説明

紫外レーザ装置

【課題】分解された有機物によるレーザ出力の低下を簡単な構成で抑制し、製造コストの低減を図ることのできる紫外レーザ装置を提供する。
【解決手段】基本波光21を発生する固体レーザ発振媒体8と、基本波光21およびその第二次高調波光22を入射光として紫外レーザである第三次高調波光23に波長変換するLBO波長変換結晶10とを有する紫外レーザ装置1において、基本波光21および第二次高調波光22を透過させ且つ第三次高調波光23を反射させる反射面14を、LBO波長変換結晶10の内部に基本波光21および第二次高調波光22の光軸Aに対して傾斜する向きに形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源から出力した基本波光を波長変換結晶で紫外レーザに変換して放射する紫外レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば355nmの紫外レーザは、図9に典型例を示すように、レーザ光源である固体レーザ発振媒体8に発生させた波長1064nmの基本波光21と、KTP(KTiOPO)などの波長変換結晶9で波長変換された波長532nmの第二次高調波光22とを、LBO(LiB)などの波長変換結晶10によってさらに波長355nmの第三次高調波光23に変換することで得られる。従来、この種の紫外レーザ装置100は、紫外レーザである第三次高調波光23と基本波光21および第二次高調波光22とが波長変換結晶10や反射鏡4において同一の光路を通過する光学系となっている。そのため、共振器7の筐体3内に接着剤や配線などから発生する有機物が存在していると、紫外レーザによって有機物が分解され、波長変換結晶10や反射鏡4の表面の光路となる部分Xに付着する。すると、付着物は基本波光21の透過率や反射率を減少させたり、レンズ効果を生じて空間モードを設計から外れた方向に変化させたりして、結果的にレーザ出力を低下させることになる。
【0003】
この問題を解決するために従来は、清浄な気体を常時共振器へ送り、有機物の密度を下げたり(特許文献1参照)、接着剤などの有機物を一切用いない設計としたり(特許文献2参照)していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−244392号公報
【特許文献2】特開平10−153746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように清浄な気体を常時共振器へ送るためには、気体供給装置が別途必要となり、レーザ装置全体が大きくなってしまう。また、気体供給装置の設置コストやランニングコストも高くなる。一方、特許文献2のように有機物フリーの設計とすると、光学素子をメタライズして低融点金属で融着するため、作業が煩雑となり、やはりコストアップに繋がるという欠点があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解消するべく案出されたものであり、紫外レーザを放射する紫外レーザ装置において、分解された有機物によるレーザ出力の低下を簡単な構成で抑制し、製造コストの低減を図ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、上記問題が波長355nmの紫外レーザと波長1064nmのレーザ光とが波長変換結晶の表面において同一部位を通過することに起因して生じることに着目し、波長355nmの紫外レーザと波長1064nmのレーザ光とが波長変換結晶の表面において同一部位を通過しなければ、波長355nmの紫外レーザの光路部位に分解した有機物が付着しても、波長1064nmのレーザ光には影響を与えないとの観点から、本発明を案出するに至った。
【0008】
すなわち、上記課題を解決するために本発明は、基本波光(21)を発生するレーザ光源(8)と、当該基本波光およびその高調波光(22)のうち少なくとも一方を入射光として紫外レーザ(23)に波長変換する波長変換結晶(10)とを有する紫外レーザ装置(1)であって、基本波光およびその高調波光のうち少なくとも一方と紫外レーザとのどちらか一方を透過させ且つどちから他方を反射させる反射面(14)を、波長変換結晶の内部に基本波光およびその高調波光のうち少なくとも一方の光軸(A)に対して傾斜する向きに形成する構成とした。
【0009】
この発明によれば、波長変換結晶の表面における基本波光或いはその高調波光の光路の部位と異なる部位から紫外レーザを取り出すことができる。そのため、紫外レーザの光路となる波長変換結晶の表面には有機物が付着し得るが、レーザ発振媒体より出力された基本波光或いはその高調波光の光路となる表面への有機物の付着は抑制され、結果的に紫外レーザ装置の出力低下を大幅に改善することができる。なお、紫外レーザの透過率は付着した有機物によって低下するが、低下率が1%程度に留まるため実用上問題になることはない。また、波長変換結晶の内部に反射面を形成するという簡単な構成で実現できるため、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0010】
