説明

細胞培養デバイス

本発明は、1つまたは複数の入口および1つまたは複数の出口を備えるチャネルと、チャネルの内面、およびチャネル内面から延びる複数の突起によって画定される細胞保持チャンバとを備える細胞培養デバイスを提供する。本発明は、さらに、そのような細胞培養デバイスに関連する使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞、特に足場依存性細胞の機能維持のための細胞培養デバイス、そのようなデバイスを作成する方法、およびそのようなデバイスの使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内(in vivo)で高い適合度を有する足場依存性細胞(anchorage-dependent cells)を試験管内(in vitro)で機能維持するためのストラテジーは重要であり、組織工学の用途、病理モデルの発展、および潜在的な治療薬の効果およびメカニズムの理解に関連している。
【0003】
試験管内での、肝細胞など足場依存性細胞の肝特異機能の維持は、薬物スクリーニング研究および人工肝補助デバイス(bioartificial liver assisted devices: BLAD)など、初代肝細胞モデルを採用する用途に有用である。
【0004】
しかし、現行の初代肝細胞モデルは、培養中に数日で肝特異表現型の急速な損失を受ける。試験管内での肝細胞の機能劣化は、それらの培養環境が、構造上および組成上の両面で高度に組織化された生体内微小環境を模倣する適切な条件を提供するには不完全であることに起因している。
【0005】
試験管内での初代肝細胞機能の長期維持を可能にする様々な要因を識別することに、多くの研究が向けられている。初代肝細胞の長期培養で典型的に考慮されるパラメータは以下のものである。
【0006】
3D微小環境
生体内で、肝細胞は、例えば、細胞外マトリックスと他の肝細胞との組合せによって3次元で支持される。異なるマトリックス成分での2次元基板のコーティングは、該基板の提供が、肝細胞寿命を延ばす助けとなるが、肝細胞の脱分化の開始を大幅には遅らせないことを示すことが知られている。
【0007】
流体流れ
流体潅流は、肝循環を模倣し、肝細胞へのガスおよび栄養素の効率の良い連続的な輸送を可能にし、代謝廃物の適切な取除きを可能にする。特に、酸素は、肝細胞機能の重要な調節因子であり、肝臓の門脈周囲領域と静脈周囲領域との間の代謝および解毒の区域変化の主要な調整因子の1つと見なされている。したがって、肝細胞は、静的培養に比べて、動的培養の下でそれらの機能をより良く保つことが示されている。高い流量は、肝細胞への酸素の運搬を増加することによって肝細胞機能を維持するのに有益であるが、より高い流体流量によって誘発される過剰な剪断応力が、肝細胞機能に有害であることが示されている。
【0008】
非実質細胞を用いた共培養
胆管上皮細胞、類洞および血管内皮細胞、線維芽細胞、および星細胞などの肝臓誘導および非肝臓誘導非実質細胞(NPC)との肝細胞の共培養は、多くの肝特異機能を高めることが示されている。また、NPCは、基底膜成分の分泌によって肝細胞機能を高めると考えられている。
【0009】
肝細胞極性の確立
上皮細胞の分化機能の維持は、形態学上の極性の確立に厳密に依存する。肝細胞は、他
の上皮細胞と同様に、構造的かつ機能的に分極される。肝細胞の代謝機能は、様々な培養構成によって誘発される肝細胞の極性と正に相関する。したがって、肝細胞極性の回復が、肝細胞機能の維持に重要となることがある。
【0010】
様々な培養モデルが、初代肝細胞の長期培養に関して提案されており、各モデルが、その設計において、上述した特徴を様々な度合いで組み込んでいる。初代肝細胞培養モデルの主な構成は以下のようなものである。
【0011】
サンドイッチ培養
このようなものとしては、典型的には、コラーゲンまたはMatrigel(登録商標)(ラミニンリッチマトリックス)など、2層の単純な、または複雑なマトリックスの間に挟まれた肝細胞の単層が挙げられる。この培養構成は、肝細胞機能を大幅に増強することが示されている。サンドイッチ培養で維持されるとき、肝細胞は凝集して、コード状の構造となるが、それらの表現型の球状形態を保つ。
【0012】
スフェロイド
肝細胞は、自己集合してスフェロイドになり、これは、毛細胆管に似た緊密な接合および微絨毛ラインチャネルを有する3D類器官(organoids)である。スフェロイド培養に
おける肝細胞機能の向上は、大部分は、スフェロイドの外側に沿った基底膜の分泌、および同型および異型細胞間相互作用の存在、および極性の再確立に起因する。スフェロイドは、肝細胞凝集を誘発して肝細胞の固定を提供するように、適度に接着性のある表面上で、または懸濁状態で、肝細胞を単独に、または他の非実質細胞と共に培養することによって生成される。
【0013】
バイオリアクタベースのシステム
従来、ほとんどの現行バイオリアクタシステムが、人工肝補助デバイス(BLAD)用に開発されている。ほとんどのバイオリアクタ設計の主要な利点は、それらが、肝細胞機能の維持のための酸素および栄養素物質輸送を向上するように、肝循環のシミュレーションを可能にすることである。これらのバイオリアクタ概念設計のいくつかは、薬物生体内変化研究のための試験管内モデルに組み込まれている。これらのバイオリアクタシステムは、典型的には、コラーゲンなどのマトリックス内への肝細胞単培養または共培養の埋込みを伴い、次いで、細胞マトリックス構造が、中空繊維内に、またはそれらを潅流することができる平板上に収められる。いくつかのバイオリアクタシステムは、肝細胞単培養または共培養のための支持として足場(scaffolds)を使用し、細胞足場構造が潅流される
、または動的に培養される。
【0014】
微細加工ベースのシステム
微細加工技法は、局所細胞環境内でキュー(cues)を操作することによって、細胞の表現型に対するより精密な度合いの制御を可能にする。肝細胞と線維芽細胞との間の同型または異型細胞間相互作用は、肝細胞機能を調整するために2つの細胞タイプにパターン付けするようにフォトリソグラフィ法を使用して制御することができる。
【0015】
さらにまた、試験管内での肝細胞培養のための多くの手法は、以下のものを含む。
米国特許第5,624,840号は、生体内で見られる環境により近い環境における、試験管内での肝臓細胞および組織の長期培養のための3次元細胞・組織培養システムを開示する。ここで、3次元での間質細胞の成長は、従来の単層システムよりも長期にわたって培養中の実質細胞の活発な増殖を持続するために使用される。
【0016】
米国特許第5,270,192号は、潅流入口および潅流出口を有する収容容器を備える肝細胞バイオリアクタまたは人工肝を開示する。マトリックスが収容容器内部に提供され
、マトリックスの潅流を可能にしながら、収容容器内部に肝細胞凝集体を封入するようになっている。マトリックスは、結合組織が実質的に存在しないときは、ガラスビーズからなる。
【0017】
米国2002/0182241A1は、完全で血管新生した器官を構築するために相互接続する足場構造を開示する。別法として、足場は、厚い3次元構造を形成するためにテンプレートを丸める、または折り畳むことによって形成することができる。この場合の足場は、容器、穴、またはそのような足場の孔を通して足場に追加される細胞による細胞接着および成長のためのテンプレートとして働く。内皮細胞などの細胞の第2の組を、足場に追加、または足場上に播種することもできる。細胞の組が3次元足場に追加された、または足場上に播種された後、この組織工学器官がレシピエントに移植される。
【0018】
本出願人は、試験管内での肝細胞の長期培養、特に薬剤(pharmaceutical compound)
に関する研究、および細胞生物学に関する生物学的研究に対して、上述したシステムまたは現行のモデルがどれも適さないことを見出した。
【発明の開示】
【0019】
本発明は、チャネルを備える細胞培養デバイスを提供する。このチャネルは、1つまたは複数の入口および1つまたは複数の出口を有する。このチャネルは、チャネルの内面、およびチャネル内面から延びる複数の突起によって画定される細胞保持チャンバを備える。
【0020】
本発明は、さらなる態様では、細胞培養デバイスを作成する方法であって、
(a)フォトリソグラフィを使用してモールドを製造するステップと、
(b)高分子化合物を使用してレプリカ成形するステップと
を含む方法を提供する。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、本明細書で述べるような細胞培養デバイス内で細胞を培養する方法であって、
(a)細胞培養デバイスの細胞保持チャンバ内に、メチル化コラーゲン中に懸濁された1つまたは複数のタイプの細胞を導入するステップと、
(b)コラーゲンマトリックスの漸進的なゲル化をもたらす複合コアセルベーション反応を開始するために、ターポリマー溶液を導入するステップと
を含む方法を提供する。
【0022】
本発明は、さらなる態様では、バイオイメージングのための、細胞培養デバイス内の細胞培養物を観察するための方法であって、
(a)細胞培養デバイスに、コラーゲンマトリックス内で、1つまたは複数の細胞タイプを播種するステップと、
(b)イメージングデバイスを用いて、1つまたは複数の細胞タイプを観察するステップと
を含む方法を提供する。
【0023】
本発明は、さらに、ターゲットに対する複数の候補薬剤をスクリーニングする方法であって、
(a)複数の細胞培養デバイスに、コラーゲンマトリックス内で、ターゲットを含む1つまたは複数の細胞タイプを播種するステップと、
(b)流体培地中の候補薬剤で細胞培養デバイスを潅流するステップと、
(c)所望の化合物を同定するために、細胞培養デバイスをスクリーニングするステップと
を含む方法を提供する。
【0024】
本発明は、さらなる態様では、生物学的流体の純化のための方法であって、
(a)複数の細胞培養デバイスに、培養マトリックス内で、1つまたは複数の細胞タイプを播種するステップと、
(b)生物学的流体で細胞培養デバイスを潅流するステップと、
(c)純化された生物学的流体を得るステップと
を含む方法を提供する。
【0025】
本発明は、さらに、本明細書で述べるような細胞培養デバイス内で細胞を培養することを含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
