説明

紙葉類の取出し装置およびこれを備える紙葉類処理装置

【課題】紙葉類の供給動作異常を抑制し、紙葉類を安定して取出すことのできる紙葉類の取出し装置および紙葉類処理装置を提供する。
【解決手段】紙葉類の取出し装置は、複数枚の紙葉類を重ねて投入する投入部51と、投入された複数枚の紙葉類をその重ね方向に移動させて移動方向先端にある紙葉類を上記投入部の一端にある取り出し位置へ供給する供給機構2と、前記取出し位置に供給された紙葉類を1枚ずつ取出す取出し機構56と、少なくとも1つの光学センサを含み、取出し位置における紙葉類の有無を互いに異なる方向から見て検知する複数のセンサ122、127と、前記センサの検知情報に応じて前記供給機構による紙葉類の供給動作を制御する制御部であって、前記光学センサの信号情報と、他のセンサの信号情報との関係を監視し、通常の取出し時に対して、正常でない信号関係が起きた時に、前記光学センサの信号情報を縮退し、他のセンサの信号情報のみを用いる制御部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、郵便物等の集積された紙葉類を1枚ずつ取出して送り出す紙葉類の取出し装置、およびこれを備える紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハガキ、封書などの郵便物を扱う郵便物処理機などの紙葉類処理装置は、例えば、取出し装置、判別装置(OCR)、集積装置、リジェクト(RJ)集積装置、スイッチバック装置、各装置間を結ぶ搬送路、搬送されてきた紙葉類(郵便物)を各装置に振り分けるゲート等を備えている。取出し装置の供給部にセットした複数枚の紙葉類は、取出し装置にて1枚1枚に分離して取出され、判別装置に送られる。判別装置は、紙葉類の判別し、紙葉類の行き先、例えば、RJ集積装置あるいは集積装置を決定するとともに、搬送ルート、例えば、スイッチバック装置を通過させて紙葉類の表裏反転を行うかどうか、などを決定する。その後、紙葉類は、搬送路、ゲート機構を通じて、決定された装置へ搬送され、この装置内で各種処理が行われる。
【0003】
紙葉類処理装置の取出し装置としては、負圧により紙葉類を吸着して取出す吸着取出し方式の取出し装置が提供されている。この取出し装置は、穴開きベルトとエアーチャンバを用いて紙葉類を吸着するエアー吸着構造、および2枚目の紙葉類を吸着して分離し、紙葉類の2枚取りを防止する分離ローラを備えている。また、取出し装置は、紙葉類を供給する供給部に紙葉類の有無あるいは疎密を検出するための光学式センサを備え、センサにより紙葉類がないと判断すると、供給部を動作させて、次の紙葉類を取出し位置へ送り込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−280139号公報
【特許文献2】特開2003−341860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような紙葉類の取出し装置では、紙葉類が例えば、黒色などの光の反射率が低い場合、光学センサなどは通常の検出時のように紙葉類からの反射光を検出することができず、紙葉類の有無を正確に検出することが困難となる。そのため、供給部は、紙葉類を理想よりも速い速度で押し込んでしまい、取出し位置の近傍で紙葉類が詰まり気味になる。この場合、最先の紙葉類を安定して取出すことができない場合や、紙葉類のスキューあるいは重送が生じるおそれがある。
【0006】
この発明の課題は、紙葉類の供給動作異常を抑制し、紙葉類を安定して取出すことのできる紙葉類の取出し装置およびこれを備える紙葉類処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の態様に係る紙葉類の取出し装置は、複数枚の紙葉類を重ねて投入する投入部と、投入された複数枚の紙葉類をその重ね方向に移動させて移動方向先端にある紙葉類を上記投入部の一端にある取り出し位置へ供給する供給機構と、前記取出し位置に供給された紙葉類を前記投入部から1枚ずつ取出す取出し機構と、少なくとも1つの光学センサを含み、前記取出し位置における紙葉類の有無を互いに異なる方向から見て検知する複数のセンサと、前記センサの検知情報に応じて前記供給機構による紙葉類の供給動作を制御する制御部であって、前記光学センサの信号情報と、他のセンサの信号情報との関係を監視し、通常の取出し時に対して、正常では無い信号関係が起きた時に、前記光学センサの信号情報を縮退し、他のセンサの信号情報のみを用いる制御部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施形態に係る郵便物処理装置を概略的に示すブロック図。
