説明

細胞接着を増加させることにより皮膚の弾力を改善させる化粧品の組成物の調整におけるXIKVAVペプチドの使用

本発明は、皮膚の細胞の相互、及び基底膜の接着性を増加させることにより皮膚の弾力(firmness)の改善を図る化粧品の組成物に関する。当該組成物は、化粧品として有効量の、一般化学式X−イソルシル−リシル−バリル−アラニル−バリン−Y、XIKVAVとして知られるペプチドを有する。本発明は、また、皮膚の弾力を増加させる化粧品の組成物の調整におけるXIKVAVペプチドの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の細胞の相互、及び基底膜の接着性を増加させることにより皮膚の弾力(firmness)の改善を図る化粧品の組成物に関する。当該組成物は、化粧品として有効量のペプチド、化学式Iの一般化学式X−イソルシル−リシル−バリル−アラニル−バリン−Y(以下、XIKVAVという)を有する。Xは水素、アミノ酸、直鎖型若しくは分岐型のアシル基とすることができ(図1参照)、Yはアミノ基、水酸基、チオール基とすることができ、これらには脂肪酸を置換したものと、置換していないものとがある。
【背景技術】
【0002】
皮膚は人間の体の最も大きな組織である。表皮と真皮の2つの層に区別することができる。これら二つの層は異なる高分子(コラーゲン、ラミニン、プロテオグリカンなど)により形成されるマトリックスである、基底膜を介して結合される。
【0003】
基底膜はIV型のコラーゲンやプロテオグリカン、糖タンパクであるエンタクチンやラミニンが豊富である。
【0004】
これらの分子は細胞結合のための生体接着性に加えて、構造上の網状組織を提供する。ラミニン配列は、IV型コラーゲン、ペルレカン(heparan sulphate proteoglycan)、エンタクチン、細胞表面のレセプターのための幾つかの結合ドメインを含む。
【0005】
この基底膜は、3層により形成される分化した細胞外マトリックスである。
【0006】
透明層(Lamina lucida):この層は直接的に基底ケラチノサイトと接しており、その主な組成物成分はラミニンである。
【0007】
緻密層(Lamina densa):透明層の下に位置し、ほぼ同じ厚さで後者と平行に伸びる。IV型コラーゲンが主である不定形の物質であり、基底膜の大きな牽引力と柔軟性に関与する。
【0008】
網様膜(Reticular lamina):前述の層の下にあるが、その位置はより定かでなく、真皮の線維芽細胞に由来する。固着線維と緻密層に挿入される弾性微小線維により形成され、基底膜を保持し、皮膚組織への接着を提供する。固着線維はIV型コラーゲンにより形成される構造物である。
【0009】
ラミニンは上述した透明層で最初に発見され、その主組成物成分である。
【0010】
ラミニンは約850KDaの糖タンパクであり、細胞外マトリックス(ECM)の中でコラーゲンの次に豊富に含まれるタンパクである。ラミニンは通常、基底膜で見つかり、十字架形状内に分布する3つの長いポリペプチド鎖により形成され、ジスルフィド架橋により結合される。
【0011】
3つの鎖は異なるラミニンのサブタイプに存在しており、それらの組合せにより12種類の異なるラミニンのアイソフォームが存在する。そのうち、ラミニン−1がもっとも研究されている。
【0012】
インテグリンはラミニンの認識に関与する最も重要なレセプターであり、それらは発見された最初のECMレセプターである。それらは細胞と細胞、細胞とECMの相互作用を受け持つ膜貫通細胞の表面レセプターの1つである。
【0013】
細胞はレセプターであるインテグリンを介してラミニンの結合ドメインを認識し、その結果、ラミニンを多く含む基底膜と結合する。レセプターであるインテグリンはまた、分化したリガンドを介して細胞間の結合を媒介する。
【0014】
皮膚の老化は皮膚が経験する真皮の過程の1つであり、すべての生物について共通する生物的過程である。
【0015】
皮膚の老化過程が起こるとき、皮膚の機能的能力が失われるとともに、乾燥、しわ、染みを伴う黄化、白髪、加えて細胞組織の緩み(tissue slackness)や弛緩(relaxation)などにより特徴付けられるぼう弱性の増加が通常観察される。
【0016】
表皮細胞の基底膜への接着は30歳を過ぎた後に低下し始めることが観察される。このように真皮と表皮の接触が失われることにより皮膚は構造的、及び機能的に変化する。これは老化過程の一部を形成している[J. Investing. Dermatol. Symp.Proc. 1998; 3 (2):172-9]。
