細胞/組織におけるGALNAC−T14発現を試験することによるAP02L/TRAILへのアポトーシス感受性
哺乳動物組織または細胞試料における一ないし複数のバイオマーカーの発現を検査する方法およびアッセイを提供する。開示した方法およびアッセイによって、GalNac−T14又はGalNac−T3などのGalNac−T関連分子の発現の検出が、該組織または細胞試料がApo2L/TRAILおよび抗DR5アゴニスト抗体などのアポトーシス誘導剤に対して感受性があるか否かを予測又は表すものである。また、キットおよび製造品も提供される。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(出願について)
この出願は、2005年8月16日提出の米国特許仮出願番号第60/708,677号及び2006年5月24日提出の同第60/808,076号の優先権を主張し、前記特許文献の内容はここに出典明記により援用される。
【0002】
(発明の分野)
本明細書中に記載の発明は、Apo2L/TRAIL及び/又はデスレセプターアゴニスト抗体に対する哺乳動物細胞の感受性を予測するバイオマーカーを検出するための方法及びアッセイに関する。具体的には、本発明は、Apo2L/TRAIL、或いはDR4又はDR5アゴニスト抗体等のデスレセプターアゴニスト抗体に対する哺乳動物の癌細胞の感受性を予測できるタンパク質のGalNac−Tファミリーに関連する分子を検出する方法とアッセイに関する。
【0003】
(発明の背景)
腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーに属する様々なリガンド及びレセプターが当分野で同定されている。そのようなリガンドの中には、腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、腫瘍壊死因子-β(「TNF-β」又は「リンホトキシン-α」)、リンホトキシン-β(「LT-β」)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX-40リガンド、4-1BBリガンド、LIGHT、Apo-1リガンド(Fasリガンド又はCD95リガンドとも称される)、Apo-2リガンド(Apo2L又はTRAILとも称される)、Apo-3リガンド(TWEAKとも称される)、APRIL、OPGリガンド(RANKリガンド、ODF又はTRANCEとも称される)、及びTALL-1(BlyS、BAFF又はTHANKとも称される)が含まれる。[例えば、Ashkenazi, Nature Review, 2:420-430 (2002);Ashkenazi及びDixit, Science, 281:1305-1308 (1998);Ashkenazi及びDixit, Curr. Opin. Cell Biol., 11:255-260 (2000);Golstein, Curr. Biol., 7:750-753 (1997) Wallach, Cytokine Reference, Academic Press, 2000, pages 377-411;Locksley 等, Cell, 104:487-501 (2001);Gruss及びDower, Blood, 85:3378-3404 (1995);Schmid 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 83:1881 (1986);Dealtry 等, Eur. J. Immunol., 17:689 (1987);Pitti 等, J. Biol. Chem., 271:12687-12690 (1996);Wiley 等, Immunity, 3:673-682 (1995);Browning 等, Cell, 72:847-856 (1993);Armitage 等 Nature, 357:80-82 (1992);1997年1月16日公開のWO97/01633;1997年7月17日公開のWO97/25428;Marstersら, Curr. Biol., 8:525-528(1998);Chicheporticheら, Biol. Chem., 272:32401-32410(1997);Hahneら, J. Exp. Med., 188:1185-1190(1998);1998年7月2日公開のWO98/28426;1998年10月22日公開のWO98/46751;1998年5月7日公開のWO/98/18921;Mooreら, Science, 285:260-263(1999);Shuら, J. Leukocyte Biol., 65:680(1999);Schneiderら, J. Exp. Med., 189:1747-1756(1999);Mukhopadhyayら, J. Biol. Chem., 274:15978-15981(1999)参照]。
【0004】
このようなTNFファミリーリガンドによって媒介される様々な細胞性応答の誘導は、一般的に特定の細胞レセプターへの結合によって開始される。すべてではなく、いくつかのTNFファミリーリガンドは、細胞表面の「デスレセプター」に結合して、それを介して様々な生物学的活性を誘導し、細胞死やアポトーシス経路を行うカスパーゼ又は酵素を活性化する(Salvesen 等, Cell, 91:443-446 (1997)。今日までに同定されたTNFレセプタースーパーファミリーのメンバーには、TNFR1、TNFR2、TACI、GITR、CD27、OX-40、CD30、CD40、HVEM、Fas (Apo-1又はCD95とも称される)、DR4 (TRAIL-R1とも称される)、DR5 (Apo-2又はTRAIL-R2とも称される)、DcR1、DcR2、破骨細胞分化抑制因子(OPG)、RANK及びApo-3 (DR3又はTRAMPとも称される)が含まれる。(例えば、Ashkenazi, Nature Reviews, 2:420-430 (2002);Ashkenazi及びDixit, Science, 281:1305-1308 (1998);Ashkenazi及びDixit, Curr. Opin. Cell Biol., 11:255-260 (2000);Golstein, Curr. Biol., 7:750-753 (1997) Wallach, Cytokine Reference, Academic Press, 2000, 377-411頁;Locksley 等., Cell, 104:487-501 (2001);Gruss and Dower, Blood, 85:3378-3404 (1995);Hohman 等, J. Biol. Chem., 264:14927-14934 (1989);Brockhaus 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 87:3127-3131 (1990);1991年3月20日出願の欧州特許第417,563;Loetscher 等, Cell, 61:351 (1990);Schall 等, Cell, 61:361 (1990);Smith 等, Science, 248:1019-1023 (1990);Lewis 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 88:2830-2834 (1991);Goodwin 等, Mol. Cell. Biol., 11:3020-3026 (1991);Stamenkovic 等, EMBO J., 8:1403-1410 (1989);Mallett 等, EMBO J., 9:1063-1068 (1990);Anderson 等, Nature, 390:175-179 (1997);Chicheportiche 等, J. Biol. Chem., 272:32401-32410 (1997);Pan 等, Science, 276:111-113 (1997);Pan 等, Science, 277:815-818 (1997);Sheridan 等, Science, 277:818-821 (1997);Degli-Esposti 等, J. Exp. Med., 186:1165-1170 (1997);Marsters 等, Curr. Biol., 7:1003-1006 (1997);Tsuda 等, BBRC, 234:137-142 (1997);Nocentini 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 94:6216-6221 (1997);vonBulow 等, Science, 278:138-141 (1997))。
【0005】
これらTNFレセプターファミリーメンバーの多くは、細胞外領域、膜貫通領域及び細胞内領域を含む細胞表面レセプターの典型的な構造を共有しており、一方、他のメンバーは膜貫通領域と細胞内ドメインを欠いた可溶性タンパク質として天然にみられる。典型的なTNFRの細胞外部位には、NH2-末端から始まる複数のシステインリッチドメイン(CRD)の反復性のアミノ酸配列パターンを含有する。
Apo-2L又はTRAILと称されるリガンドはサイトカインのTNFファミリのメンバーとして数年前に同定された。[例えばWileyら, Immunity, 3:673-682 (1995);Pittiら, J. Biol. Chem., 271:12697-12690 (1996);国際公開公報97/01633;国際公開公報97/25428;1998年6月9日発行の米国特許第5,763,223号;2001年9月4日発行の米国特許第6284236を参照]。完全長天然配列ヒトApo2L/TRAILポリペプチドは281アミノ酸長のII型膜貫通タンパク質である。ある細胞は、ポリペプチドの細胞外領域の酵素切断によって、そのポリペプチドの天然の可溶型を生じうる[Marianiら, J. Cell. Biol., 137:221-229 (1997)]。Apo2L/TRAILの可溶型の結晶学的研究はTNF及び他の関連タンパク質の構造に類似したホモ三量体構造を明らかにする[Hymowitzら, Molec. Cell, 4:563-571 (1999);Cha 等, Immunity, 11:253-261 (1999);Mongkolsapaya 等, Nature Structural Biology, 6:1048 (1999);Hymowitz 等, Biochemistry, 39:633-644 (2000)]。しかし、他のTNFファミリーメンバーとは異なり、Apo2L/TRAILは、(ホモ三量体の各サブユニットの位置230の)3つのシステイン残基が併せて亜鉛原子を配位しており、亜鉛の結合が三量体の安定性と生物学的活性のために重要であるという独特の構造的特徴を有していることが分かった。[上掲のHymowitzら; Bodmerら, J. Biol. Chem., 275:20632-20637 (2000)]。
【0006】
Apo2L/TRAILは関節リウマチなどの自己免疫性疾患を含む、免疫系の調節において働きうることが文献で報告されている[例として、Thomas 等, J. Immunol., 161:2195-2200 (1998);Johnsen 等, Cytokine, 11:664-672 (1999);Griffith 等, J. Exp. Med., 189:1343-1353 (1999);Song 等, J. Exp. Med., 191:1095-1103 (2000)を参照]。
また、Apo2L/TRAILの可溶型は大腸、肺、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣及び脳腫瘍を含む様々な癌細胞並びに黒色腫、白血病、及び多発性骨髄腫においてアポトーシスを誘導することが報告されている[例えば、上掲のWileyら;上掲のPittiら;2000年2月29日発行の米国特許第6,030,945号;2004年6月8日発行の米国特許第6,746,668号;Rieger 等, FEBS Letters, 427:124-128 (1998);Ashkenazi 等, J. Clin. Invest., 104:155-162 (1999);Walczak 等, Nature Med., 5:157-163 (1999);Keane 等, Cancer Research, 59:734-741 (1999);Mizutani 等, Clin. Cancer Res., 5:2605-2612 (1999);Gazitt, Leukemia, 13:1817-1824 (1999);Yu 等, Cancer Res., 60:2384-2389 (2000);Chinnaiyan 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 97:1754-1759 (2000)を参照のこと]。マウス腫瘍モデルでのインビボ研究は、Apo2L/TRAILが、単独で又は化学療法や放射線療法と組み合わせて、実質的な抗腫瘍効果を生じうることを示唆している[例えば上掲のAshkenaziら;上掲のWalzcakら;Gliniakら, Cancer Res., 59:6153-6158 (1999);上掲のChinnaiyanら;Rothら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 265:1999 (1999);PCT出願 US/00/15512;PCT出願 US/01/23691を参照のこと]。多くのタイプの癌細胞とは対照的に、殆どの正常なヒト細胞タイプはApo2L/TRAILのある種の組換え形態によるアポトーシスの誘導に対して耐性があるように思われる[上掲のAshkenaziら;上掲のWalzcakら]。JoらはApo2L/TRAILのポリヒスチジンタグ可溶型が正常な単離された非ヒトではなくヒト肝細胞においてインビトロにてアポトーシスを誘導したことを報告している[Joら, Nature Med., 6:564-567 (2000);またNagata, Nature Med., 6:502-503 (2000)を参照のこと]。ある種の組換えApo2L/TRAIL調製物は、例えばタグ分子の有無、亜鉛含有量、及び三量体の含有%に応じて、罹患細胞対正常細胞に対する生化学的性質及び生物学的活性に関して変動しうると考えられている。[Lawrenceら, Nature Med., Letter to the Editor, 7:383-385 (2001);Qinら, Nature Med., Letter to the Editor, 7:385-386 (2001)]。
【0007】
Apo2L/TRAILは、少なくとも5つの異なるレセプターに結合することが明らかとなった。Apo2L/TRAILに結合するそのレセプターの少なくとも2つは、機能的な細胞質デスドメインを含有している。そのあるレセプターは「DR4」(あるいはTR4又はTRAIL-R1)と称されている(Pan 等, Science, 276:111-113 (1997);また、1998年7月30日公開の国際公開公報98/32856;1999年7月29日公開の国際公開公報99/37684;2000年12月7日公開の国際公開公報00/73349;2003年2月20日公開の米国特許出願公開第2003/0036168号;2002年8月13日発行の米国特許第6,433,147号;2002年10月8日発行の米国特許第6,461,823号及び2002年1月29日発行の米国特許第6,342,383号)。
Apo2L/TRAILの他のレセプターはDR5と称されている(あるいはApo-2;TRAIL-R又はTRAIL-R2、TR6、Tango-63、hAPO8、TRICK2又はKILLERとも称されている) (例として、Sheridan 等, Science, 277:818-821 (1997)、Pan 等, Science, 277:815-818 (1997)、1998年11月19日公開の国際公開公報98/51793;1998年9月24日公開の国際公開公報98/41629;Screaton 等, Curr. Biol., 7:693-696 (1997);Walczak 等, EMBO J., 16:5386-5387 (1997);Wu 等, Nature Genetics, 17:141-143 (1997);1998年8月20日発行の国際公開公報98/35986;1998年10月14日発行の欧州特許第870,827号;1998年10月22日公開の国際公開公報98/46643;1999年1月21日公開の国際公開公報99/02653;1999年2月25日公開の国際公開公報99/09165;1999年3月11日公開の国際公開公報99/11791;2003年5月22日公開の国際公開公報03/042367;2002年12月5日公開の国際公開公報02/097033;2003年5月8日公開の国際公開公報03/038043;2002年8月13日公開の米国特許公開2002/0072091;2001年12月7日公開の米国特許公開2002/0098550;2001年12月6日発行の米国特許第6,313,269号;2001年8月2日公開の米国特許公開2001/0010924;2003年7月3日公開の米国特許公開 2003/01255540;2002年10月31日公開の米国特許公開2002/0160446、2002年4月25日公開の米国特許公開2002/0048785;2004年7月22日公開の米国特許出願公開第2004/0141952号;2005年6月16日公開の同第2005/0129699号;2005年6月16日公開の同第2005/0129616号;2002年2月発行の米国特許第6,342,369号;2003年5月27日発行の米国特許第6,569,642号、2000年6月6日発行の米国特許第6,072,047号、2003年11月4日発行の米国特許第6,642,358号;2004年6月1日発行のIS 6,743,625を参照)。DR4と同様に、DR5は細胞質デスドメインを含有し、リガンド結合時(又はリガンドの活性を擬態するアゴニスト抗体などの分子の結合時)にアポトーシスをシグナル伝達することができることが報告された。Apo-2L/TRAILとDR5とで形成される複合体の結晶構造はHymowitz 等, Molecular Cell, 4:563-571 (1999)に記載されている。
【0008】
リガンドが結合すると、DR4とDR5はともに、FADD/Mort1と称されるデスドメイン含有アダプター分子を介してアポトーシスインヒビターであるカスパーゼ8を増加又は活性化することによって独立してアポトーシスを引き起こしうる[Kischkel 等, Immunity, 12:611-620 (2000);Sprick 等, Immunity, 12:599-609 (2000);Bodmer 等, Nature Cell Biol., 2:241-243 (2000)]。
また、Apo2L/TRAILはDcR1、DcR2及びOPGと称されるレセプターに結合することが報告されている。そのレセプター等はシグナル伝達のトランスデューサーというよりもインヒビターとして機能すると思われている。(例えば、DCR1 (TRID、LIT又はTRAIL-R3とも称される) [Pan 等, Science, 276:111-113 (1997);Sheridan 等, Science, 277:818-821 (1997);McFarlane 等, J. Biol. Chem., 272:25417-25420 (1997);Schneider 等, FEBS Letters, 416:329-334 (1997);Degli-Esposti 等, J. Exp. Med., 186:1165-1170 (1997);及びMongkolsapaya 等, J. Immunol., 160:3-6 (1998);DCR2 (TRUNDD又はTRAIL-R4とも称される) [Marsters 等, Curr. Biol., 7:1003-1006 (1997);Pan 等, FEBS Letters, 424:41-45 (1998);Degli-Esposti 等, Immunity, 7:813-820 (1997)]、及びOPG [Simonet 等、上掲]。DR4及びDR5に反して、DcR1及びDcR2レセプターはアポトーシスをシグナル伝達しない。
【0009】
DR4及び/又はDR5レセプターに結合する特定の抗体が文献で報告されている。例えば、DR4レセプターに対するものであり、特定の哺乳動物細胞においてアゴニスト活性ないしはアポトーシス活性を有する抗DR4抗体は、例として、1999年7月29日公開の国際公開公報99/37684;2000年7月12日公開の国際公開公報00/73349;2003年8月14日公開の国際公開公報03/066661に記載されている。例として、Griffith 等, J. Immunol., 162:2597-2605 (1999);Chuntharapai 等, J. Immunol., 166:4891-4898 (2001);2002年12月2日公開の国際公開公報02/097033;2003年5月22日公開の国際公開公報03/042367;2003年5月8日公開の国際公開公報03/038043;2003年5月8日公開の国際公開公報03/037913;2003年4月17日公開の米国特許出願公開第2003/0073187号;2003年6月12日公開の同第2003/0108516号も参照のこと。特定の抗DR5抗体も同様に記載されている。例として、1998年11月8日公開の国際公開公報98/51793;Griffith 等, J. Immunol., 162:2597-2605 (1999);Ichikawa 等, Nature Med., 7:954-960 (2001);Hylander 等, “An Antibody to DR5 (TRAIL-Receptor 2) Suppresses the Growth of Patient Derived Gastrointestinal Tumors Grown in SCID mice”, Abstract, 2d International Congress on Monoclonal Antibodies in Cancers, Aug. 29-Sept. 1, 2002, Banff, Alberta, Canada;2003年5月8日公開の国際公開公報03/038043 ;2003年5月8日公開の国際公開公報03/037913;2003年9月25日公開の米国特許出願公開2003/0180296を参照のこと。さらに、DR4とDR5レセプターの両方と交差反応する特定の抗体が記載されている(例として、2001年6月26日発行の米国特許第6,252,050号を参照)。
【0010】
(発明の概要)
本明細書に開示される発明は、哺乳動物組織又は細胞試料における一又は複数のバイオマーカーの発現を検査する方法及びアッセイを提供するものであり、この一又は複数のバイオマーカーの発現により該組織又は細胞試料がApo2L/TRAIL又は抗DR5アゴニスト抗体などの薬剤に対して感受性であるか否かを予測するものである。本発明の様々な実施態様では、該方法及びアッセイは、タンパク質のGalNac−Tファミリー、特にGalNAc−T14又はGalNAc−T3における分子の発現を検査するものである。
上記のように、正常なヒト細胞種類の多くは、Apo2L/TRAILの特定の組み換え型によるアポトーシス誘導に抵抗性を示す(上掲のAshkenazi 等;上掲のWalzcak 等)。また、罹患したヒト細胞種類のあるもの(ある種の癌細胞)もApo2L/TRAILの特定の組み換え型によるアポトーシス誘導に抵抗性を示すことが明らかとされている(上掲のAshkenazi 等, J. Clin. Invest., 1999;上掲のWalczak 等, Nature Med., 1999)。したがって、アッセイによって選択されたバイオマーカーの発現について哺乳動物組織又は細胞試料を検査することによって、治療する患者にとって適切ないしは効果的な治療法を判断する際の有効な情報を簡便にかつ効率よく得ることができる。例えば、哺乳動物組織又は細胞試料におけるGalNac−T14の発現を検出するためのアッセイから得られた情報により、医師は、癌などの疾患又は自己免疫疾患などの免疫関連疾患を患っている患者にとって適切な治療計画(Apo2L/TRAIL又はデスレセプターアゴニスト抗体を用いたもの)を決定するために用いることができる有用なデータを得ることができる。
【0011】
本発明は、Apo2L/TRAIL又はデスレセプターアゴニスト抗体に対する哺乳動物組織又は細胞試料(例えば癌細胞)の感受性を予測する方法を提供する。ある実施態様では、前記方法は、哺乳動物組織又は細胞試料を採取し、GalNac−T14の発現について該組織又は細胞を検査することを含む。前記方法は、mRNA及び/又はタンパク質の発現を検出するアッセイ、酵素活性アッセイ、及び本明細書に記載の他のアッセイを含む、様々なアッセイ様式で行うことができる。そのような組織又は細胞がApo2L/TRAIL及び/又はデスレセプター抗体のアポトーシス誘導活性に対して感受性であることが、前記組織又は細胞におけるGalNac−T14の発現の決定により予測されうる。任意の実施態様では、前記組織又は細胞は、DR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターについても検査されうる。
本発明の更なる方法には、哺乳動物組織又は細胞試料を採取し、GalNac−T14の発現について該組織又は細胞を検査し、該組織又は細胞試料がGalNac−T14を発現するかを決定し、有効量のApo2L/TRAIL又はデスレセプターアゴニスト抗体に該組織又は細胞試料を曝す工程を含む、哺乳動物組織又は細胞試料のアポトーシスを誘導する方法が含まれる。GalNac−T14の発現を検査するための方法に含まれる工程は、mRNA及び/又はタンパク質、酵素活性及び本明細書に記載の他のものの発現を検出するアッセイを含む、様々なアッセイ様式で行うことができる。任意の実施態様では、前記方法は、前記組織又は細胞をDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現についても検査することを含む。場合によっては、前記組織又は細胞試料には癌組織又は癌細胞が含まれる。場合によって、組織又は細胞試料には、非小細胞肺癌細胞、膵臓癌細胞、乳癌細胞、又は非ホジキンリンパ腫細胞が含まれる。
【0012】
本発明の更なる方法には、哺乳動物から組織又は細胞試料を採取し、GalNac−T14の発現について該組織又は細胞を検査し、該組織又は細胞試料が該GalNac−T14を発現するかを決定し、有効量のApo2L/TRAIL又はデスレセプターアゴニスト抗体を該哺乳動物に投与する工程を含む、免疫関連疾患や癌などの哺乳動物の疾患の治療方法が含まれる。前記一又は複数のバイオマーカーの発現を検査するための方法に含まれる工程は、mRNA及び/又はタンパク質、酵素活性及び本明細書に記載の他のものの発現を検出するアッセイを含む、様々なアッセイ様式で行われうる。任意の実施態様では、前記方法は、前記組織又は細胞試料をDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現についても検査することを含む。場合によっては、前記方法は哺乳動物の癌を治療することを含む。場合によっては、前記方法は、有効量のApo2L/TRAIL及び/又はデスレセプターアゴニスト抗体の投与に加えて、一又は複数の化学療法剤又は放射線療法が前記哺乳動物に投与されることを含む。
本発明の更なる実施態様では、前記方法は、GalNac−T3等の他のGalNac−T分子の発現について哺乳動物の組織又は細胞を検査する工程を含むことができる。
【0013】
更なる実施態様は、以下の特許請求に例示として具体的に開示される:
1.哺乳動物の組織又は細胞試料のApo2L/TRAILに対する感受性を予測する方法であって、
哺乳動物組織又は細胞試料を採取する工程、
該組織又は細胞試料を検査して、GalNac−T14の発現を検出する工程
を含んでなり、該組織又は細胞試料がApo2L/TRAILのアポトーシス誘導活性に感受性であることが前記GalNac−T14の発現により予測される方法。
2.前記GalNac−T14の発現がGalNac−T14のmRNAの発現を検出することによって検査されるものである、請求項1に記載の方法。
3.前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学によって検査されるものである、請求項1に記載の方法。
4.さらに、前記組織又は細胞試料中のDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項1に記載の方法。
5.前記組織又は細胞試料に癌組織又は癌細胞が含まれる、請求項1に記載の方法。
6.前記癌細胞が、膵臓癌、リンパ腫、又は非小細胞肺癌の細胞又は組織である、請求項5に記載の方法。
7.哺乳動物組織又は細胞試料のアポトーシスを誘導する方法であって、
哺乳動物組織又は細胞試料を採取する工程、
該組織又は細胞試料を検査して、GalNac−T14の発現を検出する工程、
前記GalNac−T14の発現が検出されたら、前記組織又は細胞試料を有効量のApo2L/TRAILに曝す工程
を含んでなる方法。
8.前記GalNac−T14の発現がGalNac−T14のmRNA発現を検出することによって検査されるものである、請求項7に記載の方法。
9.前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学によって検査されるものである、請求項7に記載の方法。
10.さらに、前記組織又は細胞試料中のDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項7に記載の方法。
11.前記組織又は細胞試料に癌組織又は癌細胞が含まれる、請求項7に記載の方法。
12.前記癌細胞が、膵臓癌、リンパ腫、又は非小細胞肺癌の細胞又は組織である、請求項11に記載の方法。
13.前記細胞が、図1のアミノ酸114−281を含む有効量のApo2L/TRAILポリペプチドに曝される、請求項7に記載の方法。
14.哺乳動物の免疫関連疾患又は癌などの疾患の治療方法であって、
前記哺乳動物から組織又は細胞試料を採取する工程、
該組織又は細胞試料を検査してGalNac−T14の発現を検出する工程、
前記GalNac−T14の発現が検出されたら、有効量のApo2L/TRAILを前記哺乳動物に投与する工程
を含んでなる方法。
15.前記GalNac−T14の発現がGalNac−T14のmRNA発現を検出することによって検査されるものである、請求項14に記載の方法。
16.前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学によって検査されるものである、請求項14に記載の方法。
17.さらに、前記組織又は細胞中のDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項14に記載の方法。
18.前記組織又は細胞試料に癌組織又は癌細胞が含まれる、請求項14に記載の方法。
19.前記癌細胞又は癌組織に、膵臓癌、リンパ腫、又は非小細胞肺癌の細胞又は組織が含まれる、請求項18に記載の方法。
20.図1のアミノ酸114−281を含む有効量のApo2L/TRAILポリペプチドが前記哺乳動物に投与される、請求項14に記載の方法。
21.また、化学療法剤又は放射線療法が前記哺乳動物に投与される、請求項14に記載の方法。
22.また、サイトカイン、細胞障害性剤又は成長阻害剤が前記哺乳動物に投与される、請求項14に記載の方法。
23.前記Apo2L/TRAILポリペプチドがポリエチレングリコール分子に連結する、請求項7に記載の方法。
24.前記Apo2L/TRAILポリペプチドがポリエチレングリコール分子に連結する、請求項14に記載の方法。
25.哺乳動物の組織又は細胞試料の、デスレセプター抗体に対する感受性を予測する方法であって、
哺乳動物から組織又は細胞試料を採取する工程、
該組織又は細胞試料を検査してGalNac−T14の発現を検出する工程
を含み、前記GalNac−T14の発現により、前記組織又は細胞試料がデスレセプター抗体のアポトーシス誘発活性に対して感受性であることが予測される、方法。
26.前記GalNac−T14の発現が、GalNac−T14のmRNA発現の検出によって検査されるものである、請求項25に記載の方法。
27.前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学によって検査されるものである、請求項25に記載の方法。
28.さらに、前記組織又は細胞中のDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項25に記載の方法。
29.前記組織又は細胞試料に癌組織又は癌細胞が含まれる、請求項25に記載の方法。
30.前記癌細胞が、膵臓癌、リンパ腫、又は非小細胞肺癌の細胞又は組織である、請求項29に記載の方法。
31.前記デスレセプター抗体が、アゴニストの抗DR4又は抗DR5抗体である、請求項25に記載の方法。
32.哺乳動物の組織又は細胞試料のアポトーシスを誘導する方法であって、
哺乳動物から組織又は細胞試料を採取し、
GalNac−T14の発現を検出するために、該組織又は細胞試料を検査し、前記GalNac−T14の発現が検出されたら、前記組織又は細胞試料を有効量のデスレセプター抗体に曝す
行程を含んでなる方法。
33.前記GalNac−T14の発現が、GalNac−T14のmRNA発現の検出によって検査されるものである、請求項32に記載の方法。
34.前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学によって検査されるものである、請求項32に記載の方法。
35.さらに、前記組織又は細胞中のDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項32に記載の方法。
36.前記組織又は細胞試料に癌組織又は癌細胞が含まれる、請求項32に記載の方法。
37.前記癌細胞が、膵臓癌、リンパ腫、又は非小細胞肺癌の細胞又は組織である、請求項36に記載の方法。
38.前記細胞が、有効量のアゴニストの抗DR4又は抗DR5抗体に曝される、請求項32に記載の方法。
39.前記細胞が、図3Aに示されるDR5レセプターに結合する有効量のアゴニストDR5抗体に曝される、請求項38に記載の方法。
40.哺乳動物の免疫関連疾患又は癌などの疾患の治療方法であって、
前記哺乳動物から組織又は細胞試料を採取する工程、
該組織又は細胞試料を検査してGalNac−T14の発現を検出する工程、
前記GalNac−T14の発現が検出されたら、有効量のデスレセプター抗体を前記哺乳動物に投与する工程
を含んでなる方法。
41.前記GalNac−T14の発現がGalNac−T14のmRNA発現を検出することによって検査されるものである、請求項40に記載の方法。
42.前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学によって検査されるものである、請求項40に記載の方法。
43.さらに、前記組織又は細胞中のDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項40に記載の方法。
44.前記組織又は細胞試料に癌組織又は癌細胞が含まれる、請求項40に記載の方法。
45.前記癌細胞又は癌組織に、膵臓癌、リンパ腫、又は非小細胞肺癌の細胞又は組織が含まれる、請求項44に記載の方法。
46.前記哺乳動物に有効量の抗DR4又はDR5抗体が投与される、請求項40に記載の方法。
47.また、一又は複数の化学療法剤又は放射線療法が前記哺乳動物に投与される、請求項40に記載の方法。
48.また、サイトカイン、細胞障害性剤又は成長阻害剤が前記哺乳動物に投与される、請求項40に記載の方法。
【0014】
(発明の詳細な記載)
本明細書中に記載又は参照の技術及び手順は一般的に十分理解されるものであり、例えばSambrook 等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd. edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載の広く利用される分子クローニング方法論などの、当分野の技術者による従来の方法論を用いて通常行われるものである。好ましくは、市販のキットや試薬の使用を伴う手順は、特に明記しない限り、プロトコル及び/又はパラメータを定義する製造者に従って一般的に行われる。
本方法やアッセを開示する前に、本発明は、ここに記載の特定の方法論、プロトコル、細胞株、動物種や属、コンストラクト及び試薬に限定されるものではなく、変更されてもよいことを理解されたい。また、本明細書中で用いる用語は特定の実施態様のみを開示するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の権利範囲を限定するものでないことを理解されたい。
【0015】
本明細書で用いられる及び添付の特許請求の範囲中の単数形「a」、「and」及び「the」には、明らかな記載がない限り複数形も含まれる。ゆえに、例えば「一般的な変更」なる用語にはは複数の変更が含まれ、「プローブ」なる用語は一ないし複数のプローブ及び当分野の技術者に公知のその等価物及び前述のものを言及する。
本明細書中で引用するすべての出版物は、該出版物が引用される方法及び/又は材料を開示及び記載するために、出典明記によって本明細書中に組み込まれる。本明細書中で引用する出版物は、本出願の提出日前の開示について言及するものである。発明者等は、早い優先日又はより前の発明日のために先行する出版物に権利が与えられないことが認められると解釈されるものではない。さらに、実際の出版日は明記されているものと異なり、個々に検証が必要であろう。
【0016】
I.定義
「Apo2L/TRAIL」、「Apo-2L」、及び「TRAIL」という用語は、図1に示されたアミノ酸配列のアミノ酸残基114-281、95-281、残基92-281、残基91-281、残基41-281、残基15-281、又は残基1-281、並びに上記配列の生物活性な断片、欠失、挿入又は置換変異体を含むポリペプチド配列を称するために、ここでは使用される。一実施態様において、ポリペプチド配列は、図1の残基114-281を含み、場合によっては図1の残基114-281からなる。場合によっては、ポリペプチド配列は、図1の残基92-281又は残基91-281を有する。Apo-2Lポリペプチドは、図1に示す天然のヌクレオチド配列によりコードされ得る。場合によっては、残基Pro119(図1)をコードするコドンは、「CCT」又は「CCG」であってよい。他の一実施態様では、断片又は変異体は生物学的に活性であり、列挙されたApo2L/TRAIL配列の何れかと、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、そして更により好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。場合によっては、Apo2L/TRAILポリペプチドは、図1にて提供されるコード化ポリヌクレオチド配列と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列によりコードされる。本定義は、少なくとも一の天然アミノ酸がアラニン残基によって置換された、Apo2L/TRAILの置換変異体を包含する。Apo2L/TRAILの特定の置換変異体は、少なくとも一のアミノ酸がアラニン残基で置換されたものを包含する。これらの置換変異体には、例えば「D203A」;「D218A」及び「D269A」として同定されているものが含まれる。この命名は、(図1に示されるの番号を用いて)位置203、218及び/又は269で、アスパラギン酸残基がアラニン残基によって置換された、Apo2L/TRAIL変異体を同定するのに使用される。場合によっては、Apo2L変異体はPCT出願国際公開第01/00832号に公開された表1に列挙されている、一又は複数のアラニン置換基を含有していてもよい。置換変異体には、2001年1月4日に公開されている国際公開第01/00832号の表1において同定されている、一又は複数の残基置換が含まれる。また本定義は、組換え又は合成法により調製されるか、又はApo2L/TRAIL供給源から単離された、天然配列Apo2L/TRAILも包含する。本発明のApo2L/TRAILには、PCT出願国際公開第97/25428号及び国際公開第97/01633号に開示されたApo2L/TRAIL又はTRAILと称されるポリペプチドも含まれる。「Apo2L/TRAIL」又は「Apo2L」なる用語は、一量体、二量体又は三量体形態のポリペプチドを含む、Apo2L/TRAIL形態のものを一般的に称するために使用される。特に記載しない限りは、Apo2Lに記載されているアミノ酸残基の全てのナンバリングが、図1のナンバリングに使用されている。例えば「D203」又は「Asp203」は、図1に付与された配列の位置203にあるアスパラギン酸残基を意味する。
【0017】
「Apo2L/TRAIL細胞外ドメイン」又は「Apo2L/TRAIL ECD」なる用語は、膜貫通及び細胞質ドメインが本質的にないApo2L/TRAILの形態を称する。通常、ECDはこのような膜貫通及び細胞質ドメインを1%未満、好ましくはこのようなドメインを0.5%未満有している。本発明のポリペプチドとして同定される任意の膜貫通ドメイン(一又は複数)は、疎水性ドメインのタイプのものを同定するのに、当該分野で常套的に使用されている基準に従い同定されると理解されるであろう。膜貫通ドメインの正確な境界は多様であるが、多くの場合は、最初同定されたドメインのいずれかの末端において、約5アミノ酸を超えないと思われる。好ましい実施態様において、ECDは、膜貫通及び細胞質又は細胞内ドメインのない(膜に結合していない)ポリペプチドの、可溶性の細胞外ドメイン配列からなる。Apo-2L/TRAILの特定の細胞外ドメインは、PCT出願国際公開第97/01633号及び国際公開第97/25428号に記載されている。
「Apo2L/TRAIL単量体」又は「Apo2L単量体」なる用語は、Apo2Lの細胞外ドメイン配列の共有鎖を称する。
「Apo2L/TRAIL二量体」又は「Apo2L二量体」なる用語は、ジスルフィド結合を介して共有結合に連結した2つのApo-2Lモノマーを称する。ここで使用される場合の用語には、独立したApo2L二量体、及び三量体形態のApo2L内にある二量体(すなわち、互いに結合した、第2のApo2L単量体)が含まれる。
「Apo2L/TRAIL三量体」又は「Apo2L三量体」なる用語は、非共有結合している3つのApo2L単量体を称する。
「Apo2L/TRAIL凝集体」なる用語は、自己結合した高級オリゴマー性形態のApo2L/TRAIL、例えばApo2L/TRAIL三量体、さらには六量体及びナノ量体(nanomeric)の形態のApo2L/TRAILを形成するものを称するために使用する。Apo2L/TRAIL単量体、二量体又は三量体(又は他の凝集体)の存在性及び量の決定は、当該分野で公知の方法及びアッセイ(市販されている物質を使用)、例えば天然サイズ排除HPLC(「SEC」)、ドデシル硫酸ナトリウムを使用する変性サイズ排除(「SDS-SEC」)、逆相HPLC、キャピラリー電気泳動によりなされ得る。
【0018】
「Apo-2リガンドレセプター」は、当分野では、図2及び3それぞれに示すポリヌクレオチド及びポリペプチド配列を有する「DR4」及び「DR5」として称されるレセプターを含む。Panらにより、「DR4」と呼ばれるTNFレセプターファミリーのメンバーが開示されている(Pan等, Science, 276:111-113, 1997年;また、1998年7月30日公開のWO98/32856;1999年7月29日公開の国際公報99/37684;2000年12月7日公開の国際公報00/73349;2002年8月13日発行の米国特許第6,433,147号;2002年10月8日発行の米国特許第6,461,823号及び、2002年1月29日発行の米国特許第6,342,383号を参照)。Sheridan等によるScience, 277:818-821(1997年)及びPan等によるScience, 277:815-818(1997年)には、Apo2L/TRAILの他のレセプターが開示されている(1998年11月19日公開の国際公報98/51793;1998年9月24日公開の国際公報98/41629も参照)。このレセプターはDR5と称される(あるいは、該レセプターはApo−2;TRAIL−R、TR6、Tango−63、hAPO8、TRICK2又はKILLERとも称される;Screaton等, Curr. Biol., 7:693-696, 1997年;Walczak等, EMBO J., 16:5386-5387, 1997年;Wu等, Nature Genetics, 17:141-143, 1997年;1998年8月20日公開の国際公報98/35986;1998年10月14日公開の欧州特許第870,827号;1998年10月22日公開の国際公報98/46643;1999年1月21日公開の国際公報99/02653;1999年2月25日公開の国際公報99/09165;1999年3月11日公開の国際公報99/11791;2002年8月13日公開の米国公開特許2002/0072091;2001年12月7日公開の米国公開特許2002/0098550;2001年12月6日発行の米国特許第6,313,269号;2001年8月2日公開の米国公開特許2001/0010924;2003年7月3日公開の米国公開特許2003/01255540;2002年10月31日公開の米国公開特許2002/0160446、2002年4月25日公開の米国公開特許2002/0048785;2003年5月27日発行の米国特許第6,569,642号;2000年6月6日発行の米国特許第6,072,047号;2003年11月4日発行の米国特許第6,642,358号参照)。上記のように、Apo−2Lの他のレセプターはDcR1、DcR2及びOPGを含む(Sheridan等., 上掲;Marsters 等., 上掲;及びSimonet 等.,上掲)。ここで用いられるところの「Apo−2Lレセプター」という用語は、天然配列レセプターとレセプター変異体を包含する。これらの用語はヒトを含む様々な哺乳動物で発現されるApo−2Lレセプターを包含する。Apo−2Lレセプターは、多くのヒト組織株で自然に起こるように内在的に発現されてもよいし、あるいは組換え又は合成方法によって発現されてもよい。「天然配列Apo−2Lレセプター」には、天然由来のApo−2Lレセプターと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。ゆえに、天然配列Apo−2Lレセプターは、任意の動物由来の天然に生じるApo−2Lレセプターのアミノ酸配列を持ちうる。そのような天然配列Apo−2Lレセプターは、天然から単離してもよいし、組み換え又は合成手法により生成することもできる。特に、「天然配列Apo−2Lレセプター」なる用語は、天然に生じる切断型又は分泌型のレセプター(例えば、可溶型を含む、さらには細胞外ドメイン配列)、天然に生じる変異型(例えば、選択的スプライシング型)、及び天然に生じる対立変異型を包含する。レセプター変異型は天然配列Apo−2Lレセプターの断片又は欠損変異型を含みうる。図3Aは1998年11月19日公開の国際公報98/51793に公開されたヒトDR5の411アミノ酸配列を示す。ヒトDR5の転写スプライシング変異体は当分野で公知である。このDR5スプライシング変異体は、1998年8月20日に公開の国際公報98/35986に公開された図3B及び図3Cに示すヒトDR5の440アミノ酸配列をコードする。
【0019】
「デスレセプター抗体」は、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーであり、アポトーシスをシグナル伝達することができるデスドメインを含有するレセプターに対する抗体(一ないし複数)を一般的に意味するものであり、このような抗体にはDR5抗体及びDR4抗体が含まれる。
「DR5レセプター抗体」、「DR5抗体」又は「抗DR5抗体」とは、広義で、図3Aに示される1−411配列又は図3B−3Cに示される1−440配列等のDR5レセプター、或いはその細胞外ドメインの少なくとも一形態に結合する抗体を意味する。場合によっては、DR5抗体は異種性配列又は分子に融合又は結合する。好ましくは、異種性配列は抗体がより高次の複合体又はオリゴマー複合体を形成させる又は形成を補助する。場合によっては、DR5抗体はDR5レセプターに結合するが、任意の付加的なApo-2Lレセプター(例えばDR4、DcR1又はDcR2)と結合又は交差反応をしない。場合によっては、抗体はDR5シグナル伝達活性のアゴニストである。
場合によっては、本発明のDR5抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.1nMから約20mMの範囲の濃度でDR5レセプターに結合する。場合によっては、本発明のDR5抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.6nMから約18mMのIC50値を示す。
【0020】
「DR4レセプター抗体」、「DR4抗体」又は「抗DR4抗体」とは、広義で、DR4レセプター又はその細胞外ドメインの少なくとも一形態に結合する抗体を意味する。場合によっては、DR4抗体は異種性配列又は分子に融合又は結合する。好ましくは、異種性配列は抗体がより高次の複合体又はオリゴマー複合体を形成させる又は形成を補助する。場合によっては、DR4抗体はDR4レセプターに結合するが、任意の付加的なApo-2Lレセプター(例えばDR5、DcR1又はDcR2)と結合又は交差反応をしない。場合によっては、抗体はDR4シグナル伝達活性のアゴニストである。
場合によっては、本発明のDR4抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.1nMから約20mMの範囲の濃度でDR4レセプターに結合する。場合によっては、本発明のDR4抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.6nMから約18mMのIC50値を示す。
「アゴニスト」なる用語は広義で用いられ、Apo2L/TRAIL、DR4ないしDR5のインビトロ、インサイツないしインビボでの一以上の生物学的活性を部分的又は完全に亢進、刺激又は活性化する任意の分子を含む。このような生物学的活性の例には、Apo2L/TRAILの、DR4又はDR5への結合、アポトーシス並びに更に文献に報告されているものが含まれる。アゴニストは直接的ないし間接的形式で機能しうる。例えば、アゴニストは、レセプター活性化又はシグナル伝達を起こすDR4ないしDR5への直接的結合の結果としてのインビトロ、インサイツないしインビボでのDR4ないしDR5の一以上の生物学的活性を部分的又は完全に亢進、刺激又は活性化するために機能するかもしれない。また、アゴニストは、例えば、DR4又はDR5の活性化ないしシグナル伝達を引き起こす他のエフェクター分子を刺激する結果としてのDR4ないしDR5のインビトロ、インサイツないしインビボでの一以上の生物学的活性を部分的又は完全に亢進、刺激又は活性化するために間接的に機能するかもしれない。アゴニストは、DR4ないしDR5の活性化ないし活性を亢進又は増強するように間接的に機能するエンハンサー分子として働きうることが考えられる。例えば、アゴニストは哺乳動物の内因性のApo−2Lの活性を亢進しうる。例えば、これはDR4ないしDR5をプレ複合体化することによって、ないし、DR4ないしDR5レセプターとのそれぞれのリガンドの複合体を安定化することによって達成することができる(Apo−2LとDR4ないしDR5との天然複合体型を安定化するなど)。
【0021】
本出願中で用いられる「バイオマーカー」なる用語は一般的に、遺伝子、タンパク質、糖質構造又は糖脂質を含む分子を指し、哺乳動物組織又は細胞中ないしは組織又は細胞上での該分子の発現は標準的な方法(又は本明細書中で開示される方法)によって検出されうるものであり、哺乳動物細胞又は組織のApo2L/TRAILないしはデスレセプター抗体への感受性を予測するものである。本発明で考慮されるこのようなバイオマーカーには、限定するものではないが、タンパク質のGalNac−Tファミリーに含まれる分子が含まれる。遺伝子及びタンパク質のヒトN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(「GalNac−T」)ファミリーのメンバーが開示されており(例えば、Hang等、"The chemistry and biology of mucin-type O-linked glycosylation initiated by the polypeptide N-acetyl-galactosaminyltransferases", Bioorganic & Medicinal Chemistry (2005年5月www.sciencedirect.comにおいて閲覧可能)、及びそれに引用される参考文献;Weng等、BBRC、300:738-744(2003)及びそれに引用される参考文献参照)、タンパク質におけるO結合型糖鎖の数及び位置の決定に機能すると考えられる。場合によっては、このようなバイオマーカーの発現は、コントロール組織又は細胞試料に観察されるものよりも高く測定される。場合によっては、例えば、このようなバイオマーカーの発現は、遺伝子発現マイクロアレイ、定量的PCR又は免疫組織化学(IHC)アッセイを用いて決定される。場合によっては、GalNac−T14又はGalNac−T3等のGalNac−Tバイオマーカーの発現は、Affymetrix U133Pマイクロアレイ分析によって測定する場合、少なくとも750のレベルで検出され、定量的PCRを用いて該バイオマーカーの発現を検出する場合、コントロール組織又は細胞試料に観察されるものの少なくとも500倍、好ましくは少なくとも1000倍が試験組織又は細胞試料において検出される。
【0022】
本明細書において使用される「UDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチド N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ−T14」、「pp−GalNac−T14」、「GalNac−T14」、「GALNT14」は、N−末端細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、基部領域及び触媒ドメインを含む分子のGalNac−Tファミリーの特徴的性質を有する2型膜タンパク質を指す。随意的実施態様では、ヒトGalNac−T14分子は、図4Aに示すように、552アミノ酸タンパク質をコードする1659の塩基対を含む。完全長ヒトcDNAは、受入番号AB078144としてGenBankに寄託されている。Wang等、BBRC, 300:738-744 (2003)に開示されているように、エクソン2、3、及び/又は4等の特定のエクソンを含む(又は含まない)GalNac−T14のスプライスされたアイソフォームが同定されている。本発明は、そのようなGalNac−T14の様々なアイソフォームのいずれかの発現を試験すること、及びそのようなアイソフォームのいずれか一つの発現によって、哺乳動物の組織又は細胞試料の、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体に対する感受性を予測することを考慮する。