【図2】図2は、前記郵便物処理装置の取出し装置を示す平面図。
【図3】図3は、前記取出し装置の投入部を示す斜視図。
【図4】図4は、前記取り出し装置の取出しベルトおよびガイドを示す斜視図。
【図5】図5は、前記ガイドを示す斜視図。
【図6】図6は、前記取出し装置の吸引機構を示す斜視図。
【図7】図7は、前記取出し装置の制御部および各種センサを示すブロック図。
【図8】図8は、前記取出し装置の郵便物の供給動作を示すフローチャート。
【図9】図9は、前記取出し装置における第1書状センサおよび第2書状センサの検出信号情報を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について、詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る紙葉類の取出し装置1を含む紙葉類処理装置100を概略的に示すブロック図である。この紙葉類処理装置100は、取出し装置1の他に、判別部102、リジェクト部104、スイッチバック部106、および集積部108を備えている。なお、本実施形態の処理装置100で処理する紙葉類は郵便物であるが、被処理媒体(すなわち紙葉類)は郵便物に限るものではない。
【0010】
ハガキ、封書などの郵便物は、複数枚積層された状態で取出し装置1にセットされ、取出し装置を後述するように動作することで、搬送路101上に1枚ずつ取出される。搬送路101には、複数組の図示しない無端状の搬送ベルトが搬送路101を挟むように延設されている。取出された郵便物は、搬送ベルトに挟持されて搬送される。
【0011】
搬送路101上に取出された郵便物は、判別部102に送られ、ここで郵便物から各種情報が読み取られる。判別部102は、読み取った各種情報に基づいて、郵便物の搬送姿勢や区分先などを判別する。特に、判別部102は、郵便物に書かれてある郵便番号や住所などの宛先情報を読み取って区分先を判別する。
【0012】
判別部102を通過した後、郵便物は、ゲートG1を介してその搬送方向が振り分けられる。つまり、判別部102でリジェクトすべき郵便物であることが判別された郵便物は、ゲートG1を介してリジェクト部104へ搬送され、リジェクト部に集積される。それ以外の郵便物は、ゲートG1を介して集積部108へ搬送され、この集積部108内に集積される。
【0013】
このとき、郵便物の搬送方向を逆転させる必要があることを判別部102で判別した場合、郵便物はゲートG1およびゲートG2を介してスイッチバック部106へ送り込まれ、ここで搬送方向が逆転される。搬送方向を逆転する必要のない郵便物は、ゲートG2を介してスイッチバック部106を迂回され、集積部108へ搬送される。
【0014】
搬送路101を介して集積部108へ送り込まれた郵便物は、判別部102における判別結果に従って図示しない区分集積ポケットに区分集積される。各区分集積ポケットに区分集積される郵便物は、天地が揃った状態で集積される。
【0015】
次に、紙葉類の取出し装置1について詳細に説明する。
図2は、取出し装置1を示す平面図である。取出し装置1は、複数通の郵便物Pを積層状態で、かつ、各郵便物が水平面に対してほぼ垂直に立った立位状態でセットされる投入部(供給部)51、投入された複数通の郵便物Pをその重ね方向に移動させて移動方向先端にある郵便物Pを後述する取出し位置87へ供給する供給機構2、取出し位置87に供給された郵便物Pをその面方向、ここでは、移動方向とほぼ直交する方向、に送って後述する搬送路10上に取出す取出し機構56、投入部51を介して投入された郵便物Pのうち最先の郵便物Pを取出し位置87に向けて吸引する吸引機構53、取出し位置87から取出される郵便物Pに連れ出される2通目以降の郵便物Pを1通目の郵便物Pから分離する分離機構54、取出し位置87に供給された郵便物Pに対して取出し機構56よりも上流側で負圧を作用させて正逆両方向に回転することで当該郵便物Pの取出し動作を補助する補助機構55、および分離機構54を通過した郵便物Pを取出し速度よりも少し速い速度で引き抜いて下流側へ搬送する搬送機構58を備えている。
