説明

紫外線照射装置およびその方法

【課題】照射経路が短くて済み、所定の照射量を長時間に亘って維持できる紫外線照射装置および紫外線照射方法を提供する。
【解決手段】第2の導入口17から導入される流体Yが渦流形成筒15内で渦流となる。渦流の中心の負圧部分23に流体Xが供給される。流体X,Yが第2の排出口17から排出される。渦流形成筒15内の紫外線照射領域22において、紫外線またはオゾンによって分解された物質も第2の排出口17から排出される。渦流の中心に形成される負圧部分を利用するため、他の動力を使うことなく、反応後の物質が紫外線室12に入り込むことを防止できる。光源を汚すことなく、所定の紫外線量を長期間に亘って維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌線(波長253.7nm線)や酸素(O)を活性化させるオゾン線(波長184.9nm線)等の紫外光(光触媒を励起させる可視光領域を含む)を照射する紫外線照射装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線照射装置は殺菌や消臭等を目的として広い分野で使用されている。その構成についても下記特許文献に例示されるように各種のものが提案されている。
【0003】
これら従来の紫外線照射装置の多くは、紫外光を発する放電管(UVランプ)を石英等の筒の中に入れ、その筒の周りに照射対象物(菌やウイルス等)を含む媒体(水や空気等)を循環させながら紫外光を照射する構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−245814号公報
【特許文献2】特開平5−253565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記した従来の紫外線照射装置によると、紫外光の照射によって照射対象物から分解された物質が使用時間の経過につれて放電管を囲む筒の外側面に付着してしまうため、長時間に亘って所定の照射量を維持することが困難であった。
【0006】
よって、媒体中に散在する照射対象物に対して長時間に亘って所定の照射量を確保するためには照射経路を長く取る必要があり、例えば照射対象物を含む媒体が水の場合には、放電管を囲む筒に防水処理を施した上で水槽の中に沈めた状態で設置するものとし、空気の場合にも放電管を包む筒を空気室中に設置している。このため装置が大型化し、しかも媒体の紫外線透過率を考慮すると照射時間を長く取らないと照射対象物に対して所定の照射量を確保することができなくなり、非常に処理効率の悪いものとなっていた。
【0007】
また、水の殺菌に有効なオゾン反応による対象物の酸化には、オゾン生成器を使用することとなるが、オゾン生成器は、紫外光を発する放電管やオゾナイザーといった放電等の電気エネルギーを用いてオゾンを生成するため、水に対して極度に弱い装置である。このため、オゾン生成部については、必然的に水とオゾン反応させるオゾン反応部の外に設置されることとなり、これらオゾン生成部とオゾン反応部との間に距離が生じることとなっている。しかしながら、オゾンは、不安定で維持が容易ではない物質であるため、オゾン反応部の経路を長くした場合には、オゾンの消滅量が増加してしまい、所定の反応量より多くのオゾンを生成しなければならない。
【0008】
なお、現状において、水中の対象物を酸化させるためのオゾン反応については、水中へのオゾンのバブリングによって得ているため、オゾンと酸化対象物との接触は確率論的にならざるを得ないと共に、オゾンの泡の表面でのみオゾン反応が得られるにすぎず、反応後のオゾンは酸素に戻るものの、泡中のオゾンや酸素の位置等を制御できないため、結果的に、大量のオゾンが必要となり、極めて非効率であった。このことにより、酸化対象物を内包する媒体(水等)までも必要以上に酸化されることになるほか、人体に有毒なオゾンが水面から大量に放出してしまうおそれがあるため、人が近づく場所への設置は問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来技術の不利欠点を解消し、照射経路が短くて済み、所定の照射量を長時間に亘って維持できる新規な構成の紫外線照射装置およびその方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、紫外線を照射する光源を包囲するように設けられた紫外線室と、この紫外線室に隣接して設けられた渦流形成筒とを備え、紫外線室は、第1の流体を導入する第1の導入口と、前記光源から照射された紫外線と共に前記第1の導入口から導入された第1の流体を排出する第1の排出口とを有し、渦流形成筒は、その軸方向の一端側の中心位置において紫外線室の前記第1の排出口で紫外線室に連通すると共に、その軸方向の他端側の中心位置に設けられた第2の排出口と、その軸線から偏心した位置においてその内壁に沿うように設けられた第2の導入口とを有し、渦流形成筒内において、前記第2の導入口から導入される第2の流体を渦流化し、この渦流の中心に発生する負圧部分に前記第1の排出口から排出される第1の流体が供給され、この第1の流体と共に前記第2の流体を前記第2の排出口から排出させることを特徴とする紫外線照射装置である。