本明細書において使用される「UDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチド N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ−T3」、「pp−GalNac−T3」、「GalNac−T3」、「GALNT3」は、N−末端細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、基部領域及び触媒ドメインを含む分子のGalNac−Tファミリーの特徴的性質を有する2型膜タンパク質を指す。随意的実施態様では、ヒトGalNac−T3ポリペプチドは、図4Bに示すアミノ酸配列を含む。GalNac−T3はさらにBennett等、J. Biol. Chemistry, 271:17006-17012 (1996)に記載されている。
【0023】
「被検体」又は「患者」は、ヒトを含む、治療が望まれる任意の単一の被検体を意味する。また、臨床試験に用いられる疾患の臨床的な特徴を全く示さない任意の被検体、又は疫学的な研究に用いられる被検体、又はコントロールとして用いられる被検体も被検体に含まれる。
本明細書中で用いられる「哺乳動物」なる用語は、哺乳動物と分類される任意の哺乳動物、例えばヒト、ウシ、ウマ、イヌ及びネコを意味する。本発明の好適な実施態様では、哺乳動物がヒトである。
「組織又は細胞試料」は、被検体又は患者の組織から採取された同種の細胞の集まりを意味する。組織又は細胞試料の供給源は、新鮮な、凍結された及び/又は保存されていた臓器や組織試料又は生検又は吸引による固形組織;血液又は血液成分;大脳脊髄液、羊水、腹水又は間質液などの体液;被検体の妊娠期又は発生期の任意の時期の細胞であってもよい。また、組織試料は原発性又は培養した細胞又は細胞株であってもよい。場合によっては、組織又は細胞試料は原発性腫瘍又は転移性腫瘍から得られる。組織試料は、防腐剤、抗凝血物質、バッファ、固定液、栄養分、抗生物質など天然の組織にはもともと混在していない化合物を含んでもよい。
【0024】
本明細書中の組織試料の「切断部分」とは、組織試料の一部又は一片、例えば組織試料から切り出した組織又は細胞の一薄片を意味する。組織試料の複数の切断部分は採取され、本発明の分析に供されうることが理解される。これにより、本発明は、組織試料の同じ切断部分は形態学的及び分子的レベルで分析されるか、タンパク質及び核酸の両方に関して分析される方法を含む。
「相関」又は「相関する」は、任意の方法で、第一の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果を、第二の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果と比較することを意味する。例えば、第二のプロトコルを行う際に第一の分析又はプロトコルの結果を用いてもよいし、第一の分析又はプロトコルの結果を用いて、第二の分析又はプロトコルを行うかどうかを決定してもよい。本明細書の様々な実施態様に関し、mRNA発現等の分析アッセイの結果、又はIHCの結果を用いて、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体を使用する特定の治療計画を実行するかどうかを決定してもよい。
「核酸」は、任意のDNA又はRNAを含むことを意味する。例えば、染色体性核酸、ミトコンドリア核酸、ウイルス核酸及び/又は細菌性核酸が組織試料中に存在する。「核酸」なる用語は、二本鎖の核酸分子の何れか又は両鎖を包含し、原型の核酸分子の任意の断片又は部分を包含する。
【0025】
「遺伝子」は、タンパク質をコードする又は転写する、あるいは他の遺伝子発現を調節する際に機能的に働く任意の核酸配列又はその一部を意味する。遺伝子は、機能的なタンパク質のコード化を担うすべての核酸又はタンパク質のコードあるいは発現を担う核酸の一部のみを構成してもよい。核酸配列は、エクソン、イントロン、開始領域又は終末領域、プロモータ配列、他の調節配列又は遺伝子に近接する特定の領域内に遺伝的な異常を含有してもよい。
本明細書中で用いられる「標識」なる用語は、核酸プローブや抗体などの試薬に直接的又は間接的にコンジュゲートないしは融合され、コンジュゲートないしは融合した試薬の検出を容易にする化合物又は組成物を指す。標識自体が検出可能なもの(例えば放射性標識又は蛍光性標識)であってもよく、酵素標識の場合、検出可能な基質化合物ないしは組成物の化学的変化を触媒するものであってもよい。
【0026】
ここで「抗体」なる用語は、広い意味で用いられ、特に無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成した多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を有する限りにおける抗体断片の範囲にわたる。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくはその抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片;ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多特異性抗体が含まれる。
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間のインターフェイスを形成すると考えられている。
【0027】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域又は相補性決定領域と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つの高頻度可変領域により連結されたβシート配置を主にとる4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近接して結合され、他の鎖の高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, Sequence of Proteins ofImmunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, BEthesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞媒介性障害活性(ADCC)への抗体の関与を示す。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab')2断片を生じ、それは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
【0028】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つの高頻度可変領域は相互に作用してVH-VL二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つの高頻度可変領域が抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つの高頻度可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一つの遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')2抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0029】
任意の脊椎動物種からの抗体(イムノグロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、抗体は異なるクラスが割り当てられる。無傷の抗体には5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、更にそれらは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等のサブクラス(イソ型)に分かれる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。イムノグロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、FvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはscFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。scFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照のこと。
【0030】
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を指し、その断片は同一のポリペプチド鎖(VH−VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)が結合してなる。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成が可能であるリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディーは、例えば、欧州特許第404,097号;国際公報93/11161;及びHollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:6444-6448 (1993)に更に詳細に記載されている。
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる自然に生じる可能性がある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体はハイブリドーマ培養により合成され、他のイムノグロブリンの混入がないという利点がある。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要として構築したものであることを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4816567号を参照のこと)。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks等, J. Mol. biol. 222: 581-597 (1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから作成することもできる。
【0031】
ここで言うモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致する又は類似する重鎖及び/又は軽鎖の一部を含むものであり、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致する又は類似するものである(米国特許第4,816,567号;及びMorrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。ここで対象とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル又はカニクイザルなどの旧世界サル)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む(米国特許第5,693,780号)。
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒトイムノグロブリン(免疫グロブリン)に由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、ヒト免疫グロブリン配列の高頻度可変ループがFRのすべて又は実質的にすべてである少なくとも一又は一般的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、一般的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0032】
ここで使用されるところの「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合に寄与する抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は一般には「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)、及び重鎖可変ドメインの31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))及び/又は「高頻度可変ループ」からの残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含む。「フレームワーク」又は「FR」残基はここで定義するように高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
目的の抗原に「結合する」抗体とは、抗体が抗原発現細胞を標的とした治療薬又は診断剤として有用となるように十分な親和性及び/又は結合活性を有して抗原に結合することができるものである。
ここでの目的のための「免疫治療」とは、抗体を用いた哺乳動物(好ましくはヒト患者)の治療方法を意味し、この抗体はコンジュゲートされたもの又は「ネイキッド」抗体でもよいし、又は一又は複数の細胞障害性剤などの薬剤やヘテロ分子とコンジュゲート又は融合して、それによって「免疫コンジュゲート」を生成してもよい。
【0033】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分は、抗体の診断又は治療への使用を妨害しうる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様においては、抗体は、(1)ローリー(Lowry)法により定量して、抗体が95重量%より多くなるほど、最も好ましくは99重量%より多くなるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るのに十分な程度まで、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるように十分な程度まで精製される。抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
「有効量」という用語は、疑われる疾患又は症状を予防、寛解又は治療するのに効果的な薬剤(例えば、Apo2L/TRAIL、抗DR4抗体又は抗DR5抗体など)の量を意味する。
ここで使用される「処置する」又は「処置」又は「治療」とは、治癒的治療、予防的治療又は防止的治療を称する。連続的治療又は投与とは、一又は複数の日数、治療を中断することなく、少なくとも毎日であることを基本とし治療を行うことを称する。断続的治療又は投与、もしくは断続的な方法での治療又は投与とは、連続させることなく、むしろ本質的には周期的に治療することを称する。
【0034】
「サイトカイン」という用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。そのようなサイトカインの例は、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH)のような糖タンパク質ホルモン;肝増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミューラー阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子;血小板増殖因子;TGF-α及びTGF-βのようなトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子I及びII;エリスロポイエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロン、例えばインターフェロン−α、−β、−γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);及び顆粒球-CSF(G-CSF);IL-1、IL-2、IL-3、 IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、 IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-13、IL-17等のインターロイキン(IL);及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。ここで使用される場合は、サイトカインなる用語は天然源由来あるいは組換え細胞培養由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物的に活性な等価物を含む。
ここで用いられる「細胞障害剤」という用語は、細胞の機能を阻害し又は妨害し、及び/又は細胞の破壊を引き起こす物質を称する。この用語は放射性アイソトープ(例えば、I131、I125、Y90及びRe186)、化学療法剤、及び細菌性、真菌性、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素等の毒素又はその断片を含むことが意図されている。
【0035】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXANTM)のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類、;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin );デュカロマイシン(duocarmycin )(合成類似体、KW-2189及びCBI-TMIを含む); エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin );サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin );クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、ラニムスチン;エネジイン(enediyne) 抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンフィーI1、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照のこと;ダイネミシンA(dynemicinA)を含むダイネミシン(dynemicin);ビスホスホナート類、例えばクロドロナート;エスペラマイシン(esperamicin); 同様にネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン(enediyne) 抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カリミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトロビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(アドリアマイシンTM)(モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン(mitomycins)、例えばマイトマイシンC、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)のようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルラシル(eniluracil);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン(ansamitocin )のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリデンA(roridin A)及びアングイデン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、及びドキセタキセル(タキソテア(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲンシタビン(gemcitabine)(GemzarTM);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;ミトキサントン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン(navelbine)(NavelbineTM);ノバントロン(novantron);テニポシド;エダトレキサート(edatrexate);ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CTP-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸等のレチノイド類;カペシタビン(capecitabine);並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体が含まれる。また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤、例えばタモキシフェン(NolvadexTMを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン(droloxifene)、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びトレミフェン(FarestonTM)を含む抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERMs);副腎におけるエストロゲン生成を調節する、アロマターゼ酵素を阻害するアロマターゼインヒビター、例えば4(5)-イミダゾール類、アミノグルテチミド、酢酸メゲステロール(MegaceTM)、エグゼメスタン(exemestane)、ホルメスタン(formestane)、ファドロゾール、ボロゾール(vorozole)(RivisorTM)、レトロゾール(letrozole)(FemaraTM)、及びアナストロゾール(anastrozole)(ArimidexTM);及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びに上記のものの製薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体が含まれる。
【0036】
ここで使用される場合の「増殖阻害剤」なる用語は、インビトロ又はインビボのいずれかにおいて、ここで同定された任意の遺伝子が発現する細胞、特に癌細胞の成長を阻害する化合物又は組成物を称する。よって、増殖阻害剤とは、S期において、このような細胞が発現する細胞のパーセンテージを有意に低減させるものである。増殖阻害剤の例には、細胞分裂周期の進行をブロックする薬剤(S期以外の場所において)、例えばG1停止及びM期停止を誘発する薬剤が含まれる。伝統的なM期ブロッカーには、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、TAXOL、及びトポIIインヒビター、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。G1を停止させるこれらの薬剤、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニソン、ダカーバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-CがS期停止に溢流する。更なる情報は、Murakamiらにより「細胞分裂周期の調節、オンコジーン、及び抗新生物薬」と題された、癌の分子的基礎、Mendelsohn及びIsrael編、第1章(WB Saunders;Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。
「アポトーシス」及び「アポトーシス活性」という用語は広義に使用され、典型的には、細胞質の凝集、原形質膜の微絨毛の喪失、核の分節化、染色体DNAの分解又はミトコンドリア機能の喪失を含む一又は複数の特徴的な細胞変化を伴う、哺乳動物における細胞死の規則的又はコントロールされた形態を称する。この活性は、当該分野で公知の、例えば細胞生死判別アッセイ(例えばアラマーブルーアッセイ又はMTTアッセイ)、FACS分析、カスパーゼ活性化、DNA断片化(例えば、Nicolettiら, J. Immunol. Methods, 139:271-279(1991)を参照)、ポリ-ADPリボースポリメラーゼ、「PARP」、切断アッセイにより、決定し測定することができる。
【0037】
ここで使用される場合、「疾患」なる用語は、本明細書に記載の組成物による治療により利益を得る任意の症状を指し、有効量のApo2L/TRAIL、抗DR4抗体、及び/又は抗DR5抗体により治療されうる任意の疾患又は疾病を含む。これには、慢性及び急性の疾患、並びに問題の疾患に哺乳動物を罹患させやすくする病理状態が含まれる。ここで治療される疾患の非限定的例には、良性及び悪性の腫瘍;炎症、血管由来及び免疫学的疾患、自己免疫疾患、関節炎(関節リウマチを含む)、多発性硬化症、及びHIV/AIDSが含まれる。
「癌」、「癌性」又は「悪性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を称するか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫、及び肉腫が含まれる。このような癌のより特定の例には、扁平上皮細胞癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、消化器系(管)癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、メラノーマ、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓癌、多形成膠芽腫、子宮頸癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞腫(hepatoma)、乳癌、結腸癌、及び頭頸部の癌が含まれる。
【0038】
「免疫関連疾患」という用語は、哺乳動物の免疫系の成分が、哺乳動物の病理学的状態の原因であるか、媒介又は寄与するものである疾患を意味する。また、免疫反応の刺激又は介在により疾患の進行に改善された効果が付与される疾患も含まれる。この用語には、自己免疫疾患、免疫媒介炎症疾患、非免疫媒介炎症疾患、感染症、及び免疫欠損症が含まれる。そのうちの一部が免疫又はT細胞媒介であり、本発明によって治療することが可能な免疫関連及び炎症性疾患の例には、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎、若年型慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症(強皮症)、特発性炎症性筋疾患(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間ヘモグロビン尿症)、自己免疫性血小板減少症(溶血性血小板減少性紫斑病、免疫媒介血小板減少症)、甲状腺炎(バセドウ病、橋本甲状腺炎、若年型リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、糖尿病、免疫媒介腎疾患(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎)、中枢及び末梢神経系の脱髄疾患例えば多発性硬化症、特発性脱髄多発神経障害又はギラン・バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄性多発神経障害、肝胆道疾患例えば感染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎、及び他の非肝親和性ウイルス)、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、及び硬化性胆管炎、炎症性腸疾患等の炎症性及び線維性肺疾患(潰瘍性大腸炎:クローン病)、グルテン過敏性腸疾患、及びウィップル病、水疱性皮膚病を含む自己免疫又は免疫媒介皮膚疾患、多形滲出性紅斑及び接触性皮膚炎、乾癬、アレルギー性疾患例えば喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症及び蕁麻疹、肺の免疫疾患例えば好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性肺炎、拒絶反応及び移植片対宿主病を含む移植関連疾患が含まれる。感染症疾患には、AIDS(HIV感染)、A、B、C、D及びE型肝炎、細菌感染症、真菌感染症、原虫感染症及び寄生虫症が含まれる。
【0039】
本明細書の「自己免疫疾患」という語は広義で使用され、一般的な意味で、自己の組織成分に対する個体の体液性又は細胞性免疫反応から正常又は健康な組織の破壊が生じる、哺乳動物の障害、又は状態を指す。例として、これらに限定するものではないが、エリテマトーデス、甲状腺炎、リウマチ様関節炎、乾癬、多発性硬化症、自己免疫糖尿病、及び炎症性腸疾患(IBD)が挙げられる。
ここで使用される場合の「タグ化」なる用語は、「タグポリペプチド」に融合した、抗体、又はポリペプチドを含有するキメラ分子を称す。タグポリペプチドは、その抗体が産生するエピトープを提供するか、又はオリゴマー化(例えば、ロイシンジッパードメインを有するペプチドと生じるような)等の他のいくつかの機能を提供するのに十分な残基を有しているが、その長さは、一般的に抗体又はポリペプチドの活性を阻害しないよう十分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、タグ特異性抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20のアミノ酸残基)を有する。
【0040】
「二価の金属イオン」なる用語は、2つの正電荷を有する金属イオンを称する。限定するものでないが、二価の金属イオンの例には、亜鉛、コバルト、ニッケル、カドミウム、マグネシウム及びマンガンが含まれる。使用され得るこのような金属の特定の形態には塩の形態(例えば、製薬的に許容可能な塩の形態)、上述した二価の金属イオンの塩化物、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩及び硫酸塩の形態のものが含まれる。場合によっては、本発明で使用される二価の金属イオンは亜鉛、好ましくは硫酸亜鉛又は塩化亜鉛等の塩の形態をしている。
「単離された」とは、ここで開示された種々のペプチド又はタンパク質を記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたペプチド又はタンパク質を意味する。その自然環境の汚染成分とは、タンパク質の診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ペプチド又はタンパク質は、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるように十分なほど、又は(3)質量分光分析又はペプチドマッピング技術による均一性が得られるように十分なほど精製される。その自然環境の少なくとも一の成分が存在しないため、単離された材料には、組換え細胞内のインサイツのペプチド又はタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたペプチド又はタンパク質は少なくとも一の精製工程により調製される。
【0041】
ここで同定されている配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、参照配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の知る範囲にある種々の方法により達成可能であり、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。ここでの目的のために、パーセントアミノ酸配列同一性値は、ジェネンテク社によって作成され、ソースコードは米国著作権庁, Washington D.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている配列比較コンピュータプログラムALINE-2を用いて得ることができる。ALIGN-2プログラムはジェネンテク社、South San Francisco, CAを通して公的に入手可能である。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェント」は、通常、当業者によって容易に決定され、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなればなる程、適切なアニーリングのために温度を高くする必要があり、プローブが短くなればなる程、温度を低くする必要が生じる。ハイブリダイゼーションは、一般的に、相補鎖がその融点より低い環境に存在する場合、変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション可能な配列との間の所望の相同性の程度が高くなると、使用できる相対温度が高くなる。その結果、より相対的に高い温度は、反応条件をよりストリンジェントにするが、低い温度はストリンジェントを低下させる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェントの更なる詳細及び説明は、Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照のこと。
【0042】
ここで定義される「高度のストリンジェント条件」は、(1)洗浄に低イオン強度及び高温度を用いる;50℃で、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリダイゼーション中に変性剤を用いる;42℃で、50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムを用いるもの;又は(3)42℃で、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%のデキストラン硫酸を用いて、42℃で0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)及び55℃の50%ホルムアミド中にて洗浄、次いでEDTAを含む0.1×SSCにて55℃で高ストリンジェントな洗浄を行うことによって同定され得る。
「中程度のストリンジェント条件」は、Sambrook等, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, New York:Cold Spring Harbor Press, 1989に記載されているように同定され、20%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%デキストラン硫酸、及び20mg/mLの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中にて37℃で終夜インキュベーション、次いで1×SSC中にておよそ37−50℃でのフィルターの洗浄を含む。当業者であれば、プローブ長等の因子に適合させるために必要に応じて、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかを認識するであろう。
【0043】
「プライマー」又は「複数のプライマー」なる用語は、相補的なRNA又はDNA標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズして、例えばポリメラーゼ連鎖反応で起こるような、ヌクレオチジルトランスフェラーゼの働きによってモノヌクレオチドからポリヌクレオチドの段階的な合成の開始点となるオリゴヌクレオチド配列を指す。
「コントロール配列」という用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を称す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に寄与するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
【0044】
「抗体依存性細胞障害活性」又は「ADCC」は、Fcレセプター(FcR)を発現する非特異的細胞障害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合した抗体を認識し、続いて標的細胞を溶解する細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血性細胞でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet, Annu.Rev.Immunol., 9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。対象分子のADCC活性を評価するためには、米国特許第5500362号又は第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイが実施されうる。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK)細胞を含む。あるいは、又は付加的に、対象分子のADCC活性は、例えばClynes等 .PNAS(USA), 95:652-656(1998)に開示されたような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。
「ヒトエフェクター細胞」とは、1つ又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。好ましくは、その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCとNK細胞が好適である。
【0045】
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを表す。好適なFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに好適なFcRは、IgG抗体(γレセプター)に結合し、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含むものであり、これらのレセプターの対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング型を含む。FcγRIIレセプターは、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)を含み、それらは、主としてその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターFcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース活性化モチーフ(ITAM)を有する。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース阻害モチーフ(ITIM)を有する(Daeron, Annu. Rev. Immunol., 15:203-234(1997)参照)。FcRはRavetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capelら, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Hasら, J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)において概説されている。将来同定されるものも含む他のFcRが、ここにおける「FcR」なる用語によって包含される。この用語は胎児への母性IgGの移動の原因である新生児レセプター、FcRnもまた含む(Guyerら, J. Immumol. 117:587 (1976)及びKimら, J. Immunol. 24:249 (1994))。本明細書中のFcRはFcγRIIIaをコードする遺伝子内に遺伝的二形性などの多型を含有し、それによってIgG1に結合するレセプターの領域内に位置するアミノ酸位置158がフェニルアラニン(F)又はバリン(V)となる。ホモ接合体バリンFcγRIIIa(FcγRIIIa-158V)は、ホモ接合体フェニルアラニンFcγRIIIa(FcγRIIIa-158F)又はヘテロ(FcγRIIIa-158F/V)レセプターと比較してインビトロでのADCC媒介を増加し、ヒトIgG1に対する親和性も高いことが示された。
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。補体活性化経路は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した分子(例えば、抗体)に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。
【0046】
II.本発明の例示的材料及び方法
本明細書に開示される発明は、哺乳動物組織又は細胞試料における一又は複数のバイオマーカーの発現の決定に関するものであり、この前記一又は複数のバイオマーカーの発現の測定により該組織又は細胞試料がApo2L/TRAILなどの薬剤及び/又は抗DR5アゴニスト抗体又は抗DR4アゴニスト抗体などのデスレセプター抗体に対して感受性であるか否かを予測するものである。該方法及びアッセイには、GalNac−T14及びGalNac−T3を含む分子のGalNac−Tファミリーのメンバーの発現を検査するものが含まれる。
上記のように、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体の影響を含む細胞死に抵抗性がある罹患したヒト細胞種類の集団がある(癌細胞の特定の集団など)。したがって、開示した方法及びアッセイは、治療中の患者にとって好ましいあるいは効果的な治療を評価する際に有用なデータ及び情報を得るために、便利で、効率的で、費用効率のよい可能性がある方法を提供すると思われる。例えば、癌又は免疫関連症状であると診断されている患者は組織又は細胞試料を得るために行われる生検を有し、該試料は様々なインビトロのアッセイによって検査され、患者の細胞がApo2L/TRAILやデスレセプター抗体などの治療的試薬に感受性であるかどうかを決定することができる。
【0047】
本発明は、哺乳動物組織又は細胞試料(癌細胞など)のApo2L/TRAILやデスレセプターアゴニスト抗体に対する感受性を予測するための方法を提供する。場合によっては、哺乳動物組織又は細胞試料が採取され、GalNac−T14の発現について試験される。前記方法は、mRNA発現、タンパク質発現を検出するアッセイ(たとえば免疫組織化学アッセイ)、及び酵素のUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ活性を検出する生化学的アッセイを含む、様々なアッセイ様式で行われうる。そのような組織又は細胞がApo2L/TRAIL及び/又はデスレセプター抗体の生物学的効果に対して感受性であることが、前記組織又は細胞における(又は前記組織又は細胞上の)それらのGalNac−T14バイオマーカーの発現の決定により予測されうる。驚くべきことに、出願人は、GalNac−T14の発現が、このような組織及び細胞のApo2L/TRAIL及びデスレセプターアゴニスト抗体に対する感受性と相関することを発見した。
【0048】
後述するように、試料中のGalNac−T14などの様々なバイオマーカーの発現は、当分野で公知であり当業者に理解される多くの方法によって分析することができ、その方法には、免疫組織化学及び/又はウエスタンブロッティング、定量的血液ベースのアッセイ(例えば、血清ELISA)(例えば、タンパク質発現のレベルを調べるためのもの)、生化学酵素活性アッセイ、インサイツハイブリダイゼーション、mRNAのノーザン分析及び/又はPCR分析、及びゲノムのサザン分析(例えば、遺伝子欠損又は遺伝子増幅を調べるためのもの)、並びに遺伝子及び/又は組織アレイ分析によって行われうる多種多様なアッセイの何か一つが含まれるが、これらに限定するものではない。遺伝子の状態及び遺伝子産物を評価するための典型的なプロトコルは、例えばAusubel 等 編集, 1995, Current Protocols In Molecular Biology中のユニット2(ノーザンブロッティング)、4(サザンブロッティング)、15(イムノブロッティング)及び18(PCR分析)にみられる。
試料中のGalNac−T14の検出に関するプロトコルを、例示として以下に挙げる。
【0049】
本発明の好適な方法には、哺乳動物組織又は細胞試料中のGalNac−T14の存在について試験するあるいは検査するプロトコルが含まれる。GalNac−T14を検出するために様々な方法を用いることができ、その中には例えば免疫組織化学的分析方法、免疫沈降法、ウエスタンブロッティング分析、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞分類法(FACS)、及び免疫沈降後のMS、単糖分析などがある。例えば、組織又は試料中のGalNac−T14の発現を検出する好適な方法は、該試料を抗GalNac−T14抗体と接触させ、次いで、該試料中のGalNac−T14への抗体の結合を検出することを含む。
本発明の特定の実施態様では、試料中のGalNac−T14の発現を免疫組織化学法及び染色プロトコルを用いて検査する。組織切片の免疫組織化学的染色は、試料中のタンパク質の存在を評価ないしは検出するための確実な方法であることが示されている。免疫組織学法(「IHC」)技術は、抗体を用いて、一般的には色素生産性方法又は蛍光性方法によって、インサイツで細胞性抗原を探索して視覚化する。
【0050】
試料の調製では、哺乳動物(典型的にはヒト患者)の組織又は細胞試料を用いてもよい。試料の例として、大腸、乳房、前立腺、卵巣、肺、胃、膵臓、リンパ系及び白血球癌細胞などの癌細胞が含まれるが、これらに限定するものではない。場合によって試料には、非小細胞肺癌細胞、膵臓癌細胞又は非ホジキンリンパ腫癌細胞が含まれる。前記試料は、当分野で公知の様々な手順、限定するものではないが、外科的切除、吸引又は生検などによって採取することができる。組織は新鮮なものでも凍結したものでもよい。一実施態様では、前記試料は固定し、パラフィンなどに包埋する。
前記組織試料は従来の方法によって固定(すなわち保存)されてもよい(例として、“Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology,” 3rd edition (1960) Lee G. Luna, HT (ASCP) Editor, The Blakston Division McGraw-Hill Book Company, New York; The Armed Forces Institute of Pathology Advanced Laboratory Methods in Histology and Pathology (1994) Ulreka V. Mikel, Editor, Armed Forces Institute of Pathology, American Registry of Pathology, Washington, D.C.を参照)。当分野の技術者は、組織学的染色ないしは他の分析に供する試料の目的に応じて固定液を選択することは理解するところであろう。また、当分野の技術者は、組織試料の大きさ及び用いる固定液に応じて固定の長さを決定することも理解するであろう。実施例では、中性緩衝ホルマリン、ブアン固定液又はパラホルムアルデヒドを用いて試料を固定してもよい。
【0051】
通常、まず試料を固定し、次いで段階的に増加させたアルコールによって、脱水し、パラフィン又は他の切片溶液に浸透させて包埋し、組織試料を切断できるようにする。別法として、組織を切断して、得られた切片を固定してもよい。例として、従来の方法によって、組織試料を包埋して、パラフィンで処理してもよい(例として、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。使用されうるパラフィンの例として、Paraplast、Broloid及びTissuemayがあるが、これらに限定するものではない。組織試料を包埋すると、試料をミクロトーム等によって、切断してもよい(例として、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。この手順の例として、切片はおよそ3ミクロンからおよそ5ミクロンの範囲の厚さでよい。切断すると、いくつかの標準的な方法によって、切片をスライドに付着させてもよい。スライド接着剤の例として、シラン、ゼラチン、ポリ‐L‐リジンなどがあるが、これに限定されるものではない。例として、パラフィン包埋切片は、正に荷電したスライド及び/又はポリ‐L‐リジンでコートしたスライドに付着させてもよい。
包埋材料としてパラフィンを用いた場合、組織切片は通常、脱パラフィン化して、水に再水和させる。組織切片は、いくつかの従来の標準的な方法によって、脱パラフィン化してもよい。例えば、キシレン及び段階的に減少するアルコールを用いてもよい(例として、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。別法として、Hemo-De7(CMS, Houston, Texas)などの市販の脱パラフィン化非有機薬剤が用いられてもよい。
【0052】
場合によって、試料の調整の後に、組織切片をIHCを用いて分析してもよい。IHCは、形態学的染色及び/又は蛍光発光インサイツハイブリダイゼーションなどの付加的な技術と組み合わせて行ってもよい。IHCの直接アッセイ及び間接アッセイの2つの一般的な方法が有用である。第一のアッセイでは、標的抗原(例えばGalNac−T14)に対する抗体の結合は、直接的に測定される。この直接アッセイは、更なる抗体相互作用を必要とせずに可視化されうる酵素標識一次抗体又は蛍光タグ付加一次抗体などの標識された試薬を用いる。代表的な間接アッセイでは、コンジュゲートしていない一次抗体が抗原と結合し、次いで標識された二次抗体が一次抗体と結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートする場合、抗原を視覚化させるために色素生産性基質ないしは蛍光発生基質が加えられる。二次抗体の中には一次抗体上の異なるエピトープと反応するものもあるので、シグナルの増幅が起こる。
一般的に、免疫組織化学に使用する一次及び/又は二次抗体は、検出可能な成分にて標識されるであろう。通常、以下の種類に分類できる多くの標識が利用可能である:
【0053】
(a)ラジオアイソトープ、例えば35S、14C、125I、3H及び131I。抗体は例えばImmunology, Volumes 1 and 2, Coligen 等, 編集 Wiley-Interscience, New York, New York, Pubs. (1991)のCurrent Protocolsに記載される技術を用いて放射性同位体にて標識することができ、放射能はシンチレーション計測器を用いて測定することができる。
(b)コロイド金粒子
(c)希有土類キレート(ユウロピウムキレート)、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリセリン(phycocrytherin)、フィコシアニン又はSPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7などの市販の蛍光体及び/又は上記の何れか一ないしは複数の誘導体を含むが、これらに限定されるものではない蛍光標識。蛍光標識は、例えば、上記のImmunologyのCurrent Protocolsに開示される技術を用いて抗体にコンジュゲートすることができる。蛍光は、蛍光計を用いて定量化することができる。
(d)様々な酵素基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号にはこの概説がある。一般に、酵素は、様々な技術を用いて測定することができる色素生産性基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、分光測光法で測定することができる基質の変色を触媒するかもしれない。あるいは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変えうる。蛍光の変化を定量化する技術は上記の通りである。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起され、測定することができる(例えば化学発光計測器を用いて)か、又はエネルギーを蛍光アクセプターに与える光を発しうる。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタルアジネジオン(dihydrophthalazinediones)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環のオキシダーゼ(例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが含まれる。抗体に酵素をコンジュゲートする技術は、O'Sullivanら., Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay, in Methods in Enzym. (ed J. Langone & H. Van Vunakis), Academic press, New York, 73:147-166 (1981)に記載されている。
【0054】
酵素基質の組合せの例には、例えば以下のものが含まれる:
(i)基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)、ここで水素ペルオキシダーゼが染料前駆体(例えば、オルソフェニレン(orthophenylene)ジアミン(OPD)又は3,3',5,5'テトラメチルのベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii)色素生産性基質としてリン酸パラグラフ-ニトロフェニルを有するアルカリホスファターゼ(AP);及び
