説明

組付構造体

【課題】係合する部分に直接ふれずとも組付を解除できる組付構造体を提供する。
【解決手段】弾性変形が可能とされ、先端部に係合爪13a,13bは形成された係合片12a,12bを備える支持部10と、係合爪13a,13bとの係合が可能とされた係合受部を備えるノブとを備え、支持部10とノブとを相対的に近接させることにより、係合爪13a,13bと係合受部とが係合して、支持部10とノブとが組付く組付構造体において、支持部10に組付いたノブが、車両の進行方向へ向かう力を受けたとき、係合受部と当接して、当該係合受部と係合爪13a,13bとの係合が解除されるように係合片12a,12bの弾性変形を案内する第2の傾斜面15a,15bを備える組付構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーツの弾性を利用した組付構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ねじやリベットといった別体の結合手段や、接着剤等の接着手段を必要とせず、パーツ同士を組み合わせるだけで両者を固定することができる組付構造体がある。このような組付構造体としては、特許文献1に示されるものがある。特許文献1の組付構造体では、第1のパーツと第2のパーツとが組付けられてなる。第1のパーツは、本体部と、当該本体部に対して弾性変形可能に設けられた1対の係合片とを備える。この1対の係合片の先端部には、互いに対向するように係合爪が形成されている。係合爪は、自身が設けられる係合片の先端部から基端部へ向かうにつれて徐々に相手側の係合片に近づくように傾斜する傾斜面を備える。一方、第2のパーツは、1対の係合片の間の距離と等しい幅を有する。
【0003】
第1のパーツを第2のパーツに取り付けるには、一対の係合片と第2のパーツとが向かい合う状態を維持しつつ第1のパーツを第2のパーツに向かって変位させる。すると、第2のパーツは、第1のパーツの変位に伴い1対の係合片の傾斜面を押圧する。当該押圧に伴う力は、傾斜面によって1対の係合片を拡開させる方向の力に変換される。第1のパーツと第2のパーツとを近接させるのに伴い、1対の係合片は、徐々に弾性変形(拡開)する。この拡開により、第1のパーツの更なる第2のパーツ側への変位が許容される。更に、第1のパーツを第2のパーツに向かって変位させると、第2のパーツが傾斜面を乗り越え、第2のパーツと傾斜面との当接が解除される。これに伴い、1対の係合片は原位置へ弾性復帰する。第2のパーツは、1対の係合片の間の距離と等しい幅を有しているので、係合片の弾性復帰後、第1のパーツを第2のパーツから離間する方向へ変位させようとしても、係合爪が第2のパーツの受部に引っかかる。こうして、第1のパーツと第2のパーツとが組付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−236764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の組付構造体では、一度組付けてしまうと、外部から1対の係合片に直接的に力を加えて1対の係合片を拡開させなければ、第1のパーツと第2のパーツとの組付を解除できない。一方、組付構造体が設けられる位置が、外部から係合片に力を加えることが困難な位置とされている場合、第1のパーツと第2のパーツとの組付を解除することは困難である。
【0006】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、係合する部分に直接ふれずとも組付を解除できる組付構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、弾性変形が可能とされた係合片、及び当該係合片に設けられた係合爪を備える第1の部材と、前記係合爪との係合が可能とされた係合受部を備える第2の部材とを備え、前記第1の部材と前記第2の部材とを相対的に近接させることにより、前記係合爪と前記係合受部とが係合して、前記第1及び第2の部材が組付けられる組付構造体において、前記係合爪は、前記第1及び第2の部材が近接する際、前記第2の部材と当接して、前記係合片における前記第1及び第2の部材の近接を許容する方向への弾性変形を案内する第1の傾斜面と、前記第1の部材に組付いた前記第2の部材が、前記第1及び第2の部材を分離させる方向として設定される設定方向へ、前記第1の部材に対して相対的に変位しようとしたときに前記係合受部と当接して、前記係合爪と前記係合受部との係合が解除されるように前記係合片の弾性変形を案内する第2の傾斜面とを備えることを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、第1の部材に組付いた第2の部材を設定方向へ向けて第1の部材に対して相対的に変位させれば、係合爪と係合受部との係合が解除されるように係合片が弾性変形する。