細胞タイプ
細胞は、任意の適切な動物から分離することができる。好ましくは、細胞は、哺乳類から分離される。細胞は、肝細胞、線維芽細胞、骨髄間質細胞、内皮細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、筋細胞、神経細胞、および星細胞などの足場依存性細胞を含むことがある。例えば、Chia他, 2000によるものなど2ステップのコラゲナーゼ潅流法によって、ウィスター系のラットから肝細胞を分離することができる。例えば、Percoll(登録商標)勾配法を使用して、Baret, 1994に従って肝類洞内皮細胞(SEC)を分離することができる。
【0027】
細胞培養デバイス
本発明の細胞培養デバイスなどのマイクロ流体システムは、それらの小さな寸法による特徴的な性質を有する。それらの性質の1つは、細胞培養デバイス内の流体の流れが層流であることである。層流の下での動作は、2つ以上の異種流体層が、界面におけるそれらの構成成分の拡散以外には混合することなく、互いに並んで流れることを可能にする。
【0028】
本発明による細胞培養デバイスは、一般に、フォトリソグラフィ法、例えばソフトフォトリソグラフィによって製造することができる。典型的には、ソフトフォトリソグラフィは、以下のステップを伴うことがある。
【0029】
(a)例えばフォトリソグラフィを使用して、マスターモールドを製造するステップと、
(b)そのマスターモールドを使用して、高分子化合物を用いてレプリカ成形するステップ。
【0030】
フォトリソグラフィ技法は当業者に知られていることを理解されたい。
典型的には、製造ステップは、例えばガラスまたはシリコンからなることがあるウェハにフォトレジスト化合物をスピンコートすることを含む。フォトレジスト化合物は、好ましくは、ネガ型の高アスペクト比タイプのものであってよい。フォトレジスト化合物は、好ましくは、MicroChem社のSU−8であってよい。
【0031】
スピンコートされたウェハは、光源による照明の際にパターンを生成するようにマスク付けされることがある。スピンコートウェハは、典型的には、光源、好ましくは例えば紫外光によって照明されて、フォトレジストパターンを生成する。次いで、フォトレジストパターンが現像される。現像されたパターンは、後続のレプリカ成形ステップでのマスターモールドとして使用することができる。
【0032】
マスターモールドを使用してレプリカモールドを作製することができる。典型的には、レプリカモールドは、シロキサン含有ポリマーまたは任意の熱可塑性材料、好ましくはポ
リジメチルシロキサンから製造することができる。最終用途に応じて、様々な所望の性質を有する他のポリマーを使用することができることを理解されたい。例えば、放射線不透過性材料または生体分解性材料が使用されることがある。
【0033】
レプリカモールドは、好ましくは基板上に支持される。基板は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料からなることがある。
レプリカモールドは、任意選択で、例えば酸素プラズマ中での酸化によって、ガラス基板などに結合されてもよい。
【0034】
標準的なフォトリソグラフィによってパターン付けされたSU8マスターモールドでのレプリカ成形によって、複数の突起を有するポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS;sylgard 184, Dow-corning)細胞培養デバイスを製造することができる。細胞培養デバイスの設計は、AutoCAD(登録商標)2005によって作成され、高解像度プロット(Innovative Laser System,シンガポール)を用いて印刷されることがある。SU−8高アスペクト比ネガ型フォトレジストが、第2のウェハ上にスピンコートされ(例えば、10秒間、100rpm/sで500rpm、次いで、30秒間、250rpm/sで3000rpm)、例えば95℃で1時間ソフトベークされることがある。次いで、これに続いて、例えば約70秒間の露光、50℃で10分間、次いで95℃で30分間のポストベーク、および30分間の現像が行われる。次いで、液状PDMSプレポリマー(例えば、1:10のベースポリマー:硬化剤)が、マスターモールドに注入され、引き剥がすまで、例えば65℃で一晩硬化させてもよい。次いで、任意選択で、PDMS膜をガラス基板に化学的に結合させるために、PDMS膜を1分間(約400ミリトルで)酸素プラズマ中で酸化させてもよい。
【0035】
図9に示した閉ループ潅流装置は、3次元コラーゲンマトリックス内に1つまたは複数の細胞培養物を備える細胞培養デバイス100を備えることがある。細胞培養デバイスは、デバイスを37℃で維持するように加熱プレート1上に位置される。
【0036】
細胞培養デバイスは、その入口で、3つのシリンジポンプ2、3、4に取り付けられることがある。各ポンプ2、3、4は、それぞれ、培地、ターポリマー、またはコラーゲン中の細胞懸濁液を含む。ポンプ2、3、4は、それぞれの溶液の各々で細胞培養デバイス1を潅流する。デバイス100に入る前に、気泡トラップ5を使用して、培地から気泡が除去されることもある。使用された溶液は、出口7を通して処分することができる。ターポリマーおよび細胞培地を含むシリンジポンプは、四方弁6を介して接続される。
【0037】
図1Aおよび1Bを参照すると、本発明による細胞培養デバイス100の平面図が示されている。デバイス100は、入口9、10、11および出口12、14を有するチャネル16と、チャネル16の内面から延びる複数の突起20によって画定される細胞保持チャンバ15とを備えることがある。細胞保持チャンバ15は、その開口18と反対側の端部17で、細胞の通過に対して閉じられている。細胞培養デバイス100はまた、デバイスを通る液体培地の潅流を可能にするために、細胞保持チャンバの側部に位置する空間19、19’を設けられることもある。潅流された液体培地は、出口12および14を通ってデバイスから出ることができる。
【0038】
細胞保持チャンバ15を画定する突起20は、チャネル16に沿った通路の少なくとも一部において、特定の細胞タイプの平均直径よりも小さいギャップ距離で離隔していることがあり、細胞、例えば肝細胞またはSECを細胞保持チャンバ内部で捕捉する。好ましくは、突起は、図1Aおよび1Bに示されるように、2つの離隔された実質的に平行な列として配置されることがある。一実施形態では、突起20は、チャネル23の底面から実質的に上方向に延びる。
【0039】
好ましくは、突起は、1〜20μm、好ましくは1〜15μm、より好ましくは1〜10μm、最も好ましくは1〜5μmのギャップ距離で離隔される。
様々な寸法と、円形状、半円形状、長方形状、および正方形などの幾何形状とを有する突起が使用されることがある。
【0040】
一実施形態では、突起は長方形状である。長方形突起は、好ましくは山形のパターンで、流体流路に垂直な平面に対してある角度をなして配列することがある。長方形突起は、流体流路に垂直な平面に対して、例えば−90°〜+90°、−45°〜+45°、−20°〜−25°、または+20°〜+25°の間の角度、最も好ましくは+22°の角度で配置されることがある。正の角度は、図1Bに示されるように、突起の内縁部が突起の外縁部よりも出口12および14に近いように突起が角度を付けられていること、すなわち山形の頂点が、デバイスの出口端部に向けられていることを意味する。
【0041】
長方形突起は、幅が30〜100μm、好ましくは60〜100μm、より好ましくは70〜100μm、より好ましくは80〜100μm、最も好ましくは90〜100μmであってよい。
【0042】
長方形突起は、長さが30〜100μm、好ましくは60〜100μm、より好ましくは70〜100μm、より好ましくは80〜100μm、最も好ましくは90〜100μmであってよい。
【0043】
長方形突起は、高さが10〜300μmであってよい。
一実施形態では、長方形突起は、長さ30μm、幅50μmである。
円形または半円形突起を含む実施形態では、突起は、直径が20〜60μm、好ましくは30〜50μm、より好ましくは40〜50μmであってよい。突起は、20〜40μmの半径を有することがある。好ましくは、半径は30μmであってよい。突起は、高さが10〜300μmであってよい。最も好ましい実施形態では、突起は、半径が30μm、直径が50μm、高さが50μmである。
【0044】
一実施形態では、細胞培養デバイスは、さらに、チャネルに接続された細胞リザーバ(図示せず)を備えることがある。細胞リザーバは、任意選択で、チャネルを通る流体流れを最大にするように開いたままにすることができ、または閉じたままにして、それによりチャネルを通る流体流れを最小にすることもできる。
【0045】
閉ループ潅流装置
細胞培養デバイス(または複数の細胞培養デバイス)が、閉ループマイクロ流体潅流装置内に組み込まれることがある。
【0046】
図8を参照すると、閉ループ装置は、1つまたは複数の細胞培養デバイス100を備え、細胞培養デバイス100は、3次元コラーゲンマトリックス内に1つまたは複数の細胞培養物を備え、加熱プレート1などの加熱手段の上に位置されて、例えば37℃で細胞培養デバイス100を維持する。
【0047】
他の加熱手段としては、ウォーターバス、インキュベータ、または顕微鏡加熱ステージが挙げられる。
細胞培養デバイス100は、それらの入口でポンプ8に取り付けられることがあり、ポンプ8は、例えば蠕動ポンプであってよい。ポンプ8は、培地で細胞培養デバイス100を潅流することができる。蠕動ポンプ8に入る前に、気泡トラップ5を使用して、培地から気泡が除去される。
【0048】
培地は、ハウジング26内に位置され、ハウジング26では、二酸化炭素および温度を、それぞれ例えば5%および37℃で維持することができる。
細胞培地は、細胞培養デバイス100から除去された後、ハウジング26に再循環されて戻されることがある。
【0049】
層流状態の下でのメチル化コラーゲンとターポリマーとの複合コアセルベーションによる、細胞保持チャンバ内部へのコラーゲンマトリックス支持体の取込み