また、本発明の一側面によれば、波長変換結晶は、反射面に対して一方に配置された第1結晶(11)と、反射面に対して他方に配置された第2結晶(12)とを含み、反射面は、第1結晶に設けられたコート(13)により形成される構成とすることができる。
【0011】
この構成によれば、波長変換結晶を第1および第2結晶の2部材により構成して一方の結晶の端面にコートを設けることで、容易に波長変換結晶の内部に反射面を形成することができる。
【0012】
また、本発明の一側面によれば、第2結晶は、第1結晶に設けられたコートの表面にオプチカルコンタクトで一体接合された構成とすることができる。
【0013】
この構成によれば、第1結晶と第2結晶とを接着剤などを用いずに接合できる。そのため、接着剤による有機物の発生やレーザ光への影響を排除できるとともに、第1結晶と第2結晶とを高精度で接合することができる。
【0014】
また、本発明の一側面によれば、第1結晶は位相整合条件を満たす結晶切り出し角度を有し、第2結晶は第1結晶と異なる結晶切り出し角度を有する構成とすることができる。
【0015】
この構成によれば、第2結晶の切り出し角度が位相整合条件を満たさないものになるため、反射面を通過した基本波光およびその高調波光のうち少なくとも一方が第2結晶を伝搬中に紫外レーザに波長変換されることはなく、その出射光路となる表面へ有機物が付着することを防止できる。
【0016】
また、本発明の一側面によれば、反射面は、基本波光およびその高調波光のうち少なくとも一方を透過させるとともに、紫外レーザを反射させる構成とすることができる。
【0017】
この構成によれば、基本波光或いはその高調波光の光路の直線部分に波長変換結晶を配置した従来と同様の簡単な構造で共振器を構成することができる。また、従来のように紫外レーザを取り出すための光学系を別途設ける必要もない。そのため、装置の小型化を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明によれば、紫外レーザを放射する紫外レーザ装置において、分解された有機物によるレーザ出力の低下を簡単な構成で抑制し、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係る紫外レーザ装置の光学系の概略図
【図2】図1に示すLBO結晶の概略側面図
【図3】図1に示すLBO結晶の製造手順の説明図
【図4】第1変形例に係るLBO結晶の概略側面図
【図5】第2変形例に係るLBO結晶の概略側面図
【図6】第3変形例に係る紫外レーザ装置の光学系の概略図
【図7】第3変形例に係るLBO結晶の概略側面図
【図8】第4変形例に係るLBO結晶の概略側面図
【図9】従来の紫外レーザ装置の光学系の概略図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る紫外レーザ装置1について図1〜図3を参照しながら説明する。
【0021】
図1に示すように、紫外レーザ装置1は、紫外レーザ用の出力窓2を有する筐体3内に反射ミラー4を介して対峙するように配置された一対の共振器ミラー5,6により構成される共振器7を有している。共振器ミラー5と反射ミラー4との間には、レーザ光源として固体レーザ発振媒体8(ここではNd:YVO)が配置される。この固体レーザ発振媒体8は、図示外の半導体レーザなどが発する励起光により励起され、誘導放出によって波長1064nmのレーザ光を基本波光21として出力する。
【0022】
共振器ミラー5は、光励起用の波長のレーザ光を透過させ、波長1064nmの基本波光21を反射する特性とされている。共振器ミラー6は、波長1064nmの基本波光21を反射する特性とされており、反射ミラー4は、波長1064nmの基本波光21を反射し且つ波長532nmの第二次高調波光22を透過させる特性とされている。
【0023】
なお、ここで「反射」および「透過」とは、概ね全光量を反射させることおよび透過させることを意図するものだが、光量の大部分を反射或いは透過させればよく、全反射或いは全透過に限定されるものではない。
【0024】
反射ミラー4と共振器ミラー6との間には、共振器ミラー6側から順にKTP波長変換結晶9およびLBO波長変換結晶10が配置される。固体レーザ発振媒体8で発生した基本波光21は、共振器7内で共振して増幅されるとともに、その一部がKTP波長変換結晶9により波長532nmの第二次高調波光22に変換される。波長1064nmの基本波光21および波長532nmの第二次高調波光22は、反射ミラー4と共振器ミラー6との間において同軸上を通過し、LBO波長変換結晶10を通過する際にその一部が光混合され、和周波である波長355nmの第三次高調波光23(紫外レーザ)に変換される。なお、これら各波光21〜23は同軸上を通過するが、便宜上図中には軸直角方向にオフセットして示している。