これにより、直接係合片に触れてこれを弾性変形させなくとも、係合爪と係合受部との係合を解除して、第1の部材と第2の部材との組付を解除することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の組付構造体において、前記第1及び第2の部材の一方は車室内の取付対象面から突出しないように、他方は前記取付対象面から突出するように設け、さらに、前記第1及び第2の部材は、前記設定方向が車両の進行方向に沿った方向となるように設けられることを要旨とする。
【0010】
例えば、予期せず車両が正面から衝突したり、後方から追突されたりすることがある。このような衝突の際、組付構造体は車両の進行方向へ向かう力を受ける。同構成によれば、第1及び第2の部材を分離させる方向として設定される設定方向は、車両の進行方向に沿っている。従って、車両が衝突する際、組付構造体は、設定方向への力を受けることになる。これにより、第1の部材と第2の部材との組付が解除されて、第1及び第2の部材のうち取付対象面から突出している部材が、取付対象面から突出していない部材から分離する。これにより、取付対象面からの突出がなくなる。このため、車両の衝突に際して、車両の進行方向へ衝撃を受けたユーザが、車両の室内に突出した状態の組付構造体に当たることが抑制される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の組付構造体において、取付対象面から突出しない前記第1又は第2の部材は、ロータリースイッチの本体部に回転可能に設けられる支持部、取付対象面から突出する前記第2又は第1の部材は、前記支持部に組付けられて当該支持部と一体で回転するノブであって、前記支持部は、前記ノブへの操作が解除されると、操作される前の原位置に自動復帰し、前記原位置は、前記設定方向と車両の進行方向とが一致する位置であることを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、組付構造体は、いわゆるモーメンタリー式のロータリースイッチである。ロータリースイッチは、ノブの回転操作という容易さ操作によってスイッチのオンオフを切り替えることができる。このようなロータリースイッチであれば、ノブへの操作を解除すれば、ユーザに操作されるときだけ回転し、操作が解除されると支持部は原位置に自動復帰する。支持部が原位置にあれば、当該支持部に組付いたノブを、支持部から分離させる方向として設定される設定方向が、車両の進行方向と一致する。このため、車両が衝突した際に、ノブが支持部から外れるので、衝突の衝撃を受けたユーザが、ノブに当たることが抑制される。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の組付構造体において、前記第2の部材は、自身の第1の傾斜面が当接する部位に突設される係合壁を備え、前記係合壁の先端部には、前記第1及び第2の部材が組付けられる際に前記第1の傾斜面と協働して前記係合片の弾性変形を案内する第3の傾斜面が形成されることを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、第1の傾斜面と第3の傾斜面とが協働して係合片の弾性変形を案内するので、第1の部材と第2の部材とを組付やすい。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の組付構造体において、前記第2の傾斜面は、前記第1及び第2の部材の組付が解除される方向へ向かうに従って、前記係合受部とのかかりしろが徐々に大きくなる組付構造体。
【0015】
同構成によれば、誤って第1の部材と第2の部材との組付を解除する方向へ力が加えられた場合に、第1の部材と第2の部材との組付が解除されることが抑制される。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、係合する部分に直接ふれずとも組付を解除できる組付構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ロータリースイッチがセンターコンソールに搭載されている車両室内の斜視図。
