組織基質の疑わしい領域を決定する画像処理方法、及び組織基質にわたる3Dナビゲーションでの当該方法の用法
【課題】トモシンセシスによる三次元(3D)スライスと、標準的なマンモグラフィによる二次元(2D)スライスとを同時に表示して解析を行なうときの組織の重なり合いの問題に対処する。
【解決手段】組織基質の疑わしい領域を明らかにする画像を形成する方法に関わる。この方法は、組織基質の取得された医用画像から2D画像を形成する。この2D画像は、潜在的に病理学的な放射線医学的徴候のみを示し、組織の重なり合いを示さない。
【解決手段】組織基質の疑わしい領域を明らかにする画像を形成する方法に関わる。この方法は、組織基質の取得された医用画像から2D画像を形成する。この2D画像は、潜在的に病理学的な放射線医学的徴候のみを示し、組織の重なり合いを示さない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療撮像の分野に関する。
【0002】
さらに具体的には、本発明は、組織基質の疑わしい領域を明示する医用画像を形成する方法に関する。これらの画像は同じ一つの対象の二次元又は三次元医用画像から形成され、この対象における放射線医学的に疑わしい領域を検出するシステムの結果と組み合わされる。
【背景技術】
【0003】
医用画像を形成する方法が、癌型の病変、特に乳房病変の検出に用いられている。
【0004】
乳ガンの診断のために、一般的には放射線医学を用いて乳房の内部の画像を得る。
【0005】
二次元(2D)放射線画像は、検出器によって形成される平面に対する放射線源からの組織基質の投影、例えば乳ガン診断の場合には乳房の投影を示す。放射線画像は一般的には、着目対象をX線放出源とX線検出器との間に載置して、X線が対象を通過した後に検出器に到達するようにすることにより得られる。次いで、放射線画像が検出器によって与えられるデータから構築されて、検出器に対してX線の方向に投影された組織基質を表わす。
【0006】
この放射線画像では、経験を積んだ医師であれば潜在的な問題例えば微小石灰化又はマンモグラムの不透明部分を示す放射線医学的徴候を識別することが可能である。
【0007】
しかしながら、放射線画像は三次元組織基質の二次元投影から導かれている。すると、組織の重なり合いが病変のような放射線医学的徴候を隠蔽する場合があり、医師は投影の方向における放射線医学的徴候の位置についての情報を有しないため、着目対象の内部の放射線医学的徴候の真の位置をどうしても知ることができない。
【0008】
近年、これらの問題に対処するために、着目対象の三次元(3D)表現を一連の連続スライスの形態で得ることを可能にするトモシンセシスが開発されている。これらのスライスは、様々な角度での着目対象の投影から再構成される。この目的のために、着目対象はX線放出源とX線検出器との間に全体的に載置される。線源及び/又は検出器は移動自在であり、すなわち検出器に対する着目対象の投影方向が変化し得る(典型的には30°の角度範囲にわたる)。この態様で、着目対象の幾つかの投影が様々な角度において得られて、ここから当業者に周知の再構成方法を一般に用いて着目対象の3D表現を再構成することができる。例えば仏国特許第2,872,659号明細書を参照されたい。
【0009】
従って、着目対象のトモシンセシス・スライスを検査すると、医師は着目対象での放射線医学的徴候を検出して、これらの徴候の三次元位置を評価することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】仏国特許第2,872,659号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、医師は2D放射線画像(標準的なマンモグラフィ)の解析には多年にわたる経験を有するが、トモシンセシス・スライスの解析は初期段階にあるに過ぎない。
【0012】
従って、移行期間が好ましいことが分かる。この移行期では、医師は、3Dスライスの解析の経験を積んで容易に行ない得るようになると共に、放射線医学的徴候の経時的変化の研究の一部として3Dスライスを従来の2D放射線医学画像と比較し得るようになることを目的として、同じ一つの着目対象の標準的なマンモグラフィ画像を添えて着目対象のトモシンセシス・スライスを解析するように誘導される。
【0013】
この展望で、同じ一つの着目対象の放射線画像及びトモシンセシス・スライスの取得を可能にするラジオグラフィ画像取得システムを製造する研究が行なわれている。
【0014】
しかしながら、医師は、トモシンセシスによって得られるスライスを観察する前に、2D放射線画像において疑わしい領域を先ず探す。従って、放射線画像における組織の重なり合いに関連する問題は残ったままである。
【0015】
従って、本発明の課題の一つは、従来技術のこれらの欠点の少なくとも一つを克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、第一の画像及び医用イメージング・システムによって事前に得られる組織基質の医用画像から組織基質の疑わしい領域を明示する最終画像を形成する方法を提案する。
【0017】
この方法は、
・検出計算機を用いて、組織基質の対応する領域が疑わしいか否かを示す疑わしさの程度を示す値を有するボクセルの3D行列である3D疑わしさマップを医用画像から構築するステップを含んでおり、
・実装用計算機によって、3D疑わしさマップの疑わしさの程度から決定される疑わしさの程度を示す値を有するピクセルの2D行列である2D疑わしさマップを、3D疑わしさマップの全て又は一部を点から平面へ投影してイメージング・システムによる第一の画像の取得条件を再現することにより生成するステップと、
・実装用計算機によって、組織基質の疑わしい領域を明示する組織基質の最終的な2D画像を第一の画像及び/又は2D疑わしさマップから形成するステップと
をさらに含むことを特徴とする。
【0018】
この方法の一つの利点は、標準的な2D医用画像に匹敵する付加的な情報を保持する最終的な2D画像が得られることである。従って、医師は、自分が馴染んだ診断ツールを提供される。加えて、これらの指標は、病理学的な放射線医学的徴候と健全な組織の重なり合いから得られる徴候との間の識別を行なうことを可能にする。
【0019】
他の選択随意の非限定的な特徴は、以下の通りである。
【0020】
・イメージング・システムは、乳房トモシンセシス・システムである。
【0021】
・2D疑わしさマップの一つのピクセルの値μ(PixM2D)は、点とピクセルとを結ぶ直線Lに位置する3D疑わしさマップにおけるボクセルの値μ(VoxM3Di)に対し集計演算⊥を適用することにより得られ、
μ(PixM2D)=⊥i∈Lμ(VoxM3Di)
となる。
【0022】
・実装用計算機は、事前に得られる組織基質の3D画像及び3D疑わしさマップから容積を生成し、
3D画像は、医用画像の強度から得られる値を有するボクセルの行列であり、
容積は、3D疑わしさマップ及び3D画像における対応するボクセルの値の間で乗算した値を有するボクセルの行列である。
【0023】
また、実装用計算機は、点から平面に容積を投影して第一の画像の取得条件を再現することにより疑わしい放射線医学的徴候の画像を形成し、
疑わしい放射線医学的徴候の画像はピクセルの行列であり、
疑わしい放射線医学的徴候の画像の1個のピクセルの値π(PixP1)は、点とピクセルとを結ぶ直線Lに位置する容積のボクセル値π(VoxV1i)に対し集計演算子⊥を適用することにより得られ、
π(PixP1)=⊥i∈Lπ(VoxV1i)
となる。
【0024】
・実装用計算機は、第一の画像のピクセル値、疑わしい放射線医学的徴候の画像のピクセル値、及び2D疑わしさマップのピクセル値の全て又は一部の重み付き加算を実行することにより、最終的な2D画像を形成する。
【0025】
・一旦、3D疑わしさマップが構築されたら、実装用計算機は、3D疑わしさマップから決定され疑わしい領域である可能性が高い関心領域(ROI)であるマップ及び画像の一つの部分にのみ作用する。
【0026】
・ROIは、3D疑わしさマップから自動生成される。
【0027】
この方法はさらに、以下の各ステップを含んでいる。
【0028】
・組織基質の画像が表示装置に表示され、
・関心領域は、組織基質の画像において標識され、
・関心領域に位置し、組織基質の画像に平行な組織基質のスライスであって、3D疑わしさマップに従って疑わしさの順序で分類された組織基質のスライスに対応する幾つかの画像が、上述の表示装置又は他の表示装置に表示され、
組織基質の表示画像は、第一の画像又は最終的な2D画像である。
【0029】
この方法はさらに、以下の各ステップを含んでいる。
【0030】
・組織基質の画像が表示装置に表示され、
・組織基質における領域について疑わしさの程度を示すウォータマークであって、2D疑わしさマップから構築されて2D疑わしさマップの等値曲線を明らかにするウォータマークが、組織基質の画像に重ね合わされ、
等値曲線は、線又は色付き面積によるウォータマークとして示される。
【0031】
本発明はまた、上述の方法を具現化する計算システムを提案し、このシステムは、
実装用計算機を含んでおり、該実装用計算機は、
・組織基質の医用画像から得られる事前に生成される3D疑わしさマップから2D疑わしさマップを生成するモジュールと、
・組織基質の3D画像及び3D疑わしさマップから容積を生成するモジュールと、
・点から開始して平面への容積の模擬投影から疑わしい放射線医学的徴候の画像を形成するモジュールと、
・第一の事前に取得される画像、2D疑わしさマップ及び疑わしい放射線医学的徴候の画像から、これらのマップ及び画像の重み付き加算によって、最終的な2D画像を形成するモジュールと、
・2D疑わしさマップ、容積、疑わしい放射線医学的徴候の画像及び最終的な2D画像を記憶するメモリ・ユニットと、
・これらの画像の少なくとも一つを表示する表示ユニットと
を含んでいる。
【0032】
本発明はさらに、コンピュータにおいて実行される又は走行されると上述の方法を具現化する機械命令を含んでいるコンピュータ・プログラムを提案する。
【0033】
他の課題、特性及び利点は、説明の目的であって限定する目的でなく掲げられる図面を参照して以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】方法を具現化する計算システムに結合されて医用画像を取得するのに用いられる医用イメージング・システムの概略図である。
【図2】方法の様々なステップを示す流れ図である。
【図3】組織基質の第一の医用画像を取得する図2の方法の取得ステップを示す図である。
【図4】追加の医用画像を取得する図2の方法の取得ステップを示す図である。
【図5】組織基質の3D画像を構築する図2の方法の構築ステップを示す図である。
【図6】3D疑わしさマップを構築する図2の方法の構築ステップを示す図である。
【図7】3D疑わしさマップから2D疑わしさマップを構築する図2の方法の構築ステップを示す図である。
【図8】3D画像及び3D疑わしさマップの生成を行なって、容積を与えるステップを示す図である。
【図9】図8に示す生成体を投影するステップを示す図である。
【図10】組織基質にわたる3Dナビゲーションのための図2による方法の第一の用法を示す概略図である。
【図11】組織基質にわたる3Dナビゲーションのための図2による方法の第二の用法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
単純化して分かり易くする理由のために、図3、図4、図6、図8は様々な取得画像又は形成画像のみを示しており、これらの画像が得られた検出器又は平面は示していない。
【0036】
組織基質の疑わしい領域を明らかにする最終的な2D画像を形成する医用イメージング・システム及び実装用システムである。
【0037】
図1は、組織基質Oの二次元(2D)画像から組織基質Oの三次元(3D)再構成を可能にする画像の取得のための医用イメージング・システム1を示す概略図である。
【0038】
医用イメージング・システム1は、乳ガン(組織基質)のスクリーニング、診断及び治療のために放射線医学的徴候の検出及び特徴評価を行なうマンモグラフィ装置であり得る。