(iii)色素生産性基質(例えばp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光発生基質(例えば、4-メチルウンベリフェリル(methylumbelliferyl)-β-D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)。
多数の他の酵素基質の組合せは当業者にとって利用可能である。これらの一般的な概要については、米国特許第4,275,149号及び4,318,980を参照。標識は、抗体と間接的にコンジュゲートされることがある。これを行うための様々な技術は当分野の技術者に公知である。例えば、抗体は、ビオチンとコンジュゲートさせることができ、前述した大きな4つの分類のうちの何れかはアビジンとコンジュゲートさせることができ、その逆もまた可能である。ビオチンは選択的にアビジンと結合し、したがって、標識はこの間接的な方法で抗体にコンジュゲートさせることができる。あるいは、抗体と標識を間接的にコンジュゲートさせるために、抗体は小ハプテンとコンジュゲートさせ、前述した標識の異なるタイプのうちの1つは抗ハプテン抗体とコンジュゲートさせる。したがって、抗体と標識は間接的にコンジュゲートすることができる。
【0055】
上記の試料調製手順以外に、IHC前、IHCの間又はIHC後に組織切片の更なる処置が所望されてもよい。例えば、クエン酸塩バッファ中で組織サンプルを加熱するなどのエピトープ検索方法が実施されてもよい(例として、Leong 等 Appl. Immunohistochem. 4(3): 201 (1996)を参照)。
場合によって行うブロック処置の後に、一次抗体が組織試料中の標的タンパク質抗原と結合するような好適な条件下と十分な時間、組織切片を一次抗体に曝露させる。これを達成するための好適な条件は慣例的な実験によって決定できる。試料に対する抗体の結合の範囲は、上記の検出可能な標識の何れか一つを用いて決定される。標識は、3,3'-ジアミノベンジジンクロモゲンなどの色素生産性基質の化学変化を触媒する酵素標識(例えばHRPO)であることが望ましい。好ましくは、酵素標識は、一次抗体(例えば、一次抗体はウサギポリクローナル抗体であり、二次抗体はヤギ抗ウサギ抗体である)に特異的に結合する抗体にコンジュゲートさせる。
場合によって、GalNac−T14の発現を検出するためにIHC分析法で使用される抗体は、抗GalNac−T14抗体である。別法として、GalNac−T14と交差反応性を有するほかのGalNac−T抗原に対する抗体を使用してもよい。場合によって、抗GalNac−T14抗体はモノクローナル抗体である。
【0056】
したがって、調製される検査材料はマウントしてカバーグラスをかけてもよい。その後、例えば顕微鏡を使用してスライドの評価を行い、当分野で通常用いられる染色強度判定基準を用いてもよい。染色強度判定基準は以下の通りに評価してもよい:
表1
【0057】
一般的に、IHCアッセイの2+又はそれ以上の染色パターンスコアは、Apo2L/TRAIL又はデスレセプターアゴニスト抗体に対する哺乳動物細胞(例えば哺乳動物癌細胞)の感受性を予測するないしは示していると考えられる。
別法では、試料を、抗体-バイオマーカー複合体が形成するために十分な条件下で該バイオマーカーに特異的な抗体と接触させ、次いで該複合体を検出してもよい。バイオマーカーの存在は、多くの方法、血漿又は血清を含む多種多様な組織及び試料を検定するためのウエスタンブロッティング(免疫沈降を含んでも含まなくてもよい)及びELISA手順によって、検定してもよい。このようなアッセイ様式を用いた広範囲にわたるイムノアッセイ技術は利用可能である。米国特許第4,016,043号、同第4,424,279号及び同第4,018,653号参照。これらには、単一の部位及び2-部位の両方、あるいは非競合型の「サンドイッチ」アッセイ、並びに従来の競合的結合アッセイが含まれる。また、これらのアッセイには、標的バイオマーカーに対する標識抗体の直接結合が含まれる。
サンドイッチアッセイは最も有用なものの一つで、一般的に用いられるアッセイである。サンドイッチアッセイ技術には多くのバリエーションあり、そのすべては本発明により包含されることを目的とする。簡潔には、代表的な最近のアッセイでは、非標識抗体を固体基板上に固定して、試験する試料を結合した分子に接触させる。抗体-抗原複合体が形成されるくらいの適当な期間インキュベートした後、検出可能なシグナルを産生できるレポーター分子で標識した、抗原特異的な第二抗体を添加して、更なる抗体-抗原-標識抗体の複合体が形成されるために十分な時間インキュベートする。反応しなかった材料を洗い流し、レポーター分子により産生されるシグナルを観察することによって抗原の存在を決定する。結果は、可視的なシグナルを単純に観察したものであれば質的なものであり、バイオマーカーを既知量含有するコントロール試料と比較したものであれば量的なものである。
【0058】
前記のアッセイへのバリエーションには、試料及び標識抗体の両方を結合した抗体に同時に添加する同時アッセイなどがある。これらの技術は当分野の技術者には公知であり、多少のバリエーションが加えられることは容易に明らかであろう。代表的な近年のサンドイッチアッセイでは、バイオマーカーに対して特異性を有する第一抗体は固形表面に共有結合するか受動的に結合する。固形表面は一般的にガラス又はポリマーであり、最も一般的に用いられるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンである。固形支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートの皿、又はイムノアッセイを行うために適切な他の任意の表面の形態でもあってもよい。結合方法は従来技術において周知であり、一般に、架橋性共有結合又は物理的な吸着から成り、ポリマー-抗体複合体は試験試料の調整において洗浄される。次いで、試験される試料の分割量を固相複合体に添加し、抗体中に存在する任意のサブユニットが結合するために十分な時間(例えば、より便利であるならば2〜40分又は前夜)と適切な条件(例えば室温から40℃、例えば25℃から32℃の間)下でインキュベートする。インキュベーションの後、抗体サブユニット固相を洗浄して、乾燥させ、一部のバイオマーカーに特異的な二次抗体とともにインキュベートする。二次抗体は、分子マーカーへの二次抗体の結合を表すために用いられるレポーター分子に結合させる。
別法では、試料中の標的バイオマーカーを固定して、その後レポーター分子にて標識しているか又は標識していない特異的抗体に固定された標的を曝すことを伴う。標的の量及びレポーター分子シグナルの強度に応じて、結合した標的は、抗体で直接標識することによって、検出可能でありうる。あるいは、一次抗体に特異的な二次標識抗体を標的-一次抗体複合体に曝して、標的-一次抗体-二次抗体の三位複合体を形成させる。複合体は、レポーター分子により発されるシグナルにより検出される。本明細書中で用いられる「レポーター分子」は、その化学的性質によって、抗原と結合した抗体を検出するための分析して同定可能となるシグナルを提供する分子を意味する。この種のアッセイにおいて、最も一般的に用いられるレポーター分子は、酵素、蛍光体又は分子を含有する放射性核種(すなわち放射性同位体)及び化学発光分子である。
【0059】
酵素イムノアッセイの場合、一般にグルタールアルデヒド又は過ヨウ素酸塩によって、酵素を二次抗体にコンジュゲートさせる。しかしながら、容易に認識されるように、技術者に容易に利用可能である多種多様な異なるコンジュゲート技術が存在する。一般的に用いられる酵素には、西洋わさびペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ−中でもガラクトシダーゼ及びアルカリホスファターゼなどがある。特定の酵素と共に用いられる基質は、一般的に、対応する酵素による加水分解の際に生じる検出可能な色の変化で選択する。適切な酵素の例として、アルカリホスファターゼやペルオキシダーゼなどがある。また、上記の色素生産性基質よりも蛍光性産物を産生する蛍光性基質を用いることができる。すべての例において、酵素標識抗体を一次抗体-分子マーカー複合体に加えて、結合させ、次いで過剰な試薬を洗い流す。次いで、適当な基質を含有する溶液を抗体-抗原-抗体の複合体に加える。基質は二次抗体と結合した酵素と反応して、通常は分光測定法による量的なものでもある定性的な可視化シグナルを生じ、試料中に存在するバイオマーカーの量を表す。あるいは、フルオレセイン及びローダミンなどの蛍光性化合物を、抗体の結合能を変化させることなく抗体に化学的に結合させてもよい。特定の波長の光を照射することにより活性化されると、蛍光色素標識抗体はその光エネルギーを吸収し、それによリその分子において励起状態が誘発され、続いて光学顕微鏡を用いて目視で検出可能な特徴的な色で光が放射される。EIAでは、蛍光標識抗体は、一次抗体-分子マーカー複合体に結合できる。結合していない試薬を洗い落とした後に、残りの三位複合体を適当な波長の光に曝すと、対象の分子マーカーの存在を示す蛍光発光が観察される。免疫蛍光法及びEIA技術は何れも、当分野で非常に確立されたものである。しかしながら、放射性同位体、化学発光性分子又は生物発光性分子などの他のレポーター分子も用いられてもよい。
【0060】
また、上記の技術が、GalNac−T14の発現を検出するために用いられうることも包含される。
本発明の方法は、組織又は細胞試料中のGalNac−T14のmRNAの存在及び/又は発現を調べる手順を更に含む。細胞中のmRNAの評価方法は公知であり、例えば、相補的DNAプローブを用いたハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、標識したGalNac−T14のリボプローブを用いたインサイツハイブリダイゼーション、ノーザンブロット及び関連した技術)及び様々な核酸増幅アッセイ(例えば、GalNac−T14に特異的な相補的プライマーを用いたRT-PCR及び、他の増幅型の検査法、例えば枝分れDNA、SISBA、TMAなど)が含まれる。
哺乳動物の組織又は細胞試料は、例えばノーザン、ドットブロット又はPCR分析を用いて、GalNac−T14のmRNAについて都合よくアッセイすることができる。例えば、定量的PCRアッセイなどのRT-PCRアッセイは公知技術である。本発明の例示的実施態様では、生体試料中のGalNac−T14のmRNAの検出方法は、少なくとも一のプライマーを用いて逆転写によって、試料からcDNAを生成し、該GalNac−T14のcDNAを増幅するために、GalNac−T14のポリヌクレオチドをセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとして用いて産生された該cDNAを増幅し、そして、増幅されたGalNac−T14のcDNAの存在を検出することを含む。加えて、このような方法は、生体試料中のGalNac−T14のmRNAのレベルを決定し得る一ないし複数の工程(例えば、アクチンファミリーメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子のコントロールmRNA配列と該レベルを同時に検討すること)を含んでもよい。場合によって、増幅されたGalNac−T14のcDNAの配列を決定してもよい。
【0061】
本発明の態様の材料の実施態様では、本発明のポリヌクレオチド又はその任意の特定部分を特異的に増幅させるGalNac−T14のプライマー及びプライマー対と、本発明の核酸分子又はその任意の一部に選択的又は特異的にハイブリダイズするプローブが含まれる。プローブは、検出可能なマーカー、例えば放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤又は酵素にて標識されてもよい。このようなプローブ及びプライマーを、試料中のGalNac−T14のポリヌクレオチドの存在を検出するため、及び、GalNac−T14のタンパク質を発現する細胞を検出するための手段として用いることができる。技術者に理解されるように、多数の異なるプライマー及びプローブは、本願明細書中で示される配列に基づいて調製されてもよく、GalNac−T14のmRNAの存在及び/又はレベルを増幅、クローニング及び/又は決定するために効率的に用いてもよい。
【0062】
本発明の任意の方法には、マイクロアレイ技術によって、組織又は細胞試料中のmRNA、例えばGalNac−T14のmRNAを調べるか又は検出する手順が含まれる。核酸マイクロアレイを用いて、試験及びコントロールの組織試料から得た試験及びコントロールのmRNA試料を逆転写させて、cDNAプローブを生成するために標識する。次いで、プローブを、固形支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズさせる。アレイの配列及び各々のメンバーの位置がわかるように、アレイを設定する。例えば、特定の疾患状態において、発現されうる遺伝子の選別を、固形支持体上に配列してもよい。特定のアレイメンバーと標識プローブとのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。疾患組織の差次的遺伝子発現分析は、貴重な情報を提供する。マイクロアレイ技術は、単一の実験で何千もの遺伝子のmRNA発現性質を評価するために、核酸ハイブリダイゼーション技術及び演算技術を利用する。(2001年10月11日公開の国際公開公報01/75166を参照、(例えば米国特許第5,700,637号、同第5,445,934号及び同第5,807,522号、Lockart, Nature Biotechnology, 14:1675-1680 (1996))、アレイ製作の考察のためにはCheung, V.G.等, Nature Genetics 21(Suppl): 15-19 (1999)を参照)。DNAマイクロアレイは、ガラス又は他の基質上で染色されるか直接合成される遺伝子断片を含有する微小なアレイである。何千もの遺伝子は、通常単一のアレイ上に現れる。代表的なマイクロアレイ実験は以下の工程を伴う:1.試料から単離したRNAからの蛍光性標識標的の調製、2.マイクロアレイへの標識した標的のハイブリダイゼーション、3.洗浄、染色及びアレイのスキャニング、4.走査画像の分析、そして5.遺伝子発現性質の生成。一般に、DNAマイクロアレイには2つの主要な種類、cDNAから調製されたPCR産物を含有する遺伝子発現アレイ及びオリゴヌクレオチドアレイ(通常25〜70マー)が用いられる。アレイを形成する際に、オリゴヌクレオチドは、事前に作製して表面にスポットしても、(インサイツで)表面上で直接合成してもよい。
【0063】
Affymetrix GeneChip(登録商標)システムは、ガラス表面上でオリゴヌクレオチドを直接合成することにより製造されるアレイを含んでなる市販のマイクロアレイシステムである。プローブ/遺伝子アレイ:オリゴヌクレオチド(通常25マー)は、半導体ベースのフォトリソグラフィーと固相化学合成技術との組合せによって、ガラスウェーハ上へ直接合成される。各々のアレイは最高400,000の異なるオリゴを含有し、各々のオリゴは何百万ものコピーで存在する。オリゴヌクレオチドプローブがアレイ上の既知の位置で合成されるので、ハイブリダイゼーションのパターン及びシグナル強度は、Affymetrix Microarray Suiteソフトウェアによる遺伝子同一性と相対的な発現レベルに置き換えて解釈できる。各々の遺伝子は、一連の異なるオリゴヌクレオチドプローブによって、アレイ上に表される。各々のプローブ対は、完全一致のオリゴヌクレオチドと、不一致のオリゴヌクレオチドからなる。完全一致プローブは、特定の遺伝子に対して完全に相補的な配列を有するため、遺伝子の発現を測定する。不一致プローブは、中心塩基位置での単一塩基置換によって、完全一致プローブとは異なり、標的遺伝子転写物の結合を妨げる。これによって、完全一致オリゴを決定するシグナルの一因となるバックグラウンド及び非特異的ハイブリダイゼーションを決定できる。Microarray Suiteソフトウェアは、完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度から不完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度を減算して、それぞれのプローブセットの絶対値又は特異的強度の値を決定する。プローブは、Genbank及び他のヌクレオチド貯蔵所の当時の情報に基づいて選択される。この配列は遺伝子の3'末端の特定の領域を認識すると思われている。GeneChipハイブリダイゼーションオーブン(「回転式(rotisserie)」オーブン)を用いて、一度に最高64アレイのハイブリダイゼーションを行う。fluidics stationでは、プローブアレイの洗浄と染色が行われる。これは完全に自動化しており、4つのモジュールを含有しており、その各々のモジュールが一つのプローブアレイを保持している。各々のモジュールは、事前にプログラム化されたfluidicsプロトコルを用いたMicroarray Suiteソフトウェアにより個々に制御される。スキャナは、プローブアレイ結合した標識cRNAにより発される蛍光強度を測定する共焦点レーザー蛍光発光スキャナである。Microarray Suiteソフトウェアを有するコンピュータワークステーションがfluidics stationとスキャナを制御する。Microarray Suiteソフトウェアは、プローブアレイについて事前にプログラム化したハイブリダイゼーション、洗浄及び染色プロトコルを用いてfluidics stationを8つまで制御できる。また、ソフトウェアは、ハイブリダイゼーション強度データを得て、適切なアルゴリズムを使用して各々の遺伝子の存在/非存在情報に変換する。最後に、ソフトウェアは、比較分析によって、遺伝子発現における実験間の変化を検出して、テキストファイルに出力する。このファイルは更なるデータ分析のために他のソフトウェアプログラムに用いることができる。
【0064】
また、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)アッセイを用いて、標識プローブを使用し、バイオマーカーのmRNAの発現を検出することができる。このようなアッセイは従来技術に既知である(例えば、Kallioniemi等、1992; 米国特許第6,358,682号参照)。
また、選択されたバイオマーカーの発現は、遺伝子欠損又は遺伝子増幅を調べることにより評価されてもよい。遺伝子欠損又は遺伝子増幅は、当分野で公知の様々なプロトコルの何れか一つ、例えば、慣例的なサザンブロット、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201 5205 (1980))、ドットブロット(DNA分析)、又は適切に標識したプローブを用いたインサイツハイブリダイゼーション(例えばFISH)、適切に標識したプローブを用いた細胞遺伝学的方法又は比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)によって、測定できる。例として、これらの方法は、GalNac−T14の遺伝子の増幅の欠失を検出するために用いてもよい。
加えて、組織又は細胞試料中のバイオマーカー、例えばGalNac−T14の遺伝子のメチル化状態を調べてもよい。遺伝子5'調節領域内のCpG島の異常な脱メチル化及び/又は過剰メチル化は、不死化細胞及び形質転換細胞内でしばしば起こり、様々な遺伝子の発現が変化する。遺伝子のメチル化状態を調べるための様々なアッセイは、公知技術である。例えば、サザンハイブリダイゼーション方法では、CpG島のメチル化状態を評価するために、メチル化されたCpG部位を含有する配列を切断することができないメチル化感受性制限酵素を利用できる。加えて、MSP(メチル化特異的PCR)は、与えられる遺伝子のCpG島に存在するすべてのCpG部位のメチル化状態の分布を迅速に測定できる。この手順は、亜硫酸水素ナトリウムによるDNAの初期修飾(すべてのメチル化されていないシトシンをウラシルに変換する)の後に、メチル化されたDNA対非メチル化DNAに特異的なプライマーを用いた増幅を伴う。また、メチル化干渉を伴うプロトコルは、例えばCurrent Protocols In Molecular Biology, Unit 12, Frederick M. Ausubel et al. eds., 1995、De Marzo 等, Am. J. Pathol. 155(6): 1985-1992 (1999)、Brooks 等, Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev., 1998, 7:531-536)、及び、Lethe 等, Int. J. Cancer 76(6): 903-908 (1998)にみられる。
【0065】
また、組織又は細胞試料中のGalNac−T14の発現は、機能的なアッセイ又は活性に基づくアッセイにより検査されてもよい。例えば、組織又は細胞試料中の所定の酵素のN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ活性の存在を決定又は検出するために公知技術のアッセイを行ってもよい(例えば、Bennett等、J. Biol. Chem., 271:17006-17012 (1996); Wang等、BBRC、300:738-744 (2003); Hang等、上掲、2005年5月にwww.sciencedirect.comで閲覧可能、参照)。
本発明の方法において、組織又は細胞試料も、Apo2L/TRAILの発現又はApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体を結合する試料中のレセプターについて検査されうることが考慮される。上記及び当分野で記載されるように、現在、Apo2L/TRAILが少なくとも5つの異なるレセプター、DR4、DR5、DcR1、DcR2及びOPGと結合すると思われている。本明細書中で記載のものを含め、当分野で公知の方法を用いて、Apo2L/TRAIL、DR4、DR5、DcR1、DcR2及び/又はOPGの発現を、mRNAレベルで、そして、タンパク質レベルで検出してもよい。例として、上記のIHC技術を用いて、試料中の一ないし複数の上記分子の存在を検出してもよい。組織又は試料をGalNac−T14マーカーの存在についてだけでなく、例えばDR4、DR5又はDcR1の存在についても検査する方法では、同じ組織又は試料から異なるスライドを調製して、各々のスライドをそれぞれ特異的なバイオマーカー又はレセプターに特異的な試薬で試験してもよいことが考えられる。あるいは、組織又は細胞試料から単一のスライドを調製してもよく、各々のバイオマーカー又はレセプターに対する抗体を多色染色プロトコルとともに用いて、それぞれのバイオマーカー又はレセプターの可視化と検出を行ってもよい。
【0066】
組織又は細胞試料がApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体の活性に感受性であることを示すGalNac−T14を組織又は細胞試料が発現すると決定すると、有効量のApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体を哺乳動物に投与して、哺乳動物を苦しめている癌又は免疫系関連疾患などの疾患を治療することが考慮される。本明細書中に記載の様々な病的状態の哺乳動物の診断は、熟練した実務者によって、することができる。診断用技術は、例えば、哺乳動物の癌又は免疫系関連疾患の診断又は検出が許可される当分野で有用である。例えば、癌は、限定するものではないが、触診、血液分析、X線、NMRなどの技術によって、同定してもよい。また、免疫系関連疾患は容易に同定できる。
Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体は、周知の方法に従い、ボーラスとしての静脈内投与、又は一定期間にわたる連続的な注入、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、骨膜内、くも膜腔内、経口、局所的又は吸入の経路により投与することができる。場合によっては、投与は、様々な市販の装置を使用するミニポンプ注入によって実施することができる。
Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体の投与にとって有効な用量とスケジュールは、経験的に決定することができ、そのような決定を行うことは当業者の技量の範囲にある。一回又は複数回服用を用いることができる。単独で使用されるApo2L/TRAILの効果的な用量又は量は、1日当り体重の約1μg/kgから約100mg/kg又はそれより多い範囲であると現在考えられている。用量の種間スケーリングは、例えば、Mordentiら, Pharmaceut. Res., 8:1351(1991)に開示されているような、当該分野において既知の方法を用いて実施することができる。
【0067】
Apo2L/TRAILのインビボ投与が用いられる場合、正常な投与量は、投与経路に応じて、哺乳動物の体重当たり1日に約10ng/kgから100mg/kgの範囲又は1日当たりより多く、好ましくは約1μg/kg/日から10mg/kg/日とすることができる。特定の用量及び送達方法の指針は文献に与えられている;例えば、米国特許第4,657,760号、第5,206,344号、又は第5,225,212号を参照のこと。異なる製剤が異なる治療用化合物及び異なる疾患に有効であること、例えば一つの器官又は組織を標的とする投与には、他の器官又は組織とは異なる方式で送達することが必要であることが予想される。
さらに付加的な治療が本方法において使用され得ることを考慮する。一又は複数の他の治療には、限定されるものではないが、放射線治療、サイトカイン(一ないし複数)、成長阻害剤(一ないし複数)、化学治療剤(一ないし複数)、細胞障害剤(一ないし複数)、チロシンキナーゼインヒビター、rasファルネシルトランスフェラーゼインヒビター、血管形成インヒビター、及びサイクリン依存性キナーゼインヒビターなど、当該分野で公知であり、更に上記に定義されるものの投与が含まれる。このような他の治療法を、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体とは異なる試薬として用いられうることが考えられる。さらに、治療は、リツキサンTM又はハーセプチンTM等の腫瘍抗原を標的にする治療用抗体、並びに抗VEGF等の抗-血管形成抗体をベースにしている。
【0068】
化学治療剤の調製と用量スケジュールは、製造者の指示書に従って使用されるか、熟練した実務者により経験的に決定されて使用される。また、このような化学治療の調製と用量スケジュールは、Chemotherapy Service Ed., M.C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992)にも記載されている。化学療法剤は、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体の投与の前でも後でもよく、同時であってもよい。
また、他の抗原に対する抗体、例えばCD20、CD11a、CD18、CD40、ErbB2、EGFR、ErbB3、ErbB4、血管内皮因子(VEGF)、又は他のTNFRファミリーのメンバー(例えば、OPG、TNFR1、TNFR2、GITR、Apo-3、TACI、BCMA、BR3)に結合する抗体を投与することも好ましい。別法として、あるいは付加的に、ここに開示した同一の又は二又はそれ以上の異なる抗原に結合する二又はそれ以上の抗体を患者に同時投与してもよい。しばしば、患者に一又は複数のサイトカインを投与することも有利である。投与後、インビトロで処理した細胞を分析することができる。インビボ処理の場合、熟練した実務者に公知の様々な方法により処理された哺乳動物をモニタリングすることができる。例えば、腫瘍細胞を病理学的に検査してネクローシスについてアッセイしてもよいし、血清を免疫系応答について分析してもよい。
【0069】
上記に記載又は提案した用途への使用のために、本発明ではキット又は製造品も提供される。このようなキットは、ガラス瓶、チューブなどの一ないし複数の密閉した容器内に収容するために区分けされている運搬容器を具備しており、それぞれの容器には本方法に使用する別個の成分の何れか一つを含んでいる。例えば、容器の一つには検出可能なように標識してあるないしは標識することができるプローブを含む。このプローブは、GalNac−T14のタンパク質又はGalNac−T14の遺伝子ないしは信号のそれぞれに特異的な抗体ないしはポリヌクレオチドであってもよい。標的核酸を検出するためにキットに核酸ハイブリダイゼーションが必要な場合には、キットは、標的核酸配列の増幅のためのヌクレオチドを収容する容器、及び/又は、酵素標識、蛍光標識又は放射性標識などのレポーター分子に結合した、ビオチン結合タンパク質(例えばアビジン又はストレプトアビジン)などのレポーターの働きをするものを収容する容器も具備する。
典型的に、本発明のキットは、上記の容器と、商業的及び使用者の観点からみて望ましい物質、例えばバッファ、希釈液、フィルター、針、注射器及び使用のための指示書を有するパッケージ挿入物を収容する一ないし複数のその他の容器とを具備する。特定の治療又は非治療的用途に該組成物が使用されることを示すために容器上にラベルがあってもよく、またそのラベルは上記のようなインビボの使用又はインビトロの使用の何れかについての指導を示すものであってもよい。
【0070】
本発明のキットは多くの実施態様を有する。典型的な実施態様は、容器と、該容器上のラベルと、該容器内に収容される組成物を具備するキットであり、この場合の組成物はGalNac−T14のポリペプチド配列に結合する一次抗体を含有するものであり、該容器上のラベルは、該組成物を用いて少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のGalNac−T14のタンパク質の存在を評価することができることと、少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のタンパク質の存在を評価するためのGalNac−T14の抗体の使用についての指示書を示すものである。さらに、キットは、組織試料を調整して組織試料の同一片に抗体及びプローブを適用するための一組の指示書と材料を具備しうる。キットは、一次抗体と、酵素標識などの標識にコンジュゲートしている二次抗体の両方を具備してもよい。
他の実施態様は、容器と、該容器上のラベルと、該容器内に収容される組成物を具備するキットであり、この場合の組成物はストリンジェントな条件下でGalNac−T14のポリヌクレオチドの相補鎖とハイブリダイズするポリヌクレオチドを含有するものであり、該容器上のラベルは、該組成物を用いて少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のGalNac−T14の存在を評価することができることと、少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のGalNac−T14のRNA又はDNAの存在を評価するためのGalNac−T14のポリヌクレオチドの使用についての指示書を示すものである。
キットの他の任意の成分には、一ないし複数のバッファ(例えばブロックバッファ、洗浄バッファ、基質バッファなど)、酵素標識によって化学的に変化する基質などの他の試薬(例えば色素原)、エピトープ探索溶液、コントロール試料(ポジティブコントロール及び/又はネガティブコントロール)、コントロールスライド(一ないし複数)などがある。
【0071】
(実施例)
さらに、本発明の様々な態様を以下の実施例によって記載し、例示する。これらは本発明の権利範囲を減縮するためのものではない。
方法及び材料
細胞培養物及び細胞株
以下のヒト細胞株:非小細胞肺癌(NSCLC)系:H2122、A427、H647、SK−MES−1、H838、H358、H2126、H460、H1703、H2405、H650、H1568、H1666、H322T、SW1573、H292、H1650、H522、EKVX、H661、H23、LXFL529、H226、A549、H1781、H1299、HOP62、H2009、HOP92、H1793、H1975、H1651、calu−1、H1435、HOP18、H520、H441、H2030、H1155、H1838、H596、HLFa;膵臓癌系:Panc05.04、BxPC3、HPAC、SU.86.86、HuP−T3、PSN1、Panc08.13、MiaPaCa−2、PA−TU−8988T、Panc03.27、Capan−1、SW1990、CFPAC−1、PA−TU−8902、Panc02.03、Panc04.03、PL45、Aspc−1、Hs766T、Panc10.05、Panc1、Capan−2、HPAF−II及びNHL:JEKO−1、SU−DHL−4、OCI−LY−19、SR、Farage、DOHH-2、Toledo、WSU−NHL、KARPAS−422、GRANTA−519、Pfeiffer、HT、SC−1、DB。これら細胞株は、ATCC寄託機関(Manassas, Virginia)、DSMZ (German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)、JCRB(日本の細胞バンク)又はECACC( ヨーロッパの細胞培養株寄託機関)から得て、10%熱不活性ウシ胎児血清、2mMのL-グルタミン及び10mMのHEPESを添加したRPMI-1640培地で培養した。
【0072】
細胞障害性アッセイ
可溶性黄色テトラゾリウム塩(MTT)を青いホルマザン結晶に還元する生存細胞の能力に基づいた比色アッセイであるMTTアッセイ(Promegaから入手のCellTiter96(登録商標) Non-Radioactive Cell Proliferation Assay)を用いてApo2L/TRAIL又はDR5抗体で処理した後の生存細胞の量を測定した。MTTアッセイは、様々な濃度(0〜1000ng/ml)のApo2L/TRAIL又はDR5抗体を含有する96ウェルプレートの培養ウェルに、予め混合した好適な色素溶液を添加することにより行った。4時間のインキュベーションの間、生細胞は、色素溶液のテトラゾリウム成分をホルマザン(formazan)産物に変換する。次いで、溶解液/停止液を培養ウェルに添加して、ホルマザン産物を溶解し、96ウェルプレート読み取り機(SpectraMax)を使用して570nmの吸光度を記録した。読み取った570nmの吸光度は、増殖アッセイにおいて、通常使用される細胞の数に正比例する。ホルマザン産物の吸光度の最大は570nmであり、純粋な溶液が青く見えるにもかかわらず、アッセイ終了時の色は青ではなく、培養液中の他の成分(血清、酸性化フェノールレッド及び非還元MTTを含む)と関連して存在するホルマザンの量に依存する。
細胞の力価測定を行うことによって、細胞数を最大限に利用して、アッセイの線形範囲の上限に近いアッセイシグナルを産生した。種類が異なる細胞は異なるレベルの代謝活性を有するので、細胞株ごとに行った。試験する多くの腫瘍細胞は、1ウェル当たり5,000から20,000個の細胞を用いた。
【0073】
以下は、行ったアッセイの工程ごとの説明である:
1. 保存培養物の細胞をバイオアッセイに使用した。
2. 細胞数とトリパンブルー生存度を測定し、最終的に1ウェル当たり5,000〜20,000個の細胞を懸濁した。
3. 96ウェルプレートへ50μlの細胞懸濁液を分注した。
4. プレートを37℃の加湿した5%CO2大気中にて終夜インキュベートした。
5. 0から1,000ng/mlの範囲の様々な濃度のApo2L/TRAIL又はDR5抗体を含有する50μlの培養液を96ウェルプレートの試料に添加した。50μlの培養液(Apo2L/TRAIL又はDR5抗体なし)及び100μl培養液(細胞なし)をコントロールとした。
すべての実験は3日間で3通り行った。ウェルの総容積は100μl/ウェルであった。
6. プレートを37℃の加湿した5%CO2大気中で72時間インキュベートした。
7. 各々のウェルに15μlの色素溶液を添加した。
8. プレートを37℃の加湿した5%CO2大気中で最大4時間インキュベートした。
9. 各々のウェルに100μlの溶解液/停止液を添加した。
10.プレートを37℃で終夜インキュベートした。
11.96ウェルプレート読み取り機を使用して570nm波長の吸光度を記録した。750nmの参照波長を用いて、細胞片、指紋及び他の非特異的な吸光度によって、生じるバックグラウンドを減算した。
12.ネガティブコントロールの吸光度値の平均を、ブランク値(空試験値)として用いて、他の全ての読み取り値から減算した。各濃度のApo2L/TRAIL又はDR5抗体の吸光度値の平均を、ポジティブコントロールの吸光度値の平均で割って(100%生存細胞−無処理細胞)、生存細胞の量(%)を算出した。
13.Apo2L/TRAIL又はDR5抗体の濃度(X軸、対数値)に対するパーセント生存細胞(Y軸)をプロットして、50%の生存細胞に相当するX軸値(ng/ml)の位置を決めることによって、IC50値を決定した。
【0074】
Affymetrix標識プロトコル
すべての試料についてOD260/280を読み取り、試料をBioAnalyzerにかけた。5μgの高純度の総RNAを用いた。
A. First StrandcDNA合成:
1. プライマーハイブリダイゼーション
DEPC-H2O xμl ボルテックスによって混合。少し遠心。
RNA(5ug) yμl 10分間70℃でインキュベート。
スパイク(Spike)(5ugに対して1:4で保存液を希釈) 1μl 少し遠心して氷上に置く。
T7-(dT)24プライマー 1μl
容量 12μl
2. 温度調節
5×First StrandcDNAバッファ 4μl
各試料に7μlを(混合物の7μlを左側に)添加。
0.1M DTT 2μl ボルテックスによって混合。少し遠心。
10mM dNTP混合液 1μl 2分間42℃でインキュベート。
容量 7μl
3. First Strand合成
1μlのSSII RTを各々の試料に加える。
SSII RT 1μl 上下にピペッティングするか、軽くボルテックスをかけて混合。少し遠心。
総容積 20μl 1時間42℃でインキュベート。
【0075】
B. Second StrandcDNA合成
1. First Strand反応物を氷上に置く。しばらく遠心してチューブの側面の凝集塊を落とす。
2. 以下のSecond Strandマスター混合液を作る。
DEPC処理H2O 91μl
5×Second Strand反応バッファ 30μl
10mM dNTP混合液 3μl
10U/μl DNAリガーゼ 1μl
10U/μl DNAポリメラーゼI 4μl
2U/μl RNアーゼH 1μl
総容積 130μl
3. 130μlのSecond Strandマスター混合液を20μlのFirst StrandcDNAに加える。(最終的な容量=150μl)
4. 上下にピペッティングするか、軽くボルテックスをかけて混合。少し遠心。
5. 冷却用ウォーターバスにて16℃で2時間インキュベート。
6. 2μlの[10U] T4DNAポリメラーゼを添加。上下にピペッティングするか、軽くボルテックスをかけて混合。少し遠心。
7. 16℃で5分間インキュベート。
8. 10μlの0.5M EDTAを加える。軽くボルテックスにかける。少し遠心。
9. cDNAの精製手順に進むか、その後の使用のために−20℃で保存。
【0076】
二本鎖cDNAの精製(GeneChip 試料精製 Module)
1. 600μlのcDNA結合バッファを162μlの最終的な二本鎖cDNA合成調製物に添加。
3秒間ボルテックスにかけて混合。
2. 混合物の色が黄色であることを確認(cDNA合成反応を含まないcDNA結合バッファと同様)。
混合物の色が橙又は紫である場合、10μlの3M 酢酸ナトリウム、pH5.0を加えて混合する。
混合物の色は黄色に変化する。
3. 2mlの収集チューブにセットしたcDNA精製スピンカラムに500μlの試料を入れて、
8,000×g以上(10,000回転数/分以上)で1分間遠心。流れ出たものを有害廃棄物として廃棄。
4. 残りの混合物(262μl)とともにスピンカラムを再び流し、上記のように遠心した。
流れ出たものを有害廃棄物として廃棄して、収集チューブを廃棄した。
5. 新しい2mlの収集チューブ(購入品)に、スピンカラムを移す。スピンカラムに750μlのcDNA洗浄液を注入する。8,000×g以上(10,000回転数/分以上)で1分間遠心。
流れ出たものを廃棄する。
6. スピンカラムの蓋を開け、最大速度(25,000の×g以下)で5分間遠心。第二のバケットを用いて遠心器内にカラムを置く。キャップが回転に対して反対方向に向くように隣接しているバケットを越えてキャップを位置する、すなわち回転が時計回りの場合、反時計回りにキャップを配置する。これによって、キャップへの損傷を防ぐ。
流れ出たものと収集チューブを廃棄する。
7. 1.5mlの収集チューブ内にスピンカラムを移す。スピンカラム膜上に10μlのcDNA溶出バッファを注入する。cDNA溶出バッファが膜上へ直接分配されることを確認する。
室温で1分間インキュベートして、最大速度(25,000×g以下)で1分間遠心して溶出させる。
【0077】
IVT反応の準備と実施
Enzo:バイオアレイ高収率 RNA転写物標識キット(Part No.900182)
1. 10μlの精製した二本鎖cDNAを用いる。
2. 以下のIVTマスター混合物を作る:
蒸留水又は脱イオン化水 12μl
10×HY反応バッファ 4μl
10×ビオチン標識リボヌクレオチド 4μl
10×DTT 4μl
10×RNアーゼインヒビター混合物 4μl
20×T7RNAポリメラーゼ 2μl
総容積: 30μl
3. 30μlのIVTマスター混合物を10μlの二本鎖cDNAに加える。(総容積=40μl)
4. 上下にピペッティングするか、軽くボルテックスをかけて混合。少し遠心。
5. すぐにチューブを37℃のウォーターバスに置く。5時間インキュベートする。
6. すぐにRNAを精製しない場合は−20℃に貯蔵。
【0078】
ビオチン標識cRNAの精製(GeneChip 試料精製 Module)
1. 60μlのH2OをIVT反応に加えて、3秒間ボルテックスにかけて混合する。
2. 350μlのIVT cRNA結合用バッファを試料に加えて、3秒間ボルテックスにかけて混合する。
3. 250μlのエタノール(96〜100%)を溶解物に加えて、ピペッティングによって、ウェルを混合する。遠心分離しない。
4. 2mlの収集チューブに配置したIVT cRNA精製スピンカラムに、試料(700μl)を添加する。
8,000×g以上(10,000回転数/分以上)で15秒間遠心分離する。
5. もう一度溶出物をカラムに通す。
8,000×g以上(10,000回転数/分以上)で15秒間遠心分離する。
流れ出たものを有害廃棄物として廃棄して、収集チューブを廃棄する。
6. 新しい2mlの収集チューブ(購入品)内にスピンカラムを移す。
7. 500μlのIVT cRNA洗浄バッファを加えて、8,000×g以上(10,000回転数/分以上)で15秒間遠心して洗浄する。
流れ出たものを廃棄する。
8. 500μlの80%(v/v)エタノールをスピンカラムに注入し、
8,000×g以上(10,000回転数/分以上)で15秒間遠心分離する。流れ出たものを廃棄する。
9. スピンカラムのキャップを開け、最大速度(25,000×g以下)で5分間遠心する。
流れ出たものと収集チューブを廃棄する。
10.新しい1.5mlの収集チューブにスピンカラムを移す。
11.11μlの無RNアーゼ水をスピンカラム膜上に直接注入する。1分間放置する。
最大速度(25,000×g以下)で1分間遠心して、溶出させる。
12. 10μlの無RNアーゼ水をスピンカラム膜上に直接注入する。1分間放置する。
最大速度(25,000×g以下)で1分間遠心して、溶出させる。
【0079】
cRNA(IVT生成物)の定量化
吸光光度分析法を用いてRNA収率を測定する。260nmの1ODが40μg/mlのRNAに等しくなる定値を適用する。
260nm及び280nmのODをチェックして試料濃度及び純度を測定する。
純粋なRNAの2.0に近いA260/A280比を維持する(1.9と2.1との間の比は許容範囲内である)。
出発原料として総RNAを用いた場合のcRNAの定量化では、調整されたcRNA収率を算出して非標識の総RNAの超過量を示さなくてはいけない。100%超過量を見積もって、以下の式にあてはめて調整されたcRNA収率を決定する:
調整されたcRNA収率=RNAm ― (総RNAi)(y)
RNAm=IVT後の測定したcRNAの量(μg)
総RNAi=総RNAの開始量(μg)
y=IVTで用いたcDNA反応の分画
【0080】
標的物調節のためのcRNA断片化
断片化のために、調整されたcRNA濃縮物を使用する。
1. 8μlのRNAとH2Oに対して2μlの5×断片化バッファを添加。
20μg cRNA 1〜32μl
5×断片化バッファ 8μl
無RNアーゼ水で40μlにする
総容積: 40μl
2. 94℃で30分間インキュベート。インキュベーション後すぐに氷上に置く。
【0081】
ハイブリダイゼーション標的物の調製
1. 20×真核生物のハイブリダイゼーションコントロールとオリゴB2を65℃で5分間暖める。
Affymetrix GeneChip真核生物のハイブリダイゼーションコントロールキット、Part#900362(150rxnsに対して)
2. 軽く混合して遠心して側面の付着物を落とす。
3. マスター混合物(断片化したcRNA濃度を0.5μg/μlと仮定する場合):
標準的アレイ(μl) 最終濃度
断片化されたcRNA 15μg 30 0.05μg/μl
オリゴB2(3nM) 5 50pM
20×コントロールスパイク 15 1.5、5、25、100pM
(Bio、B、C、D、Cre)
ニシン精液DNA 3 0.1mg/ml
アセチル化BSA 3 0.5mg/ml
Hu cot-1 DNA(1mg/ml) 30 0.1mg/ml
2×MES Hybバッファ 150 1×
H2O 64
終容量 300
4. 270μlのマスター混合物をチューブ内に分注して、各々のチューブに30μlの断片化cRNAを添加。これをハイブリダイゼーション混合物とする。
5. プローブアレイを使用の直前に室温に戻す。
6. プローブアレイを1×MES Hybバッファで満たして、45℃で60回転数/分、10分間、回転式オーブンでインキュベート。
7. ハイブリダイゼーション混合物を99℃のウォーターバスで5分間加熱する。
8. ハイブリダイゼーション混合物を45℃のウォーターバスに移し5分間置く。
9. ハイブリダイゼーション混合物を最大速度で5分間遠心分離する。
10.プローブアレイから1×MES Hybバッファを取り除く。
11.プローブアレイを200μlのハイブリダイゼーション混合物で満たす。
12.粘性の斑点(Tough-Spots)を有する隔壁(septa)を密閉する。
13.45℃、60回転数/分で19時間、プローブアレイをハイブリダイズさせる。
14.Affymetrixプロトコルに従ってプローブアレイを洗浄し、着色し、スキャンする。
【0082】
Affymetrix材料
【0083】
量的PCR
cDNA合成:
【0084】
インキュベーション条件:
25℃で10分間
37℃で2時間
ABIプリズム7700配列決定検出器を用いたTaqMan反応:
【0085】
サーマルサイクル条件:
95℃で10分間
40サイクル:95℃で15秒間
60℃で1分間
・TaqManプローブ:Assays-on-DemandTM(TaqMan(登録商標) MGBプローブ、FAMTM色素標識)
・内在性コントロールであるGAPDHの増幅(プローブ濃度100nM、フォワード及びリバースプライマー濃度200nM)を行い、各反応液に加えた試料RNA(cDNA)の量を標準化する。
標準曲線法を用いて相対的な定量を行った。内在性コントロールへの正規化される定量のために、標的及び内在性コントロールの両方について標準曲線を作製した。各実験試料については、標的及び内在性コントロールの量は、適当な標準曲線から決定した。次いで、標的量を内在性コントロール量で割って標準化された標的値を求めた。実験試料のうちの1つを較正物質又は1×試料とした。次いで、各々の正規化した標的値を較正物質正規化標的値で割って、相対的な発現レベルを求めた。
【0086】
実験結果:
実験は前述の方法及び材料を使用して行った。後述するように、これらの実験の結果は、図5−9に示す。
図5は、MTT細胞障害性アッセイで測定した場合、DR5モノクローナル抗体「mab」(架橋あり「XL」又は架橋なし、+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)又はApo2L(+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)のアポトーシス活性に対して感受性であるか抵抗性であるかについて、非小細胞肺癌(「NSCLC」)の細胞株を分析して得たデータのIC50をまとめたものである。
図6は、MTT細胞障害性アッセイで測定した場合、DR5モノクローナル抗体「mab」(架橋あり「XL」又は架橋なし、+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)又はApo2L(+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)のアポトーシス活性に対して感受性であるか抵抗性であるかについて、膵臓癌細胞株を分析して得たデータのIC50をまとめたものである。
図7は、MTT細胞障害性アッセイで測定した場合、DR5モノクローナル抗体「mab」(架橋あり「XL」又は架橋なし、+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)又はApo2L(+10%ウシ胎児血清「FBS」)のアポトーシス活性に対して感受性であるか抵抗性であるかについて、非ホジキンリンパ腫癌(NHL)細胞株を分析して得たデータのIC50をまとめたものである。
図8は、GalNac−T14のmRNA発現によって測定した場合の、DR5抗体に対する選択NSCLC、膵臓、及びNHL癌細胞株の感受性(「sen」)又は抵抗性(「RES」)の比較と、GalNac−T14の発現との相関関係を示す。
図9は、GalNac−T14のmRNAの発現パターンのレベルにより(降順に)並べた、様々なNSCLC、膵臓、及びNHL細胞株の棒グラフを示す。
【0087】
アポトーシス細胞死プログラムは、多細胞生物の発生及び恒常性に重要な役割を果たす(Danial等、Cell, 116:205 (2004))。細胞内刺激により、細胞内因性の経路を介してアポトーシスを引き起こすことができ、これはアポトーシスカスパーゼ機構の活性化をBc1−2遺伝子のスーパーファミリーのメンバーに依存する(Cory等、Nat. Rev. Cancer, 2:647 (2002)。腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーに属する特定のサイトカインは、機能的アポトーシス誘発性「デスドメイン」(DD)を含む幾つかのレセプターと相互作用することにより、細胞外因性経路を介してアポトーシスを活性化することができる(Ashkenazi等, Science, 281:1305 (1998))。Fasリガンド(FasL)は、Fas(Apo1/CD95)によりアポトーシスを刺激し、一方Apo−2リガンド/TNF関連アポトーシス誘発性リガンド(Apo2L/TRAIL)は、DR4(TRAIL−R1)及び/又はDR5(TRAIL−R2)によりアポトーシスを引き起こす(LeBlanc等、Cell Death Differ., 10:66 (2003))。これらのレセプターは、その同族リガンドと結合すると、アダプター分子FADD(Fas随伴デスドメイン)を結合し、これによってアポトーシス誘導型カスパーゼ−8が補強されて細胞死誘発シグナル伝達複合体(DISC)が形成される(例えば、Kischkel等、EMBO J., 14:5579 (1995); Kischkel等、Immunity, 12:611 (2000)を参照)。DISCの群生はカスパーゼ−8を刺激し、するとカスパーゼ−3、6、及び7等のエフェクタープロテアーゼが切断及び活性化されて、アポトーシス細胞死プログラムが実行される。多くの細胞種類において、細胞内因性経路へのクロストークにより、細胞外細胞死シグナルを更に増幅させることができる(Scaffidi等、J. Biol. Chem., 274:1541 (1999))。Apo2L/TRAILは、正常組織に殆ど/又は全く影響を及ぼすことなく様々な腫瘍細胞種類においてアポトーシスを誘発する。これは、Apo2L/TRAILが癌治療に有用であり得ることを示唆するものである(例えば、Ashkenazi, Nat. Rev. Cancer, 2:420 (2002); Kelley等、Curr. Opin. Pharmacol., 4:333 (2004)参照)。アポトーシス経路の様々な成分を変化させることで、特定の癌細胞株のApo2L/TRAIL感受性を低下させることができる(specific cancer cell lines (2002))。
【0088】
以下に定める方法及びプロトコルに従って、様々な実験を実施し、そのデータを図10−15に示した。
レセプター活性に対する感受性を試験するため、一組のヒト癌細胞株におけるApo2L/TRAILの濃度の変化に伴う細胞生存を試験した。このヒト癌細胞株の組には、23の膵臓腺癌、18の悪性黒色腫、及び36の結腸直腸腺癌が含まれていた(図10A。データは示さない)。この分析で、Apo2L/TRAILに高度又は中程度の感受性として分類された細胞株は、77のうち29(38%)であった。これら29の細胞株に50%の細胞死を引き起こすのに必要なApo2L/TRAILの濃度は3〜800ng/mLであり、平均は250ng/mLであった。
【0089】
また、54613の遺伝子プローブ組のマイクロアレイを使用し、遺伝子発現プロファイリングにより前記細胞株の組を試験した。いくらかの例外はあったが、Apo2L/TRAILに対して強い又は中程度の感受性を示した膵臓癌及び黒色腫細胞株は、対応する抵抗性の細胞株より有意に高いO−グリコシル化酵素ppGalNAcT−14のmRNAレベルを発現した(フィッシャーの正確確率検定によりp=0.5×10−4、膵臓癌腫については750で、黒色腫については300で、繰り返しカットオフを行った)(図10B)。Apo2L/TRAILに感受性の結腸直腸癌細胞株の大部分は、関連するO−グリコシル化酵素ppGalNAcT−3の高いmRNA発現を示した。複数の抵抗性細胞株も同じ遺伝子を発現したが、その発現は弱く、有意な差異が認められた(p=0.026、2000でカットオフ)(図10Cの下のグラフ)。パネル全体の中の例外として、(a)感受性であるがカットオフレベルを下回るppGalNAcT−14又はppGalNAcT−3を発現した5/29の(17%)の細胞株、(b)それでもカットオフを上回るppGalNAcT−14、又はppGalNAcT−3レベルを有する16/48(33%)の抵抗性細胞が存在した。結腸直腸細胞株の他のO−グリコシル化酵素のmRNAの発現を試験することにより、6/24(25%)の抵抗性細胞株より高いレベルのFut−6が10/12(83%)の感受性細胞株において検出された(p=0.013、200でカットオフ)(図10Cの上のグラフ)。膵臓癌及び黒色腫におけるppGalNAcT−14の発現と、結腸直腸癌細胞株におけるFut−6との組み合わせは、Apo2L/TRAIL感受性と非常に強く相関していた(p=1.83×10−7、N=77)。この遺伝子の組は、23/32(72%)のマーカー陽性細胞株及び39/45(87%)のマーカー陰性細胞株について感受性か抵抗性かをそれぞれ正確に予測した。