本発明による細胞培養デバイスの細胞保持チャンバ内で肝細胞などの細胞を支持するために、コラーゲンマトリックスが提供されることがある。コラーゲンマトリックスは、細胞保持チャンバ内部に位置されることがあり、それにより、コラーゲンは、細胞のための支持を提供し、しかし、デバイスを通る培地の潅流を妨害または閉塞しない。細胞およびコラーゲンマトリックスは、ターポリマー溶液と並行してコラーゲン−細胞懸濁液の形でデバイスに導入されることがある。細胞は、細胞保持デバイス内に捕捉され、層流状態の下でのメチル化コラーゲンとターポリマーとの複合コアセルベーション反応によって、その場(in situ)でコラーゲンゲルが生成する。細胞培地が、潅流中にターポリマーに取
って代わることがある。
【0050】
図3を参照すると、肝細胞21が、細胞培養デバイス100の細胞保持チャンバ15内でコラーゲンマトリックス内に示されている。コラーゲンマトリックスは、細胞保持チャンバ15内部にあり、したがって、細胞保持チャンバ15の両側の側部空間19、19’を妨害または閉塞しない。図面は、単に例示の目的のためのものである。肝細胞21は、培養デバイス内で、例えば層または凝集体として存在することもある。
【0051】
肝細胞およびSECがマイクロ流体チャネル内で空間的に局所化される、肝細胞−SEC共培養モデルの実施
SECの播種を空間的に制御するためのストラテジーは、2つのカテゴリーに分類されることがある。
【0052】
・動的播種
・層流状態の下での複合コアセルベーションによる封入
第1のストラテジーでは、肝細胞が、上述したように細胞保持チャンバ内に3次元で捕捉されることがある。その後、SECが、肝細胞の閉込めの外側に層を形成するように動的に播種されることがある。しかし、この方法での肝細胞の播種は、コラーゲン−ターポリマー複合体およびPDMS突起へのSEC付着に依存する。これは、細胞外マトリックスから誘導される蛋白質で突起を被覆することによって改善することができる。
【0053】
第2のストラテジーは、層流状態の下でのメチル化コラーゲンとターポリマーとの複合コアセルベーションを使用することによって、細胞保持チャンバ内に別個のコラーゲンゲル層としてSECを封入することを伴う。
【0054】
図7Aおよび7Bは、細胞培養デバイス100内でのSEC22の空間的に局所化された播種のための構成を概略的に例示する。図7Aを参照すると、動的播種の例が示されている。肝細胞21は、入口10を通して導入された後に、細胞保持チャンバ15に物理的に閉じ込めることができる。ターポリマーは、入口9および11を通して随伴して導入される。SEC22は、細胞保持チャンバ15の外側に動的に播種される。任意の液体培地が、出口12、13、および14を通って出ることができる。
【0055】
図7Bを参照すると、メチル化コラーゲンとターポリマーとの層流複合コアセルベーションによるSEC22の封入が示されている。コラーゲン中に懸濁された肝細胞21が、
入口11を通して導入され、コラーゲン中に懸濁されたSEC22が、入口10を通して導入され、ターポリマーが、層流の下で、入口9を通して細胞培養デバイス100内に潅流される。肝細胞21は、細胞保持チャンバ15内に封入され、SEC22は、コラーゲンとターポリマーとの複合コアセルベーションによって、細胞保持チャンバ15の外側であるがPDMS突起と接触して位置される。液体培地は、出口12、13、および14を通って出る。
【0056】
図7Aおよび7Bの両方において、肝細胞21は、SEC22の層によって、細胞培養デバイス100を通って潅流する培地によって及ぼされる剪断力から遮蔽される。これは、生体内での生理学的条件と同様である。図面は、単に例示の目的のためのものである。肝細胞21およびSEC22は、培養デバイス内で、例えば層または凝集体として存在することもある。
【0057】
細胞培養デバイス内部の細胞数の算出
肝細胞21は、細胞保持チャンバ15内部に封入される前に、例えば7−エトキシレゾルフィンによって4時間インキュベートすることによって蛍光染色される。細胞保持チャンバ15の高さにわたる光学セクションの画像(例えば、512×512画素)が、20倍の対物レンズを用いて、2マイクロメートル間隔で撮影されることがある。画像は、光学スタック内の細胞の数を定量化するために、Image Pro(商標)Plusを用いて処理され
ることがある。細胞保持チャンバ15内の細胞の数は、細胞保持チャンバ15の体積を光学スタックの体積で割った値を、光学スタック内の細胞の数に掛けた積に等しいので、細胞保持チャンバ15内の細胞の総数を評価することができる。
【0058】
検定
7−エトキシレゾルフィン−O−脱エチル化検定(EROD)および7−エトキシクマリン−O−脱エチル化検定(ECOD)を使用してCYP1A1およびCYP2B6アイソザイムの活性を求めることによって、細胞保持チャンバ15内の肝細胞の代謝機能を求めることができる。他の代謝機能は、7−ヒドロキシクマリンのグルクロン酸抱合および硫酸抱合におけるウリジン二リン酸グルクロン酸転移酵素(UGT)および硫酸転移酵素(ST)活性に基づいて評価されることがある。
【0059】
EROD検定
エトキシレゾルフィンの脱エチル化は、CYP1A1に関連し、その活性は、Chiu他, 2000に従って共焦点顕微鏡の下で定量化されることがある。7−エトキシレゾルフィンが、例えば毎時0.3mlで4時間、細胞培養デバイス100を通して潅流される。次いで、細胞培養デバイス100は、ローダミンフィルタを用いて共焦点顕微鏡の下で視覚化されることがある。次いで、EROD活性を定量化するために、画像がImage Pro(商標)Plusを用いて処理されることがある。
【0060】
ECOD検定
7−エトキシクマリンの脱エチル化は、主にCYP2B6によって媒介されるが、いくつかの他の形態のCYP酵素、例えば1A1/1A2/2A6および2E1によって行うこともできる。様々な濃度(20:150μM)の7−エトキシクマリンが、例えば毎時0.3mlで、細胞培養デバイス100を通して潅流されることがある。ミカエリス・メンテン式(Michaelis-Mentin kinetics)を計算するために、上澄培地のアリコートが、
様々な期間の後に引き抜かれて、酵素の時間依存性が計算されることがある。試料は、分析時まで、例えば−20℃で凍結して保存される。
【0061】
解凍後、7−ヒドロキシクマリン共役体が、37℃で一晩、100U/ml酢酸緩衝液中でのβ−グルクロン酸抱合を使用して、切断されることがある。次いで、処理された試
料のアリコートが、グリシン緩衝液と混合されることがある。7−ヒドロキシクマリンの生成は、360nmの励起波長および460nmの放出波長を用いた蛍光測定によって定量化されることがある。分光蛍光光度計は、7−ヒドロキシクマリン標準液を使用して較正される。
【0062】
UGTおよびST検定
どちらの酵素も、基質である7−ヒドロキシクマリンを7−ヒドロキシクマリングルクロン酸抱合体および7−ヒドロキシクマリン硫酸抱合体に代謝するので、両方の酵素活性をただ1回の検定で測定することができる。7−ヒドロキシクマリン、7−ヒドロキシクマリングルクロン酸抱合体、および7−ヒドロキシクマリン硫酸抱合体の検出は、Duffy
他, 1998に従ってキャピラリー電気泳動によって行われることがある。320nmでの検出によって、未処理の溶融シリカ(fused silica)毛細管で分離が行われることがある。ミカエリス・メンテン式を計算するために、クレブス・ヘンゼライト(Krebs-Henseleit
)緩衝液中に溶解された様々な濃度の7−ヒドロキシクマリンが、例えば0.3ml/時で細胞培養デバイスを通して潅流されることがある。酵素の時間依存性を調べるために、上澄培地のアリコートを、様々な期間の後に引き抜くことができる。7−ヒドロキシクマリン標準液は、エタノールおよび超純水(10:90v/v)中で調製された1mg/mlストック溶液から調製されることがある。7−ヒドロキシクマリングルクロン酸抱合体および7−ヒドロキシクマリン硫酸抱合体の標準液は両方とも、超純水中で調製された1mg/mlストックから調製されることがある。全ての標準液が、クレブス・ヘンゼライト緩衝液で希釈される。
【0063】
細胞培養物および細胞外マトリックス支持体
使用時、本発明による細胞培養デバイス100は、細胞保持チャンバ15内に位置された1つまたは複数の細胞培養物を備えることがある。1つまたは複数の細胞培養物は、細胞保持チャンバ15の1つまたは複数の入口を通して細胞保持チャンバ15内に導入することができる。細胞培養物は、好ましくは、液体キャリア中で、細胞保持チャンバ15に導入される。液体キャリアは、細胞培地であってよい。
【0064】
好ましくは、1つまたは複数の細胞培養物は、細胞収容チャンバ内部で、細胞外マトリックス内に埋め込まれる。細胞外マトリックスは、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ファブリリン、エラスチン、グリコサミノグリカン、キトサン、アルジネート、またはプロテオグリカンなど、1つまたは複数の蛋白質を備えることがある。
【0065】
好ましくは、細胞が埋め込まれる細胞外マトリックスは、コラーゲンタイプのものであってよい。より好ましくは、コラーゲンは、コラーゲンI、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、およびXIIからなる群から選択されることがある。最も好ましくは、コラーゲンはコラーゲンIであってよい。
【0066】
コラーゲンは、好ましくは化学的に修飾されることがある。化学的な修飾は、好ましくは、メチル化またはグリコシル化、あるいはそれらの組合せによって実現される。コラーゲンがグリコシル化される場合、好ましくは、ガラクトシル化によってそれが実現される。
【0067】
コラーゲンのメチル化は、典型的には、例えば、酸性化メタノール中で沈殿コラーゲンを攪拌することによって実現されることがある。
コラーゲン分子へのガラクトースの付加は、好ましくは、例えば、カルボキシル基活性化剤1−エチル−3,3’−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドを用いた、コラーゲンと1−N−(ラクトビオン酸アシル)−エチレンジアミンとの反応によって実現されることがある。コラーゲンのガラクトシル化の度合いは、比色法によって定量化されること
