説明

組立シャフトの製造方法

【課題】組立カムシャフトなどの組立シャフトの製造方法として、製造工数の減少により製造コストを低減できる組立シャフトの製造方法を提供する。
【解決手段】特定のプラグが中空シャフト2の内周面2Bに沿って貫通することにより、中空シャフト2の外周面2Aが特定のプラグの断面形状に相似した異形の断面形状に塑性変形して拡径し、エンドピース3の外周面が中空シャフト2の外周面2Aの断面形状に相似した異形の断面形状に塑性変形して拡径する。その結果、中空シャフト2の外周面にはエンドピース3、カムローブ4,4…およびジャーナル5,5…が一体に固着され、エンドピース3の外周面にはエンドピースフランジ6,6が一体に固着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立カムシャフトなどの組立シャフトの製造方法に関し、詳しくは、プラグ拡管法による組立シャフトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジンのカムシャフトにおいては、鋳造や鍛造の半製品に機械加工および表面焼入れなどの熱処理を施して製造される一体型カムシャフトが従来一般的であったが、これより軽量であってエンジンの加速性能および燃費の向上に寄与でき、しかも低価格化を達成できる組立カムシャフトが近年普及しつつある。
【0003】
組立カムシャフトは、パイプ状の中空シャフトの外周面にカム(カムローブ、カムピース)やジャーナルなどの組付部品を嵌合して一体に固着させたものであり、その製造方法としては、圧入法、油圧拡張法、拡散接合法、バルジ拡管法、プラグ拡管法など種々の製造方法が知られている。
【0004】
これらの製造方法にはそれぞれ一長一短があるが、そのうち、プラグ拡管法は、中空シャフトの内周面に沿ってプラグ(パンチ)を貫通させることにより中空シャフトを拡径させ、その外周面にカム(カムローブ、カムピース)やジャーナルなどの組付部品を一体に固着させる製造方法であり(例えば特許文献1〜3参照)、作業時間が極めて短いという利点がある。
【0005】
ここで、特許文献1には、組立式カムシャフトの製造に当たり、中空シャフトの外周面に嵌合するカムローブおよびジャーナルの内周面に予め複数本の凹溝を形成しておき、中空シャフトの外周面をプラグにより拡径させてカムローブおよびジャーナルの内周面の複数本の凹溝内に噛み込ませることにより、中空シャフトの外周にカムローブおよびジャーナルを強固に固着させることが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、エンジン用カム軸の製造に当たり、管(中空シャフト)の外周面に嵌合するカムおよび軸受リングの内周面に予め複数の溝を形成しおき、管(中空シャフト)の内周面に沿って挿通されるプラグ(エキスパンダ工具)の突起により管(中空シャフト)の外周面をカムおよび軸受リングの内周面の複数の溝内に膨張させることにより、管(中空シャフト)の外周面にカムおよび軸受リングを固着させることが記載されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、カムシャフトの製造に当たり、シャフト(中空シャフト)の外周面に嵌合する焼結金属製のカムピースの内周面に予め鋼製のインナーピースを拡散結合しておき、そのインナーピースの内周面を多角形の断面形状とすることで、プラグにより拡径するシャフト(中空シャフト)の外周面をインナーピースの内周面に密着する多角形の断面形状に塑性変形させてシャフト(中空シャフト)の外周にカムピースを固着させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−145411号公報
【特許文献2】特開平6−341304号公報
【特許文献3】特開平5−288014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載された組立式カムシャフトにおいては、その製造に当たり、中空シャフトの外周面に嵌合するカムローブやジャーナルなどの組付部品の内周面に予め複数本の凹溝を形成しておく必要がある。同様に特許文献2に記載されたエンジン用カム軸においても、その製造に当たり、中空シャフトの外周面に嵌合するカムや軸受リングなどの組付部品の内周面に予め複数の溝を形成しおく必要がある。
【0010】
加えて特許文献2に記載されたエンジン用カム軸においては、その製造に当たり、管(中空シャフト)の内周面に沿って挿通されるプラグ(エキスパンダ工具)の突起と、カムおよび軸受リングの内周面の複数の溝とを回転方向に位置合わせする必要がある。
【0011】
