説明

紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品組成物

【課題】紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品製剤において、少量の紫外線防御剤で、紫外線防御効果Sun Protection Factor(以下、SPF)を向上させ、乳化状態が安定した組成物の製造方法を提供することである。
【解決手段】紫外線防御効果を有する粉体、有機系紫外線吸収剤類を少なくとも1種類以上を含有する紫外線防御剤、水、油分、乳化剤からなり、それぞれを特定の配合比で組み合わせた製剤について、製造工程中に容器中に処理液を収容し、該処理液中で攪拌具を回転して処理液を攪拌する攪拌方法において、前記容器の内周面近傍に達する端部をもつ攪拌具を処理液中で高速攪拌し、該攪拌具の回転に伴う処理液の回転により該処理液を遠心力で容器内面に圧着させると共に中空の薄膜状で回転させながら前記攪拌具の端部で攪拌することを特徴とする薄膜旋回型高速攪拌を行う(例えば、プライミクス株式会社製のT.K.フィルミックスを用いる)ことにより、粉体の分散状態および乳化状態を安定化させた、紫外線防御効果SPFを向上させる紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品の組成物及び製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線防御機能を有する化粧料および医薬部外品に関するものである。さらに詳しくは、少量の紫外線防御剤でSPF値を向上させる紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品の組成物及び製造方法である。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料に紫外線防御効果を有する粉体、有機系紫外線吸収剤群を配合することにより、紫外線から肌を保護する等の機能を付与している。特に、近年では、より高い紫外線防御効果のある製剤として、紫外線防御効果を有する粉体の含有量が増やされている。さらに、広範囲での紫外線遮蔽効果を期待して、なかでも粒子径が1μm以下の微粒子酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化クロム、及びタングステン酸等が紫外線遮蔽効果に優れるとされている。(特許文献1、2、3)
【0003】
しかしながら、紫外線防御効果を有する粉体は配合量が多くなるほど肌に製剤を塗布した際にきしみ感が強くなり、塗布時の伸びの重さや乾いたときのひりつきが気になるなどの問題点がある。また、紫外線防御効果を有する粉体の配合量が多くなるにつれ、粉体の分散が困難になるという問題点がある。さらに、粒子径が1μm以下の微粒子酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化クロム、及びタングステン酸等は微粒子になるほど化粧料及び医薬部外品基剤中に単一粒子の状態で分散することは難しく、かなりの二次凝集を起こしやすく、化粧料及び医薬部外品で効果的な紫外線遮蔽効果が得られないという問題点がある。また、配合量を増加させることによって、紫外線防御効果を上げる試みをしたところで前述のような二次凝集のため、紫外線防止効果はさほど上がらず、肌への感触が悪くなったり、仕上りが白くなって不自然になり、好ましくないという更なる問題点があった。
【0004】
有機系紫外線吸収剤群の配合量は有機系紫外線吸収剤自体が、皮膚への刺激性を有するため、配合量が多くなるほど肌への刺激が懸念される問題点がある。この問題を解決するために、特許文献4に示されるような簡単に洗い流すことができる紫外線防御効果を有する化粧料の開発が挙げられている。しかしながら、簡単に洗い流すことが出来る紫外線防御効果を有する化粧料は乳化剤を多く含むため耐水性が弱くなり、夏場の汗によって流れてしまうという問題点が発生する。
【0005】
高いSPF値であり分散や乳化状態が安定で使用感の良い日焼け止め化粧料が提案されている(特許文献5〜8)。しかしながら、これらの文献は高いSPF値を出すために多くの紫外線防御剤を配合させる(特許文献9〜10)ので、乳化を安定させるために多くの界面活性剤や水溶性高分子などの乳化安定剤を含むため、使用感が良いとは言えなかった。
【0006】
【特許文献1】特公昭47−42502
【特許文献2】特開昭60−231607
【特許文献3】特開昭62−228006
【特許文献4】特開2003−277248
【特許文献5】特許第2902840
【特許文献6】特許第3220953
【特許文献7】特許第3666511
【特許文献8】特開2007−145722
【特許文献9】特開平10−120543
【特許文献10】特表2002−521417
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、少量の紫外線防御剤と少量の乳化剤で、高いSPF値を示し、乳化及び分散性が安定な紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品の組成物及び製造方法を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(A)紫外線防御効果を有する粉体、有機系紫外線吸収剤類の前記のうち少なくとも1種類以上を含有する紫外線防御剤、(B)水、(C)油分、(D)乳化剤からなり、前記(A)〜(D)を特定の配合比で組み合わせた製剤について、製造工程中に容器中に処理液を収容し、該処理液中で攪拌具を回転して処理液を攪拌する攪拌方法において、前記容器の内周面近傍に達する端部をもつ攪拌具を処理液中で高速攪拌し、該攪拌具の回転に伴う処理液の回転により該処理液を遠心力で容器内面に圧着させると共に中空の薄膜状で回転させながら前記攪拌具の端部で攪拌することを特徴とする薄膜旋回型高速機(例えば、プライミクス株式会社製のT.K.フィルミックス)を用いる攪拌を行うことにより、粉体の分散状態および乳化状態を安定化させた、紫外線防御効果SPFを向上させる紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品の組成物及び製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳述する。