がある。簡便には、ガラクトシル化コラーゲンは、フェノールおよび濃縮硫酸と反応されることがあり、呈色の度合いは、標準液として様々な濃度のD−ガラクトースBPS溶液を使用し、陰性対照(negative control)として非修飾コラーゲンを使用して、比色計を使用して510nmの波長で測定されることがある。
【0068】
有利には、コラーゲンのメチル化およびガラクトシル化は、コラーゲンの密度、およびコラーゲン分子間の連結の数を低減する。これは、コラーゲンマトリックス内に埋め込まれた細胞培養物の潅流の増大を可能にする。さらに有利には、コラーゲンメチル化の増加が、密度およびコラーゲン分子間の連結の減少と相関する。
【0069】
使用時、コラーゲンは、1つまたは複数の細胞培養物と共に、好ましくはターポリマーと共に細胞培養デバイス100に導入される。ターポリマーは、例えばHEMA−MMA−MAAであってよい。コラーゲン−細胞混合物とターポリマーとは、細胞培養デバイス内に別々に、しかし随伴して導入されることがある。
【0070】
一実施形態では、2つの高分子電解質、特にコラーゲン(1つまたは複数の細胞培養物を含む)とHEMA−MMA−MAAとを細胞培養デバイス100内に流すことによって、ターポリマー溶液が、細胞保持チャンバ15の側部に位置する空間19および19’内に導入される。これは、陽イオン性コラーゲンと陰イオン性ターポリマーとの複合コアセルベーション反応を可能にして、コラーゲンの漸進的なゲル化をもたらし、これが、細胞保持チャンバ15内部で細胞培養物を捕捉し、細胞培養物が、コラーゲンベースのマトリックスによって3次元で支持されるようになる(図5および6)。
【0071】
一実施形態では、細胞は、肝特異機能の維持と相関する肝細胞の球状表現型の保持のために、コラーゲンマトリックスによって3次元で支持されることがある。
コラーゲンとターポリマーとを別々に導入することは、コラーゲンとターポリマーとが混合せず、それにより細胞培養デバイス100の一部分に細胞培養物を空間的に拘束することを保証する。この部分は、好ましくは、細胞保持チャンバ15またはその一部分である。特に、細胞培養デバイス100内部の層流の性質は、コラーゲンおよび/または細胞培養物とターポリマーとが細胞培養デバイス100内に導入されるときに、ターポリマーとコラーゲン/細胞構造との混合が実質的に起こらないことを保証する。
【0072】
典型的には、ターポリマー溶液は、細胞保持チャンバ15内部での細胞の潅流を可能にするために、後に細胞培地で置き換えられることがある。
層流は、2つの細胞タイプがそれぞれの界面以外では実質的に混合しない状態で、細胞保持チャンバ内部で2つの細胞タイプを2つの別個の層内に播種することを可能にする。
【0073】
1つまたは複数の細胞培養物は、例えば、肝細胞、線維芽細胞、内皮細胞、および骨髄間質細胞、または他の足場依存性細胞であってよい。一実施形態では、細胞培養物は、例えば、CHOおよびHeLa細胞を含むことがある。
【0074】
好ましくは、1つまたは複数の細胞タイプとしては、肝細胞および内皮細胞が挙げられる。
内皮細胞は、例えば、肝類洞内皮細胞(SEC)22であってよい。肝類洞内皮細胞は、細胞保持チャンバ15内に動的に導入されることがあり、あるいは層流状態の下で、SEC22に事前に混合されたコラーゲンとターポリマーとの複合コアセルベーションによって導入されることがある。
【0075】
SEC22は、例えば、細胞保持チャンバ15の内側または外側で、細胞保持チャンバ15の突起20に位置することがある。SEC22が細胞保持チャンバ15の外側に位置
するとき、突起20は、好ましくは、上記の群で定義された細胞外マトリックス蛋白質で被覆されることがある(図7A)。
【0076】
一実施形態では、本発明は、細胞外マトリックス内に埋め込まれた細胞の2つの別個の層を提供する。典型的には、これは、例えば、コラーゲンまたは他の細胞外マトリックス蛋白質と事前に混合された第1の細胞培養物を、別の入口からデバイスに導入されるターポリマーとの層流として、1つの入口から細胞保持チャンバに導入することによって実現されることがある。コラーゲン−細胞混合物は、ゲル状に硬化して第1の層を形成することが可能になっている。やはりコラーゲンまたは他の細胞外マトリックス蛋白質と事前に混合された第2の細胞培養物(第1の細胞培養物と異なっていても、そうでなくてもよい)が、別の入口から細胞培養デバイス内に導入されるターポリマーとの層流として、1つの入口から細胞保持チャンバに導入される。
【0077】
この実施形態では、第1の細胞層は、より上の細胞層によって、細胞培養デバイスを通る液体培地の潅流により発生するいかなる剪断力からも遮蔽される。これは、肝細胞および内皮細胞の生体内環境と同様である。
【0078】
本発明の細胞培養デバイスは、細胞播種の空間制御を可能にする。特に、デバイスは、生体内での肝細胞の線状構造の模倣を可能にする。さらに、細胞、例えばNPCの第2の別個の層の播種は、肝細胞の生体内生理をさらに模倣する。
【0079】
使用法
本発明による細胞培養デバイスは、複合組織工学において、特に肝組織の試験管内モデルとして適用されることがある。この用途は、肝臓内の生体異物毒性研究で有用となることがあり、肝臓癌およびその転移機構の研究に使用されることもある。
【0080】
細胞培養デバイスは、バイオイメージングおよび他の研究のための「バイオチップ」として使用されることがある。デバイスは、例えば、細胞のライブイメージング、特に、肝細胞の再分極および再生のダイナミクスや、蛋白質トラフィッキングおよびエンドサイトーシスのイメージングなどを提供することができる。バイオイメージングは、細胞間相互作用、細胞−マトリックス相互作用などを特徴付けるために使用されることがある。
【0081】
また、バイオチップは、化学物質のライブラリから潜在的な薬剤を同定するために、ハイスループットスクリーニングで使用されることもある。また、バイオチップは、例えば、薬物の送達プロトコル、例えば送達の濃度、体積、または頻度を最適化するために使用されることもある。これは、リアルタイム効果の同時監視のために、複数の細胞培養デバイスを並行して使用して実施されることもある。
【0082】
また、バイオチップは、生体異物/薬物の毒性、および薬物/生体異物化合物の(有利な、または不利な)相互作用の検定に使用されることもある。
また、細胞培養デバイスは、人工肝補助デバイスの分野で適用されることもある。これらのデバイスは、肝移植を受ける前の患者に対する治療の中間形態としての供されることがある、複数の細胞培養デバイスを含むことがある。例えば、患者からの血液が、肝臓の循環経路と同様に患者の血流に戻る前に、細胞培養デバイスを通して潅流されることがある。
【0083】
以下の例は、限定としてではなく、例示として提供される。
【実施例1】
【0084】
細胞の分離
肝細胞が、Chia他, 2000による2ステップのin situコラゲナーゼ潅流法によって、体
重250〜300グラムの雄ウィスターラットから採取された。Percoll(登録商標)勾
配法と個々のSECの選択的付着を利用して、Baret,1994に従って、クッパー細胞からSECが分離された。
【0085】
コラーゲン繊維支持体の物理的特性の特徴付け
コラーゲンマトリックスの密度を低減するために、コラーゲンに、メチル化およびガラクトシル化の組合せによる化学的修飾を施した。
【0086】
コラーゲンは、酸性化メタノール中で沈殿コラーゲンを攪拌することによってメチル化された。
メチル化の度合いの特徴付けは、キャピラリー電気泳動によって特徴付けられた。キャピラリー電気泳動は、pH2.5および温度21℃で0.05%ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて行われた。これにより、メチル化コラーゲンは4つの主要なピークに分解された。メチル化の度合いの増加は、Yと定義される、最初の2つのピークに対する最後の2つのピークの下での面積の比の増加に相関された。4℃で6日間メチル化されたコラーゲンのYの計算値は1.4であり、わずかにメチル化されたコラーゲン(SM−コラーゲン)として特徴付けられた。23℃で1日間メチル化されたコラーゲンのYの計算値は1.9であり、高メチル化コラーゲン(HM−コラーゲン)として特徴付けられた。
【0087】
カルボキシル基活性化剤1−エチル−3,3’−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドを用いた、コラーゲンと1−N−(ラクトビオン酸アシル)−エチレンジアミンとの反応によって、ガラクトースがコラーゲン中に取り込まれた。
【0088】
コラーゲンガラクトシル化の度合いは、比色法によって定量された。ガラクトシル化コラーゲンを、フェノールおよび濃縮硫酸と反応させた。次いで、呈色の度合いを、比色計で510nmの波長で測定した。リン酸緩衝食塩水中の様々な濃度のD−ガラクトースを使用して標準曲線をプロットし、ガラクトシル化の度合いを計算した。非修飾コラーゲンを陰性対照として使用した。
【0089】
4℃で24時間のガラクトシル化反応の実施により、ガラクトシル化レベルは80%となった。このガラクトシル化レベルが、後続の研究で使用された。
ガラクトシル化コラーゲンは、わずかにメチル化されたコラーゲンと混合され、ターポリマーと複合コアセルベートを形成し、可変の物理的および化学的特性を有する細胞外マトリックス支持体を提供した。ガラクトシル化コラーゲンとメチル化コラーゲンとの混合物中でのメチル化コラーゲンの比の減少が、コラーゲン繊維密度および連結性の減少をもたらした。
【0090】
細胞外マイクロカプセルベースの3次元微小環境におけるコラーゲンナノファイバの生成を非侵襲的に特徴付けるために、後方散乱共焦点顕微鏡検定が使用された。NA1.00の60倍WLSMレンズを用いてOlympus Fluoview(登録商標)500共焦点顕微鏡を使用した。後続の分析のためにマイクロカプセルの2μmセクションを光学的切断によって得た。ナノファイバ密度(樹枝状結晶面積率(fractional area)=スライス内の全画素に対する、画素中の樹枝状結晶の面積)、ナノファイバ長さ(平均樹枝状結晶長さ=1スライスにつき1つのノードに接続された樹枝状結晶の平均長さ)、およびナノファイバ分枝(平均樹枝状結晶数=1スライスにつき1つのノードに接続された樹枝状結晶の平均数)を記述するために、3つの物理的なパラメータが、Image-Pro Plus 4.5.1を使用して計算された。
