説明

紫外線硬化型樹脂組成物およびそれを用いて得られる光学レンズ

【課題】撮像装置に用いられる、有機・無機複合レンズを製造するに際して、アッベ数50以上で、耐熱変色性および透明性に優れた光学レンズ用の紫外線硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】アッベ数が50以上の光学レンズを作製するための紫外線硬化型樹脂組成物である。そして、この紫外線硬化型樹脂組成物は、下記の(A)〜(C)成分を含有し、かつ下記(A)成分および(B)成分の合計含有量が、樹脂組成物全体の65重量%以上に設定されている。
(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する鎖式または環式脂肪族エポキシ樹脂。
(B)1分子中に2個以上のオキセタニル基を有する炭素−炭素二重結合を含まないオキセタン化合物。
(C)光重合開始剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射により硬化して所定の光学レンズを作製するために用いられる紫外線硬化型樹脂組成物、および、それを用いて得られる、例えば、撮像装置等に用いられる透明なプラスチックの光学レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデジタルカメラ等で用いられる撮像装置においては、撮像用の光学レンズが搭載されているが、この光学レンズ形成材料としては、一般的に、光学用ガラスや透明プラスチック材料が使用されている。
【0003】
特に、近年の撮像機能付き携帯電話の普及率増加に伴い、より安価に光学レンズを製造する必要があることから、光学的に透明性を有し、かつレンズ設計上の簡便性という点から、アッベ数50以上のポリオレフィン材料が、上記透明プラスチック材料の主流となっている。
【0004】
一方で、撮像装置のプリント基板への搭載方法としては、これまでソケットを用いたピン挿入タイプ使用による搭載、あるいは半田リフローによりプリント基板に撮像素子を実装した後、レンズユニットを撮像素子に取り付ける方式等が一般的であったが、より安価で大量に生産することを目的として、撮像装置そのものをプリント基板上に半田リフローにより実装することが強く要望されている。
【0005】
しかしながら、撮像装置そのものを半田リフロー方式によりプリント基板上に実装する場合においては、上記透明プラスチック材料により作製された光学レンズは、軟化点以上の高温環境下に曝されることから、軟化したり寸法変形するという問題が生じる。
【0006】
このような問題を解決するため、例えば、透明性および耐熱変色性に優れ、かつアッベ数50以上のプラスチック材料であるシリコーン樹脂を用いて、光または熱硬化により光学用ガラス基板上にレンズを成形してなる有機・無機複合レンズが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3926380号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的にシリコーン樹脂は密着力が弱く、またガラス転移温度が低いことから使用温度環境下において熱膨張係数が大きく、光学レンズとしての使用は困難であるというのが実情である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、例えば、撮像装置に用いられる、有機・無機複合レンズを製造するに際して、アッベ数50以上で、耐熱変色性および透明性に優れた光学レンズ用の紫外線硬化型樹脂組成物およびそれを用いて得られる光学レンズの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、アッベ数が50以上の光学レンズを作製するための紫外線硬化型樹脂組成物であって、下記の(A)〜(C)成分を含有し、かつ下記(A)成分および(B)成分の合計含有量が、樹脂組成物全体の65重量%以上に設定される紫外線硬化型樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する鎖式または環式脂肪族エポキシ樹脂。
(B)1分子中に2個以上のオキセタニル基を有する炭素−炭素二重結合を含まないオキセタン化合物。
(C)光重合開始剤。
【0010】
そして、本発明は、上記紫外線硬化型樹脂組成物の硬化体からなる、アッベ数50以上の光学レンズを第2の要旨とする。
【0011】
すなわち、本発明者は、アッベ数50以上で、耐熱変色性および透明性に優れた光学レンズ形成材料となる紫外線硬化型樹脂組成物を得るために鋭意検討を重ねた。その結果、上記鎖式または環式脂肪族エポキシ樹脂〔(A)成分〕と炭素−炭素二重結合を含まないオキセタン化合物〔(B)成分〕を用いるとともに、上記(A)成分および(B)成分の含有量を樹脂組成物全体の特定の割合となるように設定すると、上記(A)成分と(B)成分との相乗作用により、優れた紫外線(UV)硬化性,耐熱性,接着性が得られるようになり、しかもその含有量を上記特定の割合とすることにより、アッベ数50以上で上述の相乗作用による効果が顕著にみられるようになり、結果、上記所期の目的が達成されることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する鎖式または環式脂肪族エポキシ樹脂〔(A)成分〕と、1分子中に2個以上のオキセタニル基を有する炭素−炭素二重結合を含まないオキセタン化合物〔(B)成分〕と、光重合開始剤〔(C)成分〕とを含有するとともに、上記(A)成分と(B)成分の合計含有量を樹脂組成物全体の特定の割合となるように設定したものである。このため、高温環境下での、優れた透明性および耐熱変色性を備えた硬化体である光学レンズを得ることができる。したがって、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を光学レンズ成形材料として用い、その硬化体からなる、アッベ数50以上の光学レンズは、例えば、撮像装置に用いられる、有機・無機複合レンズの有機レンズに有用である。