【0017】
それゆえに、細胞と基底膜の間の接着性を増加して皮膚の老化を遅らせることにより、皮膚の弛緩、弾力の喪失を防ぎ、そして改善することは可能である。
【0018】
このような点について、皮膚の弾力を増加し、その老化を遅らせるための、化粧品の組成物における一般化学式XIKVAVのペプチドの使用に関する発明は、先行技術においては未だ記載されていない。
【0019】
米国特許5,744,515号[内皮形成促進のための方法と移植可能な物(implantable article)]は、表面がフィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、そしてそのドメインのような接着性の分子に覆われたポリマーや、セラミックや、金属製の移植物に関する。SIKVAVは記載されたドメインの中の1つであり、タンパクであるフィブロネクチンのドメインとして明確に記載されている。その接着性の分子は移植物の内皮形成、および細胞への接着の促進に関与するとともに、多孔質の生体材料からなる移植物は、その物質を介しての毛細血管の成長を可能とする。
【0020】
一方、米国特許6,428,579号[生体分子に覆われた移植可能な人工器官]は、金に覆われ、細胞修飾、走化性、抗凝固、抗血栓、抗腫瘍、抗感染、成長促進、抗炎症などの異なる特性を有する生物活性を有するペプチドが接着された移植物質に関する。SIXVAVは、その中で、インテグリン結合ペプチドの中の細胞修飾ペプチドの例として記載されている。これらの移植物質の適した使用は外科手術後の骨の成長を促進させることにあり、インテグリン基質ペプチド、例えばSIKVAVは、骨組織へのペプチド接着の改善のために使用される。
【0021】
米国特許6,673,108号[特定の空隙内の貫壁性同心多層成長マトリックス]は、幾つかの合成の、又はタンパク質性の層を有するマトリックスに関する。各層は特有の機能を有している。ペプチドや成長因子により誘導体化されたフィブリン層、特にSIKVAVのようなラミニン由来のペプチドを含むフィブリン層は、タンパク質性の層の例として名付けられている。
【0022】
これらの特許文献は化粧品の組成物における一般化学式XIKVAVのペプチドの使用については言及していない。
【0023】
それゆえに、本発明の基礎は、皮膚の弾力を増加させてその老化を遅らせることができる、化粧品の組成物を提供することにある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0024】
一般化学式XIKVAVのペプチドはラミニンに走化性の領域、すなわち細胞を引きつける領域を形成する。これは、これらのペプチドが細胞接着、成長、移動、さらに基底膜の再生を促進するからである。これらのペプチドについては、内皮細胞の増殖と分化を促進するという血管形成(Angiogenesis)促進の性質についても知られている[Journal of Cellular Physiol. 1992 Dec; 153(3): 614-25]。
【0025】
XIKVAVの構造のペプチドとレセプターであるインテグリンの間の相互作用は知られており、それらの使用は欧州特許番号1 325 739[抗がん剤を封入するリポソームと悪性腫瘍の処置におけるその使用]に記載されており、腫瘍細胞の膜におけるラミニンレセプターの過剰発現は、抗腫瘍物質を含みXIKVAVペプチドに覆われているリポソームの方向へ移動させるために使用される。
【0026】
XIKVAVペプチド、例えばXが水素ラジカル、セリルラジカル、またはパラミトイルラジカルであるIKVAV、SIKVAV、Pal−IKVAVのような、の存在下におけるケラチノサイト接着の促進という、皮膚の細胞レベルでの、XIKVAVペプチドの化粧品として活用できる、異なる機能が解明された(図8参照)。
【0027】
線維芽細胞のα6インテグリンの発現促進については、図3において観察されるように、また、XIKVAVが加えられていない対照サンプルにおいて起こっていることを示す図2を対照として、XIKVAVペプチドの存在下においてα6インテグリンが発現するときの蛍光の発生がどのようになるかについて観察された。
【0028】
線維芽細胞におけるラミニンVの発現促進は、図5で観察されるように、XIKVAVの存在下での蛍光の発生により観察される。XIKVAVペプチドを加えない対照サンプルは、ラミニンVの発現の効果を観察するために使用される(図4参照)。