【0016】
取出し装置1は、投入部51の一端にある取出し位置87から搬送路10上に取出された郵便物Pの通過を検知する2つのセンサ57a、57b、および複数の搬送ガイド84を有する。2つのセンサ57a、57bは、それぞれ、郵便物Pが通過する搬送路10を挟むように発光部および受光部を有し、その光軸を郵便物Pが遮ることをもって当該郵便物Pの通過を順に検知する。また、複数の搬送ガイド84は、郵便物Pの端辺や面を接触させてその移動や搬送をガイドする。
【0017】
図2および図3に示すように、投入部51には、複数枚の郵便物Pが重ねられた状態で且つ立位状態でまとめて載置される。投入部51の底壁51aには、各郵便物Pの下端辺を当接せしめてその重ね方向(図中矢印F方向)に送るメインベルト126と、郵便物Pの姿勢(傾き)を調整する一対のサブベルト125と、が設けられ、各々独立して駆動可能となっている。メインベルト126は、送り方向Fに沿って、投入部51のほぼ全長に亘って延びている。サブベルト125は、取出し位置87の近傍で、メインベルト126の両側に設けられている。
【0018】
複数枚の郵便物Pのうち移動方向後端にある郵便物Pに面接する位置にはバックアッププレート9が配置されている。バックアッププレート9は、例えば、メインベルト126に簡易的に接続され、メインベルト126と同期して矢印F方向に移動することで郵便物Pを取出し位置方向に押し、移動方向先端の郵便物Pを取出し位置87へ供給する。これらメインベルト126、サブベルト125、バックアッププレート9、およびメインベルト、サブベルトを駆動する後述の駆動モータ90は、供給機構2として機能する。
【0019】
1つの搬送ガイド84は、矢印F方向に沿って投入部51の一側を規定する位置に延設され、各郵便物Pの端辺を案内する。また、他の複数の搬送ガイド84は、投入部51の一端側の取出し位置87に沿って並べて配置され、矢印F方向に供給された移動方向先端の郵便物Pを取出し位置87に停止および位置決めするよう機能するとともに、取出し位置87から取出される郵便物Pの片面に接触して案内するよう機能する。
【0020】
図2に示すように、取出し機構56は、チャンバ52、ガイド60、および真空ポンプ61(または相当品)を有する。真空ポンプ61は配管62を介してチャンバ52内に接続されている。また、取出し機構56は、少なくとも一定領域の部位が取出し位置87に沿って図中矢印D1方向(郵便物Pの取出し方向)に走行する無端状の取出しベルト79、およびこの取出しベルト79を駆動するモータ81を有する。取出しベルト79は、少なくともその一部が、取出し位置87および取出し位置87から連続する搬送路10に沿って図中矢印D1方向に走行するように、複数のローラ80に巻回されて張設されている。
【0021】
ガイド60は、取出しベルト79の内側でベルトを挟んで取出し位置87に対向する位置に配置されている。チャンバ52は、ガイド60の裏面側、すなわち取出しベルト79およびガイド60を挟んで取出し位置87に対向する位置に配置されている。取出しベルト79は、図4に部分的に拡大して示すように、多数の吸着孔79aを有している。また、ガイド60は、図5に示すように、取出しベルト79の走行方向D1に沿って延びる細長い複数本のスリット60aを有している。
【0022】
図2に示すように、真空ポンプ61を動作させてチャンバ52内を真空引きすると、ガイド60に対向したチャンバ52の開口(図示せず)、ガイド60の複数本のスリット60a、および矢印D1方向に走行する取出しベルト79の多数の吸着孔79aを介して、取出し位置87に供給された郵便物Pに対して負圧(図中矢印S1)が作用し、当該郵便物Pが取出しベルト79の表面に吸着され、取出しベルト79の走行に伴って取出し位置87から搬送路10上へ取出される。
【0023】
この際、真空ポンプ61による矢印S1方向の吸着力は、取出しベルト79に吸着された1枚目の郵便物Pを取出し方向D1に繰り出す搬送力が、少なくとも、1枚目の郵便物Pと2枚目の郵便物Pとの間に働く摩擦力より大きくなるように設定される。この取出し機構56は、取出し位置87の郵便物Pを1枚ずつ搬送路10上へ繰り出すが、複数枚が重なった状態で搬送路10上に繰り出されたものに関しては後述する分離機構54によって1枚ずつに分離する。
【0024】