また、腫瘍異種移植片を用いて、インビボにおいてApo2L/TRAIL感受性を試験した。Fut−6−陽性結腸直腸癌細胞株Colo205及びDLD−1由来の腫瘍を持つマウスを、5日に亘ってApo2L/TRAILで処置したところ、腫瘍が退縮し、次いで腫瘍の進行速度が大きく低下した(図10D)。対照的に、Fut−6−陰性結腸直腸癌細胞株Colo320及びRKO由来の腫瘍はこの処置に応答しなかった。
【0090】
チンパンジーのO−グリコシルトランスフェラーゼ阻害剤ベンジル−GalNAcを用いたppGalNAcT−3/Fut−6−陽性Colo205細胞株のプレインキュベーション(Delannoy等、Glycoconj., 13:717 (1996))は、Apo2L/TRAILに対する感受性を著しく低下させた(図11A)。これは、O−グリコシル化とApo2L/TRAILシグナル伝達が機能的にリンクしていることを示唆するものである。これを更に試験するため、ppGalNacT−14、ppGalNacT−3、又はFut−6のmRNAを標的とする特定の小分子干渉(si)RNAオリゴヌクレオチドを使用した。標的外の効果を除外するため、各遺伝子について複数の重複しないsiRNAを合成し、定量的RT−PCRによりそれらの標的発現の低減能を検証した(図14A)。siRNAの特異性は、siRNA標的領域内に6の「サイレント」ヌクレオチドの変化を含む変異ppGalNacT−14プラスミドにより更に確認された(Editorial, Nat. Cell. Biol., 5:489 (2003))(図14B)。ppGalNAcT−14−陽性のPSN−1膵臓癌腫及びHs294T黒色腫細胞株をppGalNAcT−14 siRNAを用いて形質移入したところ、Apo2L/TRAILに対する感受性が実質的に低下し、一方予想通り、カスパーゼ−8 siRNAによる保護はほぼ完全であった(図11B)。同様に、GalNAcT−3又はFut−6 siRNAによるDLD−1又はC170結腸直腸癌細胞の形質移入により、Apo2L/TRAILに対する感受性が有意に低下した(図11C及び図14C)。つまり、GalNAcT−14のsiRNAは、4/5の膵臓癌及び2/2の黒色腫細胞株において、Apo2L/TRAILに対する感受性を低下させ、一方ppGalNAcT−3又はFut−6 siRNAはいずれも、2/3の結腸直腸癌細胞株において感受性を低下させた。それに比べて、GalNAcT−14のsiRNAを用いたPSN−1又はHs294T細胞の形質移入は、トポイソメラーゼIIの阻害剤エトポシドに対する感受性を変化させなかった(図14D)。同様に、GalNAcT−14又はGalNAcT−3のsiRNAを用いたPSN−1又はC170細胞の形質移入は、広域性プロテインキナーゼ阻害剤スタウロスポリンに対する感受性に影響しなかった(図14E)。エトポシド及びスタウロスポリンはどちらも細胞内因性経路を介してアポトーシスを刺激する(Wei等、Science, 292:727 (2001))ので、これらの研究により、O−グリコシル化酵素が、細胞外因性経路を介したアポトーシスシグナル伝達を調節させ得ることが示唆される。
【0091】
ppGalNAcT−14を用いたHEK293細胞の形質移入は、DR4又はDR5を同時形質移入したときに細胞死を示したが、関連レセプターであるFas及びTNFR1又は細胞内因性経路アゴニストBaxの場合はそうではなかった(図11D)。更に、ppGalNAcT−14の形質移入により、抵抗性細胞株H1568黒色腫(図11E)、並びにPA−TU−8902及びPL−45膵臓癌種(図14F)のApo2L/TRAIL感受性が増大したが、エトポシドに対する感受性には変化がなかった(データは示さない)。総合すると、GalNAcT−14の過剰発現は4/7の細胞株をApo2L/TRAILに対して感作した。
ppGalNacT−14又はFut−6のsiRNAノックダウンの影響を、Apo2L/TRAIL誘導性カスパーゼプロセシングで試験した。コントロールsiRNAを用いて形質移入したPSN−1及びDLD−1細胞において、Apo2L/TRAILはカスパーゼ−8のほぼ完全なプロセシングを誘発し、Bid、カスパーゼ−9及びカスパーゼ−3の切断を導いた(図12A)。カスパーゼ−8のsiRNAを用いた形質移入は、これらの現象を防止した。PSN−1細胞中のppGalNAcT−14、又はDLD−1細胞中のFut−6のノックダウンも、カスパーゼ−8、Bid、カスパーゼ−9、及びカスパーゼ−3のApo2L/TRAIL誘導性プロセシング(図12A)、及びカスパーゼ3/7活性の刺激(図12B)を著しく減弱した。Apo2L/TRAIL抵抗性RKO及びSW1417結腸直腸癌細胞株は、低レベルのppGalNAcT−3及びFut−6を発現し、カスパーゼ−8プロセシングのレベルにおいて同様のブロックを示した(図15A)。このように、O−グリコシル化酵素は、Apo2L/TRAIL経路上流の、カスパーゼ−8の活性に繋がる現象を変化させることができる。
【0092】
カスパーゼ−8の活性化には、DISCアセンブリが必要である(Ashkenazi等、Science, 281:1305 (1998))。PSN−1及びDLD−1細胞におけるApo2L/TRAILのDISCの分析(Kischkel等、Immunity, 12:611 (2000))により、ppGalNAcT−14又はFut−6のノックダウンが、DISCに対するFADD及びカスパーゼ−8の補充、DISCに結合したカスパーゼ−8のプロセシング、及びDISCに随伴するカスパーゼ−8酵素活性の刺激を低減することが示唆された(Sharp等、J. Biol. Chem., 280:19401 (2005))(図12C、12D及び図15B)。ppGalNacT−14及びFut−6のsiRNAはいずれも、DISC中のDR4及びDR5の量を実質的に変化させず、またDR4とDR5を両方発現するPSN−1又はDLD−1細胞に対するApo2L/TRAILの用量依存性の結合を変化させなかった(図12C、図15B、及びデータなし)。このように、ppGalNAcT−14及びFut−6は、細胞表面のレセプターレベル又はApo2L/TRAIL結合に影響することによりアポトーシスを調節するとは思われない。これと一貫して、77の細胞株の組におけるApo2L/TRAIL感受性は、同族のシグナル伝達レセプターであるDR4及びDR5、又はデコイレセプターのDcR1及びDcR2の細胞表面における発現と有意な相関を示さなかった(データなし)。更に、ppGalNAcT−14、ppGalNacT−3、又はFut−6に対する大部分のsiRNAは、PSN−1、C170、又はDLD−1細胞におけるDR4及びDR5のレベルを変化させなかった(図15C)。二つのsiRNAは、特定の細胞株中のDR4及びDR5のレベルに検出可能な低下を引き起こさなかった(図15C)。しかしながら、同じ酵素に対する他のsiRNAは、レセプターのレベルに影響を与えることなくApo2L/TRAIL誘導性のアポトーシスを抑制した。
ヒトDR5の細胞外ドメイン(ECD)をチャイニーズハムスターの卵巣細胞中に発現させ、分泌されたタンパク質を精製し、酸加水分解させ、付随する単糖を分析した(図13A)。DR5のECDに予測されたN−グリコシル化部位が存在しないことと一致して、N−結合型グリカンは検出されなかった。しかしながら、2つの独立した実験における2つの試料は、DR5のECD1モル当たり3モルのGalNAc及び3モルのGalを示し(図13A)、これにより、コアグリカンGalNAc−GalによるDR5上の3つの部位のO結合型修飾が示唆された。
【0093】
タンパク質のOグリコシル化によって、セリン又はスレオニンが修飾される。潜在的なOグリコシル化部位を予測する従来の生物情報学の手段を使用して(http://www.cbs.dtu.dk/services/NetOGlyc)(Julenius等、 Glycobiology, 15:153 (2005))、ヒトDR5の長い(DR5−L)及び短い(DR5−S)結合変異型の共通ECD配列において2つの上記領域と、オルタナティブスプライス領域内に3つ目の領域を確認した(図13B)。第1アミノ酸セグメント(74−77)にはセリンが3つ含まれ、第2アミノ酸セグメント(130−144)には、スレオニンが5つ、第3アミノ酸セグメントにはスレオニンが4つとセリンが3つ含まれる。マウスのDR5は第1の2つのアミノ酸セグメントと同様の配列を持ち、それぞれセリン2つとスレオニン4つを含み、ヒトDR4にも同様の配列が2つあり、セリン1つとスレオニン5つを含む。これらの部位がDR5の翻訳後修飾に重要なものとなるのかどうか検査するために、セグメント130−144(DR5L−5T、DR5S−5T)のスレオニン5つ又はこれら5つのスレオニンと共にセグメント74−77(DR5L−5T3S、DR5S−5T3S)のセリン3つをアラニンと置換して、一組のDR5L及びDR5Sの変異株を作製した。DR5L又はDR5Sを形質移入したHEK293細胞から得た溶解物のDR5抗体免疫ブロット法の結果から、予測されたDR5L及びDR5Sのバンドの存在が確認された(図13C)。抗体は更に、より高分子量(MW)のDR5バンドを検出し、このDR5バンドは、DR5L又はDR5SをppGalNAcT−14と共に同時形質移入すると、コントロールと比べてより多くになった(図13Cのアスタリスク)。多くの高分子バンド及びppGalNAcT−14による増加は、野生型コンストラクトと比較して、DR5L−5T又はDR5S−5Tにより大幅に減少し、DR5L−5T3S又はDR5S−5T3Sによりほとんどなくなった。これらの結果から、高分子バンドはDR5のOグリコシル化した形態を表し、ppGalNAcT−14によりこれらの形成が促進され、アラニン置換による予測されたOグリコシル化部位の漸進的除去により、この影響が徐々に後退することが分かる。HEK293細胞にマウスDR5又はヒトDR4、DR5L、又はDR5Sを形質移入することにより、細胞死が起こり(図13D)、各変異DR5は、対応する野生型コンストラクトよりも弱い活性を示し、(3つの部位全てを持たない)DR5S−5T3Sが一番活性が弱かった。ppGalNAcT−14との同時形質移入により、非常に弱い活性を示したDR5S−5T3S以外の全てのDR4及びDR5コンストラクトにより細胞死が促進された。
【0094】
正常細胞及び皮膚癌、肺癌、膵臓癌、乳がん、卵巣がん、子宮内膜癌、膀胱がん、又は非ホジキンリンパ腫からの腫瘍サンプルの多くは、カットオフ値未満のppGalNAcT−14のmRNA発現をr示した(ほとんどの癌のカットオフ値は500、皮膚がんのカットオフ値は200において測定、図13E)。しかし、小葉乳がんの10%から肺がんの30%に至る範囲の、腫瘍サンプルのかなりの割合のサブセット、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、ppGalNAcT−14の過剰発現を示した。一部の癌サンプルのmRNA発現レベルは、対応する正常な組織の1000倍以上であった。癌サンプルにおけるダイナミックなppGalNAcT−14発現の結果から、この遺伝子、そして場合によっては他の関連酵素が、Apo2L/TRAILへの感受性がより大きい腫瘍を同定するのに有用なバイオマーカーとなり得ることがわかる。
O結合型グリカンはその構造において広範囲の多様性を示し、細胞の接着活性及びシグナル伝達活性と共に、構造、凝集、輸送、半減期を含む原形質膜タンパク質生物学の様々な態様を調節する(Hang等、Bioorg. Med. Chem., 13:5021 (2005);Hanisch, Bio. Chem., 382:143 (2001))。癌細胞は多くの場合、Oグリカンの形態を大きく変化させ、独特の腫瘍関連の糖鎖抗原を生成する(Brockhausen, Biochim. Biophys. Acta, 1473:67 (1999);Dube等、Nat. Rev. Drug Discovery, 4:477 (2005);Fuster等、nat. Rev. Cancer, 5:526 (2005))。Oグリコシル化も、腫瘍細胞の転移の特定部位へのホーミングにおいて重要な役割を果たす(Fuster等、Cancer Res., 63:2775 (2003);Ohyama等、EMBO J., 18:1516 (1999);Takada等、Cancer Res., 53:354 (1993))。結腸及び結腸直腸細胞サンプル、黒色腫細胞サンプル、及び軟骨肉腫細胞サンプルを含む様々なヒト癌からの主要な腫瘍サンプルの重要なサブセットは、様々なヒト癌からの主要な腫瘍サンプルの重要なサブセットは、Oグリコシル化酵素ppGalNAcT−14の過剰発現を示す。
【0095】
方法
材料
細胞培養試薬をGibco(Invitrogen/Gibco, Carlsbad, CA)より購入し、ノンタグの水溶性Apo2L/TRAILを前述したように作製し(Lawrence等、Nat. Med., 7:383 (2001))、O結合型グリコシル化阻害剤のベンジル−a−GalNAcをCalbiochemより、その他全ての(エトポシド及びスタウロスポリンを含む)化学薬品をSigma Aldrich(St. Louis, MO)より購入した。
細胞培養物及び細胞株
119種すべてのヒト癌腫細胞株(名前及びカタログ番号は添付資料を参照)をATCC又はDSMZ(Braunschweig, Germany)より入手し、ペニシリン/ストレプトマイシンなどの抗生剤を加えず、10%加熱不活性化胎児ウシ血清、2mMのL−グルタミン及び10mMのHEPESを加えたRPMI1640にて、温度37℃及び5%二酸化炭素の条件で、培養した。293ヒト胎児の腎臓細胞(カタログ番号:CRL−1573)もまたATCCより入手し、10%FBSを加えた100%ダルベッコ変法イーグル培地で培養した。Oグリコシル化変異株CHO細胞株であるldlD CHOは、マサチューセッツ工科大学(Boston MA)のMonty Kreiger博士より許可を得た。
【0096】
細胞生死判別アッセイ及びアポトーシスアッセイ
Apo2L/TRAILのIC50を測定するために、細胞を96ウェルプレート内に三通り置き、24時間かけて付着させ、その後濃度を1000ng/mlに到達するまで増加させながら組み換えヒトApo2L/TRAILで処理した。72時間インキュベートした後、細胞の生死判別アッセイ−MTTアッセイ(Pierce)又はCellTiter−Glo発光細胞生死判別アッセイ(Promega)を、製造会社の手順に従って行った。各細胞生死判別実験は、低(0.5%)及び高(10%FBS)血清で少なくとも3回繰り返して行い、中程度の感受性を有する細胞株を、個々の実験から得たIC50間及び低血清と高血清の間のばらつきにより決定した。細胞株は、Apo2L/TRAIL濃度1ug/mlにおいて少なくとも50%の細胞のアポトーシス誘発がある場合に、感受性があると判断され、個々の実験または低(0.5%)血清対高(10%)血清の存在下において誘発されたアポトーシス量の変動に基づいて中程度の感受性があると判断された。アポトーシスは、Annexin V (BD Pharmingen)で着色した採取細胞(付着+倍地中に浮遊)の平均割合のフローサイトメトリーによる分析により、数値化した。
マイクロアレイハイブリタイゼーション及びデータ分析
RNeasyキット(Quiagen)を使用して、未処理の細胞(3×106)から全細胞RNAを調製した。前述したように(Hoffman等、Nat. Rev. Genetics, 5:229 (2004); Yauch等、Clin. Cancer Res., 11:8686 (2005))、標識cRNAを調製し、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ(U133P GeneChip; Affymetrix Incorporated, Santa Clara, CA)にハイブリダイズさせた。走査画像ファイルをGENECHIP 3.1 (Affymetrix)、Spotfire、GenePattern及びCluster/TreeViewで分析した。感受性細胞株及び抵抗性細胞株の間で、最も特異的に発現した遺伝子を特定するため、遺伝子発現の値を、サンプル全体の倍率変化と絶対変動の試験によって分析されるサンプル全体において、変動が最小である細胞を除外する変動フィルターにかけて、最大値と最小値の割合(最大値/最小値)及び最大値と最小値の間の差(最大値−最小値)を特定の値と比較し、両方の条件に合わない遺伝子を除外した。
【0097】
発現コンストラクト及びレトロウイルス形質導入
ppGalNAcT−14をコードするDNA断片をApo2L/TRAIL感受性細胞株からプールしたcDNAからクローニングし、N−末端フラッグ・タグを有する発現プラスミドpcDNA3.1(Invitrogen)に挿入した。次にこのコンストラクトの部位特異的変異生成を行い(Quickchange Mutagenesis kit, Stratagene)、タンパク質配列を変化させることなく、siRNAと同種の配列において4〜6のゆらぎ塩基対変異を有するsiRNAサイレント変異株を生成した。この変異は、19bpのsiRNA結合配列の中央において、10bpの領域に及んだ。DR5Long、DR5Short、DR4、マウスTRAILレセプター、DR4、Fas(変異形1)、TNFR1及びBax(ベータ変異形)のDNA配列をcDNAプールからクローニングし、pRK発現ベクター(Genentech)に挿入した。DR5L及びDR5SのO−グリコシル化変異株は、4つのスレオニンのアラニン残基への部位特異的変異であるMut4xTA(T130、T131、T132、T135)、又は5つのスレオニンのアラニン残基への部位特異的変異であるMut5xTA(T130、T131、T132、T135、T143)により生成した。6つのウェルプレートで、0.5ug/ウェルのプロアポトーシス分子と2.0ugのppGalNAcT−14又はベクターコントロールの濃度で、HEK293細胞にプロアポトーシス分子の発現コンストラクトを一過性的に形質移入した。製造会社の手順に従い、リポフェクタミン2000を使用して、細胞に形質移入した。48時間の培養後、細胞のアポトーシス分析を行った。
レトロウイルスコンストラクトを生成するために、ppGalNAcT−14及び変異株を、pQCXIPレトロウイルスベクター(Clontech)にクローニングした。ΦNX−Amphoヘルパー細胞株を使用して、高力価レトロウイルス上清を生成した。リン酸カルシウム(Invitrogen)を使用して、パッケージ細胞に形質移入した。形質移入の48時間後に上清を単離し、10マイクロg/mlのポリブレンと共に標的細胞に添加し、その後、感染を促進するため2700rpmで1時間の遠心分離処理を行った。形質導入の後、2マイクロg/mlのピューロマイシンを使用して、細胞を選別した。
【0098】
siRNAの設計及び形質移入手順
ppGalNAcT−14、ppGalNAcT−3、カスパーゼ8及びDR5に対するsiRNAは、独自の選択基準を使用して、Dharmacon(Lafayette, CO)により設定されたものである。選択された配列は、
siGalNAcT-14 (1): 5' GACCATCCGCAGTGTATTA-dTdT 3' (=14-4) (配列番号:15)
siGalNAcT-14 (2): 5' ATACAGATATGTTCGGTGA-dTdT 3' (=14-6) (配列番号:16)
siGalNAcT-3 (1): 5' CCATAGATCTGAACACGTT-dTdT 3' (=3-2) (配列番号:17)
siGalNAcT-3 (2): 5' GCAAGGATATTATACAGCA-dTdT 3' (=3-7) (配列番号:18)
siFut-6 (1) 5' GUACCAGACACGCGGCAUA-dTdT 3' (=6-1) (配列番号:19)
siFut-6 (2) 5' ACCGAGAGGUCAUGUACAA-dTdT 3' (=6-2) (配列番号:20)
siCaspase-8: 5' GGACAAAGTTTACCAAATG-dTdT 3' (配列番号:21)
siRNAを二本鎖RNAオリゴヌクレオチドとして購入し、それぞれの細胞株に、各siRNAの最終濃度が25nMとなるように形質移入した。非標的配列(Dharmacon)に対するsiRNAの二本鎖をコントロールとして用いた。上清に細胞を加えたリバーストランスフェクションにより、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いて、予めプレートにまいた脂質−siRNA複合体に細胞をトランスフェクトした。リポフェクタミン2000の濃度は、製造会社の手順による。48時間のインキュベーション後、細胞をmRNA分析用に採取、又は組み替えヒトApo2L/TRAIL、エトポシド又はスタウロスポリンとともに、生死判別アッセイ用に更に24〜72時間、ウエスタンブロット分析用に4時間、8時間又は24時間インキュベートした。
【0099】
ベンジル−a−GalNAcを使用したO−グリコシル化の抑制
Colo205細胞をベンジル−a−GalNAc(2mM又は4mM)の存在下で72時間成長させた。この時点で、阻害剤の存在下のまま、96ウェルプレートに再度まき、24時間かけて付着させた。次に細胞を、前述したようにApo2L/TRAILの濃度を増加させながら刺激し、生死判別アッセイを行った。
定量的PCR
GalNacT−14及びGalNacT−3の転写発現レベルを標準Taqman技術を用いた定量RT−PCRで評価した。転写レベルはハウスキーピング遺伝子であるGAPDHに規準化し、結果を規準化発現値(=2−DCt)として表した。GalNacT−14(カタログ番号:Hs00226180_m1_GT14)、GalNacT−3(カタログ番号:Hs00237084_m1_GT3)及びGAPDH(カタログ番号:402869)のプライマー/プローブ一式は、Applied Biosystems(Foster City, CA)より購入した。
【0100】
免疫沈降法、ウエスタンブロット分析及び抗体
IP: 抗Apo2L(2E11; ATCC預託番号 HB-12256)、抗DR4(3G1及び4G7, ATCC預託番号PTA-99)、及び抗DR5(3H3, ATCC Accession No. 12534及び5C7)のモノクローナル抗体は、ジェネンテック社においてレセプター−Fc融合タンパク質を抗原として用いて生成された。Apo2L/TRAIL DISCの免疫沈降法に用いられる抗DR4(4G7)及び抗DR5(5C7)モノクローナル抗体は、Pierce製のImmunoPure Protein G IgG Plus オリエンテーションキット(カタログ番号44990)を使用してアガロースに結合させた。DISC免疫沈降法においてDR4/5の免疫検出に用いられる抗DR4(3G1)及び抗DR5(3H3)モノクローナル抗体を、Pierce製のEZ−link Sulfo−NHS−LC ビオチン化キット(カタログ番号21217)を使用して、ビオチン化した。FLAG−タグ化Apo2L/TRAILを調製し、前述したように(Kischkel, Immunity, 12:611 (2000))、抗FLAG抗体M2(Sigma)と架橋させた。これらの実験は、Apo2L/TRAIL FLAG+抗FLAG DISC解析(Kischkel、上掲)について前述したように行った。DR4/5 DISC 免疫沈降実験も、免疫沈降のために抗DR4(4G7)及び抗DR5(5C7)モノクローナル抗体を直接アガロースに結合させた以外は、前述したように行った(Sharp等、 J. Biol. Chem., 280:19401 (2005))。
WB: 6つのウェルプレートに、1つのウェルに対し5×105の細胞を播種した。RNAiノックダウン実験では、細胞を異なるsiRNAで48時間処理した後、Apo2L/TRAILで4時間、8時間あるいは24時間処理を行った。表示した時間経過後に、細胞を氷冷のPBSで洗浄し、1%トリトンX−100含有の低浸透圧性の溶解緩衝液(20 mM HEPES pH 7.5, 10 mM KCL, 1.5 mM MgCl2, 1 mM EDTA及び1 mM DTT)に溶解した。各サンプルでは、40μgのタンパク質を還元条件下で10%又は10〜20%勾配のSDSポリアクリルアミドゲル上で分離した。ニトロセルロース膜(Schleicher 及び Schuell)に移した後に、10%脱脂粉乳で1時間インキュベートし、その後下記の一次抗体:ヤギ抗カスパーゼ3抗体(1:1000, R&D)、ウサギ抗カスパーゼ8抗体(1:1000, Pharmingen)、マウス抗カスパーゼ9抗体5B4(1:1000, MBL)、ウサギ抗Bid抗体(1:1000, Pharmingen)、ウサギ抗DR5抗体(1:500, Cayman)又はヤギ抗アクチン抗体(1:200, Santa Cruz Biotechnology)とともに1時間インキュベートした。TBS/0.05%Tweenでメンブランを5回洗浄し、それから各ペルオキシダーゼ抱合親和性精製二次抗体(1:5000, Biorad)とともに30分間インキュベートした。メンブランを再び5回洗浄し、高感度化学発光(ECL, Amersham)を使用して発光させ、コダック バイオマックスフィルムに露光させた。
【0101】
フローサイトメトリー/FACS分析
TNFファミリレセプター、DR4及びDR5の表面発現は、FACS Calibur フロー部位メーター(Becton Dickinson Immunocytometry System, San Jose, CA)を用いた蛍光表示式細胞選別(FACS)により測定した。表示のsiRNAの形質移入を48時間行ったC170とPSN−1細胞を、10μg/mlの一次抗体、4G7(抗DR4)又は3H3(抗DR5)又はマウスIgGコントロール抗体にて4℃で1時間かけて染色した。次に細胞をPBSで洗浄し、フルオレセイン(FITC)抱合ヤギ抗マウス第二次抗体(Jackson Laboratories)とともに4℃で30分インキュベートした。その後FACS Calibur フロー部位メーターを用いたフローサイトメトリーにて細胞を分析した。
カスパーゼアッセイ
カスパーゼ−3/−7活性を100μMの蛍光発生ペプチドAc−DEVD−AFCを含有する40μlのカスパーゼ緩衝液(50mM HEPES pH 7.4, 100 mM NaCl, 10 % sucrose, 1mM EDTA, 0.1% CHAPS及び10 mM DTT)中で37℃で試験した。活性の表示の時間にわたる連続測定を、モレキュラーデバイス蛍光光度計のキネティックモードと405−510フィルターペアを使用して、DEVD−AFCからAFCを放出させることにより行った。カスパーゼ活性の評価には、40μlのカスパーゼ緩衝液(100μMのDEVD−AFC含有)に対し20μgの総細胞タンパク質(Triton X-100 抽出物)を使用した。
【0102】
CHO由来DR5の炭水化物分析
CHO細胞由来DR5の単糖組成物を4N TFAによる加水分解後に得た。遊離した単糖の分析は、パルス電流検出器と組み合わせた高性能陰イオン交換クロマトグラフィーを用いたDionex BioLC HPLC システムにより、実施した。
動物及び皮下注射異種移植の研究
雌の胸腺欠損ヌードマウス(The Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME, USA)を、実験研究に用いる前に最低一週間ジェネンテックの動物収容施設に順応化した。全ての実験手順は、ジェネンテックの施設内動物実験委員会(IACAUC)により認可された。Colo205、DLD−1、及びRKOをマウス1匹に対し5×106 細胞、又はColo320HSRヒト結腸癌細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション)をマウス1匹に対し20×106 細胞の割合で、皮下注射により接種した。腫瘍の測定はデジタルカリパスによって行い、腫瘍量は数式、(A=長さ)×(B=幅)2を使用して算出した。腫瘍量が一旦約150〜200mm3に到達すると、マウスを任意にグループ分けし、0日目〜4日目に溶媒あるいはApo2L/TRAIL(60mg/kg/日)を腹腔内(i.p.)へ投与した。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】ヒトApo-2リガンドcDNA(配列番号:2)のヌクレオチド配列及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:1)を示す。ヌクレオチド位置447の「N」は、ヌクレオチド塩基が「T」又は「G」であってもよいことを示すために用いる。
【図2A】完全長ヒトDR4のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:4)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:3)を示す。また、ヒトDR4のそれぞれのヌクレオチド及びアミノ酸配列は、Pan 等, Science, 276:111 (1997)に報告される。
【図2B】完全長ヒトDR4のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:4)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:3)を示す。また、ヒトDR4のそれぞれのヌクレオチド及びアミノ酸配列は、Pan 等, Science, 276:111 (1997)に報告される。
【図3A】1998年11月19日の国際公開公報98/51793に公開されるヒトDR5の411のアミノ酸配列(配列番号:5)を示す。
【図3B】ヒトDR5の転写スプライシング変異体は当分野で公知である。1998年8月20日の国際公開公報98/35986に公開される、このDR5スプライシング変異体は図3B及び図3Cに示されるヒトDR5の440のアミノ酸配列(配列番号:6)をコードする。
【図3C】ヒトDR5の転写スプライシング変異体は当分野で公知である。1998年8月20日の国際公開公報98/35986に公開される、このDR5スプライシング変異体は図3B及び図3Cに示されるヒトDR5の440のアミノ酸配列(配列番号:6)をコードする。
【図3D−1】完全長ヒトDcR1のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:7)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:8)を示す。また、ヒトDcR1(及びその特定のドメイン)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列のそれぞれは、国際公開公報98/58062に記載される。
【図3D−2】完全長ヒトDcR1のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:7)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:8)を示す。また、ヒトDcR1(及びその特定のドメイン)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列のそれぞれは、国際公開公報98/58062に記載される。
【図3D−3】完全長ヒトDcR1のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:7)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:8)を示す。また、ヒトDcR1(及びその特定のドメイン)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列のそれぞれは、国際公開公報98/58062に記載される。
【図3E−1】完全長ヒトDcR2のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:9)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:10)を示す。ヒトDcR2(及びその特定のドメイン)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列のそれぞれは、国際公開公報99/10484にも示される。
【図3E−2】完全長ヒトDcR2のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:9)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:10)を示す。ヒトDcR2(及びその特定のドメイン)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列のそれぞれは、国際公開公報99/10484にも示される。
【図4A−1】ヒトGalNac−T14のヌクレオチド配列(配列番号:11)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:12)を示す。これらの配列は、Wang等、BBRC、300:738-744 (2003)にも記載されている。
【図4A−2】ヒトGalNac−T14のヌクレオチド配列(配列番号:11)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:12)を示す。これらの配列は、Wang等、BBRC、300:738-744 (2003)にも記載されている。
【図4A−3】ヒトGalNac−T14のヌクレオチド配列(配列番号:11)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:12)を示す。これらの配列は、Wang等、BBRC、300:738-744 (2003)にも記載されている。
【図4A−4】ヒトGalNac−T14のヌクレオチド配列(配列番号:11)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:12)を示す。これらの配列は、Wang等、BBRC、300:738-744 (2003)にも記載されている。
【図4B−1】ヒトGalNac−T3のヌクレオチド配列(配列番号:13)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:14)を示す。これらの配列は、Bennett等、J. Biol. Chem., 271:17006-17012 (1996)にも記載されている。
【図4B−2】ヒトGalNac−T3のヌクレオチド配列(配列番号:13)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:14)を示す。これらの配列は、Bennett等、J. Biol. Chem., 271:17006-17012 (1996)にも記載されている。
【図4B−3】ヒトGalNac−T3のヌクレオチド配列(配列番号:13)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:14)を示す。これらの配列は、Bennett等、J. Biol. Chem., 271:17006-17012 (1996)にも記載されている。
【図4B−4】ヒトGalNac−T3のヌクレオチド配列(配列番号:13)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:14)を示す。これらの配列は、Bennett等、J. Biol. Chem., 271:17006-17012 (1996)にも記載されている。
【図5】Apo2L(+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)又はDR5モノクローナル抗体「DR5 ab」(架橋あり「XL」又は架橋なし、+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)のアポトーシス活性に対して感受性であるか抵抗性であるかについて、非小細胞肺癌(「NSCLC」)細胞株を分析して得たデータのIC50を図表にまとめたものである。
【図6】MTT細胞障害性アッセイで測定した場合、Apo2L(+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)又はDR5モノクローナル抗体「DR5 ab」(架橋あり「XL」又は架橋なし、+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)のアポトーシス活性に対して感受性であるか抵抗性であるかについて、膵臓癌細胞株を分析して得たデータのIC50を図表にまとめたものである。
【図7】MTT細胞障害性アッセイで測定した場合、Apo2L(+10%ウシ胎児血清「FBS」)又はDR5モノクローナル抗体「DR5 ab」(架橋あり「XL」又は架橋なし、+10%ウシ胎児血清「FBS」)のアポトーシス活性に対して感受性であるか抵抗性であるかについて、非ホジキンリンパ腫癌(「NHL」)を分析して得たデータのIC50を図表にまとめたものである。
【図8A】GalNac−T14のmRNA発現によって測定した、DR5抗体に対する選択NSCLC、膵臓、及びNHL癌細胞株の感受性(「sen」)又は抵抗性(「RES」)の比較と、GalNac−T14の発現との相関関係を示す。
【図8B】GalNac−T14のmRNA発現によって測定した、DR5抗体に対する選択NSCLC、膵臓、及びNHL癌細胞株の感受性(「sen」)又は抵抗性(「RES」)の比較と、GalNac−T14の発現との相関関係を示す。
【図9A】GalNac−T14のmRNAの発現パターンのレベルにより(降順に)並べた、様々なNSCLC、膵臓、及びNHL細胞株の棒グラフを示す。
【図9B】GalNac−T14のmRNAの発現パターンのレベルにより(降順に)並べた、様々なNSCLC、膵臓、及びNHL細胞株の棒グラフを示す。
【図10A】Apo2L/TRAIL感受性及び抵抗性の癌細胞株における特定のO−グリコシル化酵素の異なる発現を示す。異なるApo2L/TRAILの用量を用いてインキュベートした後、細胞生存度を測定した。生存度を50%低下させるApo2L/TRAILの濃度を用いて各細胞株のIC50を計算した。ウシ胎児血清が低い場合(0.5%)と高い場合(10%)について、細胞生存度の実験を少なくとも3回繰り返した。黒、グレイ、又は白抜きの記号はそれぞれ、Apo2L/TRAILに対する感受性が高い、中程度である、又はApo2L/TRAILに対して抵抗性であることを示す。
【図10B】Apo2L/TRAIL感受性及び抵抗性の癌細胞株における特定のO−グリコシル化酵素の異なる発現を示す。膵臓及び悪性黒色腫細胞株におけるppGalNAcT−14 mRNAの発現レベル(プローブセット219271_at)を示す。細胞株は、組織種別及びApo2L/TRAILに対する感受性によって配置されている。黒、グレイ、又は白抜きの棒グラフは、Aと同様の細胞株を示す。
【図10C】Apo2L/TRAIL感受性及び抵抗性の癌細胞株における特定のO−グリコシル化酵素の異なる発現を示す。結腸直腸癌細胞株におけるFut−6(上図、プローブセット211885_x_at)及びppGalNAcT−3(下図、プローブセット203397_s_at)のmRNA発現レベルを示す。細胞株はBと同様に配置されている。図B及びCのP値は、細胞株の感受性(高度及び中程度)とカットオフを上回るmRNA発現との相関関係のフィッシャー試験に基づいている。
【図10D】Apo2L/TRAIL感受性及び抵抗性の癌細胞株における特定のO−グリコシル化酵素の異なる発現を示す。確立された腫瘍異種移植片の成長に対するApo2L/TRAILの影響を示す。GalNAcT−3/Fut−6−陽性(左図)又はGalNAcT−3/Fut−6−陰性(右図)腫瘍を持つ無胸腺ヌードマウスに対し、溶媒又はApo2L/TRAIL(60mg/kg/日で0−4日目に腹腔内注入)を投与し、腫瘍の容積をモニタリングした(平均±SE、N=10マウス/グループ)。
【図11A】特定のO−グリコシル化酵素の調節によるApo2L/TRAILに対する感受性の変化を示す。Colo205細胞を、チンパンジーのO−グリコシル化酵素阻害剤ベンジル−GalNAc(bGalNAc)とともにプレインキュベートし、Apo2L/TRAILで24時間に亘って処置し、細胞生存度を決定した(DMSO=溶媒コントロール)。
【図11B】特定のO−グリコシル化酵素の調節によるApo2L/TRAILに対する感受性の変化を示す。カスパーゼ−8又はppGalNAcT−14のsiRNAを48時間に亘ってPSN−1(膵臓癌腫)及びHs294T(黒色腫)細胞に形質移入し、Apo2L/TRAILとともに更に24時間インキュベートし、細胞生存度を決定した。非標的配列(Dharmacon)に対するsiRNA二本鎖をコントロールとして使用した(NTC)。
【図11C】特定のO−グリコシル化酵素の調節によるApo2L/TRAILに対する感受性の変化を示す。siRNAによりppGalNAcT−3又はFut−6をDLD−1結腸直腸癌腫細胞に形質移入し、Bと同様に試験した。
【図11D】特定のO−グリコシル化酵素の調節によるApo2L/TRAILに対する感受性の変化を示す。ppGalNAcT−14又はベクターコントロールと組み合わせて図示の遺伝子をコードするプラスミドを、HEK293細胞に同時形質移入した。アネキシンV染色(左図)により、24時間後にアポトーシスを測定した。H1569黒色腫細胞にppGalNAcT−14発現を促すレトロウイルス又はコントロールレトロウイルスを形質導入した。結果として得られた細胞株のプールを24時間に亘ってApo2L/TRAILで処理し、細胞生存度を決定した(右図)。抗FLAG抗体を用いたウエスタンブロット分析を使用して、エピトープタグを付けたppGalNAcT−14の発現を検証した。
【図12A】Apo2L/TRAILによって誘発されたカスパーゼカスケードの分析を示す。PSN−1及びDLD−1細胞に、それぞれppGalNAcT−14又はFut−6に対するsiRNAを48時間に亘り形質移入した。4又は8時間に亘ってApo2L/TRAILにて細胞を処理し、カスパーゼ−8、Bid、カスパーゼ−9、カスパーゼ−3、又は添加コントロールとしてのアクチンに特異的な抗体を用いた免疫ブロットにより細胞溶解物を分析した。
【図12B】Aと同様に、ppGalNAcT−14のsiRNAをPSN−1細胞に形質移入し、4時間に亘ってApo2L/TRAIL処理を行い、細胞可溶化物におけるカスパーゼ−3/7酵素活性を決定した。
【図12C】Apo2L/TRAIL DISCの分析を示す。Aと同様に、ppGalNAcT−14のsiRNAをPSN−1細胞に形質移入した。FLAG−Apo2L/TRAIL(1mg/ml)を0−60分に亘って加え、細胞を溶解させ、抗FLAG抗体を用いた免疫沈降を行った。免疫ブロットによりDISCに随伴するFADD、カスパーゼ−8、DR4を検出した。
【図12D】PSN−1細胞に対し、Cと同様の形質移入、処理、及びDISC免疫沈降を行い、上述のようにしてDISCに随伴するカスパーゼ−8の酵素活性を測定した(Sharp等、J. Biol. Chem., 280:19401 (2005))。
【図13A】HPAEC−PAD(パルス電流検出器と組み合わせた高性能陰イオン変換クロマトグラフィー)によって実施された、CHO細胞中に生成された組換えヒトDR5(Longスプライス変異体)の単糖分析を示す。
【図13B】ヒトApo2L/TRAILレセプター(ヒトDR5の長形440aa「hDR5L」、ヒトDR5の短形411aa型「hDR5S」及びhDR4)、マウスDR5(mDR5)、ヒトFas(hFas)並びにヒトTNFR1(hTNFR1)の配列比較である。囲み内は推定上のO−グリコシル化部位を示す。
【図13C】Dに対応する全体の細胞溶解物の免疫ブロット分析である。DR5L−5T及びDR5S−5Tは、5のスレオニンからアラニンへの置換を含むコンストラクトであり、DR5L−5T3S及びDR5S−5T3Sは、潜在的なO−グリコシル化部位である残基中に5のスレオニンからアラニンへの置換と3のセリンからアラニンへの置換をそれぞれ含むコンストラクトである。
【図13D】図示のDR5コンストラクトをベクター又はppGalNAcT−14プラスミドと共にHEK293細胞に48時間に亘って形質移入し、アネキシンV染色によってアポトーシスを測定した。
【図13E】皮膚の癌(SCC=扁平上皮癌)、肺癌、膵臓癌(Panc)、乳癌、卵巣癌(Ov)、子宮内膜癌(Endo)、膀胱癌(Bla、TCC=移行上皮癌)及びNHL(FL=濾胞性リンパ腫、DLBCL=びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)から採取した原発性ヒト腫瘍試料におけるppGalNAcT−14のmRNA発現レベル(Affymetrixチップ、プローブセット219271_at)を示す。各分類の試料の発現の中央値を水平な線で示す。図10Bの細胞株のデータに対応して500及び200(黒色腫)のカットオフが示されている。
【図14A】48時間のsiRNAノックダウン後の、PSN−1又はDLD−1細胞におけるppGalNAcT−14又はppGalNAcT−3のmRNA発現の低下を示すTaqman分析である。
【図14B】空のプラスミド(Empty)、野生型GalNAcT−14(GalNAcT−14)又はsiGalNAcT−14(1)媒介によるppGalNAcT−14ノックダウン後のsiRNAサイレント変異を含むGalNAcT−14(GalNAcT−14si(1)Mut)の形質移入により、PSN−1細胞中に再構成されたGalNAcT−14の発現を示す。
【図14C】RNAの干渉によるppGalNAcT−3又はFut−6の下方制御は、C170(結腸直腸癌)細胞におけるApo2L/TRAIL誘導性の細胞死を抑制した。実験手順は11Cと同様である。(表1)A)siRNAノックダウン表現型をまとめた表である。GalNAcT−14又はppGalNAcT−3及びFut−6の下方制御がApo2L/TRAILからの保護となった細胞株には、試験した少なくとも一つのsiRNAオリゴヌクレオチドに関して、50%未満の保護(+)又は50%を超える保護(++)をマークした。(0)は、Apo2L/TRAILに対する保護が観察されなかったことを示す。
【図14D】図示のsiRNAにより48時間のノックダウンを行った後、濃度を増大させながらエトポシド又はスタウロスポリンにより細胞を24時間に亘って処理し、細胞生存度アッセイを行った結果を示す。
【図14E】図示のsiRNAにより48時間のノックダウンを行った後、濃度を増大させながらエトポシド又はスタウロスポリン(STS)により細胞を24時間に亘って処理し、細胞生存度アッセイを行った結果を示す。
【図14F】PA−TU−8902及びPL−45細胞株のプールを過剰発現するレトロウイルスppGalNAcT−14に対し、Apo2L/TRAIL処理を行ってから細胞生存度アッセイを行った結果を示す。抗FLAG抗体を用いたウエスタンブロット分析により、レトロウイルスがこれら細胞にppGalNAcT−14を発現することが示された。
【図15A】Apo2L/TRAIL感受性Colo205及び抵抗性結腸直腸癌細胞株である、PKO及びSW1417におけるApo2L/TRAIL誘導性のカスパーゼ活性化カスケードのウエスタンブロット分析を示す。細胞は、1000ng/mlのApo2L/TRAILにより8時間及び24時間に亘って処理し、全体の細胞溶解物に対し、カスパーゼ−8、Bid、カスパーゼ−9、カスパーゼ−3及び添加コントロールとしてのアクチンに対して特異的な抗体を用いたウエスタンブロット分析を行った。
【図15B】Fut−6のノックダウンにより、DLD−1細胞中のApo2L/TRAIL DISCにおけるカスパーゼ−8の補充及び活性化が低減した。実験手順は12Dに従った。
【図15C−1】図示の遺伝子を用いてsiRNAノックダウンを行った細胞におけるDR4の細胞表面発現を、FACS分析により測定したものである。
【図15C−2】図示の遺伝子を用いてsiRNAノックダウンを行った細胞におけるDR5の細胞表面発現を、FACS分析により測定したものである。
【発明の開示】
【0001】
(出願について)
この出願は、2005年8月16日提出の米国特許仮出願番号第60/708,677号及び2006年5月24日提出の同第60/808,076号の優先権を主張し、前記特許文献の内容はここに出典明記により援用される。
【0002】
(発明の分野)
本明細書中に記載の発明は、Apo2L/TRAIL及び/又はデスレセプターアゴニスト抗体に対する哺乳動物細胞の感受性を予測するバイオマーカーを検出するための方法及びアッセイに関する。具体的には、本発明は、Apo2L/TRAIL、或いはDR4又はDR5アゴニスト抗体等のデスレセプターアゴニスト抗体に対する哺乳動物の癌細胞の感受性を予測できるタンパク質のGalNac−Tファミリーに関連する分子を検出する方法とアッセイに関する。
【0003】
(発明の背景)
腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーに属する様々なリガンド及びレセプターが当分野で同定されている。そのようなリガンドの中には、腫瘍壊死因子-α(「TNF-α」)、腫瘍壊死因子-β(「TNF-β」又は「リンホトキシン-α」)、リンホトキシン-β(「LT-β」)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX-40リガンド、4-1BBリガンド、LIGHT、Apo-1リガンド(Fasリガンド又はCD95リガンドとも称される)、Apo-2リガンド(Apo2L又はTRAILとも称される)、Apo-3リガンド(TWEAKとも称される)、APRIL、OPGリガンド(RANKリガンド、ODF又はTRANCEとも称される)、及びTALL-1(BlyS、BAFF又はTHANKとも称される)が含まれる。[例えば、Ashkenazi, Nature Review, 2:420-430 (2002);Ashkenazi及びDixit, Science, 281:1305-1308 (1998);Ashkenazi及びDixit, Curr. Opin. Cell Biol., 11:255-260 (2000);Golstein, Curr. Biol., 7:750-753 (1997) Wallach, Cytokine Reference, Academic Press, 2000, pages 377-411;Locksley 等, Cell, 104:487-501 (2001);Gruss及びDower, Blood, 85:3378-3404 (1995);Schmid 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 83:1881 (1986);Dealtry 等, Eur. J. Immunol., 17:689 (1987);Pitti 等, J. Biol. Chem., 271:12687-12690 (1996);Wiley 等, Immunity, 3:673-682 (1995);Browning 等, Cell, 72:847-856 (1993);Armitage 等 Nature, 357:80-82 (1992);1997年1月16日公開のWO97/01633;1997年7月17日公開のWO97/25428;Marstersら, Curr. Biol., 8:525-528(1998);Chicheporticheら, Biol. Chem., 272:32401-32410(1997);Hahneら, J. Exp. Med., 188:1185-1190(1998);1998年7月2日公開のWO98/28426;1998年10月22日公開のWO98/46751;1998年5月7日公開のWO/98/18921;Mooreら, Science, 285:260-263(1999);Shuら, J. Leukocyte Biol., 65:680(1999);Schneiderら, J. Exp. Med., 189:1747-1756(1999);Mukhopadhyayら, J. Biol. Chem., 274:15978-15981(1999)参照]。
【0004】
このようなTNFファミリーリガンドによって媒介される様々な細胞性応答の誘導は、一般的に特定の細胞レセプターへの結合によって開始される。すべてではなく、いくつかのTNFファミリーリガンドは、細胞表面の「デスレセプター」に結合して、それを介して様々な生物学的活性を誘導し、細胞死やアポトーシス経路を行うカスパーゼ又は酵素を活性化する(Salvesen 等, Cell, 91:443-446 (1997)。今日までに同定されたTNFレセプタースーパーファミリーのメンバーには、TNFR1、TNFR2、TACI、GITR、CD27、OX-40、CD30、CD40、HVEM、Fas (Apo-1又はCD95とも称される)、DR4 (TRAIL-R1とも称される)、DR5 (Apo-2又はTRAIL-R2とも称される)、DcR1、DcR2、破骨細胞分化抑制因子(OPG)、RANK及びApo-3 (DR3又はTRAMPとも称される)が含まれる。(例えば、Ashkenazi, Nature Reviews, 2:420-430 (2002);Ashkenazi及びDixit, Science, 281:1305-1308 (1998);Ashkenazi及びDixit, Curr. Opin. Cell Biol., 11:255-260 (2000);Golstein, Curr. Biol., 7:750-753 (1997) Wallach, Cytokine Reference, Academic Press, 2000, 377-411頁;Locksley 等., Cell, 104:487-501 (2001);Gruss and Dower, Blood, 85:3378-3404 (1995);Hohman 等, J. Biol. Chem., 264:14927-14934 (1989);Brockhaus 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 87:3127-3131 (1990);1991年3月20日出願の欧州特許第417,563;Loetscher 等, Cell, 61:351 (1990);Schall 等, Cell, 61:361 (1990);Smith 等, Science, 248:1019-1023 (1990);Lewis 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 88:2830-2834 (1991);Goodwin 等, Mol. Cell. Biol., 11:3020-3026 (1991);Stamenkovic 等, EMBO J., 8:1403-1410 (1989);Mallett 等, EMBO J., 9:1063-1068 (1990);Anderson 等, Nature, 390:175-179 (1997);Chicheportiche 等, J. Biol. Chem., 272:32401-32410 (1997);Pan 等, Science, 276:111-113 (1997);Pan 等, Science, 277:815-818 (1997);Sheridan 等, Science, 277:818-821 (1997);Degli-Esposti 等, J. Exp. Med., 186:1165-1170 (1997);Marsters 等, Curr. Biol., 7:1003-1006 (1997);Tsuda 等, BBRC, 234:137-142 (1997);Nocentini 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 94:6216-6221 (1997);vonBulow 等, Science, 278:138-141 (1997))。