【0039】
イメージング・システム1は、2D画像の取得ユニット2を含んでいる。
【0040】
取得ユニット2は、直立スタンド21と、放射線源21例えばX線源に接続されている配置用アーム22とを含んでいる。配置用アーム22は、回転軸23の周りで直立スタンド21に回転接合されている。直立スタンド21は固定されている。従って、配置用アーム22を回転させることにより線源24を所定の配向に沿って配置することができる。
【0041】
取得ユニット2はまた支持アームを含んでおり、支持アームには、図1に示すように、検出支持板25と、検出支持板25に平行に設けられている圧迫支持板26であって二つの支持板の間に配置された乳房Oを圧迫支持する圧迫支持板26とを含むプラットフォームが設けられている。圧迫支持板26は、下側の支持板25の上に配置されており、並進レール27に沿って下側の支持板25に対して並進移動することができる。検出支持板25は、線源21によって用いられる放射線に呼応して放射線を検出する放射線検出器を含んでいる。検出支持板25及び圧迫支持板26は、医用画像の取得時に乳房Oを不動に保つ。
【0042】
配置用アーム22及び各支持アームは、互いに対して接合されていてもよいし、回転軸23の周りでの互いに対する回転を許容しつつ別個に設けられていてもよい。これらのアームは、線源24によって放出される放射線の大部分が検出器によって受光されるように互いに対して配置される。
【0043】
検出器は、アモルファス・シリコンのトランジスタ/フォトダイオード・アレイに例えばヨウ化セシウム燐光体(シンチレータ)を含有する半導体画像センサであってよい。他の適当な検出器としては、X線をディジタル信号へ直接変換する直接式ディジタル検出器であるCCDセンサ等がある。図1に示す検出器は平面状であって平面状の画像面を画定しているが、彎曲した画像面を形成する彎曲形状のディジタルX線検出器のような他の幾何学的構成も適当である。
【0044】
イメージング・システム1はまた、有線接続によって又は網を介しての何れかで取得ユニット2に接続される制御ユニット3を含んでいる。制御ユニット3は、放出される放射線量、配置用アーム22の角度位置、支持アームの角度配置、圧迫支持板26が乳房Oに加えなければならない圧迫力のような幾つかのパラメータを設定するための電気的制御信号を取得ユニット2へ送る。
【0045】
制御ユニット3は、フレキシブル・ディスク、CD−ROM、DVD−ROM若しくはUSBフラッシュ・ドライブ若しくはさらに一般的に任意の着脱自在式メモリ媒体のような指令媒体(図示されていない)から、又は網接続を介して、処理方法の命令を読み取る読み取り装置(図示されていない)例えばフレキシブル・ディスク読み取り器、CD−ROM若しくはDVD−ROM読み取り器、又は接続ポートを含み得る。
【0046】
変形として、制御ユニット3は、有線式又は無線式の網接続装置(図示されていない)を含み得る。変形として、制御ユニット3は、ファームウェアに記憶されている処理方法の命令を実行する。
【0047】
イメージング・システム1はさらに、制御ユニット3に接続されてパラメータ及び取得画像を記録するメモリ・ユニット4を含んでいる。また、制御ユニット3の内部又は外部に位置するようにデータベース4を設けることも可能である。
【0048】
メモリ・ユニット4は、ハードディスク若しくはSSD、又は他の任意の再書き込み型着脱式記憶媒体(USBフラッシュ・ドライブ、メモリ・カード等)で形成され得る。
【0049】
メモリ・ユニット4は、制御ユニット3のROM/RAMメモリ、USBフラッシュ・ドライブ、メモリ・カード、中央サーバのメモリであってよい。
【0050】
イメージング・システム1は、制御ユニット3に接続されて取得画像及び/又は制御ユニット3が取得ユニット2へ送信しなければならないパラメータのデータを表示する表示ユニット5を含んでいる。
【0051】
表示ユニット5は、取得ユニット2若しくは制御ユニット3、又は後述する3D計算機61に一体化されていてもよいし、例えばディジタル医用画像から診断を確定するために放射線科医によって用いられる観察用ステーションに別個に設けられていてもよい。
【0052】
表示ユニット5は、例えばコンピュータ・スクリーン若しくはモニタ、フラット・スクリーン、プラズマ・スクリーン、又は任意の形式の公知の商用表示装置である。
【0053】
表示ユニット5は、医師が取得される2D画像の再構成及び/又は表示を制御することを可能にする。
【0054】
イメージング・システム1は計算システム6に結合されており、計算システム6は、イメージング・システム1のメモリ・ユニット4に記憶されている取得画像であって、ディジタル・トモシンセシスを用いて乳房の3D画像を構築するための取得画像を受け取る3D計算機61を含んでいる。乳房のディジタル・トモシンセシスのための方法の一例が、仏国特許第2,872,659号に詳細に記載されている。
【0055】
計算機61は、1若しくは複数のコンピュータ、例えば1若しくは複数のプロセッサ、1若しくは複数のマイクロコントローラ、1若しくは複数のマイクロコンピュータ、1若しくは複数のプログラマブル・ロジック・コントローラ、1若しくは複数の特定応用向け集積回路、他のプログラム可能な回路、又はワークステーションのようなコンピュータを含む他の装置である。
【0056】
計算システム6はまた、3D計算機61によって生成されるデータの記憶のためにメモリ・ユニット62を含んでいる。
【0057】
イメージング・システム1及び計算システム6は、計算システム6によって形成される3D画像において疑わしい領域を検出する自動検出システム7に結合されている。この検出システム7は検出計算機71を含んでおり、3D疑わしさマップを形成することを可能にして、計算システム6から得られる3D画像から、及び/又はイメージング・システム1から導かれ同じ検査セッション時に取得される3D画像に関連するデータから、疑わしい領域についての情報を与えることができる。検出計算機71は、3D計算機61と同様のものであってよい。
【0058】
検出システム7はまた、検出計算機71によって生成されるデータの記憶のためのメモリ・ユニット72を含んでいる。
【0059】
検出システム7は、幾つかの場合には、計算システム6と同じであってもよい。
【0060】
イメージング・システム1、計算システム6及び検出システム7はまた、後述する方法の実装に専用化されたシステム8に接続されていてよい。この実装用システム8は、イメージング・システム1、計算システム6及び検出システム7から導かれるデータすなわちイメージング・システム1から導かれる取得データ及び/又は3D計算システム6によって構築される3D画像及び/又は検出システム7によって生成される3D疑わしさマップの全て又は一部を用いる。この実装用システム8は、幾つかの場合には、計算システム6又は検出システム7の何れかと同じであってもよい。
【0061】
イメージング・システム1のメモリ・ユニット4と計算システム6、検出システム7又は実装用システム8との間のデータの送信は、内部又は外部のコンピュータ網を介して、又はフロッピィ・ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、外部ハードディスク、USBフラッシュ・ドライブ、SDカード等のような任意の適当な物理的メモリ媒体を介して生じ得る。
【0062】
後述する方法の実装を可能にするために、実装用システム8は、2D疑わしさマップM2Dを生成するモジュール811、容積V1を生成するモジュール812、疑わしい放射線医学的徴候の画像P1を生成するモジュール813、及び最終的な2D画像Pを生成するモジュール814を装備した計算機81を含んでいる。
【0063】
計算機81は、フロッピィ・ディスク、CD−ROM、DVD−ROM若しくはUSBキーのような命令媒体(図示されていない)又はさらに一般的には任意の着脱自在のメモリ媒体から、又は網接続を介して、処理方法の命令を読み取る読み取り装置(図示されていない)例えばフロッピィ・ディスク読み取り器、CD−ROM若しくはDVD−ROM読み取り器、又は接続ポートを含み得る。
【0064】
変形として、計算機81は、有線式又は無線式の網接続装置(図示されていない)を含み得る。変形として、計算機81は、ファームウェアに記憶されている処理方法の命令を実行する。
【0065】
実装用計算システム8はまた、計算機81によって形成される画像を表示する表示ユニットを含み得る。この表示ユニットは、イメージング・システム1の表示ユニット5と同じ(図1に示す)であってもよいし、別個の表示ユニットであってもよい。
【0066】
結合とは、イメージング・システム1と、計算システム6、検出システム7及び実装用システム8とを最終的に用いて乳房Oの疑わしい領域を明らかにする画像を得ることを意味する。但し、イメージング・システム1、計算システム6、検出システム7及び実装用システム8は、同時に系統的に用いられたり同じ一つの室内に配置されたりする訳ではない。また、イメージング・システム1、計算システム6、検出システム7及び実装用システム8が必ずしも物理的に接続している訳でもない。この場合には、結合は、上述のように、一つのシステムからもう一つのシステムへのデータ転送を介して生ずる。
【0067】
以下本書では、X線マンモグラフィを参照して記載を行なう。この場合の組織基質は乳房である。この選択は、本発明のマンモグラフィのみへの適用との制限を反映するものではない。当業者は、後述する教示を任意の形式の画像取得手法に合わせて構成してかかる教示を可能にすることができる。
【0068】
図1〜図4を参照して、本発明の対象である医用画像を形成する方法に先立つ4段階のステップが記載される。これらのステップは説明のために掲げられており、他の方法を用いた類似のデータの取得も、後述する本発明の核心に問題を呈するものではない。
《準備段階》
■ステップE1−医用画像Imの取得
一つの第一の事前ステップは、以後用いられるべき医用画像Imの取得E1である。これらの医用画像Imはイメージング・システム1を用いて取得される。この目的のために、乳房Oは、上述のイメージング・システム1に属する取得ユニット2の検出支持板25と圧迫支持板26との間に配置される。次いで、圧迫支持板26をレール27に沿って検出支持板25に近付けて、乳房Oを圧迫する。この動作は、手動で又は制御ユニット3の制御の下で行なわれ得る。次いで、制御ユニット3は、配置用アーム22が軸23を中心として所望の角度位置まで回転するように配置用アーム22に配置信号を送る。選択随意で、制御ユニット3はまた、検出器の角度配置のための配置信号を支持アームへ送る。制御ユニット3は、線源24が所定の放射線量を放出するように線源24に信号を送る。検出支持板25に収納されている検出器は乳房Oを通過した放射線を検出し、制御ユニット3は検出器において読み出される画像をメモリ・ユニット4に記憶する。制御ユニット3はまた、線源24及び検出器の位置(検出器については検出支持板25の位置を介したもの)をメモリ・ユニット4に記憶する。取得動作は、幾つかの角度位置について繰り返される。得られる異なるデータが医用画像Imに対応し、次いで医用画像Imは制御ユニット3によって、後の利用に備えてイメージング・システム1のメモリ・ユニット4に記憶される。
■ステップE2−3D画像Vの構築
この方法はさらに、図2及び図5に示すように、医用画像Imからの乳房Oの3D画像Vの構築E3を含み得る。
【0069】
3D計算機61は、メモリ・ユニット4に記憶されている医用画像Imから3D画像Vを構築する。メモリ・ユニット4からのデータの送信は、内部若しくは外部のコンピュータ網を介して、又はフロッピィ・ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、外部ハードディスク、USBフラッシュ・ドライブ、SDカード等のような任意の適当な物理的媒体によって生じ得る。
【0070】
3D計算機61による乳房Oの3D画像Vの構築は、乳房Oの三次元表現を得ることを可能にし、従って、投影の方向(線源と、放射線医学的徴候を示す2D医用画像の領域とを結ぶ直線)での放射線医学的徴候の位置を知ることが可能でない乳房Oの標準的な2D画像に比較して放射線医学的徴候のより正確な位置を知ることを可能にする。