【図2】ロータリースイッチの斜視図。
【図3】(a)は支持部の正面図、(b)は支持部の上面図、(c)は支持部の側面図(d)は係合爪の拡大斜視図。
【図4】(a)はノブの正面図、(b)はノブの下面図、(c)はノブの側面図、(d)は(c)におけるA−A線の断面図。
【図5】(a)は支持部とノブとの組付の際、第1の傾斜面と第3の傾斜面とが当接するときの図4(c)のA−A線に対応する断面図、(b)は支持部とノブとの組付の際、係合片が弾性変形しているときのA−A線に対応する断面図、(c)は支持部とノブとが組付いたときのA−A線に対応する断面図。
【図6】(a)は支持部とノブとの組付の解除の際、第2の傾斜面と垂直面とが当接するときの図4(a)のB−B線に対応する断面図、(b)は支持部とノブとの組付の解除の際、係合片が弾性変形しているときの図4(a)のB−B線に対応する断面図。
【図7】別例を示す係合片の断面図。
【図8】別例を示す係合片の断面図。
【図9】別例を示す係合片の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる組付構造体を車両に設けられるロータリースイッチに具体化した一実施の形態について図1〜図6を参照して説明する。
図1に示すように、車両のセンターコンソール1には、回転操作が可能とされたロータリースイッチ2が配設されている。
【0019】
<ロータリースイッチの構成>
図2に示すように、ロータリースイッチ2は、センターコンソール1に固定される図示しない本体部に回転可能に支持される支持部10と、当該支持部10に組付けられるノブ20とを備えている。これら支持部10及びノブ20は、合成樹脂により形成されている。支持部10に組付けられたノブ20は、支持部10と一体で回転する。支持部10には、図示しない共通端子が、図示しない本体部には、図示しない複数の選択端子が、それぞれ設けられている。支持部10が回転すると、共通端子と接続される選択端子が切り替わる。本体部は、図示しない制御装置と電気的に接続されている。本体部は、共通端子と接続される選択端子に応じた電気信号を図示しない制御装置へ入力する。すなわち、ノブ20が回転操作されると、その回転操作量に応じた電気信号が制御装置に入力される。制御装置は、入力される電気信号に応じて図示しない車載機器の制御量、例えばオーディオの音量を調節する。なお、本体部は、自動復帰機構を備えている。自動復帰機構は、支持部10の回転操作を許容するとともに、当該回転操作が解除されたとき、支持部10、及びこれと一体回転するノブ20を回転操作前の回転位置(中立位置)に復帰させる。これにより、ユーザがノブ20を通じて、支持部10を回転させている間のみ、制御装置へ電気信号が入力される。
【0020】
図3(a)に示すように、支持部10は、ベース11と、当該ベース11の上面から上方に向かって突出する1対の係合片12a,12bとを備える。図3(c)に示すように、1対の係合片12a,12bは、並び方向から見た位置が一致するように設けられている。図3(d)に示すように、1対の係合片12a,12bは、四角柱状とされている。図3(b)に示すように、1対の係合片12a,12bは、上方から見た場合、並び方向に直交する面の長さが、並び方向に沿う面の長さよりも長い直方体とされている。ベース11は、1対の係合片12a,12bの並び方向が、車幅方向に沿うように設けられている。このため、1対の係合片12a,12bの断面二次モーメントは、進行方向に大きく並び方向に小さい。従って、1対の係合片12a,12bは、進行方向に変形しにくく並び方向に弾性変形しやすい。
【0021】
図3(a)に示すように、1対の係合片12a,12bの先端部には、係合爪13a,13bが形成されている。係合爪13a,13bは、係合片12a,12bの互いに反対側の面に設けられている。係合爪13a,13bの上面には、下方へ向かうに従って徐々に他側の係合片から離れるように一様に傾斜する第1の傾斜面14a,14bが形成されている。図3(b)に示すように、係合爪13a,13bの車両の進行方向後側の面には、車両の進行方向に向かうに従って徐々に他側の係合片から離れるように一様に傾斜する第2の傾斜面15a,15bが形成されている。なお、図3(a)に示すように、係合爪13a,13bの下面は、ベース11の上面に対して平行をなす水平面16a,16bとされている。