【0005】
これらTNFレセプターファミリーメンバーの多くは、細胞外領域、膜貫通領域及び細胞内領域を含む細胞表面レセプターの典型的な構造を共有しており、一方、他のメンバーは膜貫通領域と細胞内ドメインを欠いた可溶性タンパク質として天然にみられる。典型的なTNFRの細胞外部位には、NH2-末端から始まる複数のシステインリッチドメイン(CRD)の反復性のアミノ酸配列パターンを含有する。
Apo-2L又はTRAILと称されるリガンドはサイトカインのTNFファミリのメンバーとして数年前に同定された。[例えばWileyら, Immunity, 3:673-682 (1995);Pittiら, J. Biol. Chem., 271:12697-12690 (1996);国際公開公報97/01633;国際公開公報97/25428;1998年6月9日発行の米国特許第5,763,223号;2001年9月4日発行の米国特許第6284236を参照]。完全長天然配列ヒトApo2L/TRAILポリペプチドは281アミノ酸長のII型膜貫通タンパク質である。ある細胞は、ポリペプチドの細胞外領域の酵素切断によって、そのポリペプチドの天然の可溶型を生じうる[Marianiら, J. Cell. Biol., 137:221-229 (1997)]。Apo2L/TRAILの可溶型の結晶学的研究はTNF及び他の関連タンパク質の構造に類似したホモ三量体構造を明らかにする[Hymowitzら, Molec. Cell, 4:563-571 (1999);Cha 等, Immunity, 11:253-261 (1999);Mongkolsapaya 等, Nature Structural Biology, 6:1048 (1999);Hymowitz 等, Biochemistry, 39:633-644 (2000)]。しかし、他のTNFファミリーメンバーとは異なり、Apo2L/TRAILは、(ホモ三量体の各サブユニットの位置230の)3つのシステイン残基が併せて亜鉛原子を配位しており、亜鉛の結合が三量体の安定性と生物学的活性のために重要であるという独特の構造的特徴を有していることが分かった。[上掲のHymowitzら; Bodmerら, J. Biol. Chem., 275:20632-20637 (2000)]。
【0006】
Apo2L/TRAILは関節リウマチなどの自己免疫性疾患を含む、免疫系の調節において働きうることが文献で報告されている[例として、Thomas 等, J. Immunol., 161:2195-2200 (1998);Johnsen 等, Cytokine, 11:664-672 (1999);Griffith 等, J. Exp. Med., 189:1343-1353 (1999);Song 等, J. Exp. Med., 191:1095-1103 (2000)を参照]。
また、Apo2L/TRAILの可溶型は大腸、肺、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣及び脳腫瘍を含む様々な癌細胞並びに黒色腫、白血病、及び多発性骨髄腫においてアポトーシスを誘導することが報告されている[例えば、上掲のWileyら;上掲のPittiら;2000年2月29日発行の米国特許第6,030,945号;2004年6月8日発行の米国特許第6,746,668号;Rieger 等, FEBS Letters, 427:124-128 (1998);Ashkenazi 等, J. Clin. Invest., 104:155-162 (1999);Walczak 等, Nature Med., 5:157-163 (1999);Keane 等, Cancer Research, 59:734-741 (1999);Mizutani 等, Clin. Cancer Res., 5:2605-2612 (1999);Gazitt, Leukemia, 13:1817-1824 (1999);Yu 等, Cancer Res., 60:2384-2389 (2000);Chinnaiyan 等, Proc. Natl. Acad. Sci., 97:1754-1759 (2000)を参照のこと]。マウス腫瘍モデルでのインビボ研究は、Apo2L/TRAILが、単独で又は化学療法や放射線療法と組み合わせて、実質的な抗腫瘍効果を生じうることを示唆している[例えば上掲のAshkenaziら;上掲のWalzcakら;Gliniakら, Cancer Res., 59:6153-6158 (1999);上掲のChinnaiyanら;Rothら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 265:1999 (1999);PCT出願 US/00/15512;PCT出願 US/01/23691を参照のこと]。多くのタイプの癌細胞とは対照的に、殆どの正常なヒト細胞タイプはApo2L/TRAILのある種の組換え形態によるアポトーシスの誘導に対して耐性があるように思われる[上掲のAshkenaziら;上掲のWalzcakら]。JoらはApo2L/TRAILのポリヒスチジンタグ可溶型が正常な単離された非ヒトではなくヒト肝細胞においてインビトロにてアポトーシスを誘導したことを報告している[Joら, Nature Med., 6:564-567 (2000);またNagata, Nature Med., 6:502-503 (2000)を参照のこと]。ある種の組換えApo2L/TRAIL調製物は、例えばタグ分子の有無、亜鉛含有量、及び三量体の含有%に応じて、罹患細胞対正常細胞に対する生化学的性質及び生物学的活性に関して変動しうると考えられている。[Lawrenceら, Nature Med., Letter to the Editor, 7:383-385 (2001);Qinら, Nature Med., Letter to the Editor, 7:385-386 (2001)]。
【0007】
Apo2L/TRAILは、少なくとも5つの異なるレセプターに結合することが明らかとなった。Apo2L/TRAILに結合するそのレセプターの少なくとも2つは、機能的な細胞質デスドメインを含有している。そのあるレセプターは「DR4」(あるいはTR4又はTRAIL-R1)と称されている(Pan 等, Science, 276:111-113 (1997);また、1998年7月30日公開の国際公開公報98/32856;1999年7月29日公開の国際公開公報99/37684;2000年12月7日公開の国際公開公報00/73349;2003年2月20日公開の米国特許出願公開第2003/0036168号;2002年8月13日発行の米国特許第6,433,147号;2002年10月8日発行の米国特許第6,461,823号及び2002年1月29日発行の米国特許第6,342,383号)。
Apo2L/TRAILの他のレセプターはDR5と称されている(あるいはApo-2;TRAIL-R又はTRAIL-R2、TR6、Tango-63、hAPO8、TRICK2又はKILLERとも称されている) (例として、Sheridan 等, Science, 277:818-821 (1997)、Pan 等, Science, 277:815-818 (1997)、1998年11月19日公開の国際公開公報98/51793;1998年9月24日公開の国際公開公報98/41629;Screaton 等, Curr. Biol., 7:693-696 (1997);Walczak 等, EMBO J., 16:5386-5387 (1997);Wu 等, Nature Genetics, 17:141-143 (1997);1998年8月20日発行の国際公開公報98/35986;1998年10月14日発行の欧州特許第870,827号;1998年10月22日公開の国際公開公報98/46643;1999年1月21日公開の国際公開公報99/02653;1999年2月25日公開の国際公開公報99/09165;1999年3月11日公開の国際公開公報99/11791;2003年5月22日公開の国際公開公報03/042367;2002年12月5日公開の国際公開公報02/097033;2003年5月8日公開の国際公開公報03/038043;2002年8月13日公開の米国特許公開2002/0072091;2001年12月7日公開の米国特許公開2002/0098550;2001年12月6日発行の米国特許第6,313,269号;2001年8月2日公開の米国特許公開2001/0010924;2003年7月3日公開の米国特許公開 2003/01255540;2002年10月31日公開の米国特許公開2002/0160446、2002年4月25日公開の米国特許公開2002/0048785;2004年7月22日公開の米国特許出願公開第2004/0141952号;2005年6月16日公開の同第2005/0129699号;2005年6月16日公開の同第2005/0129616号;2002年2月発行の米国特許第6,342,369号;2003年5月27日発行の米国特許第6,569,642号、2000年6月6日発行の米国特許第6,072,047号、2003年11月4日発行の米国特許第6,642,358号;2004年6月1日発行のIS 6,743,625を参照)。DR4と同様に、DR5は細胞質デスドメインを含有し、リガンド結合時(又はリガンドの活性を擬態するアゴニスト抗体などの分子の結合時)にアポトーシスをシグナル伝達することができることが報告された。Apo-2L/TRAILとDR5とで形成される複合体の結晶構造はHymowitz 等, Molecular Cell, 4:563-571 (1999)に記載されている。
【0008】
リガンドが結合すると、DR4とDR5はともに、FADD/Mort1と称されるデスドメイン含有アダプター分子を介してアポトーシスインヒビターであるカスパーゼ8を増加又は活性化することによって独立してアポトーシスを引き起こしうる[Kischkel 等, Immunity, 12:611-620 (2000);Sprick 等, Immunity, 12:599-609 (2000);Bodmer 等, Nature Cell Biol., 2:241-243 (2000)]。
また、Apo2L/TRAILはDcR1、DcR2及びOPGと称されるレセプターに結合することが報告されている。そのレセプター等はシグナル伝達のトランスデューサーというよりもインヒビターとして機能すると思われている。(例えば、DCR1 (TRID、LIT又はTRAIL-R3とも称される) [Pan 等, Science, 276:111-113 (1997);Sheridan 等, Science, 277:818-821 (1997);McFarlane 等, J. Biol. Chem., 272:25417-25420 (1997);Schneider 等, FEBS Letters, 416:329-334 (1997);Degli-Esposti 等, J. Exp. Med., 186:1165-1170 (1997);及びMongkolsapaya 等, J. Immunol., 160:3-6 (1998);DCR2 (TRUNDD又はTRAIL-R4とも称される) [Marsters 等, Curr. Biol., 7:1003-1006 (1997);Pan 等, FEBS Letters, 424:41-45 (1998);Degli-Esposti 等, Immunity, 7:813-820 (1997)]、及びOPG [Simonet 等、上掲]。DR4及びDR5に反して、DcR1及びDcR2レセプターはアポトーシスをシグナル伝達しない。
【0009】
DR4及び/又はDR5レセプターに結合する特定の抗体が文献で報告されている。例えば、DR4レセプターに対するものであり、特定の哺乳動物細胞においてアゴニスト活性ないしはアポトーシス活性を有する抗DR4抗体は、例として、1999年7月29日公開の国際公開公報99/37684;2000年7月12日公開の国際公開公報00/73349;2003年8月14日公開の国際公開公報03/066661に記載されている。例として、Griffith 等, J. Immunol., 162:2597-2605 (1999);Chuntharapai 等, J. Immunol., 166:4891-4898 (2001);2002年12月2日公開の国際公開公報02/097033;2003年5月22日公開の国際公開公報03/042367;2003年5月8日公開の国際公開公報03/038043;2003年5月8日公開の国際公開公報03/037913;2003年4月17日公開の米国特許出願公開第2003/0073187号;2003年6月12日公開の同第2003/0108516号も参照のこと。特定の抗DR5抗体も同様に記載されている。例として、1998年11月8日公開の国際公開公報98/51793;Griffith 等, J. Immunol., 162:2597-2605 (1999);Ichikawa 等, Nature Med., 7:954-960 (2001);Hylander 等, “An Antibody to DR5 (TRAIL-Receptor 2) Suppresses the Growth of Patient Derived Gastrointestinal Tumors Grown in SCID mice”, Abstract, 2d International Congress on Monoclonal Antibodies in Cancers, Aug. 29-Sept. 1, 2002, Banff, Alberta, Canada;2003年5月8日公開の国際公開公報03/038043 ;2003年5月8日公開の国際公開公報03/037913;2003年9月25日公開の米国特許出願公開2003/0180296を参照のこと。さらに、DR4とDR5レセプターの両方と交差反応する特定の抗体が記載されている(例として、2001年6月26日発行の米国特許第6,252,050号を参照)。
【0010】
(発明の概要)
本明細書に開示される発明は、哺乳動物組織又は細胞試料における一又は複数のバイオマーカーの発現を検査する方法及びアッセイを提供するものであり、この一又は複数のバイオマーカーの発現により該組織又は細胞試料がApo2L/TRAIL又は抗DR5アゴニスト抗体などの薬剤に対して感受性であるか否かを予測するものである。本発明の様々な実施態様では、該方法及びアッセイは、タンパク質のGalNac−Tファミリー、特にGalNAc−T14又はGalNAc−T3における分子の発現を検査するものである。
上記のように、正常なヒト細胞種類の多くは、Apo2L/TRAILの特定の組み換え型によるアポトーシス誘導に抵抗性を示す(上掲のAshkenazi 等;上掲のWalzcak 等)。また、罹患したヒト細胞種類のあるもの(ある種の癌細胞)もApo2L/TRAILの特定の組み換え型によるアポトーシス誘導に抵抗性を示すことが明らかとされている(上掲のAshkenazi 等, J. Clin. Invest., 1999;上掲のWalczak 等, Nature Med., 1999)。したがって、アッセイによって選択されたバイオマーカーの発現について哺乳動物組織又は細胞試料を検査することによって、治療する患者にとって適切ないしは効果的な治療法を判断する際の有効な情報を簡便にかつ効率よく得ることができる。例えば、哺乳動物組織又は細胞試料におけるGalNac−T14の発現を検出するためのアッセイから得られた情報により、医師は、癌などの疾患又は自己免疫疾患などの免疫関連疾患を患っている患者にとって適切な治療計画(Apo2L/TRAIL又はデスレセプターアゴニスト抗体を用いたもの)を決定するために用いることができる有用なデータを得ることができる。
【0011】
本発明は、Apo2L/TRAIL又はデスレセプターアゴニスト抗体に対する哺乳動物組織又は細胞試料(例えば癌細胞)の感受性を予測する方法を提供する。ある実施態様では、前記方法は、哺乳動物組織又は細胞試料を採取し、GalNac−T14の発現について該組織又は細胞を検査することを含む。前記方法は、mRNA及び/又はタンパク質の発現を検出するアッセイ、酵素活性アッセイ、及び本明細書に記載の他のアッセイを含む、様々なアッセイ様式で行うことができる。そのような組織又は細胞がApo2L/TRAIL及び/又はデスレセプター抗体のアポトーシス誘導活性に対して感受性であることが、前記組織又は細胞におけるGalNac−T14の発現の決定により予測されうる。任意の実施態様では、前記組織又は細胞は、DR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターについても検査されうる。
本発明の更なる方法には、哺乳動物組織又は細胞試料を採取し、GalNac−T14の発現について該組織又は細胞を検査し、該組織又は細胞試料がGalNac−T14を発現するかを決定し、有効量のApo2L/TRAIL又はデスレセプターアゴニスト抗体に該組織又は細胞試料を曝す工程を含む、哺乳動物組織又は細胞試料のアポトーシスを誘導する方法が含まれる。GalNac−T14の発現を検査するための方法に含まれる工程は、mRNA及び/又はタンパク質、酵素活性及び本明細書に記載の他のものの発現を検出するアッセイを含む、様々なアッセイ様式で行うことができる。任意の実施態様では、前記方法は、前記組織又は細胞をDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現についても検査することを含む。場合によっては、前記組織又は細胞試料には癌組織又は癌細胞が含まれる。場合によって、組織又は細胞試料には、非小細胞肺癌細胞、膵臓癌細胞、乳癌細胞、又は非ホジキンリンパ腫細胞が含まれる。
【0012】
本発明の更なる方法には、哺乳動物から組織又は細胞試料を採取し、GalNac−T14の発現について該組織又は細胞を検査し、該組織又は細胞試料が該GalNac−T14を発現するかを決定し、有効量のApo2L/TRAIL又はデスレセプターアゴニスト抗体を該哺乳動物に投与する工程を含む、免疫関連疾患や癌などの哺乳動物の疾患の治療方法が含まれる。前記一又は複数のバイオマーカーの発現を検査するための方法に含まれる工程は、mRNA及び/又はタンパク質、酵素活性及び本明細書に記載の他のものの発現を検出するアッセイを含む、様々なアッセイ様式で行われうる。任意の実施態様では、前記方法は、前記組織又は細胞試料をDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現についても検査することを含む。場合によっては、前記方法は哺乳動物の癌を治療することを含む。場合によっては、前記方法は、有効量のApo2L/TRAIL及び/又はデスレセプターアゴニスト抗体の投与に加えて、一又は複数の化学療法剤又は放射線療法が前記哺乳動物に投与されることを含む。
本発明の更なる実施態様では、前記方法は、GalNac−T3等の他のGalNac−T分子の発現について哺乳動物の組織又は細胞を検査する工程を含むことができる。
【0013】
更なる実施態様は、以下の特許請求に例示として具体的に開示される:
1.哺乳動物の組織又は細胞試料のApo2L/TRAILに対する感受性を予測する方法であって、
哺乳動物組織又は細胞試料を採取する工程、
該組織又は細胞試料を検査して、GalNac−T14の発現を検出する工程
を含んでなり、該組織又は細胞試料がApo2L/TRAILのアポトーシス誘導活性に感受性であることが前記GalNac−T14の発現により予測される方法。
2.前記GalNac−T14の発現がGalNac−T14のmRNAの発現を検出することによって検査されるものである、請求項1に記載の方法。
3.前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学によって検査されるものである、請求項1に記載の方法。
4.さらに、前記組織又は細胞試料中のDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項1に記載の方法。
5.前記組織又は細胞試料に癌組織又は癌細胞が含まれる、請求項1に記載の方法。
6.前記癌細胞が、膵臓癌、リンパ腫、又は非小細胞肺癌の細胞又は組織である、請求項5に記載の方法。
7.哺乳動物組織又は細胞試料のアポトーシスを誘導する方法であって、
哺乳動物組織又は細胞試料を採取する工程、
該組織又は細胞試料を検査して、GalNac−T14の発現を検出する工程、
前記GalNac−T14の発現が検出されたら、前記組織又は細胞試料を有効量のApo2L/TRAILに曝す工程
を含んでなる方法。
8.前記GalNac−T14の発現がGalNac−T14のmRNA発現を検出することによって検査されるものである、請求項7に記載の方法。
9.前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学によって検査されるものである、請求項7に記載の方法。
10.さらに、前記組織又は細胞試料中のDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項7に記載の方法。
11.前記組織又は細胞試料に癌組織又は癌細胞が含まれる、請求項7に記載の方法。
12.前記癌細胞が、膵臓癌、リンパ腫、又は非小細胞肺癌の細胞又は組織である、請求項11に記載の方法。
13.前記細胞が、図1のアミノ酸114−281を含む有効量のApo2L/TRAILポリペプチドに曝される、請求項7に記載の方法。
14.哺乳動物の免疫関連疾患又は癌などの疾患の治療方法であって、
前記哺乳動物から組織又は細胞試料を採取する工程、
該組織又は細胞試料を検査してGalNac−T14の発現を検出する工程、
前記GalNac−T14の発現が検出されたら、有効量のApo2L/TRAILを前記哺乳動物に投与する工程
を含んでなる方法。
15.前記GalNac−T14の発現がGalNac−T14のmRNA発現を検出することによって検査されるものである、請求項14に記載の方法。
16.前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学によって検査されるものである、請求項14に記載の方法。
17.さらに、前記組織又は細胞中のDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項14に記載の方法。
18.前記組織又は細胞試料に癌組織又は癌細胞が含まれる、請求項14に記載の方法。
19.前記癌細胞又は癌組織に、膵臓癌、リンパ腫、又は非小細胞肺癌の細胞又は組織が含まれる、請求項18に記載の方法。
20.図1のアミノ酸114−281を含む有効量のApo2L/TRAILポリペプチドが前記哺乳動物に投与される、請求項14に記載の方法。
21.また、化学療法剤又は放射線療法が前記哺乳動物に投与される、請求項14に記載の方法。
22.また、サイトカイン、細胞障害性剤又は成長阻害剤が前記哺乳動物に投与される、請求項14に記載の方法。
23.前記Apo2L/TRAILポリペプチドがポリエチレングリコール分子に連結する、請求項7に記載の方法。
24.前記Apo2L/TRAILポリペプチドがポリエチレングリコール分子に連結する、請求項14に記載の方法。
25.哺乳動物の組織又は細胞試料の、デスレセプター抗体に対する感受性を予測する方法であって、
哺乳動物から組織又は細胞試料を採取する工程、
該組織又は細胞試料を検査してGalNac−T14の発現を検出する工程
を含み、前記GalNac−T14の発現により、前記組織又は細胞試料がデスレセプター抗体のアポトーシス誘発活性に対して感受性であることが予測される、方法。
26.前記GalNac−T14の発現が、GalNac−T14のmRNA発現の検出によって検査されるものである、請求項25に記載の方法。
27.前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学によって検査されるものである、請求項25に記載の方法。
28.さらに、前記組織又は細胞中のDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項25に記載の方法。
29.前記組織又は細胞試料に癌組織又は癌細胞が含まれる、請求項25に記載の方法。
30.前記癌細胞が、膵臓癌、リンパ腫、又は非小細胞肺癌の細胞又は組織である、請求項29に記載の方法。
31.前記デスレセプター抗体が、アゴニストの抗DR4又は抗DR5抗体である、請求項25に記載の方法。
32.哺乳動物の組織又は細胞試料のアポトーシスを誘導する方法であって、
哺乳動物から組織又は細胞試料を採取し、
GalNac−T14の発現を検出するために、該組織又は細胞試料を検査し、前記GalNac−T14の発現が検出されたら、前記組織又は細胞試料を有効量のデスレセプター抗体に曝す
行程を含んでなる方法。
33.前記GalNac−T14の発現が、GalNac−T14のmRNA発現の検出によって検査されるものである、請求項32に記載の方法。
34.前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学によって検査されるものである、請求項32に記載の方法。
35.さらに、前記組織又は細胞中のDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項32に記載の方法。
36.前記組織又は細胞試料に癌組織又は癌細胞が含まれる、請求項32に記載の方法。
37.前記癌細胞が、膵臓癌、リンパ腫、又は非小細胞肺癌の細胞又は組織である、請求項36に記載の方法。
38.前記細胞が、有効量のアゴニストの抗DR4又は抗DR5抗体に曝される、請求項32に記載の方法。
39.前記細胞が、図3Aに示されるDR5レセプターに結合する有効量のアゴニストDR5抗体に曝される、請求項38に記載の方法。
40.哺乳動物の免疫関連疾患又は癌などの疾患の治療方法であって、
前記哺乳動物から組織又は細胞試料を採取する工程、
該組織又は細胞試料を検査してGalNac−T14の発現を検出する工程、
前記GalNac−T14の発現が検出されたら、有効量のデスレセプター抗体を前記哺乳動物に投与する工程
を含んでなる方法。
41.前記GalNac−T14の発現がGalNac−T14のmRNA発現を検出することによって検査されるものである、請求項40に記載の方法。
42.前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学によって検査されるものである、請求項40に記載の方法。
43.さらに、前記組織又は細胞中のDR4、DR5、DcR1又はDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項40に記載の方法。
44.前記組織又は細胞試料に癌組織又は癌細胞が含まれる、請求項40に記載の方法。
45.前記癌細胞又は癌組織に、膵臓癌、リンパ腫、又は非小細胞肺癌の細胞又は組織が含まれる、請求項44に記載の方法。
46.前記哺乳動物に有効量の抗DR4又はDR5抗体が投与される、請求項40に記載の方法。
47.また、一又は複数の化学療法剤又は放射線療法が前記哺乳動物に投与される、請求項40に記載の方法。
48.また、サイトカイン、細胞障害性剤又は成長阻害剤が前記哺乳動物に投与される、請求項40に記載の方法。
【0014】
(発明の詳細な記載)
本明細書中に記載又は参照の技術及び手順は一般的に十分理解されるものであり、例えばSambrook 等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd. edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載の広く利用される分子クローニング方法論などの、当分野の技術者による従来の方法論を用いて通常行われるものである。好ましくは、市販のキットや試薬の使用を伴う手順は、特に明記しない限り、プロトコル及び/又はパラメータを定義する製造者に従って一般的に行われる。
本方法やアッセを開示する前に、本発明は、ここに記載の特定の方法論、プロトコル、細胞株、動物種や属、コンストラクト及び試薬に限定されるものではなく、変更されてもよいことを理解されたい。また、本明細書中で用いる用語は特定の実施態様のみを開示するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の権利範囲を限定するものでないことを理解されたい。
【0015】
本明細書で用いられる及び添付の特許請求の範囲中の単数形「a」、「and」及び「the」には、明らかな記載がない限り複数形も含まれる。ゆえに、例えば「一般的な変更」なる用語にはは複数の変更が含まれ、「プローブ」なる用語は一ないし複数のプローブ及び当分野の技術者に公知のその等価物及び前述のものを言及する。
本明細書中で引用するすべての出版物は、該出版物が引用される方法及び/又は材料を開示及び記載するために、出典明記によって本明細書中に組み込まれる。本明細書中で引用する出版物は、本出願の提出日前の開示について言及するものである。発明者等は、早い優先日又はより前の発明日のために先行する出版物に権利が与えられないことが認められると解釈されるものではない。さらに、実際の出版日は明記されているものと異なり、個々に検証が必要であろう。
【0016】
I.定義
「Apo2L/TRAIL」、「Apo-2L」、及び「TRAIL」という用語は、図1に示されたアミノ酸配列のアミノ酸残基114-281、95-281、残基92-281、残基91-281、残基41-281、残基15-281、又は残基1-281、並びに上記配列の生物活性な断片、欠失、挿入又は置換変異体を含むポリペプチド配列を称するために、ここでは使用される。一実施態様において、ポリペプチド配列は、図1の残基114-281を含み、場合によっては図1の残基114-281からなる。場合によっては、ポリペプチド配列は、図1の残基92-281又は残基91-281を有する。Apo-2Lポリペプチドは、図1に示す天然のヌクレオチド配列によりコードされ得る。場合によっては、残基Pro119(図1)をコードするコドンは、「CCT」又は「CCG」であってよい。他の一実施態様では、断片又は変異体は生物学的に活性であり、列挙されたApo2L/TRAIL配列の何れかと、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、そして更により好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。場合によっては、Apo2L/TRAILポリペプチドは、図1にて提供されるコード化ポリヌクレオチド配列と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列によりコードされる。本定義は、少なくとも一の天然アミノ酸がアラニン残基によって置換された、Apo2L/TRAILの置換変異体を包含する。Apo2L/TRAILの特定の置換変異体は、少なくとも一のアミノ酸がアラニン残基で置換されたものを包含する。これらの置換変異体には、例えば「D203A」;「D218A」及び「D269A」として同定されているものが含まれる。この命名は、(図1に示されるの番号を用いて)位置203、218及び/又は269で、アスパラギン酸残基がアラニン残基によって置換された、Apo2L/TRAIL変異体を同定するのに使用される。場合によっては、Apo2L変異体はPCT出願国際公開第01/00832号に公開された表1に列挙されている、一又は複数のアラニン置換基を含有していてもよい。置換変異体には、2001年1月4日に公開されている国際公開第01/00832号の表1において同定されている、一又は複数の残基置換が含まれる。また本定義は、組換え又は合成法により調製されるか、又はApo2L/TRAIL供給源から単離された、天然配列Apo2L/TRAILも包含する。本発明のApo2L/TRAILには、PCT出願国際公開第97/25428号及び国際公開第97/01633号に開示されたApo2L/TRAIL又はTRAILと称されるポリペプチドも含まれる。「Apo2L/TRAIL」又は「Apo2L」なる用語は、一量体、二量体又は三量体形態のポリペプチドを含む、Apo2L/TRAIL形態のものを一般的に称するために使用される。特に記載しない限りは、Apo2Lに記載されているアミノ酸残基の全てのナンバリングが、図1のナンバリングに使用されている。例えば「D203」又は「Asp203」は、図1に付与された配列の位置203にあるアスパラギン酸残基を意味する。
【0017】
「Apo2L/TRAIL細胞外ドメイン」又は「Apo2L/TRAIL ECD」なる用語は、膜貫通及び細胞質ドメインが本質的にないApo2L/TRAILの形態を称する。通常、ECDはこのような膜貫通及び細胞質ドメインを1%未満、好ましくはこのようなドメインを0.5%未満有している。本発明のポリペプチドとして同定される任意の膜貫通ドメイン(一又は複数)は、疎水性ドメインのタイプのものを同定するのに、当該分野で常套的に使用されている基準に従い同定されると理解されるであろう。膜貫通ドメインの正確な境界は多様であるが、多くの場合は、最初同定されたドメインのいずれかの末端において、約5アミノ酸を超えないと思われる。好ましい実施態様において、ECDは、膜貫通及び細胞質又は細胞内ドメインのない(膜に結合していない)ポリペプチドの、可溶性の細胞外ドメイン配列からなる。Apo-2L/TRAILの特定の細胞外ドメインは、PCT出願国際公開第97/01633号及び国際公開第97/25428号に記載されている。
「Apo2L/TRAIL単量体」又は「Apo2L単量体」なる用語は、Apo2Lの細胞外ドメイン配列の共有鎖を称する。
「Apo2L/TRAIL二量体」又は「Apo2L二量体」なる用語は、ジスルフィド結合を介して共有結合に連結した2つのApo-2Lモノマーを称する。ここで使用される場合の用語には、独立したApo2L二量体、及び三量体形態のApo2L内にある二量体(すなわち、互いに結合した、第2のApo2L単量体)が含まれる。
「Apo2L/TRAIL三量体」又は「Apo2L三量体」なる用語は、非共有結合している3つのApo2L単量体を称する。
「Apo2L/TRAIL凝集体」なる用語は、自己結合した高級オリゴマー性形態のApo2L/TRAIL、例えばApo2L/TRAIL三量体、さらには六量体及びナノ量体(nanomeric)の形態のApo2L/TRAILを形成するものを称するために使用する。Apo2L/TRAIL単量体、二量体又は三量体(又は他の凝集体)の存在性及び量の決定は、当該分野で公知の方法及びアッセイ(市販されている物質を使用)、例えば天然サイズ排除HPLC(「SEC」)、ドデシル硫酸ナトリウムを使用する変性サイズ排除(「SDS-SEC」)、逆相HPLC、キャピラリー電気泳動によりなされ得る。
【0018】
「Apo-2リガンドレセプター」は、当分野では、図2及び3それぞれに示すポリヌクレオチド及びポリペプチド配列を有する「DR4」及び「DR5」として称されるレセプターを含む。Panらにより、「DR4」と呼ばれるTNFレセプターファミリーのメンバーが開示されている(Pan等, Science, 276:111-113, 1997年;また、1998年7月30日公開のWO98/32856;1999年7月29日公開の国際公報99/37684;2000年12月7日公開の国際公報00/73349;2002年8月13日発行の米国特許第6,433,147号;2002年10月8日発行の米国特許第6,461,823号及び、2002年1月29日発行の米国特許第6,342,383号を参照)。Sheridan等によるScience, 277:818-821(1997年)及びPan等によるScience, 277:815-818(1997年)には、Apo2L/TRAILの他のレセプターが開示されている(1998年11月19日公開の国際公報98/51793;1998年9月24日公開の国際公報98/41629も参照)。このレセプターはDR5と称される(あるいは、該レセプターはApo−2;TRAIL−R、TR6、Tango−63、hAPO8、TRICK2又はKILLERとも称される;Screaton等, Curr. Biol., 7:693-696, 1997年;Walczak等, EMBO J., 16:5386-5387, 1997年;Wu等, Nature Genetics, 17:141-143, 1997年;1998年8月20日公開の国際公報98/35986;1998年10月14日公開の欧州特許第870,827号;1998年10月22日公開の国際公報98/46643;1999年1月21日公開の国際公報99/02653;1999年2月25日公開の国際公報99/09165;1999年3月11日公開の国際公報99/11791;2002年8月13日公開の米国公開特許2002/0072091;2001年12月7日公開の米国公開特許2002/0098550;2001年12月6日発行の米国特許第6,313,269号;2001年8月2日公開の米国公開特許2001/0010924;2003年7月3日公開の米国公開特許2003/01255540;2002年10月31日公開の米国公開特許2002/0160446、2002年4月25日公開の米国公開特許2002/0048785;2003年5月27日発行の米国特許第6,569,642号;2000年6月6日発行の米国特許第6,072,047号;2003年11月4日発行の米国特許第6,642,358号参照)。上記のように、Apo−2Lの他のレセプターはDcR1、DcR2及びOPGを含む(Sheridan等., 上掲;Marsters 等., 上掲;及びSimonet 等.,上掲)。ここで用いられるところの「Apo−2Lレセプター」という用語は、天然配列レセプターとレセプター変異体を包含する。これらの用語はヒトを含む様々な哺乳動物で発現されるApo−2Lレセプターを包含する。Apo−2Lレセプターは、多くのヒト組織株で自然に起こるように内在的に発現されてもよいし、あるいは組換え又は合成方法によって発現されてもよい。「天然配列Apo−2Lレセプター」には、天然由来のApo−2Lレセプターと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。ゆえに、天然配列Apo−2Lレセプターは、任意の動物由来の天然に生じるApo−2Lレセプターのアミノ酸配列を持ちうる。そのような天然配列Apo−2Lレセプターは、天然から単離してもよいし、組み換え又は合成手法により生成することもできる。特に、「天然配列Apo−2Lレセプター」なる用語は、天然に生じる切断型又は分泌型のレセプター(例えば、可溶型を含む、さらには細胞外ドメイン配列)、天然に生じる変異型(例えば、選択的スプライシング型)、及び天然に生じる対立変異型を包含する。レセプター変異型は天然配列Apo−2Lレセプターの断片又は欠損変異型を含みうる。図3Aは1998年11月19日公開の国際公報98/51793に公開されたヒトDR5の411アミノ酸配列を示す。ヒトDR5の転写スプライシング変異体は当分野で公知である。このDR5スプライシング変異体は、1998年8月20日に公開の国際公報98/35986に公開された図3B及び図3Cに示すヒトDR5の440アミノ酸配列をコードする。
【0019】
「デスレセプター抗体」は、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーであり、アポトーシスをシグナル伝達することができるデスドメインを含有するレセプターに対する抗体(一ないし複数)を一般的に意味するものであり、このような抗体にはDR5抗体及びDR4抗体が含まれる。
「DR5レセプター抗体」、「DR5抗体」又は「抗DR5抗体」とは、広義で、図3Aに示される1−411配列又は図3B−3Cに示される1−440配列等のDR5レセプター、或いはその細胞外ドメインの少なくとも一形態に結合する抗体を意味する。場合によっては、DR5抗体は異種性配列又は分子に融合又は結合する。好ましくは、異種性配列は抗体がより高次の複合体又はオリゴマー複合体を形成させる又は形成を補助する。場合によっては、DR5抗体はDR5レセプターに結合するが、任意の付加的なApo-2Lレセプター(例えばDR4、DcR1又はDcR2)と結合又は交差反応をしない。場合によっては、抗体はDR5シグナル伝達活性のアゴニストである。
場合によっては、本発明のDR5抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.1nMから約20mMの範囲の濃度でDR5レセプターに結合する。場合によっては、本発明のDR5抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.6nMから約18mMのIC50値を示す。
【0020】
「DR4レセプター抗体」、「DR4抗体」又は「抗DR4抗体」とは、広義で、DR4レセプター又はその細胞外ドメインの少なくとも一形態に結合する抗体を意味する。場合によっては、DR4抗体は異種性配列又は分子に融合又は結合する。好ましくは、異種性配列は抗体がより高次の複合体又はオリゴマー複合体を形成させる又は形成を補助する。場合によっては、DR4抗体はDR4レセプターに結合するが、任意の付加的なApo-2Lレセプター(例えばDR5、DcR1又はDcR2)と結合又は交差反応をしない。場合によっては、抗体はDR4シグナル伝達活性のアゴニストである。
場合によっては、本発明のDR4抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.1nMから約20mMの範囲の濃度でDR4レセプターに結合する。場合によっては、本発明のDR4抗体は、BIAcore結合アッセイの測定による約0.6nMから約18mMのIC50値を示す。
「アゴニスト」なる用語は広義で用いられ、Apo2L/TRAIL、DR4ないしDR5のインビトロ、インサイツないしインビボでの一以上の生物学的活性を部分的又は完全に亢進、刺激又は活性化する任意の分子を含む。このような生物学的活性の例には、Apo2L/TRAILの、DR4又はDR5への結合、アポトーシス並びに更に文献に報告されているものが含まれる。アゴニストは直接的ないし間接的形式で機能しうる。例えば、アゴニストは、レセプター活性化又はシグナル伝達を起こすDR4ないしDR5への直接的結合の結果としてのインビトロ、インサイツないしインビボでのDR4ないしDR5の一以上の生物学的活性を部分的又は完全に亢進、刺激又は活性化するために機能するかもしれない。また、アゴニストは、例えば、DR4又はDR5の活性化ないしシグナル伝達を引き起こす他のエフェクター分子を刺激する結果としてのDR4ないしDR5のインビトロ、インサイツないしインビボでの一以上の生物学的活性を部分的又は完全に亢進、刺激又は活性化するために間接的に機能するかもしれない。アゴニストは、DR4ないしDR5の活性化ないし活性を亢進又は増強するように間接的に機能するエンハンサー分子として働きうることが考えられる。例えば、アゴニストは哺乳動物の内因性のApo−2Lの活性を亢進しうる。例えば、これはDR4ないしDR5をプレ複合体化することによって、ないし、DR4ないしDR5レセプターとのそれぞれのリガンドの複合体を安定化することによって達成することができる(Apo−2LとDR4ないしDR5との天然複合体型を安定化するなど)。
【0021】
本出願中で用いられる「バイオマーカー」なる用語は一般的に、遺伝子、タンパク質、糖質構造又は糖脂質を含む分子を指し、哺乳動物組織又は細胞中ないしは組織又は細胞上での該分子の発現は標準的な方法(又は本明細書中で開示される方法)によって検出されうるものであり、哺乳動物細胞又は組織のApo2L/TRAILないしはデスレセプター抗体への感受性を予測するものである。本発明で考慮されるこのようなバイオマーカーには、限定するものではないが、タンパク質のGalNac−Tファミリーに含まれる分子が含まれる。遺伝子及びタンパク質のヒトN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(「GalNac−T」)ファミリーのメンバーが開示されており(例えば、Hang等、"The chemistry and biology of mucin-type O-linked glycosylation initiated by the polypeptide N-acetyl-galactosaminyltransferases", Bioorganic & Medicinal Chemistry (2005年5月www.sciencedirect.comにおいて閲覧可能)、及びそれに引用される参考文献;Weng等、BBRC、300:738-744(2003)及びそれに引用される参考文献参照)、タンパク質におけるO結合型糖鎖の数及び位置の決定に機能すると考えられる。場合によっては、このようなバイオマーカーの発現は、コントロール組織又は細胞試料に観察されるものよりも高く測定される。場合によっては、例えば、このようなバイオマーカーの発現は、遺伝子発現マイクロアレイ、定量的PCR又は免疫組織化学(IHC)アッセイを用いて決定される。場合によっては、GalNac−T14又はGalNac−T3等のGalNac−Tバイオマーカーの発現は、Affymetrix U133Pマイクロアレイ分析によって測定する場合、少なくとも750のレベルで検出され、定量的PCRを用いて該バイオマーカーの発現を検出する場合、コントロール組織又は細胞試料に観察されるものの少なくとも500倍、好ましくは少なくとも1000倍が試験組織又は細胞試料において検出される。
【0022】
本明細書において使用される「UDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチド N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ−T14」、「pp−GalNac−T14」、「GalNac−T14」、「GALNT14」は、N−末端細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、基部領域及び触媒ドメインを含む分子のGalNac−Tファミリーの特徴的性質を有する2型膜タンパク質を指す。随意的実施態様では、ヒトGalNac−T14分子は、図4Aに示すように、552アミノ酸タンパク質をコードする1659の塩基対を含む。完全長ヒトcDNAは、受入番号AB078144としてGenBankに寄託されている。Wang等、BBRC, 300:738-744 (2003)に開示されているように、エクソン2、3、及び/又は4等の特定のエクソンを含む(又は含まない)GalNac−T14のスプライスされたアイソフォームが同定されている。本発明は、そのようなGalNac−T14の様々なアイソフォームのいずれかの発現を試験すること、及びそのようなアイソフォームのいずれか一つの発現によって、哺乳動物の組織又は細胞試料の、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体に対する感受性を予測することを考慮する。
本明細書において使用される「UDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチド N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ−T3」、「pp−GalNac−T3」、「GalNac−T3」、「GALNT3」は、N−末端細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、基部領域及び触媒ドメインを含む分子のGalNac−Tファミリーの特徴的性質を有する2型膜タンパク質を指す。随意的実施態様では、ヒトGalNac−T3ポリペプチドは、図4Bに示すアミノ酸配列を含む。GalNac−T3はさらにBennett等、J. Biol. Chemistry, 271:17006-17012 (1996)に記載されている。
【0023】
「被検体」又は「患者」は、ヒトを含む、治療が望まれる任意の単一の被検体を意味する。また、臨床試験に用いられる疾患の臨床的な特徴を全く示さない任意の被検体、又は疫学的な研究に用いられる被検体、又はコントロールとして用いられる被検体も被検体に含まれる。
本明細書中で用いられる「哺乳動物」なる用語は、哺乳動物と分類される任意の哺乳動物、例えばヒト、ウシ、ウマ、イヌ及びネコを意味する。本発明の好適な実施態様では、哺乳動物がヒトである。
「組織又は細胞試料」は、被検体又は患者の組織から採取された同種の細胞の集まりを意味する。組織又は細胞試料の供給源は、新鮮な、凍結された及び/又は保存されていた臓器や組織試料又は生検又は吸引による固形組織;血液又は血液成分;大脳脊髄液、羊水、腹水又は間質液などの体液;被検体の妊娠期又は発生期の任意の時期の細胞であってもよい。また、組織試料は原発性又は培養した細胞又は細胞株であってもよい。場合によっては、組織又は細胞試料は原発性腫瘍又は転移性腫瘍から得られる。組織試料は、防腐剤、抗凝血物質、バッファ、固定液、栄養分、抗生物質など天然の組織にはもともと混在していない化合物を含んでもよい。
【0024】
本明細書中の組織試料の「切断部分」とは、組織試料の一部又は一片、例えば組織試料から切り出した組織又は細胞の一薄片を意味する。組織試料の複数の切断部分は採取され、本発明の分析に供されうることが理解される。これにより、本発明は、組織試料の同じ切断部分は形態学的及び分子的レベルで分析されるか、タンパク質及び核酸の両方に関して分析される方法を含む。
「相関」又は「相関する」は、任意の方法で、第一の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果を、第二の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果と比較することを意味する。例えば、第二のプロトコルを行う際に第一の分析又はプロトコルの結果を用いてもよいし、第一の分析又はプロトコルの結果を用いて、第二の分析又はプロトコルを行うかどうかを決定してもよい。本明細書の様々な実施態様に関し、mRNA発現等の分析アッセイの結果、又はIHCの結果を用いて、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体を使用する特定の治療計画を実行するかどうかを決定してもよい。
「核酸」は、任意のDNA又はRNAを含むことを意味する。例えば、染色体性核酸、ミトコンドリア核酸、ウイルス核酸及び/又は細菌性核酸が組織試料中に存在する。「核酸」なる用語は、二本鎖の核酸分子の何れか又は両鎖を包含し、原型の核酸分子の任意の断片又は部分を包含する。
【0025】
「遺伝子」は、タンパク質をコードする又は転写する、あるいは他の遺伝子発現を調節する際に機能的に働く任意の核酸配列又はその一部を意味する。遺伝子は、機能的なタンパク質のコード化を担うすべての核酸又はタンパク質のコードあるいは発現を担う核酸の一部のみを構成してもよい。核酸配列は、エクソン、イントロン、開始領域又は終末領域、プロモータ配列、他の調節配列又は遺伝子に近接する特定の領域内に遺伝的な異常を含有してもよい。
本明細書中で用いられる「標識」なる用語は、核酸プローブや抗体などの試薬に直接的又は間接的にコンジュゲートないしは融合され、コンジュゲートないしは融合した試薬の検出を容易にする化合物又は組成物を指す。標識自体が検出可能なもの(例えば放射性標識又は蛍光性標識)であってもよく、酵素標識の場合、検出可能な基質化合物ないしは組成物の化学的変化を触媒するものであってもよい。
【0026】
ここで「抗体」なる用語は、広い意味で用いられ、特に無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成した多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を有する限りにおける抗体断片の範囲にわたる。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくはその抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片;ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多特異性抗体が含まれる。
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間のインターフェイスを形成すると考えられている。
【0027】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域又は相補性決定領域と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つの高頻度可変領域により連結されたβシート配置を主にとる4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近接して結合され、他の鎖の高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, Sequence of Proteins ofImmunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, BEthesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞媒介性障害活性(ADCC)への抗体の関与を示す。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab')2断片を生じ、それは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