【0010】
本発明における紫外線防御作用を有する粉体とは、化粧品一般に使用される粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず用いることができる。また、これらを複合化した粉末や、他の無機化合物等(シリカやアルミナ、シリコーン化合等)、その他の粉体用の表面処理剤等(脂肪酸等)で予め処理された粉末を用いることもできる。具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化クロム、及びタングステン酸等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。これらの中でも、特に酸化チタン又は酸化亜鉛が好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、製造時に必ず薄膜旋回型高速攪拌機(例えば、プライミクス株式会社製のT.K.フィルミックス)を用いて攪拌を行う。使用する薄膜旋回型高速攪拌機の形状は、横断面が円形の攪拌容器に、該攪拌容器と同心で容器内径に近い外径をもつ高速の攪拌具を設置し、容器の容積に比して少量の処理液を容器に収容して容器内面に沿って中空状に立上げながら攪拌する薄膜旋回型高速攪拌方法において、攪拌容器として内面が球形の容器を用い、攪拌具を周速10m/sec以上の速度で回転することによって、処理液を容器内面に沿わせて外周が球帯面で内周が略円筒面の薄い球帯リング状に立上げながら攪拌することを特徴とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
前記の薄膜旋回型高速攪拌機を用いて製造を行う際の攪拌速度の条件は、周速10m/s〜50m/sとする。好ましくは周速15m/s〜45m/sであり、更に好ましくは20m/s〜40m/sである。
【0013】
前記の薄膜旋回型高速攪拌機を用いて製造を行う際の攪拌時間の条件は、1s〜300sの間とする。好ましくは5s〜240sの間であり、更に好ましくは10s〜180sの間である。
【0014】
本発明における紫外線防御作用を有する粉体の疎水化処理剤としては、特に限定されないが、具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン化合物;パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキル基を有する重合体等のフッ素化合物;流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ラノリン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等の油剤;ラウリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム等の金属石鹸;イソプロピルトリイソステアロイルチタネイソプロピルトリイソステアロイルチタネート等の有機チタネート化合物;パーフルオロアルキルシラン、オクチルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤、ラウロイルリジンなどのアシルアミノ酸化合物、デキストリン脂肪酸エステルなどが挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0015】
本発明における紫外線防御作用を有する粉体の親水化処理剤としては、特に限定されないが、具体的にはシリカ、水酸化アルミニウム、などが挙げられ、これを一種類又は二種類以上用いることができる。
【0016】
本発明における紫外線防御作用を有する粉体の含有量は0.01〜20重量%とする。
【0017】
本発明における紫外線防御作用を有する粉体の含有量上限は20重量%であり、好ましくは10重量%程度であり、より好ましくは5重量%程度である。本発明の組成物の前記(A)の含有量下限は特に制限されないが、通常1重量%程度、好ましくは1.5重量%程度、更に好ましくは2重量%程度である。
【0018】
本発明において紫外線防御作用を有する粉体の大きさについて、特に制限はないが、紫外線防御効果と塗布時の透明性に優れている平均粒子径0.01〜10.5μmの微粒子であることが好ましい。
【0019】
本発明における有機系紫外線吸収剤群とは、ケイ皮酸系、ベンゾフェノン系、パラアミノ安息香酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシベンゾイルメタンからなる群より選択される一種又は二種類以上でも良い。
【0020】
本発明における有機系紫外線吸収剤群のうち、ケイ皮酸系紫外線吸収剤とは、具体的にはオクチルメトキシシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート等が挙げられる。
【0021】