【0091】
マイクロカプセルの物理的特性の概要を下記表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
設計されたコラーゲンマトリックス内での肝細胞培養
5×106細胞/mlの最適な密度で播種された初代ラット肝細胞は、メチル化コラー
ゲン−ターポリマーマイクロカプセル中で、肝細胞の球状表現型形態を維持した。この肝細胞は、マイクロカプセル中でコラーゲンナノファイバによって緩く支持され、単層培養での肝細胞に勝る高い分化機能を示した。
【0094】
様々な物理的および化学的性質を有するコラーゲンマトリックス内部で培養された肝細胞(1×106細胞/200μl)は、物理的な支持が増大すると(高メチル化コラーゲ
ンから、わずかにメチル化されたコラーゲン)尿素生成の増加を示し、これらの機能は、ガラクトシル化コラーゲンの比率を高めると、さらに向上させることができた。
【0095】
コラーゲンのマイクロ流体ベース送達
本発明の細胞培養デバイスなどのマイクロ流体システムは、それらの小さな寸法による特徴的な性質を有する。それらの性質の1つは、細胞培養デバイス内の流体流れが層流であることである。層流の下での動作は、2つ以上の異種流体層が、界面におけるそれらの構成成分の拡散以外には混合することなく、互いに並んで流れることを可能にする。
【0096】
1.5mg/mlの中和されたタイプIウシ皮膚コラーゲンが、本発明による細胞培養デバイス内に送られた。細胞培養デバイス内のナノファイバマトリックスの構築は、コラーゲンサンドイッチ培養で使用されるピペット法によって実現されるものと同様であった。
【0097】
層流複合コアセルベーションを使用する、細胞培養デバイス中での細胞の3次元封入の最適化
細胞培養デバイスは、前述したように製造した。図8に示される閉ループ潅流装置内に導入する前に、6×106細胞/mlの初代ラット肝細胞を3.0mg/mlのメチル化
コラーゲン中に懸濁させた。
【0098】
コラーゲン−細胞溶液は、3%ターポリマー溶液と並行してポンプされた。コラーゲンマトリックスの生成時、コラーゲンの流れは停止され、ターポリマー溶液が細胞培地に替わって封入された細胞を潅流した。細胞培養デバイス内部の層流は、コラーゲンとターポリマーとが混合せず、それにより細胞培養デバイスの一部分に細胞を空間的に拘束することを保証した。カチオン性のメチル化コラーゲンとアニオン性のターポリマーとの複合コアセルベーション反応が、メチル化コラーゲンの漸進的なゲル化をもたらし、これが、3次元マトリックス内に細胞を捕捉した。メチル化コラーゲンおよびターポリマーは、Chiu他, 2000の方法に従って調製された。
【0099】
細胞培養デバイス内での細胞数の最適化
肝細胞間の同型相互作用は、細胞極性および機能性の維持に重要である。したがって、層流コアセルベーションによる肝細胞の3次元封入が、細胞間相互作用を実現するのに十分な密度で、細胞培養デバイス内に肝細胞を装填することができることが重要である。
【0100】
細胞培養デバイス内に位置する細胞の数を定量化するために、様々な初期細胞播種密度が使用された。肝細胞は、細胞培養デバイスへの装填前に、7−エトキシレゾルフィンを用いた4時間のインキュベーションによって蛍光標識された。デバイスの高さ(200μm)にわたる光学セクションの画像(512×512画素)が、共焦点レーザ走査顕微鏡(Olympus Fluoview(登録商標)500)を使用して、20倍の対物レンズを用いて2μm
の間隔で撮影された。次いで、光学スタック内の細胞の数を定量化するために、画像がImage-Pro(登録商標)Plusを用いて処理された。細胞培養デバイスの長さに沿って細胞密度の任意のばらつきが存在するかどうかを確かめるために、光学スタックは、間隔を置いて細胞培養デバイスに沿って取られた。
【0101】
細胞培養デバイス内の細胞の数は小さく、一般に細胞播種密度の影響を受けないことが観察された。また、肝細胞は、コラーゲン−細胞懸濁液の流れが停止されたときでさえ、細胞培養デバイスから流れ出ることが観察された。
【0102】
初期細胞播種濃度が6×106細胞/mlよりも大きくなるまで増加すると、細胞が細
胞培養デバイスを閉塞し、層流複合コアセルベーションを実現することができなかった。
層流複合コアセルベーションの使用による、細胞培養デバイス内での肝細胞および線維芽細胞の3次元空間局所化封入
微細加工されたポリカーボネートテンプレートでのPDMS(PDMS;sylgard 184,
Dow-Corning)の成形により、3つの入口を有する細胞培養デバイスを製造した。次いで、PDMS膜をガラス基板に化学的に結合するために、PDMS膜を酸素プラズマによって処理した。上述したように、閉ループ潅流装置内にポンプする前に、6×106細胞/mlの初代ラット肝細胞またはNIH 3T3線維芽細胞を別々に、3.0mg/mlのメチル化コラーゲン中に懸濁した。コラーゲン−細胞溶液を、3%ターポリマー溶液と並行してポンプした。肝細胞と線維芽細胞は、細胞培養デバイス内部で2つの別個の層内に3次元で封入することができる。
【実施例2】
【0103】
細胞培養デバイス内への肝細胞の高密度播種
細胞培養デバイス内部での細胞封入時の突起の効率に基づいて、様々な突起の設計を評価した。突起寸法は、30〜50μmの範囲内であり、様々な幾何形状であった。様々な突起設計を有する細胞培養デバイス(100μm(W)×100μm(H)×1cm(L))は、L−Edit(Tanner Research,Inc, 米国)を使用して描画され、フォトマスク(Innovative Laser Systems, シンガポール)に変換された。シリコンマスタテンプレートを、標準のディープ反応性イオンエッチング(DRIE)技術を使用して製造した。次いで、ポリ−(ジメチルシロキサン)(PDMS)(PDMS;Sylgard 184, Dow-Corning)のプレポリマー溶液をテンプレートの上に注ぎ込み、65℃で一晩硬化した後に引き剥がした。次いで、ガラスカバースリップへの不可逆性化学結合のために、PDMS膜を1分間(125ワット、13.5MHz、50sccm、および400ミリトル)酸素プラズマ中で酸化した。そして、1Xリン酸緩衝食塩水(PBS)中に懸濁された肝細胞を、シリンジポンプを使用して細胞培養デバイス内に導入することによって、突起を有する細胞培養デバイスの細胞封入効果について定量的に評価した。
【0104】
突起を有する細胞培養デバイス内への肝細胞の動的播種、および蛍光染色による細胞生存率の検定および定量化
プロセスのための許容可能な操作窓を決定するために、突起を有する細胞培養デバイス内に肝細胞を動的に播種するための様々な方法を調査した。肝細胞を、様々な流量でシリンジポンプから細胞懸濁液(1.5×106細胞/ml)を注入する、または引き抜くこ
とによって、細胞培養デバイス内に導入した。蛍光色素Cell Tracker Green(CTG)(Molecular Probes, Oregon)およびプロピジウムアイオダイド(Propidium Iodide:PI)(Molecular Probes, Oregon)を使用して生細胞および壊死細胞をそれぞれ染色することにより、細胞培養デバイス内での肝細胞の生存率に対する様々な動的播種パラメータの効果を評価した。
【0105】
生細胞および壊死細胞に染色するためにそれぞれ蛍光色素Cell Tracker Green(CTG)およびプロピジウムアイオダイド(PI)(Molecular Probes, Oregon)を用いて、細胞培養デバイス内への動的播種後の肝細胞の生存率を検定した。次いで、培地(ペニシリン/ストレプトマイシン、デキサメタゾン、および60mMのHEPES(Invitrogen Corporation,Grand Island,NY)を添加したHepatoZYME−SFM(Invitrogen Corporation, Grand Island, NY))中に希釈した20μMのCTGで、0.8ml/時で30分間、細胞培養デバイスを潅流し、その後、30分間、培地で潅流し、最後に15分間、50μg/mlのPIで潅流した。次いで、3.7%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて30分間、細胞を固定し、共焦点レーザ走査顕微鏡(Olympus Fluoview 300)の下で観察した。細胞生存率の定量化は、画像処理(Image-Pro(登録商標)Plus 4.5.1, Media Cybernatics Inc., MD)を使用して行い、生細胞および死細胞の数を定量化し、パーセンテージ細胞生存率を静的コントロール(static control)に対して正規化した。
【0106】
結果
突起寸法は、30〜50μmの範囲内であり、様々な幾何形状であった。30μm×50μm×100μmの斜方体(skewed rectangular)マイクロピラーが、肝細胞を封入するのに最も効果的であることが観察され、この設計が、その後、全ての以降の実験で使用された(図1Bおよび2B)。
【0107】
また、動的細胞播種プロセスのための操作窓も決定された。ビデオイメージングによるプロピジウムアイオダイド(PI)(Molecular Probes, Oregon)を用いたリアルタイム蛍光核染色を使用して、本発明者らは、播種との細胞壊死が装填流量に大きく依存することを確認した(データ示さず)。肝細胞を、様々な流量でシリンジポンプを用いて細胞懸濁液を注入する、または引き抜くことによって、細胞培養デバイス内に導入した。細胞懸濁液を注入することによる実現可能な最小流量は0.5ml/時であり、これは、細胞懸濁液を引き抜くことによる最小流量、すなわち0.1ml/時よりも高かった。それに対応して、平均細胞生存率は、細胞懸濁液を注入することによるよりも、細胞懸濁液を引き抜くことによる最小流量で肝細胞が播種されたときに、より高かった(図2)。したがって、肝細胞の動的播種は、肝細胞に対する悪影響を最小限にするために、特定の寸法のマイクロチャネルに関する最小許容可能流量でリザーバから細胞懸濁液を引き抜くことによ
って行った。
【実施例3】
【0108】
メチル化コラーゲンとHEMA−MMA−MAAターポリマーとの層流複合コアセルベーション中の、様々な流れ構成による細胞−マトリックス相互作用の調整