吸引機構53は、取出し位置87に対して搬送ガイド84の裏面側に配置されたチャンバ63、およびチャンバ63内の空気を吸引するためのブロワー65(または相当品)を有する。ブロワー65は配管66を介してチャンバ63内に接続されている。チャンバ63は、取出し機構56と後述する補助機構55との間で、その図示しない開口部を搬送ガイド84の裏面に対向させる姿勢で取出し位置87に隣接して配置される。また、搬送ガイド84は、図6に部分的に拡大して示すように、チャンバ63の開口の幅に合わせて複数の長孔84aを有する。複数の長孔84aは、チャンバ63の開口内に配置されている。
【0025】
図2および図6に示すように、ブロワー65を動作させてチャンバ63内の空気を吸引すると、搬送ガイド84の複数の長孔84aを介して図中矢印B1方向に空気流が生じ、投入部51に投入された複数通の郵便物Pのうち取出し位置87に最も近い郵便物Pが取出し位置87に向けて吸引される。取出し位置87に吸引された郵便物Pが取出された後は、次の郵便物Pが取出し位置87に向けて吸引される。つまり、この吸引機構53を設けることで、次に取出す郵便物Pを素早く取出し位置87へ供給することができる。そのため、供給機構2による矢印F方向の供給力を弱くしても1通目の郵便物Pだけは常に安定して取出し位置87へ素早く供給することができる。これにより、上述した取出し機構56による郵便物Pの取出し動作を速めることができる。
【0026】
図2に示すように、分離機構54は、取出し位置87の下流側(図2中上方)に延びた搬送路10に対し、上述した取出し機構56と反対側に設けられている。この分離機構54は、搬送路10を介して搬送される郵便物Pに対して、負圧を作用させつつ郵便物Pの取出し方向と逆方向の分離トルクを付与する。つまり、この分離機構54を動作させることで、取出し位置87から取出される郵便物Pに2通目以降(3通以上重なって取出される場合もある)の郵便物Pが連れ出された場合であっても、上述した負圧および分離トルクによってこの2通目以降の郵便物Pが停止され、或いは逆方向に戻されて、1通目の郵便物Pと分離されることになる。
【0027】
より詳細には、分離機構54は、郵便物Pの取出し方向D1に沿って正逆両方向に回転可能に設けられた分離ローラ68を有する。分離ローラ68は、略円筒形の金属材料などの剛体により形成されており、その外周面が搬送路10に露出する位置に位置決め配置されている。分離ローラ68は、搬送路10に対して固定的に取り付けられた回転軸、すなわち後述するチャンバ64を有する円筒体67に対して、回転可能に取り付けられている。分離ローラ68は、その内周面と外周面を連絡するように貫通した多数の吸着孔を有する。円筒体67は、負圧を発生させるためのチャンバ64を有し、このチャンバ64の開口が搬送路10を向く姿勢で位置決めされて固設されている。
【0028】
分離機構54は、分離ローラ68を正逆両方向に所望するトルクで回転させるACサーボモータ69、およびこのモータ69による駆動力を分離ローラ68に伝達するための無端状のタイミングベルト70を有する。タイミングベルト70は、モータ69の回転軸に固設されたプーリおよび分離ローラ68の回転軸に固設された図示しないプーリに巻回されて張設されている。さらに、分離機構54は、真空ポンプ71を備え、この真空ポンプは、配管72を介して、円筒体67のチャンバ64に接続されている。
【0029】
真空ポンプ71を動作させてチャンバ64内を真空引きすると、チャンバ64の開口、および分離ローラ68の多数の吸着孔のうちチャンバの開口に対向した特定の吸着孔を介して、搬送路10を通過する郵便物Pの表面に負圧が作用され、分離ローラ68の外周面に当該郵便物Pが吸着される。この際、分離ローラ68が回転している場合には、分離ローラ68の外周面に吸着された郵便物Pにも分離ローラ68の回転方向に沿った搬送力が与えられる。
【0030】
一方、ACサーボモータ69は、分離ローラ68に対して常に、取出し方向D1と逆方向D2の一定の分離トルクを付与するように分離ローラ68を駆動する。この分離トルクは、搬送路10を介して搬送される郵便物Pが1枚である場合、この1枚の郵便物Pを吸着せしめた分離ローラ68が取出し方向D1に沿って当該郵便物Pと一緒に回ることのできる程度に設定され、且つ複数枚の郵便物Pが重なった状態で搬送路10上に取出される場合には、分離ローラ68側の2通目以降の郵便物Pを停止または逆方向に戻して1通目の郵便物Pから分離できる程度に設定されている。