本発明における有機系紫外線吸収剤群のうち、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤とは、具体的には2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−4’−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノン等);3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー;2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール;2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン;5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン、ジモルホリノピリダジノン等が挙げられる。
【0022】
本発明における有機系紫外線吸収剤群のうち、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤とは、具体的にはPABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等)等が挙げられる。
【0023】
本発明における有機系紫外線吸収剤群のうち、サリチル酸系紫外線吸収剤とは、具体的にはアミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0024】
本発明における有機系紫外線吸収剤群の含有量は0.01〜20重量%とする。0.01%以下の有機系紫外線吸収剤群を配合では紫外線防御効果が出ず、また、有機系紫外線吸収剤の配合量上限は薬事法で20%と定められている。
【0025】
本発明における有機系紫外線吸収剤群の含有量上限は薬事法で定められた数字である20重量%であり、下限は所望の効果が得られる限り特に制限されないが、通常の含有量は0.01〜15重量%程度であり、好ましくは0.05〜12重量%程度であり、特に好ましくは0.1〜10重量%程度である。
【0026】
本発明に用いられる油分は、特に指定はないが、例えば、ジメチルポリシロキサン,ジメチルシクロポリシロキサン,メチルフェニルポリシロキサン,アルキル変性シリコーン、アクリルシリコーン、架橋型シリコーン、メチルハイドロジェンポリシロキサン,高級脂肪酸変性オルガノポリシロキサン,高級アルコール変性オルガノポリシロキサン,トリメチルシロキシシリケート、アミノ変性シリコーン、ピロリドン変性シリコーン等のシリコーン系オイルやシリコーンワックス、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、イソパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、イソプロピルミリステート、ミリスチルオクチルドデカノール、ジ−(2−エチルヘキシル)サクシネート、ジイソオクタン酸ネオペンチルグリコール、モノステアリン酸グリセリン、イソステアリン酸トリグリセライド、ヤシ油脂肪酸トリグリセライド、ヒマシ油、オクチルドデカノール、ヘキサデシルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラノリン、ミツロウ、オリーブ油のような炭化水素、エステル、グリセライド、高級アルコール、高級脂肪酸などが例示される。
【0027】
このような油分は1種または2種類以上が配合される。その配合量は適宜決定され限定されないが、乳化系の紫外線防御効果のある化粧料全量中の10.0〜95.0重量%が好ましい。
【0028】
本発明に使用される乳化剤は、特に指定はないが、例えばレシチン、レシチン誘導体、高分子乳化剤、各種エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレン水素添加ステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、変性シリコーン類、具体的には直鎖型ポリエーテル変性シリコーン、分岐型ポリエーテル変性シリコーン、分岐型ポリグリセリン変性シリコーン、分岐型ポリエーテル・アルキル共変性シリコーン、分岐型ポリグリセリン・アルキル共変性シリコーン、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリエーテル・アルキル共変性シリコーン、架橋型ポリグリセリン・アルキル共変性シリコーン等が挙げられる。
【0029】
これらの乳化剤は1種類または2種類以上が配合される。その配合量は適宜決定され、限定されないが、乳化系の紫外線防御効果を有する化粧料および医薬部外品全量中、0.01〜70.0重量%配合されることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜60.0重量%配合されることである。
【0030】
本発明に用いる水は、特に指定はないが、常水またはイオン交換水、蒸留水が使用される。水の配合量は適宜決定され限定されないが、紫外線防御効果を有する化粧料および医薬部外品全量中、5〜90重量%配合することが好ましい。
【0031】
本発明の紫外線防御効果を有する化粧料および医薬部外品には、上記必須成分のほかに、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて通常化粧料に配合される他の成分を配合して製造することが可能である。
【0032】
薄膜旋回型高速攪拌機を用いて製造を行う紫外線防御効果を有する化粧料および外皮用医薬部外品乳化物の粘度の下限は特に規定はないが、非分離型乳化製剤とする。
【実施例及び比較例】
【0033】
組成物1〜組成物8の組成物は以下の通りである。