【0011】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の紫外線照射装置において、第3の流体を導入する第3の導入口を有し、紫外線室と渦流形成筒との間に設けられた混合室を具備し、該混合室は、前記第3の導入口から導入された第3の流体を、前記光源からの紫外線に照射させつつ前記第1の流体に混合させることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る本発明は、請求項1または2記載の紫外線照射装置において、前記排出口から排出される第1の流体および第2の流体の回転力がこの排出口の外側の領域に伝達されることを抑制する回転力伝達抑制手段が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る本発明は、紫外線が照射される紫外線照射領域において流体を渦流化させ、この流体を渦流化させた領域より上流の領域にて他の流体に紫外線照射させ、この紫外線照射された他の流体を、前記流体の渦流の中心部に発生する負圧部分に供給し、これら流体を前記紫外線照射領域において混合させることを特徴とする紫外線照射方法である。
【0014】
請求項5に係る本発明は、請求項4記載の紫外線照射方法において、第2の流体を渦流化させる紫外線照射領域と、第1の流体が紫外線照射される領域との間の領域に第3の流体を供給し、この第3の流体を前記第1の流体と共に前記第2の流体の渦流の中心部に発生する負圧部分に供給し、これら第1ないし第3の流体を前記負圧部分の前記第1および第2の流体が供給される側の反対側から排出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、渦流形成筒の第2の導入口から導入された第2の流体は、渦流形成筒内において渦流とされ、この渦流の中心の負圧部分に、連通口から導入される第1の流体が供給され、この第1の流体と共に第2の流体が排出口から排出される。したがって、渦流形成筒内の紫外線照射領域において、紫外線またはオゾンによって分解された物質についても排出口から排出される。よって、渦流の中心に形成される負圧部分を利用することにより、他の動力を使うことなく、反応後の物質が紫外線室に入り込むことを防止できるから、光源を汚すことなく、所定の紫外線量を長期間に亘って維持できる。
【0016】
第2の導入口より導入された第2の流体は、常に渦流中心部を通って第2の排出口へと流れていくため、紫外線照射領域は渦流中心部の数巻分の領域と渦の深さのみを考慮すれば良い。なお、渦流中心部では、渦の流れの幅が小さくなって薄くなる性質があるため、渦流形成筒内において第2の流体に含まれる照射対象物周囲の領域が小さくなることとなり、この照射対象物への紫外線照射率を向上できる。
【0017】
さらに、混合室の第3の導入口から導入された第3の流体を、連通口にて紫外線を照射させつつ第1の流体に混合させることにより、紫外線室を通過させることなく第3の流体に紫外線を照射でき、この第3の流体を第1の流体および第2の流体に混合させることができる。すなわち、渦流の中心部に存在する負圧部分および渦流の中心部の渦については、光源から紫外線が直接照射される領域となっているため、この領域での第1ないし第3の流体のそれぞれを混合できる。
【0018】
また、排出口から排出される各流体の回転力が排出口の外側の領域に伝達されることを、回転力伝達抑制手段によって抑制できるから、排出口から排出された際の各流体の混合をより効率良くでき、既に排出されて排出口の外側に存在する各流体とも効率良く混合できる。
【0019】
さらに、紫外線が照射される紫外線照射領域において第2の流体が渦流化とされ、この第2の流体を渦流化させた紫外線照射領域より上流の領域において第1の流体が紫外線照射され、この紫外線照射された第1の流体が、第2の流体の渦流の中心部に発生する負圧部分に供給されて、この負圧部分の第1の流体が供給される側の反対側から第1の流体および第2の流体が排出される。よって、渦流の中心に形成される負圧部分を利用することにより、他の動力を使うことなく、渦流化される第2の流体や反応後の物質が紫外線照射領域より上流の第1の流体が紫外線照射される領域に入り込むことを防止できる。