一方、特許文献3に記載されたカムシャフトにおいては、その製造に当たり、焼結金属製のカムピースの内周に予め拡散結合されるインナーピースの内周面を多角形の断面形状に形成しておく必要がある。
【0012】
すなわち、組立カムシャフトの製造方法として従来一般に知られているプラグ拡管法においては、中空シャフトの外周面に嵌合されるカムなどの組付部品の内周面に予め複数本の凹溝などを形成しておくか、あるいは、組付部品の内周面を多角形の断面形状に形成しておく必要があり、また、中空シャフトに挿通されるプラグに対してカムなどの組付部品を周方向に位置合わせするという煩雑な作業が必要であって、製造工数が多く、製造コストが嵩むという問題がある。
【0013】
加えて、特許文献1などに見られるように、従来一般に知られている組立カムシャフトにおいては、中空シャフトの端部にエンドピースを摩擦溶接、圧入、焼嵌め等の別途の手段で結合する必要があり、この点からも製造工数が多く、製造コストが嵩むという問題がある。
【0014】
また、このようなエンドピースは、中実の丸棒から切削加工により削り出されるものであって、加工に長時間を要すると共に、その材料歩留まりが30%程度と低いという問題があった。
【0015】
本発明は、このような従来技術の問題点に対応してなされたものであり、組立カムシャフトなどの組立シャフトの製造方法として、製造工数の減少により製造コストを低減できる組立シャフトの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような課題を解決するため、本発明に係る組立シャフトの製造方法は、中空シャフトの外周面に組付部品を嵌合した状態で特定のプラグを中空シャフトの内周面に沿って貫通させることにより、中空シャフトを拡径させてその外周面に組付部品を一体に固着させるプラグ拡管法の組立シャフトの製造方法であって、特定のプラグとして、中空シャフトの内周面を押し拡げるテーパ面と、このテーパ面に連続して中空シャフトの内周面を所定寸法まで拡径させる円弧状の断面形状をした複数の拡径周面と、中空シャフトの内周面の縮径を防止する平坦な断面形状をした複数のバックアップ周面とを有し、複数の拡径周面と複数のバックアップ周面とが交互に配置される異形の断面形状を呈するプラグを使用することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る組立シャフトの製造方法では、特定のプラグが中空シャフトの内周面に沿って貫通することにより、特定のプラグのテーパ面が中空シャフトの内周面を押し拡げ、特定のプラグの円弧状の断面形状をした複数の拡径周面が中空シャフトの内周面を所定寸法まで拡径させる。その際、特定のプラグの平坦な断面形状した複数のバックアップ周面が中空シャフトの内周面の縮径を防止する。
【0018】
これにより、中空シャフトの内周面が特定のプラグの異形の断面形状に倣った異形の断面形状に塑性変形して拡径し、これに応じて中空シャフトの外周面は、その内周面の断面形状、すなわち特定のプラグの異形の断面形状に相似した異形の断面形状に塑性変形して拡径する。その結果、中空シャフトの外周面に嵌合した組付部品が中空シャフトの軸方向および周方向に強固に一体に固着される。
【0019】
本発明に係る組立シャフトの製造方法は、中空シャフトの端部に嵌合される円筒状のエンドピースと、このエンドピースの外周に嵌合されるリング状のエンドピースフランジと、中空シャフトの中間部に嵌合されるカムローブおよびジャーナルとを組付部品として備えた組立カムシャフトの製造方法に適用することができる。
【0020】
この場合、特定のプラグが中空シャフトの内周面に沿って貫通することにより、中空シャフトの外周面が特定のプラグの異形の断面形状に相似した異形の断面形状に塑性変形して拡径する。その際、中空シャフトに嵌合された円筒状のエンドピースの内周面が中空シャフトの外周面の異形の断面形状に倣った異形の断面形状に塑性変形して拡径し、これに応じてエンドピースの外周面がその内周面の異形の断面形状に相似した異形の断面形状に塑性変形して拡径する。
【0021】
その結果、中空シャフトの端部外周には円筒状のエンドピースが一体に固着され、中空シャフトの中間部外周にはカムピースおよびジャーナルが一体に固着されると共に、さらに、エンドピースの外周にはリング状のエンドピースフランジが一体に固着される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る組立シャフトの製造方法によれば、特定のプラグを中空シャフトの内周面に沿って貫通させることにより、中空シャフトの外周面を特定のプラグの異形の断面形状に相似した異形の断面形状に塑性変形させて拡径させることができ、中空シャフトの外周面に嵌合した組付部品を中空シャフトの軸方向および周方向に強固に一体に固着することができる。