【0031】
取出し位置87から1通の郵便物Pが正常に取出されて搬送路10を介して搬送されている状態では、取出し機構56によって当該郵便物Pに付与される順方向(矢印D1方向)の搬送力の方が、逆方向D2の分離トルクを与えられた分離ローラ68によって当該郵便物Pに付与される逆方向の搬送力よりも大きくなり、当該郵便物Pが順方向D1に搬送されるとともに、分離ローラ68は当該郵便物Pと共に順方向D1に回り、或いは停止し、或いは取出し方向とは逆方向に空回りする。
【0032】
分離ローラ68が逆方向D2に空回りする場合、一定の分離トルクを与え続けると回転速度が徐々に速くなって郵便物Pの取出しに悪影響を及ぼす可能性があるため、本実施の形態では、分離ローラ68の逆転速度に上限を設けてある。具体的には、郵便物Pの取出し速度より絶対値が小さい上限速度に設定してある。
【0033】
図2に示すように、吸引機構53の図中下方、すなわち郵便物Pの取出し方向D1に沿って取出し機構56の上流側に配置された補助機構55は、上述した分離機構54と略同じ構造を有する。すなわち、補助機構55は、郵便物Pの取出し方向D1に沿って正逆両方向D2に回転可能に設けられた補助ローラ75を有する。
【0034】
補助ローラ75は、取出し位置87に対向して固定的に設けられた回転軸、すなわち円筒体74に対して回転可能に取り付けられ、その内周面と外周面を連絡するように貫通した多数の吸着孔を有する。補助ローラ75は、略円筒形の金属材料などの剛体により形成されており、その外周面が取出し位置87に露出する位置に位置決め配置されている。円筒体74は、負圧を発生させるためのチャンバ73を有し、このチャンバ73の開口が取出し位置87に向かう姿勢で位置決めされて固設されている。
【0035】
補助機構55は、補助ローラ75を正逆両方向に所望するトルクで回転させるためのACサーボモータ88、およびこのモータ88による駆動力を補助ローラ75に伝達するための無端状のタイミングベルト76を有する。補助機構55は、補助ローラ75を回転可能に取り付けた円筒体74のチャンバに配管78を介して接続された真空ポンプ77を有する。
【0036】
補助機構55は、補助ローラ75を正逆両方向に所望する速度で回転および停止させるとともに、真空ポンプ77による負圧をオン/オフさせることで、郵便物Pの取出し動作および分離動作をサポートする。
【0037】
図2に示すように、取出し機構56により取出された郵便物Pを下流側へ搬送する搬送機構58は、複数の搬送ローラ22、83、テンションローラ26、搬送ベルト20、82、85、テンション機構21を有している。搬送ローラ83は、分離ローラ68の下流側に配置され、搬送路10に隣接している。この搬送ローラ83と図示しない他の搬送ローラとに搬送ベルト82が捲回されている。テンションローラ26と搬送ローラ22とに搬送ベルト20が捲回され、この搬送ベルト20は、搬送ローラ83と共に搬送路10を規定しているとともに搬送ベルト82に接触している。
【0038】
テンション機構21は、その中心部が枢軸25によって回動自在に支持されたテンションアーム24を備えている。テンションローラ26はテンションアーム24の一端に回転自在に支持されている。テンションアーム24の他端には引っ張りばね27が架設され、により付勢されている。これにより、テンションアーム24は、枢軸25の周りで、反時計方向に付勢され、ストッパ29に弾性的に接触している。これにより、テンションローラ26および搬送ベルト20は搬送路10方向に付勢され、搬送ベルト20は張力を保った状態で搬送ベルト82に接触している。更に、他方の搬送ローラ22と図示しない他の搬送ローラとに搬送ベルト85が捲回され、この搬送ベルト85は、搬送ベルト82に接触している。2つの搬送ローラ22間には、これらのローラを同期して回転させる駆動ベルト23が捲回されている。郵便物Pは、搬送ベルト82と搬送ベルト20および85との間に挟持され、これらの搬送ベルトによって搬送される。
【0039】