【0022】
図4(a)に示すように、ノブ20は、ユーザに操作される円筒部21と、当該円筒部21の上部を塞ぐ蓋部22とを備える。図4(b)に示すように、蓋部22の下面には、下方に向かって1対の係合壁23a,23bが突設されている。図4(c)に示すように、1対の係合壁23a,23bは、並び方向から見た位置が一致するように設けられている。1対の係合壁23a,23bの対向する面同士の間の距離は、先の1対の係合片12a,12bの対向面と反対側の面同士の間の距離と同じとされている。図4(a)に示すように、1対の係合壁23a,23bの先端部には、下方へ向かうに従って徐々に他側の係合壁から離れるように一様に傾斜する第3の傾斜面24a,24bが形成されている。また、図4(d)に示すように、係合壁23a,23bにおいて、第3の傾斜面24a,24bの上方には、係合孔25a,25bが形成されている。係合孔25a,25bは、1対の係合壁23a,23bの並び方向から見た位置が一致するように設けられている。なお、係合孔25a,25bは矩形をなし、それらの下面は、水平面26a,26bとされている。係合壁23a,23bの先端面から係合孔25a,25bの下面(水平面26a,26b)までの距離は、係合片12a,12bの基端部(ベース11の上面)から係合爪13a,13bの下面(水平面16a,16b)までの距離と等しく設定されている。また、図4(c)に示すように、係合孔25a,25bにおいて、水平面26a,26bに直交する車両の進行方向後側の面27a,27bは、水平面26a,26bに対する垂直面とされている。なお、係合孔25a,25bにおける並び方向と直交する方向の長さは、係合爪13a,13bにおける並び方向と直交する方向の長さよりも若干長く設定されている。また、係合壁23a,23bの並び方向における厚みは、係合片12a,12bの並び方向における厚みよりも大きく設定されている。このため、並び方向における断面二次モーメントは、係合壁23a,23bの方が、係合片12a,12bよりも大きい。従って、係合片12a,12bは、係合壁23a,23bよりも弾性変形しやすい。
【0023】
<支持部とノブとの組付>
支持部10にノブ20を組付ける場合、係合片12a,12bの上方に係合壁23a,23bを位置させた状態からノブ20を下方へ変位させる。すると、図5(a)に示すように、第1の傾斜面14a,14bと第3の傾斜面24a,24bとが当接する。第1の傾斜面14a,14bは、下側へ向かうに従って徐々に他側の係合片から離れるように一様に傾斜し、第3の傾斜面24a,24bは、下側へ向かうに従って徐々に他側の係合壁から離れるように一様に傾斜している。従って、更にノブ20を下方へ変位させると、当該変位に伴う下方向へ向かう力の一部の向きが、第1の傾斜面14a,14b及び第3の傾斜面24a,24bによって1対の係合片12a,12bを近接させる方向に変換される。このため、図5(b)に示すように、1対の係合片12a,12bは、互いに近接する方向へ弾性変形する。このとき、係合爪13a,13bの先端部は、係合壁23a,23bの対向する面の内側に位置する。これにより、ノブ20の更なる下方への変位が許容される。なお、このノブ20の下方への変位の最中、係合爪13a,13bの先端部が1対の係合壁23a,23bの対向する面と当接する。このため、1対の係合片12a,12bの弾性復帰が規制される。
【0024】
更にノブ20を下方へ変位させると、図5(c)に示すように、係合孔25a,25bが係合爪13a,13bの先端部に到達する。すると、係合爪13a,13bの先端部と1対の係合壁23a,23bの対向する面との当接が解除される。これにより、1対の係合片12a,12bは弾性復帰する。この弾性復帰によって、係合爪13a,13bが係合孔25a,25bに進入する。このとき、水平面16a,16bと水平面26a,26bとが対向する。支持部10へ組付けた後のノブ20を支持部10から取り外そうと上方に変位させようとしても、水平面同士が当接することにより、ノブ20の上方への変位が規制される。なお、係合壁23a,23bの先端部から水平面26a,26bまでの距離と、係合片12a,12bの基端部から水平面16a,16bまでの距離とが等しく設定されている。このため、係合爪13a,13bが係合孔25a,25bに進入すると、係合壁23a,23bの先端部とベース11とが当接する。従って、ノブ20の更なる下方への変位が規制される。なお、図6(a)に示すように、ノブ20を時計方向へ回転させたときには、係合爪13aにおける車両の進行方向側の垂直面(ベース11の上面に対する垂直面)が、係合孔25aの車両の進行方向側の垂直面(水平面26aに対する垂直面)と当接する。また、ノブ20を反時計方向へ回転させたときには、係合爪13bにおける車両の進行方向側の垂直面(ベース11の上面に対する垂直面)が、係合孔25bの車両の進行方向側の面(水平面26bに対する垂直面)と当接する。このため、ノブ20と支持部10との係合関係が解除されることはない。従って、ノブ20は、支持部10と一体的に回転する。