【0029】
本発明では、皮膚の弾力を増加させることができ、さらにはその老化を遅くすることができる一般化学式XIKVAVのペプチドを含む化粧品の組成物が設計される。
【0030】
インテグリンやラミニンなどの生成と同様に、ケラチノサイトと繊維芽細胞の細胞接着の増加を測定するために活性試験が行われた。
【0031】
簡潔に述べると、XIKVAVペプチドは、ケラチノサイトの接着を促進するとともに、表皮と真皮の接合に欠くことのできない組織である半接触班(hemidesmosomes)に関連するラミニンVとα6インテグリン(生物接着ペプチド)の線維芽細胞によるケラチノサイトの生成を促進することができる。
【0032】
同様に、基底膜の良好な状態に伴う上記の微小循環の促進は、抵抗力と弾力とともに、酸素と代謝物の好適な輸送と、排出生成物の除去と、表皮細胞の機能的能力の改善とを助ける。
【0033】
それゆえに、局所的に使用する化粧品の組成物に組み込まれる、XIKVAVペプチドの使用は、皮膚の老化を防ぐこと、真皮と表皮の間の接触が失われるのを遅くすること、老化過程の一部を形成する構造的及び機能的変化を防ぐことに直接的な効果がある。
【0034】
それゆえに、本発明の第1の態様は、生物接着ペプチドの発現の増加により皮膚の細胞の生物接着の促進のための、一般化学式XIKVAVのペプチドの使用に関する。Xは水素、アミノ酸、アシル基により形成される群から選択されるとともに、Yはアミノ基、水酸基、チオール基から選択され、これらには脂肪酸を置換したものと、置換していないものとがある。
【0035】
好ましくは、一般化学式XIKVAVのペプチドにおいて、Xは水素、セリン、パラミトイル基、デカノイル基であり、Yはアミノ基、水酸基、もしくはチオール基である。これらには脂肪酸を置換したものと、置換していないものとがある。
【0036】
好ましくは、一般化学式XIKVAVのペプチドにおいて、Xはセリンであり、Yは水酸基である、すなわちSIKVAVペプチドである。
【0037】
好ましくは、一般化学式XIKVAVのペプチドにおいて、Xは水素であり、Yは水酸基である、すなわちIKVAVペプチドである。
【0038】
好ましくは、生物接着が促進される皮膚の細胞はケラチノサイト(keratinocytes)であり、生物接着ペプチドはα6インテグリン及びラミニンVである。
【0039】
本発明の第2の態様は、化粧品に適用可能な媒体(medium)と、生物接着ペプチドの発現を増加させることにより、皮膚の細胞の生物接着を促進するための、化粧品として有効量の一般化学式XIKAVを有するペプチドとを含む化粧品の組成物である。
【0040】
好ましくは、前記組成物は表皮に使用される。
【0041】
好ましい実施形態によれば、前記組成物は皮膚の弾力を増加させるが、この効果は皮膚の細胞の相互の、及び基底膜との接着を増加させることにより引き起こされる。
【0042】
好ましくは、本発明においては、XIKVAVペプチド(図1参照)は、化粧品の組成物の中に12%以下で含まれる。
【0043】
好ましくは、本発明においては、XIKVAVペプチド(図1参照)は、化粧品の組成物の中に好ましくは5%含まれる。
【0044】
好ましい賦形剤は、化粧品において通常用いられている、水、アルコール、レシチン、天然若しくは人工ポリマー、界面活性剤(surfactants)や活性表面剤(active surface agents)、保存剤などである。
【0045】
好ましい化粧品の形態は通常用いられている、クリーム、化粧水、乳液、シャンプー、美容液(serum)、ジェルなどである。
【0046】
好ましい実施形態によれば、組成物は以下の成分を以下の重量%で含む。
【0047】
【表1】

【0048】
アンチエイジング、抗脂肪沈着、保湿、再生、成分再活性化(revitalizing ingredients)などの化粧品の調整において多用されている、ビタミン、天然抽出物、酵素や他の通常の活性成分といった他の活性成分を、化粧品の組成物の一部として使用することができる。
【0049】
他の態様によれば、本発明は皮膚の弾力を増加させる化粧品の組成物の調整における、一般化学式XIKVAVのペプチドの使用に関する。
【0050】