図2、図3および図7に示すように、取出し装置1は、取出された郵便物Pの厚さを検出する厚さ検出器120、取出された郵便物Pの枚数をカウントするカウントセンサ(カウンタ)121を備えている。厚さ検出器120およびカウントセンサ121は、センサ57a、57bの下流側で搬送路10に設けられている。また、取出し装置1は、取出し位置87あるいは取出し位置87の僅かに上流側において、投入部51に載置されている郵便物Pの有無や疎密を検出する複数のセンサ、例えば、第1書状センサ122および第2書状センサ127と、供給機構2による郵便物Pの押込み力、特に、最先の郵便物Pに作用する押込み力を検出する押込み力検出センサ123と、を備えている。なお、厚さ検出器120は、カウントセンサ121を兼ねる構成としてもよい。
【0040】
センサ57a、57b、厚さ検出器120、カウントセンサ121、第1書状センサ122、第2書状センサ127は、取出し装置1の制御部200に接続され、検出信号を制御部200に出力する。この制御部200には、真空ポンプ61,71、77を駆動するドライバ202、ブロワー65を駆動するドライバ204、およびACサーボモータ69、81、88を駆動するドライバ206、供給機構2の駆動モータ90を駆動するドライバ107がそれぞれ接続され、制御部200は、各センサからの検出信号に応じて、各ドライバを駆動する。
【0041】
押込み力検出センサ123は、例えば、圧力センサや、レバーとバネを利用してレバーの押込み量を検出するセンサ等を用いることがき、郵便物Pが取出し位置87にどの程度が押込まれてくるかを判断する。例えば、制御部200は、押込み力検出センサ123からの検出信号により、郵便物Pの押込みが無ければ、すなわち、検出した押込み力が基準値よりも小さい場合、供給機構2を動かして、郵便物Pを前方に送りこむといった動作を促す。また、郵便物Pが押込まれ過ぎた場合には、すなわち、検出した押込み力が基準値よりも小さい場合、制御部200は、供給機構2を逆向きに作動させて郵便物Pの詰まりすぎ状態を緩和させることできる。押込み力検出センサ123は、押込み力そのものを測る場合もあれば、郵便物Pの有無を検出するだけの場合もある。
【0042】
図2および図3に示すように、第1書状センサ122および第2書状センサ127は、取出し位置87あるいはその僅か上流側における紙葉類の有無を、互いに異なる方向から見て検知するセンサであり、少なくとも1つは光学センサで構成されている。本実施形態において、第1書状センサ122は、透過光を検知する透過光学センサで構成され、取出し位置87近傍に集積されている郵便物Pの面方向に検出光を当て、透過した検出光を検知するように設けられている。第1書状センサ122は、郵便物Pが第1書状センサ122の光軸上に無い有りを検出し、あるいは、郵便物Pの疎、密を検出する。例えば、取出し位置87に郵便物Pが有る場合、第1書状センサ122からの検出光は、郵便物Pの書状エッジに当たって遮られ、第1書状センサは暗(オフ)となる。これにより、第1書状センサ122は、郵便物有り情報(暗)を出力する。また、取出し位置87に郵便物Pが無い場合、検出光は、取出し位置を透過し、第1書状センサ122により検知される。これにより、第1書状センサ122は、郵便物無し情報(明)を出力する。
【0043】
第2書状センサ127は、は、郵便物Pからの反射光を検知する反射光学センサで構成されている。この第2書状センサ127は、例えば、投入部51の前面壁の近傍に設けられ、取出し位置87に位置している郵便物Pに対して郵便物の表面と交差する方向に検出光を当て、郵便物表面からの反射光を検知するように設けられている。第2書状センサ127は、例えば、取出し位置87に郵便物Pが有る場合、第2書状センサ127からの検出光は、郵便物Pの表面に当たって反射し、この反射光を検知することにより明(オン)となる。これにより、第2書状センサ127は、郵便物有り情報(明)を出力する。また、取出し位置87に郵便物Pが無い場合、第2書状センサ127は反射光を受光せず、暗(オフ)となる。これにより、第2書状センサ127は、郵便物無し情報(暗)を出力する。
【0044】
図8に示すように、通常モードにおいて、制御部200は、駆動モータ90によりメインベルト126の走行を制御し、供給機構2による郵便物Pの供給速度あるいは送り量を制御する。第1書状センサ122および第2書状センサ127の少なくとも一方から郵便物無し情報が出力された場合、制御部200は、供給機構2の送り動作を実行し、郵便物Pを取出し位置87へ送り込む。すなわち、取出し位置87に郵便物Pが無いと検出された場合、制御部200は、郵便物Pが空か疎になり、郵便物Pの取出しが間欠的になるおそれがあると判断し、供給動作を行う。その後、制御部200は、第1書状センサ122および第2書状センサ127から郵便物有り情報が出力された時点で、供給機構2による郵便物Pの供給動作を停止する。