【0034】
油中水性成分分散型乳化物(W/O型乳化物、前述表の組成物1)における前記の薄膜旋回型攪拌機を用いて製造を行った際のSPFの差の確認を行った。
前述の表における組成物1の配合成分を、攪拌容器内にその中心部分で回転する攪拌具すなわち羽根を設け、該羽根によって処理液を攪拌して微細化させる方法を用いて素乳化物を作成した。
▼前述の組成物において、薄膜旋回型高速攪拌機を用いて製造を行った際と薄膜旋回型高速攪拌機を用いずに製造を行った際の同処方におけるSPFの変化。

【0035】
前記の配合比における組成物1の素乳化物(比較例1)のSPFを測定したところ、17.25であったことに対し、素乳化物(比較例1)に薄膜旋回型攪拌機を用いて処理したもの(実施例1)のSPFを測定すると23.34とSPF値が上がっていることが実証された。
【0036】
前記の配合比における組成物1の素乳化物(比較例1)のSPFを測定したところ、17.25であったことに対し、素乳化物(比較例1)に薄膜旋回型高速攪拌機を用いて処理したもの(実施例2)のSPFを測定すると25.03とSPF値が上がっていることが実証された。
【0037】
油中水性成分分散型乳化物(W/O型乳化物、前述表の組成物2)における前記の薄膜旋回型高速攪拌機を用いて製造を行った際のSPFとエマルション状態の差の確認を行った。
前述表の組成物2の配合成分を、攪拌容器内にその中心部分で回転する攪拌具すなわち羽根を設け、該羽根によって処理液を攪拌して微細化させる方法を用いて素乳化物を作成した。
▼前述の組成物において、組成物の素乳化物を薄膜旋回型攪拌機を用いて製造を行った際と組成物を薄膜旋回型攪拌機を用いずに素乳化することによって製造を行った際の同配合割合におけるSPFの変化とエマルション状態の変化。

【0038】
前記の配合比における組成物2の素乳化物(比較例2)のSPFを測定したところ、21.67であったことに対し、素乳化物(比較例2)に薄膜旋回型高速攪拌機を用いて処理したもの(実施例2)のSPFを測定すると31.13とSPF値が上がっていることが実証された。
【0039】
前記の配合比における組成物2の素乳化物(比較例2)のエマルション状態を光学顕微鏡1000倍で拡大観測したところ、右上図のようにエマルションの粒径の大きさが不均一であったことに対し、素乳化物(比較例2)に薄膜旋回型高速攪拌機を用いて処理したもの(実施例3)のエマルション状態を光学顕微鏡1000倍で拡大観測したところ、左上図のようにエマルションの粒径の大きさが均一となっていることが確認された。
【0040】
油中水性成分分散型乳化物(O/W型乳化物、前述表の組成物3)における前記の薄膜旋回型高速攪拌機を用いて乳化を行った際のSPFの差の確認を行った。
前述表の組成物3配合成分を、攪拌容器内にその中心部分で回転する攪拌具すなわち羽根を設け、該羽根によって処理液を攪拌して微細化させる方法を用いて素乳化物を作成した。
▼前記の組成物において、組成物の素乳化物を薄膜旋回型高速攪拌機を用いて製造を行った際と組成物を薄膜旋回型高速攪拌機を用いずに素乳化することによって製造を行った際の同配合割合におけるSPFの変化。

【0041】
前記の配合比における組成物3の素乳化物(比較例3)のSPFを測定したところ、8.98であったことに対し、素乳化物(比較例3)に薄膜旋回型高速攪拌機を用いて処理したもの(実施例4)のSPFを測定すると18.37とSPF値が上がっていることが確認できた。
【0042】
前記の配合比における組成物3の素乳化物の粒度分布を測定したところ、[比較例4]のような粒度分布が確認された。
【比較例4】
▼前記の組成物3の素乳化物の粒度分布
前述表の※3