この実施例では、細胞培養デバイスの突起を使用する細胞局所化プロセスに依存せずに、細胞外マトリックス(ECM)を3−D構造(すなわち、細胞培養デバイス)に導入することができることを実証した。さらに、ECMは、3−D細胞構造の機械的な安定性に影響を及ぼすことなく、細胞−マトリックス相互作用を制御するように調整することができる。
【0109】
層流複合コアセルベーションによる肝細胞のための3−Dマトリックス支持体の生成
細胞培養デバイス内部での肝細胞の動的播種後、正に帯電したメチル化コラーゲンと負に帯電したHEMA−MMA−MAAターポリマーとの複合コアセルベーション反応によって、3−Dコラーゲンマトリックスが細胞の周りに形成された[Chia他, 2000]。細胞培養デバイス内部の層流プロファイルによって、コラーゲン流とターポリマー流との渦流混合が防止されたことにより、3−Dマトリックスは細胞培養デバイスの細胞保持チャンバ内部に局所化した[Toh他, 2005]。実施例2で述べたのと同様に、肝細胞を1.5mg/mlメチル化コラーゲン中に再懸濁し、細胞保持チャンバ内に動的に装填した。次いで、複合コアセルベーション反応を開始するために、側部チャネルを通して3%ターポリマー溶液を注入した(図5および6)。メチル化コラーゲンのゲル化の度合いを調整するために、メチル化コラーゲンとターポリマーとの複合コアセルベーション反応を、2通りの流れ構成で実施した。第1の構成では、ルアーロックによって細胞リザーバをロックすることによってメチル化コラーゲンの流れを最小にした。第2の構成では、メチル化コラーゲン流の流れを最大にするように、静水圧によって細胞リザーバを開かれたままにした。ターポリマー溶液は、シリンジポンプを使用して、0.1ml/分で1分間、その後0.5ml/mlで5分間注入した。その後、1X PBSで潅流することによって余剰のターポリマー溶液を除去した。
【0110】
共焦点レーザ走査顕微鏡(CLSM)を用いた複合コアセルベートコラーゲンマトリックスの視覚化
メチル化コラーゲンを蛍光プローブAlexa-Fluor 532(Molecular Probes, Oregon)で
標識し、1X PBSを用いて1.5mg/mlに希釈した。細胞培養デバイス(200μm(W)×100μm(H)×1cm(L))の細胞保持チャンバ内へ動的播種した後、肝細胞のための3−Dマトリックス支持体が、標識されたメチル化コラーゲンを使用した2通りの流れ構成により、上述したように形成された。肝細胞の核を、250nMのSytox Green(Molecular Probes, Oregon)で0.8ml/時で30分間、潅流することによって逆染色した。次いで、数分間、3.7%PFAを用いて試料を固定し、その後、共焦点顕微鏡(Olympus Fluoview 300)を用いて視覚化した。
【0111】
走査電子顕微鏡(SEM)を用いた複合コアセルベートコラーゲンマトリックスの視覚化
PDMS細胞培養デバイスとガラスカバースリップとの結合が永久的なものとならないように、PDMS膜のプラズマ酸化の直後に試料を調製することによって、マイクロ流体チャネル内の複合コアセルベート3−DマトリックスのSEM試料を調製した。3.7%PFAで30分間潅流することによって試料を固定し、PDMS細胞培養デバイスをガラスカバースリップから引き剥がした。次いで、PDMS細胞培養デバイスを、2時間、1%四酸化オスミウムを用いて後固定し(post-fixed)、続いて、25%、50%、75%、95%、および100%エタノール(各10分)を用いてインキュベートすることによって脱水した。次いで、細胞培養デバイスを外科用ブレードを用いて5mm厚の断面に切断し、続いて、液体二酸化炭素中で脱水した。試料は、JEOL JSM-7400F(JEOL Ltd, 日本)を用いて観察した。
【0112】
結果
肝細胞と3−D複合コアセルベートコラーゲンマトリックスとの細胞−マトリックス相互作用の度合いは、複合コアセルベーション反応の程度を制御することによって調整することができる。この制御は、2通りの流れ構成によって述べたように、メチル化コラーゲン流を変えることによって行われる。構成1で実施したように、メチル化コラーゲン流の流れが最小であるとき、ターポリマー溶液と複合コアセルベートすることができるメチル化コラーゲンの量は制限され、肝細胞を取り囲むコラーゲン繊維の共形層をもたらした(データ示さず)。構成2で実施したように、メチル化コラーゲンの流れが増大すると、ターポリマーとの複合コアセルベーションに利用可能な材料の量が増加し、肝細胞が埋め込まれる繊維マトリックスを形成した(データ示さず)。場合によっては、複合コアセルベーション反応の度合いをさらに微調整し、それにより細胞−マトリックス相互作用の程度を制御するために、コラーゲン流を調整することもできる。
【0113】
構成1を使用してマイクロ流体チャネル内部に形成された3−DマトリックスのSEM試料の観察は、蛍光標識されたコラーゲンを使用して行われる観察によって確証された。肝細胞は、マイクロピラーアレイ内部に高密度で充填され、コアセルベートコラーゲンマトリックスの薄い繊維シェルで覆われた(データ示さず)。
【実施例4】
【0114】
突起を有する細胞培養デバイス内への3−D播種および層流複合コアセルベーション後の、肝細胞の生存率の評価
初代ラット肝細胞を、まず、先に提案された突起を有する細胞培養デバイスを使用することによって3次元で局所化し、次いで、メチル化コラーゲンとHEMA−MMA−MAAターポリマー溶液との層流複合コアセルベーションを使用して3−Dマトリックスを構築した[Toh他, 2005]。その後、肝細胞の生存率を、上述した3−Dパターン構造内へ
の播種後に、蛍光染色によって評定した。
【0115】
1.5×106細胞/mlの初代ラット肝細胞を、1.5mg/mlのメチル化コラー
ゲン中に懸濁し、0.1〜0.02ml/時の範囲内の3つの異なる流量で細胞リザーバから引き抜くことによって、マイクロチャネル(200μm(W)×100μm(H)×1cm(L))内に播種した。細胞播種に続いて、上述した構成1を使用して、メチル化コラーゲン流とHEMA−MMA−MAAターポリマー流との複合コアセルベーションによって、3−Dマトリックスを、マイクロピラーアレイ内部で細胞凝集体の周りに形成した。マイクロチャネル内部に、適切な細胞間相互作用および細胞−マトリックス相互作用が存在する肝細胞の3−D微小環境を構築した後、実施例2で使用された方法に従って、播種プロセスの効果を調べるために肝細胞の生存率を評定した。
【0116】
結果
細胞生存率は、先に実施例1で報告したように、引抜き流量を高めることと負に相関した(データ示さず)。0.1ml/時の引抜き流量での細胞生存率は61.9%であり、これは、0.05ml/時または0.02ml/時の引抜き流量が使用されたときの細胞生存率(>80%)よりも有意に低かった。複合コアセルベーションによる3−Dマトリックスの形成は、最小引抜き流量が使用されたときに80%よりも高い細胞生存率を達成可能であったので、細胞生存率に対する悪影響はないように見えた。これは、マトリックス形成を伴わずに実現可能であった、実施例2で報告された生存率と一致した。
【実施例5】
【0117】
突起を有する細胞培養デバイスへの3−D播種および層流複合コアセルベーション後の、骨髄間質細胞(BMSC)の潅流培養
以下の実施例では、先に提案した突起を有する細胞培養デバイスを使用して、骨髄間質細胞(BMSC)を3次元で捕捉した。マイクロチャネル内のBMSCは、細胞形態の評定の前に潅流培養の下で1日間維持された。
【0118】
ラット骨髄間質細胞(BMSC)の分離および培養
ラット骨髄の吸引物をT−25培養フラスコ上で平板培養し、37℃のCO2インキュ
ベータ内で24時間維持して、間質細胞の付着を可能にした。次いで、骨髄を除去し、付着していたBMSCを1X PBSで3回洗浄した。次いで、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、10%ウシ胎仔血清(FBS)が添加された低グルコース(Gibco, Grand Island, NY)、およびペニシリン/ストレプトマイシンを使用して、BMSCを培養した。培養物は、継代前に約80%コンフルエンス(confluence)まで培養した。継代2〜7回の細胞を全ての実験で使用した。
【0119】
マイクロピラーアレイおよび層流複合コアセルベーションを使用する、マイクロ流体チャネル内へのラットBMSCの播種
5×106細胞/mlのラットBMSC(P2)を、1.5mg/mlのメチル化コラーゲン中に懸濁し、0.03ml/時の流量で細胞リザーバから引き抜くことによってマイクロチャネル(200μm(W)×100μm(H)×1cm(L))内に播種した。細胞播種後、上述した構成1を使用して、メチル化コラーゲン流とHEMA−MMA−MAAターポリマー流との複合コアセルベーションによって、3Dマトリックスを、細胞保持チャンバ内部で細胞凝集体の周りに形成した。
【0120】
マイクロ流体チャネル内でのラットBMSCの潅流培養
図8に示すようにして、閉ループ潅流培地システムを構成した。ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、10%ウシ胎仔血清(FBS)が添加された低グルコース(Gibco,
Grand Island, NY)、ペニシリン/ストレプトマイシン、および60mM HEPES
からなるCO2非依存性培地を、5μl/分の流量で24時間循環させた。マイクロチャ
ネルは、培養期間を通じてその温度を37℃に維持するように、顕微鏡加熱ステージ上に配置した。
【0121】
結果
マイクロ流体チャネル内に3次元で装填された細胞は、上述した条件を使用することにより、ラットBMSCを良好に捕捉することができた。マイクロチャネル内部で3−D細胞構造を安定化するために、層流複合コアセルベートコラーゲンマトリックスは、独立して取り込まれた(データ示さず)。24時間の潅流培養後、ラットBMSCが収縮して、細胞培養デバイスの長さにわたる密な3−D凝集体になることが観察された。凝集体からの細胞伸長は、細胞培養デバイスの突起および壁に凝集体を固定することが観察された(データ示さず)。この提案された3−Dマイクロスケール試験管内モデルで培養されたBMSCの細胞形態は、2−D基板内で培養されるBMSCとは明確に異なっており、細胞微小環境の次元の重要性を示した(データ示さず)。