【0045】
また、制御部200は、郵便物Pの取出し動作中、第1書状センサ122の信号情報と、第2書状センサ127の信号情報との関係を監視し、通常の取出し時に対して、正常では無い信号関係が生じた時に、異常と判断された光学センサの信号情報を無視して、他の光学センサの信号情報のみに応じて供給機構2の供給動作を継続させる。例えば、図9に示すように、制御部200は、第1書状センサ122の郵便物有無信号情報と、第2書状センサ127の郵便物有無信号情報とについて、所定期間ΔTごとの郵便物無時間あるいは郵便物有時間の積分値Δtを算出し、これらの積分値を比較する。そして、積分値の差が一定値以上、例えば、0.5以上になった場合、制御部200は、通常の取出しに対して、いずれかのセンサの信号情報が正常でないと判断する。
【0046】
通常、取出し位置87近傍に郵便物Pがいる場合には、第1および第2書状センサ122、127の2つセンサの有信号時間積分値にはあまり差が無いが、例えば、第2書状センサ127については、反射率の低い黒色郵便物などが連続して来た場合などに、通常時ほど反射光を検出することができず、2つのセンサの有信号時間積分値に差が出やすい。そこで、制御部200は、積分値の差が一定以上(例えば、500msec)になった場合に、黒色郵便物が取出し位置87にあるなど通常時とは異なる状態であると判断し、第2書状センサ127の信号情報を無視して、すなわち、第2書状センサ127を縮退させ異常モードを設定する。異常モードでは、第2書状センサ127を縮退した状態で、第1書状センサ122からの信号情報のみに応じて供給動作を継続する。すなわち、第2書状センサが暗で郵便物無信号を出力している場合でも、この無信号による供給押し込み動作は無視する。
【0047】
制御部200は、積分値の差を継続して算出し、差が所定値以下、例えば、0.3(300msec)に戻った場合には、第2書状センサ127の縮退を解除し、すなわち、第2書状センサ無視状態を抜け、元の通常モードに戻る。
【0048】
上記の構成によれば、例えば、黒色郵便物などの光の反射率が低い紙葉類が続いて、光学センサの検出異常が生じた場合でも、供給機構2の制御により、取出し位置の近傍で郵便物が詰まり気味になるといった供給動作異常を防止することができる。それにより、スキューあるいは重送を生じることなく、最先の郵便物Pを安定して取出すことができる。
【0049】
以上のように構成された取出し装置を備えた郵便物処理装置によれば、紙葉類の供給動作異常を抑制し、適切な紙葉類の供給動作を行うことができる。これにより、紙葉類を安定して取出すことが可能となり、処理速度の向上した紙葉類処理装置を得ることができる。
【0050】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0051】
なお、取出し位置87における郵便物の有無を検出するセンサは、2つに限らず、3つ以上設けてもよい。第1および第2書状センサ122、127は、透過光学センサ、反射光学センサに限らず、他のセンサで構成してもよい。更に、第2書状センサ127は、郵便物の表面と交差する方向に検知する場合に限らず、例えば、投入部51の底壁51aに第2書状センサを配置し、郵便物の下方から、郵便物の面方向に沿って郵便物を検知する構成としてもよい。紙葉類は、郵便物に限らず、他の種々の紙葉類に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…取出し装置、2…供給機構、10…搬送路、51…投入部、53…吸引機構、
54…分離機構、55…補助機構、56…取出し機構、58…搬送機構、
122…第1書状センサ、123…押込み力検出センサ、127…第2書状センサ、
200…制御部、P…郵便物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の紙葉類を重ねて投入する投入部と、
投入された複数枚の紙葉類をその重ね方向に移動させて移動方向先端にある紙葉類を上記投入部の一端にある取り出し位置へ供給する供給機構と、
前記取出し位置に供給された紙葉類を前記投入部から1枚ずつ取出す取出し機構と、
少なくとも1つの光学センサを含み、前記取出し位置における紙葉類の有無を互いに異なる方向から見て検知する複数のセンサと、