【0013】
そして、上記(A)成分が、特定のエポキシ樹脂(a1)および(a2)からなり、上記(B)成分が、特定のオキセタン化合物(b1)であるとともに、上記(a1)および(a2)の含有量をそれぞれ樹脂成分全体の特定の割合に設定し、また上記(b1)の含有量を樹脂成分全体の特定の割合に設定し、かつ上記(a1)および(a2)からなる(A)成分、および、上記(b1)である(B)成分の合計含有量が、樹脂組成物全体の特定の割合となるよう設定すると、得られる成形物(硬化体)のガラス転移温度が高く、硬化性に優れたものが得られるようになる。
【0014】
さらに、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族エポキシ樹脂〔(D)成分〕および3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン〔(E)成分〕の少なくとも一方を含有し、かつ上記(D)成分および(E)成分の少なくとも一方の含有量を樹脂成分に対して特定の割合に設定すると、所望のアッベ数を備えたものが得られるとともに、透明性に一層優れたものが得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明を実施するための形態について詳しく説明する。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、アッベ数50以上の光学レンズを作製するために用いられる樹脂組成物であり、鎖式または環式脂肪族エポキシ樹脂(A成分)と、特定のオキセタン化合物(B成分)と、光重合開始剤(C成分)とを用いることにより得られる。なお、本発明において、アッベ数とは、いわゆる光学レンズにおける逆分散能を指称するものであって、JIS Z 8120に準じ、例えば、紫外線硬化型樹脂組成物の硬化体(試験片)を用い、アッベ屈折率計により、25±10℃にて測定され、下記の数式(x)にて算出される値である。
【0016】
〔数1〕
アッベ数=([589nmにおける屈折率]−1)/([486nmにおける屈折率]− [656nmにおける屈折率]) ・・・(x)
【0017】
そして、本発明では、アッベ数50以上の光学レンズを作製するための成形材料となる紫外線硬化型樹脂組成物を対象とするものであり、得られる光学レンズ(硬化体)がアッベ数50未満では、解像度が低下する恐れがある。
【0018】
上記鎖式または環式脂肪族エポキシ樹脂(A成分)とは、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する鎖式または環式脂肪族エポキシ樹脂であり、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等があげれらる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも好ましくは、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(a1)とともに、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂および水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂の少なくとも一方(a2)を用いる態様があげられる。特に好ましくは、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(a1)と、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(a2)の併用である。
【0019】
上記鎖式または環式脂肪族エポキシ樹脂(A成分)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(a1)および水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂および水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂の少なくとも一方(a2)を用いる態様において、これら化合物の各含有量は、上記(a1)の含有量が樹脂成分全体の30〜60重量%の範囲に、また上記(a2)の含有量が樹脂成分全体の10〜60重量%の範囲にそれぞれ設定することが好ましい。特に好ましくは、上記(a1)の含有量が樹脂成分全体の35〜55重量%の範囲、上記(a2)の含有量が樹脂成分全体の15〜55重量%の範囲である。すなわち、上記(a1)の含有量が少な過ぎると、得られる成形物(硬化体)のガラス転移温度が低くなる傾向がみられ、逆に多過ぎると、得られる成形物(硬化体)は充分な強度が得られ難くなる傾向がみられるからである。また、上記(a2)の含有量が少な過ぎると、硬化性が早くなり均一な硬化密度の成形物(硬化体)が得られ難くなる傾向がみられ、多過ぎると、得られる成形物(硬化体)のガラス転移温度が低くなる傾向がみられるからである。
【0020】