【0025】
図2に示すように、LBO波長変換結晶10は、略直方体形状を呈しており、基本波光21およびその第二次高調波光22の光軸Aに対して傾斜する反射面14をその内部に有している。反射面14は、ここでは光軸Aに対して45度傾斜するように設けられており、波長1064nmの基本波光21および波長532nmの第二次高調波光22を透過させ且つ波長532nmの第三次高調波光23を反射させる特性とされている。なお、反射面14をその内部に有するとは、LBO波長変換結晶10が、入射する光を反射面14以外では反射させないように構成されたことを意味するものであり、具体的には、単一の光学部材や、離間することなく互いに密接しまたは一体となった複数の光学部材、或いは、入射する光の光軸方向について、入射光のうち最も波長の短い光すなわち第二高調波22の波長532nmよりも小さな離間距離をもって近接配置された複数の光学部材から構成されることを意味する。
【0026】
したがって、第1の面10aからLBO波長変換結晶10へ入射した基本波光21および第二次高調波光22は、LBO波長変換結晶10内を直進して反射面14を通過し、光軸A上の反対側に位置する第2の面10bから出射する。一方、LBO波長変換結晶10内で発生した波長355nmの第三次高調波光23は、反射面14で反射することでLBO波長変換結晶10内において伝搬方向を90度転換し、LBO波長変換結晶10の第3の面10c(図中上側の側面)から直角に出射する。そして、出力窓2(図1参照)を介して筐体3の外部へ放出される。
【0027】
なお、LBO波長変換結晶10は、図3に示すように、基本波光21および第二次高調波光22の光軸Aに対してそれぞれ45度傾斜する傾斜面11a,12aを有する第1LBO結晶11および第2LBO結晶12を用意し、第1LBO結晶11の傾斜面11aに誘電体多層膜13を設けることで、第1LBO結晶11と誘電体多層膜13との界面に反射面14を形成し、誘電体多層膜13の表面に第2LBO結晶12をオプチカルコンタクトで一体接合することにより形成することができる。
【0028】
ここで、第1LBO結晶11は、入射された光すなわち基本波光21および第二次高調波光22の位相と、発生した第三次高調波光23の位相とが、光路のすべてでそろう位相整合条件を満たす結晶切り出し角とされており、第2LBO結晶12は、第1LBO結晶と異なる結晶切り出し角度すなわち位相整合条件を満たさない結晶切り出し角とされている。そのため、反射面14を通過した基本波光21および第二次高調波光22が第2LBO結晶12を伝搬中に第三次高調波光23に波長変換されることはなく、その出射光路となる第2の面10bへ有機物が付着することが防止される。
【0029】
なお、LBO結晶は熱膨張率が大きく、結晶の方位によっても熱膨張率が異なるため、第1LBO結晶11と第2LBO結晶12との結晶切り出し角度が大きく異なると、オプチカルコンタクトで一体接合された第2LBO結晶12が膨張率の差によって剥離する危険性が増大する。そのため、第2LBO結晶12の結晶切り出し角は、位相整合許容角の範囲外で可能な限り第1LBO結晶11の結晶切り出し角に近いことが好ましい。このような理由から、第2LBO結晶12の結晶切り出し角は、ここでは第1LBO結晶11の結晶切り出し角に対して1〜5°程度異なるように設定されている。
【0030】
このように、LBO波長変換結晶10が第三次高調波光23を反射する反射面14をその内部に有することにより、基本波光21の光路となるLBO波長変換結晶10の第1の面10aおよび第2の面10bと異なる面(第3の面10c)から紫外レーザを出射させることができる。そのため、紫外レーザの光路となるLBO波長変換結晶10の第3の面10cには有機物が付着し得るが、固体レーザ発振媒体8より出力された基本波光21の光路或いはKTP波長変換結晶9より出力された第二次調波光22の光路となるLBO波長変換結晶10の第1の面10aおよび第2の面10bには有機物が付着することはなく、これら基本波光21或いは第二次高調波光22の透過率が低下することはないので、結果的に紫外レーザ装置1の出力低下を大幅に改善することができる。
【0031】
なお、紫外レーザの透過率はLBO波長変換結晶10の第3の面10cに付着した有機物によって低下するが、低下率は1%程度に留まるため実用上問題になることはない。また、LBO波長変換結晶10の内部に反射面14を形成するという簡単な構成で紫外レーザを基本波光21および第二次高調波光22から分離できるため、紫外レーザ装置1の製造コストの上昇を抑制することができる。
【0032】