【0020】
また、第2の流体を渦流化させる紫外線照射領域と、第1の流体が紫外線照射される領域との間の領域に第3の流体を供給し、この第3の流体を第1の流体と共に第2の流体の渦流の中心部に発生する負圧部分に供給して、これら第1ないし第3の流体を負圧部分の第1および第2の流体が供給される側の反対側から排出させることにより、紫外線室を通過させることなく第3の流体に紫外線を照射でき、この第3の流体を第1の流体および第2の流体に混合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態による紫外線照射装置の概略構成図である。
【図2】図1中II−II線による断面図であり、渦流形成筒内で形成される渦流を模式的に示す図である。
【図3】本発明の別の実施形態による紫外線照射装置の概略構成図である。
【図4】本発明のさらに別の実施形態による紫外線照射装置の渦流形成筒を示す概略構成図である。
【図5】本発明による一実施形態による紫外線照射装置を連結させた状態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示される本発明の一実施形態による紫外線照射装置10は、渦流型紫外線照射装置であって、紫外線を照射する紫外線光源としてのUVランプ11を包囲するように設けられた紫外線室12を有する。紫外線室12は、ステンレス等の紫外線不透過性を有すると共に、紫外線やオゾンによって分解されない性質を有する材料で形成することが好ましく、これによりUVランプ11から照射された紫外線が装置10の外部に漏出することを防止し、装置10の周辺環境に害を与えない安全な処理を実行できる。なお、このUVランプ11に代えて、他の紫外線照射源や、紫外光を発するLEDランプ等を用いても良いし、オゾン発生器(オゾナイザー)を併設しても良い。
【0023】
紫外線室12には、この紫外線室12の側面に開口された導入口13から第1の流体である流体X(空気等)が導入され、紫外線室12内でUVランプ11による紫外光照射を受けた後、底面中央に開口された紫外線照射窓としての排出口ないし連通口14から排出される。排出口14からは同時にUVランプ11からの紫外光も放出される。図において矢印Aは紫外線室12から排出口14を介して排出ないし放出される流体Xおよび紫外光の移動方向を示す。なお、UVランプ11は、照射対象物に対する紫外線強度の変更や寿命後の交換等を考慮して容易に交換できる設置方法を採ることが好ましい。
【0024】
紫外線室12の下方には略円筒形状の渦流形成筒15が設けられている。渦流形成筒15は排出口14にて紫外線室12に連通している。ここで、紫外線室12は、渦流形成筒15の軸方向の一端側中央に排出口14が位置するように該形成筒15に隣接して設けられている。渦流形成筒15は、該形成筒15の略円筒上の軸線上の偏心位置において該形成筒15の内壁に沿うように設けられた導入口16から圧入される第2の流体としての流体Yを該形成筒15の内壁面の曲面を利用して渦流化させる。流体Yには、装置10において紫外線照射により除去しようとする照射対象物(菌やウイルス、アンモニア等)が含まれており、流体Xより高い粘度の物質が媒体として用いられている。導入口16は、渦流形成筒15の軸方向の他端側、すなわち該形成筒15の底面側に設けられており、導入口16から導入される流体Yを逆円錐形状の渦巻流とさせる。
【0025】
排出口14は、渦流形成筒15の略円筒状の軸方向(軸線)に対して垂直な一端側である上面側の中心位置に設けられ、該排出口14を介して渦流形成筒15と紫外線室12とを連通させている。渦流形成筒15の底面には排出口14の直下位置(底面の中心位置)において所定径(渦流形成筒15の内径より十分に小さい)の渦流排出口としての排出口17が開口している。排出口17は、渦流形成筒15の排出口14と同心状に連通しており、該形成筒15の略円筒状の軸方向に対して垂直な他端側中央に開口している。
【0026】
渦流形成筒15の壁面に対向した位置に、該形成筒15の軸方向に沿った平板状の回転力伝達抑制手段としての回転力伝達防止板18が取り付けられている。回転力伝達防止板18は、渦流形成筒15から所定間隔離間された位置に取り付けられ、該形成筒15の排出口17より下方に突出している。該防止板18は、渦流形成筒15の排出口17から排出された流体Xと流体Yとの回転力が、この排出口17の外側の空間、すなわち下方領域19へ伝達することを抑制して、これら流体X,Yを効率良く混合させる。