【0043】
前述の粒度分布において、0.6〜1.2μm(平均粒径1.093μm/頻度56.44%)に確認されるピークは組成物3中の疎水処理化微粒子酸化チタンとなる。組成物3中の疎水化処理微粒子酸化チタンは、素乳化物中で二次凝集を起こし、粒径が15μm以上の凝集物となり、前記の粒度分布において、20〜100μm(平均粒径34.35μm/頻度56.44%)にピークとして確認された。平均粒径の頻度を比較すると、素乳化物中に分散されている紫外線防御効果を有する粉体の過半数は二次凝集を起こしていることが確認された。
【0044】
前記の配合比における組成物3の素乳化物に薄膜旋回型攪拌機を用いて処理したものの粒度分布を測定したところ、[実施例5]のような粒度分布が確認された。
【実施例5】
▼前記の組成物3の素乳化物に薄膜旋回型攪拌機を周速30m/s、処理時間60secで攪拌を行った際の乳化物の粒度分布
前述表の※4

【0045】
前述の粒度分布において、0.7〜1.5μm(平均粒径1.455μm/頻度100%)に確認されるピークは組成物3中の疎水処理化微粒子酸化チタンとなる。素乳化物中で二次凝集を起こしていた疎水化処理微粒子酸化チタンの凝集物は薄膜旋回型高速攪拌機で処理することによって凝集がほぐれ、素乳化物の粒度分布で見られた20〜100μmのピークが確認されなかった。平均粒径の頻度から考察しても、素乳化物中で確認された二次凝集物は薄膜旋回型高速攪拌を行うことによって完全に再分散されたことが確認された。
【0046】
前述のSPFについては、Labsphere製(輸入元:三洋貿易)紫外線測定装置(型番UV−1000S)を用いて測定を行った。測定方法は、40mm×60mm四方の枠に専用テープを貼り付け、測定する化粧料及び医薬部外品0.03mgを均一に塗布し、10箇所を測定する。10箇所の測定値の平均値を3度測定したものの平均値が前述のSPF値データとなる。
【0047】
前述の粒度分布については、日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置HRA型を用いて測定を行った。
【0048】
紫外線防御効果を有する粉体量が20.00重量%を超える油中水性成分分散型乳化物(W/O型乳化物、前述表の組成物4)における前記の薄膜旋回型攪高速拌機を用いて製造を行った際のSPFの差の確認を行った。
前述表の組成物4の配合成分を、攪拌容器内にその中心部分で回転する攪拌具すなわち羽根を設け、該羽根によって処理液を攪拌して微細化させる方法を用いて素乳化物を作成した。
▼前記の組成物において、薄膜旋回型高速攪拌機を用いて製造を行った際と薄膜旋回型高速攪拌機を用いずに製造を行った際の同処方におけるSPFの変化。

【0049】
前記の配合比における組成物5の素乳化物(比較例5)のSPFを測定したところ、96.42であったことに対し、素乳化物(比較例5)に薄膜旋回型高速攪拌機を用いて処理したもの(実施例6)のSPFを測定すると86.33とSPF値が下がっていることが実証された。このことより、組成物中の紫外線防御効果を有する粉体量が20.00重量%を超える場合は、薄膜旋回型高速攪拌機を用いてもSPFが上がらないことが確認された。
【0050】
油中水性成分分散型乳化物(W/O型乳化物、前述表の組成物1)の素乳化物と組成物1の配合割合から乳化剤を配合せずに製造を行った乳化物(W/O型乳化物、前述表の組成物5)の素乳化物との安定性の比較を行った。
前述表の組成物5の配合成分を、攪拌容器内にその中心部分で回転する攪拌具すなわち羽根を設け、該羽根によって処理液を攪拌して微細化させる方法を用いて素乳化物を作成した。
▼前述の組成物5(比較例6)と乳化剤が配合されている組成物1(実施7)の外観安定性の比較