<支持部とノブとの組付解除>
図6(a)に示すように、支持部10とノブ20とが組付いた状態では、係合爪13a,13b、正確には、第2の傾斜面15a,15bにおける車両の進行方向後側の部位が、係合孔25a,25bの垂直面27a,27bと当接している。
【0025】
支持部10とノブ20との組付を解除する場合、ノブ20に対して車両の進行方向へ向けた力を付与する。第2の傾斜面15a,15bは、車両の進行方向に向かうに従って徐々に他側の係合片から離れるように一様に傾斜している。従って、ノブ20の進行方向への変位に伴う進行方向へ向かう力の一部の向きが、1対の係合片12a,12bを互いに近接させる方向に変換される。このため、図6(b)に示すように、1対の係合片12a,12bは、互いに近接する方向へ弾性変形する。このとき、係合爪13a,13bの先端部は、係合孔25a,25bから離脱して、係合壁23a,23bの対向する面の内側に位置する。これにより、ノブ20の更なる進行方向への変位が許容される。なお、係合爪13a,13bが係合孔25a,25bから離脱すると、水平面16a,16bと水平面26a,26bとが対向しない状態、すなわち、両者が係合しない状態となる。これにより、ノブ20の上方への変位が許容されるので、ノブ20を上方へ変位させることにより支持部10とノブ20との組付を解除することができる。なお、係合爪13a,13bが係合孔25a,25bから離脱した以降もノブ20の進行方向への変位は許容される。このため、更にノブ20を進行方向へ変位させても支持部10とノブ20との組付を解除することができる。
【0026】
さて、車両は、走行中に予期せず衝突する場合がある。例えば、正面から衝突したり、後方から追突されたりする場合、乗車中のユーザは、前方(進行方向)へ大きな衝撃をうける。この衝撃により、例えば後席のユーザが前方に投げ出されるおそれがある。この場合、投げ出されたユーザが、センターコンソール1から突出しているロータリースイッチ2(ノブ20)に当たるおそれがある。しかしながら、このような衝突の際、ロータリースイッチ2も前方へ大きな衝撃(力)をうける。本例のロータリースイッチ2では、ノブ20は、前方へ力を受けると、支持部10との組付が解除される。従って、ノブ20は、センターコンソール1から脱落する。すなわち、ノブ20のセンターコンソール1から突出がなくなる。これにより、車両ユーザが、センターコンソール1から突出するロータリースイッチ2に当たってしまうことが抑制される。
【0027】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)支持部10に弾性変形が可能とされた1対の係合片12a,12bを設けた。その1対の係合片12a,12bの先端部に係合爪13a,13bを設けた。係合爪13a,13bは、ノブ20に設けられる1対の係合壁23a,23bに形成される係合孔25a,25bの内面と係合して支持部10とノブ20との組付を維持する。その係合爪13a,13bに、第2の傾斜面15a,15bを設けた。この第2の傾斜面15a,15bは、係合孔25a,25bの車両の進行方向後側の面である垂直面27a,27bに対して、車両の進行方向に向かうに従って徐々に他側の係合片から離れるように一様に傾斜する。これにより、ノブ20が車両の進行方向に向かう力を受けたとき、第2の傾斜面15a,15bと垂直面27a,27bとの当接によって、当該変位に伴う進行方向へ向かう力の一部の向きが、1対の係合片12a,12bを近接させる方向に変換される。このため、1対の係合片12a,12bは、互いに近接する方向へ弾性変形する。すると、係合爪13a,13bが係合孔25a,25bから離脱する。すなわち、係合爪13a,13bと係合孔25a,25bの内面との係合が解除される。このように、ノブ20に対して車両の進行方向に力を加えることにより、ノブ20と支持部10との組付を解除することができる。