【0028】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つの高頻度可変領域は相互に作用してVH-VL二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つの高頻度可変領域が抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つの高頻度可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一つの遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')2抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0029】
任意の脊椎動物種からの抗体(イムノグロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、抗体は異なるクラスが割り当てられる。無傷の抗体には5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、更にそれらは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等のサブクラス(イソ型)に分かれる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。イムノグロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、FvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはscFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。scFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照のこと。
【0030】
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を指し、その断片は同一のポリペプチド鎖(VH−VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)が結合してなる。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成が可能であるリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディーは、例えば、欧州特許第404,097号;国際公報93/11161;及びHollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:6444-6448 (1993)に更に詳細に記載されている。
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる自然に生じる可能性がある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体はハイブリドーマ培養により合成され、他のイムノグロブリンの混入がないという利点がある。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要として構築したものであることを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4816567号を参照のこと)。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks等, J. Mol. biol. 222: 581-597 (1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから作成することもできる。
【0031】
ここで言うモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致する又は類似する重鎖及び/又は軽鎖の一部を含むものであり、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致する又は類似するものである(米国特許第4,816,567号;及びMorrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。ここで対象とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル又はカニクイザルなどの旧世界サル)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む(米国特許第5,693,780号)。
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒトイムノグロブリン(免疫グロブリン)に由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、ヒト免疫グロブリン配列の高頻度可変ループがFRのすべて又は実質的にすべてである少なくとも一又は一般的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、一般的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0032】
ここで使用されるところの「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合に寄与する抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は一般には「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)、及び重鎖可変ドメインの31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))及び/又は「高頻度可変ループ」からの残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含む。「フレームワーク」又は「FR」残基はここで定義するように高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
目的の抗原に「結合する」抗体とは、抗体が抗原発現細胞を標的とした治療薬又は診断剤として有用となるように十分な親和性及び/又は結合活性を有して抗原に結合することができるものである。
ここでの目的のための「免疫治療」とは、抗体を用いた哺乳動物(好ましくはヒト患者)の治療方法を意味し、この抗体はコンジュゲートされたもの又は「ネイキッド」抗体でもよいし、又は一又は複数の細胞障害性剤などの薬剤やヘテロ分子とコンジュゲート又は融合して、それによって「免疫コンジュゲート」を生成してもよい。
【0033】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分は、抗体の診断又は治療への使用を妨害しうる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様においては、抗体は、(1)ローリー(Lowry)法により定量して、抗体が95重量%より多くなるほど、最も好ましくは99重量%より多くなるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るのに十分な程度まで、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるように十分な程度まで精製される。抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
「有効量」という用語は、疑われる疾患又は症状を予防、寛解又は治療するのに効果的な薬剤(例えば、Apo2L/TRAIL、抗DR4抗体又は抗DR5抗体など)の量を意味する。
ここで使用される「処置する」又は「処置」又は「治療」とは、治癒的治療、予防的治療又は防止的治療を称する。連続的治療又は投与とは、一又は複数の日数、治療を中断することなく、少なくとも毎日であることを基本とし治療を行うことを称する。断続的治療又は投与、もしくは断続的な方法での治療又は投与とは、連続させることなく、むしろ本質的には周期的に治療することを称する。
【0034】
「サイトカイン」という用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。そのようなサイトカインの例は、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH)のような糖タンパク質ホルモン;肝増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミューラー阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子;血小板増殖因子;TGF-α及びTGF-βのようなトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子I及びII;エリスロポイエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロン、例えばインターフェロン−α、−β、−γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);及び顆粒球-CSF(G-CSF);IL-1、IL-2、IL-3、 IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、 IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-13、IL-17等のインターロイキン(IL);及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。ここで使用される場合は、サイトカインなる用語は天然源由来あるいは組換え細胞培養由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物的に活性な等価物を含む。
ここで用いられる「細胞障害剤」という用語は、細胞の機能を阻害し又は妨害し、及び/又は細胞の破壊を引き起こす物質を称する。この用語は放射性アイソトープ(例えば、I131、I125、Y90及びRe186)、化学療法剤、及び細菌性、真菌性、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素等の毒素又はその断片を含むことが意図されている。
【0035】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXANTM)のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類、;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin );デュカロマイシン(duocarmycin )(合成類似体、KW-2189及びCBI-TMIを含む); エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin );サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin );クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、ラニムスチン;エネジイン(enediyne) 抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンフィーI1、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照のこと;ダイネミシンA(dynemicinA)を含むダイネミシン(dynemicin);ビスホスホナート類、例えばクロドロナート;エスペラマイシン(esperamicin); 同様にネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン(enediyne) 抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カリミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトロビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(アドリアマイシンTM)(モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン(mitomycins)、例えばマイトマイシンC、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)のようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルラシル(eniluracil);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン(ansamitocin )のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリデンA(roridin A)及びアングイデン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、及びドキセタキセル(タキソテア(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲンシタビン(gemcitabine)(GemzarTM);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;ミトキサントン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン(navelbine)(NavelbineTM);ノバントロン(novantron);テニポシド;エダトレキサート(edatrexate);ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CTP-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸等のレチノイド類;カペシタビン(capecitabine);並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体が含まれる。また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤、例えばタモキシフェン(NolvadexTMを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン(droloxifene)、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びトレミフェン(FarestonTM)を含む抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERMs);副腎におけるエストロゲン生成を調節する、アロマターゼ酵素を阻害するアロマターゼインヒビター、例えば4(5)-イミダゾール類、アミノグルテチミド、酢酸メゲステロール(MegaceTM)、エグゼメスタン(exemestane)、ホルメスタン(formestane)、ファドロゾール、ボロゾール(vorozole)(RivisorTM)、レトロゾール(letrozole)(FemaraTM)、及びアナストロゾール(anastrozole)(ArimidexTM);及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びに上記のものの製薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体が含まれる。
【0036】
ここで使用される場合の「増殖阻害剤」なる用語は、インビトロ又はインビボのいずれかにおいて、ここで同定された任意の遺伝子が発現する細胞、特に癌細胞の成長を阻害する化合物又は組成物を称する。よって、増殖阻害剤とは、S期において、このような細胞が発現する細胞のパーセンテージを有意に低減させるものである。増殖阻害剤の例には、細胞分裂周期の進行をブロックする薬剤(S期以外の場所において)、例えばG1停止及びM期停止を誘発する薬剤が含まれる。伝統的なM期ブロッカーには、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、TAXOL、及びトポIIインヒビター、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。G1を停止させるこれらの薬剤、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニソン、ダカーバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-CがS期停止に溢流する。更なる情報は、Murakamiらにより「細胞分裂周期の調節、オンコジーン、及び抗新生物薬」と題された、癌の分子的基礎、Mendelsohn及びIsrael編、第1章(WB Saunders;Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。
「アポトーシス」及び「アポトーシス活性」という用語は広義に使用され、典型的には、細胞質の凝集、原形質膜の微絨毛の喪失、核の分節化、染色体DNAの分解又はミトコンドリア機能の喪失を含む一又は複数の特徴的な細胞変化を伴う、哺乳動物における細胞死の規則的又はコントロールされた形態を称する。この活性は、当該分野で公知の、例えば細胞生死判別アッセイ(例えばアラマーブルーアッセイ又はMTTアッセイ)、FACS分析、カスパーゼ活性化、DNA断片化(例えば、Nicolettiら, J. Immunol. Methods, 139:271-279(1991)を参照)、ポリ-ADPリボースポリメラーゼ、「PARP」、切断アッセイにより、決定し測定することができる。
【0037】
ここで使用される場合、「疾患」なる用語は、本明細書に記載の組成物による治療により利益を得る任意の症状を指し、有効量のApo2L/TRAIL、抗DR4抗体、及び/又は抗DR5抗体により治療されうる任意の疾患又は疾病を含む。これには、慢性及び急性の疾患、並びに問題の疾患に哺乳動物を罹患させやすくする病理状態が含まれる。ここで治療される疾患の非限定的例には、良性及び悪性の腫瘍;炎症、血管由来及び免疫学的疾患、自己免疫疾患、関節炎(関節リウマチを含む)、多発性硬化症、及びHIV/AIDSが含まれる。
「癌」、「癌性」又は「悪性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を称するか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫、及び肉腫が含まれる。このような癌のより特定の例には、扁平上皮細胞癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、消化器系(管)癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、メラノーマ、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓癌、多形成膠芽腫、子宮頸癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞腫(hepatoma)、乳癌、結腸癌、及び頭頸部の癌が含まれる。
【0038】
「免疫関連疾患」という用語は、哺乳動物の免疫系の成分が、哺乳動物の病理学的状態の原因であるか、媒介又は寄与するものである疾患を意味する。また、免疫反応の刺激又は介在により疾患の進行に改善された効果が付与される疾患も含まれる。この用語には、自己免疫疾患、免疫媒介炎症疾患、非免疫媒介炎症疾患、感染症、及び免疫欠損症が含まれる。そのうちの一部が免疫又はT細胞媒介であり、本発明によって治療することが可能な免疫関連及び炎症性疾患の例には、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎、若年型慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症(強皮症)、特発性炎症性筋疾患(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間ヘモグロビン尿症)、自己免疫性血小板減少症(溶血性血小板減少性紫斑病、免疫媒介血小板減少症)、甲状腺炎(バセドウ病、橋本甲状腺炎、若年型リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、糖尿病、免疫媒介腎疾患(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎)、中枢及び末梢神経系の脱髄疾患例えば多発性硬化症、特発性脱髄多発神経障害又はギラン・バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄性多発神経障害、肝胆道疾患例えば感染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎、及び他の非肝親和性ウイルス)、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、及び硬化性胆管炎、炎症性腸疾患等の炎症性及び線維性肺疾患(潰瘍性大腸炎:クローン病)、グルテン過敏性腸疾患、及びウィップル病、水疱性皮膚病を含む自己免疫又は免疫媒介皮膚疾患、多形滲出性紅斑及び接触性皮膚炎、乾癬、アレルギー性疾患例えば喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症及び蕁麻疹、肺の免疫疾患例えば好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性肺炎、拒絶反応及び移植片対宿主病を含む移植関連疾患が含まれる。感染症疾患には、AIDS(HIV感染)、A、B、C、D及びE型肝炎、細菌感染症、真菌感染症、原虫感染症及び寄生虫症が含まれる。
【0039】
本明細書の「自己免疫疾患」という語は広義で使用され、一般的な意味で、自己の組織成分に対する個体の体液性又は細胞性免疫反応から正常又は健康な組織の破壊が生じる、哺乳動物の障害、又は状態を指す。例として、これらに限定するものではないが、エリテマトーデス、甲状腺炎、リウマチ様関節炎、乾癬、多発性硬化症、自己免疫糖尿病、及び炎症性腸疾患(IBD)が挙げられる。
ここで使用される場合の「タグ化」なる用語は、「タグポリペプチド」に融合した、抗体、又はポリペプチドを含有するキメラ分子を称す。タグポリペプチドは、その抗体が産生するエピトープを提供するか、又はオリゴマー化(例えば、ロイシンジッパードメインを有するペプチドと生じるような)等の他のいくつかの機能を提供するのに十分な残基を有しているが、その長さは、一般的に抗体又はポリペプチドの活性を阻害しないよう十分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、タグ特異性抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20のアミノ酸残基)を有する。
【0040】
「二価の金属イオン」なる用語は、2つの正電荷を有する金属イオンを称する。限定するものでないが、二価の金属イオンの例には、亜鉛、コバルト、ニッケル、カドミウム、マグネシウム及びマンガンが含まれる。使用され得るこのような金属の特定の形態には塩の形態(例えば、製薬的に許容可能な塩の形態)、上述した二価の金属イオンの塩化物、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩及び硫酸塩の形態のものが含まれる。場合によっては、本発明で使用される二価の金属イオンは亜鉛、好ましくは硫酸亜鉛又は塩化亜鉛等の塩の形態をしている。
「単離された」とは、ここで開示された種々のペプチド又はタンパク質を記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたペプチド又はタンパク質を意味する。その自然環境の汚染成分とは、タンパク質の診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ペプチド又はタンパク質は、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるように十分なほど、又は(3)質量分光分析又はペプチドマッピング技術による均一性が得られるように十分なほど精製される。その自然環境の少なくとも一の成分が存在しないため、単離された材料には、組換え細胞内のインサイツのペプチド又はタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたペプチド又はタンパク質は少なくとも一の精製工程により調製される。
【0041】
ここで同定されている配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、参照配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の知る範囲にある種々の方法により達成可能であり、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。ここでの目的のために、パーセントアミノ酸配列同一性値は、ジェネンテク社によって作成され、ソースコードは米国著作権庁, Washington D.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている配列比較コンピュータプログラムALINE-2を用いて得ることができる。ALIGN-2プログラムはジェネンテク社、South San Francisco, CAを通して公的に入手可能である。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェント」は、通常、当業者によって容易に決定され、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなればなる程、適切なアニーリングのために温度を高くする必要があり、プローブが短くなればなる程、温度を低くする必要が生じる。ハイブリダイゼーションは、一般的に、相補鎖がその融点より低い環境に存在する場合、変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション可能な配列との間の所望の相同性の程度が高くなると、使用できる相対温度が高くなる。その結果、より相対的に高い温度は、反応条件をよりストリンジェントにするが、低い温度はストリンジェントを低下させる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェントの更なる詳細及び説明は、Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照のこと。
【0042】
ここで定義される「高度のストリンジェント条件」は、(1)洗浄に低イオン強度及び高温度を用いる;50℃で、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリダイゼーション中に変性剤を用いる;42℃で、50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムを用いるもの;又は(3)42℃で、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%のデキストラン硫酸を用いて、42℃で0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)及び55℃の50%ホルムアミド中にて洗浄、次いでEDTAを含む0.1×SSCにて55℃で高ストリンジェントな洗浄を行うことによって同定され得る。
「中程度のストリンジェント条件」は、Sambrook等, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, New York:Cold Spring Harbor Press, 1989に記載されているように同定され、20%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%デキストラン硫酸、及び20mg/mLの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中にて37℃で終夜インキュベーション、次いで1×SSC中にておよそ37−50℃でのフィルターの洗浄を含む。当業者であれば、プローブ長等の因子に適合させるために必要に応じて、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかを認識するであろう。
【0043】
「プライマー」又は「複数のプライマー」なる用語は、相補的なRNA又はDNA標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズして、例えばポリメラーゼ連鎖反応で起こるような、ヌクレオチジルトランスフェラーゼの働きによってモノヌクレオチドからポリヌクレオチドの段階的な合成の開始点となるオリゴヌクレオチド配列を指す。
「コントロール配列」という用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を称す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に寄与するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
【0044】
「抗体依存性細胞障害活性」又は「ADCC」は、Fcレセプター(FcR)を発現する非特異的細胞障害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合した抗体を認識し、続いて標的細胞を溶解する細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血性細胞でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet, Annu.Rev.Immunol., 9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。対象分子のADCC活性を評価するためには、米国特許第5500362号又は第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイが実施されうる。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK)細胞を含む。あるいは、又は付加的に、対象分子のADCC活性は、例えばClynes等 .PNAS(USA), 95:652-656(1998)に開示されたような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。
「ヒトエフェクター細胞」とは、1つ又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。好ましくは、その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCとNK細胞が好適である。
【0045】
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを表す。好適なFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに好適なFcRは、IgG抗体(γレセプター)に結合し、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含むものであり、これらのレセプターの対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング型を含む。FcγRIIレセプターは、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)を含み、それらは、主としてその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターFcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース活性化モチーフ(ITAM)を有する。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース阻害モチーフ(ITIM)を有する(Daeron, Annu. Rev. Immunol., 15:203-234(1997)参照)。FcRはRavetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capelら, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Hasら, J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)において概説されている。将来同定されるものも含む他のFcRが、ここにおける「FcR」なる用語によって包含される。この用語は胎児への母性IgGの移動の原因である新生児レセプター、FcRnもまた含む(Guyerら, J. Immumol. 117:587 (1976)及びKimら, J. Immunol. 24:249 (1994))。本明細書中のFcRはFcγRIIIaをコードする遺伝子内に遺伝的二形性などの多型を含有し、それによってIgG1に結合するレセプターの領域内に位置するアミノ酸位置158がフェニルアラニン(F)又はバリン(V)となる。ホモ接合体バリンFcγRIIIa(FcγRIIIa-158V)は、ホモ接合体フェニルアラニンFcγRIIIa(FcγRIIIa-158F)又はヘテロ(FcγRIIIa-158F/V)レセプターと比較してインビトロでのADCC媒介を増加し、ヒトIgG1に対する親和性も高いことが示された。
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。補体活性化経路は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した分子(例えば、抗体)に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。
【0046】
II.本発明の例示的材料及び方法
本明細書に開示される発明は、哺乳動物組織又は細胞試料における一又は複数のバイオマーカーの発現の決定に関するものであり、この前記一又は複数のバイオマーカーの発現の測定により該組織又は細胞試料がApo2L/TRAILなどの薬剤及び/又は抗DR5アゴニスト抗体又は抗DR4アゴニスト抗体などのデスレセプター抗体に対して感受性であるか否かを予測するものである。該方法及びアッセイには、GalNac−T14及びGalNac−T3を含む分子のGalNac−Tファミリーのメンバーの発現を検査するものが含まれる。
上記のように、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体の影響を含む細胞死に抵抗性がある罹患したヒト細胞種類の集団がある(癌細胞の特定の集団など)。したがって、開示した方法及びアッセイは、治療中の患者にとって好ましいあるいは効果的な治療を評価する際に有用なデータ及び情報を得るために、便利で、効率的で、費用効率のよい可能性がある方法を提供すると思われる。例えば、癌又は免疫関連症状であると診断されている患者は組織又は細胞試料を得るために行われる生検を有し、該試料は様々なインビトロのアッセイによって検査され、患者の細胞がApo2L/TRAILやデスレセプター抗体などの治療的試薬に感受性であるかどうかを決定することができる。
【0047】
本発明は、哺乳動物組織又は細胞試料(癌細胞など)のApo2L/TRAILやデスレセプターアゴニスト抗体に対する感受性を予測するための方法を提供する。場合によっては、哺乳動物組織又は細胞試料が採取され、GalNac−T14の発現について試験される。前記方法は、mRNA発現、タンパク質発現を検出するアッセイ(たとえば免疫組織化学アッセイ)、及び酵素のUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ活性を検出する生化学的アッセイを含む、様々なアッセイ様式で行われうる。そのような組織又は細胞がApo2L/TRAIL及び/又はデスレセプター抗体の生物学的効果に対して感受性であることが、前記組織又は細胞における(又は前記組織又は細胞上の)それらのGalNac−T14バイオマーカーの発現の決定により予測されうる。驚くべきことに、出願人は、GalNac−T14の発現が、このような組織及び細胞のApo2L/TRAIL及びデスレセプターアゴニスト抗体に対する感受性と相関することを発見した。
【0048】
後述するように、試料中のGalNac−T14などの様々なバイオマーカーの発現は、当分野で公知であり当業者に理解される多くの方法によって分析することができ、その方法には、免疫組織化学及び/又はウエスタンブロッティング、定量的血液ベースのアッセイ(例えば、血清ELISA)(例えば、タンパク質発現のレベルを調べるためのもの)、生化学酵素活性アッセイ、インサイツハイブリダイゼーション、mRNAのノーザン分析及び/又はPCR分析、及びゲノムのサザン分析(例えば、遺伝子欠損又は遺伝子増幅を調べるためのもの)、並びに遺伝子及び/又は組織アレイ分析によって行われうる多種多様なアッセイの何か一つが含まれるが、これらに限定するものではない。遺伝子の状態及び遺伝子産物を評価するための典型的なプロトコルは、例えばAusubel 等 編集, 1995, Current Protocols In Molecular Biology中のユニット2(ノーザンブロッティング)、4(サザンブロッティング)、15(イムノブロッティング)及び18(PCR分析)にみられる。
試料中のGalNac−T14の検出に関するプロトコルを、例示として以下に挙げる。
【0049】
本発明の好適な方法には、哺乳動物組織又は細胞試料中のGalNac−T14の存在について試験するあるいは検査するプロトコルが含まれる。GalNac−T14を検出するために様々な方法を用いることができ、その中には例えば免疫組織化学的分析方法、免疫沈降法、ウエスタンブロッティング分析、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞分類法(FACS)、及び免疫沈降後のMS、単糖分析などがある。例えば、組織又は試料中のGalNac−T14の発現を検出する好適な方法は、該試料を抗GalNac−T14抗体と接触させ、次いで、該試料中のGalNac−T14への抗体の結合を検出することを含む。
本発明の特定の実施態様では、試料中のGalNac−T14の発現を免疫組織化学法及び染色プロトコルを用いて検査する。組織切片の免疫組織化学的染色は、試料中のタンパク質の存在を評価ないしは検出するための確実な方法であることが示されている。免疫組織学法(「IHC」)技術は、抗体を用いて、一般的には色素生産性方法又は蛍光性方法によって、インサイツで細胞性抗原を探索して視覚化する。
【0050】
試料の調製では、哺乳動物(典型的にはヒト患者)の組織又は細胞試料を用いてもよい。試料の例として、大腸、乳房、前立腺、卵巣、肺、胃、膵臓、リンパ系及び白血球癌細胞などの癌細胞が含まれるが、これらに限定するものではない。場合によって試料には、非小細胞肺癌細胞、膵臓癌細胞又は非ホジキンリンパ腫癌細胞が含まれる。前記試料は、当分野で公知の様々な手順、限定するものではないが、外科的切除、吸引又は生検などによって採取することができる。組織は新鮮なものでも凍結したものでもよい。一実施態様では、前記試料は固定し、パラフィンなどに包埋する。
前記組織試料は従来の方法によって固定(すなわち保存)されてもよい(例として、“Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology,” 3rd edition (1960) Lee G. Luna, HT (ASCP) Editor, The Blakston Division McGraw-Hill Book Company, New York; The Armed Forces Institute of Pathology Advanced Laboratory Methods in Histology and Pathology (1994) Ulreka V. Mikel, Editor, Armed Forces Institute of Pathology, American Registry of Pathology, Washington, D.C.を参照)。当分野の技術者は、組織学的染色ないしは他の分析に供する試料の目的に応じて固定液を選択することは理解するところであろう。また、当分野の技術者は、組織試料の大きさ及び用いる固定液に応じて固定の長さを決定することも理解するであろう。実施例では、中性緩衝ホルマリン、ブアン固定液又はパラホルムアルデヒドを用いて試料を固定してもよい。
【0051】
通常、まず試料を固定し、次いで段階的に増加させたアルコールによって、脱水し、パラフィン又は他の切片溶液に浸透させて包埋し、組織試料を切断できるようにする。別法として、組織を切断して、得られた切片を固定してもよい。例として、従来の方法によって、組織試料を包埋して、パラフィンで処理してもよい(例として、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。使用されうるパラフィンの例として、Paraplast、Broloid及びTissuemayがあるが、これらに限定するものではない。組織試料を包埋すると、試料をミクロトーム等によって、切断してもよい(例として、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。この手順の例として、切片はおよそ3ミクロンからおよそ5ミクロンの範囲の厚さでよい。切断すると、いくつかの標準的な方法によって、切片をスライドに付着させてもよい。スライド接着剤の例として、シラン、ゼラチン、ポリ‐L‐リジンなどがあるが、これに限定されるものではない。例として、パラフィン包埋切片は、正に荷電したスライド及び/又はポリ‐L‐リジンでコートしたスライドに付着させてもよい。
包埋材料としてパラフィンを用いた場合、組織切片は通常、脱パラフィン化して、水に再水和させる。組織切片は、いくつかの従来の標準的な方法によって、脱パラフィン化してもよい。例えば、キシレン及び段階的に減少するアルコールを用いてもよい(例として、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。別法として、Hemo-De7(CMS, Houston, Texas)などの市販の脱パラフィン化非有機薬剤が用いられてもよい。
【0052】
場合によって、試料の調整の後に、組織切片をIHCを用いて分析してもよい。IHCは、形態学的染色及び/又は蛍光発光インサイツハイブリダイゼーションなどの付加的な技術と組み合わせて行ってもよい。IHCの直接アッセイ及び間接アッセイの2つの一般的な方法が有用である。第一のアッセイでは、標的抗原(例えばGalNac−T14)に対する抗体の結合は、直接的に測定される。この直接アッセイは、更なる抗体相互作用を必要とせずに可視化されうる酵素標識一次抗体又は蛍光タグ付加一次抗体などの標識された試薬を用いる。代表的な間接アッセイでは、コンジュゲートしていない一次抗体が抗原と結合し、次いで標識された二次抗体が一次抗体と結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートする場合、抗原を視覚化させるために色素生産性基質ないしは蛍光発生基質が加えられる。二次抗体の中には一次抗体上の異なるエピトープと反応するものもあるので、シグナルの増幅が起こる。
一般的に、免疫組織化学に使用する一次及び/又は二次抗体は、検出可能な成分にて標識されるであろう。通常、以下の種類に分類できる多くの標識が利用可能である:
【0053】
(a)ラジオアイソトープ、例えば35S、14C、125I、3H及び131I。抗体は例えばImmunology, Volumes 1 and 2, Coligen 等, 編集 Wiley-Interscience, New York, New York, Pubs. (1991)のCurrent Protocolsに記載される技術を用いて放射性同位体にて標識することができ、放射能はシンチレーション計測器を用いて測定することができる。
(b)コロイド金粒子
(c)希有土類キレート(ユウロピウムキレート)、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリセリン(phycocrytherin)、フィコシアニン又はSPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7などの市販の蛍光体及び/又は上記の何れか一ないしは複数の誘導体を含むが、これらに限定されるものではない蛍光標識。蛍光標識は、例えば、上記のImmunologyのCurrent Protocolsに開示される技術を用いて抗体にコンジュゲートすることができる。蛍光は、蛍光計を用いて定量化することができる。
(d)様々な酵素基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号にはこの概説がある。一般に、酵素は、様々な技術を用いて測定することができる色素生産性基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、分光測光法で測定することができる基質の変色を触媒するかもしれない。あるいは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変えうる。蛍光の変化を定量化する技術は上記の通りである。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起され、測定することができる(例えば化学発光計測器を用いて)か、又はエネルギーを蛍光アクセプターに与える光を発しうる。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタルアジネジオン(dihydrophthalazinediones)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環のオキシダーゼ(例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが含まれる。抗体に酵素をコンジュゲートする技術は、O'Sullivanら., Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay, in Methods in Enzym. (ed J. Langone & H. Van Vunakis), Academic press, New York, 73:147-166 (1981)に記載されている。
【0054】
酵素基質の組合せの例には、例えば以下のものが含まれる:
(i)基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)、ここで水素ペルオキシダーゼが染料前駆体(例えば、オルソフェニレン(orthophenylene)ジアミン(OPD)又は3,3',5,5'テトラメチルのベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii)色素生産性基質としてリン酸パラグラフ-ニトロフェニルを有するアルカリホスファターゼ(AP);及び
(iii)色素生産性基質(例えばp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光発生基質(例えば、4-メチルウンベリフェリル(methylumbelliferyl)-β-D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)。
多数の他の酵素基質の組合せは当業者にとって利用可能である。これらの一般的な概要については、米国特許第4,275,149号及び4,318,980を参照。標識は、抗体と間接的にコンジュゲートされることがある。これを行うための様々な技術は当分野の技術者に公知である。例えば、抗体は、ビオチンとコンジュゲートさせることができ、前述した大きな4つの分類のうちの何れかはアビジンとコンジュゲートさせることができ、その逆もまた可能である。ビオチンは選択的にアビジンと結合し、したがって、標識はこの間接的な方法で抗体にコンジュゲートさせることができる。あるいは、抗体と標識を間接的にコンジュゲートさせるために、抗体は小ハプテンとコンジュゲートさせ、前述した標識の異なるタイプのうちの1つは抗ハプテン抗体とコンジュゲートさせる。したがって、抗体と標識は間接的にコンジュゲートすることができる。
【0055】
上記の試料調製手順以外に、IHC前、IHCの間又はIHC後に組織切片の更なる処置が所望されてもよい。例えば、クエン酸塩バッファ中で組織サンプルを加熱するなどのエピトープ検索方法が実施されてもよい(例として、Leong 等 Appl. Immunohistochem. 4(3): 201 (1996)を参照)。
場合によって行うブロック処置の後に、一次抗体が組織試料中の標的タンパク質抗原と結合するような好適な条件下と十分な時間、組織切片を一次抗体に曝露させる。これを達成するための好適な条件は慣例的な実験によって決定できる。試料に対する抗体の結合の範囲は、上記の検出可能な標識の何れか一つを用いて決定される。標識は、3,3'-ジアミノベンジジンクロモゲンなどの色素生産性基質の化学変化を触媒する酵素標識(例えばHRPO)であることが望ましい。好ましくは、酵素標識は、一次抗体(例えば、一次抗体はウサギポリクローナル抗体であり、二次抗体はヤギ抗ウサギ抗体である)に特異的に結合する抗体にコンジュゲートさせる。
場合によって、GalNac−T14の発現を検出するためにIHC分析法で使用される抗体は、抗GalNac−T14抗体である。別法として、GalNac−T14と交差反応性を有するほかのGalNac−T抗原に対する抗体を使用してもよい。場合によって、抗GalNac−T14抗体はモノクローナル抗体である。
【0056】
したがって、調製される検査材料はマウントしてカバーグラスをかけてもよい。その後、例えば顕微鏡を使用してスライドの評価を行い、当分野で通常用いられる染色強度判定基準を用いてもよい。染色強度判定基準は以下の通りに評価してもよい:
表1
【0057】
一般的に、IHCアッセイの2+又はそれ以上の染色パターンスコアは、Apo2L/TRAIL又はデスレセプターアゴニスト抗体に対する哺乳動物細胞(例えば哺乳動物癌細胞)の感受性を予測するないしは示していると考えられる。
別法では、試料を、抗体-バイオマーカー複合体が形成するために十分な条件下で該バイオマーカーに特異的な抗体と接触させ、次いで該複合体を検出してもよい。バイオマーカーの存在は、多くの方法、血漿又は血清を含む多種多様な組織及び試料を検定するためのウエスタンブロッティング(免疫沈降を含んでも含まなくてもよい)及びELISA手順によって、検定してもよい。このようなアッセイ様式を用いた広範囲にわたるイムノアッセイ技術は利用可能である。米国特許第4,016,043号、同第4,424,279号及び同第4,018,653号参照。これらには、単一の部位及び2-部位の両方、あるいは非競合型の「サンドイッチ」アッセイ、並びに従来の競合的結合アッセイが含まれる。また、これらのアッセイには、標的バイオマーカーに対する標識抗体の直接結合が含まれる。
サンドイッチアッセイは最も有用なものの一つで、一般的に用いられるアッセイである。サンドイッチアッセイ技術には多くのバリエーションあり、そのすべては本発明により包含されることを目的とする。簡潔には、代表的な最近のアッセイでは、非標識抗体を固体基板上に固定して、試験する試料を結合した分子に接触させる。抗体-抗原複合体が形成されるくらいの適当な期間インキュベートした後、検出可能なシグナルを産生できるレポーター分子で標識した、抗原特異的な第二抗体を添加して、更なる抗体-抗原-標識抗体の複合体が形成されるために十分な時間インキュベートする。反応しなかった材料を洗い流し、レポーター分子により産生されるシグナルを観察することによって抗原の存在を決定する。結果は、可視的なシグナルを単純に観察したものであれば質的なものであり、バイオマーカーを既知量含有するコントロール試料と比較したものであれば量的なものである。
【0058】
前記のアッセイへのバリエーションには、試料及び標識抗体の両方を結合した抗体に同時に添加する同時アッセイなどがある。これらの技術は当分野の技術者には公知であり、多少のバリエーションが加えられることは容易に明らかであろう。代表的な近年のサンドイッチアッセイでは、バイオマーカーに対して特異性を有する第一抗体は固形表面に共有結合するか受動的に結合する。固形表面は一般的にガラス又はポリマーであり、最も一般的に用いられるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンである。固形支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートの皿、又はイムノアッセイを行うために適切な他の任意の表面の形態でもあってもよい。結合方法は従来技術において周知であり、一般に、架橋性共有結合又は物理的な吸着から成り、ポリマー-抗体複合体は試験試料の調整において洗浄される。次いで、試験される試料の分割量を固相複合体に添加し、抗体中に存在する任意のサブユニットが結合するために十分な時間(例えば、より便利であるならば2〜40分又は前夜)と適切な条件(例えば室温から40℃、例えば25℃から32℃の間)下でインキュベートする。インキュベーションの後、抗体サブユニット固相を洗浄して、乾燥させ、一部のバイオマーカーに特異的な二次抗体とともにインキュベートする。二次抗体は、分子マーカーへの二次抗体の結合を表すために用いられるレポーター分子に結合させる。