【0071】
3D画像はボクセルVoxVの行列である。ボクセルVoxVの値π(VoxV)は、ボクセルVoxVに位置する組織に対応する減弱係数に比例している。
■ステップE3−第一の画像P0を得る
提案されている方法は、標準的なマンモグラムと同様の第一の画像P0の利用を要求する。この画像は様々な態様として得ることができ、特に以下の態様の一つによって得られるが、この態様に限定されない。
【0072】
第一に、この第一の画像P0は、医用画像Imの取得の直前又は直後の標準的なマンモグラムの取得によって得ることができる。この取得時に、線源によって放出される放射線量は、通例通り従来通りに決定される。このように、第一の画像P0は標準的なディジタル2D医用画像である。
【0073】
第二に、第一の画像P0は、計算システム6によって構築される3D画像Vの投影を生成することにより得ることができる。
【0074】
第三に、第一の画像P0は、仏国特許出願第09.599374号に記載されている方法に従って医用画像Imからの構築によって得ることができる。
【0075】
最後に、第一の画像P0は、医用画像Imの一つであってもよいし、医用画像Imの全て又は一部から形成されてもよい。
【0076】
全ての場合において、第一の画像P0は、乳房Oを通過した後のX線の吸収についての情報を与える値π(PixP0)を有するピクセルPixP0の行列である。加えて、情報は、第一の画像P0の形成を可能にしたシステムの真の構成又は模擬された構成、特に線源S及び検出器の相対位置(真の位置又は模擬された位置)に関わるものであることが知られている。
■ステップ4−3D疑わしさマップM3Dの生成
図2及び図6は、3D疑わしさマップM3Dの生成E4を示している。検出計算機71は、医用画像Im若しくは3D画像Vの何れかから、又は両方から、3D疑わしさマップM3Dを算出する。
【0077】
例えばPalma, G.、Bloch, I.及びMuller, S. による“Spiculated Lesions and Architectural Distortions Detection in Digital Breast Tomosynthesis Datasets”、International Workshop on Digital Mammography (IWDM)(2010年、西国ジローナ)、又はBernard, S.、Muller, S.、Onativia, J.による“Computer-Aided Microcalcification Detection on Digital Breast Tomosynthesis Data: a Preliminary Evaluation”、International Workshop on Digital Mammography (IWDM)(2008年)に記載されているもののようなディジタル乳房トモシンセシス計算機支援式検出を例えば用いて上述の3D疑わしさマップM3Dを得る幾つかの方法が存在している。
【0078】
3D疑わしさマップM3DはボクセルVoxM3Dの行列である。ボクセルVoxM3Dの各々について、値μ(VoxM3D)は疑わしさの程度を示し、ボクセルVoxM3Dに対応する乳房領域での疑わしい放射線医学的徴候の存在の指標を与える。
【0079】
この疑わしさの程度μ(VoxM3D)は0と1との間の値であってよく、離散的(値は0及び1のみであり、すなわちμ(VoxM3D)∈{0;1})であっても連続的(すなわちμ(VoxM3D)∈[0;1])であってもよい。
【0080】
例えば、ボクセルVoxM3Dに対応する乳房Oの領域が不透明部分、構造歪み又は微小石灰化等に似た疑わしい放射線医学的徴候を全く示していない場合には、ボクセルVoxM3Dの疑わしさの程度μ(VoxM3D)は値0を取る。ボクセルVoxM3Dに対応する乳房Oの領域が疑わしい放射線医学的徴候を含む可能性がある場合には、ボクセルVoxM3Dの疑わしさの程度μ(VoxM3D)は値1を取る。
【0081】
値μ(VoxM3D)が0と1との間で連続的に変化するときには、この値はボクセルVoxM3Dに対応する領域についての疑わしさの程度を反映している。明らかに、疑わしさの程度μ(VoxM3D)は他の値を取るように定義されてもよい。
【0082】
3D疑わしさマップM3Dは、検出システム7のメモリ・ユニット72に記憶される。
【0083】
従って、組織基質Oの病理学的領域を検出する補助的なツールが提供される。
《乳房Oの疑わしい領域を明らかにする2D画像を形成する方法の各ステップ》
■ステップE5−2D疑わしさマップM2Dの生成
3D疑わしさマップM3Dから、実装用システム8の計算機81は、図2及び図7に示すようにステップE5において2D疑わしさマップM2Dを生成する。
【0084】
この目的のために、計算機81は、検出システム7から当該計算機81に送信された3D疑わしさマップM3Dについて点Sから開始して平面(図7では2D疑わしさマップM2Dによって表わされている)への投影を実行する。平面及び点Sの位置は、第一の画像P0の取得に用いられた取得ユニット2の検出支持板25及び線源24の位置にそれぞれ対応しているか、又はシミュレーションによる第一の画像P0の構築時に用いられた点S及び平面の位置にそれぞれ対応しており、これらの位置はメモリ・ユニット4に記憶されており、上述の医用画像Imの場合(ステップ3)と同じ方法で計算機81に転送され得る。3D疑わしさマップM3Dの位置は、第一の画像P0の取得の時刻の乳房Oの位置に対応する。
【0085】
従って、2D疑わしさマップM2Dの生成については、第一の画像P0の取得の場合と同じ条件が再現される。
【0086】
2D疑わしさマップM2DはピクセルPixM2Dの行列である。ピクセルPixM2Dの各々の値μ(PixM2D)は様々な態様で算出され得る。一般的には、この値は、考察されている2D疑わしさマップM2DのピクセルPixM2Dと点Sとを結ぶ直線Lが通る3D疑わしさマップM3DのボクセルVoxM3D疑わしさの程度μ(VoxM3D)の間でのt−コノルムの適用のような集計演算すなわち
μ(PixM2D)=⊥i∈Lμ(VoxM3Di)
の結果であり、⊥は、t−コノルム又は他の選択された集計演算子を示す。
【0087】
t−コノルムは、結合型の単調な可換の数学的演算子であって、単位元は0である。最も小さいt−コノルムが最大値であり、従って
⊥i∈Lμ(VoxM3Di)≧maxi∈Lμ(VoxM3Di)
を与える。
【0088】
最大値に関しては、2D疑わしさマップM2Dの各々のピクセルPixM2Dについて、
μ(PixM2D)=maxi∈Lμ(VoxM3Di)
である。
【0089】
尚、他の集計演算子例えば平均を用いてもよいことを特記しておく。
【0090】
従って、2D疑わしさマップM2Dは、標準的な医用画像の場合と同じ方法で乳房Oの疑わしい領域を二次元で示す。
【0091】
2D疑わしさマップM2Dは、計算機81によって実装用システム8のメモリ・ユニット82に記憶される。
【0092】
従って、健全な放射線医学的徴候の重なり合いは、標準的な医用画像では病理学的な放射線医学的徴候に関わるとの考察を導き得る動機を潜在的に招き得るものであるが、このような健全な放射線医学的徴候の重なり合いが、2D疑わしさマップM2Dの対応するピクセルPixM2Dでは領域が疑わしいとの信念を導く情報を生成しなくなる。集計演算子例えばt−コノルム⊥を用いると、乳房Oのこの領域に対応する2D疑わしさマップM2DのピクセルPixM2Dは、この領域が疑わしいと示さなくなる。
■ステップE6−容積V1の生成
以上の後に、図2及び図8に示すように、計算機81は3D画像V及び3D疑わしさマップM3Dから容積V1を生成する。
【0093】
容積V1は、3D画像VのボクセルVoxVを3D疑わしさマップM3Dの対応するボクセルVoxM3Dに乗算することにより得られる値を有するボクセルVoxV1の行列である。
【0094】
π(VoxV1i)=π(VoxVi)・μ(VoxM3Di)。
【0095】
容積V1は、疑わしい領域のみが示されている乳房Oの表現である。
【0096】
容積V1は、計算機81によって実装用システム8のメモリ・ユニット82に記憶される。
■ステップE7−疑わしい放射線医学的徴候の画像P1の形成
図2及び図9は、疑わしい放射線医学的徴候の画像P1を形成するステップE7を示す。このステップE7では、実装用システム8の計算機81は、容積V1を点Sから平面(図9では疑わしい放射線医学的徴候の画像P1によって表わされている)へ投影する。
【0097】
実装用システム8の計算機81によって用いられる容積V1、点S及び平面の相対位置は、第一の画像P0の取得E3のときの乳房O、線源24及び検出支持板25の相対位置と同じである。
【0098】
疑わしい放射線医学的徴候の画像P1は、2D疑わしさマップM2DのピクセルPixM2Dと類似の態様で算出される値π(PixP1)を有するピクセルPixP1の2D行列であるが、今回は容積V1から算出され、
π(PixP1)=Ai∈Lπ(VoxVi)、すなわち
π(PixP1)=Ai∈Lμ(VoxM3Di)・π(VoxVi)
であり、Aは、最大値、平均値、中央値又は他の値のような集計演算子である。
【0099】
従って、疑わしい放射線医学的徴候の画像P1は、対象Oに含まれる他の構造の重なり合いを減少させた悪性である可能性のある放射線医学的徴候のみが示されている2D画像である。
【0100】
疑わしい放射線医学的徴候の画像P1は、計算機81によって実装用システム8のメモリ・ユニット82に記憶される。
■ステップE8−最終的な2D画像Pの形成
図2及び図10は、最終的な2D画像Pを形成するステップE8を示す。最終的な2D画像PはピクセルPixPの2D行列である。ピクセルPixPの各々について、計算機81は下式のように値π(PixP)を算出する。
【0101】
π(PixPi)
=β・[(1−μ(PixM2Di))・π(PixP0i)+π(PixP1i)]
+(1−β)・π(PixP1i)
式中、βは0と1との間に位置する。
【0102】
1とは異なる値βを選択するということは、0とβとの間の3D疑わしさマップM3Dの疑わしさの程度μ(VoxM3D)を選択するということである。
【0103】
従って、最終的な2D画像Pでの疑わしい領域での組織の重なり合いの影響を多く又は少なく消去するようにβの値に作用を及ぼすことが可能である。従って、疑わしい領域の上下の情報のさらに多い又はさらに少ない認知のためにβの値に作用を及ぼすことが可能である。β=0である場合には、第一の画像P0に対する作用になる。
【0104】
最終的な2D画像Pを構築する方法に改良を施すことができ、特にフィルタや係数による加重を用いた疑わしい放射線医学的徴候の画像P1の細部の強調、又は2D疑わしさマップM2Dにおいて特によく見える疑わしい領域のみでの最終的な2D画像Pのフィルタ処理を施し得ることを特記しておく。フィルタ処理は、最終的な2D画像Pでの幾つかの周波数又は幾つかの構造を増幅する。従って、フィルタ処理を行なうと、疑わしい構造のさらに十分な明示が可能になる。
【0105】
一旦、3D疑わしさマップM3D又は2D疑わしさマップM2Dにおいて関心領域ROIが識別されたら、関心領域ROIのみを対象とすることが可能である。関心領域ROIの識別は、医師によって行なわれてもよいし、自動的に行なわれてもよく、自動的に行なう場合には、例えばピクセルの値μ(PixM2D)を閾値と比較することにより2D疑わしさマップM2Dを閾値処理することを介して、又は3D疑わしさマップM3Dを閾値処理した後に、2D疑わしさマップM2Dを得る投影と同じ方法で3D疑わしさマップM3Dの閾値処理の結果の投影を行なうことを介して、行なわれ得る。次いで、各ステップは、この関心領域ROIにのみ関わるように容易に修正される。例えば、ステップE5では、実装用システム8の計算機81は、点S及び関心領域ROIの近傍を通る直線が3D疑わしさマップM3Dを通る部分のみを投影して、部分的な2D疑わしさマップM2Dを得る。
【0106】