【0028】
(2)係合爪13a,13bに、第1の傾斜面14a,14bを設けた。第1の傾斜面14a,14bは、下方へ向かうに従って徐々に他側の係合片から離れるように一様に傾斜する。第1の傾斜面14a,14bは、支持部10にノブ20を組付けるべくノブ20を下方へ変位させると、係合壁23a,23bと当接し、ノブ20の下方向へ向かう力の一部の向きを1対の係合片12a,12bを近接させる方向に変換する。こうして、1対の係合片12a,12bが互いに近接する方向へ弾性変形するので、支持部10とノブ20との更なる近接が許容される。そして、係合壁23a,23bに形成される係合孔25a,25bが係合爪13a,13bに到達すると、係合爪13a,13bが係合孔25a,25bの内面と係合して、ノブ20と支持部10とが組付けられる。このように、支持部10とノブ20とを近接させるだけでよいので、これら両者の組付けが簡単である。
【0029】
(3)支持部10とノブ20との組付けを容易にするべく設けられる第1の傾斜面14a,14bは、下方へ向かうに従って徐々に他側の係合片から離れるように一様に傾斜し、両者の組付を解除するべく設けられる第2の傾斜面15a,15bは、車両の進行方向に向かうに従って徐々に他側の係合片から離れるように一様に傾斜する。すなわち、支持部10とノブ20との組付後、ノブ20を組付時とは反対向きである上方向に変位させても、支持部10とノブ20との組付は解除されない。このため、ノブ20を組付時と反対向きに変位させようとする容易な作業のみで、両者が組付いたか否かを確認することができる。
【0030】
(4)第2の傾斜面15a,15bは、車両の進行方向に向かうに従って徐々に他側の係合片から離れるように一様に傾斜する。これにより、例えば、予期せず車両が正面から衝突したり、後方から追突されたりしたときに、支持部10とノブ20との組付が解除される。支持部10とノブ20とが組付いてなるロータリースイッチ2は、ノブ20がセンターコンソール1から突出した状態で設けられている。しかし、先の衝突の際、センターコンソール1から突出するノブ20が脱落するので、車両の進行方向へ衝撃を受けたユーザが、ロータリースイッチ2に当たることが抑制される。
【0031】
(5)ロータリースイッチ2は、操作入力が解除された場合に、支持部10が操作前の回転位置(中立位置)に復帰するモーメンタリー式のロータリースイッチとした。これにより、操作入力がなければ、1対の係合片12a,12bの並び方向が、車幅方向と一致する。この状態は、第2の傾斜面15a,15bが、車両の進行方向に向かうに従って徐々に他側の係合片から離れるように傾斜する状態である。ロータリースイッチ2は、オーディオの音量を調節するスイッチであって直接の運転には関係のないスイッチである。従って、ユーザの運転中、ロータリースイッチ2が操作されることは少ない。このため、ロータリースイッチ2は、多くの場合中立位置が維持される。これにより、多くの場合、ノブ20は、車両の衝突の際に受ける力によって外れる状態にある。このため、予期せず衝突した場合であれ、センターコンソール1から突出するノブ20が脱落する。
【0032】
(5)係合壁23a,23bの先端部に、第3の傾斜面24a,24bを設けた。第3の傾斜面24a,24bは、下側へ向かうに従って徐々に他側の係合壁から離れるように一様に傾斜している。このため、支持部10とノブ20とを組付ける際、第3の傾斜面24a,24bは、第1の傾斜面14a,14bと協働して、係合片12a,12bの弾性変形を案内する。このため、第1の傾斜面14a,14bのみしか形成されない場合と比べて支持部10とノブ20とを組付やすい。
【0033】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、第2の傾斜面15a,15bは、車両の進行方向に向かうに従って徐々に他側の係合片から離れるように一様に傾斜するとしたが、一様でなくてもよい。例えば、図7に示すように、車両の進行方向も向かうに従って途中から傾斜する第4の傾斜面40a,40bとしたり、図8に示すように、徐々に傾斜が大きくなる第5の傾斜面50a,50bとしたりしてもよい。このように構成した場合であれ、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、第5の傾斜面50a,50bでは、支持部10とノブ20との組付の解除が進むに従って、第5の傾斜面50a,50bと、係合孔25a,25bの内面とが係合するかかりしろが大きくなるので、組付の解除がしにくくなる。そのため、ユーザが誤ってノブ20を車両の進行方向に力を加えた場合でも、支持部10とノブ20との組付が解除されることが抑制される。