一方、第1LBO結晶11および第2LBO結晶12の2部材によりLBO波長変換結晶10を構成し、第1LBO結晶11の傾斜面11aに誘電体多層膜13をコートすることで、容易にLBO波長変換結晶10の内部に反射面14を形成することができる。また、誘電体多層膜13に第2LBO結晶12をオプチカルコンタクトで一体接合することで、第1LBO結晶11と第2LBO結晶12と接着剤などを用いずに接合することができる。そのため、接着剤による有機物の発生や基本波光21或いは第二次高調波光22への影響を排除できるとともに、第1LBO結晶11と第2LBO結晶12とを高精度で接合することができる。
【0033】
そして、反射面14が基本波光21および第二次高調波光22を透過させるとともに、第三次高調波光23を反射させるため、基本波光21および第二次高調波光22の光路の直線部分にLBO波長変換結晶10を配置した従来同様の簡単な構造で共振器7を構成することができる。そのため、従来のように紫外レーザを取り出すために別途の光学系を設ける必要がなく、紫外レーザ装置1の小型化を実現することができる。
【0034】
さらに、反射面14が基本波光21の光軸Aに対して45度傾斜するように設けられているため、紫外レーザがLBO波長変換結晶10の第3の面10cから直角に放出される。そのため、紫外レーザによる有機物の付着を最小限に抑え、紫外レーザ装置1の出力低下を抑制することができる。
【0035】
<第1変形例>
次に、図4を参照して第1変形例に係る紫外レーザ装置1について説明する。なお、上記実施形態と同様の部材や部位については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。以下の変形例においても同様とする。
【0036】
図4に示すように、本変形例に係る紫外レーザ装置1は、反射面14が基本波光21および第二次高調波光22の光軸Aに対して45度よりも大きな角度をもって傾斜するように形成されている点で上記実施形態と相違する。LBO波長変換結晶10内で発生した波長355nmの第三次高調波光23(紫外レーザ)は、反射面14で反射することで、LBO波長変換結晶10内において90度より大きな角度で伝搬方向を転換し、LBO波長変換結晶10の第3の面10cから斜めに出射する。そして、紫外レーザの光路に設けられた出力窓2を介して筐体3の外部へ放出される。紫外レーザ装置1をこのように構成しても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、基本波光21および第二次高調波光22の光軸Aに対して45度よりも小さな角度をもって傾斜するように反射面14を形成することも可能である。
【0037】
<第2変形例>
また、図5に示すように、反射面14が基本波光21および第二次高調波光22の光軸Aに対して45度よりも大きな角度をもって傾斜するように形成し、さらに、紫外レーザがLBO波長変換結晶10の第1の面10aから出射するような形態とすることもできる。このように構成しても、紫外レーザが第1の面10aにおける基本波光21および第二次高調波光22の経路と異なる部位を通ってLBO波長変換結晶10から出射するため、第1変形例と同様に上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
<第3変形例>
次に、図6および図7を参照して第3変形例について説明する。本変形例の紫外レーザ装置1においても、LBO波長変換結晶10の反射面14を介して対峙するように配置された一対の共振器ミラー5,6により共振器7が構成されている。共振器ミラー5と共振器ミラー6との間の屈曲する基本波光21の光路上には、共振器ミラー5側から順に固体レーザ発振媒体8、KTP波長変換結晶9およびLBO波長変換結晶10が配置されている。共振器ミラー5は、光励起用の波長のレーザ光を透過させ、固体レーザ発振媒体8から出力される波長1064nmの基本波光21を反射する特性とされ、共振器ミラー6は、波長1064nmの基本波光21を反射し且つ波長532nmの第二次高調波光22を透過させる特性とされている。
【0039】
図7に併せて示すように、反射面14は、波長1064nmの基本波光21および波長532nmの第二次高調波光22の光軸Aに対して45度傾斜するように設けられており、基本波光21および第二次高調波光22を反射させ且つ波長532nmの第三次高調波光23(紫外レーザ)を透過させる特性とされている。したがって、第1の面10aからLBO波長変換結晶10へ入射した基本波光21および第二次高調波光22は、反射面14で反射することで、LBO波長変換結晶10内において伝搬方向を90度転換し、第1の面10aに対して直交配置されたLBO波長変換結晶10の第2の面10bから直角に出射する。一方、LBO波長変換結晶10内で発生した波長355nmの第三次高調波光23は、LBO波長変換結晶10内を直進して反射面14を通過し、第1の面10aに対峙する位置に第1の面10aと平行に配置された第3の面10cから出射する。そして、出力窓2を介して筐体3の外部へ放出される。
【0040】