別法では、試料中の標的バイオマーカーを固定して、その後レポーター分子にて標識しているか又は標識していない特異的抗体に固定された標的を曝すことを伴う。標的の量及びレポーター分子シグナルの強度に応じて、結合した標的は、抗体で直接標識することによって、検出可能でありうる。あるいは、一次抗体に特異的な二次標識抗体を標的-一次抗体複合体に曝して、標的-一次抗体-二次抗体の三位複合体を形成させる。複合体は、レポーター分子により発されるシグナルにより検出される。本明細書中で用いられる「レポーター分子」は、その化学的性質によって、抗原と結合した抗体を検出するための分析して同定可能となるシグナルを提供する分子を意味する。この種のアッセイにおいて、最も一般的に用いられるレポーター分子は、酵素、蛍光体又は分子を含有する放射性核種(すなわち放射性同位体)及び化学発光分子である。
【0059】
酵素イムノアッセイの場合、一般にグルタールアルデヒド又は過ヨウ素酸塩によって、酵素を二次抗体にコンジュゲートさせる。しかしながら、容易に認識されるように、技術者に容易に利用可能である多種多様な異なるコンジュゲート技術が存在する。一般的に用いられる酵素には、西洋わさびペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ−中でもガラクトシダーゼ及びアルカリホスファターゼなどがある。特定の酵素と共に用いられる基質は、一般的に、対応する酵素による加水分解の際に生じる検出可能な色の変化で選択する。適切な酵素の例として、アルカリホスファターゼやペルオキシダーゼなどがある。また、上記の色素生産性基質よりも蛍光性産物を産生する蛍光性基質を用いることができる。すべての例において、酵素標識抗体を一次抗体-分子マーカー複合体に加えて、結合させ、次いで過剰な試薬を洗い流す。次いで、適当な基質を含有する溶液を抗体-抗原-抗体の複合体に加える。基質は二次抗体と結合した酵素と反応して、通常は分光測定法による量的なものでもある定性的な可視化シグナルを生じ、試料中に存在するバイオマーカーの量を表す。あるいは、フルオレセイン及びローダミンなどの蛍光性化合物を、抗体の結合能を変化させることなく抗体に化学的に結合させてもよい。特定の波長の光を照射することにより活性化されると、蛍光色素標識抗体はその光エネルギーを吸収し、それによリその分子において励起状態が誘発され、続いて光学顕微鏡を用いて目視で検出可能な特徴的な色で光が放射される。EIAでは、蛍光標識抗体は、一次抗体-分子マーカー複合体に結合できる。結合していない試薬を洗い落とした後に、残りの三位複合体を適当な波長の光に曝すと、対象の分子マーカーの存在を示す蛍光発光が観察される。免疫蛍光法及びEIA技術は何れも、当分野で非常に確立されたものである。しかしながら、放射性同位体、化学発光性分子又は生物発光性分子などの他のレポーター分子も用いられてもよい。
【0060】
また、上記の技術が、GalNac−T14の発現を検出するために用いられうることも包含される。
本発明の方法は、組織又は細胞試料中のGalNac−T14のmRNAの存在及び/又は発現を調べる手順を更に含む。細胞中のmRNAの評価方法は公知であり、例えば、相補的DNAプローブを用いたハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、標識したGalNac−T14のリボプローブを用いたインサイツハイブリダイゼーション、ノーザンブロット及び関連した技術)及び様々な核酸増幅アッセイ(例えば、GalNac−T14に特異的な相補的プライマーを用いたRT-PCR及び、他の増幅型の検査法、例えば枝分れDNA、SISBA、TMAなど)が含まれる。
哺乳動物の組織又は細胞試料は、例えばノーザン、ドットブロット又はPCR分析を用いて、GalNac−T14のmRNAについて都合よくアッセイすることができる。例えば、定量的PCRアッセイなどのRT-PCRアッセイは公知技術である。本発明の例示的実施態様では、生体試料中のGalNac−T14のmRNAの検出方法は、少なくとも一のプライマーを用いて逆転写によって、試料からcDNAを生成し、該GalNac−T14のcDNAを増幅するために、GalNac−T14のポリヌクレオチドをセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとして用いて産生された該cDNAを増幅し、そして、増幅されたGalNac−T14のcDNAの存在を検出することを含む。加えて、このような方法は、生体試料中のGalNac−T14のmRNAのレベルを決定し得る一ないし複数の工程(例えば、アクチンファミリーメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子のコントロールmRNA配列と該レベルを同時に検討すること)を含んでもよい。場合によって、増幅されたGalNac−T14のcDNAの配列を決定してもよい。
【0061】
本発明の態様の材料の実施態様では、本発明のポリヌクレオチド又はその任意の特定部分を特異的に増幅させるGalNac−T14のプライマー及びプライマー対と、本発明の核酸分子又はその任意の一部に選択的又は特異的にハイブリダイズするプローブが含まれる。プローブは、検出可能なマーカー、例えば放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤又は酵素にて標識されてもよい。このようなプローブ及びプライマーを、試料中のGalNac−T14のポリヌクレオチドの存在を検出するため、及び、GalNac−T14のタンパク質を発現する細胞を検出するための手段として用いることができる。技術者に理解されるように、多数の異なるプライマー及びプローブは、本願明細書中で示される配列に基づいて調製されてもよく、GalNac−T14のmRNAの存在及び/又はレベルを増幅、クローニング及び/又は決定するために効率的に用いてもよい。
【0062】
本発明の任意の方法には、マイクロアレイ技術によって、組織又は細胞試料中のmRNA、例えばGalNac−T14のmRNAを調べるか又は検出する手順が含まれる。核酸マイクロアレイを用いて、試験及びコントロールの組織試料から得た試験及びコントロールのmRNA試料を逆転写させて、cDNAプローブを生成するために標識する。次いで、プローブを、固形支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズさせる。アレイの配列及び各々のメンバーの位置がわかるように、アレイを設定する。例えば、特定の疾患状態において、発現されうる遺伝子の選別を、固形支持体上に配列してもよい。特定のアレイメンバーと標識プローブとのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。疾患組織の差次的遺伝子発現分析は、貴重な情報を提供する。マイクロアレイ技術は、単一の実験で何千もの遺伝子のmRNA発現性質を評価するために、核酸ハイブリダイゼーション技術及び演算技術を利用する。(2001年10月11日公開の国際公開公報01/75166を参照、(例えば米国特許第5,700,637号、同第5,445,934号及び同第5,807,522号、Lockart, Nature Biotechnology, 14:1675-1680 (1996))、アレイ製作の考察のためにはCheung, V.G.等, Nature Genetics 21(Suppl): 15-19 (1999)を参照)。DNAマイクロアレイは、ガラス又は他の基質上で染色されるか直接合成される遺伝子断片を含有する微小なアレイである。何千もの遺伝子は、通常単一のアレイ上に現れる。代表的なマイクロアレイ実験は以下の工程を伴う:1.試料から単離したRNAからの蛍光性標識標的の調製、2.マイクロアレイへの標識した標的のハイブリダイゼーション、3.洗浄、染色及びアレイのスキャニング、4.走査画像の分析、そして5.遺伝子発現性質の生成。一般に、DNAマイクロアレイには2つの主要な種類、cDNAから調製されたPCR産物を含有する遺伝子発現アレイ及びオリゴヌクレオチドアレイ(通常25〜70マー)が用いられる。アレイを形成する際に、オリゴヌクレオチドは、事前に作製して表面にスポットしても、(インサイツで)表面上で直接合成してもよい。
【0063】
Affymetrix GeneChip(登録商標)システムは、ガラス表面上でオリゴヌクレオチドを直接合成することにより製造されるアレイを含んでなる市販のマイクロアレイシステムである。プローブ/遺伝子アレイ:オリゴヌクレオチド(通常25マー)は、半導体ベースのフォトリソグラフィーと固相化学合成技術との組合せによって、ガラスウェーハ上へ直接合成される。各々のアレイは最高400,000の異なるオリゴを含有し、各々のオリゴは何百万ものコピーで存在する。オリゴヌクレオチドプローブがアレイ上の既知の位置で合成されるので、ハイブリダイゼーションのパターン及びシグナル強度は、Affymetrix Microarray Suiteソフトウェアによる遺伝子同一性と相対的な発現レベルに置き換えて解釈できる。各々の遺伝子は、一連の異なるオリゴヌクレオチドプローブによって、アレイ上に表される。各々のプローブ対は、完全一致のオリゴヌクレオチドと、不一致のオリゴヌクレオチドからなる。完全一致プローブは、特定の遺伝子に対して完全に相補的な配列を有するため、遺伝子の発現を測定する。不一致プローブは、中心塩基位置での単一塩基置換によって、完全一致プローブとは異なり、標的遺伝子転写物の結合を妨げる。これによって、完全一致オリゴを決定するシグナルの一因となるバックグラウンド及び非特異的ハイブリダイゼーションを決定できる。Microarray Suiteソフトウェアは、完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度から不完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度を減算して、それぞれのプローブセットの絶対値又は特異的強度の値を決定する。プローブは、Genbank及び他のヌクレオチド貯蔵所の当時の情報に基づいて選択される。この配列は遺伝子の3'末端の特定の領域を認識すると思われている。GeneChipハイブリダイゼーションオーブン(「回転式(rotisserie)」オーブン)を用いて、一度に最高64アレイのハイブリダイゼーションを行う。fluidics stationでは、プローブアレイの洗浄と染色が行われる。これは完全に自動化しており、4つのモジュールを含有しており、その各々のモジュールが一つのプローブアレイを保持している。各々のモジュールは、事前にプログラム化されたfluidicsプロトコルを用いたMicroarray Suiteソフトウェアにより個々に制御される。スキャナは、プローブアレイ結合した標識cRNAにより発される蛍光強度を測定する共焦点レーザー蛍光発光スキャナである。Microarray Suiteソフトウェアを有するコンピュータワークステーションがfluidics stationとスキャナを制御する。Microarray Suiteソフトウェアは、プローブアレイについて事前にプログラム化したハイブリダイゼーション、洗浄及び染色プロトコルを用いてfluidics stationを8つまで制御できる。また、ソフトウェアは、ハイブリダイゼーション強度データを得て、適切なアルゴリズムを使用して各々の遺伝子の存在/非存在情報に変換する。最後に、ソフトウェアは、比較分析によって、遺伝子発現における実験間の変化を検出して、テキストファイルに出力する。このファイルは更なるデータ分析のために他のソフトウェアプログラムに用いることができる。
【0064】
また、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)アッセイを用いて、標識プローブを使用し、バイオマーカーのmRNAの発現を検出することができる。このようなアッセイは従来技術に既知である(例えば、Kallioniemi等、1992; 米国特許第6,358,682号参照)。
また、選択されたバイオマーカーの発現は、遺伝子欠損又は遺伝子増幅を調べることにより評価されてもよい。遺伝子欠損又は遺伝子増幅は、当分野で公知の様々なプロトコルの何れか一つ、例えば、慣例的なサザンブロット、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201 5205 (1980))、ドットブロット(DNA分析)、又は適切に標識したプローブを用いたインサイツハイブリダイゼーション(例えばFISH)、適切に標識したプローブを用いた細胞遺伝学的方法又は比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)によって、測定できる。例として、これらの方法は、GalNac−T14の遺伝子の増幅の欠失を検出するために用いてもよい。
加えて、組織又は細胞試料中のバイオマーカー、例えばGalNac−T14の遺伝子のメチル化状態を調べてもよい。遺伝子5'調節領域内のCpG島の異常な脱メチル化及び/又は過剰メチル化は、不死化細胞及び形質転換細胞内でしばしば起こり、様々な遺伝子の発現が変化する。遺伝子のメチル化状態を調べるための様々なアッセイは、公知技術である。例えば、サザンハイブリダイゼーション方法では、CpG島のメチル化状態を評価するために、メチル化されたCpG部位を含有する配列を切断することができないメチル化感受性制限酵素を利用できる。加えて、MSP(メチル化特異的PCR)は、与えられる遺伝子のCpG島に存在するすべてのCpG部位のメチル化状態の分布を迅速に測定できる。この手順は、亜硫酸水素ナトリウムによるDNAの初期修飾(すべてのメチル化されていないシトシンをウラシルに変換する)の後に、メチル化されたDNA対非メチル化DNAに特異的なプライマーを用いた増幅を伴う。また、メチル化干渉を伴うプロトコルは、例えばCurrent Protocols In Molecular Biology, Unit 12, Frederick M. Ausubel et al. eds., 1995、De Marzo 等, Am. J. Pathol. 155(6): 1985-1992 (1999)、Brooks 等, Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev., 1998, 7:531-536)、及び、Lethe 等, Int. J. Cancer 76(6): 903-908 (1998)にみられる。
【0065】
また、組織又は細胞試料中のGalNac−T14の発現は、機能的なアッセイ又は活性に基づくアッセイにより検査されてもよい。例えば、組織又は細胞試料中の所定の酵素のN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ活性の存在を決定又は検出するために公知技術のアッセイを行ってもよい(例えば、Bennett等、J. Biol. Chem., 271:17006-17012 (1996); Wang等、BBRC、300:738-744 (2003); Hang等、上掲、2005年5月にwww.sciencedirect.comで閲覧可能、参照)。
本発明の方法において、組織又は細胞試料も、Apo2L/TRAILの発現又はApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体を結合する試料中のレセプターについて検査されうることが考慮される。上記及び当分野で記載されるように、現在、Apo2L/TRAILが少なくとも5つの異なるレセプター、DR4、DR5、DcR1、DcR2及びOPGと結合すると思われている。本明細書中で記載のものを含め、当分野で公知の方法を用いて、Apo2L/TRAIL、DR4、DR5、DcR1、DcR2及び/又はOPGの発現を、mRNAレベルで、そして、タンパク質レベルで検出してもよい。例として、上記のIHC技術を用いて、試料中の一ないし複数の上記分子の存在を検出してもよい。組織又は試料をGalNac−T14マーカーの存在についてだけでなく、例えばDR4、DR5又はDcR1の存在についても検査する方法では、同じ組織又は試料から異なるスライドを調製して、各々のスライドをそれぞれ特異的なバイオマーカー又はレセプターに特異的な試薬で試験してもよいことが考えられる。あるいは、組織又は細胞試料から単一のスライドを調製してもよく、各々のバイオマーカー又はレセプターに対する抗体を多色染色プロトコルとともに用いて、それぞれのバイオマーカー又はレセプターの可視化と検出を行ってもよい。
【0066】
組織又は細胞試料がApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体の活性に感受性であることを示すGalNac−T14を組織又は細胞試料が発現すると決定すると、有効量のApo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体を哺乳動物に投与して、哺乳動物を苦しめている癌又は免疫系関連疾患などの疾患を治療することが考慮される。本明細書中に記載の様々な病的状態の哺乳動物の診断は、熟練した実務者によって、することができる。診断用技術は、例えば、哺乳動物の癌又は免疫系関連疾患の診断又は検出が許可される当分野で有用である。例えば、癌は、限定するものではないが、触診、血液分析、X線、NMRなどの技術によって、同定してもよい。また、免疫系関連疾患は容易に同定できる。
Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体は、周知の方法に従い、ボーラスとしての静脈内投与、又は一定期間にわたる連続的な注入、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、骨膜内、くも膜腔内、経口、局所的又は吸入の経路により投与することができる。場合によっては、投与は、様々な市販の装置を使用するミニポンプ注入によって実施することができる。
Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体の投与にとって有効な用量とスケジュールは、経験的に決定することができ、そのような決定を行うことは当業者の技量の範囲にある。一回又は複数回服用を用いることができる。単独で使用されるApo2L/TRAILの効果的な用量又は量は、1日当り体重の約1μg/kgから約100mg/kg又はそれより多い範囲であると現在考えられている。用量の種間スケーリングは、例えば、Mordentiら, Pharmaceut. Res., 8:1351(1991)に開示されているような、当該分野において既知の方法を用いて実施することができる。
【0067】
Apo2L/TRAILのインビボ投与が用いられる場合、正常な投与量は、投与経路に応じて、哺乳動物の体重当たり1日に約10ng/kgから100mg/kgの範囲又は1日当たりより多く、好ましくは約1μg/kg/日から10mg/kg/日とすることができる。特定の用量及び送達方法の指針は文献に与えられている;例えば、米国特許第4,657,760号、第5,206,344号、又は第5,225,212号を参照のこと。異なる製剤が異なる治療用化合物及び異なる疾患に有効であること、例えば一つの器官又は組織を標的とする投与には、他の器官又は組織とは異なる方式で送達することが必要であることが予想される。
さらに付加的な治療が本方法において使用され得ることを考慮する。一又は複数の他の治療には、限定されるものではないが、放射線治療、サイトカイン(一ないし複数)、成長阻害剤(一ないし複数)、化学治療剤(一ないし複数)、細胞障害剤(一ないし複数)、チロシンキナーゼインヒビター、rasファルネシルトランスフェラーゼインヒビター、血管形成インヒビター、及びサイクリン依存性キナーゼインヒビターなど、当該分野で公知であり、更に上記に定義されるものの投与が含まれる。このような他の治療法を、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体とは異なる試薬として用いられうることが考えられる。さらに、治療は、リツキサンTM又はハーセプチンTM等の腫瘍抗原を標的にする治療用抗体、並びに抗VEGF等の抗-血管形成抗体をベースにしている。
【0068】
化学治療剤の調製と用量スケジュールは、製造者の指示書に従って使用されるか、熟練した実務者により経験的に決定されて使用される。また、このような化学治療の調製と用量スケジュールは、Chemotherapy Service Ed., M.C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992)にも記載されている。化学療法剤は、Apo2L/TRAIL又はデスレセプター抗体の投与の前でも後でもよく、同時であってもよい。
また、他の抗原に対する抗体、例えばCD20、CD11a、CD18、CD40、ErbB2、EGFR、ErbB3、ErbB4、血管内皮因子(VEGF)、又は他のTNFRファミリーのメンバー(例えば、OPG、TNFR1、TNFR2、GITR、Apo-3、TACI、BCMA、BR3)に結合する抗体を投与することも好ましい。別法として、あるいは付加的に、ここに開示した同一の又は二又はそれ以上の異なる抗原に結合する二又はそれ以上の抗体を患者に同時投与してもよい。しばしば、患者に一又は複数のサイトカインを投与することも有利である。投与後、インビトロで処理した細胞を分析することができる。インビボ処理の場合、熟練した実務者に公知の様々な方法により処理された哺乳動物をモニタリングすることができる。例えば、腫瘍細胞を病理学的に検査してネクローシスについてアッセイしてもよいし、血清を免疫系応答について分析してもよい。
【0069】
上記に記載又は提案した用途への使用のために、本発明ではキット又は製造品も提供される。このようなキットは、ガラス瓶、チューブなどの一ないし複数の密閉した容器内に収容するために区分けされている運搬容器を具備しており、それぞれの容器には本方法に使用する別個の成分の何れか一つを含んでいる。例えば、容器の一つには検出可能なように標識してあるないしは標識することができるプローブを含む。このプローブは、GalNac−T14のタンパク質又はGalNac−T14の遺伝子ないしは信号のそれぞれに特異的な抗体ないしはポリヌクレオチドであってもよい。標的核酸を検出するためにキットに核酸ハイブリダイゼーションが必要な場合には、キットは、標的核酸配列の増幅のためのヌクレオチドを収容する容器、及び/又は、酵素標識、蛍光標識又は放射性標識などのレポーター分子に結合した、ビオチン結合タンパク質(例えばアビジン又はストレプトアビジン)などのレポーターの働きをするものを収容する容器も具備する。
典型的に、本発明のキットは、上記の容器と、商業的及び使用者の観点からみて望ましい物質、例えばバッファ、希釈液、フィルター、針、注射器及び使用のための指示書を有するパッケージ挿入物を収容する一ないし複数のその他の容器とを具備する。特定の治療又は非治療的用途に該組成物が使用されることを示すために容器上にラベルがあってもよく、またそのラベルは上記のようなインビボの使用又はインビトロの使用の何れかについての指導を示すものであってもよい。
【0070】
本発明のキットは多くの実施態様を有する。典型的な実施態様は、容器と、該容器上のラベルと、該容器内に収容される組成物を具備するキットであり、この場合の組成物はGalNac−T14のポリペプチド配列に結合する一次抗体を含有するものであり、該容器上のラベルは、該組成物を用いて少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のGalNac−T14のタンパク質の存在を評価することができることと、少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のタンパク質の存在を評価するためのGalNac−T14の抗体の使用についての指示書を示すものである。さらに、キットは、組織試料を調整して組織試料の同一片に抗体及びプローブを適用するための一組の指示書と材料を具備しうる。キットは、一次抗体と、酵素標識などの標識にコンジュゲートしている二次抗体の両方を具備してもよい。
他の実施態様は、容器と、該容器上のラベルと、該容器内に収容される組成物を具備するキットであり、この場合の組成物はストリンジェントな条件下でGalNac−T14のポリヌクレオチドの相補鎖とハイブリダイズするポリヌクレオチドを含有するものであり、該容器上のラベルは、該組成物を用いて少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のGalNac−T14の存在を評価することができることと、少なくとも一種類の哺乳動物細胞中のGalNac−T14のRNA又はDNAの存在を評価するためのGalNac−T14のポリヌクレオチドの使用についての指示書を示すものである。
キットの他の任意の成分には、一ないし複数のバッファ(例えばブロックバッファ、洗浄バッファ、基質バッファなど)、酵素標識によって化学的に変化する基質などの他の試薬(例えば色素原)、エピトープ探索溶液、コントロール試料(ポジティブコントロール及び/又はネガティブコントロール)、コントロールスライド(一ないし複数)などがある。
【0071】
(実施例)
さらに、本発明の様々な態様を以下の実施例によって記載し、例示する。これらは本発明の権利範囲を減縮するためのものではない。
方法及び材料
細胞培養物及び細胞株
以下のヒト細胞株:非小細胞肺癌(NSCLC)系:H2122、A427、H647、SK−MES−1、H838、H358、H2126、H460、H1703、H2405、H650、H1568、H1666、H322T、SW1573、H292、H1650、H522、EKVX、H661、H23、LXFL529、H226、A549、H1781、H1299、HOP62、H2009、HOP92、H1793、H1975、H1651、calu−1、H1435、HOP18、H520、H441、H2030、H1155、H1838、H596、HLFa;膵臓癌系:Panc05.04、BxPC3、HPAC、SU.86.86、HuP−T3、PSN1、Panc08.13、MiaPaCa−2、PA−TU−8988T、Panc03.27、Capan−1、SW1990、CFPAC−1、PA−TU−8902、Panc02.03、Panc04.03、PL45、Aspc−1、Hs766T、Panc10.05、Panc1、Capan−2、HPAF−II及びNHL:JEKO−1、SU−DHL−4、OCI−LY−19、SR、Farage、DOHH-2、Toledo、WSU−NHL、KARPAS−422、GRANTA−519、Pfeiffer、HT、SC−1、DB。これら細胞株は、ATCC寄託機関(Manassas, Virginia)、DSMZ (German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)、JCRB(日本の細胞バンク)又はECACC( ヨーロッパの細胞培養株寄託機関)から得て、10%熱不活性ウシ胎児血清、2mMのL-グルタミン及び10mMのHEPESを添加したRPMI-1640培地で培養した。
【0072】
細胞障害性アッセイ
可溶性黄色テトラゾリウム塩(MTT)を青いホルマザン結晶に還元する生存細胞の能力に基づいた比色アッセイであるMTTアッセイ(Promegaから入手のCellTiter96(登録商標) Non-Radioactive Cell Proliferation Assay)を用いてApo2L/TRAIL又はDR5抗体で処理した後の生存細胞の量を測定した。MTTアッセイは、様々な濃度(0〜1000ng/ml)のApo2L/TRAIL又はDR5抗体を含有する96ウェルプレートの培養ウェルに、予め混合した好適な色素溶液を添加することにより行った。4時間のインキュベーションの間、生細胞は、色素溶液のテトラゾリウム成分をホルマザン(formazan)産物に変換する。次いで、溶解液/停止液を培養ウェルに添加して、ホルマザン産物を溶解し、96ウェルプレート読み取り機(SpectraMax)を使用して570nmの吸光度を記録した。読み取った570nmの吸光度は、増殖アッセイにおいて、通常使用される細胞の数に正比例する。ホルマザン産物の吸光度の最大は570nmであり、純粋な溶液が青く見えるにもかかわらず、アッセイ終了時の色は青ではなく、培養液中の他の成分(血清、酸性化フェノールレッド及び非還元MTTを含む)と関連して存在するホルマザンの量に依存する。
細胞の力価測定を行うことによって、細胞数を最大限に利用して、アッセイの線形範囲の上限に近いアッセイシグナルを産生した。種類が異なる細胞は異なるレベルの代謝活性を有するので、細胞株ごとに行った。試験する多くの腫瘍細胞は、1ウェル当たり5,000から20,000個の細胞を用いた。
【0073】
以下は、行ったアッセイの工程ごとの説明である:
1. 保存培養物の細胞をバイオアッセイに使用した。
2. 細胞数とトリパンブルー生存度を測定し、最終的に1ウェル当たり5,000〜20,000個の細胞を懸濁した。
3. 96ウェルプレートへ50μlの細胞懸濁液を分注した。
4. プレートを37℃の加湿した5%CO2大気中にて終夜インキュベートした。
5. 0から1,000ng/mlの範囲の様々な濃度のApo2L/TRAIL又はDR5抗体を含有する50μlの培養液を96ウェルプレートの試料に添加した。50μlの培養液(Apo2L/TRAIL又はDR5抗体なし)及び100μl培養液(細胞なし)をコントロールとした。
すべての実験は3日間で3通り行った。ウェルの総容積は100μl/ウェルであった。
6. プレートを37℃の加湿した5%CO2大気中で72時間インキュベートした。
7. 各々のウェルに15μlの色素溶液を添加した。
8. プレートを37℃の加湿した5%CO2大気中で最大4時間インキュベートした。
9. 各々のウェルに100μlの溶解液/停止液を添加した。
10.プレートを37℃で終夜インキュベートした。
11.96ウェルプレート読み取り機を使用して570nm波長の吸光度を記録した。750nmの参照波長を用いて、細胞片、指紋及び他の非特異的な吸光度によって、生じるバックグラウンドを減算した。
12.ネガティブコントロールの吸光度値の平均を、ブランク値(空試験値)として用いて、他の全ての読み取り値から減算した。各濃度のApo2L/TRAIL又はDR5抗体の吸光度値の平均を、ポジティブコントロールの吸光度値の平均で割って(100%生存細胞−無処理細胞)、生存細胞の量(%)を算出した。
13.Apo2L/TRAIL又はDR5抗体の濃度(X軸、対数値)に対するパーセント生存細胞(Y軸)をプロットして、50%の生存細胞に相当するX軸値(ng/ml)の位置を決めることによって、IC50値を決定した。
【0074】
Affymetrix標識プロトコル
すべての試料についてOD260/280を読み取り、試料をBioAnalyzerにかけた。5μgの高純度の総RNAを用いた。
A. First StrandcDNA合成:
1. プライマーハイブリダイゼーション
DEPC-H2O xμl ボルテックスによって混合。少し遠心。
RNA(5ug) yμl 10分間70℃でインキュベート。
スパイク(Spike)(5ugに対して1:4で保存液を希釈) 1μl 少し遠心して氷上に置く。
T7-(dT)24プライマー 1μl
容量 12μl
2. 温度調節
5×First StrandcDNAバッファ 4μl
各試料に7μlを(混合物の7μlを左側に)添加。
0.1M DTT 2μl ボルテックスによって混合。少し遠心。
10mM dNTP混合液 1μl 2分間42℃でインキュベート。
容量 7μl
3. First Strand合成
1μlのSSII RTを各々の試料に加える。
SSII RT 1μl 上下にピペッティングするか、軽くボルテックスをかけて混合。少し遠心。
総容積 20μl 1時間42℃でインキュベート。
【0075】
B. Second StrandcDNA合成
1. First Strand反応物を氷上に置く。しばらく遠心してチューブの側面の凝集塊を落とす。
2. 以下のSecond Strandマスター混合液を作る。
DEPC処理H2O 91μl
5×Second Strand反応バッファ 30μl
10mM dNTP混合液 3μl
10U/μl DNAリガーゼ 1μl
10U/μl DNAポリメラーゼI 4μl
2U/μl RNアーゼH 1μl
総容積 130μl
3. 130μlのSecond Strandマスター混合液を20μlのFirst StrandcDNAに加える。(最終的な容量=150μl)
4. 上下にピペッティングするか、軽くボルテックスをかけて混合。少し遠心。
5. 冷却用ウォーターバスにて16℃で2時間インキュベート。
6. 2μlの[10U] T4DNAポリメラーゼを添加。上下にピペッティングするか、軽くボルテックスをかけて混合。少し遠心。
7. 16℃で5分間インキュベート。
8. 10μlの0.5M EDTAを加える。軽くボルテックスにかける。少し遠心。
9. cDNAの精製手順に進むか、その後の使用のために−20℃で保存。
【0076】
二本鎖cDNAの精製(GeneChip 試料精製 Module)
1. 600μlのcDNA結合バッファを162μlの最終的な二本鎖cDNA合成調製物に添加。
3秒間ボルテックスにかけて混合。
2. 混合物の色が黄色であることを確認(cDNA合成反応を含まないcDNA結合バッファと同様)。
混合物の色が橙又は紫である場合、10μlの3M 酢酸ナトリウム、pH5.0を加えて混合する。
混合物の色は黄色に変化する。
3. 2mlの収集チューブにセットしたcDNA精製スピンカラムに500μlの試料を入れて、
8,000×g以上(10,000回転数/分以上)で1分間遠心。流れ出たものを有害廃棄物として廃棄。
4. 残りの混合物(262μl)とともにスピンカラムを再び流し、上記のように遠心した。
流れ出たものを有害廃棄物として廃棄して、収集チューブを廃棄した。
5. 新しい2mlの収集チューブ(購入品)に、スピンカラムを移す。スピンカラムに750μlのcDNA洗浄液を注入する。8,000×g以上(10,000回転数/分以上)で1分間遠心。
流れ出たものを廃棄する。
6. スピンカラムの蓋を開け、最大速度(25,000の×g以下)で5分間遠心。第二のバケットを用いて遠心器内にカラムを置く。キャップが回転に対して反対方向に向くように隣接しているバケットを越えてキャップを位置する、すなわち回転が時計回りの場合、反時計回りにキャップを配置する。これによって、キャップへの損傷を防ぐ。
流れ出たものと収集チューブを廃棄する。
7. 1.5mlの収集チューブ内にスピンカラムを移す。スピンカラム膜上に10μlのcDNA溶出バッファを注入する。cDNA溶出バッファが膜上へ直接分配されることを確認する。
室温で1分間インキュベートして、最大速度(25,000×g以下)で1分間遠心して溶出させる。
【0077】
IVT反応の準備と実施
Enzo:バイオアレイ高収率 RNA転写物標識キット(Part No.900182)
1. 10μlの精製した二本鎖cDNAを用いる。
2. 以下のIVTマスター混合物を作る:
蒸留水又は脱イオン化水 12μl
10×HY反応バッファ 4μl
10×ビオチン標識リボヌクレオチド 4μl
10×DTT 4μl
10×RNアーゼインヒビター混合物 4μl
20×T7RNAポリメラーゼ 2μl
総容積: 30μl
3. 30μlのIVTマスター混合物を10μlの二本鎖cDNAに加える。(総容積=40μl)
4. 上下にピペッティングするか、軽くボルテックスをかけて混合。少し遠心。
5. すぐにチューブを37℃のウォーターバスに置く。5時間インキュベートする。
6. すぐにRNAを精製しない場合は−20℃に貯蔵。
【0078】
ビオチン標識cRNAの精製(GeneChip 試料精製 Module)
1. 60μlのH2OをIVT反応に加えて、3秒間ボルテックスにかけて混合する。
2. 350μlのIVT cRNA結合用バッファを試料に加えて、3秒間ボルテックスにかけて混合する。
3. 250μlのエタノール(96〜100%)を溶解物に加えて、ピペッティングによって、ウェルを混合する。遠心分離しない。
4. 2mlの収集チューブに配置したIVT cRNA精製スピンカラムに、試料(700μl)を添加する。
8,000×g以上(10,000回転数/分以上)で15秒間遠心分離する。
5. もう一度溶出物をカラムに通す。
8,000×g以上(10,000回転数/分以上)で15秒間遠心分離する。
流れ出たものを有害廃棄物として廃棄して、収集チューブを廃棄する。
6. 新しい2mlの収集チューブ(購入品)内にスピンカラムを移す。
7. 500μlのIVT cRNA洗浄バッファを加えて、8,000×g以上(10,000回転数/分以上)で15秒間遠心して洗浄する。
流れ出たものを廃棄する。
8. 500μlの80%(v/v)エタノールをスピンカラムに注入し、
8,000×g以上(10,000回転数/分以上)で15秒間遠心分離する。流れ出たものを廃棄する。
9. スピンカラムのキャップを開け、最大速度(25,000×g以下)で5分間遠心する。
流れ出たものと収集チューブを廃棄する。
10.新しい1.5mlの収集チューブにスピンカラムを移す。
11.11μlの無RNアーゼ水をスピンカラム膜上に直接注入する。1分間放置する。
最大速度(25,000×g以下)で1分間遠心して、溶出させる。
12. 10μlの無RNアーゼ水をスピンカラム膜上に直接注入する。1分間放置する。
最大速度(25,000×g以下)で1分間遠心して、溶出させる。
【0079】
cRNA(IVT生成物)の定量化
吸光光度分析法を用いてRNA収率を測定する。260nmの1ODが40μg/mlのRNAに等しくなる定値を適用する。
260nm及び280nmのODをチェックして試料濃度及び純度を測定する。
純粋なRNAの2.0に近いA260/A280比を維持する(1.9と2.1との間の比は許容範囲内である)。
出発原料として総RNAを用いた場合のcRNAの定量化では、調整されたcRNA収率を算出して非標識の総RNAの超過量を示さなくてはいけない。100%超過量を見積もって、以下の式にあてはめて調整されたcRNA収率を決定する:
調整されたcRNA収率=RNAm ― (総RNAi)(y)
RNAm=IVT後の測定したcRNAの量(μg)
総RNAi=総RNAの開始量(μg)
y=IVTで用いたcDNA反応の分画
【0080】
標的物調節のためのcRNA断片化
断片化のために、調整されたcRNA濃縮物を使用する。
1. 8μlのRNAとH2Oに対して2μlの5×断片化バッファを添加。
20μg cRNA 1〜32μl
5×断片化バッファ 8μl
無RNアーゼ水で40μlにする
総容積: 40μl
2. 94℃で30分間インキュベート。インキュベーション後すぐに氷上に置く。
【0081】
ハイブリダイゼーション標的物の調製
1. 20×真核生物のハイブリダイゼーションコントロールとオリゴB2を65℃で5分間暖める。
Affymetrix GeneChip真核生物のハイブリダイゼーションコントロールキット、Part#900362(150rxnsに対して)
2. 軽く混合して遠心して側面の付着物を落とす。
3. マスター混合物(断片化したcRNA濃度を0.5μg/μlと仮定する場合):
標準的アレイ(μl) 最終濃度
断片化されたcRNA 15μg 30 0.05μg/μl
オリゴB2(3nM) 5 50pM
20×コントロールスパイク 15 1.5、5、25、100pM
(Bio、B、C、D、Cre)
ニシン精液DNA 3 0.1mg/ml
アセチル化BSA 3 0.5mg/ml
Hu cot-1 DNA(1mg/ml) 30 0.1mg/ml
2×MES Hybバッファ 150 1×
H2O 64
終容量 300
4. 270μlのマスター混合物をチューブ内に分注して、各々のチューブに30μlの断片化cRNAを添加。これをハイブリダイゼーション混合物とする。
5. プローブアレイを使用の直前に室温に戻す。
6. プローブアレイを1×MES Hybバッファで満たして、45℃で60回転数/分、10分間、回転式オーブンでインキュベート。
7. ハイブリダイゼーション混合物を99℃のウォーターバスで5分間加熱する。
8. ハイブリダイゼーション混合物を45℃のウォーターバスに移し5分間置く。
9. ハイブリダイゼーション混合物を最大速度で5分間遠心分離する。
10.プローブアレイから1×MES Hybバッファを取り除く。
11.プローブアレイを200μlのハイブリダイゼーション混合物で満たす。
12.粘性の斑点(Tough-Spots)を有する隔壁(septa)を密閉する。
13.45℃、60回転数/分で19時間、プローブアレイをハイブリダイズさせる。
14.Affymetrixプロトコルに従ってプローブアレイを洗浄し、着色し、スキャンする。
【0082】
Affymetrix材料
【0083】
量的PCR
cDNA合成:
【0084】
インキュベーション条件:
25℃で10分間
37℃で2時間
ABIプリズム7700配列決定検出器を用いたTaqMan反応:
【0085】
サーマルサイクル条件:
95℃で10分間
40サイクル:95℃で15秒間
60℃で1分間
・TaqManプローブ:Assays-on-DemandTM(TaqMan(登録商標) MGBプローブ、FAMTM色素標識)
・内在性コントロールであるGAPDHの増幅(プローブ濃度100nM、フォワード及びリバースプライマー濃度200nM)を行い、各反応液に加えた試料RNA(cDNA)の量を標準化する。
標準曲線法を用いて相対的な定量を行った。内在性コントロールへの正規化される定量のために、標的及び内在性コントロールの両方について標準曲線を作製した。各実験試料については、標的及び内在性コントロールの量は、適当な標準曲線から決定した。次いで、標的量を内在性コントロール量で割って標準化された標的値を求めた。実験試料のうちの1つを較正物質又は1×試料とした。次いで、各々の正規化した標的値を較正物質正規化標的値で割って、相対的な発現レベルを求めた。
【0086】
実験結果:
実験は前述の方法及び材料を使用して行った。後述するように、これらの実験の結果は、図5−9に示す。
図5は、MTT細胞障害性アッセイで測定した場合、DR5モノクローナル抗体「mab」(架橋あり「XL」又は架橋なし、+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)又はApo2L(+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)のアポトーシス活性に対して感受性であるか抵抗性であるかについて、非小細胞肺癌(「NSCLC」)の細胞株を分析して得たデータのIC50をまとめたものである。
図6は、MTT細胞障害性アッセイで測定した場合、DR5モノクローナル抗体「mab」(架橋あり「XL」又は架橋なし、+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)又はApo2L(+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)のアポトーシス活性に対して感受性であるか抵抗性であるかについて、膵臓癌細胞株を分析して得たデータのIC50をまとめたものである。
図7は、MTT細胞障害性アッセイで測定した場合、DR5モノクローナル抗体「mab」(架橋あり「XL」又は架橋なし、+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)又はApo2L(+10%ウシ胎児血清「FBS」)のアポトーシス活性に対して感受性であるか抵抗性であるかについて、非ホジキンリンパ腫癌(NHL)細胞株を分析して得たデータのIC50をまとめたものである。
図8は、GalNac−T14のmRNA発現によって測定した場合の、DR5抗体に対する選択NSCLC、膵臓、及びNHL癌細胞株の感受性(「sen」)又は抵抗性(「RES」)の比較と、GalNac−T14の発現との相関関係を示す。
図9は、GalNac−T14のmRNAの発現パターンのレベルにより(降順に)並べた、様々なNSCLC、膵臓、及びNHL細胞株の棒グラフを示す。
【0087】
アポトーシス細胞死プログラムは、多細胞生物の発生及び恒常性に重要な役割を果たす(Danial等、Cell, 116:205 (2004))。細胞内刺激により、細胞内因性の経路を介してアポトーシスを引き起こすことができ、これはアポトーシスカスパーゼ機構の活性化をBc1−2遺伝子のスーパーファミリーのメンバーに依存する(Cory等、Nat. Rev. Cancer, 2:647 (2002)。腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーに属する特定のサイトカインは、機能的アポトーシス誘発性「デスドメイン」(DD)を含む幾つかのレセプターと相互作用することにより、細胞外因性経路を介してアポトーシスを活性化することができる(Ashkenazi等, Science, 281:1305 (1998))。Fasリガンド(FasL)は、Fas(Apo1/CD95)によりアポトーシスを刺激し、一方Apo−2リガンド/TNF関連アポトーシス誘発性リガンド(Apo2L/TRAIL)は、DR4(TRAIL−R1)及び/又はDR5(TRAIL−R2)によりアポトーシスを引き起こす(LeBlanc等、Cell Death Differ., 10:66 (2003))。これらのレセプターは、その同族リガンドと結合すると、アダプター分子FADD(Fas随伴デスドメイン)を結合し、これによってアポトーシス誘導型カスパーゼ−8が補強されて細胞死誘発シグナル伝達複合体(DISC)が形成される(例えば、Kischkel等、EMBO J., 14:5579 (1995); Kischkel等、Immunity, 12:611 (2000)を参照)。DISCの群生はカスパーゼ−8を刺激し、するとカスパーゼ−3、6、及び7等のエフェクタープロテアーゼが切断及び活性化されて、アポトーシス細胞死プログラムが実行される。多くの細胞種類において、細胞内因性経路へのクロストークにより、細胞外細胞死シグナルを更に増幅させることができる(Scaffidi等、J. Biol. Chem., 274:1541 (1999))。Apo2L/TRAILは、正常組織に殆ど/又は全く影響を及ぼすことなく様々な腫瘍細胞種類においてアポトーシスを誘発する。これは、Apo2L/TRAILが癌治療に有用であり得ることを示唆するものである(例えば、Ashkenazi, Nat. Rev. Cancer, 2:420 (2002); Kelley等、Curr. Opin. Pharmacol., 4:333 (2004)参照)。アポトーシス経路の様々な成分を変化させることで、特定の癌細胞株のApo2L/TRAIL感受性を低下させることができる(specific cancer cell lines (2002))。
【0088】
以下に定める方法及びプロトコルに従って、様々な実験を実施し、そのデータを図10−15に示した。
レセプター活性に対する感受性を試験するため、一組のヒト癌細胞株におけるApo2L/TRAILの濃度の変化に伴う細胞生存を試験した。このヒト癌細胞株の組には、23の膵臓腺癌、18の悪性黒色腫、及び36の結腸直腸腺癌が含まれていた(図10A。データは示さない)。この分析で、Apo2L/TRAILに高度又は中程度の感受性として分類された細胞株は、77のうち29(38%)であった。これら29の細胞株に50%の細胞死を引き起こすのに必要なApo2L/TRAILの濃度は3〜800ng/mLであり、平均は250ng/mLであった。
【0089】
また、54613の遺伝子プローブ組のマイクロアレイを使用し、遺伝子発現プロファイリングにより前記細胞株の組を試験した。いくらかの例外はあったが、Apo2L/TRAILに対して強い又は中程度の感受性を示した膵臓癌及び黒色腫細胞株は、対応する抵抗性の細胞株より有意に高いO−グリコシル化酵素ppGalNAcT−14のmRNAレベルを発現した(フィッシャーの正確確率検定によりp=0.5×10−4、膵臓癌腫については750で、黒色腫については300で、繰り返しカットオフを行った)(図10B)。Apo2L/TRAILに感受性の結腸直腸癌細胞株の大部分は、関連するO−グリコシル化酵素ppGalNAcT−3の高いmRNA発現を示した。複数の抵抗性細胞株も同じ遺伝子を発現したが、その発現は弱く、有意な差異が認められた(p=0.026、2000でカットオフ)(図10Cの下のグラフ)。パネル全体の中の例外として、(a)感受性であるがカットオフレベルを下回るppGalNAcT−14又はppGalNAcT−3を発現した5/29の(17%)の細胞株、(b)それでもカットオフを上回るppGalNAcT−14、又はppGalNAcT−3レベルを有する16/48(33%)の抵抗性細胞が存在した。結腸直腸細胞株の他のO−グリコシル化酵素のmRNAの発現を試験することにより、6/24(25%)の抵抗性細胞株より高いレベルのFut−6が10/12(83%)の感受性細胞株において検出された(p=0.013、200でカットオフ)(図10Cの上のグラフ)。膵臓癌及び黒色腫におけるppGalNAcT−14の発現と、結腸直腸癌細胞株におけるFut−6との組み合わせは、Apo2L/TRAIL感受性と非常に強く相関していた(p=1.83×10−7、N=77)。この遺伝子の組は、23/32(72%)のマーカー陽性細胞株及び39/45(87%)のマーカー陰性細胞株について感受性か抵抗性かをそれぞれ正確に予測した。
また、腫瘍異種移植片を用いて、インビボにおいてApo2L/TRAIL感受性を試験した。Fut−6−陽性結腸直腸癌細胞株Colo205及びDLD−1由来の腫瘍を持つマウスを、5日に亘ってApo2L/TRAILで処置したところ、腫瘍が退縮し、次いで腫瘍の進行速度が大きく低下した(図10D)。対照的に、Fut−6−陰性結腸直腸癌細胞株Colo320及びRKO由来の腫瘍はこの処置に応答しなかった。
【0090】
チンパンジーのO−グリコシルトランスフェラーゼ阻害剤ベンジル−GalNAcを用いたppGalNAcT−3/Fut−6−陽性Colo205細胞株のプレインキュベーション(Delannoy等、Glycoconj., 13:717 (1996))は、Apo2L/TRAILに対する感受性を著しく低下させた(図11A)。これは、O−グリコシル化とApo2L/TRAILシグナル伝達が機能的にリンクしていることを示唆するものである。これを更に試験するため、ppGalNacT−14、ppGalNacT−3、又はFut−6のmRNAを標的とする特定の小分子干渉(si)RNAオリゴヌクレオチドを使用した。標的外の効果を除外するため、各遺伝子について複数の重複しないsiRNAを合成し、定量的RT−PCRによりそれらの標的発現の低減能を検証した(図14A)。siRNAの特異性は、siRNA標的領域内に6の「サイレント」ヌクレオチドの変化を含む変異ppGalNacT−14プラスミドにより更に確認された(Editorial, Nat. Cell. Biol., 5:489 (2003))(図14B)。ppGalNAcT−14−陽性のPSN−1膵臓癌腫及びHs294T黒色腫細胞株をppGalNAcT−14 siRNAを用いて形質移入したところ、Apo2L/TRAILに対する感受性が実質的に低下し、一方予想通り、カスパーゼ−8 siRNAによる保護はほぼ完全であった(図11B)。同様に、GalNAcT−3又はFut−6 siRNAによるDLD−1又はC170結腸直腸癌細胞の形質移入により、Apo2L/TRAILに対する感受性が有意に低下した(図11C及び図14C)。つまり、GalNAcT−14のsiRNAは、4/5の膵臓癌及び2/2の黒色腫細胞株において、Apo2L/TRAILに対する感受性を低下させ、一方ppGalNAcT−3又はFut−6 siRNAはいずれも、2/3の結腸直腸癌細胞株において感受性を低下させた。それに比べて、GalNAcT−14のsiRNAを用いたPSN−1又はHs294T細胞の形質移入は、トポイソメラーゼIIの阻害剤エトポシドに対する感受性を変化させなかった(図14D)。同様に、GalNAcT−14又はGalNAcT−3のsiRNAを用いたPSN−1又はC170細胞の形質移入は、広域性プロテインキナーゼ阻害剤スタウロスポリンに対する感受性に影響しなかった(図14E)。エトポシド及びスタウロスポリンはどちらも細胞内因性経路を介してアポトーシスを刺激する(Wei等、Science, 292:727 (2001))ので、これらの研究により、O−グリコシル化酵素が、細胞外因性経路を介したアポトーシスシグナル伝達を調節させ得ることが示唆される。
【0091】
ppGalNAcT−14を用いたHEK293細胞の形質移入は、DR4又はDR5を同時形質移入したときに細胞死を示したが、関連レセプターであるFas及びTNFR1又は細胞内因性経路アゴニストBaxの場合はそうではなかった(図11D)。更に、ppGalNAcT−14の形質移入により、抵抗性細胞株H1568黒色腫(図11E)、並びにPA−TU−8902及びPL−45膵臓癌種(図14F)のApo2L/TRAIL感受性が増大したが、エトポシドに対する感受性には変化がなかった(データは示さない)。総合すると、GalNAcT−14の過剰発現は4/7の細胞株をApo2L/TRAILに対して感作した。
ppGalNacT−14又はFut−6のsiRNAノックダウンの影響を、Apo2L/TRAIL誘導性カスパーゼプロセシングで試験した。コントロールsiRNAを用いて形質移入したPSN−1及びDLD−1細胞において、Apo2L/TRAILはカスパーゼ−8のほぼ完全なプロセシングを誘発し、Bid、カスパーゼ−9及びカスパーゼ−3の切断を導いた(図12A)。カスパーゼ−8のsiRNAを用いた形質移入は、これらの現象を防止した。PSN−1細胞中のppGalNAcT−14、又はDLD−1細胞中のFut−6のノックダウンも、カスパーゼ−8、Bid、カスパーゼ−9、及びカスパーゼ−3のApo2L/TRAIL誘導性プロセシング(図12A)、及びカスパーゼ3/7活性の刺激(図12B)を著しく減弱した。Apo2L/TRAIL抵抗性RKO及びSW1417結腸直腸癌細胞株は、低レベルのppGalNAcT−3及びFut−6を発現し、カスパーゼ−8プロセシングのレベルにおいて同様のブロックを示した(図15A)。このように、O−グリコシル化酵素は、Apo2L/TRAIL経路上流の、カスパーゼ−8の活性に繋がる現象を変化させることができる。
【0092】
カスパーゼ−8の活性化には、DISCアセンブリが必要である(Ashkenazi等、Science, 281:1305 (1998))。PSN−1及びDLD−1細胞におけるApo2L/TRAILのDISCの分析(Kischkel等、Immunity, 12:611 (2000))により、ppGalNAcT−14又はFut−6のノックダウンが、DISCに対するFADD及びカスパーゼ−8の補充、DISCに結合したカスパーゼ−8のプロセシング、及びDISCに随伴するカスパーゼ−8酵素活性の刺激を低減することが示唆された(Sharp等、J. Biol. Chem., 280:19401 (2005))(図12C、12D及び図15B)。ppGalNacT−14及びFut−6のsiRNAはいずれも、DISC中のDR4及びDR5の量を実質的に変化させず、またDR4とDR5を両方発現するPSN−1又はDLD−1細胞に対するApo2L/TRAILの用量依存性の結合を変化させなかった(図12C、図15B、及びデータなし)。このように、ppGalNAcT−14及びFut−6は、細胞表面のレセプターレベル又はApo2L/TRAIL結合に影響することによりアポトーシスを調節するとは思われない。これと一貫して、77の細胞株の組におけるApo2L/TRAIL感受性は、同族のシグナル伝達レセプターであるDR4及びDR5、又はデコイレセプターのDcR1及びDcR2の細胞表面における発現と有意な相関を示さなかった(データなし)。更に、ppGalNAcT−14、ppGalNacT−3、又はFut−6に対する大部分のsiRNAは、PSN−1、C170、又はDLD−1細胞におけるDR4及びDR5のレベルを変化させなかった(図15C)。二つのsiRNAは、特定の細胞株中のDR4及びDR5のレベルに検出可能な低下を引き起こさなかった(図15C)。しかしながら、同じ酵素に対する他のsiRNAは、レセプターのレベルに影響を与えることなくApo2L/TRAIL誘導性のアポトーシスを抑制した。