【0051】
乳化剤を配合した前述の素乳化物(実施例7)は45℃という高温条件において、3ヶ月間外観変化を起こさずに安定性を保っていることに対して、同配合割合から乳化剤を配合しない素乳化物(比較例6)は製造後直ちに分離を起こしたことが確認された。
【0052】
実施例7及び比較例6の安定性の比較より、紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品の組成物は(A)紫外線防御効果を有する粉体、有機系紫外線吸収剤類の前記のうち少なくとも1種類以上を含有する紫外線防御剤、(B)水、(C)油分、(D)乳化剤から構成されるものが安定であることが実証された。
【0053】
油中水性成分分散型乳化物(W/O型乳化物、前述表の組成物1)の素乳化物と組成物1の配合割合ら水を配合せずに製造を行った乳化物(W/O型乳化物、前述表の組成物6)の素乳化物との安定性の比較を行った。
前述表の組成物6の配合成分を、攪拌容器内にその中心部分で回転する攪拌具すなわち羽根を設け、該羽根によって処理液を攪拌して微細化させる方法を用いて組成物を作成することを試みたところ、水性成分が配合されていないため、乳化物とならなかった。
▼前記の組成物6(比較例7)と乳化剤が配合されている組成物1(実施8)の外観安定性の比較

【0054】
水性成分を配合した前述の素乳化物(実施例8)は45℃という高温条件において、3ヶ月間外観変化を起こさずに安定性を保っていることに対して、同配合割合から水性成分を配合しない素乳化物(比較例7)は調製直後から乳化物を形成しなかった。
【0055】
実施例8及び比較例7の安定性の比較より、紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品の組成物は(A)紫外線防御効果を有する粉体、有機系紫外線吸収剤類の前記のうち少なくとも1種類以上を含有する紫外線防御剤、(B)水、(C)油分、(D)乳化剤から構成されるもののうち、(B)水を除くと乳化物を形成しないことが確認できた。
【0056】
油中水性成分分散型乳化物(W/O型乳化物、前述表の組成物1)の素乳化物と組成物1の配合割合ら有機系紫外線吸収剤以外の油分を配合せずに製造を行った乳化物(W/O型乳化物、前述表の組成物7)の素乳化物との安定性の比較を行った。
前述表の組成物7配合成分を、攪拌容器内にその中心部分で回転する攪拌具すなわち羽根を設け、該羽根によって処理液を攪拌して微細化させる方法を用いて素乳化物を作成した。
▼前記の組成物7(比較例8)と乳化剤が配合されている組成物1(実施例9)の外観安定性の比較

【0057】
乳化剤を配合した前述の素乳化物(実施例9)は45℃という高温条件において、3ヶ月間外観変化を起こさずに安定性を保っていることに対して、同配合割合から有機系紫外線吸収剤を除く油分を配合しない素乳化物(比較例8)は調製後直ちに離水・分離を起こしたことが確認された。
【0058】
実施例9及び比較例8の安定性の比較より、紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品の組成物は(A)紫外線防御効果を有する粉体、有機系紫外線吸収剤類の前記のうち少なくとも1種類以上を含有する紫外線防御剤、(B)水、(C)油分、(D)乳化剤から構成されるものが安定であることが実証された。
【0059】
水中油性成分分散型乳化物(O/W型乳化物、前述表の組成物3)の素乳化物と組成物3の配合割合のうち一部の油性成分を乳化作用を持つことを特徴とする油性成分でも乳化剤でもある油性成分と置き換え配合量を変更し、その他の乳化剤との合算配合量が請求項7に規定する配合範囲を超える配合割合でかつ、油性成分の合算配合量が請求項6に規定する配合範囲を超える配合割合となる水中油性成分分散型乳化物(O/W乳化物、前述表の組成物8)の素乳化物の外観安定性の比較を行った。
前述表の組成物8の配合成分を、攪拌容器内にその中心部分で回転する攪拌具すなわち羽根を設け、該羽根によって処理液を攪拌して微細化させる方法を用いて素乳化物を作成した。
▼前記の組成物8(比較例9)と請求項の範囲内の乳化剤が配合されている組成物1(実施例10)の外観安定性の比較