【0034】
・上記実施形態において、水平面16a,16bに代えて、図9に示すように、上方に向かうに従って徐々に他側の係合片から離れるように傾斜する第6の傾斜面60a,60bとしてもよい。第6の傾斜面60a,60bは、上記実施形態における第2の傾斜面15a,15bに相当する。このように構成すれば、支持部10とノブ20とを組付ける場合と逆方向に力を加えることで両者の組付を解除することができる。なお、当該別例において、第2の傾斜面15a,15bは省略してもよいし、省略しなくてもよい。
【0035】
・上記実施形態において、第2の傾斜面15a,15bは、車両の進行方向に向かうに従って徐々に他側の係合片から離れるように傾斜するとしたが、車両の進行方向と逆方向に向かうに従って徐々に他側の係合片から離れるように傾斜するよう形成してもよい。このように構成した場合、ノブ20に対して車両の進行方向と逆方向に力を加えることで両者の組付を解除することができる。
【0036】
・上記実施形態において、ロータリースイッチ2は、操作入力が解除された場合、中立位置に自動復帰するモーメンタリー式のロータリースイッチとしたが、モーメンタリー式でなくてもよい。このように構成した場合であれ、支持部10が中立位置にあるときにおいて、上記実施形態の(1)の効果と同様の効果を得ることができる。
【0037】
・上記実施形態において、第3の傾斜面24a,24bは省略してもよい。このように構成した場合であれ、上記実施形態の(1)の効果と同様の効果を得ることができる。
・上記実施形態において、係合孔25a,25bは、係合壁23a,23bの貫通孔であるが、対向する側を凹ませた凹部であってもよい。このように構成した場合であれ、上記実施形態の(1)の効果と同様の効果を得ることができる。
【0038】
・上記実施形態では、係合爪13a,13bが形成される係合片12a,12bは対とされたが、単独で形成してもよい。この場合、係合片における上記実施形態の並び方向に沿う辺の長さを一対の係合壁23a,23bの対向する面同士の距離、又はそれより若干長く設定する。このように構成した場合であれ、上記実施形態の(1)の効果と同様の効果を得ることができる。なお、上記実施形態における係合片12a,12bの対向する面が連続する、すなわち、対となる係合爪を備える一つの係合片としてもよい。このように構成した場合であれ、上記実施形態の(1)の効果と同様の効果を得ることができる。また、係合爪13a,13bのうち、どちらか片方を省略してもよい。このように構成した場合であれ、上記実施形態の(1)の効果と同様の効果を得ることができる。なお、この場合、省略した係合爪と対応する係合孔、例えば係合爪13bを省略した場合は係合孔25bを省略してもよい。
【0039】
・上記実施形態では、支持部10に係合片12a,12bを、ノブ20に係合壁23a,23bを設けたが、支持部10に係合壁を、ノブ20に係合片を設けてもよい。このように構成した場合であれ、上記実施形態の(1)の効果と同様の効果を得ることができる。
【0040】
・上記実施形態では、係合片12a,12bは、係合壁23a,23bにより挟まれるように形成されたが、逆に係合壁23a,23bを挟むように形成してもよい。このように構成した場合であれ、上記実施形態の(1)の効果と同様の効果を得ることができる。
【0041】
・上記実施形態では、組付構造体の適用先として、ロータリースイッチ2について説明したが、プッシュスイッチなどであってもよい。また、スイッチ類に限らず、例えばケース同士が組付くものであってもよい。
【0042】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の組付構造体において、前記設定方向は、前記第1及び第2の部材を組付ける際に近接させる方向の反対方向でないことを特徴とする組付構造体。
【0043】
同構成によれば、第1の部材に組付いた第2の部材を、第1の部材に対して組付ける際に近づけた方向と反対方向、すなわち、第1の部材と第2の部材とが分離すると容易に推測できる方向へ変位させようとしても、係合爪と係合受部との係合が解除されないので両者は分離しない。これにより、第1の部材と第2の部材とが分離すると容易に推測できる方向へ変位させようとする容易な作業のみで、両者が組付いたか否かを確認することができる。