また、関心領域ROIは、第一の画像P0において医師によって検出されていてもよい。
■ステップE9−3Dナビゲーション
この方法はまた、乳房Oの全体にわたるナビゲーションを可能にし得る。この場合には、以下に述べる実装用システム8の動作作用は、放射線科医が画像を視認することを可能にするシステムにおいて利用可能になる。
【0107】
この目的のために、計算機81は乳房Oの画像の表示信号を、イメージング・システム1の表示ユニット5であってよい表示ユニットへ送る。表示画像は、上述の第一の画像P0又は最終的な2D画像Pの何れであってもよい。
【0108】
計算機81はまた、表示画像において識別される1又は複数の関心領域ROIの標識を制御し、この標識は図10に示すような矩形、方形又は任意の形状であり得る輪郭線Cによる。
【0109】
関心領域ROIに位置しており乳房Oの表示画像に平行な乳房OのスライスImCに対応する幾つかの画像が、やはり表示ユニット5又は他の表示ユニットに表示される。スライスImCは、全スライスであってもよいし、2D画像において標識された関心領域ROIに対応するスライスの関心領域ROIであってもよい。
【0110】
乳房OのスライスImCは、乳房トモシンセシスのような乳房Oの3D画像Vから形成され得る。
【0111】
これらのスライスImCは、乳房の表示画像と同時に、又は関心領域(1又は複数)ROIの標識Cが選択されたときの何れかで示され得る。選択は、マウス又はスタイラスのような人対機械インタフェイスを用いてC標識をクリックすることにより行なわれる。
【0112】
乳房のスライスImCは、3D疑わしさマップM3Dに従って疑わしさμImCの順序で分類される。この目的のために、スライスImCの各々について、平均値、中央値、最小値、最大値、又は演算子Mによって得られる他の任意の値を、スライスImCに対応する3D疑わしさマップM3DのボクセルVoxの疑わしさの程度の値μ(VoxM3D)について算出することができる。
【0113】
μImC=Mi∈ImCμ(VoxM3Di)
従って、医師は、放射線医学的徴候のよりよい位置を求めて乳房Oの全体を容易にナビゲートすることができる。従って、医師には、潜在的に疑わしい領域の全体を通してのさらに最適な誘導が提供される。
【0114】
図11に示す一つの変形では、計算機81は乳房Oの表示画像に重ね合わされているウォータマークの表示を制御する。このウォータマークは、乳房Oの各領域の疑わしさの程度を示す。ウォータマークは2D疑わしさマップM2Dから構築されて、2D疑わしさマップM2Dの等値曲線IsoCを示す。等値曲線IsoCは、ピクセルPixM2Dが実質的に異なる値μ(PixM2D)を有する2D疑わしさマップM2Dの二つの領域の間の境界を記録する連続的な線である。
【0115】
等値曲線IsoCは、これらの等値曲線IsoCに沿った線又は色付き面積によるウォータマークとして示され得る。後者(色付き面積)の場合には、異なる色の二つの領域の間の境界が等値曲線IsoCとなる。
【0116】
疑わしさの程度μ(PixM2D)はまた、カーソルが乳房Oの画像の上に移動されたときに、例えば乳房Oの画像の外部の固定ウィンドウ、又はカーソルと共に移動する小さいウィンドウの何れかに表示され得る。
【0117】
これにより、医師に乳房Oの注釈付きマッピングが提供される。
【0118】
これら二つの3Dナビゲーション・ステップによって、医師に放射線医学的徴候の診断の準備を支援するツールが提供される。
【0119】
この変形を第一の変形と組み合わせて、医師が必要に応じて乳房の一つの表示から他の表示へ切り換えることを可能にすることができる。
《コンピュータ・プログラム》
この方法は、任意の適当な媒体、例えばハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、フロッピィ・ディスク、USBフラッシュ・ドライブ、SDカード、ローカルのサーバ又はリモートのサーバ等に記録されるこの方法の目的のための機械命令を含むコンピュータ・プログラムによって具現化され得る。
【符号の説明】
【0120】
O:乳房
1:医用イメージング・システム
2:取得ユニット
3:制御ユニット
4:メモリ・ユニット
5:表示ユニット
6:計算システム
7:自動式検出システム
8:実装用システム
21:直立スタンド
22:配置用アーム
23:回転軸
24:線源
25:検出支持板
26:圧迫支持板
27:並進レール
61:3D計算機
62:メモリ・ユニット
71:検出計算機
72:メモリ・ユニット
81:計算機
82:メモリ・ユニット
811:2D疑わしさマップM2Dを生成するモジュール
812:容積V1を生成するモジュール
813:疑わしい放射線医学的徴候の画像P1を形成するモジュール
814:最終的な2D画像Pを形成するモジュール
P0:第一の画像
Im:医用画像
C:関心領域ROIの標識付け
V:3D画像
M3D:3D疑わしさマップ
VoxM3D:ボクセルの3D行列
M2D:2D疑わしさマップ
PixM2D:ピクセルの2D行列
S:平面に投影された点
ROI:関心領域
V1:容積
VoxV1:ボクセルの行列
P1:疑わしい放射線医学的徴候の画像
PixP1:ピクセルの2D行列
ImC:乳房Oのスライス
P:最終的な2D画像
IsoC:等値曲線
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療撮像の分野に関する。
【0002】
さらに具体的には、本発明は、組織基質の疑わしい領域を明示する医用画像を形成する方法に関する。これらの画像は同じ一つの対象の二次元又は三次元医用画像から形成され、この対象における放射線医学的に疑わしい領域を検出するシステムの結果と組み合わされる。
【背景技術】
【0003】
医用画像を形成する方法が、癌型の病変、特に乳房病変の検出に用いられている。
【0004】
乳ガンの診断のために、一般的には放射線医学を用いて乳房の内部の画像を得る。
【0005】
二次元(2D)放射線画像は、検出器によって形成される平面に対する放射線源からの組織基質の投影、例えば乳ガン診断の場合には乳房の投影を示す。放射線画像は一般的には、着目対象をX線放出源とX線検出器との間に載置して、X線が対象を通過した後に検出器に到達するようにすることにより得られる。次いで、放射線画像が検出器によって与えられるデータから構築されて、検出器に対してX線の方向に投影された組織基質を表わす。
【0006】
この放射線画像では、経験を積んだ医師であれば潜在的な問題例えば微小石灰化又はマンモグラムの不透明部分を示す放射線医学的徴候を識別することが可能である。
【0007】
しかしながら、放射線画像は三次元組織基質の二次元投影から導かれている。すると、組織の重なり合いが病変のような放射線医学的徴候を隠蔽する場合があり、医師は投影の方向における放射線医学的徴候の位置についての情報を有しないため、着目対象の内部の放射線医学的徴候の真の位置をどうしても知ることができない。
【0008】
近年、これらの問題に対処するために、着目対象の三次元(3D)表現を一連の連続スライスの形態で得ることを可能にするトモシンセシスが開発されている。これらのスライスは、様々な角度での着目対象の投影から再構成される。この目的のために、着目対象はX線放出源とX線検出器との間に全体的に載置される。線源及び/又は検出器は移動自在であり、すなわち検出器に対する着目対象の投影方向が変化し得る(典型的には30°の角度範囲にわたる)。この態様で、着目対象の幾つかの投影が様々な角度において得られて、ここから当業者に周知の再構成方法を一般に用いて着目対象の3D表現を再構成することができる。例えば仏国特許第2,872,659号明細書を参照されたい。
【0009】
従って、着目対象のトモシンセシス・スライスを検査すると、医師は着目対象での放射線医学的徴候を検出して、これらの徴候の三次元位置を評価することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】仏国特許第2,872,659号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、医師は2D放射線画像(標準的なマンモグラフィ)の解析には多年にわたる経験を有するが、トモシンセシス・スライスの解析は初期段階にあるに過ぎない。
【0012】
従って、移行期間が好ましいことが分かる。この移行期では、医師は、3Dスライスの解析の経験を積んで容易に行ない得るようになると共に、放射線医学的徴候の経時的変化の研究の一部として3Dスライスを従来の2D放射線医学画像と比較し得るようになることを目的として、同じ一つの着目対象の標準的なマンモグラフィ画像を添えて着目対象のトモシンセシス・スライスを解析するように誘導される。
【0013】
この展望で、同じ一つの着目対象の放射線画像及びトモシンセシス・スライスの取得を可能にするラジオグラフィ画像取得システムを製造する研究が行なわれている。
【0014】
しかしながら、医師は、トモシンセシスによって得られるスライスを観察する前に、2D放射線画像において疑わしい領域を先ず探す。従って、放射線画像における組織の重なり合いに関連する問題は残ったままである。
【0015】
従って、本発明の課題の一つは、従来技術のこれらの欠点の少なくとも一つを克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、第一の画像及び医用イメージング・システムによって事前に得られる組織基質の医用画像から組織基質の疑わしい領域を明示する最終画像を形成する方法を提案する。
【0017】
この方法は、
・検出計算機を用いて、組織基質の対応する領域が疑わしいか否かを示す疑わしさの程度を示す値を有するボクセルの3D行列である3D疑わしさマップを医用画像から構築するステップを含んでおり、
・実装用計算機によって、3D疑わしさマップの疑わしさの程度から決定される疑わしさの程度を示す値を有するピクセルの2D行列である2D疑わしさマップを、3D疑わしさマップの全て又は一部を点から平面へ投影してイメージング・システムによる第一の画像の取得条件を再現することにより生成するステップと、
・実装用計算機によって、組織基質の疑わしい領域を明示する組織基質の最終的な2D画像を第一の画像及び/又は2D疑わしさマップから形成するステップと
をさらに含むことを特徴とする。
【0018】
この方法の一つの利点は、標準的な2D医用画像に匹敵する付加的な情報を保持する最終的な2D画像が得られることである。従って、医師は、自分が馴染んだ診断ツールを提供される。加えて、これらの指標は、病理学的な放射線医学的徴候と健全な組織の重なり合いから得られる徴候との間の識別を行なうことを可能にする。
【0019】
他の選択随意の非限定的な特徴は、以下の通りである。
【0020】
・イメージング・システムは、乳房トモシンセシス・システムである。
【0021】
・2D疑わしさマップの一つのピクセルの値μ(PixM2D)は、点とピクセルとを結ぶ直線Lに位置する3D疑わしさマップにおけるボクセルの値μ(VoxM3Di)に対し集計演算⊥を適用することにより得られ、
μ(PixM2D)=⊥i∈Lμ(VoxM3Di)
となる。
【0022】
・実装用計算機は、事前に得られる組織基質の3D画像及び3D疑わしさマップから容積を生成し、
3D画像は、医用画像の強度から得られる値を有するボクセルの行列であり、
容積は、3D疑わしさマップ及び3D画像における対応するボクセルの値の間で乗算した値を有するボクセルの行列である。
【0023】
また、実装用計算機は、点から平面に容積を投影して第一の画像の取得条件を再現することにより疑わしい放射線医学的徴候の画像を形成し、
疑わしい放射線医学的徴候の画像はピクセルの行列であり、
疑わしい放射線医学的徴候の画像の1個のピクセルの値π(PixP1)は、点とピクセルとを結ぶ直線Lに位置する容積のボクセル値π(VoxV1i)に対し集計演算子⊥を適用することにより得られ、
π(PixP1)=⊥i∈Lπ(VoxV1i)
となる。
【0024】
・実装用計算機は、第一の画像のピクセル値、疑わしい放射線医学的徴候の画像のピクセル値、及び2D疑わしさマップのピクセル値の全て又は一部の重み付き加算を実行することにより、最終的な2D画像を形成する。