【0027】
なお、流体Yも流体Xと同様に気体や液体であり、これら流体X,Yは同一の種類の媒体であっても異種の媒体であっても良い。たとえば、この装置10で水に含まれる細菌等を除去しようとする場合、流体Xに空気を用いてこれをUVランプ11でオゾン化して排出口14から渦流形成筒15に導入して、流体Y(水)をオゾン殺菌するように用いることができる。
【0028】
ポンプ(図示せず)等の供給源から所定の流速で導入口16を介して渦流形成筒15内に偏心的に圧入された流体Yは、流体Y自身の粘度によって渦流形成筒15の内壁に沿って移動しようとする力と、内壁に沿って上下に拡散する力が存在することになるが、排出口17に近い位置に流体Yの導入口16を設けることにより、距離的に近い排出口17へ向かう流れが、渦流形成筒15よりも径の小さい排出口17によって、該排出口17内での流速が早くなる。この結果、流体Y自身の粘度に引きずられて、渦流形成筒15の内側面を沿って移動する力、および排出口17に向かう力になっていく。このため、図2に模式的に示すように、一巡目の回転流y1となり、その後は徐々に内側を通る回転流y2,y3・・・となって、徐々に回転流が小径化していって渦流が形成される。ここで、この渦流の中心部に近づくに連れて、排出口17に向かう力が大きくなるため、渦流の中心部が窪んだ形状となって、この部分に負圧部分23が発生することとなり、排出口14から流体Xが引き込まれることとなる。
【0029】
本装置10は、渦流の性質を利用するものであるため、後述する流体Zを含め、利用する各流体X,Y,Zの粘度については流体Y>流体Z≧流体Xとなることが好ましい。これにより、渦流形成筒15内へ引き込まれた流体Xは、流体Yより粘度が低いため、これら流体X,Y間に速度差が生じて摩擦が生じ、該形成筒15内にて旋回している流体Yに引きずられにくく、回転同化されにくい。さらに、流体Xと流体Yとの間に生じた摩擦によって、これら流体X,Yが帯電しやすくなり、これら流体X,Yが互いに結びつきやすくなる。なお、流体Xが供給される排出口14の付近に回転力伝達防止板(図示せず)を取り付けて、流体X,Yとの間の速度差をより大きくすることによって、これら流体X,Yの回転同化をより確実に防止できる。
【0030】
このとき、紫外線室12の導入口13から供給される流体Xの流量を調整することによって、渦流形成筒15内での逆円錐形状の渦流中心部の負圧部分23への流体Xの補填量を調整でき、この負圧部分23への流体Xの補填量を多くすることによって、この負圧部分23の窪みが大きくなり、この負圧部分23への流体Xの補填量を少なくすることによって、この負圧部分23の窪みを小さくできる。
【0031】
そして、この負圧部分23の窪みについては、渦流形成筒15内において排出口17までに亘って渦流が形成されていることから、上下方向の大きさ(長さ)は変化できず、径方向の大きさ(直径)のみが変化する。すなわち、この負圧部分23の窪みを小さくすることによって、渦流が形成される領域が広くなり、渦の巻き数を増加でき、その逆も可能である。渦流はその性質上、外周および内周の移動速度が同じであるから、巻き数の変化によって渦流の中心部分での回転速度(巻速度)を調整できる。このため、流体Xの渦流の中心部への補填量を変化させることによって、流体Yの渦流形成筒15内の紫外線照射領域22での滞在時間を調整でき、流体Yの紫外線照射時間を調整できる。
【0032】
さらに、排出口17から排出された流体X,Yは、該排出口17から排出された途端に、これら流体X,Yの回転力や圧力を遮る壁面が無くなることにより、図1に示すような下方に向けて急激に拡開した円錐面状の旋回流21となり、渦流形成筒15の下方領域19へ放出され、この下方領域19との間において生じる回転差による摩擦によって、該領域19に存在する流体X,Yと、排出口17から排出された流体X,Yとが急激に混合される。
【0033】
このとき、流体X,Yが排出口17から排出されて円錐面状の旋回流21となる際の回転力によって、この円錐面状の旋回流21が形成されている領域と下方領域19との回転が同化した場合には、これら領域の間での摩擦力が低下し、これら流体X,Yを混合させるための混合力が低下してしまう。しかし、渦流形成筒15の壁面に対向した位置に設けた回転力伝達防止板18によって、該円錐面状の旋回流21が形成される領域と下方領域19との間での回転力の伝達が防止されて速度差が維持される事により、これら領域間での摩擦力が一定となり、排出口17から排出された後の流体X,Yが効率良く混合される事となる。
【0034】