【0044】
(ロ)請求項4に記載の組付構造体において、前記係合受部は、前記係合壁に凹設されることを特徴とする組付構造体。
同構成によれば、凹設という容易な構成で係合受部を構成することができる。
【0045】
(ハ)請求項1〜5のうちいずれか一項、又は前記(イ)若しくは前記(ロ)に記載の組付構造体において、前記係合片及び前記係合受部は、対となって設けられることを特徴とする組付構造体。
【0046】
同構成によれば、対となっていることにより、単独の場合よりも組付いた第1の部材と第2の部材の結合力が大きくなる。
【符号の説明】
【0047】
1…取付対象面としてのセンターコンソール、2…ロータリースイッチ、10…第1又は第2の部材としての支持部、11…ベース、12a,12b…係合片、13a,13b…係合爪、14a,14b…第1の傾斜面、15a,15b…第2の傾斜面、16a,16b…水平面、20…第2又は第1の部材としてのノブ、21…円筒部、22…蓋部、23a,23b…係合壁、24a,24b…第3の傾斜面、25a,25b…係合孔、26a,26b…係合受部としての水平面、27a,27b…垂直面、40a,40b…第4の傾斜面、50a,50b…第5の傾斜面、60a,60b…第6の傾斜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形が可能とされた係合片、及び当該係合片に設けられた係合爪を備える第1の部材と、前記係合爪との係合が可能とされた係合受部を備える第2の部材とを備え、前記第1の部材と前記第2の部材とを相対的に近接させることにより、前記係合爪と前記係合受部とが係合して、前記第1及び第2の部材が組付けられる組付構造体において、
前記係合爪は、前記第1及び第2の部材が近接する際、前記第2の部材と当接して、前記係合片における前記第1及び第2の部材の近接を許容する方向への弾性変形を案内する第1の傾斜面と、前記第1の部材に組付いた前記第2の部材が、前記第1及び第2の部材を分離させる方向として設定される設定方向へ、前記第1の部材に対して相対的に変位しようとしたときに前記係合受部と当接して、前記係合爪と前記係合受部との係合が解除されるように前記係合片の弾性変形を案内する第2の傾斜面とを備える組付構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の組付構造体において、
前記第1及び第2の部材の一方は車室内の取付対象面から突出しないように、他方は前記取付対象面から突出するように設け、さらに、前記第1及び第2の部材は、前記設定方向が車両の進行方向に沿った方向となるように設けられる組付構造体。
【請求項3】
請求項2に記載の組付構造体において、
取付対象面から突出しない前記第1又は第2の部材は、ロータリースイッチの本体部に回転可能に設けられる支持部、取付対象面から突出する前記第2又は第1の部材は、前記支持部に組付けられて当該支持部と一体で回転するノブであって、
前記支持部は、前記ノブへの操作が解除されると、操作される前の原位置に自動復帰し、
前記原位置は、前記設定方向と車両の進行方向とが一致する位置である組付構造体。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の組付構造体において、
前記第2の部材は、自身の第1の傾斜面が当接する部位に突設される係合壁を備え、
前記係合壁の先端部には、前記第1及び第2の部材が組付けられる際に前記第1の傾斜面と協働して前記係合片の弾性変形を案内する第3の傾斜面が形成される組付構造体。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の組付構造体において、
前記第2の傾斜面は、前記第1及び第2の部材の組付が解除される方向へ向かうに従って、前記係合受部とのかかりしろが徐々に大きくなる組付構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−101490(P2013−101490A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244743(P2011−244743)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】