞれの層に存在するように、前記多層(2)が形成され、前記多層(2)の頂部層(D)が、次に最後に、最も微細な顔料及び顔料の漂白度を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記多層(2)の塗被がカーテンアプリケータ(3)で実行され、前記アプリケータで、複数の異なる液状からペースト状の塗被媒体又は液体流(Q1〜Qn)が、実質的に重力に従い及び/又は静電力の影響下で方向付けられる複数のカーテンの形態であるいは1つの集中しかつ閉じたカーテン(8)の形態で前記移動繊維ウェブ(1)に放出されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記多層(2)の塗被がスプレ又は自由噴射ノズルアプリケータで実行され、前記アプリケータで、複数の異なる液状からペースト状の塗被媒体が、圧力下で前記繊維ウェブ(1)に方向付けられた複数の噴射の形態であるいは単一の集中噴射の形態で前記移動繊維ウェブ(1)に放出されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−525649(P2008−525649A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547420(P2007−547420)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056047
【国際公開番号】WO2006/069851
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(506294244)ボイス パテント ゲーエムベーハー (57)
【氏名又は名称原語表記】Voith Patent GmbH
【Fターム(参考)】