【0025】
・一旦、3D疑わしさマップが構築されたら、実装用計算機は、3D疑わしさマップから決定され疑わしい領域である可能性が高い関心領域(ROI)であるマップ及び画像の一つの部分にのみ作用する。
【0026】
・ROIは、3D疑わしさマップから自動生成される。
【0027】
この方法はさらに、以下の各ステップを含んでいる。
【0028】
・組織基質の画像が表示装置に表示され、
・関心領域は、組織基質の画像において標識され、
・関心領域に位置し、組織基質の画像に平行な組織基質のスライスであって、3D疑わしさマップに従って疑わしさの順序で分類された組織基質のスライスに対応する幾つかの画像が、上述の表示装置又は他の表示装置に表示され、
組織基質の表示画像は、第一の画像又は最終的な2D画像である。
【0029】
この方法はさらに、以下の各ステップを含んでいる。
【0030】
・組織基質の画像が表示装置に表示され、
・組織基質における領域について疑わしさの程度を示すウォータマークであって、2D疑わしさマップから構築されて2D疑わしさマップの等値曲線を明らかにするウォータマークが、組織基質の画像に重ね合わされ、
等値曲線は、線又は色付き面積によるウォータマークとして示される。
【0031】
本発明はまた、上述の方法を具現化する計算システムを提案し、このシステムは、
実装用計算機を含んでおり、該実装用計算機は、
・組織基質の医用画像から得られる事前に生成される3D疑わしさマップから2D疑わしさマップを生成するモジュールと、
・組織基質の3D画像及び3D疑わしさマップから容積を生成するモジュールと、
・点から開始して平面への容積の模擬投影から疑わしい放射線医学的徴候の画像を形成するモジュールと、
・第一の事前に取得される画像、2D疑わしさマップ及び疑わしい放射線医学的徴候の画像から、これらのマップ及び画像の重み付き加算によって、最終的な2D画像を形成するモジュールと、
・2D疑わしさマップ、容積、疑わしい放射線医学的徴候の画像及び最終的な2D画像を記憶するメモリ・ユニットと、
・これらの画像の少なくとも一つを表示する表示ユニットと
を含んでいる。
【0032】
本発明はさらに、コンピュータにおいて実行される又は走行されると上述の方法を具現化する機械命令を含んでいるコンピュータ・プログラムを提案する。
【0033】
他の課題、特性及び利点は、説明の目的であって限定する目的でなく掲げられる図面を参照して以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】方法を具現化する計算システムに結合されて医用画像を取得するのに用いられる医用イメージング・システムの概略図である。
【図2】方法の様々なステップを示す流れ図である。
【図3】組織基質の第一の医用画像を取得する図2の方法の取得ステップを示す図である。
【図4】追加の医用画像を取得する図2の方法の取得ステップを示す図である。
【図5】組織基質の3D画像を構築する図2の方法の構築ステップを示す図である。
【図6】3D疑わしさマップを構築する図2の方法の構築ステップを示す図である。
【図7】3D疑わしさマップから2D疑わしさマップを構築する図2の方法の構築ステップを示す図である。
【図8】3D画像及び3D疑わしさマップの生成を行なって、容積を与えるステップを示す図である。
【図9】図8に示す生成体を投影するステップを示す図である。
【図10】組織基質にわたる3Dナビゲーションのための図2による方法の第一の用法を示す概略図である。
【図11】組織基質にわたる3Dナビゲーションのための図2による方法の第二の用法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
単純化して分かり易くする理由のために、図3、図4、図6、図8は様々な取得画像又は形成画像のみを示しており、これらの画像が得られた検出器又は平面は示していない。
【0036】
組織基質の疑わしい領域を明らかにする最終的な2D画像を形成する医用イメージング・システム及び実装用システムである。
【0037】
図1は、組織基質Oの二次元(2D)画像から組織基質Oの三次元(3D)再構成を可能にする画像の取得のための医用イメージング・システム1を示す概略図である。
【0038】
医用イメージング・システム1は、乳ガン(組織基質)のスクリーニング、診断及び治療のために放射線医学的徴候の検出及び特徴評価を行なうマンモグラフィ装置であり得る。
【0039】
イメージング・システム1は、2D画像の取得ユニット2を含んでいる。
【0040】
取得ユニット2は、直立スタンド21と、放射線源21例えばX線源に接続されている配置用アーム22とを含んでいる。配置用アーム22は、回転軸23の周りで直立スタンド21に回転接合されている。直立スタンド21は固定されている。従って、配置用アーム22を回転させることにより線源24を所定の配向に沿って配置することができる。
【0041】
取得ユニット2はまた支持アームを含んでおり、支持アームには、図1に示すように、検出支持板25と、検出支持板25に平行に設けられている圧迫支持板26であって二つの支持板の間に配置された乳房Oを圧迫支持する圧迫支持板26とを含むプラットフォームが設けられている。圧迫支持板26は、下側の支持板25の上に配置されており、並進レール27に沿って下側の支持板25に対して並進移動することができる。検出支持板25は、線源21によって用いられる放射線に呼応して放射線を検出する放射線検出器を含んでいる。検出支持板25及び圧迫支持板26は、医用画像の取得時に乳房Oを不動に保つ。
【0042】
配置用アーム22及び各支持アームは、互いに対して接合されていてもよいし、回転軸23の周りでの互いに対する回転を許容しつつ別個に設けられていてもよい。これらのアームは、線源24によって放出される放射線の大部分が検出器によって受光されるように互いに対して配置される。
【0043】
検出器は、アモルファス・シリコンのトランジスタ/フォトダイオード・アレイに例えばヨウ化セシウム燐光体(シンチレータ)を含有する半導体画像センサであってよい。他の適当な検出器としては、X線をディジタル信号へ直接変換する直接式ディジタル検出器であるCCDセンサ等がある。図1に示す検出器は平面状であって平面状の画像面を画定しているが、彎曲した画像面を形成する彎曲形状のディジタルX線検出器のような他の幾何学的構成も適当である。
【0044】
イメージング・システム1はまた、有線接続によって又は網を介しての何れかで取得ユニット2に接続される制御ユニット3を含んでいる。制御ユニット3は、放出される放射線量、配置用アーム22の角度位置、支持アームの角度配置、圧迫支持板26が乳房Oに加えなければならない圧迫力のような幾つかのパラメータを設定するための電気的制御信号を取得ユニット2へ送る。
【0045】
制御ユニット3は、フレキシブル・ディスク、CD−ROM、DVD−ROM若しくはUSBフラッシュ・ドライブ若しくはさらに一般的に任意の着脱自在式メモリ媒体のような指令媒体(図示されていない)から、又は網接続を介して、処理方法の命令を読み取る読み取り装置(図示されていない)例えばフレキシブル・ディスク読み取り器、CD−ROM若しくはDVD−ROM読み取り器、又は接続ポートを含み得る。
【0046】
変形として、制御ユニット3は、有線式又は無線式の網接続装置(図示されていない)を含み得る。変形として、制御ユニット3は、ファームウェアに記憶されている処理方法の命令を実行する。
【0047】
イメージング・システム1はさらに、制御ユニット3に接続されてパラメータ及び取得画像を記録するメモリ・ユニット4を含んでいる。また、制御ユニット3の内部又は外部に位置するようにデータベース4を設けることも可能である。
【0048】
メモリ・ユニット4は、ハードディスク若しくはSSD、又は他の任意の再書き込み型着脱式記憶媒体(USBフラッシュ・ドライブ、メモリ・カード等)で形成され得る。
【0049】
メモリ・ユニット4は、制御ユニット3のROM/RAMメモリ、USBフラッシュ・ドライブ、メモリ・カード、中央サーバのメモリであってよい。
【0050】
イメージング・システム1は、制御ユニット3に接続されて取得画像及び/又は制御ユニット3が取得ユニット2へ送信しなければならないパラメータのデータを表示する表示ユニット5を含んでいる。
【0051】
表示ユニット5は、取得ユニット2若しくは制御ユニット3、又は後述する3D計算機61に一体化されていてもよいし、例えばディジタル医用画像から診断を確定するために放射線科医によって用いられる観察用ステーションに別個に設けられていてもよい。
【0052】
表示ユニット5は、例えばコンピュータ・スクリーン若しくはモニタ、フラット・スクリーン、プラズマ・スクリーン、又は任意の形式の公知の商用表示装置である。
【0053】
表示ユニット5は、医師が取得される2D画像の再構成及び/又は表示を制御することを可能にする。
【0054】
イメージング・システム1は計算システム6に結合されており、計算システム6は、イメージング・システム1のメモリ・ユニット4に記憶されている取得画像であって、ディジタル・トモシンセシスを用いて乳房の3D画像を構築するための取得画像を受け取る3D計算機61を含んでいる。乳房のディジタル・トモシンセシスのための方法の一例が、仏国特許第2,872,659号に詳細に記載されている。
【0055】
計算機61は、1若しくは複数のコンピュータ、例えば1若しくは複数のプロセッサ、1若しくは複数のマイクロコントローラ、1若しくは複数のマイクロコンピュータ、1若しくは複数のプログラマブル・ロジック・コントローラ、1若しくは複数の特定応用向け集積回路、他のプログラム可能な回路、又はワークステーションのようなコンピュータを含む他の装置である。
【0056】
計算システム6はまた、3D計算機61によって生成されるデータの記憶のためにメモリ・ユニット62を含んでいる。
【0057】
イメージング・システム1及び計算システム6は、計算システム6によって形成される3D画像において疑わしい領域を検出する自動検出システム7に結合されている。この検出システム7は検出計算機71を含んでおり、3D疑わしさマップを形成することを可能にして、計算システム6から得られる3D画像から、及び/又はイメージング・システム1から導かれ同じ検査セッション時に取得される3D画像に関連するデータから、疑わしい領域についての情報を与えることができる。検出計算機71は、3D計算機61と同様のものであってよい。
【0058】
検出システム7はまた、検出計算機71によって生成されるデータの記憶のためのメモリ・ユニット72を含んでいる。
【0059】
検出システム7は、幾つかの場合には、計算システム6と同じであってもよい。
【0060】
イメージング・システム1、計算システム6及び検出システム7はまた、後述する方法の実装に専用化されたシステム8に接続されていてよい。この実装用システム8は、イメージング・システム1、計算システム6及び検出システム7から導かれるデータすなわちイメージング・システム1から導かれる取得データ及び/又は3D計算システム6によって構築される3D画像及び/又は検出システム7によって生成される3D疑わしさマップの全て又は一部を用いる。この実装用システム8は、幾つかの場合には、計算システム6又は検出システム7の何れかと同じであってもよい。
【0061】
イメージング・システム1のメモリ・ユニット4と計算システム6、検出システム7又は実装用システム8との間のデータの送信は、内部又は外部のコンピュータ網を介して、又はフロッピィ・ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、外部ハードディスク、USBフラッシュ・ドライブ、SDカード等のような任意の適当な物理的メモリ媒体を介して生じ得る。
【0062】
後述する方法の実装を可能にするために、実装用システム8は、2D疑わしさマップM2Dを生成するモジュール811、容積V1を生成するモジュール812、疑わしい放射線医学的徴候の画像P1を生成するモジュール813、及び最終的な2D画像Pを生成するモジュール814を装備した計算機81を含んでいる。
【0063】