そして、この回転力伝達防止板18によって、下方領域19での流体X,Yの回転同化が防止されるため、装置10を小型化できると共に、下方領域19が回転同化しやすい円筒状の容器(図示せず)に本装置10を設置することも可能となる。さらに、円錐面状の旋回流21付近の下方領域19の流体X,Yの流れも調整できるため、これら旋回流21と下方領域19との間での摩擦状態をより確実に調整することが可能になると共に、混合後の流体X,Yの流れも制御することが可能となり、下方領域19を内包する容器からの排出口の位置や形状等の設計の自由度を高めることができる。なお、回転力伝達防止板18としては、旋回流21と下方領域19との間に速度差を設けることができる構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0035】
上記の構成において、照射対象物を含んだ流体Yを加圧して導入口16から導入させて、逆円錐形状の渦流とし、この渦流化した流体Yの回転中心部に向けて紫外線を照射する方式としたことにより、流体Yの渦流中心部に発生する負圧部分23を利用することが可能となり、流体Y中の紫外線に分解された照射対象物がUVランプ11側の紫外線室12に入り込むことなく、流体Yの渦流の中心部に引き込まれるため、紫外線に分解された照射対象物がUYランプ11に付着することがなくなった。つまり、流体Yやそこに含まれる物質がどのようなものであっても、紫外線室12内を常にクリーンな状態に保持する事に成功した。この結果、流体Yに含まれている物質や照射対象物等の紫外線やオゾンによる分解後の特性に左右されることなく、紫外線室12内のUVランプ11による所定の照射量を、長期間に亘って維持することが可能となり、UVランプ11自体の寿命まで装置10の保守を行う必要が無くなるから、装置10の稼働性をより向上できる。
【0036】
また、渦流形成筒内15で流体Yを渦流化したことにより、この流体Yの渦流の中心部を、該流体Y中の照射対象物が常に移動して通過するようになるため、渦流中心部数巻分の領域と渦の深さの紫外線照射領域22を確保すれば良いこととなると共に、UVランプ11の汚れに対する紫外線量の低下を考慮する必要がなくなるので、UVランプ11の長さ分の照射経路を設ける必要が無くなり、UVランプ11の小型化及び省エネルギー化が可能となる。
【0037】
さらに、渦流形成筒15に隣接して紫外線室12を設けられるため、紫外線照射源から流体Yに対する距離の短縮が可能となり、紫外線強度を保持しやすくできると共に、該形成筒15内での流体Yの渦流の中心部に形成される負圧部分23への流体Xの供給については、紫外線室12を通過させて紫外線照射されたものを直ぐに利用できることとなる。つまり、流体Xに酸素が含まれる場合は、渦流形成筒15へ紫外線を照射するための排出口14を利用して該形成筒15内に流体Xを送り込むことができるため、該形成筒15内での流体Yの渦流の中心部に形成される逆円錐形状の負圧部分23に送り込んだ流体Xが流体Yと接触する間際までオゾンを生成可能となる。
【0038】
このとき、渦流化した流体Yの中心部は、流速の上昇に伴う遠心力の増加によって薄膜化されていくが、流体Yの内包物(菌やウイルス等)まで薄くなることはないため、渦流中心部においては内包物に対する流体Yの比率が小さくなる。したがって、流体Yの内包物に対する紫外線照射効率及びオゾンの接触効率が向上する。
【0039】
なお、渦流形成筒15は該形成筒15の高さや径を調整することによって、該形成筒15内での流体Yの渦流形状を調整できるので、流体Yの紫外線透過率やオゾンとの接触時間を考慮して該形成筒15を設計することが望ましい。また、導入口16からの流体Yの流速および流量等の調整、および流体Xの導入量の可変による渦流中心部の渦の巻き数の調整により、該形成筒15内での紫外線照射領域22における流体Yの渦流の回転速度が調整可能であるため、これらを調整することによって、導入物に適した紫外線照射時間を調整できる。また、UVランプ11の交換による紫外線強度の調整については容易に行えるため、流体X,Yの物性や照射対象物の特性に合わせて選択すると良い。
【0040】
特に、流体Xが空気(酸素)の場合には、紫外線のオゾン生成有効領域までオゾンを生成させることが可能であるから、渦流形成筒15内において、紫外線が照射される紫外線照射領域22がオゾン生成部および反応部分となり、オゾンが送られる経路中でのオゾンの消滅量を考慮する必要が無くなる。さらに、流体Yの渦流中に引き込まれたオゾンについては、この流体Yの渦流の中心部において媒体や照射対象物との間での回転差による摩擦が生じることとなり、渦流内に引き込まれたオゾンの泡(塊)自体が剪断または回転する等の激しい動きを強いられるため、泡(塊)中のオゾンによる反応を効率良くできる。