このように、反射面14が波長1064nmの基本波光21および波長532nmの第二次高調波光22を反射させ且つ波長532nmの第三次高調波光23を透過させる特性とされても、基本波光21或いは第二次高調波光22の光路となるLBO波長変換結晶10の第1の面10aおよび第2の面10bとは異なる面(第3の面10c)から紫外レーザを出射させることができ、結果的に紫外レーザ装置1の出力低下を大幅に改善することができる。
【0041】
<第4変形例>
また、図8に示すように、第3変形例の共振器7に対し、第2変形例(図5)で示したような反射面14の傾斜角度を適用し、波長1064nmの基本波光21および波長532nmの第二次高調波光22がLBO波長変換結晶10の第1の面10aから出射し、第三次高調波光23が第1の面10aに対峙する位置に配置された第3の面10cから出射するような形態とすることも可能である。このように構成しても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0042】
さらに、図示は省略するが、第3変形例の共振器7に対し、第1変形例(図4)で示したような反射面14の傾斜角度を適用し、波長1064nmの基本波光21および波長532nmの第二次高調波光22がLBO波長変換結晶10の第1の面10aに対して直交配置された第2の面10bから斜めに出射するような形態とすることも当然に可能である。
【0043】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、固体レーザ発振媒体8としてNd:YVOを用い、波長1064nmの基本波光21および波長532nmの第二次高調波光22から波長355nmの紫外レーザを発生させているが、異なる固体レーザ発振媒体を用いて異なる波長の紫外レーザを発生させてもよい。また、上記実施形態では、波長1064nmの基本波光21およびその第二次高調波光22を第三次高調波結晶(THG結晶)であるLBO波長変換結晶10で光混合し、和周波である第三次高調波光23の紫外レーザを発生させているが、和周波ではなく第四次高調波光の紫外レーザを発生する波長変換結晶(FHG結晶)を用いてもよい。さらに、上記実施形態に示した部材の具体的形状や配置なども、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 紫外レーザ装置
8 固体レーザ発振媒体(レーザ光源)
10 LBO波長変換結晶
11 第1LBO結晶
12 第2LBO結晶
13 誘電体多層膜(コート)
14 反射面
21 基本波光
22 第二次高調波光
23 第三次高調波光(レーザ光)
A 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波光を発生するレーザ光源と、当該基本波光およびその高調波光のうち少なくとも一方を入射光として紫外レーザに波長変換する波長変換結晶とを有する紫外レーザ装置であって、
前記基本波光およびその高調波光のうち少なくとも一方と前記紫外レーザとのどちらか一方を透過させ且つどちから他方を反射させる反射面を、前記波長変換結晶の内部に前記基本波光およびその高調波光のうち少なくとも一方の光軸に対して傾斜する向きに形成したことを特徴とする紫外レーザ装置。
【請求項2】
前記波長変換結晶は、前記反射面に対して一方に配置された第1結晶と、前記反射面に対して他方に配置された第2結晶とを含み、
前記反射面は、前記第1結晶に設けられたコートにより形成されることを特徴とする、請求項1に記載の紫外レーザ装置。
【請求項3】
前記第2結晶は、前記第1結晶に設けられた前記コートの表面にオプチカルコンタクトで一体接合されたことを特徴とする、請求項2に記載の紫外レーザ装置。
【請求項4】
前記第1結晶は位相整合条件を満たす結晶切り出し角度を有し、前記第2結晶は前記第1結晶と異なる結晶切り出し角度を有することを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の紫外レーザ装置。
【請求項5】
前記反射面は、前記基本波光およびその高調波光のうち少なくとも一方を透過させるとともに、前記紫外領域の光を反射させることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の紫外レーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−177806(P2012−177806A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40876(P2011−40876)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(592163734)昭和オプトロニクス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】