上記鎖式または環式脂肪族エポキシ樹脂(A成分)とともに用いられる特定のオキセタン化合物(B成分)は、1分子中に2個以上のオキセタニル基を有する炭素−炭素二重結合を含まないオキセタン化合物であり、例えば、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,6−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]−2,2,3,3,4,5,5−オクタフルオロヘキサン、3(4),8(9)−ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、1,2−ビス[2−〔(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕エチルチオ]エタン、2,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]ノルボルナン、2−エチル−2−[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]−1、3−O−ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メチル]−プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−O−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]−プロパン−1,3−ジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−O−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]−プロパン−1,3−ジオール、1,4−O−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]−ブタン−1,4−ジオール、2,4,6−O−トリス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]シアヌル酸等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも、具体的には、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルが好ましく用いられる。
【0021】
上記特定のオキセタン化合物(B成分)の含有量は、紫外線硬化型樹脂組成物中の樹脂成分全体の10〜35重量%の範囲に設定されることが好ましく、より好ましくは15〜30重量%である。すなわち、特定のオキセタン化合物(B成分)の含有量が少な過ぎると、硬化性が遅くなり所望とする硬化性が得られ難くなる傾向がみられ、逆に多過ぎると、充分な接着力が得られ難くなる傾向がみられるからである。
【0022】
さらに、上記鎖式または環式脂肪族エポキシ樹脂(A成分)および特定のオキセタン化合物(B成分)の合計含有量は、樹脂組成物全体の65重量%以上に設定する必要があり、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは70〜99重量%である。すなわち、A成分およびB成分の合計含有量が少な過ぎると、透明性や耐熱性を損なう恐れがあるからである。
【0023】
上記鎖式または環式脂肪族エポキシ樹脂(A成分)および特定のオキセタン化合物(B成分)とともに用いられる光重合開始剤(C成分)としては、紫外線の照射によってカチオン重合可能な酸を発生する各種光カチオン重合開始剤があげられ、そのアニオン成分としては、SbF6 - 、PF6 - 、BF4 - 、AsF6 - 、(C6 5 4 - 等があげられる。これらの中でも、光硬化性という観点から、上記PF6 - やSbF6 - と芳香族スルホニウム塩からなるオニウム塩が好ましく用いられる。
【0024】
上記光重合開始剤(C成分)の含有量は、硬化性、着色性の観点から、紫外線硬化型樹脂組成物中の樹脂成分の0.05重量%以上2.0重量%未満に設定することが好ましく、特に好ましくは0.1重量%以上1.5重量%未満である。すなわち、光重合開始剤(C)の含有量が少な過ぎると、硬化性を著しく損なう恐れが生じる傾向がみられ、逆に多過ぎると、著しく熱変色する傾向がみられるからである。
【0025】
さらに、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物には、アッベ数や透明性、変色等の所望とする特性を阻害しない範囲において、上記A〜C成分とともに、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族エポキシ樹脂(D成分)、および、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(E成分)の少なくとも一方を用いることができる。
【0026】
上記1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族エポキシ樹脂(D成分)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらの中でも、透明性、流動性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好適に用いられる。
【0027】
そして、上記D成分およびE成分の少なくとも一方を、紫外線硬化型樹脂組成物の樹脂成分に対して30重量%以下となるように含有させることが好ましく、特に好ましくは25重量%以下である。このように、上記範囲で含有させることにより、より一層の接着力や強度の向上を図ることができる。そして、上記D成分およびE成分の少なくとも一方の含有量が多過ぎると、アッベ数の低下あるいは透明性を損なう傾向がみられる。
【0028】
さらに、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物では、前記A〜C成分、ならびにD成分およびE成分の少なくとも一方以外に、必要に応じて、接着性を高めるための接着性付与剤であるシラン系あるいはチタン系のカップリング剤、合成ゴムやポリオルガノシロキサン等の可撓性付与剤、酸化防止剤、消泡剤、炭化水素系ワックス、無機質充填剤等の他の添加剤を適宜に配合することができる。