【0041】
すなわち、渦流形成筒15内の流体Yの渦流中心部に存在する照射対象物や媒体に対して、少ないオゾン量で確実にオゾン反応させることができるから、該形成筒15の排出口17から排出される流体X,Yに含まれる溶存オゾン量をほとんど無くすことができる。このため、人畜に使用する直前の段階で装置10を設置することが可能となり、オゾン反応を待つまでの流体経路を短縮化することが可能となった。
【0042】
よって、本装置10を養殖牡蠣や活魚等の水槽に直付けすることが可能となるから、オゾン臭漂う水槽で飼育せず、水槽内の飼育物を食してもオゾン臭が漂うといった不具合を解消できる。また、本装置10を湯船に直接設置してもオゾン臭漂う湯船とはならないから、省エネルギーで、より安全にオゾン殺菌することが可能となる。
【0043】
さらに、流体Yの経路が長くなる場合に必要な流体Y自体の殺菌効力の持続を無視できるので、流体Yが水や海水の場合に、この流体Yの媒体として塩素等を含有させる必要を無くすことができる。
【0044】
ここで、導入口13から導入される流体Xに酸素が含まれている場合に、UVランプ11として波長185nm線の紫外線を放射する紫外線ランプを用いることにより、該流体XがUVランプ11に沿って紫外線室12を通過していく際に、この流体Xに含まれている酸素を容易にオゾン(O)として生成できる。なお、この生成されたオゾンは、渦流形成筒15内での流体Yの渦流によって形成される矢印Aの流れに伴う負圧によって、排出口14から渦流形成筒15内の流体Yの渦流中へと引き込まれていき、この流体Yの渦流の底部まで紫外線が照射されていることにより、この流体Yの渦流の底部までに亘ってオゾンが生成される。
【0045】
さらに、第1の排出口14から矢印Aの負圧によって渦流形成筒15内へ引き込まれた流体Xや、この流体Xから生成されたオゾンは、該形成筒15内の流体Yの渦流中心部に存在する逆円錐状の負圧部分23へ導入されるため、流体Yと共に回転せず、該負荷部分23の底部まで到達するまでの間に流体Yとの回転差による摩擦が生じ、排出口17から排出された後において、流体Yが回転している領域に強制的に取り込まれていく。この結果、流体Xは、流体Yとの間に大きな摩擦が生じ、この摩擦にて回転力および剪断力を受けつつ流体Yに接触していくため、流体Yのオゾンによる酸化をより確実にできる。
【0046】
図3は、本発明の他の実施形態による紫外線照射装置30を示す。この紫外線照射装置30は、紫外線室12と渦流形成筒15との間に、第3の流体としての流体Zが導入される混合室31が設けられている。混合室31には、流体Zを導入するための導入口32が形成され、この導入口32から導入された流体Zを、排出口33からの紫外線に直接照射させつつ、排出口14から渦流形成筒15に送り込んで、前述したようにして紫外線照射領域22において、紫外線室12の導入口13から導入された流体Xと混合される。混合室31は、紫外線室12を包囲するように設けられており、紫外線室12の底部中央に、該紫外線室12へ導入された流体Xを排出するための排出口33が設けられている。
【0047】
図1に示した実施形態と異なり、この実施形態では、導入口32から導入された流体Zが紫外線室12を通過することがないため、この流体Zの紫外線照射により分解された物質がUVランプ11の表面に付着しやすい性質を有する場合や、該物質が直接UVランプ11を汚すおそれのあるような場合に特に有効である。また、この場合においても、混合室12と渦流形成筒15との間には、該形成筒15内での流体Yの渦流によって形成される矢印Aの引き込み力が生じているため、流体Z,Yとしてどのような物質を用いても、これら流体Z,Y中の紫外線やオゾンにて分解された物質によってUVランプ11を汚すおそれがない。
【0048】
すなわち、排出口14によって紫外線室12と渦流形成筒15とが直接連通しているため、排出口14内には渦流中心部に存在する負圧部分が常に存在する状態となる。このため、流体Y,Zが紫外線やオゾンによって分解される物質、あるいはそのような性質の物質が含まれる場合、またはこれら各流体の混合によって如何なる物質が生成される場合であっても、紫外線室12およびUVランプ11に対して、何ら影響を及ぼすことなく本装置30を稼働できる。特に、渦流形成筒15内の渦流の中心部に形成される負圧部分によって、この渦流中心部の近くにUVランプ11を設置できるため、紫外線の照射損失を最大限に抑えることができる。
【0049】
さらに、渦流形成筒15内の負圧部分23は、該形成筒15内での渦流の形成によって自給的に形成されるため、流体Zにおいても、紫外線の照射対象物を照射位置に配置して照射し移動させるといった一連の照射行程を、他の動力を使うことなく行うことができる。