細胞はラミニンを認識するためにインテグリンを使用し、ラミニンはインテグリンを介して細胞を結合させるので、本発明による化粧品の組成物は細胞の接着及びそれらの基底膜への結合を促進する。XIKVAVペプチドはインテグリンとラミニンの生成を増加させるとともに、化粧品の中の成分として使用するのに適しているからである。
【0051】
下記の実施例に反映されているように、活性試験は、細胞増殖の増加が観察されるかに加えて、一般化学式XIKVAVのペプチドの存在による皮膚の細胞の接着の効果について行った。
【0052】
それゆえに、一般化学式XIKVAVのペプチドの使用により得られる接着の効果に伴う細胞増殖の増加は、結果として、皮膚の老化においてまさに特徴的である弾力の喪失を防ぐ、より小さな表皮を得ることが可能となる。
【0053】
皮膚の老化の他の特徴的な面は細胞間の接触の喪失であり、それにより栄養が喪失するようになったり、例えば乾燥や、黄化や機能喪失のように皮膚が変化したりする。
【0054】
本発明に従って作られた、一般化学式XIKVAVのペプチドを含む化粧品の組成物の使用は、これらの老化の徴候への処置に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下に記載する実験は本発明のある特定の面を支持するものであり、その範囲を限定するものではない。
【0056】
(実験1)
免疫染色活性試験は、SIKVAVがα6インテグリンとラミニンVの発現を促進する活性があるかどうかを決定するために、人間の線維芽細胞とケラチノサイトで行われた(図3、4、5、及び62、3、4、及び5)。
【0057】
細胞がラミニンを認識するためにインテグリンを使用し、ラミニンがインテグリンを介して細胞と基底膜を接着する場合、インテグリンとラミニンの生成を促進させることができるペプチドは細胞接着とそれらの基底膜への接着を促進する。
【0058】
活性試験は、(インテグリンまたはラミニン)を検出するタンパク質と結合する第1の(モノクロナール)抗体と、タンパク質と第1の抗体の複合体に結合する第2の(ポリクロナール)抗体とを使用する。第2の抗体は、蛍光化合物(FITC−Fluorescein Isothiocyanate)が結合している。
【0059】
FITCは、フィルター処理された495nm(吸収波長)の光により照射され、色素により放出された光が528nm(放出波長)で検出される。
【0060】
これらの態様については図2、3、4、5において観察することができる。
【0061】
図2においては、免疫蛍光放出により、SIKVAVが処理されていない人間の線維芽細胞のα6インテグリンの発現を観察することができる。一方、図3においては、免疫蛍光放出により、SIKVAVが処理された人間の線維芽細胞のα6インテグリンの発現の増加を観察することができる。
【0062】
SIKAVの存在下と非存在下でのラミニンの発現の違いは、同じ活性試験で特定することができる。
【0063】
発現の違いは図4及び図5で観察される。図4においては、免疫蛍光放出により、SIKVAVが処理されていない人間の線維芽細胞のラミニンVの発現が観察され、図5においては、免疫蛍光放出により、SIKVAVが処理された人間の線維芽細胞のラミニンVの発現の増加を観察することができる。
【0064】
結論として、ラミニンVとα6インテグリンの顕著な増加がケラチノサイトではなく、SIKVAVが処理された人間の線維芽細胞において観察された。ベータ1インテグリンの生成の変化がないことについてはどちらにおいても検出されなかった。
(実施例2)
細胞レベルでの接着の過程は、第2の実施例の活性試験における、実験室内の線維芽細胞の培養物により解明される。
【0065】
この事実は図6及び図7に示される。
【0066】
図6は処理されていない人間の線維芽細胞の細胞接着を示し、図7はSIKVAVが処理された線維芽細胞の細胞接着を示す。
【0067】
図6及び図7はマイクロウェル(Microwell)活性試験の均一な被覆、および細胞増殖よりも細胞接着に関連する線維芽細胞の成長と分化を示す。
【0068】
細胞の接着と移動の促進に加えて、SIKVAVを含む化粧品は、血管の形成と、微小循環の改善を促進する。
(実施例3)
この実施形態は、ガラス器内の、ケラチノサイトの一般化学式XIKVAVのペプチドへの細胞接着の評価と、それらの間の比較評価を示す。
【0069】
この実施形態はXIKVAVペプチドの存在下において皮膚の細胞接着がどのように増加するのか、及びその変異型、SIKVAV、IKVAV、Pal−IKVAV、SIKVAV−OH、SIKVAV−NH(図8、9、10参照)の違いの比較を示す。