【0029】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、前記A〜C成分、ならびにD成分およびE成分の少なくとも一方、さらには上記他の添加剤を用いて、所定の割合で配合し溶融混合することにより得られる。
【0030】
〈光学レンズの製造〉
以下に、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を用いた、光学レンズの製造方法について図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
図1(a)に示すように、ガラス基板3を準備し、このガラス基板3上に本発明の紫外線硬化型樹脂組成物4をポッティングする。ついで、予め所定のレンズ形状に加工された紫外線透過性を備えた成形加工型1を準備し、上記成形加工型1の成形面を上記ガラス基板3上の紫外線硬化型樹脂組成物4に対峙させた状態でガラス基板3面に押圧する〔図1(b)参照〕。つぎに、図1(c)に示すように、成形加工型1を介して紫外線硬化型樹脂組成物4に紫外線を照射することにより、紫外線硬化型樹脂組成物4を硬化させた後、図1(d)に示すように、成形加工型1を取り外すことにより、目的とする、ガラス基板3上に所定形状の光学レンズである紫外線硬化型樹脂組成物硬化体4aが形成されたハイブリッドレンズを製造することができる(図2参照)。
【0032】
上記ガラス基板3の材質としては、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、BK−7(スコットグラス社製)等の光学用ガラス材料があげられる。また、上記ガラス基板3の厚みとしては、用途等に応じて適宜設定されるが、例えば、200〜600μm程度に設定することが好ましい。
【0033】
上記紫外線照射工程では、成形加工型1を介して照射する工程以外に、ガラス基板3を介して紫外線を照射してもよいし、成形加工型1を介して照射する工程とともにガラス基板3を介して照射するというように、成形加工型1側およびガラス基板3側の双方から紫外線を照射してもよい。
【0034】
上記紫外線照射において、紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯,高圧水銀灯,超高圧水銀灯等があげられる。また、紫外線の照射量としては、通常、100〜30,000mJ/cm2 、好ましくは300〜20,000mJ/cm2 程度があげられる。
【0035】
さらに、このようにして得られる光学レンズは、紫外線硬化型樹脂組成物硬化体4aとガラス基板3との密着力を向上させることを目的に、必要に応じて、例えば、紫外線を照射した後、所定の温度で加熱処理によるポストキュアを行なうことが好ましい。
【0036】
上記紫外線照射後に行なわれる加熱処理条件としては、通常、70℃以上、好ましくは80〜250℃、特に好ましくは100〜150℃にて、10秒〜2時間、好ましくは、5分〜1時間の範囲内にて行われる。
【実施例】
【0037】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0038】
まず、下記に示す各成分を準備した。
【0039】
〔エポキシ樹脂a〕
脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2021P:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)
〔エポキシ樹脂b〕
水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコートYX−8000)
〔エポキシ樹脂c〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート827)
〔エポキシ樹脂d〕
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成社製、YDF−8170)
【0040】
〔オキセタン化合物a〕
ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル
〔オキセタン化合物b〕
3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン
【0041】
〔光重合開始剤〕
ヘキサフロロホスホニウムの芳香族スルホニウム塩(サンアプロ社製、CPI−100P)
【0042】
〔酸化防止剤〕
ヒンダートフェノール型酸化防止剤(共同薬品社製、SONGNOX−1010)
【0043】
〔カップリング剤〕
エポキシ系シランカップリング剤(信越化学社製、KBM−403)
【0044】
〔実施例1〜11、比較例1〜4〕
後記の表1〜表3に示す各配合成分を同表に示す割合で配合し、加熱溶融混合(条件:80℃)を行ない、目的とする一液性の液状の紫外線硬化型樹脂組成物を作製した。
【0045】
このようにして得られた実施例および比較例の各紫外線硬化型樹脂組成物を用いて、その硬化体の透明性(着色性)を下記の方法に従って測定・評価した。これらの結果を後記の表1〜表3に併せて示す。
【0046】
〔透明性〕
厚さ500μmのパイレックス(登録商標)ガラス板(大きさ:2.5×3.5cm)上に、紫外線硬化型樹脂組成物3.5ccをポッティングした後、深さ600μm×幅2cm×長さ3cmのキャビティーを有する透明なシリコーン製プラスチック加工型を、上記紫外線硬化型樹脂組成物を介してガラス板に押し当てた。ついで、シリコーン製プラスチック加工型側から、高圧水銀ランプ(ウシオ社製、UXM−501MD)を用いて紫外線15000mJ/cm2 (30mW×500秒)を照射した後、シリコーン製プラスチック加工型をパイレックス(登録商標)ガラス板から取り除き、パイレックス(登録商標)ガラス板上に、厚み600μm×幅2cm×長さ3cmの樹脂硬化体を作製し試験片を得た。その後、100℃×1時間の加熱によるポストキュアを行なった。