【0122】
参考文献
Baret F. Isolation, purification and cultivation of rat liver sinusoidal endothelial cells (LSEC). Laboratory Investigation(1994); 70: 944-952.
Chia et al., Hepatocyte encapsulation for enhanced cellular functions. Tissue Engineering (2000); 32: 481-495.
Chiu et al., Patterned deposition of cells and proteins onto surfaces by using
three-dimensional microfluidic systems. PNAS(2000); 97(6): 2408-2413.
Toh et al., Complex coacervating microfluidics for immobilization of cells within micropatterned devices. Assay and Drug Development Technologies(2005); 3(2):
162-167.
本明細書で引用された全ての刊行物および特許出願は、各個の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に示されて参照として組み込まれているかのごとく、本明細書に参照として組み込まれる。いかなる刊行物の引用も、その開示が本出願日に先立つものであることを示すためのものであり、先行する発明によりそのような刊行物を予見する権利が本発明にないことを認めるものと解釈すべきではない。
【0123】
上述の発明は、分かりやすくするために、図示および例によっていくぶん詳細に述べてきたが、本発明の教示を鑑みて、頭記の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、何らかの変更および修正を本発明に加えることができることは当業者には容易に理解されよう。
【0124】
以下の実施例は、限定ではなく、例示として提供される。
本明細書および頭記の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が特に明確に示さない限りは、複数形の言及を包含することに留意しなければならない。特に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0125】
関連出願の相互参照
本出願は、参照として本明細書に組み込む2004年11月11日出願の米国仮特許出願第60/626963号の利益を主張するものである。
【図面の簡単な説明】
【0126】
図中、同様の番号は、同様の部分を示す。
図1Aおよび図1B:本発明による細胞培養デバイスの平面図である。
図2Aおよび図2B:本発明による細胞培養デバイスの斜視図である。
図3:図1Aおよび1Bの細胞培養デバイスの細胞保持チャンバ内部でコラーゲンマトリックス内に埋め込まれた肝細胞を示す図である。
図4:本発明による細胞培養デバイスのさらなる斜視図である。
図5A、図5B、図6A、および図6B:コラーゲンの層流およびコアセルベーションを達成するための様々な方法を示す図である。
図7A:細胞培養デバイス内に動的に播種される類洞内皮細胞(SEC)の第1の構成を示す図である。
図7B:コラーゲンとターポリマーとの複合コアセルベーションによって播種されたSECの第2の構成を示す図である。
図8:図1Aおよび1Bの細胞培養デバイスと共に使用するための閉ループ潅流システムを示す図である。
図9:マイクロチャネルデバイスと共に使用するための閉ループ潅流システムを示す図である。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3】

【図4】

【図5A】

【図5B】

【図6A】

【図6B】

【図7A】

【図7B】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の入口および1つまたは複数の出口を備えるチャネルと、当該チャネルの内面およびそこから延びる複数の突起によって画定される細胞保持チャンバとを備える細胞培養デバイス。
【請求項2】
前記チャネルが底壁および側壁を備える、請求項1に記載の細胞培養デバイス。
【請求項3】
さらに上壁を備える、請求項2に記載の細胞培養デバイス。
【請求項4】
前記突起が前記チャネルの前記底壁から上方向に突出している、請求項2に記載の細胞培養デバイス。
【請求項5】
前記チャネルが少なくとも2つの入口を有する、請求項1に記載の細胞培養デバイス。
【請求項6】
前記チャネルが少なくとも3つの入口を有する、請求項5に記載の細胞培養デバイス。
【請求項7】
前記チャネルが少なくとも2つの出口を有する、請求項5または6に記載の細胞培養デバイス。
【請求項8】
前記チャネルが少なくとも3つの出口を有する、請求項5から7のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項9】
前記突起が、前記チャネルの長手方向軸に沿った通路の少なくとも一部において離隔されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項10】
前記突起が約1〜20μm離されている、請求項9に記載の細胞培養デバイス。
【請求項11】
前記突起が約1〜15μm離されている、請求項9に記載の細胞培養デバイス。
【請求項12】
前記突起が約1〜10μm離されている、請求項9に記載の細胞培養デバイス。
【請求項13】
前記突起が約1〜5μm離されている、請求項9に記載の細胞培養デバイス。
【請求項14】
前記突起が円形、半円形、長方形または正方形である、請求項1から13のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項15】
前記突起が長方形である、請求項13に記載の細胞培養デバイス。
【請求項16】
前記長方形突起が、前記チャネル内の流体流路に垂直な平面に対して、ある角度をなして配列する、請求項15に記載の細胞培養デバイス。
【請求項17】
前記長方形突起が前記チャネルの流体流路に垂直な平面に対して−90°〜+90°の間の角度をなす、請求項16に記載の細胞培養デバイス。
【請求項18】
前記長方形突起が前記チャネルの流体流路に垂直な平面に対して−45°〜+45°の間の角度をなす、請求項16に記載の細胞培養デバイス。
【請求項19】
前記長方形突起が前記チャネルの流体流路に垂直な平面に対して、−20°〜−25°の間の角度をなす、請求項16に記載の細胞培養デバイス。
【請求項20】
前記長方形突起が前記チャネルの流体流路に垂直な平面に対して+20°〜+25°の間の角度をなす、請求項16に記載の細胞培養デバイス。
【請求項21】
前記長方形突起が前記チャネルの流体流路に垂直な平面に対して22°の角度をなす、請求項16に記載の細胞培養デバイス。
【請求項22】
前記長方形突起が幅30〜100μmである、請求項14から21のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項23】
前記長方形突起が長さ30〜100μmである、請求項14から22のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項24】
前記長方形突起が高さ10〜300μmである、請求項14から23のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項25】
前記突起が円形である、請求項14に記載の細胞培養デバイス。
【請求項26】
前記突起が半円形である、請求項14に記載の細胞培養デバイス。
【請求項27】
前記突起が直径30〜50μmである、請求項25または26に記載の細胞培養デバイス。
【請求項28】
前記突起が高さ10〜300μmである、請求項25から27のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項29】
さらに、前記細胞保持チャンバ内に収容された細胞培養物を加熱するための手段を備える、請求項1から28のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項30】
前記加熱手段がホットプレートである、請求項29に記載の細胞培養デバイス。
【請求項31】
前記加熱手段がウォーターバスを備える、請求項29に記載の細胞培養デバイス。
【請求項32】
前記加熱手段が顕微鏡加熱ステージを備える、請求項29に記載の細胞培養デバイス。
【請求項33】
前記加熱手段がインキュベータを備える、請求項29に記載の細胞培養デバイス。
【請求項34】
さらに、液体培地を導入するための手段を備える、請求項1から33のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項35】
液体培地を導入するための前記手段がシリンジポンプを備える、請求項34に記載の細胞培養デバイス。
【請求項36】
液体培地を導入するための前記手段が蠕動ポンプを備える、請求項34に記載の細胞培養デバイス。
【請求項37】
液体培地を導入するための前記手段が重力によって引き起こされる流れによって機能する、請求項34に記載の細胞培養デバイス。
【請求項38】
液体培地を導入するための前記手段が電気浸透ポンプを備える、請求項34に記載の細
胞培養デバイス。
【請求項39】
前記培地が、細胞培地、ターポリマー、または細胞の懸濁液である、請求項34から38のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項40】
前記細胞の懸濁液がさらにコラーゲンを含む、請求項39に記載の細胞培養デバイス。
【請求項41】
前記コラーゲンがメチル化されている、請求項40に記載の細胞培養デバイス。
【請求項42】
前記細胞保持チャンバが1つまたは複数の細胞培養物を備える、請求項1から41のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項43】
前記1つまたは複数の細胞培養物が層流によって前記デバイス内に播種される、請求項42に記載の細胞培養デバイス。