【0070】
下記の例で使用される細胞培養は、ケラチノサイトの特有の成長因子の存在下における人間の表皮のケラチノサイト(human epidermal keratinocytes, HEKa)である。
【0071】
まず、96のマイクロウェルがプレート上に乗せられ、それらは一般化学式XIKVAVのペプチドを含む滅菌水50μLにより覆われて(マイクロウェル当たり0.5−250 μg/ml)、室温で一晩乾燥される。
【0072】
一方、対照の活性試験は、特有でない細胞接着を評価するために40μMのBSA(bovine serum albumin)に覆われたマイクロウェルを用いて行われる。
【0073】
すべてのマイクロウェルは200μLのPBS(phosphate buffered saline)で洗われ、37℃のPBSの中で1%BSAとともに1時間固定された。
【0074】
トリプシンが人間の皮膚のケラチノサイトに加えられ、それらは5μMの濃度のcalcein-AM中、37度で30分マークされ、最後にEpilife(登録商標)培地で3回洗われた。
【0075】
標識された細胞(4.5×104/microwell)はXIKVAVペプチドに前もって覆われたプレートに加えられ、5%の二酸化炭素を含む加湿された空気中において、37℃で2時間培養された。
【0076】
細胞接着は洗いの前後のcalceinの蛍光を測定することにより評価された。
【0077】
細胞接着の割合は、接着された細胞の蛍光を、各マイクロウェルに加えられた細胞の全ての蛍光で割ることにより決定された。
【0078】
XIKVAVペプチドにより促進された細胞接着は細胞のBSAへの特有でない接着に対して計算された。
【0079】
XKIVAVペプチドは用量依存的にケラチノサイトの接着を促進することが結果として示される(図8、9、10参照)。
【0080】
XIKVAVペプチドにより促進された細胞接着は、研究での最高濃度における特有でない接着に対して65%であった。
【0081】
これらの結果は、細胞表面の特異的なレセプターによりXIKVAVペプチドが認識されていることを示す。
【0082】
これらの結果は、一般化学式XIKVAVのペプチドが、皮膚の弾力の再構築と増加のための化粧品の一部を形成するための良好な候補であることを示唆する。
【0083】
図8、9、10を観察、および比較したとき、ペプチドの量が増加するにしたがって(用量依存的に)細胞接着の増加が観察される。
【0084】
図9から推定される結果を比較したとき、すべての例においてケラチノサイトの細胞接着の大きな増加が観察されるが、SIKVAVペプチド、すなわちXがセリンであるペプチドがより接着させる。
【0085】
図10はSIKVAV−OHとSIKVAV−NHの細胞接着のレベルを示すものであり、小さい量ではSIKVAV−NHによる接着のほうがより観察され、大きい量ではSIKVAV−OHによる接着のほうがより観察される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本実施形態のXIKVAVペプチドの一般化学式を示す図である。
【図2】SIKVAVペプチドが処理されていない人間の線維芽細胞のα6インテグリンの発現を、免疫蛍光放出により示す図である。
【図3】SIKVAVペプチドが処理された人間の線維芽細胞のα6インテグリンの発現を、免疫蛍光放出により示す図である。
【図4】SIKVAVペプチドが処理されていない人間の線維芽細胞のラミニンVの発現を、免疫蛍光放出により示す図である。
【図5】SIKVAVペプチドが処理された人間の線維芽細胞のラミニンVの発現を、免疫蛍光放出により示す図である。
【図6】SIKVAVペプチドが処理されていない人間の線維芽細胞の細胞接着を示す図である。
【図7】SIKVAVペプチドが処理された人間の線維芽細胞の細胞接着を示す図である。
【図8】XIKVAVペプチドが処理されたケラチノサイトの細胞接着の増加を示すグラフである。
【図9】SIKVAVペプチド、IKVAVペプチド、Pal−IKVAVペプチドが処理されたケラチノサイトの細胞接着の増加を示すグラフである。
【図10】SIKVAV―OHペプチド、SIKVAV―NHペプチドが処理されたケラチノサイトの細胞接着の増加を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物接着ペプチドの発現を増加させることにより皮膚の細胞の生物接着を促進させることを特徴とする、一般化学式IのXIXVAVペプチド:Xは水素、アミノ酸、アシル基により形成される群から選択され、Yはアミノ基、水酸基、チオール基により形成される群から選択される、の使用。