ヒトDR5の細胞外ドメイン(ECD)をチャイニーズハムスターの卵巣細胞中に発現させ、分泌されたタンパク質を精製し、酸加水分解させ、付随する単糖を分析した(図13A)。DR5のECDに予測されたN−グリコシル化部位が存在しないことと一致して、N−結合型グリカンは検出されなかった。しかしながら、2つの独立した実験における2つの試料は、DR5のECD1モル当たり3モルのGalNAc及び3モルのGalを示し(図13A)、これにより、コアグリカンGalNAc−GalによるDR5上の3つの部位のO結合型修飾が示唆された。
【0093】
タンパク質のOグリコシル化によって、セリン又はスレオニンが修飾される。潜在的なOグリコシル化部位を予測する従来の生物情報学の手段を使用して(http://www.cbs.dtu.dk/services/NetOGlyc)(Julenius等、 Glycobiology, 15:153 (2005))、ヒトDR5の長い(DR5−L)及び短い(DR5−S)結合変異型の共通ECD配列において2つの上記領域と、オルタナティブスプライス領域内に3つ目の領域を確認した(図13B)。第1アミノ酸セグメント(74−77)にはセリンが3つ含まれ、第2アミノ酸セグメント(130−144)には、スレオニンが5つ、第3アミノ酸セグメントにはスレオニンが4つとセリンが3つ含まれる。マウスのDR5は第1の2つのアミノ酸セグメントと同様の配列を持ち、それぞれセリン2つとスレオニン4つを含み、ヒトDR4にも同様の配列が2つあり、セリン1つとスレオニン5つを含む。これらの部位がDR5の翻訳後修飾に重要なものとなるのかどうか検査するために、セグメント130−144(DR5L−5T、DR5S−5T)のスレオニン5つ又はこれら5つのスレオニンと共にセグメント74−77(DR5L−5T3S、DR5S−5T3S)のセリン3つをアラニンと置換して、一組のDR5L及びDR5Sの変異株を作製した。DR5L又はDR5Sを形質移入したHEK293細胞から得た溶解物のDR5抗体免疫ブロット法の結果から、予測されたDR5L及びDR5Sのバンドの存在が確認された(図13C)。抗体は更に、より高分子量(MW)のDR5バンドを検出し、このDR5バンドは、DR5L又はDR5SをppGalNAcT−14と共に同時形質移入すると、コントロールと比べてより多くになった(図13Cのアスタリスク)。多くの高分子バンド及びppGalNAcT−14による増加は、野生型コンストラクトと比較して、DR5L−5T又はDR5S−5Tにより大幅に減少し、DR5L−5T3S又はDR5S−5T3Sによりほとんどなくなった。これらの結果から、高分子バンドはDR5のOグリコシル化した形態を表し、ppGalNAcT−14によりこれらの形成が促進され、アラニン置換による予測されたOグリコシル化部位の漸進的除去により、この影響が徐々に後退することが分かる。HEK293細胞にマウスDR5又はヒトDR4、DR5L、又はDR5Sを形質移入することにより、細胞死が起こり(図13D)、各変異DR5は、対応する野生型コンストラクトよりも弱い活性を示し、(3つの部位全てを持たない)DR5S−5T3Sが一番活性が弱かった。ppGalNAcT−14との同時形質移入により、非常に弱い活性を示したDR5S−5T3S以外の全てのDR4及びDR5コンストラクトにより細胞死が促進された。
【0094】
正常細胞及び皮膚癌、肺癌、膵臓癌、乳がん、卵巣がん、子宮内膜癌、膀胱がん、又は非ホジキンリンパ腫からの腫瘍サンプルの多くは、カットオフ値未満のppGalNAcT−14のmRNA発現をr示した(ほとんどの癌のカットオフ値は500、皮膚がんのカットオフ値は200において測定、図13E)。しかし、小葉乳がんの10%から肺がんの30%に至る範囲の、腫瘍サンプルのかなりの割合のサブセット、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、ppGalNAcT−14の過剰発現を示した。一部の癌サンプルのmRNA発現レベルは、対応する正常な組織の1000倍以上であった。癌サンプルにおけるダイナミックなppGalNAcT−14発現の結果から、この遺伝子、そして場合によっては他の関連酵素が、Apo2L/TRAILへの感受性がより大きい腫瘍を同定するのに有用なバイオマーカーとなり得ることがわかる。
O結合型グリカンはその構造において広範囲の多様性を示し、細胞の接着活性及びシグナル伝達活性と共に、構造、凝集、輸送、半減期を含む原形質膜タンパク質生物学の様々な態様を調節する(Hang等、Bioorg. Med. Chem., 13:5021 (2005);Hanisch, Bio. Chem., 382:143 (2001))。癌細胞は多くの場合、Oグリカンの形態を大きく変化させ、独特の腫瘍関連の糖鎖抗原を生成する(Brockhausen, Biochim. Biophys. Acta, 1473:67 (1999);Dube等、Nat. Rev. Drug Discovery, 4:477 (2005);Fuster等、nat. Rev. Cancer, 5:526 (2005))。Oグリコシル化も、腫瘍細胞の転移の特定部位へのホーミングにおいて重要な役割を果たす(Fuster等、Cancer Res., 63:2775 (2003);Ohyama等、EMBO J., 18:1516 (1999);Takada等、Cancer Res., 53:354 (1993))。結腸及び結腸直腸細胞サンプル、黒色腫細胞サンプル、及び軟骨肉腫細胞サンプルを含む様々なヒト癌からの主要な腫瘍サンプルの重要なサブセットは、様々なヒト癌からの主要な腫瘍サンプルの重要なサブセットは、Oグリコシル化酵素ppGalNAcT−14の過剰発現を示す。
【0095】
方法
材料
細胞培養試薬をGibco(Invitrogen/Gibco, Carlsbad, CA)より購入し、ノンタグの水溶性Apo2L/TRAILを前述したように作製し(Lawrence等、Nat. Med., 7:383 (2001))、O結合型グリコシル化阻害剤のベンジル−a−GalNAcをCalbiochemより、その他全ての(エトポシド及びスタウロスポリンを含む)化学薬品をSigma Aldrich(St. Louis, MO)より購入した。
細胞培養物及び細胞株
119種すべてのヒト癌腫細胞株(名前及びカタログ番号は添付資料を参照)をATCC又はDSMZ(Braunschweig, Germany)より入手し、ペニシリン/ストレプトマイシンなどの抗生剤を加えず、10%加熱不活性化胎児ウシ血清、2mMのL−グルタミン及び10mMのHEPESを加えたRPMI1640にて、温度37℃及び5%二酸化炭素の条件で、培養した。293ヒト胎児の腎臓細胞(カタログ番号:CRL−1573)もまたATCCより入手し、10%FBSを加えた100%ダルベッコ変法イーグル培地で培養した。Oグリコシル化変異株CHO細胞株であるldlD CHOは、マサチューセッツ工科大学(Boston MA)のMonty Kreiger博士より許可を得た。
【0096】
細胞生死判別アッセイ及びアポトーシスアッセイ
Apo2L/TRAILのIC50を測定するために、細胞を96ウェルプレート内に三通り置き、24時間かけて付着させ、その後濃度を1000ng/mlに到達するまで増加させながら組み換えヒトApo2L/TRAILで処理した。72時間インキュベートした後、細胞の生死判別アッセイ−MTTアッセイ(Pierce)又はCellTiter−Glo発光細胞生死判別アッセイ(Promega)を、製造会社の手順に従って行った。各細胞生死判別実験は、低(0.5%)及び高(10%FBS)血清で少なくとも3回繰り返して行い、中程度の感受性を有する細胞株を、個々の実験から得たIC50間及び低血清と高血清の間のばらつきにより決定した。細胞株は、Apo2L/TRAIL濃度1ug/mlにおいて少なくとも50%の細胞のアポトーシス誘発がある場合に、感受性があると判断され、個々の実験または低(0.5%)血清対高(10%)血清の存在下において誘発されたアポトーシス量の変動に基づいて中程度の感受性があると判断された。アポトーシスは、Annexin V (BD Pharmingen)で着色した採取細胞(付着+倍地中に浮遊)の平均割合のフローサイトメトリーによる分析により、数値化した。
マイクロアレイハイブリタイゼーション及びデータ分析
RNeasyキット(Quiagen)を使用して、未処理の細胞(3×106)から全細胞RNAを調製した。前述したように(Hoffman等、Nat. Rev. Genetics, 5:229 (2004); Yauch等、Clin. Cancer Res., 11:8686 (2005))、標識cRNAを調製し、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ(U133P GeneChip; Affymetrix Incorporated, Santa Clara, CA)にハイブリダイズさせた。走査画像ファイルをGENECHIP 3.1 (Affymetrix)、Spotfire、GenePattern及びCluster/TreeViewで分析した。感受性細胞株及び抵抗性細胞株の間で、最も特異的に発現した遺伝子を特定するため、遺伝子発現の値を、サンプル全体の倍率変化と絶対変動の試験によって分析されるサンプル全体において、変動が最小である細胞を除外する変動フィルターにかけて、最大値と最小値の割合(最大値/最小値)及び最大値と最小値の間の差(最大値−最小値)を特定の値と比較し、両方の条件に合わない遺伝子を除外した。
【0097】
発現コンストラクト及びレトロウイルス形質導入
ppGalNAcT−14をコードするDNA断片をApo2L/TRAIL感受性細胞株からプールしたcDNAからクローニングし、N−末端フラッグ・タグを有する発現プラスミドpcDNA3.1(Invitrogen)に挿入した。次にこのコンストラクトの部位特異的変異生成を行い(Quickchange Mutagenesis kit, Stratagene)、タンパク質配列を変化させることなく、siRNAと同種の配列において4〜6のゆらぎ塩基対変異を有するsiRNAサイレント変異株を生成した。この変異は、19bpのsiRNA結合配列の中央において、10bpの領域に及んだ。DR5Long、DR5Short、DR4、マウスTRAILレセプター、DR4、Fas(変異形1)、TNFR1及びBax(ベータ変異形)のDNA配列をcDNAプールからクローニングし、pRK発現ベクター(Genentech)に挿入した。DR5L及びDR5SのO−グリコシル化変異株は、4つのスレオニンのアラニン残基への部位特異的変異であるMut4xTA(T130、T131、T132、T135)、又は5つのスレオニンのアラニン残基への部位特異的変異であるMut5xTA(T130、T131、T132、T135、T143)により生成した。6つのウェルプレートで、0.5ug/ウェルのプロアポトーシス分子と2.0ugのppGalNAcT−14又はベクターコントロールの濃度で、HEK293細胞にプロアポトーシス分子の発現コンストラクトを一過性的に形質移入した。製造会社の手順に従い、リポフェクタミン2000を使用して、細胞に形質移入した。48時間の培養後、細胞のアポトーシス分析を行った。
レトロウイルスコンストラクトを生成するために、ppGalNAcT−14及び変異株を、pQCXIPレトロウイルスベクター(Clontech)にクローニングした。ΦNX−Amphoヘルパー細胞株を使用して、高力価レトロウイルス上清を生成した。リン酸カルシウム(Invitrogen)を使用して、パッケージ細胞に形質移入した。形質移入の48時間後に上清を単離し、10マイクロg/mlのポリブレンと共に標的細胞に添加し、その後、感染を促進するため2700rpmで1時間の遠心分離処理を行った。形質導入の後、2マイクロg/mlのピューロマイシンを使用して、細胞を選別した。
【0098】
siRNAの設計及び形質移入手順
ppGalNAcT−14、ppGalNAcT−3、カスパーゼ8及びDR5に対するsiRNAは、独自の選択基準を使用して、Dharmacon(Lafayette, CO)により設定されたものである。選択された配列は、
siGalNAcT-14 (1): 5' GACCATCCGCAGTGTATTA-dTdT 3' (=14-4) (配列番号:15)
siGalNAcT-14 (2): 5' ATACAGATATGTTCGGTGA-dTdT 3' (=14-6) (配列番号:16)
siGalNAcT-3 (1): 5' CCATAGATCTGAACACGTT-dTdT 3' (=3-2) (配列番号:17)
siGalNAcT-3 (2): 5' GCAAGGATATTATACAGCA-dTdT 3' (=3-7) (配列番号:18)
siFut-6 (1) 5' GUACCAGACACGCGGCAUA-dTdT 3' (=6-1) (配列番号:19)
siFut-6 (2) 5' ACCGAGAGGUCAUGUACAA-dTdT 3' (=6-2) (配列番号:20)
siCaspase-8: 5' GGACAAAGTTTACCAAATG-dTdT 3' (配列番号:21)
siRNAを二本鎖RNAオリゴヌクレオチドとして購入し、それぞれの細胞株に、各siRNAの最終濃度が25nMとなるように形質移入した。非標的配列(Dharmacon)に対するsiRNAの二本鎖をコントロールとして用いた。上清に細胞を加えたリバーストランスフェクションにより、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いて、予めプレートにまいた脂質−siRNA複合体に細胞をトランスフェクトした。リポフェクタミン2000の濃度は、製造会社の手順による。48時間のインキュベーション後、細胞をmRNA分析用に採取、又は組み替えヒトApo2L/TRAIL、エトポシド又はスタウロスポリンとともに、生死判別アッセイ用に更に24〜72時間、ウエスタンブロット分析用に4時間、8時間又は24時間インキュベートした。
【0099】
ベンジル−a−GalNAcを使用したO−グリコシル化の抑制
Colo205細胞をベンジル−a−GalNAc(2mM又は4mM)の存在下で72時間成長させた。この時点で、阻害剤の存在下のまま、96ウェルプレートに再度まき、24時間かけて付着させた。次に細胞を、前述したようにApo2L/TRAILの濃度を増加させながら刺激し、生死判別アッセイを行った。
定量的PCR
GalNacT−14及びGalNacT−3の転写発現レベルを標準Taqman技術を用いた定量RT−PCRで評価した。転写レベルはハウスキーピング遺伝子であるGAPDHに規準化し、結果を規準化発現値(=2−DCt)として表した。GalNacT−14(カタログ番号:Hs00226180_m1_GT14)、GalNacT−3(カタログ番号:Hs00237084_m1_GT3)及びGAPDH(カタログ番号:402869)のプライマー/プローブ一式は、Applied Biosystems(Foster City, CA)より購入した。
【0100】
免疫沈降法、ウエスタンブロット分析及び抗体
IP: 抗Apo2L(2E11; ATCC預託番号 HB-12256)、抗DR4(3G1及び4G7, ATCC預託番号PTA-99)、及び抗DR5(3H3, ATCC Accession No. 12534及び5C7)のモノクローナル抗体は、ジェネンテック社においてレセプター−Fc融合タンパク質を抗原として用いて生成された。Apo2L/TRAIL DISCの免疫沈降法に用いられる抗DR4(4G7)及び抗DR5(5C7)モノクローナル抗体は、Pierce製のImmunoPure Protein G IgG Plus オリエンテーションキット(カタログ番号44990)を使用してアガロースに結合させた。DISC免疫沈降法においてDR4/5の免疫検出に用いられる抗DR4(3G1)及び抗DR5(3H3)モノクローナル抗体を、Pierce製のEZ−link Sulfo−NHS−LC ビオチン化キット(カタログ番号21217)を使用して、ビオチン化した。FLAG−タグ化Apo2L/TRAILを調製し、前述したように(Kischkel, Immunity, 12:611 (2000))、抗FLAG抗体M2(Sigma)と架橋させた。これらの実験は、Apo2L/TRAIL FLAG+抗FLAG DISC解析(Kischkel、上掲)について前述したように行った。DR4/5 DISC 免疫沈降実験も、免疫沈降のために抗DR4(4G7)及び抗DR5(5C7)モノクローナル抗体を直接アガロースに結合させた以外は、前述したように行った(Sharp等、 J. Biol. Chem., 280:19401 (2005))。
WB: 6つのウェルプレートに、1つのウェルに対し5×105の細胞を播種した。RNAiノックダウン実験では、細胞を異なるsiRNAで48時間処理した後、Apo2L/TRAILで4時間、8時間あるいは24時間処理を行った。表示した時間経過後に、細胞を氷冷のPBSで洗浄し、1%トリトンX−100含有の低浸透圧性の溶解緩衝液(20 mM HEPES pH 7.5, 10 mM KCL, 1.5 mM MgCl2, 1 mM EDTA及び1 mM DTT)に溶解した。各サンプルでは、40μgのタンパク質を還元条件下で10%又は10〜20%勾配のSDSポリアクリルアミドゲル上で分離した。ニトロセルロース膜(Schleicher 及び Schuell)に移した後に、10%脱脂粉乳で1時間インキュベートし、その後下記の一次抗体:ヤギ抗カスパーゼ3抗体(1:1000, R&D)、ウサギ抗カスパーゼ8抗体(1:1000, Pharmingen)、マウス抗カスパーゼ9抗体5B4(1:1000, MBL)、ウサギ抗Bid抗体(1:1000, Pharmingen)、ウサギ抗DR5抗体(1:500, Cayman)又はヤギ抗アクチン抗体(1:200, Santa Cruz Biotechnology)とともに1時間インキュベートした。TBS/0.05%Tweenでメンブランを5回洗浄し、それから各ペルオキシダーゼ抱合親和性精製二次抗体(1:5000, Biorad)とともに30分間インキュベートした。メンブランを再び5回洗浄し、高感度化学発光(ECL, Amersham)を使用して発光させ、コダック バイオマックスフィルムに露光させた。
【0101】
フローサイトメトリー/FACS分析
TNFファミリレセプター、DR4及びDR5の表面発現は、FACS Calibur フロー部位メーター(Becton Dickinson Immunocytometry System, San Jose, CA)を用いた蛍光表示式細胞選別(FACS)により測定した。表示のsiRNAの形質移入を48時間行ったC170とPSN−1細胞を、10μg/mlの一次抗体、4G7(抗DR4)又は3H3(抗DR5)又はマウスIgGコントロール抗体にて4℃で1時間かけて染色した。次に細胞をPBSで洗浄し、フルオレセイン(FITC)抱合ヤギ抗マウス第二次抗体(Jackson Laboratories)とともに4℃で30分インキュベートした。その後FACS Calibur フロー部位メーターを用いたフローサイトメトリーにて細胞を分析した。
カスパーゼアッセイ
カスパーゼ−3/−7活性を100μMの蛍光発生ペプチドAc−DEVD−AFCを含有する40μlのカスパーゼ緩衝液(50mM HEPES pH 7.4, 100 mM NaCl, 10 % sucrose, 1mM EDTA, 0.1% CHAPS及び10 mM DTT)中で37℃で試験した。活性の表示の時間にわたる連続測定を、モレキュラーデバイス蛍光光度計のキネティックモードと405−510フィルターペアを使用して、DEVD−AFCからAFCを放出させることにより行った。カスパーゼ活性の評価には、40μlのカスパーゼ緩衝液(100μMのDEVD−AFC含有)に対し20μgの総細胞タンパク質(Triton X-100 抽出物)を使用した。
【0102】
CHO由来DR5の炭水化物分析
CHO細胞由来DR5の単糖組成物を4N TFAによる加水分解後に得た。遊離した単糖の分析は、パルス電流検出器と組み合わせた高性能陰イオン交換クロマトグラフィーを用いたDionex BioLC HPLC システムにより、実施した。
動物及び皮下注射異種移植の研究
雌の胸腺欠損ヌードマウス(The Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME, USA)を、実験研究に用いる前に最低一週間ジェネンテックの動物収容施設に順応化した。全ての実験手順は、ジェネンテックの施設内動物実験委員会(IACAUC)により認可された。Colo205、DLD−1、及びRKOをマウス1匹に対し5×106 細胞、又はColo320HSRヒト結腸癌細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション)をマウス1匹に対し20×106 細胞の割合で、皮下注射により接種した。腫瘍の測定はデジタルカリパスによって行い、腫瘍量は数式、(A=長さ)×(B=幅)2を使用して算出した。腫瘍量が一旦約150〜200mm3に到達すると、マウスを任意にグループ分けし、0日目〜4日目に溶媒あるいはApo2L/TRAIL(60mg/kg/日)を腹腔内(i.p.)へ投与した。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】ヒトApo-2リガンドcDNA(配列番号:2)のヌクレオチド配列及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:1)を示す。ヌクレオチド位置447の「N」は、ヌクレオチド塩基が「T」又は「G」であってもよいことを示すために用いる。
【図2A】完全長ヒトDR4のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:4)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:3)を示す。また、ヒトDR4のそれぞれのヌクレオチド及びアミノ酸配列は、Pan 等, Science, 276:111 (1997)に報告される。
【図2B】完全長ヒトDR4のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:4)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:3)を示す。また、ヒトDR4のそれぞれのヌクレオチド及びアミノ酸配列は、Pan 等, Science, 276:111 (1997)に報告される。
【図3A】1998年11月19日の国際公開公報98/51793に公開されるヒトDR5の411のアミノ酸配列(配列番号:5)を示す。
【図3B】ヒトDR5の転写スプライシング変異体は当分野で公知である。1998年8月20日の国際公開公報98/35986に公開される、このDR5スプライシング変異体は図3B及び図3Cに示されるヒトDR5の440のアミノ酸配列(配列番号:6)をコードする。
【図3C】ヒトDR5の転写スプライシング変異体は当分野で公知である。1998年8月20日の国際公開公報98/35986に公開される、このDR5スプライシング変異体は図3B及び図3Cに示されるヒトDR5の440のアミノ酸配列(配列番号:6)をコードする。
【図3D−1】完全長ヒトDcR1のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:7)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:8)を示す。また、ヒトDcR1(及びその特定のドメイン)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列のそれぞれは、国際公開公報98/58062に記載される。
【図3D−2】完全長ヒトDcR1のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:7)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:8)を示す。また、ヒトDcR1(及びその特定のドメイン)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列のそれぞれは、国際公開公報98/58062に記載される。
【図3D−3】完全長ヒトDcR1のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:7)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:8)を示す。また、ヒトDcR1(及びその特定のドメイン)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列のそれぞれは、国際公開公報98/58062に記載される。
【図3E−1】完全長ヒトDcR2のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:9)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:10)を示す。ヒトDcR2(及びその特定のドメイン)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列のそれぞれは、国際公開公報99/10484にも示される。
【図3E−2】完全長ヒトDcR2のcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:9)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:10)を示す。ヒトDcR2(及びその特定のドメイン)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列のそれぞれは、国際公開公報99/10484にも示される。
【図4A−1】ヒトGalNac−T14のヌクレオチド配列(配列番号:11)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:12)を示す。これらの配列は、Wang等、BBRC、300:738-744 (2003)にも記載されている。
【図4A−2】ヒトGalNac−T14のヌクレオチド配列(配列番号:11)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:12)を示す。これらの配列は、Wang等、BBRC、300:738-744 (2003)にも記載されている。
【図4A−3】ヒトGalNac−T14のヌクレオチド配列(配列番号:11)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:12)を示す。これらの配列は、Wang等、BBRC、300:738-744 (2003)にも記載されている。
【図4A−4】ヒトGalNac−T14のヌクレオチド配列(配列番号:11)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:12)を示す。これらの配列は、Wang等、BBRC、300:738-744 (2003)にも記載されている。
【図4B−1】ヒトGalNac−T3のヌクレオチド配列(配列番号:13)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:14)を示す。これらの配列は、Bennett等、J. Biol. Chem., 271:17006-17012 (1996)にも記載されている。
【図4B−2】ヒトGalNac−T3のヌクレオチド配列(配列番号:13)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:14)を示す。これらの配列は、Bennett等、J. Biol. Chem., 271:17006-17012 (1996)にも記載されている。
【図4B−3】ヒトGalNac−T3のヌクレオチド配列(配列番号:13)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:14)を示す。これらの配列は、Bennett等、J. Biol. Chem., 271:17006-17012 (1996)にも記載されている。
【図4B−4】ヒトGalNac−T3のヌクレオチド配列(配列番号:13)及びその誘導されるアミノ酸配列(配列番号:14)を示す。これらの配列は、Bennett等、J. Biol. Chem., 271:17006-17012 (1996)にも記載されている。
【図5】Apo2L(+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)又はDR5モノクローナル抗体「DR5 ab」(架橋あり「XL」又は架橋なし、+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)のアポトーシス活性に対して感受性であるか抵抗性であるかについて、非小細胞肺癌(「NSCLC」)細胞株を分析して得たデータのIC50を図表にまとめたものである。
【図6】MTT細胞障害性アッセイで測定した場合、Apo2L(+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)又はDR5モノクローナル抗体「DR5 ab」(架橋あり「XL」又は架橋なし、+0.5%ウシ胎児血清「FBS」又は10%FBS)のアポトーシス活性に対して感受性であるか抵抗性であるかについて、膵臓癌細胞株を分析して得たデータのIC50を図表にまとめたものである。
【図7】MTT細胞障害性アッセイで測定した場合、Apo2L(+10%ウシ胎児血清「FBS」)又はDR5モノクローナル抗体「DR5 ab」(架橋あり「XL」又は架橋なし、+10%ウシ胎児血清「FBS」)のアポトーシス活性に対して感受性であるか抵抗性であるかについて、非ホジキンリンパ腫癌(「NHL」)を分析して得たデータのIC50を図表にまとめたものである。
【図8A】GalNac−T14のmRNA発現によって測定した、DR5抗体に対する選択NSCLC、膵臓、及びNHL癌細胞株の感受性(「sen」)又は抵抗性(「RES」)の比較と、GalNac−T14の発現との相関関係を示す。
【図8B】GalNac−T14のmRNA発現によって測定した、DR5抗体に対する選択NSCLC、膵臓、及びNHL癌細胞株の感受性(「sen」)又は抵抗性(「RES」)の比較と、GalNac−T14の発現との相関関係を示す。
【図9A】GalNac−T14のmRNAの発現パターンのレベルにより(降順に)並べた、様々なNSCLC、膵臓、及びNHL細胞株の棒グラフを示す。
【図9B】GalNac−T14のmRNAの発現パターンのレベルにより(降順に)並べた、様々なNSCLC、膵臓、及びNHL細胞株の棒グラフを示す。
【図10A】Apo2L/TRAIL感受性及び抵抗性の癌細胞株における特定のO−グリコシル化酵素の異なる発現を示す。異なるApo2L/TRAILの用量を用いてインキュベートした後、細胞生存度を測定した。生存度を50%低下させるApo2L/TRAILの濃度を用いて各細胞株のIC50を計算した。ウシ胎児血清が低い場合(0.5%)と高い場合(10%)について、細胞生存度の実験を少なくとも3回繰り返した。黒、グレイ、又は白抜きの記号はそれぞれ、Apo2L/TRAILに対する感受性が高い、中程度である、又はApo2L/TRAILに対して抵抗性であることを示す。
【図10B】Apo2L/TRAIL感受性及び抵抗性の癌細胞株における特定のO−グリコシル化酵素の異なる発現を示す。膵臓及び悪性黒色腫細胞株におけるppGalNAcT−14 mRNAの発現レベル(プローブセット219271_at)を示す。細胞株は、組織種別及びApo2L/TRAILに対する感受性によって配置されている。黒、グレイ、又は白抜きの棒グラフは、Aと同様の細胞株を示す。
【図10C】Apo2L/TRAIL感受性及び抵抗性の癌細胞株における特定のO−グリコシル化酵素の異なる発現を示す。結腸直腸癌細胞株におけるFut−6(上図、プローブセット211885_x_at)及びppGalNAcT−3(下図、プローブセット203397_s_at)のmRNA発現レベルを示す。細胞株はBと同様に配置されている。図B及びCのP値は、細胞株の感受性(高度及び中程度)とカットオフを上回るmRNA発現との相関関係のフィッシャー試験に基づいている。
【図10D】Apo2L/TRAIL感受性及び抵抗性の癌細胞株における特定のO−グリコシル化酵素の異なる発現を示す。確立された腫瘍異種移植片の成長に対するApo2L/TRAILの影響を示す。GalNAcT−3/Fut−6−陽性(左図)又はGalNAcT−3/Fut−6−陰性(右図)腫瘍を持つ無胸腺ヌードマウスに対し、溶媒又はApo2L/TRAIL(60mg/kg/日で0−4日目に腹腔内注入)を投与し、腫瘍の容積をモニタリングした(平均±SE、N=10マウス/グループ)。
【図11A】特定のO−グリコシル化酵素の調節によるApo2L/TRAILに対する感受性の変化を示す。Colo205細胞を、チンパンジーのO−グリコシル化酵素阻害剤ベンジル−GalNAc(bGalNAc)とともにプレインキュベートし、Apo2L/TRAILで24時間に亘って処置し、細胞生存度を決定した(DMSO=溶媒コントロール)。
【図11B】特定のO−グリコシル化酵素の調節によるApo2L/TRAILに対する感受性の変化を示す。カスパーゼ−8又はppGalNAcT−14のsiRNAを48時間に亘ってPSN−1(膵臓癌腫)及びHs294T(黒色腫)細胞に形質移入し、Apo2L/TRAILとともに更に24時間インキュベートし、細胞生存度を決定した。非標的配列(Dharmacon)に対するsiRNA二本鎖をコントロールとして使用した(NTC)。
【図11C】特定のO−グリコシル化酵素の調節によるApo2L/TRAILに対する感受性の変化を示す。siRNAによりppGalNAcT−3又はFut−6をDLD−1結腸直腸癌腫細胞に形質移入し、Bと同様に試験した。
【図11D】特定のO−グリコシル化酵素の調節によるApo2L/TRAILに対する感受性の変化を示す。ppGalNAcT−14又はベクターコントロールと組み合わせて図示の遺伝子をコードするプラスミドを、HEK293細胞に同時形質移入した。アネキシンV染色(左図)により、24時間後にアポトーシスを測定した。H1569黒色腫細胞にppGalNAcT−14発現を促すレトロウイルス又はコントロールレトロウイルスを形質導入した。結果として得られた細胞株のプールを24時間に亘ってApo2L/TRAILで処理し、細胞生存度を決定した(右図)。抗FLAG抗体を用いたウエスタンブロット分析を使用して、エピトープタグを付けたppGalNAcT−14の発現を検証した。
【図12A】Apo2L/TRAILによって誘発されたカスパーゼカスケードの分析を示す。PSN−1及びDLD−1細胞に、それぞれppGalNAcT−14又はFut−6に対するsiRNAを48時間に亘り形質移入した。4又は8時間に亘ってApo2L/TRAILにて細胞を処理し、カスパーゼ−8、Bid、カスパーゼ−9、カスパーゼ−3、又は添加コントロールとしてのアクチンに特異的な抗体を用いた免疫ブロットにより細胞溶解物を分析した。
【図12B】Aと同様に、ppGalNAcT−14のsiRNAをPSN−1細胞に形質移入し、4時間に亘ってApo2L/TRAIL処理を行い、細胞可溶化物におけるカスパーゼ−3/7酵素活性を決定した。
【図12C】Apo2L/TRAIL DISCの分析を示す。Aと同様に、ppGalNAcT−14のsiRNAをPSN−1細胞に形質移入した。FLAG−Apo2L/TRAIL(1mg/ml)を0−60分に亘って加え、細胞を溶解させ、抗FLAG抗体を用いた免疫沈降を行った。免疫ブロットによりDISCに随伴するFADD、カスパーゼ−8、DR4を検出した。
【図12D】PSN−1細胞に対し、Cと同様の形質移入、処理、及びDISC免疫沈降を行い、上述のようにしてDISCに随伴するカスパーゼ−8の酵素活性を測定した(Sharp等、J. Biol. Chem., 280:19401 (2005))。
【図13A】HPAEC−PAD(パルス電流検出器と組み合わせた高性能陰イオン変換クロマトグラフィー)によって実施された、CHO細胞中に生成された組換えヒトDR5(Longスプライス変異体)の単糖分析を示す。
【図13B】ヒトApo2L/TRAILレセプター(ヒトDR5の長形440aa「hDR5L」、ヒトDR5の短形411aa型「hDR5S」及びhDR4)、マウスDR5(mDR5)、ヒトFas(hFas)並びにヒトTNFR1(hTNFR1)の配列比較である。囲み内は推定上のO−グリコシル化部位を示す。
【図13C】Dに対応する全体の細胞溶解物の免疫ブロット分析である。DR5L−5T及びDR5S−5Tは、5のスレオニンからアラニンへの置換を含むコンストラクトであり、DR5L−5T3S及びDR5S−5T3Sは、潜在的なO−グリコシル化部位である残基中に5のスレオニンからアラニンへの置換と3のセリンからアラニンへの置換をそれぞれ含むコンストラクトである。
【図13D】図示のDR5コンストラクトをベクター又はppGalNAcT−14プラスミドと共にHEK293細胞に48時間に亘って形質移入し、アネキシンV染色によってアポトーシスを測定した。
【図13E】皮膚の癌(SCC=扁平上皮癌)、肺癌、膵臓癌(Panc)、乳癌、卵巣癌(Ov)、子宮内膜癌(Endo)、膀胱癌(Bla、TCC=移行上皮癌)及びNHL(FL=濾胞性リンパ腫、DLBCL=びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)から採取した原発性ヒト腫瘍試料におけるppGalNAcT−14のmRNA発現レベル(Affymetrixチップ、プローブセット219271_at)を示す。各分類の試料の発現の中央値を水平な線で示す。図10Bの細胞株のデータに対応して500及び200(黒色腫)のカットオフが示されている。
【図14A】48時間のsiRNAノックダウン後の、PSN−1又はDLD−1細胞におけるppGalNAcT−14又はppGalNAcT−3のmRNA発現の低下を示すTaqman分析である。
【図14B】空のプラスミド(Empty)、野生型GalNAcT−14(GalNAcT−14)又はsiGalNAcT−14(1)媒介によるppGalNAcT−14ノックダウン後のsiRNAサイレント変異を含むGalNAcT−14(GalNAcT−14si(1)Mut)の形質移入により、PSN−1細胞中に再構成されたGalNAcT−14の発現を示す。
【図14C】RNAの干渉によるppGalNAcT−3又はFut−6の下方制御は、C170(結腸直腸癌)細胞におけるApo2L/TRAIL誘導性の細胞死を抑制した。実験手順は11Cと同様である。(表1)A)siRNAノックダウン表現型をまとめた表である。GalNAcT−14又はppGalNAcT−3及びFut−6の下方制御がApo2L/TRAILからの保護となった細胞株には、試験した少なくとも一つのsiRNAオリゴヌクレオチドに関して、50%未満の保護(+)又は50%を超える保護(++)をマークした。(0)は、Apo2L/TRAILに対する保護が観察されなかったことを示す。
【図14D】図示のsiRNAにより48時間のノックダウンを行った後、濃度を増大させながらエトポシド又はスタウロスポリンにより細胞を24時間に亘って処理し、細胞生存度アッセイを行った結果を示す。
【図14E】図示のsiRNAにより48時間のノックダウンを行った後、濃度を増大させながらエトポシド又はスタウロスポリン(STS)により細胞を24時間に亘って処理し、細胞生存度アッセイを行った結果を示す。
【図14F】PA−TU−8902及びPL−45細胞株のプールを過剰発現するレトロウイルスppGalNAcT−14に対し、Apo2L/TRAIL処理を行ってから細胞生存度アッセイを行った結果を示す。抗FLAG抗体を用いたウエスタンブロット分析により、レトロウイルスがこれら細胞にppGalNAcT−14を発現することが示された。
【図15A】Apo2L/TRAIL感受性Colo205及び抵抗性結腸直腸癌細胞株である、PKO及びSW1417におけるApo2L/TRAIL誘導性のカスパーゼ活性化カスケードのウエスタンブロット分析を示す。細胞は、1000ng/mlのApo2L/TRAILにより8時間及び24時間に亘って処理し、全体の細胞溶解物に対し、カスパーゼ−8、Bid、カスパーゼ−9、カスパーゼ−3及び添加コントロールとしてのアクチンに対して特異的な抗体を用いたウエスタンブロット分析を行った。
【図15B】Fut−6のノックダウンにより、DLD−1細胞中のApo2L/TRAIL DISCにおけるカスパーゼ−8の補充及び活性化が低減した。実験手順は12Dに従った。
【図15C−1】図示の遺伝子を用いてsiRNAノックダウンを行った細胞におけるDR4の細胞表面発現を、FACS分析により測定したものである。
【図15C−2】図示の遺伝子を用いてsiRNAノックダウンを行った細胞におけるDR5の細胞表面発現を、FACS分析により測定したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の組織または細胞試料のデスレセプター抗体への感受性を予測する方法であって、
哺乳動物組織または細胞試料を採取する工程、
該組織または細胞試料を検査して、GalNac−T14の発現を検出する工程
を含んでなり、該組織または細胞試料がデスレセプター抗体のアポトーシス誘導活性に感受性があることが該GalNac−T14の発現により予測される方法。
【請求項2】
前記GalNac−T14の発現がGalNac−T14のmRNA発現を検出することによって検査されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学的な方法によって検査されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、前記組織または細胞試料中のDR4、DR5、DcR1またはDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組織または細胞試料に癌組織または癌細胞が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記癌細胞が、膵臓癌、リンパ腫、非小細胞肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、黒色腫または軟骨肉腫の癌細胞または組織である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記デスレセプター抗体がアゴニスト性の抗DR4抗体または抗DR5抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物組織または細胞試料においてアポトーシスを誘導する方法であって、
哺乳動物組織または細胞試料を採取する工程、
該組織または細胞試料を検査してGalNac−T14の発現を検出する工程、
その後、該GalNac−T14の発現を検出した後、有効量のデスレセプター抗体に該組織または細胞試料を曝す工程
を含んでなる方法。
【請求項9】
前記GalNac−T14の発現がGalNac−T14のmRNA発現を試験することによって検査されるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学的な方法によって検査されるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記組織または細胞試料中のDR4、DR5、DcR1またはDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記組織または細胞試料に癌組織または癌細胞が含まれる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記癌細胞が、膵臓癌、リンパ腫、非小細胞肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、黒色腫または軟骨肉腫の癌細胞または組織である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記癌細胞が有効量のアゴニストDR4抗体またはアゴニストDR5抗体に曝される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記癌細胞が図3Aに示すDR5レセプターに結合する有効量のアゴニストDR5抗体に曝される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
哺乳動物の免疫関連疾患または癌などの疾患の治療方法であって、
哺乳動物から組織または細胞試料を採取する工程、
該組織または細胞試料を検査してGalNac−T14の発現を検出する工程、
該GalNac−T14の発現を検出した後、有効量のデスレセプター抗体を該哺乳動物に投与する工程
を含んでなる方法。
【請求項17】
前記GalNac−T14の発現がGalNac−T14のmRNA発現を検出することによって検査されるものである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学的な方法によって検査されるものである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
さらに、前記組織または細胞中のDR4、DR5、DcR1またはDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記組織または細胞試料に癌組織または癌細胞が含まれる、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記癌細胞が、膵臓癌、リンパ腫、非小細胞肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、黒色腫または軟骨肉腫の癌細胞または組織である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
有効量の抗DR4抗体または抗DR5抗体が前記哺乳動物に投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
また、一又は複数の化学療法剤又は放射線療法が前記哺乳動物に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
また、サイトカイン、細胞障害性剤又は増殖阻害剤が前記哺乳動物に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項1】
哺乳動物の組織または細胞試料のデスレセプター抗体への感受性を予測する方法であって、
哺乳動物組織または細胞試料を採取する工程、
該組織または細胞試料を検査して、GalNac−T14の発現を検出する工程
を含んでなり、該組織または細胞試料がデスレセプター抗体のアポトーシス誘導活性に感受性があることが該GalNac−T14の発現により予測される方法。
【請求項2】
前記GalNac−T14の発現がGalNac−T14のmRNA発現を検出することによって検査されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学的な方法によって検査されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、前記組織または細胞試料中のDR4、DR5、DcR1またはDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組織または細胞試料に癌組織または癌細胞が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記癌細胞が、膵臓癌、リンパ腫、非小細胞肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、黒色腫または軟骨肉腫の癌細胞または組織である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記デスレセプター抗体がアゴニスト性の抗DR4抗体または抗DR5抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物組織または細胞試料においてアポトーシスを誘導する方法であって、
哺乳動物組織または細胞試料を採取する工程、
該組織または細胞試料を検査してGalNac−T14の発現を検出する工程、
その後、該GalNac−T14の発現を検出した後、有効量のデスレセプター抗体に該組織または細胞試料を曝す工程
を含んでなる方法。
【請求項9】
前記GalNac−T14の発現がGalNac−T14のmRNA発現を試験することによって検査されるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学的な方法によって検査されるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記組織または細胞試料中のDR4、DR5、DcR1またはDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記組織または細胞試料に癌組織または癌細胞が含まれる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記癌細胞が、膵臓癌、リンパ腫、非小細胞肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、黒色腫または軟骨肉腫の癌細胞または組織である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記癌細胞が有効量のアゴニストDR4抗体またはアゴニストDR5抗体に曝される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記癌細胞が図3Aに示すDR5レセプターに結合する有効量のアゴニストDR5抗体に曝される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
哺乳動物の免疫関連疾患または癌などの疾患の治療方法であって、
哺乳動物から組織または細胞試料を採取する工程、
該組織または細胞試料を検査してGalNac−T14の発現を検出する工程、
該GalNac−T14の発現を検出した後、有効量のデスレセプター抗体を該哺乳動物に投与する工程
を含んでなる方法。
【請求項17】
前記GalNac−T14の発現がGalNac−T14のmRNA発現を検出することによって検査されるものである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記GalNac−T14の発現が免疫組織化学的な方法によって検査されるものである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
さらに、前記組織または細胞中のDR4、DR5、DcR1またはDcR2レセプターの発現を検査する工程を含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記組織または細胞試料に癌組織または癌細胞が含まれる、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記癌細胞が、膵臓癌、リンパ腫、非小細胞肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、黒色腫または軟骨肉腫の癌細胞または組織である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
有効量の抗DR4抗体または抗DR5抗体が前記哺乳動物に投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
また、一又は複数の化学療法剤又は放射線療法が前記哺乳動物に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
また、サイトカイン、細胞障害性剤又は増殖阻害剤が前記哺乳動物に投与される、請求項22に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D−1】
【図3D−2】
【図3D−3】
【図3E−1】
【図3E−2】
【図4A−1】
【図4A−2】
【図4A−3】
【図4A−4】
【図4B−1】
【図4B−2】
【図4B−3】
【図4B−4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図15A】
【図15B】
【図15C−1】
【図15C−2】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D−1】
【図3D−2】
【図3D−3】
【図3E−1】
【図3E−2】
【図4A−1】
【図4A−2】
【図4A−3】
【図4A−4】
【図4B−1】
【図4B−2】
【図4B−3】
【図4B−4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図15A】
【図15B】
【図15C−1】
【図15C−2】
【公表番号】特表2009−504186(P2009−504186A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527077(P2008−527077)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/031894
【国際公開番号】WO2007/022214
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(507202770)ジェネンテック・インコーポレーテッド (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/031894
【国際公開番号】WO2007/022214
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(507202770)ジェネンテック・インコーポレーテッド (24)
【Fターム(参考)】
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