【請求項44】
層流によって前記デバイス内に播種される前記1つまたは複数の細胞培養物が、実質的に互いに別個のものである、請求項43に記載の細胞培養デバイス。
【請求項45】
前記1つまたは複数の細胞培養物が前記チャンバ内部でコラーゲンゲル内に埋め込まれる、請求項42から44のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項46】
前記コラーゲンゲルがメチル化コラーゲンとターポリマーとのコアセルベーション反応によって形成される、請求項45に記載の細胞培養デバイス。
【請求項47】
前記ターポリマーがHEMA−MMA−MAAである、請求項46に記載の細胞培養デバイス。
【請求項48】
前記メチル化コラーゲンとターポリマーとが前記デバイスに個別に導入される、請求項46または47のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項49】
前記メチル化コラーゲンまたはターポリマーが、前記デバイス内に導入される前に、細胞培養物と混合されていてもよい、請求項48に記載の細胞培養デバイス。
【請求項50】
前記1つまたは複数の細胞培養物が、足場依存性細胞または細胞株である、請求項42から49のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項51】
前記足場依存性細胞が、肝細胞、線維芽細胞、骨髄間質細胞、内皮細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、筋細胞、神経細胞、および星細胞からなる群より選択される、請求項50に記載の細胞培養デバイス。
【請求項52】
前記内皮細胞が肝類洞内皮細胞(SEC)である、請求項51に記載の細胞培養デバイス。
【請求項53】
前記SECが動的播種によって前記デバイス内に播種される、請求項52に記載の細胞培養デバイス。
【請求項54】
前記SECが、層流状態の下で、メチル化コラーゲンとターポリマーとの複合コアセルベーションによって前記デバイス内に播種される、請求項53に記載の細胞培養デバイス。
【請求項55】
さらに、前記チャネルに接続された細胞リザーバを備える、請求項1から54のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項56】
前記細胞リザーバがロックされ、それにより前記チャネルを通る流体流れが最小となる、請求項55に記載の細胞培養デバイス。
【請求項57】
前記細胞リザーバが開いたままであり、それにより前記チャネルを通る流体流れが最大となる、請求項55に記載の細胞培養デバイス。
【請求項58】
シリンジポンプを使用して前記デバイスから細胞懸濁液を引き抜くことによって、細胞が前記デバイス内に播種される、請求項43から54のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項59】
シリンジポンプを用いて前記デバイスに細胞懸濁液を注入することによって、細胞が前記デバイス内に播種される、請求項43から54のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項60】
前記細胞保持チャンバが、前記チャネルを通る液体培地の潅流のために空間が提供されるように構成され、その空間は、前記チャネルの側壁と前記突起の列とによって画定されるものである、請求項1から59のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項61】
前記細胞保持チャンバが、前記チャネルを通る液体培地の潅流のために前記チャンバの両側に空間が提供されるように構成され、各空間は、前記チャネルの側壁と前記突起の列とによって画定されるものである、請求項1から59のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項62】
前記液体培地がターポリマーである、請求項60または61に記載の細胞培養デバイス。
【請求項63】
前記液体培地が細胞培地である、請求項60または61に記載の細胞培養デバイス。
【請求項64】
請求項1から63のいずれか一項に記載の細胞培養デバイスを作成する方法であって、
(a)フォトリソグラフィを使用してモールドを製造するステップと、
(b)高分子化合物を使用してレプリカ成形するステップと
を含む方法。
【請求項65】
前記製造ステップが、
(a)シリコンウェハにフォトレジスト化合物をスピンコートするステップと、
(b)UV光によって前記フォトレジスト化合物を照明するステップと、
(c)前記フォトレジストパターンを現像するステップと
を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記レプリカ成形ステップが、前記製造されたモールドからポリジメチルシロキサン(PDMS)レプリカを作製するステップを含む、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
前記レプリカモールドが基板上に支持される、請求項64から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記基板がガラスである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記レプリカモールドが、1分間の酸化プラズマ中での酸化によって、前記ガラス基板に不可逆的に結合される、請求項67または68に記載の方法。
【請求項70】
請求項1から63のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス内で細胞を培養する方法であって、
(c)前記細胞培養デバイスの前記細胞保持チャンバ内に、メチル化コラーゲン中に懸濁された1つまたは複数のタイプの細胞を導入するステップと、
(d)前記コラーゲンマトリックスの漸進的なゲル化をもたらす複合コアセルベーション反応を開始するために、ターポリマー溶液を導入するステップと
を含む方法。
【請求項71】
前記ターポリマーが、前記コラーゲンマトリックスのゲル化が行われた後に、細胞培地に取って代わられる、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
バイオイメージングのための、請求項1から63のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス内の細胞培養物を観察するための方法であって、
(a)細胞培養デバイスに、コラーゲンマトリックス内で、1つまたは複数の細胞タイプを播種するステップと、
(b)イメージングデバイスを用いて、前記1つまたは複数の細胞タイプを観察するステップと
を含む方法。
【請求項73】
前記細胞培養デバイスが液体培地で潅流される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記液体培地が細胞培地である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記イメージングデバイスが、光学顕微鏡、免疫蛍光顕微鏡、および共焦点走査顕微鏡からなる群より選択される、請求項72から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
細胞再分極、細胞再生、蛋白質トラフィッキング、エンドサイトーシス、トランスサイトーシス、細胞間相互作用、および細胞−マトリックス相互作用のライブイメージングを観察することができる、請求項72から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
ターゲットに対する複数の候補薬剤をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1から63のいずれか一項に記載の複数の細胞培地デバイスに、コラーゲンマトリックス内で、前記ターゲットを含む1つまたは複数の細胞タイプを播種するステップと、
(b)前記候補薬剤で前記細胞培養デバイスを潅流するステップと、
(c)前記所望の化合物を同定するために前記細胞培養デバイスをスクリーニングするステップと
を含む方法。
【請求項78】
生物学的流体の純化のための方法であって、
(a)請求項1から63のいずれか一項に記載の複数の細胞培養デバイスに、コラーゲンマトリックス内で、1つまたは複数の細胞タイプを播種するステップと、
(b)前記生物学的流体で前記細胞培養デバイスを潅流するステップと、
(c)純化された生物学的流体を得るステップと
を含む方法。
【請求項79】
前記1つまたは複数の細胞タイプが、肝細胞および類洞内皮細胞からなる群より選択さ
れる、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記生物学的流体が血液である、請求項78または79に記載の方法。
【請求項81】
請求項1から63のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス内で細胞を培養することを含む方法。
【請求項82】
前記細胞が足場依存性細胞である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記細胞が、肝細胞、線維芽細胞、骨髄間質細胞、内皮細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、筋細胞、神経細胞、および星細胞からなる群より選択される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記内皮細胞が肝類洞内皮細胞(SEC)である、請求項83に記載の方法。

【公表番号】特表2008−519598(P2008−519598A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541147(P2007−541147)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【国際出願番号】PCT/SG2005/000385
【国際公開番号】WO2006/052223
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】