計算機81は、フロッピィ・ディスク、CD−ROM、DVD−ROM若しくはUSBキーのような命令媒体(図示されていない)又はさらに一般的には任意の着脱自在のメモリ媒体から、又は網接続を介して、処理方法の命令を読み取る読み取り装置(図示されていない)例えばフロッピィ・ディスク読み取り器、CD−ROM若しくはDVD−ROM読み取り器、又は接続ポートを含み得る。
【0064】
変形として、計算機81は、有線式又は無線式の網接続装置(図示されていない)を含み得る。変形として、計算機81は、ファームウェアに記憶されている処理方法の命令を実行する。
【0065】
実装用計算システム8はまた、計算機81によって形成される画像を表示する表示ユニットを含み得る。この表示ユニットは、イメージング・システム1の表示ユニット5と同じ(図1に示す)であってもよいし、別個の表示ユニットであってもよい。
【0066】
結合とは、イメージング・システム1と、計算システム6、検出システム7及び実装用システム8とを最終的に用いて乳房Oの疑わしい領域を明らかにする画像を得ることを意味する。但し、イメージング・システム1、計算システム6、検出システム7及び実装用システム8は、同時に系統的に用いられたり同じ一つの室内に配置されたりする訳ではない。また、イメージング・システム1、計算システム6、検出システム7及び実装用システム8が必ずしも物理的に接続している訳でもない。この場合には、結合は、上述のように、一つのシステムからもう一つのシステムへのデータ転送を介して生ずる。
【0067】
以下本書では、X線マンモグラフィを参照して記載を行なう。この場合の組織基質は乳房である。この選択は、本発明のマンモグラフィのみへの適用との制限を反映するものではない。当業者は、後述する教示を任意の形式の画像取得手法に合わせて構成してかかる教示を可能にすることができる。
【0068】
図1〜図4を参照して、本発明の対象である医用画像を形成する方法に先立つ4段階のステップが記載される。これらのステップは説明のために掲げられており、他の方法を用いた類似のデータの取得も、後述する本発明の核心に問題を呈するものではない。
《準備段階》
■ステップE1−医用画像Imの取得
一つの第一の事前ステップは、以後用いられるべき医用画像Imの取得E1である。これらの医用画像Imはイメージング・システム1を用いて取得される。この目的のために、乳房Oは、上述のイメージング・システム1に属する取得ユニット2の検出支持板25と圧迫支持板26との間に配置される。次いで、圧迫支持板26をレール27に沿って検出支持板25に近付けて、乳房Oを圧迫する。この動作は、手動で又は制御ユニット3の制御の下で行なわれ得る。次いで、制御ユニット3は、配置用アーム22が軸23を中心として所望の角度位置まで回転するように配置用アーム22に配置信号を送る。選択随意で、制御ユニット3はまた、検出器の角度配置のための配置信号を支持アームへ送る。制御ユニット3は、線源24が所定の放射線量を放出するように線源24に信号を送る。検出支持板25に収納されている検出器は乳房Oを通過した放射線を検出し、制御ユニット3は検出器において読み出される画像をメモリ・ユニット4に記憶する。制御ユニット3はまた、線源24及び検出器の位置(検出器については検出支持板25の位置を介したもの)をメモリ・ユニット4に記憶する。取得動作は、幾つかの角度位置について繰り返される。得られる異なるデータが医用画像Imに対応し、次いで医用画像Imは制御ユニット3によって、後の利用に備えてイメージング・システム1のメモリ・ユニット4に記憶される。
■ステップE2−3D画像Vの構築
この方法はさらに、図2及び図5に示すように、医用画像Imからの乳房Oの3D画像Vの構築E3を含み得る。
【0069】
3D計算機61は、メモリ・ユニット4に記憶されている医用画像Imから3D画像Vを構築する。メモリ・ユニット4からのデータの送信は、内部若しくは外部のコンピュータ網を介して、又はフロッピィ・ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、外部ハードディスク、USBフラッシュ・ドライブ、SDカード等のような任意の適当な物理的媒体によって生じ得る。
【0070】
3D計算機61による乳房Oの3D画像Vの構築は、乳房Oの三次元表現を得ることを可能にし、従って、投影の方向(線源と、放射線医学的徴候を示す2D医用画像の領域とを結ぶ直線)での放射線医学的徴候の位置を知ることが可能でない乳房Oの標準的な2D画像に比較して放射線医学的徴候のより正確な位置を知ることを可能にする。
【0071】
3D画像はボクセルVoxVの行列である。ボクセルVoxVの値π(VoxV)は、ボクセルVoxVに位置する組織に対応する減弱係数に比例している。
■ステップE3−第一の画像P0を得る
提案されている方法は、標準的なマンモグラムと同様の第一の画像P0の利用を要求する。この画像は様々な態様として得ることができ、特に以下の態様の一つによって得られるが、この態様に限定されない。
【0072】
第一に、この第一の画像P0は、医用画像Imの取得の直前又は直後の標準的なマンモグラムの取得によって得ることができる。この取得時に、線源によって放出される放射線量は、通例通り従来通りに決定される。このように、第一の画像P0は標準的なディジタル2D医用画像である。
【0073】
第二に、第一の画像P0は、計算システム6によって構築される3D画像Vの投影を生成することにより得ることができる。
【0074】
第三に、第一の画像P0は、仏国特許出願第09.599374号に記載されている方法に従って医用画像Imからの構築によって得ることができる。
【0075】
最後に、第一の画像P0は、医用画像Imの一つであってもよいし、医用画像Imの全て又は一部から形成されてもよい。
【0076】
全ての場合において、第一の画像P0は、乳房Oを通過した後のX線の吸収についての情報を与える値π(PixP0)を有するピクセルPixP0の行列である。加えて、情報は、第一の画像P0の形成を可能にしたシステムの真の構成又は模擬された構成、特に線源S及び検出器の相対位置(真の位置又は模擬された位置)に関わるものであることが知られている。
■ステップ4−3D疑わしさマップM3Dの生成
図2及び図6は、3D疑わしさマップM3Dの生成E4を示している。検出計算機71は、医用画像Im若しくは3D画像Vの何れかから、又は両方から、3D疑わしさマップM3Dを算出する。
【0077】
例えばPalma, G.、Bloch, I.及びMuller, S. による“Spiculated Lesions and Architectural Distortions Detection in Digital Breast Tomosynthesis Datasets”、International Workshop on Digital Mammography (IWDM)(2010年、西国ジローナ)、又はBernard, S.、Muller, S.、Onativia, J.による“Computer-Aided Microcalcification Detection on Digital Breast Tomosynthesis Data: a Preliminary Evaluation”、International Workshop on Digital Mammography (IWDM)(2008年)に記載されているもののようなディジタル乳房トモシンセシス計算機支援式検出を例えば用いて上述の3D疑わしさマップM3Dを得る幾つかの方法が存在している。
【0078】
3D疑わしさマップM3DはボクセルVoxM3Dの行列である。ボクセルVoxM3Dの各々について、値μ(VoxM3D)は疑わしさの程度を示し、ボクセルVoxM3Dに対応する乳房領域での疑わしい放射線医学的徴候の存在の指標を与える。
【0079】
この疑わしさの程度μ(VoxM3D)は0と1との間の値であってよく、離散的(値は0及び1のみであり、すなわちμ(VoxM3D)∈{0;1})であっても連続的(すなわちμ(VoxM3D)∈[0;1])であってもよい。
【0080】
例えば、ボクセルVoxM3Dに対応する乳房Oの領域が不透明部分、構造歪み又は微小石灰化等に似た疑わしい放射線医学的徴候を全く示していない場合には、ボクセルVoxM3Dの疑わしさの程度μ(VoxM3D)は値0を取る。ボクセルVoxM3Dに対応する乳房Oの領域が疑わしい放射線医学的徴候を含む可能性がある場合には、ボクセルVoxM3Dの疑わしさの程度μ(VoxM3D)は値1を取る。
【0081】
値μ(VoxM3D)が0と1との間で連続的に変化するときには、この値はボクセルVoxM3Dに対応する領域についての疑わしさの程度を反映している。明らかに、疑わしさの程度μ(VoxM3D)は他の値を取るように定義されてもよい。
【0082】
3D疑わしさマップM3Dは、検出システム7のメモリ・ユニット72に記憶される。
【0083】
従って、組織基質Oの病理学的領域を検出する補助的なツールが提供される。
《乳房Oの疑わしい領域を明らかにする2D画像を形成する方法の各ステップ》
■ステップE5−2D疑わしさマップM2Dの生成
3D疑わしさマップM3Dから、実装用システム8の計算機81は、図2及び図7に示すようにステップE5において2D疑わしさマップM2Dを生成する。
【0084】
この目的のために、計算機81は、検出システム7から当該計算機81に送信された3D疑わしさマップM3Dについて点Sから開始して平面(図7では2D疑わしさマップM2Dによって表わされている)への投影を実行する。平面及び点Sの位置は、第一の画像P0の取得に用いられた取得ユニット2の検出支持板25及び線源24の位置にそれぞれ対応しているか、又はシミュレーションによる第一の画像P0の構築時に用いられた点S及び平面の位置にそれぞれ対応しており、これらの位置はメモリ・ユニット4に記憶されており、上述の医用画像Imの場合(ステップ3)と同じ方法で計算機81に転送され得る。3D疑わしさマップM3Dの位置は、第一の画像P0の取得の時刻の乳房Oの位置に対応する。
【0085】
従って、2D疑わしさマップM2Dの生成については、第一の画像P0の取得の場合と同じ条件が再現される。
【0086】
2D疑わしさマップM2DはピクセルPixM2Dの行列である。ピクセルPixM2Dの各々の値μ(PixM2D)は様々な態様で算出され得る。一般的には、この値は、考察されている2D疑わしさマップM2DのピクセルPixM2Dと点Sとを結ぶ直線Lが通る3D疑わしさマップM3DのボクセルVoxM3D疑わしさの程度μ(VoxM3D)の間でのt−コノルムの適用のような集計演算すなわち
μ(PixM2D)=⊥i∈Lμ(VoxM3Di)
の結果であり、⊥は、t−コノルム又は他の選択された集計演算子を示す。
【0087】
t−コノルムは、結合型の単調な可換の数学的演算子であって、単位元は0である。最も小さいt−コノルムが最大値であり、従って
⊥i∈Lμ(VoxM3Di)≧maxi∈Lμ(VoxM3Di)
を与える。
【0088】
最大値に関しては、2D疑わしさマップM2Dの各々のピクセルPixM2Dについて、
μ(PixM2D)=maxi∈Lμ(VoxM3Di)
である。
【0089】
尚、他の集計演算子例えば平均を用いてもよいことを特記しておく。
【0090】
従って、2D疑わしさマップM2Dは、標準的な医用画像の場合と同じ方法で乳房Oの疑わしい領域を二次元で示す。
【0091】
2D疑わしさマップM2Dは、計算機81によって実装用システム8のメモリ・ユニット82に記憶される。
【0092】
従って、健全な放射線医学的徴候の重なり合いは、標準的な医用画像では病理学的な放射線医学的徴候に関わるとの考察を導き得る動機を潜在的に招き得るものであるが、このような健全な放射線医学的徴候の重なり合いが、2D疑わしさマップM2Dの対応するピクセルPixM2Dでは領域が疑わしいとの信念を導く情報を生成しなくなる。集計演算子例えばt−コノルム⊥を用いると、乳房Oのこの領域に対応する2D疑わしさマップM2DのピクセルPixM2Dは、この領域が疑わしいと示さなくなる。
■ステップE6−容積V1の生成