【0023】
特に、本発明の組立シャフトの製造方法によれば、部品として準備する中空シャフトおよび組付部品の嵌合面の断面形状は円形のままでよく、組付部品の内周面を多角形の断面形状としたり、組付部品の内周面や中空シャフトの外周面に凹溝や突起を形成し、あるいはローレット加工を施すなどの付加加工が一切不要であるため、中空シャフトおよび組付部品の製造工数を大幅に削減できる。また、中空シャフトの周方向に組付部品を位置合わせする作業も極めて簡単にすることができ、組立シャフトの製造コストを大幅に削減することができる。
【0024】
ここで、中空シャフトの端部に嵌合される円筒状のエンドピースと、このエンドピースの外周に嵌合されるリング状のエンドピースフランジと、中空シャフトの中間部に嵌合されるカムローブおよびジャーナルとを組付部品として備えた組立カムシャフトの製造に本発明の組立シャフトの製造方法を適用した場合、特定のプラグを中空シャフトの内周面に沿って貫通させることにより、中空シャフトの端部外周に円筒状のエンドピースを一体に固着し、中空シャフトの中間部外周にカムローブおよびジャーナルを一体に固着し、さらに、エンドピースの外周にリング状のエンドピースフランジを一体に固着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る組立シャフトの製造方法により製造された組立カムシャフトの完成品の概略構造を示す断面図である。
【図2】図1に示した組立カムシャフトの分解斜視図である。
【図3】図2に示した組立カムシャフトの各部品の組付け状態を示す断面図である。
【図4】図1に示した組立カムシャフトの製造方法に使用する特定のプラグの構造を示す側面図である。
【図5】図4に示した特定のプラグを矢印方向から見た拡大正面図である。
【図6】図5に示した特定のプラグの拡径周面およびバックアップ周面の径方向位置の説明図である。
【図7】図1に示した中空シャフトの拡径状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明に係る組立シャフトの製造方法の一実施形態を説明する。一実施形態に係る組立シャフトの製造方法は、例えば図1に示すような組立カムシャフト1を製造する方法である。そこで、まず、組立カムシャフト1について説明する。
【0027】
組立カムシャフト1は、図示しない自動車用エンジンの動弁系を構成するものであり、図2および図3に示すように、パイプ状の中空シャフト2の一端部の外周面2Aに嵌合される円筒状のエンドピース3と、中空シャフト2の中間部から他端部わたる部分の外周面2Aに嵌合される複数のカムローブ4,4…および複数のジャーナル5,5…を組付部品として備えている。
【0028】
加えて、組立カムシャフト1は、エンドピース3の外周面に嵌合される一対のエンドピースフランジ6,6を組付部品として備えている。
【0029】
中空シャフト2は、外周面2Aおよび内周面2Bが適宜の表面粗さに塑性加工された鋼管製であり、その外径寸法は例えば26mmに設定され、その内径寸法は例えば16mmに設定されている。一方、エンドピース3は、外周面および内周面が適宜の表面粗さに塑性加工された鋼管製であり、その内径寸法は、中空シャフト2の外周面2Aに容易に嵌合できるように、中空シャフト2の外径寸法より0.1〜0.2mm大きくしてある。
【0030】
カムローブ4,4…は、中空シャフト2の外周面2Aに嵌合する装着穴(符号省略)をそれぞれ有する鍛造品や焼結品であり、その装着穴の内径寸法は、中空シャフト2の外周面2Aに容易に嵌合できるように、中空シャフト2の外径寸法より0.1〜0.2mm大きくしてある。そして、カムローブ4,4…の外周面には、表面焼入れなどの適宜の表面硬化処理が施されており、この外周面は、組立カムシャフト1の組立後に所定のカムプロフィールに研削加工される。
【0031】
一方、エンドピースフランジ6,6は、板材を素材としてリング状にプレス加工されており、その内周面は、エンドピース3の外周面に容易に嵌合できるように、エンドピース3の外径寸法より0.1〜0.2mm大きくしてある。
【0032】
ここで、一実施形態の組立シャフトの製造方法には、図4に示す特定のプラグPが使用される。この特定のプラグPは、図3に示す中空シャフト2を拡径させるために使用されるものであり、中空シャフト2の内径より小径の軸部P1の先端にプラグ本体P2が一体に接続されている。
【0033】