【0050】
なお、流体X,Zについては、排出口14を通過した後に渦流中心部に向けて先細りする逆円錐状の領域内に供給されて導かれるが、この先細りする形状によって、照射対象を領域的に絞り込むことができるから、流体Z内の対象物を照射領域内に確実に配置でき、確実に紫外線照射して排出口17から排出させることができる。
【0051】
すなわち、装置10において、流体X,Yにおける粘度差の確保が難しい場合や、流体Xの内包物が主な照射・反応対象である場合等においては、本装置30を利用することによって、汚染された流体を流体Zに置き換えることが可能となる。また、流体X,Zとの混合を主目的とした場合には、流体Yとして混合に必要な粘度を有する物質とできるので、流体Zに混入した菌・ウイルス等や流体Z自体に紫外線を照射しながら流体Xを紫外線照射またはオゾン酸化した後に、最適な粘度を有する流体Y中において摩擦を利用して混合できる。すなわち、流体Zについても、殺菌しようとする菌やウイルス等の照射対象物を含んだ媒体等にすることができる。
【0052】
よって、本装置30における流体Yを水としてポンプにて循環させ、流体Xを清潔な空気とし、流体Zを汚染された空気とすることにより、他の動力を使うことなく、これら流体X,Zを自給させることが可能となる。この構成によって、汚染された空気に対して閉塞的な紫外線照射や、オゾン反応させることが可能となる。さらに、上述のように、継続的に照射源と近接して照射対象物を移動できる利点、すなわち紫外線の照射損失の軽減や、負圧部分23の絞込みによる効果、各流体の粘度差による確実な混合効果等といった、本装置30による各利点によって、汚染された空気に対する確実な紫外線照射およびオゾン反応が可能となると共に、確実なオゾン反応による装置30外へのオゾンの流出を防止できるため、人畜に近い場所での紫外線やオゾンによる殺菌消臭効果をより安全に行うことが可能となった。
【0053】
すなわち、病室内はもちろん、トイレや喫煙室、畜舎内といった空気を、人畜の存在に関わらず、安全に殺菌消臭することが可能となった。なお、流体Zに含まれる殺菌・消臭・分解した成分や、流体Zに含まれる塵や花粉等についても、流体Yに混合可能となるため、流体Yを定期的に交換する機構(図示せず)を設けることによって、フィルター等を用いる事無く、これらの成分を安全に処理できる。さらに、処理後の空気にはついては、これらの成分が含まれないため、これら成分を骸とした二次的な繁殖を抑えられると共に、人畜に対する接触や呼吸等の吸い込みによるアレルギー反応も防止できる。
【0054】
図4は、本発明のさらに別の実施形態による渦流形成筒41を示す。この渦流形成筒41は、下方から上方に向けて拡径された構造に形成されている。この場合においても、渦流形成筒15の導入口16から導入された流体Yは、該形成筒15の内壁に沿って周方向に移動する力を有するため、該形成筒15の内壁に沿って形成された逆円錐形状の渦流となり、渦全体についても逆円錐形状の渦流となる。
【0055】
すなわち、この渦流形成筒41は、渦流中心部に存在する負圧や、この中心部での流れの特性を利用するために構成するものであり、導入する流体Yの特性に合わせて渦流中心部の巻き数や渦流上部の形状等を考慮して渦流形成筒41の形状を定めることができるから、いずれの形状とすることもできる。また、導入される流体Yに応じ、渦流形成筒15内で渦巻流にでき、上記の各条件を満足するような最適な形状とすることが好ましい。
【0056】
なお、紫外線室12、排出口14、混合室31または渦流形成筒15の内壁等の主だった光経路上に酸化チタン皮膜を形成し、導入される各流体X,Y,Zに対して殺菌防汚等の酸化チタン効果を適用させることもできる。
【0057】
図5は、本発明による一実施形態の紫外線照射装置を連結させた紫外線照射システム50を示す。この紫外線照射システム50は、たとえば3台の紫外線照射装置10を直列に接続させた各列を2列に並列接続させた3重連2系列であって、水槽51の下端に設けられた排出口52が2台のポンプ53それぞれに接続されている。これらポンプ53は、別系列の上流側に位置する紫外線照射装置10の導入口16に接続されている。
【0058】
ここで、各紫外線照射装置10は、渦流形成筒15の下部を覆うように混合用タンク54が取り付けられており、該形成筒15の排出口17から排出された流体X,Yが混合タンク54内にて混合されて貯留される。該タンク54の上端部に排出口55が設けられ、各排出口55は、下流側に位置する紫外線照射装置10の導入口16に接続されている。各系列の最も下流側に位置する紫外線照射装置10の排出口55は、水槽51の上端縁に設けられた導入口56にそれぞれ接続されている。