以上の後に、図2及び図8に示すように、計算機81は3D画像V及び3D疑わしさマップM3Dから容積V1を生成する。
【0093】
容積V1は、3D画像VのボクセルVoxVを3D疑わしさマップM3Dの対応するボクセルVoxM3Dに乗算することにより得られる値を有するボクセルVoxV1の行列である。
【0094】
π(VoxV1i)=π(VoxVi)・μ(VoxM3Di)。
【0095】
容積V1は、疑わしい領域のみが示されている乳房Oの表現である。
【0096】
容積V1は、計算機81によって実装用システム8のメモリ・ユニット82に記憶される。
■ステップE7−疑わしい放射線医学的徴候の画像P1の形成
図2及び図9は、疑わしい放射線医学的徴候の画像P1を形成するステップE7を示す。このステップE7では、実装用システム8の計算機81は、容積V1を点Sから平面(図9では疑わしい放射線医学的徴候の画像P1によって表わされている)へ投影する。
【0097】
実装用システム8の計算機81によって用いられる容積V1、点S及び平面の相対位置は、第一の画像P0の取得E3のときの乳房O、線源24及び検出支持板25の相対位置と同じである。
【0098】
疑わしい放射線医学的徴候の画像P1は、2D疑わしさマップM2DのピクセルPixM2Dと類似の態様で算出される値π(PixP1)を有するピクセルPixP1の2D行列であるが、今回は容積V1から算出され、
π(PixP1)=Ai∈Lπ(VoxVi)、すなわち
π(PixP1)=Ai∈Lμ(VoxM3Di)・π(VoxVi)
であり、Aは、最大値、平均値、中央値又は他の値のような集計演算子である。
【0099】
従って、疑わしい放射線医学的徴候の画像P1は、対象Oに含まれる他の構造の重なり合いを減少させた悪性である可能性のある放射線医学的徴候のみが示されている2D画像である。
【0100】
疑わしい放射線医学的徴候の画像P1は、計算機81によって実装用システム8のメモリ・ユニット82に記憶される。
■ステップE8−最終的な2D画像Pの形成
図2及び図10は、最終的な2D画像Pを形成するステップE8を示す。最終的な2D画像PはピクセルPixPの2D行列である。ピクセルPixPの各々について、計算機81は下式のように値π(PixP)を算出する。
【0101】
π(PixPi)
=β・[(1−μ(PixM2Di))・π(PixP0i)+π(PixP1i)]
+(1−β)・π(PixP1i)
式中、βは0と1との間に位置する。
【0102】
1とは異なる値βを選択するということは、0とβとの間の3D疑わしさマップM3Dの疑わしさの程度μ(VoxM3D)を選択するということである。
【0103】
従って、最終的な2D画像Pでの疑わしい領域での組織の重なり合いの影響を多く又は少なく消去するようにβの値に作用を及ぼすことが可能である。従って、疑わしい領域の上下の情報のさらに多い又はさらに少ない認知のためにβの値に作用を及ぼすことが可能である。β=0である場合には、第一の画像P0に対する作用になる。
【0104】
最終的な2D画像Pを構築する方法に改良を施すことができ、特にフィルタや係数による加重を用いた疑わしい放射線医学的徴候の画像P1の細部の強調、又は2D疑わしさマップM2Dにおいて特によく見える疑わしい領域のみでの最終的な2D画像Pのフィルタ処理を施し得ることを特記しておく。フィルタ処理は、最終的な2D画像Pでの幾つかの周波数又は幾つかの構造を増幅する。従って、フィルタ処理を行なうと、疑わしい構造のさらに十分な明示が可能になる。
【0105】
一旦、3D疑わしさマップM3D又は2D疑わしさマップM2Dにおいて関心領域ROIが識別されたら、関心領域ROIのみを対象とすることが可能である。関心領域ROIの識別は、医師によって行なわれてもよいし、自動的に行なわれてもよく、自動的に行なう場合には、例えばピクセルの値μ(PixM2D)を閾値と比較することにより2D疑わしさマップM2Dを閾値処理することを介して、又は3D疑わしさマップM3Dを閾値処理した後に、2D疑わしさマップM2Dを得る投影と同じ方法で3D疑わしさマップM3Dの閾値処理の結果の投影を行なうことを介して、行なわれ得る。次いで、各ステップは、この関心領域ROIにのみ関わるように容易に修正される。例えば、ステップE5では、実装用システム8の計算機81は、点S及び関心領域ROIの近傍を通る直線が3D疑わしさマップM3Dを通る部分のみを投影して、部分的な2D疑わしさマップM2Dを得る。
【0106】
また、関心領域ROIは、第一の画像P0において医師によって検出されていてもよい。
■ステップE9−3Dナビゲーション
この方法はまた、乳房Oの全体にわたるナビゲーションを可能にし得る。この場合には、以下に述べる実装用システム8の動作作用は、放射線科医が画像を視認することを可能にするシステムにおいて利用可能になる。
【0107】
この目的のために、計算機81は乳房Oの画像の表示信号を、イメージング・システム1の表示ユニット5であってよい表示ユニットへ送る。表示画像は、上述の第一の画像P0又は最終的な2D画像Pの何れであってもよい。
【0108】
計算機81はまた、表示画像において識別される1又は複数の関心領域ROIの標識を制御し、この標識は図10に示すような矩形、方形又は任意の形状であり得る輪郭線Cによる。
【0109】
関心領域ROIに位置しており乳房Oの表示画像に平行な乳房OのスライスImCに対応する幾つかの画像が、やはり表示ユニット5又は他の表示ユニットに表示される。スライスImCは、全スライスであってもよいし、2D画像において標識された関心領域ROIに対応するスライスの関心領域ROIであってもよい。
【0110】
乳房OのスライスImCは、乳房トモシンセシスのような乳房Oの3D画像Vから形成され得る。
【0111】
これらのスライスImCは、乳房の表示画像と同時に、又は関心領域(1又は複数)ROIの標識Cが選択されたときの何れかで示され得る。選択は、マウス又はスタイラスのような人対機械インタフェイスを用いてC標識をクリックすることにより行なわれる。
【0112】
乳房のスライスImCは、3D疑わしさマップM3Dに従って疑わしさμImCの順序で分類される。この目的のために、スライスImCの各々について、平均値、中央値、最小値、最大値、又は演算子Mによって得られる他の任意の値を、スライスImCに対応する3D疑わしさマップM3DのボクセルVoxの疑わしさの程度の値μ(VoxM3D)について算出することができる。
【0113】
μImC=Mi∈ImCμ(VoxM3Di)
従って、医師は、放射線医学的徴候のよりよい位置を求めて乳房Oの全体を容易にナビゲートすることができる。従って、医師には、潜在的に疑わしい領域の全体を通してのさらに最適な誘導が提供される。
【0114】
図11に示す一つの変形では、計算機81は乳房Oの表示画像に重ね合わされているウォータマークの表示を制御する。このウォータマークは、乳房Oの各領域の疑わしさの程度を示す。ウォータマークは2D疑わしさマップM2Dから構築されて、2D疑わしさマップM2Dの等値曲線IsoCを示す。等値曲線IsoCは、ピクセルPixM2Dが実質的に異なる値μ(PixM2D)を有する2D疑わしさマップM2Dの二つの領域の間の境界を記録する連続的な線である。
【0115】
等値曲線IsoCは、これらの等値曲線IsoCに沿った線又は色付き面積によるウォータマークとして示され得る。後者(色付き面積)の場合には、異なる色の二つの領域の間の境界が等値曲線IsoCとなる。
【0116】
疑わしさの程度μ(PixM2D)はまた、カーソルが乳房Oの画像の上に移動されたときに、例えば乳房Oの画像の外部の固定ウィンドウ、又はカーソルと共に移動する小さいウィンドウの何れかに表示され得る。
【0117】
これにより、医師に乳房Oの注釈付きマッピングが提供される。
【0118】
これら二つの3Dナビゲーション・ステップによって、医師に放射線医学的徴候の診断の準備を支援するツールが提供される。
【0119】
この変形を第一の変形と組み合わせて、医師が必要に応じて乳房の一つの表示から他の表示へ切り換えることを可能にすることができる。
《コンピュータ・プログラム》
この方法は、任意の適当な媒体、例えばハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、フロッピィ・ディスク、USBフラッシュ・ドライブ、SDカード、ローカルのサーバ又はリモートのサーバ等に記録されるこの方法の目的のための機械命令を含むコンピュータ・プログラムによって具現化され得る。
【符号の説明】
【0120】
O:乳房
1:医用イメージング・システム
2:取得ユニット
3:制御ユニット
4:メモリ・ユニット
5:表示ユニット
6:計算システム
7:自動式検出システム
8:実装用システム
21:直立スタンド
22:配置用アーム
23:回転軸
24:線源
25:検出支持板
26:圧迫支持板
27:並進レール
61:3D計算機
62:メモリ・ユニット
71:検出計算機
72:メモリ・ユニット
81:計算機
82:メモリ・ユニット
811:2D疑わしさマップM2Dを生成するモジュール
812:容積V1を生成するモジュール
813:疑わしい放射線医学的徴候の画像P1を形成するモジュール
814:最終的な2D画像Pを形成するモジュール
P0:第一の画像
Im:医用画像
C:関心領域ROIの標識付け
V:3D画像
M3D:3D疑わしさマップ
VoxM3D:ボクセルの3D行列
M2D:2D疑わしさマップ
PixM2D:ピクセルの2D行列
S:平面に投影された点
ROI:関心領域
V1:容積
VoxV1:ボクセルの行列
P1:疑わしい放射線医学的徴候の画像
PixP1:ピクセルの2D行列
ImC:乳房Oのスライス
P:最終的な2D画像
IsoC:等値曲線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の画像(P0)及び医用イメージング・システム(1)により事前に取得される組織基質(O)の医用画像(Im)から当該組織基質の疑わしい領域(O)を明示する最終画像を形成する方法であって、
・検出計算機(71)により、組織基質(O)の対応する領域が疑わしいか否かを明らかにする疑わしさの程度(μ(VoxM3D))を示す値を有するボクセル(VoxM3D)の三次元(3D)行列である3D疑わしさマップ(M3D)を医用画像(Im)から構築するステップ
を含んでおり、当該方法は、
・実装用計算機(81)により、前記3D疑わしさマップ(M3D)の疑わしさの程度(μM3D(Vox))から決定される疑わしさの程度(μM2D(Pix))を示す値を有するピクセル(Pix)の二次元(2D)行列である2D疑わしさマップ(M2D)を、前記3D疑わしさマップ(M3D)の全て又は一部を点(S)から平面へ投影して前記イメージング・システム(1)による前記第一の画像(P0)の取得条件を再現することにより生成するステップと、
・前記実装用計算機(81)により、前記組織基質(O)の疑わしい領域を明示する前記組織基質(O)の最終的な2D画像(P)を前記第一の画像(P0)及び/又は前記2D疑わしさマップ(M2D)から形成するステップと
をさらに含んでいることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記イメージング・システムは乳房トモシンセシス・システムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2D疑わしさマップ(M2D)におけるピクセル(PixM2D)の前記値(μ(PixM2D))は、前記点(S)と該ピクセル(PixM2D)とを結ぶ直線(L)に位置する前記3D疑わしさマップ(M3D)におけるボクセル(VoxM3D)の前記値(μ(VoxM3D))に対する集計演算(⊥)により得られ、
μ(PixM2D)=⊥i∈Lμ(VoxM3Di)
である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記実装用計算機(81)は、前記組織基質(O)の事前に得られる3D画像(V)及び前記3D疑わしさマップ(M3D)から容積(V1)を生成し、
前記3D画像(V)は、前記医用画像(Im)の強度から得られる値(π(VoxV))を有するボクセル(VoxV)の行列であり、