【0047】
このようにして得られた試験片を用い、その熱変色性を、つぎのようにして測定した。すなわち、まず、熱風循環型コンベヤー式リフロー炉を用いて、JEDECリフロー条件に従い、260℃で10秒間加熱処理を行ない、ついで、100℃で500時間処理することにより加熱後の試験片を得た。
【0048】
上記得られた試験片の透明性(着色性)は、色度計(スガ試験機社製)によるイエローインデックス(YI)を、各工程(ポストキュア後、リフロー後、100℃×500時間後)にて測定することにより評価した。なお、各工程での上記イエローインデックス(YI)の値が10未満の場合を良品、YIの値が10以上の場合を不良品と判定した。
【0049】
〔アッベ数の測定〕
屈折率測定用試験サンプルは、紫外線硬化型樹脂組成物8ccをアルミニウム製シャーレ(直径50mm)に注ぎ込み、これに高圧水銀ランプ(ウシオ社製、UXM−501MD)を用いて紫外線15000mJ/cm2 (30mW×500秒)を照射して硬化させた後、100℃×1時間のポストキュアを行なった。得られた成形物の表面をグラインダーを用いて研磨した。その後、試験片を幅5mm×長さ10mmに切断した後、再度切断した端面を研磨し、これをアッベ屈折率計(アタゴ社製)を用いて25℃にて測定し、前記数式に基づき算出した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
上記結果から、実施例品は、全てアッベ数が50以上の硬化体であり、かつ透明性(着色性)の評価においても、各工程でのYI値は10未満であり、満足のいくものであった。
【0054】
これに対して、1分子中に1個しかオキセタニル基をもたないオキセタン化合物bを用いた比較例1,2品は、アッベ数が50未満と低く、光学レンズ用として適さないものであった。また、特定のエポキシ樹脂とともにビスフェノールA型エポキシ樹脂を多く用いた比較例3,4品も、アッベ数が50未満と低く、光学レンズ用として適さないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、撮像装置に用いられる光学レンズの形成材料に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)〜(d)は本発明の光学レンズを搭載してなるハイブリッドレンズの製造工程を示す説明図である。
【図2】本発明の光学レンズを用いたハイブリッドレンズの一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
3 ガラス基板
4a 紫外線硬化型樹脂組成物硬化体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッベ数が50以上の光学レンズを作製するための紫外線硬化型樹脂組成物であって、下記の(A)〜(C)成分を含有し、かつ下記(A)成分および(B)成分の合計含有量が、樹脂組成物全体の65重量%以上に設定されることを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物。
(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する鎖式または環式脂肪族エポキシ樹脂。
(B)1分子中に2個以上のオキセタニル基を有する炭素−炭素二重結合を含まないオキセタン化合物。
(C)光重合開始剤。
【請求項2】
上記(A)成分が、下記の(a1)および(a2)からなり、上記(B)成分が、下記の(b1)であるとともに、下記(a1)の含有量が樹脂成分全体の30〜60重量%の範囲に、下記(a2)の含有量が樹脂成分全体の10〜60重量%の範囲に、また下記(b1)の含有量が樹脂成分全体の10〜35重量%の範囲にそれぞれ設定され、かつ下記(a1)および(a2)からなる(A)成分、および、下記(b1)である(B)成分の合計含有量が、樹脂組成物全体の70重量%以上に設定されている請求項1記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
(a1)3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート。
(a2)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂および水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂の少なくとも一方。
(b1)ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル。
【請求項3】
下記の(D)成分および(E)成分の少なくとも一方を含有し、かつ下記の(D)成分および(E)成分の少なくとも一方の含有量が、樹脂成分に対して30重量%以下に設定されている請求項1または2記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
(D)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族エポキシ樹脂。
(E)3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物の硬化体からなる、アッベ数50以上の光学レンズ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−150489(P2010−150489A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333197(P2008−333197)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】