【化I】

【請求項2】
Xは水素またはセリンであることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
Xはパルミトイル基またはデカノイル基であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
Yはアミノ基であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項5】
Yは水酸基であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項6】
Yはチオール基であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項7】
皮膚の細胞はケラチノサイト(keratinocytes)であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の使用。
【請求項8】
生物接着ペプチドはアルファ6インテグリン及びラミニンVであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の使用。
【請求項9】
化粧品の組成物の調整における請求項1から8のいずれか1つに記載のペプチドの使用。
【請求項10】
皮膚の弾力を増加させる化粧品の組成物の調整における請求項1から9のいずれか1つに記載のペプチドの使用。
【請求項11】
化粧品に適応可能な媒体(medium)と、化粧品として有効量の、化学式IのXIKAVペプチド:Xは水素、アミノ酸、またはアシル基のいずれかであり、Yはアミノ基、水酸基、チオール基のいずれかである、とを含むことを特徴とする請求項9又は10に記載の化粧品の組成物。
【化I】

【請求項12】
ジェル、乳液、クリーム、化粧水、シャンプー、美容液(serum)の形態で提供されることを特徴とする請求項11に記載の化粧品の組成物。
【請求項13】
皮膚の弾力を増加させることを特徴とする請求項11または12に記載の化粧品の組成物。
【請求項14】
皮膚の細胞の相互の、及び基底膜との接着を増加させることにより皮膚の弾力を増加させる効果を特徴とする請求項13に記載の化粧品の組成物。
【請求項15】
XIKVAVペプチドの量が12重量%以下であることを特徴とする請求項11から14のいずれか1つに記載の化粧品の組成物。
【請求項16】
以下の成分を以下の重量%で好適に含むことを特徴とする請求項11から15に記載の化粧品の組成物。
ペプチド 0.001−10
ワセリン(petrolaum) 0−10
トリエタノールアミン 0−10
BHT 0−10
フェノキシエタノール 0−10
メチルパラベン 0−10
ブチルパラベン 0−10
ブチルパラベン 0−10
プロピルパラベン 0−10
イソプチルパラベン 0−10
ステアリン酸 0−10
蜜蝋(Beeswax) 0−10
カルボマー(carbomer) 0−10
ジメチコノール 0−10
シクロメチコン 0−1
グリセリン 0−10
セチルステアリン酸 0−10
香料 0−10
水 100とする量
【請求項17】
XIKVAVペプチドの量が5重量%以下であることを特徴とする請求項11から16に記載の化粧品の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−534727(P2007−534727A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510051(P2007−510051)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【国際出願番号】PCT/ES2005/000175
【国際公開番号】WO2005/105029
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(506362152)
【氏名又は名称原語表記】LIPOTEC, S.A.
【住所又は居所原語表記】C/Isaac Peral, N 15, Pol. Ind. Cami Ral, E−08550 Gava (Barcelona) (ES)
【Fターム(参考)】