前記センサの検知情報に応じて前記供給機構による紙葉類の供給動作を制御する制御部であって、前記光学センサの信号情報と、他のセンサの信号情報との関係を監視し、通常の取出し時に対して、正常では無い信号関係が起きた時に、前記光学センサの信号情報を縮退し、他のセンサの信号情報のみを用いる制御部と、
を備える紙葉類の取出し装置。
【請求項2】
複数枚の紙葉類を重ねて投入する投入部と、
投入された複数枚の紙葉類をその重ね方向に移動させて移動方向先端にある紙葉類を上記投入部の一端にある取り出し位置へ供給する供給機構と、
前記取出し位置に供給された紙葉類を前記投入部から1枚ずつ取出す取出し機構と、
少なくとも1つの光学センサを含み、前記取出し位置における紙葉類の有無を互いに異なる方向から見て検知する2つ以上のセンサと、
前記センサの検知情報に応じて前記供給機構による紙葉類の供給動作を制御する制御部であって、前記光学センサの信号情報と、他のセンサの信号情報との関係を監視し、通常の取出し時に対して、正常では無い信号関係が起きた時に、前記光学センサの信号情報を縮退して、他のセンサの信号情報のみに応じて前記供給機構の供給動作を継続させる制御部と、
を備える紙葉類の取出し装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光学センサは、前記紙葉類からの反射光を検知する反射光学センサである請求項1又は2に記載の紙葉類の取出し装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記反射光学センサの紙葉類の有無信号情報と、他のセンサの紙葉類の有無信号情報とについて、有情報あるいは無情報の時間積分値を算出し、その積分値の差が、ある一定値以上となった場合に、通常の取出し時に対して、正常でないと判断する請求項3に記載の紙葉類の取出し装置。
【請求項5】
前記他のセンサは、透過光を検知する透過光学センサである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の紙葉類の取出し装置。
【請求項6】
前記反射光学センサは、前記供給部の紙葉類に対して紙葉類の表面と交差する方向に検査光を当て前記紙葉類からの反射光を検知するように設けられ、前記透過光学センサは、供給部の紙葉類の面方向に検出光を当て、透過光を検知するように設けられている請求項5に記載の紙葉類の取出し装置。
【請求項7】
前記反射光学センサは、前記供給部の紙葉類に対して紙葉類の面方向に検査光を当て前記紙葉類の端縁からの反射光を検知するように設けられ、前記透過光学センサは、供給部の紙葉類の面方向に検出光を当て、透過光を検知するように設けられている請求項5に記載の紙葉類の取出し装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記センサの少なくとも1つにより前記取出し位置における紙葉類の無信号情報が検知された際に、前記供給機構の供給動作を実施する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の紙葉類の取出し装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記供給機構の供給速度あるいは送り量を一定に制御し、前記センサの少なくとも1つにより紙葉類の無信号情報が検知された際に、前記供給機構の供給動作を変更する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の紙葉類の取出し装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の紙葉類の取出し装置と、
前記取出し装置により取出された紙葉類を判別する判別装置と、
前記判別装置による判別に応じて前記紙葉類を振り分ける振分け機構と、
前記振り分けられた紙葉類を集積する集積部と、
を備える紙葉類処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−180206(P2012−180206A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45424(P2011−45424)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】