プラグ本体P2は、例えば合金工具鋼製であり、その周面には表面焼入れなどの適宜の表面硬化処理が施されている。このプラグ本体P2の周面には、図5に示すように、中空シャフト2の内周面2Bを押し拡げるためのテーパ面P3と、このテーパ面P3に連続して中空シャフト2の内周面2Bを所定寸法まで拡径させるための円弧状の断面形状をした複数の拡径周面P4と、中空シャフト2の内周面2Bの縮径を防止するための平坦な断面形状をした複数のバックアップ周面P5とが形成されている。
【0034】
プラグ本体P2のテーパ面P3は、例えば片側の勾配が10°に設定されている。そして、図6に示すように、プラグ本体P2の複数の拡径周面P4は、中空シャフト2の内周面2Bの断面円より直径が1mm程度大きい同心円の断面円に沿って形成されている。また、プラグ本体P2の複数のバックアップ周面P5は、中空シャフト2の内周面2Bの断面円の接線に沿って拡がる平坦面に形成されている。
【0035】
プラグ本体P2の複数の拡径周面P4と複数のバックアップ周面P5とは周方向に交互に形成されており、プラグ本体P2は異形の断面形状を呈している。図示の例では、5つのバックアップ周面P5が正五角形の輪郭線に沿って形成され、各バックアップ周面P5の間に5つの拡径周面P4が形成されている。
【0036】
つぎに、一実施形態に係る組立シャフトの製造方法の工程を説明する。まず、図3に示すように、中空シャフト2の軸方向の所定位置にエンドピース3、カムローブ4,4…およびジャーナル5,5…を嵌合して保持する。その際、カムローブ4,4…は中空シャフト2の周方向の所定位置に保持する。なお、一対のエンドピースフランジ6,6は、予めエンドピース3の軸方向の所定位置に嵌合しておく。
【0037】
このように中空シャフト2、エンドピース3、カムローブ4,4…、ジャーナル5,5…およびエンドピースフランジ6,6を相互に組み付けて所定位置に保持する作業は、各部品を所定位置に把持できる複数のロボットハンドを備えた専用の接合機(図示省略)を使用して行う。
【0038】
つぎに、図示しない油圧シリンダー装置などを使用して図3に示した特定のプラグPの軸部P1を押圧することにより、特定のプラグPのプラグ本体P2を中空シャフト2の内周面2Bに沿って貫通させる。
【0039】
これにより、プラグ本体P2のテーパ面P3が中空シャフト2の内周面2Bを押し拡げ、特定のプラグPの円弧状の断面形状をした複数の拡径周面P4が中空シャフト2の内周面2Bを差渡し径で1mm、片側0.5mm程度拡径させる。その際、特定のプラグPの平坦な断面形状した複数のバックアップ周面P5が中空シャフト2の内周面2Bの縮径を防止する。
【0040】
その結果、中空シャフト2の内周面2Bがプラグ本体P2の異形の断面形状に倣った異形の断面形状に塑性変形して拡径し、中空シャフト2の外周面2Aがその内周面2Bの断面形状に相似した異形の断面形状に塑性変形して拡径する。すなわち、図7に示すように、中空シャフト2の内周面2Bおよび外周面2Aが二点鎖線で示す円形の断面形状から実線で示す異形の断面形状に塑性変形して拡径する。
【0041】
同様に、エンドピース3の内周面が中空シャフト2の外周面2Aの異形の断面形状に倣った異形の断面形状に塑性変形して拡径し、エンドピース3の外周面がその内周面の異形の断面形状に相似した異形の断面形状に塑性変形して拡径する。
【0042】
ここで、エンドピース3、カムローブ4,4…およびジャーナル5,5…のそれぞれの内周面が中空シャフト2の外周面2Aに倣って異形の断面形状に塑性変形することで、エンドピース3、カムローブ4,4…およびジャーナル5,5…が中空シャフト2の外周面2Aに対し周方向に強固に固着される。
【0043】
また、エンドピース3、カムローブ4,4…およびジャーナル5,5…の相互間において、これらの内径よりも大きく中空シャフト2の外周面2Aが拡径することにより、エンドピース3、カムローブ4,4…およびジャーナル5,5…が中空シャフト2の軸方向に強固に固着される。
【0044】
さらに、エンドピース3の外周面が異形の断面形状に塑性変形して拡径し、これに倣って一対のエンドピースフランジ6,6の内周面が異形の断面形状に塑性変形することで、一対のエンドピースフランジ6,6がエンドピース3に対し周方向に強固に固着される。
【0045】
また、一対のエンドピースフランジ6,6の相互間において、これらの内径よりも大きくエンドピース3の外周面が拡径することにより、一対のエンドピースフランジ6,6がエンドピース3の軸方向に強固に固着される。
【0046】
こうして、図1に示すように、中空シャフト2の一端部の外周面2Aには円筒状のエンドピース3が一体に固着され、中空シャフト2の中間部から他端部わたる部分の外周面2Aには複数のカムローブ4,4…および複数のジャーナル5,5…が一体に固着される。さらに、エンドピース3の外周には一対のエンドピースフランジ6,6が一体に固着される。