前記容積(V1)は、前記3D疑わしさマップ及び前記3D画像(V)における対応するボクセルの値(μ(VoxM3D)、π(VoxV))の間で乗算した値(π(VoxV1))を有するボクセル(VoxV1)の行列であり、
前記実装用計算機(81)は、前記容積(V1)を点(S)から平面へ投影して前記第一の画像(P0)の取得条件を再現することにより疑わしい放射線医学的徴候の画像(P1)を形成し、
疑わしい放射線医学的徴候の前記画像(P1)はピクセル(PixP1)の行列であり、
疑わしい放射線医学的徴候の前記画像(P1)の1個のピクセル(PixP1)の値(π(PixP1))は、前記点(S)と前記ピクセル(PixP1)とを結ぶ直線(L)に位置する前記容積(V1)のボクセル(VoxV1)の前記値(π(VoxV1))に対し集計演算子(⊥)を適用することにより得られ、
π(PixP1)⊥i∈Lπ(VoxV1i)
である、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記計算機は、前記第一の画像(P0)のピクセル値、疑わしい放射線医学的徴候の前記画像(P1)のピクセル値、及び前記2D疑わしさマップ(M2D)のピクセル値の全て又は一部の重み付き加算を実行することにより前記最終的な2D画像(P)を形成する、請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
一旦、前記3D疑わしさマップ(M3D)が構築されたら、前記実装用計算機(81)は、前記3D疑わしさマップ(M3D)から決定され疑わしい領域である可能性が高い関心領域(ROI)である前記マップ及び画像の一つ部分にのみ作用する、請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記関心領域は前記3D疑わしさマップ(M3D)から自動生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
・前記組織基質の画像が表示装置に表示され、
・前記関心領域(ROI)は、前記組織基質の前記画像において標識され、
・前記関心領域(ROI)に位置し、前記組織基質の前記画像に平行な前記組織基質のスライスであって、前記3D疑わしさマップ(M3D)に従って疑わしさの順序で分類された組織基質のスライスに対応する幾つかの画像が、前記表示装置又は他の表示装置に表示されて、
前記組織基質の前記表示画像は前記第一の画像(P0)又は前記最終的な2D画像(P)である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
・前記組織基質の画像が表示装置に表示され、
・前記組織基質の領域について前記疑わしさの程度を示すウォータマークであって、前記2D疑わしさマップ(M2D)から構築されて前記2D疑わしさマップ(M2D)の等値曲線(IsoC)を明らかにするウォータマークが、前記組織基質の前記画像に重ね合わされる、請求項1〜請求項8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記等値曲線は、線又は色付き面積による前記ウォータマークとして示される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜請求項10の何れか一項に記載の方法を具現化する計算システム(1)であって、
実装用計算機(81)を備えており、該実装用計算機(81)は、
・組織基質(O)の医用画像(Im)から得られる事前に生成される3D疑わしさマップ(M3D)から2D疑わしさマップ(M2D)を生成するモジュールと、
・組織基質(O)の3D画像(V)及び前記3D疑わしさマップ(M3D)から容積(V1)を生成するモジュールと、
・点から開始して平面への前記容積(V1)の模擬投影から疑わしい放射線医学的徴候の画像(P1)を生成するモジュールと、
・第一の事前に取得される画像(P0)、前記2D疑わしさマップ(M2D)及び疑わしい放射線医学的徴候の前記画像(P1)から、該マップ及び画像の重み付き加算により最終的な2D画像(P)を形成するモジュールと、
・前記2D疑わしさマップ(M2D)、前記容積(V1)、疑わしい放射線医学的徴候の前記画像(P1)及び前記最終的な2D画像(P)を記憶するメモリ・ユニット(82)と、
・前記画像の少なくとも一つを表示する表示ユニット(5)と
を含んでいる、計算システム(1)。
【請求項12】
コンピュータにおいて実行される又は走行すると請求項1〜請求項11の何れか一項に記載の方法を具現化する機械命令を備えたコンピュータ・プログラム。
【請求項1】
第一の画像(P0)及び医用イメージング・システム(1)により事前に取得される組織基質(O)の医用画像(Im)から当該組織基質の疑わしい領域(O)を明示する最終画像を形成する方法であって、
・検出計算機(71)により、組織基質(O)の対応する領域が疑わしいか否かを明らかにする疑わしさの程度(μ(VoxM3D))を示す値を有するボクセル(VoxM3D)の三次元(3D)行列である3D疑わしさマップ(M3D)を医用画像(Im)から構築するステップ
を含んでおり、当該方法は、
・実装用計算機(81)により、前記3D疑わしさマップ(M3D)の疑わしさの程度(μM3D(Vox))から決定される疑わしさの程度(μM2D(Pix))を示す値を有するピクセル(Pix)の二次元(2D)行列である2D疑わしさマップ(M2D)を、前記3D疑わしさマップ(M3D)の全て又は一部を点(S)から平面へ投影して前記イメージング・システム(1)による前記第一の画像(P0)の取得条件を再現することにより生成するステップと、
・前記実装用計算機(81)により、前記組織基質(O)の疑わしい領域を明示する前記組織基質(O)の最終的な2D画像(P)を前記第一の画像(P0)及び/又は前記2D疑わしさマップ(M2D)から形成するステップと
をさらに含んでいることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記イメージング・システムは乳房トモシンセシス・システムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2D疑わしさマップ(M2D)におけるピクセル(PixM2D)の前記値(μ(PixM2D))は、前記点(S)と該ピクセル(PixM2D)とを結ぶ直線(L)に位置する前記3D疑わしさマップ(M3D)におけるボクセル(VoxM3D)の前記値(μ(VoxM3D))に対する集計演算(⊥)により得られ、
μ(PixM2D)=⊥i∈Lμ(VoxM3Di)
である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記実装用計算機(81)は、前記組織基質(O)の事前に得られる3D画像(V)及び前記3D疑わしさマップ(M3D)から容積(V1)を生成し、
前記3D画像(V)は、前記医用画像(Im)の強度から得られる値(π(VoxV))を有するボクセル(VoxV)の行列であり、
前記容積(V1)は、前記3D疑わしさマップ及び前記3D画像(V)における対応するボクセルの値(μ(VoxM3D)、π(VoxV))の間で乗算した値(π(VoxV1))を有するボクセル(VoxV1)の行列であり、
前記実装用計算機(81)は、前記容積(V1)を点(S)から平面へ投影して前記第一の画像(P0)の取得条件を再現することにより疑わしい放射線医学的徴候の画像(P1)を形成し、
疑わしい放射線医学的徴候の前記画像(P1)はピクセル(PixP1)の行列であり、
疑わしい放射線医学的徴候の前記画像(P1)の1個のピクセル(PixP1)の値(π(PixP1))は、前記点(S)と前記ピクセル(PixP1)とを結ぶ直線(L)に位置する前記容積(V1)のボクセル(VoxV1)の前記値(π(VoxV1))に対し集計演算子(⊥)を適用することにより得られ、
π(PixP1)⊥i∈Lπ(VoxV1i)
である、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記計算機は、前記第一の画像(P0)のピクセル値、疑わしい放射線医学的徴候の前記画像(P1)のピクセル値、及び前記2D疑わしさマップ(M2D)のピクセル値の全て又は一部の重み付き加算を実行することにより前記最終的な2D画像(P)を形成する、請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
一旦、前記3D疑わしさマップ(M3D)が構築されたら、前記実装用計算機(81)は、前記3D疑わしさマップ(M3D)から決定され疑わしい領域である可能性が高い関心領域(ROI)である前記マップ及び画像の一つ部分にのみ作用する、請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記関心領域は前記3D疑わしさマップ(M3D)から自動生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
・前記組織基質の画像が表示装置に表示され、
・前記関心領域(ROI)は、前記組織基質の前記画像において標識され、
・前記関心領域(ROI)に位置し、前記組織基質の前記画像に平行な前記組織基質のスライスであって、前記3D疑わしさマップ(M3D)に従って疑わしさの順序で分類された組織基質のスライスに対応する幾つかの画像が、前記表示装置又は他の表示装置に表示されて、
前記組織基質の前記表示画像は前記第一の画像(P0)又は前記最終的な2D画像(P)である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
・前記組織基質の画像が表示装置に表示され、
・前記組織基質の領域について前記疑わしさの程度を示すウォータマークであって、前記2D疑わしさマップ(M2D)から構築されて前記2D疑わしさマップ(M2D)の等値曲線(IsoC)を明らかにするウォータマークが、前記組織基質の前記画像に重ね合わされる、請求項1〜請求項8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記等値曲線は、線又は色付き面積による前記ウォータマークとして示される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜請求項10の何れか一項に記載の方法を具現化する計算システム(1)であって、
実装用計算機(81)を備えており、該実装用計算機(81)は、
・組織基質(O)の医用画像(Im)から得られる事前に生成される3D疑わしさマップ(M3D)から2D疑わしさマップ(M2D)を生成するモジュールと、
・組織基質(O)の3D画像(V)及び前記3D疑わしさマップ(M3D)から容積(V1)を生成するモジュールと、
・点から開始して平面への前記容積(V1)の模擬投影から疑わしい放射線医学的徴候の画像(P1)を生成するモジュールと、
・第一の事前に取得される画像(P0)、前記2D疑わしさマップ(M2D)及び疑わしい放射線医学的徴候の前記画像(P1)から、該マップ及び画像の重み付き加算により最終的な2D画像(P)を形成するモジュールと、
・前記2D疑わしさマップ(M2D)、前記容積(V1)、疑わしい放射線医学的徴候の前記画像(P1)及び前記最終的な2D画像(P)を記憶するメモリ・ユニット(82)と、
・前記画像の少なくとも一つを表示する表示ユニット(5)と
を含んでいる、計算システム(1)。
【請求項12】
コンピュータにおいて実行される又は走行すると請求項1〜請求項11の何れか一項に記載の方法を具現化する機械命令を備えたコンピュータ・プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−40395(P2012−40395A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180488(P2011−180488)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】
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