【0060】
乳化剤、油性成分の配合量が請求項の規定内である組成物3の素乳化物(実施例10)は調製直後の外観が均一であって、塗布した際の状態も均一であることに対して、乳化剤の配合量が請求項の規定範囲外である組成物9の素乳化物(比較例9)は調製直後の外観が不均一でざらざらとした表面のクリーム状であってかつ塗布した際の状態も粉体の凝集物が見られ、非常に不均一な状態であることが確認された。
【0061】
乳化剤の配合量が請求項の規定内である組成物3の素乳化物(実施例10)は調製直後の外観が均一であって、45℃にて3ヶ月保管した後も分離・離水は見られず均一な状態にあるのに対して、乳化剤の配合量が請求項の規定範囲外である組成物9の素乳化物(比較例9)は調製後1時間いないに分離し、不安定な状態であることが確認された。
【0062】
前記の事柄より、乳化剤の配合量が請求項に規定する0.01〜60.00重量%以外の組成物は乳化安定しないことが実証された。
【0063】
乳化剤、油性成分の配合量が請求項の規定内である組成物3の素乳化物(実施例10)は調製直後の外観が均一であって、塗布した際の状態も均一であることに対して、油性成分の配合量が請求項の規定範囲外である組成物9の素乳化物(比較例9)は調製直後の外観が不均一でざらざらとした表面のクリーム状であってかつ塗布した際の状態も粉体の凝集物が見られ、非常に不均一な状態であることが確認された。
【0064】
乳化剤の配合量が請求項の規定内である組成物3の素乳化物(実施例10)は調製直後の外観が均一であって、45℃にて3ヶ月保管した後も分離・離水は見られず均一な状態にあるのに対して、油性成分の配合量が請求項の規定範囲外である組成物9の素乳化物(比較例9)は調製後1時間以内に分離し、不安定な状態であることが確認された。
【0065】
前記の事柄より、油性成分の配合量が請求項に規定する0.01〜80.00重量%以外の組成物は乳化安定しないことが実証された。
【発明の効果】
【0066】
本発明の紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品組成物は少量の紫外線防御剤の配合でSPF値を高くかつ安定したクリーム状態を保ち、紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品組成物として満足度が高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)紫外線防御効果を有する粉体、有機系紫外線吸収剤類のうち少なくとも1種類以上を含有する紫外線防御剤、(B)水、(C)油分、(D)乳化剤からなり、製造工程中に薄膜旋回型攪拌機を用いて攪拌を行うことにより、粉体の分散状態および乳化状態を安定化させた、紫外線防御効果SPFを向上させる紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品の組成物及び製造方法。
【請求項2】
(A)紫外線防御効果を有する粉体が、酸化チタン、酸化亜鉛等より選択される一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1からなる紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品の組成物及び製造方法。
【請求項3】
(A)紫外線防御効果を有する粉体の含有量が0.01〜20重量%である請求項1〜2からなる紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品の組成物及び製造方法。
【請求項4】
(A)紫外線防御効果を有する粉体のうち、酸化チタン及び酸化亜鉛の表面が疎水化または親水化処理されている請求項1〜3からなる紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品の組成物及び製造方法。
【請求項5】
(B)水の配合量が0.01〜80.00重量%である請求項1〜4からなる紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品の組成物及び製造方法。
【請求項6】
(C)油分の配合量が0.01〜80.00重量%であって油性成分の種類が少なくとも1種類またはそれ以上である請求項1〜5からなる紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品の組成物及び製造方法。
【請求項7】
(D)乳化剤の配合量が0.01〜60.00重量%であって、乳化剤の種類が少なくとも1種類またはそれ以上である請求項1〜6からなる紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品の組成物及び製造方法。
【請求項8】
薄膜旋回型攪拌機を用いる攪拌について、容器中に処理液を収容し、該処理液中で攪拌具を回転して処理液を攪拌する攪拌方法において、前記容器の内周面近傍に達する端部をもつ攪拌具を処理液中で高速攪拌し、該攪拌具の回転に伴う処理液の回転により該処理液を遠心力で容器内面に圧着させると共に中空の薄膜状で回転させながら前記攪拌具の端部で攪拌することを特徴とする攪拌方法を用いて請求項1〜7に記載からなる紫外線防御効果を有する化粧料または外皮用医薬部外品の組成物及び製造方法。

【公開番号】特開2010−248162(P2010−248162A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113050(P2009−113050)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(393008821)日進化学株式会社 (16)
【出願人】(000225016)プライミクス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】