【0047】
従って、一実施形態の組立シャフトの製造方法によれば、図示しない油圧シリンダー装置を使用して特定のプラグPのプラグ本体P2を中空シャフト2の内周面2Bに沿って貫通させるという、数秒から数十秒程度の極めて短い時間の作業により、エンドピース3、カムローブ4,4…、ジャーナル5,5…およびエンドピースフランジ6,6を中空シャフト2に対してその軸方向および周方向に強固に一体に固着することができる。
【0048】
そして、特に、本実施形態の組立シャフトの製造方法によれば、部品として準備するエンドピース3、カムローブ4,4…およびジャーナル5,5…と中空シャフト2との嵌合面の断面形状は円形のままでよく、エンドピース3とエンドピースフランジ6,6との嵌合面の断面形状も円形のままでよいため、これらの嵌合面の断面形状を多角形にしたり、これらの嵌合面に凹溝や突起を形成し、あるいはローレット加工を施すものに較べて中空シャフト2および組付部品の製造工数を大幅に削減できる。
【0049】
また、中空シャフト2と組付部品であるエンドピース3、カムローブ4,4…およびジャーナル5,5…との周方向の位置合わせも極めて簡単にすることができ、組立シャフトの製造コストを大幅に削減することができる。
【0050】
本発明に係る組立シャフトの製造方法は、前述した一実施形態に限定されるものではない。例えば、特定のプラグPのプラグ本体P2に形成されるテーパ面P3は、片側10°の勾配に限らず、5〜20°の勾配に変更することができる。また、拡径周面P4の差渡し径は、中空シャフト2の材質や寸法に応じ、中空シャフト2の内周面2Bの内径寸法より0.5mm以上の範囲で大きく設定してもよい。
【0051】
さらに、プラグ本体P2に形成されるバックアップ周面P5は、中空シャフト2の内周面2Bより若干大きな断面円の接線に沿って拡がる平坦面としてもよい。そして、図5に示すよう5つの拡径周面P4の間に5つのバックアップ周面P5が形成されたプラグ本体P2の異形の断面形状は、例えば6つの拡径周面P4の間に6つのバックアップ周面P5が形成された異形の断面形状にも変更可能である。
【0052】
また、本発明の組立シャフトの製造方法は、前述した組立カムシャフトに限らず、種々の寸法の中空シャフトの外周面に種々の形状の組付部品を嵌合して一体に固着させることができ、例えば、中空シャフトを主体とするステアリングシャフトの製造にも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 :組立カムシャフト
2 :中空シャフト
2A:外周面
2B:内周面
3 :エンドピース
4 :カムローブ
5 :ジャーナル
6 :エンドピースフランジ
P :特定のプラグ
P1:軸部
P2:プラグ本体
P3:テーパ面
P4:拡径周面
P5:バックアップ周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空シャフトの外周面に組付部品を嵌合した状態で特定のプラグを中空シャフトの内周面に沿って貫通させることにより、中空シャフトを拡径させてその外周面に組付部品を一体に固着させるプラグ拡管法の組立シャフトの製造方法であって、
前記特定のプラグとして、前記中空シャフトの内周面を押し拡げるテーパ面と、このテーパ面に連続して中空シャフトの内周面を所定寸法まで拡径させる円弧状の断面形状をした複数の拡径周面と、中空シャフトの内周面の縮径を防止する平坦な断面形状した複数のバックアップ周面とを有し、前記複数の拡径周面と複数のバックアップ周面とが交互に配置される異形の断面形状を呈するプラグを使用することを特徴とする組立シャフトの製造方法。
【請求項2】
前記組立シャフトは、前記中空シャフトの端部に嵌合される円筒状のエンドピースと、このエンドピースの外周に嵌合されるリング状のエンドピースフランジと、中空シャフトの中間部に嵌合されるカムローブおよびジャーナルとを組付部品として備えた組立カムシャフトであることを特徴とする請求項1に記載の組立シャフトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−154421(P2012−154421A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14132(P2011−14132)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(593130717)
【出願人】(511023509)三和商事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】