【0059】
したがって、水槽51内に貯留されている流体Y(水等)は、ポンプ53によって水槽51の排出口52から上流側の紫外線照射装置10の導入口16へ送られ、この流体Y中の菌やウイルス等の照射対象物が紫外線照射またはオゾン処理されてから、順次下流側の紫外線照射装置10へ送られて繰り返し紫外線照射またはオゾン処理された後に、水槽15の導入口56へ送られて、水槽51内での菌やウイルス等の増殖や発生等が防止される。すなわち、1台の紫外線照射装置10では流体Yに対する紫外線照射量不足やオゾン混入不足によって、流体Yの処理が不十分な場合には、循環経路を設けることや、複数台の本装置10を必要に応じて連結させる等して用いることによって、流体Yに対する紫外線照射量および照射時間を確保できる。
【符号の説明】
【0060】
10,30 紫外線照射装置
11 UVランプ(光源)
12 紫外線室
13 第1の流体の導入口(第1の導入口)
14 第1の排出口
15,41 渦流形成筒
16 第2の流体の導入口(第2の導入口)
17 第2の排出口
18 回転力伝達防止板(回転力伝達抑制手段)
19 下方領域
21 旋回流
22 紫外線照射領域
23 負圧部分
31 混合室
32 第3の流体の導入口(第3の導入口)
33 排出口
50 紫外線照射システム
51 水槽
52 排出口
53 ポンプ
54 混合用タンク
55 排出口
56 導入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を照射する光源を包囲するように設けられた紫外線室と、この紫外線室に隣接して設けられた渦流形成筒とを備え、紫外線室は、第1の流体を導入する第1の導入口と、前記光源から照射された紫外線と共に前記第1の導入口から導入された第1の流体を排出する第1の排出口とを有し、渦流形成筒は、その軸方向の一端側の中心位置において紫外線室の前記第1の排出口で紫外線室に連通すると共に、その軸方向の他端側の中心位置に設けられた第2の排出口と、その軸線から偏心した位置においてその内壁に沿うように設けられた第2の導入口とを有し、渦流形成筒内において、前記第2の導入口から導入される第2の流体を渦流化し、この渦流の中心に発生する負圧部分に前記第1の排出口から排出される第1の流体が供給され、この第1の流体と共に前記第2の流体を前記第2の排出口から排出させることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
第3の流体を導入する第3の導入口を有し、紫外線室と渦流形成筒との間に設けられた混合室を具備し、該混合室は、前記第3の導入口から導入された第3の流体を、前記光源からの紫外線に照射させつつ前記第1の流体に混合させることを特徴とする、請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記排出口から排出される第1の流体および第2の流体の回転力がこの排出口の外側の領域に伝達されることを抑制する回転力伝達抑制手段が設けられていることを特徴とする、請求項1または2記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
紫外線が照射される紫外線照射領域において第2の流体を渦流化させ、この第2の流体を渦流化させた前記紫外線照射領域より上流の領域にて第1の流体に紫外線照射させ、この紫外線照射された第1の流体を、前記第2の流体の渦流の中心部に発生する負圧部分に供給し、この負圧部分の前記第1の流体が供給される側の反対側から前記第1の流体および第2の流体を排出させることを特徴とする紫外線照射方法。
【請求項5】
第2の流体を渦流化させる紫外線照射領域と、第1の流体が紫外線照射される領域との間の領域に第3の流体を供給し、この第3の流体を前記第1の流体と共に前記第2の流体の渦流の中心部に発生する負圧部分に供給し、これら第1ないし第3の流体を前記負圧部分の前記第1および第2の流体が供給される側の反対側から排出させることを特徴とする請求項4記載の紫外線照射方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−62639(P2011−62639A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215215(P2009−215215)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(506038349)有限会社網紙 (4)
【Fターム(参考)】